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大学生の未就職者問題 質の低下とミスマッチで 広がる大学間格差

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大学生の未就職者問題 質の低下とミスマッチで 広がる大学間格差
●特集 大学生の未就職者問題
02
99
労働政策研究・研修機構 20
小杉礼子 氏
21
56
10
10
45
10 -
05
05
対象計
12
11.8 66 <
19.5
公立
14.8 39 <
18.7
27.0
135
26.5 201
25.2
202
19.8
35
40 <
15.3 24.7
21.7 「学校基本調査」
141
47
設置者
・入学 私立
(~45)
難易度
私立
(46~56)
27.7 私立
(57~)
75
国立
82
10
-
-
04
35 55
22
2005 年調査
平均未就職率 対象大学
(%) (校)
23.8
494
2010 年調査
平均未就職率 対象大学
(%) (校)
23.0%
487
05
注:未就職卒業者は 「学校基本調査」の卒業後の状況(に対応させた選択肢)のうち、
「一時的な仕事」
、
「左
記以外」
「死亡・不詳」の合計。未就職率は未就職卒業者数/卒業者数。
*私立大学の入学難易度は 2005 年時点の代々木ゼミナールの偏差値ランキング(複合大学では主に社会
科学系を基準)に基づき、偏差値 57 以上、56 以下~ 46 以上、45 以下の 3 段階に分類。
この調査は高卒と大卒の新卒者
の未就職問題を扱ったものであり、
今号は大卒未就職者を見る。これ
は 年の「大学就職部/キャリア
年に卒
センター調査」(調査1
業生を出している医学・看護学・
宗教学を除く全617校対象。有
効回収率 ・7%)と、調査1の
対象校に行われた 年の「学卒未
就職者に関する緊急調査・4年制
大 学 調 査 」( 調 査 2 有 効 回 収 率
・1%)、
「学校基本調査」など
図表② 大学設置者・難易度性別 未就職卒業者比率の変化(2010年-2005年)
80
景気に連動する未就職者
若者の雇用問題で深刻なものの
一つが、学校を卒業しても進路が
決まらない「未就職者問題」であ
る。「 学 校 基 本 調 査 」 に よ れ ば、
2 0 1 2 年 3 月 卒 の 大 学( 学 部 )
卒業者 万9030人のうち、就
職者は 万7208人( ・9%)
だ っ た。 一 方、「 正 規 の 職 員 等 で
な い 者 」 と、「 一 時 的 な 仕 事 に 就
いた者」、「進学も就職もしていな
い者」を合わせると 万8194
人( ・ 9 %)。 5 人 に 1 人 が 正
規での就職ができていない。こう
した事態を受け、内閣府の「若者
雇用戦略推進協議会」でも未就職
者問題が集中的に議論されている。
新卒一括採用が主体の日本で新
卒時に就職できなければ、その後
の職業キャリアに大きな不利益を
被る。そうした事態を回避するた
め、今号では「誰が、なぜ未就職
者 と な る の か 」「 大 学 の キ ャ リ ア
形成支援の現状」について、独立
行 政 法 人 労 働 政 策 研 究・研 修 機
構が 年 月に出した『学卒未就
職者に対する支援の課題』
(学卒
= 高 卒・大 卒。 以 下、『 報 告 』)か ら
考える。
63
図表③ キャリアセンター担当者からみた進路が決まらないまま卒業する学生の特徴
***
***
***
***
***
***
***
***
***
***
(私立中位以下、「多い」+「やや多い」
単位%
私立 ( ~ 56) 未就職率別
国立
20%未満 20~30%未満 30%以上
計
N =344 N =111 N=102 N =128 N =67
85.8
62.7
自分の意見や考えを上手く表現できない
81.1
87.3
89.8
就職活動をスタートするのが遅い
83.7
80.2
83.3
88.3
49.3
何をしたらいいか分からない
80.5
75.7
