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学報19号(2005年2月発行)

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学報19号(2005年2月発行)
10周年記念号 2
№19 H17.1
長野県看護大学学報 発行:長野県看護大学渉外委員会 〒399‐4117 長野県駒ヶ根市赤穂1694 Tel 0265‐81‐5100
ホームページ(http://www.nagano-nurs.ac.jp/)
開学10周年を迎えた長野県看護大学
開学10周年を迎えた長野県看護大学
長野県看護大学は豊かな人間性と深い知識、高い技術を身に
つけた看護職者の育成を目指し、平成7年4月に看護系単科大
学として開学してから、今年で満10年を迎えました。
この開学10周年を記念し、2004年11月20日�に創立10周年
記念式典が開催され、国内外から250名もの方々のご臨席を賜
りました。式典では、本学のこれまで10年の軌跡と将来の展望
を描いたビデオ映像の放映、学長及び長野県衛生部長の挨拶、
ご来賓の祝辞、そして学生の誓いの言葉などが披露されました。
本学の教職員による「手作り」の式典は印象深いものでした。
目 次
<巻頭ニュース>
開学10周年を迎えた長野県看護大学 ………………………………………………………………………………………
<10周年記念行事>
長野県看護大学「創立10周年記念式典」の報告 …………………………………………………………………………
記念講演 国際基督教大学大学院教授村上陽一郎先生「21世紀の看護学に期待するもの」…………………………
<看護実践国際研究センター・異文化看護国際研究部門>
外国籍市民の看護支援プロジェクト:2004長野県外国人検診 ………………………………田代麻里江・畔�良江
<教員活動報告>
インドネシア地震災害での国際緊急援助隊(JMTDR)に参加して …………………………………………田中高政
「第2回日本小児がん看護研究会」を開催して …………………………………………………………………内田雅代
薬物依存症者に処罰より治療を!アメリカのドラッグ・コートに学ぶ………………………………………赤沢雪路
Oxfordでの言語学史学会に参加して ……………………………………………………………………………江藤裕之
世界アルツハイマーデイの取り組みに参加して………………………………………………………………浅野久美子
日本構想学会 Round Table Discussion:ケアの理論と実践から見えてきた新たなケア教育への構想
s Business. をめざして …………………………………………………………江藤裕之
―― Care is Everybody’
<渉外委員会報告>
渉外委員長ご挨拶……………………………………………………………………………………………………那須 裕
公開講座:深山智代先生「地域づくり活動における住民と看護職のパートナーシップの意義」…………志村ゆず
公開講座:野坂俊弥先生「血管をイキイキさせる運動指導」…………………………………………………志村ゆず
公開講座:楊箸隆哉先生「看護研究をしよう!」………………………………………………………………志村ゆず
国際交流:パプア・ニューギニアから保健衛生グループ訪問…………………………………………………江藤裕之
地域交流:オープンキャパス・鈴風祭での大学説明………………………………………………藤垣静枝・藤原聡子
地域交流:高校での説明・模擬授業・高校生の大学見学…………………………………………藤垣静枝・藤原聡子
HP担当になって……………………………………………………………………………………………………太田規子
<投 稿>
「APAマニュアル」日本語版発行によせて ………………………………………………………………………岸利江子
連載:心のエンパワメント⑤ 回想法……………………………………………………………………………志村ゆず
日本国際保健医療学会に参加して……………………………………………………千野史香・冨澤千亜紀・林 由美
エッセイ:『ソクラテスの弁明』を読んで ……………………………………………………………………宮本みどり
エッセイ:Bildungsromanとしての Harry Potter ……………………………………………………………江藤裕之
<事務局よりのお知らせ>………………………………………………………………………………………………………
<同窓会よりのお知らせ>………………………………………………………………………………………………………
<10周年記念事業を終えて> …………………………………………………………………………………………………
〔1〕
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がより一層求められる。そのため、21世紀の健康を担う看
〔10周年記念行事〕
護職の育成を目指していきたい。このような、県立大学と
長野県看護大学
「創立10周年記念式典」の報告
しての本学の担う責任が述べられました。
■ご来賓祝辞・紹介、祝電披露
長野県看護大学創立10周年記念式典は平成16年11月20
本式典では多くのご来賓の方のご来臨を得ましたが、そ
日�13時より長野県看護大学講堂にて行われました。主な
の中でも本学の発展に多大なる寄与をされたご来賓の方々
プログラムは、
よりご祝辞を頂戴いたしました。
13:00~14:20 記念式典
まず、長野県県議会副議長の宮澤宗弘様からのご祝辞で
15:00~15:30 記念講演
は、
「国際的視野を持つ一方で地域にも目を向けて地域との
ですが、ここでは記念式典の内容を式次第に沿って報告を
連携を深めていること、
開かれた大学を目指していること、
いたします。
よりすぐれた看護学の確立をめざして努力をしながら看護
実践者の育成をしている、ということから素晴らしい目標
� � � � � に向かって邁進をしているとの感じを得た」という温かい
■「長野県看護大学10周年記念ビデオ」上映
お言葉をいただきました。
まず、式典の最初に、創立10周年記念式典実行委員会の
次に、駒ヶ根市長である中原正純様は、看護大学を駒ヶ
作成による「長野県看護大学10周年記念ビデオ」が上映さ
根市に誘致するために看護協会の皆さん方と「共にがんば
れました。このビデオでは、開学当初の珍しい授業風景や
りましょうよ」とお互いに手を取り合って誘致活動に専念
医療機関での実習の模様、学園祭、オープンキャンパス、
した、という当時の思い出を語ってくださいました。そし
公開講座、地域活動(花壇作り)
、サークル活動、学部生の
て「相手の立場にたって物事が考えられる。相手の尊厳を
卒業研究発表会、入学式と卒業式、謝恩会などといった学
尊重しあえる。そんな看護学を伝統的に学んで欲しい」と
生たちの熱気あふれる映像、また、活気に満ちた本学教員
の励ましのメッセージをいただきました。
の研究活動が紹介されました。平成15年に開催された「新
しい風(アジア太平洋地域の看護学国際研究集会)」の模様
なども流され、素晴らしい構成と編集のビデオでした。
■学長挨拶
続いて、長野県看護大学学長の深山智代先生より挨拶が
ありました。本学の誕生の原動力や経緯、そして歩みにつ
いて語られ、創立と発展、またその礎を築いていただいた
方々へのお礼の言葉が述べられました。最後に、今後は、
(ご祝辞を述べられる中原駒ヶ根市長)
大学の総力を結集して地域に貢献できる人材を育てていく
最後の祝辞として、本学の繁栄の基礎を造ってこられ、
との誓いの言葉で挨拶を結ばれました。
ここまで大学を育ててくださった、前長野県看護大学学長
の見藤隆子先生よりお言葉をいただきました。
見藤先生のお言葉は、この大学のユニークな点として、
外国人教員による英語で授業が受けられること、そしてこ
のような人的資源があって「新しい風」という国際会議が
開かれたことなどを述べられ、交通不便な田舎の大学とい
う山の谷あいの中に沈没しそうに見える大学をしっかり輝
かせていただくためにはこのような工夫を今後も続けても
らいたい、という大学のますますの発展を願うというもの
(挨拶される深山学長)
でした。そして、看護連盟の会長として、政治と看護のつ
■知事挨拶
ながりについてや、FTAなどの最近のトピックについて熱
学長に続き、本学の設置者である長野県を代表し、田中
く語られ、
「ベッドサイドから政治を変えること」をキャッ
康夫長野県知事の名代として鈴木良知長野県衛生部長から
チフレーズに現場の声をどんどん聞かせて欲しいと私たち
挨拶がありました。長野県は健康長寿県であり、その実績
に訴えられました。
を継承してさらに発展させる責務がある。このなかでの看
時間の都合ですべてのご来賓の方々よりご祝辞を頂戴す
護職は、人を人としてトータルに受け止め、これをサポー
ることはできませんでしたが、司会者よりご賓客の紹介が
トするには、「高い人格、人間性、幅広い能力、温かい心」
ありました。箇条書きにします。
〔2〕
長野県議会議員(社会衛生委員会委員長)
村 石 正 郎様
地域の方がたから必要とされる人材になることが私たちの
長野県議会議員(駒ヶ根市選出)
林 奉 文様
使命だと思っている。先生や友人から多くのことを学び、
長野県看護協会会長 塩野入和子様
社会に貢献できる看護職になり、これからの看護の発展に
長野県看護大学後援会会長 柴 政 男様
尽くしたいと思う」と、学生諸君の強い意志が雄弁に述べ
長野県看護大学同窓会会長 向 山 久 美様
られました。
この場をお借りしまして、ご来臨の栄を賜りましたことを
心より御礼申し上げます。
■学歌斉唱
続いて、前原澄子様(三重県立看護大学学長)、鎌田實
記念式典の最後の締めくくりとして、本式典のために結
様(諏訪中央病院管理者)
、奥原ます子様(諏訪赤十字病
成された学歌合唱隊がステージの前で美しい歌声を披露し
院看護部長)よりの祝電が披露されました(その他の数多
ました。この日のために練習を重ねてきた成果が十分に出
くの祝電は掲示されました)
。
たすばらしい学歌斉唱でした。
■感謝状贈呈
本学は駒ヶ根市を中心とした地域の皆様の援助と善意に
支えられここまで発展してまいりました。そこで、本学に
対し特に大きなご貢献をいただいた団体に感謝状が贈呈さ
れました。
(看護大学合唱隊)
記念式典の終了後、簡単なお茶とお菓子のもてなしがあ
り参加者はそれぞれ懐かしい顔と旧交を温めあっているよ
うでした。
(感謝状贈呈の様子)
まず、
「看護大学交流市民の会」
(会長中原正純駒ヶ根市長)
へ創立以来の本学への支援に対し感謝状が贈られました。
受け取りは、
看護大学交流市民の会運営委員長の大久保茂富
様です。
次に、
「看護大学周辺地域景観形成住民協定協議会」
(旧交を温めつつ)
の吉川文人会長にも同様の趣旨で感謝状が贈られました。
すべての公式行事が終了したのち、非公式プログラムと
■誓いの言葉
して、本記念式典のためにサンフランシスコよりお越しい
続いて、
長野県看護大学学生自治会会長の吉越一恵さん
(本
ただいた Anne J. Davis 長野県看護大学名誉教授をはじめ、
学学部2年生)よりこの記念式典に際して、学生代表とし
見藤隆子、雨宮多喜子両名誉教授を囲む会が催され、過去
て「誓いの言葉」が述べられました。
を懐かしみつつ、また未来を語りつつ楽しい時間を過ごす
ことができました。
(学生代表による誓いの言葉)
「学生生活は、楽しい事ばかりではなく、課題が多すぎ
(名誉教授を囲む会:Anne J. Davis 先生と)
て悩み苦しい時期もある。そんな状況を支えてくれるのが
友達であり、研究室の先生たちであった。私は1人ではな
� � � � � いんだということを実感した。今年の9月に恩師である池
田先生が亡くなられた。学生思いだった先生のことを忘れ
私はこの式典に参加して、考えさせられたことや感じた
ない。先生の遺志を継ぎこの大学をより豊かなものにし、
ことがいくつかありました。それは、
この大学が多くの方々
〔3〕
からのサポートを基盤にして発展してきたことや、大学が
disorderの増加を反映し、文明が非常に高度に発達した社
取り組むべき課題や担うべき役割を再認識させられたこと、
会の中で、人々が何らかの形で mentalな面で問題を抱える
学生個々人のもつ可能性が最大限に開花することを目指し
ようになってくることが予想される。
逆に言えば、physical
た大学の教育理念が学生に浸透しているな、と感じたこと
な面で問題を抱えている人たちのコントロールがそれなり
でした。特に、学生が誓いの言葉で述べた内容は私にとっ
にできるようになってくるとも言える。
て感慨深いものであり、
目頭を熱くしました。というのも、
