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スマートフォンカーナビにおける操作性向上方式の検討 A Study of New

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スマートフォンカーナビにおける操作性向上方式の検討 A Study of New
Vol.2014-CDS-10 No.13
2014/5/23
情報処理学会研究報告
IPSJ SIG Technical Report
スマートフォンカーナビにおける操作性向上方式の検討
山辺教智†1
松山聖路†2
清原良三†2
近年,スマートフォンと連動するカーナビゲーションシステム”Display Audio が普及している.この Display Audio
はバージョンによって使える機能に制限がかかるという制約があり,買い替えのサイクルが自動車とスマートフォン
で異なるという問題から, コストの観点からの普及があるもののユーザにとって不満が残ると考えられる。そこでこ
の問題を解決したスマートフォンベースのコストを抑えたカーナビゲーションシステムを提案する。提案方式は安全
性の観点から自動車の走行状況に応じて出力して良いアプリを限定するとともに、スマートフォンのアプリの操作数
の削減を念頭にいた方式とした。スマートフォン上に提案方式の一部を実装し、評価を行い、提案方式が有効である
ことを示す。
A Study of New Car Navigation System based on a Smartphone
TAKATOMO YAMABE†1 SEIJI MATSUYAMA†2
RYOZO KIYOHARA†2
1. はじめに
スマートフォンと“Display Audio“の間には標準のプロ
トコル Mirror Link[1][2][3][4]も開発されつつある.このプ
近年,カーナビゲーションシステムはオーディオシステ
ロトコルでは,スマートフォンとディスプレイ側とでアプ
ムと一体化して,製造時から組み込まれるケースや,製造
リが協調して動作し,カーナビとして動作する.対応して
後にアフターマーケット機器を搭載する場合と合わせて殆
いるアプリの場合普段の生活で使用しているアプリをその
ど自動車に搭載されていると言っても過言ではない.
まま使用でき,
“Display Audio“自体も安価であるため,今
現在普及しているカーナビゲーションシステムは DVD
後多くの人が自動車と関係なく保持しているスマートフォ
や HDD に地図が入っている内蔵型と通信によって地図を
ンを安価なカーナビとして高価な専用機器に代わって使う
自動更新する通信型の 2 種類が存在し,通信型は通信費が
ことが増えてくると容易に予想できるが,車載機買い換え
かかる代わりに地図データが自動更新されるが,内蔵型は
サイクルとスマートフォンの買い替えサイクルの違いから
新しい地図データを買わないと更新されない.
バージョン合わせなど面倒な手間も発生するかもしれない.
通信機能を利用する通信型ナビゲーションシステムは,
最近では,Google から,スマートフォン以外の画面にス
地図を常に最新の状態にし,路側の設備のないところの渋
マートフォンの画面をそのまま出力し,操作もスマートフ
滞情報を表示するなどの機能があるにもかかわらず,通信
ォン以外の画面で行える手段[5]が発表された.この様に,
費用負担の問題があり,カーメーカーが通信費用を負担す
スマートフォンの画面をディスプレイに出力する方式では
るモデルを提供する場合も,車検などを系列の販売店で受
余計な手間の発生も少なく,恐らくユーザの好みに応じた
ける必要があると言った制約もあり期待されるほど普及し
画面になるため普及が予想される.
なかった.
しかし,スマートフォン上の多くのカーナビゲーション
その一方で,スマートフォンの普及が進み,ナビゲーシ
アプリは従来のカーナビゲーションシステムと比べ元々の
ョンにおいてある程度の位置精度が実現でき,最新の地図
画面が小さいために,検索ウィンドウやオプションが画面
と渋滞情報が利用でき,しかも追加の通信費用を払うこと
上に表れて地図が見えにくく,カーナビゲーションシステ
なく利用できる無料のカーナビゲーションアプリが登場し
ムならボタン一つでできる拡大やモードの切り替えなどの
てきた.また,スマートフォンと USB による有線接続や
動作も基本的に画面にタッチする操作方法のアプリケーシ
Blue tooth による無線接続を行うことによりスマートフォ
ョンであることから操作数が多くなることも多い.信号の
ンの画面を大きく表示できる“Display Audio“が製品化さ
短い待ち時間を考慮すると,安全性,操作性ともに使い勝
れつつある.
