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シトラールまたはシトラール含有組成物において、特

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シトラールまたはシトラール含有組成物において、特
JP 2014-122187 A 2014.7.3
(57)【要約】
【課題】シトラールまたはシトラール含有組成物において、特に加熱または経時的に生成
するシトラールに由来する劣化臭原因物質(シトラール劣化物)の生成を抑制することで、
劣化臭の発生を抑え、シトラール含有組成物の著しい品質低下を防止することができる、
シトラール劣化物の生成抑制剤および生成抑制方法を提供することを目的とする。
【解決手段】シトラール劣化物生成抑制剤として、松葉抽出物またはそれを有効成分とす
る組成物を使用する。
【選択図】なし
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
シトラール若しくはシトラール含有組成物を加熱するか、またはシトラール若しくはシト
ラール含有組成物の経時変化によって生成するシトラール劣化物の抑制剤であって、松葉
抽出物を有効成分とすることを特徴とする、シトラールまたはシトラール含有組成物に対
するシトラール劣化物生成抑制剤。
【請求項2】
シトラール劣化物がp−メチルアセトフェノンである、請求項1に記載するシトラール劣
化物生成抑制剤。
【請求項3】
10
シトラール含有組成物が、シトラールを含有する香料組成物、飲食品組成物、化粧料組成
物、および日用品からなる群から選択されるいずれかである、請求項1または2に記載す
るシトラール劣化物生成抑制剤。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載するシトラール劣化物生成抑制剤を含有するシトラ
ール含有組成物。
【請求項5】
シトラールを含有する香料組成物、飲食品組成物、化粧料組成物、および日用品からなる
群から選択されるいずれかである、請求項4に記載するシトラール含有組成物。
【請求項6】
20
シトラール若しくはシトラール含有組成物を加熱するか、またはシトラール若しくはシト
ラール含有組成物の経時変化によって生成するシトラール劣化物の抑制方法であって、シ
トラールまたはシトラール含有組成物に松葉抽出物を配合することを特徴とする、シトラ
ール劣化物生成抑制方法。
【請求項7】
シトラール劣化物がp−メチルアセトフェノンである、請求項6に記載するシトラール劣
化物生成抑制方法。
【請求項8】
シトラール含有組成物が、シトラールを含有する香料組成物、飲食品組成物、化粧料組成
物、および日用品からなる群から選択されるいずれかである、請求項6または7に記載す
30
るシトラール劣化物生成抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シトラール劣化物の生成抑制剤および生成抑制方法に関する。より詳細には
、シトラールまたはシトラールを含有する組成物において、シトラールの加熱または経時
変化による劣化によって生じる化合物(シトラール劣化物)の生成を抑制し、当該シトラ
ール劣化物から発生する劣化臭(オフノート)を抑制するための製剤およびその方法に関
する。
【背景技術】
40
【0002】
シトラールは、レモン果皮やレモングラスなどに存在する精油成分であり、新鮮なレモ
ン様香気を有するためシトラス系香料の成分として重宝されている。しかしながら、シト
ラールは、熱や光の影響をうけて様々な劣化反応を起こすこと、特に、当該劣化反応はシ
トラス系飲料で採用される酸性条件下で起こりやすいことが知られている。かかるシトラ
ールの劣化によって、シトラール特有のレモン様香気が低減し消失するが、それと同時に
、シトラールの劣化によって生じる化合物(これを、本発明では「シトラール劣化物」と
称する。)に起因して劣化臭(オフノート)が生じる。シトラール劣化物のなかでも、特
に熱劣化によって生じるp−メチルアセトフェノン(p-methylacetophenone)やp−クレ
ゾール(p-cresol)は臭いの閾値が低いため、少量の生成でもシトラールを含む製品の品
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質を著しく低下させる原因となる。
【0003】
このため、従来からシトラールの熱劣化および光劣化反応を抑制することで、劣化臭の
発生を防止するための方法が検討されている。具体的には、シトラールの熱劣化によって
生じるp-cymene、α,p-dimethylstyreneおよびp-cymen-8-olに対してBHT、BHA、お
よびα−トコフェロールなどの抗酸化剤は効果がないこと(非特許文献1);一方、アス
コルビン酸やイソアスコルビン酸はα,p-dimethylstyreneおよびp-cymen-8-olの生成抑制
に効果があること(非特許文献2)が報告されている。また最近では、シトラールの劣化
臭の主な原因とされているp−メチルアセトフェノンの生成抑制に緑茶由来のカテキン類