人々が mentalな面での問題を抱えるということは、高度
学生は、大学の開学当初から学生教育に熱心に携わってい
に発展した文明を持つ地域では、自分が生きている社会そ
た池田先生のことについて触れ、先生の遺志を継いで社会
のものに対して、そこで生きていくことについて苦しんで
から必要とされる人材になることを誓っていたからです。
いるという状態であると言うことができる。たとえば、日
私は、学生が池田先生や他の教員や地域の方々からのサ
本のここ数年の主要死因の第6位は自殺であり、昨年、約
ポートによって徐々にエンパワメントされているのを感じ
37,000の人が亡くなった。これは壮年男性がリストラによ
ましたし、自らの足で前に進もうとしている学生の姿を見
る経済的不安を理由に自ら死を選ぶ結果でもある。終戦直
て、とても感激してしまいました。私も、この大学の礎を
後の状態と比較すると、当時は明日の食べる物がない状態
築いてくださった方々の想いを引き継ぎ、学生たちのもつ
であるという経済的不安を理由に、それで死を選ぶことは
可能性が少しでも開花できるように、そして学生たちが地
なかったが現在は違うという点である。この違いは、現在
域や社会に貢献できる人材に育っていけるように、学生教
の経済的不安が単なる経済的不安ではなく、なにもかもそ
育に励んでいきたいと思います。
ろっている社会で生きていくことに対する不安や社会の中
最後に、本式典を企画運営した委員の皆様にはその労を
で自分たちの生を全うしているという充実感を得られない
多とし、ここに感謝申し上げます。
状態が反映されている。これは、今後、日本社会の重要な
太田規子(本学教員:老年看護学講座助手・渉外委員)
ポイントになる。つまり、日本の疾病構造は上記で述べた
第3段階から第4段階にさしかかっており、この変化とと
もに医療のもっている社会的機能を変えざるを得ない状態
〔記念講演〕
であるといえる。
国際基督教大学大学院教授 村上陽一郎先生
「21世紀の看護学に期待するもの」
長野県看護大学創立10周年記念講演会が、記念式典に引
き続き行われました。医療従事者、大学関係者をはじめ、
多くの方々が参加され、科学史の分野ではわが国の先駆的
存在である国際基督教大学大学院教授の村上陽一郎先生よ
り今後の看護学に期待するものについての御講演をいただ
き、終了後には活発な意見交換が行われました。
「2
1世紀の看護学に期待するもの」と題して、①疾病構
(ご講演中の村上陽一郎先生)
造の変化、②社会構造の変化、という2つのポイントにし
ぼり、さらに lay expertの存在を含め、今後、医療者と患
では、医療のもつ社会的機能とは何であろうか。消化器
者との新しい関係がどのように成り立つのか、その関係の
感染症の時代(第1段階)に、診断書というものは、患者
中での看護者に期待される役割について御講演をいただき
をある社会的な contextから病院ないしは医療の context
ました。その一部をご紹介いたします。
へ移し替え、そこに抱え込むという働きを有し、通常の意
味での機能を果たしていた。ところが、生活習慣病の場合
� � � � � には、医療者の役割は逆である。つまり、医療者側の役割
疾病構造の変化
は、患者を医療に抱え込むのではなく、患者が自分の属し
疾病構造は、文明の発達が非常に初段階である状態の社
ている社会の contextにおくことを医療者側が支援するこ
会においては主として消化器系の感染が重要な疾病として
とである。ここに医療のパターナリズムといわれるように
猛威をふるい(第1段階)
、やがて、文明が進むにつれて医
すべての患者が医療の側から庇護される存在であるという
療だけでなく上下水道の整備によって消化器系の感染が少
ことに対して一つ大きな、いわば構造変革のポイントが出
しずつ克服されていく(第2段階)。次に、生活習慣病が社
てくるのである。したがって、感染症の時代には医療者が
会の主たる病気として注目を浴びるようになり
(第3段階)
、
患者を自分の手の中に抱え込み、医療者と患者にみられる
ついには、生活習慣病でさえある程度コントロールできる
パターナリズムはそれでよかったともいえるが、生活習慣
ようになる(第4段階)
。これらの疾病構造の変化を経て、
病になると、明らかに患者が社会の中で今まで通り生活し
今後は疫学的に見ると、欧米にみられるような mental
ていくということをどのように医療者の側で保証できるの
〔4〕
か、確保できるのかということが医療のポイントであると
態の人たちは、患者になっていない状態で医療と結びつき
いえるのである。医療が患者に対して果たす役割というも
を持つことになるため、医療者には患者の伴走者としての
のが第3段階から論理的に変化せざるを得ないということ
役割が広く求められる。さらに、コメディカルな人の専門
が最初の論点である。
性が尊重されることも大切だが、同時に患者のもつ家族で
あるような非専門性の人も十分に尊重されなければならな
社会構造の変化
い。この中に、医療を成功に結びつける鍵があるという状
現代社会が knowledge-based societyになり、情報獲得
況をこの社会に想定しうることができる。むしろ患者は無
手段の飛躍的な増大、ITといわれる情報技術が進歩し、
力な要庇護者ではないのである。いわゆる should
(かくあ
情報の拡大が行われている。一方、医療では広告規制に代
るべき)
ではなく be
(かくある)
である。
表されるような医療機関の内的情報の法律の規制は、4、
5年前からだいぶ緩和されてきている。日本医療機能評価
機構がおこなった医療機関の評価の内容を公表してもよい
という規制緩和が行われるようになった。つまり、どのよ
うな医療機関がどのような医療内容を提供してくれるのか
を患者が評価することができるようになったのである。同
様に、学会誌を読むことができるのは会員のみであったが、
デジタル化されることで、誰でもアクセスできるようにな
りつつあるため、一般の人が学会誌を読むことができるよ
うになるのである。第2の論点は、情報が専門家に独占さ
れなくなったことである。
次 に lay expertの 存 在 に つ い て 考 え て み た い。layは
看護の役割は、生活習慣病をかかえた高齢者が社会を埋
laymanであり、聖職者に対して一般の信者という意味で
め尽くす中で、看護の世界は今までに強く体験してこな
使う言葉である。したがって、layはそれを専門(職業)
かった老年看護学、介護と看護のすきまをどのように関連
としていない人である。lay expertという単語は、非常に
させていくのかということにある。患者の立場からすれば、
矛盾した言葉使いであり、言ってみれば、専門家でない専
自分の人生を全うするためにどう生きていくのかが高齢者
門家といえる。この lay expertは、なまじっかな臨床医よ
の問題である。看護と介護はどのようにそれを支援してい
り、医学としての知識と同時に患者がどのような時に一番
くことができるのか、これからの少なくとも課題の一つで
つらいのか、悲しいのか、どういう支援が一番欲しいのか
ある。もちろん子供、若い人に対する支援も重要だが、実
わかっている。医療者はなかなかその認識を持つことがで
践の現場は高齢社会であると考えられる。
きないのかもしれない。その意味で lay expertは、単に医
最後にWHOの総会の一つの議論を紹介する。健康の定
学・医療の expertに近いというだけでなく、むしろ患者側
義に spiritualと dynamicalを加える問題についてである。
としての expertでもあるというところに、
医療を consulting
つまり、人間がまっとうに生きるということは、身体的、
するのに十分な能力をもった人であるということができる。
精神的、社会的によい状態にあるだけでなく、霊的に良い
今 layの立場にある人、つまり患者ないし、患者予備軍の
状態であるのかどうかである。ともかく、人間が人間とし
人たちは、医学・医療に関してそれなりの資質を持つに至っ
て生きにくい社会においてどのように生きていくかが課題
ている。少なくともある場面においてはそうである。しか
であり、それを支援するのが看護をはじめとする医療者の
も、lay expertは、医療者が抱くことが少ないと思われる
課題である。
患者や家族の喜び、悩み、苦しみをよくわかる人たちとし
て、認められるようになりつつある。
村上陽一郎先生のプロフィール
1936年 東京生まれ
1962年 東京大学教養学部教養学科(科学史科学哲学分科)
医療と看護の役割
卒業
医療が患者に対して果たす役割というものが第3段階か
ら論理的に変化せざるを得ないこと、情報が専門家に独占
1968年 東京大学大学院人文科学研究科比較文学・比較文
化専攻博士課程修了
されなくなったこと、そして、lay expertの重要な存在に
上智大学、東京大学の助教授・教授を歴任。現在、国際基
ついて述べてきた。これらの論点をふまえた上で、医療の
督教大学大学院教授。1973年には第1回哲学奨励山崎賞、
役割とは何であろうか。医療は自立した個同士の共同作業
1985年には第39回毎日出版文化賞を受賞されている。
であることを忘れてはいけない。その役割とは、生活習慣
著書には、
「生命を語る視座-先端医療が問いかけること」
病に関して言えば、医療者は患者にとっての庇護者である
など他多数。音楽関連の活動もされ、チェロの演奏は、趣味
というわけではなく、その患者がその社会の中で生活して
いけるように援助者に徹することである。また、未病の状
〔5〕
の領域を超えているという評もある。
堀内美和(本学教員:病態・治療看護学講座助手・渉外委員)
〔看護実践国際研究センター活動報告〕
ランティアはのべ669名となっています。内訳は、医療ボ
異文化看護国際研究部門(IRC) 外国籍市民の看護支援プロジェクト
床検査及び診療放射線技師・歯科衛生士・MSW)
、通訳
ボランティア101名(ポルトガル語・中国語・タイ語・タ
2004長野県外国人検診
田代麻里江・畔
ランティア130名(医師・歯科医師・看護師・保健師・臨
ガログ語・スペイン語・英語・インドネシア語・ハングル
良江
語・ペルシャ語・ミャンマー語)
、一般ボランティア438名
(受付・受診者付添い・記録補助・検診補助・ベビーシッ
去る2004年12月12日�、今年度で2回目の開催となる
ター・駐車場整理等)で、さらに、各地域で会場を提供し
上伊那地域での外国人検診が伊那中央病院を会場として実
て下さった病院および病院職員の方々にも御協力を頂いて
施されました。この外国人検診は、外国籍県民が抱える健
います。上伊那会場のボランティア総数は141名でしたが、
康への不安等を解消することを目的として、昨年に引き続
そのうち69名(学部生60名・大学院生3名・教職員6名)
き、県の委託事業<外国籍県民 心と身体の安心サポート
が看護大関係者で約半数を占め、昨年の56名を上回ってお
事業>として県下7か所(中野・松本・佐久・飯田・茅
り、さらに大きな戦力となりました。
野・長野・上伊那)で開催されています。委託先である北
信外国人医療ネットワーク
(NGO)
が中心となり、各地域
の市民団体が参加して
「2004長野県外国人検診実行委員会」
を結成し、それぞれの地域の事務局を地元の団体が担当し
ます。今年度、
長野県看護大学・看護実践国際研究センター・
異文化看護国際部門
(IRC)では、伊那国際交流協会や駒ヶ
根日本語教室の方々と共に、上伊那実行委員会の事務局と
して活動することになりました。加えて、外国人検診に関
心を示した編入生(元青年海外協力隊員)を中心に6名の
学生による外国人検診学生実行委員会も発足し、昨年度以
〔外国人検診の様子:血圧測定の順番を待つ受診者の方々〕
上に準備・企画段階から多くの学生さんの協力を得て、進
めていくことができました。十数回にも及ぶ実行委員会・
今回の検診結果
事務局会議の開催、チラシ印刷・配布、各種イベントでの
今回の受診者の平均年齢は31.5歳、平均滞在年数は5.8年
外国人検診の宣伝、検診に使用する受診票等の印刷・物品
でした。受診者は、女性が男性よりやや多く、5人に1人
準備、実に様々な仕事を実行委員皆で分担・協力して行い
が子どもでした。国籍別では、ブラジル人の方が6割弱と
ました。その結果、当日の検診は、とてもスムーズに運ぶ
半数以上を占め、中国人の方が1割強、その他2
7か国に及
ことができました。また、今年度は、伊那中央病院の御協
ぶ様々な国籍の方が受診されました。これらの受診者のう
力により、全ての検診内容を病院で行えるようにして頂い
ち、4人に3人が何らかの自覚症状(頭痛、肩こり、背部
たため、昨年度のような2会場間の移動がなくなり、受診
痛等)を持って受診しており、およそ2人に1人が可能性
