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我が社の得意な商圏特性と 同じ特性を持つ商業施設を抽出
シリーズ 商圏分析と立地診断[第27回] 我が社の得意な商圏特性と 同じ特性を持つ商業施設を抽出 競合過多による小商圏化や、少子高齢化による将 来人口の減少などに伴って、これまで郊外のロードサ きた。都市部への出店もそうだが、商業施設内もしく は商業施設に隣接した立地への出店も見られる。 イドでフリースタンディング出店のみしていた小売業 そこで今月は、現在ある商業施設の中で、 「我が社の が、より人口の多い地域へと出店していく例が増えて 得意とする商圏」に合致する施設を抽出した。 (田中) 資料提供: (株)東洋経済新報社「大型小売店ポイントデータ 2016」/技研商事インターナショナル(株) 「MarketAnalyzer™」 商圏特性を4つのクラスタに分類 図1 図 1は、大手ホームセンター(HC)4 社(カインズ、 コメリ、東急ハンズ、DCMホーマック)の全店を地図 上にプロットしたもの( 「ホームセンター名鑑 2016 ポイ ントデータ」を使用しているため、店数は 2015 年 11 月 末時点) 。各社それぞれ、得意とする商圏が異なるので はないかという仮定をもとにこの 4 社を選んだ。地図上 ではクラスター別に4 つに色分けしている(企業別では ない) 。 その 4 つのクラスターを示したのが表 1だ。この 4クラ スターは、それぞれ9つの因子に基づいて分類している。 つまり、どの程度ニューファミリー性(因子 1)が高いか、 どの程度マイホーム核家族性(因子 2)が高いかを分析 し、9 つの因子から「郊外」 「都会」 「製造業」 「農村」 の 4 つのクラスターに分類している。表 2 下段の右端に ある店数は、4 社の全店がどのクラスターに属している のかを示したもので、これがそのまま図 1の地図にプロッ トしてある。 得意商圏が異なる大手HC4社 表 2では、各社の店がどのようなクラスターに出店し ているのかを示している。 まずカインズは、同社全体の 50%に相当する93 店 が「製造業」クラスターに出店している。残りの 32%が 「郊外」 、17%が「農村」で、「都会」は 2%しかない。 これに対してコメリは、同社全体の 52%に相当する 607 店が「農村」に、30%が「製造業」に、18%が「郊 外」に出店しており、 「都会」の店は 1%しかない。 東急ハンズは予想していた通り、 「都会」が 95%、 「郊外」が 5%で、 「製造業」と「農村」には 1 店も出 店していない。同社は既に商業施設内に出店している ので今回の調査の趣旨には反するが、比較対象として 48 ● 2016:08 表1 シリーズ 商圏分析と立地診断[第 27 回] 表2 表3 表4 加えることにした。 最後にDCMホーマックは、71%が 「郊外」 、15%が「農村」、10%が「製 造業」で、 「都会」は 3%。 これをみると最初に仮定した通り、 表5 各社の得意とする商圏(=もっとも店 数の多い商圏)はそれぞれ異なってい ることが分かった。 全国の商業施設を クラスター分類 表6 次に東洋経済新報社の「大型小 売店ポイントデータ 2016」を使い、 商業施設(同データの業態区分では 「ショッピングセンター」)のみを抜 き出して、HC と同様に 4 つのクラ スターに分類。各クラスターの商業 施設を売場面積順に並べたのが表 3、表 5、表 7、表 9 のランキング。 各ランキングの下にある商圏レポー トは、売場面積ランキング 1 位の商 業施設のものだ。 若い夫婦が多い 「郊外」クラスター 中でももっとも売場面積が大きい つ比較的若い年齢の夫婦が多いこと イオンレイクタウンの半径 10 キロ圏 が分かる。またその住宅は、マンシ の商圏を分析したのが表 4 と表 5 だ。 ョン住まいの比率が高いようだ。 表 3 ~ 4 は、DCM ホ ー マ ッ ク が 人口は約 148 万人で、年齢別人口で 得意とする「郊外」クラスター。既 は県内平均に比べ、小さな子供と 29 にホームセンターが出店している商 ~ 39 歳の構成比が高く、65 歳以上 業施設も混ざっているが、これらの の構成比が低い。世帯人数では県内 する「都会」クラスター。その売場 商業施設が同社の得意な商圏特性と 平均よりも 1 人世帯が低く 2 人以上 面積ランキングを見ると、どれも政 同じ立地にある。 の世帯が高いので、小さな子供を持 令指定都市にあることが分かる。 若い1人世帯の「都会」クラスター 表 5 ~ 6 は、東急ハンズが得意と 2016:08 ● 49 売場面積がもっとも大きいららぽーとの半 表7 径 10 キロ圏は、商圏人口 195 万人。当然な がら 4 つの商業施設の中でもっとも人口が多 い。年齢別人口は県内平均に比べ、49 歳以 下の比率が高く 50 歳以上の比率が低い。世 帯人数で県内平均より構成比が高いのは 1 人 世帯のみで、2 人以上世帯は構成比が低い。 表8 比較的若い層の 1 人暮らしが多い商圏である ことが分かる。そのせいか一戸建て世帯の構 成比が極端に低く、共同住宅世帯の構成比が 60%以上もある。 人口が少ない「製造業」クラスター 表 7 ~ 8 は、カインズが得意とする「製造 業」クラスター。売場面積 1 位の FKD ショ ッピングモールの半径 10 キロ圏は人口 44 万 人と、4 つの商業施設の中ではもっとも人口 が少ない。 年齢別人口はららぽーとと同様に、49 歳 表9 以下の比率が高く 50 歳以上の比率が低い。 世帯人数では 1 人世帯が県内平均を大きく上 回っており、一戸建て世帯の構成比も低い。 人口こそ少ないが、 「都会」クラスターと似 ている部分も多い。 高齢者が多い「農村」クラスター 表 9 ~ 10 は、コメリが得意とする「農村」 クラスター。売場面積ランキングの上位す べてがイオン系だ。 もっとも売場面積が大きいイオンモール名 古屋茶屋の半径 10 キロ圏は、人口 98 万人。 年齢別人口は県内平均と比べ、おおむね 44 歳以下の構成比が低く、45 歳以上の構成比 が高い。世帯人数では 1 人世帯が県内平均を 大きく上回るが、その内訳は高齢者の単身世 帯が多いことが分かる。またこの商圏も共同 住宅世帯の構成比が高い。 今回の調査では 9 つの因子から 4 つのクラ スターに分けたが、どの因子を使うのか、ま た幾つのクラスターに分類するのかは、各社 のフォーマット等に合わせてよく検討する必 要がある。また足元人口や競合状況も加味し ていないので、それらを加えればもう少し精 度の高い抽出ができる筈だ。 50 ● 2016:08 表 10