および紅茶に含まれるポリフェノール成分であるテアフラビン類が、またp−クレゾール
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の生成抑制にテアフラビン類が有効であることが報告されている(非特許文献3)。また
、シトラールの光劣化に対しては、紫外線吸収剤、特にルチンやクロロゲン酸などのUV
-A領域(320−400nm)に吸収を有する物質や、アスコルビン酸などのラジカル消去剤が
有効であることが報告されている(非特許文献4および5)。
【0004】
その他、シトラールの劣化臭生成抑制方法として、明日葉、アボカド、オオバコ、半発
酵茶葉、エビスグサ、およびサンザシからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒抽
出物;カリン、マンゴー、マンゴスチン、ミロバラン、ザクロ、またはカカオから溶媒抽
出された抽出物;シソ科メンタ属ミント、キク科アルテミシア属ヨモギ、ミカン亜科シト
ラス属オレンジ、ミカン亜科シトラス属レモン、ミカン亜科シトラス属グレープフルーツ
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から溶媒抽出された抽出物を、劣化臭生成抑制剤として使用する方法(特許文献1∼3)
、茶類抽出液成分、特にカメリアやシネンシスの抽出液成分を酸化酵素で処理して得られ
る生成物を劣化臭生成抑制剤として使用する方法(特許文献4)、シトラールまたはシト
ラール含有製品に、抗酸化性成分と遷移金属イオンを含有させることでシトラールに由来
する劣化臭成分の生成を抑制する方法(特許文献5)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−280539号公報
【特許文献2】特開2002−180081号公報
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【特許文献3】特開2002−255778号公報
【特許文献4】国際公開WO2009/011271号パンフレット
【特許文献5】特開2004−123788号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K. Kimura, et al., J. Agric. Food Chem.,31, 801-804 (1983)
【非特許文献2】V. E. Peacock, et al., J. Agric. Food Chem., 33, 330-335 (1985)
【非特許文献3】T. Ueno, et al., J. Agric. Food Chem., 54, 3055-3061 (2006)
【非特許文献4】稲葉治;月刊フードケミカル, 13(7), 23-27 (1997)
【非特許文献5】H. Tateba, et al., Royal Society of Chemistry, Cambridge, U.K.,
40
1996, pp.82-85
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術における問題点に鑑み、シトラールまたはシトラール含有組成
物において、特に加熱または経時的に生成するシトラールに由来する劣化臭原因物質(シ
トラール劣化物)の生成を抑制することで、劣化臭の発生を抑え、シトラール含有組成物
の著しい品質低下を防止することができる、シトラール劣化物の生成抑制剤および生成抑
制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
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【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、加熱によるシトラールの劣化抑制方法について
検討したところ、シトラールまたはシトラール含有組成物に松葉抽出物を添加しておくこ
とで、劣化臭の主な原因物質であるp−メチルアセトフェノンの生成が有意に抑制できる
ことを見出した。また本発明者らは、当該松葉抽出物によれば、シトラールを長期保存し
た場合に生じる劣化臭の原因物質であるp−メチルアセトフェノンの生成をも有意に抑制
できることを確認した。
【0009】
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施形態を包含するもの
である。
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【0010】
(I)シトラール劣化物生成抑制剤
(I-1)シトラール若しくはシトラール含有組成物を加熱するか、またはシトラール若し
くはシトラール含有組成物の経時変化によって生成するシトラール劣化物の抑制剤であっ
て、松葉抽出物を有効成分とすることを特徴とするシトラール劣化物生成抑制剤。
(I-2)上記シトラール劣化物がp−メチルアセトフェノンである、(I-1)に記載するシ
トラール劣化物生成抑制剤。
(I-3)上記シトラール含有組成物が、シトラールを含有する香料組成物、飲食品組成物
