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専門医セミナー(腎臓)

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専門医セミナー(腎臓)
専門医セミナー(腎臓)
明日から一人でできる腎疾患治療
• コンセプト
・研修医の先生が基本的な腎疾患を自分で診ることができる。
・あくまでも臨床にそくしたお話しにする。
• お題
1.ネフローゼ症候群について
2.夜尿について
3.学校検尿における血尿、蛋白尿の解釈
ネフローゼ症候群について
ネフローゼ症候群とは・・・
• ネフローゼ症候群とは単一の疾患名ではない
• 大量の蛋白尿による低たんぱく血症と、浮腫を
呈し、診断基準をみたせば、原疾患の種類を問
わずネフローゼ症候群と定義
①小児ネフローゼ症候群の診断基準
(小児腎臓病国際共同研究斑 ISKDC)
以下の2項目の条件を満たすこと
• 1. 高度蛋白尿(夜間蓄尿で40mg/hr/㎡以上が3
日以上)
• 2. 低アルブミン血症(血清アルブミン2.5g/dl以
下)
②小児ネフローゼ症候群診断基準
(厚生省特定疾患調査研究班)
•
蛋白尿
1日の尿蛋白量は3.5g以上、もしくは0.1g/kg/day
または、早朝起床尿第1尿で300mg/100ml以上の蛋白尿が3~5日以
上持続する。
・ 低蛋白血症
血清総蛋白量
学童、幼児 6.0 g/100ml以下
乳児
5.5 g/100ml以下
血清アルブミン量
学童、幼児 3.0 g/100ml以下
乳児
2.5 g/100ml以下
• 高脂血症
血清総コレステロール量
学童
250 mg/100ml以上
幼児
220 mg/100ml以上
乳児
200 mg/100ml以上
• 浮腫
※注 ・蛋白尿、低たんぱく血症は本症診断のための必須条件である。
・高脂質血症、浮腫は診断のための必須条件ではないが、認めれば
診断はより確実となる。
病因
• 現在、特発性ネフローゼ症候群は、なんらかの
免疫異常を背景にT細胞などで産生された液性
因子がポドサイト(糸球体上皮細胞)やスリット
膜に作用し、最終的にスリット膜に構造変化を
生じる結果、蛋白尿が漏出すると考えられてい
る。
疫学
• わが国では、年間約1300人が発症している
(5人/10万人)
・4歳をピークに3~6歳に好発し、
男女比 2:1 と男児に多い
ネフローゼ症候群の分類
• 特発性ネフローゼ症候群・・・90%
・組織学的には、85%が微小変化群(MCNS)
10%が巣状分節性糸球体硬化症
・MCNSの90%以上がステロイド感受性ネフ
ローゼ症候群で長期予後良好
• その他・・・10%
各種の腎炎やAlport症候群などの遺伝性疾
患、HBV,HCV腎症など
予後
• nephrotic期をのりきれば生命予後良好。ステロイド反
応性である限り慢性腎不全への移行はほとんど無い。
Tarshish P et al: Prognostic significance of the early course of
minimal change nephrotic syndrome: Report of the international
study of kidney disease in children.
J Am Soc Nephrol 8: 769-776, 1997
覚えておいてほしい定義
治療
(本論)
以上を踏まえ日本小児腎臓
病学会よりガイドラインが出
された
治療中の問題点
