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応用生物科学専攻 - 京都大学 農学研究科/農学部

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応用生物科学専攻 - 京都大学 農学研究科/農学部
応用生物科学専攻
URL:http://www.kais.kyoto-u.ac.jp/japanese/graduate/div_appbio.html
本専攻では、陸地ならびに海洋に生息する微生物から高等動植物にわた
る多様な生物を対象に、生物資源の生産・利用・加工の諸側面に含まれる
分野名
化学的・生物学的原理の探究とその応用に関する様々な分野の教育・研究
に携わっている。すなわち、微生物、動物、植物などの幅広い生物を対象と
■植物遺伝学
して、それ自身について、その生命機能を生物学、化学、生化学、物理学、
■栽培植物起源学
生理学、分子生物学などを基盤として多面的にそして同時に深く探究・理
■植物病理学
解する一方(バイオサイエンス)、得られた学術的成果を農、医薬、食品を
初めとする生活関連有用物質の高度な生産や利用に適用することを指向し
ている。この方向性に基づく形で、専攻内の各研究分野では多様な先端的
■昆虫生態学
■昆虫生理学
■動物遺伝育種学
■生殖生物学
研究が実施されており、その学際的融合が盛んに行われている。当専攻で
■動物栄養科学
は、このような特色を最大限生かすかたちでの基礎教育、先端教育、およ
■生体機構学
び学生実習を実施している。
■畜産資源学
■海洋生物環境学
■海洋生物増殖学
■海洋分子微生物学
■海洋環境微生物学
■海洋生物生産利用学
■海洋生物機能学
■里海生態保全学
53
応用生物科学専攻 植物遺伝学分野
生命の設計図である遺伝子・ゲノムが
次世代に伝わる仕組みを科学する
遺伝とは遺伝情報が親から子に伝わることであり、すべての生物の生命活動にとって最も重要な事象です。遺
伝学(genetics)では、遺伝の仕組みや物質的基礎を明らかにします。本分野では、分子細胞遺伝学的及び分子
集団遺伝学的手法により、植物の染色体・ゲノムの構造、機能、変異及び操作の研究を行っています。
コムギ、ライムギやオオムギの染色体を操作する
コムギには染色体を切断する遺伝子があり、これを使うとムギ類の染色体を繋ぎ
変えることができます。この仕組みを利用してライムギやオオムギが持つ病害抵抗
性などの有用遺伝子をコムギに導入したり、ムギ類のゲノム解析や遺伝解析に有用
な実験植物群を作出しています。
DNAマーカー技術と遺伝資源を活用してコムギの有用遺伝子を同定する
コムギはヒトゲノムの6倍近い巨大なゲノム(17 Gbp)を持ちます。ゲノムという大海の中から迷子にならずに迅速
に有用遺伝子座を見つけ出すシステムの開発
をしています。また、コムギの在来系統・野生
種のもつ遺伝的多様性を育種に生かせるよう
なシステムを構築しています。これらのシステ
ムを活用してコムギの有用遺伝子の機能を明
らかにしたいと考えています。
土壌微生物を対象とした群集遺伝学・生態学的研究
次世代シーケンサを用いたメタゲノム・メタトランスクリプトーム解析によって、日本の温帯林や東南アジアの熱帯
林の土壌微生物(細菌やカビ)の群集構造(組成や多様性)を集団遺伝学や生態学の観点から解析している。また、
同様の方法により、パンコムギ倍数性進化に伴う遺伝的変化と根圏微生物の群集構造の関係を解析している。
植物を対象とした分子集団遺伝学的研究
植物自然集団に存在するDNAレベルの変異の量とパターンを集団遺伝学的に解析している。栽培植物の育種に
必要な遺伝資源の発掘・確保や栽培化の機構解明のために重要な情報を得られると考えている。コムギ・エギロプ
ス属、アブラナ科、イネ属、マメ科などを解析している。
■ キーワード
コムギ、
ライムギ、
オオムギ、染色体、ゲノム、分子細胞遺伝学、分子遺伝学、染色体工学、
メタゲノム、
メタトランスクリプトーム、土壌微生物
准教授 : 宮 下
直 彦 准教授 : 那 須 田
周 平
TEL:075-753-6145
E-mail:[email protected](那須田)
URL:http://www.plant-genetics.kais.kyoto-u.ac.jp/
54
応用生物科学専攻 栽培植物起源学分野
栽培植物起源学ってなに?