者の待ち時間の短縮やスムーズな検診の実施につながりま
のある病気を指摘され、およそ3人に1人が病院への受診
した。
が必要と診断されました。可能性のある病気として多くみ
られたのは、高脂血症(約4割)
・肝機能障害(約3割)・
検診の内容と実際
高血圧(約3割)等であり、また、肥満を指摘された受診
この検診では、日本語が十分でない受診者のために10か
者もいるなど、昨年同様、在日外国人の健康問題として、
国語の通訳と問診票・検診結果表が用意されています。検
感染症よりも生活習慣病が主として認められるという結果
診費用は1500円(子ども無料)で、検診内容は、身体&血
となりました。
圧測定・血液&尿検査・胸部レントゲン撮影・医師による
診察・保健師等による健康相談・歯科検診(希望者のみ)
上伊那会場での受診者アンケート結果から
となっています。
検診の受診理由として、
「自分の健康状態を知りたい」と
県下7か所の検診受診者総数は476名で、昨年の366名
いう以外に、
「料金が安い」
、
「通訳がいる」、
「日曜日(平日
を大きく上回る数字となりました(昨年比30%増)
。上伊
以外)の開催」等があげられており、受診者のうち3人に
那会場の受診者数は114名で、今回初の検診実施にこぎつ
1人は今までに外国人検診を利用したことがあるリピーター
けた飯田会場での受診者数156名を合わせると、南信地域
でした。また、受診者のうち約半分の人が健康保険に加入
での受診者数が270名となり、全体の半数を超える結果と
していました。これらのことから、健康保険に加入してい
なりました。このことは、南信地域における外国人検診の
る在日外国人の方であっても、保険制度の中で実施される
ニーズの高さを伺わせます。
健康診断を受けるにあたって様々な障壁(言葉の壁や平日
この476名という受診者総数に対し、検診に関わったボ
での健診の受けにくさ等)があることが伺えます。今回の
〔6〕
ような形での外国人検診の開催は、在日外国人の方の健康
片桐美津子、加藤尚子、木村佑美子、小林朋代、
状態の把握というニーズを満たす役割を担っていると考え
近藤芙未子、斎藤 舞、澤木奈津子、代田萌美、
られました。
白鳥美帆、曽根原聡美、高島未季、高橋恵美、
田中里美、田中智美、中村和明、中山綾子、
藤澤直子、堀 恵子、水間亜香里、柳沢愛子、
上伊那会場の今後の課題
山越真由美、山田千書、油井美絵
昨年同様、多くの受診者が検診に訪れ、在日外国人の方
の健康へのニーズに応えられたことは、主催者としては喜
<4年> 田中 嶺、藤岡好美*
ばしいことでしたが、今後も引き続き外国人検診を行って
<編入1年>
いくにあたり、昨年あげられたいくつかの課題 <1. 要受
岩崎淳子、加藤野枝、桐生志穂、児島麻理子*、
診の方へのフォローアップ、2. 事業所が外国人雇用者にも
芝崎亜希子*、中村由美、水口雅子*
健康診断を提供するような働きかけ、3. 自治体の外国人に
<大学院生>
対する保健サービスの向上への働きかけ等> に加え、
次の
大脇百合子、谷口恵美子、廣田菜津子
ような課題が考えられました。
<教職員>原 光世、安田貴恵子、山田幸宏、山田 隆
�受診者数が多いため、長くなってしまう検査や診察の待
(順不同・敬称略)注:*学生実行委員会メンバー
ち時間を有効利用し、健康や予防に関する情報を提供す
るなど、健康教育の場や機会として活用していく
�今年度以上に地元住民の理解と協力が得られるよう、上伊
那地域の住民へボランティア参加を呼びかけ、地元住民の
中で医師・通訳・一般ボランティア等の必要な人材をまか
ない、地元主体で検診の運営ができるようにしていく
多文化共生に向けて
近年、私たちの身の回りでは、実に多くの外国人の方を
見かけるようになりました。現在、長野県では県民の約
2%、約50人に1人の外国人が生活しています。しかしな
がら、同じ地域に暮らしていても、このような外国人の方
することで外国人の方と交流を持つことができる場ともなっ
〔2004長野県外国人検診上伊那実行委員会メンバーの面々)
後列左から:林(駒ヶ根日本語教室)、
三石(駒ヶ根日本語教室)、
芝崎(編1)
、畔�、児島
(編1)
中列左から:水口(編1)
、北川(1年:新)
、川北
(2年)、
深井(1年)
前列左から:藤岡(4年)
、田代
ています。つまり、この検診活動は、地域における国際交
(文責・畔�良江:本学教員・生活援助学講座助手)
と接する機会がほとんどないというのが多くの日本人の現
状かと思われます。この検診は、病気の発見に努める場と
なっているだけでなく、日本人がボランティアとして参加
流の機会を提供する役割も担っていると言えるのではない
でしょうか。このような地域での国際交流を通じ、日本に
住む外国人と日本人がお互いを身近に感じていくことは、
異文化理解の第一歩につながります。「外国人も日本人も住
みやすいまち」を目指して、本学IRCの『外国籍市民の
看護支援プロジェクト』では、今後も活動していきたいと
考えています。
� � � � � 2004長野県外国人検診【上伊那会場】にボランティアとして
参加して下さった本学の方々です。ありがとうございました。
<1年> 荒井恵子、伊東あゆみ、笠井沙織、柏木はづき、
上條裕子、北川公子、熊谷亜由美、小林翔子、
澤田いずみ、篠崎絵里、末福千恵、中村春菜、
深井絵里花*、藤沢 幸、藤田朋香、藤本藍子、
増本璃沙、水上賀重子、山内恵里加、
山崎由貴子、脇坂 恵
<2年> 川北史恵*、紀室友美、竹内めぐみ
<3年> 秋山麻由子、阿部知子、太田純子、小野菜保子、
���������������
� 外国人検診ボランティア募集中 ! �
� 長野県外国人検診は、平成17年度も実施が予定され �
� ています。この検診のための準備や運営をお手伝いし �
� て下さるボランティアの方を、学内外から広く募集い �
� たします。外国人検診に興味・ご関心のある方は、お �
� 気軽に下記までお問い合わせ下さい!
�
�
�
問い合わせ先
� 長野県看護大学
�
看護実践国際研究センター
・
異文化看護国際研究部門
�
�
『外国籍市民の看護支援プロジェクト』担当
�
�
�田代麻里江(国際看護学講座)
� Tel. & Fax:0265-81-5153
�
� E-mail:mtashiro @ nagano-nurs.ac.jp
�
� �畔 (くろやなぎ)良江(生活援助学講座)
�
� Tel. & Fax:0265-81-5162
�
� E-mail:yoshie_kuroyanagi @ nagano-nurs.ac.jp �
���������������
〔7〕
我々は、被災地からほど近いサッカー場跡地にクリニッ
教員活動報告
クを設営しました。そこはインドネシア国軍の遺体収容の
〔教員活動報告〕
ためのキャンプになっており、治安の懸念されるバンダア
インドネシア地震災害での
国際緊急援助隊(JMTDR)に参加して
チェ市内においても、軍の協力が得られることは安全面で
好都合でした。診察室用の大型エアーテントを中心に、受
付、薬局、点滴室、通信事務室、食堂、休憩室、倉庫など
田中高政
機能に分けていくつものテントを設営し、地元のボラン
昨年暮れ、日本時間12月26日午前6時58分、インドネ
ティアによる通訳や宿舎の提供など全面的な協力を得なが
シア・スマトラ島沖北西部においてマグニチュード9.0の巨
ら診療を開始しました。
大地震が発生、それによって起こった津波がインドネシア、
スリランカ、インド、タイ、モルジブにきわめて大きな被
(
診
療
テ
ン
ト
の
設
営
)
害をもたらしました。被災した各国政府からの援助要請を
受けた日本政府は、独立行政法人国際協力機構(JICA)に
対し、医療チームの派遣を指示しました。今回、国際緊急
援助隊医療チーム(JMTDR)として、インドネシア・ス
マトラ島バンダアチェに派遣されたのでご報告いたします。
JMTDRはボランティアベースの医療チームで、JICAに
自発的に登録した隊員が海外の大規模な災害時に被災地に
派遣され、医療活動を行います。そのミッションは、被災
診療開始翌日から、クリニック前には長蛇の列ができま
した現地医療機関に代わって一時的に医療サービスを被災
した。日中の猛暑はきわめて過酷であり、隊員は2リット
民に提供し、人的被害の軽減に努めることです。
ルのミネラルウォーターを常時持ち歩き脱水を予防しなが
ら、1日4錠のビタミン剤で体調を維持しました。熱帯地
〔
第
一
陣
の
メ
ン
バ
ー
〕
方特有のスコールが来るとテント内に浸水し、泥まみれの
診療も体力を消耗しました。9日間で延べ1,500人の患者
を診察治療しましたが、救命救急の患者は少なく、全身的
な外傷患者や PTSDと思われる患者が多かったようです。
行方不明の母親を探しているときに瓦礫で足を切った幼い
子とか、
夫を亡くし子供の行方がわからない若い母親など、
通訳の言葉に思わず涙を流しながらの診察でした。帰りの
12月31日成田に前泊し、翌朝成田空港2階特別室で顔合
飛行機が運航するかどうかが危惧されましたが、約2週間
わせを行い、あわただしく日本を後にしました。メンバー
の任務を終え、無事帰国することができました。
は、先遣隊として派遣されていた第1陣を含め、医師4人、
看護師7人、薬剤師1人、医療調整員、外務省や大使館職
員、JICA 職員など総勢22名で、長野県看護大学からは大
学院生の谷口さんも参加しています。
(
診
療
風
景
)
バンダアチェ市内は、至る所に崩壊した建物や板切れが
散乱し、遺体収集時の異臭はマスクをしていても耐えられ
ないものでした。水は断水し、電気も電話も復旧せず燃料
やガソリンも不足してました。役所や警察など公的機関は
機能せず、医療機関や医療関係者も被災しており医薬品や
人手は不足し、病院は軍病院のみが使用可能でしたが重症
こういう活動の中で、ナースはトリアージ、診療の介助、
患者の対応に手一杯の状態でした。
(
壊
滅
し
た
バ
ン
ダ
ア
チ
ェ
市
内
)
患者の世話、物品管理、受付業務、予薬、傷の処置、点滴、
患者の話を聞く、全体のコーディネートなど、とても重要
な役割を担っています。看護の活動成果を数字では表しに
くいですが、看護がなければクリニックは機能しません。学
生の皆様には、看護にはこういう分野もあるということを
知っていただきたいとともに、ぜひ海外援助に興味をお持
ちになり国際社会で活躍・貢献してもらいたいと思います。
(本学教員:基礎看護学講座助手)
〔8〕
れた人数は約17,000人。実際、薬物を乱用している人数は
〔教員活動報告〕
220万人とも推計され、しかもMDMA(通称「エクスタ
「第2回日本小児がん看護研究会」
を
開催して
シー」)の若年層への拡大は、大きな社会問題になってい
ます。彼らは、犯罪者として処罰されますが、その多くが
第2回日本小児がん看護研究会幹事 内 田 雅 代
再び薬物に魅せられてしまうのです。
昨年11月21日に第2回日本小児がん看護研究会を、
京都国際
薬物先進国アメリカでは、薬物事犯の増加による薬物戦
会館にて開催しました。
医師の大きな二つの学会
(日本小児が
争が勃発し、多くの刑務所が建設されましたが、薬物抑止
ん学会・日本小児血液学会)
の同時期開催に、
2年前に発足した
に効果はありませんでした。「薬物依存は病気なので、処
ばかりの日本小児がん看護研究会
(看護師を中心として多職種、
罰より治療を」というコンセプトから、薬物関連事犯で逮
当事者、
家族も会員として活動)
の第2回研究会を、
日本小児が
捕された薬物依存症者に対して、裁判所が処罰ではなく、
ん学会看護セッションという形で組み入れ、
開催しました。
治療とリハビリテーション・プログラムを提供することを
当日は、定員250人の会場が参加者であふれ、急遽、会
目的として、1989年、ドラッグ・コート(Drug court)
場前のロビーにテレビ中継で対応し、およそ450人ぐらい
が設置されました。その後、
カリフォルニア州だけでも100
の方の参加がありました。教育講演、シンポジウム、一般
以上。全米では何千ものドラッグ・コートが開設され、丁
演題と、どのプログラムも活発な意見交換がされ、時間的
寧な治療によって再犯率を下げました。
にも内容的にも充実した一日となりました。
ドラッグ・コートの実際を学び、日本の司法、精神医療
この第2回研究会を上記のような形で行うことを役員会で
を見直すため、3月14日から9日間、大阪市で薬物依存症
決め、医師やがんの子どもを守る会の方々と一緒に準備をし
者への回復支援を行っている Freedom 主催の「サンフラ
てきましたが、その過程の中で、本研究会としての立場(小
ンシスコ研修ツアー」に、私を入れて8名が参加しました。
児がん学会とは独立した組織)、看護のアイデンティティー、
成人対象のドラッグ・コートでは、入り口の厳重なボディ
