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市民活動と行政の協働

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市民活動と行政の協働
Ⅱ.市民活動と行政の協働
1.協 働とは
現 在 、協 働 という言 葉 は、いろいろな意 味 で使 われています。大 辞 林 には「同 じ目
的 のために、協 力 して働くこと」とされており、この意味 ではいろいろな解 釈 ができます。
一 方 、協 働 には「cooperation」「collaboration」「partnership」という英単 語 がよく当てら
れます。つまり、定 訳 がないのです。これは「協 働 」という語 の多 義 性 をあらわしていま
す。
「協 働 」という語 は比 較 的 新 しい言 葉 です。したがって、同 じ発 音 をする「共 同 」や
「協 同」とほぼ同じ意 味でつかわれることも多くあります。
しかしながら、私 たちは「協 働 」と「共 同 ・協 同 」の間 には大 きな違 いがあると考 えます。
その違いは「働」と「同」の違いから明らかにすることができます。「協働」は、同じ目標に
向 かって「それぞれがそれぞれの価 値 観 や判 断 にしたがってそれぞれの働き」をするこ
とです。一 方 で「共 同 ・協 同 」は、「それぞれが同 じ組 織 や行 動 原 理 」で目 標 を達 成 す
ることです。つまり、前 者 にはそれぞれの自 立 した働 きが求 められるのですが、後 者 は
参 加する人びとみなが同質であることが重要となります。
したがって、私 たちが考 えるのは市 民 と行 政 の「共 同 ・協 同 」ではなく「協 働 」なので
す。つまり、市 民 と行 政 それぞれの自 立 した働 きを前 提 とした関 係 を築 くことが大 切 だ
と考えています。
このような考え方を受けて、「協働」とは、次のようにいうことができます。
協働
羽曳野市のめざされる姿が実現されるまちづくりという共通の目標を達成するた
めに、自立した市民と行政が、互いの違いを認め尊重し合って対等な関係に立ち、
それぞれがもっているできる限りの知恵や資源を持ち寄り、それぞれが責任と役割
を公 平に分担して、協 力し合い、その関係を続けること。
この場 合 に重 要 な点 は、市 民 と行 政 が相 互 に自 立 し、対 等 な関 係 でお互 いの役 割
分 担を果 たすことです。
次 の図 は、その「協 働 」を概 念 化 したものです。左 右 にそれぞれの独 自 の活 動 領 域
があります。左 右 の領 域 は、それぞれの主 体 (市 民 と行 政 )が自 らの責 任 のもとで自 分
でおこなわなければならない活動です。例えば、市 民にとっては日 頃の近所 づきあいを
通しての相互扶助、行政にとっては税金の徴収などは独 自の活動領域です。
市 民 と行 政 の関 係 の視 点 から見 るならば、両 者 は自 分 たちのまちや地 域 を創 るとい
う共 通 目 標 を持 っています。この目 標 の下 では、市 民 と行 政 は「対 等 」な関 係 にあり、
協働すべき領域なのです。
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対 等 とは、同 じ資 源 (資 金 や権 限 など)をもっているということではなく、お互 いの意
見 や考 えが尊 重 されるということ、そして責 任 をもって行 動 することを意 味 します。した
がって、図 中 の矢 印 は市 民 独 自 の活 動 領 域 と行 政 独 自 の活動 領 域 両 方 からでている
のです。これは、両 者 がもっている生 活 に関 する「知 恵 」や、人 材 や人 員 あるいは資 金
やネットワークといった「資 源 」を共 通 の目 標 であるまちづくりのために持 ちよることをし
めしています。どちらか一 方 では、対 等 とはいえません。ただし、意 見 が尊 重 されるとい
うことは、どちらか一 方 の意 見 を「鵜 呑 み」にするということではありません。そこでは、
様 々な意 見 が持 ち寄 られ、議 論 されなければなりません。その議 論 の中 で、どちらかの
意 見 は採 り上 げられない可 能 性 もあります。重 要 なことは、他 人 の意 見 に耳 を傾 けると
いうことです。