栽培植物起源学では、いろいろな栽培植物のルーツをさがす研究もしていますが、それだけではなく、栽培植
物とその近縁種を材料として、最先端の植物科学に取り組む分野です。植物の分子系統学や分子遺伝学の方法を
使い、栽培植物だけでなく近縁野生種の進化や、それらの持っている適応的な遺伝子についての研究、また植物
の系統進化にかかわる問題など、はば広い分野の研究を行っています。栽培植物では多くの研究手法が開発され
ているので、広く植物研究一般のモデルとなるような仕事が可能です。
栽培植物近縁野生種の多様性を探る
野生植物の多様性を、その分布全体にわたって研究することは、
生育地が広いとほとんど不可能です。私たちは、中央アジアを中心
に、トルコ東部から中国の西北部にかけて分布する、コムギの近縁
野生種(タルホコムギ)を使いこれに挑戦しています。この種は氷河
期のあと大きく分布を広げましたが、それには、早く花をつける性質
(早生)を獲得したことが、大きく貢献しました。
トルコでのコムギ近縁野生種の調査。
自家不和合性の遺伝子をとる
植物では、自分の花粉では受精できない「自家不和合性」という
現象が、広く知られています。ソバを材料として、その遺伝子を取り
出そうとしています。この遺伝子は、自分と自分以外を識別するとい
う点で、ある意味で動物の免疫系につながる働きをしていて、たい
へん興味深く、重要です。
ソバにはめしべの長い花(左)と短い花(右)がある。
栽培植物(作物)の起源を探る
いくつかの栽培植物ではDNAの変異を利用して、それがどのよ
うな野生型からどこで起源し、どのように伝播したかを研究してい
ます。これまで、エンマーコムギやダイコンなどの起源と伝播を明ら
かにしてきました。こうした研究は、栽培植物の改良に必要な遺伝
資源の収集や利用に、欠くことの出来ない情報を与えてくれます。
さまざまな色と形をしたダイコン。
■ キーワード
栽培植物、
近縁野生種、種分化、系統進化、分子進化学、分子遺伝学、遺伝資源、遺伝的多様性、
DNA、
染色体、
コムギ、
ソバ、
ダイコン、エギロプス
教 授 : 寺 内
良 平 助 教 : 安 井
康 夫
TEL:075-921-0652
E-mail:[email protected]
URL:http://www43.tok2.com/home/pgpinst
55
応用生物科学専攻 植物病理学分野
植物を病気から守るための植物病理学
植物病害防除のための基礎的研究として、植物 RNAウイルスの感染、増殖機構と植物病原糸状菌の病原性発
現機構を生化学的、遺伝学的、分子生物学的手法を用いて解析しています。ウイルスの研究では、タンパク質翻訳
と RNA 複製の制御機構、細胞間移行機構、病徴発現機構、植物のウイルス抵抗性機構をウイルス因子と宿主因
子の解析から明らかにしていきます。糸状菌の研究では、病原性に関わる遺伝子の同定と機能解析から、その感
染機構を明らかにするとともに、糸状菌に対する植物の非宿主抵抗性機構を解明していきます。
ウイルスが植物の抵抗性機構を打ち破り、
増殖する機構を明らかにする
ウイルスは、細胞の様々な装置を巧みに利用し、且つ細
胞の抵抗性反応を乗り越えて効率よく複製するためのあら
ゆる因子を持っている。右の図は、RNAサイレンシングと
呼ばれる抵抗性機構をウイルスが抑制できることを示して
いる。ウイルスと植物の攻防を分子レベルで明らかにする。
クラゲの蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を発現する植物は
RNAサイレンシングにより遺伝子の発現が抑制されるが
(右)、ウイルスが感染した場合は、RNAサイレンシングが
抑制され、蛍光が持続する
(左)。
ウイルスが植物体全体に広がり、
病徴を発現させる機構を明らかにする
ウイルスは、最初に感染した細胞で増殖した後、隣りの
細胞さらに維管束を通じて植物体全体に広がり、病徴を
誘起する。これらの過程に関与するウイルス側と植物側の
遺伝子、分子の同定を中心に機構を解析している。
GFP 遺伝子をもつ組み換えウイルスを接種した植物では、
細胞間移行を可視化出来る(左)。一部のウイルスは植物に
病徴を誘起せず潜在感染するが、病徴発現関連遺伝子をも
つ植物には激しい病徴を誘起し、枯死させる(右)。
病原糸状菌の感染機構、それに対する
植物側の抵抗性機構を明らかにする
ウリ類炭疽病菌は、ウリ科を病気にするが、アブラナ科
には感染できない。この抵抗性は非宿主抵抗性と呼ばれ
極めて強固である。糸状菌がどのように感染し、一方で植
物がその攻撃をいかに阻止しているかを解析している。
■ キーワード
アブラナ科炭疽病菌はシロイヌナズナ上において、黒褐色化し
た感染器官を形成し、その器官より侵入菌糸を形成する(左)
。
一方、ウリ類炭疽病菌は、感染器官は形成するが、シロイヌナ
ズナ組織内に侵入菌糸を形成することはできない(右)
。
ウイルス、
糸状菌、
タンパク質翻訳、RNA複製、細胞間移行、RNAサイレンシング、付着器、
抵抗性遺伝子、
非宿主抵抗性、タバコ、シロイヌナズナ
教 授 : 高 野
義 孝 准教授 : 三 瀬
和 之 助 教 : 海 道
真 典
TEL:075-753-6131
E-mail:[email protected]
URL:http://www.plant-pathology.kais.kyoto-u.ac.jp/
56
応用生物科学専攻 昆虫生態学分野
昆虫の生態から生物進化の力学を探る
私たち地球上の生物は、どのような進化の力学の下にあるのか?昆虫の種数は全生物種の 3 分の 2 を占めて