当事者・家族を、それぞれの立場からどのようにとらえてい
チェックを受け、迷路のような通路を通り、会議室に入り
るかなど、さまざまなことを考えさせられ、
「他職種と協働
ました。2時間後に開廷される裁判の前に、判事、検察、
する」中でのコミュニケーションの大切さを再認識しました。
弁護士、保護監察官、警察、治療サービスのコーディネー
また、準備をすすめていく中で、小児がんの治療研究に熱
ター、ケースマネージャーが集まり、それぞれの被告が薬
い思いで関わっている医師や、患者・家族にとっての普通の
物依存に至った背景についての情報交換。
「住む場所はある
生活を支えようと活躍しているボランティアの方々等、さま
のか」
「家族も薬物を使っている」
「なぜ治療プログラムが
ざまな方との出会いもあり、真剣にそれぞれの立場で仕事に
守れなかったのか」など、会話が途切れることはありませ
取り組んでおられる姿に感激し、勇気づけられました。
ん。そして、
適当と思われる治療方針を確定していきます。
準備から当日の運営に至るまで、小児がん看護研究会役
その後、法廷で裁判が始まり、手錠をはめられた被告が、
員の方々、京都府立医科大学の杉本徹先生をはじめ諸先生
警察官と共に次々と入ってきます。ほとんどの被告が、
「通
方、鎌田久子師長様、堀井匡子師長様から温かいサポート
所リハビリ施設(または入所リハビリ施設)に6ヵ月間行
をいただき、また、講座スタッフや大学院生の勤勉なお仕
くこと。来週出廷して尿検査を受けること」といった、判
事により、この研究会をなんとか無事終えることができま
事の申し渡しを了承していたのですが、ある女性の被告が、
した。この場をお借りして皆様に感謝申し上げます。
「出来ない、出来ない」と言い続けていました。判事が時
この会で得たこと、明らかになったことや解決すべき課
間をかけて聞いていくと、小さな子どもを抱えていること
題を、研究会として、あるいは他職種の方々と一緒に、引
に不安を感じていることが分かったのです。そこで、先ほ
き続き検討し、研究活動を深め、小児がんをもつ子どもと
どのスタッフが集まり、子どもをサポートする施設を紹介
家族へのケアの向上をめざしていきたいと考えています。
(本学教員:小児看護学講座教授)
することで、ようやく了承する場面もありました。判事の
「私達の職種は違いますが、ドラッグをやめるのにどんな
方法がいいのかという共通の目的を持っています。ここで
は刑量や罰は扱いません」という言葉に、一般的な裁判所
〔教員活動報告〕
とドラッグ・コートの違いを改めて実感しました。
薬物依存症者に処罰より治療を!
アメリカのドラッグ・コートに学ぶ
未成年対象のドラッグ・コートでは、まず、隣接されて
いる通所リハビリ施設を訪問すると、ハイスクールの女子
赤沢雪路
学生と思われるメンバー数人から、お抹茶と和菓子のもて
「ドラッグ」と聞くと、どんなイメージを持ちますか?
なしを受けました。治療スタッフの一人が大の日本びいき
“人間辞めますか? 覚せい剤辞めますか?”というキャッ
ということもありますが、訪問者が来た時の礼儀作法を教
チフレーズが物語っているように、“人間失格”というイ
えることも、治療の一つになっているとのこと。私達の様
メージが強いのではないでしょうか。
子を不安そうに見ていたメンバーに「とても美味しい。素
平成16年度の警察白書によると、薬物関連事犯で検挙さ
敵なもてなしに感動しました」と伝えると、メンバー同士
〔9〕
が顔を見合わせ、大喜び。彼女達の様子から、つい最近ま
あり、またどのような意義を持つのかを知る意味では有用
でドラッグを使用していたことが想像出来ませんでした。
である。特に、新しいものが必ずしも優れたものとは限ら
教室では、日本からの訪問者に興味津々です。
「日本にはど
ない文科の学問においては学問史をやる意味は大きい。
んな薬物があるのか」
「捕まったらどんな処罰を受けるのか」
世 界 的 規 模 で の 言 語 学 史 学 会 は 3 年 毎 の ICHoLS
と次々に手が挙がります。私達から、ドラッグを使うきっか
が
(International Congress of History of Linguistic Sciences)
けを聞いたところ、ほとんどのメンバーから「好奇心」
「ハイ
ある。ちょうど今年がその開催年に当たり、9月にシカゴ
になる感じを体験したかった」
「グループの皆が使っていたか
近郊のイリノイ大学 Urbana-Champaign 校で開催される。
ら」という返事。中には「$1で買える」という言葉も聞かれ、
これは、1,000人以上もの学者があつまる大規模なもので
ドラッグが誰にとっても身近な存在であることを知りました。
ある。それに対し上の挙げた国の学会の比較的小さな集ま
〔
カ
ドリ
ラフ
ッォ
グル
・ニ
コア
ー州
ト
の
風
景
〕
りが毎年ある。筆者は、言葉の関係もあり、イギリス、ドイ
ツ、北米のそれぞれの学会に所属しているが、毎年少なくと
もどこかの学会に出て発表するように努めている。8月の終
わりから9月に学会を行なうという日程的な関係でイギリス
の学会には毎年出ているが、一昨年度のダブリン大会(Trinity
College)に続き、今年はOxford大学で行われた総会に出た。
ご承知のように、Oxford 大学は30以上の Collegeが集合
した Universityで、学生は Oxford 大学に所属すると同時
未成年対象の法廷は、成人のものと比べると、広さが1/6。
に、
どこかの Collegeに属さなければならない
(I am attached
判事と被告席の距離の近さが特徴的でした。スタッフも判
to XX College. などという)
。そして、重要なのは講義に
事を始めとして女性が多く、人種も様々です。
出席して単位を取るということではなく、tutorの個人指導
午後から始まった法廷で、先ほど教室で会ったメンバー
を受ける tutorialである。その意味で、学問共同体、すなわ
の一人が被告席に立ちました。判事が以前伝えてあった
ちギルドとしての大学のシステムがいまだに息づいている。
「作文を書くこと」という約束が守られておらず、今日に
イギリスの言語学史学会は The Henry Sweet Society
なっても提出されていないことが問題になり、「なぜ書け
といって、今から100年ほど前に活躍した有名なイギリス
ないのか?いつだったら提出出来るのか?」という問いに
の言語学者の名前を冠した学会である。この Henry Sweet
も、はっきりした答えが返ってきません。すると判事が
は、G. B. Shawの Pygmalion(後に、My Fair Lady)に
「あなたはメールが出来たわね。私の所にメールで送って
出てくる Dr. Higginsのモデルとなったと言われているが、
ちょうだい。今日中よ」と、自分のメールアドレスを書い
真価のほどは定かではない。総勢300人ほどの小さな学会
て渡しました。その姿は、まるで母親のようです。このよ
であるが、それでもイギリスを中心にヨーロッパ、アメリ
うな感じで、それぞれから近況報告、治療プログラムが
カ、アジアに多くの会員を有し、今回の総会でも12カ国か
合っているかを聞き、次回の出廷日を決めていました。
ら70名以上の学者や学生が参加していた。小さな学会のた
日本では依存症者が自発的に病院を訪れない限り、治療
め、セッションの同時進行のものは2つしかなく、いたっ
が始まりません。これは「否認の病」である依存症者に
てサボりにくいプログラムになっている。筆者も、30分の
とって、非常に困難なことなのです。しかも、専門病棟が
時間が与えられ、German Influence on English Studies
極端に少ないのが現状です。
of Japan in Its Early Stageと題した paperを読み、質疑に
飲酒運転者に対して高額な罰金を科す代わりに、アル
答えた。何よりも感心するのは、大御所と呼ばれるような先
コール依存症の治療プログラムを! 拘置所に収監する代
生が、やはり自分の発表をし、若い学生と丁々発止とやり
わりに、薬物依存症のリハビリテーション施設を! 司法
あっていることだ。大御所だからといって踏ん反り返って、
と精神医療の整備が急務であることを学んだ研修でした。
若い人の揚げ足をとるコメントに終始するようなことはない。
(本学教員:精神看護学講座助手)
学会の内容よりも、Oxfordの話とイギリスの昨今の事情
を話すことにしよう。すでに述べたように、Oxfordは3
0以
上もの college(学寮)からなる学問共同体(universitas)
〔教員活動報告〕
である。小さな collegeは hallと呼ばれることもある。有名
Oxfordでの言語学史学会に参加して
江藤裕之
な collegeと し て は、Christ Church(Henry Ⅷ の 創 立、
Harry Potterの映画で祝宴が行なわれる会場としてロケが
現在、人間の知的精神史から見た言語学の歴史を主軸に
あった Dining Hallが有名)
、Merton College(日本の皇太
した学会が、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、北
子殿下が留学されていたところ)、
そして Magdalen College
米などに存在する。学問史は、最先端こそが最も優れてい
(モードリンと発音し、マグダレンと読むと英文科では恥
るという分野にはあまり役に立つことも無いであろうが、
をかく)
などがある。そのどれも貫禄と風格があり、college
自分の行なっている研究が歴史的にどのような流れの中に
の中を歩いているだけで、頭がよくなりそうな気がする。
〔10〕
今回の学会の目玉はやはり collegeに寝泊りすることがで
援を目的に1994年、制定されました。それ以降、世界の各
きたということであろう。会場となった Jesus Collegeは
地での啓蒙活動を進めています。日本の各地でも、様々な
Elizabeth Iによって1571年に創設された、Oxfordでも
取り組みがされていましたが、ここ長野県でも、ぼけ老人
屈指の古い collegeである。したがって、概観や中庭などか
をかかえる家族の会長野県支部により、2004年9月26日
らは歴史の重みを感じる。もちろん、部屋の中は近代化さ
に「
『痴呆』問題と向き合い、より良い介護の在り方を考
れていて、
16世紀の面影は無い。そこで、
特筆すべきは dining
えるつどい」が、飯田市で開催されました。当日は老年看
hallであろう。創設者の Elizabeth Iの肖像画をはじめ、
護学講座で総合実習中の4年生7名、教員5名、大学院生
この学寮を卒業したセレブ達(アラビアのロレンスもあっ
1名の総勢13名が出席し、午前中は街頭でのビラ配りなど
た)のポートレートが所狭しと飾られ、その偉い人たちに
を行いました。また午後は学生がシンポジウムのパネラー
見つめられながら食事をするのである。そして、食事(特
として参加する機会を得ました。その一部をご報告させて
に formal dinner)は collegeの生活の中での特に重要な儀
頂きます。
(
パ
ネ
ル
・
デ
ィ
ス
カ
のッ
様シ
子ョ
ン
)
式であるらしく、一緒の釜の飯を食べるというのがまさに
companyなのだ。今はどうか知らないが、
かつての Oxford
では、大学の講義などサボっても別にどうということはな
いが、学寮でのメシだけはサボってはいけないという暗黙
の掟があったらしい。しかし、今では物価高騰のため、こ
の dining hallでの食事も高く、自分で簡単に食事を済ませ
てしまう学生や、家で食事をする教授も出てきたそうだ。
ちなみに、我々は lunchで18ポンド、dinnerで22ポンドも
シンポジウムでは、医療職、介護職、痴呆高齢者を抱え
取られた。1ポンド=210円で換算するといかに高いかお
る家族のそれぞれの立場からの意見が出され、その中で学
分かりだろう。現在のイギリスはバブル経済だそうで、と
生も発表を行いました。大きなテーマは実習などを通して
にかく物価が高い。日本はデフレで、賃金も上がらない代
「痴呆高齢者と関わって考えたこと」という観点からで、
わりに物価の変動もそう無い。だから、バブル・インフレ
3グループに分かれて意見を纏めました。一つ目のグルー
のイギリスにいくと本当に「高い!」と感ずる。ツーリス
プの学生(岩倉麻生子さん、小林正実さん、柴麻理さん)
トなので、特にホテル代と食事代が高い。もはや、日本は
は「痴呆高齢者の言動に隠された意味を考える」という
世界一物価の高い国ではなくなったようだ。
テーマで、痴呆高齢者と関わっての戸惑いから、「こちら