・浮腫
・凝固異常
・感染症
・血圧
浮腫
• 成因
・underfill theory: 低アルブミン→膠質浸透圧の
低下血管内から組織への水の移動→循環量の低
下→水、Naの再吸収亢進→浮腫
・overflow theory: 一次的にNa排泄低下、再吸収
亢進がおこり細胞外液量が過剰になる→浮腫
・その他
浮腫
対応
Naの貯留が問題なので、摂取をへらすか、その排泄を
促進することが治療の根幹
 1.塩分制限:
高血圧、尿量が少ない時は厳格に(0-5g/day)。もともと発
症時は腹痛等もあり食欲低下の方が多い。実際に摂取され
る量で評価。むくみがとれたら解除。
 2.水分制限:
高度の体液貯留の場合は必要。と書かれているが実
際はある程度施行している(乏尿症例が多いため)
基本的には、水分摂取量=不感蒸泄+前日尿量
低血圧や静脈血栓症に注意。
水分バランス:エコー、レントゲン、血圧、体重
 3.利尿剤:
・効果力価の違いからroop利尿薬を使用することが多い。
・しかし、roop利尿薬の特性(血中で殆ど(99%)がAlb
と結合して移動しているのでNSで効果発現が弱くな
る。)から、ある程度の量が行かないと効果が充分でな
い可能性がある(Alb1.5以下では効果がかなり薄くなる
との報告もあり)
・単発投与ではその後のreboundなどが考えられるため、
分割、持続のほうがよいとの報告有り。
 4.アルブミン:
・ recommendは循環血漿低下があり腹痛、vitalの変化
等がある時に限るとなっている。Albの投与自体が糸球
体上皮細胞の障害や陰性荷電のすくないAlb製剤の特性
上、尿蛋白減少をおくらす原因にもなることを考慮に入
れておく。
投与方法
• Alb製剤 0.5~1.0g/kg
2~4時間でdiv
Alb後に、
• フロセミド 0.5~1.0mg/kg i.v.
凝固障害
 成因
・凝固因子の尿中漏出
ATⅢ(MW 5800)→トロンビン活性↑
・プロテインC&Sの低下
・フィブリノーゲン産生亢進(低Albによる)
・高Chol血症のための血管内皮障害
・血小板活性化
 対応
・ATⅢ輸注(70%以上を目標)
・抗血小板剤投与
・抗凝固剤投与
※過去、群馬大学および関連病院で6例の血栓症を知ってます。文献
上も無症候でも10%内外で深部静脈血栓症を発症していると言わ
れています。くれぐれも注意してください。
投与方法
・ヘパリン持続点滴
維持輸液にヘパリンを150単位/kg/day
程度混注
・AT-Ⅲ製剤:AT-Ⅲ<70%のとき
30-50単位/kg
(30分~1時間でDIV)
感染症
 成因
・IgG低下。尿中漏出+IgM→Gのクラススイッチの変調
(細菌感染症において肺炎球菌、インフルエンザ桿菌がおおく
黄色ブドウ球菌が少ないことからIgG2の低下が予想され
る。)
・低タンパク血症:浮腫→皮膚菲薄化→表皮のバリアの脆弱、皮
下組織の培地化
・細菌オプソニン効果の低下。
・ステロイド剤、免疫抑制剤の投与。
 対応
・IgG製剤の投与は状態により考慮
(投与量:200~400 mg/kg )
・落ち着いているときの積極的なワクチン接種
血圧管理
高血圧時には、降圧剤投与
第一選択はCaブロッカー
小児高血圧基準
• 幼児
小学校
• 低学年
• 高学年
中学校
• 男子
• 女子
高校生
収縮期血圧(mmHg) 拡張期血圧(mmHg)
120以上
70以上
130
135
80
80
140
135
140
85
80
85
ネフローゼ症候群疑いが
入院しました