おり、この地球上で最も繁栄している生物群である。当分野では、昆虫類を対象にして、フィールド調査や行動実
験、数理解析といったマクロの手法から遺伝子解析や化学分析などミクロの手法まであらゆるツールを駆使して、
その生態の解明と進化の謎解きに挑んでいる。
シロアリの繁殖システムの進化
近年、アリやハチ、シロアリなど社会性昆虫の生態や進化に関する研究が大きな発展期にある。私たちの研究チー
ムは、シロアリの女王が単為生殖と有性生殖を使い分けており、後継の女王の生産は単為生殖、一方、ワーカーや羽
蟻の生産は有性生殖で行っているという、驚くべき繁殖の実態を明らかにした。多様な繁殖生態の解明と、進化力学
の解明に多角的アプローチで取り組んでいる。
昆虫の多様な生活史戦略
カメムシ類、ウスバシロチョウ、ヒシバッタ、イラガ、オオハリアリ等を材料
として、生息場所の時間的・空間的異質性に対応した生活史戦略、特に移
動性や休眠性、寄主利用、捕食・寄生回避といった重要な生活史形質の適
応的意義や進化について研究を行っている。
これからの昆虫生態学の展望
おそらく次の 20 年が昆虫生態学の最も面白い時代になるだろう。かつて
理論的解釈にとどまっていた謎も、分析技術の急速な発展により、具体的
なメカニズムまで特定できるようになった。特に多様な繁殖システムの進化
における遺伝子レベルの対立については、魅力的な仮説が検証可能な段階
に入った。熟練したフィールドワークで現場から新たな発見の種を拾い上げ、
私たちの研究チームにしかできない独創性の高い研究を展開していきたい。
■ キーワード
進化生態学、
社会生物学、応用昆虫学、群集生態学、個体群生態学
昆虫、
進化、
害虫管理、
フェロモン、社会性昆虫、種間関係、生活史戦略
教 授 : 助 教 : 土 畑
重 人
TEL:075-753-6136
E-mail:[email protected]
URL:http://www.insecteco.kais.kyoto-u.ac.jp/
57
応用生物科学専攻 昆虫生理学分野
昆虫の行動のしくみを探る
昆虫はシンプルな構造にもかかわらず、洗練された行動で外界と関わっている。我々ヒトの脳の100 万分の1
の数の神経細胞からなる小さな脳で、反射や本能行動、さらには学習行動までもこなしてしまう。昆虫の行動に
は、一見すると我々とあまり変わらないものから、昆虫の不思議に数えられるものまで含まれている。しかし、そ
のどれをとっても我々とは違ったやり方でおこなっているらしい。本分野では,昆虫がさまざまな情報を受けて行
動にどのように反映させているのか、その独特な感覚と情報処理系、さらに運動出力についてのメカニズムを明
らかにする研究をおこなっている。
昆虫が環境中の情報を利用して、
資源にたどり着く方法を明らかにする
昆虫が餌や配偶者などの資源を探索する時、感覚情報の種類に応じた独
特な行動プログラムでその情報を利用する。もしも仮想現実の環境世界で、
虫を騙して首尾よくゴールに誘導できたならば、その行動プログラムが実際
に使われていることを証明できる。自動で床面を動かして昆虫を常に一点に
留める装置を使って、匂いや風、照明など環境情報を時間的・空間的にコン
トロールしながら、昆虫の行動応答を解析している。
サーボスフェア上の昆虫の仮想現実。
昆虫が情報交換に使う化学物質を明らかにする
昆虫が仲間との交信に使う集合フェロモンを中心に、情報化学物質の研
究を、発足以来行ってきた。極微量で行動をコントロールするフェロモンの
分離精製と構造の解明を、行動試験と電気生理を含む生物試験と化学分
析・分光分析で行なっている。昆虫はまた一般臭を学習する。学習した匂
いによる行動の制御について、研究を進めている。
ゴキブリの脳と匂い刺激装置。
昆虫が受けるシグナルと環境情報の分析
匂いのほか、振動や音のシグナルについても、波形解析にも
とづく合成音への応答から情報の実体を明らかにして、信号の
進化を探ろうとしている。
昆虫の行動のしくみを探る基礎研究は、効果的な害虫管理の
ほか、昆虫の行動を模倣したバイオロボティクスにもつながって
いる。
タイワンエンマコオロギ♂
自然音(上)
パルス間隔の短い合成音(下)
■ キーワード
昆虫の行動、
情報化学物質、フェロモン、シグナル、神経行動学、バイオロボティクス、記憶と学習
教 授 : 大 門
高 明 助 教 : 福 井
昌 夫
TEL:075-753-6308
URL:http://www.insectphysiology.kais.kyoto-u.ac.jp/
58
応用生物科学専攻 動物遺伝育種学分野
資源動物の遺伝現象を解析・解明し
育種改良と保全につなげます
資源動物の多様な有用機能と生産物の利用は、人類の生存と生活にとって必要不可欠であり、われわれは多く
の動物によって支えられています。本分野では、統計遺伝学的手法および分子遺伝学的手法により、種々の動物
遺伝現象を解きほぐす基礎研究から、育種改良の実際に係る応用研究にいたるまで、広範多岐にわたる遺伝育種
研究を展開しています。
また、希少動物の保全と保護増殖、地球温暖化と野生動物の適応小進化など、多様な研究に取り組んでいます。
動物の遺伝現象の解析と解明
有用遺伝子の探索・同定・機能解析を行い、形質発現の分
子機能と遺伝子ネットワークの解明を進めている。資源動物に
おいても全ゲノムのシーケンスが進んでいる。また、QTL(量的
形質遺伝子座)解析は新しい段階に入り、有用形質の遺伝的解
剖は非常に面白くなってきている。
有用形質の遺伝的解剖
資源動物の育種改良の推進
例えば、和牛は、日本人が長い年月をかけて改良し、作出してきた唯
一の在来大家畜であり、良質のタンパク質を生産する世界の遺伝資源