Oxfordは Blackwellsと呼ばれる有名な本屋(主として
側から見て問題だと思われる行動でも、その人にとったら
新刊書)、その他にもたくさんの古本屋(かつてよりは相
意味がある。その意味を探るにも、ただ単純にその場面だ
当減ったものの)がある。また、Bodleian 図書館やその他
けを見て表出している行動を判断するのではなく、その人
多くの観光名所もある。しかし、
学会は参加人数も少なく、
がこれまでどのように生きてきたのかということや、趣味
セッションも詰まっていて、4日間のプログラムはサボる
や楽しみ、父親や母親という家の中での立場や社会での役
こともなかった。その意味で、頻繁にある coffee breakと
割、家族や友人との人間関係など様々な情報からその人が
meal times、そして夜の college barの時間が一番の息抜
どのような人であるのか一人の人間として理解することが
きとなったようだ。しかし、学会で人の発表を聞いて質疑
必要である。また、人はそれぞれ歩んできた人生があり、
応答するよりは、このような informalな場での語らいの方
築かれたその人なりの思いや、こだわり、生活スタイルが
が、むしろ刺激を受けることも多く、新しいプロジェクト
あるため、型にはまった対応ではなくそれぞれの情報に基
を産む可能性も多い(実際、筆者は新しい共同研究プロ
づいた分析・解釈からその人の求めていることを捉え理解
ジェクトをアメリカからの参加者と行なうことになった)
。
し、かかわっていくことが重要だ」といった痴呆高齢者の
その意味で、大学の講義などサボってもいいが、collegeで
言動の意味について考えたことを発表しました。二つ目の
のメシはサボってはいけないというのは、学問的視点から
グループの学生(赤沢佳奈さん、宮崎亜由美さん)は、
「痴
みてもひとつの知恵だったのである。
呆高齢者の寂しさに触れて」というテーマで、実習中に関
(本学教員:外国語講座助教授)
わった方の寂しいという訴えから「痴呆を持っている高齢
者は記憶力を失ったり、今までできていたことができなく
なったり、人間性さえも失ってしまうことがある。その上
〔教員活動報告〕
施設で暮らす痴呆高齢者は、自宅ではない、慣れない環境
世界アルツハイマーデイの
取り組みに参加して
で、家族と離れて生活するという辛さも加わっている。施
浅野久美子
設では育った環境も性格も違う様々な人と関わる機会があ
り、外部からの刺激が多いというメリットもあるが、喪失
「9月21日」は、世界アルツハイマーデイです。国際ア
という不安や寂しさを感じている痴呆高齢者が、施設入所
ルツハイマー病協会により、痴呆の方や、その介護者の支
により、家族という自分の居場所からも離れることで、痴
〔11〕
呆症状が急激に悪化するということも少なくない。施設で
践教育も行われている。そこでは、ケア理論とケア実践の
生活していても、痴呆高齢者が一人ではない、家族は自分
ジレンマを乗り越える工夫を通じ、より効果的なケアの教
のことを気にかけてくれていると実感できるような関わり
授法のみならず、看護医療を越えたケア教育の新構想が見
をすることで、自分の存在の意味を感じられ、寂しさが和
えてきている。このような状況のもと、ケアの理論と実践
らぐのではないかと思った」という、寂しさに対してのケ
から見た、新たなケア教育の射程と可能性を考えてみるこ
アの必要性について発表しました。三つ目のグループの学
とを中心テーマとした。
生(勝野智子さん、本間恵梨子さん)は「痴呆高齢者の生
はじめに、企画者の江藤による以上の趣旨説明と問題提
活の自立に向けた援助を考える」というテーマで、実習中
起が行われ、各話題提供者が紹介された。それに引き続い
の関わりで待つことが出来ずに過剰な援助をしてしまった
て、各メンバーから発表と問題提起がなされた。その順番
という経験から、
「自立のために、その人にとって必要な援
と概要は次の通り。
助は何か、本当に対象の方のためになることは何か、を見極
岩崎朗子(本学看護教育・管理学講座専任講師、本学大
めることが大切であると思う。そのために、対象の方がどこ
学院博士後期課程)は、
「『振り返り』からケアを学ぶ――
までできるのか、という自立の程度を知ることが必要である。
他者へのケアと自己理解」というテーマで話題提供を行っ
それを知るためには、できるかもしれないという気持ちを常
た。看護学生や資格を有する看護専門職者の教育を中心に
に持って、関わりよく観察することが重要であり、
「自立」と
学んでいる岩崎は、臨床看護グループ・スーパービジョン
いうことを意識して見守り、援助することが必要だと思った」
やカウンセリングを通して、学生に患者理解に留まらない
というように、看護の援助をただするのではなく、残存機能
幅広い人間理解の場を提供している。そこで、ケアについて
を活した援助をしていくことの重要性を発表しました。
の考え方をどう臨床に繋げるか、また臨床の場にある看護職
これらの発表は、シンポジウムに出席された関係者や家
者とケアについて振り返る場をどう共有するかという看護教
族の方々に注目され、大変好評でした。ぼけ老人をかかえ
育の中でも重要な問題に注目しながらも、看護学の中で「看
る家族の会の会報紙や信濃日報にも発表原稿が全文掲載さ
護教育」はまだまだ発展途上にあり、実践における対人援助
れ、
「看護の原点を見た」、
「こういう会にこれから未来の
をどう教育に反映させていくか、模索しているところである。
看護を担う若者が出てくれて嬉しい」とのコメントを頂き
「ケアすることによってケアされること」という内容の
ました。学生も様々な立場の方々からの話を聞くことが出
発表をした吉田聡子(本学大学院博士前期課程)は、本学
来、多くの学びを得たようで、このような場を持つことの
卒業後(一期生)、看護師として虎ノ門病院に4年間勤務
大切さを改めて実感することが出来ました。
し、本学の助手(老年看護学講座)を1年務め、現在は本
(本学教員:老年看護学講座助手)
学大学院(看護教育学講座)に在籍するという多様な経験
を活かした「ケアの教育」について自らの考えを披露した。
現在は院生として、看護に限らずさまざまな分野の教員や
〔教員活動報告〕
日本構想学会 Round Table Discussion:
学生との出会いを通じ、多くの視点から「ケア」を考える
機会を得るなど、毎日が新たな発見の連続であり、最近は、
ケアの理論と実践から見えてきた
新たなケア教育への構想
広く哲学や倫理の古典とよばれる名著の読書に挑戦し、看
―― Care is Everybody’
s Business. をめざして
江藤裕之
護以外の視点からも自分の看護観・ケア観を高めるヒント
を得る努力をしつつ、思索を深めていることも発表した。
次に、志村ゆず(本学心理学講座専任講師)により話題
「権威主義や常識的形式への反省的視点を基礎にして、
提供があった。題目は「医療現場の心理臨床から考えるケ
それを超えて進む創造にむけて生産的な構想のありかたを
ア教育――心理臨床教育からケア教育へ」であるが、心療
学問として追求する」ことと、
「構想の多様なすがたをシン
内科カウンセラー、知的障害施設の心理職、国立精神神経
ポジョン(響創)するなかで、構想力の高揚とあらたな構
センターに研究員として勤務後に、本学の心理学の科目を
想の創発を招来する虚実のあいだにある学の場を構成し促
担当するという経歴と、プロの臨床心理士として、高齢者
進する」こと(構想学会 Websiteより)を目指して設立さ
の心理学的援助、学生相談、スクールカウンセラーとして
れた「日本構想学会(詳細は http://www.jssi.jp/)
」の2004
の実務をこなしながら、カウンセリング論、臨床心理学な
年度大会(2004年12月11日� 13:30~15:30、於:東京
どの科目を看護大学で担当するという実績から、実務家と
国際フォーラム)において、
「ケアの理論と実践から見えて
学者という両面からフィールドの中での学びと、理論的な
s
き た 新 た な ケ ア 教 育 へ の 構 想 ―― Care is Everybody’
学びとは何かについて考えていることを述べた。
Business.をめざして」という題目で本学の教員・学生によ
最後に、松崎緑(本学精神看護学講座専任講師)は「看
る Round Table Discussionが企画実施された。
護教育におけるケアの連鎖――ケアを学ぶこととケアされ
近年、めざましいスピードで開設されてきた看護系大学
ること」というテーマで、実習と講義の両方に関わった経
には、個別科学としての看護学の確立をめざした研究教育
験から、ひとつのジレンマ――普遍性を求める学問として
活動のみならず、医療現場で看護の役割とされるケアの実
の看護と個別性を重視する実践としての看護――を感じつ
〔12〕
つ、看護教育における新たなケア教育についての模索を述
渉外委員会報告
べた。松崎は、看護における「察し」のコミュニケーショ
ンという視点やケアの東西比較を通し、日本におけるケア
渉外委員会委員長 ご挨拶
のオリジナルな側面について探求し、最近では、職業的役
割を越えた、ひとつの生き方としてのケアの可能性につい
て関心を持っている。
今年渉外委員会は大幅に入れ替わり、新米(委員長を含
4名の発題者に共通するテーマは、「ケアを学ぶことと
めて)が大勢を占めたが、古くからの渉外委員たちの適確
ケアされること」
、すなわち「ケアすることと、ケアされ
な指導により、どうやら1年目の終わりに差し掛かったの
ること」の関連、連鎖についてであり、この両者がいかに
は何とも目出度い。
関係し、また大切なものであるかという点であった。
渉外委員会の各セクションの活動報告は以下の各項の記
述通りであるが、これら以外に山田隆委員(事務局次長)
Roundtable
(
の
模
様
)
が中心となって今年から「長野県看護大学みらい基金」の
制度を発足させた。これは見藤前学長、
雨宮前学長代行が、
次代を担う若い看護職者育成の為に活用してほしいと寄付
を寄せて下さったもので、本年度は8月にサモアで行われ
た総合実習の際の学生への貸付、10月に来学された Anne J Davis 名誉教授への謝礼そしてこの2月末に大学院生、
助手に対して UCSF 研修への補助、等に充てられた。
約1時間15分の発表の後、残りの45分はフロアとの討論
また昨年度より渉外委員会後援で実施されている近隣の
に費やされた。聴衆には健康ケア関連の仕事につかれてい
看護職者を対象とした「看護サマーセミナー in 駒ヶ根」
る人もいたが、また同時にケアはすべての人の関心事でも
の第2回目が8月6日�、8月7日�のそれぞれ夜7時~
あり活発な議論がなされた。
9時まで、本学小講義室3において、学外看護職者延べ22
ケアは医療福祉関係の場で使われることが多いのは当然
名の参加を得て開催され、学外講師として小堀求医師(伊
のことであるが、健康が単なる身体面のみならず、心的側
那市国保西箕輪診療所長)
、
太田勝正名古屋大学教授を迎え、
面、精神的側面、そして社会的側面の良好な関係を意味す
本学からは岩月和彦、唐澤由美子、那須裕、田代麻里江の
るものであれば、当然ケアは医療看護の場だけの問題では
4名が講師として参加した。司会を前田樹海(生活援助学
なくなり、人間に普遍的な問題となるはずである。例えば、
講師)が務めたのをはじめ、セミナーのすべての取り仕切
教育の場や、仕事の場での人間関係においてもケアという
りを基礎看護学、生活援助学の両講座の教員が行なった。
視点は十分に見直されるべきであろう。
看護教育研究を
「外
那須裕(本学教員:渉外委員長)
側」か ら 支 援 す る と い う 意 味 で、Care is Everybody’
s
Business. という観点からケアの国際比較や多分野での
「ケアの精神」の応用をめざした学際的な共同研究の推進
が必要であるという結論に達した。 (本学教員:外国語講座助教授)
平成16年度第1回公開講座(平成16年7月10日)
地域づくり活動における住民と
看護職のパートナーシップの意義:
「健やかさを保つ集い」
の活動を通して
講師:深山智代先生(本学学長)
学報への投稿募集
学報は大学の Newsletterとしての性格をより明確に出
本年度第1回目の公開講座は、本学学長深山智代先生に
すために、教職員・在学生・卒業生・後援会等の皆様か
よるものだ。本年度ご就任のわが学長による講演は、どの
らの原稿を募集します。内容は、
ようなものかということで、本学はもとより長野県民すべ
�
てが期待にあふれかえり、待ち望んでいた講演であったこ
�
近況報告:
学術・社会貢献のニュース、出版、学会活動、学会
とはいうまでもない。また、講座の内容そのものは、開学
参加報告、Conference Report、etc.
