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一括ダウンロード - Nomura Research Institute

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一括ダウンロード - Nomura Research Institute
10 年01月号
Vol.7
本誌に掲載されているあらゆる内容の無
断転載・複製を禁じます。すべての内容は
日本の著作権法および国際条約により保
護されています。
Copyrightⓒ2009 Nomura Research Institute,
Ltd. All rights reserved. No reproduction or
republication without written permission.
2010 年の展望
野村総合研究所のコンサルタントが、多様な専門的見地から、毎回一つのテーマを軸に論考を発
信。領域を超えた共通の視点や枠組みを導き出し、ビジネスの本質に迫ります。
新たな時代の節目ともいえる 2010 年を迎えます。先行き不透明な経済情勢の中で幕を開けた
2009 年は、前半に新型インフルエンザというグローバル規模の新たなリスク事象が顕在化し、後半
には国内で政権交代が実現するなど、国家・企業の戦略上、考慮すべき前提条件が激変しました。
一方、多くの業界で、人口減少による国内市場の縮小が進行しています。2010 年の国政・企業経営
には、こうしたダイナミックかつ趨勢的な変化を機敏に捉え、耐性の強化と新たな舵取りが求められ
ます。本稿では、具体的な方策を示しながら、各分野で先行する新たな胎動を展望します。
■ 攻めのグループ経営の構築
谷山 大介/尾本 巧
昨今の社会環境変化に対応するには、不況期に耐えうる事業構造改革を進め、中長期を見据えたグ
ループの経営資源の重点配分が不可欠である。NRI が 09 年 3~4 月に実施した「日本企業のグルー
プ経営に関するアンケート調査」をもとに、グループ経営の課題を指摘し、経営陣、本社部門に対し、
ポートフォリオ戦略の枠組みの再設計と、グループシナジーを創出する仕掛けを提案する。
■ 交通インフラ企業の海外市場への参入
小長井 教宏
成長の限界が見えつつある国内の交通インフラ企業にとって、インフラの整備が急ピッチで進む海外
市場は、新たな成長機会として重要性を増している。しかし、運営、維持管理の領域では、海外展開
が十分には進んでいない。わが国企業の経験やノウハウを活かし、海外の成長を取り込むためには、
海外事業特有の課題を解決するとともに、海外での実績を早々に積み上げていく必要がある。
■ 意識内上流化する生活者
石原 進一
世界的な不況の中、生活者は賢く慎重に消費し、厳しい経済環境を乗り切る工夫を重ねている。この
ような状況において、生活者の「世間一般と比較した自分の生活レベル」に対する意識は、実際の経
済状況とは関係なく上昇している。本稿では、この現象を生活者の「意識内上流化」と呼び、変化する
生活者の消費意識と行動について考察する。
■ 今まさに求められる長期国家戦略
山口 高弘/岡村 篤
日本では人口減少という経済成長への制約条件が強まっており、今後もその傾向が反転する見込み
はない。このような厳しい社会環境下において、持続的成長を維持するには、長期国家戦略、すなわ
ち、少なくとも 20 年先の国家ビジョンを実現するための長期のシナリオが必要である。経済成長を導く
ための戦略課題を早急に明確化し、解決のための処方箋を描き、実践しなければならない。
■ 次世代社会システムのあり方
水石 仁/宇都 正哲
近年、地球温暖化の進行や人口減少・高齢化、パンデミックの頻度の高まり、自然災害の激化といっ
たマクロトレンドの影響が、従来よりも広範囲かつ大規模に及び始めている。リスクや不確実性が高ま
る社会においては、事象が起きてから対応するのでは手遅れであり、マクロトレンドの変化を念頭に置
いて、社会制度設計や企業の経営戦略・事業戦略を抜本的に見直す必要がある。
10 年 1 月号
攻めのグループ経営の構築
株式会社野村総合研究所 経営戦略コンサルティング部
主 任 コン サ ル タン ト 谷 山 大 介 /副 主 任 コン サルタン ト 尾 本 巧
のグループ経営に関するアンケート調査」1を実施した。
本稿では、当該調査の結果を踏まえて、今、グループ経
営について日本企業が取り組むべき課題を提言したい。
上記アンケート調査において、「グループ内における
理想的関係構築ができている事業部門・構成会社の割
合」を尋ねたところ、「理想的な関係にある事業部門・グ
ループ会社は半数以下」と回答している企業の割合が
31.7%であった(図1)。
90 年代後半より、グループ経営という言葉が一般化し、
多くの企業が「選択と集中」や「権限委譲」などをキーワ
ードに、グループ経営改革に取り組んできた。しかし、依
然、30%超の会社がグループ内の関係構築に解決すべ
き課題を抱えている。他の質問項目でその原因を尋ね
たところ、問題を抱える企業の約 50%から「グループ内
での各社の役割・ミッションが不明確」との回答を得た。
1.求められるグループ経営の姿勢
1)日本企業を取り巻く環境
経済危機の影響により、日本企業の業績は、2008 年
度に続き、09 年度も大変に厳しい。一方で、短期的な環
境変化だけではなく、少子高齢化・人口減社会の本格
化や経済のグローバル化に伴う海外企業との競争激化
など、マザーマーケットである日本市場における長期的
な環境変化も激しさを増している。
現在の経営環境に対応するためには、コスト削減や在
庫調整、資産リストラといった「守り」を固めながら不況期
に耐えうる事業構造改革を進め、中長期を見据えてグル
ープの経営資源を重点配分することが不可欠である。こ
の一連のプロセスを適切かつ迅速に遂行するためには、
グループの経営状況を見える化し、取り組むべき優先課
題を明確化することが求められる。それに加え、グルー
プ経営を担う本社機能は、グループ会社に対して適切
な働きかけを行なっていく必要がある。
図1 企業グループ内で理想的関係が構築できている
事業部門・グループ会社の割合
0
2)グループ経営の失敗による悪循環
NRI では、グループ再編やグループ経営に関する課
題解決を目的としたコンサルティングについて、多くの受
託実績がある。その場合に問題となるのが、グループの
戦略や方針に対する個々のグループ会社の位置付けで
ある。対象企業グループの事業内容を精査していくと、
利益率が低い事業が、実は主力事業の競争力に大きく
