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事後評価報告書(案) - 新エネルギー・産業技術総合開発機構

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事後評価報告書(案) - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
第 11 回研究評価委員会
資料 4-2-11
「最先端システムLSI設計プロジェクト」
事後評価報告書(案)概要
目
次
(頁)
分科会委員名簿・・・・・・・・・・・・
1
プロジェクト概要・・・・・・・・・・・
2
評価概要(案) ・・・・・・・・・・・・・
6
評点結果 ・・・・・・・・・・・・・・・
9
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 研究評価委員会
「最先端システムLSI設計プロジェクト」
(事後評価)
分科会委員名簿
(平成18年8月現在)
氏名
分科会長
後藤
分科会長
代理
中村 道治
門
敏
勇一
岸本 隆正
委員
所属、肩書き
早稲田大学
大学院
情報生産システム研究科
株式会社
日立製作所
日本電信電話株式会社
研究所 部長
野村総合研究所
教授
執行役副社長
マイクロシステムインテグレーション
戦略コンサルティング室
寒川 誠二
東北大学
流体科学研究所
谷口
研二
大阪大学
大学院工学研究科
安浦
寛人
九州大学
大学院システム情報科学研究院
室長
教授
電気電子情報工学専攻
教授
教授
敬称略、五十音順
事務局:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究評価部
1
概
要
作成日
平成18年5月15
日
プログラム(又は施
高度情報通信機器・デバイス基盤プログラム
策)名
最先端システム LSI 設計プロジェ プロジェクト
プロジェクト名
P03021
クト
番号
担当推進部/担当者
電子・情報技術開発部
0.事業の概要
LSI の微細化に伴って生起する設計上の諸問題を解決し、高品質なシステム LSI の設計
技術、及びそれを実用化可能な高効率な標準化設計環境を開発する。微細化回路での信
号動作保証できる設計メソドロジ、テスト容易化設計技術、マスクパターン補正技術、
次世代量産プロセスの標準化を支援する設計技術などを開発し統合して設計生産性の従
来比6倍を実現させる。
Ⅰ.事業の位置付
け・必要性につ
いて
主査
衣川
宏樹、主査
齋藤
雅之
エレクトロニクス製品の価値は、セット機器のシステム機能そのもの
を取り込んだ LSI の設計・開発力に依存するところが極めて大きく、シ
ステム LSI の機能や品質そのものが製品の機能品質を左右しており日本
のエレクトロニクス産業そのものを、システム LSI が支えていると言っ
ても過言ではない。世界の出荷台数が年間 1 億台をはるかに超えるパソ
コン市場や、年間 4 億台の携帯電話市場をはじめ、世界的なデジタル情
報家電へのシフト、ブロードバンド市場、次世代移動体通信システム、
携帯情報端末など多くの市場の牽引役としてシステム LSI の需要が大き
く進展している。 このような、多様化する製品仕様に応えるべく半導
体、特にその製造プロセスは過去大きな進展を遂げた。プロセスの微細
化の進展に伴い、半導体は 1 チップに搭載する機能が飛躍的に拡大し、
これの設計に必要とする人的工数が膨大となりつつある。
トランジスタの集積度は 10 年で 100 倍増加するのに対して、設計生
産性は 10 年で 7 倍しか伸びないというデータもある。特に 130nm 以降
では微細化・低電圧化の進展により設計マージンは益々少なくなり、設
計した LSI が条件によっては動作しないということが多発するように
なってきている。これが直行率の低下、すなわちやり直しの多発とな
り、平均的な設計期間の増大となって現れている。設計期間を短縮する
ためには、サードパーティ IP などの設計資産の再利用を促進することが
必要であり、それを可能とする設計―製造界面のインタフェースモデル