10周年記念とその期待に相応しいものであったこともしか
自由投稿:
書評、本の紹介、写真、ミニエッセイ、etc.
�
お知らせ:
勉強会、読書会、クラブ活動、サークル、etc.
�
そ の 他:
お便り、お知らせ、お勧め本、etc.
などです。特に、教職員の活動報告を募集します。
りである。
地域づくり活動の進め方について、行政主導、専門職者
主導の活動から住民と行政・専門職者のパートナーシップ
により活動の切り替えの必要性、すでに先生がご活躍で
あった北海道での住民と行政・専門職者のパートナーシッ
プによる活動実践の記録から、参加者の満足度の高さ、地
域に定着した活動の質などについてご紹介いただいた。と
くに、
住民と看護職者がこの姿勢で働くときの留意点には、
〔13〕
とても参考になる視点が多々あった。また、聴講されてい
にも関連するテーマであった。人の主観的な気持ちを外か
た一般の方々からの真剣な姿勢から、この駒ヶ根地域での
ら測るというのは大変難しいことであり、もちろん未開拓
関心も高いものであったことが伺える。地域での実践活動
でわからない部分が多い。脳波と心電図から生理的反応と
を目指す看護職者のみならず、市民の方々、その他の臨床
行動との関連性について現在行われている実験研究を中心
家にとって、非常に有益な講演であったかと思う。
に説明された。
深山先生のすばらしいところは、
看護大学の学長であり、
今、楊箸先生が取り組まれている睡眠研究は、被験者も
有能な実践家でありながら、すべてものを知っているかの
心電図や脳波をつけたままで眠らなくてはならないが、研
ように語るようなところがないところである。先生の北海
究者も夜間眠れない。この研究が大変であることをやって
道での経験を通じて、長野県、とくに駒ヶ根のこの地域で
みてわかったとのことであった。参加者は、看護関係者が
の皆さんとともに考えていきましょうという姿勢を一貫し
多く、脳波の解析方法が聞けて参考になった、との意見が
て示していらっしゃる。先生の姿勢こそパートナーシップ
きかれた。
とはこのようなものであると思えるものである。質疑応答
志村ゆず(本学教員:心理学講座講師・渉外委員)
では、先生の静かで温かい熱意とともに伝わってくるもの
であった。
(国際交流)
志村ゆず(本学教員:心理学講座講師・渉外委員)
パプア・ニューギニアから
保健衛生グループ訪問
平成16年度第2回公開講座(平成16年10月2日)
平成16年6月15日�、パプア・ニューギニアから保健衛
血管をイキイキさせる運動指導
講師:野坂俊弥先生(体育学講座助教授)
生に従事する青年15名、お世話役の日本人スタッフ7名が
本学を訪問し、本学教職員学生との交流を深めた。
第2回目の公開講座は、本学の教員の中でとりわけイキ
この訪問は、平成16年度国際協力機構(JICA)の青年
イキとご活躍の野坂俊弥先生による講座である。学生や教
招聘事業プログラムの一環として行われるものであり、世
員や地域の皆様のわきかえる鈴風祭のさなかであったが、
界各国より専門職に従事する青年を招待し、日本での視察
野坂先生の張りのある声は、音楽のライブの音などが外で
を通じて専門分野の知見を深め、国際親善に寄与する目的
鳴り響く活気に負けないものであった。講座内容では、運
であるという。中曽根元首相の発案により始まったという
動と運動指導を大動脈との関連から考察した科学的なもの
ことである。この度のデレゲーションは駒ヶ根青年会議所、
であった。
JICA 駒ヶ根訓練所が中心となってお世話されていた。
野坂先生の講義は単なる体育ではない。運動療法の効果
訪問グループの構成は、男性12名、女性3名で、内訳は
を科学的に実証的に解明する科学者としての講義である。
公務員(専門官、医師、看護師、事務官)が13名、そして
一過性の運動に伴うバイタルインデックスなどの変動とそ
民間の看護師が2名であった。平均年齢は約30歳の若いグ
の根拠となる生物物理学的理解を深める測定などを行って
ループである。地域保健や医療施設見学などを中心にした
いる。動脈のメカニズムや運動の導入を科学的な側面から
プログラムで東京、駒ヶ根に滞在した。
説明され、動脈にとっては運動することが一般的には大切
であるということが広く知られてはいるが、その運動の方
法や導入の仕方を間違うと非常に体にとっては危険が伴う
ことなどの重要な視点を教えていただいた。
一見、難解な内容を一般市民や専門外の者にとってわか
りやすく、ときにはユーモアをまじえながらの講義であり、
90分間飽きさせない本当に「うまい」ご講義であった。
志村ゆず(本学教員:心理学講座講師・渉外委員)
日本で学びたいこととして、
平成16年度第3回公開講座(平成16年12月11日)
・病院見学、保健関連施設見学、薬局の見学
看護研究をしよう!
講師:楊箸隆哉先生(病態・治療看護学講座教授)
・地域保険サービス、地域保険に関する新しい知識・技術
・母子保健
第3回目の公開講座は、本学に今年度から就任された期
・看護管理
待の星である楊箸隆哉先生によるご講演である。先生の公
・専門分野でのチームワークの取り方
開講座では、看護における「快適性」をどうやって測るか
・保健行政に関する新しい知識・サービス内容、地方の保
ということについて講演された。「こころ」が発した情報
を「身体」の情報としてどうとらえるかという「心理学」
険制度
・予防接種制度とその実施方法
〔14〕
・職場での保健活動
者の皆さんの思い出に残るものであることを期待したい。
・保健医療分野での日本の途上国援助
最後に、このプログラムを行うにあたり、ご協力いただ
・保健関係者との意見交換
いた教職員学生の皆様に心より感謝申し上げます。とりわ
・日本の文化、生活様式
け、お忙しい時期にもかかわらず、快くプレゼンテーショ
などがあり、本学では教員によるプレゼンテーションや学
ンを引き受けてくださり、十分な準備と、当日の鮮やかな
内施設見学を通して、主に看護大学のカリキュラム、国際交
パフォーマンスを演じてくださった先生方にはお礼の言葉
流活動、地域保健・医療への取り組みなどが中心であった。
もございません。小さな活動ではありますが、このような
13:30に本学に到着した一行は、深山学長からの歓迎の
交流を通じて国際的な信頼感ができてくるものだと信じて
言葉を受けた後、早速教員によるプレゼンテーションを受
おります。何はともあれ、客人をもてなすという、いい気
けた。プレゼンテー
分で客人にお帰りいただくということは、もてなす側に
ションは3部からな
とっても満足のいくものでした。
り、はじめに教務委
江藤裕之(本学教員:渉外副委員長)
員長の安田貴恵子教
授から「本学のカリ
キュラムの組立」に
(地域交流)
オープンキャンパス・鈴風祭の大学説明
ついての概要の説明
があった。次に、本
平成16年度のオープンキャンパスは、7月19日�13:00
学の国際交流・貢献活動について、看護実践国際研究セン
から16:00に開催されました。県内外の高校生・教師・保
ター・異文化看護国際研究部門から3つの発表があった。
護者・報道関係者等計343名の参加をいただき、昨年より
まずは、部門長の小西恵美子教授による「本学の国際活動
も70名多い盛況ぶりでした。
全般とサモアプロジェクト」
、
続いて同部門所属のセンター
当日のスケジュールは、①深山学長の挨拶、②教務委員
教員である田代麻里江講師から「外国籍市民の健康支援プ
長による本学の概要と平成17年度入学試験について、③学
ロジェクト」
、アニタ・フィッシャー教授から「地域の女
生部・松崎厚生補導員による学生生活について、④学生部・
性のヘルスプロモーションの一環としての骨粗鬆症予防プ
墨矢就職指導員による卒業後の就職情況、本年度の求人状
ログラム」のプレゼンテーションが行われた。最後に、看
況、⑤嶋澤順子講師による自身の看護をたどってきた道に
護実践国際研究センター・看護地域貢献研究部門、及び看
ついての講話、の内容で行なわれました。
護実践改革・学外機
会場からは保護者より、
「助産関係科目履修生の志望状況
関交流研究部門の部
と実数は?」、「本学の看護師・助産師・保健師国家試験の
門長である北山秋雄
各合格率は? 不合格の場合の支援体制はあるか?」等の質
教授から「本学の地
問がありました。
域保健活動の紹介」
その後、オープンキャンパスツアーを行い、各グループ
についての発表があっ
20名位で、案内役を本学学生が担当し、キャンパス各所を
た。各プレゼンテー
見学しました。同時に、修士課程の説明コーナーも設け、
シ ョ ン と も 発 表15
予想以上に、社会人による進学に対する真剣な質問があり、
分、質疑応答5分と
多大な時間をその回答に費やしました。
いう比較的短いもの
秋に行われた鈴風祭は、1
0月2日�・3日�に開催され
で あ っ た が、パ プ
大学説明コーナーは3日の日に設けました。あいにくの雨
ア・ニューギニアか
で足下が悪い中、教員の熱意に応じ、学生・社会人・保護
らの参加者は発表に
者と、39名の相談がありました。県外からは、遠く北海道
熱心に聞き入ってお
からの男性2名の参加者もありました。
り、一生懸命メモをとるなど真剣な様子がうかがえた。ス
藤垣静枝・藤原聡子(本学教員:渉外委員)
ケジュールの都合上、十分な質疑や討論の時間が取れな
かったのは残念であったが、それでもいくつかの重要な質
問がかわされた。
(地域交流)
高校での説明・模擬授業・高校生の大学見学
プレゼンテーションの後は、学内の施設を案内したが、
実習室は特に興味をひいたようである。また、学生ホール
平成16年度は、4月に一年生を迎えるやいなや、やつぎ
でたまたま部活動をしていた茶道部の皆様にお茶を振舞わ
ばやに県内の高校からの模擬授業や大学説明の要請があり
れ、予期せぬ異文化体験ができたと大変喜んでおられた。
ました。5月22日の下伊那農業高校をトップバッターとし
短い時間であり、また過密なスケジュールの中での本学
12月3日まで、説明会を16校、そのうち模擬授業開講3
訪問であったが、この訪問が実り豊かなものであり、参加
校、講演会を1校と大変な人気ぶりでした。また、本学で
〔15〕
の高校生への説明会も2校受け入れ、実際に母性看護領域
投 稿 欄
の技術演習をやっている先輩の姿を見ながら、実習をイ
メージしたり、教員による看護の説明がなされています。
〔海外便り〕
これらの説明は全学を挙げて各領域の教員が快くご協力い
「APAマニュアル」日本語版発行によせて
ただいたたまものです。
岸 利江子
今後もこの県看護大学の大学説明会の人気は衰えること
を知らず、3月まで予定が入っています。このことは、県
このたび、本学の先生方(田中建彦・外国語講座教授、江
内での高校生の「看護職」への関心が高まっていることへ
藤裕之・外国語講座助教授、前田樹海・生活援助学講師)
によ
の現れと思い、心強く感じています。
り日本語版の APA
(American Psychological Association:
藤垣静枝・藤原聡子(本学教員:渉外委員)
アメリカ心理学会)マニュアル第5版(Publication Manual
of the American Psychological Association )が医学書院
から日本で初めて出版されたことをとても誇りに思いまし
HP担当になって
た(邦題『APA 論文作成マニュアル』
)。
HP 担当になって今年で2年目になります。昨年度は、
前任の太田勝正委員長の下で跡上冨美先生と2人で HPの
担当をさせていただきました。しかし、私はほとんど活動
していないも同然だったので、その罪滅ぼしとして今年度
も HP 担当を希望した次第です。今年度は、「教員紹介 HP
を4月と10月に必ず更新! 迅速に、的確に!」を目標に
掲げてみました。ところが、今年度は昨年度と違って新し
く就任された先生の人数が多いうえ、予算の関係上外部業
者に依頼することが不可、
ということで私自身が大学の HP
に直接アクセスをして地道に作業をしなければならず、大
APAマニュアル
(5版)のオリジナルと日本語版
変な労力と時間を要しました。周りの人たちは「コピー&
日本ではあまり知られていないのですが、アメリカでは
ペーストするだけだよ! 簡単だよ!」と慰めてください
APAマニュアルは看護学だけでなく自然科学・社会科学分