寄与していたり、中長期的視点でグループ戦略の重要
な役割を担っていたりすることがある。しかし、事業の戦
略的な位置付けが不明確であるがゆえに、当該事業が
過度に低い業績評価を受けたり、過去の経緯に縛られ
た事業運営が行われたりしている。こうして、当該事業会
社では、社員のモチベーションが低下し、さらに経営状
態の悪化を招くという悪循環に陥り、その結果、グループ
戦略全体の歯車が狂っていくのである。
上記の問題意識をもとに、NRI は、グループ経営を担
う本社機能が果たすべき役割を明らかにするために、09
年 3~4 月に約 2,200 社の企業を対象として「日本企業
10
20
13.7
18.0
30
40
50
27.3
60
70
23.0
80
90
100 (%)
18.0
31.7%
理想的関係にある事業部門・構成会社は全体の25%未満。総じて理想的な関係までいたっていない。
25%以上50%未満
50%以上75%未満
75%以上90%未満
全体の90%以上。ほぼ全ての事業部門・構成会社と理想的な関係にある。
2.グループ経営の課題と果たすべき役割
前項で述べた悪循環や問題を解消するためにも、グ
ループ会社のミッションを明確にする必要がある。そこで、
NRI では、グループ経営を担う経営陣、本社部門に対し、
ポートフォリオ戦略の枠組みの再設計、そして、グルー
プシナジーを創出する仕掛けを提案したい。
1
当該調査は 09 年 2~3 月に、東証1部・2部上場企業 2,089 社の
経営企画部門を対象に実施した。有効回答数は 140 社(回答率
6.7%)であった。
-1当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
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10 年 1 月号
力」のバランスをとることが必要である。「遠心力」とは、権
限委譲や役割の明確化により、個々の事業を自主的に
拡大する力を伸ばすことである。「求心力」とは、グルー
プの共通ブランドの育成やガバナンス体制の充実等に
より、個々の事業を一つにまとめる力のことである。
この「遠心力」と「求心力」に加え、「グループシナジ
ー」もグループの基盤づくりには極めて重要である。シナ
ジーとは、複数の事業間で発揮される相乗効果のことで
あり、コスト削減だけでなく、売上向上にも貢献する。コス
ト削減では、物流インフラ、情報システム、間接機能や各
種ノウハウ(生産技術等)の共有化等による効果が該当
する。売上向上では、相互顧客へのクロスセル、融合領
域での商品開発などが該当する。シナジーは、複数事
業を営む企業グループであるからこそ追求可能であり、
競合他社に対して決定的な競争優位差をつくりえる。
M&A に際しての IR では、シナジーは必ず言及される。
しかし、その場の掛け声だけに終わり、継続的な取り組
みにつながらないことも多い。シナジーの中には、自社
のリソースを使っても、その効果が他のグループ会社の
業績拡大に寄与することもある。そのため、各社が個別
最適を強く志向すると、シナジーを意識した取り組みへ
の動機が弱まりやすい。そこで、①あるべきグループ最
適状態の可視化、②シナジーへの意識改革、③各社の
シナジー貢献実績の可視化、により取り組み実行に向け
た動機付けを高める工夫が必要となる。
上記それぞれに対応する仕掛けを紹介したい。
①については、グループ共通の戦略フレームワークの
活用があげられる。BSC(バランス・スコアカード)などグ
ループ共通の戦略フレームワークを活用し、グループ会
社の戦略を共有・連動させるのである。②については、
意識的に、シナジーを創出する場を設定することである。
ある企業では、地域や国ごとに、シナジー委員会を組織
し、エリア単位で協力し合える環境を作っている。③につ
いては、シナジーを業績評価に組み込むことである。方
法論は様々だが、本社がシナジーを評価することで、グ
ループ全体にグループ貢献を愛でる文化を育むことが
できる。このような取り組みを複合的に実施することで、
グループシナジーを高め、より強いグループ基盤の構築
が可能となる。
1)ポートフォリオ戦略の枠組みの再設計
ポートフォリオ戦略の枠組み自体は、世の中に多く紹
介されている。概ね①収益性、②成長性、③リスクの3つ
の視点から事業評価し、それらの評価を組み合わせて
投資配分の優先順位を判断するものである。しかし、こ
の方法では、上述したように、定量数字で現れない事業
の強みやグループへの貢献度を評価することができず、
誤った投資判断を招く危険性がある。
そこで、上記①②③の評価指標だけでなく、④戦略性
の視点を併せて評価する方法を提案したい。これは、グ
ループビジョンとの合致度を評価し、その事業をグルー
プ内で抱えることの意義を確認するものである。具体的
には、ビジョンをより詳細な複数の評価項目にブレークダ
ウンして、その項目毎に、当該事業の貢献度、合致度を
評価するものである。
図2 ポートフォリオ戦略の事業評価の枠組み
軸分類
概要
指標例
①
収益性
z 儲けの度合い(または期待)を表す
z 営業利益・事業利益
z ROA・ROE
z EVA
②
成長性
z 事業の成長度合い(または期待)を表す
z 市場成長率
z 自社売上成長率
③
リスク
z 収益等の不確実性を表す
z 投資(または損失期待)規模も含まれる
z 収益(等)の標準偏差
z 投資規模
z EVA
④
戦略性
z 自社の戦略種類・合致度(自社にとって
の意義)等を表す
z ビジョンとの合致度
ここで、評価対象が定性的な内容であるため、評価に
曖昧さが発生しうる点に留意が必要である。この問題を
回避するためには、当該事業とビジョンとの合致度を「ポ
イント化」した上で、社内で議論をし尽くすことが重要で
ある。また、ポイント化には、できるだけ定量的なデータ
を適用し、どの状態を満たせば何ポイントに相当するの
か、基準を明確にすることも重要である。『アジア No.1』と
いうビジョンがあった場合、それをより具体的な評価項目
(例:「アジアでの自社ブランド認知」等)に落とし込む。
次にそれをブランド調査結果等の数値で評価するといっ
た具合である。また、経営陣がどの事業を伸ばしていく
のかという意思を込めて評価することも、グループ内での
納得性を高める上での一案である。
こうした手法は、総合電機、商社、鉄道など、多角化
が進展している企業グループにとくに求められる視点と
いえ、近年では製造業 A 社をはじめ、いくつかの会社で
導入実績がみられる。
3.
