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大規模仮想ディスクを用いた W eb ストレージ

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大規模仮想ディスクを用いた W eb ストレージ
「マルチメディア通信と分散処理ワークショップj
平成20年 12 月
大規模仮想ディスクを用いた W e b ストレージ
チャイエリアント
上原稔
東洋大学大学院工学研究科情報システム専攻
今日、大量のデータが氾濫している。そのデータを蓄積することが 1 つの課題になっているロ現在
の普及品の H D D は安価であるにもかかわらず、ストレージシステムは高価であるロそこで、我々は
安価な普及品とソフトウェアだけで大規模ストレージを構築するために VLSD(Virtual Large-Scale
Disk) ツーノレキットを開発した。また、これを用いて P C の空き容量を集積し、大規模ストレージを試
作した。従来の V L S D は組織内で大規模ストレージを構築することを目的としていた。しかし、よ
り大きなストレージを構築するには 1 つの組織で、は困難で、ある。そこで、インターネットを経由し
て大規模ストレージを構築するために、 W e b ストレージを開発した。本論文では、試作した W e b ス
トレージの実装と評価について述べる。
A W e b Storage using Virtual Large-Scale Disks
Erianto Chai
Minoru Uehara
T o y o U凶versity Graduate School,
D e pt
. of O p e n Information System
Today,
massive da旬 is f1ooding. One of major issues is ωstore massive da'飽. Recent1y ,
although commodity
H D D is very cheep,
appliance storage system is very expensive. So,
w e developed V L S D ( Virtual Large-Scale
Disk) toolkit in order to cons飢 lct a large-scale storage using only cheep comrnodity hardware and so食ware. A nd
w e also developed a prototype of large-scale storage system by collecting 企'ee disk spaces ofPCs using VLSD.
Conventional V L S D aims to develop a large-scale storage in local network. However,
it is hard to develop larger
scale storage 曲an conventional storage if only local resources are available. So,
w e have developed a prototype
of W e b storage in order to realize larger scale storage via Inteme.
t In由is paper,
w e describe the W e b storage
and evaluate it
.
1
はじめに
近年、ストレージサービスに対する要求が高
まっている。
従来のアプリケーションでは、データを共有
するためにデータベースを用いていた。しかし、
近年 W e b サービスが普及するにつれ、 S O A ベー
スのアプリケーションが増えてきた。これらの
アプリケーションでは、異なるベンダーから提
供されるサービスを組み合わせるマッシュアッ
プが行われる。このようなアプリケーションで
は、インターフェースを W e b サービスで統合す
るため、ストレージサービスを利用する必要が
ある。ストレージの W e b サービスはA mazon な
どが提供している。
YouTube やニコニコ動画などの動画投稿サイ
トはマスコミュニケーションを補完するジャー
ナリズムとして定着すると予想される。 U S A で
は、大統領選にも利用されている。このような
サイトでは、多くの動画を保管するために大容
量のストレージを必要としている。
ライフログでは、人のあらゆる活動を記録す
る。そのためには一人当たり数 T B 以上の容量
を必要とする。
企業は内部統制のためにログを保管する必要
がある。企業の所有する全 P C から集められた
ログは膨大である。これを効率的に管理するた
め、情報ライフサイクル管理に基づく 3 階層ス
トレージが使用される。
このようなストレージサービスに対する要求
は H D D 技術の進歩を促した。その結果、安価
で大容量なディスクが入手可能となった。しか
し、アプライアンス系のファイノレサーバで使用
している H D D はその普及品より 10 倍高価であ
