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中 学 部 ○ 授業研究『作業学習 作業学習』 学習計画案・まとめ 【ペーパークラフト ペーパークラフト1班】 【ペーパークラフト ペーパークラフト2班】 【カレンダー班】 】 ○ 学部研修を振り り返って - 13 - 中学部1年生10人、2年生3人、3年生7人の合計20人(男子18人、女子2人) で行っている。 ペーパーボード製作とカレンダー製作をしている。両方とも作業工程が複数有り、分担 しながら作業をして、製品を作っている。 ペーパーボードの製作は、①漫画本を1枚ずつ剥がす。②インクの色分けをして、半分 に折って、切る。③10枚ずつ数えて、束ねる。④シュレッダーに掛ける。⑤ミキサーに 掛けて、細かくする。⑥のりを混ぜて、粘土状にして型詰めする。 カレンダー製作は、①曜日と数字を書いて、月ごとのカレンダーを仕上げる。②型抜き パンチで色紙を切る。③台紙に月カレンダーと型抜きした紙を貼る。④ラミネーターで2 か月分を合わせる。 これらの作業工程を考え、生徒の興味・関心と特性を考慮し、中学部職員で検討して2 班に分けた。ペーパークラフト班は、一つの教室に全員入って作業ができないので、作業 工程の①~③を行う生徒7人をペーパークラフト1班、作業工程④~⑥を行う生徒7人を ペーパークラフト2班とし、教室を分けて取り組んでいる。 カレンダー班は、稲作り、草刈りなどの外の作業も行うので、安全面を意識できる点も 考慮した班編制を行った。 - 14 - ≪本時のキーポイント≫ 【習慣形成】○生徒が作業時間や姿勢等を意識して取り組むことができるための教師の支援 【集団参加】【協力・共同】 ○生徒が、作業班の集団活動に進んで参加し、自分や友達の作業・役割を理解して責任をも って取り組むことができるための支援 ≪キーワード・キーグッズ≫ ○始めの目標発表(枚数目標量等) ○挨拶・報告 ○振り返り ○作業日誌 ○個に応じた役割設定 ○各自の支援具(洗濯ばさみ、つい立、文字盤、漫画本の大きさ、オレール、キレール、姿勢カード、見通しカード、出来高表、工程表、完成品など) 中学部 「作業学習」(ペーパークラフト1班) 授業時間 授業場所 授業者 1 学習計画案 10:30~11:45 中学部2組教室 T1佐藤利典 T2小林玲子 T3田中小百合 T4清野健男 ペーパークラフト1班のねらい ペーパークラフト1班は、1年生から3年生の7人と4人の職員で構成されている。生徒は、ペーパーボ ード作製の作業工程のうち、漫画本の紙を剥がす、剥がした紙を半分に折る、折った部分をはさみで切る、 切った紙を数えて束にする作業をしている。生徒はそれぞれの作業を分担しながら、毎時間同じ作業を繰り 返し行っている。これらの作業を通じて、自分の役割を理解し、1時間の枚数目標量や自分の目標に向かっ て最後まで作業に取り組むことをねらいにして取り組んでいる。 2 育てたい力≪将来設計能力【習慣形成】≫≪人間関係形成能力【集団参加】 【協力・共同】≫への支援 ペーパークラフト1班は、言語理解が可能な生徒から身振りや表情、発声で意思を伝える生徒、文字盤・ 発声で意思を伝える生徒と幅広い生徒の様子である。また、週に2日連続で、繰り返し作業学習を行うこと で、作業や自分の役割に概ね見通しをもって、30分程度取り組んでいる。一方で、30分間集中し続ける ことや正しい姿勢で丁寧に作業を続けることが難しかったり、役割に自信をもって取り組めなかったりする 様子も見られる。そのため、枚数目標量や自分の目標を設定し、姿勢や丁寧さ等に気を付けながら集中して 作業できるように、個に応じて支援具や環境を整えて支援を行っている。