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農林漁家民宿おかあさん100選 報告書

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農林漁家民宿おかあさん100選 報告書
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
農林水産省補助事業
広域連携共生・対流等推進交付金事業
平成19年度 都市農村交流技術的支援事業
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農林漁家民宿おかあさん100選
報告書
平成20年3月
財団法人都市農山漁村交流活性化機構
1
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
はじめに
農林漁家民宿は、農山漁村地域を舞台に、ゆとりと安らぎを求める国民のニーズを実現
する都市と農山漁村の共生・対流の担い手として期待されているますが、その滞在の普及・
定着を図るためには、国民に対して農山漁村の資源や人材の魅力や安全・安心な滞在を提
供できる等、農林漁家民宿における安全面を含めた品質の維持・向上は欠かせません。
平成19年度、農林漁業体験民宿安全管理等のための技術的支援事業では、
「 おかあ
さん100選を設置し、農林漁家民宿の品質の管理を担っている女性実践者の中でも、
各地域において都市農村交流のオピニオンリーダーとして活躍している方々から選定
した20人の認定者の協力を得て、農林漁家民宿間での情報交換やネットワークの構築
等の活動を展開していくことを確認いたしました。
認定された方たちは、民宿経営に農山漁村らしさを発揮して、それぞれの地域の活性
化に大きな影響を与え、輝いています。
訪づれる人達に、自然体で、ありのままの姿で接し、田舎での癒しの空間を提供して
います。また、新鮮な食材や、手作りの味、伝統料理を通じて、安心で安全な食の提
供も地域の大きな宝として活かされています。
今後、このような活動を通じて、国内に十分な品質が保たれた農林漁家民宿が益々普
及することを希望するところです。
本調査研究にあたり、ご多忙の折、当事業の調査に協力をいただいた農林漁業体験民
宿のご担当者、関係団体のご担当者、そして、多くの助言をいただいた委員及びアドバ
イザー各位、農林水産省・国土交通省の担当官の方々にあらためて深く感謝申し上げま
す。
平成20年3月
(財)都市農山漁村交流活性化機構
理
2
事
長
髙
木
勇
樹
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
目
Ⅰ
次
安全管理等のための技術的支援事業概要
1.
事業概要
……
1
2.
事業概要図
……
3
5
Ⅱ
農林漁家民宿おかあさん100選サミット
1.
おかあさん100選サミット実施報告
……
2.
認定者意見交換会実施報告
…… 42
Ⅲ
おかあさん100選認定者
現地調査報告
1.
現地調査事例 -1
ファームインつっちゃんと優子の牧場のへや
…… 64
2.
現地調査事例 -2
民宿
…… 68
3.
現地調査事例 -3
ファームイン古来里
…… 73
4.
現地調査事例 -4
民宿
…… 77
5.
現地調査事例 -5
農家民宿
いちょうの樹
…… 81
6.
現地調査事例 -6
農家の宿さこんうえの蛙
…… 85
Ⅳ
富士見荘
みづの荘
資料
1.
おかあさん 100 選マスコミ記事
3
…… 89
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
Ⅰ 安全管理等のための技術的支援事業概要
1.農林漁家民宿の品質の維持・向上(安全管理含む)の普及概要
1)目的
農林漁家民宿は、農山漁村地域を舞台に、ゆとりと安らぎを求める国民のニーズを実現
する都市と農山漁村の共生・対流の担い手として期待されているが、その滞在の普及・定
着を図るためには、国民に対して農山漁村の資源や人材の魅力や安全・安心な滞在を提供
できる等、農林漁家民宿における安全面を含めた品質の維持・向上は欠かせない。
そこで、農林漁家民宿の品質の管理を担っている女性実践者の中でも、各地域において
都市農村交流のオピニオンリーダーとしての活躍している者から選定した「農林漁家民宿
おかあさん100選」の認定者の協力を得て、農林漁家民宿間での情報交換やネットワー
クの構築等の活動を展開していくことを通じて、国内に十分な品質が保たれた農林漁家民
宿の普及を図る。
2)取組概要
「農林漁家民宿おかあさん100選」を活用した品質(安全管理含む)の維持・向上の
普及を図るために、以下の取組を行った。
①農林漁家民宿おかあさんサミットの開催
認定者等をパネラーにしたミーティング(意見交換会)の開催を通して、全国の農林
漁家民宿における品質の維持・向上の普及を図る。
②専門家による農林漁家民宿の品質(安全管理含む)の維持・向上のあり方についての
検討
③その他、農林漁家民宿の品質(安全管理含む)の維持・向上に係るネットワークの構
築や情報収集等に係る取組
4
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
3)委員会・サミット開催日程
月
日
委員会名
平成19年9月7日
第1回
農林漁家民宿おかあさん100選選定委員会
平成19年10月24日
第2回
農林漁家民宿おかあさん100選選定委員会
平成19年12月26日
第3回
農林漁家民宿おかあさん100選選定委員会
平成20年1月29日
第4回
農林漁家民宿おかあさん100選選定委員会
平成20年2月28日
第1回
おかあさんサミット・意見交換会
平成20年2月28日
第1回
おかあさん100選認定者
意見交換会
4)認定者現地調査
月
日
調査地
調査派遣者
平成20年1月26日、27日
ファームインつっちゃんと優子の牧場のへや
村上 由紀 委員
平成20年2月5日、6日
農家民宿 さこんうえの蛙
桐木 元司 委員
平成20年2月8日、9日
ファームイン
桐木 元司 委員
平成20年2月13日、14日
農家民宿 いちょうの樹
手塚 元廣 委員
平成20年2月16日、17日
民宿
富士見荘
村田 昭夫 委員
平成20年2月24日、25日
民宿
みづの荘
青木 辰司 委員
RAUM
古久里来
5)委員名簿
●平成19年度農林漁家民宿おかあさん100選選定委員
氏
名
◎委員長
所属・役職
◎青木
辰司
東洋大学
桐木
元司
(株)ホスピタリティトレーニングテクノロジー
目
光紀
社会学部
教授
全国地方新聞社連合会
環境計画
代表
代表取締役
政策委員長兼副会長
手塚
元廣
一級建築士
中根
裕
村上
由紀
(有)食養生
村田
昭夫
(社) 日本ツーリズム産業団体連合会
(株)ツーリズム・マーケティング研究所
代表
取締役主席研究員
食文化プランナー
広報・啓蒙委員会委員
※委員長以下の順番は氏名の五十音順にて表記。
●農林漁家民宿の質の維持・向上に係るオブザーバー
氏
名
所属・役職
山﨑
真弓
高知県 農林水産部 地産地消課 チーフ(まちむら交流担当)
井上
弘司
飯田市
斉藤
豪
企画部
企画幹(観光カリスマ認定者)
(社)全国農協観光協会
地域振興推進部
5
マネージャー
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
2.農林漁家民宿おかあさん100選事業概要図
農林漁家民宿おかあさん100選
~都市住民にとって魅力的な農林漁家民宿の普及・促進~
農林水産省
国土交通省
○グリーン・ツーリズムの展開
連
携
○国内観光の振興
○農林漁家民宿の普及・促進等
○農山漁村部の観光ビジネスの展開
“農林漁家民宿おかあさん100選”選定委員会
アンケート
調査等
審査・選
都道府県等
推薦
確認
定
“農林漁家民宿おかあさん100選”
紹介・公開
全国の農林漁家民宿における“もてなし”・“食”・“施設”等の
質に対する意識とスキルの普及
全国の農林漁家
民宿による自主
的な質の維持・
向上の取組
全国の農林漁家
民宿のネットワ
ークの構築
6
旅行業者、都道府
県等の観光部
局・観光協会への
情報提供
都市住民等の
農林漁家民宿
のイメージの
定着
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
7
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
Ⅱ 第1回農林漁家民宿おかあさん100選実施報告
1.
おかあさん100選サミット実施報告
平成 20 年 1 月 29 日に発表された「農林漁家民宿おかあさん100選」第1回選定者の
認定式、及び、選定されたおかあさんの経営内容や活動実績などを紹介して、農林漁家
民宿経営者及び新規開業希望者への品質の維持・向上の参考にしていただくためのパネ
ルディスカッションから成る「農林漁家民宿おかあさんサミット」を開催した。
(1)「農林漁家民宿おかあさん100選」の趣旨
良質な農林漁家民宿を拡大していくには人材育成が必要であり、農家民宿を成功させて
いる人に学ぶことは多い。自身の農林漁家民宿経営の安定に成功し、地域の活性化にも影
響力を発揮している農林漁家民宿経営の女性を選定。これらの人々の経営内容や活動実績
などを紹介する。
このことを通じ、農林漁家民宿経営者及び新規開業希望者への品質の維持・向上の参考
にしていただくとともに、都市部へのイメージ戦略を検討していく上でその活用を図るこ
ととする。
(2)「農林漁家民宿おかあさん100選」選定委員会
1) 選定委員
・グリーン・ツーリズム 青木辰司(東洋大学 社会学部 教授)
・ホスピタリティ 桐木元司((株)ホスピタリティートレーニングテクノロジー代表取締役)
・地方広報 目光紀(全国地方新聞社連合会 政策委員長兼副会長)
・建築 手塚元廣(環境計画代表 一級建築士)
・観光 中根裕((株)ツーリズム・マーケティング研究所 取締役主席研究員)
・食文化 村上由紀((有)食養生 代表 食文化プランナー)
・広報 村田昭夫((社)日本ツーリズム産業団体連合会 広報・啓蒙委員会委員)
2)オブザーバー
・地方行政 井上弘司(飯田市 企画部 企画幹 観光カリスマ)
・民宿協議会 斉藤豪((社)全国農協観光協会地域振興推進部 マネージャー)
・地方行政 山崎真弓(高知県 農林水産部 地産地消課 チーフ(まちむら交流担当)
・農林水産省・国土交通省職員
(3)「農林漁家民宿おかあさん100選」選定基準
1)旅館業法の営業許可を取得した農林漁家民宿を経営している女性
2)農林漁家民宿を「事業」として継続的に営んできた女性
3)農林漁家民宿の施設の運営や安全管理等を担って行っている女性
4)都市住民等との交流を積極的に推進した実績のある女性
5)農林漁家民宿おかあさんのイメージに即している女性
(4)選定のスケジュール
1)平成 19 年 9 月 7 日、農林漁家民宿おかあさん 100 選選定委員会の発足
2)平成 19 年 11 月 13 日~12 月 6 日、農林漁家民宿おかあさんの募集
3)平成 19 年 12 月 26 日、農林漁家民宿おかあさんの第1回選定
4)平成 20 年 1 月 29 日、農林漁家民宿おかあさん第1回選定結果の公表
5)平成 20 年 2 月 28 日、農林漁家民宿の安全と質の維持・向上に係るミーティング
8
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
(5)「農林漁家民宿おかあさん 100 選」第1回認定者(敬称略・都道府県順)
都道府県
市町村
民
宿
北海道
新得町
ファームイン つっちゃんと優子の牧場のへや
湯浅 優子
青森県
弘前市
ペンション&農家レストラン ル・カルフール
田村 えり子
宮城県
石巻市
民宿のんびり村
坂下 清子
山形県
鶴岡市
知憩軒
長南 光
群馬県
川場村
民宿 富士見荘
関 せき子
山梨県
道志村
民宿 北の勢堂
山口 かおる
長野県
伊那市
蔵の宿 みらい塾
市ノ羽 幸子
長野県
大鹿村
山村体験館 たかやす
伊東 和美
新潟県
柏崎市
荻ノ島かやぶきの里
中西 ユリイ
富山県
南砺市
民宿 いなくぼ
米倉 みつ子
石川県
能登町
郷土料理の宿さんなみ
船下 富美子
岐阜県
高山市
民宿 みづの荘
水野 美代子
岐阜県
郡上市
自然食泊 愛里
石田 賀代子
愛媛県
内子町
ファームイン RAUM 古久里来
森長 禮子
高知県
梼原町
農家民宿 いちょうの樹
上田 知子
高知県
四万十町
農家民宿 はこば
田辺 客子
熊本県
南小国町
農家の宿 さこんうえの蛙
河津 慶子
大分県
宇佐市
百年乃家ときえだ
時枝 仁子
大分県
佐伯市
民宿 まるに丸
橋本 正恵
宮崎県
北郷町
農園ぴくにっく
古谷 昌子
9
名
氏
名
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
ゆあさ ゆうこ
①湯浅 優子
北海道新得町
ファームイン つっちゃんと優子の牧場のへや
<特別なものは何もない、あるのは「あるがままの農の暮らしと
営み」のおすそ分け「心のふるさと」、何度も訪ねてくれる方と共
有する時間と空間に感謝です>
●収容人数5名の小規模の洋風
施設を経営。無農薬・無化学肥料
で栽培した自家菜園の食材を中
心とした地元食材を使って、体に優しい家庭料理を提供。
地域活動としては、景観保全に関わるNPO十勝グランド
ワークトラストや北海道のスローフードの取組に参加。
TEL 0156-65-3548
http://shintoku.org/details/tucchan-yuko.html
たむら
え り こ
②田村 えり子
青森県弘前市
ペンション&農家レストラン ル・カルフール
<私が育てた「めごっこ達」や里山の恵みを食卓へ。私との出会いで
みんなが元気、あなたの旅はりんご色>
●小規模の洋風施設で、農家民
宿と農家レストランを合わせて
経営。野菜や果物は地元の素材
にこだわり、手作り料理を提供。修学旅行生の受入
ができるよう、
「津軽・ほっとステイネットワーク(津
軽地域5市町村の受入団体による連携組織)」を設立
するなど、地域のリーダーである。
TEL 0172-83-2324
http://lec.sato-yama.com
10
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
さかした きよこ
③ 坂 下 清子
宮城県石巻市
民宿 のんびり村
<地域の子供達や訪れる人たちに、自然の恵みに感謝をし、の
んびりとくらす大切さを伝えていきたい>
●2室10名収容の小規模な漁家民宿を経
営。水揚げした牡蠣の殻を外す「牡蠣むき」、
仕掛けた網を上げる「網起こし」、網にかか
った魚を網から外す「魚外し」など、坂下家
の普段の生活そのままの体験メニュー。食事についても、朝晩刺
し網などでその日に獲れた魚が出される。
TEL0225-64-2725
http://www4.famille.ne.jp/~honami/nrr/nonbirimura.html
ちょうなん みつ
④長 南 光
山形県鶴岡市
知憩軒
<あるものに手を加え、古いけど新しい、懐かしいのに新鮮、田
舎風なのにおしゃれ、という非日常が日常であることの暖かさに
出会う空間を提供しています>
●1日1組限定の農家民宿で、
農家レストランを併設。「献立は
その日の畑と相談」がモットーで、
食材は畑から摘んできたばかりの旬の野菜と果実が中
心。味付けは薄味で化学調味料を使わないなど、工夫さ
れた料理を提供。宿泊部屋は離れにあり、のんびりとし
た時間を演出。
TEL0235-57-2130
http://www.ques.co.jp/syonai/kanko/shisetu/chikeiken/
11
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
せき
せ き こ
⑤ 関 せき子
群馬県川場村
民宿 富士見荘
<地域ぐるみで、おもてなしする。地域の人にも、訪れる人た
ちにとってもお母さん役です。夏に来る子供達の元気な声が聞
けるのが楽しみです。>
●茅葺き屋根部分の昔の大
広間(茶の間)を解放し、家
族的な接客に努めている。自家産の籾糠肥料を使用
するなど、環境にやさしい農業を実践。お米と野菜
は自宅の棚田や畑から取れたものを使用し、旬の料
理を提供。高齢者にはお粥を提供するなど配慮。
TEL0278-52-3061
やまぐち
か お る
⑥ 山 口 かおる
山梨県道志村
民宿 北の勢堂
<素朴な村里で、おかあさんと慕われて、一度泊まったら親戚に、
2 度目で家族に、そんな親しみのある宿です。>
●築150年を経た茅葺き屋根
の養蚕農家を活用した農家民宿。
川魚を囲炉裏で焼いたり、青竹に
入った地酒を囲炉裏で暖めるな
ど、囲炉裏の間を利用した「昔の田舎」の雰囲気を演出。
手間を惜しまないサービスを実施。
TEL0554-52-2102
http://www.yamanashi-kankou.jp/search/map_detail.
html?id=c4077
12
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
いち の は
ゆきこ
⑦ 市 ノ羽 幸子
長野県伊那市
蔵の宿 みらい塾
<「伊那谷は気の里」、
「おかみさんの元気を分けてください。」と
やってくる人たち。元気な私がいるからね!いつでもいらっしゃ
い。>
●築100年の古民家(母屋=食
堂、交流場所)と築130年の蔵(宿
泊場所)をリフォームした施設。囲
炉裏を利用した食事(五平もち、焼
きもの(きのこ・魚など))、季節の野菜・山菜等を組み合
わせた料理をお膳で提供。食材の7割は自家産で、自ら作
った堆肥で土づくりを行い、栽培された無化学肥料の野菜
を使用。
TEL0265-98-2168
http://www1.inacatv.ne.jp/~ichinoha/
いとう かずみ
⑧伊東 和美
長野県大鹿村
山村体験館 たかやす
<山村のくらし全てが体験。野の花とかまいの心でおもてなし。
自由に過ごす癒しの空間提供>
●交流事業に関わり20年、国内
の農村女性による農家宿泊の先駆
的な存在。大鹿村の魅力をあるが
まま提供すべく、納屋を改造した
自炊施設や囲炉裏つきの部屋等を
提供し、食事はお客様の要望により提供。「おかあさん」
と慕うリピーターも多く、囲炉裏での食事を通じての交流
が何よりも魅力。
TEL
0265-39-2486
13
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
なかにし
ゆ り い
⑨ 中 西 ユリイ
新潟県柏崎市
荻ノ島かやぶきの里
<「またくるね。」といって帰っていくのが私の元気の源。
心のこもったお母さんの笑顔が忘れられないと、また訪れて
くれる>
●茅葺き屋根の環状集落で
有名な荻ノ島の顔とも言え
る代表的な民宿。集落の人
たちと一緒に作った自家製の旬の野菜を中心に食事を
作り、味付けも素材を引き立てるよう昔ながらの料理を
提供。お客様には囲炉裏を囲んで、農業を中心とした昔
からの暮らしのこと等をお話しする語り部でもある。
TEL0257-41-3252
http://www.jonnobi-takayanagi.jp/stay/oginoshima/oginoshimafurusatomurakumiai.html
よねくら
み つ こ
⑩ 米 倉 みつ子
富山県南砺市
民宿 いなくぼ
<子供達と山登り体験できるほど、元気がとりえ。自給自足が
モットーで、新鮮な野菜山菜でもてなします>
●山間地の囲炉裏がある民家(農家)
をそのまま民宿として利用。お客様に、
里帰りした親類や家族の一員を迎え
るような雰囲気でおもてなしをして
いる。地域農産物の消費拡大と郷土料理を次世代に継承して
いくため、利賀村特産加工組合の副組合長として、特産品の
振興や高齢者の生き甲斐対策に取り組む。
TEL0763-68-2432
http://www.clubfarm.jp/stay/f547s17da2pf17.php
14
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
ふなした
と み こ
⑪ 船 下 富美子
石川県能登町
郷土料理の宿 さんなみ
<地下の貯蔵庫には、自家製のいしり、野菜の漬物など手作りの
食材を大切に保存してお客様をお待ちしております。ほっとする
ひとときを皆さんに味わっていただくために。>
●能登ならではの佇まい、新鮮な旬の
食材、伝統料理など、郷土色を出すよう
に努め、サービスの質を落とさないように1日3組までに限定。
体のことを思いやる「食治(しょくじ)」を提唱し、同じ食材
でも好みに応じて調理方法を変更し、お客様ごとに違った料理
を提供するなど、食事に対する工夫と配慮が特徴。
TEL0768-62-3000
http://www.noto.ne.jp/sannami/
みずの
み よ こ
⑫水野 美代子
岐阜県高山市
民宿 みづの荘
<飛騨高山の田舎心と喜んでもてなす、美味しい手作り料理と
楽しくなるお母さん>
●囲炉裏を囲み、昔ながら
の暮らしを方言で語ることで、
内面的な心と心のふれあいに
力を入れている。自家栽培し
た野菜を使用した郷土料理を提供し、地域の食文化を紹
介。また、顧客のニーズに合わせて得意とするオリジナ
ル料理を提供。
TEL0577-53-2707
http://www10.ocn.ne.jp/~mizuno/
15
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
いしだ
か よ こ
⑫石田 賀代子
岐阜県郡上市
自然食泊 愛里
<山里に子供の声がひびき、お年寄りが元気な村を夢みてい
ます>
●農家民宿と農家レストランを併
設。使用する食材のうち、自家産と
地場産の食材を9割使用。明宝地区
の旅館・民宿の女将たちで結成した
「ビスターリマーム」のリーダーとして、料理メニューの開発
や自然体験団体「山と川の学校」との連携によるイベント等の
開催など、都市農村交流の推進に取り組んでいる。
TEL
0575-87-2400
http://www5.ocn.ne.jp/~airi/
もりなが れいこ
⑭ 森 長 禮子
愛媛県内子町
ファームイン RAUM 古久里来
<自分の田舎に「ただいま」と帰ってきてもらえる宿を心がけ
ています>
●オーナーが暮らす「母屋」と
「宿泊棟」に分離しているが、
母屋のパブリックスペースへの
宿泊者の出入りを自由にし、オーナーや地域住民との交
流に配慮した接客に努めている。食事(創作和食)は、
自家で収穫された旬の農作物と近隣の生産者から購入
した農作物・加工品(味噌など)を食材として提供。
TEL
0893-44-2079
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/kokuriko/
16
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
うえだ ともこ
⑮上田 知子
高知県梼原町
農家民宿 いちょうの樹
・ ・ ・
<「田舎のない人の、いなかになりたい」>
●お客様には「農山村のくら
しありのまま」と「家族ぐる
みのあたたかいもてなし」を
提供。家族に「役割分担」が
あり、
「体験」と「くらし」を
切り離さず自然体で受け入れていく工夫を実践。また、
体験を農家の方に頼んだり、直売所を紹介したりする
等、地域にその経済効果や交流が広がる「サービス」
を心がけている。
TEL
0889-65-0418
http://www.yusuhara.com/ichou/
たなべ ひとこ
⑯田辺 客子
高知県四万十町
農家民宿 はこば
<お客様との会話が何よりも好き。田舎の好きな人の道案内役に
なりたい>
●四万十川流域の山村にあるログハウス
風の農林家民宿を経営。お客様との会話
を大事にし、林業の現場である持ち山へ
の案内も行うため、1日1組に限定。食
事は、栄養士であることを活かし、栄養
バランスのとれた献立を立て、地場の食材を活かしたアレンジ
料理を提供。定住希望者のサポートやブログの運営を実践。
TEL0880-27-5305
http://park7.wakwak.com/~hakobas/
17
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
かわづ けいこ
⑰河津 慶子
熊本県南小国町
農家の宿 さこんうえの蛙
<つかず離れず、そして笑顔でお帰りになられるお姿をお見送り
したい>
● 築120年以上の蔵を改造
した宿泊棟と離れを運営。宿
泊棟の蔵は、磨き上げられ、
昔の素材に調和した敷物や
家具が趣味よく配置され、掃除も行き届き、落ち着きと
くつろぎの空間がつくられている。「ここ(集落内)で
採れたものしか出さない」ことが主義で、近くの畑で作
る取れたての野菜・雑穀・山菜が主体の料理を提供。
TEL
0967-42-0766
http://sacon-ue.sakura.ne.jp
ときえだ まさこ
⑱ 時 枝 仁子
大分県宇佐市
百年乃家ときえだ
<代々続く農家を切りもりしながら、農村の生活文化の奥深さを伝
えます>
●明治28年建築の母屋と200年前に建
てられた米蔵を平成18年に改築し、1日
1組限定で受入。田舎の親戚をコンセプト
に、家族全員でのもてなしに努め、自家製の野菜をお客様と一緒