である。様々な遺伝学的手法により、和牛を含む種々の資源動物の有
用形質を評価し、改良を推進するための研究を行っている。
希少動物の遺伝的多様性の評価
国際保護鳥トキの増殖と試験放鳥が国家的プロジェクトとして進めら
れている。トキ保存集団の遺伝的多様性の情報は、プロジェクトを推進
していく上で非常に重要な情報である。トキのDNAマーカーを開発す
るとともに、MHC遺伝子による個体分類などにも取り組んでいる。
佐渡トキ保護センター提供
■ キーワード
量的形質、
質的形質、
遺伝子ネットワーク、遺伝子効果、DNA解析、QTL(量的形質遺伝子座)
解析、
遺伝的解剖、
ゲノム評価、DNAマーカー選抜、ゲノム選抜、SNP(一塩基多型)、育種改良、
和牛、
能力評価システム、
遺伝的多様性、希少動物、動物保全
教 授 : 助 教 : 谷 口
幸 雄・松 田
洋 和
TEL:075-753-6322
E-mail:[email protected]
URL:http://www.jkaabs.kais.kyoto-u.ac.jp/
59
応用生物科学専攻 生殖生物学分野
生殖細胞の発生生物学と発生工学
家畜を含む、哺乳動物の増殖に関わる現象のなかで、特に受精から着床に至る胚発生の制御メカニズムの解明
と、精子や卵などを形成する生殖幹細胞の分化と増殖、体細胞などの分化細胞の脱分化とリプログラミングの機
構解明と動物生産への応用に関する研究を進めている。
哺乳動物卵子の発生と分化
実験動物ならびに家畜卵子の体外受精と体外培養系を確立し、それに
よって卵子の発生と分化の調節機構を解明する。主に、
(1)ウシ体外受精
卵の発生を調節する卵胞細胞とのコミュニケーションについて分子レベルで
解析を行っている。
(2)マウス胚の初期発生と分化に作用する因子および胚
ゲノムの発現について分子細胞生物学的解析を行っている。
受精後 4 日目のマウス胚盤胞期胚
クローン動物とリプログラミング
核移植技術を用いることによって、分化した体細胞から個体の再構成が
可能になった。しかし、分化細胞がどのようにして分化全能性を再獲得す
るのかについては不明である。クローン個体形成過程の分化細胞のリプロ
グラミング機構について、細胞生物学的、分子生物学的手法を用いて検討
している。
体細胞クローンミニブタ
多能性幹細胞株の樹立と細胞分化の制御技術の開発
ほ乳動物の幹細胞から多分化能を有する未分
化幹細胞株を効率よく樹立する手法を開発し、こ
れらの細胞から個体・組織を再構成するための細
胞分化制御機構および遺伝子組換え動物作出の
ための技術開発を行い、家畜の改良などへの応用
をめざしている。
■ キーワード
ブタの iPS 細胞株
ウシ精巣中の精原幹細胞
ほ乳動物、
家畜、
受精、
体外受精、体外培養、初期発生、胚ゲノムの活性化、リプログラミング、
クローン、
核移植、
卵成熟、精子成熟、精子形成、細胞分化、多能性細胞、ES細胞、iPS細胞、
遺伝子組換え動物、
生殖細胞、エピジェネティックス
教 授 : 今 井 裕 准教授 : 山 田
雅 保・南
直 治 郎
TEL:075-753-6057
E-mail:imai@kais.kyoto-u.ac.jp
URL:http://www.reprod.kais.kyoto-u.ac.jp/index.htm
60
応用生物科学専攻 動物栄養科学分野
QOL向上に向けた基礎栄養科学の確立
動物にとって、外部から栄養素を毎日摂取し続けることが必要です。また、高い QOLを考える上で、栄養素の
慢性的な過不足は避ける必要があります。そのためには、1)栄養素の過不足を検知し、2)栄養素の過不足な状
態に対して、動物はどのように対応するかを知った上で、3)理想的食餌の量や質の決定がなされます。本分野で
は、QOL 向上に向けた基礎栄養科学の確立を向けた研究を展開しています。
栄養素の過不足の検出
栄養素には糖質、タンパク質、脂質の三大栄養素だけではなく、ビタ
ミン、ミネラルといった微量栄養素があります。摂取した三大栄養素は、
細胞内で低分子化合物に代謝されます。したがって、細胞内の低分子
化合物の変化を網羅的に解析することにより、三大栄養素の過不足を
検討しています。また、ミネラルの過不足は、網羅的にミネラルを測定す
るメタローム解析により検出しています。
栄養素の過不足に対する防御機構の解明
栄養素の過不足がある食餌を摂取しても、動物は直ちに病気にな
るわけではありません。動物には、栄養素の過不足に応じて対応する
機構が備わっていますが、その詳細はあまりよく分かっていません。
マグネシウム欠乏食を摂取した動物を例にとって、動物(細胞)のマグ
ネシウム欠乏認識、ならびに、細胞内情報伝達系の適応的変化を検
討することにより、栄養素の過不足に対する防御法の解明を目指して
います。
理想的食餌の量・質の決定
ヒトとは異なり、ペットや産業動物は、同じ食餌を続けて摂取する
場合が多いので、食餌中に含まれる栄養素の過不足は、健康状態に
より重大な影響を与えます。血中濃度ならびに被毛中濃度を測定する
ことにより、理想的食餌組成の提案を試みています。
■ キーワード
QOL、
動物生産、
メタローム、メタボローム、局所因子、ビタミン
教 授 : 松 井
徹 准教授 : 舟 場
正 幸 助 教 : 友 永
省 三
TEL:075-753-6056
E-mail:[email protected]
URL:http://www.jnutr.kais.kyoto-u.ac.jp/
61
応用生物科学専攻 生体機構学分野
哺乳動物の生理機能を解明する
