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図書館司書課程における WBTによる - 国公私立大学図書館協力委員会

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図書館司書課程における WBTによる - 国公私立大学図書館協力委員会
図書館司書課程における WBTによる
ブレンデイッドラーニングの 実践
市川
博
抄録 :I
CTの進展や政策面の後押 しを受け,高等教育における e
Le
a
r
ni
ngが急速に普及している 。一方,図
書館司書課程は ,正課外の課程として位置づけられ,卒業単位に組み込まれない例が多く,カリキュラム編
成に苦慮する場合が多い。 また,
r
これからの図書館のあり方検討協力者会議」で検討されている「大学に
おいて履修すべき図書館に関する科目」では現行の必要単位数より増加 し,特に短期大学では授業時間の編
成に苦慮することが予想される O その 一つの解決策となりうる WBTと対面授業を組み合わせたブレン
デイツドラーニングの実践を報告する 。
キーワード:図書館司書課程, ブレンディッドラーニング,e
L
e
a
r
n
i
n
g,WBT,情報機器論
1
. はじめに
ICTの進展にともなって,米国では 1990年代後
半から e
L
e
a
r
n
i
n
gが企業教育や高等教育さらには初
等 ・中等教育に普及している O 日本においても, IT
戦略本部主導による初等 ・中等教育におけるイン
ターネッ ト接続などのネッ トワークインフラの整備
や,大学審議会でのインターネットを使った講義の
しかし,通学課程の場合, e
Learningをカリキュラ
ムの中で,どう位置づけるかが不明確になりやすい。
通学課程では学生はキャンパスに通ってくることが
前提で, e
L
e
a
r
ni
ngの,いつでも,どこでも学習で
きるという時間的・空間的メリットだけでは,その
意義・必要性を説明できない。 また,通信制大学で
の大きな問題である学習を継続させる動機づけにつ
0
0
0年頃から急
単位認定が行える制度改正を機に, 2
いても,従来の印刷教材からマルチメディアを用い
edge
速に進んでいる O さらに,生涯教育, Knowl
た e-Learningで も 解 決 す る に 至 っ て い な い o e
-
Managementへの関心や国立大学の独立行政法人
L
e
a
r
n
i
n
gの,いつでも,どこでも学習できるという
メリットは,いつでも,どこでも学習しないことを
許してしまうデメリットでもある 。
大学における図書館司書課程は,図書館情報学を
専門としている課程を除き,正課外の課程として位
置づけられ,卒業単位に組み込まれない例が多い 2)。
化,少子化による大学問競争の激化などへの対応と
して検討されている O
高等教育では,大学設置基準の改定など政策面で
e
Learni
ngの普及を図っている状況下で, e
L
e
a
r
n
mgを実施している割合は大学では 4
6
.
1%,短大で
1
9.7%である O その中で、単位の認定を行っている割
.
8%で!日正規の授
合は大学では 28.8%,短大では 5
業として認知されているわけで、はなく,対面授業の
補助的な教材や資格取得などの自習用の教材として
用いられているものと推察される 。 e
Learningを実
施していると回答している大学でも, 一部の教員に
よる個人的な取り組みが多いものと考えられる 。 と
ysりあえず, LMS (Learning Management S
tem 学習管理システム)を導入し,いくつかの授
業でコンテンツを開発し補助教材として使ったが,
全学的な普及は進んでいないという大学も多いもの
と考えられる O
e
Learning普及の障害となっているのは,①コン
テンツ開発の工数面,コスト面の問題, ② e
L
e
a
r
n
mgの意義 ・必要性への理解の不足があげられる l)o
eLearningのみで卒業できる大学や大学院の場合
は,そのモデルが従来の通信制教育であり e
L
e
a
r
n
mg導入の意義 ・必要性への理解は得られやすい 。
他の課程との関連でカリキュラム編成に苦慮し,授
業開講は土曜日や平日の遅い時間帯となっている O
今回実践の場として紹介する自由が丘産能短期大学
(以下,本学)でも,図書館司書課程の科目はすべ
て土曜日に開講されている 。 また,
r
これからの図
書館のあり方検討協力者会議 Jで検討されている
「大学において履修すべき図書館に関する科目 」 で