る。このように現在のストレージのコストは適
切でない。ストレージが高価な理由は専用ハー
ドウェアにある。普及品のハードウェアと専用
ソフトウェアによって問題を解決できる。
我々は、大規模ストレージを構築するための
ツールキット VLSD(Virtual Large-Scale Disk) を開
発した [1][2]0 V L S D は 100 % p町 e Java であるた
め、プラットフォームに依存しない。我々は
V L S D を用いて 500 台の P C からそれぞれ空き容
量 170GB を集め 7 0 T B のストレージを構築する
システムを試作した。このシステムでは
RAID66(2 階層の RAID6) を用いて十分な M T T F
を実現している。
試作した 7 0 T B ストレージを実用的に運用す
るにはセキュリティが課題となる o 我々は、
V L S D にセキュリティ機能を追加した問。
- 13-
従来の V L S D は組織内で運用することを前提
としていた。しかし、組織内ではストレージ容
量も限られる。ストレージを効果的に活用する
には組織間で共有することも 1 つの選択肢であ
る。また、組織内で運用する場合にも、モパイ
ルで外部からアクセスしたいことがあるロこの
ような場合は、いずれも F W を超えたアクセス
が必要になる。現在のところ F W を超えること
が可能な唯一のプロトコルは H T T P と考えられ
る。そこで、 H T T P によるストレージアクセス
を実現する必要がある。我々は、 H T T P でアク
セス可能なストレージを W e b ストレージと呼び、
これを実現する機能を V L S D に追加する。
本論文では、 V L S D を用いた W e b ストレージ
の実現法とその性能を評価し、問題点を明確に
する。
本論文の構成は以下の通りである。第 2 章で
は関連研究について述べる。第 3 章では V L S D
について述べる。第 4 章では V L S D における
W e b ストレージについて述べる。第 5 章では評
価する。最後に結論を述べる。
2 関連研究
2.1 オンラインストレージ
ここでは、オンラインストレージサービスに
ついてまとめる。
Wikipedia では、オンラインストレージを「サ
ービスビューローのサーバの空き領域をインタ
ーネット経由で貸し出し、ユーザがそこにデー
タを保存できるようにするオンラインサービス
のこと J と定義しているロ
この種のサービスでは、 W e b 画面でアップロ
ードとダウンロードを行う。ダウンロードでは
ファイル共有のための U R L を生成する。この種
のサービスでは、アプリケーションから直接フ
ァイルをアクセスすることはできない。また、 1
回でアップロードできるファイルサイズやファ
イル数、全ファイルのトータルサイズなどに上
限があることが多い。また、無料の場合、保存
期間、ダウンロード回数などにも制限がある場
合がある。多くは広告を主な収入源としている。
M y Y a h o o ブリーフケースは、無料で利用可能
なオンラインストレージサービスである。 トー
タルサイズ 300MB 、ファイルサイズは 5 M B で
ある白これらの容量制限により現実的な利用に
は適さない。フォルダ、は階層的に作成できる。
apidshare.com( I日 rapidshare.de) は無料で利用可
能なオンラインストレージサービスである。た
だし、有料のサービスもある。無料版では、総
容量 1000 テラバイト、ファイル数制限なし、フ
ァイルサイズ 100MB 、 トータルサイズ制限なし
で利用できる。また、無料版ではファイノレは 45
日間しか維持されないが、有料版では永遠に維
持される。なお、無料版ではダウンロードが 90
ー
分に l 回に制限される。有料版では、ダウンロ
ードを並行して実施することができるロ
Yousendit は無料で利用可能なオンラインスト
レージ及びメールサービスである。無料で
100MB 、有料で 2 G B までのファイルを転送する
ことができる。ファイルは無料版で 7 日間、有
料版で 14 日間維持される。無料で 100 回、有料
で 200 回--500 回ダウンロードすることができ
る。有料版では、複数のファイルを同時に送信
することができたり、送信したファイルを自動
的にパックアップしたり 送信したファイルに
パスワードをかけることができたりする。
megaupload.com は無料で利用可能なオンライ
ンストレージサービスである。ファイルサイズ
500MB 、 トータルサイズ 50GB である。ファイ
ルは 90 日間維持される。
MediaFire(htゆ
://mediafire.com l ) は、無料で利用
可能なオンラインストレージサービスである。
完全無料で、ファイルサイズ 100MB 、アップロ
ードも無制限、登録も不要である。複数ファイ
ルの同時アップロード、ダウンロードにも対応
している。ファイルもフォルダも日本語に対応
している。
PipeBy蹴( htゆ://www.pipeb戸es.com / ) は、無料で
利用可能なオンラインストレージサービスであ
るが、他のオンラインストレージサービスと異