手のよいものとは言い難いので.カーナビゲーションに向
いたインタフェースを作成して操作性を改善し,操作数を
†1 神奈川工科大学 大学院工学研究科 情報工学専攻
Graduate School of Kanagawa Institute of Technology
†2 神奈川工科大学 情報学部 情報工学科
Kanagawa Institute of Technology
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減らせば,操作にかかる時間が削減され,短い時間で,よ
り正確な操作ができると考えられる.
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2014/5/23
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2. カーナビゲーションシステムの現状
度しか操作の選択肢がなく,置き場所が固定されるた
め操作性に難がある.
現在普及しているカーナビゲーションシステムは,製品
の使い方から大きく分けると 3 種類[6]存在する.
(1) カーナビ専用のオーディオと一体化した従来型のカー
ナビゲーションタイプ(以降従来型と記述)
図 1 に示すような,ダッシュボードの外に取り付け
るモデルとダッシュボード内側に取り付ける AV 一体
型のタイプがある.
どちらも画面が大きく,ボタン,リモコン,センサ
2.1 各種カーナビの比較
各種カーナビを以下の3つの要素に分けて評価する.
(1)
コスト
従来型
本体価格が高いので導入コストがかかる,地図の更新に
も費用はかかる.
地図の更新は通信型の場合,定額料金に含まれ自動で更
等により操作性は良い.
近年ではポータブル型と言った軽量及び小型化され
たモデルが存在するが,スマートフォンをナビとして
新されるが,非通信型の場合は DVD 等を購入して地図デ
ータを書き換える必要がある.
“Display Audio“
使用した場合と共通する特徴が多く,通信方式,地図
本体価格は従来型と比べて安い.地図は無料の物が多く
の更新以外は共通である.
(2) スマートフォンと連動する“Display Audio“タイプ(以
降“Display Audio“と記述)
スマートフォンと連動[7]して使用する車載ディス
プレイ,通信には USB や Bluetooth を使用するが,こ
存在し,有料の物は交通情報等が細かく表示される.地図
の更新はどちらでも無料で通信費は使用しているスマート
フォンの定額プランを使用でき,従来型と比較するとこち
らもコストがかからない様になっている.
クレイドル
れらに対応していない機種の場合は映像ケーブルを使
用することで映像のみ送ることが可能.従来型にない
特徴として,図 2 に示すようにスマートフォン側から
操作を行う,対応した物ならスマートフォン内のアプ
リ(SNS やニュース等)を使用することが可能.
(3) スマートフォン本体をそのまま使用するクレイドルを
付けて固定するタイプ(以降クレイドルと記述)
“Display Audio“とは違い,図 3 に示すようにスマ
ートフォン本体がそのまま使用されるためアプリの選
択肢は多い.しかし,画面の小ささやタッチと音声程
本体価格は最も安い.地図は“Display Audio“と同じも
のを使用することが多いが,機能の差等から“Display Audio”
用の有料地図は向いていない.通信費に関しても“Display
Audio“と同じである.
(2)
寿命
従来型
車を買い替えないと仮定した場合,車に合った物を選べ
ば使い続けることができる.
地図の更新に関しても料金を払えば行えるため問題な
い.長期間変わらない物が使用できる点では利点だと言え
図 1
従来型の例(PionnerAVIC-MRZ009W)
図 2“Display Audio“の例(Honda
N-ONE 用モデル)
ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan
図 3
クレイドルの例(PioneerSPX-SC-01)
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様なものは存在しない.
る.
“Display Audio“
これはスマートフォンの存在により従来型が劣ってし
スマートフォンと“Display Audio“側のバージョンが合
わないと使える機能が大幅に減るという欠点がある.最低
まった部分が存在することと,スマートフォン自体の仕様
により問題点が残っているからである.
でもスマートフォン側から映像を送ることができるが,有
線接続のみになり,カーオーディオの映像端子はこれに使
2.2 スマートフォンをカーナビとして使用する際の問題
われる.
従来型のカーナビと比べて “Display Audio“を場合に発生
スマートフォンの買い替えサイクルや OS やアプリのバ
ージョン更新を考えると最適な状態で使用できるのは3年
する問題点は以下の通りである.
ボタンが従来のカーナビに比べて少なく,操作方法
はタッチが基本である分操作数が多いので,時間がか
が限界である.
かることが多い.