そしてその議 論 の主 導 権 は、当 該 の課 題 を解 決 するにはどちらが主 導 的 になるほう
がより有 効 かという点 で決 まります。例 えば、課 題 が全 市 的 な広 がりをもっていて、大 が
かりな準 備 や広 報 が必 要 な場 合 、それは行 政 が主 導 的 にやった方 がいいでしょう。し
かし逆 に、課 題 が 個 別 でそれ ぞれに別 々の対 応 が必 要 な場 合 は、 市 民 の 手 でおこ
なったほうがいいでしょう。そのような協 働 における程 度 の違 いを表 しているのが図 中 の
「協 働 の程 度 」です。これは左 に行 けばいくほど市 民 が担 う部 分 が、右 に行 けばいくほ
ど行政が担う部分が多くなることを表しています。
図
協働の程度
知恵・資源
行政主導
市民主導
市民
独自の
活動
領域
市民と行政の協働の概念
知恵・資源
市民と行政の
協働領域
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行政
独自の
活動
領域
2.市民活動と行政との協働の意義
市 民 活 動 と行 政 の協 働 にはどのような意 義 があるのでしょうか。協 働 を行 うことで、何
が変わっていくのでしょうか。それは、以下の3つの点です。
①自治意識の向上
地 方 分 権 が進 行 する中で、市 民 の自 治 意 識 の向 上 と行 政 の変 化 が求 められていま
す。行 政 に任せっきりにするのではなく、住 民 は自 分 たちの地 域 やまちを行 政 と協 力 し
ながら、創 り、運 営 する意 識 が必 要 となります。協 働 とは市 民 と行 政 が知 恵 や資 源 を持
ちよってまちづくりに向 けて責 任 と役 割 を分 担 するわけですから、市 民 活 動 を通 じて行
政 と協 働 を進 めることは、この自 治 意 識 の向 上 に大 きく寄 与 するはずです。つまり、「自
分 の地 域 やまちは自 分 たちで創 る」という認 識 を市 民 活 動 に参 加 することを通 じて養 う
ことができると考えます。
一 方 、行政にとっては市民と協 働 することによって、直接的にはスリム化や負担軽 減
などの効果 が現 れると期 待 されます。例 えば、従 来 行 政 がおこなってきた事 業 を、責 任
と能 力 を持 った市 民 活 動 団 体 に委 託 をするなど協 働 しておこなうことで、自 らの役 割 を
限定でき、過 度の負担を避けることができます。
そしてさらに、過 度 の負 担 がなくなった行 政 は、自 治 意 識 が向 上 した市 民 と自 治 を
進めることができるために、よりよいまちづくりにその力を注ぐことができるでしょう。
②多様化する市民ニーズへの対 応
行 政 が提 供 する公 共 サービスは、公 平 にそして均 質 に住 民 の最 低 限 の生 活 環 境 を
保 障 するというシビル・ミニマムの原 則 に則 り、事 業 の継 続 性 や公 平 性 の確 保 から、画
一 的 、一 律 的 な対 応 を旨としてきました。その一 方 で、市 民 のニーズは多 様 化 している
ため、行 政 は市 民 のニーズを満 たすという責 務 を十 分 に果 たすことができなくなってい
ます。
そこで、市 民 活 動 と協 働 し、市 民 活 動 が新 たな公 共 サービスの供 給 主 体 となるなら
ば、市 民 のニーズを満 たしていくことが、従 来 に比 べできるのではないでしょうか。なぜ
ならば、市 民 活 動 は規 模 の面 では小 さいですが、その活 動 内 容 や形 態 は多 様 で、組
織 も柔 軟 性 をもっているからです。そのため、新 しい問 題 に対 して、より早 く、そしてより
多 面 的 に対 応 できる能 力 を持 っているのです。とりわけ市 民 活 動 を組 織 的 に継 続 して
行う NPO などは、その組織の継続性、専門性などからいっても、市民のニーズへの対
応策としては有効であると考えます。
このように考 えると、市 民 活 動 と行 政 の協 働 は、私 たちが考 える「羽 曳 野 市 のめざさ
れる姿 」を実 現 する手 段 の一 つであることがわかります。つまり、自 治 意 識 を向 上 させる
ことで、羽曳野市民としての自覚が生まれ、市 民の自主的な活動が盛んになります。そ
して、多 様 化 する市 民 ニーズへの対 応 が可 能 になることで、人 びとは快 適 に暮 らすこと