は現行の必要単位数より増加し,特に短期大学では
授業時間の編成に苦慮することが考えられる 。その
一つの解決策として e
L
e
a
r
n
i
n
gがあると考え,通学
課程のメリットを生かした活用方法として WBT
(WebBasedT
r
a
i
n
i
n
g
) と対面授業を組み合わせた
ブレンデイツドラーニング(BlendedL
earni
n
g
)を
検討した 。図書館と e
L
e
a
r
n
i
n
gについては,図書館
で実施する図書館ガイダンスの e
L
e
a
r
n
i
n
gについて
の報告 へ 情報リテラシー科目をはじめ大学授業の
かL
earning化に対応した図書館における学習支援体
制についての報告ペ e
L
e
a
r
n
i
n
g先進国で、あるカナ
53
図書館司書課桂における WBTによるブレンデイッドラ ーニ ングの実践
ダ ・米国の図書館における e
L
e
a
r
n
i
n
gの取組みに関
する報告 5.6) 電子会議システムを使った遠隔授業
来の通学課程における対面授業の効果を維持できる
遠隔授業を 1
24単位中 30単位を上限に認めるという
による司書教育について報告 7
)などがある 。しかし,
ものである 。 この提言を受け
, 1
9
9
8年 3月に大学設
図書館司書教育へのブレンデイッドラーニングの適
置基準の改定がなされ,通学制課程の大学における
用に関する報告は見られない。本稿は,高等教育に
遠隔授業が可能となった 。対面授業と同等の効果を
Le
a
r
n
i
n
gの展開と,ブレンデイツドラーニ
おける e
得るための条件として以下をあげている
ングの位置づけを明確にし,本学の図書館司書課程
ア
O
現行の大学設置基準第 25条の授業を,隔地の
の科目「情報機器論」において, WBTと対面授業
教室,研究室又はこれに準ずる場所において同
を組み合わせたブレンデイツドラーニングの実践に
時に行うものであること 。 (
同一校舎 内の複数
ついて報告する。なお,本稿では e
L
e
a
r
n
i
n
gは ICT
の教室間を結んで行う場合や,送信側には教員
を利用した授業形態という意味で, WBTは Webを
のみがいて学生がいない場合も含む。)
用いた e
L
e
a
r
ni
ngという意味で使用する 。
イ
多様な通信メディアを利用して,文字,音声,
静止画,動画等の多様な情報を一体的かつ双方
2
. 高等教育における情報化と e
-しe
a
r
n
i
n
g
e
L
e
a
r
n
i
n
gは一般に,遠隔授業のー形態として捉
えられている。遠隔授業は 1947年に大学通信教育
向に扱うことができる状態で行われるものであ
ること 。
大学において,直接の対面授業に相当する教育
ウ
効果を有すると認めたものであること 。
が学校教育法において制度化 され, 1
9
5
0年に印刷教
材等による通信添削型の通信教育で,学位を発行で
1998年 1
0月には 1
21世紀の大学像と今後の改革
きる正規の高等教育として認可され実施されてき
た。 また, 1
9
8
3年には放送大学が設置され,放送メ
方策について(答申)一競争的環境の中で個性が輝
1
0) に
は, 1
多様な学習需要に対応する柔軟
く大学一 J
ディアを 利用した遠隔授業が開始されたが,通学制
化・弾力化一学生の 主体的学習意欲 とその成果の積
の課程ではキャンパスの中での対面授業が基本であ
極的評価一」のなかで,遠隔授業の扱いについて以
り,遠隔授業という概念はなかった。 しかし,マル
下のように記述されている 。
チメディア技術の進展やインターネットの普及な
「マルチメディアを活用した「遠隔授業」につい
ど
, ITが社会のあらゆる場面に影響するようにな
ては,同 一大学内の分散キャンパス間で行われるほ
り,マルチメディアを教育面で活用することで,教
か,他大学との間で単位互換として行われる場合が
育内容や教育方法を大きく変革する可能性があると
少なくないと考えられることから,単位互換等の単
認識されるようになった 。 そこで, 1996年 7月に
位数の上限を拡大するに当たっては,併せて「遠隔
「マルチメディアを活用した 2
1世紀の高等教育のあ
授業」により修得することが出来る単位数の上限に
り方について(マルチメディアを活用した 2
1世紀
ついても,現行の 30単位から拡大を図り, 60単位
報告)J
8
)I
こ
よ
まで認め得るよう大学設置基準を改正することが必
の高等教育のあり方に関する懇談会
り,高等教育機関におけるマルチメディアの活用の
要である 。」