21世紀になって世界的な環境問題である地球温暖化や環境ホルモンによる環境汚染などが、私たちの生活だ
けでなく、家畜の健康や生産性にも多大な影響を及ぼしています。生体機構学分野では、環境要因と動物・家畜
の生理・免疫・生殖機能の関係を遺伝子・細胞・組織・生体レベルで解明し、機能性成分などを活用して動物の
健康維持と家畜の生産性向上に貢献できる研究を行っています。
高機能性成分を活用した動物の生理・免疫・生殖機能の改善
動物は環境の変化によって、生理・免疫・生殖機能に異常をきたすこ
とがあります。そこで、食品や飼料中に含有される機能性成分を活用し
て、哺乳動物の生体機能に及ぼす効果を生化学的、病理組織学的およ
び分子生物学的手法で解析しています。主なテーマは、カロテノイドによ
る新生児の腸管免疫改善法の開発、妊娠・泌乳マウスのミネラル代謝の
改善、免疫機能に対する植物エストロゲンの効果、アスタキサンチンによ
るウシ初期胚の暑熱ストレス緩解効果などです。
カロテノイドによるlgA産生の効果。
環境に配慮した乳牛・肉牛の飼養管理システムの開発
牛は人間の利用できない草から栄養価の高い牛乳や牛肉を生産しま
すが、一方で地球温暖化の一因となるメタンや水質汚染源となる窒素、
リンなどを排泄します。そこで、乳牛・肉牛の代謝に及ぼす暑熱ストレ
ス等の影響を生化学的、栄養生理学的な方法で解明し、自給粗飼料を
活用した環境保全型乳牛・肉牛飼養システム、高温時における乳牛・
乳牛の栄養状態を評価する。
肉牛の生産性改善と水資源の有効活用法等、環境に配慮した飼養管
理システムの開発を行っています。
哺乳動物の生殖機能を支える因子の解析と繁殖性改善技術の開発
現在、家畜が高能力化する一方で、繁殖効率の低下が家畜の生産性
向上を阻害しています。そこで、哺乳動物の生殖機能に関与する因子を
解析し、繁殖性の改善ならびに繁殖障害の回避法を開発しています。
主なテーマは、卵巣形成・機能に関与する因子の解析と卵母細胞保存・
ウシ初期胚のメチオニン代謝
発育促進法の開発、哺乳動物着床前胚の発生と分化に及ぼす環境因
ウシ受精卵におけるメチオニンの代謝酵素(MAT)の
発現(左、緑色)。MATを阻害する(右上)と、対照(右
下)に見られる胚盤胞(腔を形成した胚)への発生が著
しく抑制される。メチオニンは初期胚の発生・分化に
おいて重要な役割を担う栄養素の一つである。
子の影響の解析などです。
■ キーワード
哺乳動物、
マウス、
乳牛、肉牛、生理機能、免疫機能、生殖機能、環境
教 授 : 久 米
新 一 助 教 : 杉 本
実 紀・池 田
俊 太 郎
TEL:075-753-6324
E-mail:[email protected]
URL:http://www.j-seitai.kais.kyoto-u.ac.jp
62
応用生物科学専攻 畜産資源学分野
日本と世界の資源動物からの食料生産を探求する
資源動物からの食料生産は、自然条件のみならず、社会的・経済的条件と結びついて、多種多様な形態で営ま
れています。本研究分野では従来の実験的手法や調査研究に加えて、システム分析、生物統計学、GPS
(汎地球
測位システム)やGIS
(地理情報システム)などの新しい分析ツールを積極的に活用し、既存の生物学分野から経
済学、農村社会学、文化人類学までの学際的総合研究の幅広い視点から、日本と世界のさまざまな生産システム
の実態とそのメリット・デメリットを調べ、畜産を含む農業全般に関する食糧問題や環境問題を解決するための
研究を行っています。また、本研究分野では、21世紀の環境保全型畜産を目指して、未利用資源や副産物を用い
て資源循環型の畜産技術開発を図ったり、日本と世界各地の伝統的な耕畜連携複合畜産のメリットを再評価しよ
うと試みています。
日本の資源循環型複合生産の検討
日本の中山間地域では、今も稲わらや野草を牛の飼料とし
て利用し、そのふん尿は田畑に肥料として還元されている。
また、沖縄や西南諸島では、さとうきびと肉牛との統合生産
が一般的に見られる。さとうきびの葉の部分(トップ)は飼
料として、また糖液の絞り粕(バガス)は敷料として利用され
ている。このような生産システムが研究の対象である。
調査農家における窒素の利用状況(肥育牛10 頭規模)。
資源として重要な家畜飼料資源の探索
世界には、いまも貴重な遺伝資源としての家畜が小規模飼育さ
れている。それらの特性を調べ、現地の未利用資源等を利用し
た飼養管理方法を検討し、保全計画や予算配分の策定を行う。
耕作放棄地での
GPS を用いた放牧牛行動調査研究。
アジアの複合生産システムの研究
アジアの多くの国々ではいまも牛や水牛が乳用、肉
用、耕作用などさまざまな用途で利用されている。ま
た、ヤギは乳用、肉用、まさかの時の生きた蓄財とし
て庭先で飼育されている。このようなアジアの有畜複
合システムの実態とその中の資源循環を調査する。
■ キーワード
ネパールタライ地域での
水牛飼養。
南タイにおける在来種ヤギ。
ウシ、
スイギュウ、
ヒツジ、ヤギ、複合生産、在来家畜、元素循環、環境保全型畜産、未利用資源の飼料化、
放牧、
栄養学、
草地学、
遺伝育種学、システム科学、情報科学、ミートサイエンス
教 授 : 廣 岡
博 之 准教授 : 熊 谷 元 助 教 : 大 石
風 人
TEL:075-753-6365
E-mail:[email protected]
URL:http://www.animprod.kais.kyoto-u.ac.jp
63
応用生物科学専攻 海洋生物環境学分野
海洋生物の生態と環境を探る
海洋生物とそれを取り巻く生物・物理・化学的環境に関する研究分野です。海洋生物の生態を直接計測するバ