、化粧料組成物、および日用品からなる群から選択されるいずれかである、(I-1)また
は(I-2)に記載するシトラール劣化物生成抑制剤。
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【0011】
なお、ここで「経時変化によって生成するシトラール劣化物」とは、シトラール若しく
はシトラール含有組成物を室温(20℃)以上の温度条件で保存した場合に、シトラール
が変質(劣化)することによって生じる劣化臭の原因となる化合物を意味する。
【0012】
(II)シトラール含有組成物
(II-1)(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載するシトラール劣化物生成抑制剤を含有す
るシトラール含有組成物。
(II-2)シトラールを含有する香料組成物、飲食品組成物、化粧料組成物、および日用品
からなる群から選択されるいずれかである、(II-1)に記載するシトラール含有組成物。
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【0013】
(III)シトラール劣化物生成抑制方法
(III-1)シトラール若しくはシトラール含有組成物を加熱するか、またはシトラール若
しくはシトラール含有組成物の経時変化によって生成するシトラール劣化物の抑制方法で
あって、シトラールまたはシトラール含有組成物に松葉抽出物を配合することを特徴とす
る、シトラールまたはシトラール含有組成物におけるシトラール劣化物生成抑制方法。
(III-2)シトラール劣化物がp−メチルアセトフェノンである、(III-1)に記載するシ
トラール劣化物生成抑制方法。
(III-3)シトラール含有組成物が、シトラールを含有する香料組成物、飲食品組成物、
化粧料組成物、および日用品からなる群から選択されるいずれかである、(III-1)また
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は(III-2)に記載するシトラール劣化物生成抑制方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシトラール劣化物生成抑制剤をシトラールまたはシトラール含有組成物に添加
して使用することで、経時的または加熱によってシトラールが劣化することで発生する化
合物(シトラール劣化物)の生成が抑制され、その結果、シトラール劣化物を原因とする
劣化臭の発生を抑えることができる。特に本発明のシトラール劣化物生成抑制剤およびシ
トラール劣化物生成抑制方法は、シトラール劣化物の中でも、劣化臭の主な原因物質とさ
れているp−メチルアセトフェノンの生成抑制効果に優れている。
【0015】
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かかる本発明の効果により、シトラール劣化物生成抑制剤を配合したシトラールまたは
シトラールを含有する組成物(香料組成物、飲食品組成物、化粧料組成物、日用品など)
は、その製造、流通、または保存において経時的に生じ得る劣化臭の発生が有意に抑制さ
れてなり、その結果、比較的長期間にわたり、劣化臭で香気が損なわれることのないシト
ラール含有組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実験例1において、シトラール溶液を、松葉抽出物の共存条件下(0%∼95%
エタノール抽出液を、固形量換算5∼60ppm添加)、または非共存条件下(ブランク
)で、40℃または50℃で3日間保存した後に、p−メチルアセトフェノンの生成量を
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測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(I)シトラール劣化物生成抑制剤
本発明のシトラール劣化物生成抑制剤は、松葉抽出物を有効成分とすることを特徴とす
る。
【0018】
松葉抽出物の材料として使用する松葉は、マツ科マツ属に属する植物(マツ)の葉であ
ればよく、マツの種類は特に制限されるものではない。例えば、マツの種類として、Pinu
s albicaulis、イガゴヨウ(Pinus aristata)、Pinus attenuata、Pinus balfouriana、バ
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ンクスマツ(Pinus banksiana)、シロマツ(Pinus bungeana)、ヨーロッパハイマツ(Pinus
cembra)、Pinus cembroides、Pinus clausa、ロッジポールマツ(Pinus contorta)、オオ
ミマツ(Pinus coulteri)、アカマツ(Pinus densiflora)、エキナタマツ(Pinus echinata)
、Pinus edulis、スラッシュマツ(Pinus elliottii)、Pinus engelmannii、フレキシマツ