なり、一時的な利用に特化している。具体的に
は、アップロードファイノレの容量を無制限にし、
1 回のみダウンロード可能としている。
W e b D A V を用いて比較的容易にオンラインス
トレージを構築できる。 W e b D A V は Windows で
仮想的なフォルダとしてサポートされているた
め
、 ドラッグ& ドロップで直感的に操作できる。
しかし、基本的にはダクンロードとアップロー
ドで実現されるため、大容量ファイルの操作に
は向かない。また、サーバにおけるファイルの
アクセス権が限られるため、同じフォルダのフ
ァイルを異なるユーザで排他的に共有できない。
F r e e D A V(htゆ://www企eedav.coml)は W e b D A V
で構築されたオンラインストレージサービスで
ある。 W e b D A V の欠点を補うため外部プログラ
ム に よ り サ ー ビ ス を 実 現 し て い る o 無料で
100MB まで利用できる。他のサービスに比べる
と最大容量が小さい。また、 W e b D A V の原理か
ら個々のファイルも比較的小さいものに向いて
いる。
A mazon S3 は、A mazon W e b Service(AW S ) の
Simple Storage Service(S3) で、ある白最大ファイル
サイズは 5GB 、ファイルの容量に応じて以下の
ように課金される。
$0. 15/GB/month(storage)
$0.201GB(transfer)
A W S の他サービス( 例えば EC2) との聞の転
送には課金されないので、 A W S で統合されたシ
ステムでは安価なストレージを構築できる。例
- 14-
えば、 7 0 T B のストレージを実現するために必要
な年間経常経費は $0.15*70000*12=$126000 キ 1
千万円となる。この試算によれば V L S D の導入
経費は S3 の経常経費より安い。
S3 には S O A P と R E S T の 2 種類の API がある。
R E S T ではR a nge G E T に対応している。 Range ヘ
ッダーを指定すれば、ファイルの任意のプロッ
クを読み取ることができる。これによりダウン
ロードの中断および再開を制御できる。ただし、
P U T では部分書き換えできない。
オンラインストレージは転送単位によってプ
ロック転送方式とファイル転送方式に分類され
る。それによって使い勝手が大きく変わる。一
般的に、プロック転送方式はファイルの一部で
あるプロック単位で転送できるが、オンライン
でなければ使えない。ファイル転送方式は、オ
フラインでも使える可能性があり、複数の修正
をまとめて更新する。しかし、変更しない箇所
もダウンロードする必要がある。ファイル転送
方式はファイルのサイズが大きくなると実用的
でなくなるロダウンロードに要する時聞が長く
なり応答性が著しく低下する。巨大ファイルを
扱う大規模ストレージではファイル転送方式は
使えない。既存の W e b ベースのオンラインスト
レージサービスは基本的にファイル転送方式で、
ある。
研究レベルでは、プロック転送方式を実現し
たオンラインストレージも存在する。文献 [4] で
は
、 HTTP-FUSE-cloop を読み書き可能に拡張し、
W e b ストレージを実現している。オーバーヘッ
ドも小さい。汎用性を優先したためか、 Range
アクセスを用いていないため、ディスクはブロ
ックごとに分割され、サーバ上に置かれる。そ
のため、必ずしも管理が容易とはいえない。
2.2 W e b サービス
ここでは、オンラインストレージを実現する
ための実装技術として、 W e b サービスについて
まとめる。
W S D L,
UDDI
典型的な W e b サービスは S O A P,
などで実現される。小規模な W e b サービスは
S O A P だけで開発されることもある。 S O A P のメ
ッセージは X M L 文書であるので、 S O A P は
X 阻 ..RPC の一種と言える。
一般的に S O A P の処理は重い。 X M L への変換
など形式的な手続きに費やされるからである。
そこで、 RE8T(Representational State Transfer) と
呼ばれる手法が注目されている。 8 0 A P は X M L
R P C であるから、 S O A P による W e b サービスは
メソッド中心に設計される。それに対して、
R E S T は資源を中心に設計され、各資源が持つ
メソッドは H T T P のメソッドと直接的に対応す
る。適切な資源の概念を選択すれば、 R E S T の
方が S O A P より容易に W e b サービスを実現でき
る
W e b サービスに基づくオンラインストレージ
に は A mazon S3 な ど が あ る 。 A mazon 83 は
S O A P と R E S T の 2 種類の A P I をサポートして
いる。
3
VLSD
VLSD[3] は大規模ストレージを構築するため
の 1 0 0 % P町 e Java ツールキットである。ここで
は