ができるようになります。もちろん、この快適さはただ要望や要求が満たされるというだけ
ではなく、自己実現や達成感というニーズを満たすことでもあります。
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③市 民と行政の信頼関係の構 築
社 会 が変 化 し、行 政 を取 り巻 く環 境 が変 化 することで、市 民 と行 政 の間 の溝 は少 し
ずつ深 まっていったといえます。市 民 は自 分 たちの要 望 やニーズを完 全 には満 たして
くれない行 政 に不 満 を持 ったり、行 政 組 織 や機 構 の非 効 率 性 や不 透 明 性 を主 張 する
ようになりました。一方、行政も個人や集団の利害を優先させる傾向に対して不信感を
抱 くようになっていたのも事 実 でしょう。つまり、市 民 と行 政 の間 で相 互 不 信 に陥 ってい
たといえます。
このような状 況 は、市 民 と行 政 が協 働 しておこなう快 適 なまちづくりにとってよい影 響
は与えません。そこで、日本でもオンブズマンという制度に注目が集まりました。
制 度 としてのオンブズマンの働 きとしては、「苦 情 処 理 」、「行 政 監 視 」、「行 政 改 善 」
という機 能 が期 待 されます。苦 情 処 理 とは、住 民 から寄 せられた行 政 機 関 等 に対 する
不 服 ・不 満 を議 会 や行 政 から独 立 した第 三 者 機 関 が調 査 して、行 政 機 関 等 に不 備 は
ないか、不 服 ・不 満 の内 容 が妥 当 であるかどうかを審 査 することです。行 政 監 視 とは公
正 で中 立 な組 織 (オンブズマン)が常 に行 政 機 関 等 を監 視 し、行 政 機 関 等 に何 か問
題 があればその是 正 を促 すことです。そして、行 政 改 善 とは調 査 の結 果 、行 政 に責 任
があり、その責 任 が法 律 や条 例 に起 因 している場 合 、制 度 改 善 の意 見 を述 べることで
す。
オンブズマンの働きを通 じて、行 政 は自 らの説 明 責 任 と情 報 公 開 の義 務 を果 たすこ
とができます。そのことにより、市 民が抱く行政に対する不信を取り除き、行政の透明性
を高 めることで、市 民 と行 政 の協 働 がさらに可 能 となり、まちづくりを前 進 させることにな
ります。
このオンブズマン本 来 の働 きは、市 民 活 動 と行 政 の協 働 によって実 現 されると考 え
られます。市 民 活 動 と行 政 の協 働 は、対 等 な立 場 でまちづくりという共 通 目 的 を達 成
することです。したがって、まちづくりの障 害 となっている市 民 の不 信 感 を取 り除 くことは、
行政にとっても必要なことです。
協 働 を行 う市 民 活 動 団 体 は、自 立 的 な活 動 ですので、行 政 と対 等 です。したがって、
このような市 民 活 動 団 体 が行 うオンブズマンの働 きは、たとえ制 度 的 であるといっても
行政の透明性を高 めるはずです。
このように市 民 活 動 と行 政 の協 働 によって、市 民 と行 政 の相 互 不 信 を払 拭 すること
ができます。市 民 活 動 はまさに市 民 と行 政 の橋 渡 し役 を果 たすことができるのです。も
ちろんその場 合 、市 民 活 動 を行 う個 人 や団 体 の公 正 性 ・自 立 性 、そして行 政 との対 等
性が必要となります。
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3.協 働における4つの形 態
市 民 活 動 は多 様 な形 態 や性 質 を持 っています。そのため、市 民 活 動 の類 型 には、
活 動 の内 容 や分 野 、規 模 などいろいろな分 類 の方 法 があります。行 政 との協 働 という
視 点 、すなわち行 政 とどのような関 係 を持 っているかという点 から考えるならば、市 民 活
動の種類はその組織的な特徴から分けるのが最適であると考 えます。
市 民 活 動 の種 類 をその組 織 上 の特 徴 から考 えた場 合 、まず、大 きく2つに分 けられ
ます。一 つが「既 存 の市 民 活 動 (団 体 )」、もう一 つが「最 近 新 しく生 まれた市 民 活 動
(団 体 )」です。協 働 という視 点 から見 るならば、この2つの市 民 活 動 における大 きな違
