...

欧州のバイオ燃料普及状況について<バイオ燃料

by user

on
Category: Documents
7

views

Report

Comments

Transcript

欧州のバイオ燃料普及状況について<バイオ燃料
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
平成 18 年 7 月 21 日
PISAP ミニレポート 2006-010
欧州のバイオ燃料普及状況について
<バイオ燃料>
Eurobserv’er1は今年 5 月、2005 年の欧州のバイオ燃料普及実績と今後の見通しに関す
る報告書(資料 1)を公表した。バイオ燃料指令(資料 2)の採択から 2 年が経過した 2005 年
における EU(欧州連合)25 カ国のバイオ燃料生産量は、ドイツ、フランス、スペインなど、
従来からのバイオ燃料の普及に積極的であった国を中心に生産量が大幅に拡大し、昨年比
65.8%の 3.9 百万トンを記録した。また、これまでバイオ燃料の生産が全く行われていなか
った国々でも、バイオ燃料普及支援政策により、新たに製造施設が稼動するなど、EU レベ
ルで普及に向けた動きが活発化している。
1.2005 年におけるバイオ燃料の生産実績
2005 年におけるバイオ燃料生産実績は 3,905 千トンで、そのうちバイオディーゼルが全
体の 82%に相当する 3,184 千トン、残り 18%がバイオエタノールの 721 千トンであり、欧州
では依然としてバイオディーゼルがバイオ燃料の太宗を占めている(図 1)。
バイオエタノール
721 千トン(18%)
バイオディーゼル
3,184 千トン(82%)
総生産量(2005 年)3,905 千トン
図 1 EU25 カ国のバイオ燃料生産の内訳
再生可能エネルギーの普及促進を目的とした EU 内の 4 つの組織(Observ’ER:the Observatory of
Renewable Energies (Paris), EUFORES:The European Forum for Renewable Energy Sources,
Eurec Agency:the European Association of Renewable Energy Research Centers, EREC, The
European Renewable Energy Council)からなる共同組織。バイオ燃料のほか、太陽光発電、太陽熱、風
力発電、バイオガスなど再生可能エネルギーの利用、普及に関するデータ等をまとめた報告書(「バロメ
ーター」)を毎年発行している。
1
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
2000 年以降の生産量の推移を見ると(図 2)、バイオディーゼル、バイオエタノールとも
に 2004 年から 2005 年にかけての増加が著しく、その増加率はそれぞれ 64%、70%(2004 年
対比 2005 年実績)に達している。この生産量増加に大きく寄与した国を見ると、バイオデ
ィーゼルでは、世界最大のバイオディーゼル生産国であるドイツ、フランス、イタリアと
いった従来からの生産国に加えて、その農業資源を背景に、ポーランド、スペイン、スロ
バキアといった国々で大規模な生産が開始されている。一方、バイオエタノールでは、従
来からガソリンへのエタノール直接混合を行っているスウェーデン、ETBE として混合して
いるスペイン、フランスに加え、これまでバイオディーゼルを中心にバイオ燃料を普及し
てきたドイツでも生産量が大幅に増加している。なお、2004 年から 2005 年のバイオエタ
ノール生産量の大幅な増加の要因として、欧州共同体が管理するワインアルコール(2005
年 181 千トン)が燃料用バイオエタノールへ廻されたことが挙げられる。(表 1、表 2)
3,500
バイオ燃料生産量 (千トン)
3,000
バイオディーゼル
バイオエタノール
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
図 2 EU25 カ国のバイオ燃料生産量の推移
また、バイオディーゼル、バイオエタノールともに、これまでバイオ燃料が全く普及し
ていなかった国(バイオディーゼルでは、スロベニア、エストニア、ラトビア、ギリシャ、
マルタ、ベルギー、キプロス、ポルトガル、バイオエタノールでは、ハンガリー、リトア
ニア、チェコ)でも、生産量は少ないながらも 2005 年から生産が開始されている。こうし
たことから、EU レベルでのバイオ燃料の本格的な普及に向けた準備が進みつつあることが
窺える。
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
表 1 国別のバイオディーゼル生産量の変化
ドイツ
フランス
イタリア
チェコ
ポーランド
オーストリア
スロバキア
スペイン
デンマーク
イギリス
スロベニア
リトアニア
エストニア
ラトビア
ギリシャ
マルタ
スウェーデン
ベルギー
キプロス
ポルトガル
EU25ヶ国計
2004年
1,035,000
348,000
320,000
60,000
57,000
15,000
13,000
70,000
9,000
5,000
1,400
1,933,400
2005年
05/04差異
1,669,000
634,000
492,000
144,000
396,000
76,000
133,000
73,000
100000
100,000
85,000
28,000
78000
63,000
73,000
60,000
71,000
1,000
51,000
42,000
8,000
8,000
7,000
2,000
7,000
7,000
5,000
5,000
3,000
3,000
2,000
2,000
1,000
-400
1,000
1,000
1,000
1,000
1,000
1,000
3,184,000
1,250,600
表 2 国別のバイオエタノール生産量の変化