そのことで、作業時間や姿勢等を 意識しながら最後まで取り組む姿≪将来設計能力【習慣形成】≫、自分や友達の作業・役割を理解して責任 をもって取り組んだり、作業班の集団活動に進んで参加したりする姿≪人間関係形成能力【集団参加】【協 力・共同】≫が見られると期待している。 3 主な流れ・作業工程 10:30 作業準備開始、個人の目標決め(作業日誌)と役割等の確認 10:40 始めの会(挨拶、 「作業こころえ」の唱和【進行係:E】 、教師の話、一人ずつ個人目標の発表) 10:48 【時計係:D】の号令で作業開始→2班に束ねた紙を届ける【受け・渡し係:D】 <作業工程> ①剥がす ②折る・切る 漫画本のページを本か らつかみ剥がす。 ページを1枚ずつ半分 に折った後、はさみで 切る。 - 15 - ③10枚を数える・束ね る 切った紙を 10 枚ずつ 数えた後、束にする。 11:23 【時計係:D】の号令で終了 →剥がした紙を【受け・渡し係:D】に届ける【A、C】 11:24 片付け・個人目標の評価(振り返り) 11:32 反省会(一人ずつ評価の発表) 11:40 挨拶→片付け(各自で実施) 4 作業製品(内容)の紹介 5 学習環境構成図 ※ペーパークラフト2班の学習計画案を参照(省略) 。 黒 板 <小上がり台> 見通しカード①剥がす(車椅子) 出 ●C <文字盤> その日の状況を 考え、適した目 標の枚数を文字 盤で伝える。 <漫画本の固定> ガムテープで固 定し自力で剥が せるようにする。 ★T4 机 入 ●A 作 <つい立、養護机> 集中しや すい環境 を設定す る。 ★T1 進行位置 こ ろ え <漫画本の大きさ> 剥がしやすい短い長さ (A5)の本を使用す る。 <姿勢カード> 写真を机に貼り、正し い作業姿勢を意識して 確認できるようにする。 出 来 高 表 ●E ・ (進行係) ②折る、切る 工 程 表 完成品 見通しカード ●D 業 こ ●B ①剥がす(車椅子) 作業日 誌置場 口 ①剥がす(車椅子) ②折る、切る (時計係、受け・渡し係) 見通しカード ③数える、束ねる <オレール> 丁寧に折る ための道具 として使用 する。 <キレール> 丁寧に切る ための道具 として使用 する。 ★T3 ●F ★T2 作業道具 置き場 <洗濯ばさみ> ※②・③の生徒 枚数目標量が分かりやすい ように用意する。10枚分 を1個として使用する。 - 16 - 出 入 口 《授業研究のまとめ》 1 授業名 「作業学習」 (ペーパークラフト1班) 2 育てたい力 ≪将来設計能力【習慣形成】≫ ・枚数目標量や自分の目標を設定し、姿勢や丁寧さ等に気を付けながら集中して作業できる。 ・作業時間や姿勢等を意識しながら最後まで取り組む。 ≪人間関係形成能力【集団参加】【協力・共同】≫ ・自分や友達の作業・役割を理解して責任をもって取り組んだり、作業班の集団活動に進んで参加したり することができる。 3 有効だった支援 (1)作業内容・作業工程 ・共同作業の中の自分の役割を意識できるように、受け渡し時や報告場面を設定したことで、少しずつ大き な声で報告したり、報告回数を増やすことで覚醒を促したりすることができた。 ・作業の「工程表(1・2班全員の分担と担当生徒の顔写真を掲載)」を作成・掲示した後、繰り返し説明 を行ったり、完成品を作業の初めと終わりに生徒から提示し、作業中は常に見える位置に置いたりしたこ とで、自分の役割や全体の中の位置付けを理解し、責任をもって取り組む姿が見られるようになってきた。 ・反省会において、個人の目標に対する振り返りを行い、教師から助言や評価を加えることで、自己肯定感 を高めたり、反省を踏まえて次時に向けての意欲をもったりする姿が見られた。また、班全体の作業量を 毎時間、「出来高カード」を用いて掲示し、生徒による発表と作業成果の確認を行ったことで、班全体で 目標数を意識し、ペーパーボード製作に対する向上心を高めることができた。全員で協力しながら作製し ている雰囲気も少しずつ醸成されてきた。 ・生徒の実態から準備の時間に差が生じても、作業開始の時間を適切に変えたことで、作業に集中して取り 組む時間や作業量を増やすことにつなげることができ、効果的だった。現在では、支援が有効だった生徒 から複数の生徒にこの方法を広げることができた。 (2)教材・教具 ・「作業日誌」の改善が有効だった。個に応じた「作業日誌」を作成したことで、書きやすさと見やすさ以 外にも工夫を加えることができた。個人の目標を枚数目標量による数値目標だけでなく、作業態度や作業 に取り組んだ総時間を記していったことで枚数以外に関しても評価を行うことができ、個人の成果と課題 を見つけられた。また、記述式と選択式にしたことで、記入時間を減らしたり、生徒による自己選択のし やすさを図ったりすることができた(例:自己評価欄に「○」を記入する方法に変更する)。 ・ペーパーボードの写真と作業量の割合が分かる「見通しカード」を脇に置くことで、自分が取り組んでい る作業やその日の作業量が、どのくらいペーパーボードを作製するのに貢献したか、あるいはどれくらい の量を行うとボード1枚を完成させられるのかを知り得ることができた。そのことで、全体の中の自分の 役割理解を深めたり、作業意欲を高めたりすることができた。 ・目標量が視覚的に分かりやすいように「洗濯ばさみ」を用意したり、10個ずつで設定したりしたことで 見通しをもって意欲的に取り組むことができた。 ・「オレール」「キレール」の支援具を用い、改良を加えていったことで、折る・切ることが速くなったり、 徐々に丁寧さを意識したりすることができ、大変有効だった(G・T) 。 (3)教師の働き掛け ・始めの会において、少し頑張ればできそうな目標を教師と一緒に決めたことで、作業時間いっぱいまで熱 心に取り組む姿が見られた。 - 17 - ・漫画本の紙を生徒の力に合わせた大きさにし、半分程度で折って立たせながら待ったり、数唱による言葉 掛けを行ったりしたことで、少ない力でも自発的に剥がすことができた(A・Y) 。 ・作業時間の半分が終了した際に、残り時間と現在の作業ペース・作業量を伝えることで、後半、さらにペー スを上げて集中して取り組む姿が見られた。その結果、目標枚数量を大きく上回る回数もあった(S・K) 。 (4)環境構成 ・「養護机とつい立」により構造化を図ったことで、集中して作業に取り組む時間を増すことにつながった (M・J)。 ・ガムテープで漫画本を固定したことで、今まで生徒2人による交互作業で行っていた作業から、自力で取 り組める作業により良く変えることができた。自ら剥がせることで友達を待つ時間が無くなり、自信と喜 びを感じながら、 「つかむ→剥がす→かごに落とす」までの一連の作業もできるように変容した(K・M)。 4 課題と今後の取組 ○全体の中での自分の役割理解とさらなる意欲的な作業の取組 ・ペーパーボード班全体の中での自分の位置付けに関する生徒の理解や教師の働き掛けが少なかった。 そのため、作業机に常時1つ完成品を提示したり、見通しカードや出来高カードを作成したりして理解 の工夫を図った。また、作業の工程表(生徒の顔写真も掲載)を掲示・説明することで、作業の流れを 理解しその中での自分の役割をさらに意識できるようにしていく。 ・作業成果や班の枚数目標を出来高カードを用いて毎時間紹介したり、月の出来高数を発表したりしてさ らなる作業への自発的な取組を促していく。 ○作業を行う習慣形成としての作業態度(「聞く姿勢」や「挨拶・返事・報告」)の向上 ・作業心得にある「聞く」 「挨拶・返事」などに関して、「話す相手に姿勢を向ける」「友達の作業内容や 頑張りを聞いて良さを知る」 「静かに聞くことができる」 「話を聞いて返事や拍手ができる」などが実践 を通じて課題に挙げられた。作業場面での姿勢の他に話を聞く場面での態度、発表・報告時の声の大き さについても、全員が支援を要する。