ましたが、その簡単な作業に意外と手間暇がかかってしま
野の研究者の論文・レポート執筆のバイブルとして全米で
い半泣き状態。でも、とても多忙な前田先生から HP 更新
2,000万部以上も売れていると言われている超ベストセラー
のノウハウを懇切丁寧に教えていただけたお陰で、私の今
です。学部生も院生も、研究に関する授業では必ずこの本
年度の目標は達成できそうです。ただ、一部の教員 HPに
をテキストの一部として購入することになっており、誇張
不手際があり、ご迷惑をおかけしてしまったことをこの場
ではなくどの教授の研究室の本棚にも APAマニュアル第5
をお借りして陳謝いたします。また、皆様のご協力に感謝
版が置かれています。
です。ありがとうございました。
大学のどの授業においても、論文形式の中間・期末レ
太田規子(本学教員:渉外委員)
ポートは APAスタイルを遵守することがシラバスで明記さ
れており、文献の用い方や句読点の打ち方、項目立て等、
APAスタイルに沿っていない場合は減点されます。論文の
お知らせ:英語読書会のお知らせ
院生・助手を中心に、「英語文献を丁寧に読む」こ
とを目標とした英語文献購読の自主勉強会を行ってい
ます。ご興味のある方はふるってご参加ください。
書き方に関する授業やワークショップでも APAスタイルに
関する注意点がしばしば与えられます。APAスタイルを身
につけることなしにレポートでよい評価を受けることは不
可能で、論文を学術雑誌に投稿する際にも、APAの投稿規
定を守っていない論文は編集者に読んでもらうこともでき
ないそうです。
日 時:毎週火曜日 18:00~20:00頃
テキスト:Milton Mayeroff, On Caring
講 師:江藤裕之助教授(外国語講座)
問い合せ:吉田聡子(修士課程1年)
APAスタイルをマスターすることは、英語で学術論文を
書く上ではじめに身につけなければいけないお手前だとい
えます。外国人だけでなくアメリカ人にとっても頭痛の種
にもなりかねないマニュアルですが、考えてみるとこれは
妥当で、野球のルールを知らずに野球で勝つことはできな
いように、競争の激しい研究者の社会でフェアに評価され
るためには論文を書く上で最低限のルールを身につけなけ
ればいけないのでしょう。ありがたいことに、アメリカ心
〔16〕
このように、細かなルールを集めた APAですが、これは単
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(連載:こころのエンパワメント�
(連載:こころのエンパワメント
�)
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志村ゆず
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���������������������������
今回は少し熟年のおとなの人々のための心のエンパワメ
に、編集者が編集しやすいように体裁を整えるためだけの
ントについてとりあげます。
理学会は決して無用にルールを膨らませるのではなく、最
低限で理にかなった効果的なマニュアルになるようにとい
う指針のもとに、時代の流れにあわせてウェブサイトでも
改訂を重ねています。
回 想 法
回 想 法
ものではありません。1つには、このマニュアルが生まれ
た背景となるアメリカ社会の状況が読み取れるのは興味深
回想法とは
いことです。このような様々なルールが、言葉を尽くして
回想法とは、過去を思い出して語る行為が援助方法となっ
まとめられ実際に尊重されている状況を見るだけでも、明
て実を結んだものです。過去の経験に焦点を当てることか
確な言葉による意思伝達の重要性や、アメリカ社会には多
ら、長い人生を生き抜いてきた経験豊富な方々にはふさわし
様で複雑な人々が様々な価値観や表現法をもって暮らして
い援助方法の一つと考えられます。回想法は、あるテーマに
いる状況が垣間見えます。
沿って自分の人生について思い出して語り、
他の人とその内
また、もっと重要なことには、このマニュアルでは言葉
容を共有したり、気持ちに共感したり、傾聴することで情緒
の遣い方を通して、看護学に限らず学者として持ちあわせ
的な安定にいたることを目的としたアプローチです。
るべき倫理観についても触れています。前半には、研究者
回想法は、欧米のエイジズム(老いに対する偏見)に対す
としての心構え、例えば著作権にかかわる盗作の問題や、
るアンチテーゼとして展開されてきた高齢者を尊重するため
人権に関わるジェンダー・人種差別の問題についてどのよ
の方法といえます。1960年代には、
高齢者が過去を振り返っ
うに対処すべきかなどに関する説明があります。研究者間
ているのは、過去へのとらわれであり、現在から逃避してい
でどのように知的所有権を尊重しあうべきか、また、効果
るというように否定的にとらえられていたのです。ところが
的に自己主張しつつも、出版後にその言葉遣いや態度に
米国の精神科医バトラー氏(Butler, 1963)は、個人精神療
よって傷つく人がいないようにと最大限に配慮する姿勢は、
法を行い、高齢者が回想する経験そのものこそが死の不安を
研究者の責任感を養う上で必須です。英語で論文を書く状
乗り越え、心理的な安定に至る重要な心理的な機能であると
況でなくても、このマニュアルを一読する価値があると感
いうことを発見し、当時の欧米社会では斬新的な知見を提唱
Medical Book Center
A イ
P リ
A ノ
マ イ
ニ 大
ュ 学
ア シ
ル カ
は ゴ
かの
な教校
り科
売書
れ
て売
いり
る場
よの
う一
で角
す
じるのは、このよう
しました。そこで高齢者の一見後ろ向きのように思えるライ
な理由によります。
フレビュー(人生を振り返る)という心理的態度が、前向き
アメリカで勉強を
なものであると評価され、
ライフレビューの態度を導き出す
始めて早いもので4
数々の実践が、広がっていきました。イギリスでは、1970
学期目に入り、英文
年代半ば、建築家のケンプ(1978)が、介護者が、高齢者の
での読み書きも多少
昔語りは現実を把握する妨げになるからいけないと信じきっ
は慣れてきましたが、
ていることを指摘し、Help The Agedが「思い出語り」の道
行間を読むようなレ
具の開発をしたことがきっかけ。
「リコール(recall)
」と呼
ベルにはまだまだ程
ばれる三部構成になっている古いスライド(写真)とそれに
遠く、やっぱり日本
まつわる実際の高齢者の回想の内容(子どもの頃どんな服装
語の方がしっくりく
をしていたとか、学校のグラウンドでどんなことをして遊ん
るというか、100%
だとか)テープのセットが発売のきっかけとなった。
理解できる安心感があります。他国からの留学生仲間には、
日本では1992年に出版された「回想法への招待」筒井書
母国語で APAマニュアルがあるなんて、と、とてもうらや
房(野村豊子・黒川由紀子著)や「回想法とライフレビュー」
ましがられました。今後日本で APAマニュアル自体がどれ
中央法規出版(野村豊子著)などがきっかけとなって、
「回
ほど使われるかは正直分かりませんが、ついこのほども日
想法」という呼び名で、高齢者の援助のポピュラーな方法
本で英文による定期の看護雑誌ができたとうかがいました
として数多く行われるようになっています。
ので、期待も大きいです。
アメリカで多くの看護関連分野研究者が
(ほぼ義務的に)
その方法とは
バイブルとしている APAマニュアルを、本学の先生方が翻
グループ回想法を展開するときには7~8名の参加者に
訳・出版されたことをとても嬉しく誇りに思います。時間
対して、リーダーが1名、コ・リーダーが2名の割合で、
をかけて近い将来にこの仕事が大きく評価されることを確
コ・リーダーやアシスタントを対象者の症状が重い場合に
信しています。皆様もぜひお手にとってみてください。
は一人一人に対応できるようスタッフを配置しておくこと
(元本学教員・イリノイ大学シカゴ校看護学部大学院)
が大切になります。回想法のグループリーダーは、メン
バーの自発性を大切にし、交流を促し、豊かな反応が得ら
れるように触媒のような働きをします。コ・リーダーとは、
〔17〕
サブリーダーとは違い、
「コ:Co」という接頭語が「共同
か研究内容の見直しを行い、
発表の準備をしていきました。
する」という意味を示すように、リーダーと対等の立場で
学会当日、私たちはポスター掲示形式の発表で行ないま
リーダーとしての責任を分かち合います。リーダーとは別
した。まず学会での第一印象は、参加している人たちがそ
方向から、対象者を支えたり、グループを支えたりします。
の分野で熱心に研究、活動されているということを肌で感
そのため、リーダーとの連携が大切になります。
じたことでした。もともと国際保健に興味があり、今回の
全体的な手続きは、①利用者の誘導、②会のルールの説
卒業研究も国際看護で行なったのですが、この学会に参加
明、③自己紹介、④テーマの提示、⑤刺激の提示、⑥話題
してみて、国際保健と言ってもそこで発表されていた研究
の提供:道具に触れたり使ったりしながら、自然な形で話
は様々であり、自分の視野を広げることの出来る良い機会
を始める人が出てきます。それに沿って質問をしていきま
だったと思います。また、その分野で活躍されている方々
す。ときには、お年寄りが話しはじめるまでに時間がかか
とお会いすることもでき、とても貴重な場でした。
ることがあります。お年寄りのペースに合わせてゆっくり
学会に参加し、自分たちの研究を人に見てもらうという
話しを聴きましょう。⑦終了:次のテーマを前もって伝え
ことで、自分とは違った視点からの意見、アドバイスをも
ておくと、それに関連する品物を用意することができたり、
らい新たな気づきをもらえたように思います。私たちの研
日常の楽しみが増えます。⑧会の振り返り:参加したス
究は卒業研究でしたので、とりあえず終了してしまってい
タッフが率直に話し合えるような振り返りが大切です。⑨
ますが、また時間のゆとりが出てきたら今回の学会で得た
日常のケアへ:回想法終了後に、伺った人生の語りをまと
意見などを振り返っていければいいなと思います。私にとっ
め、冊子にして手製の「ライフヒストリーブック」や「ライ
て、現在は病院勤務を行なっているので、普段、研究とは
フレビューボード」を作成し、御本人や御家族、病棟や担当
離れた生活を送っていたため、学会に参加し、人の意見を
スタッフに差し上げるとよいでしょう。そのときの御様子な
聞くことに新鮮さを感じました。この卒業研究をそのまま
どを写真におさめておいて御家族に差し上げるなど日常のケ
にせず、学外に発信できたこと、またその機会が与えられ
アへつなげる情報源としてご活用いただくとよいでしょう。
たことに感謝しています。
回想法を行うにあたって
平成15年度卒業研究の指導者であった田代先生からこの
効果的なグループワークを行うにあたって、聴き手の姿
学会に参加してみないかという話があった時、私たちの研
勢、グループの展開がとても大切になります。参加者の長
究なんかを出してもいいのかと思う反面、全国的な学会に
所、限界を大切にしながら行いましょう。昔の語りは、魅力
参加することは、自分を高めることになると思い、参加す
的な内容であることや、発言が多いことが大切なのではな
ることにした。今回、私たち(冨澤&千野)はパネルでの
く、語りながら、それを大切な人生の宝物として温め、今を
発表を行った。私たちと同じように外国人の健康や食生活
生きる力にすることが大切なのです。昔を語ること、とは過
について研究を行っている人たちが、私たちの研究に興味
去を振り返ってそこにこだわることではなく、過去を語り
を持ってくれ、お互いに意見交換ができたし、アドバイス
ながら、今のその人の生き方を大切にする方法なのです。
もしてくれた。私たちの研究はまだまだ初歩のもので、こ
(千野史香:元本学学部生)
� � � � � れからもっと追求していかなくてはいけないと実感した。
参考文献 志村ゆず・鈴木正典編
学会全体として一番印象に残っているのは、青木盛久氏
伊波和恵・下垣 光・下山久之・萩原裕子著:
の特別口演であった。この方は前ケニア大使や青年海外協
写真でみせる回想法.弘文堂,2004年.