問診の時に注意すること
水痘の既往、予防接種歴
感染の有無(ツ反?)
家族の腎疾患の有無
周生分娩歴
診断後の検査
• 採血(2次性ネフローゼ症候群の鑑別,合併症の有無)
血算,凝固(AT3含む) TP Alb 蛋白分画 Tf
T-cho TG GPT GOP LDH UA BUN Cre Na K Cl Ca
IP C3 C4 CH50 ASO ASK IgG IgA IgM IgE 抗核抗体
HBVAg HCVAb
• 検尿 尿定性・沈渣 β2MG NAG 蛋白定量 Cre Tf
IgG
• S.I.(selective index)=(U IgG×P Tf)/(P IgG×U Tf)
• エコー 腹水・器質的腎疾患の有無、
血管内脱水の程度
• 胸部X-P 胸水貯留の有無
治療
(例:体重15kg 身長100cm 体表面積 0.64m2)
①5%糖水(250ml)+ヘパリン2.4ml・・・10ml/hr
ヘパリンは153単位/kg/day
②プレドニン 12mg×3
i.v.
プレドニン56/m2/day
③ガスター20mg +5%糖水 div
内服:ビタミンD製剤、ジピリダモール
(パルス療法)
・mPSL 20 mg/kg/day 3日間
・連日3日間を1クールとし、週1クールを
めやす
(むくみが強い場合、1クール目は、mPSL 10 → 15 → 20
mg/kg/dayと増量することもある)
・ヘパリンは、mPSLのボトルに50単位/kg+
メインに100単位/kg/dayとしている
・パルス中は、血圧チェックと、モニタリング
行っている
実際のメニュー
(例:体重15kg 身長100cm 体表面積 0.64m2)
①
5%糖水(250ml)+ヘパリン1.5.ml
・・・10ml/hr
(ヘパリンは96単位/kg/day)
★メインは、維持輸液でもかまいません。
②
ソル・メドロール(125mg)2.5V + 5%糖水100ml
+ヘパリン 0.75ml
・・・30ml/hr
(ソル・メドロール
20mg/kg+ヘパリン 50単位/kg)
ステロイドの副作用
• 成長障害:成長にそったステロイドの減量を
• 胃粘膜障害
• 骨粗鬆症:大腿骨頭MRI、骨密度、VD、大人では
ビスフォスフォネート製剤
• 白内障、緑内障:眼科受診。
• myopathy
• 神経症状
• 易感染性 大人では20mg/day超えると日和見感染明
瞭
• 食欲亢進
• 中心性肥満、満月様顔貌
ネフローゼ症候群の
腎生検のタイミング
• 持続性に血尿・高血圧・腎機能低下・低補体血
症を伴う、発症が生後6ヶ月以内など、微小変化
型以外の病型が疑われる場合
• ステロイド抵抗性の場合
頻回再発の人の治療オプション
• シクロスポリン:
頻回再発NS・ステロイド抵抗性NSの事実上第
一選択薬。
寛解維持率が高い。中止後の再発率が高い。
投与方法:食前投与、血中濃度をモニタリング。
グレープフルーツは血中濃度を上昇させる
副作用:腎毒性あり(2年使用後は休薬期間つくる。
継続する場合は腎生検する)
高血圧(降圧薬使用)
PRES(高血圧とシクロスポリンの使用が危険
因子、ネフローゼ状態にPRES発症の
危険高まる)
• シクロフォスファミド:有害事象として、性腺
抑制、催腫瘍性あり。
• ブレディニン:安全性高い。再発抑制効果も弱
い。高容量での治療効果期待。
夜尿:
夜間睡眠時に遺尿を生じ、衣類や寝具を湿潤
させる状態。「おねしょ」
夜尿症;
5~6歳を過ぎても月に数回以上、夜尿が引き
続き見られる場合。