に収穫し、調理を行う。食材の9割は自家製。宿泊客が無い時は、
古民家を活用し、地域の女性たちと農家レストランとして活用。
TEL
0978-44-0811
http://www.pref.oita.jp/15130/green/noumin/usa/005.html
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
はしもと まさえ
⑲ 橋 本 正恵
大分県佐伯市
民宿 まるに丸
<おかまいなしがおもてなし、生きる気力は自然の風と潮と天
より授かる>
●民家をそのまま活かした漁家民宿
を経営。別荘気分を感じられるよう
に、宿は料理の準備と後かたづけの
みを行い、風呂や寝床の準備は宿泊
者が実施。豊富な海の幸(魚、ウニ、伊勢エビ)を活かした
料理を提供。蒲江地域をキャンパスにした「あまべ渡世大学」
の学長として、漁村の体験・学びの場を提供。
TEL
0972-42-1600
http://marunisuisan.at.infoseek.co.jp
ふるや まさこ
⑳古谷 昌子
宮崎県北郷町
農園ぴくにっく
<小高い丘の上で、木々やハーブに囲まれ自給自足のおすそ分け
をしています。時間を忘れ、ゆっくりすごしていただくことで元
気を取り戻すお手伝いをしています。>
●お客様の人数や年齢などに応じたき
め細やかなサービスの提供をめざし、1
日1組の完全予約制の宿を経営。農業と
養豚業を営むことから、食事は自家製の
堆肥で栽培された無農薬野菜を使用した料理や、自家製の豚料
理が人気。農業・農村体験でも、年代や客層に合ったプランを
立てて提供。
TEL
0987-55-3309
http://www.iyashinosato.com/furuyafarm/
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
(6)第1回農林漁家民宿おかあさんサミット
農山漁村民宿品質の維持・向上のためのミーティング記録
1)プログラム
■日
時
■会
場
■主
催
■参加人数
■内
容
平成20年2月28日(木)13:10~15:30
都道府県会館101大会議室
(財)都市農山漁村交流活性化機構
120名
農林漁家民宿おかあさん100選第1回認定式
パネルディスカッション
■参集対象
ア 第1回農林漁家民宿おかあさん100選認定者
イ 農林漁家民宿の実践者
ウ 都道府県及び市町村の都市農村交流担当者
エ その他 グリーン・ツーリズムの取組関係者等
■主
催
(財)都市農山漁村交流活性化機構
■参 加 費
無料
■次
第
12:30 開場
13:10 開会
主催者挨拶 (財)都市農山漁村交流活性化機構
来賓代表挨拶 農林水産省
13:20「おかあさん100選」 認定式
14:00 パネルディスカッション
「テーマ:地域とともに輝く農林漁家民宿のおかあさん 」
□コーディネーター
青木辰司東洋大学社会学部教授
□パネリスト
湯浅 優子
北海道新得町
ファームインつっちゃんと優子の牧場のへや
石田 賀代子
岐阜県郡上市
自然食泊愛里
上田 知子
高知県梼原町
農家民宿いちょうの樹
河津 慶子
熊本県南小国町 農家の宿 さこんうえの蛙
橋本 正恵
大分県佐伯市
15:20
質疑応答
15:30
閉会
民宿 まるに丸
20
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
2)認定式
青木
辰司
委員長講評
東洋大学 社会学部
教授
このたび、第1回農林漁家民宿おかあ
さん100選に認定された皆様、本当に
おめでとうございました。今回の認定に
かかわって、表彰させていただいた人間
として、人ごとでない、自分のことのよ
うにうれしく思います。
今回の認定に当たりまして、選定委員
会で厳正に選考させていただきました。
御承知のように、日本に農林水産省の
グリーン・ツーリズム政策が導入されて 16 年がたちました。
統計によれば、全国各地に 3,600 軒以上の農林漁家民宿があると言われています。それ
くらい、日本にグリーン・ツーリズムが浸透したと言われる一方で、まだまだヨーロッパに
比べて、品質の面で課題が多いということも浮き上がってきています。量より質という、
新しいグリーン・ツーリズムの転換段階に当たって、ぜひ日本トップクラスの経営者の方々
に、日本のグリーン・ツーリズムを引っ張っていただきたいという思いで選考いたしました。
選考に当たって、随分いろいろな議論をしました。特に議論になったのは、どういう方
がこの100選にふさわしいかということです。こちらに書いてあるように、営業許可を
持っていることとか、事業として成功している方々だとか、施設の運営や安全管理をしっ
かりやっている方だとか、そして都市の方々との交流もしっかりと向き合ってやっておら
れる方々だとか、何といっても、「おかあさん」というイメージを体現されている方でない
といけないなど、いろいろな条件を、この中に我々は注入して選考しました。
特に重要なポイントとして、今日選ばれた方々は、決して自己完結的な農林漁家経営を
やっているわけではなく、地域の方々の支えと、地域の方々との連携の中で見事に日本型
のグリーン・ツーリズムを体現されている方であるということです。ヨーロッパに比べて、
地域の条件が非常に重要になっているこの日本のグリーン・ツーリズムにとって、皆さんは
その冠たる実践をしてきたということを、我々委員は高く評価させていただきました。
今回、42 名という数多い推薦者の中から、20 名の皆さんを選んだ最も大きなポイントは、
今後、この100選を契機にして、地域の中にもっともっと多くの方々を巻き込んで、日
本のグリーン・ツーリズムを質の高いものに、そしてそのすそ野をさらに広げていただきた
いという点です。
今回は 20 名ですけれども、来年、再来年と、100 名に近づくよう、ぜひ日本のグリーン・
ツーリズムのトップランナーが数多く輩出されることを我々は願っております。
本日認定された皆さんには、今後、この栄誉を全国のネットワークに生かしていただい
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
て、将来日本にも英国、あるいはフランス、ドイツにあるような農家民宿の強固なネット
ワークの組織ができあがることを、心から祈念いたしています。
平成20年度より、「子ども農山漁村交流プロジェクト」事業が実施されます。日本のグ
リーン・ツーリズムにおける転換期の後半に当たって、大きな追い風が吹いてきました。子
供たちを農村の現場で、本当に生きる力を身につけさせるために、皆さんのような方々の
お力をいただく時がやってきました。
しかし、まだまだ農村の現場の受け入れ態勢は十分ではありません。将来的に日本の子
供たちが、農の多面的な価値を共有し、農業、林業、漁業という現場が、人間の根源的な
価値を体現していく支えになり、そして理解者になっていく。そういう運動を日本に浸透
させるそのスタートの年であるわけですから、その意味でも、皆さんの今回の選出は画期
的なものだと私は確信しております。
ぜひ皆さんの今までの絶え間ない、そして真摯な実践を、もっと多くの方々につなげて
いただくように、これからもお体に気をつけて、まずは自分で楽しみつつ、多くの方々と
喜びを分かち合うような実践を広めていただければと思います。本日は本当におめでとう
ございました。
3)農林漁家民宿おかあさん100選の認定者宣言
ゆあさ ゆうこ
湯浅 優子
北海道新得町
ファームインつっちゃんと優子の牧場のへや
今日はとてもうれしい日です。私がグリ
ーン・ツーリズムに出会ったのは 20 年前で
した。そのときから、とても強い感銘を受
けて、目標にしてやってきました。私たち
日本人が大切にしたい建物、そこから生み
出される日本の風景、そしてその地で暮ら
す魅力ある人々、そのどれもが失ってはい
けないものと感じるからです。
農家民宿を始めて 12 年がたち、訪れて
くれる人たちとも、その思いを共有しています。これからの時代、グリーン・ツーリズムは
ますます私たち日本人にとって心のよりどころになると信じています。そして、これまで
の 20 年、全国で活動する、尊敬する先輩たち、そして多くの仲間たち、その方たちと支え
合ってきました。その中で、今日私たち 20 人がおかあさん100選に選定されたことは、
この日本グリーン・ツーリズムの持つ幅広い可能性や、そして各地の魅力を伝える私たち自
身が語り部となること、その役割を与えられたのだと思います。
でも、私たちにできることは、本当に地道な、小さなことからです。おかあさんらしく、
優しく、ゆったりと、各地に種をまき、全国にネットワークをつなげていけたらいいなと
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
願っています。これからも、本当に応援してください。そして、本当に今日はありがとう
ございました。
4)パネルディスカッション
コーディネーター
青木辰司<東洋大学 社会学部教授>
それでは、これからパネルディスカッ
ションとして、皆さんと話し合いをしてい
きたいと思います。本当は、皆さん全員に
並んでいただいて、お話したいのですが、
残念ながら本当に時間が短い関係上、北は
北海道から南は九州までの地域バランス
を考えて、5名の方に、強制的に私の方か
ら指名させていただきました。御了承いた
だければと思います。
まず最初に、それぞれの5名の皆さんがどのような農林漁家民宿を経営されていらっし
ゃるのか、その御紹介をいただいた後に、今後の夢とか展望のお話をいただければと思い
ます。
それでは、トップバッターとして、北海道の湯浅さん、よろしくお願いいたします。
■1日1組のファームイン~惚れた北海道での身の丈ツーリズム~
湯浅優子<ファームインつっちゃんと優子のへや>
私は、十勝の新得町というところで酪農をやっています。牛は 50 頭、そしてその酪農と
一緒に、1日1組だけのファームイン、農家民宿をやっています。私は東京から 34 年前に、
農業実習生で北海道に来ました。それで、すっかり新得町に惚れ込んで、人の出会いと、
その風景、そして食べ物のおいしさと、人間、それだけあれば十分に生きていけるという
ことで、結婚を決め、33 年になります。
私たちは農業をやっていて、本当に自分の中では大きな迷いがありました。結婚した昭
和 50 年ごろの北海道では、大規模な農業が主流でして、私たちも子育てをしながら、主人
と真剣に農業をやっていました。
でもやはり、途中で悩みました。その悩んだ中に、立ち止まることを教えてくれたのが、
グリーン・ツーリズムでした。今までとは違う農業のあり方があるのだということを知った
途端に夢が広がりました。そこから 20 年間、勉強が始まり、いろいろな方たちに出会って、
支えてもらいました。
23
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
平成 8 年、12 年前に農家民宿を始めることができました。民宿は 27 年前に両親と二世
帯住宅で暮らそうと決めて建てた家です。でも、母が亡くなり、父が亡くなり、子供たち
がそれぞれ旅立ち、巣立っていったものですから、本当に小さな 40 坪の家に2人だけにな
りました。そこで、今まで勉強してきたグリーン・ツーリズムを生かして、たまたまヨーロ
ッパに行かせてもらったことが縁で民宿を始めることができました。
一番大きなきっかけは、平成7年に農林水産省が支援してくれたグリーン・ツーリズム専
門家養成講座で、プロの仕事としてグリーン・ツーリズムをできるかどうか、酪農をやりな
がらできるかどうか、そういうこともすべて勉強しながらスタートすることができました。
私たちは本当に運がよく、時代の流れの中で、二世帯住宅の改築工事を始めるときからい
ろいろな雑誌、農業専門誌や新聞が取材に来てくれました。自分たち独自では何も広報活
動をしなかったので、5 年~10 年ぐらい先にお客様に声が届くかなと思ったら、もう次の
年には、半年前に夏のお客様が埋まるという流れの中でスタートすることができました。
私たちが酪農を身の丈でやろう、本当に農業を自分たちの誇りと思ってやろうと思った
のと同様に、このファームインも1日1組、それは私たちができる器の中で、自分たちも
自然体で受け入れられるかなということで始めることができて、今、12 歳です。私の宿で
は7割の方がリピーターで、熱心に応援してくれているリピーターさんに支えられていま
す。毎年千葉から来てくださっている方が、この農家民宿のおかあさん100選に選ばれ
たというのを知り、メールでお祝いの言葉をくださいました。今日会場まで応援に駆けつ
けてくれています。何かそういう、周りの人が一緒に喜んでくれる、こういうファームイ
ンをやれていることに、とても喜びを感じています。1日1組の小さなファームインです
が、よろしくお願いいたします。
青木:ありがとうございました。それでは続きまして、岐阜県郡上市で自然食泊愛里とい
うすてきなところを経営されています石田さん。よろしくお願いいたします。
■おかあさんたちの明るさは宝!~1km の巨大流しそうめん~
石田賀代子<自然食泊
愛里>
皆さん、こんにちは。私は岐阜県郡上市、日本で三大踊りで有名な郡上踊りの郡上市明
宝地区から参りました。
八幡町というところからは 20 分ほど高山寄りの場所でございます。
私が今のグリーン・ツーリズムということを知ったのは、10 数年前でしょうか。何のこと
かもわからないままでしたが、よくよく思えば、自分のやっていることがグリーン・ツーリ
ズムだということに気がついたのが、この言葉を知ったときなんだなとは思います。
私は明宝地区の民宿のおかあさんたちと集まって、「ビスターリマーム」という会をやっ
ていますが、それを興したのは自分が民宿を経営するうえで大変困難な状況になったから
です。平成元年にスキー場がオープンしたことを機に、お客様の層が変わったり、地域の
様子が変わったりしてとても困ったのです。でも、だれに相談することもできず、どうし
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
ようかなと思い、そこで私は、明宝のおか
あさんたちに集まっていただき、お茶飲み
会をしながら話を聞いていただくことにし
ました。そうしたら、その中から、やはり
同じ悩みを抱えている人がたくさんいると
いうことがわかったのです。どんどん会を
重ねるうちに、この地域の民宿は小さな民
宿ばかりなので、それぞれで食材を仕入れ
てはコストも高い、何をどこで買ったらよ
いのかもわからないということからスタートして、「みんなで一括購入をしましょう」とい
うアイディアが出てきました。
仕入れの価格の交渉も大変でしたが、女の強みでみんなで集まって交渉しました。それ
で 10 分の1になったものもあるのです。交渉ということも、
1人ではとてもできませんが、
後押しがあるとできるんですね。そんな形でスタートしました。
それで、自分たちがお客様に来てもらうために、何をしようかと考えたときに、私たち
の民宿はすべて皆さんのような立派な民宿ではないので、普通の家にお客様がおいでいた
だくというようなところです。そのことを考えたときに、「食」という結論に至りました。
自分たちは、明宝にある食を最大限生かしてお客様にたくさん来ていただきたい。それで
明宝というものを知っていただきましょうというのが発端で今日までやってきたのです。
その中で考えてみると、地元の村のことを自分たちが一番知らないんですよ。これでは
いけないと思い、私たちは明宝を知る旅を始めました。その旅をしていくうちに、『ビスタ
ーリマーム通信』を発行しようということになり、明宝というものをさらに知る旅となり
ました。
それから、通信をつくるのに1年かかりました。最初はやり方もわかりませんし、必要
だということで地図も作りました。そんな中で、どうやって通信を皆さんに知っていただ
いて、私たちを知っていただこうかという話をしているときに、イベントをするというこ
とになりました。
今年やると8回目になるのですが、流
しそうめん大会を企画しました。なぜ流
しそうめん大会かというと、郡上はおそ
うめんを夏には必ず食べるという習慣
があり、それをまず考えたのです。東京
の銀座でやれることではだめで、明宝で
ないとできないことということで始め
ました。
お客様が少ない8月末になると静か
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
になるので、その時期を利用してやりたいなと思いました。
それから、やはりちょっと皆さんに楽しんでもらいたいなということで、1キロの流し
そうめん大会をやりました。そのことがきっかけで、本当に私たちのビスターリマームを
皆さんに知っていただけるようになり、そこから通信も動いていくようになりました。
それで、今はやはり食、これをとても大切にしてお客様に来ていただく。その一念でや
っています。
青木:ありがとうございました。石田さんがお住まいの明宝地区は、明るい宝と書きます。
いい名前ですね。ここで、皆さんと一体になって実践されているということですが、まだ
まだお聞きしたいことは、第2ラウンドでまたお願いしたいと思います。
では、高知県の上田さん、お願いいたします。
■気づいたら農家民宿第1号~高知四万十川のおかあさん~
上田知子<農家民宿
いちょうの樹>
皆さん、こんにちは。梼原町、木へんに寿と書いて「ゆすはら」と読むのですが、私は
高知県の四万十川上流の、源流に近いところに位置し、四国カルストという台地のふもと
の町です。梼原町というのは森林が 95%以上もあり、木の町でもあります。そういう自然
環境のなかで私の家も農林業をしています。私は非農家から農家に嫁いで 25 年が過ぎまし
た。皆さんもご存じのように、農林業は自由化によってかなり厳しくなってきたというの
がありました。その中で、農業で何とか生きていきたいと思っていました。私の家は、主
人の父親と母親、それと今は3人の子供たちが、私の手伝いと主人の山の手伝い、それか
ら家ではおじいちゃんが家にいて守り、家族全員で役割分担をして、この農家民宿をやっ
ています。
そのきっかけとしては、経営の見直しもありましたけれども、都会の子供たちの受け入
れをしたときに、子どもたちは今まで経験したことのない水の冷たさとか、トマトの赤さ
とか、田舎での生活のすべてのことについて、すごく新鮮に思ってくださったことです。
それは、私たちが地元に住んでいてわからないことでした。都市の子供たちに、食に関し
てもっと興味を持ってもらい、私たちもただ野菜をつくるだけではなくて、その食べ方と
か、消費を拡大していくための戦略を頭の中に描きながら、農家民宿を経営する。また、
自然豊かな田舎の環境を守る。そんなことを思いながら、主人と2人で先進地の視察に行
ってきました。「こんなところに人が来るのかな」、というと失礼な話ですが、交通も不便
で、何もないところでも、身の丈でお客様を迎えている先進地を視たとき、だんだん私た
ちの町でもできるのかもしれない、やってみないといけないのかなと思うようになりまし
た。
最初は本当にわからないことばかりで、私が高知県で農家民宿第1号だというのも、全
然知らなかったのです。民宿を始めてよかったことというのは、病気だった父が、今、と
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
ても元気になったことです。農家民宿というのは、皆さんにも喜んでいただきたい、ただ、
自分たちも本当に楽しんでやりたい。その中で、営利目的だけではないのですが、でも、
経営は確立していきたい。そういう思いで、一生懸命やってきました。私たちがこれから
グリーン・ツーリズムをやっていく上において、規制緩和というものがあっても、それに甘
えない、来たらホッとする民宿を、これからも続けていきたいと思っております。
湯浅さんの話にもありましたが、私も民宿を始めた当初からのリピーターの人が今日こ
こに駆けつけてくださっています。やはり、私たちがこういう賞をもらったということは、
支えてくれる人たちがいるからここにいられるのだとうれしく思っております。
これから、ますます周りの人たちとの連携が必要だと思います。梼原町も、私が何とか
やっているのを見て、「少し私たちもやってみようか」ということで、今、4軒の農家民宿
ができています。その中で、やはり高知県全体でも「高知に人を呼ぼうよ」ということで、
高知県のネットワークも進めております。その中で、これから子供たちに大事なこと、そ
して今頻繁に言われていることである「食」に関して、私たちもこだわっていこうと思っ
ております。よろしくお願いいたします。
青木:ありがとうございました。規制緩和に甘えず、というのがいいですね。この辺は、
ぜひこれからまたお話を伺いたいと思います。それでは河津さん、よろしくお願いいたし
ます。
■阿蘇のおかあさん~娘に届いた母の気持ち~
河津慶子<農家の宿
さこんうえの蛙>
皆さん、こんにちは。阿蘇の山の中のばあちゃんが、プレッシャーに押しつぶされそう
になりながら、東京というところへやってまいりました。私は、近くに黒川温泉があると
ころで、温泉街とは反対側の農家の地帯なのです。そこで、8畳くらいの小さな田畑をや
っています。集落の面積といいますか、とにかく 17 軒の小さな集落なのです。標高が 520
メートルぐらいで、夏はとても気温が低い
ところで、人の住みやすいところです。
私には娘が3人おりまして、主人はじい
ちゃんから小さな田畑を受け継いだよう
に、3人の娘のだれかにここを守ってほし
いという思いがあったと思うのです。
私がグリーン・ツーリズムを始めたのは、
九州ツーリズム大学の第1期生として受
講したことがきっかけとなりました。この
大学が、私の宿をすごい力で支えてくれた
27
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
のです。私と主人と一緒に1期生として入り、主人が法的なことを勉強しながら、私は地
元の食材を使った料理等を習いながら、毎回参加しました。
そしてもう一つのきっかけは、一番下の娘がオーストラリアに留学したことだと思いま
す。それで私もパース郊外の民家にファームステイする機会がありました。そのときのフ
ァームステイした家のあり方とか、いろいろなものを見て、朝の食事が本当に質素、と言
ってはおかしいのですが、さっぱりしていて、
「これなら私でもやれるな」と思ったのです。
主人と一緒に大学に行ったこと、オーストラリアに行ったこと、それからそのもう1つは、
平成2年に、私たち家族でヨーロッパのツーリズム番組を見たことも農家民宿を始める大
きな契機となっています。
平成9年に営業するためのすべての許可を取り、ハード面を充実させるために5年かけ
ました。とにかく 10 年を目標に、お客様の流れを見ながら、1つずつやっていこうじゃな
いかと。長い目で、部屋を改築したり、それからおふろ場、このおふろも最初はなかなか
建てることができませんでした。そして、少しずつお客様の流れの中で、厨房を改築した
りして、すべてが改築で済みました。また、我が家は特別な体験は用意していません。あ
えて言えば生活体験館ですけれども、お客様がいらしたときに、車を降りて、外で農村の
生活がすべて目に入ってというそのままが体験。これを始めたころに、食の問題がいろい
ろ取りざたされるようになりまして、アトピーとか、オーガニックとか、そういう関係の
お客様が来るので、なんとなくもう見えていたのです。だから「ああ、ひょっとしたらこ
の仕事をやっていけば、何か手ごたえがあるんじゃないか」ということで、今につながっ
ているのですが、昨年あたりはほとんどの方がアトピーのお客様になったのです。「自分た
ちは、入れていただく旅館がない」と。幸い、私の家はお肉、お魚は一切出しません。ち
りめんじゃことか、いりことか、そういうものは出しますが、これでアトピーのお客様と
か、お野菜をたくさん食べたいとか、そういうお客様が口コミでいらっしゃいます。7割
方がリピーターさんです。電話でお受けするときに、きちんとうちの宿の悪いところをす
べてお話しします。「テレビはないけど、大丈夫ですか」とか、「一部セルフサービスでや
っていただきますよ」とか、そういうこと
をすべてお客様に電話口で伝えた上での
経営です。
私が宿の担当で、主人が畑でお野菜をつ
くっています。安心した経営になっていま
す。そして後継者がようやくできたのです。
それは、やはり私たちの姿を見て、娘が「お
とうさんとおかあさんが頑張っている、私
もここの村で育ったから、私が跡を継ぎた
い」といって、帰ってきてくれたのです。
青木:ありがとうございました。今回、20 人の方が既に選ばれましたけれども、自分の娘
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
さん、あるいは息子さんが跡を継ぐというところまでいっている方はそんなにいないと思
います。幸せですね。それで、グリーン・ツーリズムの後継者をどうするかという課題はそ
れぞれあるわけですが、いずれにしても、河津さんのところは娘さんがやるということで、
もう前途ようようという形ですね。なぜ河津さんの娘さんがそんなにしてまでおかあさん
と同じような夢を追い続けるようになったのか、その辺はまた後でお聞きしたいと思いま
す。
それでは、最後に橋本さん、お願いします。
■漁村のツーリズム~荒波にも負けず~
橋本正恵<民宿
まるに丸>
大漁旗で、にぎやかにやってまいりました。大分の橋本です。私が生まれ育った大分県