(Pinus flexilis)、Pinus glabra、ボスニアマツ(Pinus heldreichii)、Pinus jeffreyi
、サトウマツ(Pinus lambertiana)、ブリスルコーンパイン(Pinus longaeva)、タイワン
アカマツ(Pinus massoniana)、アメリカヒトツバマツ(Pinus monophylla)、アメリカミヤ
マゴヨウ(Pinus monticola)、モンタナマツ(Pinus mugo)、ビショップマツ(Pinus murica
ta)、ヨーロッパクロマツ(Pinus nigra)、ダイオウマツ(Pinus palustris)、ゴヨウマツ(
Pinus parviflora)、Pinus pungens、Pinus quadrifolia、ラジアータマツ(Pinus radiat
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a)、レジノサマツ(Pinus resinosa)、リギダマツ(Pinus rigida)、Pinus sabiniana、Pin
us serotina、Pinus strobiformis、ストローブマツ(Pinus strobus)、ヨーロッパアカマ
ツ(Pinus sylvestris)、チュウゴクアカマツ(Pinus tabulaeformis)、テーダマツ(Pinus
taeda)、クロマツ(Pinus thunbergiana)、Pinus torreyana、バージニアマツ(Pinus virg
iniana)、Pinus yuannensis、およびPinus washoensisを挙げることができる。好ましく
は、アカマツ(Pinus densiflora)、タイワンアカマツ(Pinus massoniana)、チュウゴクア
カマツ(Pinus tabulaeformis)、およびヨーロッパアカマツ(Pinus sylvestris)などのア
カマツに属する植物を挙げることができる。より好ましくはアカマツおよびタイワンアカ
マツである。
【0019】
40
なお、アカマツ(Pinus densiflora Sieb. et Zuee.[Japanese red pine])の葉は、日
本薬局方掲載外の生薬として従来からリウマチ、脚気、凍傷の予防治療薬として用いられ
ている。
【0020】
松葉は、そのまま(生)若しくは破砕物として抽出操作に付してもいいし、また乾燥後
、必要に応じて粉砕若しくは粉体状として抽出操作に付してもよい。なお、松葉の乾燥粉
末は、商業的に入手することが可能である。
【0021】
抽出溶媒としては、例えば、水、有機溶媒またはこれらの混合物を挙げることができる
。有機溶媒としては特に制限されるものではないが、本発明のシトラール劣化物生成抑制
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物を適用する対象物の種類に応じて、例えばメタノール,エタノール,プロパノールおよ
びブタノール等の炭素数1∼4の低級アルコール;酢酸エチルエステル等の低級アルキル
エステル;エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリ
ンなどのグリコール類;その他エチルエーテル、アセトン、酢酸等の極性溶媒のなかから
適宜選択することができる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わ
せて使用することもできる。例えば必要に応じて上記有機溶媒に適量の水を加えて含水有
機溶媒として用いることもでき、かかるものとしては好適に水と低級アルコールの混合溶
媒を挙げることができる。
【0022】
本発明において、抽出溶媒としてより好ましくは水、低級アルコール(好ましくはエタ
10
ノール)、または水と低級アルコール(好ましくはエタノール)との混合液であり、混合
液の場合10∼98容量%程度のエタノール含有水溶液を例示することができる。当該エ
タノール含有水溶液中のエタノール含有量として、好ましくは20∼98容量%程度、よ
り好ましくは30∼98容量%程度、さらに好ましくは40∼98容量%程度、よりさら
に好ましくは50∼98容量%程度、特に好ましくは60∼98容量%程度、とりわけ好
ましくは70∼98容量%程度である。
【0023】
抽出方法としては、一般に用いられる方法が採用でき、例えばエキス剤、エリキシル剤
、浸剤・煎剤、流エキス剤およびチンキ剤等の各種生薬製剤の調製に用いられる抽出方法
を広く挙げることができる。制限はされないが、例えば溶媒中に上記の松葉(そのまま(
20
生)若しくは粗末、細切物)、またはそれらの乾燥破砕物(粉末など)を冷浸(通常1∼
25℃)や温浸(通常35∼45℃)等によって浸漬する方法、加温し撹拌しながら抽出
を行い、濾過して抽出液を得る方法、またはパーコレーション法(通常1∼30℃程度)
等を挙げることができる。
【0024】
得られた抽出液は、必要に応じてろ過または遠心分離によって固形物を除去した後、使
用の態様により、そのまま用いるか、または溶媒を留去して一部濃縮して軟エキスとして
、若しくは減圧乾燥や凍結乾燥等の通常の手段により乾燥して、エキス乾燥物として使用
