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大規模仮想ディスクを用いた W eb ストレージ
「マルチメディア通信と分散処理ワークショップj 平成20年 12 月 大規模仮想ディスクを用いた W e b ストレージ チャイエリアント 上原稔 東洋大学大学院工学研究科情報システム専攻 今日、大量のデータが氾濫している。そのデータを蓄積することが 1 つの課題になっているロ現在 の普及品の H D D は安価であるにもかかわらず、ストレージシステムは高価であるロそこで、我々は 安価な普及品とソフトウェアだけで大規模ストレージを構築するために VLSD(Virtual Large-Scale Disk) ツーノレキットを開発した。また、これを用いて P C の空き容量を集積し、大規模ストレージを試 作した。従来の V L S D は組織内で大規模ストレージを構築することを目的としていた。しかし、よ り大きなストレージを構築するには 1 つの組織で、は困難で、ある。そこで、インターネットを経由し て大規模ストレージを構築するために、 W e b ストレージを開発した。本論文では、試作した W e b ス トレージの実装と評価について述べる。 A W e b Storage using Virtual Large-Scale Disks Erianto Chai Minoru Uehara T o y o U凶versity Graduate School, D e pt . of O p e n Information System Today, massive da旬 is f1ooding. One of major issues is ωstore massive da'飽. Recent1y , although commodity H D D is very cheep, appliance storage system is very expensive. So, w e developed V L S D ( Virtual Large-Scale Disk) toolkit in order to cons飢 lct a large-scale storage using only cheep comrnodity hardware and so食ware. A nd w e also developed a prototype of large-scale storage system by collecting 企'ee disk spaces ofPCs using VLSD. Conventional V L S D aims to develop a large-scale storage in local network. However, it is hard to develop larger scale storage 曲an conventional storage if only local resources are available. So, w e have developed a prototype of W e b storage in order to realize larger scale storage via Inteme. t In由is paper, w e describe the W e b storage and evaluate it . 1 はじめに 近年、ストレージサービスに対する要求が高 まっている。 従来のアプリケーションでは、データを共有 するためにデータベースを用いていた。しかし、 近年 W e b サービスが普及するにつれ、 S O A ベー スのアプリケーションが増えてきた。これらの アプリケーションでは、異なるベンダーから提 供されるサービスを組み合わせるマッシュアッ プが行われる。このようなアプリケーションで は、インターフェースを W e b サービスで統合す るため、ストレージサービスを利用する必要が ある。ストレージの W e b サービスはA mazon な どが提供している。 YouTube やニコニコ動画などの動画投稿サイ トはマスコミュニケーションを補完するジャー ナリズムとして定着すると予想される。 U S A で は、大統領選にも利用されている。このような サイトでは、多くの動画を保管するために大容 量のストレージを必要としている。 ライフログでは、人のあらゆる活動を記録す る。そのためには一人当たり数 T B 以上の容量 を必要とする。 企業は内部統制のためにログを保管する必要 がある。企業の所有する全 P C から集められた ログは膨大である。これを効率的に管理するた め、情報ライフサイクル管理に基づく 3 階層ス トレージが使用される。 このようなストレージサービスに対する要求 は H D D 技術の進歩を促した。その結果、安価 で大容量なディスクが入手可能となった。しか し、アプライアンス系のファイノレサーバで使用 している H D D はその普及品より 10 倍高価であ る。このように現在のストレージのコストは適 切でない。ストレージが高価な理由は専用ハー ドウェアにある。普及品のハードウェアと専用 ソフトウェアによって問題を解決できる。 我々は、大規模ストレージを構築するための ツールキット VLSD(Virtual Large-Scale Disk) を開 発した [1][2]0 V L S D は 100 % p町 e Java であるた め、プラットフォームに依存しない。