84.3
82.8
56.7
自信がない
77.6
72.1
82.4
79.7
55.2
教員や職員にほとんど相談しない
78.5
80.2
79.4
76.6
56.7
エントリーシートが書けない*
74.7
72.1
69.6
82.8
40.3
こだわりが強い
64.0
64.9
61.8
65.6
56.7
社会人としてのマナーに欠ける+
54.1
45.0
57.8
59.4
25.4
親から自立していない
52.3
50.5
53.9
53.1
28.4
友達が少ない
46.8
44.1
48.0
48.4
38.8
生活習慣が身についていない
48.8
43.2
48.0
55.5
25.4
アルバイトに打ち込む +
35.2
30.6
29.4
43.0
11.9
まじめに授業に出席する
23.3
18.0
20.6
28.9
14.9
ゼミに所属していない*
13.4
6.3
17.6
15.6
9.0
サークルなどの課外活動に打ち込む
8.7
9.0
8.8
7.8
4.5
成績がよい
1.8
7.8
6.3
4.5
5.2
+p <0.1,* p<0.05, ** <0.01, *** <0.001 水準で有意,国立の欄の表示は国立と私立(~ 56)の差の検定。
出典:労働政策研究・研修機構『学卒未就職者に対する支援の課題』
注1:求人倍率は求人数/求職数。 注2:未就職率は文部科学省「学校基本調査」における「左記以外の者」、「一時的な仕事』及
び「死亡・不詳」を合計したものを未就職者とし、これが卒業生数に占める比率。
出典:リクルートワークス研究所「大卒求人倍率調査」、文部科学省「学校基本調査」
46
05
24
56
2013 / 1 学研・進学情報 -6-
-7- 2013 / 1 学研・進学情報
05
97
50
57
12
職サイトによる採用活動」
がある。インターネットは
誰でもアクセスできるため、
人の募集に3万人の学生
が集中することもある。そ
こで企業は採用コストを抑
え る べ く、「 タ ー ゲ ッ ト 大
学(入学難易度の高い大学
や採用実績人数の多い大学、
求めるスキルに対応した特
定の学部など)の設定」や、
「 W e b テ ス ト( 一 般 学 力
テスト)」で学生を事前に絞
り込む。平野恵子氏
(「企業
から見た学力問題 新卒採
用にみる学力要素の検証」
)
によれば、ターゲット大学
を設定している企業は約4
割、その8割の企業がター
ゲット校を 校以下まで絞
るという。実は多くの学生
が門前払いなのだ。
一方、調査2で「進路が
決まらないまま卒業する学
生 の 特 徴 」 を 見 る と、
「自分の意 「やや多い」合わせて約7割以上
見 や 考 え を 上 手 く 表 現 で き な い 」 となっている。
「就職活動をスタートするのが遅
さらに未就職率が高い中堅私大
を3分割したものと国立大を比べ
い 」「 何 を し た ら い い か 分 か ら な
る と( 図 表 ③ )、 未 就 職 率 が 高 い
い 」「 自 信 が な い」「 教 員 や 職 員 に
ほとんど相談しない」が、
「多い」 大学では「エントリーシートが書
-
高校生の就職難や高学歴志向が 図表① 大卒求人倍率と大卒未就職率の推移
あり、2人に1人は大学に進学す
る時代になった。しかし企業の厳
選採用の方針が続く中で、大学生
の5人に1人は就職できない状況
が続いている。大学生の未就職者
は誰か、なぜ未就職となるのか。
独立行政法人 労働政策研究・研修
機構による『学卒未就職者に対す
る支援の課題』調査を中心に考えた。
10
01
30
10
3
20
質の低下とミスマッチで
広がる大学間格差
か ら、
「大学生側の求職行動や大
といった状況である
を超える
学の対応の最近の状況とその背
未就職率に現われた大学間格差
景」を分析、政策提言したものだ。
話をうかがったのは、独立行政
このように未就職問題の根本因
は景気変動だが、厳選期ほど指摘
法人 労働政策研究・研修機構
されるのが学生の「質」だ。大学
統括研究員の小杉礼子氏。若年雇