“守り”から“攻め”のグループ経営へ
厳しい経営環境の中、日本企業が成長を目指すには、
受身的な「変化対応」だけではなく、社会変化の一歩先
を洞察した主体的な「変化創出」を志向すべきである。そ
のためにも、「ポートフォリオ戦略の枠組みの再設計」と
「グループシナジーを創出する仕掛け」が重要である。
2)グループシナジーを創出する仕掛け
一般的に、グループの基盤作りは「遠心力」と「求心
-2-
当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
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10 年 1 月号
交通インフラ企業の海外市場への参入
株式会社野村総合研究所 事業戦略コンサルティング二部 副主任コンサルタント
小長井 教宏
1.海外に広がる事業機会
鉄道、空港、高速道路を運営する交通インフラ企業は、
事業資産である拠点施設やネットワークが即地的であり、
収益の基盤が、営業エリアに大きく依存する。当該地域
の人口減少、経済の成熟化による移動需要の縮小は、
交通インフラ企業にとって成長の限界につながる。
首都圏を営業エリアとする JR 東日本でも、2009~18 年
の間の旅客数(新幹線・在来線合計)の年平均伸び率は
定期旅客が 0.1%、定期外旅客が 0.4%との見通しを示
している。一般に、鉄道事業者は、関連事業への多角化
を図っているが、コアである旅客輸送の成長鈍化による
企業価値への影響は避けられない。
一方、海外に目を転じると、交通インフラ分野には多く
の成長市場がある。中国では 2020 年までに鉄道延長を
12 万 km(うち 1 万 8,000km は高速鉄道)、高速道路延長
を 10 万 km とする計画があり、空港整備計画もある。ブラ
ジルでも 2014 年の開業を目指して、リオデジャネイロ~
サンパウロ~カンピーナス間約 510km の高速鉄道計画
が進められている。ポスト BRICsの有望国であるベトナム
でも、首都ハノイとホーチミンを結ぶ全長約 1,560km の
南北高速鉄道計画を始めとし、都市鉄道整備、高速道
路整備が次々に計画されている。
このように、国内では、市場が飽和しつつある交通イン
フラ事業であるが、海外では、人口・経済が持続的に成
長し、これを支える交通インフラが将来にわたって整備さ
れていく地域が広がっている。
2.強化すべき川下領域
交通インフラに関わる事業機会は、その整備の段階に
応じて計画策定~資金調達~機器調達~建設という川
上領域と運営~維持管理の川下領域に大別できる。1
1
交通インフラ分野では、事業領域を垂直方向に捉え、事業資産の
整備・管理を“下部”、事業運営を“上部”とし、こうした事業領域のア
ンバンドリングを“上下分離”とするのが通例である。本稿では、これ
らを、一般的な事業領域の区分にならい、川上(下部に相当)、川下
(上部に相当)という表現に統一している。
川上領域では、従来から、交通系コンサルタント会社、
建設会社、車両・電気・通信などの機器メーカーや商社
などが、海外市場をひとつの事業分野として取り組みを
進めてきた。最近では、国家戦略的にも、新幹線の輸出
が交通インフラ産業の海外展開として注目されているが、
この場合の主体も現時点では同様である。一方で、事業
の運営や維持管理という川下領域を担うべき鉄道会社、
空港会社、高速道路会社などの取り組みは、実質的に
海外での技術協力に留まっている。
日本のインフラ産業の強みは、納入する機器の品質
だけではない。それらの機器を効率的に運用・維持管理
して高水準の交通サービスを提供できることも強みになり
得る。とくに、運営・維持管理は、安全性・信頼性の面で、
これまで蓄積してきたノウハウが活かせる、差別化しやす
い領域であり、この領域で、日本の交通インフラ企業が
海外市場で十分な優位性をもっていると考えられる。
川下領域での海外展開は、計画策定~資金調達~
機器調達~建設~運営~維持管理までをトータルパッ
ケージとした「日本システム」の構築にもつながることから、
より大きな事業機会が生まれる可能性もある。
3.先行する海外オペレーター
交通インフラの運営を担う川下領域には、先行する海
外オペレーターが存在する。事例として、空港運営分野
の Fraport、都市交通運営分野の VeoliaTransport の海
外展開の状況を簡単に示す。
Fraport はフランクフルト国際空港の運営会社であり、
01 年に民営化された。海外への展開を成長戦略の一つ
と位置づけており、08 年の Fraport の収入のうち、フラン
クフルト空港以外での収入は約 16%(約 435 億円2)、
EBITDA では 9.3%(約 74 億円)を占めている。同社の海
外展開には、事業への関与の度合いにより3つのパター
ンがある。①事業権を取得して建設から運営までトータ
ルに携わるケース、②空港運営のみを長期契約で受託
するケース、③空港関連のサービス(グランドハンドリン
2
1 ユーロ=133 円換算
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10 年 1 月号
グなど)のみを受託するケースである。同社は、①のケー
スでトルコ、ペルー、中国などに進出しており、②ではエ
ジプト、セネガル、③では米国、香港に進出している。
VeoliaTransport は、鉄道、LRT3、バス、フェリーなどの
公共交通分野のオペレーターであり、フランス水道公社
を前身とする Veolia Environment の傘下にある。現在、
フランスのほか、EU、北米、アジアの 28 カ国で交通サー
ビスの運営を行なっている。アジアでは 09 年 7 月に開業
したソウルメトロ9号線の運営にも現代ロテムと共同出資
する形で参加、インドでは地下鉄の運営(建設中)、中国
ではバス運営を行なっている。
両社は、事業運営ノウハウだけでなく、海外での豊富
な運営実績が、海外展開の強みとなっている。実績の面
で遅れをとる日本企業にとって、海外での実績不足を補
完するため、先行者や現地企業とのジョイントベンチャー
等を通じた「提携・協業」という視点も重要となる。
表
時の条件に政府からの「最低収入保証」をつけることや、
事業運営にコミットせずにオペレーション部分を担うアウ
トソーサーに徹することが考えられる。
2)現地の事情に合わせたサービス水準の調整
日本の交通インフラ事業の仕組み、日本でのサービ
ス水準を、現地の状況に応じて柔軟に適応させることが
できるかという点である。安全性や定時性、快適性など
の面で日本の交通インフラは強みを持つといわれている。
東京大都市圏のような高密度の鉄道ネットワークは世界
でも類をみないばかりか、緻密なダイヤに沿った安全・正
確な運行ノウハウは、十分に強みとなり得る。
しかし、こうした高いサービス水準は、海外市場にとっ
ては、過剰性能ともなりかねない。人口の集中傾向が強
いアジアの都市部では、輸送量を確保するため数分間
隔での列車運行が不可欠だが、速達性や乗継利便性な
どはその次に対処すべきものである。現地の事情を踏ま
え、導入すべきサービスの内容に優先順位をつけ、優先
度の高いものから着手し、段階的にサービスを充実して