一次性: 生来持続している夜尿症
二次性: 6か月以上自立した後に見ら
れる夜尿症


夜尿の頻度; 幼稚園児 20-30%
小学校1年生 約10%
中学校1年生 数%
一部は成人に移行。
夜尿の自然消失率; 1年で約10%が消失。






膀胱機能の異常説:両親や同胞に出現率が高い。尿意促迫
を訴えることや機能的膀胱容量が縮小している児が多い。
自律神経異常説:夜尿症児にODを認める児が多く、夜尿症
児には「冷え性」が多い。
アレルギー説
睡眠の異常説:終夜睡眠ポリソムノグラフィーによる夜尿症の
睡眠研究→レム睡眠のみならず全ての睡眠深度にて生じる。
心理・環境的異常説:心理・環境的因子によって誘発されると
いう考え。
内分泌異常説:抗利尿ホルモン(ADH)の分泌低下が夜尿症
をおこす。
腎機能が悪い?
 腎・尿路系(膀胱)の奇形?尿路感染症?
 脊髄疾患?
 内分泌疾患?DM? DI?
 てんかん、ADHD?心因性?
 その他; 便秘?睡眠時無呼吸症候群?

*解離型とは膀胱型の一つの病型で、がまん尿量(昼間膀胱容量)
は低下していないが、夜間のみ膀胱容量が低下しているタイプを言
う。
**体重換算を参考にすると、夜間尿量が9ml/kg以上で多尿型、
がまん尿量が6ml/h未満で膀胱型とする。
実際に、夜尿(おねしょ)を主
訴とした患者がきたら・・・









①一次性か、二次性か(いつから夜尿があるのか?)
②家族歴で夜尿の有無
③日中の遺尿(尿失禁)の有無
④便秘の有無
⑤上部・下部尿路感染症、腎尿路奇形の有無
⑥学校検尿異常の有無
⑦睡眠時無呼吸症候群の有無
⑧水分の大量摂取の有無
⑨環境の変化の有無?
などなど・・
①検尿:尿定性、尿沈査、尿浸透圧(早朝尿)、
尿電解質、尿中β2MG、尿NAG
②血液検査:
血算、生化
(TP,ALB,CRP,GOT,GPT,LDH,CK,BUN,Cr,
Na,K,Cl,Ca,UA,血糖値、血清浸透圧、ADH)
一応、血ガスも
③腹部エコー(腎・膀胱):腎尿路系の形態異常の
有無、膀胱炎の有無
④腹部X線検査:便秘や潜在性二分脊椎症の評価
①腰椎MRI:尿失禁、難治性便秘
 ②頭部MRI:ADH分泌不全の精査
 ③脳波検査:痙攣の既往
 ④残尿測定(排尿直後の膀胱エコー)
 ⑤膀胱造影検査(VCG)


⑥膀胱機能検査・尿流検査(→@泌尿器科)

夜尿の回数
○: 日/ 日、
×: 日/ 日、
△: 日/ 日

昼間の膀胱容量 (がまん尿量)

夜間の尿量 (オムツ尿量+起床時尿量)
小学校1~3年生: 200ml 以下
小学校4年生以降: 250ml 以下
夜間尿量 = オムツ尿量 + 起床時尿量

小学校1年生:150ml以上

小学校2年生:200ml以上

小学校3年生以降:250ml以上
一般的には年齢相応の機能的膀胱容量は{標準体重(kg)×7~8ml}
1)生活指導
 2)薬物療法
DDAVP製剤、
抗コリン薬
三環系抗うつ薬
 3)行動療法 アラーム療法

平成16年6月
http://www.jsen.jp/guideline/
①起こさない(中途覚醒を強制しない)
②水分摂取リズムの調整
具体的には夕方から水分を厳しく制限。
特に、就眠3時間前からの飲水制限。
③眠前の排尿・・当たり前ですが・・
④膀胱訓練(排尿抑制訓練・がまん訓練)
⑤冷え症状への対応

① DDAVPスプレー10(点鼻)
ミニリンメルトOD錠
初回: 1スプレー(10μg) 就眠前
ミニリンメルトOD錠(120μg)
1~2カ月経過しても効果不十分な場合には、
2スプレー or ミニリンメルトOD錠240μg に
増量。摂取水分コントロールを守ることが重要。

副作用としては、水中毒症状
→浮腫、頭痛、嘔気、極端な場合は痙攣
・副作用防止のために水分摂取リズムを守る。
・就寝2時間前以降に200ml以上の水分を摂
取したら、使用しない。
→飲んだら点鼻するな、ミニリンメルトを使うな。

②三環系抗うつ薬
薬理作用としては、下垂体後葉からの抗利
尿ホルモン分泌を促す作用と、抗コリン作用
による膀胱機能への作用、中途覚醒機能を
促進する作用。
就寝前内服、10mgを基準量とし、効果が
ない場合はほかの治療法へ変更するか、増
量しても20~25mgに。
トリプタノール 10mg 、トフラニール10mg、アナフラ
ニール10mgのいずれか
副作用:食欲不振、悪心、嘔吐、不眠、倦怠
感があるが、これらが見られた場合には直ち
に服用中止。
 治療効果が判然としない場合は中止。
 海外では夜尿症治療の第一選択ではない。
 日本では認められないが、海外では心毒性の
副作用報告あり。過量投与例では、死亡例の
報告あり。