、 VLSD[3] およびそれを用いたストレージの
概要について述べる。
3.1 V L S D のクラス
ここで、 V L S D ツールキットのクラスについ
て説明する o
NBDServer
N B D サーバのクラス。 N B D サーバはクライ
アントで動作し、空き容量を仮想デ、イスクファ
イルとしてストレージシステムに提供する。ク
ライアントの O S は Windows または Linux であ
る
。 N B D サーバは Java で実装されているためプ
ラ ッ ト フ ォ ー ム に 依 存 し な い o Linux と
Windows の両方で動作する。また、クライアン
トには複数のディスクが接続されていたり、
FAT32 が使われていたりすることがある。
F A T 3 2 ではそのサイズが 2 G B 以上のファイルを
作成できない。これらのような場合、 1 2 0 G B の
仮想ディスクを単一ファイルとして作成するご
とはできないので、後述の R A I D O または J B O D
と組み合わせることで複数のファイルを束ねて
仮想ディスクを実現することができる。
DiskServer
ディスクサーバのインターフェースである 0
- DiskServerlmpl
ディスクサーバのインプリメンテーションで
あって、 R M I による遠隔ディスクを提供する。
Disk
仮想ディスクが備えるべきインターフェース
である。
Abs甘actDisk
抽象的な仮想ディスクのクラスであって、下
位クラスで使う定数やメソッドを定める。
- DiskArray
複数ディスクからなるディスク・ラッパーの
基底クラスで、簡単な R A I D l を実装している。
RAID
R A I D の基底クラスで、簡単な R A I D l の実装
を DiskArray から引き継いでいる。
- SingleDisk
単一ディスクからなるディスク・ラッパーの
基底クラスである。
- Paged Disk
ページ単位でアクセスするディスクで、任意
のディスクのラッパーとなる。ラップされたデ
D
- 15-
ィスクはページ単位でしか read/write されない。
ページ単位の端数は無視される。
VariableDisk
可変容量ディスクであって、事前に資源を割
り当てず、必要に応じて動的に資源を確保する。
作成時に指定したサイズを超えて資源を使用す
ることはないが、論理的なディスクサイズより
大きくなることがある。
RemoteDisk
ディスクサーバをアクセスする遠隔ディスク
であるロ
RAIDO
R A I D O 仮想ディスクのクラス。 R A I D O は容量
を増やすために使われる。後述の J B O D とはス
トライピングを行う点が異なる。若干性能はよ
いが、容量は最小サイズのディスクに合わされ
る。例えば、 100GB ,120GB ,1 6 0 G B を連結しで
も 1 0 0 G B X 3 にしかならない。純粋に容量増を
目的とする場合 J B O D を用いたほうがよい。逆
に
、 R A I D O は性能向上が期待できる場合がある。
一部のファイルシステムでは i-node を管理する
スーパープロックが集中して配置される。この
ようなファイルシステムでは、規模が大きくな
ると特定のディスクにアクセスが集中する。こ
のような場合、ストライピングは負荷を分散す
る効果がある。 R A I D O はバイト単位でストライ
ピングするロ
RAID5
R A I D 5 仮想ディスクのクラス。パリティを各
ディスクに分散して格納する。パリティを格納
するディスクはブロックごとに異なる。
RAID6
R A I D 6 の実装で、 G F テープノレの生成、ブロ
ック単位ストライピングと分散ノ号リティが行わ
れる。同時に 2 つまでの故障に耐える。本実装
では P + Q 方式を採用している。最大 256 台のデ
ィスクを用いて R A I D 6 を構成できる。
JBOD
J B O D 仮想ディスクのクラス。 R A I D O と同様
に冗長性がなく、容量増のために用いられる。
ストライピングを行わないため容量は単純に総
和となる。例えば、 1 0 0 G B,1 2 0 G B,160GB を連
結すると 3 8 0 G B になる。 R A I D O には負荷分散の
効果があると述べたが、 J B O D には負荷を集中
させる効果がある。ある程度の規模まではキャ
ッシュが有効に働くため、 R A I D O より性能がよ
くなる可能性がある白
3.2 V L S D を用いた大規模ストレージの試作
V L S D は大規模ストレージ構築のためのツー
ノレキットであり、 Java に よ る ソ フ ト ウ ェ ア
R A I D 実装と N B D 実装を含む。 V L S D は 1 0 0 %
P 町 'e Java であり、 Java が動作するプラットフオ
ー ム の 上 な ら V L S D も動作する。そのため
Windows や Linux が混在する環境に適している。
V L S D を用いると O S に制約されることなく
N B D デバイスと R A I D を自由に組み合わせるこ
とができる。最低限必要な N B D デバイスはフ