我々は V L S D を用いて 500 台の P C からそれぞれ空き容 量 170GB を集め 7 0 T B のストレージを構築する システムを試作した。このシステムでは RAID66(2 階層の RAID6) を用いて十分な M T T F を実現している。 試作した 7 0 T B ストレージを実用的に運用す るにはセキュリティが課題となる o 我々は、 V L S D にセキュリティ機能を追加した問。 - 13- 従来の V L S D は組織内で運用することを前提 としていた。しかし、組織内ではストレージ容 量も限られる。ストレージを効果的に活用する には組織間で共有することも 1 つの選択肢であ る。また、組織内で運用する場合にも、モパイ ルで外部からアクセスしたいことがあるロこの ような場合は、いずれも F W を超えたアクセス が必要になる。現在のところ F W を超えること が可能な唯一のプロトコルは H T T P と考えられ る。そこで、 H T T P によるストレージアクセス を実現する必要がある。我々は、 H T T P でアク セス可能なストレージを W e b ストレージと呼び、 これを実現する機能を V L S D に追加する。 本論文では、 V L S D を用いた W e b ストレージ の実現法とその性能を評価し、問題点を明確に する。 本論文の構成は以下の通りである。第 2 章で は関連研究について述べる。第 3 章では V L S D について述べる。第 4 章では V L S D における W e b ストレージについて述べる。第 5 章では評 価する。最後に結論を述べる。 2 関連研究 2.1 オンラインストレージ ここでは、オンラインストレージサービスに ついてまとめる。 Wikipedia では、オンラインストレージを「サ ービスビューローのサーバの空き領域をインタ ーネット経由で貸し出し、ユーザがそこにデー タを保存できるようにするオンラインサービス のこと J と定義しているロ この種のサービスでは、 W e b 画面でアップロ ードとダウンロードを行う。ダウンロードでは ファイル共有のための U R L を生成する。この種 のサービスでは、アプリケーションから直接フ ァイルをアクセスすることはできない。また、 1 回でアップロードできるファイルサイズやファ イル数、全ファイルのトータルサイズなどに上 限があることが多い。また、無料の場合、保存 期間、ダウンロード回数などにも制限がある場 合がある。多くは広告を主な収入源としている。 M y Y a h o o ブリーフケースは、無料で利用可能 なオンラインストレージサービスである。 トー タルサイズ 300MB 、ファイルサイズは 5 M B で ある白これらの容量制限により現実的な利用に は適さない。フォルダ、は階層的に作成できる。 apidshare.com( I日 rapidshare.de) は無料で利用可 能なオンラインストレージサービスである。た だし、有料のサービスもある。無料版では、総 容量 1000 テラバイト、ファイル数制限なし、フ ァイルサイズ 100MB 、 トータルサイズ制限なし で利用できる。また、無料版ではファイノレは 45 日間しか維持されないが、有料版では永遠に維 持される。なお、無料版ではダウンロードが 90 ー 分に l 回に制限される。有料版では、ダウンロ ードを並行して実施することができるロ Yousendit は無料で利用可能なオンラインスト レージ及びメールサービスである。無料で 100MB 、有料で 2 G B までのファイルを転送する ことができる。ファイルは無料版で 7 日間、有 料版で 14 日間維持される。無料で 100 回、有料 で 200 回--500 回ダウンロードすることができ る。有料版では、複数のファイルを同時に送信 することができたり、送信したファイルを自動 的にパックアップしたり 送信したファイルに パスワードをかけることができたりする。 megaupload.com は無料で利用可能なオンライ ンストレージサービスである。ファイルサイズ 500MB 、 トータルサイズ 50GB である。ファイ ルは 90 日間維持される。 MediaFire(htゆ ://mediafire.com l ) は、無料で利用 可能なオンラインストレージサービスである。 完全無料で、ファイルサイズ 100MB 、アップロ ードも無制限、登録も不要である。複数ファイ ルの同時アップロード、ダウンロードにも対応 している。ファイルもフォルダも日本語に対応 している。 PipeBy蹴( htゆ://www.pipeb戸es.com / ) は、無料で 利用可能なオンラインストレージサービスであ るが、他のオンラインストレージサービスと異 なり、一時的な利用に特化している。具体的に は、アップロードファイノレの容量を無制限にし、 1 回のみダウンロード可能としている。 W e b D A V を用いて比較的容易にオンラインス トレージを構築できる。 W e b D A V は Windows で 仮想的なフォルダとしてサポートされているた め 、 ドラッグ& ドロップで直感的に操作できる。 しかし、基本的にはダクンロードとアップロー ドで実現されるため、大容量ファイルの操作に は向かない。