①抗コリン薬
薬理作用は抗コリン作用・平滑筋直接作用に
よって排尿運動抑制作用を発揮し、初発尿意
量、最大膀胱容量の増加と膀胱の無抑制収
縮を減少させる。
・バップフォー10~20mg 夕食後または眠前
・ポラキス 1~4mg 夕食後または眠前
・ベシケア 2.5~5mg 夕食後または眠前




副作用:便秘、口渇感、ドライアイなど
問診で、緑内障、心疾患、重度の便秘、重症筋
無力症などの既往歴を確認する。
三環系抗うつ薬との併用に際には、副作用が増
量することに留意。
処方時の病名は、過活動膀胱・不安定膀胱・神
経因性膀胱のいずれかを追加。
「解離型」の治療としてのアラーム療法
 解離型の特徴:

・がまん尿量は年齢相当
・一晩の尿量はおおむね200ml以下にコントロール
(DDAVP製剤使用中も含め)
・夜間尿量が少ないのも関わらず夜尿を生じてしまう。
・従来は「難治性夜尿症」として治癒までに数年を要
した。


「解離型」夜尿症は、睡眠中の膀胱の「過活動」
状態によって生じると推測される。
少量の畜尿で膀胱収縮を生じて夜尿となる。
夜尿アラームによる「一過性の覚醒」によって、覚
醒時の排尿抑制メカニズムを条件づけ、睡眠中
の畜尿量を高めることが治療の目的である。
→夜尿直後に覚醒させるので睡眠中の尿保持力
が増大し、夜間尿量を上回る膀胱容量の獲得に
よって夜尿消失がもたらされる。

観察項目:夜尿日誌を記入。一晩あたりの夜
尿回数と夜尿時間をしらべる。アラームの鳴る
時間が朝方にずれていく場合に有効性が確
認できる。
 治療開始2~3カ月で全く効果が見られない
場合は他の治療法への移行や併用療法を考
慮。

①夜尿頻度が多く、一晩の夜尿回数が多い。
②昼間尿失禁が存在する。
③夜間の機能的膀胱容量が少ない。
④残尿が存在する。
⑤高カルシウム尿症が見られる
夜尿症診療で大切なこと
①起こさない、怒らない、焦らない
 ②規則正しい生活パターンの確立
 ③水分制限・塩分制限
 ④寒冷対策
 ⑤夜尿日誌をつける。(回数、夜間
尿量、がまん尿量)