ァイルサーバの 1 つである。
RAID6
図 1 R A I D 6 6 の構成図
本研究ではディスクレベルで空き容量を連結
して 1 つの 7 0 T B ストレージを試作した。シス
テムはディスクレベルなので、部分ディスクサ
イズを越えるファイルの保存も可能である。本
研究は 512 台のディスク( I ディスク =170GB)
を 32 グループにして R A I D 6 6 を構築する( 図 1
に示す) 。
Virtual Disk
図2
システム構成図
図 2 に示すように本システムは 64 ピットファ
イルサーバとディスクサーバがある。ディスク
サーバの Linux や Windows などの O S からなる
仮想ディスクはディスクの読み込みゃ書き込み
を Java の R M I で機能を提供する。ファイルサー
パの方は用意されたディスクに接続して
R A I D 6 6 を構築する。 R A I D 6 6 とは、 2 階層の
R A I D 6 である。 N B D Server はその R A I D 6 6 を利
用して N B D Client からのアクセスを待つ。そし
て
、 N B D Client の起動をした後、 X F S でフォー
マットするロ Windows のクライアントは Samba
を介してそのファイルサーバをアクセスする
(L加ux の場合は NFS) 。
- 16-
N B D プロトコルはセキュリティに欠けるため、
ネットワーク上で運用するのは危険である。し
かし、我々の方式では 1 台のサーバ内のプロセ
ス開通信として N B D を用いているため安全に
運用できる。実際の C/S 開通信はセキュリティ
を考慮した R M I に基づくプロトコノレで実現され
る
。
4
W e b ストレージ
ここでは、我々が開発した W e b ストレージの
概要及び仕様について述べる。
4.1 概要
W e b ストレージのシステム概要について述べ
る。本論文における W e b ストレージとは、
H T T P でプロック単位にアクセス可能なネット
ワークディスクである。図 3 に概要を示す。
図 3 W e b ストレージ
従来の V L S D は L A N 内の資源、を有効に活用す
るために N B D および R M I を用いて NBDServer
および RemoteDisk を実現した。しかし、これら
は独自のプロトコル( N BD ,R M I ) を用いるため、
F W を超えるアクセスは困難である。一組織の
ストレージ資源は限られているが、複数組織の
ストレージ資源を束ねることができれば、より
効率的な利用が可能となる。それには W e b スト
レージが必要となる。
また、モバイノレなど外部 P C から組織内 L A N
のストレージにアクセスしたいこともある そ
のような用途にも W e b ストレージが必要である。
一般的に外部から F W を超えて内部にアクセ
スするには S S H が使われる。あるいは W e b サ
ーバを経由する場合、 H T T P が使われる。逆に
内部から F W を超えて外部にアクセスするとき
には H T T P しか許されないことがある。言い換
えれば H T T P だけは許さざるを得ない。それゆ
え
、 H T T P でアクセス可能なオンラインストレ
ージ W e b サービスが必要となる。
我々の W e b ストレージはオンラインストレー
ジの W e b サービスであるロその意味では S3 に
D
近い。しかし、読み書きともブロックレベルの
アクセスを許す。また、 V L S D は完全にユーザ
レベルで動作するため、文献[4]のように O S に
カーネルレベルの変更を加える必要もない。た
だし、 V L S D へトラップするために軽量 O S を仮
想マシンで動作させる。この方式は V L S D に依
存しない。 V L S D とI ntegraTUM WebDisk(Java 版
Samba) などを組み合わせることも可能である。
しかし、現状では WebDisk は V L S D に対応して
いないロまた、その場合には Java によるファイ
ルシステム層が必要となる。
4.2 S O A P による W e b ストレージ
我々は、まず S O A P に基づく W e b サービスと
して W e b ストレージを実現した。ここでは、
S O A P ベースの API について述べる。この API
では、 V L S D の Disk インターフェースに近い仕
様を定めた。
public byte[] read(long pos,
int len)
pos の位置から len バイトを読み取り、 実
際に読み取ったバイト分の配列を返す。
public void write(long pos,
byte[] b)
pos の位置から b の内容をすべて書き込む。
サイズを超えたらエラーとなる。
次に、このサービスを使うクラスについて述
べる。
S O A P D i sk Server
このクラスは W e b ディスクのサーバとなる。
RemoteDisk に対する DiskServer に該当する。
データは X M L に変換されて送信される。
SOAPDisk
