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51 - 素形材センター

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51 - 素形材センター
その他
日産自動車株式会社 パワートレイン技術開発試作部
シリンダブロックのボア溶射技術
軽量化と低燃費への貢献
その他、皮膜性状を決定する主要な因子として、皮
1.開発の目的
膜内における酸化鉄率、および気孔率を設定した。
新型 NISSAN GT-R 用の V6 エンジン開発において、
パワー、レスポンス、環境性能の 3 要素を高次元でバ
ランスさせることを目的として、シリンダブロックの
ボア溶射技術を開発した。
図 3 炭素含有量と摩耗量
3.開発の成果
図1 シリンダブロックおよび溶射層の断面
2.開発の内容
溶射工程においては、界面での密着強度を確保する
ため下地処理工法が重要であるが、通常、下地処理と
して用いられているショットブラスト、アンダーコー
ト等では、品質・生産性とコストの点で課題を残して
いるため、一般的なマシニングセンターを用いた独自
の機械加工方法を開発した。具体的には、図 2 に示す
ように専用に設計した加工チップを用いてボア内面を
ねじ切り加工することにより、チップ進行方向と逆側
の逃げ面側に形成されるねじ切りの山部を、切粉の排
出と同時に破断させる。これにより、ピストンから受
けるスラスト力に対して最大のアンカー効果を発現す
る巨視的・微視的粗面化面を得ることができた。
本開発品では、鉄部のライナ厚さを 2. 6 mm から
0. 2 mm にすることが可能になったため、2. 3 kg の軽
量化が達成でき、従来の鋳包み品と同一のボアピッチ
を保ったまま、ボア間部に冷却通路を設けて独立ボア
化することができた。直接溶着の効果と合わせて、大
幅な熱伝達性能の向上が達成でき、図 4 に示すように、
ボア温度全体の低減および均一性の改善がなされた。
図 4 ボア表面温度の変化
0.2 mm
図 2 粗面化方法と概観
今回用いた溶射ガンは、熱源をプラズマとし、1 本
のワイヤーを溶射材として溶射ガンの中心に配置する
構造となっている。溶射用ワイヤー材は、シリンダボ
アとしての基本的な耐摩耗性・ピストン等への相手攻
撃性・加工性も考慮し、炭素含有量の上限を設定した。
図 3 に溶射用ワイヤー材の炭素含有量とボア摩耗量の関
係を示す。炭素含有量が 0. 25%以上であれば、従来の
鋳鉄ライナと同等の耐摩耗性を有することを見出した。
これにより、実働時のボア変形によるピストンの局
部面圧の増加を防ぎフリクションの低減も図ることが
でき、ノッキング限界が向上し、その分圧縮比をアッ
プさせて熱効率の向上を図ることができた。
以上により、全てのエンジン回転数において、鋳鉄
ライナに対して本開発による溶射ボアは、2 ∼ 4 度の
点火時期進角を得ることができ、最大で約 50 g /kWh
の正味燃料消費率の低減を行うことができた。
(文責:松山秀信)
日産自動車 株式会社
パワートレイン技術開発試作部
〒 230 - 0053 神奈川県横浜市鶴見区大黒町 6 - 1 TEL. 045 - 505 - 8475 FAX. 045 - 505 - 8504 わ が 社 の 素 形 材 技 術 最 前 線
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