することもできる。また濃縮ないしは乾燥後、得られる濃縮物乃至は乾燥物を非溶解性溶
媒で洗浄して精製して用いても、またこれを更に適当な溶剤に溶解もしくは懸濁して用い
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ることもできる。
【0025】
斯くして調製される松葉抽出物は、そのまま本発明のシトラール劣化物生成抑制剤とし
て、シトラールまたはシトラール含有組成物に添加・配合などして使用することができる
が、製剤化して使用することもできる。
【0026】
製剤化方法は、特に制限されないが、例えば水、有機溶媒(アルコール、グリセリン、
プロピレングリコール)またはこれらの混合物などの所望の溶媒に溶解させて液剤とする
方法;液剤にデキストリンなどの賦形剤を配合してペースト状製剤にする方法;ペースト
状製剤をさらに顆粒化または打錠して顆粒剤または錠剤にする方法;上記液剤を噴霧乾燥
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または凍結乾燥することでパウダー状製剤(粉末製剤)とする方法;さらに上記液剤に乳
化剤ととともに油脂類を添加し分散・乳化させることでエマルジョン製剤とする方法を挙
げることができ、用途に応じて所望の剤型を適宜選択採用することができる。
【0027】
本発明のシトラール劣化物生成抑制剤が適用されるシトラール含有組成物は、シトラー
ルを香気成分として含有する組成物であり、シトラール含有香料組成物、シトラール含有
飲食品組成物、シトラール含有化粧料組成物、およびシトラール含有日用品を挙げること
ができる。
【0028】
シトラール含有香料組成物としては、柑橘系、特にシトラス系香料製剤を挙げることが
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できる。シトラール含有飲食品組成物としては、制限されないが、炭酸飲料、果汁飲料、
乳性飲料、清涼飲料、茶飲料等のシトラス系飲料;酎ハイやカクテルなどのシトラス系ア
ルコール飲料;ヨーグルト、ゼリー、アイスクリームなどのシトラス系冷菓;キャンディ
ー、ガム、チョコレート、焼菓子などのシトラス系菓子類;その他、シトラス系風味のソ
ースやドレッシング等を挙げることができる。シトラール含有化粧料組成物としては、基
礎化粧料、おしろい、ファンデーション、口紅、香水、ボディー化粧料などのシトラス系
化粧料を挙げることができる。さらに、シトラール含有日用品としては、洗口剤や歯磨き
などのシトラス系オーラルケア用品;衣類用洗剤、台所用洗剤、トイレ用洗剤、浴室用洗
剤などのシトラス系洗剤;ボディケア用品(固形石鹸、ハンドソープ、ボディソープなど
)、スキンケア用品(ハンドクリーム、リップクリーム、日焼け止めクリーム、制汗剤、
10
保湿パックなど)、ヘアケア用品(シャンプー、コンディショナー、ヘアカラー、ヘアス
プレー、ヘアワックス、育毛剤など)、入浴剤、アロマ用品、芳香剤などのシトラス系日
用品を例示することができる。
【0029】
これらのシトラール含有香料組成物におけるシトラールの含有割合は、シトラールの匂
いの閾値以上、具体的には100ppt以上であればよいが、好ましくは1ppb以上、
より好ましくは5ppb以上の割合で、製品の種類や目的に応じて適宜設定することがで
きる。
【0030】
これらのシトラールまたはシトラール含有組成物に配合する本発明のシトラール劣化物
20
生成抑制剤の配合割合としては、シトラールまたはシトラール含有組成物において、本発
明の効果であるシトラール劣化物の生成が抑制できる割合であればよく、その限りにおい
て特に限定されるものではない。例えば、本発明のシトラール劣化物生成抑制剤の配合量
を、その有効成分である松葉抽出物の割合(固形物換算)に換算した場合、シトラールま
たはシトラール含有組成物中の最終濃度が、1ppm以上、好ましくは2ppm以上、よ
り好ましくは5ppm以上となるような割合を挙げることができる。なお、その上限値は
、シトラール劣化物生成抑制剤(松葉抽出物)の配合量が多いほどシトラール劣化物の生
成を抑制する傾向にあるため、特に制限されず、シトラール含有組成物の実用性及び経済
性等の観点から適宜設定することができる。例えば、シトラール含有組成物が香料組成物
である場合のシトラール劣化物生成抑制剤の配合量は、松葉抽出物の割合(固形物換算)
30
に換算して1∼50,000ppmの範囲、以下同様に、飲食品組成物である場合は1∼
200ppmの範囲、化粧料組成物である場合は1∼500ppmの範囲、日用品である
場合は1∼500ppmの範囲から適宜設定調整することができる。
【0031】
また、シトラールまたはシトラール含有組成物に含まれるシトラールの量に対するシト
ラール劣化物生成抑制剤の割合としては、松葉抽出物の割合(固形物換算)に換算した場
合、シトラール1質量部に対して2質量部以上、好ましくは5質量部以上を挙げることが
できる。
【0032】
なお、本発明において「シトラール劣化物」とは、シトラールが経時的または加熱によ
40
って分解し生成する化合物であり、特に劣化臭の原因となる化合物を挙げることができる
