...

Ⅲ 調査結果のまとめ

by user

on
Category: Documents
2

views

Report

Comments

Transcript

Ⅲ 調査結果のまとめ
 Ⅲ 調査結果のまとめ
Ⅲ 調査結果のまとめ Ⅲ 調査結果のまとめ
市民意識調査結果の総括と今後の課題
第1章 男女の地位・役割について 社会における男女の地位の平等感について各分野別にたずねた設問では、「平等」が6割弱を
占める「学校教育」を除き、すべての分野で『男性優遇』と考える人が多かった。その度合いに
は分野によって差があり、「地域活動や社会活動」「法律や制度の上」では「平等」が4割弱に上
るが、「家庭生活」「職場」「政治」「社会通念・慣習・しきたり」では『男性優遇』が高く、不平
等感が強い。 平成 20 年に実施した前回調査と比較すると、「家庭生活」「職場」で『男性優遇』がやや減少
し、「平等」が増加していた。しかし、その他の分野ではほとんど変化はみられず、「社会全体」
については、『男性優遇』が増加するなど、宗像市においてこの5年間で男女の地位の平等感が
高まったとはいいがたい結果となっている。また、全国調査や福岡県調査と比較しても、宗像市
は『男性優遇』が高い傾向がみられる。 また、性別にみると女性は『男性優遇』、男性は「平等」と考える人が全体的に多くなっている。
前回調査に比べると、男女の意識差はやや縮小しているが、「家庭生活」「地域活動」「法律や制
度の上」などでは依然として差が大きい。女性が不平等だと思っていることを男性はそう感じて
いない、という認識のギャップが家庭や地域など身近な生活の場で生じていると、日常のやり取
りの中での互いへの不満を高めてしまうことにもつながりかねず、このような認識のギャップを
埋めていくために男女共同参画の理念や現状について広く周知・啓発していくことが必要であろ
う。 また、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という性別役割分担に関しては、前回調
査よりも『賛成派』の割合がやや減少、『反対派』がやや増加しており、意識面ではこの5年間
で変化がみられる。ただ、全体としてはいまだ『賛成派』が『反対派』を上回っている。第4章
でみるように、女性の働き方として子育てで中断する場合も含めると8割近くが結婚や出産後も
職業を持つことを理想としているが、現実はそうなってはおらず、
「男は仕事、女は家庭」という性
別役割分担意識は根強く存在しているといえる。
第2章 家庭生活について 家庭内での夫婦の役割分担についてみると、日常の家事、育児や介護は妻中心、生計維持と重
要事項の決定は夫中心という性別役割分担が顕著である。 前回調査との比較では、夫婦の役割分担の状況に大きな変化はなかった。上述のように「夫は
外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方を支持する割合は減少し、性別役割分担を
めぐる意識面では多少の変化がみられるが、夫婦間の役割分担は依然として残っていることが、
第1章でみた根強い不平等感にもつながっていると思われる。したがって、男女共同参画に向け
た意識啓発は重要ではあるが、それだけでは取り組みとしては十分とはいえず、意識面での変化
を実際の行動にいかに結びつけていくか、検討していかなければならないだろう。 69 男女共同参画に関する市民意識調査報告書 また、夫婦共働きの世帯では「家計を支える」についての「夫と妻が同じ程度」の割合が片働
き世帯に比べてやや増える一方、
「掃除、洗濯、食事の支度などの家事」
「日々の家計管理」
「育児、
子どものしつけ」「自治会などの地域活動」などの妻中心の割合には大きな差がみられない。共
働き世帯の妻は、仕事だけでなく家事や育児、地域活動なども中心的に担っている場合が多く、
二重負担の状況となっている。 家庭生活における慣習についても、
「親類や近所との付き合いは、夫の名前でする」
「妻が夫の
ことを「主人」と呼ぶ」が5割を超えるなど、「家庭の代表は夫」という意識が根強く残ってい
るとみられる。また、
「妻が外出するときは、家事を終わらせてから出かける」
「夫のお茶は妻が
入れる」の割合も高く、ここでも「家事=妻」という性別役割分担がみられる。 旧来の役割分担や慣習を男女共同参画の観点から見直し、それを実際の行動につなげていくこ