専門医セミナー・腎臓
学校検尿における
血尿、蛋白尿の解釈
学校検尿について
1973年(昭和48年)6月6日 発令
1974年4月より全国で実施
群馬県では1977年に児童生徒腎臓疾患対策委員会
が発足
方式としては早朝第一尿を2回検査
尿定性の判定は一般的には切り捨て方式
※尿糖は一回目陽性で即三次へ
県学校検尿のシステム
一次検査(蛋白、潜血、糖、PH)
異常なし
尿糖以外異常あり
異常なし
尿糖異常
異常あり
二次検診(校医、主治医)
三次検診(指定医療機関)
結果報告(診断名、管理指導区分)(学校へ提出)
教育委員会
児童生徒腎臓疾患対策委員会
平成22年度学校検尿実施状況
受検者数
小学校
中学校
高等学校
114558
57133
41012
1342
586
(1.03%)
288
(0.70%)
137
(2.61%)
360
136
17
一次検査
633
陽性者数 (0.55%)
受検者数
486
県立特別支援校
平成12年度学校検尿実施状況
小学校
中学校
高等学校
県立盲ろう
養護学校
在籍数 121396
受検者数 120457
(99.2%)
65681
64915
(98.8%)
51319
50360
(98.1%)
1326
1160
(87.5%)
一次検査
774
陽性者数 (0.64%)
755
(1.16%)
437
(0.87%)
137
(3.79%)
667
407
120
受検者数
759
学校検尿の評価と問題点
評価:
学校検尿で発見された予後不良のIgA腎症の早期治療が近年の治療
の進歩により治療できるようになり、学校検尿による早期発見の成果が、
IgA腎症の早期治療と予後改善に役立った証拠といえよう。
東京都予防医学協会年報 1997
小児期膜性増殖性腎炎では、早期発見、早期治療が極めて重要であり、
20数年にわたる学校検尿での本症早期発見の成果が予後の改善に役
立っていると言える。
東京都予防医学協会年報 28: 25-28, 1999
新規透析導入者数の年齢階層別、年代別推移は1987年から20歳台、
1994年から30歳台の患者数が減少してきている。
学校検尿の評価と問題点
問題点(限界):
学腎疾患の発見を目的とした場合の陽性率の低さ
疑陽性の問題
早期発見が困難な疾患の存在
両側低形成腎
逆流性腎症
両側水腎症
嚢胞性腎疾患
生理的尿異常への対応
女児の生理中の採尿
厳格な早朝安静尿の採取
新しい検査項目が必要
↓
尿中β2ミクログロブリン
(偽陰性が多い)
超音波検査
(手技が煩雑)
尿異常の分類とその評価
・
・
・
・
・
血尿のみ
蛋白尿のみ
血尿&蛋白尿
尿糖
白血球尿
症例集積での評価
1982年6月~2002年5月の20年間に
学校検尿で尿異常を指摘された345名。
尿異常の内訳(345名)
血尿、蛋白尿群 142名
(41%)
血尿単独群 126名
(37%)
蛋白尿単独群 77名
(22%)
実際の尿異常の割合
平成11年度学校検尿要二次精査
血尿
蛋白尿
血尿、蛋白尿
84%
12%
4%
平成22年度学校検尿二次検
診有所見者
血尿
45%
蛋白尿
36%
血尿、蛋白尿 10%
血尿単独群(126名)
Alport症候群(1%)
無症候性急性腎炎(2%)
腎結石(2%)
特発性高Ca尿症(4%)
Nutcracker現象(4%)
良性家族性血尿(10%)
特発性腎出血(11%)
無症候性血尿(68%)
微少変化型
IgA腎症
増殖性腎炎
基底膜菲薄
血
・糸球体性血尿
尿
・非糸球体性血尿
糸球体腎炎
(急性、慢性)
(原発性、続発性)
遺伝性腎炎
間質性腎炎
血管性疾患
高カルシウム尿症
腫瘍
外傷、異物
運動性血尿
外陰部、肛門からの流入
非糸球体性血尿、糸球体性血尿
血尿のみの人へ
・問診が大事
・殆どの場合、喫緊に問題になることはない
・運動制限は原則不要
・しかし、定期的な検尿は必要
蛋白尿単独群(77名)
若年性ネフロン癆(1%)ネフローゼ症候群(1%)
爪膝蓋骨症候群(1%)
腎下垂(3%)
嚢胞腎(4%)
尿細管性蛋白尿(6%)
低形成腎(12%)
持続性蛋白尿(14%)
体位性蛋白尿(58%)
体位性蛋白尿
診断基準