。好ましくは匂いの閾値が2.7−10.8ng/L air程度と低く、シトラールの劣
化臭として知られているp−メチルアセトフェノンを挙げることができる。
【0033】
(II)シトラール含有組成物
本発明のシトラール含有組成物は、前述するシトラール劣化物生成抑制剤を含有するこ
とにより、経時的または加熱によるシトラールの劣化によって生じるシトラール劣化物の
生成が抑制されて、シトラール劣化物に起因する劣化臭の発生が抑えられてなることを特
徴とする組成物である。
【0034】
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ここで「シトラール劣化物」とは、前述するように、シトラールが経時的または加熱に
よって分解し生成する化合物であり、特に劣化臭の原因となる化合物を挙げることができ
る。好ましくはp−メチルアセトフェノンである。
【0035】
本発明のシトラール含有組成物は、シトラールを香気成分として含有する組成物であり
、シトラール含有香料組成物、シトラール含有飲食品組成物、シトラール含有化粧料組成
物、およびシトラール含有日用品を挙げることができる。これらの組成物の詳細は、上記
(I)にて前述した通りである。より好ましくは、シトラール含有香料組成物、およびシ
トラール含有飲食品組成物である。
【0036】
10
これらのシトラール含有香料組成物におけるシトラールの含有割合は、シトラールの匂
いの閾値以上、具体的には100pptであればよいが、好ましくは1ppb以上、より
好ましくは5ppb以上の割合で、製品の種類や目的に応じて適宜設定することができる
。
【0037】
本発明のシトラール含有組成物に含まれているシトラール劣化物生成抑制剤の割合とし
ては、シトラール劣化物生成抑制剤を含むことにより本発明の効果であるシトラール劣化
物の生成が抑制できる割合であればよく、その限りにおいて特に限定されるものではない
。例えば、シトラール含有組成物中のシトラール劣化物生成抑制剤の濃度を、その有効成
分である松葉抽出物の割合(固形物換算)に換算すると、1ppm以上、好ましくは2p
20
pm以上、より好ましくは5ppmを挙げることができる。なお、その上限値は、シトラ
ール劣化物生成抑制剤(松葉抽出物)の配合量が多いほどシトラール劣化物の生成を抑制
する傾向にあるため、特に制限されず、シトラール含有組成物の実用性及び経済性等の観
点から適宜設定することができる。例えば、シトラール含有組成物が香料組成物である場
合のシトラール劣化物生成抑制剤の配合量は、松葉抽出物の割合(固形物換算)に換算し
て1∼50,000ppmの範囲、以下同様に、飲食品組成物である場合は1∼200p
pmの範囲、化粧料組成物である場合は1∼500ppmの範囲、日用品である場合は1
∼500ppmの範囲から適宜設定調整することができる。
【0038】
またシトラール含有組成物に含まれるシトラールの量に対するシトラール劣化物生成抑
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制剤の割合としては、松葉抽出物の割合(固形物換算)に換算した場合、シトラール1質
量部に対して2質量部以上、好ましくは5質量部以上を挙げることができる。
【0039】
(III)シトラール劣化物生成抑制方法
本発明のシトラール劣化物生成抑制方法は、シトラールまたはシトラール含有組成物に
松葉抽出物を配合することを特徴とする。
【0040】
ここで使用する松葉抽出物は、その材料として使用する松葉の種類および形状、松葉抽
出物の抽出方法、松葉抽出物の状態および形態は、いずれも上記(I)に記載した通りで
あり、(I)の記載を援用することができる。
40
【0041】
本発明の方法が適用されるシトラール含有組成物は、シトラールを香気成分として含有
する組成物であり、シトラール含有香料組成物、シトラール含有飲食品組成物、シトラー
ル含有化粧料組成物、およびシトラール含有日用品を挙げることができる。その詳細は上
記(I)に記載した通りであり、(I)の記載を援用することができる。
【0042】
これらのシトラールまたはシトラール含有香料組成物に配合する松葉抽出物の配合割合
としては、シトラールまたはシトラール含有組成物において、本発明の効果であるシトラ
ール劣化物の生成が抑制できる割合であればよく、その限りにおいて特に限定されるもの
ではない。例えば、シトラールまたはシトラール含有組成物中の松葉抽出物の最終濃度が
50
(9)
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、乾燥物換算で1ppm以上、好ましくは2ppm以上、より好ましくは5ppmとなる
ような割合を挙げることができる。なお、その上限値は、シトラール劣化物生成抑制剤(
松葉抽出物)の配合量が多いほどシトラール劣化物の生成を抑制する傾向にあるため、特
に制限されず、シトラール含有組成物の実用性及び経済性等の観点から適宜設定すること
ができる。例えば、シトラール含有組成物が香料組成物である場合のシトラール劣化物生
成抑制剤の配合量は、松葉抽出物の割合(固形物換算)に換算して1∼50,000pp