の精度向上と新たな技術開発も必要となっている。直行率改善には、設
計全体を通して一貫した設計手法(デザインメソドロジ)として利用で
きる環境を開発し集約、整備することが必須であり、これによって我が
国の半導体産業の国際競争力を一気に強化することが本プロジェクトの
目的である。
Ⅱ.研究開発マネジメントについて
事業の目標
集積度が年率 58%の増加率より、130nm 世代に比べ 3 年後 90nm 世
代では約4倍と予想されるが、設計の複雑度は前世代に比べ増すため、
その結果、90nm 世代での設計工数は現状に比べ約6倍増加すると予想
される。
本事業では、最先端システム LSI 設計手法の開発により現状技術に比
較して設計効率を6倍向上させることを目標とした。従って、本事業の
目標は、現状技術で 130nm の設計を行った同じ設計工数で、90nm のシ
ステム LSI を完了できることを意味する。この目標は、我が国がより高
付加価値なシステム LSI を世界に先駆けて設計することを可能とし、日
本の産業競争力を飛躍的に向上させるに足る十分なものである。
2
以上の目標の達成度を測定・判断するため設計に必要な項目それぞ
れに年度ごとに指標を設けて時系列ごとに成果を確認した。SoC 設計に
必要な基本工程、タイミング設計、シグナルインテグリティ、パターン
インテグリティー、テスト設計にそれぞれ指標を設け年度ごとに成果物
をまとめてタイムリーに鮮度の高い設計技術を国内半導体メーカ11社
に対して実用化させることとした。
主な実施事項
事業の計画内容
開発予算
(会計・勘定別に
事業費の実績額
を記載)
(単位:百万
開発体制
情勢変化への対応
H15fy
H16fy
H17fy
会計・勘定
H15fy
H16fy
H17fy
総額
一般会計
特別会計
(電多・高度化・石油
の別)
総予算額
550
500
472
1523
550
500
472
1523
標準設計メソドロジ開
テスト設計技術
SI/量産標準TEG
PI検証、共通I/F
経産省担当原課
商務情報政策局情報通信機器課
プロジェクトリーダー
川手
啓一
→
下東
勝博
㈱先端 SoC 基盤技術開発(参加5社)
委託先(*委託先が管
理法人の場合は参加企
㈱半 導体理工学 研究センタ ー(参加11
社)
業数も記載)
最先端システムLSI設計プロジェクトは、平成15年5月~平成18年3月まで
の3年間のプロジェクトである。本事業の実施期間において、研究計画に影
響するような重要な情勢の変化は見られなかった。従って、情勢変化に対応
した特別な変更は行っておらず、当初計画通りの研究を実施した。平成17年
10月7日付けで㈱先端SoC基盤技術開発が解散したため、㈱先端SoC基盤技
術開発で実施していた内容をすべて㈱半導体理工学研究センターに継承し
た。
1)標準設計メソドロジ開発
90nmノード世代のシステムLSI設計におけるシリコンインプリメン
テーション設計フェーズ(RTLtoGDS2)での設計メソドロジSTARCA
D-21を開発し、実用化をおこなった。テスト設計技術、SI/量産 EG 技
術、PI・共通I/F技術の各要素技術を組み込み、アウトプットは設計メ
ソドロジを具現化したデザインキット(推奨ツールセット、ツール実行の
ための標準スクリプト、設計のガイドライン、解析ツールの評価手法、ラ
イブラリ)とそのデザインキットを使う際に必要な設計サポートである。
今回実現された全体最適化をめざす統合的なシステム LSI 設計メソドロジ
Ⅲ.研究開発成果に
の構築における技術イノベーションとして
ついて
①Check and goを小さな設計フェーズ毎に行う
(今回は見積もりフェーズ、リファインメントフェーズ、最終インプ
リメンテーションフェーズの 3 フェーズにわける)
② 予測と予防の技術を導入する
以上を主眼点にして設計メソドロジを構築した。
①は設計のフェーズ毎にそこで達成すべき設計クライテリア(ハンドオ
フ基準)を明確にし、それをクリアできる技術を開発した。その後次のス
テップに手渡していき、設計全体にかかわる大きな後戻りをなくしていっ
た。また、マスク作成の直前ではサインオフ基準を設定し、この基準をク
