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5. 機械要素の動向と課題②:ばね ―自動車用圧縮コイルばねの
特集 オピニオン!機械設計の課題と展望 5.機械要素の動向と課題②:ばね ―自動車用圧縮コイルばねの最近の話題 日本ばね工業会 井上 関次* 日本発条 梅野 純** 日本発条 冨永 潤*** *いのうえ かんじ:専務理事 **うめの じゅん:ばね生産本部 第一設計部 部長 ***とみなが じゅん:研究開発本部 基礎技術部 主査 積極的に活用することによって達成されており, はじめに 本稿では懸架ばねおよび弁ばねについての最近の 話題を紹介する。 ばねは自動車をはじめとして,ほとんどすべて の産業機械,電気機器に使用されている重要な機 懸架ばねの摩擦低減と軽量化 械要素である。1 台の自動車は約 25,000 個の部品 で構成されており,そのうち約 5,000 個は「ば 懸架ばねは,車両姿勢を維持し乗心地と操縦安 ね」および「ばね特性をもつ弾性体」であると言 定性を保つことがその役割である。乗用車の懸架 われている。代表的な圧縮コイルばねである自動 機構の主流となっているストラット式サスペンシ 車用懸架コイルばね(以下,懸架ばね)やエンジ ョン(図 1)の場合,通常のばねでは,ばねの荷重 ン用弁ばね(以下,弁ばね)などは,それぞれ一 台あたり 4 個および 16 個使用されるため,世界 軸とタイヤからの入力軸(作用線)とのズレによ りショックアブソーバに曲げモーメント M が発 の乗用車の年間生産台数約 7,000 万を乗ずると, 生し,ショックアブソーバの摺動部にフリクショ 膨大な数量の圧縮コイルばねが生産されているこ とになる。これらのばねはサスペンション機構や ンが生じ乗心地が阻害される。タイヤからの入力 W による作用線にコイルばねの荷重軸を一致もし エンジン設計が変更されるモデルチェンジごとに くはできるだけ近づけるようにばねの荷重軸制御 最適な形状を狙って新たに設計され,少しずつ進 を行うことにより,ショックアブソーバのフリク 化している。 ションを低減することが可能となり,乗心地向上 設計および開発は有限要素解析(FEM 解析)を を図ることができる。荷重軸の制御は,図 2 に示 Fs 曲げモーメント M コイルばね 作用線 Fr ショックアブソーバ W Fv Fs Fv+Fr 荷重軸 作用線≠荷重軸 図 1 ストラット式サスペンション 30 フリクション 通常コイルばね ピッチ角を変化させた 荷重軸制御コイルばね コイルを湾曲化させた 荷重軸制御コイルばね 図 2 荷重軸制御コイルばねの例 機 械 設 計