基本的な考え方と推進策が提案されている 。 また,
9
9
9年 3月の大学設置基準の改
この答申を受け, 1
国内外の高等教育機関におけるマルチメディアを利
定が行われ,遠隔授業による単位数の上限が,大学
用した授業の事例が紹介され,高度化したマルチメ
では 6
0単位,短期大学では 30単 位 (3年制は 46単
ディア技術を利用することで,従来の対面授業と同
位)まで認められるようになった。
等な授業が展開できるとし,通信制課程のみならず
司時性・双方向性を生かした遠隔授
通学課程でも, I
2000年 1
1月に「グローパル化時代に求められる
1
1) では,イン
高等教育の在り方について(答申)J
業を正規の授業 として認めることを提言 し,制度の
ターネットを活用した授業について以下のように記
見直しの必要性が明記されている 。
述されている 。
上記提言を受け,大学審議会に「マルチメディア
9
9
7年 9月に「大学審議会
教育部会」が設置され, 1
マルチメディア教育部会における審議の概要 (
1遠
ア
文字,音声,静止画,動画等の多様な情報を ー
体的に扱うもので,同時かっ双方向に行われる
もの
隔授業」の大学設置基準における取扱い等につい
イ 授業を行う教室等以外の教室,研究室又はこれ
て)J
9)が発表された。マルチメディアの授業への活
らに準ずる場所において,履修させるもの
用事例や期待される効果を明示し,大学設置基準上
インターネット等活用授業については,その
の通学制の高等教育機関における「遠隔授業」の位
特性にかんがみ,直接の対面授業におけるよう
置づけを提言している 。基本的な考え方として,従
な同時性・双方向性がなくとも,全体としてそ
54
大学図書館研究 LXXXV (
20
0
9
.
3
)
表 1 高等教育における政策面での遠隔授業の変遷
年月
1996年 7月
1997年 9月
1998年 3月
1998
年 10月
項
自
マルチメプ、イアを活用した 2 1世 紀 の 品 等 教 育
のあり方について(マルチメディアを活用した
2 1世 紀 の 高 等 教 育 の あ り 方 に 関 す る 懇 談 会
報告)
大 学 審 議 会 マルチメプ、イア教育部会における
審 議 の 概 要 ( ["遠隔授業 j の 大 学 設 置 基 準 に お
ける取扱い等について)
大学設置基準改訂
2 1世 紀 の 大 学 像 と 今 後 の 改 革 方 策 に つ い て
(答申)一競争的環境の中で個性が輝く大学一
種別
報告
内 容
通学課稜での遠隔
授業の単位認定
答申
通学課程での遠隔
授 業 を 30単 位 ま で
三
包
1
刃
1
.
'
,
"性人I
二
?
答申
遠隔授業の上限を
30単位から 60単位
、
、
J
1999年 3月
2000年 11月
大学設置基準 改訂
グローパノレ化時代に求められる両等教育の在り
方について
2001年 3月
大学設置基準改訂
れと同等の教育効果が確保されると評価するこ
とが可能で、ある O 具体的には ,次の要件をすべ
イ
ロ
答申
インターネットを
利用した授業を正
規授業として認定
(上限 60単位)
基準が改定された 。
遠隔授業の政策面での変遷を 表 1に整理した 。短
て満たすもので,大学において,直接の対面授
期間に 3回もの大学設置基準の改訂を実施し,高等
業に相当する教育効果を有すると認めたものを
教育におけるマルチメディア等を利用した遠隔授業
遠隔授業として位置づけることが適当である 。
を政策面で推進している O 規制緩和とグローパル化
文字,音声,静止画,動画等の多様な情報を ー
L
e
a
r
n
ingを推進したもの
の一環として政策主導で e
体的に扱うもの
であるが,高等教育機関での普及は,前述のように,
電子メールの交換などの情報通信技術を用いた
コンテンツ開発の工数面,コスト面の問題と e
-
り,オフィス・アワー等に直接対面したりする
L
e
a
r
n
i
n
gの意義 ・必要性への理解が不足しているこ
となどにより遅れ気味であった。
ことによって,教員や補助職員(教員の指導の
下で教育活動の補助を行うティーチング・アシ
スタントなど)が毎回の授業の実施に当たり設
問解答,添削指導,質疑応答等による指導を行
うもの
ハ 授業に関して学生が相互に意見を交換する機会
が提供されているもの
なお,インターネット等活用授業についても,
l単 位 が 45時 間 の 学 修 を 要 す る 教 育 内 容 を
もって構成されるべきことは,対面授業の場合
と同様である O また , こうした授業を実施する
大学についても,正課外の活動を含めた教員や