蒲江町というところは、大分県の一番端っこです。宮崎県から一番近いところです。道路
といったら、それこそ陸の孤島と言われるところで、私は幸いに、よそに出ないというこ
とが最高の自分の村のよさを知った理由です。今でも村大好き人間の筆頭です。
家族の中で、4人の兄貴の5番目に私が恵まれました。その後私たち、兄貴たち親族を
含めて、悲しい出来事がいろいろなところで起こりました。私の家は、自営業の漁業が揺
らいできて、自由貿易などが影響して、本当に食うか食われるかというような状態に追い
込まれています。けれども、漁師というのは自分の力で自分を呼び起こさないと、船に乗
れないのです。お酒を飲んだりするのもそのひとつなのです。
私は家業が裕福な時代に生まれましたが、親が本当に四苦八苦するような時代もあり、
波乱万丈な時代をくぐり抜いてきました。そんなとき、私は自分の地域を見つめ直して、
自分たちの村のすばらしいところを生かして、何としてでも村を元気にしていきたいとい
う思いでいっぱいでした。
特に大分県というのは、私も含めて地域おこしのリーダーぞろいです。そこの村の人た
ちの命のかたまり、魂のかたまりというすごさには、私も閉口しています。
今はグループツーリズム研究会という大きな組織を興して、商工会から農協、いろいろ
な人たちを携えて、研究会を持つことにしました。現在教室は、自分たちのリーダーの、
12 の作業所の教室で学校をつくって様々な体験ができるようになっています。
今日、大漁旗を多分持ってきてくれているのですが、ちょっとお立ちください。私の陰
の応援団が地元から応援に駆けつけてくれました。私たちはこの大漁旗で作った洋服で、
今度ファッションショーをします。皆さん、見に来てくださいね。
青木:ありがとうございました。きょう橋本さんが着ておられるのも、大漁旗のウエアで
すね。いいですね。同じおかあさんでもこれだけ違うというのは、やはり漁村と農山村の
違いというのが、またこれが日本の魅力だなという気がいたしました。
大分足早に皆さんから御紹介いただきましたが、第2ラウンドは、やはり今までいろい
29
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
ろな方々のお話の中にあった、共通のポイントについて触れたいと思います。それは現在
グリーン・ツーリズムとか民宿というものに関心を持ち、「私でやれるのかな」と悩んでい
る農家の奥さんたちに、
「あなたでもやれるよ、やろうよ」というようなメッセージではな
いでしょうか。何か特別な条件が備わっていなければグリーン・ツーリズムはできないのだ
と、多くの方々が思っているはずです。皆さんも始めるときにはそういう抵抗感があった
のではないかと思うのですが、これから皆さんの仲間になるような方々に対して、一言ず
つメッセージをお願いします。では北海道の湯浅さんどうぞ。
■次男夫婦の協力~1歩踏み出す勇気~
湯浅:そうですね、うちは 12 年前から始めていますが、必ず電話で「10 人以上入れない施
設なんです」と言うのですが、大勢のお客さんが来てくれまして、うちに座って皆さん「す
ばらしい景色だ」と喜んでくれます。視察に来た人も「ここだからやれたね」と言ってく
れます。いろいろな話をしていると、30 分もたつと、皆さんそれぞれ地域自慢が始まりま
す。自分のところって、「ここには海がある」とか、「おいしい魚がある」とか。話してい
ると、皆さん自分の地域のよさがわかってきます。私はずっと何千人も受け入れてきまし
たが、泊まってくれるお客様も、視察に来てくれた方も、みんな自分の住んでいるところ
が実は好きだということが、本当にすごいなと思っています。
あと、うちの施設に来ると、皆さん「何だ、これでいいんだ」と言うのです。うちの施
設を見て、こんな形でできるのなら、自分たちでもできるんだと納得してくれました。と
てもうれしかったです。北海道の中にも、うちのお客様が何組も、そういう感じで始めた
り、移住してきたりしています。やはり、自分の住んでいるところのよさに気づくこと、
それが何よりです。
また、自分が楽しいことをやっていることが大切です。ただ、うちの息子2人はとても
農家を嫌っていました。農家というよりも、農業を嫌っていました。いつも忙しくて、食
事も一緒にできない。汚いし、何にも遊んでもくれない。でも、いつのころからか、子供
たちがお客様を連れてきてくれるようになりました。今は次男夫婦が一緒に経営に参画し
てくれています。正式に戻ってきたのは3年前ですけれども、大学を卒業した後、少しだ
け研修させてくれということで、夫婦で研修にいきました。そして2年間、でも自分はま
だ農業のことも何も知らないので、外へ行って勉強してくるといって、岐阜の山の中に入
ってきまして、それから戻ってきて、今は私たちの右腕以上にやってくれています。
先ほどの先生の質問からいうと、グリーン・ツーリズムというのは本当に幅が広いのです。
ファームインだけでもない、体験だけでもない、ファームレストランだけでもない、いろ
いろなものが、地域の中にまじり合って、初めてよさが生まれてくる。だから、自分は頑
張る必要が全然ない。いつもみんなが支え合う。そこのところに会うと、1歩踏み出す勇
気が出てきます。私が若い人や、私より先輩にでも、いつも言います。「1歩踏み出す勇気
は自分の中にある。そうすれば、何かが動き出す。それが楽しいじゃないですか」という
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農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
話をして、皆さんとお話ししています。
青木:はい、大分みんな勇気が出てきましたね。それでは石田さん、もっと勇気づけてく
ださい。
■最悪なところと言われても最高のグリーン・ツーリズム
石田:こう話していますと、多分私のとこ
ろへ来てくださった方が一番「よっしゃ、
これなら私もできる」と思ってくださると
思います。それぐらい、多分最悪なところ
だと思います。景色も余りよくないかな、
切り取ったような山の間に、小さな部落が
あるところです。でも、水はきれいです。
とてもきれいなところです。空気もすごく
きれいなところです。そんなところなので、
本当にそう思っていただけるかなと不安
にはなりますが。
それから、私がグリーン・ツーリズムをやってきて本当によかったと思うことは、一番下
の息子がグリーン・ツーリズムである場所に行きまして、そこで出会った人と結婚すること
になり、それが本当にうれしかったことです。来てくれたお嫁さんもとても山の中が好き
な子でして、やれやれと思っております。うちは主人と息子がほとんど調理場を担ってお
ります。その中で、私もうろうろして手伝っているわけです。うちの地域が自慢できるこ
とは、今、Iターンの子たちが来てくれるということです。空き家が足りないのが問題と
なるくらい若い子が来てくれます。それが地域の自慢です。
これからは都会の子供たちがたくさん来てくれて、にぎやかな場所になり、それでお年
寄りの人たちと一緒に何か頑張っていけないかなと思いながらやっています。
青木:冒頭で、最悪のところとおっしゃいましたが、最高のところですね。何か皆さん後
継者ができているみたいで、河津さんのところだけかと思っていました。皆さんすばらし
いですね。上田さんはまだお若いから、子供さんや後継者というお話はまだ早いでしょう
けれども、どうぞ多くの方々に対して、ぜひ仲間へ引きずり込むようなメッセージを。
上田:私は日本各地それぞれに特性が違うと思うのです。いろいろ視察等、行くには行っ
たのですが、やはり自分のところで何ができるか考えなくてはいけないと思いました。視
察はすごくよかったのですが、でもよく考えたら自分のところではできないことばかりだ
と感じました。だったら、自分がどんなことができるかと思ったとき、私はとても幸せな
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農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
ことに、自分の地域の素晴らしさに気づいたのです。
旅館業が廃業に陥っているようなところで、その中で、雲の上の温泉という町の温泉が
あります。四国カルストという台地があって、おいしい水があって、冬は雪が舞う、星は
たくさん降る、そして神々が舞うといいます。また鶴山神楽という伝統文化がありまして、
その歴史になぞらったところがたくさんあります。そして、坂本龍馬が脱藩していった最
後の地であるということで、条件がとてもそろっていて、ここでお客を引っ張ってくるし
かないというような思いでやっております。
私は先ほど「規制緩和を」という話をしましたが、それは私どもに言うことでありまし
て、それぞれの受け入れのところは条件もいろいろ違い、来る人のニーズも違うと思いま
す。うちの場合は、山を見に来る生徒さんとか、山を研究する人とか、いろいろな役場関
係の人たちが泊まりに来るときに、やはり 10 年前から見ると、かなりニーズが変わってき
ています。個室が必要とされたことや、子供たちの変化が挙げられます。10 年前から比べ
て、虫が嫌いな子供とか、気象条件になれていない子供たちが最近多くなってきたと思う
のです。
その中で、気持ちよく過ごしてもらうというのは、決して新しい建物を建てるとかでは
なくて、安らぎの空間というのは、ありのままの姿でお迎えすることがおもてなしになる
のだろうと思っています。道が 197 号線で「いくな線」と言われたぐらい、昔は狭い道で
した。でも、今は「いけいけ線」と言
われるほどよい道になりました。そう
いう場所ですので、本当に条件もよく
なり、ニーズに合わせていくことも、
1つ私のやり方でしょうか、民宿を始
めたからには、お客様たちにも地元の
よさを知ってもらいたいと思ってい
ますので、ある程度安心して泊まれる
というのは、常日ごろそのようなこと
を心に留めながらやることだと思い
ます。
青木:ありがとうございました。河津さん、いかがでしょうか。
■農業民宿経営のポリシー
河津:みなさん言うように、自分の住んでいる集落を大切に思えば、この仕事は必ずでき
ることだと思うのです。私が九州ツーリズム大学を受講した後、視察の方が大勢来ました。
その方たちは、私の宿に入るなり、
「何や、これでできるがや」と、とにかくきれいなとこ
ろを想像していたみたいで、120 年もたった古い家にちょっと磨きをかけてつくったような
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農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
ところで、そんな私の家を見て自信を持たれたのでしょうね。
それと、私の家が農家の宿を始めるために、コンセプトというか柱をきちんと立てまし
た。1つは、何もかも恵まれた便利な社会に、時には不便な生活を味わってもらうこと。
どこで栽培したかがあいまいな、何かわからない食材が多い中で、我が家で有機無化学肥
料で栽培した新鮮で、安全な野菜を味わってもらうこと。そして、これが一番大事で、日
ごろ忙しくしている人に、少しでもいい、心の休養と家族の会話の場、心の湯治場づくり、
いやしの場をつくっていくこと。これを主人と目標にして、今年で 11 年目に入りました。
この3番目の、日ごろ忙しくしている人に心の休養、これは現代社会で求められている
ことであり、そんな都会に住む人たちに、エネルギー充電の場を、この農村で何とか提供
できないだろうかと思っております。そこで、私が主人とこの宿を始めた当初から、必要
以上に体験等にこだわらず、お客様の時間を大切にしてきました。主人が「おまえは食事
を提供したら、絶対に中に入るな。お客様が家族とかグループでいらっしゃった、そのま
までいけばいいから、余り入るな」とよく言います。今でもそのやり方ですが、先日も来
られたお客様が「かあさん、この部屋を全部私たちが使っていいんですか」と。ですから、
お客様もホッとして、癒しの時間をたっぷり過ごして帰っていただく、それが我が家の宿
を始めた一番大切なことなんです。
だから、御自分が住んでいる集落をしっかり見つめ直し、お客様が何をしに自分のとこ
ろへ来るのかということを考えれば、それから先は自分自身の工夫次第です。以前、本日
欠席の長野県の伊東和美さんにお会いすることができ、私を見られて「河津さん、肩の力
を抜いて、やれる範囲でやろう」と言ってくださいまして、これが農家の宿をやっていく
第1歩なのです。どうぞ自信を持って、御自分で1歩を踏み出されることをお願いしたい
と思います。
青木:ありがとうございました。それでは橋本さん、どうぞ。
橋本:私は宿だけにこだわらなくていいと思います。私は、地域おこしというのを目標に
やっています。それと、地域産業の発展というのも目標としてやっています。
例えば、私の民宿は、『民宿まるに丸』、ほったらかしで超有名です。そのかわり、料理
といったらいろいろな産物があります。例えば、ブリの稚魚である“オジャト”に関して
は、日本一の養殖漁場を持っています。捕獲サイズも日本一です。それと、ヒラメの養殖
場、それも量・質ともに日本一です。私は、その産物を提供するお店のつもりで、広報活
動のつもりで民宿まるに丸はやっています。だから、お客さんが民宿に来て残さなかった
ら、「あら困った、ゆうべのお客さんは食事の量が足りなかったんじゃなかろうか。これは
朝食の量をふやしておかんといけんど」というような民宿です。たまに出し過ぎだといっ
て怒るお客さんもいますが、そんなお客さんは大体パックに詰めてゴソッと持って帰りま
す。
私は宿を中心にして、いろいろな産業ができると思うのです。例えば、私の地域のおば
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ちゃんたちには、今世間で言われている 65 歳以上が 50%を占める集落は限界集落と、相当
脅しをかけます。せっかく残っている 20 代、30 代の子持ちのおかあさんたちも不安を感じ
て、町へ出ようとします。あれは大変いけないことです。私の従業員のおばちゃんたちは、
65 歳以上の人が実力を持って、部長クラスでいます。部長というと、相当大きな会社のよ
うに見えますけれども、決して大きい会社ではないのです。他に課長さん、係長さん、平
社員とかいろいろいますが、うちの会社に就職すれば、すぐに部長クラスです。そのおば
ちゃんたちが、80 歳、100 歳になっても源泉所得税を納めましょう、というのがスローガ
ンです。相当すばらしいと思います。そのおばちゃんたちが、私以上に喜んでいるのが、
このおかあさん100選に選ばれて「わしゃ男と思いよったけど、おかあさん100選に
選ばれて、よかったのぉ」と、「わしゃ女だよ、おかあさんと認めてくれたんじゃ、おとこ
女と言われよったし、言い返してやるわ」と、そういうやりとりがあります。
そして、私の民宿を中心にして、いろいろな体験もできるのです。私のおばちゃんたち
が元気なものですから、北海道から来たお嫁さんとか、長崎、三重県、いろいろな人たち
が来て、私は支えられています。だから、私も頑張らざるを得ないのです。本当はやめた
いんです。私も着物を着て、おかあさん100選じゃなくておかみさん100選のような
宿に選んでほしいのです。その素質はあると思うのですけれども、80、100 歳になったお
ばあちゃんに今さら「あんたたちのふるさとに帰りなさい」といって帰すわけにいかない
のですね、一応預かったから。だから私は、そのおばあちゃんたちがゆっくり暮らせる、
ぜひこれは気をつけていてください、特養老人ホームじゃなく、稼ぎながら暮らせる民宿
まるに丸をつくろうと思っているのです。どうぞ御協力ください。それには、皆様がいか
にたくさん私を講師に招いてくれるか、それが遠い大分県の端まで、サンパッパ道路とか
言われていますけれども、388 号線を通って、まるに水産にいかに来てくれるかにかかって
います。まるに水産は、皆さんの肩にかかっています。どうぞお願いします。
青木:圧倒されますね、おかみさんに。ちょうどよいお話をされたので、ちょっとこの事
業とのかかわりで、皆さんから率直にお聞きしたいのですが、おかあさん100選という
名前になりましたね。今、橋本さんは「おかあさん」という言葉の他に、「おかみさん」と
も言いましたが、その違いというのは、どのように思っていらっしゃるのですか。
橋本:おかみさんというのは、いらしたお客様に「お客様は神様です」というようにへり
くだって、最高のおもてなしをするのが私はおかみさんだと思っています。自分の感情を
殺して、いいところばかり見せて、裏方も見せない、ごみは早く隠してしまえと。おかあ
さん100選になると、そうではないと思います。よいも悪いも、すべてを見て、受け入
れてください。それこそ、生きる力は自分の心の中で宿してくださいという、私はこのお
かあさん民宿に本当にほれ込んでいます。
青木:そういうことなんですね。おかみさんを目指しているわけではないのですね。
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農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
橋本:そうです、私は兄貴の5番目を目指していたのですが、途中で「女じゃ無理だな」
と思って軌道修正しました。
青木:なるほど(笑)、ありがとうございます。河津さん、いかがでしょうか。おかあさん
というイメージについては、河津さんはどんなイメージでお考えになっていますか。
■おかあさんがイメージする“おかあさん像”
河津:私は、この宿を始めたときに、とにかく自分も楽しもうと思いました。そんな私の
姿を見て、帰ってくる娘が、「おかあさんという言葉を言ったら、なんとなく全体が潤う」
と言ったのです。そういう宿にしたいなと思います。だから、自分を全部かなぐり捨てて、
おばちゃんのすべてを見せて、時にはお客さんに怒ったり、一緒に泣いたり、お客さんの
相談を受けたりして、そんな日々が、私をここまで続けさせたのです。
今、私は 66 歳なのですけれども、あと 10 年、また目標を立てました。それは、おかあ
さんであれば、年々年を重ねるごとに、もっと人の心を受けとめる力ができるのではない
かと、そう自分にうぬぼれも感じます。だから、とにかく自分も楽しむということではな
いかと思います。
青木:上田さん、いかがでしょうか。
上田:おかあさん100選に選ばれたといったら、お客様に 70 歳過ぎの人がいて、「あし
たから私もおかあさんと呼んでいいかね」と言われたのです。ママやおかみとも言われま
したが、やはり聞こえはおかあさんがいいということになり、私もおかあさんが好きだっ
たので、「おかあさんが好きだ」と言われるおかあさんにならなければと思っています。
青木:上田さんが目指されるおかあさん像というか、お客さんに対しておかあさんと思っ
てもらえるおかあさん像というのはどんなものでしょうか。ちょっと、河津さんに比べる
と世代がおねえさんに近いような。
上田:河津さんのようなおかあさんがいいですね。
青木:いろいろなおかあさんがいらっしゃるということですが、では石田さん、いかがで
しょうか。おかあさん像というのは。
石田:橋本さんが言われたように、やはりおかみさんというのはもっときれいなというよ
うなイメージを持っています。おかあさんってとても優しくて、でも何だか大きな失敗も
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農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
したり、そんな感じがしますね。完璧じゃなく、ちょっと気負ったところが、おかあさん
かなと思いますが、本当にこういう立場に立たせていただきましたことはうれしいなと思
っていますけど、肩の荷も非常に重いなと思います。
青木:それは具体的にどういうことですか。肩の荷が重いというのは。もう大分マスコミ
等の取材があって、役場の方からもいろいろ頼まれてという状況ですか。
石田:そうですね、そういうことになっていますけれども、やはりおかあさんって、先ほ
ども言ったように、ドジってもいいなと思います。もちろん頑張りたいと思っています。
青木:いや、石田さんはおかみさんになっても十分おきれいですけれども、ですからおか
みさんとおかあさんはきれいかどうかという話は全く関係ないのではないかと思いますが、
それはまあ、謙虚な方ですからね。いいですね。
では、どうでしょうか、湯浅さん。おかあさん像というのは、湯浅さんにとって。
湯浅:そうですね、私はファームインを始めたときに、45 歳でした。そのときは自分がお
かあさんだとか、そこのオーナーだとかいう意識はなっかたです。私たちは息子が大学で
東京へ出たりして、帰ってきたときに、本当に温かい御飯とみそ汁が食べたいと言うので
す。主人と2人だけだったら手抜きする料理が、息子が帰ってくると何となく張り切っち
ゃうという、そういうおかあさんというのもある意味何にも打算のない愛情みたいなもの
があるんだなということを、そのとき随分感じたのです。
お客様を受け入れようと思ったとき、私はその気持ちでいいと思いました。私は料理が
特別上手でもないし、プロ的な意識というものはありません。でも、農業をやって、こう
いう自然の中で受け入れられる、この幸せはともに分かち合いたいという気持ちはありま
した。45 歳の私と一緒に話をするときは「優子さん」と呼んでくれるのに、日記や感想を
書いてくれたときや、後からお手紙が来るときは、必ず「北海道のおかあさん」とか「北
海道のおばあちゃん」と書くのです。だからそういうのを見て、「ああそうなんだ。私はお
かあさん役なんだな」と思い、いまは全国に娘や、息子、孫、いっぱいいます。
そして、北海道のおかあさんと呼ばれているうちに、今回のことで、最近は「日本のお
かあさん」と言われます。でもそれは特別なことではないのです。私たちが特別なわけで
はなくて、グリーン・ツーリズムが持つ幅、優しさ、先生がおっしゃったように、人や命と
の触れ合いというものが、自然に「おかあさん」という言葉にするような気がします。
今回のおかあさん100選というのは、100選という言葉はとても難しいなと思いま
したが、ただ、農林漁家民宿をおかあさんという立場で物を考える、これからのことを考
える、施設のよさとかサイズのよさとかではないという、この姿勢がとてもうれしく思い、
今回もそういう印象を受けました。それが感想です。
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
青木:ありがとうございました。すてきなお話を聞いているうちに、ここに座っているパ
ネラーの方だけではなく、他の認定者の方にもお話を伺いたくなったので、ぜひ皆さんに
立って、こちらに向かってメッセージをお願いしたいのですが、どんなおかあさん像を考
えておられるかとか、そういうお話をいただきたいと思います。
■自然体で活躍するおかあさんたち~中部・北陸地方~
水野美代子<民宿
みづの荘>
私も民宿を始めて 40 年になりますけれども、40 年前は本当に若くて、立派な娘でござい
ました。昔はおかみさんで、着物は着ませんでしたけれども、名前だけはおかみさん。そ
して、徐々に年数がたってくると、今度は大おかみになって、そして今は修学旅行の生徒
さんが来ると「おかあさん、おかあさん」といって慕ってくれます。そして、リピーター
の方が見えると、初めは「水野さん」とか「おばあさん」とか言われましたが、今は「お
かあさん、見える?今度いついつ来るから、お願いします」と言われます。島倉千代子で
はないけど、二重橋を渡ると「おかあさん」という言葉が出ますが、それは歌の文句では
ないですが、おかあさんという言葉には本当に感動しますし、愛着があります。
今は、お客様が見えると、小さいお子様が「おかあさん」と言わないのですね。「ママ、
パパ」と言う。私が「おかあさんはどうしたの」というと「おかあさんじゃないの、ママ
なのよ」と言うから、そういう言葉も昔の子供さんと今の子供さんとでは大分違いますの
で、これから私はおかあさんとお客さんに言いたいと思います。
青木:ありがとうございました。では、どうぞ。
船下富美子<郷土料理の宿
さんなみ>
こんにちは。石川県から来ました、
『さんなみ』の船下富美子といいます。今、パネラー
の方たちからいろいろお話を聞かせてもらったとおり、皆さん本当に自分の土地を愛して
おられるのだなとつくづく思いました。私も石川県の金沢から、先端の方へ2時間半ぐら
い行ったところですが、三方が海に囲ま
れて、すごく海の幸も豊富ですし、山の
幸も豊富ですし、皆さんに負けず、私の
ところもよいところだと思っています。
お客さんなんかでも、よく「おかあさ
ん、おかあさん」と言ってくださいます
ので、その「おかあさん」という言葉が
一番好きです。これからも、自分の肩ひ
じを張らずに、無理なく自然体の「おか
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
あさん」でいたいと思っています。今日はありがとうございました。
米倉みつ子<民宿
いなくぼ>
皆さん、こんにちは。富山県から来ました、米倉です。民宿は、
『いなくぼ』といいます。
私は、実は武蔵野市と姉妹都市になったころに、田舎に来る人がいるから、村で泊まれる