3
リアすれば製造されたチップが動作することを保証した。
②は、最近のEDAツールでは個々には予測・予防技術が導入はされて
はいますが、設計全体においてはまだ十分には機能していなかった。そこ
でこれら個々の要素技術の性能・機能での限界を考慮しつつ、全体として
最適化してインテグレートしていくというものである。これによっても設
計の後戻りを大幅に削減できることが期待できる。
また、現在の設計では、各種設計の不確定要素は設計マージンとして設
計のオーバヘッドになっている。そのために設計 TAT も増加していた。
そこで V3.0 では設計マージン削減を目指した。設計の不確定要素を解析
し、適切な設計マージンを追求し、マージン自体の半減を目指し、インス
タンスベースの IR ドロップ考慮、オンチップバリエーション考慮の遅延
計算、新しい設計制約に基づく設計ガードバンドの削減、マルチモード解
析、設計マージン削減、階層サインオフ手法の開発を通じ、設計 TAT の
削減を行った結果、トータルの設計期間は当初の目標どおり 1/6を実現し
た。
2)テスト設計技術
SI 対応テストの DFT 組み込みと評価、テストパターン生成プログラム
を開発。
新しく提案したディレイ故障モデル(ITC に論文採択発表)を反映し、
ディレイテストパターン生成プログラムの開発を行った。実速度のディレ
イテストについて、開発した実機動作パスを考慮した DFT 機能と、ディ
レイテストパターンの品質向上を組み合わせたシミュレーションレベルの
評価を実施した結果、 大幅な品質向上効果と TAT 短縮を確認、当初の目
標を達成した。
3)SI/量産標準TEG
標準 TEG の試作、SI 特性、バラツキなどの評価モデリングにより
90nm ASPLA 標準プ
ロセスのパラメータ抽出等により TEG データのデータベース化を予定ど
おり達成した。また次世代 TEG の仕様開発を行った。
TEG 試作では、GE/LP 版 3.3V 用 I/O ライブラリならびに PLL 検証用
TEG の試作・評価を完了した。SI 特性評価では東京大学と共同で動的
IR-Drop 評価 TEG の試作・評価を行い、サンプリングオシロスコープマ
クロが最大分解能 1ps、測定レンジ最大可変幅 64 倍という世界最高性能
で動作することを確認した。ばらつき評価ではチップ内ばらつき評価用
DMA チップの測定評価技術をマニュアル化すると共に、クライアントへ
の技術移転を行った。また、65nm 世代におけるクライアント各社間の緩
やかな設計互換性を確認するためのツールを提供すること、ならびに設計
メソドロジへ 65nm 世代の実シリコン情報を提供することを目的として、
SPICE パラメータ抽出、配線パラメータ抽出、素子信頼性評価、配線信
頼性評価、プリミティブ特性評価、メモリ特性評価、アナログ精度評価、
素子ばらつき評価、ショット内ばらつき評価、SI 評価、ダイナミック IR
ドロップ評価、セットアップ・ホールドタイム評価、リーク電流評価の
13 項目に関して、65nm 共通 TEG 仕様書を作成した。
4) PI検証、共通I/F
検証フロー、マスクデータ処理の高精度化ノウハウを確立。設計への
フィードバッ
クを織り込んだツール開発を行った。PIマージン不足部の改良レイアウ
ト自動生成プロトタイプツールの開発を完了した。また設計メソドロジへ
のフィードバックとして、”設計側意図の正確な伝達”による、OPC処
理時間短縮に大きな効果のあるダミーパターンの配置方法を開発。 メソ
ドロジへの技術トランスファを完了した。
4
投稿論文
「査読付き」7件、「その他」11件
「出願済」7件、「登録」0件、「実施」0件(うち国際出願 0
件)
開発した設計メソドロジ(STARCAD-21)が実設計に適用できるかどう
かを検証するために実用化プロジェクトを行った。株式会社ルネサステクノ
ロジ様より、32 ビットの汎用 CPU である SH-4 コアの RTL コードの提供
を受け、STARCAD-21 のフロー開発者自らの手で LSI のインプリメンテー
ションを行なった。また、ASPLA 社の 90nm ローパワープロセスによって