また、サーバにおけるファイルの アクセス権が限られるため、同じフォルダのフ ァイルを異なるユーザで排他的に共有できない。 F r e e D A V(htゆ://www企eedav.coml)は W e b D A V で構築されたオンラインストレージサービスで ある。 W e b D A V の欠点を補うため外部プログラ ム に よ り サ ー ビ ス を 実 現 し て い る o 無料で 100MB まで利用できる。他のサービスに比べる と最大容量が小さい。また、 W e b D A V の原理か ら個々のファイルも比較的小さいものに向いて いる。 A mazon S3 は、A mazon W e b Service(AW S ) の Simple Storage Service(S3) で、ある白最大ファイル サイズは 5GB 、ファイルの容量に応じて以下の ように課金される。 $0. 15/GB/month(storage) $0.201GB(transfer) A W S の他サービス( 例えば EC2) との聞の転 送には課金されないので、 A W S で統合されたシ ステムでは安価なストレージを構築できる。例 - 14- えば、 7 0 T B のストレージを実現するために必要 な年間経常経費は $0.15*70000*12=$126000 キ 1 千万円となる。この試算によれば V L S D の導入 経費は S3 の経常経費より安い。 S3 には S O A P と R E S T の 2 種類の API がある。 R E S T ではR a nge G E T に対応している。 Range ヘ ッダーを指定すれば、ファイルの任意のプロッ クを読み取ることができる。これによりダウン ロードの中断および再開を制御できる。ただし、 P U T では部分書き換えできない。 オンラインストレージは転送単位によってプ ロック転送方式とファイル転送方式に分類され る。それによって使い勝手が大きく変わる。一 般的に、プロック転送方式はファイルの一部で あるプロック単位で転送できるが、オンライン でなければ使えない。ファイル転送方式は、オ フラインでも使える可能性があり、複数の修正 をまとめて更新する。しかし、変更しない箇所 もダウンロードする必要がある。ファイル転送 方式はファイルのサイズが大きくなると実用的 でなくなるロダウンロードに要する時聞が長く なり応答性が著しく低下する。巨大ファイルを 扱う大規模ストレージではファイル転送方式は 使えない。既存の W e b ベースのオンラインスト レージサービスは基本的にファイル転送方式で、 ある。 研究レベルでは、プロック転送方式を実現し たオンラインストレージも存在する。文献 [4] で は 、 HTTP-FUSE-cloop を読み書き可能に拡張し、 W e b ストレージを実現している。オーバーヘッ ドも小さい。汎用性を優先したためか、 Range アクセスを用いていないため、ディスクはブロ ックごとに分割され、サーバ上に置かれる。そ のため、必ずしも管理が容易とはいえない。 2.2 W e b サービス ここでは、オンラインストレージを実現する ための実装技術として、 W e b サービスについて まとめる。 W S D L, UDDI 典型的な W e b サービスは S O A P, などで実現される。小規模な W e b サービスは S O A P だけで開発されることもある。 S O A P のメ ッセージは X M L 文書であるので、 S O A P は X 阻 ..RPC の一種と言える。 一般的に S O A P の処理は重い。 X M L への変換 など形式的な手続きに費やされるからである。 そこで、 RE8T(Representational State Transfer) と 呼ばれる手法が注目されている。 8 0 A P は X M L R P C であるから、 S O A P による W e b サービスは メソッド中心に設計される。それに対して、 R E S T は資源を中心に設計され、各資源が持つ メソッドは H T T P のメソッドと直接的に対応す る。適切な資源の概念を選択すれば、 R E S T の 方が S O A P より容易に W e b サービスを実現でき る W e b サービスに基づくオンラインストレージ に は A mazon S3 な ど が あ る 。 A mazon 83 は S O A P と R E S T の 2 種類の A P I をサポートして いる。 3 VLSD VLSD[3] は大規模ストレージを構築するため の 1 0 0 % P町 e Java ツールキットである。ここで は 、 VLSD[3] およびそれを用いたストレージの 概要について述べる。 3.1 V L S D のクラス ここで、 V L S D ツールキットのクラスについ て説明する o NBDServer N B D サーバのクラス。 N B D サーバはクライ アントで動作し、空き容量を仮想デ、イスクファ イルとしてストレージシステムに提供する。ク ライアントの O S は Windows または Linux であ る 。 N B D サーバは Java で実装されているためプ ラ ッ ト フ ォ ー ム に 依 存 し な い o Linux と Windows の両方で動作する。