イオロギング・バイオテレメトリーの手法や受動的音響観察手法を開発・応用する研究、海洋における生物資源を
生み出す海の仕組みを明らかにし、それをモデル化することで、海洋生態系の豊かさを維持する手法・方策の研
究などを行っています。
バイオロギング・バイオテレメトリーおよび
受動的音響観察による水圏生物の生態解明
マイクロデータロガーや超音波発信機、音響記録計などの情報機器を
利用した水圏生物の生態解析、ならびにこれらの機器開発を行う。研究
目的は生物の「いつ、どこで、なにを、どれくらい」を明らかにすること。小
型魚類から大型哺乳類まで幅広い海洋生物を対象とする。
現在、国内外のフィールドにおいてニホンウナギ、クロマグロ、ヒメマス、
スズキ仔稚魚、イセエビ、オウムガイ、メコンオオナマズやアマゾン川の魚
類ならびにジュゴンやイルカなどの海産哺乳類の行動生態研究を実施。
水圏生物に対する人為的な影響の評価(環境アセスメント)
音響記録計などの情報機器を用いて、建設や騒音などの人為的な要因
が水圏生物に与える影響の評価に取り組んでいる。現在、主な対象種は、
生態系ピラミッド構造すなわち食物連鎖の頂点の消費者(アンブレラ種)
であるイルカ、ジュゴンなどの水棲大型動物。
豊かな生物資源を生み出す海の仕組みの解明
太平洋側・日本海側の沿岸域でフィールド調査を実施して陸棚海域か
ら海岸部までの領域における炭素・窒素・リンのフローの解明、ならびに
豊かな海を維持する環境管理に使用できるツールの開発を行っている。
現在、河川水・地下水等の海岸線からの淡水流入が、海の生態系に及
ぼす影響を定量的に評価して、陸と海のつながりを解明する研究に取り
組んでいる。
■ キーワード
研究対象。上から、ヒメマス、ジュゴン、
シナウスイロイルカ、瀬戸内海
バイオロギング、
バイオテレメトリー、フィールド調査、沿岸性魚類、海産哺乳類、音響解析、
環境影響評価、
海洋環境、海洋生態系、生物資源、数値シミュレーション
教 授 : 荒 井
修 亮 准教授 : 市 川
特定研究員 : 木 村
64
里 子
光 太 郎 助 教 : 小 林
志 保
TEL:075-753-6215
E-mail:[email protected]
URL:http://www.butsuri.marine.kais.kyoto-u.ac.jp/
応用生物科学専攻 海洋生物増殖学分野
魚類の生理・生態・系統
海洋の多様な生物資源を持続的に利用するためには、そこに生息する生物に関する基礎知見の集積が不可欠
となる。当研究室では、主に魚類を研究対象に、生理、生活史、系統分類などのテーマを生きものと環境との関
係という視点より解析し、海洋の多様な生態系を維持しながら資源の有効な増殖的利用に貢献することを目標に
研究を進めている。
魚類変態のホルモン調節機構
カエルと同様に魚にも、幼生の形から親の形へ
と大きく形が変化(変態)するものがある。例えば
ヒラメやカレイは体の左右が最も異なる動物である
が、左右対称な仔魚(幼生)から変態期にどのよう
にして左右が異なった形に作り変えられるかを、内
分泌学的・個体生理学的な手法を用いて研究して
いる。
魚類仔稚魚の生態・遺伝学的研究
魚類増殖の基礎となる、各種の初期生活
史や個体群構造等の研究を水産重要種に
ついて行っている。また、川と海を行き来す
る魚類や河口域を成育場とする魚類の生態・
遺伝的研究を通して河口域の機能解明を目
指している。
有明海特産種 エツ
飼育によるヒラメ成長試験
魚類の系統分類学
分類学は生物多様性の単位である分類群の輪郭を研究し、系統学は生物の進化を基礎にして分類群間の系統関
係(由来)を追求する。系統分類学は、これらふたつの学問領域を総合し、生物多様性を階層性で示した分類体系
として表現する。当分野では、京都大学総合博物館所蔵の魚類標本コレクションを基礎とし、比較形態と分子解析
によって海産魚類の分類学、系統学、系統分類学、ひいては生物地理学の研究を行っている。現在は主に対馬暖流
域、黒潮流域沿岸の魚類を対象としている。
■ キーワード
変態、
ホルモン、
個体生理学、初期生活史、個体群構造、有明海、河口域、系統分類、比較形態、
新種、
地理的変異、
進化
准教授 : 田 川
正 朋 助教 : 中 山
耕 至 TEL:075-753-6221
E-mail:zoshoku@kais.kyoto-u.ac.jp
URL:http://www.stock-enhancement.marine.kais.kyoto-u.ac.jp/
65
応用生物科学専攻 海洋分子微生物学分野
海洋微生物は地球ブランド生物の起源
生命の起源とされる海洋は地球表面積の7 割を占め、生物量の豊富さと多様性は地上をしのぐものの深海熱
水孔から沿岸域に至るまで、生物資源の探索・研究が極一部に限られているのが現状です。海洋環境は未知微生
物生態系と人類に有用な海洋微生物や遺伝子資源を豊富に有しています。私たちはこうした水圏微生物が各々
の環境下でどのような戦略を用いて生存しているのか、ウイルスとの相互作用がゲノム進化にどのように影響する
のかといった課題を、主として微生物学、分子生物学、ゲノム科学、バイオインフォマティクス、生化学的方法論を
駆使して解析を行っています。また、水圏環境から未知の特徴をもつ微生物・ウイルスを探索し、それらの新規な
遺伝子資源をバイオ産業に応用することもめざしています。
(1)海洋熱水環境からの新規超好熱菌の
分離と未知代謝系の解明
熱水環境から一酸化炭素
(CO)を資化して水素を生成する
好熱性 CO 資化菌を中心に、新規
(超)好熱菌を分離しその
性状を解析すると同時に、最新のオーミックス解析を用いて、