クレイドル
スマートフォンをそのまま使用するため,バージョンの
アプリが独立しているために,他の機能を使うには
問題が生じない.これによりインタフェースや操作方法が
図 4 に示すようにスマートフォン側か“Display
変わることなく長期間変わらない様に使える利点がある.
Audio“で本体側のボタンを押してホーム画面を経由
(3)
して切り替える必要がある.これにより操作に時間が
利便性
従来型
かかる.
メーカー,車種指定の物はその車に合った物が作られて
図 5 に示すように地図アプリはスマートフォンの
いる分使易い.DVD や CD の再生が可能でリモコン,本体
ものが使用されるので,画面内に疑似的なボタンや情
のボタンやセンサによる操作が有る分操作性もよい.大画
報が沢山表示されて地図が見づらい.
面のためタッチ操作も行いやすく,表示される情報も見易
スマートフォンのバージョンが“Display
い.
対応していない場合使える機能が減ってしまう.
“Display Audio“
Audio“に
iOS,Android 共にバージョンごとの差は激しいため,最
対応しているアプリなら SNS,ニュース,音楽,スケジ
ュール管理などが使用できる.スマートフォン単体とは違
初に購入した“Display
Audio“を同じような感覚で
使用し続けることは難しいと言える.
い,画面が大きくどちら側からでも操作できるため状況に
応じて必要な操作を選べる.
2.3 操作方法とインタフェースの問題点
クレイドル
本体が小さく置き場所に困らない.アプリにも制限が無
く使用できるため,自分に合った環境を作り出せる.
画面が小さく,置き場所が固定されるため,操作は難し
い.
以下の表 1 にどのナビがどの要素が優れているのかを
ホームボタン
で中断 メニュー
から選んで
起動
示す.表内の◎はとても優れている,●は優れている,▲
は優れているが問題点もある.×は問題点多数を表す.な
おこの表における“DisplayAudio”は使用者にとって最適
なバージョンを使用していると仮定し,利便性は操作,機
能によって分かれるので 2 つに分けて評価する.
地図アプリ
ホーム画面
図 4
音楽アプリ
スマートフォンにおける機能の独立
これらの利点をまとめると全てにおいて安定している
表 1
各ナビが優れている要素
コスト
寿命
操作
機能
従来型
▲
◎
◎
●
“DisplayAudio”
◎
×
◎
◎
クレイドル
◎
◎
×
◎
図 5 スマートフォン向けカーナビアプリの例
(ホンダ純正ナビアプリインターナビポケット)
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2.2 節で 述 べ た 様に 従 来 の カ ーナ ビ と 比 べ,“Display
3.1 要求条件
Audio“で使用されるカーナビゲーションアプリは,スマー
スマートフォンを利用したカーナビゲーションアプリ改善
トフォンの画面で使用することを想定して作られているた
のための要求を以下に整理する.
めに,地図上に様々な情報や擬似的なボタンが表示されて
(1)
オーディオ,ナビ,その他機能毎の画面の切り替え
を意識させないようにする.従来型でも複数の別
地図が見えにくい問題がある.
従来のカーナビでは,メニュー表示や倍率変更のボタン
の画面になっていることが多く,タッチする位置
は画面外にあるものであり,地図に重なりメニューが開い
が違うなどスマートフォンには適さないので変化
後の画面の構成も考える必要がある.
ても画面自体が大きかったためにこの様な問題点はなかっ
た.
(2)
使用できるボタンに関しても,大きさが 1 段階のみの調
態に応じて適切な情報を出すことで,平均的な操
作回数を減らす.
節になっており,スペースの都合上従来のカーナビではボ
タン一つで可能な操作でもメニューを開いてからまた操作
操作回数を減らすことで操作ミスも減らす.走行状
(3)
オーディオとナビを同一のアプリにする.前述のと
しなくてはいけないものも多く,操作面,インタフェース
おり,従来型のカーナビでも,スマートフォンで
面ともに使い易いとは言い難い.
も,地図とオーディオは独立しており,オーディ
また,業界自主規制によりカーナビゲーションシステム
オを操作する場合は,地図を非表示にして切り替
は運転中に操作が行えない.これ以外にも道路交通法によ
える必要があるので,オーディオと地図を同一の
り運転中にスマートフォンを手元に持って操作する行為は
アプリとして作成することで,切り替えを素早く
禁じられているため,自分の機種とバージョンが合わない
行えるようにする.