また、クライアン トには複数のディスクが接続されていたり、 FAT32 が使われていたりすることがある。 F A T 3 2 ではそのサイズが 2 G B 以上のファイルを 作成できない。これらのような場合、 1 2 0 G B の 仮想ディスクを単一ファイルとして作成するご とはできないので、後述の R A I D O または J B O D と組み合わせることで複数のファイルを束ねて 仮想ディスクを実現することができる。 DiskServer ディスクサーバのインターフェースである 0 - DiskServerlmpl ディスクサーバのインプリメンテーションで あって、 R M I による遠隔ディスクを提供する。 Disk 仮想ディスクが備えるべきインターフェース である。 Abs甘actDisk 抽象的な仮想ディスクのクラスであって、下 位クラスで使う定数やメソッドを定める。 - DiskArray 複数ディスクからなるディスク・ラッパーの 基底クラスで、簡単な R A I D l を実装している。 RAID R A I D の基底クラスで、簡単な R A I D l の実装 を DiskArray から引き継いでいる。 - SingleDisk 単一ディスクからなるディスク・ラッパーの 基底クラスである。 - Paged Disk ページ単位でアクセスするディスクで、任意 のディスクのラッパーとなる。ラップされたデ D - 15- ィスクはページ単位でしか read/write されない。 ページ単位の端数は無視される。 VariableDisk 可変容量ディスクであって、事前に資源を割 り当てず、必要に応じて動的に資源を確保する。 作成時に指定したサイズを超えて資源を使用す ることはないが、論理的なディスクサイズより 大きくなることがある。 RemoteDisk ディスクサーバをアクセスする遠隔ディスク であるロ RAIDO R A I D O 仮想ディスクのクラス。 R A I D O は容量 を増やすために使われる。後述の J B O D とはス トライピングを行う点が異なる。若干性能はよ いが、容量は最小サイズのディスクに合わされ る。例えば、 100GB ,120GB ,1 6 0 G B を連結しで も 1 0 0 G B X 3 にしかならない。純粋に容量増を 目的とする場合 J B O D を用いたほうがよい。逆 に 、 R A I D O は性能向上が期待できる場合がある。 一部のファイルシステムでは i-node を管理する スーパープロックが集中して配置される。この ようなファイルシステムでは、規模が大きくな ると特定のディスクにアクセスが集中する。こ のような場合、ストライピングは負荷を分散す る効果がある。 R A I D O はバイト単位でストライ ピングするロ RAID5 R A I D 5 仮想ディスクのクラス。パリティを各 ディスクに分散して格納する。パリティを格納 するディスクはブロックごとに異なる。 RAID6 R A I D 6 の実装で、 G F テープノレの生成、ブロ ック単位ストライピングと分散ノ号リティが行わ れる。同時に 2 つまでの故障に耐える。本実装 では P + Q 方式を採用している。最大 256 台のデ ィスクを用いて R A I D 6 を構成できる。 JBOD J B O D 仮想ディスクのクラス。 R A I D O と同様 に冗長性がなく、容量増のために用いられる。 ストライピングを行わないため容量は単純に総 和となる。例えば、 1 0 0 G B,1 2 0 G B,160GB を連 結すると 3 8 0 G B になる。 R A I D O には負荷分散の 効果があると述べたが、 J B O D には負荷を集中 させる効果がある。ある程度の規模まではキャ ッシュが有効に働くため、 R A I D O より性能がよ くなる可能性がある白 3.2 V L S D を用いた大規模ストレージの試作 V L S D は大規模ストレージ構築のためのツー ノレキットであり、 Java に よ る ソ フ ト ウ ェ ア R A I D 実装と N B D 実装を含む。 V L S D は 1 0 0 % P 町 'e Java であり、 Java が動作するプラットフオ ー ム の 上 な ら V L S D も動作する。そのため Windows や Linux が混在する環境に適している。 V L S D を用いると O S に制約されることなく N B D デバイスと R A I D を自由に組み合わせるこ とができる。最低限必要な N B D デバイスはフ ァイルサーバの 1 つである。 RAID6 図 1 R A I D 6 6 の構成図 本研究ではディスクレベルで空き容量を連結 して 1 つの 7 0 T B ストレージを試作した。シス テムはディスクレベルなので、部分ディスクサ イズを越えるファイルの保存も可能である。本 研究は 512 台のディスク( I ディスク =170GB) を 32 グループにして R A I D 6 6 を構築する( 図 1 に示す) 。 Virtual Disk 図2 システム構成図 図 2 に示すように本システムは 64 ピットファ イルサーバとディスクサーバがある。ディスク サーバの Linux や Windows などの O S からなる 仮想ディスクはディスクの読み込みゃ書き込み を Java の R M I で機能を提供する。