試作をした。インプリメンテーションの設計 TAT の目標を 12 週間に設定し
た。また、タイミング、ファンクション、SI 等サインオフ項目に対し設計
上でエラーなしとして試作を行うことにした。その結果、設計 TAT はほぼ
12 週間を達成し、130nm 世代から予測された 90nm 世代の設計工数を約3
3%削減し、設計効率アップを見ることができた。試作後のチップもファー
ストシリコンで一発動作が確認できた。
STARCAD-21 はすでに実用化されている。クライアント各社で実設計に
Ⅳ.実用化、事業化
の 見 通 し に つ い 直ちに使用してもらうために、2 段階の技術移管プログラムを実施した。1
つは、幅広く開発成果を移転するために成果報告会を毎月 1 回の割合で開催
て
した。クライアントからの技術者出席者も延べで 800 名を越えた。
もう1つは、個別技術移管であり、これは各クライアントでの設計環境と
STARCAD-21 とのインテグレートのために、各社個別の事情に対応が必要
であり各社固有の情報を隠す必要があった。そのため、セキュリティが確保
された TT(Technology Transfer)ルームを 4 室設置し、そこで各社個別に
行った。各社別技術移管のゴールを決め、移管を進めた。これにより、各社
別に非常にきめ細かい移管ができた。2006 年2、3 月は集中技術移管も実
施し、クライアントでの成果取り込みが行われた。
特
許
事前評価
Ⅴ.評価に関する事
中間評価以降
項
作成時期
Ⅵ.基本計画に関す
る事項
変更履歴
平成14年度実施
平成18年度
5
電子・情報技術開発部
事後評価実施予定
平成15年3月
なし
担当
技術開発課題作成
「最先端システムLSI設計プロジェクト事業」実施体制
NEDO技術開発機構
助成率:1/2
株式会社 先端 SoC 基盤技術開発
株式会社 半導体理工学研究センター
・研究項目:
パターンインテグリティーおよび
共通インターフェース技術
・研究項目:
① 90nm 設計手法の標準化技術
② テスト設計技術
③ シグナルインテグリティーおよび
量産展開技術
共同研究
東京大学
・研究項目:設計メソドロジー技術
九州工業大学
・研究項目:テストパターン作成技術
6
「最先端システムLSI設計プロジェクト」
(事後評価)
評価概要(案)
1.総 論
1)総合評価
高度情報社会の進展に伴い、情報家電や携帯端末等の情報通信機器に対する高機能化、低消費電力
化、低コスト化、小型化等への要求が強まっており、LSI 設計生産性の向上は、設計生産性の危機を
克服するために焦眉の課題である。本プロジェクトはこの製造プロセスとのインターフェイスに焦点
を絞りながら、設計工数を大幅に短縮できる設計メソドロジ及び、業界標準となるべくシステム LSI
の共通プラットフォームを開発し、11社のクライアントに提供し実用化を図ったこと、EDA 用数理
モデルの仕様をベンダーに提示してソフト開発を依頼する国内統一組織ができたことは高く評価でき
る。本プロジェクトにより、国産 IP をベースにした国産設計ツール開発の流れが定着し、我が国の
基幹産業としての半導体産業の継続的発展に寄与するものと考える。
また、設計技法と設計環境整備の開発に重点があり、日本の企業が海外と競争する中では、設計技
法と設計環境整備という設計総合力を高める技術開発によって、優位に立つことが重要であり、その
ことに対する成果としては極めて高いものがあった。しかしながら、EDA ツールの開発という要素技
術を、海外の EDA ベンダーに委託した点は、技術の空洞化という懸念があり、要素技術においても長
期的かつ総合的な開発戦略が必要である。また、プロジェクトの成果を半導体産業界に根付かせ、コ
スト、性能及び機能面で競争力のあるシステム LSI を市場に出していくためのフォローアップを今後
さらに推進して行って欲しい。
グローバル化の中で、何を公開し、何をアウトソーシングし、何を自前開発するのかという基本方
針について、十分な説明が無かったことは極めて残念である。
2)今後に対する提言