進学率 %、うち約4割が推薦・
用問題研究の第一人者である。
AO入試生のなか、就職難と学力
未就職者問題の大前提として押
低下が結び付けられるのである。
さえるべきは景気変動との関係で
ある。小杉氏は「新卒への求人倍
こ れ ら を 念 頭 に、『 報 告 』 で は
率と未就職率は景気に連動します。 未就職者と大学入学難易度との相
関を分析した。図表②は 年と
景気変動を背景に企業の毎年の採
年の大学設置者・難易度性別の未
用計画が策定され、未就職卒業者
就職卒業者比率の変化( 年
数も左右されるのです」と解説す
年)である。まず「大学生全体の
る。図表①は大卒求人倍率と大卒
未就職率」は 年 ・7%、 年
未就職率の推移である。
例えば
「超
・7%だった。次に調査1、調
氷河期」中の 年~ 年には求人
査2を国立、公立、私立(入学難
倍 率 は 約 1・0 倍 前 後 に ま で 落 ち
込 み、 未 就 職 率 も % を 超 え た。 易度 以上、難易度 ~ 、 以
その後 年からの
「いざなぎ超え」 下)の5つに分け2時点での未就
職率の変化を見ると、国立、公立、
の景気上昇期後半には求人倍率は
入学難易度の高い私立大学では
2 倍 ま で 持 ち 直 し、 未 就 職 率 も
年より 年の未就職率は低下した
%に低下。だがリーマンショッ
が、入学難易度 以下の大学は逆
クの影響が出た 年卒生への求人
に未就職率が上昇した。小杉氏は
倍 率 は 1・2 倍。 未 就 職 率 も %
「 大 学 間 格 差 が 広 が っ て い ま す。
企業は学力的に課題のある人は採
りたくないのでスクリーニングを
強めています」と見る。
背景には 年から普及した「就
30
特集 …… 大学生の未就職者問題
15
●特集 大学生の未就職者問題
0.051
0.078
-0.070
-0.087
-0.030
-0.054
-0.009
-0.029
-0.076
-0.004
-0.052
卒業者100人あたり専任職員
-0.199 * -0.236 * 就職支援自己評価(100点)
-0.176 ** 0.009
就職担当教員との連携(4段階)
0.002
-0.233 ** 教員との頻繁な情報交換(4段階)
0.036
0.021
教員関与度
0.004
-0.001
0.243
0.358
0.139
0.267
調整済みR2乗
0.220
0.311
0.109
0.196
364
250
239
158
モデル⑴=各大学のキャリア形成支援以外の要因だけを投入したモデル ・モデル⑵=キャリア形成支援のあり方に関わる6つの変数を投
入したモデル モデル⑶=入学偏差値中位以下の私立大学に限って、モデル⑴と同じ分析をしたモデル ・モデル(4)=入学偏差値中位以
下の私立大学に限って、モデル(2)と同じ分析をしたモデル
出典:労働政策研究・研修機構『学卒未就職者に対する支援の課題』
*p<.05, **p<.01, ***p<.001水準で有意
低下しています」と見る。
欧米と比べ、日本の大学
では、研究室や私学の就職
部( 現 在 の キ ャ リ ア セ ン
ター)による組織的な支援
が特徴だった。だが 年代
後半の就職情報誌や 年の
就職サイトの登場で、大学
を経由しない就職活動が可
能になり、個人が直接労働
市場に入っていく状況と
な っ て い る。「 学 生 は 就 職
サイトが全てだと思いこん
でいて、大学の就職情報や
斡旋機能に気づかず、有効
に利用できていません」(小
杉 氏 )。 採 用 市 場 で 評 価 の
高い国公立大生や難関私大
生に対して、中堅私大生ほ
ど不利な競争を強いられて
いるのが現状なのである。
ただし未就職率を高める
要 因 の 一 つ に 学 生 の「 ブ ラ
ン ド 志 向 」も あ る。 今 回 の
調査では国公立大や難関私大の学
生に比べ、中堅私大全般はそれほ
ど高くはなかったが、未就職率が
高い大学ほど学生の有名企業志向
を 指 摘 し て い た。
「キャリアセン
ターの支援がよく届いている場合、
***
** +
* ***