“DisplayAudio”は,現在非常に使いにくいものになって
(4)
道路交通法により,運転中は画像表示装置の注視(携
帯電話やカーナビ)が禁じられている.
いる.
本研究ではこれらの問題点を解決し,
“Display Audio“に
また,停車時の注視も危険性が高くなるため,
おいてバージョンの影響差を受けない様にスマートフォン
この規制に当てはまらない様に画面を注視せずと
との連動を可能にする通信方式と操作方法を提案する.
も操作が可能な操作方法,車載機器とスマートフ
ォンの通信プロトコルが必要になる.
3. 提案手法
(5)
タッチ操作では道路交通法や姿勢の問題がある.こ
のほかにも操作数の問題から手間がかかり,正確
2 章で列挙した問題点を解決するためには,操作方法の
な操作を行うことが難しい.外部からのセンサを
改善による操作数の削減とアプリケーションの構造を見直
使った操作を取り入れることで姿勢を崩さずに正
す必要がある.
確な操作ができるようにする.
カーナビゲーションアプリを操作するときは以下の場合が
ある.
3.2 プログラムのインタフェース及び操作回数削減のた
(1) 発信前,停車時など時間が十分ある場合
めの工夫
(2) 信号停止、渋滞時等瞬時に簡単に動作させたい場合
(3) 運転中
スマートフォンはアプリの独立により機能を呼び出す
のに時間がかかってしまう欠点がある.
ここで,運転中の操作は,例えば使い易いとしても注意
この問題を解決するためには必要な機能をまとめてア
散漫につながり事故の危険性があるので本論文では対象外
プリにするべきだと考えた.必要な機能をまとめてしまう
になる.
ことで,一覧から使いたい機能を探す手間が省け操作性の
次に発信前等では,十分時間があるため,スマートフォ
ンを手前に持ってきて慣れた使い方ができるためこれも対
象外とし,本論文では一時停止や渋滞時に瞬時に操作要求
する場合を想定する.
操作数が多いほど操作に時間がかかるので,操作数を減
らしていくことは重要である.
急いで操作すると誤った操作をする可能性も高いため,簡
易な操作と操作数の削減が重要となる.
本論文では,スマートフォンにおける簡易な操作と操作
数の削減に着目して,その手法に関して検討する.
向上,操作時間の短縮が可能になる.
本研究ではアプリケーション毎の独立性を減らすため
に HTML5 を使用した.
HTML5 とは Web ページの記述に使われる言語,HTML
「HyperText Markup Language」の 5 回目に改定されたバー
ジョンである.
これまでのバージョンと比べた際に異なっている点は,
音声を扱う Audio,動画を扱う Video,グラフィックに関す
る処理ができる canvas,ドラッグ&ドロップによる操作が
可能になる draggable,入力データの保存やアプリケーショ
ンの様々なデータの置き場として使われるローカルストレ
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ージ,ほかのサイトのサービスの埋め込みや,ローカルフ
で操作数を減らすコンテキストアウェアと言った方式があ
ァイルを使用できる各種 API の登場により,Web 上で扱え
る.
るデータや処理が大幅に増えた.
この HTML5 をベースにすることで,OS のバージョンが
カーナビゲーションや各機能に関しても,このコンテキ
ストアウェアな処理を行うことで,各情報の入力の省略や,
新しくなっても使えなくなる様な機能が減り,インストー
状況に応じた初期画面を呼び出すことで,平均的な操作数
ルしたプログラムを複数使用することなく,細かいカスタ
の削減が行えると考える.
マイズが可能になる.
各種 Web サービスやローカルアプリとの連動に向いて
いる API を使用することで,各種機能をまとめた一つのア
プリの様な見せ方が可能になる.
HTML5 を使用するのでブラウザを使用したネットワー
クへの接続が必須となるが,元々地図やその他アプリは通
このアプリケーションで走行状態に応じた処理を行う
場合,どの様な通信プロトコルでデータを処理するべきか
を図 7 に示す.
また,これらのデータを使用した際の状態の変化を図 8
に示す.現段階では提案であり実装が完了していないため
実際の場合は不必要な処理等があることも考えられる.
信を行うものであり,今までと変わらない感覚で使用でき
3.3 外部からの操作
る.
HTML5 の車載機向け実験は文献8の様な実験が既にあ
地図やその他のアプリで操作を行うには“Display
り,アプリを複数搭載した場合のメモリ負荷の問題は解決
Audio“又はスマートフォンの画面をタッチするか,
されている.
