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「萩の竹ブランド化推進協議会」の 事業化第一号
Focus 萩市 地域ニュース 「萩の竹ブランド化推進協議会」の 事業化第一号 ● フィンランドへ竹製家具を輸出 する産業自体が廃れてしまいました。 今年、萩市にあるTAKE Create Hagi(タケ・ 平成13年に萩商工会議所の会頭に刀禰勇氏が クリエイト・ハギ)株式会社がフィンランドへ 就任したことで転機が訪れました。刀禰会頭は 竹製家具の輸出を開始しました。同社は平成18 「萩の地域資源を活用し、萩にしかない地場産 年3月に設立したばかりの新しい会社で、平成 業を育てる」とのビジョンを打ち出し、その具 19年1月には工場が完成し、その工場が本格稼 体案の一つが萩では消えてしまった竹産業の復 働して輸出を開始したのです。 活でした。 この萩市での竹製家具製造は、萩商工会議所 平成14には同会議所が中心となって「萩の竹 が中心になった 「萩の竹ブランド化推進協議会」 ブランド化推進協議会」を発足し、竹製品の事 の事業化第一号なのです。 業を興すことを目的とした活動が始まりました。 と ね 山口県立大学に研究委託して、萩の竹のブラン ● 地域産業復活を目指す ドイメージをつくるためにポスターやロゴマー 山口県は竹林の面積は約12千haで全国4位、 クをつくり、竹製品を試作し竹細工や竹炭など その中で萩市周辺は約2千haを占めており、し の将来性を検討しました。 かも良質な竹の生産地です。もともと萩では、 出てきた結論は、 「従来にはない竹製品を考 和すだれ、ちょうちん、和傘などの竹製品製造 案しなければ事業化は成功しない」とのことで、 が盛んでした。しかし、竹製がプラスチック製 以前から山口県立大学が交流のあるフィンラン に取って代わられていき、さらに追い打ちをか ドのデザイナーによってまったく新しい竹製品 けるように安価な輸入品、特に中国産の登場で を試作してもらうことになりました。 国内産竹製品の需要は激減、今では萩で竹に関 ● JAPANブランド育成支援事業に採択 さらに、この事業を後押ししてくれる事が起 きました。平成16年、中小企業庁は「JAPA Nブランド育成支援事業」を創設しました。こ れは「既にある地域の特性等を活かした製品等 の魅力・価値をさらに高め、全国さらには海外 のマーケットにおいても通用する高い評価(ブ ランド力)を確立すべく行うプロジェクトを支 援する」というもので、これに萩商工会議所は 「萩の竹ブランド化推進協議会」の活動を提案 TAKE Create Hagi の工場外観 することにしました。プロジェクトを『竹が創 やまぐち経済月報2008.6 25 Focus 地域ニュース る21世紀「竹 meets フィンランドデザイン」 』 たということです。そこでアルテック社からデ として、フィンランドのデザイナーと連携し、 ザインの提供を受け、そのデザインに基づいた 竹繊維のファッション、竹製の家具・寝具など 家具を受注生産することで合意しました。 新しい竹製品を作り、竹のない北欧圏を中心に 新市場の開拓を目指す、との内容です。そして ● 生産会社を設立、そして次の事業化 第1回「JAPANブランド育成支援事業」に 萩商工会議所としては、竹製家具製造事業化 このプロジェクトは採択されたのです。 の目途がたったことで、新会社設立に向けて同 この採択で2千5百万円の援助を受けること 会議所の会員企業へ事業参画を募りました。そ ができ、それにより本格的デザインでの試作品 して設立されたのが冒頭にあげた竹製家具製造 が作れるようになりました。フィンランドの3 会社「TAKE Create Hagi ㈱」です。この設 グループ10名のデザイナーへ家具や生活用品の 立した工場により25人の新規雇用が生まれ、工 製作を依頼し、萩市や東京での展示会を通じて 場へ竹を納品する森林組合にとっては新しい安 市場調査も行いました。 定事業を確保できました。増産となれば、さら さらに翌年、平成17年には日本貿易振興機構 には竹の搬出・販売でさらに雇用が生まれるこ (ジェトロ)の「JAPANブランド海外販路 とになるでしょう。また、萩地域でも問題にな 開拓支援事業」に採択され、平成17年8月にフ っている、利用されない竹が繁茂して森林や里 ィンランドのヘルシンキ市で展示会を開催しま 山を侵食している状態を、この事業により竹が した。その展示会で竹製品に強い関心を示した 消費されることで改善されることが見込まれま のがアルテック社(本社:フィンランド)でし す。 た。アルテック社は優れたデザインを誇る世界 今回の事業化ではアルテック社へのOEM生 的ブランド企業で、家具、照明器具などを生産 産なので、当初の目的である「萩の竹」のブラ しており、40か国以上で製品が販売されていま ンド化の達成はこれからです。また、国内市場 す。アルテック社は、北欧では竹を素材とした の開拓も課題で、日本人デザイナーの採用があ 製品が珍しいということ、さらには木材よりも るかもしれません。また、竹の安定供給の体制 硬い竹を曲げ加工する日本の技術の高さに驚い を確立するために竹林の整備も必要です。 「萩の竹ブランド化推進協議会」では、次な る竹をつかった事業として竹を素材とした 「紙」 の商品化を進めているそうです。この竹の紙は 萩市内での限定販売とするようで、萩の観光振 興に少しでも貢献したいとの考えだそうです。 これからも竹を使った事業で、萩市の地域振興 に寄与してくれることが期待されるところです。 (井本 裕康) TAKE Create Hagi の竹製ベンチ 26 やまぐち経済月報2008.6