宿が必要だということで募集があり、応募しました。今は、嫁さんがもう 40 代ですので、
実質おばあちゃんです。ですから、料理とかはおかあさんがつくるもので、やっぱり私は
おばあちゃんでできることをしています。例えば、いろりを囲んで昔話をしたり、それか
ら山登りの解説みたいなことで、子供さんたちと一緒に山登りして、木の名前とか、それ
から虫の名前とか、いろいろと楽しく登ったりしながらやっております。
やはり、35 年前はおかあさんだったのですが、今ではおかあさんは2人もいらないから、
もうおばあちゃんで十分だなと思っています。場所は、富山県でも一番西の端で、五箇村
というところです。そんなわけで、どうぞよろしくお願いいたします。
中西ユリイ<萩ノ島かやぶきの里>
皆さん、こんにちは。私は柏崎から来ましたが、荻ノ島というところにいます。その荻
ノ島というところは、県道からちょっと上に上がり切ったところが、もう昔話に出るよう
なところですねと言わんばかりに、茅ぶき屋根の家々が、田んぼを丸く囲んでいます。茅
ぶきの2軒が民宿になっていて、もう本当に小さな民宿で、それこそ1棟に1組というと
ころです。2軒ありますので、2組を任されて管理しています。
また、この荻ノ島というところは山がすごく深いのです。その山には山菜がとても豊富
です。水も全部わき水です。そのわき水の中で育ったお米は、とてもおいしのです。
毎日のようにカメラマンが訪れていますので、こんなところに毎日来ていただいても、
写すところがないのではないかと私たちは思いますが、そのカメラマンは、「おばさん、あ
のね、日本国中探しても、こういうカヤぶきはいっぱいないんですよ。大事にしてくださ
いね」と言って帰ります。
今はまだ2メートルも雪があります。そういうところに、春は村の人もみんな待ち遠し
いようですけれども、お客様が来ることが一番うれしいみたいです。
私ももうおばあさんですが、お客さん
というのはありがたいもので、こんなお
ばあさんでも「おかあさん、おかあさん」
と言ってくださって。
本当に野菜は豊富ですし、作るのがと
ても好きなのです。そして品数も多いの
で、大きいお皿にポンポンと 12~13 品ず
つ出すのです。そうすると、
「わぁ、すご
い。おかあさん、本当にこんなに作って、
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農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
合うの?」と聞かれます。
私は「皆さん、好きなものだけ食べてくださいね」と言うと、皆さんは「わぁ、うれしい。
今日は野菜のバイキングだ」と言って、皆さんとても喜んでくださいます。「おかあさん、
これはどうやって作るんですか」と言われると、私ももう自慢して「これはこうやって作
るんですよ」というと、みんなメモをして帰ります。
青木:荻ノ島は私も前にお邪魔して、すごい料理をいただきました。
■都市部との提携~関東周辺のおかあさんたち~
山口かおる<民宿
北の勢堂>
皆さん、こんにちは。私や山梨県の道志村から参りました。道志村というのは、神奈川
県沿いのところに東西 28 キロ、南北4キロという細長い村です。山が迫っていますから、
空も狭く、ただあるのは川ときれいな空気だけです。その中で、昔ながらの古民家で民宿
をやっております。
主人が林業なものですから、林業をしながら、山で猟をしてきたり、イノシシや鹿をと
ってきたのを、お客様にいろりを使って出しているような民宿です。春には横浜市と姉妹
都市になりますので、そこの中学生たちが体験学習をしながら、田植えをしたり、林業を
したり、いろいろな体験、川遊びをしたりして、楽しんでいきます。
そんな中で、みんな私と一緒に料理を作ったり、田植えも一緒にしたり、来てくれた子
どもたちが「おかあさん、おかあさん」と親しみを込めて呼んでくれるので、私も肩の力
を抜いて、道志のおかあさんになりきれるようにと頑張っています。よろしくお願いいた
します。
青木:ありがとうございました。来年あたりは道志村へ行きたいと思っていて、本当にす
ばらしい村だと聞いていますので、よろしくお願いいたします。関さん、どうぞ。
関せき子<民宿
富士見荘>
こんにちは、今日はお世話になります。私は東京からは近いところで、群馬県の利根郡
川場村というところで民宿をしております。東京の世田谷区と提携を結んでいただいて、
世田谷のお客さんがたくさん来ます。武蔵野市の5年生対象で、小学生が来るときは、民
宿に分宿します。うちは農家民宿なので、ジャガイモ掘りとかいろいろやってもらっては
いますけれども、棚田もやったり、世田谷の職員さんと一緒に農業体験をしながら、たく
さんの子供たちを迎えています。それこそ山の中ですから、両脇がすごく高い山で、後ろ
は穂高山で、前の方は赤城山というところに位置しています。川場に来たら、沼田インタ
ーというところで降りまして、15 分で富士見荘に着きますので、ぜひお出かけになってい
ただきたいと思います。
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私は、嫁いだときから「おかあさん」と言われていたので、民宿になっても相変わらず
のおかあさんでおります。またこれからも、いろいろ頑張りたいと思いますので、よろし
くお願いいたします。
青木:ありがとうございました。それでは長南さん、お願いします。
■東の横綱~東北地方のおかあさんたち~
長南光<知憩軒>
どうもこんにちは。今日は本当にありがとうございます。山形県の鶴岡、庄内地方とい
うところから来ました。今日は朝6時過ぎに出てきましたが、地吹雪で、一寸先も見えな
いところからやってきました。私は本当に小さい農家で、本当に何もないところに、ただ
皆さんが来ていただいて、のんびり自分の時間を味わってもらう、体験してもらうことで
いいのかなという、本当に小さな民宿をしております。今日はありがとうございました。
青木:ありがとうございました。坂下さん、どうぞ。
坂下清子<民宿
のんびり村>
皆さん、こんにちは。宮城県から来ました、はっぴに書いてあるとおり、のんびり過ご
してほしいということで、名前を『のんびり村』とつけました。北上川がずっと太平洋に
注いだ根っこで、私は農業もやって、漁業もやって、その合間にお客さんを受けています。
子どもたちから学生さん、若い人などさまざまな世代が訪れ、農業・漁業体験をして帰り
ます。やはりその中でも関心を持たれるのは、地域でとれた新鮮な素材です。そういうこ
とから生まれる本当の味、おいしさを勉強しに来たりする人たちもいます。私が生まれ育
ったところで、娘からおかあさんになり、今はおばあちゃんになりました。生まれ育った
ここが大好きで、自分の小さいときから遊んだ地域が汚れていく様を見て、どうにか次の
世代の人たちにいい形で残したいということで、自分の家の経営とともに、地域がいい形
で残ればいいかなと思うのです。来た人たちに「おかあさん」「ばあちゃん」と呼ばれるよ
うな、そんなおかあさんでいたいと思っています。これからもよろしくお願いいたします。
青木:ありがとうございました。では田村さん、お願いします。
田村えり子<ペンション&農家レストラン
ル・カルフール>
青森県弘前市、リンゴ生産量日本一のところから来ました、田村えり子といいます。よ
ろしくお願いいたします。うちは片仮名で書いてあるとおり、『ル・カルフール』、フラン
ス語で「人と人が交差する点、交わる点、出会う点」という意味でこの名前をつけまして、
ペンション経営を 20 年しております。その前は、観光農業として、岩木山麓を中心とする
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りんご農園を一大観光都市にしたいという願いから、33 年前からそんなことを考えて、ず
っとやってきて、今のグリーン・ツーリズムがあります。
私は、地域の先生と呼ばれています。その先生は、もともと教師だったからなのですが、
主人はプロのコックですので、調理は主人に任せればいいと。私はお相手をするだけ、サ
ービスをすればいいということでやりました。今は調理もできます。
そんなことでやっていましたが、今は地域の先生から地域のおかあさんになってきてい
るということで、この「おかあさん100選」をいただいたことがとても私にはうれしい
のと、地域で私と一緒に頑張っている 70 軒の農家のおかあさんたちがとても喜んでくれて、
「私たちの代表のおかあさんが1人選ばれたんだ」といって、皆感謝してくれています。
うちの青森県では、特に規制緩和によって農家の1部屋、6畳なら6畳、8畳なら8畳の
部屋だけを農家民宿登録して、修学旅行生を受け入れているのですが、現在私が一緒に活
動している1部屋登録の農家民宿は 24 軒で、まだ登録は済ませていないけれども、修学旅
行生を受け入れている農家があと 20 軒ということで、200 人クラスの学校も受入可能です。
さらに、地域と連携して、弘前市のほかに青森市や平川市という隣の市の団体たちとも協
力して、350 人クラスの修学旅行生を受け入れています。
私は常日頃、いろいろな組織をつくって、地域ぐるみでたくさんの一般の人や、修学旅
行生を受け入れられるようにしてきたので、地域の先生であったり、地域のおかあさんな
んですね。農家の人からもおかあさん、それから来てくださる修学旅行生や一般の人から
もおかあさんです。
皆さんとちょっと違うのは、私は地域の情報受発信のサテライト、拠点になりたいとい
う思いもありますので、農家の人がどんな人で、どんな家族構成か、その 70 軒の農家をす
べてファイルアップして持っていて、旅行会社から聞かれたら答えてあげられるという、
私の取り柄はそれかなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
青木:ありがとうございました。それでは、今度はこちらに参りましょうか。
■ 小さな集落でも大きな存在~四国・九州地方のおかあさん~
田辺客子<農家民宿
はこば>
高知の四万十川の放流から奥に入りました、本当に小さな集落で農家民宿をしておりま
す。若い方に「おかあさん」と言われておりますので、とてもうれしい言葉です。
こういう農家民宿に来られる方は、やはりいやしを求めて来ます。普通に皆さん疲れて
いるなと、いつも思うのですが、だから私たちは皆さんが発散したいという思いがあるの
で、お話を十分聞くことにしています。ホッとされて、お話を十分聞いて、そして私たち
が何でここで生きているのか、こうやって農家民宿をしているのか、こんな山の中で暮ら
しているのか、そういうことをお話しします。そして、特に「るるぶ」に載せていただい
ている関係で、若い方に来ていただいています。そういう方たちが「じゃあね、おとうさ
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
ん、おかあさん、また来ます」と帰っていくのは非常にうれしいです。そういう役割を果
たしながら、「いやし」のおかあさんとして頑張っています。よろしくお願いいたします。
青木:ありがとうございました。
時枝仁子<百年乃家
ときえだ>
皆さん、こんにちは。日本で唯一、真ん中に心がつく町、安心院町から来ました。安心
院町は、現在、宇佐市に合併しましたので、宇佐市で 50 軒の農村民泊があります。
その中で、先ほどおかあさんの話が出ましたけれども、花に例えるならば菜の花かなと
思いました。それから私は本当の田舎娘で、橋本さんは海のギャングだけど、私は農村の
可憐な乙女でした。若いときは、他の町に出たくて仕方がなくて、本当にコンプレックス
のかたまりでしたけれども、今度農家民宿おかあさん100選に選ばれて、みんなは町に
出たけれども、私は残っていてよかったと思っております。
私たちも、子供さんたちをたくさん預かって、農村体験学習を受け入れていますが、ま
だうちは大御所がおりまして、私の義理の母が 80 歳で健在です。その義母が「おかあさん」
と呼ばれておりますので、私はまだ「おばちゃん」と呼ばれています。子供たちからおば
ちゃんと言われますが、学校の先生たちがお泊りになったとき、その先生のお1人が、小
さいときにお父様、お母様を亡くされた方で、帰ったあとで「安心院のおかあさんと呼ば
せてください」というお手紙をいただき、「ああ、私は今からこれに向かって頑張っていこ
う」という思いになりました。まだ発展途上中ですが、おかあさんと言われるように目標
を定めています。
青木:ありがとうございました。それでは最後になりましたね。どうぞ。
古谷昌子<農園ぴくにっく>
皆さん、初めまして。今、東国原知事でとてもにぎやかな宮崎からやってまいりました、
『農園ぴくにっく』の古谷といいます。今回、おかあさん100選ということでいただい
たのですが、実は私はおかあさんと呼ばれたことが余りありません。自分の子供以外から
は。でも、皆さんの言葉を聞いて、
「おかあさんってやっぱり温かいな」という印象はあり
ましたので、やはり悪さをする子供はきちんとしかって怖いおかあさん、でもその後はし
っかり抱きしめてあげられるような温かいおかあさん、そういう偉大なおかあさんを目指
して、これから頑張っていきたいなと、今回こういう諸先輩方と一緒に肩を並べてここに
座っていられるのはとても光栄なことです。これから私の一番の目的、目標になるという
ことで、とてもありがたいと思っております。
■“おかあさん”という存在の大切さ
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
青木:多分、今日おいでの中で一番若いおかあさんかもしれませんが、17 名の皆さんのお
声を聞いていただきまして、皆さん、どんな印象を持ちましたか。やはり、全国津々浦々
に本当にすてきなおかあさんがいるというのは、日本の宝だなと僕は思いました。
今回のこの事業名が「農林漁家民宿おかあさん100選」ということで、「おかあさん」
というネーミングが本当によかったなと思います。初めは「カリスマ」という名称の案も
あったのですが、カリスマだけはやめてくれということで頼んで、何とか農林水産省の方
で考えて、このおかあさんという名前になったのです。皆さんは、カリスマではありませ
ん。本当に我々のおかあさんであってほしい。改めて今日、つくづく思いました。
ちょうど沖縄に行ったときに、神風特攻隊、あるいは玉砕する戦士が、最後に「天皇陛
下万歳」と言って死んでいくというのは、あれはうそである。ほとんどの戦士は「母上」
「お
かあさん」と言って死んでいくということを聞いて、「ああ、男としては非常につらいな」
と、僕も実は死ぬときは多分「おかあさん」と言って死ぬのだと思いますけれども、なぜ
「おとうさん」と言って死ねないのかが、親父としては非常に悲しい現実ですけれども。
やはりおかあさんという存在が人間にとっていかに大きいかということを、改めて感じた
次第です。
ほとんどの方々は、いわば農業の生産
条件からいうと、
「条件不利地域」という
ふうにカッコづきで名づけられるところ
で暮らしておられる方でした。でも実は、
いろいろな意味での条件不利性は、決し
て人間にとって条件不利ではない。グリ
ーン・ツーリズムにとっては、まさにうっ
てつけの場である。そのことを、何より
もこの皆さん方が、御自分の目で、御自
分の力でそれを発見され、生かされてい
るという気がして、本当の日本のグリーン・ツーリズムの確かさというものを、改めて感じ
ました。
日本の農山漁村がこれほど豊かであるということを、東京に住んでいる人々も含めて、
日本の国民はどれほど知っているでしょうか。今、食料の危機、いろいろな意味で自給率
の問題も取り上げられていますけれども、残念ながら、学者も、メディアも、自給率向上
の展望を開けないでいます。
私は、今日お話を聞いて、つくづく感じました。時間があれば、実は皆さんにお聞きし
たいのです。皆さんの地域では、あるいは皆さんのお宅では、どのぐらい自給率がありま
すかと。東京ではできないことであっても、この地域で根っこをはやしておかあさんとし
てやっておられる方々は、自給率を 100%に近づけることは可能ではないでしょうか。我々
が考えるべきことは、まず地域の中で地域自給率を高めていくということだと思うのです。
それは実は、今日おいでの方々が実際にやれることだと思います。地域自給率を、もっと
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
具体的に考える。人間感動率というものを、1人1人が考えていく。生涯現役率、生涯健
常率というものを考えていったとき、今まで我々が考えてきた過疎化、高齢化、少子化、
国際自由化というようなネーミングにない、新しい可能性が見えるのだと私は確信しまし
た。
今日の 17 名の方々、そして今日おいでにならなかった3名の方々は、そういった幅広い
意味での我々の今後の生き方を示唆されている、とても大事なおかあさんです。命と心を
次の世代につなぐという、我々世代が考えなければいけないことを、皆さんこそが、実は
いろいろな形で我々の導き役になっているという気がいたしました。
残念ながら、私はまだ今日おいでの方々の半分ぐらいのところにしかお邪魔したことが
ありません。ぜひ近いうちに、皆さんのところにお邪魔したいと思います。今日おいでの
皆さんも、ぜひ、必ずや1度はこのすてきなおかあさんのところへ行って、「おかあさん」
と呼んであげてください。私たちの心の中に「おかあさん」と呼べる存在が何人いるかと
いうことが、人間としての豊かさを測る1つの尺度かもしれません。そういう意味でも、
本当に農林水産省は最近よい政策をやるようになってきたとつくづく感じております。
来年度から実施される、子ども農山漁村プロジェクトも、とてもよい事業です。しかし、
現実はなかなか難しい課題がたくさんあります。今日おいでの方々を中心にして、子供た
ちに感動を与える、そういう生きる教育をやるチャンスがめぐってきました。今、大きな
曲がり角にある日本ですけれども、今日のこの100選の事業をもっとバネにして、多く
の方々が豊かな生き方ができるようになればと、つくづく感じた次第です。
本当は今日、会場の皆さんからも御質問、御意見をいただきたかったのですけれども、
機会があれば、それぞれのおかあさんの宿をご訪問していただき、直接おかあさんからお
話を聞いていただければと思っております。
最後に、パネリストの皆さん、そして先ほど急にお願いしたにもかかわらず、快くマイ
クを握ってお話しいただいた 17 名のおかあさんに、改めて拍手をお送りください。ありが
とうございました。
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農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
(7)第1回農林漁家民宿おかあさん100選認定者意見交換会記録
1)プログラム
■日
時
平成20年2月28日(木)15:30~17:30
■会
場
都道府県会館101大会議室
■主
催
(財)都市農山漁村交流活性化機構
■参加人数
認定者17名
委員4名
オブザーバー2名
農林水産省・国土交通省2名
財団法人都市農山漁村交流活性化機構5名
■内
容
農林漁家民宿おかあさん100選認定者による意見交換会
■主
催
(財)都市農山漁村交流活性化機構
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農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
2)意見交換会記録
青木委員長:今日は全国からおこしいただいて、先ほどのパネルディスカッションではと
ても貴重なお話をパネリストの皆さん、そして、フロアの皆さんからもいただきました。
本日は「農林漁家民宿 100 選」の選考をやってくださった委員の先生方にもおこしいた
だいたので、ざっくばらんに意見交換をさせていただきます。最初に今回の選考委員の方々
から自己紹介をしていただきましょう。
■選定委員あいさつ
~地域の起爆剤へ~
桐木:皆さん、おめでとうございます。
私は裏のページを開くと、2番目の先
生の下に出ております桐木元司と申し
ます。もともと専門は、
「ホスピタリテ
ィ」という片仮名ですが、日本で言う
と「おもてなし」ということになりま
す。
本当に今回認定された皆様のお宿を
2軒ご訪問させていただきまして、感
じたことは非常に共通するものがありました。今日発表を聞きましても、1つは、ホスピ
タリティと言いますか、おもてなしが非常に自然で、土地の文化・伝統あるいは語りに支
えられたものをひしひし感じますね。
つまり、おかあさんそのもの自体が、言葉が適当かどうかわかりませんが、お宿の戦略
商品かなと思います。それも着飾らず、非常に自然で、私が思うには、ホテルだとか、風
呂サービスだとか、一部観光関連だとか、地域の発展だとかいう以前に、本当に皆様のお
仕事は、単なるお宿のしつらえのことばかりではなくても、地域のおもてなし、これを私
は「ローカルホスピタリティ」と呼んでおりますけれども、ここに橋がかかっている方が
多いということを非常に私はうれしく感じています。
今後、ぜひ皆様が起爆剤に多分なると思います。皆様は最初の認定者で、大変世間的に
も、社会的にも、回る先々のホテル関係の経営者までもが知っていますので、両方が切磋
琢磨して、まさに日本の地域そのそのもの、まちそのもの、むらそのものを発展させるた
めの起爆剤になっていただきたいと思います。
村上:村上由紀と申します。このたびは皆さん、おめでとうございます。そして、ここの
会場に入っただけで元気を頂いたような気がします。食べ物関連のことをやっています。
もともとレストランとか、飲食店に関係しておりますので、農家さんとのお付き合いです
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
とか、地域を思う心とか、食文化ということをすごく大事にしている方が当然のように選
ばれているというふうに感じております。
どこの地域に行っても、あそこがああいうことをやっているからうちもやろう、という
ことを言っている地域で成功しているところはあまりないような気がします。皆さんが御
自分の足元をよく見て、自分の土地が好きで、自分の土地なりの楽しみ方を持っている方
が、やはり先頭をきっていくのだと思います。これからもお付き合いよろしくお願いしま
す。
委員長:どうもありがとうございました。それでは、村田さん。
村田:皆さん、今日はおめでとうございました。毎日新聞の村田です。私は5年ほど前か
ら毎日新聞で「グリーン・ツーリズム大賞」という事業を担当していまして、実は私が自分
で勝手に発案して決めたんですが、なぜそんな賞を新聞社が始めたかというと、皆さんご
承知のように現在地方自治体の財政問題が相当ひどい状況になっています。地域を再生す
る、または活性化するためには、やはり農業を活性化しなければいけないと。
農業を活性化するためには、既存の農業だけではなくて、新しい農業の分野で農林漁業
の一次産業みたいな新しいものを何かをやらなければいけない。それはやはりグリーン・ツ
ーリズムではないかと。僕は農業再生、あるいは地域の活性化=グリーン・ツーリズムだと
考えていて、それでこのような事業を毎日新聞で始めました。
ここにいる皆さんの中にも「グリーン・ツーリズム大賞」を受賞された方がいますので、
今日も議題が多分このネットワーク化で、今後どういうふうに発展させていくかという話
だと思います。皆さんが地域のこれからを牽引していく、民間の力で地域を元気にしてい
くという気持ちで今後も頑張っていただけたらと思います。本日はどうもおめでとうござ
います。
委員長:今回の選考にあたり、選考委員という形ではなくて、地域の現場を知る方を、オ
ブザーバーとして2人お願い致しております。まず、高知県の山崎さんからお願いいたし
ます。
■現場からのメッセージ
~ともに歩んでいきましょう!~
山崎:高知県の農業振興部地産地消課の山崎と申します。高知県から2名、上田さんと田
辺さんが認定を受けました。二人が開業した平成 12 年に、私はグリーン・ツーリズムの担
当者になりました。それから、約8年になりましたが、お二人の努力する姿を追っかける
ようにしてお手伝いをさせていただけたらと思ってきました。
本当に地域が大好きで、志があるというか、行政は「活性化」などいろいろ変な言葉を
使いますが、こういう方々が本当に地域で活躍することが大事であると思ってやってきま
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
した。どうぞよろしくお願いいたします。
委員長:それでは、農協観光の斉藤さん。
斉藤:斉藤と申します。皆様方、本日は大変おめでとうございます。
私は、株式会社農協観光という、旅行業の中で農協が出資している旅行会社で、昨年の
4月にスタートした「グリーン・ツーリズム事業本部」という部署に現在います。農協観光
ではここ 12~13 年にわたるグリーン・ツーリズム事業において、紆余曲折しながら現在に
至りましたが、昨年の4月からグリーン・ツーリズム事業本部ということで、本格的に取り
組もう、もう一度取り組み直そうということでやらせていただいております。民間の仕事
ですのでいろいろとありますが、青木先生からもいろいろと御指導いただきながら、これ
から皆様方と都市部の、いわゆる疲れて皆様のところへおこしになる方々の橋渡しができ