今後は、声の大きさや作業態度への支援として、姿勢に関する写 真カードや、始めの会や反省会における全体での確認や称賛など、さらに支援を工夫していきたい。 ・作業教室に入室してから、退出して片付けを終えるまでの時間内は「将来の仕事」の事前学習と捉え、 作業時間内はけじめをつけながら取り組めるようにしていきたい。適宜助言しながら少しずつ改善を図 り、作業中においては、1番大切な意識や意欲を高めるために、作業時間の半分で残り時間を伝えるな どしてさらに集中できるように支援していく。 ○「オレール」「キレール」に類する支援具や支援方法 ・改良を図り、有効な支援具となった「オレール」 「キレール」の他にも、集中がとぎれないように仕切っ て構造化を図ったり、利き手と反対の手も用いたりして、生徒に応じた支援具や支援方法を考えていき たい。 ○個に応じた作業内容や適した役割・場面の追加 ・生徒によっては作業種の追加を検討する。今まで教師が行っていた、手指の巧緻性が必要となる製品の 仕上げ作業を、教師が一緒に脇で作業をしながら示範をし、徐々に作業を覚えて取り組めるように進め ていきたい。 ・毎時間とその月のペーパーボードの出来高数を発表し、全員の意欲を喚起するような「出来高発表係」 を新しく設けていきたい。また、現在の係の中でも今までより受け渡しの回数を増やしたり、作業中に 束ごとで報告する場面を新しく設けたりするなどして、内容や頻度も修正しながら、自分の役割を意識 できるようにしていく。 - 18 - ≪本時のキーポイント≫ 【習慣形成】○作業時間や作業量を意識しながら作業に取り組む支援の方法 【自己理解・他者理解】○自己肯定感を高める場の設定と教師の支援 ≪キーワード・キーグッズ≫ ○1時間の活動表 ○作業ノート ○各自の支援具(洗濯ばさみ、手順表、配置マット、シールなど) 中学部 「作業学習」(ペーパークラフト2班)学習計画案 授業時間 授業場所 授業者 1 10:30~11:45 中学部1組教室 T1大竹和子 T2田中小百合 T3坂田恵智子 T4笠原敦 ペーパークラフト2班のねらい ペーパークラフト2班は、1年生から3年生7人と職員4人で構成されている。生徒は、ペーパー ボード作製の作業工程のうち、漫画紙をシュレッダーに掛けること、シュレッダー済みの紙をミキサ ーに掛けること、それにのりなどを混ぜて粘土状にして型詰めする作業をしている。それぞれの作業 を分担して同じ作業を繰り返し行っている。 ペーパークラフト2班は、自分の作業の目標を設定することで時間いっぱい作業に取り組むことを ねらっている。また、反省会の仕事量を発表する場面で自己肯定感を高めることをねらっている。 2 育てたい力≪将来設計能力【習慣形成】≫≪人間関係形成能力【自己理解・他者理解】≫への支援 生徒は、具体的な指示を理解して行動できるが、集中力の面で長時間作業をやり続けることを不得 手としている。そこで、自分のできることを時間いっぱい最後までやり通すために、作業量の目標を 設定して取り組むことにした。目標は、作業ノートに記入することにした。このとき適切な目標設定 になるように言葉掛けをしたり、実際の作業量を提示したりしながら、目標を意識する支援を行うこ とにした。そのことにより、目標を意識する生徒は、手を休めることなく集中して取り組むようにな ったが、目標を意識することが難しい生徒は、作業に集中しない様子が見られた。そこで、報告の回 数を多くし、その都度称賛を受ける機会を設定するなどの支援の工夫を行うことにした。このことで、 時間いっぱい作業に取り組み続ける姿が見られると期待している≪将来設計能力【習慣形成】≫。そ の結果、反省会で1時間の作業量を発表したとき、友達や職員の称賛を受け、自己肯定感を高めるこ とができると考えている。