ファイルサー パの方は用意されたディスクに接続して R A I D 6 6 を構築する。 R A I D 6 6 とは、 2 階層の R A I D 6 である。 N B D Server はその R A I D 6 6 を利 用して N B D Client からのアクセスを待つ。そし て 、 N B D Client の起動をした後、 X F S でフォー マットするロ Windows のクライアントは Samba を介してそのファイルサーバをアクセスする (L加ux の場合は NFS) 。 - 16- N B D プロトコルはセキュリティに欠けるため、 ネットワーク上で運用するのは危険である。し かし、我々の方式では 1 台のサーバ内のプロセ ス開通信として N B D を用いているため安全に 運用できる。実際の C/S 開通信はセキュリティ を考慮した R M I に基づくプロトコノレで実現され る 。 4 W e b ストレージ ここでは、我々が開発した W e b ストレージの 概要及び仕様について述べる。 4.1 概要 W e b ストレージのシステム概要について述べ る。本論文における W e b ストレージとは、 H T T P でプロック単位にアクセス可能なネット ワークディスクである。図 3 に概要を示す。 図 3 W e b ストレージ 従来の V L S D は L A N 内の資源、を有効に活用す るために N B D および R M I を用いて NBDServer および RemoteDisk を実現した。しかし、これら は独自のプロトコル( N BD ,R M I ) を用いるため、 F W を超えるアクセスは困難である。一組織の ストレージ資源は限られているが、複数組織の ストレージ資源を束ねることができれば、より 効率的な利用が可能となる。それには W e b スト レージが必要となる。 また、モバイノレなど外部 P C から組織内 L A N のストレージにアクセスしたいこともある そ のような用途にも W e b ストレージが必要である。 一般的に外部から F W を超えて内部にアクセ スするには S S H が使われる。あるいは W e b サ ーバを経由する場合、 H T T P が使われる。逆に 内部から F W を超えて外部にアクセスするとき には H T T P しか許されないことがある。言い換 えれば H T T P だけは許さざるを得ない。それゆ え 、 H T T P でアクセス可能なオンラインストレ ージ W e b サービスが必要となる。 我々の W e b ストレージはオンラインストレー ジの W e b サービスであるロその意味では S3 に D 近い。しかし、読み書きともブロックレベルの アクセスを許す。また、 V L S D は完全にユーザ レベルで動作するため、文献[4]のように O S に カーネルレベルの変更を加える必要もない。た だし、 V L S D へトラップするために軽量 O S を仮 想マシンで動作させる。この方式は V L S D に依 存しない。 V L S D とI ntegraTUM WebDisk(Java 版 Samba) などを組み合わせることも可能である。 しかし、現状では WebDisk は V L S D に対応して いないロまた、その場合には Java によるファイ ルシステム層が必要となる。 4.2 S O A P による W e b ストレージ 我々は、まず S O A P に基づく W e b サービスと して W e b ストレージを実現した。ここでは、 S O A P ベースの API について述べる。この API では、 V L S D の Disk インターフェースに近い仕 様を定めた。 public byte[] read(long pos, int len) pos の位置から len バイトを読み取り、 実 際に読み取ったバイト分の配列を返す。 public void write(long pos, byte[] b) pos の位置から b の内容をすべて書き込む。 サイズを超えたらエラーとなる。 次に、このサービスを使うクラスについて述 べる。 S O A P D i sk Server このクラスは W e b ディスクのサーバとなる。 RemoteDisk に対する DiskServer に該当する。 データは X M L に変換されて送信される。 SOAPDisk このクラスは W e b ディスクのクライアント となる o RemoteDisk に該当する o データは X M L に変換されて送信される。利用法は他の V S L D ディスクと変わらない。 これらのクラスでは W S 0 2 W S A S [ 5 ] というフ レームワークを用いてスタブを生成した。 4.3 R E S T による W e b ストレージ 我々は、次に R E S T に基づく W e b サービスと して W e b ストレージを実現した。 G E T url?pos=P&len=L パラメータ pos 、len を伴い G E T でアクセス するとディスクの pos から len[Byte] までの範 囲のバイナリデータを返す。 P U T url?pos=P&len=L パラメータ pos 、len を伴い P U T でアクセス するとディスクの pos から len[Byte] までの範 囲に本文のバイナリデータを書き込む白本文 のサイズと len が異なるときには本文のサイ ズを用いるロ 次に、このサービスを使うクラスについて述 べる o WebDisk Server - 17- このクラスは W e b ディスクのサーバとなる。 