ればと考えております。
委員長:ありがとうございました。本省の杉原さん、中山さんお願いいたします。
杉原:農水省農村政策課でグリーン・ツーリズムを担当している杉原と言います。
本日は皆さん、大変おめでとうございます。
今日お集まりになった皆さん方のお顔も非常に華々しくて、この席ができてよかったな
と思っております。この機会を第一歩として、皆さん方一人ひとりが楽しくできる会とし
てネットワーク化したいと思っております。それが最終的にうまく地域の中でも根づいて、
地域のネットワークを連動できる力につながっていくといいのではないかと思っています
ので、よろしくお願いいたします。
委員長:ありがとうございました。中山さんもお願いいたします。
中山:中山と申します。本日は皆様おめでとうございます。この事業の趣旨は、選ぶこと
ではなくて、この後、日本のほかの農林漁家民宿の質を向上させていくためにやっている
事業ですので、皆さんのお知恵をぜひ拝借したいと思いますので、どうぞよろしくお願い
いたします。
■地域ネットワーク形成に向けて
~青森の事例より~
委員長:では、これから短い時間ではありますが、ざっくばらんに皆さんからいろいろな
御意見等々をいただければと思います。
実は今回この交換会を開催した背景には、この事業の趣旨ということで、まずは初年度
20 人、最終的にできれば 100 人近く、あるいは 100 人以上になるか、そういった方々を選
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考して、認定し、かつ全国的なネットワークを作っていただきたいという思いがあります。
せっかく皆さんがこれだけすてきな実践をしているのに、やはり全国的なネットワーク
がないとお互いに情報もなかなか途絶えがちで、学び合うこともできず、お客さんをお互
いに回すこともできない。ですから、いろいろな意味で、これからこの第1期生の皆さん
に横の連携をとっていただいて、皆さんの経営に、あるいは地域の実践に生かしていただ
きたいと、そういうネットワークというものをこれからどんな形であればできるのか、そ
の場合、どういう課題があるのか、その辺についていろいろお話をお聞きしたいと思って
いたところです。最初に田村さんにお聞きしたいのですが、青森県でかなりネットワーク
について幅広く、長い期間をかけてつくられましたよね。
これは例えば、全国的なネットを形成していくに当たって、田村さんの経験から、どう
いったことを一つ考えていけば具体的につながっていくのか、その辺を青森の経験を紹介
いただきながら話題提供をしていただければありがたいです。
田村:私がしているのは、まずは、
やりたい意思がある人たちをリスト
アップして、その人たちに呼びかけ
て、受け入れるのに、自分たちで抱
えている問題を持ち寄って話し合う
ことです。先ほどの話の中に、地域
が違うと違うと言いましたが、抱え
ている問題の中味、根本は同じでは
ないかと思うので、地域性は別とし
て、今こんなことで悩んでいて、こ
こはこうしたら、こううまくいった
よ、という情報交換をする仲間というか、連携が必要ではないかという呼びかけをしまし
た。
実際には、私が青森でやっていることを高知の人ができるかといったら難しく、私の悩
んでいることを理解できないかもしれないが、そういう悩みが、いざ自分たちが高知で今
度出てきた場合に対応ができるだろうと。そういう考えのもと、皆さんに呼びかけ、賛同
して仲間が集まりました。今、市町村単位で活動していますが、そこにある団体の人たち
に呼びかけて集まってもらい、話し合いをして、農家からいろいろな問題点だ、意見だの
を拾い集めて、会の人が持ち寄って、どうする、ああするという、それから、こういうと
ころに研修に行こう、学びに行こうという話も出たり、その人たちにいろいろと協力して
頂いています。
今もう一つやっているのが、
「北東北広域連携」という事業をしています。4月に 100 人
のリストアップの本が出ますが、それは東北でこんな女性たちが頑張っている。そこで頑
張っている女性たちがいるよ、というものを1冊に取りまとめたもので、自分たちがやっ
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農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
ていることを書いていますが、何をするために始めたかというと、私たちをPRしたい。
東北ではこれだけ頑張っている人がいるよ、というのを全国に発信したかったのです。
要は、意外と東北に南の方たちが研修に来るということが少ない。東北の人たちが南に
研修に行くことはあっても。よって私たちは、こんなすばらしい地域で、こんなことをし
ている、どうぞ見学に来てよ、という意味もありました。あと、東北にない食材が南には
たくさんあるので、とにかく北東北3県の 100 人でリストアップして交流活動をしていき
たいと思います。
例えば、これから、年1回、北東北3県のどこかで女性会議を開催したい。男女共同参
画なんかでも女性会議というのをやっていましたが、そうではなくて、以前、まちむら交
流機構さんの方で、全国の農村女性をホテルの1カ所に集めて、東京のいろいろなところ
で分科会や勉強会をやったことがあります。あのバージョンをまず北東北でちょっと仕掛
けてみたいです。そこに全国から人を集めて来てもらう方式をとりたいなと。それで交流
が始まったら、今度は、じゃあ、九州へ行ってみようかとなるのではないかと。
委員長:その北東北は、青森、岩手、秋田ですよね。その 100 人というのは、いわゆる民
宿業をやっている方以外に、農家レストランや直売所の代表であるとか、いわゆるグリー
ン・ツーリズムのいろいろな事業をやっている方々が 100 人リストアップされたということ
ですか。
田村:そうです。
委員長:なるほど。ところで長南さんはどこにいらっしゃいますか。長南さんは帰られた
んですね。庄内でもそういうネットワークがあるんですけれども。大分でもネットワーク
をつくられていますよね。そういう経験を踏まえて、いかがでしょうか。この「おかあさ
ん 100 選」の仲間の関係をこれから生かすために、まず何を皆さん求められているんでし
ょうか。
■“おかあさん100選”のつながりを生かすためには
時枝:私は、個々に物産展みたいなものをやれば、1回だけでも相当よいと思いますが。
委員長:でも、出てくるのが好きな人と招く方が好きなタイプというのがあると思いすが、
まずは呼び込み隊と現場隊というのに分けて、それぞれ得意技でやるというようなやり方
の方がいいんですね。
時枝:九州には市場に出ていないものとかですね、市場のルートに乗っていないサンプル
がたくさんあります。ブリなんかは相当おいしいんです。親ブリ、子ブリ、男ぶりと言っ
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て。
(笑)それで、あらは豆腐屋さんに頼んで、豆腐を持ってきてもらい、スープにされて、
全部食べ尽くすので喜ばれます。
また、それぞれ皆さんの地域には安心・安全な食材があり伝承された調理方法などで、
しっかりと食を提供しているので、都市の人に貴重な食の情報を発信することができるの
です。
委員長:やはり時枝さんには圧倒されますねえ。
(笑)時枝さんは自分のことをあれだけ可
憐な乙女とか言ってましたが(笑)
。
坂下:私は2~3年前はパワーがありましたが、やっぱり年齢を感じてしまいまして。ネ
ットワークとか、結構宮城県でもグリーン・ツーリズムネットワークと言って、農家レスト
ラン、民宿のレストランと1年に2回ずつ集まる交流会があります。
それで結構、宮城県の中では、青木先生たちがいらしてくださるので、仲間で結構集ま
って情報交換をしています。みんなこの商売をしていると、土・日はまず忙しい。それか
ら、私は農家もしていて、海もしていて、冬になると柿の木もしていて、予定表をもらっ
ても、ついやりくりできない状態です。
今までだと、何とかやりくりして行こうと思っていましたが、最近はどうも腰が重くて。
地元で頑張っていきたいと思うときもあります。県内の仲間と会うのが精一杯のときもあ
るわけです。それで全国の大会もありますよね。行きたいと思っても九州や北海道へは行
けないときもあります。
そうすると、やっぱり自分の地域に住んでいる宮城県なら、宮城県のネットワークと、
自分たちでそこの地域のことを頑張って発信していけます。私たちの町はいいよ、という
ことを精一杯やるのが今からの私かなと思います。
このネットワークができら、東京に、九州に、1年に1回集まりましょう、と言われて
も、すごくうれしいですが、果たして必ず行きます、と手を上げて参加できるかというと、
せっかく皆さんのやる気に応えられず申し訳ないですが、集まってこれる条件と、それと
集まれない場合、どういうネットワークにして情報発信や意見交換などをするかについて
も考えてもらいたいと思いました。
委員長:大変いい御意見だと思います。やはり、皆さんのおかあさんたるゆえんは、地域
の根っこを生かして、地域の皆さんと一緒に実践されているところが一番大事なポイント
です。それを犠牲にしてネットワークのためにしゃかりきになって頑張ってもらうという
のは本末転倒だということですよね。ただ、せっかくこういうお仲間ができたことなので、
できるだけ無理ない形で、例えば、来年度今ごろ、杉原さん、予定としては第2回目の認
証があるわけですよね。
杉原:そうですね。そのようにやりたいと思っています。
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委員長:そのときに、農水省の予算で皆さんに来ていただけるかどうか保証はありません
が、また駆けつけられる人は駆けつけていただく。そうでない方々は何かの形でメッセー
ジを届ける。常に皆さんの絆が太くなるようなやり方を考えたいとうことで今お伺いして
いるところですが、どうでしょうか。無理ないやり方というのは、今、坂下さんから大変
いい提案があったと思いますが。
皆さんそれぞれ地域の中でも忙しいと思います。山崎さん、どうですか。そういう意味
で、今度逆に県の職員の方々の役割というものも一つ行政として出てきます。せっかくこ
ういった方々が、例えば、来年、高知からもまた選出・認定されるかもしれませんよね。
そこで行政がどういうサポートができるか、どうあるべきかお考えを聞かせいただければ
ありがたいんですが。
山崎:一堂に会してというのはなかなか無理なので、やはり、全国の知恵というのが重要
です。その知恵をいろいろな形で、連絡だけにしても持って帰って各地域で展開するとい
うことが次の段階であるのではないかと思いますが、そういう形で隅々まで、これから頑
張りたい人にも伝わっていけばいいなと思っています。
委員長:そういう意味でも、まちむらのネットワークもありますし、私がやっているNP
Oもありますから、そういうところに皆さんの情報をいただいてアピールするという手も
あろうと思いますので、できるだけせっかくの絆を常に緊密なものにする仕掛けをしてい
きたいです。
■東京で活動することの意義
水野:私たちはイベントを通じて地域の皆さんや、都会の人が来ますが、今ここでネット
ワークばかりでなしに、せっかく顔をそろえて皆さん出会ったので、1年に1回は、そん
なに大きなことはしなくてもいいですけれども、イベント式ふうに、それぞれの地域の話
も聞いたり、こういうパンフレットなどもつくって、東京の中でもそういう触れ合いをや
りたいと思います。
委員長:なるほど。前に元気な学生がいて、農水省のインターンシップに入ったときに、
「消
費者の部屋」というところで、農家民宿を作るということで、もう大騒ぎで、会津坂下の
町長を恐喝して、何とかやってもらったことがあります。
ですから、例えば、こういう味気ない会議室をいろいろアレンジして、皆さんのお宿の
ような感じに。1年に1回やってもグルッと回るのは 20 年かかるわけですから、東京に水
野さんの民宿がここにでき上がるというようなやり方もやろうと思ったら面白いですね。
果たしてそれがいいことなのかどうか、これは非常に重要な一つのポイントですが、グ
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リーン・ツーリズムというのは、本来はその場に行かなければ意味がないわけですよね。で
すから、出張販売というのは、果たして本当のグリーン・ツーリズムになるのだろうか。皆
さんのお宿をここにバーチャルでつくっても、それは本物ではないわけですよね。だから、
わざわざ東京に来てやることの意味というのは何なのかということも一つ踏まえたイベン
トにしていかないと、何かおかしなものになってしまう。だから、そういう意味で、東京
でイベントを企画するときの意義と限界というようなものも考えながらやった方がいいと
思いますが、いかがでしょうか、村上さん。
村上:そうですね。私は銀座に非常に敷地面積の大きいレストランの支配人をしていたと
きに、「農家さんが産物を自由に持ってきて、いわゆるマーケットということがどうして東
京にはないんだと。一堂に集まっていろいろな地域が分け隔てなく、出てきたい人たちが
出てきて、自分たちの産物を自慢して交流をする場というのがあってもいいじゃないか」
と俳優の永島敏行さんからの提案を受けて、まちむら交流機構とのコラボレーション企画
として「青空市場」を私どものレストランで開催しました。
そこでは物を売りにくるだけではおもしろくないので、私どものシェフを控えさせてお
いて、1ブース1ブース時間を区切って、じゃあ、岐阜県から出てきているこの方のコー
ナーからその産物をいただいて、シェフに即興で料理をつくらせる。また、岐阜県のこの
おかあさんは、自分の郷土料理を持ってきている。それをみんなで食べ比べをする時間み
たいに、県ごとに産物の料理対決みたいなことをやりました。
郷土のものを、逆に東京の料理人たちが教わることもできますし、東京の料理人が、「お
かあさん、無茶くちゃうまいよ。でもね、これはちょっとだけこういうふうにやるともっ
とうまくなるよ」、というポイントの交流みたいなことを何年かにわたってやらせていただ
いたことがあります。
ただ物売りになって東京に出てきてほしくないかな、という印象は正直あります。物を
提供していただくのは、おかあさん方皆さんのキャラクターだったり、生き方だったりと
いうところをどんどん出していただいくということなら、まだ価値があるかもしれません。
何か産物を抱えてその地域を紹介するというのは、物産展として、東京では数多くやって
いるんですね。そして、売れないし、それは逆に言うと、取り寄せという世界で十二分に
飽和状態になっているので、そこに参画する必要はないかなと私は思います。
やはり、我々から地方へ出向き、その土地の空気と、おかあさん方がいて、その環境が
あって初めておいしく感じられたりすることというのはたくさんあると思います。何とな
くスキー場で食べた野沢菜がおいしいけれども、東京に持って帰ってくると別に大したこ
とがないみたいなことはたくさんあり、その空気の中で感じたいなと今すごく思います。
その辺のネットワーク作りは、この間、高知県の山崎さんともお話をしましたが、例え
ば、おうちを改築するとか、人をお迎えするときに、こんなリフォームをしたんだけれど
も、こんな問題点が出てしまってというような具体的な情報をおろしていき、じゃあ、こ
ういう場合は専門家の人にちょっと聞いてみようかという考えが浮かびます。専門家が、
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農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
そういう意味でいろいろなカテゴリーの情報がリンクしていって、何々県の、何々さんの
ところで、こんなことがあったみたいな情報が皆さんに同時に伝えることもできると思い
ます。そういう情報の交換ができれば、何も顔を合わせて1カ所に集まるということだけ
が情報ではないような気がします。
上田:私もそう思います。もし東京に来るとしたら時間とお金の問題があります。それで
出てくると、私たちも本当に地域の中での存在というのは、私たちの年代に頼られており
まして、本当にスケジュールがいっぱいになってしまうんですよ。
出てきて顔出すことではなくて、ここのところが私聞きたいというようなときに、情報
が交換できるという意味では、非常に有益なことだと思います。どんな考えでやっている
のか実際に聞くと、また全然違う部分での自分の利益になると思いました。
だから、こうやって人を知れたと
いうことが大事で、その中で自分ら
が、今度何か新しいことを考えよう
という気になります。漁村ではすご
く楽に修学旅行などの大勢でも受
け入れられますが、農村部というの
は、非常に難しい部分があります。
ただやる素材はいっぱいあります。
でも、どういうふうに農泊させてい
るのかなとか、そういうノウハウが
聞きたいので、情報交換というのは
必要不可欠になってきます。
例えば、ここでは許可が得られていたのに、ここでは許可が得られないというのが県内
でもあります。そういうところの統一化や、あと、旅館業やホテル業との兼ね合いが問題
で、特に私らのところでは、ホテルの人が言うんですよね。「あんたたちが規制緩和ばっか
り言ってないで、やっぱり同じ旅館業なんだからちゃんとやるところはやらなければ」と
言われことで、今度はそれにきちっと説明ができるぐらいの認識を持たなければというの
があり、そういうところの情報交換ができたらすごくうれしいです。それはメールでもい
いと思いますが、すぐに相談する人がいないというのが現実なので、皆さんが私たちの先
生であり仲間になれたことは、非常にうれしいです。
委員長:例えば、上田さんが、今こういう悩みがあると、ブログというのが今ありますが、
多分皆さんほとんどできないと思うので、ブログができなければメール、メールができな
ければFAX、FAXができなければ電話、または、まちむら機構にまず電話するという
のはどうでしょう。まちむらのネットワークを生かして、何らかの情報がもらえると思い
ます。米倉さん、どうですか。
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
米倉:私は自分のところでつくったもの
をお客さんに提供することをモットーに
して、前はヤギも置いたり、鶏も飼って
いますけれども、野菜とかも、新鮮で安
全なもの、余り農薬は使わないようにし
ています。そんなふうにして、とにかく
今は物すごく食物の安全性がやかましく
言われていますので、これで何かお客さ
んに喜んでもらえるかなというのは実感
しています。お客さんには、いろりを囲
んでいただいて、炭火でイワナを焼いたり、魚は池をつくって、そこでニジマスを飼って、
ニジマスのお刺身を出したりというようなもてなしをしています。
見たところ私が一番年長みたいですけれども、これからも自分が元気な限り、続けてい
きたいと思っています。体験民宿として何年も続けてきましたが、実は本当はそろそろや
めた方がいいかと思っていたんです。武蔵野市との交流の関係で受け入れはしているもの
の、体験民宿そのものは実際私は知りませんでした。
ところが、今度この 100 選のおかあさんで選ばれたので、これは大したことになったな
と思い、やはりまた頑張った方がいいなと思っています。どうぞまた皆さんよろしくお願
いいたします。
■学校単位で受け入れる場合の問題点
委員長:ことし 10 月末から 11 月に、富山県で NPO 全国大会をやることが決まりましたの
で、ぜひ同窓会を兼ねて、皆さんで富山県にお邪魔したいと思います。
米倉:はい。合併して南砺市になりましたけれども、その前は利賀村です。
委員長:いろいろな面でぜひあと 10 年は確実に頑張っていただきたいと思います、おかあ
さんとして。
(笑)
米倉:東京の「宝仙寺」というお寺さんの経営の宝仙短大がありまして、そこで保育科の
生徒さんが毎年移動授業で1週間来ています。その後が武蔵野市の5年生が来て。宝仙短
大さんは、もうことしで 36 年目です。ちょうど私らが民宿を始めて、その年から一緒にず
っと時を共にしています。ことしも5月20日から1週間の予定です。
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
委員長:何軒か分かれて分宿するんですよね。
米倉:それぞれ1軒に7~8人単位で。今一番困っているのは、その村が結構広いという
ことです。分宿すると、宝仙短大の人たちは 18 歳ですからいいですけれども、子供さんの
場合、先生方が毎日夕方全部回られるんです。そして、1軒1軒泊まっている民宿の方に
先生方が毎日連絡したりしてこまめに回っているんです。
委員長:それは地域の方が運転して回るんですか、学校の先生ですか。
米倉:先生方が回られるんです。責任とかもあり
ますので、先生方は子供たちを親から預かって1
週間ですから、何かあったら困るので。だから、
それが先生方も大変なご負担ですし、先生方の泊
まった宿の人も、夕食が遅くなるでしょう。その
中で文句言われたりもします。
委員長:武蔵野市の場合、僕が聞いたところでは、
サポーターという、学校の先生の卵の人たちが、
その先生たちの負担を減らす役割を果たしています。やはり、学校の先生の負担について
は、今後考えなければいけないですね。それはとっても回り切れません。毎晩先生が回っ
ているんですか。
米倉:はい。
委員長:それは大変だと思います。
関:でも川場の場合もそうですよ。
委員長:川場もそうですか。
米倉:おかあさんたちにすれば、そうしてもらえるから安心して子供たちを送り出される
と思うんです。
■情報をどうやって手に入れる?
田村:私が思うには、ネットワーク化について、インターネットとか皆さんから集めた情
報を発信するだけでは多分おさまらないと思います。1回集まって、来られない人は仕方
ないにしても、自分のかわりに誰か地域の人をよこしてもいいと思うんですよ。皆さん仲
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農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
間はいると思うので。
委員長:なるほど。おかあさん代理?
田村:そういう感じでみんな意見を出し合う。たったこれだけのことで分宿のこと、修学
旅行のことだけで意見がいっぱい出ると思うし、問題点も出るでしょう。
委員長:将来的にはね。ですから、上田さんが行けないときは、地域内で民宿をやってい
る4軒の方、つまり次のおかあさんの候補者をよこすんですよ。そして、どんどん巻き込
んでいく。皆さんだけが全部抱え込まないで、もう騙されたと思って行けと。いやあ、騙
されてよかった、楽しかったって。何で上田さんがあんな元気なのかがよくわかったとい
う話になると思うんですよね。だから、そういう形で、本人が来ない場合は御主人でもい
いと思います。だから、だれかが来て、情報を持ち帰る。やっぱり、面と向かって話すこ
とに意味がある。
田村:あると思います。顔を見るだけで。ほんのわずかな時間。やはり元気をいただくん
ですよ。ああ、すごい。これを私はあした青森へ帰れば、
「もうすごかったよ、今回のおか
あさんたちね、すごいパワーだよ。あなたたち、負けているよ」という話をしたくなるわ
けですよね。年1回お会いしてパワーをいただきたい。やっぱり1年に1回はお互いに顔
を見て、これはこれだけのものしかないし、顔を見ればそれなりに元気も出てくるし、金
銭面もあるでしょうけれども、その分はまた働いて。(笑)
委員長:そうですね。
田村:例えば、私が上田さんを青森に呼べばいいわけですよ、講師料を払って、旅費払っ
て、来てください、と言えばいいんじゃないですか。
委員長:そうです、その方式、その方式。
田村:来てください、と橋本さんも言いました。呼んでください、と言ったら呼びますの
で、呼んだら収入にもなるし、自分たちの地域の情報を私たち青森の人たちにも教えるこ
とになるし、PRにもなると思います。
委員長:そうですね。桐木さん、どうぞ。
桐木:ネットワークの話、私は2つあるかなと思ったのは、1つは、皆さん、最初に認定
されて、それだけの経験値と実績をお持ちなられて、そういう経験やノウハウ、皆さん個
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農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
人の個性もありますけれども、これをこの 100 選の中で、お互いどういうふうにこの経験
値を生かしていくかというのが内部的に一つありますね。
ですから、この手法としては、多分今皆さんがおっしゃられた情報の共有化ということ
もあるでしょうし、今出ています年1回お集まりになる。これは何かの形でお続けになる
ということはまず一つになると思いますよね。
2つ目は、今度はビジネスの話になりますが、やっていることを外部のお客様に向かっ
てメッセージを出す方法を考えることも、最終的には事業収益になるのかなと。
たまたま私は自分で小さな会社をやっていますので、せっかくここまで参りましたので、
これがどういうふうに市場に向けて発信していくかといったようなことが2つの面として
あるのかなという気がしております。
私は常々思っているのは、旅館、ホテルと皆さんのところの違いは5つあるかなと思っ