いは、行 政 との関 係 の継 続 性 にあります。協 働 は一 般 に、継 続 性 が高 いものほど目 的
の達 成を予測できるという意味で安定的ではありますが、逆に関 係が固定化されてしま
い形 骸 化 してしまうこともあります。一 方 、関 係 している期 間 が短 いものは信 頼 性 に欠
け、安 心 して協 働 をおこなうことができないために、協 働 の領 域 が限 られていたり、十 分
な協 働 にまで発 展 しないこともありますが、今 までの関 係 にとらわれない斬 新 性 や先 駆
性などを兼ね備えている場合があると考えられます。
そして「既 存 の市 民 活 動 (団 体 )」は、その組 織 がつくられた目 的 や構 成 から3つに
分 けられます。それは、特 定 のメンバーやテーマに限った相 互 扶 助 ・交 流 などを目 的 と
してつくられた個別の各種団体、そしてこのような個別の各種団体の連合体としての協
議 会 ・連 絡 会 、さらに地 縁 的 な結 びつきに基 づく地 縁 自 治 組 織 としての自 治 会 ・町 会
です。
①特 定のメンバーやテーマに基 づく既存の市民活動(団体)と行政の協働形態
福 祉 や教 育 をはじめとする私 たちの日 常 生 活 に関 係 する分 野 では、古 くからさまざ
まな市 民 活 動 がおこなわれてきました。私 たちは、これらを市 民 の自 立 的 な活 動 である
と考え、市民活動の中に位置づけました。
これらの活 動 は、歴 史 の古 さや組 織 の広 がりからみるならば、市 民 の生 活 や活 動 の
基 礎 的 な部 分 を占 めているといえます。そのような意 味 で、これらの活 動 は行 政 と、お
おむね良好な協力関係にあります。
しかし、ともすると活動が形骸化したり、人 材が枯渇していったりなどの問題に直面 し、
本 来 の意 味 での自 立 的 な活 動 とはなっていない場 合 があります。このような活 動 の現
状や問題点、そしてめざされる姿を第2部で「福祉」に絞って考えてみました。
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②既 存の市民活動(団体)の連合体と行政の協働形態
上 記 の市 民 活 動 の規 模 は、一 つ一 つにおいてはそれほど大 きなものではありません
でした。それは、これらの活 動 が主 に住 居 地 を中 心 とした空 間 的 な広 がりを基 盤 として
いるからです。それゆえ、このような活 動は市内に点 在していました。
しかし、小 さな活 動 は資 金 ・人 材 の面 で問 題 を抱 える傾 向 にあります。これはどのよ
うな活 動 でもいえることができるのではないでしょうか。そこで、既 存 の市 民 活 動 の中 に
は協議会や連絡会という組織を形成していくものもありました。
行 政 が、地 域 に根 ざす様々な組 織 を一 つ一 つ拾 い上 げることは非 常 に困 難 な作 業
です。それよりも、行 政 がそれらの組 織 の連 絡 機 関 あるいは統 轄 機 関 である協 議 会 な
どを行 政 の様 々なサービス提 供 の受 け皿 とする方 が、網 羅 的 であり効 率 的 でした。そ
のような意味で、行政は補助金などをこのような活動に提供してきました。
また、 逆 に 協 議 会 や連 絡 会 と いう広 範 囲 の 地 域 をカ バーする 組 織 が 行 政 の 手 に
よって立 ち上 げられたあとで、個 別 の活 動 団 体 が立 ち上 がる場 合 もありました。その場
合 、個 別 の活 動 団 体 は、行 政 が整 備 した制 度 を用 いながら、それぞれの地 域 におい
て自主的な活動をおこなっていくことになります。
この活 動 もまた、行 政 と良 好 な関 係 を保 ち、まちづくりに寄 与 してきたといえます。し
かし、①の活 動 と同 様 に、社 会 の変 化 への対 応 が遅 れたり、長 年 の活 動 の中 で活 動
する人 々が限 定 されるなどの問 題 を抱 えることになります。そこで、このような協 働 形 態
の具 体 的 な例 として第 2部 で「教 育 」の場 面 を取 り上 げ、そのなかで協 議 会 のような性
質 を持 つ活 動 がどのような協 働 を行 い、そしてどのような問 題 を抱 えているかを考 えて
みました。
③地縁自治組織と行政の協働形態
自 治 会 や町 会 などの地 縁 自 治 組 織 は、「全 戸 加 入 の原 則 」を前 提 とした場 合 、構