とが、家庭内や地域での男女共同参画を進めていくうえで重要である。 第3章 子育てや教育について 子どもの育て方について、
「男の子は男らしく、女の子は女らしく育てる」
「男の子も女の子も
経済的に自立できるように育てる」「男の子も女の子も炊事・掃除・洗濯など、生活に必要な技術
を身につけさせる」という考え方への賛否をたずねている。いずれについても『賛成派』が多数
を占めており、子どもの性別に関わらず、経済的自立、生活自立を望む一方で、「男らしさ女ら
しさ」を求めるという結果がみられた。ただ、設問中には具体的にどのようなことを「男らしさ
女らしさ」とするかは示していないため、その内容は回答者によってイメージが異なっていると
思われる。 また、「賛成」と「どちらかといえば賛成」の内訳をみると、「男の子は男らしく、女の子は女
らしく」は男性で、「経済的に自立できるように育てる」「生活に必要な技術を身につけさせる」
は女性で「賛成」の割合が高く男性の方がやや消極的な結果となっている。特に、「生活に必要
な技術を身につけさせる」は約 19 ポイントの差があり、年代別の意識差も大きい。しかし、共
働き世帯が増加し、また未婚率も上昇している現在においては、経済的に自立できることも、生
活に必要な技術を身につけることも、性別に関わらず重要性を高めており、これからの世代の生
き方の選択肢を周囲の大人が狭めてしまうことのないよう、市民一人ひとりがさらに理解を深め
る必要があるだろう。 学校教育での男女共同参画を進めるための取り組みとして、6つの項目について賛否をたずね
た結果では、すべての項目について『賛成派』が6割を超えて多数派となっている。特に、「性
暴力やセクシュアル・ハラスメントについて相談できる環境を整備する」「生活指導や進路指導
において、男女の区別なく能力を生かせるように配慮する」「性に関する正しい知識や命の大切
さを伝える教育プログラムを作成する」は『賛成派』が9割前後と高く、児童や生徒の男女共同
参画についての意識や理解を高める取り組みよりも、セクハラ相談や生活指導・進路指導、性教
育など個別具体的な問題への取り組みが必要と考えられているようである。ただ、それらの具体
的な問題に適切に対処するには男女共同参画の視点その根本にあることが不可欠であり、それぞ
れの取り組みがバランスよく行われることが望ましい。 70 Ⅲ 調査結果のまとめ 第4章 就労・働き方について 女性の働き方について、理想としては、「子どもができたら職業をやめ、大きくなったら再び
職業をもつ」といういわゆるM字型就労を希望する人が最も多く、「結婚や出産に関わらず、ず
っと職業をもち続ける」という就労継続型が続いている。子育て期の中断はあるとしても、女性
も職業を持つことが望ましいと考えている人が8割近くに上っている。特に、性別にみると女性
はM字型就労と就労継続型がともに4割を超えており、就労継続を理想とする人も多い。一方、
現実としてはM字型就労と就労継続がともに約4分の1となっており、理想に比べて専業主婦型
の割合が高くなっている。結婚や出産後も職業をもつのが理想だが、現実はそうなっていない、
あるいはなりそうにないという状況がうかがえる。その背景には上述したように共働きの女性が
仕事と家事をともに担い負担が大きくなっていることもあるだろう。さらにその原因として、意
識の問題に加え、一般に男性の労働時間が長いことも影響していると考えられる。 また、職場における慣習をみると、
「管理職や責任者はほとんどが男性である」
「来客へのお茶
だしや雑用などが女性に偏る傾向がある」が約4割と高くなっている。補助的業務や雑用が女性
に偏ることは、女性労働者の育成を妨げ、女性の結婚・出産等での退職や女性管理職の少なさに
もつながる。また、
「有給休暇を取得しにくい」
「長時間労働や休日出勤をしている者が多い」が
2割前後あるが、このような状況では現時点で家庭責任を多く担っている女性の就業継続が困難
となる。詳しくは後述するが、ワーク・ライフ・バランス推進に積極的に取り組むことが望まれ
る。 第5章 地域活動や社会活動への参加について 地域活動や社会活動の役職について女性がどの程度つくのが望ましいと思うかについては、す
べての活動の役職で「男性と同じくらいの方がよい」が最も高くなっている。また、前回調査と