学生相互の触れ合いなどを考慮すると,現在の
設置基準に定める校舎等の所要の施設を備える
ことが必要と考えられるが,今後の実施状況等
を踏まえつつ,その基準の在り方について必要
に応じ検討することが適当である O
インターネッ トを利用した授業が正規の授業とし
て認められ,通学制の大学では 60単位を上限とし
て,通信制の大学では 124単位すべてをインター
ネット等を利用した遠隔授業で習得することが可能
となった 。 この答申を受け, 2
001年 3月に大学設置
3
. e
L
e
a
r
n
i
n
gとブレンデイ ツ ドラーニング
3
.1 e
L
e
a
r
n
i
n
gの種類
e
Learni
ngはコンテンツ提供方法や学習方法でい
くつかに分類することができる 。大きな分類に,時
間的な要素がある 。 インターネット等を用いた e
Learni
ngでは,学習を遠隔地に分散する学習者が同
一時間帯に一斉に講義を受講する同期型(ライブ型)
e
Le
a
r
n
i
n
gと学習者が自由な時間帯にコンテンツを
ダウンロ ード し
, Webを通して学習する非同期型
に分類される 。 また,人やコンピュータとのインタ
ラクションの関係では,インタラクションの少ない
ドリル型の教材からインタラクションの大きいシ
ミュレーション型の教材,協調学習型の教材などに
分類される O コンテンツの種類による代表的な分類
を以下にあげる 。
(1)クラスル ーム型
同期型の代表的な e
L
e
a
r
n
i
n
gで,教授者の映像を
インタ ーネットや衛星回線を通して配信し,ライブ
な集合教育と同様の方法で授業が行われる 。映像を
データベース 化 し非同期型としても使用される 。
55
図書館司書課程における WBTによるブレンデイツドラーニングの実践
(
2
) オンラインマニュアル型
マニュアル類をオンライン化したもので,ソフト
用した形態が一般化してきている
O
集合教育の教授
者と学習者とのフェース・ツウ・フェース (
F
a
c
et
o
ウエアや I
T機器の操作教育,新製品情報の提供な
L
e
a
r
n
i
n
gの時間や空間の制約か
F
a
c
e
) の利点と, e
どに用いられることが多い 。非同期のコンテンツで
らの解放の利点を取り入れた学習方法であるといえ
ある 。
るO
(
3
) ドリル&プラクテイス型
対面授業では教授者が,学習内容により講義や演
紙と鉛筆で行われてきたドリル形式の問題をコン
習,デイスカッションなど教育効果の上がる授業方
ビュータ上で実現したもので,基礎知識を習得する
法を選択し授業プログラムを構成する O 前述のよう
教材として使われている 。非同期のコンテンツであ
にかL
e
a
r
n
i
n
gにおいても,クラスルーム型で講義を
るO
(4)チュートリアル型
行い,
ドリル・プラクテイス型やチュートリアル型
などで演習し理解度を把握することや,協調学習型
一般に説明で知識を習得し,問題を解くことに
でグループデイスカッションを行うことも可能であ
Knowledgeo
fR
e
s
u
l
t
) を学習者に返し,
よって KR(
L
e
a
r
n
i
n
gで,これらを組み合わせて
る。 しかし, e
次のステップに進む形式である 。非同期のコンテン
対面授業と同等の学習効果を上げようとすると,コ
ツで,資格取得や語学学習の基礎的知識や技能を習
ンテンツの設計から製作に膨大な工数とコストがか
得するために使われる 。
かる 。 そこで, e
-L
e
a
r
n
i
n
gと対面授業の特性を生か
(
5
) シミュレーション型
し両者をブレンドしたブレンデイッドラーニングが
ビジネスゲームに代表されるように複数の学習者
-L
e
a
r
n
i
n
g普及の障害となってい
注目されており, e
が実体験に近い行動を行うことで,基礎知識だけで
るコンテンツ開発の工数面,コスト面の問題に対す
なくアドバンス・レベルの知識習得を目指したもの
る一つの解決策となる 。
である 。 また, 一 人 の 学 習 者 が あ ら か じ め コ ン
e
L
e
a
r
n
i
n
gコンテンツではマルチメディアを用い
ビュータに設定されたストーリーに沿ったシナリオ
た映像やドリル・プラクテイス型やチュートリアル
を体験するタイプもある 。 同期型,非同期型ともに
型の演習問題などで基本知識の獲得を中心に構成す
使用される 。
るO 対面授業ではグループデイスカッションや教授
(
6
) ナレッジベース型
者から 学習者への問いかけなどにより獲得した基本
ナレッジを蓄積し,データベース化したものであ