また、友達の仕事の様子に気付く機会にもなると考えている≪人間関係形 成能力【自己理解・他者理解】≫。 3 主な流れ・作業工程 10:30 作業準備開始 10:40 始めの会(挨拶、教師の話、「作業こころえ」の唱和、目標設定) 10:45 作業開始 【作業工程】①シュレッダー掛け ②ミキサー掛け 1枚ずつシュレッダ 1回分の量をミキサー ーに掛ける。 にセットして掛ける。 - 19 - ③型詰め のりと合わせてから詰 める。踏み固める。 11:25 作業終了 片付け 作業ノート記入 11:35 反省会(作業量報告、教師の話) 11:45 挨拶 4 作業製品の紹介 10月のきらめき祭での販売活動や交流学 習時のプレゼント等で使用するリサイクル 製品「ペーパーボード」。作業班の生徒全員 で、漫画本の紙を剥がし、切り、型に詰める 等の作業を分担しながら形成した製品であ る。 5 学習環境構成図 黒 板 掲示:作業学習活動表・作業こころえ ★T3 ミキサー 作業道具 ワゴン 踏み固 める。 ●G ★T2 袋 型詰め作業 目標達成頑 手順カード 張りシール <①シュレッダー掛け> ●F 出入り口 <③型詰め> ●A ★T4 ●D ●C ★T1 配置が分かるマ ットを敷く。 ●B <②ミキサー掛け> ●E ペットボトルに水 ミキサーの中 紙を止めている洗濯ば を入れる。 身を空ける。 さみを箱につけること 水飲み場 - 20 - 出入り口 で、作業量が分かる。 ≪授業研究のまとめ≫ 1 授業名 「作業学習」(ペーパークラフト2班) 2 育てたい力 ≪将来設計能力【習慣形成】≫ ・作業時間の提示を受けて、作業目標を設定する。 ・作業目標達成のために、時間いっぱい作業に取り組む。 ≪人間関係形成能力【自己理解・他者理解】≫ ・反省会で作業量の発表をして、称賛を受けることで、自己肯定感を高める。 3 有効だった支援 (1)作業内容・作業工程 ・ペーパークラフト1班から引き継いだ漫画紙を「①シュレッダーに掛ける→②ミキサーに掛けて、 細かくする→③のりを混ぜて、粘土状にして型詰めする」の3工程を行っている。7名の生徒がこ の3工程の一つをそれぞれ分担することで、作業製品を作りあげている。一つの工程を担当するこ とで、自分の作業内容を理解して時間いっぱい、作業に取り組む様子が見られた。 (2)教材・教具 ・①シュレッダーに掛ける仕事では、10枚を1束にまとめた漫画紙をペーパークラフト1班から引 き継いでいる。10枚を束ねている洗濯ばさみを箱に止めることで、生徒は作業量を把握すること ができた。また、洗濯ばさみの数が増えることで、自分の仕事量を客観的に捉えることができると 同時に、反省会では洗濯ばさみを数えて、仕事量を発表することもできた。 ・①シュレッダーに掛ける仕事の中で、目標を設定し意欲的に取り組もうとする力が弱い生徒に対し、 10枚シュレッダーを掛けると目標達成シール1枚を作業ノートに貼れ、1時間終了すると模様が 完成するようにした。そのことで、シールを貼ることを目標にしながらシュレッダー掛けを続ける 姿が見られた。 ・②ミキサー掛けの仕事をしている生徒が、一人で仕事を進められるように、道具の配置マットやタ イマーを利用した。道具の配置はマットを使うことで、混乱なく置くことができた。また、タイマ ーを使うことで、ミキサーを回す時間がはっきりしたので、スイッチを切るタイミングがずれるこ となくできるようになった。 ・③型詰め作業は、のりをこねる、片栗粉を混ぜる、下板と型を用意して材料を型に詰める、タオル を敷いて上板を置く、体重を掛けて踏み固めて水分を取る作業と、いくつもの工程を行っている。 始めは、一つ一つ必要な道具を、教師の支援を受けながら行っていたが、手順表を用意して使う道 具が分かるようにしたことで、教師に確認しながらでも、一人で用意して作業を進めることができ るようになった。