これらの生息環境の未知の代謝系を解明します。この知見を
フィードバックさせ、CO 代謝のカギとなる CO デヒドロゲナー
ゼの機能解析と合わせて次世代型水素生成技術開発に取り
組みます。
(2)超好熱古細菌のゲノム進化とウイルス
80℃以上で増殖する超好熱古細菌は特殊環境に適応し、ゲ
ノムを縮小化させています。このように不必要な遺伝子を脱落
させつつも、その種内にはゲノム多様性が認められ、その多く
はウイルスに由来します。熱水環境から多くの古細菌・ウイル
スを分離して、この共進化によるゲノム多様化過程を明らかに
します。
(3)ウイルス-微生物相互作用とゲノム進化
海洋には細菌やラン藻が普遍的に分布しています。さらにそ
の数で大きくしのぐほぼ未知ウイルス群集は、微生物への感
染を通じて、地球規模での物質循環過程や宿主微生物の遺
伝的多様性に大きな影響を及ぼすと考えられています。高度な
ゲノム解析を通して、未知ウイルス群集の地球科学的・進化学
的機能を解明します。
(4)ウイルスの生理・生態と有用遺伝子資源の開発
ラン藻ウイルスはラン藻が有する光合成能を効率よく活用して感染・増殖します。ウイルスが有する宿主の光合成利用の
分子メカニズムを解明し、ラン藻が有する高い光合成活性と組み合わせて、次世代光発酵技術への応用を目指します。
■ キーワード
海洋微生物、
ゲノム解析、メタゲノム、バイオインフォマティクス、超好熱菌、古細菌、極限酵素、
COデヒドロゲナーゼ、一酸化炭素資化、ラン藻、アオコ、シアノバクテリア、シアノファージ、
CRISPR
教 授 : 左 子
芳 彦 准教授 : 吉 田
天 士 TEL:075-753-6217
E-mail:[email protected][email protected]
URL:http://www.microbiology.marine.kais.kyoto-u.ac.jp/
66
応用生物科学専攻 海洋環境微生物学分野
微生物でモノ作り
微細藻類は、脂肪燃焼促進や抗酸化作用を持つ機能性物質カロテノイドを生産することから、機能性食品や
化粧品の原料として利用されています。さらに、カーボンニュートラルで再生可能な第三世代バイオ燃料(脂質・
炭化水素)生産微生物として、低炭素社会を目指した研究開発が進められています。当研究室では、
「マイクロバ
イオファクトリー」の創成を目指し、微生物の働きを利用した有用物質生産に関する研究を行っています。また、
世界各地の深海底熱水活動域をはじめとする海洋の極限環境を研究対象とし、
「地球を食べる」微生物の生理
生態や進化をモデルに海洋生命圏を総合的に理解するための研究を行っています。
微細藻類による有用物質生産に関する研究
珪藻は、脂肪燃焼促進作用を持つカロテノイド(フコキサンチン)や高
度不飽和脂肪酸を生産します。また、緑藻ヘマトコッカスは、抗酸化作用
の強いカロテノイド(アスタキサンチン)を生産・蓄積し、機能性食品・化
粧品等の原料として利用されています。遺伝子操作技術を用いた分子育
種により、微細藻類のカロテノイドや脂質の生産性を向上させる研究を進
海産珪藻
フェオダクチラム
めています。
緑藻ヘマトコッカス
海洋性菌類・メタン生成菌に関する研究
菌類(糸状菌・酵母)は、醸造やセルラーゼ等の生産微生物として、広
く産業利用されています。あまり探索の進んでいない海洋環境から、有用
物質を生産する新奇菌類を探索し、メロン香を産生する酵母を単離しま
した。また、海洋環境におけるメタン生成菌の役割を、微細藻類バイオマ
スとの関係を中心に研究しています。
メロン香産生海洋性酵母
極限環境に棲息する微生物の生理・生態に関する研究
深海や深部海底下には、極めて豊かでユニークな生態系が存在しま
す。特殊な培養法やゲノミクス・グライコミクスといった分子生物学的手
法を駆使し、現場に生息する(微)生物の生理・生態・進化を分子レベ
ルで理解し、その特殊能力を人類の生活に役立てるための研究を進めて
潜水艇「しんかい 6500」
います。
■ キーワード
微細藻類、
カロテノイド、遺伝子操作、バイオ燃料、有用物質生産、菌類、メタン生成菌、
深海底熱水活動域、
共生、化学合成、生物間相互作用、極限環境
教 授 : 澤 山
茂 樹 准教授 : 中 川 聡 助 教 : 未 定
TEL:075-753-6356
E-mail:[email protected]
URL:http://www.kanbi.marine.kais.kyoto-u.ac.jp/index.html
67
応用生物科学専攻 海洋生物生産利用学分野
海洋生物の機能分子を有効利用する
広大な海洋の多様な藻類や無脊椎動物、微生物から健康維持や生活の質の向上に役立つ機能性物質について
探求しています。具体的には、細胞生物学や分子生物学等、マリンバイオの先端技術を駆使して機能性成分の探
索、機能発現機構解明、機能性成分の消化吸収機構解明等を行っています。機能性探索には国際的、学際的な協
力が不可欠なことから、国内外の大学や企業との協力プロジェクトを立ち上げるとともに、インド、中国、タイな
ど世界各国からの留学生を受け入れて研究を進めています。
海洋生物からアレルギー、血管新生抑制、肥満、皮膚保全等々に有効性が期待できる様々な機能性物質を見いだ
し、その機能発現のメカニズムを明らかにしている。
海藻の色素(カロテノイド)が肥満を抑制できる!?
A
B
培養した脂肪細胞に含まれる油滴を赤く染色したもの。Aは無処
置、Bは海藻の色素で処理。海藻の色素は、細胞に中性脂肪が蓄積
することを防ぐ働きがあることがわかった。
皮膚のシワ形成を水産物の成分を食べて防ぐ!?