る。 ナレッジマネジメントの 一環として従業員が相
互に情報を交換し,企業にある知的 資産を共有する
知識を深化させることで,高い 学習効果を得ること
が可能となる 。
9
9
8年の大学審議会答申 i
2
1世紀の大学
前出の 1
ことでアドバンス・レベルさらにはエキスパート・
像と今後の改革方策について(答申)
レベルの知識・技能習得を目指している 。
の中で個性が輝く大学
(
7
) 協調学習型
を図る必要性が言及されている 。大学設置基準では,
競争的環境
」において,単位の実質化
オンライン会議システムやチャット,掲示板,
I単位 45時間(講義科目の場合は 1
5時間:教室授
メールなどにより同期・非同期でのコミュニケー
業
, 30時間:教室外学習)の学習時間を確保するこ
ションを取り,協調学習を行うものである 。構成主
とを求めている 。教室外学習を WBT学習で保証す
義の 学習観に合ったもので,アドバンス・レベルさ
ることで,単位の実質化を実現する手段としてもブ
らにはエキスパート・レベルの知識・技能習得を日
レンデイッドラーニングは効果的であると考えられ
t
旨している 。 CSCL (
ComputerS
u
p
p
o
r
t
e
dC
o
l
l
a
b
o
-
L
e
a
r
n
i
n
g普及の障害となっている 2番目の問
る。 e
r
a
t
i
v
eL
e
a
r
n
i
n
g
) と言われているものである O
最近では,携帯電話に代表される携帯端末が普及
し,通信速度やマルチメディア機能などの高度化が
題点である通学課程での e
L
e
a
r
n
i
n
gの意義・必要性
への理解の不足に対しても,ブレンデイ ツ ドラーニ
ングは解決策になると考えられる 。
進展するに伴いモパイル・ラーニング (
Mobile
L
e
a
r
n
i
n
g
) なども注目されている O
4
. ブレンディッドラーニングの開発
3
.
2 ブレンデイッドラーニング
4
.
1 ブレンテひイッドラーニングのフレームワーク
5回 9
0分の授業をもっ
一般に講義科目の場合, 1
て 2単位分の授業としているが,今回設計するブレ
ブレンデイツドラーニングの授業実践や効果につ
いてはいくつかの報告があり 山3.14) 企業や高等教育
ンデイツドラーニングでは 1
0回分を WBTによる非
機関での教育現場で, e
L
e
a
r
n
i
n
g教材を単独で、使用
同期学習
するのではなく,教室における集合教育と連携・併
せで行うこととした 。授業プログラムは WBTに適
56
5回分を対面授業である同期学習の組合
大学図書館研究 LXXXV (
20
0
9
.
3)
集中授業︿試験)
回 i
団
非同期+オフィスアワー盆掲示板
図 1 ブレンテゃイッドラーニングのフレームワーク
表 2 ブレンデイッドラーニングの授業プログラムの例(心埋学1)
@
授業項包
課題
授業内容
現代科学と心環学(心礎学史
去
概説)と研究 j
「こころ J
の産を求めて
2
感覚 関
知覚の心理学①
心理学の創始:人間の感覚研究紹介
3
感覚・知覚の心理学②
人間の認知的情報処理の基本となる知
覚経験の特性を概説
4
行動の心理学①
学習によらない行動・反射・走性・本能
5
行動の心獲学②
6
行動の心潔学③
7
記憶と認知①
8
記憶と認知②
9
縫語表の心理学①
10
健康の心理学②
組織行動から考える f健康 j
学習のまとめ①
ワークシートを基に、'-'-までの内容につ
いての復習
学習のまとめ②
同上、論述式試験
集中綬業
前半
集中授業
後半
学習性の行動・反応1:初期経験、オペフ
ント条件づけ
学習性の行動・反応 2古典的条件づけ、
情動反応
第 1函課題
提出
第 2間諜題
生
是
出
記憶の心理学と認知・推論(基礎研寛)
認知と心の健康(ストレスと認知、行動の
問題について)
健康の定義と意義・測定・臨床的アブロー
チのいろいろ
第 3函課題
提出
した知識獲得の部分と,対面授業に適した演習やグ
'yうこ
子掲示板, オ フ ィ ス ・ ア ワ ー な ど を 利 用 し て 1
ループデイスカッションなどの部分を分離して設計・
ととした 。
した 。 本 学 で は , 掲 示 板 な ど の 機 能 を 持 っ た 学 生 情
本 学 の E部 ( 夜 間 , 土 日 授 業 開 講 ) 社 会 人 は
報 シ ス テ ム を 構 築 し て い る が , LMSを導 入 し て い
90%以 上 が 定 職 を 持 ち 通 学 時 間 の 制 約 が 大 き い た
ないため,コンテンツの視聴履歴や演習問題の成績
め,本学の通信教育部や放送大学などと単位互換制