踏み固めるときに、どのくらいの時間体重を掛けるかが分かるように、タイマー を使ったことにより、終わりの見通しをもたせることができ有効だった。 (3)教師の働き掛け ・作業に慣れるまで一つ一つ丁寧にやり方を教えてきたが、授業研究の頃には自分の仕事が分かり、 頑張って作業に取り組むことができるようになってきた。支援を続けるうちに、教師は必要以上に - 21 - 言葉掛けをするのでなく、生徒の様子を見て必要に応じて言葉掛けを行うようにした。作業の手が 止まったときや次の動作に移れないときには、言葉掛けを行うと効果があった。 ・その他としては、安全面に配慮した働き掛けを行った。シュレッダーの刃、ミキサーの刃など特に けがにつながることは、道具の扱い方の指導を行った。 ・作業終了の時間を「あと、10分です。」「あと、5分です。」と告知していく。そのことで、作業 終了時間を意識して、時間いっぱい作業しようとする姿や目標の作業量を達成しようと頑張る姿が 見られた。 ・反省会では、生徒の様子に応じて発表の仕方の支援方法を変えた。作業量を洗濯ばさみや指を使っ て、友達や教師に伝えることで、仕事を頑張ったことを称賛され自己肯定感を高めることができて、 とてもよかった。 (4)環境構成 ・黒板に「1時間の活動表」を張り出した。このことで「挨拶」をする班長は、自分の出番が分かり 前に出る時間が短縮された。また、目標書き、作業準備、作業開始、作業終了、後片付け、反省会 の流れが分かり、作業に集中することができるようになった。さらに、今自分たちがどの工程をし ているのかが分かるように「1時間の活動表」の数字を赤い矢印で示した。このことで、活動の見 通しがもちやすくなった。 ・シュレッダーを掛ける作業をしている4人の生徒の配置を考えた。2人は対面にすることでお互い に刺激し合い、作業に取り組むことができた。残りの2人は、壁に向かいながら作業することにし たことで、作業に集中する時間が増えた。 4 課題と今後の取組 ○作業がどの職員とも、進めることができるようにしていく。 現在それぞれの生徒に対して、特定の教師が支援を行っているが、今後は支援者を班内で代えな がら、誰の指示でも仕事を進められる力を育てていきたい。 ○作業準備から後片付けまで、生徒一人で作業に取り組むことができるようにしていく。 生徒は、自分の仕事を理解して作業に取り組む時間が増えてきている。次への段階として、生徒 のやりたい気持ちを大切にしながら、支援を減らして生徒に任せられる仕事を増やしていくことが 必要になってくると考える。また、報告のスパンを少しずつ伸ばして、作業時間を確保していきた い。 - 22 - ≪本時のキーポイント≫ 【協力・共同】 ○分担された仕事内容を理解し、協力して作業に取り組むことができる支援 【肯定的な自己評価】○自ら目標を意識し、意欲的に取り組むための支援 ≪キーワード・キーグッズ≫ ○作業確認ボード ○反省会(称賛等) ○各自の支援具(作業の手本、数量確認シート、カレンダーの台紙枠) 中学部 「作業学習」(カレンダー班) 学習計画案 授業時間 授業場所 授業者 1 10:30~11:45 中学部3組教室 T1遠藤久枝 T2泉昌明 T3濱井義郎 カレンダー班のねらい カレンダー班は、1 年生から3年生の 6 人と職員 3 人で構成されている。クラフトパンチ、紙、 のり、ペンを使った軽作業を中心に行い、分業で卓上カレンダーを製作している。作業内容はカレン ダーの数字書きやクラフトパンチによるデザイン装飾、木枠のやすりがけなどである。これらの作業 を通して任された仕事に進んで取り組み、作業後は自己を振り返り、課題に気付くことをねらいに取 り組んでいる。 2 育てたい力《人間関係形成能力【協力・共同】 》《意思決定能力【肯定的な自己評価】》への支援 ほとんどの生徒が音声言語による指示を理解し、活動の見通しをもって作業に取り組める生徒が多 い。