* ** ** +p <0.1,* p<0.05, ** <0.01, *** <0.001 水準で有意,国立の欄の表示は国立と私立(~ 56)の差の検定。
出典:労働政策研究・研修機構『学卒未就職者に対する支援の課題』
就職サイトの有名企業ばかりへの
応募は少なくなりますが、届いて
いないほど有名企業ばかり受けが
ちです」(小杉氏)。
若者雇用戦略推進
先の内閣府 「
協議会 」では、 年の大卒への求
12
ロールしていく必要がある。そこ
で『報告』では 年から 年の未
就職率の変化に各大学のキャリア
形成支援がどう影響しているのか
を重回帰分析で検討した。被説明
年の
変数は︿ 年の未就職率
未就職率﹀で、数が多いほど卒業
後の移行がスムーズでなくなる方
向に変化したことになる。投入す
る説明変数は「卒業生100人当
たりキャリア形成支援経費別」な
ど6項目、また「大学所在地」な
ど、キャリア形成支援とは独立し
て未就職率の変化に影響を及ぼす
変数を統制変数として投入した。
その結果が図表⑥である。まず
モ デ ル( 1)
︿各大学のキャリア
形成支援以外の要因だけを投入﹀
に 比 べ、 モ デ ル( 2)
︿キャリア
形成支援のあり方に関わる6つの
変数を投入﹀では明らかに未就職
率が減少した。さらに入学難易度
以 下 の 大 学 を 見 た モ デ ル( 3)
︿キャリア形成支援以外の要因だ
け を 投 入 ﹀ と モ デ ル( 4)︿ キ ャ
リア形成支援のあり方に関わる6
つの変数を投入﹀を見ると、卒業
生100人あたりの「キャリア支
援経費」
「専任職員」「就職支援自
己評価」が、未就職率減に結びつ
10
05
10
-
05
80
ワークが大学と強力に連携し、こ
うした企業とのマッチングを支援
する必要性が強く謳われていた。
-0.023
-0.031
(私立中位以下、
「とてもそう思う」+「ややそう思う」 単位%
私立 ( ~ 56) 未就職率別
計
20%未満 20~30%未満 30%以上 国立
N =339 N =110 N=100
N =129 N =67
81.5
心理的負担を強く感じる学生が増えた
90.3
87.3
92.0
91.5
就職活動への取り組み状況の個人差が大きくなった
90.0
86.4
95.0
89.1
76.9
学生の就職活動への取り組みが早くなった+
83.8
87.3
88.0
77.5
84.6
学生の相談が増えた
79.9
80.9
80.0
79.1
84.6
キャリアセンター ( 就職部)で斡旋
81.1
76.4
84.0
82.9
50.8
できる求人が少なくなった
経済的負担を強く感じる学生が増えた
73.5
72.7
75.0
72.9
64.6
学生がインターネットの情報に頼りすぎるようになった
70.5
63.6
76.0
72.1
61.5
大学主催の就職支援行事への出席率が高くなった+
62.8
70.9
60.0
58.1
76.9
就職活動を途中でやめる学生が増えた**
70.2
58.2
75.0
76.7
23.1
学生の希望が有名企業に集中するようになった+
38.6
30.9
38.0
45.7
52.3
学生が OB/OG 訪問をしなくなった**
42.5
37.3
44.0
45.7
20.0
学生の就職活動状況が把握できなくなった
30.4
19.1
33.0
38.0
12.3
学生の授業への出席率が低下した
23.9
20.0
27.0
24.8
20.0
56
80
やはり
「きめ細かさ」
が大切
-0.038
0.031
就職斡旋機能が低下していると
はいえ、多くの大学では、受験生
0.016
97 80
図表⑤ 2 ~ 3 年前 ( リーマンショック前)と比べた就職活動の変化
に 対 し て は「 キ ャ リ ア 教 育 」 や
「キャリア形成支援」の充実ぶり
を盛んにPRしている。このうち
キャリア形成支援がどれだけ有効
なのか、『報告』では検証している。
例えば 年の「調査1」によれ
ば、「 中 堅 の 私 立 大 学 で は 大 学 の
支援を利用するかどうかが学生の
正社員内定にプラスの効果を持