ていまして、今回もお邪魔させていただいて、1つは、つくるということですよね。農作
物というか、そういう野菜などです。まして、それも手作りですね。これはホテル、旅館
ではほとんどできないんですね。
2つ目は、食すということ。その中に教育的な「食育」という概念が出てくる時代にな
りました。つまり、食べ物を通じて、人間の健康であるとか、もっと言うと、子供の教育
だとか、これもホテル、旅館で、ある一部では商業ベースでやっていますが、これは本当
にそのものを生きざまとしてやることが2つ目。3つ目は、全部の農家民宿ではないんで
すけれども、体験を実際にしていただく。つまり、体を動かすこと。これもまたホテル、
旅館にはない部分だと思っているんですね。4つ目は、これはホテル、旅館と共通します
けれども、おもてなしをするという、それも着飾らなくて、本当に日常で、もてなすとい
う行為ですね。5つ目に、今度はもっとホテル・旅館よりも触れ合うという、近くの漁師
の方とか農業の方とね。これをつくづく感じました。
最終的に地域の文化だとか、伝統や歴史、慣習だとか、これそのもの自体を皆様が顧客
に向かって発信すると、この5つが極めてホテル、旅館と違うなということを今回調査さ
せていただきまして感じました。本当に勉強になりました。ですから、我々が持っている
資源をどういうふうに外に出していくかとなると、単なる小さなマーケットでも本当に領
域が広くなった市場に対してメッセージできるだろうなということをすごく感じました。
皆様、本当に楽しみですね。一生懸命応援したいと思います。ありがとうございます。
委員長:河津さん、どうぞ。
■日帰りでも田舎に人を呼び込もう
河津:体験受け入れとはちょっと変わると思いますが、私は自分が昭和 20 年に長崎から福
岡県の小さな田舎の町に疎開してきたんです。ある日、母が私の手をひき、多分4つぐら
いだと思います。私にリュックを背負わせて、母も大きいリュックを背負い、みんなの食
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農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
糧を買いに夜中に行ったんです、要するに、買い出しですよね。
今それを思うときに、とにかく都会の人を、日帰りでも宿泊でもいいから田舎に呼び寄
せることが第一だと思うんです。そして、田舎のじいちゃん、ばあちゃんは、自分のとこ
ろの家庭菜園をたくさん持っているんですよ。でも、それを直売場に出すには限りがある
んです。だから、じいちゃん、ばあちゃんがつくった野菜を、家の庭先に、野菜を買って
いけ、という感じで野菜売り場をつくっているんですね。
庭先には、じいちゃん、ばあちゃんがつくったお野菜でも 15 種類ぐらいあるんですよ、
ネギからニラから大根から、いろいろなものが。とにかく農村に都会の人を呼ぶことが農
村の活性化になると思うんです。確かに体験も売りになりますが、日帰りでいいから、そ
ういうのはホームページでちょっと書いて、PRするとおもしろいと思います。
私は今回、自分が「おかあさん 100 選」になって、果たして自分ができることは何かな
と考えたときに、ばあちゃんたちの作っている野菜を、とにかくたくさん食べてもらおう
と、それぐらいしかできないって思いました。そういう方法で自然に都会と田舎の距離を
縮められたらと願っています。野菜以外にも、梅干などの加工品もそうです。漬け物屋さ
んが集落にあるんですが、うちに来たお客さんがそこに立ち寄って買うこともあります。
とにかくまずは田舎に都会のお客さんを呼ぶということです。それから先はお客様がき
ままに行動できればいいと思うんです。お客様が自分で歩いていろいろ買って帰れる。
私は出しませんが、農産物直売所に出すということは結構大変なことだと想像します。
パックに詰めたり、数も1人 10 個とか。だから、もう少し手軽に、日帰りでそこに、福岡
だったら3時間もあれば来るんですから、農村の体験を満喫しながらでも堪能できると思
います。
委員長:なるほどね。そうすると、何も宿という、宿泊にこだわらずに、日帰り体験も皆
さんが一つの窓口となって、地域のおじいちゃん、おばちゃんとつなぐ役目を果たしてい
けば、いろいろな形でもっともっと交流人口がふえていくと。
やはり、日本のグリーン・ツーリズムの中で、農家民宿、農林漁家民宿というものは、地
域の実践の核なんですね。だから、情報の発信でも皆さんが非常に大きい役割を果たされ
ています。
イギリスではインフォメーションセンターが必ずあって、どんな村にもそこに行けば情
報が手に入りますが、日本はそれがない。だからこそ、皆さんがそこで核となってほしい
ですね。
湯浅:やはり、ネットワークというのはきちんとした目的がないと続いていかないと思い
ます。それともう一つ、私は今回の「おかあさん 100 選」は、もっと地域グリーン・ツーリ
ズムのすそ野を広げる一つの手段としてできた取り組みだと思います。認定された方たち
は、正直もう十分なぐらい、自分たちのスタイルを貫いている方です。しかし、地域をど
う生かすかというときは、せっぱ詰まっている農村という現実を避けられません。
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
私たち北海道でも、あと 10 年後、地域から農業者が半分に減ります。もしかしたら本州
はもっと早いかもしれません。その中でグリーン・ツーリズムが地域の農業を持続させる手
段であるということを、みんなに知ってもらいたいというのが、今回のおかあさん100
選の一つの目的だと思います。
だから、その農家民宿をやっている成功例というだけではなくて、グリーン・ツーリズム
をいかにして取り入れたら、その地域が持続できるかということを、若い人やおかあさん
たち、高齢者に知ってもらいたいと私は思っていました。ですから、今やっていることを、
いろいろな情報やデータとして、いつでも皆さんがオープンに勉強できる場があるのは必
要なことですが、やはり、グリーン・ツーリズムを持っている幅というのをもう少しみんな
に知ってもらう努力をしなければいけないし、そのために東京に集まったのではないかと
感じていたので、その辺の知恵をもう少しもらいたいと考えています。
■地域を再生させるグリーン・ツーリズム
委員長:具体的に今の湯浅さんの話を聞いてイメージしたのは、例えば、来年度1回、シ
ンポジウムをやるということ。グリーン・ツーリズムは地域を再生できると。それは北海道
で裏づけられている、というようなことを事例として、このメンバーの何人かにパネラー
になっていただいて、今おっしゃった単なる民宿業の成功事例ではないんだと。地域を元
気にする、女性を元気にする、農業を元気にする、漁業を元気にする。いろいろなことが
グリーン・ツーリズムを通してできるという情報発信をこのメンバーでやっていくことだ
ってできますよね。
湯浅:それだけ多彩なんですよね。これだけの年齢層ですし、そうすれば、もっと地域に
生かせると思いますね。
委員長:それは東京でやるというよりも、非常に大きいインパクトで、例えば、ブロック
単位でやるというのもあります。東北、北海道ブロックでやる。九州、四国でやるという
ような、ひとまずブロック単位で少しずつ動いていくという方法もありますし、ぜひその
辺、今後、杉原さん、来年度のサポートについても考えていただきながら、単に同窓会で
集まるのではなく、これだけの経験と地位の蓄積がある皆さんの実践をもっと広くアピー
ルすることがこのネットワークの目的なんだという提案を生かしていきましょう。
村田:お話を伺っていて、先ほど桐木さんがおっしゃいましたが、要するに、この中での
ネットワークというか、意見交換というのも非常に重要なことですが、それ以上に、この
事業は何のためにやっていくのかということを明確にして、対外的にいかにアピールする
かを考えることも大切なことです。
グリーン・ツーリズムというものを知らない人が多いなかで、「おかあさん 100 選」とい
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
うコンテンツを核にして、グリーン・ツーリズムというのは何かちょっと聞いたことがある
な、というぐらいに思わせるようなPR活動を、具体的に考えていきたいと思います。
例えば、まちむら機構の中にあるグリーン・ツーリズムのポータルサイトをうまく活用し
て、そこからの情報を発信する。当然それは皆さん方のネットワークから出る情報をやり
とりする仕組みも作りたいのですが、その情報のやりとりを集約して、「農林漁家民宿おか
あさんメルマガ」みたいなものを作ってPRできればいいですね。
委員長:昔よく通信員というのがありましたが、NHKの番組の中で。
「農林通信員の山崎
さんからのメッセージでした」とね。皆さんが全国の通信員になっていただいて、地元で
どんどん情報を発信していくというのも一つの方法だと思いますね。
ローカルメディアをもっと生かすというのも方法としてはありますし、その辺、やり方
はこれから検討して、本当にこれだけの皆さんがお集まりいただいているわけですから、
経験値というか、実践のすばらしい蓄積をもっと皆さんにお伝えするというのは、今、注
目されていますから、今がチャンスだと思います。
坂下:地域の産物をPRしたり、グリーン・ツーリズムをPRするときに、今思っているの
が、食の安全・安心や地産地消とか、言葉では何年も前から聞いているけど、それが本当
に言葉だけになっているような気がします。子供たちに、よその国で作ったものを食べさ
せて、自分の国で作ったものをよその国に高く売るという、いい物を向こうにやって、向
こうの農薬の入ったものを日本の子供たちに食べさせるというのは、すごくこの頃反発し
ているんですね。
それこそ地域の中で、私たち旧河北町連携の中で、子供たちに地元のものを食べさせた
い、という活動を、どこに言えばいいのか、だれに訴えればいいのかわかりません。給食
センターだったり、老人ホームだったり、本当に地のものを使ってもらうことが、ゆくゆ
くはもっと地域が元気に、自分の作ったものに誇りを持てるのではないかと思うので、そ
れもツーリズムの中に入れてPRしていきたいと思います。
■食の“地域自給率”を高めよう
委員長:そうですね。先ほど僕は地域自給率という話をしましたが、ぜひ皆さんのお宅で
出すものが、何%の地域自給率であるか、しょうゆも全部含めてですよ、大豆も。これは
一回計算してもらいたいです。地域自給率 100%というのは皆さんのところでもかなり難し
いと思います。みそ、醤油までいったら。
そうすると、例えば、それが 70%とか 80%というだけでも、これは画期的なわけです。
今、農水省は 40%に上げられるかどうかというところで動いていたみたいですから。
橋本:それは県単位で決めていいんですか。大分県単位で。
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
委員長:県単位でももちろんいいし、地域単位でもいいですよ。だから、それはどこの産
物というのが全部裏づけられればいいわけですから。
委員長:その場合、何で 100%じゃないかということが明示化されていけばいいわけですよ。
大切なことは、「うちは残念ながら醤油はこういう意味で国産でないものもあります」と
いうことを正直に伝えていただければ、それ以外は全部本物だとおっしゃることです。そ
ういう確かな地域自給率という概念を、皆さんのところのお宿のところからまずやる。そ
して、そこから今度は地域に広めて、うちのお客にそれだけの地域自給率、安全なもの出
しているんだと広めていく。
僕はそれを今日は提案したいと思って来たんですよ。ですから、まず皆さんのところで
自分で使っているものを、今日、明日帰られてから、少しずつ研究していただいて、どの
くらいなのかというのをちょっと出していただきたいなと思っています。
河津:この間、子供のおかあさんがしみじみ言ってました。今は農家の方に一生懸命頑張
ってもらって、おいしい野菜を作ってもらい、安全な食生活を取り戻したいと。あれを私
は聞いたときに、これはまず都会のおかあさんの食に対する考え方を改めてもらって、農
家の宿は必ず安全な食事を提供することが、一番最初にできるはっきりとした問題だと思
います。
だから、自分のところで、先ほど先生が自給率のことを言いましたが、みんな頑張って、
荒れた田畑も少しは生き返らせて、自給率を高めることに努力したらどうでしょうか。
委員長:そうですよね。
河津:やっぱり農家の宿である以上は、農村からスタートしたいと思っています。
委員長:だから、「おかあさん 100 選」のおかあさんが、全国のおかあさんとつながって、
そのおかあさんが変わっていく。そして、子供へと伝わっていくという波及性ですよね。
それと、これは非常にうれしい話なんですが、うちの学生が、一見いまどきの少し派手
な女の子なんだけれども、この間、
「岩手の遠野に毎回行くようになってから価値観が変わ
った」と言ったんですよ。去年までは、小遣いのほとんどは自分の洋服と携帯にかけてい
たと。それを今年は一切洋服を買うのをやめたと。そのかわり、自分の食べるものにこだ
わってお金を使うようにしたそうなんです。
もうそこら辺の女の子でも、一つの動機づけをすれば変わるんですよ。だから、おかあ
さんも大事だし、学生も大事だし、子供も大事なんですよ。いろいろなところで食のあり
方や暮らし方のあり方というようなものを、皆さんからチャンスを与えて変えていくとい
うことがとても大事なことだと僕は思ったんです。そういう意味でも皆さんの役割は大変
大きなものがあると僕は痛感しています。
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■確かで安全な食を提供できることの価値
山崎:このおかあさん100選の審査員の中で、手塚先生が高知県に足を運んでください
ました。今、皆さん本当に自分のスタイルを確立してやって、安全性や、いろいろ法律を
クリアして、大変な手続を通して開業されていると思いますと、先生はおっしゃっていま
した。厳密な意味で見たときに、安全性を本当にクリアできているのか皆さん心配である
と思うんです。
それで今、日々努力されて積み上
げてきた皆さんは、今持っているノ
ウハウは、今後これから知れ渡って
いくものだと思っていただきたい。
去年くらいから風がちょっと変わり、
すごくみなさんのことは知れ渡って
いくような印象があります。そうす
ると、これから心配になることがみ
なさんにはあると思いますが、特に
お客様が泊まるときの安全性。そう
いうことについて、先ほどのテーマ
に、今持っているノウハウの共有だけではなくて、うちはこういう努力をしていきました
という積み上げてきた事例を、皆さんにまた発表して共有するという取り組みをしたら、
新しいテーマが広がっていくと思います。
委員長:大変貴重な御意見ですね。やっぱり、これは「船場吉兆」から学ぶべきだと思い
ます。やっぱりそもそも小さな料理屋から始まったところが、どんどん全国チェーン展開
を進めて、大きくなればなるほど、必ずああいう問題が起こる。だから、皆さんも今はス
モールビジネスでやっているけれども、だんだん受入れる規模が大きくなると、今までで
きたのにそれができなかったり、偽装はやるはずはないと思うけれども、事故は起こると
いうことが十分考えられるわけですね。
ですから、今日のキーワードは、皆さんが「身の丈」でやっている間は今の段階で済む
けれども、これからはそれでは済まなくなるといったときにどう対応するか、これはやっ
ぱり非常に大きな課題ですね。
桐木:最後に皆さんワクワクする、しかし実現が難しい夢の話をします。私は実は漬け物
が好きなんで、東京のど真ん中で、漬け物バーをやったらどうかと前からずっと言ってき
ました。漬け物バーは、全国の漬け物を揃えて、作ったおばあちゃま、おかあさんが実際
に出てくる。まだ構想の段階なんですが。
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委員長:漬け物ばあさんのバーですか。(笑)
桐木:そうすると皆さんが作る安全で安心な食、そこに経営資源である皆様自身。つまり、
銀座のど真ん中でパイロットショップを農水省に作っていただいて、そこで皆さんの勤務
スケジュールをつくって、今月は水野さんがおかあさんのママさんとして出てくる。その
土地のおいしいあらゆる料理を出す。こうゆうのは先生できると思いますか。
委員長:いやいや、それはできると思いますよ。やっぱり銀座というのはいいですよ、元
気になるというね。皆さんも元気になる。
米倉:何年か前に、農大生の方がうちへ来て泊まって、それで学園祭があるというんで、
そのときに米やらもちやら、地域の野菜を全部買い込んで、それを農大生の祭りのときに
売りました。すごく好評でした。
委員長:大学祭っていうのはいいですね。学生を使うという手もあります。いろいろ皆さ
んがやる気になったら幾らでも東京にはビジネスチャンスがあります。やはり、皆さんの
体と時間の兼ね合いをまず考えて、決して無理をしないように、皆さんの本業は地元で、
笑顔で、地元の言葉で迎えるということを忘れないで、これから楽しんでもらいたいです。
石田:私の一番困っていることは、私たちはこういう立場で、グリーン・ツーリズムや、食
というものの必要性を感じていても、農林水産省の方には申し訳ありませんが、なかなか
理解していただけない部分があります。それから、今年は米を作らないで、そばに補助金
を出しますとか、そういう計画が毎年変わるので、せっかく農業者が、そばならそばを作
ると思っても、補助金がないので、やり方が変わってくるということがよくあります。
その辺のところも何とか考えていただきたいですし、農業者もそういうことで頑張って
いるということを理解してほしいと思います。そうしないと農業者の方とつながりません。
それがすごく残念に思っていますので、この機会にぜひとも。
委員長:本当にそれは大きな農水省の流れに続いている大きな課題ですが、やはり、これ
は国際化、市場対応という原理の中で動く以上は、やはり振り回せざるを得ないんですよ
ね。だから、その軸だけを考えてしまうと、やっぱりもうころころ変わらざるを得ない。
そうではなくて、もう一つの軸が実はグリーン・ツーリズムであるんだ、必ずしも国際貿
易に対応しなくても、地域の方々が確かな消費者とつながることによって、お米をつくっ
たり、麦をつくったり、あるいはそばをつくっても、ちゃんと販売できるという姿がもう
一つに出てくると、農業者側も少しずつ変わってくると思うんですよね。
そういう意味で、僕はグリーン・ツーリズムというのは、従来の農業政策がやってきた主
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要な柱に対するもう一つの柱なんだと。だから、私は前からそう思っています。ですから、
皆さんが頑張っている中山間地域は、農政ではどんどん切り捨てられがちなところではあ
りますが、だからこそグリーン・ツーリズムができるという意味がそこにあります。それを
我々がもっと大きな声で、すごいぞと。元気なおかあさんたちがいるぞ、という中で広げ
ていくとことが日本を変えていくということになるのではないかと。
初めは小さなスタートです。この 20 人の輪が広がっていくということは本当に大きな意
味があると思いますので、ぜひこれから地域に戻られて、多くの仲間に、よかったよ、こ
れからこうやってみんなでやろうね、全国に仲間がいるらしいぞ、我々のやっていること
は間違いないということを東京で確認したよ。とできるだけ多くの人に伝えていただきた
いです。その役割が皆さんにとって一番大きいことではないかなと思います。
まだまだお話ししたいことは山ほどありますが、今までいただいた意見をもう一度まと
めて、できるだけ早く、このネットワークの目的などを明確にし、具体的にまず来年度か
らできることを皆さんに御相談をしたいと思います。そして、来年間違いなく約 40 名近く
の、第2弾の皆さんの後輩が誕生しますので、ぜひ温かくまたバックアップしていただき、
地域の中で候補者がいれば後押ししてください。
では、そういうことで、本当に今日は皆さんとまた出会えたことを感謝申し上げますし、
できればまた皆さんの地でお会いすることを楽しみにしてお開きにさせていただきます。
どうもありがとうございました。
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Ⅲ おかあさん100選認定者 現地調査報告書
1)認定者現地調査報告
平成20年1月に認定された、20人のおかあさん100選認定者の施設等の現地調査
を実施した。調査項目は、選定委員会審査調査票をもとに作成された。
2)調査日程
月
日
調査地
調査派遣者
平成20年1月26日、27日
ファームインつっちゃんと優子の牧場のへや
村上 由紀 委員
平成20年2月5日、6日
農家民宿 さこんうえの蛙
桐木 元司 委員
平成20年2月8日、9日
ファームイン
桐木 元司 委員
平成20年2月13日、14日
農家民宿 いちょうの樹
手塚 元廣 委員
平成20年2月16日、17日
民宿
富士見荘
村田 昭夫 委員
平成20年2月24日、25日
民宿
みづの荘
青木 辰司 委員
RAUM
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古久里来
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
現地調査事例-1 ファームイン つっちゃんと優子の牧場のへや
北海道新得町 湯浅優子
(1)農林漁家民宿として「接客」に関する取組みと質の維持への配慮について
「接客」という、もてなしをするにあたり、最低限必
要であるハードの面に関しては、非常に考えられた設計
及び仕上がりとなっていました。27年前に広い大地に
建てられた家族が住むための一軒家。土地柄、暖房設備
などは、もちろんクリーンなエコエネルギーで完備され
ており、普通の一軒屋のどの部分を改装し、どの方向を
向いて窓を作れば、中にいる者がくつろげるか、また窓
広大な大地から生まれた味
からの風景を借景として室内に取り込む事ができるの
か、などの配慮が設計段階から行われていたようです。
「一般家庭の台所」から「もてなすためのキッチン」
に作り変える事で、余裕をもって食品を扱える環境を整
え、改装した客室部分は独立した小さなキッチンが施さ
れてあり、長期で滞在しても無理がない構造となってい
ます。キッチンの横にはきれいな本棚と鏡台。明るい窓
農家民宿12年目の二人
に面した小さなダイニングテーブルを境にして2台の
ベッドの回りには完全に閉鎖するためではなく、ベッド
ルームとしての落ち着ける壁が施されています。建物の
近くは誰も通らないような環境でありながら、あえて、
独立させた客室玄関には鍵をしつらえ、都会から来た者
の目線で「安心」を提供しています。安心・安全を確保
するための保険加入などを行う事は、言葉に出す事もな
いほどの当たり前の事であり、あえてそれらを全面に出
1日1組限定で満喫
す事は一切していません。本来、人に与える「安心」や
「安全」とは、言葉に出したり、表だって表現するも
のではなく、それはおもてなしをする人間にとっての最
低限のルールであり、気遣いであり、それらが日常にな
っていて、もてなす側の意識レベルの高さが、建物その
ものへの気遣いや使い勝手の良さに現れています。「心
地よさ」という、抽象的な言葉を具現化してくれる宿で
した。
にんじん掘りを体験
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(2)農林漁家民宿として「食事」に関する取組みと質の維持への配慮について
本州とは全く食文化が違う北海道。それも、乳製品、穀物、豆類、イモ類などは日本を
代表するような産地。料理には、それらの素材しか出てきません。
伺った1月末は、もっともの事ながら、一面の銀世界。実際に食卓に並んだ料理を見て
気づくものがあります。
夜のお食事
・自家製キャベツの保存品と地元牛肉ミンチのロールキャベツ
・自家製にんじんと自家製たまねぎのさっぱりサラダ
・自家製長いもを自家製ベーコンで巻いてのグリル
・北海道知人のワイン
なんと、豊かな食事だったか・・・。こんな雪の中で、青物野菜があるわけはなく、そ
れがこの土地での無理をしないこと。全て自家製の野菜を冬前に貯蔵して、ゆっくりゆっ
くり一冬かけて消費して、飼っている牛たちは元気なミルクを与えてくれます。
気持ちよく目覚めた朝、もてなしのキッチンに香っていたのは、挽きたてのコーヒー豆
でおとした香ばしいコーヒーの香りでした。食卓に目を落とすと、かわいいミルクポット
に温められた新鮮ミルク。大きなグラタン皿には、たっぷり敷き詰められた自家製ジャガ
イモに自家製ミルクを注ぎ、上から知人作のチーズをたっぷりのせて焼き上げたグラタン。
パンは地元の小麦粉を使用して毎朝パン焼き器で焼き上げます。もちろんパンに添えられ
たバターは知人に仕込んでもらったもの。砂糖ベタベタのジャムではなく、夏の間に収穫
したたっぷり樹熟させた果物でのコンフィチュール。
私は、大きなマグカップにたっぷりの温かなミルクを注ぎ、そこにコーヒーを加えて至
極のカフェオレを、まず口にしました。焼きたての香ばしいパンにはたっぷりのバターを
のせてキラキラしたコンフィチュールをのせていただきます。程よく焼けたチーズとミル