管理などの学習管理を情報システム上ではできな
度 を 活 用 し , 学 習 機 会 を 増 や し て い る 。 しかし,通
い。 「 グ ロ ー パ ル 化 時 代 に 求 め ら れ る 高 等 教 育 の 在
信制の大学における学習は,テキストをベースとし
11) で 求 め て い る , イ ン タ ー
り 方 に つ い て ( 答 申 )J
たものであり,学習を継続するためには高いモチ
ネットを活用した授業の要件を満足させるため,図
ベ ー シ ョ ン を 維 持 し な け れ ば な ら な い 。 そのため,
1の よ う に 学 習 確 認 の た め に 集 中 授 業 を 受 講 す る ま
授業を途中で脱落する学生が多かった。 そこで,上
で の あ い だ に 3回 の リ ポ ー ト を 課 す こ と と し た 。 ま
言己フレームワークをイ吏ったブレンデFイツ ドラーニン
た
, WBT教 材 を 利 用 し て 学 習 す る 際 の 質 問 は , 学
グを 2004年 度 よ り メ デ ィ ア 授 業 と し て 順 次 開 発 し
習内容については授業担当教員が, WBT教 材 の 利
開講している 。
用方法などはメディア教育センター担当教職員が電
対象科目は,
E部 社 会 人 向 け の 経 済 学 , 経営 学 総
57
図書館司書課程における WBTによるブレンデイッドラーニングの実践
集中腰主(試験 )
論,会計学,心理学,マーケティング論などの教養
科目である 。表 2に心理学 Iの授業プ ログラムを示
す。 1固から 1
0固までが W BTを用いた自己学習で
ある
O
その間 ,WBTで学習した内容にもとづいた
3回の課題提出を求める 。課題テーマ,提出期限は,
学内掲示板により周知する 。残りの 5回分を 1日の
集中授業,あるいは半日の集中授業を 2回で実施す
る。集 中授業では, W BTによる自己学習の確認と
演習,デイスカッションなどにより理解を深めてい
く。最後に筆記試験を行い,提出された課題レポー
トを含めて評価する 。
4
.
2 WBT教材の製作
授業収録の方法には,実際の教室で授業を直接撮
影する場合と,スタジオで撮影する場合がある 。ブ
学
学
習
習
匝雪 守
茸
φ茸
ー同
図 2 情報機器論のフレームワーク
が,基本的な考え方は同様で, 図 2のように 6回分
を WBTによる非同期学習
2回分を対面授業によ
る同期学習とした。その聞に 2回のレポートの提出
レンデイツ ドラーニングでは同期授業と非同期授業
を求め, WBT学習中はオフィス ・アワーや掲示板
をそれぞれの特性に合った授業内容とすることが学
によって双方向性を確保した。
習効果を高めると考えられる 。その意味で,通常の
図書館 と情報機器との関連やパソコンを中心とし
I
情
対面授業を撮影して WBT教材とすることは適当で
た情報機器の構成要素を 図 3のように整理し,
ない。そこで,あらかじめ担当教員がプレゼンテー
表 3。
)
報機器論 Jの授業プログラムを作成した (
ション用ソフ ト (PowerPoi
n
t
) を用いて WBT部分
WBTのメリッ トを生かして 1回目に 1
0分程度の図
の教材を作成し,スタジオで収録することとした。
書館ツアー映像を挿入し,図書館で使用されている
L
e
a
r
ni
ng普及に対する最大の障害
前述のように e
情報機器と本講義で学習する内容を確認させること
に,コンテンツの製作工数,コス トの問題がある 。
で,より身近に情報機器を感じさせ,以後の学習の
一般に, 実際の授業やスタジオでの撮影を外注する
導入になっていると考えている 。
と 1時間当たり数十万円の費用が発生する 。撮影さ
WBT教材のイメージは 図 4のとおりである 。画
れた映像は不必要な部分のカッ ト,ビデオ挿入など
面左側には講師映像や動画のストリーミング画面,
の編集作業が不可欠で, 実際 にはさらに多額の費用
右側には PowerPointで作成した教材を静止画とし
が発生する 。今回はパソコン画面上で教材を表示し,
て表示する 。 WBT教材は学内サーバーにあり,
ビデオで撮影した講師映像とミキシングできる 一般
ネットに接続された状態のみでなく, PCにダウン
向け ・家庭用の機器を利用して WBT教材を作成し
ロードしても動作するため,学習の時間的・空間的
たため,撮影機器にかかる費用は安価にな った。 し
な自由度を高くしている 。
かし,パソコン画面と講師映像の切り替えや音声収
録のために撮影スタッフが一人スタジオで作業を行
4.