いくというロードマップを描くことが望ましい。
Veolia Transport の海外展開状況
欧州
(20カ国)
フランス
ドイツ
ノルウェイ
ベルギー
アイルランド ポーランド
クロアチア
イスラエル
ロシア
チェコ
レバノン
セルビア
フィンランド オランダ
スロバキア
北米・南米
カナダ
チリ
(4カ国)
米国
コロンビア
アジア・オセアニア 韓国
オーストラリア
(5カ国)
中国
ニュージーランド
インド(2010年開業予定)
出所)Veolia Transport”Business Overview 2008”よりNRI作成
スロベニア
スペイン
スウェーデン
スイス
イギリス
4.海外展開に向けた課題
最後に、日本企業が海外交通インフラ事業に参入す
る上での課題を3点指摘したい。
1)事業に関わるリスクコントロール
海外での事業がはらむ多くのリスクに対するコントロー
ル策が必要である。とくに、新興国のプロジェクトでは、
「ポリティカルリスク」が顕在化しやすい。例えば、政府が、
料金変更に際して介入したり、事業権の範囲を変更した
りすると、事業運営の裁量が著しく低下する可能性があ
る。このようなリスクに対しては、最終的なリスク負担者が
誰になるのかを明確にし、リスクが顕在化した際のリスク
コントロール策(例えば、政府による事業買収等)を事前
に関係者間で決定しておくことが重要である。
また、交通インフラの事業特性として大きなリスクとなる
のが、「需要変動リスク」である。とくに、新設プロジェクト
では、事業計画どおり需要が顕在化するかが問題となる。
韓国の高速鉄道では、当初計画に対して顕在化した需
要は3割程度、台湾の高速鉄道でも同程度となっている。
需要変動リスクをコントロールするためには、事業権取得
3
Light Rail Transit の略で、路面電車等を指す。
3)人材の確保
海外での事業を継続していくために必要となる人材を、
いかに確保するかという点である。人材確保については、
現地のオペレーション人材と、マネジメント人材に分けて
考える必要がある。
オペレーション人材は、現地で採用した人材を育成し
確保する。手順や知識だけをインプットするのではなく、
事業の負っている社会的な使命や企業理念を共有する
ことが重要である。
マネジメント人材は、日本でのマネジメント経験者が必
ずしも適任とは限らない。海外展開を志向するのであれ
ば、戦略的に若手の人材を海外に派遣し、海外でのマ
ネジメント方法を体得させる必要がある。そのためには、
海外でマネジメントを実践できる場を確保していかねば
ならない。この意味において、鉄道、空港、高速道路の
各社が実施している技術協力や現地人材への研修など
は、現地人材の育成の場として、また、マネジメント人材
育成の場として活用すべきであろう。
わが国の交通インフラ企業にとって、これまでの経験や
ノウハウは、海外でも十分に活用できる。しかし、海外で
の事業運営実績がなければ、それらを活かすための土
俵に上がることもままならない。海外市場の成長を取り込
むためには、前述の課題に対処するとともに、案件規模
やコミットメントの強さにとらわれずに、手堅く実績を積み
上げていくことが早期に求められる。
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10 年 1 月号
意識内上流化する生活者
~変化する消費スタイルへの対応~
株式会社野村総合研究所 サービス事業コンサルティング部 副主任コンサルタント
石原 進一
り、「電気代や通信費などを節約」していると回答してお
り、生活者の節約消費指向が強まっていることがわかる。
1.リーマンショック後の生活者
図2 今後の収入と生活設計に対する考え方
NRI では、世界的な大不況への突入から約1年が経
過した 2009 年 7 月に、「生活者1万人アンケート1」を実施
した。これによると、09 年から翌年にかけての家庭の収
入について、「悪くなる」と考えている生活者は回答者全
体の 42.0%おり、「よくなる」(6.5%)を大きく上回った。生
活者の今後の景気に対する意識は、依然として厳しい
状況が続いている。
生活者の収入と貯蓄の変化をみると、今回の調査に
おける平均世帯年収は 595 万円で、前回(06 年)の 596
万円と比較して横ばいだったのに対し、平均貯蓄額は
896 万円(09 年)と、前回(827 万円)から大きく増加した。
また、「現在直面している不安や悩み」(図1)をみると、
「雇用・失業」や「収入や資産価値の低下」などの比率が
増加した。生活面での経済的不安の増大に伴い、支出
を控えて将来への備えを重視する傾向が強まっている。
30
24.4
22.5
回
20
答
率
(
%
2009年
16.1
10
)
0
雇用・失業
収入や資産価値の低下
2.経済的不安を受けた消費スタイル変化
1)将来の経済的不安を受けて高まる節約志向
「今後の収入と生活設計に対する考え方」をみると、今
回の調査では、今以上の収入を前提としている生活者
は 16.4%と、06 年調査と比較して 4.2 ポイント減少した。
一方、今よりも少ない収入を前提としている生活者は
26.5%と、前回より 4.4 ポイント増加し、1997 年の調査開
始以降最高値を記録した。また、この傾向は世帯収入に
関係なく同様であった。さらに、生活者の 62.3%が、1年
前よりも「日用品や食品を買うときに安く買う工夫」をした
1
2000年
2003年
2006年
2009年
2)
「生活防衛型のフォーカス消費」の強まり
生活者は、あらゆる出費を切り詰め、ただ安いものを
求めているわけではない。消費に対する生活者の考え
方の変化(図3)をみると、「とにかく安くて経済的なものを
買う」という生活者の比率は、世帯収入に関係なくほぼ
横ばいで推移している。一方、「多少値段が高くても品
質の良いものを買う」、「価格が品質に見合っているかど
うかをよく検討してから買う」という比率は増加傾向にある。
これより、「支出は極力抑えたい。ただし、消費の対象は、
“安かろう悪かろう”ではダメ。価格と品質のバランスが大
事。」という現在の生活者の消費に対する心理が浮かび
上がってくる。
また、「使っている人の評判が気になる」という生活者
が、06 年比で 6.0 ポイント増加しており、この傾向は、性
別・年代・収入層に関わらず同様にみられる。こうした現
象は、インターネットなどを通じた口コミ情報が、消費に
際しての判断材料として影響力を強め、同時に、それら
の情報に基づいて「購入する商品を慎重に検討し、自分
にとって本当に必要なものを絞り込んで購入したい」とい
う生活者の意識の現われと捉えることもできる。加えて
「自分のライフスタイルにこだわって商品を選ぶ」という生
活者が増加していることを考えると、自分のライフスタイ
ルに本当に必要かどうかも、消費に対する重要な判断要
素であることがわかる。つまり、生活者は、まず商品・サ
ービスの評判から品質・性能などの機能的価値を判断し、
消費対象から「安かろう悪かろう」と思われるものを排除
する。その上で、それが自分のライフスタイルの中におい
て必要であり、購入に値するものであるかを検討すること
で、購入対象を慎重に絞り込んでいるのである。以上の
(