成 員 の資 格 や参 加 の動 機 という点 においては、自 立 的 な市 民 による活 動 と呼 べない
かもしれません。
しかしながら、地 縁 自 治 組 織 は住 民 自 治 の最 小 単 位 という特 徴 を備 えています。私
たちが暮 らしていく上 で、自 らの生 活 、自 らが暮 らす地 域 の創 造 、管 理 ・運 営 すること
が必 要 となります。そのためには、一 定 の範 囲 に住 む住 民 の合 意 が形 成 されなければ
なりません。自 分 たちの生 活 、地 域 を自 分 たちの手 でつくり、守 ることに参 加 する、それ
が地縁自治組織の役 割です。
このように考 えるならば、この組 織 は市 民 が主 体 となって活 動 する公 益 的 で非 営 利
の活動であるということができます。つまり、市民活動の一部なのです。
この市 民 活 動 としての地 縁 自 治 組 織 と行 政 の協 働 は、従 来 、本 当 の意 味 での協 働
とはいえないものも多 くありました。これらの組織が、住民に対する行政からの事務連絡
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の窓口であったりと行政の末端組織の様相を呈していました。
しかし、社 会 環 境 の変 化 により、地 縁 自 治 組 織 が単 なる行 政 の末 端 的 な機 能 を果
たすことにとどまっていてすむ時 代 ではなくなりました。これらの組 織 は、防 災 やゴミ問
題 、地 域 福 祉 などの場 面 で、行 政 と「対 等 」の立 場 をとらなくてはならなくなってきてい
ます。私 たちは、特に「防災・防犯」に焦点を当て、地縁自治組織と行政の協働につい
て第2部で考えていきます。
④新しい市民活動(団体)と行政の協働形態
ボランティア活 動 や非 営 利 活 動 は古 くからありました。たとえば、上 述 の①∼③の市
民 活 動 の形 態 はそれに当たります。しかし、1995 年に発 生 した阪 神 淡 路 大 震 災 以 降 、
日 本 各 地 で誕 生 したボランティア活 動 や非 営 利 活 動 の中 には、今 までと異 なる性 質 を
持っているものも多くありました。
たとえば、活 動 をしている人 びとが今 までとは異 なっています。今 まで、ボランティア
活 動 や社 会 活 動 とはあまり縁 がなかった若 い人 びとや男 性 、そして主 婦 層 などが参 加
しています。そして、その活 動 分 野 も多 岐 にわたり、ボランティア活 動 =福 祉 活 動 という
従来あった固定観念を打ち壊すような活動も多く生まれています。
そして、ボランティア活 動 のような一 時 的 、あるいは生 活 の部 分 的 な活 動 にとどまる
のではなく、このような公 益 性 や非 営 利 性 を持 った活 動 を、自 身 の生 活 の中 心 に据 え
るような人びとも現れてきました。一般に NPO と呼ばれる活動の誕生です。
誕 生 と書 きましたが、このような組 織 は以 前 にもありました。今 日 においてこのような
活 動 が以 前 までの活 動 と異 なるのは、その社 会 的 な位 置 づけです。従 来 までは、あく
までボランティア=無 償 で公 益 的 な活 動 をおこなうことが主 でしたが、現 在 ではその活
動 の社 会 的 意 義 が認 められ、公 益 的 な活 動 が非 営 利 という枠 の中 で一 つの事 業 とし
て成 立 するようになってきたのです。そして、この活 動 は「特 定 非 営 利 活 動 促 進 法 」に
よって法 人 格を得ることができるようになりました。
さらに、法 人 格 を取 得 したこれら新 しく誕 生 した公 益 性 を持 った非 営 利 活 動 団 体 は、
今 までの市 民 活 動 団 体 とは異 なる協 働 をおこなうことができます。つまり、行 政 の末 端
組 織 としての位 置 づけや活 動 の形 骸 化 を避 け、先 駆 性 と専 門 性 をもった事 業 を NPO
が行うことで、行政と対等のパートナーシップを結ぶことができると予 想されます。
私たちは、このような新しい市民活動、特 に NPO の特 徴を第2部では様 々な文献や
情報を総 合し、考えていきます。
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