今回の EDA ツール開発プロジェクトは、製造と設計を一本化して集積回路の TAT 短縮と歩留まり向
上を目指した計画である。開発すべき技術項目は膨大であり、この意味では、本プロジェクトの開発
計画は緒についたばかりである。
過去 30 年かけて発展してきた EDA の歴史を考えると、長期的な視点で本プロジェクトの成果を見定
める必要がある。
本開発をさらに有効なものとするには、STARC に参画する半導体企業は本プロジェクトで開発した
ツールの検証を支援し、ツールの問題点などについて企業間で知識の共有を図る仕組みの構築が望ま
しい。
次期プロジェクトにおいても、プロセスフレンドリ設計メソドロジ開発では、キャッチアップでな
く、何を戦略的機能として位置付けて、コスト、機能及び性能で勝てるシステムLSI開発に貢献す
る目標設定が重要となるが、Selete や MIRAI のようなコンソーシアム同士の深い連携をとりながら各
社の共通技術項目を明確にして、企業でスムーズに実用へ移行するようなさらなる企画、実行を望む。
今後は、LSI 設計生産性の危機は今後さらに顕在化すると予想され、65nm 世代以降を見た研究開発を
産学連携で加速すべきである。将来の生産ラインに各社が大規模投資する時代は終わり、共同ファブ
またはファブの相互活用を図るべきである。また、半導体産業の、製品市場、製造装置、EDA ツール
などのグローバル化や標準化に対応して、日本の業界としての長期的なビジョンと戦略の明確化も望
む。
2.各 論
1)事業の位置付け・必要性について
すべての半導体企業に期待されている高生産性設計ツールの開発に対し、産学連携のもとに衆知を
結集してタイミングよく成果を出すために国として助成することは、国内産業の優位化を目指す NEDO
の政策として的を得たものである。また、寡占化したEDAベンダーが存在する状況にあって、産官
7
学が連携して、特定の標準プロセスを構築して、そこで発現した微細プロセス上の物理課題を標準設
計メソドロジとして確立していく手法は開発の効率性、EDAベンダーに対する優位な関係を構築す
る観点からも妥当であり、産業界の利用を前提にした今回開発の有用性はある。
一方、90nm はすでに実用化に入っており、集積回路設計のソフトが米国の二大 EDA ベンダーに
集約されている現状を鑑みると、EDA ツールの開発に補助金を出す時期が遅かった気がする。また、
DFM 技術においては、90nm 世代でもあり、その世代に必要な基盤的な部分に留まっているが、国際競
争力の点から、遅れないような開発が今後必要である。さらに、費用対効果の評価については、開発
成果が今後の設計活動で活用されるために、十分なデータがなかったのは残念である。設計方法論は
日本企業を優位にさせる国際競争力の源泉ではあるが、その他の新技術開発項目がなかったことは残
念であり、今後の計画では考慮して欲しい。
なお、知的財産の保護、外国へのノウハウ流出に関する配慮をプロジェクトの準備段階から検討され
ていたが、日本に対して不利益がなかったか今後継続的な検証が必要である。
2)研究開発マネジメントについて
半導体の微細化の進行に伴い、大きな問題となっている事項について集中的に取り上げており、研
究開発目標は妥当である。研究計画も十分に検討されたものであり、妥当である。有力な企業群によ
る強力かつ密接な連携体制がとられている。また、 90nm 世代に焦点を絞り、標準プロセス構築を担
う ASPLA とこの世代の標準SOC設計プラットフォームを担う STARC との組織の役割分担と連携も効
率的に進められた。実施体制についても、日本の有力半導体メーカーが参画する一方で、設計ツール
はグローバルスタンダードの設計会社が参画しており、世界的にも競争力のある開発体制が組めたと
評価できる。プロジェクトリーダは十分なリーダシップを発揮して、目標を達成したことを高く評価
する。
しかしながら、開発目標 設計TATを定量的に 1/6としているが、設定に対しては、製品依存
が強く、一般化された科学的根拠がうすいように感じられる。今後、測定方法の精度の一般性を高め
るようにデータの蓄積を行って欲しい。研究開発目標としては、90nm に留まらずさらに先端プロセス