4 学習者の評価
う必要があり,さらに授業時間の 3倍ほどが編集に
「情報機器論」の受講者 (n=26) に WBT教材を
かかり工数面での負担が大きか った。現在は,動画
使用した学習のアンケートを実施した 。質問項目は
キャプチャ ー ソフトを使用して,パソコン画面と
Webカメラによる講 師映像を同時に記録すること
1
3項目で,回答は,それぞれの項目について, I
そ
う思う」を 5, I
ややそう思う」を 4, I
どちらとも
で,授業担当者が一人で授業を収録し,編集できる
言えない」 を 3, I
あまりそう思わない j を 2, I
そ
ような授業収録方法に変更している 。収録機器は数
う思わない」を lとする 5段階評価である 。データ
万円の動画キャプチャーソフ トとパソコン, Web
数が少なく信頼性は高くないものの,傾向を把握す
カメラのみであり,操作も非常に簡単なためコスト
ることは可能と考えられる 。結果を 図 5に示す。全
面でも工数面でも非常に効果をあげている 。
評価項目の平均は mean=3.03であった。スコアの高
,I
気楽に学習できる」で
い項目は 「学習に 役立つ J
4
.
3 I
情報機器論」におけるブレンデイツドラーニ
ングの実践
図書館司書課程の「情報機器論j は l単位科目で
ある 。前述のフレームワークは 2単位のものである
5
8
3.
5以上である 。 e-Learningの特徴である,受講者
の自由な時間に, PCがあればどこでも学習できる
という特徴を評価しているものと考えられる 。
一方 ,スコアの低い項目は「親しみがもてる J
,
大学図書館研究 LXXXV (
20
09.
3
)
図 3 図書館と情報機器の構成
I
情報機器論」授業プログラム
表3
回
4
授業項目
図書館と情報
機器
パソコンの仕
組み
PCハードウエ
ア
補助記憶装置
5
周辺機器
6
通信シスァム
7,8
集中授業
まとめ、定期
試験
2
3
授業内容
-科医の概要、講義内容
-図書館と情報機器(図書館ツアー)
-情報の表現
-データの扱い
-パソコンの構成
.CPUとメモリ
-磁気プ、イスク(ハードディスク、 FD)
-大容量補助記憶装置(CD、 DVDなど)
-入力装置
-ディス プ レイ、プリンタ
-ネットワークの構成・通信に必要な機器
.LAN、インターネットの構築
-課題レポートのポイント
-定期試験(筆記)
" ,,.哨伊町宮市百面,肺町・".向~
入
課題
第 1四課題
提出
第 2回課題
提出
一ーー一ー→.
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一
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日
2
授業の進め方
-メディア教材を利用して綬換を行う.
量象期尚に標語レポートの拠出
・メディ 71
がある。
・最後に受校して授tt!を行い、メディ 7
1
聖
業の復習 {
耳
E
解度鉱敏}
およびレポート
謀議の解説を行う。
図 4 WBT教材のイメージ
「学習意欲がわく
J
,I
学習に飽きない」であり,受
講者の自由な時間に, PCが あ れ ば ど こ で も 学 習 で
I
疲れない」も低いスコアであり,
Webなどを利用した PCを用いた学習では,常に問
きるという利点の反面, 一 人での学習を継続するこ
題となる項目である 。疲れを感じさせないスクリー
との難しさを表している O 同様に「楽しんで学習で
ンデザインの検討などが必要である 。
きる J
,I
興味関 心がわく」の項目も低いスコアであ
られる O また,
今後,図書館司書課程においてブレンデイツ ド
る。 上記と同様に PCを使用した 一 人による学習で
ラーニングを展開するための参考として,どのよう
あるため,学習に対する動機づけが低いものと考え
な科目がブレンデイツ ドラーニングに適しているか
59
図書館司書課程における WBTによるブレンデイツドラーニングの実践
学習に役立つ
気楽に学習できる
学習に集中できる
学習しやすい
理解が深まる
充実感が得られる
情報量が豊富である
疲れない
興味、関心がわく
楽しんで学習できる
学習に飽きない
学習意欲がわく
親しみがもてる
。
1
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0
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2.