・安静臥床で尿蛋白陰性、立位で尿蛋白陽性となる。
・一般身体状態が正常である。
・腎、心、血管疾患の既往がない。
・血圧の上昇がない。
・腎機能は正常であり、血液生化学所見、尿沈渣などに異常を認めない。
・尿路系に異常がない。(先天奇形、遊走腎などがない)
・その他蛋白尿を来すような異常がみられない。
尿蛋白の性状としてはAlb主体の糸球体性蛋白尿
尿蛋白分画はβ、γ分画の上昇(血清のものに類似する?)
腎循環障害による腎鬱血説が有力
予後は良好
低形成腎の超音波、DMSA像
左
右
DMSAシンチグラフィー:
左腎の核種取り込み低下が著明
蛋白尿のみの人
・起立性蛋白尿の除外がとても大切
・そのために厳密な早朝尿(前日就寝直前排尿、
翌朝一番尿提出)の評価を行う。
・起立性蛋白尿が除外されたら画像を含め精査
が必要。
血尿、蛋白尿群(142名)
半月体形成性腎炎(1%)
リポ蛋白糸球体症(1%)
ループス腎炎(2%)
巣状糸球体硬化症(3%)
膜性腎症(5%)
微少変化群(2%)
膜性増殖性腎炎(12%)
IgA腎症(47%)
増殖性腎炎(27%)
正常糸球体
(×400)
(×2000)
IgA腎症
(PAS染色 ×400)
(免疫蛍光染色: IgA)
急性糸球体腎炎
LM
EM
IF C3d
血尿&蛋白尿の人
・この状態が続く場合、腎生検が必要
・多くの場合、しっかりとした治療が必要
尿検査の留意点
①血尿:女児で生理中ではないか?
尿検体が適切かどうか?
(清潔な容器、中間尿、速やかに
検査(直後、あるいは冷蔵4時間以内)
②蛋白尿:厳格な安静時尿がとれているか?
③血尿蛋白尿:第一尿で尿蛋白が消失するか?
尿沈渣で円柱の存在は?(円柱
は糸球体腎炎を強く示唆する)
尿異常者の二次検査
①血尿のみ
採血、検尿(早朝、来院時尿)、エコー、尿Ca/Cr、家族歴
②蛋白尿のみ
採血、検尿(早朝、来院時尿)、エコー、第一尿、OAテスト
③両者
採血、検尿(早朝、来院時尿)、エコー、多くの場合腎生検
採血項目
血算、生化、補体、肝炎ウィルス抗体価
自己抗体、尿中β2ミクログロブリン、尿NAG
免疫グロブリン、ASLO、ASK
三次病院に相談するタイミング
①血尿:急がないが、定期的なfollowが必要。
感染後肉眼的血尿の反復、血尿程度の
増悪が続く場合は相談
②蛋白尿:ネフローゼ状態→入院加療
持続性蛋白尿→相談
③血尿蛋白尿:原則的にすぐ相談
(おまけ)尿異常者の運動制限
海外の教科書での記載
・Pediatric Kidney Disease(Edelmann)
ネフローゼ症候群では「運動制限はエビデンスがなく,
制限によって受けるいかなる利益も,正常な活動をす
ることによる心理的な有益性を超えない」。
IgA腎症では「運動制限やベッド上安静は効果がなく,
心理的ダメージを引き起こす」。
急性糸球体腎炎では「どの研究も長期のベッド上安
静の効果は否定的で,高血圧や浮腫のないかぎり,
情緒的,心理的問題から制限は不要」
・Pediatric Nephrology(Baratt)
ネフローゼ症候群,急性糸球体腎炎でベッド上安静
は避けるべき」
CKD診療ガイド2012
(日本腎臓学会編)
小児CKD患者診療のエッセンス2012 (12-2生活指導)より
学校生活管理区分
学校生活管理区分(付記)
学校生活管理区分のめやす
血尿: 大きな制限なし。D若しくはE
→経過観察しっかり
感染時肉眼的血尿→三次へ
蛋白尿: ネフローゼ→C→入院
持続性→D→三次へ
起立性→E
血尿蛋白尿: C,D→三次へ
Take home message
・検尿は偽陰性、偽陽性がつきものであり、採尿方法、
時期には細心の注意が必要。
・血尿単独症例における糸球体腎炎の頻度は数%で
あり、管理指導が過剰にならぬように気をつける。但し
定期受診はしてもらう。
・蛋白尿症例の半数は体位性蛋白尿であるが、それ以
外は先天性腎症や糸球体腎炎の可能性が高く注意が
必要である。
・血尿蛋白尿合併例は殆どが糸球体腎炎であり腎生検
を施行して診断をつけた上で治療を行う必要がある。
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