mの範囲、以下同様に、飲食品組成物である場合は1∼200ppmの範囲、化粧料組成
物である場合は1∼500ppmの範囲、日用品である場合は1∼500ppmの範囲か
ら適宜設定調整することができる。
【0043】
10
またシトラールまたはシトラール含有組成物に含まれるシトラールの量に対する松葉抽
出物の割合としては、固形物換算で、シトラール1質量部に対して2質量部以上、好まし
くは5質量部以上を挙げることができる。
【0044】
なお、本発明方法において「シトラール劣化物」とは、前述する通りシトラールが経時
的または加熱によって分解し生成する化合物であり、特に劣化臭の原因となる化合物を挙
げることができる。例えばp−メチルアセトフェノンである。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実験例および実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれ
20
らの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0046】
実験例1 p−メチルアセトフェノン生成抑制試験
シトラール含有酸糖液(pH3)に各種被験試料を添加して、これを恒温機中で40℃
または50℃で保存し、保存後にHPLCによりシトラール含有酸糖液中のp−メチルア
セトフェノン(p−MAP)の生成量を測定し、被験試料のp-MAP生成抑制作用を評
価した。
【0047】
(1)被験試料の調製
徳島産アカマツ(Pinus densiflora)の葉の乾燥粉末100gに、水(0% EtOH
30
)、またはエタノールを10、30、50、70または95容量%の割合で含有する含水
エタノール(10% EtOH、30% EtOH、50% EtOH、70% EtOH、
95% EtOH)を800g配合し、撹拌しながら、70℃で5時間かけて抽出を行っ
た。抽出後、固液分離を行って、固形分(抽出残渣)を除去し、松葉抽出液を取得した。
これを被験試料とした。
【0048】
尚、各被験試料は、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製)にて、乾燥固形分を
測定した。
【0049】
(2)シトラール含有酸糖液の調製
40
試験に使用するシトラール含有酸糖液の処方を下記に示す。
【0050】
下記に示す各成分を下記の割合で配合して、水にて100質量%となるように調製した
。
<シトラール含有酸糖液の処方>
果糖ぶどう糖液糖 13 質量%
クエン酸 0.2質量%
クエン酸3Na 適量にてpH3に調整
1%シトラール 0.5質量% 水にて 合計100 質量%。
50
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【0051】
(3)試験方法
50mLガラススクリュー管に上記のシトラール含有酸糖液を40g入れた後、各種の
被験試料(0%EtOH抽出液、10%EtOH抽出液、30%EtOH抽出液、50%
EtOH抽出液、70%EtOH抽出液、95%EtOH抽出液)を、それぞれ乾燥固形
物換算で、5∼60ppmの割合で、添加した。これを恒温機中で40℃または50℃の
条件下で3日間保存した。保存後、試料を室温まで冷却するのを待ち、冷却後、下記条件
のHPLCに供して、p−MAPの生成量を測定した。また比較試験として、被験試料を
入れずにシトラール含有酸糖液40gそのままを冷蔵遮光保存した試料(コントロール)
と恒温機中で40℃または50℃の条件下で3日間保存した試料(ブランク)についても
10
同様にHPLCに供して、p−MAPの生成量を測定した。なお、p−MAPの生成量は
、HPLCのクロマトグラムにおけるピーク面積として求めた。
【0052】
<HPLC測定条件>
カラム: Cadenza CD−C18,4.6×150mm (Imtakt製)
移動相: A液(0.1% リン酸水溶液)55%およびB液(アセトニトリル)45%
のアイソクラティック溶出
流速: 1.0ml/min
検出波長: 254nm
カラム温度: 40℃
試料注入量: 20μl。
【0053】
(4)試験結果
結果を表1および図1に示す。
【0054】
20
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【表1】
10
20
【0055】
この結果から分かるように、シトラール含有酸糖液に松葉抽出物を配合することで、加
熱によって生じる劣化臭の原因物質(シトラール劣化物)であるp−MAPの生成を抑制
30
することができる。その効果は添加する松葉抽出物の用量に依存しており、また松葉抽出
物として、エタノールを例えば50容量%以上、好ましくは70容量%以上、より好まし
くは90容量%以上と、高濃度で含む含水エタノールで松葉から抽出したエキスを用いる
ことが好ましいことが確認された。
【0056】
実施例1 香料製剤(オレンジ香料)
下記成分を下記処方の割合(質量%)で混合して、撹拌溶解し劣化し難い香料製剤(オ
レンジ香料)を調製した。なお、下記成分のうち、オレンジオイル、レモンオイル中にシ