つ」「インターンシップや企業実習
を実施している大学の学生や就職
手帳、エントリーシートの書き方
指導を受けた学生が内定獲得傾向
にある」との結果が現われていた。
ただし、この調査では「キャリ
ア形成支援を担当する教員が多い
大学」で内定獲得率が低かったり、
「キャリア形成支援への予算の多
寡」が内定獲得率に影響しなかっ
た な ど の 事 実 も 明 ら か に さ れ た。
年調査でも、むしろ組織整備に
経費を投じていない大学の方が未
就職率の減少幅が大きくなるなど
皮
「 肉 な 結 果 」も あ り、 大 学 側 の
努 力 以 上 に「 学 生 の 質 的 な 変 化 」
が大きかったと見られている。
だがそれだけでキャリア形成支
援の是非は論じられない。例えば
労働市場での大学のポジションや
所 在 地 な ど、 他 の 変 数 を コ ン ト
05
けない」
「社会人としてのマナー
がかからないため、幅広く開設さ
に欠ける」が多い。また「大卒無
れてきたのですが、結果的に学力
業・フリーター増加への意見」を
の低い層が集まり、未就職率上昇
尋ねたところ、未就職率が高い大
に結びついたと考えられます。さ
学 ほ ど「 学 生 の 無 気 力 さ 」
「学力
らにその教育内容も問われている
低 下 」 が 指 摘 さ れ、
「これらの大
のです」と小杉氏は指摘している。
学では学生の質の低下が顕著だと
大学の就職斡旋機能、低下
思われます」
(小杉氏)との現状だ。
学生の就職活動はどう変化した
専門分野との関連はどうか。図
か。調査2で「2~ 年前(リー
表④「関係学科別の未就職率」を
マンショック前)と比べた就職活
見ると、芸術、人文・社会科学の
動の変化」をたずねたところ、「心
未就職率が高い。人文・社会科学
理的負担を強く感じる学生が増え
の学生は大学生全体の約 %。し
か も 中 堅 私 大 に こ の 系 統 が 多 い。 た 」「 取 り 組 み 状 況 の 個 人 差 が 大
きくなった」「取り組みが早くなっ
「理系に比べ設備投資などコスト
た 」「 学 生 の 相 談 が 増 え た 」 の 項
目 で「 と て も そ う 思 う 」「 や や そ
う思う」が %に上っていた。
同じ質問について、私立中堅大
を未就職率別に3グル―プに分類
したものが図表⑤である。未就職
率が高い大学は、先述した項目に
加 え、「 就 職 活 動 を 途 中 で や め る
学生が増えた」割合が高い。また
「キャリアセンターで斡旋できる
求人が少なくなった」が %を超
えた。そして「学生の就職活動状
況が把握できなくなった」との声
も少なくない。小杉氏は「これら
の大学では、就職斡旋機能自体が
0.025
-0.014
2013 / 1 学研・進学情報 -8-
-9- 2013 / 1 学研・進学情報
0.039
3
R2乗
N
10
注:未就職卒業者比率は、「学校基本調査」の卒業後の進路として、「左記以外の者(=無業)」、
「一時的な仕事」および「不詳」のいずれかの進路であった者が卒業者に占める比率。
出典:文部科学省「学校基本調査」
0.003
-0.016
中国・四国
(2003 年卒と 2011 年卒)
人総数は卒業生数 万人に匹敵す
る人数と推計されていた。この中
には就活サイトを利用しない中小
企業が多数、含まれる。「中小企業
の中にも、人を大切にして成長さ
せてくれる優良企業は沢山ありま
す」
と小杉氏。
『報告』
では、
ハロー
卒業者100人あたりキャリア支援経費
50
0.017
-0.061
北関東
大学所在地 南関東
(基準:九州・
中部・東海
沖縄)
近畿
-0.410 ***
モデル⑷
標準化係数
56
-0.279 ***
0.033
0.058
0.016
北海道・東北
-0.267 ***
-0.257 ***
-0.376 ***
-0.104
-0.080
-0.248 ***
設置者・入学
公立
難易度
(基
準:私立45 私立(46~56)
以下)
私立(57)
-0.693 ***
-0.326 ***
-0.436 ***