%
16.4
今以上の収入を前提としている
1997年
19.4
16.5
20.6
10
)
2006年
18.6
今よりも少ない収入を前提としている
30
22.6
17.1
26.5
22.1
0
図1 現在直面している不安や悩み
回
20
答
率
16.2
23.6
NRIが全国 1 万人の生活者を対象に、1997 年から3年毎に実施し
ている郵送調査である。以降、本論考に掲載している調査データは、
いずれも「生活者一万人アンケート」を出所としている。
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10 年 1 月号
状況を考察すると、今後は、こうした『生活防衛型のフォ
ーカス消費』の傾向が、より強まると推測される。
4.『意識内上流化』する生活者のニーズ
それでは、今後企業は、意識内上流化する生活者に
どのように対処していけばよいのであろうか。これまでに
あげた事実から考察すると、意識内でのみ上流化し、実
際の消費には慎重な彼らが納得して購入する商品やサ
ービスのポイントは、まず「機能的価値に関する信頼感」
であり、加えて「機能的価値と比較した価格の割安感」や
「特定の生活者のライフスタイルに特化した、突き抜けた
商品コンセプト」によって消費者やメディアに話題性を提
供し、彼らの情報発信を促すことである。
例えば、日経MJが発表した 09 年上期のヒット商品番
付にもランクインした、ファストリテイリンググループの「ジ
ーユー」が展開する「990 円ジーンズ」がある。文字通り
の超低価格に加え、「安心品質」をうたい、厳選した素材
や高い縫製技術など、消費者が認める高品質を実現し
た。また、キングジムの「ポメラ」は、デジタルメモという、
文字を打ちそれを記録する以外の機能を全て排除する
という突き抜けたコンセプトをもつ。それに加え、電源を
入れてから立ち上がるまで約2秒という、ノートパソコンに
はない軽快な操作性などが、一部のビジネスマンに受け
入れられた。他にも、完全ノンアルコールという商品コン
セプトに加え、味の面でも評価されているキリンの「フリ
ー」などがある。昨今のヒット商品は、消費者が求める上
記の条件を満たした結果、これらを購入した消費者の口
コミや評価が各種メディアを通じて発信されたことが、ヒッ
トの要因の一つであるといえる。
この他、高級バッグブランドのコーチの例も興味深い。
従来からのブランドイメージに裏づけされた品質に対す
る信頼感に加え、若者にターゲットを絞り込み、彼らのト
レンドを意識した大胆なデザインや定価3万円台のバッ
グを投入するなど、従来の高級ブランドのイメージを覆す
ような商品コンセプトなどが話題となった。業績の落ち込
みが目立つ高級ブランド品市場において、コーチは 09
年 6 月期の売上高でほぼ前期比同レベルを維持した。
意識内上流化した生活者の多くは、周囲の生活者と
比較した自分の生活レベルに対して、一定のプライドを
持っていると考えられる。そのような生活者は、自らの消
費対象に、「高い機能的価値」や「お買い得感」、「ライフ
スタイルとの親和性」を求めることで、それを購入した際
に、他の生活者よりも「賢く良い買い物をした」という優越
感を得ているともいえる。そして、この優越感は、商品や
サービスに関するポジティブな情報となって、消費者自
身や各種メディアなどから発信され、それを受けた生活
者に、その後の購入を促す有力なツールとなる。今後は、
意識内上流化した生活者のニーズに対応した商品・サ
ービスこそが、消費の対象としてより優先的に選択される
ことになるであろう。
図3 消費に対する考え方
70
63.4
58.5
62.0
回 50
答
率 40
46.9
40.9
45.3
30
31.2
(
60
%
)
20
45.4
44.3
34.6
26.9
43.3
31.5
20.9
16.2
10
0
2003年
2006年
2009年
価格が品質に見合っているかどうかをよく検討してから買う
とにかく安くて経済的なものを買う
多少値段が高くても、品質の良いものを買う
自分のライフスタイルにこだわって商品を選ぶ
使っている人の評判が気になる
3.生活者の『意識内上流化』
『生活防衛型のフォーカス消費』を続ける生活者の意
識の中には、これまでにない変化が生じ始めている。そ
れは、生活者が自分の生活レベルに関する意識の変化
である。世間一般からみた自分の生活レベルを5段階で
評価した結果の推移(図4)に着目したい。「上」と「中の
上」を合わせた(「上・中の上」)比率と、「中の下」と「下」
を合わせた(「中の下・下」)比率は、いずれも 1997 年の
調査開始以来、ほぼ横ばいが続いていた。しかし、06 年
調査から 09 年調査にかけては、「上・中の上」が 6.4 ポイ
ント増加、「中の下・下」が 7.7 ポイント減少と、これまでに
ない大きな変化をみせた。また、この傾向は、収入層に
関わらず同様にみられることから、家庭の経済状況の良
し悪しに関わらず、多くの生活者の意識が、上流にシフト
していることがわかる。本稿ではこの現象を、生活者の
『意識内上流化』とよぶ。
とはいえ、前述した生活者を取り巻く経済状況を考え
れば、実際に上流レベルの生活をしている生活者が増
加しているとは考えにくい。賢く慎重な消費や工夫を重
ね、意識内における生活レベルを維持している生活者
の多くが、周囲の生活者と自分とを比較しながら、「自分
はまだ良い生活ができているほうだ」と相対的に上流意
識を感じるようになっていると考えるのが自然であろう。
図4 世間一般からみた自分の生活レベル
100
9.4
7.8
8.9
8.1
53.1
51.9
51.6
47.9
14.5
80
回
答 60
率
51.2
中の中
(
%
上・中の上
40
中の下・下
)
20
36.1
38
36.7
40.3
1997年
2000年
2003年
2006年
32.6
0
2009年
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10 年 1 月号
今まさに求められる長期国家戦略
株式会社野村総合研究所 社会産業コンサルティング部
主 任 コン サ ル タン ト 山 口 高 弘 /副 主 任 コン サルタン ト 岡 村 篤
する。民主党がマニフェストに掲げた「子ども手当」は、
大きなインパクトを持つ少子化対策と評価できる。しかし、
これから生まれてくる子どもが、労働市場に本格参入す
るのは 2030 年以降である。つまり、すでに 2030 年時点
の日本の労働力人口は既定されているといえる。今後、
20 年間の日本はこの制約条件のもとであらゆる政策・戦
略を決定していく必要がある。
一方、海外に目を向けると、今後 20 年間で、東アジア
で人口増加を背景にマーケットが急成長し、やがて人口
増加が終焉に向かうことが予測されている。2030 年に向
けて日本はどのような舵取りをすべきか、という長期的な
戦略が必要であろう。
1.動き出す国家戦略構築への取組み
2009 年 9 月 16 日、民主党鳩山内閣が発足した。同内
閣で、注目すべきものの一つが、国家戦略室の設置で
ある。国全体としての戦略を描き、重点分野に資源を集
中投資しようというねらいがある。ただし、長期的な国家