をも念頭においた開発を期待したい。また、知的財産の確保、ノウハウ流出の防止に対する目標や仕
掛けを当初計画に明示すべきであったし、開発を外国の EDA ベンダーに任せる方式で、将来を考えて
真に技術的成果が国内の参加企業に蓄積されたかどうかも疑問である。
3)研究開発成果について
当初目標とするトータル設計期間と開発工数の削減などEDA関連費用の圧縮に繋がる具体的成果
は十分に得られたと判断でき、現在の世界水準に十分、達している。プロジェクトに参画する半導体
企業の間で技術項目が共有化されており、半導体11社に対する成果の普及に関しても精力的に行っ
ている。
しかしながら、知財化にこだわらずに技術的に先行するというポリシーは一考に値するが、その戦
略がしっかりと練られているかどうか疑問が残る。例えば特許については、直接の担当者だけでなく、
部外者との共同出願などもさらに活性化すべきであった。また、STARC自身からの論文発表が少
なく、本成果を著名な国際会議で発表していないのは残念である。ノウハウの開示時期を調整すると
いう知財戦略であったと理解するが、今後の発表可能時期をみて発表することを望む。費用対効果に
ついては、今後の活用であると理解するが、できるだけ定量的に継続的にデータを収集することを望
む。
4)実用化、事業化の見通しについて
現状では世界最高水準の設計ツールとなっており、クライアントのメリットは相当大きい。移管プ
ログラムが計画されており、クライアントが実際のチップ設計に使用したことは実用化レベルに技術
が完成したことを証明している。日本の半導体企業への技術移転に向けて多大な努力をし、移転を
図ったことを高く評価する。成果の普及の仕組みもクライアント各社のメンバーが研究チームに加
わっており、成果を国内半導体企業で活用するための普及活動にも取組み、徐々に効果を上げている
しかしながら、外販に関しては、技術サポート会社との提携を通じて、拡販するという計画もある
が、、技術の流出も含めて慎重に検討すべきである。クライアントでどの程度の効果が出たかの数量
的な評価も望まれる。
本プロジェクト終了後も、普及活動を継続するための仕掛け、活動資金への配慮が必要である。本格
的に活用されるためには、プロジェクト期間中の研究開発と同じくらいの努力を必要とする。また、
8
今回の EDA ツールの開発で得られたノウハウを生かして次回のプロジェクトではさらに高いレベルの
ツール開発を目指すことを期待する。今後の課題として、産業技術としての観点からの詳細なデータ
を得ると共に事業化までのシナリオの検討を十分に行うことが求められる。また、既存市場だけでな
く、ダイヤモンドの特性を生かした新市場創出への注力を希望する。
9
評点結果
評点の平均値
1.事業の位置付け・必要性について
2.7
2.研究開発マネジメントについて
2.0
1.9
3.研究開発成果について
4.実用化、事業化の見通しについて
2.3
0.0
1.0
評価項目
2.0
平均値
3 .0
素点(注)
1.事業の位置付け・必要性について
2.7
A
A
B
B
A
A
A
2.研究開発マネジメントについて
2.0
B
A
A
C
B
B
C
3.研究開発成果について
1.9
B
B
B
B
B
B
C
4.実用化、事業化の見通しについて
2.3
C
A
A
B
A
B
B
(注)A=3,B=2,C=1,D=0 として事務局が数値に換算し、平均値を算出。
<判定基準>
(1)事業の位置付け・必要性について
(3)研究開発成果について
・非常に重要
→A
・非常によい
→A
・重要
→B
・よい
→B
・概ね妥当
→C
・概ね妥当
→C
・妥当性がない、又は失われた
→D
・妥当とはいえない
→D
(2)研究開発マネジメントについて
(4)実用化、事業化の見通しについて
・非常によい
→A
・明確に実現可能なプランあり
→A
・よい
→B
・実現可能なプランあり
→B
・概ね適切
→C
・概ね実現可能なプランあり
→C
・適切とはいえない
→D
・見通しが不明
→D
10
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