授業の始めに生徒の代表者が作業内容の分担と作業時間について、作業確認ボードを見ながら指 示を出し、各自が自分の仕事を確認してから作業に取り掛かっている。生徒に応じた作業内容を適切 に分担することによって、互いに協力して仕事に取り組めることを期待している《人間関係形成能力 【協力・共同】》 。 反省会では、作業に取り組む姿勢や挨拶、報告などの態度や製品の精度・量など一人一人の目標に ついて、教師による言葉掛けや作業確認ボードにより自己の振り返りを支援していく。また、みんな で称賛することによって、自信をもったり、自己の課題に気付いたりすることで、次の学習に向けて の意欲付けになることを期待している《意思決定能力【肯定的な自己評価】 》。 3 主な流れ・作業工程 10:30 作業準備開始 10:45 始めの会 挨拶 教師の話、作業内容の確認【指示係:C】、「作業こころえ」の唱和【号令係:F】 10:55 作業開始 <月カレンダーグループ> <デザイングループ> ① 日付の記入 ② 型抜き ③ 月カレンダー貼り クラフトパンチを使って 月カレンダーを貼り 型抜きした紙片を組み合 型抜きする。 付ける。 わせてデザインする。 色分けをして、 日付を 11:25 作業終了、片付け、反省会【号令係:F】 記入する。 ④ レイアウト - 23 - 11:45 挨拶 4 作業製品(内容)の紹介 10 月のきらめき祭で販売 する「卓上カレンダー」。 デザインは色紙とクラフ トパンチを組み合わせて 楽しめるデザインを工夫 している。 5 学習環境構成図 黒 板 作業こころえ 作業確認ボード 進行位置 <デザイングループ> 型抜き 時計・数量確認シートを置 く。 手本を見て記入する。 出入口 ② <月カレンダーグループ> ★T2 ★T1 ●E ゴミ箱 ゴミ箱 ★T3 ゴミ箱 ●F ① ④ レイアウト ●D 日付の記入 ●B ゴミ箱 ●A 月カレンダーが 台紙からずれた り、曲がったり しないように枠 の中に貼る。 - 24 - ●C 出入口 ③ 月カレンダー 貼り ≪授業研究まとめ≫ 1 授業名 「作業学習」(カレンダー班) 2 育てたい力 ≪人間関係形成能力【協力・共同】≫ ・生徒に応じた作業内容を適切に分担することによって、互いに協力して仕事に取り組むことができる。 ≪意思決定能力【肯定的な自己評価】≫ ・反省会では、作業に取り組む姿勢や挨拶、報告などの態度や製品の精度・量など一人一人の目標について、 教師による言葉掛けや作業確認ボードにより自己を振り返ることができる。 ・みんなで称賛することによって、自信をもったり、自己の課題に気付いたりすることができる。 3 有効だった支援 (1)作業内容・作業工程 ・始めの会で作業内容や分担を確認する場を設定することで、自分の役割を意識し、活動に見通しをもって意 欲的に取り組む姿が見られた。 ・限られた作業内容ではあったが、生徒の様子に応じてグループ構成をしたことで、ほぼ落ち着いた態度で作 業に取り組むことができるようになってきた。 ・反省会では、それぞれが個人目標を意識しながら自己を振り返って自己評価をし、次時への意欲を高めるこ とができた。 (2)教材・教具 ・作業確認ボードを表示することにより、お互いが仕事内容を意識して作業に取り組んだり、自ら目標を意 識したりして取り組むことができた。 ・作業の手本や数量確認シートなどをそれぞれが手元に置くことで、見通しもって作業をすることができた。 ・カレンダーの紙を台紙に貼る際、ずれないように「カレンダー枠」を使うことで、ほぼ台紙の中心に貼る ことができるようになった。 (3)教師の働き掛け ・作業中は、質問された時や困っている様子が見られた時等に、必要最小限の言葉掛けにしたことで、生徒の 自主的な挨拶、報告、確認などの場面が見られるようになった。 ・反省会で、生徒が自分の活動を振り返るきっかけとなる言葉掛けをしたり、できたことは十分に称讃したり することで達成感をもたせることができた。 (4)環境構成 ・机の配置について、友達の動きが気にならないように工夫したり、報告や確認がしやすいように動線を考慮 したりすることで、お互いが作業に集中して取り組めるようになった。 - 25 - ・ゴミ箱を各机の脇に置くことで、ゴミを捨てに立つ必要がなくなり、離席が減少した。 4 課題と今後の取組 ○互いに協力して作業に取り組もうとする意識がもてる支援のあり方。 授業の始めに作業内容を確認することで、落ち着いて作業に取り組むことができたが、生徒同士が関わり を持って取り組む場面が少なかった。今後、製品の受け渡しや挨拶、報告で互いに関わることができる場面 を増やす工夫をしていく。 ○より生徒の様子に合わせた作業工程、支援具の工夫。 作業を進める上で、生徒の様子に合わせた作業工程とそれに必要な支援具を工夫することで、自信をもっ てより一層作業に意欲的に取り組むことができるのではないかと考える。 - 26 - ≪学部研修を振り返って≫ 1 『目指す姿』への達成度 ○「作業学習」の取組から ・作業学習を通して育てたい力や支援方法等を構想しながら授業を展開するなかで、 「働く力」 「生活する 力」「人やものとかかわる力」を各班ごとに高めることができた。 ・見通しや期待感をもって自分の作業に時間内取り組んでいる。完成品や出来高などを意識しながら自分 の役割や全工程内の位置付けを理解し、さらなる作業意欲や協調性をもって取り組めるように、今後も 支援を工夫する。また、班全員で協力しながら、共同作業を行っているということを日頃から意識でき るように伝えていきたい。 ・中学部から高等部につながる作業学習になるように、普段から意識して働き掛けていく。 (挨拶、返事、話を聞く態度、作業態度や姿勢など) ○他の指導の形態との関連、グループによる支援について ・生活単元学習や総合的な学習の時間において、役割分担をしながら協力して会を成功させる取組や、施 設見学や作業体験・見学による自己・他者理解を深めたり働く力を高めたりする取組の実践を継続的に 行うことができた。生徒はそのことにより自信をもったり達成感・満足感を感じたりすることができた。 その結果、一人一人が各グループにおける目指す姿を高めることにつなげられた。 ・作業学習で培った挨拶や態度、役割分担で取り組む力等が、日常生活の場面や他の指導の形態にも広げ ることができた。今後も他の指導の形態との関連を深められるように支援に当たる。 ・特に、目指す姿において生活する力を高めることをねらう B グループは実態の幅が広いこともあり、 類型化をさらに進めながら、適した支援や評価方法を今後も工夫していきたい。 2 自立につながる力の育成について ○生徒に必要な力 ・今年度の作業学習の実践から中学部では、基盤と考える人間関係形成能力の「集団参加、協力・共同」 「自己理解・他者理解」 「挨拶・清潔・身だしなみ」 「場に応じた言動」「意思表現」に加え、将来設計 能力の「習慣形成」、意思決定能力の「振り返り・肯定的な自己評価」 「目標設定」の力を伸ばしていく。 作業学習以外の指導の形態においても、これらは必要となってくる力であり、かつ高等部につながる力 でもあるため、次年度も研修を深めていきたい。 ○来年度研修につなげるための今後の取組 ・協力共同の内容や役割分担が行えたり、目標設定や肯定的な自己評価が行えたりする場面の設定を意図 的、計画的に設定していく。 ・継続的に取り組むことができ、かつ支援を工夫することができる「作業学習」 「日常生活の指導(清掃・ 朝の会など)」 「ランニング」の指導において、チームティーチングによる連携を図りながら実践を進め る。 - 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