-0.337 ***
-0.402 ***
国立
-0.410 ***
05年未就職卒業者比率
うち偏差値56以下の私立
対象大学計
モデル⑶
標準化係数
モデル⑵
標準化係数
モデル⑴
標準化係数
図表④ 関係学科別未就職卒業者比率の変化
図表⑥ 未就職率の変化 (2010 年- 2005 年)の規定要因
ーキャリア形成支援の効果に注目してー
そして最も重要なのは、「中退し
ないための大学選び」である。本
誌 で も 以 前 レ ポ ー ト し た よ う に、
大学中退者の最大の問題は「進路」
だ。小杉氏も「中退してしまうと、
新卒一括採用で相手にされなくな
る。一番大事な進路指導は中退し
な い 大 学 選 び で す 」 と 断 言 す る。
労働研究政策・研修機構の 年「大
都市の若者の就業行動と意識」調
査では、高等教育中退者は離学直
後にアルバイト・パートだった人
は ・7%。その後正社員になれ
た人は ・5%に対して、正社員
でない人は ・4%もいた。
「大学
中 退 し な い 大 学 選 び は、
で学ぶことに、受験生自身が本当
に興味を持っているかどうか」に
尽 き る。「 大 学 で 身 に つ け る べ き
学力の一つは、コミュニケーショ
ン能力や思考力などの『汎用的能
力』です。これは企業が採用で求
めるコンピテンシーと重なり合う
ものですが、それらを大学で学び
続けるには、提供される学問的な
素材への興味・関心が極めて大切
です」と小杉氏は指摘する。
学問への興味・関心を喚起する
には大学の授業が手がかりになる。
特に中堅私大を目指す受験生は保
30
公私協力方式と
公設民営方式の限界
42
01
地方自治体が私立大と関わる方
法としては、公私協力方式と公設
民営方式がある。
1980年代以降に、次々と生
まれた公私協力方式は、地方自治
体が学園の敷地などを提供したり、
補助金を出したりして、地元に私
立大学を誘致するものだ。私立短
大の4年制昇格を支援することも
あり、これまでに約130校が誕
生している。
このように公私協力方式が増え
た背景には、1980年代に地方
の過疎化が進み、国土庁が地方の
活性化のために大学誘致策を打ち
出したことや、通商産業省がテク
ノポリス法によって、知識産業と
大学が連携した産 学
・ 住
・ の街づ
くり構想を打ち上げたことがある。
これを受け、1985年以前には
新設私立大の5%しかなかった公
私協力方式が、それ以降は新設の
%を占めるにいたった。
しかし、その後、少子化が進み、
多くが地方の小規模大学だった公
私協力方式の私立大は志願者が減
少して定員割れを起こし、201 護者が大学教育を受けていない場
合も多く、家庭で話を共有しにく
い。そこで「大学の授業をオープン
キャンパスなどで体験して具体的
にイメージさせることが欠かせま
せん」と小杉氏はアドバイスする。
高校でのキャリア教育はどうか。
小杉氏は「私は高校で『やりたい
仕事』を絞り込むのは大反対です。
その仕事が将来あるかどうかはわ
かりません。高校では『将来、自
分で食べていく、自立する存在と
いう自分』を考えることができれ
ばいい。生活的にも経済的にも自
立するプロセスが大事なのです」
と強調する。高校で押さえたいの
は、「今の学びが自分の将来につな
が っ て い る こ と 」と「 将 来 へ の ス
テップとしての大学」である。
そして高校生として身につける
べきは「学力」
、とりわけ「国語力」
だ と 小 杉 氏 は 強 調 す る。「 言 葉 を
使うことが対人コミュニケーショ
ンの基本です。これは文章を読み、
自分の考えを書くことで培われま
す。例えば小論文など、読んだり
書いたりすることが必要というこ
とを、ぜひ生徒さんに伝えていた
だきたいですね」。
(取材・文/福永文子)
0年には三重中京大と新城大谷大
が募集を停止している。
中には、立命館アジア太平洋大
のように健闘している大学もある。
大 分 県 が 1 6 0 億 円、 別 府 市 が
億円と土地を無償譲与し、立命
館も寄付金、私大等経常費補助金
などの私学助成、学術フロンティ