スペイン
スウェーデン
ドイツ
フランス
ポーランド
フィンランド
ハンガリー
リトアニア
オランダ
チェコ
ラトビア
EU25ヶ国計
2004年
202,345
56,529
20,000
80,887
38,270
3768
11146
9800
422,745
2005年
05/04差異
240,000
37,655
130,160
73,631
120,000
100,000
99,780
18,893
68,000
29,730
36800
33,032
11840
11,840
6296
6,296
5971
-5,175
1120
1,120
960
-8,840
720,927
298,182
2.主要国のバイオ燃料普及政策の特徴
ドイツは欧州最大のバイオ燃料生産国であるが、これは現行のバイオ燃料に対する税優
遇インセンティブ(自動車燃料税の全額控除、
数量に上限なし)によるものである。
しかし、
急速なバイオ燃料市場の拡大に伴う財政負担増加の問題、および近年の石油製品価格の高
止まりによるバイオ燃料/鉱物燃料の価格差の縮小を理由に、2006 年 8 月よりバイオ燃料
への一部課税(B100 は 100 ユーロ/m3、B5 は 150 ユーロ/m3)が開始され、段階的に控除幅が
縮小される予定である。また、2007 年初めからの導入を目標として、燃料供給事業者に所
定のバイオ燃料の混合を義務付ける法案が審議されている。
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
フランスは、バイオ燃料指令の 2010 年におけるバイオ燃料シェア目標値(5.75%、エネル
ギー基準)を 2 年前倒しで達成し、
2015 年までに 10%まで引き上げるというバイオ燃料普及
計画を公表している。こうした野心的な普及目標を達成すべく、バイオディーゼルで 1,335
千トン、バイオエタノールで 380 千トンの燃料供給に関する応札者を今年末まで募集して
いる。
2006 年におけるバイオディーゼルとバイオエタノール(ETBE 原料用)に対する自動車
燃料税減免額は、それぞれ 250 ユーロ/ m3(2005 年は 330 ユーロ/ m3)、330 ユーロ/ m3(2005
年は 380 ユーロ/ m3)となっており、前年に比べて縮小されている。こうしたバイオ燃料に
対する税優遇インセンティブと並行して、フランスでは、所定のバイオ燃料シェア目標に
達しない燃料供給事業者に対して汚染活動に関する一般税が課せられている。このバイオ
燃料シェア目標値は年毎に段階的に引き上げられ、2006 年 1.75%、2007 年 3.5%、2008 年
5.75%、2009 年 6.25%、2010 年 7%となる。
イタリアではバイオディーゼルに対する税優遇インセンティブの割当量が 300 から 200
千トンへ縮小されたものの、割当量を超過する分は輸出されたため、生産量自体は拡大し
た。また、政府は 2006 年の割当量を 200 千トンに設定した。
3.今後の見込み
バイオディーゼル生産設備の新設・増強プロジェクトはフランス DIESTER 社(2 施設で能
力 450 千トン/年)、ドイツ ADM 社(能力 275 千トン/年)など各地で進行中であり、生産能力
は 2005 年に 4,228 千トン/年であったものが、
現在建設中の設備を考慮すると 2006 年には
6,069 千トン/年(2005 年比 43%増)まで拡大すると見込まれている。また、バイオエタノー
ルについては、EU 域内の生産能力 1,204 千トン/年と推定されており、スペイン Abengoa
社(能力 158 千トン/年)などで新設が計画されている。
バイオ燃料普及政策として、今後も鉱物油燃料との供給コスト差を燃料税の減免により
補う税優遇インセンティブの付与が考えられるが、ドイツやフランスの例にもある通り、
これによる国家歳入への影響は大きいため、多くの国でバイオ燃料の規定する 2010 年バイ
オ燃料シェア目標値(5.75%、エネルギー基準)の達成は困難と考えられる。欧州委員会によ
ると、
この2010年バイオ燃料シェア目標値(5.75%)は石油換算で18百万トンに相当するが、
これまでのバイオディーゼルとバイオエタノールの進展状況を勘案すると、バイオ燃料の
生産量は 2010 年に 9.9 百万石油換算トン程度と予想している。しかし、この数値は、現在
行われているバイオ燃料指令の見直しや各加盟国のより積極的なバイオ燃料普及政策によ
り上方修正する可能性がある。
(ブラッセル共同事務所)
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
(参考資料)
1. “Biofuels Barometer - May 2006”, EurObserv’ER
http://www.energies-renouvelables.org/observ-er/stat_baro/observ/baro173b.pdf
2. “Directive 2003/30/EC of The European Parliament and of The Council of 8 May 2003
on the promotion of the use of biofuels or other renewable fuels for transport”,
Official Journal L123 p42, 17. 5. 2003
http://ec.europa.eu/energy/res/legislation/doc/biofuels/en_final.pdf
本資料は、(財)石油産業活性化センター石油情報プラザの情報探査で得られた情報を、整理、分析
したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは
[email protected] までお願いします。
Copyright 2006 Petroleum Energy Center all rights reserved
Fly UP