クを染み込ませたジャガイモグラタンは、ジャガイモ自体が寒さにあたって自然の甘みが
増した最高の味。「これしかない、これがこの土地の今の季節の産物なんです」。堂々と、
言えることが本当にその土地の特徴を知っている証拠。これこそが北海道冬の十勝、最高
のおもてなし料理でした。
(3)農林漁家民宿として「その他のサービス」に関する取組みと質の維持への配慮
具体的な事でいうと、やはり「ひとつ屋根の下」という、人間としての最高の安心を与
えながらも、隣の部屋には家主がいる、ということを忘れさせてくれるくらいの独立した
空間の部屋つくり。夕方の日暮れ時に水平線に沈む夕日を眺めながら、まっすぐ伸びる道
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
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を走り連れて行って下さる、広々とした町の温泉。きちんとその日の夕暮れ時に合わせて、
客人を温泉にお連れするのです。
部屋に備え付けられたインターホンからツルルル・・・
「そろそろ温泉、行きましょうか・・・」やさしい声が聞こえます。
食事のときの合図も同様で、そこには、そこで日常生活を営んでいる「家族」がいます。
しかし、その家族もまた、ゲストとの距離感の保ち方を決して間違わないのです。
「サービス」とは、相手が何を目的に来ているのかを決して間違う事なく、相手の感情
をキャッチし、即座にその目線に合わせ、相手が求める全ての環境を整える人間の感情部
分での技術のことをいいます。
これらの「サービス」の技術を磨くことは、もともとその人が持つ、感性や技量にも大
きく左右されるが、日々のその土地での過ごし方や、小さな地域での毎日の生活の中で、
地域リーダーとして活躍するのと、もっと広い意味での地域リーダーでいる事が出来る存
在価値とは大きな違いがあると感じました。決して、自分の生き方を押し付けない、その
土地でのその人のサービス技術を押し付けない事が、最高の品質向上及び維持につながる
事だと感じました。
(4)農林水産物等の地域資源の活用や景観・文化等の保全に関する取組みについて
実際に、自家の畜産だけではなく、農作物を扱う農家の方々ともネットワークを作り、
産物の交流、情報の交流などを率先して行っています。そういった中からの近隣からの物々
交換で入手した産物などが食事などにふんだんに出てくるのでしょう。自家製だけが良い
のではなく、なるべく近隣のものをしっかり紹介できるシステム自体を常に意識している
様子が良く伝わってきました。
農林漁家民宿の宿泊客がない時は、ほとんどのように外出し、十勝の景観を損なわない
スローフードな生き方(食・地産地消・料理や加工技術など)を推進するための活動や啓
蒙を行うために、北海道内の他地域の人たちとも行き来していました。
(5)地域活性化において都市農村交流のリーダー的な存在として貢献している取組み
FM北海道のグリーン・ツーリズムとスローフードの発信を行う番組のパーソナリティ
ーを勤めています。スタッフとの打合せを常に行い、北海道のみならず、本州や九州など、
全く違った土地からのゲストを迎え、客観的に北海道を見てくれる視線を大切にし、なお
かつ、北海道の魅力をそのゲストにも、しっかり植え付けて番組を締めくくっています。
最高の広告塔であると言えます。
その他、各地に広がるスローフードの活動である“フレンズ帯広”のリーダーを勤めて
います。これらの実践は言葉では簡単だが、この北海道の中での、土地も広いが、一軒一
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軒の広い考え方が個性でもあり、まとめ難い地域の特徴でもあります。
しかし、彼女は、常に自分が出すぎる事がないように、最善の注意をはらいながらリー
ダーとしての取り組みを行っています。
「自分が、ではなく、みんなで、楽しくなるように」彼女の口癖でした。
(6)その他、調査員が評価した認定者の取組み及び感想
人間にとって「気持ちよい」とは、どういった時に、どの部分で感じるのでしょうか。
高価な宿に宿泊し、年代モノの調度品や備品類の数々に囲まれ、厳選された食材を使用し、
洗練された料理でもてなしを受けることでしょうか。その「洗練された料理」を作るため
に、その素材の美味しい端っこは切り捨てられていることは容易に想像できます。「ムダ」
な遊びの部分をたくさん持てば持つほど宿代は高価になります。高価にはなるが、そのム
ダをする事にちょっとした「贅沢」という気持ちよさを買うのです。
おかあさんたちの宿には、周りの自然環境自体が、贅沢な調度品の代わりを担ってくれ
ています。その「自然」という天然の恵みを、訪ねてくる人に対して最高のおもてなしの
材料とします。そこには、何もムダはなく、あるがままの姿だけなのです。迎えてくれる
おかあさんたちは、日頃のペースを崩す事はなく、あるがままのその土地での姿で、もて
なしをします。「あるがまま」のもてなしを受けた時に、人間ははじめて「あるがまま」の
気持ちよさを感じるのです。
気持ちよさを買う、と気持ちよさを感じる、とは大きな違いがあると思います。
これまで多くの人が、気持ちよい、を感じたくて一生懸命に気持ちよさを買ってきました。
ところが最近、気持ちよい、とは感じること、に気づき始めた人が増えたような気がしま
す。
今回伺った北海道の宿は、自分の家を改築し、もてなすにふさわしいハード面の環境つ
くりから整備を始めたが、日本全国のおかあさんたちが、そういった環境整備から始めら
れるわけではありません。しかし、皆、共通で言えることは、その土地での生活に背伸び
をしないこと。今、自分自身で出来る可能性から大切に育ててきたこと。
都会の有名レストランや一流ホテルでも教育が難しくなってきた「相手の今の気持ちを
受け取って差し上げる」サービス技術。これがあるだけでも、訪れた者の心は癒され、同
時に人間が持つべきたくさんの感情を学ばせてくれます。
今後、我々はおかあさんたちの情報を間違わずに世間に伝えていかなくては、彼らの生
き方を変えてしまい、そしてそれは彼らがその土地の「おかあさん」でなくなることを意
味します。たくさんの土地ならではの悩みや現状をネットワークする事で、間違わない、
情報交換を行い続け、サポートしていきたい、と感じました。
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現地調査事例-2 『民宿 富士見荘』
群馬県川場村 関せき子
(1)農林漁家民宿として「接客」に関する取組みと質の維持への配慮について
訪れる人達の年齢や、季節によってそれぞれの楽
しみ方を提供できる宿でした。
ちょうど、スキーシーズン中の 2 月下旬で、寒さ
のために残念ながら茅葺の部屋には泊まることがで
きませんでしたが、暖かくなったら茅葺き屋根部分
の昔の大広間(茶の間)を解放し、交流広場として、
家族的な接客でお客様を迎えているようです。
趣のある萱葺民宿
お客様のほとんどがリピーターということで伺え
るように、ご夫婦の人間味あふれるもてなしと、懐
かしさあふれる料理の味がお客さまの心を惹きつけ
るものと考えます。
正月に毎年宿泊してくださるお客様のためには、
田舎に里帰りしているかのように、地元の正月で迎
えてくだるそうで、田舎のない都会人にとってはな
くてはならない、もうひとつのふるさとになります。
また、地元の方言で自然に接するおかあさんの姿
は、田舎の生活を楽しみに訪れる人たちにとって、
地元の方言で出迎えます
ほっとする一時を提供しているのではないでしょう
か。これも富士見荘ならではのおもてなしの一つと
いえるでしょう。
農家民宿だからこそできる自然体のもてなしは、
都会の人たちの癒しの場所としてなくてはならない
ところとなるのではないでしょうか。
自分の打ったそばの味
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(2)農林漁家民宿として「食事」に関する取組みと質の維持への配慮について
冬の時期の料理、鍋料理が出されたのですが、質量ともに楽しむことができました。
特に、おかあさんは、そばうち段位認証3段(全国麺類文化地域間交流推進協議会会長)
の腕前で、お願いするとその場で蕎麦うちをしてくれます。
また、富士見荘に行けば、冬場のシーズンを除いて、自分達で収穫した野菜などそのま
ま調理して食べることができるなど、田舎ではあたりまえの食生活が、都会に住む人にと
っては贅沢としか思えない時間を味わうことができるのです。その土地ならではの、自然
体の食事の提供は、お客様を知らないうちに満足させているようです。
食材は、できる限り自宅の棚田からとれた米や畑からとれた野菜など、地元のものを使
っているとの事。また、その畑で使用する肥料等、自宅で作った籾糠肥料を使用するなど、
環境にやさしい農業を実践し、食の安全に対する配慮がうかがえます。
宿で提供される料理メニュー
一例
旬の食材を利用した地元らしい郷土料理
・ 季節の鍋
・ そば
・ おからのお汁粉
・ 花豆のつつみ揚げ
・ あんぴん
・ 手作りこんにゃく等、
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(3)農林漁家民宿として「その他のサービス」に関する取組みと質の維持への配慮
○ 農作業体験
:田植え、ジャガイモ掘り、柿の摘花・収穫、インゲンのもぎ取り
稲刈り、漬け物づけ
等
○ 自然体験
:キノコ狩り、魚釣り、山登り、山菜採り
等
○ 加工・工作体験
:コンニャクづくり、そば打ち、お焼き、大福、ジャム
押し花しおり作り、草木染め体験
等
体験した際の収穫物は、なるべくおみやげとして提供しているとのこと。このことは、
思い出作りとともに、リピーターにつながる可能性が高いと思われます。
また、棚田での田植え稲刈り体験において、お客さんが満足するような体験ができるよ
うにと棚田の整備も進めているなど、来訪者の受け入れのための準備として、周囲の環境
の整備・維持等配慮しているなど、自然体でありながら、必要な整備、大切なホスピタリ
ティはさりげなくできていることに感心しました。
(4)農林水産物等の地域資源の活用や景観・文化等の保全に関する取組みについて
関さんの民宿は、築後約100年が経っているという茅葺屋の民宿としてその保存に力
を入れているとの事でした。
田舎の原風景が残るこの地域の環境整備、維持、茅葺家屋や、棚田の保全など、ご苦労
があると思いますが、訪れる人に感動と癒しを与える空間を、今後も維持していただける
よう取り組んでいただきたいと思います。
(5)地域活性化において都市農村交流のリーダー的な存在として貢献している取組み
地域活性化活動の中心的人材として、地域における関さんの活躍は期待されています。
これからも、リーダーとして活躍していただくとともに、持続可能な交流事業を継続する
ためにも、今後、地域の後継者を数多く作っていただくことが大切かと思います。
以下、これまでに取り組まれたことについて、ご紹介いたします。
・グリーン・ツーリズム団体である「たんぽぽの会」初代会長として、地域の方々ととも
に、そば打ちや、手作りこんにゃく、クレソンを使用した料理の普及に取り組む。
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・小学校に川場村の踊りの指導等にも積極的に参加しており、子どもたちにとってもリー
ダー的な存在として活躍。
・姉妹都市である世田谷区の住民に地元食材を使用した料理を指導する。
・農村体験学習として、観光協会と地域で連携し、東京都武蔵野市の小学生の受入れを行
っていて、関さん夫婦は、受入に積極的に取り組む。その交流の一環として、年に一度、
地域の民宿の人たちと一緒に武蔵野小学校を訪問して、子ども達と一緒に、川場の餅米で
餅をついたり、川場の野菜で、けんちん汁を作り、交流を深める。
(6)その他、調査員が評価した認定者の取組み及び感想
富士見荘は関さんご夫婦が2人で営む農家民宿。近くの川場スキー場のスキー民宿と
して開業したのですが、スキー客の減少にともない、夏場の対策としてグリーン・ツー
リズムの宿として再出発。
富士見荘に着くと、茅葺屋根の家が目に入り、軒先からはツララが伸び、冬の田舎の
ムードは満点でした。この辺りは富士見という地名で、富士山が見えるところから、そ
の名前がついたそうです。
玄関を入ると大きなストーブがあって、そこにはコーヒー、お茶、水やお茶菓子が置
かれていて、いつでもだれでも飲んだり食べたりできるようになっていました。
民宿の客だけでなく関家の人々や近所の人たちも加わって話ができる家庭的雰囲気
の宿でした。
二人の接客の態度は控えめながらも、客の求めに応じて話の輪に加わり、農業のこと、
食べ物のこと、地域の歴史や文化など、話題が豊富なのには感心させられました。
夫の延男さんのハチの子取りや、せき子さんのイナゴ取りの話は大変面白く、特に、
ハチの巣の中に時々青虫が入っているが、外に出すとハチの子は丸まってしまうのに対
して、青虫は全部北へ向かって歩き出すという話が興味深かったなど、田舎の親戚に遊
びに行ったような気分で、あっという間に時間が過ぎたのには驚きました。
その時採ったハチの子を食べさせてもらったり、おやつにコンニャクの羊羹が出てき
たり、ここならではの食の贅沢を感じました。
食事は質量ともたっぷりで、冬場の鍋料理は特に評判が高いそうです。野菜はほとん
ど自分たちで栽培した地のものを使っているとのこと。
特に、自家製の柿と大根おろしのあえものは絶品でした。また、延男さんが作ったワ
インを飲ませていただきましたが、昔懐かしい味のぶどう酒でした。
関さんのお宅は温泉で、近くにある世田谷区の宿泊施設で掘った温泉から引いている
ということでした。温泉は24時間、好きなときに入ることができるのもうれしい。朝、
起き掛けに温泉につかり、その後朝食という温泉旅館並のような生活ができるのも関さ
ん宅ならでは。家の中、部屋、トイレ、風呂はいずれも清潔で、布団も浴衣も旅館並み。
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調理師免許から簡易宿泊施設の許可など必要と思われる資格は取得していました。
お客さんはリピーターがほとんどだそうで、関さん夫婦の人間味あふれるもてなしと、
料理を気に入って何度も足を運ぶ客が多いのは、わかるような気がしました。
冬場は茅葺屋根の部屋は閉めているため、使えずやや残念でしたが、夏場は古い民家
の大広間でゆったりした田園風景を囲みながら、のんびりできるようです。
せき子さんはそば打ち3段の腕前で、そば打ちの指導にも力を入れているとのこと。
冬場は川場スキー場でそば打ちの腕前を披露し、スキー客に打ち立てのそばを提供して
います。夏には自宅玄関脇のスペースで宿泊客の求めがあればそば打ちを指導するなど、
そばに関しては、レベルの高いものを提供できるようです。
温泉とそばとせき子さんの手料理、豊かな自然と暖かいもてなし。富士見荘にはグリ
ーン・ツーリズムの要素が溢れていると実感しました。
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現地調査事例-3 『ファームイン RAUM 古久里来』
愛媛県内子町 森長禮子
(1)農林漁家民宿として「接客」に関する取組みと質の維持への配慮について
当農家民宿の接客において象徴的なことは、宿のおかあ
さん自身が接客を楽しむという姿勢を実践していること
です。それがごく自然体な接客につながることになり、お
そらくリピーターの多くが、接客面でのこうした振舞いを
支持しているのでしょう。見方を変えれば、民宿側の個性
や考えに共鳴する利用者がおそらくリピーターになって
いると思います。
美しい景観が望める宿
ご主人との互いの持ち味を生かした役割分担が、うまく
機能しているようです。ご主人は前職での経験と地域文化
に対する造詣を生かし、宿泊者との食事前後での地域の歴
史、自然、伝統文化などを懇切に、ときにユーモアを交え
説明したり触れ合いや交流を積極的に図っています。実際
に話を伺い、それを楽しみに訪れる宿泊客も少なくないと
木の色がやさしい台所
感じました。
施設名である RAUM 古久里来の RAUM は、ドイツ語で空間
や場所を、また古久里来はフランス語でコクリコ、日本名
でひなげしを意味し、オーナーは宿泊利用者がゆったりく
つろげる宿に、という思いが当初からあるようです。その
ために2度目からの利用者には、
「お帰りなさい」という、
「ホーム・アウエイ・フロム・ホーム=我が家を離れた我
会話と共に楽しむ食事
が家」の気持ちで接するようにしています。宿泊業の原点
をよく理解し運営に生かしているように見受けられます。
かゆいところに手を差し伸べて面倒をみるという接客
ではなく、むしろ宿泊者主体で任せるということをもモッ
トーとしています。しかし夕・朝食時また食後の交流時な
ど、望めばとことん話し相手を務め触れ合うという“つか
ず離れず”を大切にしているようです。
その美しい景観が表彰に!
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(2)農林漁家民宿として「食事」に関する取組みと質の維持への配慮について
食事に関しては料理の品数を並べるということよりも、厳選した素材に手を加え宿独自
の創作的な内容を提供しています。和食一辺倒でなく、香辛料やソース、調理法などが洋
風であったり、中華のテイストなどのヒュージョン(融合)が当農家民宿の料理の個性で
す。
自家栽培の野菜類は多くはないが、農業栽培を営む知人や周辺地域の農家など、幅広い
人脈からのアイテムごとの厳選した仕入れルートを確保しています。素材重視の料理提供
の姿勢が表れています。
素材の使い方や調理の工夫や研究に熱心であることが分かります。それは国内外で参考
になるレストランやホテルの料理や調理法など、実際に見聞しながら学び取り入れている
ことからも伺えます。ヒアリングのなかで、東京のレストランのシェフが宿泊したとき直
接厨房に入り料理を作ってもらう機会があり、そのレシピーを教わり後日、実際の料理を
宿泊客に提供したところ好評であった、との話も出ました。今でも定期的に見え、交流が
続いているようです。
食事の場所(食事・交流処)は広間とダイニングカウンターでも可能であり、特に1人
や2人の利用客にとって調理の様子や、おかあさんと直接目前でコミュニケーションが図
れるのはよく話が見え、また親近感が深まる効果を上げます。さらに素材や料理の話を聞
いたり、質問したりすることにより食事の味覚感も高まります。ソフトとハートの統合を
睨んだハード設計・配置が特徴的です。
ハーブを使った料理に力をいれているのは、宿のひとつの個性です。料理の付け合せや
サラダなどに上手に取り入れています。女性客にとっておしゃれ感覚であり、またヘルシ
ー&ビューティなイメージを訴求していると思われます。当宿のおかあさんの料理センス
とオリジナリティの一端が垣間見れます。
料理の器に土器性を出しています。地元の窯元(砥部焼き)の皿や器が料理を生えさせ
ます。また食卓上や周りの小物、装飾物にもデザイン上の工夫を施していて、居心地の良
さを感じさせる食卓空間づくりを心掛けています。そういえばお母さんは若き頃、デザイ
ンの学校へ通われていたそうです。
(3)農林漁家民宿として「その他のサービス」に関する取組みと質の維持への配慮
客室の什器備品に代表される準備する、加えるサービスという考え方ではなく、卓袱台
ひとつのシンプルで無いサービス、控えるサービスを企図しながら運営しています。それ
は宿泊者を何も無い客室空間の中で、異次元の時間を過ごしてもらうという発想でもあり
ます。
ただし一方では、宿のおかあさんのこだわりが見られる部分があり、たとえば浴室のア
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メニティがそうです。シャンプー&リンスは女性に好まれる上質なもの、ボディーソープ
も野バラエキス配合の商品を置いてあります。またウォッシュタオルに加え、肌触りの良
いバスタオルがあり、ベッドの配置はハリウッドスタイル(キングサイズのシングルベッ
ドふたつを合わせて配置)で、ベッドカバーのセンスにも工夫を凝らしています。宿泊利
用者から、「ぐっすり眠れた」とのコメントが少なくないという話を聞いたが、安眠への環
境づくりもサービスの一環と認識しています。
ご主人が長年行政に勤務していたこともあるが、地域の歴史や伝統文化、自然環境そし
て食などに対する造詣が大変深く、民間の研究家としても活躍されています。そうした知
識や情報を直接ご主人から聞き、感銘を受けた宿泊客は少なくないことが感想ノートから
分かります。宿の交流場所でときには時間が過ぎるのを忘れ、夜半まで聞き入る人もいる
という。未知なる地域の情報を上手に楽しく紹介できることは宿の個性であり、そうした
ことに関心を抱く宿泊利用者にはある意味で差別化のサービスとも映ることになります。
近年、ホテルやレストランで多く見られるのがその店の日本酒やワイン、焼酎などオリ
ジナルラベルの飲料の企画販売です。当宿でも丸子町の日本酒の蔵元と提携し用意してい
ます。飲物にも地域性や販促企画を視野に入れた、農家民宿として例は少なく、宿泊客へ
の差別化サービスへの意欲的な取り組みともいえます。
(4)農林水産物等の地域資源の活用や景観・文化等の保全に関する取組みについて
地域資源の活用のひとつとして、宿泊客のみならず地域の人びとも参加するたとえば、
地場の自然の草花を使った「押し花」を教えることを行なっています。また地域の伝統作
業のひとつに草履づくりがあり、現代社会では忘れ去られつつある技術を守り継いでいる
人を呼び、草履づくりの実演や講習などを企画実施しています。農家民宿の“カルチャー
スクール”としても位置付けられています。
道路のから入り口までのアプローチから、庭園や外溝周辺に町の実施調査による植生調
査を参考に、地域の林木であるクヌギ、ブナ、ヤマボウシ、コナラなどの落葉樹を植え、
地域の森の原風景の再生を試みていることは、農林漁家民宿における地域性(ローカリテ
ィ)表現のひとつの要素として意義があります。
(5)地域活性化において都市農村交流のリーダー的な存在として貢献している取組み
愛媛県で最も早く農家民宿事業をはじめ、爾来 13 年にわたり施設増設や改修など手堅い
経営を行なってきていることは、他の農家民宿事業者の範となることが少なくありません。
それが当該地域ばかりでなく、広く愛媛県や四国全域の民宿経営のモデルとなり、民宿経
営を通じさまざまな活動における地域のリーダーとして、都市農村交流への波及効果を生
んでいるようです。
そうしたことから新聞、雑誌など、各種マスコミによる記事取材が数多くあり、宿はも
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ちろん町や地域のパブリシティー(宣伝費のかからない広告・宣伝)にもなっています。
その意味でも地元発のメセージ面において地域活性化に少なからぬ貢献をしているといえ
ます。
(6) その他、調査員が評価した認定者の取組み及び感想
森長さんの農家民宿の方針は、「お客様だけでなく、自分も楽しくやる」ことです。自分
が楽しくなければ、お客様に楽しんでもらえないということです。これはサービス(奉仕)
を超えたホスピタリティ(相互、共有)の精神に近い考え方ともいえ、つまり“主客一体”
ということです。
農家民宿を経営していく上で、自分たちだけで出来ないことがたくさんあります。そこ
における解決策のひとつは、近所、周辺地区の人びとや集団との協働であり、共生です。
その点当宿は幅広くネットワークを広げ、互いに持ち味や得意な部分を持ち寄っているよ
うです。それも農家民宿にとって大切な経営資源であることが分かります。
ご主人が、「農家民宿はある意味で、その地域のコミュニティーセンターとしての役割を
担っている」と言われていました。この話はまさに、当宿のあり方そのものを表している
ように感じ、他の農家民宿事業者にも聞かせたい話しでした。
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現地調査事例-4 『民宿 みづの荘』
岐阜県高山市 水野美代子
(1)農林漁家民宿として「接客」に関する取組みと質の維持への配慮について
囲炉裏を囲みながら美代子さんの機知に富んだ語り
口調は多くのお客様の心をつかみ、強い印象と人柄に
引かれ、リピーターとして来訪される方が大勢いらっ
しゃるといいます。
食材のこと、料理のこと、昔ながらのくらしや、遊
び、行事など、飛騨地方の方言を交えて、話されるの
を聞いていると、自分の田舎に帰ったようです。お客
歴史を感じさせる空間へ
様と接することで、内面的な心と心のふれあいができ、
長いお付き合いをしているリピーターが多いと話され
ました。
また、中・高・大学生の受入実績は、美代子さんの
里親的な存在が大きいといえるでしょう。
最近は外国人の田舎泊が増え、飛騨地域の固有の生
活文化、日本独特の生活文化を日本のおかあさんとし
寒いときはここで暖を
て、伝える役割もしている様子でした。
一度訪れたお客様には、イベントや宿などの地域情
報を手紙やインターネットを通じて発信していて、お
客様との出会いを大切にしていることが感じられる宿
でした。
また、地域ぐるみでお客様をもてなす雰囲気づくり
に積極的であり、地域全体のおもてなしの質を向上さ
健康メニューで脱メタボ!