比較すると、男女ともすべての役職で「男性と同じくらいの方がよい」の割合が高くなっており、
役職への女性の登用を支持する人が増えていることがわかる。 しかし、それらの地域の役職に、女性は自分自身が、男性は身近な女性が推薦されたらどうす
るかとたずねたところ、
「引き受ける(引き受けることをすすめる)」とする人が前回よりも大幅
に低下している。特に男性で約 15 ポイントと前回との差が大きくなっている。これは、一つに
は質問の仕方が前回と異なることが影響したと考えられる。前回は「関心のある役職について」
たずねる形式だったが、今回は「自治会長や区長、公民館長、PTA会長などの地域の役職につ
いて」と尋ねているからである。男性は「この役職にはついてもいいが、この役職にはついて欲
しくない」というように、役職によって考え方が異なる人が多いものと思われる。 とはいえ、全体的には役職への女性の登用には男性の方が肯定的である。「断る(断ることを
すすめる)」理由としては、男女とも「責任が重いから」
「役職につく知識や経験がないから」
「家
事・育児や介護に支障が出るから」などが上位となっているが、いずれも女性の方が高い値を示
しており、特に「役職につく知識や経験がないから」は男性よりも 12 ポイントも高くなってい
る。したがって、政策・方針決定過程への女性の登用を進めるためには、女性自身が自分の能力
や知識、経験に自信を持ち、積極的に参画することができるよう、女性人材の育成を図ることが
必要であると考えられる。同時に、現時点で家事や育児の負担の多くを女性が担っていることを
踏まえて、女性が意思決定の場に参画しやすいよう両立支援等の環境を整備していくことも必要
71 男女共同参画に関する市民意識調査報告書 だろう。 また、会合でのお茶だしなどの地域での慣習について尋ねたところ、「会合でのお茶出しや準
備・片付けなどは女性が担当することが多い」「町内会や自治会の会長には男性を選ぶことが当
然という雰囲気がある」が高くなっている。3番目に多いのは「男女の役割に大きな差はない」
であるが、これは男女で値が大きく異なり、女性は男性より約 13 ポイント低くなっている。女
性は男性よりも、地域での役割における男女差を感じている。「リーダーは男性、雑用は女性」
といった暗黙の分担が存在することが、上でみたような女性の役職への消極性にもつながってい
ることも考えられる。女性の登用を推進し、地域における男女共同参画を実現するためには、旧
来の慣習についても見直していく必要がある。 第6章 ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)について 自身のワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)について、調和が『とれている』人は
約6割、『とれていない』人は約3割となっている。年代別では、女性の 50 代、男性の 30 代、
50 代で『とれていない』が4割を超えて高くなっている。一般に、男性の 30 代は労働時間が長
いことが多く、また、50 代は現役世代でありながら介護に従事する人が多い年代である。そのた
め、プライベートの時間が取れない、あるいは思うように働けないといったバランスの悪さを感
じる人が多いのかもしれない。 性別では男性の方が『とれていない』がわずかに高いものの、調和がとれているかいないかと
いう点についてはそれほど大きな差はみられない。ただ、女性は1割以上が「不明・無回答」と
なっている。これは、女性は男性に比べ専業主婦・主夫の割合が高く、現在職業についていない
ことから、判断ができないという回答であると思われる。しかし、ワーク・ライフ・バランスは
一時点での仕事と生活のバランスだけを表すものではなく、人生を長期的なスパンでみた場合に
おけるバランスという側面ももっている。そのため、市民に対してこれからの人生も視野に含め
たワーク・ライフ・バランスについての啓発を進めるとともに、市民一人ひとりが理想のワーク・
ライフ・バランスの実現に近づけるよう、施策を展開していく必要がある。 男女がともに仕事や家事、子育てなどあらゆる場面に積極的に参加していくために必要なこと
としては、
「男女の役割分担についての社会通念、慣習、しきたりを改めること」
