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4.2 隣接のガソリン自動車からの出火とその影響
4.2 隣接のガソリン自動車からの出火とその影響 地下駐車場等に置かれたガソリン車から出火した場合に、隣接する圧縮水素ガスを燃料とす る燃料電池自動車に与える影響について検討する。 位置関係として、出火ガソリン車の水平方向(前後左右;通常の地下駐車場の場合)にある 圧縮水素ガスを燃料とする燃料電池自動車への影響と出火ガソリン車の鉛直方向(上方;地下 駐車場に設置された2段機械式駐車場の場合と立体駐車場の場合)がある。 4.2.1 ガソリン自動車の燃焼性状 建築研究所で実施されたガソリン自動車の燃焼実験(屋外及び屋内)の結果(平成 15 年度 火災学会研究発表会概要集)より、屋内における燃焼性状を以下に整理する。 (1) 屋内実験の条件設定(概要) ○実験車両;一般的な5人乗りセダン(排気量 1800〜3000cc)、5台(燃料タンク内のガ ソリン残量は 1/4 程度が2台、3台は空) ○開口条件;ドアは全閉鎖、窓は運転手側と助手席側のみ約 10 ㎝開放 ○着火(出火)場所;運転席シート(着火条件は記述なし) (2) 屋内実験におけるガソリン車火災の燃焼性状 屋内実験3(前列窓両側約 10 ㎝の開放、燃料タンクは空)の燃焼過程 ・ 着火直後、運転席シート炎上、以後、燻焼状態(酸欠による) ・ 8 分後、フロントガラスの破壊により、車内がフラッシュオーバー(噴出火炎) ・ 15 分後に後部座席、24〜25 分後にエンジンルーム・前部タイヤに延焼、 ・ 30 分後に前部バンパー等が炎上脱落 ・ 40 分前後に、トランクルーム、後部タイヤ、後部バンパーが次々と延焼 ・ 60 分ほどで、全体が下火になり、燃焼がほぼ終了 一般的な燃焼経路(時間経過)は、運転席で出火 列座席及びエンジンルーム → → 前部タイヤ・バンパー 前列座席・ダッシュボード → → 後 トランクルーム及び後部タイ ヤ・バンパー →ガソリン車の場合、屋内火災では、他の実験結果も含めて考えると、 1)室内から出火した場合の初期火災の状況 ・窓が全て閉まっていると、燻焼火災で終わる(ドア・窓の開閉に注意が必要) 。 ・窓の一部が少し開放されていると、出火後約6~8分でどこかの窓ガラスが割れて 車内から火炎が噴出する(感知器・消火設備の作動はこの後になる) 。 2)エンジンルームから出火した場合の初期火災の状況 ・出火後約 9 分で、エンジンルームから火炎が噴出する(感知器・消火設備の作動は この後になる)。 −31− 4.2.2 ガソリン車から出火した場合の隣接する燃料電池自動車への影響 科学警察研究所において実施した屋内実験をもとにした「自動車火災における周辺可燃物へ の影響」 (平成 14・15 年度日本火災学会研究発表会概要集)により、水平方向への延焼可能性 等について検討する。 □14 年度の実験条件 ・実験車両;セダン2台、ワゴン1台、軽1台(全て燃料タンクに 10ℓのガソリン) ・開口条件;ドア閉鎖、前列両側の窓を全開、後列窓は閉鎖 ・着火場所;前部灰皿付近、アルコール系固形燃料(20 ㎜×20 ㎜×20 ㎜)に点火 □15 年度の実験条件 ・実験車両;セダン2台(全て燃料タンクに 10ℓのガソリン) ・開口条件;ドア閉鎖、車室窓を全開とした場合、車室窓を全閉とした場合 ・着火場所;エンジンルーム内バッテリー付近、アルコール系固形燃料に点火 □周辺可燃物として、杉板(100 ㎜×100 ㎜×10 ㎜)を車の周囲に設置 (1) 水平方向に関する影響 実験結果からは、以下のことが言える。 1)車両の前後方向については、1m以上離れた可燃物への着火可能性は低い。 2)車両の側面方向については、2m以上離れた可燃物への着火可能性は低いが、1 m程度の距離にある可燃物については着火の可能性がある。 周辺可燃物への着火の可能性は、火災継続時間と火炎の大きさ(開口条件)、接炎の状況 等によって違うが、いずれにしても、出火後、出火空間からの噴出火炎があがる 6〜8 分以 降のことである。50 ㎝程度の距離にある燃料電池自動車の塗料やランプカバー、バンパー 等に着火した場合、その後、どのように火災が展開するかは、実験データがなく不明であ る。 14年度の火災実験では、実験車両のルーフ中央の上方に置かれた可燃物表面の最大温度 は以下のようであり、温度上昇も最も早い。 □上方2mの可燃物表面の最大温度;272℃〜569℃ □上方3mの可燃物表面の最大温度;184℃〜336℃ □上方4mの可燃物表面の最大温度;193℃〜253℃ この上方温度が示すように、通常の地下駐車場では、隣接する燃料電池自動車へ着火す る前に、感知器・消火設備が作動することになる。 (2) 鉛直方向に関する影響 出火したガソリン車の直上に燃料電池自動車がある場合として、機械式駐車がある。 1)地下駐車場に2段式機械駐車装置が置かれる場合 2)立体駐車場の場合 −32− * 駐車パレットの底部は全面鉄板でつくられているが、地下駐車場等において自動車火 災が起こったとき、直上の燃料電池自動車に与える影響や感知器・消火設備の作動がど うなるのか、火災実験等のデータがなく、よくわからない部分が多い。 (屋外火災実験例はあるが、加熱による機械式駐車場の躯体構造性能の検証を主に行わ れたものであるため、参考とはならない) −33−