本体のボタンを押す必要がある.
単純に機能をまとめてアプリを一時的に呼び出す等の
動きにした場合,オーディオから地図等途中で別の機能を
操作を行うときには,スマートフォンを手元に持って
画面を見ながら操作するか,姿勢を崩して“Display
使用する場合は画面構成自体が変わってしまい.タッチす
る位置の違いや切り替わりにかかる時間の問題から短時間
で操作するのには向いていないと考える.
そこで,CSS3 によるタブメニュー(図 6 参照)を実装
し,画面の一部を切り替えることで,地図を常に見ながらほ
かの機能を呼び出せるようにした.
CSS3 とは Web ページの CSS「Cascading Style Sheets」の
3 回目に改定されたバージョンである.
CSS3 の機能と言うとアニメーション機能が豊富と言わ
れるが,アニメーションだけではなく,タブやページ全体
の細かいレイアウトを指定することで,スクロール回数を
減らす,常に一定の位置にボタンを表示する等の使い方が
図 7
走行状態に応じた処理を行う通信プロトコル
できるので,操作回数の削減及び操作性の向上になる.
タブメニューなので画面全体はあまり変わらないまま
使え,新しいウィンドウや,アプリの切り替えには存在す
るページ自体の切り替わりが発生しない分機能の呼び出し
にかかる時間は減り,ホームボタンやバックボタンを使用
する機会も減ることで,操作数の削減につながると考える.
走行状態に応じた表示による操作回数の削減
携帯電話の操作数の削減方式として有名なものでは携
帯電話に搭載されているセンサや履歴を使用し,得られた
データから状況を予想してそれに合わせた処理を行うこと
図 6
タブによる機能の切り替え
図 8
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走行状態に応じた状態変化
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Audio“に触れる必要がある.
これではどちらも注意散漫で,短い信号待ちの間に操作
を行うことは危険だと言える.
そこで,Android と通信を行う.外部の加速度センサを
使用した操作を考えた.
スマートフォンの外部操作は文献9の様な研究が既に
あり,Blue tooth を使用したセンサでスマートフォンを操作
する方法を取り入れれば姿勢を崩さずに操作できる.
4.1 定量的な評価
本研究において作成したアプリの定量的な評価として,
以前の様にホーム画面を経由して機能を切り替える場合と
作成したアプリでタブメニューを使用して切り替えるのに
はどれくらいの操作時間の差が出るのかを計測した.また,
地図アプリに関しても倍率変更ボタン等の工夫点が有るの
でそちらの機能も従来のマップナビとの比較を行った.
計測内容と結果を以下にまとめる.
実験内容と条件
実験内容:被験者 1 名により自作アプリとニュース
3.4 今回の実装
従来のカーナビゲーションシステムを見ると必要な機
(SmartNews),メモ(メモ帳),マップ(GoogleMap),音
能として,ナビゲーション以外には,オーディオ機能が必
楽プレイヤー(Play ミュージック)を使用して起動にかか
須である.
る時間を計った.SmartNews 以外は Android に標準搭載さ
今回は,提案手法で述べた項目の中からアプリの一体化
とインタフェースの改善の部分を HTML5 と CSS3 を使っ
て実装を行った,(図 9 参照)必須の機能以外に“Display
Audio“のアプリとしてはよく見られるメモ,ニュース,検
れているアプリである.
操作回数,時間は手元でスマートフォンを操作した場合
とする.
最初にそれぞれのアプリを起動しておき、いずれかのア
プリを起動した状態から他のアプリを呼び出す。その間の
索を実装した.
地図を除いた各機能はタブメニューを実装することで,
従来とは違い,画面全体の切り替わりが行われずに別の機
能呼び出せる様にした.
時間と操作回数を記録する.
なお,タッチ位置などによって時間に差が出ることが予
想されるため、一番近い位置にあるアプリをタッチする.
以下の表 2 に操作にかかった時間とボタンを押した回数
(タッチ回数)をまとめる.
4. 評価
結果,ホーム画面を挟まないために自作アプリの方は素
今回実装した機能に関しての評価を示す.
早く切り替えが行えた.
この実験で行う必要が有る評価は,
定性的な評価
4.1.1 実験 2 地図アプリの倍率変更
定量的な評価
実験内容
ユーザによる評価
の 3 つである.