トラールが含まれている(香料製剤中のシトラール総量 0.0002%)
オレンジオイル 7.00(質量%)
40
オレンジ果汁 2.00
レモンオイル 1.00
松葉抽出物(50%EtOH抽出液:固形分3.5%) 5.00
L−アスコルビン酸 0.04
95容量%エタノール 50.00
イオン交換水 34.96 合 計 100.00%。
【0057】
実施例2 香料製剤(グレープフルーツ香料)
下記成分を下記処方の割合(質量%)で混合して、撹拌溶解し劣化し難い香料製剤(グ
50
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レープフルーツ香料)を調製した。なお、下記成分のうち、オレンジオイル、レモンオイ
ル中にシトラールが含まれている(香料製剤中のシトラール総量0.0005%)
グレープフルーツオイル 3.0(質量%)
オレンジオイル 1.5
オレンジエッセンス 0.3
レモンオイル 0.2
濃縮アプリコットフレーバー 5.0
松葉抽出物(70%EtOH抽出液:固形分3.6%) 7.0
95容量%エタノール 37.0
オレンジチンキ 42.0
10
イオン交換水 6.0 合 計 100.0%。
【0058】
実施例3 香料製剤(レモン香料)
下記成分を下記処方の割合(質量%)で混合して、撹拌溶解し劣化し難い香料製剤(レ
モン香料)を調製した。なお、下記成分のうち、オレンジオイル、レモンオイル中にもシ
トラールが含まれている(香料製剤中のシトラール総量0.055%)
オレンジオイル 20.50(質量%)
レモンオイル 10.00
シトラール 0.05
20
ゲラニルアセテート 0.20
リナロール 0.10
95容量%エタノール 64.15
松葉抽出物(50%EtOH抽出液:固形分3.5%) 5.00
合計 100.00%。
【0059】
実施例4 オレンジ果汁入り飲料
濃縮オレンジ果汁 4.40(質量%)
果糖ぶどう糖液糖 6.00
砂糖 4.00
30
クエン酸 0.15
クエン酸3ナトリウム 0.02
L‐アスコルビン酸 0.03
実施例1のオレンジ香料 0.10 イオン交換水で合計 100.00%
実施例4のオレンジ果汁入り飲料は、松葉抽出物無添加のオレンジ果汁入り飲料と比較
して、40℃・1ヶ月保存後の劣化臭を有意に抑制していたことを確認した。
【0060】
実施例5 フレーバーウォーター(レモン風味)
果糖ぶどう糖液糖 6.00(質量%)
40
砂糖 2.00
クエン酸 0.18
クエン酸3ナトリウム 0.02
実施例3のレモン香料 0.05 イオン交換水で合計 100.00%
実施例5のフレーバーウォーター(レモン風味)は、松葉抽出物無添加のフレーバーウ
ォーター(レモン風味)と比較して、40℃・1ヶ月保存後の劣化臭を有意に抑制してい
たことを確認した。
【0061】
実施例6 化粧水
50
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95容量%エタノール 10.0(質量%)
POE(60)硬化ヒマシ油 2.0
メチルパラベン 0.1
香料(シトラール含有品) 0.1
グリセリン 10.0
松葉抽出物(50%EtOH抽出液:固形分3.5%) 5.0
イオン交換水 72.8 イオン交換水にて合計 100.0%
実施例6の化粧水は松葉抽出物無添加の化粧水と比較して、室温・6ヶ月保存後の劣化
臭を有意に抑制していたことを確認した。
10
【0062】
実施例7 洗口剤
95容量%エタノール 10.0(質量%)
グリセリン(85%) 10.0
プロピレングリコール 2.0
クエン酸 3.0
クエン酸ナトリウム 6.0
キシリット 3.0
ポリ(オキシエチレン)(20)セチルエーテル 2.0
デキストラナーゼ 0.1
20
フッ化ナトリウム 0.2
サッカリンナトリウム 0.1
安息香酸ナトリウム 0.2
香料(シトラール含有品) 0.7
松葉抽出物(30%EtOH抽出液:固形分3.2%) 6.0
イオン交換水にて合計 100.0%
実施例7の洗口剤は松葉抽出物無添加の洗口剤と比較して、室温・6ヶ月保存後の劣化
臭を有意に抑制していたことを確認した。
【0063】
実施例8 歯磨き剤
30
無水ケイ酸 10.0(質量%)
ソルビトール液(70%) 35.0
サッカリンナトリウム 0.2
グリセリン 15.0
ポリエチレングリコール 6.0
増粘性シリカ 3.5
キサンタンガム 0.2
カラギーナン 0.2
カルボキシメチルセルロース 0.6
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
香料(シトラール含有品) 1.0
松葉抽出物(50%EtOH抽出液:固形分3.5%) 4.0 イオン交換水にて 100.0%
実施例8の歯磨き剤は松葉抽出物無添加の歯磨き剤と比較して、室温・6ヶ月保存後の
劣化臭を有意に抑制していたことを確認した。
40
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【図1】
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