せようと努力しているのが伺えます。
みたらし団子を手作り
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(2)農林漁家民宿として「食事」に関する取組みと質の維持への配慮について
自家栽培した野菜を使用した郷土料理から地域の食文化を紹介することにとどまらず、
四季折々、宿独自のオリジナル料理を出しています。
特に、体験していただく方が納得できる食の提供をモットーに、食材、料理方法ともに、
ストーリー性を持たせるなど。食の質を向上させる努力がなされていました。
※食により伝えたいものとして
1.お客様の健康、美容に気配りしたヘルシー料理、
2.「食事」を通じて食育への意識付け
3.郷土料理から食を通した地域文化の伝承が挙げられます。
※オリジナル料理の一例
・「川魚のりんごソースがけ」
地域の清流(源流)に生息するイワナとアマゴに自家生産したリンゴをソースとして
使用したもの。
・「飛騨牛乳鍋」
地元の牛乳をベースに飛騨牛をメインとした鍋。
・自家栽培した野菜を使用したパン
・「ひだまるごとトマトコロッケ」自家製トマトを使用したもの
・「トマトとチーズのヘルシーパン」
・「トマトとピーマンのヘルシーオムレツ」
(3)農林漁家民宿として「その他のサービス」に関する取組みと質の維持への配慮
ソバ打ち体験は2段の腕前で、美代子さんのソバ打ちの口上は楽しい。また、楽しいだ
けでなく、そばの味は絶品で、お客様に大好評の体験となっています。
サービスの基準をお客様との出会いとふれあいとして重視し、快適な田舎暮らし体験を
楽しむための農業体験や食体験では、種まきから収穫、加工作業に至る一連の過程を、物
語としてお客様に楽しんでいただけるように、農家の知恵と工夫、苦労と喜びを伝えるこ
とができるよう気をつけています。
「おもてなしの心を大切にした体験プログラム」は、地域ぐるみで行う高山の名物とし
て、恥ずかしくないサービスであるとお客様に満足していただいているようです。
また、高山市一之宮町は「どぶろく特区」に指定されていて、経営する農家民宿に宿泊
されたお客様に自家製どぶろくを提供するために、各種許認可の申請及び免許等を自己努
力で取得するなど、“どぶろくを味わえる民宿”としてサービス展開しています。
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
日々、お客様に喜ばれるようにと、研究を重ねながら、都市の方たちのニーズに合うよ
う、数種類のどぶろくを研究、提供し、宿の目玉としてお客様に喜ばれています。
最近では、お客様の安全確保については、農業体験、自然体験などで、熟練した人材を
アシスタントとして手配することで目の行き届いた体験を進めたり、子どもたちの体験学
習では、緊急時の対応ができるよう看護婦を待機させるなどと、常にお客様が安全で安心
して過ごせるように安全面についても、サービスの質の高さを感じます。
(4)農林水産物等の地域資源の活用や景観・文化等の保全に関する取組みについて
豊富な地域資源をうまく取り入れているのが特徴です。
この地域は、手つかずの自然、巨樹・巨石、源流など自然豊かな環境の中で四季の移り
変わりが感じられるすばらしい場所でした。
食の分野として、食材の調達が上げられますが、美代子さん自身が栽培した米、野菜の
活用と、地場のキノコや山菜など、自然の恵みを活用した料理は豊富な地域資源を有効に
活用しています。
豊かな自然を満喫できる体験プログラムとして、農業体験以外に源流探訪や里山トレッ
キングなどがありますが、環境や自然保全への気遣いがさりげなくなされています。
また、生活するための知恵と工夫を感じることができる体験プログラムとして、かんじ
きづくり、だんごづくりや、まゆ雛やひし餅など地域文化についても体験できるプログラ
ムがあり、地域文化伝承の取り組みもうまく取り入れていると思われます。
(5)地域活性化において都市農村交流のリーダー的な存在として貢献している取組み
美代子さんは、農家民宿7軒で組織する「飛騨一之宮グリーン体験宿」のメンバーの中
でも、民宿女将の中心的存在として活躍されています。
それぞれの宿の質的向上を進めるための研修会や、食材の調達、独特の調理方法、地域
の郷土料理の掘り起しなど進めてきました。
特に、高山名物の「みたらしだんご」作り体験においては、稲作の田植えから収穫、粉
引きまでの作業について栽培の苦労や喜び、工夫や知恵などを紹介しながら、ふれあいを
基本に体験をおこない、ストーリ性を大切にした話し方などの研究会も地域で行ってきま
した。
また、合併前の旧宮村時代には、村おこし実行委員として、地域に古くから伝わる生き
びな祭の「ひしもち」を地域の食材にこだわって製作し、それに物語を付け加えることで
地域資源の活用や地域文化の伝承に熱心に取り組んでおり、地域にはなくてはならない人
材として活躍しています。
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
(6)その他、調査員が評価した認定者の取組み及び感想
高山市内から、20分ほど車で入るとそこは、タイムスリップしたような、緩やかな田
舎の風景がみえてきます。
みづの荘は、外観は普通の田舎民家風のたたずまいでしたが、玄関に入ったとたん、掃
除の行き届いた玄関と、磨き上げられた廊下が印象的で、そこには、宿のおかあさんであ
る、美代子さんが笑顔で迎えてくださいました。
それだけで、ほっとするのはおかあさんの雰囲気のせいでしょうか。
さっそく、のんびりと玄関横の囲炉裏のある部屋でくつろいでいると、ご主人光良さん
も囲炉裏を囲んできました。
この宿では、ご主人は平成19年4月から発足した高山市全域の新たな組織である「ふ
るさと体験
飛騨高山」の設立等にも大きく貢献され、初代会長として活躍されています。
これも美代子さんの内助の功があってと、ご主人。
独自のホームページより、宿情報の発信を進め、常に新しい情報にアンテナを張ってい
るところなど、情報の受発信には大変気を配っているようです。
その背景には、子供たちをはじめとして、学生、外国人など、多彩な人たちを受入れて
いる宿がゆえ、よりホスピタリティを高めるための情報収集と思われます。
食事の準備だけでも、子供から、お年寄り、または国際的な気配りが必要だと思うので
すが、美代子さんは、ここならではの食事、文化、習慣は、ぶれないようにしっかりと、
内外に伝えていく気風を備えており、リーダーとしての資質が伺えると思います。そのよ
うな背景には、お客様に安心して安全に体験や宿泊をしていただくための受入体制が、し
っかりとサポートできているからだと思いました。
地域ぐるみの体制作りのなかで、安全面の配慮や、さまざまな安全講習会、MFA(メ
デックファーストエイド)の資格を取得したりと、ご夫婦で積極的に安全対策に努め、質
の高い受け入れ体制の取組みに向けて努力している様子が伺われます。
ここでの宿の特徴と、美代子さんの資質として、人とのつながりを大切にしたいという
思いが強く、手紙やメールのやりとりをはじめ、地域のイベント情報の紹介など積極的な
コミュニケージョンを常に続けて発信し、来る側の人にとっては、また来てみたいという
気持ちを抱くような雰囲気の宿でした。
この地域にとっても、みづの荘にとっても、大切なおかあさんとして今後の活躍を楽し
みにしております。
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
現地調査事例-5 『農家民宿 いちょうの樹』
高知県梼原町 上田知子
(1)農林漁家民宿として「接客」に関する取組みと質の維持への配慮について
接客の基本として、方言も含め自然のままに受け入
れ、対応し、家族ぐるみのあたたかいもてなしを提供
することを心がけています。また、受け入れ時には宿
泊客の様子に留意し,子供には先に声をかけるなど最
初の印象を大切にしています。さらに,家族の紹介や
梼原町の紹介も行い、地域としての接客も行っていま
かわいい子どもたちと畑に
す。
農山村にある自然環境をも含めた暮らしそのもの
を、あるがままに提供し、暮らしに関連した、そこで
得られる体験を関連づけ、家族それぞれが役割分担を
担いながら接客することに主眼をおいています。
その役割分担は、暮らしそのものと体験とを結びつ
あるがままの農村の暮らし
ける手法でもあります。
おかあさんは、民宿の運営全般とコーディネーターと
して、また、娘さんといっしょに、お料理の提供を、
おとうさんは山仕事や山に関すること、おじいちゃん
は野山での釣りや遊び、ワラジ作りに関すること、お
ばあちゃんは野菜作りに関することと、それぞれが
日々の仕事を行いながら接客に取り組んでいます。
大昔からあるいちょうの木
(2)農林漁家民宿として「食事」に関する取組みと質の維持への配慮について
自家で栽培している「小ナス」「シイタケ」「ぜんまい」の鮮度を生かし、その食材を活
かした調理方法で食事を提供しています。また、季節ごとにその季節でなければ味わえな
い食材を併せて提供しています。
また、若い方にも抵抗のないように調理方法に工夫を凝らし、旬のものを提供する努力
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
をしています。
野菜の収穫できる時期には、採りたての野菜のおいしさや味を知っていただくために、
自分で収穫してもらうが、無理に進めるようなことはせず、客の要望に合わせています。
安全管理の視点から食事はなるべく魚介類などの生ものは出さないようにしています。
定番メニュー
・小ナスのタタキ
ナスはISO認証
・シイタケのマヨネーズ焼き
・ぜんまいの煮物・
・アメゴの塩焼き
・ミョウガの新芽の炭火焼
・川魚のてんぷら
・「小ナスのタタキ」のドレッシング
瓶入りにして商品化
人気メニュー
・ナスのピザ
・ナスのタタキ
・ナスのお好み焼き風
・シイタケのマスタード焼き
・豆腐のハンバーグ
・野菜はほとんど自家野菜
・鶏の卵も安全に心がけ飼育
安全や景観への配慮から、畑の周りに農業用機械などは置かないよう気をつけています。
(3)農林漁家民宿として「その他のサービス」に関する取組みと質の維持への配慮
宿泊客等を自分の農家民宿のみだけで取り込み、お帰りいただくのではなく、地域の中
において、経済的な効果だけではなく、人や文化の交流も広がるようにと、地域全体を見
据えたサービスの提供を心がけています。
宿泊客が農産物等の購入や農作業体験などを希望した場合には、自分で対応できないも
のは、近所の農家に協力を仰ぎ、また、地元の直売所などを紹介し、地域での連携した対
応を行っています。
さらに、宿泊客から見所など行程の相談を受けた場合には、希望や嗜好を確認した上で
「こうち体験ツーリズムネットワーク」で連携をしている農家民宿や農家レストランを紹
介し、きめ細やかな対応をしています。
これらの取り組みは、単なる「宿泊客へのサービス」だけではなく、「高知県内の体験ツ
ーリズムでの滞在時間を少しでも長くしてもらうための仕組み」として位置づけています。
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
(4)農林水産物等の地域資源の活用や景観・文化等の保全に関する取組みについて
梼原町に 1,100 年前から伝わる伝統芸能である津野山神楽に、上田さんのご主人が舞い
手としてその継承にかかわっており、宿泊客や農家レストランへの利用者に、神楽の練習
への参加や上演当日の案内を行うなど伝統文化の保全と情報発信に積極的に取り組んでい
ます。
また、農家民宿経営の手腕を買われ、平成 16 年には梼原町が所有する草葺き民家を改修
し、農家レストランの経営を委ねられ運営しています。開業以降、6,000人を超える
来客があり、地域内の農産物や加工品等(手打ちソバ、養殖アメゴ、キジ飯、ゼンマイ、キ
ムチ等)年間 180 万円の需要を作り出し、地域経済に貢献しています。
(5)地域活性化において都市農村交流のリーダー的な存在として貢献している取組み
梼原町の地域全体でグリーン・ツーリズムの推進に取り組む「グリーン・ツーリズムゆ
すはら(平成 14 年 2 月設立)」の会長として、都市住民との交流の推進や体験メニューづく
りに取り組んでいます。また、梼原町内では「いちょうの樹」にひき続いて、3軒(経営
に参加する農家は8名)の農家民宿が開業しているが、この農家民宿グループによる積極
的な体験型ツーリズムの展開においても上田さんが牽引役を果たしています。
梼原町では林業振興のための矢崎総業㈱との協働プロジェクトを始めているが、そのき
っかけとなったのも「いちょうの樹」での矢崎総業会長と上田さんの出会いからです。プ
ロジェクト開始に先だつ調整・検討を行うための社員(1名)の長期滞在も「いちょうの
樹」が受け入れています。
このほかにも、町の取りくむ森林認証制度の関係者や県外からの視察者等の宿泊先とし
て、国内だけでなく国外との都市農村交流拠点にもなっています。
また昨年度からは、矢崎総業の職員の子どもさん 300 名を夏に 3 泊受け入れました。受
け入れは「グリーン・ツーリズムゆすはら」の会員で対応しました。さらに、梼原町では
姉妹都市の西宮市との交流事業で子ども達の宿泊を受け入れています。
(6)その他、調査員が評価した認定者の取組み及び感想
接客については、家族それぞれが役割分担を担いながら、農山村にある暮らしを、ある
がままに提供し、同時に、宿泊や農山村体験などを提供している自然体の対応は、解りや
すく多くの人に受け入れやすいものです。また、訪れた宿泊客の最初の出会いの印象を大
切にする姿勢は大事な事柄であり、滞在期間中、また、帰ってからの評判に対しても影響
が大きく、接客業の基本的対応に忠実です。
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
食事については、食材の 9 割以上が自家栽培の食材を使用し、魚介類等の生ものは食品
衛生上の安全管理の視点から極力控え、地域の食材による季節それぞれの味覚と調理方法
の努力による提供に心がけていることは、当たり前だとはいえ、評価に値します。
その他のサービスについては、自分の農家民宿だけに宿泊客を取り込むのではなく、わ
が町の経済的効果や、文化的交流も広がるようにと、地域全体を見据えたサービスの提供
を心がけています。
一方、「こうち体験ツーリズムネットワーク」で連携している農家民宿や農家レストラン
をも紹介し、高知県での滞在時間を長くしてもらうための仕組みづくりの起点としても機
能していることは高知県全体にとっても大きな利益を生み出しています。
地域の活性化については、上田さんは、高知県内のグリーン・ツーリズムの先駆者とし
て、県内各地域でグリーン・ツーリズムに取り組もうとする農家や地域グループへの指導
や助言を行い、後に続く民宿開業者を励まし続けています。
また、高知県が主催する多くの研修会などにおいても、自らの実践を踏まえた講義等に
よって県内の農林漁家民宿の開業を支援し、近年急速に増加した高知県内の農林漁家民宿
の新規開業に貢献しています。
さらに、平成18年5月には「お互いがお客様を紹介しあえる関係」をめざして、「こう
ち体験ツーリズムネットワーク」の会長に就任され、県全体の実践者のネットワークの長
として尽力され、平成 19 年には第 6 回オーライニッポン・ライフスタイル賞を受賞されて
います。
平成18年「農家民宿のおかあさん達のおすすめコース(3コース)」づくり
平成19年
民宿開業者がお互いに泊まりあう「ネットワークのお泊り研修会」
しかしながら、研修等で講師を務める一方、受講者としても自ら参加し、更なる品質向
上に向けて研鑽に努められています。
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
現地調査事例-6 『農家民宿 さこんうえの蛙』
熊本県南小国町 河津慶子
(1) 農林漁家民宿として「接客」に関する取組みと質の維持への配慮について
農林家漁家民宿として普段着でありのままの、しかし
ながらその過程やしかたでは、実に細かい配慮がなされ
ていることが分かります。それは開業以来の宿泊利用者
が書き残した膨大な感想記録(ノート)の接客に対する
コメンにも表れています。その代表的で多くのコメント
には、ゆったりとした時間を過ごすための配慮がなされ
ていた、田舎のおばちゃんの家にいるような気分に浸
れ、愛情がいっぱいなどです。
一方で宿泊利用者には必要以上にこびたりせず、この
熊本の心の湯治場
宿流のもてなしを理解してくれる人に利用して欲しい
という、明解な姿勢と方針のもとでもてなしを行なって
います。それは“付かず離れず”ということでもあり、
それに共鳴する利用客がリピーターとして支えていま
す。
またもてなしの根底に、「心の湯治場」という考え方
があり、これが宿泊利用者への接客にも反映されている
ようです。精神的な疲れを当民宿でほっとやすらげる、
手間隙かけて作った食事
そして気持ちのエネルギーを充電する場所でありたい」
と、おかあさんは言います。それは具体的には「心の休
養」と「家族の会話」を通じた「時間と場所」の提供と
いう接客のかたちに表れているといえよう」。そのひと
つの場所が娘さんの命名によるという、食事処兼交流場
所の「心んま」であるといえます。
宿泊客をゆったり、そして心おきない滞在に感じさせ
る接客の極意のひとつに、朝、宿泊客が起床しているこ
との目印に、障子を少し開けるということを勧めている
ことがあります。それは宿泊客にゆっくりと過ごしても
らう、そっとしておく接客サービスです。こうした配慮
に喜ぶリピーターが少なくないという。
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和室からの風景に心温まる
農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
(2)農林漁家民宿として「食事」に関する取組みと質の維持への配慮について
食の素材は自家栽培はもちろん地域、特に集落(17軒)周辺は兼業農家が大半です。
そこで生産する米、摂りたての野菜、集落内の加工工場で作った味噌食材などこだわりが
実際の食味を通じて伝わってきます。
民宿の裏庭周辺にも食すことができる、野菜や草花、きのこなどの自然素材が取れます。
宿泊利用者にとっては、敢えて山に入らなくとも宿の廻りで採れるのを見、それを宿の料
理で食べられることは食味感を一層増すでしょう。
それらの地域特有の素材を、地域の伝統的な調理法を生かしながら料理を作り提供して
います。それは野菜をはじめとした季節の素材を、年間を通じて味わえるよう漬け込みや
冷凍や乾燥、保管のしかたの工夫など手間を掛けた地域の食材へのこだわりが感じられま
す。それを守るひとつの機会として、祝い事や仏事の際に集落の夫人たちが参会者のため
に料理を用意するが、そこが調理や味の伝統継承の場となっているようです。
主食の米の美味しさについては、宿泊利用者から多くの賞賛が寄せられています。もち
きびやひえなどの雑穀類と炊き合わせた米飯は、身体に優しく、美味しくかつ忘れられた
日本の主食に出会えるという郷愁を感じさせます。帰りに「サランラップはありますか」
と申し出て、米を持ち帰る宿泊者が少なくないようです。
当民宿の体験メニューのなかで好評を博しているのが、阿蘇の岩石で作った石窯を使い、
近隣の山から伐採した薪で焼くピザです。生地となる小麦から、野菜、トマトソースなど
すべて自家製です。ここにも地場の食材のみならず、さまざまな地域資源を生かした食の
もてなしがあり、また宿泊者も一緒になって作るという調理体験は、食事と体験、そして
宿側ときには宿泊者同士や近隣の住民との交流、触れあいにもつながる仕掛けです。
一般的に当然ながら食事は夕食に比重を置き、ともすれば朝食を軽視する農家民宿があ
るなかで、地家栽培の野菜類の特色や代々引き継がれてきた独特な料理法などを生かし質、
量共工夫を凝らした朝食を提供しています。素材や調理法、特に季節を越え手間を掛けて
作った各種の漬物、干し物など宿泊客はその素材や調理法など、思わず聞いて見たくなる
新鮮さがあります。
庭先に山からの湧き水が、遠い昔から絶えることなく流れ出しています。甘みさえ感じ
る美味しい水です。この水が米をはじめとした料理やお茶、コーヒーまた酒の水割りなど
の味わい深さを一層引き立てています。
(3)農林漁家民宿として「その他のサービス」に関する取組みと質の維持への配慮
農林漁家民宿として、先ず当宿の“その他サービス”で目につく代表的ことのひとつは、
宿側と宿泊客との物理的、心的な距離を常に念頭に入れ実践していることです。それは宿
側(管理棟)と宿泊客(客室)が離れている(別棟)であるというハード条件を、運営や
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
対応などソフト(サービス)とつながっていることです。これにより宿泊利用者自身も気
を使わず安心して、のんびりとした滞在のひとときがを過ごすことができます。
豊かで何でも便利で手に入る時代にあって、むしろそうしたことから離れるひとときを
宿運営の方針とする試みをいくつか行ない、それが多くの支持を得ています。
たとえば客室には電話、テレを設置していないことなどがその象徴です。従ってそれ自
体、不便とも思われることが、反対に宿の心配りのサービスとして受け取られています。
プラス(加える)のサービスばかりでなく、マイナス(控える)のサービスの明解な意図
を持った姿です。
客室、トイレ、キチネット(台所)
、交流棟、庭周りなどがよく整備され、また清潔な状
態に保たれています。日頃より手を入れていることが垣間見れます。また清潔維持面での
配慮としてたとえば、客室の玄関を上がり障子を開けた畳の上に小さなフットマット、ト
イレのドア部の畳にも同じくフットマットを敷くなど、清潔さの維持に心配りをしていま
す。
歴史を重ねた宿泊棟を兼ねた農家屋には江戸、明治時代の当時実際に使用していたなが
もちなど古道具や家具が大切保管され、見る人に往時の生活や文化、そこでの農家の仕事
を偲ばせています。
客室にキチネット(台所)と食器類、冷蔵庫を配置してあるのは、宿泊利用者へのサー
ビスの考え方が根底にあるように伺えました。それは連泊者や家族連れ、あるいは小グル
ープが宿泊の際、自由に飲食物を持ち込み飲みながら食べながら、心置きなく過ごして欲
しいという願いからです。
当農家民宿の心温まるサービスに、陰で貢献しているのが“ハナ”という小さな雌犬で
す。今は老犬となっているが大変人なつこい犬で、宿泊者特に子供たちとこの犬の触れ合
いや再会のへの期待は、実に多くの宿泊者の感想に綴られています。長年、“ハナ”もサー
ビスの最前線で宿づくりに精一杯努力してきたのです。
(4)農林水産物等の地域資源の活用や景観・文化等の保全に関する取組みについて
農家民宿の立地や周囲の環境も訪れる人にとり“自然のもてなし”として移ります。そ
の意味で発達した現代社会のなかで、当地の日本古来の小さな集落の原風景や佇まいが人
びとの五感を揺るがしています。その貴重な資源を集落の人びと、なかんずく当宿はこれ
に積極的に維持・管理に関わっています。辺鄙であっても自分たちの土地の魅力資源を知
り、また他所とのちがいを認識しながら農家民宿の運営に当たっていることを実感します。
当宿は小さな集落のなかに立地するが、集落周辺の自然環境資源ばかりでなく、昔から
地域が育んできた木工や、窯、畳つくりなどの伝統工芸、煎餅や饅頭などの懐かしく自然
の素材を使った食、また新たに花の栽培・生産、販売をいち早く始めました。おかあさん
の宿ではそれらを敷地内の一箇所を販売コーナーとし、来訪者、観光客に喜ばれています。
地域資源の魅了発信の場として積極的に取り組んでいます。
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
(5)地域活性化において都市農村交流のリーダー的な存在として貢献している取組み
ご主人は永年、行政で農業政策関係の仕事に携わっていたことで、景観や文化など地域
資源保全の大切さとその活用に対する関心はもちろん、地域の振興や発展への的を射た考
えを持っていることが伺えました。地道ではあるがそうした思いや意見を集落や周辺地域
の活動を通じ取り組んでいます。
県の補助事業の一環で地域農業集団(任意組合)のなかに、味噌を中心とした加工事業
(コスモス会)を平成元年に発足させ、おかあさんがその中心的役割を果たしています。
現在17軒の集落の内、15 軒が参画している。ちなみに味噌づくりに使う原材料は、ほぼ
すべてが地場産のものである。単に米や野菜を作るばかりではなく、それに付加価値を付
けるという、農業資源の商品開発の観点から始めたそうです。現在こうした取り組みは各
地で見られるが、それを 20 年前にいち早く取り組んだ発想と行動力は十分に評価できます。
(6)その他、調査員が評価した認定者の取組み及び感想
おかあさんから伺った話であるが、河津家へ嫁ぐに際しご主人から「この寒村を変えて
欲しい」、と言われたそうです。これが今日までのおかあさんの励みやバネとなり、その思
いが宿の運営や集落、地域資源の振興、活用に反映されているのかも知れません。芯の強
いビジョン達成型のおかあさんだと思います。
農家民宿経営者の高齢化による次世代への引継ぎは今、全国共通の課題となっているが、
当宿においてはすでに末娘さんが跡取りを宣言し、ウイークデーは近隣都市で習い事をし、
週末や多忙期には宿の主力として活躍されています。これもご両親の農家民宿にかける使
命と情熱に共感し、またそのように導いた結果によるものと思われます。後継者について
同じ悩みを抱える農家民宿が少なくないなかで、若い娘さんの今後の活躍を祈るとともに、
こうした次世代の若人のネットワークが広がることを願っています。
ご主人とおかあさんのコンビが、実に良く取れていることを実感できました。ご主人が
集落や地域のための活動や事業しての民宿経営などを主体とし(もちろん畑や、宿の運営
にも関わっているが)、おかあさんがそれを日々の民宿運営の中でかたちにしていく役割で
す。何よりも良いことは使命と理念に近いものを共有されているので、どのような宿泊利
用者が来ても、自然体のもてなしてを一貫して行なってきたのでしょう。
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
Ⅳ 資料
1月29日、おかあさん100選が正式に認定後プレス発表され、新聞の各中央紙、地
方紙に一斉に掲載されました。また、農林水産省、機構、Yahoo 等、ホームページに UP さ
れ、認定者がマスメディアに紹介されました。
なお、各受賞者には、新聞取材他、旅行雑誌、女性雑誌、TV 等のマスコミでの取材依頼、
問い合わせが数多くあり、メディアの反響が大きかった。
農林漁家の生活や、田舎の暮らし、癒しの場としての農山漁村の空間は、都市生活者に
とって、食の安全や、精神的な癒しの場として、ますます注目されることになるであろう。
新聞各紙掲載の一部
1)朝日新聞
平成20年1月30日掲載
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
2)朝日新聞
平成20年1月30日掲載
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
3)読売新聞
平成20年1月30日掲載
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
3)農業新聞
平成20年1月30日掲載
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
第 1 回農林漁家おかあさんサミット概要
第1回 農林漁家民宿おかあさんサミット
プ ロ グ ラ ム
„日
„会
„主
時
場
催
平成20年2月28日(木)13:10~15:30
都道府県会館
(財)都市農山漁村交流活性化機構
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
コーディネーター・パネリスト紹介
コーディネーター
„青木 辰司 (あおき しんじ)
東洋大学 社会学部教授
NPO法人日本グリーンツーリズム・ネットワークセンター代表理事
「農」を介した新しい都市農村交流を図り、西欧初発の地域づくり活動の普及のため、
多方面に関わる新たなパートナーシップ型農村再生を目指した、マニフェストを含ん
だ『持続可能なグリーン・ツーリズムー英国に学ぶ実践的農村再生』(丸善)を出版
「日本グリーンライフ・ツーリズム学会」設立準備中。
パネリスト
(第1回農林漁家民宿おかあさん100選認定者)
„湯浅 優子 (ゆあさ ゆうこ)
北海道新得町 ファームインつっちゃんと優子の牧場のへや
「あるがままの農の暮らしと営み」のおすそ分け
収容人数5名の小規模の洋風施設を経営。無農薬・無化学肥料で栽培した自家菜園
の食材を中心とした地元食材を使って、体に優しい家庭料理を提供。地域活動とし
ては景観保全に関わるNPO十勝グランドワークトラストや北海道のスローフード
の取組に参加。
„石田 賀代子 (いしだ かよこ)
岐阜県郡上市 自然食泊 愛里
「山里に子供の声がひびき、お年寄りが元気な村を夢みています」
農家民宿と農家レストランを併設。明宝地区の旅館・民宿の女将たちで結成した
「ビスターリマーム」のリーダーとして、料理メニューの開発や自然体験団体、
「山と川の学校」との連携によるイベント等の開催等都市農村交流の推進に取り組
んでいる。
„上田 知子 (うえだ ともこ)
高知県梼原町 農家民宿 いちょうの樹
「田舎のない人の、『いなか』になりたい」
お客様に「農山村のくらしありのまま」と「家族ぐるみのあたたかいもてなし」を
提供。家族に「役割分担」があり、「体験」と「くらし」を切り離さず自然体の工
夫を実践。体験を農家の方に頼んだり、直売所を紹介したりする等、地域に経済効
果や交流が広がる「サービス」を心がける。
„河津慶子 (かわづ けいこ)
熊本県 南小国町 農家の宿 さこんうえの蛙
「つかず離れず、そして笑顔でお帰りになられるお姿をお見送りしたい」
築120年以上の蔵を改造した宿泊棟と離れを運営。宿泊棟の蔵は、磨き上げられ、
昔の素材に調和した敷物や家具が趣味よく配置され、掃除も行き届き、落ち着きと
くつろぎの空間がつくられている。「ここ(集落内)で採れたものしか出さない」こ
とが主義で、近くの畑で作る取れたての野菜・雑穀・山菜が主体の料理を提供。
„橋本正恵 (はしもと まさえ)
大分県佐伯市 民宿 まるに丸
「生きる気力は自然の風と潮と天より授かる」
民家をそのまま活かした漁家民宿を経営。別荘気分を感じられるように、宿は料理の
準備と後かたづけのみを行い、風呂や寝床の準備は宿泊者が実施。蒲江地域をキャン
パスにした「あまべ渡世大学」の学長として、漁村の体験・学びの場を提供。
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農林漁業体験民宿の安全管理等のための技術的支援事業
農 林 漁 家 民 宿 お か あ さ ん 1 0 0 選
プログラム
12:
12:30 開場
13:
13:10 開会
主催者挨拶
(財)都市農山漁村交流活性化機構
来賓代表挨拶
農林水産省
13:20 認定式
14:00 パネルディスカッション
テーマ:地域とともに輝く農林漁家民宿のおかあさん
コーディネーター
青木 辰司
東洋大学 社会学部 教授
パネリスト
湯浅 優子
北海道新得町
ファームインつっちゃんと
優子の牧場のへや
石田 賀代子
岐阜県郡上市
自然食泊愛里
上田 知子
高知県梼原町
農家民宿いちょうの樹
河津 慶子
熊本県南小国町
農家の宿 さこんうえの蛙
橋本 正恵
大分県佐伯市
民宿 まるに丸
15:20 質疑応答
15:30 閉会
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