「子育てや介護
に関するサービスを充実すること」「夫婦の間で家事などの分担をするように十分に話し合い、
協力しあうこと」「性別にかかわらず家事などができるようなしつけや育て方をすること」など
が上位にあがっている。性別では女性で「子育てや介護に関するサービスを充実すること」「性
別にかかわらず家事などができるようなしつけや育て方をすること」が高くなっており、現状と
して家事や育児、介護を多く担っている女性が、それらへの支援とともに、性別に関係なく生活
に必要な技術を身につけることを重視していることがうかがえる。 また、女性の 10、20 代と男性の 30 代では「労働時間の短縮や休暇制度(育児休業・介護休業・
ボランティア休暇等)を普及させること」が、男性の 40 代では「職場中心という社会全体の仕
組みを改めること」が高くなっており、仕事に多くの時間を取られる年代では、現行の労働環境
を改めることが求められている。そのため、市内外の事業所等に対しても、ワーク・ライフ・バ
ランスへの理解を高め、積極的な取り組みにつながるよう啓発を進める必要があるだろう。 72 Ⅲ 調査結果のまとめ 第7章 暴力などの人権侵害について セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)を受けたり見聞きしたりした経験については、女性
の 16.2%が「自分がセクハラを受けたことがある」、9.5%が「身近にセクハラを受けたことがあ
る」と回答している。セクハラが特に女性にとって身近な問題であることがわかる。年代別では、
女性の 30 代、40 代では4人に1人以上が受けた経験があると回答している。 セクハラ被害を受けたときに身近な人に相談した人は4割超だが、「今後に影響すると思い、
がまんした」「どこに相談していいのかわからず、がまんした」いう人も多い。セクハラの事前
防止のための取り組みはもちろんのこと、セクハラが起きた場合の相談窓口の充実およびその周
知が望まれる。 ドメスティック・バイオレンス(DV)についての認識では、「平手でたたいたり、足を蹴っ
たりする」「物を投げつける」、「嫌がっているのに性行為を強要する」などについては暴力であ
ると認識している人が多いが、
「何を言っても無視する」
「携帯電話のメールや着信をチェックす
る」は、「暴力にはあたらない」とする人が2割前後に上っている。 性別では、「平手でたたいたり、足を蹴ったりする」を除くすべての項目で、男性は女性より
「どんな場合も暴力にあたる」とする割合が低く、性別により差がみられる。特に、精神的暴力
や性的暴力は認識差が大きくなっている。性行為の強要や避妊に協力しないといったことは、そ
れにより妊娠した場合には女性に大きな身体的・精神的負担がかかるにも関わらず、男性の方が
暴力との認識が弱いことは大きな問題である。DVに関する啓発に加えて、リプロダクティブ・
ライツの重要性について、市民に広く周知する必要があるだろう。 第8章 男女共同参画社会の実現について 男女共同参画社会の実現のための行政に対する要望としては、
「育児休業・介護休業制度を充実
させ、男女がともに働き続けられる条件整備を進めること」「保育所や学童保育などの施設の整
備やサービスを充実させること」「介護に関する施設の整備やサービスを充実させること」など
が上位にあがっている。特に女性において、これらの両立支援への要望が高い。男性は教育や啓
発の充実、審議会や管理職への女性の登用が女性よりも高くなっている。男性が男女共同参画の
理念の浸透や意思決定過程への女性の参画を重視しているのに対し、女性はより具体的、直接的
な支援の充実を求めていると考えられる。 また、男女とも年齢が低い層で「育児休業・介護休業制度を充実させ、男女がともに働き続け
られる条件整備を進めること」「保育所や学童保育などの施設の整備やサービスを充実させるこ
と」などが高く、仕事と家庭、特に育児との両立支援が求められている。一方、女性の 50 代で
は「介護に関する施設の整備やサービスを充実させること」が高く、年代によって抱えている問
題、求めている支援が異なることがうかがえる。行政としては、各種サービスや講座等の充実を
図るとともに、それらを必要としている層に情報が的確に届くような情報提供の仕組みを整えて
いくことが望まれる。 73 
Fly UP