戦略の姿は不明確なままである。
本稿では、国家戦略を「国家ビジョンを実現するため
の長期のシナリオ」と定義する。重要なのは「長期のシナ
リオ」という点であり、現在の日本が抱える諸問題への対
処療法を意味しない。また、国家戦略の内容は多岐に
わたるが、本稿では、国民生活の基盤であり、国民生活
の基本的な方向を規定する“経済”に注目する。すなわ
ち、国家戦略とは、日本の「富をどう増やすのか」を示す
シナリオである。また、「富の分配」は短期的にも可能だ
が、「富を増やす」には長期的な取り組みが求められる。
経済成長に対して、人口減少という制約条件が強まる
一方で、東アジアを中心としたグローバル市場の魅力が
高まっていることを踏まえると、明確な成長シナリオに基
づいて、制約を打破し、拡大するグローバル市場を捉え
た成長を実現する必要がある。
「日本の将来像に関するアンケート」(以下、国民アン
ケート)1の結果をみると、回答者の 83.9%が「国民は長
期的な国家戦略が必要」とする一方、82.7%が「長期的
な国家戦略と呼べるものはない」または「長期的な戦略
は存在しているが、その内容には不満がある」と考えて
いる。内外の環境変化、国民ニーズの両面から、長期的
な国家戦略が、今まさに必要とされている。
2)閉塞感・停滞感の払拭に向けた成長戦略
国民アンケートで、20 年後の日本について国民の意
識を調査したところ、「経済的に今よりも豊かになってい
ない」との回答が全体の約半数を占め、「今よりも豊かに
なっている」の比率は 1 割程度に留まった。その一方で、
回答者の7割近くは「他の先進国と同程度の経済成長」
あるいはそれ以上の成長を目指すべきとしている。
国民の日本経済に対する閉塞感・停滞感を払拭する
ためにも、世界経済の動向を踏まえ、我が国が有する資
源・強みを最大限に活用した長期的かつ実現的な“成長
戦略”が必要とされている。
3.国家像実現に向けた戦略課題
日本の成長戦略を構築する際には、急成長するアジ
ア経済、日本と新興国との技術格差の縮小といった、外
部環境変化を踏まえる必要がある。前述した日本の人口
減少や超高齢化社会への移行等により、国内消費の拡
大が期待できないこと、各国が直接投資受入額を拡大さ
せている中、日本への投資額は伸びていないといった
内部環境に注目することも重要である。
その上で、日本がこれまで蓄積してきた経験知や世界
有数の規模の家計金融資産などの強みを再評価し、世
界経済、とくにアジアの中で日本がどのようなポジション
をとるべきかを検討することが求められる。
2.求められる成長戦略
1)労働力の面で制約条件が存在する 2030 年の日本
国立社会保障・人口問題研究所の推計(08 年)によれ
ば、日本の総人口は 2010 年の 1 億 2,718 万人から、
2030 年には 1 億 1,522 万人へと 20 年間で約 9.4%減少
1
NRI が 09 年 10 月 2 日に 20 代~60 代の男女 1,000 人を対象とし
て実施。
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10 年 1 月号
その半数以上が現金・預金の形で眠っている。家計金
融資産の利回りは先進国中で突出して低い。2000 年以
降、米国や英国が5%程度、豪州では 10%を超えている
のに対して、日本は2%程度という水準である。また、家
計所得の収入別構成比の国際比較データをみると、多く
の国で資産運用収入の家計所得に占める割合が 10%
を越える中、日本は2%程度でしかない。このため、多額
の金融資産を持ちながらも運用下手であるために、日本
には資産運用による収入の拡大から消費が拡大すると
いう循環がない。消費が伸びないから、GDP が伸びない
という構造になっている。
本稿では、全ての戦略課題に言及することは困難であ
るため、内外の環境条件を踏まえた主要な戦略課題を
提示したい。「アジアの成長を国内に取組む“輸出増”」
や「海外から富を呼び込む“国内への投資拡大”」、「金
融資産の効率的運用による“投資リターンの拡大”」およ
び「“金融資産の消費への染み出し”」などである。
4.戦略コンセプト
これら主要な戦略課題に対して、2030 年を見据えた
日本の成長戦略の一部を示す。「アジアの成長を国内
に取り込む“輸出増”」に対する『経験知活用戦略』、「金
融資産の効率的運用による“投資リターンの拡大”」に対
する『家計金融資産の増大戦略』について以下に記す。
図2 家計所得の収入別構成比の国際比較(%)
ギリシャ
イタリア
ベルギー
アメリカ
ドイツ
1)経験知活用戦略
アジアの成長を、日本からの輸出増を通じて国内に取
り込むことを目的とした戦略コンセプトの一つである。環
境関連産業や、都市開発関連産業、介護等の高齢化社
会対応型産業などがその担い手と考えられる。
2030 年までにアジア諸国で経済成長が進展することに
より、かつて日本が経験してきた都市化に伴う様々な事
象が同地域でも発生することが想定される。例えば、ア
ジア各国で次々と誕生する人口 100 万人を超える大都
市では、高度経済成長期に日本が培った都市開発・都
市インフラ整備に関する“経験知”が、マーケット開拓に
有効となる。他にも、中国で深刻化している公害・環境対
策や、今後、香港や韓国、台湾が突入する人口減少・超
高齢化社会という事象も、日本では、すでに経験済み、
あるいは先立って経験する事象であることから、“経験
知”を活用して、これらの国・地域でサービスを提供する
上で日本には大きなアドバンテージがある。2030 年まで
の成長戦略を描く際、日本がこれまでに蓄積してきた
“経験知”は大きな資源・強みととらえられる。
オランダ
アイルランド
フィンランド
シンガポール
香港
スペイン
イギリス
デンマーク
フランス
カナダ
ノルウェー
オーストリア
ニュージーランド
オーストラリア
スイス
スウェーデン
日本
バングラディッシュ
工業化
保健・衛生
“経験知”を活用
した、市場開拓
台湾
インド
ASEAN
公害・環境対策
都市開発・都市インフラ整備
都市再開発
20.0
23.6
13.7
18.0
0.6
88.4
12.6
12.9
19.3
18.3
72.7
74.0
67.8
67.8
29.7
62.5
13.3
21.5
10.4
12.0
14.3
21.5
20.8
16.1
77.0
71.8
82.6
77.4
79.6
73.4
72.3
77.1
賃金・事業収入
保険等収入
その他
日本の家計金融資産を運用し、高いリターンを得るた
めには、まず国民総投資家化に向けた金融・投資教育
の拡充が必要である。金融・投資に関する知識レベルが
高いほど、リスク資産への投資性向が強く、リターンも高
い。金融資産を運用することで消費余力を高めるための
“運用スキル”を、あらゆる世代が身につけるための教育
を展開することが求められる。また、貯蓄から投資への流
れを加速させるための投資活動を優遇する税制改革な
ど制度改革も必要であろう。
金融資産の増大のためには、国家自身が主体となる
ことも必要である。現行の年金準備金や郵貯預金として
低金利で眠る資金を原資とした国家ファンドの創設が有
効である。3~5兆円単位で全体のファンドを分割し、世