紫外線は皮膚の老化
(シワ形成、保水性低下など)を促進すること
A
B
が知られている。Aは未処理、Bは紫外線を10 週間浴びたヘアレス
マウスの皮膚の様子。Bは紫外線によって明らかなシワが形成されて
いる。水産物に含まれる成分に、シワを抑制するものが見つかった。
■ キーワード
機能性物質、
食品機能、カロテノイド、スフィンゴ脂質、高度不飽和脂肪酸、消化吸収
教 授 : 菅 原
達 也 助 教 : 真 鍋
祐 樹
TEL:075-753-6212
E-mail:[email protected]
URL:http://www.bioproducts.marine.kais.kyoto-u.ac.jp/
68
応用生物科学専攻 海洋生物機能学分野
水生生物のパワーを引き出せ!
生命は海で生まれ、海の中には今なお多くの生物が生息しています。しかし、海中の生物の多くが、手付かずの
生物資源として残されています。この海洋生物には陸上生物にはない様々な特異機能(スーパーパワー)が眠って
いることが期待されています。私たちは「フィールドでの生物採集、生態・個体レベルの解析」から「実験室での
分子レベルでの解析」さらに「水産業や人の健康増進に至る応用技術の開発」までの様々な観点から海洋生物に
潜む未知の機能を分子レベルで明らかにし、人類の生活に役立てるための研究を行っています。
海洋生物の機能と海洋生態系に学ぶ
たとえば貝殻の形成メカニズムを明らかにすることでナノテクノロ
ジーに応用可能な技術を、海藻の重金属蓄積のメカニズムを明らか
にすることで環境水の重金属除去・濃縮技術を開発しています。ま
た、干潟の水質浄化機構を参考に新規な水質浄化材の開発にも取
り組んでいます。
新規機能性食品の開発
森と海を結ぶ干潟生態系の炭素循環機能。
海洋生物は栄養成分の補給源としても大きな役割を果たしてい
ます。さらに栄養素としての機能では説明できない生理機能を持つ
ことも明らかになってきています。我々は、海洋生物由来のどのよう
な成分が人の健康増進にどのように働くかを解明しています。これ
らの研究を通し、食を通じた健康増進の実現と、病態を改善する
新しい食品の開発を目指しています。
活性成分の同定
ゲノム編集・遺伝子改変技術でモデル生物を作出
思い通りのゲノム改変や遺伝子発現制御技術の開発を進
め、この技術を使って、基礎科学、応用科学、水産業に役立
つモデル魚類を作ります。主に、メダカを使って基礎研究とヒ
ト疾患モデルの作出を行い、マダイを使って養殖魚の「スピー
ド育種」法の開発を行っています。
左:野生型メダカ胚。
中央:ゲノム編集技術で黒色色素を無くしたメダカ胚。
右:ゲノム編集技術で筋肉量を増加させたマダイ。
■ キーワード
水環境評価、
ゲノム編集、メダカ、マダイ、モデル生物、機能性食品
教 授 : 佐 藤
健 司 准教授 : 豊 原
治 彦 助 教 : 木 下
政 人
TEL:075-753-6446
E-mail:[email protected]
URL:http://www.mbf.marine.kais.kyoto-u.ac.jp
69
応用生物科学専攻 里海生態保全学分野
森から海までの生態学
里海生態保全学分野は、フィールド科学教育研究センター舞鶴水産実験所に所属する農学研究科の協力分野
です。水産重要魚介類を中心に、生き残り、成長、行動、系統分類などについて、初期生活史に焦点を当てて多様
な視点から研究を進めています。また、森林や里の環境と人間活動が、河川、河口、沿岸域の水圏生物の生産と
多様性に与える影響を研究しています。陸域の生態系が劣化し、森から海までの健全なつながりが分断されたた
めに、海の生態系がおかしくなっているという仮説を検証し、そのメカニズムの解明をめざします。
水圏生物は森を食べているか
炭素と窒素の安定同位体比により、河川や沿岸域に棲む水
圏生物が何を食べているかを知ることができます。また、川や
海の水中懸濁物の起源(陸上植物、植物プランクトン、底生付
着藻など)を調べることもできます。川に暮らす生物の多くは森
林由来有機物を食べていますが、海の生物は木の葉などのま
ずくて消化しにくいものは、食べないことがわかってきました。
由良川での調査(左)と、調査で採集されたスズキの稚魚(右)。
河口はスズキ稚魚の重要な成育場。
魚類心理学
魚類心理学研究では、魚の行動や生態に関する諸々の疑問を明らかに
することを目指します。魚はなぜ群れを作るのか、魚はどれほど賢いか、魚
は夜眠るのか、環境や捕食者にどのように反応するのか、などのテーマに
取り組んでいます。
エチゼンクラゲの触手に寄りつく
マアジの稚魚。
魚類の多様性を探求する
地球上には約 25,000 種もの魚類が生息しており、日本でも約 4,000 種
が見られます。魚類は、形態的・生態的な多様性に富んでおり、様々な環
境の水域に巧みに適応しています。日本海をメインフィールドに、
「種多様
性」とその「歴史」を探求する系統・分類学的研究を行っています。
北太平洋の深 海に生 息する
ザラビクニンと
その分子ネットワーク樹。
■ キーワード
水圏生物、
魚類、
初期生態、生活史、生物生産力、生物多様性、行動、環境、森里海連環学、海洋学、
生態学、
魚類心理学、
系統・分類学
教 授 : 山 下 洋 准教授 : 益 田
玲 爾 助 教 : 甲 斐
嘉 晃・鈴 木
啓 太
TEL:075-753-6410
E-mail:[email protected]
URL:http://www.maizuru.marine.kais.kyoto-u.ac.jp/
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