5
2
3
3.
5
4
図 5 受講者のアンケート結果 (
n=26)
図書館経営論
専門資料論
生涯学習概論
情報機器論
児童サービス論
コミュニケ ション論
図書館サービス論
図書館概論
資料組織概説
情報サービス概説
資料組織演習
レファレンスサーピお寅習
図書館資料論
情報検索演習
。
0
.5
1
.5
2
2.
5
3
3
.5
4
図 6 ブレンデイツドラーニングで受講したい程度 (
n=26)
を,受講生に聞いた 。質問は本学で開講している図
5
. おわりに
書館司 書科目について,通常の授業とブレンデイツ
高等教育における e
L
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n
gの進展について概観
ドラーニングによる授業が同時に開講されていたと
し,通学課程において e
L
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n
i
n
g普及の障害となっ
して,ブレンデイッドラーニングによる授業を受講
ているコンテンツ開発の 工数面,コスト面の問題と
したい程度を「そう思う 」 を 5, ややそう思う」
e
L
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n
i
n
gの意義 ・必要性への理解が不足している
r
を 4, r
どちらとも 言 えない 」 を 3, r
あまりそう思
わない」を 2, r
そう思わない」を 1とする 5段 階
ことへの解決策として,ブレンデイッドラーニング
が効果的であることを示した o LMSを導入するこ
で評価させた 。結果を図 6に示す。 図書館経営論を
となく,掲示板やオフィス・アワーの活用および課
はじめ講義科目のスコアが高く,情報検索演習をは
題レポートの提出により,インターネットを活用し
じめ演習科目のスコアが低い 。各科目の授業スタイ
た授 業 の 要 件 を 満 足 さ せ る こ と の で き る ブ レ ン
ルや担当教員の要因もあり,この結果からだけでは
デ イツドラーニングのフレームワークを構築した 。
判断できないが,今回の開発したブレンデイッド
そのフレームワークにもとづき図書館司 書科目 「
情
ラーニングのフレームワークは,講義系の科目で展
報機器論」において WBT教材を開発し授業を実践
開できることを示唆するものである 。
した 。
60
大学図書館研究 LXXXV (
20
0
9
.
3)
大学設置基準では
1単 位 45時 間 ( 講 義 科 目 の
場 合 は 15時間 :教室授業, 30時 間 : 教 室 外 学 習 )
の学習時間を確保することを求めている O 教 室 外 学
習を
WBT学習で保証することで,単位の実質化を
実現する手段 としてもブレンデイ ツ ドラーニングは
効果的であることを指摘した 。
アンケート結果から学習者は WBTを用いた学習
にマイペースで取り組みやすさを感じる一方で,単
調なイメージも持っていると考えられ, 一方的な情
報提示だけでなく,学習者が働きかけることの出来
るインタラクテイブな教材を開発する必要がある 。
また,
I
疲れない」も低いスコアであり ,Webなど
を利用した PCを用いた学習では,常に問題となる
項目である 。疲れや退屈さを感じさせないスクリー
ンデザインやインタフェースの検討が必要で、あるこ
とを示している 。
また,ブレンデイ ツ ドラーニングは知識獲得,演
習,デイスカッションなどの授業の特性により,
WBT学 習 , 対 面 授 業 の ブ レ ン デ イ ン グ 比 率 を 柔 軟
に変更することにより学習効果を高めることができ
ると考えられる。今後は LMSを導入し ,学 習 履 歴
を確認することで,講義科目のみでなく演習科目に
おける単位の実質化を実現する手段として活用し,
さらに効果的なブレンデイツドラーニングを展開し
ていきたい 。
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1世紀の
高等教育の在り方に関する懇談会.“マルチメディ
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1)文部科学省・大学審議会,“グ ローパル化時代に求
められる高等教育の在り方について(答申)平成
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レンデイングによる授業実践と効果.教育システム
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4)中山実,山本洋雄, SANTIAGO Rowena. ブレン
デイッド学習における学習者行動に関する 一考察
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図書館司書課程における WBTによるブレンデイツドラーニングの実践
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