界的な運用実績を誇るプロフェッショナル・ファンドマネ
ージャーによる運用を想定する。国家ファンドの運用で、
低利で眠る家計金融資産の利回りを上昇させ、資金余
剰感の増大による消費拡大につなげることが可能とな
る。
日本
香港
少子高齢化
7.4
73.8
63.0
62.5
69.5
68.5
出所)World Income Distribution(2006/07)/ Euromonitor International
韓国
中国
20.2
19.2
26.3
55.9
60.3
57.7
資産運用収入
図1 アジア諸国が直面する課題と日本の経験
パキスタン
20.1
17.7
15.3
14.2
14.0
13.1
11.9
11.7
10.6
9.3
9.0
8.2
7.8
7.3
6.7
6.4
6.4
4.7
3.9
3.3
2.9
2.3
人口減少
超高齢化社会
2)家計金融資産の増大戦略
日本は「モノ」を売り、そこから収益を上げるという従来
型モデルだけでなく、既存ストックを活用して追加的な収
益を上げるというモデルにも注力する必要性がある。
日本には 1,400 兆円以上の家計金融資産があるが、
本稿では、紙面の都合上、これら2つの戦略を示した
が、NRI で議論を続けている「2030 年を見据えた日本の
成長戦略」の全体像と詳細については別稿に譲りたい。
-8-
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10 年1月号
次世代社会システムのあり方
~マクロトレンドの変化が社会や企業に与える影響~
株式会社野村総合研究所 社会システムコンサルティング部
副 主 任 コン サ ル タント 水 石 仁 / 上 級 コン サ ル タン ト 宇 都 正 哲
1.次世代社会システムの必要性
近年、地球温暖化の進行や人口減少・高齢化、パン
デミックの頻度の高まり、自然災害の激化といった、マク
ロトレンドの変化が顕著になっている。マクロトレンドの変
化は、超長期にわたり緩やかに進行するものであり、政
府の長期計画立案時には多少は考慮されていたが、企
業経営においては直接的に反映される要素ではなかっ
た。しかし、マクロトレンドの影響が、従来より広範囲かつ
大規模に及び始めていることから、政策決定や企業経
営にとっても無視できない存在になりつつある。
このような社会においては、マクロトレンドの変化への
対応を念頭に置いていない従来型の社会システム(ここ
では、政策・制度、ビジネスモデルなどを指す)では、社
会活動や企業経営が破綻してしまう恐れがある。そのた
め、マクロトレンドの変化を受容する新しい仕組みとして、
「次世代社会システム」の構築が強く求められる。
2.大きく変容しつつあるマクロトレンド
日本においては、社会活動や企業経営への影響の大
きい代表的なマクロトレンドの変化として、①地球温暖化、
②人口減少・高齢化、③パンデミックの頻度の高まり、④
自然災害の激化の4つがあげられる。これらの変化は、
世界規模での現象か日本での局所的な現象かなどの違
いはあるものの、いずれもここ最近、様々な分野におい
て大きな社会的影響を及ぼし始めている。
1)地球温暖化
19 世紀後半以降の世界の平均気温は、様々な時間
スケールの変動を繰り返しながら、長期的には 100 年間
あたり約 0.7℃の割合で上昇してきた。これに対して、
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の予測では、
20 世紀末から 21 世紀末までの 100 年間で、世界の平均
気温は最大 6.4℃上昇すると報告されている。
数字だけ聞いてもなかなかピンとこないが、例えば、
東京の年平均気温(約 16℃)が現在よりも 6.4℃上昇す
ると、那覇並みの気温(約 23℃)になる。また、気温上昇
の変化を平均でなく年単位でのピークや変動で捉えると、
地球温暖化による影響は今後 20~30 年程度で顕著に
なると予想される。
2)人口減少・高齢化
日本の人口は、これまで基本的に増加と停滞の時期
を繰り返してきた。とくに明治維新以降は、高出生率、低
死亡率による人口爆発が起こり、極めて短期間で人口は
急増した。一方、2004 年にピーク(1 億 2,873 万人)を迎
えて以降は一貫して減少傾向にあり、2050 年には1億人
を割り、2100 年には現在の人口の約半分になると予測さ
れている。また、高齢化の進展は著しく、65 歳以上の老
年人口の比率は 05 年の 5.0 人に1人から、2030 年には
3.1 人に1人、2050 年には 2.5 人に1人となる。
人口減少や高齢化の進展は、経済成長の鈍化、税や社
会保障における負担の増大、地域社会の活力低下等に直
結することから、大きな社会問題として位置づけられる。
3)パンデミックの頻度の高まり
パンデミックは、感染症の世界規模での流行を意味す
る。09 年に世界中で感染が拡大した新型インフルエンザ
も記憶に新しい。過去には、14 世紀にヨーロッパで流行
したペストや、19~20 世紀に流行したコレラが有名であ
る。1918~1919 年にかけて大流行したスペインかぜは、
世界中で感染者約 6 億人、死者 4,000~5,000 万人の被
害をもたらした。我が国でも、当時の人口(約 5,500 万
人)の 1%弱に相当する 39 万人が犠牲となった。
歴史的にみると、パンデミックは 30~40 年程度の間隔
で発生してきた。しかし、近年、グローバル化の進展等に
より、SARS や鳥インフルエンザなど、地域限定的な感染症
を含め、その周期が早まる傾向がみられる。
4)自然災害の激化
日本は、世界的にみて地震の発生回数が極めて多く、
また、地理的、地形的、気象的諸条件から、台風、豪雨、
豪雪等の自然災害も発生しやすい国土となっている。
地震については、過去の災害から得た教訓を踏まえ
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10 年 1 月号
また、リスクや不確実性の高まる社会においては、IT
等の活用により、精度の高いリスク情報を一般に分かり
やすく伝える仕組みの構築も重要である。
て対策が強化されているが、近い将来、関東大震災や
阪神・淡路大震災クラスの大地震が複数発生することも
指摘されており、対策のさらなる充実が求められる。
また、近年は、集中豪雨や台風などによる自然災害の
激化が顕著になってきており、毎年のように死者・行方
不明者や大きな経済損失を伴う被害が発生している。そ
の要因としては、短時間強雨の増加や海面上昇などの
自然現象の変化とともに、高齢化の進展や都市構造の
変化などの社会環境の変化も大きく起因している。
3)民間企業におけるリスクとチャンス
短期的な業績へのプレッシャーが高まる昨今の企業
経営において、マクロトレンドの変化を経営に組み込む
ことは非常に難しい。しかし、新潟県中越地震において
工場生産が停止し、過去最大の赤字を計上した三洋電
機の事例のように、マクロトレンドの変化は、企業の存続
に多大な影響を及ぼす。これらのリスクに対応するため
には、自社のリスク要因を洗い出し、対策の優先順位を
つけるとともに、中期経営計画等に対策を明確に位置づ
け、3~5年のスパンで対策の強化・見直しを図っていく