同じく被験者 1 名で,初期状態は倍率 1 マイルから開始
しズームの最大値は 10 フィートとする.今回行う操作は、
最大値までのズーム,2 段階遠ざかる.1 段階ズーム,10
フィートから1マイルに戻す,の4つを行いその時間と操
作回数を記録する.2 段階遠ざかると 2 段階ズームは操作
に差が出ないと言えるのでズームに関しては省略する.
実験結果を以下の表 3 に示す.
「最大値までズーム」の場合,自作アプリは HTML5 使
用時の速度の問題で少しだけ待たされるため 3 秒となった.
地図アプリの場合倍率を上げるにはダブルタップで 1 段
階ずつ操作するか,ピンチで 3 段階ほどに分けて近づける
必要が有る.
「2 段階遠ざかる」の場合,個人差はあると言
えるがピンチ操作は狙った数値を出すことが難しい.停車
中でも狙った倍率変更は難しいと考えられる.
「1 段階遠ズーム」の場合,どちらもダブルタップかボタ
ンでズームできるが,ダブルタップが最適なのでこちらを
試した.結果は処理速度の問題で若干自作アプリの方が遅
くなった.
図 9
タブメニューを使用したカーナビのイン
タフェース
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「1 マイルに戻る」の場合,広域表示は2000フィー
トまでのショートカットボタン,実験に関してはズームと
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違い結果に差が出るように1マイルに数値を設定した.
4.2 定性的な評価
定性的な評価を行うには,複数の人物に協力してもらい,
快適に使用できているかを見る必要が有る.
今回は,状況に応じた処理や操作などの実装ができてい
ない部分が存在するのでこの評価は行えなかったが,今後
実験を行う時はドライビングシミュレータ上で実験を行い,
停車時及び走行時に安全基準が満たせているかを評価する.
4.3 ユーザによる評価
定性的な評価と同じように,機能が不完全な今はこの評価
を行えない.
る「MirrorLink(ミラーリンク)」を導入,
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120824_555188.html.
4) 映像のワイヤレス伝送を実現する Wi-fi 企画「Miracast」を徹底
解説ビジネスワーク.jp
http://businessnetwork.jp/Detail/tabid/65/artid/3218/Default.aspx
5) 任意のディスプレイに携帯画面を映す Open Project,Google の
研究者が発表。Web ベースのフレームワーク - Engadget Japanese,
http://japanese.engadget.com/2013/09/29/google-open-project-web/.
6) carrozzeria | カーナビ/カーオーディオ | pioneer,
http://pioneer.jp/carrozzeria/ .
7) Honda | Internavi LINC | インターナビ ポケット ,
http://www.honda.co.jp/internavi/pocket/
8) 松本 貴士,近藤 明宏,丸 三徳,車載向け HTML5 アプリのラ
イフサイクル管理方法の提案情報処理学会研究報告. GN, [グルー
プウェアとネットワークサービス] 2014-GN-90(3), 1-8, 2014-01-16
9) 池上翔太,石崎新,山辺教智,清原良三,:6 軸センサを用.いたス
マートフォン向けカーナビ UI の検討,電子情報通信学会平成 25
年度ソサイエティ大会, B-15-8(2013).
5. 今後の課題
評価の項目でも述べた様に,今回提案したアプリケーシ
ョンは完成していない部分が多く,現在のままではユーザ
からの評価を行うことはできない.
そのため,アプリを完成させて実際にユーザを通して実
験を行い評価することが今後の課題となる.
参考文献
1) CARCONNECTIVITYCONSORTIUM,
http://www.mirrorlink.com/.
2) パナソニック,車載機とスマホの連携サービス「MirrorLink」を
日本初導入 | レスポン
ス,http://response.jp/article/2012/08/24/180165.html .
3) Car Watch パナソニック,スマートフォンと車載機を連携させ
表 2
実験結果
時間
回数
Android 搭載
5秒
ホーム 1 回タッチ 1 回
自作 HTML5
2秒
タッチ 1 回
表3
Android 搭載
実験結果 2
最大値
2 段階遠
1 ズーム
1 マイル
5 秒ピン
5 秒ピン
1 秒ダブ
5 秒ピン
チ3回
チ1回
ルタップ
チ3回
1回
自作 HTML5
3 秒ボタ
3 秒ボタ
1 秒ダブ
3 秒ボタ
ン1回
ン2回
ルタップ
ン2回
1回
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