ア推進事業などをフルに活用する
こ と に よ っ て 現 在 に 至 っ て い る。
しかし、このような成功例は少数
派である。
もう一つの公設民営方式は、地
方自治体が敷地や校舎、施設など
を整備するが、運営は私立大学法
人で行う方式である。職員の多く
はその地方自治体の職員である。
地方自治体が補助するが、既成の
私立大学法人が大学運営を行う公
私協力方式と異なる。
この方式では、1992年の東
北芸術工科大(山形市)をスター
ト に、 名 桜 大( 名 護 市 )、 長 岡 造
形大、千歳科学技術大、静岡文化
芸 術 大( 浜 松 市 )
、 高 知 工 科 大、
鳥 取 環 境 大 な ど が 誕 生 し た。( 表
1)
このうち高知工科大と静岡文化
芸術大、名桜大、鳥取環境大が私
立大から公立大に衣替え
(公立化)
42
いていた。
「やはり一生懸命、
キャ
こうした大卒未就職者の現状を
リア形成支援を行っている大学は
踏まえ、受験生の大学選択で重要
成果を上げています」と小杉氏。
なことは何か。小杉氏にたずねた。
「就職担当教員との連携」
ただし
ま ず 一 つ は、「 卒 業 生 の 進 路 の
や
「教員との頻繁な情報交換」
など
把 握 」 で あ る。「 卒 業 生 数 と 同 時
はまだ未就職率低下には結びつい
に就職者や進学者、その他の進路
ておらず、学部教育にキャリア教
について具体的に公表している大
育やキャリア形成支援をどう位置
学は信頼性が高いと言えます」と
付けていくのか、課題も見える。
小杉氏は言う。これらを各大学H
Pの「大学の認証評価」などで調
なお以下の未就職率 %以上の
私 立 大 学 の 声 は、
「大学以前」の
べていくことが重要である。
問 題 を 示 す も の だ。
「基礎学力の
キャリア形成支援や正課教育で
低い学生、基礎学力はあってもコ
のキャリア教育も重要になる。小
ミュニケーション能力の低い学生、 杉氏は「キャリアセンターが教員
職業意識の低い学生、また社会人
組織と連携したプログラムを組ん
としての考え方や行動ができない
で い る か ど う か 」「 学 部 学 科 教 育
学生等多様な学生の就職支援や
で、文科省の学士課程答申で出さ
キャリア形成支援をするためには、 れた『汎用的な能力』まで意識し
大学全体で支援体制を整備する必
た教育、例えばPBLなど、プロ
要があると考える」
「学生の二極
ジェクト型の能動的な学習がプロ
化が進み、従来のキャリア教育・
グラムされているかどうかを見る
キャリア形成支援では足りない
こと」を説く。またキャリア形成支
(キャリア教育以前の基礎的学力・
援では、「学内での企業説明会(オ
社会的適応力などが不足した)学
ン キ
ャンパス リ
クルーティン
グ)」など、学生と企業のマッチン
生が増えているので、従来のキャ
グへの場づくりを行っているかど
リア教育を見直し、修正が必要と
かなども一つの注目点になろう。
なっていると思われる」
。
同様の声
は国公立大学からも聞かれた。
これら「生の情報」を得るには、
進学した卒業生たちとのつながり
を持ち続けることが大切になる。
鳥取環境大学に見る公設民営私大
から公立大学法人への転換のねらい
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40
中退しない 大 学 を !
鳥取環境大学は、2012 年に私立大から公立大に転身した。こ
こ数年定員割れに悩んでいたが、公立大への転換によって、入学
者は増加に転じ、さらなる教育研究の向上を目指している。鳥取
環境大の取材から、地方私立大の公立化について探った。
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地方大学の
使命と課題を見据え、
公立大に転換
2013 / 1 学研・進学情報 -10-
-11- 2013 / 1 学研・進学情報
ー ト
ポ
レ
別
特
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