必要がある。
リスクを抑制する一方で、リスクを見極め、先手を打っ
た企業経営により、新たなビジネスチャンスの創出にもつ
ながる。例えば、農業分野においては、将来の気候変動
による農産地の北部移動を見込んで、北海道で温暖作
物を栽培するベンチャー企業も現れている。このような萌
芽事例は、マクロトレンドの変化を先取りしたビジネスモ
デルでもある。
3.政策・企業経営への社会的影響の増大
1)ボラティリティの大きな社会への移行
4つのマクロトレンドの変化を鑑みると、今後 30 年、50
年、100 年というスパンでみて、これらのマクロトレンドの変
化による複合的な影響は確実に増大し、かつそのボラテ
ィリティ(不確実性)が拡大していくと考えられる(図)。
このようなリスクや不確実性の高まる社会においては、
事象が起きてから対応するのでは手遅れであり、マクロト
レンドの変化を念頭に置いて、社会制度設計や企業の経
営戦略・事業戦略等を抜本的に見直す必要がある。
2)社会的影響を軽減するための制度設計
政策的な視点からは、事象が起こった際にも社会活
動を維持できるよう、社会システムや社会インフラの許容
力や適応力、復元力を強化する必要がある。
政府による公共事業はここ数年、大幅に縮小される傾
向にある。しかし、気候変動のトレンドを考慮すると、自
然災害の発生率・規模ともに大きくなると想定される。国
民の生命・財産を守るためには、今こそ、社会インフラ整
備に資本を投じるべき時期という捉え方もできるが、その
ような議論はなされていないのが現状である。
本稿は、「次世代社会システム検討チーム」における議論に基づき
執筆した。今後、マクロトレンドの変化による社会的影響を多面的に分
析し、社会システムのあり方について議論を深めていく予定である。
図 マクロトレンドの変化と社会的影響の増大
現時点
人口
人口
口減
減少
少・
・
高齢
齢化
化
人
高
t
社会的影響の大きさ
気温
地球
球温
温暖
暖化
化
地
現時点
今後求められる閾値
許容力、適応力、
復元力の強化
外部要因の
複合的影響
現状の閾値
死者数
パン
ンデ
デミ
ミッ
ッ
クの
の
パ
ク
頻度
度の
の高
高ま
まり
り
頻
t
自然災害の激化
地球温暖化
人口減少・高齢化
人的・経済被害
自然
然災
災害
害の
の激
激化
化
自
t
パンデミックの
頻度の高まり
t
過去100年間
今後100年間
t
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編集後記
NRI Knowledge Insight も1周年を迎えることができました。本号もご覧いただき、ありがとうございます。
2010 年を迎えるにあたり、本号では、複数の論考で、新たな視点での日本企業・国家の成長のあり方が提起さ
れています。経営資源が希少である以上、特定の主体あるいは地域で経済成長を促すためには、ヒト・モノ・カネを
適所に集中させることが必要です。
人体と血液にも同じような関係があります。人体を流れる血液の総量は、全ての臓器を機能させる量の数分の一
程度にすぎないといわれます。こうした制約の中で、生命活動を維持できるのは、自律神経が酵素の力などを駆使
して、血液の流れを制御し、その時々で血液を必要とする箇所に、活動の源泉となる要素を送り込み、老廃物を搬
出し、細胞の成長や代謝が図られているからです。
国内で投資が投資を生み、人口増加を続けていた 70~80 年代の日本は、都市化の流れの中で国民所得が増
え、消費が拡大し、貿易黒字がそれを加速させながら、自律的に経営資源を国内に集中させ、成長を維持していま
した。人口減少が続き、高齢化社会を迎える将来の日本では、経営資源を「再集中」させることが求められます。
業界再編や都市機能の再編の動きは、「再集中」の過程であり、新たな「成長」の機会ととらえることができます。
また、グローバル経済では、海外市場に日本のカネやモノを集中させるという成長のあり方が支配的でしたが、今
後は、ヒト、それも量的な労働力という“狭義のヒト”ではなく、日本流の価値創造の仕方・作法・技術という意味での
“広義のヒト”を海外市場に集中させていくことが求められるでしょう。
一方、忘れてはならないのは、資源の「再集中」の裏には、分散という状況が発生することです。「過疎」に代表さ
れる社会問題等についても、一定の配慮をした「再集中」こそが、新しい時代の成長戦略といえるでしょう。
編集長 秋月 將太郎
バックナンバーのご案内
09 年 11 月号(特集 経営資源のクロスオーバー)
09 年 9 月号(特集 攻めの糸口)
1.
2.
3.
4.
5.
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環境ビジネスの海外展開に向けた川下領域への取り組み
高まる鉱物資源調達リスクへの対応策
アジア向け国際ネット通販事業の成功条件
金融危機後の中東経済とサウジアラビアの可能性
ロシアの WTO 加盟実現が日本企業に及ぼす影響
【コラム】 メディアを見ればその人がわかるⅡ
財政政策としてのインフラファンド活用と経済への影響
倒産企業買収による競争力強化のすすめ
新興国市場での利益確保に向けた事業構造
新たな高額財のマーケティング・営業戦略
非接触 IC 活用サービスの変革シナリオ
09 年 7 月号(特集 飛躍に向けた足元固め)
09 年 5 月号(特集 日本の競争力を高める新産業・新技術)
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次世代シェアードサービスが果たすべき役割
経営者と現場のリスク認識ギャップを埋める仕組み
リスク管理の共通基盤「業務リスク地図」
かつてない下方修正局面の経営計画
リーマンショック後のホテル事業戦略
広告宣伝最適化を通じた企業競争力の向上
コスト低減を軸に拡大するハイブリッド自動車市場
ネット生保登場のインパクト
ジェネリック医薬品の登場と医薬品業界の変動
日系太陽光パネルメーカーにおける勝ち残りの条件
サービスロボット市場のさらなる拡大に向けて
09 年 3 月号(特集 日本企業のグローバル展開)
09 年 1 月号(特集 気づいていない日本の価値)
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金融不況をグローバル人事改革の好機とするために
国内建設会社の海外戦略
メーカーに求められるロシア市場での基礎体力
グローバルサプライチェーンマネジメントの実現に向けて
見直しが迫られる中国市場におけるチャネル戦略
「JAPAN プレミアム」のさらなる展開に向けて
日系プラント業界のさらなる国際競争力強化に向けて
ツーリズム産業の進路
日本産業の信頼性を支えるリスクマネジメント
中国の「外知導入」における日本企業のビジネス機会
NRI Knowledge Insight 10 年 1 月号 Vol.7
編集事務局
株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部 コンサルティングナレッジ開発部 (編集担当: 髙橋 弓子)
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