RemoteDisk に対する DiskServer に該当する。 データはバイナリのまま変換されずに送信さ れる。 WebDisk このクラスは W e b ディスクのクライアント となる。 RemoteDisk に該当する。データはバ イナリのまま変換されずに送信される。利用 法は他の V S L D ディスクと変わらない。 5 評価 ここでは、 W e b ストレージの性能を評価する。 5.1 S O A P による W e b ストレージの評価 ここでは、 S O A P による W e b ストレージの性 能を評価する白同容量の FileDisk との相対性能 によって評価する。 FileDisk は V L S D の中で最 も高速な仮想ディスクである。 本評価は、 A M D A也lon(回) 64 x 2 Dual Core 3800 + 、メモリ 4 G B 、 Windows X P Professional x64 で行われた。 l K B のデータを読み書きした評価結果を表 1 に示す。この結果から S O A P 方式は非常に性能 が悪いことが分かる。その理由はバイナリデー タを X M L に変換するためである。無駄なフォ ーマット変換がおこなわれている。 表 1 S O A P による W e b ストレージの性能評価 Disk ISmall Read[ms] IS m aIl Write[ms FileDisk 0.017925 0.0824 30.782 SOAPDisk 22.658 相対性能 0.08% I 0.27% I I 5.2 R E S T による W e b ストレージの評価 ここでは、 R E S T による W e b ストレージの性 1eDisk との相対性能 能を評価する。同容量の F i によって評価する。 FileDisk は V L S D の中で最 も高速な仮想デ、イスクである。 本評価は、 A M D A由lon(加) 64 x 2 Dual Core 3800+ 、メモリ 4 G B 、 Windows X P Professional x64 で行われた。 1阻のデータを読み書きした評価結果を表 2 に示す。この結果から REST 方式の性能は FileDisk とそん色ないことが分かる。その理由 はバイナリデータを直接送受信するため、無駄 なフォーマット変換がおこなわれないからであ る 。 表 2 R E S T による W e b ストレージの性能評価 Disk ISmall Read[ms] ISmall Write[ms F1 ieDisk 0.017925 I 0.0824 悶 STDisk 8.844 2.936 相対性能 0.20% I 2.81% 6 認証 WebDisk を安全に使うためにはユーザ認証が 必要である。クライアントがディスクサーバに ログインするために以下のヘッダーをディスク データと共に送る。 【ユーザ ID の長さ】 【デジタル署名の長さ】 【ユーザ ID 】 【デジタル署名】 【ディスクデー タ 】 デジタル署名はディスクサーバの秘密鍵から 生成される。認証はデジタル署名と公開鍵によ って判断される。 7 まとめ 本論文では、 V L S D を用いて W e b ストレージ を構築する方法について述べた。我々の W e b ス トレージは H T T P によりアクセス可能な遠隔プ ロックデバイスである。これにより F W の内外 から大規模ストレージをアクセス可能となる。 我々は S O A P と R E S T の 2 方式で実装し、その 評価を行った。 W e b ストレージには R E S T が適 するとの結論を得た。 謝辞 本研究は科研費基盤 (C) rpc グリッドによる 高信頼・高効率な分散仮想ストレージの研究 (1 9500066) J により援助されています白 参考文献 [1] Chai Erianto,Minoru U e h紅色 Hideki Mori, Nobuyoshi Sato: “ Virtual Large-Scale Disk System for PC-RoomヘL N C S 4658, NetworkBased Information Systems, pp.476-485, (2007.9.3 -4) [2] Chai Erianto,Minoru U e hara, Hideki Mori: “ Performance Evaluation at Failure 泊 a LargeD P S W S 2 0 0 7 (2007.10) Scale Virtual Disk", [31 Minoru Uehara: Framework in a Virtual Large-Scale Disk System", In Proc. of IEEE 10血 Intemational Workshop on Multimedia Network Systems and Applications ( M N SA 2008), pp.30・35 , (2008.6.20) [4] 野尻祐亮,並木美太郎. 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