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決算レポート - 日本格付研究所
14-D-0217 2014 年 6 月 17 日 民鉄各社の 14/3 期決算の注目点 民鉄各社の 14/3 期決算および 15/3 期決算見通しを踏まえ、JCR の現況に関する認識と格付上の注目点を 整理した。 1.業界動向 14/3 期の鉄道輸送人員は JCR 格付先民鉄 14 社合計で前期比 2.0%増となった。このうち、定期輸送人員 が同 2.7%増、定期外輸送人員が同 1.0%増となっている。一方地域別では、東日本エリアの民鉄 8 社合計で 2.0%増、西日本エリアの民鉄 6 社合計で 2.1%増であり、地域別に大きな違いは見られなかった。全国的な 景気回復に加え、定期輸送人員を中心に、消費増税に伴う駆け込み需要が各社の鉄道輸送人員の集計に反映 されたことなどが影響している。15/3 期は、前期の駆け込み需要の反動などにより 14 社合計の鉄道輸送人 員は前期比で減少する見込みだが、水準としては 13/3 期程度にとどまる見通しであり、従来のトレンドか ら大きなかい離は見られない。ただ、西日本エリアの民鉄を中心に鉄道輸送人員の減少トレンドが続いてい る会社については、引き続き沿線施設の集客力向上などによる輸送人員の維持・増加に加え、継続的なコス ト削減による利益確保が重要である。 2.決算動向 14/3 期は 14 社合計で前期比 6.2%増収、11.3%営業増益となった。地域別に見ると、東日本エリアは同 1.5%増収、12.9%営業増益、西日本エリアは同 12.2%増収、9.3%営業増益となっている。西日本エリアに ついては、近鉄における KNT-CT ホールディングスの新規連結の影響などで増収幅が大きくなっているが、 その影響を除けば東日本エリア、西日本エリアともにほぼ同様の推移となっており、全国的に景気回復の恩 恵を受けたものと考えられる。 セグメント別では、運輸事業が同 7.6%営業増益、関連事業が同 13.5%営業増益となった(注:西武 HD がセグメント別営業利益の予想を開示していないため、セグメント別では実績を含め 13 社を集計対象とし た)。運輸事業営業利益の増益率が高かったのは東急、京急および京王の 3 社。東急電鉄は沿線人口が堅調 に推移していることに加えて、メトロ副都心線との相直による沿線の実質的な延伸効果などが見られる。京 急は増加する空港利用者をダイヤ改正などによって取り込めた影響が大きい。京王については前期(13/3 期)に計上した固定資産除却費がなくなったことが主因である。一方関連事業では、不動産分譲事業および ホテル事業などが利益を牽引した。関連事業の増益率が高かったのは、近鉄、西武 HD および名鉄の 3 社で、 いずれも関連事業営業利益が前期比 3 割以上増加した。近鉄および名鉄は不動産分譲事業の好調が主因であ る。西武 HD は、ホテル・レジャーセグメントでインバウンドの取り込みなどに加え継続的なコスト削減が 奏功し、同セグメントの営業利益は 54 億円から 86 億円と前期比約 6 割増益となった。 15/3 期は駆け込み需要の剥落などにより前期の反動減を見込む会社が多く、14 社合計では前期比 3.2%営 業減益が予想されている。地域別では東日本エリアでは同 1.3%営業減益、西日本エリアでは同 5.5%営業減 益の見通しである。運輸事業については、コスト削減等の効果を見込む会社を除いて、総じて前期の駆け込 み需要の反動による営業減益を予想する会社が多い。関連事業については、前期好調だった不動産分譲事業 の反動を見込む会社が多いが、近年取得した賃貸物件の収益寄与(相鉄 HD、東急電鉄)や引き続きホテル 事業の好調を見込む会社(西武 HD)も見られる。また、近鉄はあべのハルカスの全面開業による増益を予 想に反映している。JCR では、景気連動性が高い事業の利益寄与を見込んでいる会社について、引き続き施 設の集客状況や単価の状況などを確認していく方針である。 1/4 http://www.jcr.co.jp 財務面では、14/3 期は上述のような収益状況を受けて営業キャッシュフローが増加した一方、設備投資 は 13/3 期並みの水準にとどまったため、総じて有利子負債の削減が進んだ。15/3 期の設備投資については 大規模投資が続く会社(西武 HD など)が見られるものの、総じて前期比横ばいないしは減少を計画する会 社が多い。このため、引き続き 14 社合計では有利子負債の削減が進む見通しで、財務諸指標は 14/3 期程度 の水準となる見込みである。 ※有利子負債残高は一部 JCR 推定。これは鉄道・運輸機構長期未払金が決算短信で別記されていない場合があるため。 3.格付上の注目点 JCR では、鉄道業界について引き続き以下の点に注目している。 (1) 鉄道事業 近年、東日本エリアの民鉄を中心に、沿線開発の進展や収益環境の好転によって鉄道輸送人員が堅調に推 移している。ただ沿線によっては沿線人口の減少が進んでいるため、居住人口の増加に向けた取組みだけで はなく、沿線観光資源の活性化などによる鉄道利用者を増やす取り組みの強化が重要と考えられる。東日本 エリアでは東武東上線・西武池袋線・メトロ副都心線・東急東横線・みなとみらい線の相互直通運転の開始 による会社間の旅客誘導策の効果が見られ、引き続き各社の取り組みに注目している。コスト面では昼間時 間帯の短編成化やダイヤ見直しなどによる運行効率の向上が引き続き求められよう。 (2) 関連事業 各社とも不動産賃貸事業の強化を打ち出しており、新規賃貸物件の取得および建て替えを含む既存物件の 大規模リニューアルなどを進めている。沿線外の物件を取得するケースも増えていることから、物件ごとの 投資利回り、稼働状況、財務への影響などについても注目している。分譲事業ではマンションなどの販売だ けでなく、既販売物件を中心とするリフォーム事業に注力する会社が見られる。京王はリフォーム事業を専 業とするリビタを 12 年 1 月に子会社化し沿線を中心に事業展開を進めており、今後の成果が注目される。流 通事業では、百貨店業については引き続き外部テナント導入を含む売場活性化が重要と考えており、引き続 き各社の取り組みを確認していく。また厳しい事業環境が続いているストア事業に対するテコ入れにも注目 している。 (3) 設備投資と財務への影響 すでに開業した大規模プロジェクトについては、引き続き施設の稼働状況等に注目しつつキャッシュフロ ーへの寄与を確認していく。また、近鉄が進めてきた阿倍野橋ターミナルビル整備計画については、あべの ハルカスが 14 年 3 月に全面開業したことから、集客状況などについて計画との比較を進めつつ、キャッシュ フローの状況を確認していく方針である。 現在進行中の大規模プロジェクトについては、引き続きプロジェクトの進行状況と財務への影響、および テナントリーシングの進捗に注目している。また、今後プロジェクトが具体化してくる会社については、計 画が本格化するまでに有利子負債の削減を進める事が重要であり、各社の設備投資計画と財務の状況に注目 していく。 (担当)上村 暁生・加藤 2/4 http://www.jcr.co.jp 直樹 (図表 1)損益・財務の概況 (単位:%、倍) 14 社計 売上高増減率 営業利益増減率 ネット有利子負債増減率 ネット有利子負債/EBITDA 倍率 DER 東日本エリア計 西日本エリア計 13/3 期⇒14/3 期 14/3 期⇒15/3 期 E 13/3 期⇒14/3 期 14/3 期⇒15/3 期 E 6.2 0.2 11.3 -3.2 1.5 0.0 12.9 -1.3 12.2 0.4 9.3 -5.5 13/3 期⇒14/3 期 14/3 期 14/3 期 -5.2 7.5 2.3 -3.6 7.3 2.2 -7.1 7.7 2.4 ※JCR 格付先民鉄 14 社合計 ※有利子負債残高は JCR 一部推定 (図表 2)セグメント別営業利益の状況 (単位:%) 13 社計 運輸事業 13/3 期⇒14/3 期 14/3 期⇒15/3 期 E 13/3 期⇒14/3 期 14/3 期⇒15/3 期 E 関連事業 東日本エリア計 7.6 -4.9 13.5 -3.1 12.1 -0.3 12.4 -4.6 西日本エリア計 2.3 -10.4 14.2 0.8 ※ 西武 HD はセグメント別売上高、営業利益の予想を開示していないため、上記増減率は実績を含め西武 HD を除く 13 社で集計している (図表 3)キャッシュフローの推移 (10億円) 1,200 1,000 800 営業CF 600 投資CF 400 財務CF 200 フリーCF 0 -200 -400 -600 12/3期 ※ 13/3期 14/3期 JCR 格付先民鉄 14 社合計 【参考】 発行体:東武鉄道株式会社 長期発行体格付:A- 見通し:安定的 発行体:相鉄ホールディングス株式会社 長期発行体格付:BBB+ 見通し:安定的 発行体:東京急行電鉄株式会社 長期発行体格付:AA- 見通し:安定的 発行体:京浜急行電鉄株式会社 長期発行体格付:A+ 見通し:安定的 発行体:小田急電鉄株式会社 長期発行体格付:AA- 見通し:安定的 3/4 http://www.jcr.co.jp 発行体:京王電鉄株式会社 長期発行体格付:AA 見通し:安定的 発行体:京成電鉄株式会社 長期発行体格付:A- 見通し:ポジティブ 発行体:株式会社西武ホールディングス 長期発行体格付:BBB+ 見通し:安定的 発行体:西日本鉄道株式会社 長期発行体格付:A+ 見通し:安定的 発行体:近畿日本鉄道株式会社 長期発行体格付:BBB+ 見通し:ネガティブ 発行体:阪急阪神ホールディングス株式会社 長期発行体格付:A+ 見通し:安定的 発行体:南海電気鉄道株式会社 長期発行体格付:BBB+ 見通し:安定的 発行体:京阪電気鉄道株式会社 長期発行体格付:A- 見通し:安定的 発行体:名古屋鉄道株式会社 長期発行体格付:A- 見通し:安定的 ■留意事項 本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、 的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、 金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因 のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として 発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。 ■NRSRO 登録状況 JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。 ■本件に関するお問い合わせ先 情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026 4/4 http://www.jcr.co.jp