このクラスは W e b ディスクのクライアント
となる o RemoteDisk に該当する o データは
X M L に変換されて送信される。利用法は他の
V S L D ディスクと変わらない。
これらのクラスでは W S 0 2 W S A S [ 5 ] というフ
レームワークを用いてスタブを生成した。
4.3 R E S T による W e b ストレージ
我々は、次に R E S T に基づく W e b サービスと
して W e b ストレージを実現した。
G E T url?pos=P&len=L
パラメータ pos 、len を伴い G E T でアクセス
するとディスクの pos から len[Byte] までの範
囲のバイナリデータを返す。
P U T url?pos=P&len=L
パラメータ pos 、len を伴い P U T でアクセス
するとディスクの pos から len[Byte] までの範
囲に本文のバイナリデータを書き込む白本文
のサイズと len が異なるときには本文のサイ
ズを用いるロ
次に、このサービスを使うクラスについて述
べる o
WebDisk Server
- 17-
このクラスは W e b ディスクのサーバとなる。
RemoteDisk に対する DiskServer に該当する。
データはバイナリのまま変換されずに送信さ
れる。
WebDisk
このクラスは W e b ディスクのクライアント
となる。 RemoteDisk に該当する。データはバ
イナリのまま変換されずに送信される。利用
法は他の V S L D ディスクと変わらない。
5
評価
ここでは、 W e b ストレージの性能を評価する。
5.1 S O A P による W e b ストレージの評価
ここでは、 S O A P による W e b ストレージの性
能を評価する白同容量の FileDisk との相対性能
によって評価する。 FileDisk は V L S D の中で最
も高速な仮想ディスクである。
本評価は、 A M D A也lon(回) 64 x 2 Dual Core
3800 + 、メモリ 4 G B 、 Windows X P Professional
x64 で行われた。
l K B のデータを読み書きした評価結果を表 1
に示す。この結果から S O A P 方式は非常に性能
が悪いことが分かる。その理由はバイナリデー
タを X M L に変換するためである。無駄なフォ
ーマット変換がおこなわれている。
表 1 S O A P による W e b ストレージの性能評価
Disk
ISmall Read[ms] IS m aIl Write[ms
FileDisk
0.017925
0.0824
30.782
SOAPDisk
22.658
相対性能
0.08% I
0.27%
I
I
5.2 R E S T による W e b ストレージの評価
ここでは、 R E S T による W e b ストレージの性
1eDisk との相対性能
能を評価する。同容量の F i
によって評価する。 FileDisk は V L S D の中で最
も高速な仮想デ、イスクである。
本評価は、 A M D A由lon(加) 64 x 2 Dual Core
3800+ 、メモリ 4 G B 、 Windows X P Professional
x64 で行われた。
1阻のデータを読み書きした評価結果を表 2
に示す。この結果から REST 方式の性能は
FileDisk とそん色ないことが分かる。その理由
はバイナリデータを直接送受信するため、無駄
なフォーマット変換がおこなわれないからであ
る
。
表 2 R E S T による W e b ストレージの性能評価
Disk
ISmall Read[ms] ISmall Write[ms
F1
ieDisk
0.017925 I
0.0824
悶 STDisk
8.844
2.936
相対性能
0.20% I
2.81%
6
認証
WebDisk を安全に使うためにはユーザ認証が
必要である。クライアントがディスクサーバに
ログインするために以下のヘッダーをディスク
データと共に送る。
【ユーザ ID の長さ】 【デジタル署名の長さ】
【ユーザ ID 】 【デジタル署名】 【ディスクデー
タ
】
デジタル署名はディスクサーバの秘密鍵から
生成される。認証はデジタル署名と公開鍵によ
って判断される。
7
まとめ
本論文では、 V L S D を用いて W e b ストレージ
を構築する方法について述べた。我々の W e b ス
トレージは H T T P によりアクセス可能な遠隔プ
ロックデバイスである。これにより F W の内外
から大規模ストレージをアクセス可能となる。
我々は S O A P と R E S T の 2 方式で実装し、その
評価を行った。 W e b ストレージには R E S T が適
するとの結論を得た。
謝辞
本研究は科研費基盤 (C) rpc グリッドによる
高信頼・高効率な分散仮想ストレージの研究
(1 9500066) J により援助されています白
参考文献
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Fly UP