力隊事務局長を務めた方で、協力隊の具体的な活動やどう
(本学教員・心理学講座講師)
あるべきなどについて話された。私は今まで、協力隊とは
途上国に知識や技術を教えに行き、そこで何らかの成果を
あげてくる人と考えてきたが、それは大きな間違いであっ
〔学会参加報告〕
た。協力隊は、現地民に知識や技術を教えるのではなく、
日本国際保健医療学会に参加して
千 野 史 香・冨澤千亜紀・林 由 美
共に生活し、マンパワーとして助けになることであると聞
いて、同じ目線になって一人の現地民として生活すること
2004年10月9日東京(市ヶ谷)
で行なわれた国際保健医療
が協力隊の役割であることを知った。技術協力ではなく、
学会に参加しました。そこで私と冨澤千亜紀さんは、昨年度
経済協力なんだということが分かった。今回この学会に参
(平成15年度)卒業研究で行なった「在日日系ブラジル人の
加して、色々な人の意見を聞き、自分たちの研究ももっと
食生活と健康」について発表しました。昨年田代麻理江先
追求できるのだと思った。参加して大変よかったです。
生から学会で研究を発表することのお話をいただいたこと
(冨澤千亜紀:元本学学部生)
から今回の学会への参加に至ったのですが、私はそれまで
� � � � � 学会に行ったことも無く、まして自分が発表するとは想像
私は今回初めて学会というものに参加しました。それが、
も出来ませんでした。今回の発表のために、卒業後も、共同
日本国際保健医療学会でした。その学会で、
一番印象に残っ
研究者の冨澤さんと共に大学を訪れ田代先生のもとで何度
たのは、「在日外国人の医療と人権」についての自由集会
〔18〕
でした。その集会では、在日外国人の超過滞在者や難民申
をいやな感じに描いていて、わたしのような読者に対して
請者などの日本における社会的立場、生活状況、健康状態
「おまえもソクラテスを死刑にしたアテネの市民と同じだ
や医療機関での対応の実態など、現場で実際に活動してい
ぞ」と笑っているのかもしれません。
る方々が発表され、その後参加者も交えて討論が行われま
そこで、短い話なので英文で書かれたものも読んでみるこ
した。発表者の方も参加者の方も、皆さん熱くそれぞれの
とにしました。すると、意外なことに、英文ではソクラテスの
思いを語られており、時間が足りなくなる程の深く、意義
ただならぬ気迫が伝わってくるではありませんか。自分にか
のある議論がなされました。特に私は、難民支援協会の方
けられた嫌疑が誤りであることを述べてから、なぜそのよう
のお話を興味深く聞かせていただき、難民申請者の法的立
な行為を続けてきたのか、自分はこれからもやり続けるとい
場や生活実態などについて、とても考えさせられました。
うことを延々と述べるのですが、その延々と述べる部分が心
また、その集会終了後、打ち上げとして飲み会が行われ、
に訴えかけてくるのです。ちょうど、オーケストラが同じメ
私も途中まで参加させていただきました。同じ志を持つ
ロディ(=同じ構文)を何度も繰り返してクライマックスに
方々が集まってお話されているのを聞いていると、皆さん
持っていくのと似ています。ソクラテスが自らを馬にとまっ
のとても熱い思いを感じることができました。そして、自
たあぶ、しっぽで追い払われても馬にたかり続けるあぶにた
分のやりたいことをやっているという楽しさも感じられ、
とえるくだりがあるのですが、そこがまさに最高潮でした。
そこに参加した私も楽しむことができました。
そこまで考えているならしかたないなと思えるようにな
今回の学会では、私は自分の発表などはなく、そして1
りました。でも今度の感想も、よく考えてみると、結局は
日だけの参加となりましたが、全体を通して、国際保健医
自分がいかに感情的な人間であるかということを証明して
療に関する様々な研究やお話を聞くことができ、また色々
しまったようです。そんなこんなで、今ではソクラテスと
な人と出会うことができました。私にとって、とても貴重
いう人間を自分の思考の中でときどき使っています。たと
な体験となり意義のあるものとなりました。 学会に参加
えば釈迦とソクラテスを比較することがあります。
する、というと最初は少し緊張してしまうかもしれません
「ソクラテスの弁明」という本は、退屈な内容でした。そ
が、きっと良い体験になると思います。皆さんもぜひ参加
れは今でも変わりません。でも、何かが残り、どうやらそ
してみて下さい。
れは役に立つもののようです。名著と呼ばれる本は、もし
(林 由美:元本学学部生)
かしたらそんなものなのかもしれないなあと思いました。
(本学学部生)
〔エッセイ〕
『ソクラテスの弁明』
を読んで
宮本みどり
〔エッセイ〕
Bildungsromanとしての Harry Potter
この話は、ソクラテスという古代ギリシャの賢人が裁判
江藤裕之
にかけられて死刑にされてしまうという事実に基づくもの
です。もちろん、濡れ衣です。なぜそのようなことになっ
s
2年生の英語の授業で Harry Potter and the Philosopher’
てしまったかというと、ソクラテスは当時のソフィストや
「読んだ」といっても、丁寧に一文一文読む
Stone を読んだ。
権力者の邪魔をしてしまったからです。今で言うと、医者
わけではなく、
毎回1章ずつ読むことを宿題にして、授業で
の見立てに意義を申し立てたことにより商売の邪魔をして
はその語学面の説明を行い、また内容面の確認を質問に答
しまったというようなことでしょうか。そのようなことを
えるという形で行なった。授業をやる方としては、丁寧に
ソクラテスは何十年もの間続けてきたのです。ばかにつけ
一文ずつ訳した方がなんとなく達成感がある。今さらなが
る薬はないという諺がありますが、ソクラテスに攻撃され
ら、薄めのテキストを使った訳読方式の授業は、授業をする
た人たちは悔しい思いをすることはあっても改心すること
側のニーズにあったものだということが分かった。それで
はなかったのです。
「ソクラテスの弁明」という本は、そ
も、とりあえず一冊 cover to coverで読み終えた(理解度は
の裁判のときのソクラテス自ら行った弁論をソクラテスの
ともかく)。訳は日本でベストセラーになり、映画も DVDで
弟子プラトンが著したものです。
安く手に入れることのできる題材をテキストとして使用す
この本を初めて読んだときの印象は、最悪でした。ソク
るのはどんなものかと思われるかもしれないが、ちょっとし
ラテスの弁論がしつこくて、全く魅力を感じなかったから
た映画とのズレや、原本でしか味わえないような表現や書き
です。西洋哲学の研究会に出席してみたものの、ソクラテ
方に結構学生たちは面白がるものだということが分かった。 スに対する反発を解消することはできませんでした。だっ
学期の最後に、単位のための課題を出したが、その最後に
て、もしソクラテスのように、正しいことだからといって
自由な感想を書かせた。一冊読み終えた達成感や、今まで
成果の上がらないことばかりやっている同僚がいたら、周
習ったこともないような単語がたくさん出てきて、それが
りはすごく迷惑しますから。でも、しばらくすると、なん
イギリスの子どもたちには普通に使われていることがショッ
でこんなにいやな気分になるのだろうという疑問がわいて
クだった、などといったたわいのないものもあったが、中
きました。ひょっとしたら、プラトンがわざとソクラテス
にはキラリと光るコメントもあった。
(23ページへ続く)
〔19〕
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平成17年1月28日現在
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学生部就職指導課
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卒業・修了予定者の進路状況等について
本年度の学部学生の卒業予定者は学部80名、大学院博士
減少に伴い毎年減少傾向にあるが、本年は6名合格で昨年
前期(修士)課程修了予定者は12名、博士後期課程修了予
と同じであった。③看護師の県内への就職率は、
全体の55.7%
定者は2名です。
で昨年度より10%ほど増加した。また、県内出身者の内、
本年度の求人、求職状況の特徴を簡潔に述べさせて頂く
県内への就職率は79.3%で同じように10%ほど高くなった。
と、次のとおりです。
④進学予定者は昨年度4名であったが、本年度は1名であ
①求人数は昨年度よりやや増加した。職種別に見ると、従
る。
来に引き続き保健師の求人は減じているが、看護師、助産
なお、大学院生は現段階では大半が未定で集計ができて
師は増加している。②自治体保健師の合格者は、求人数の
いない。
1.求人件数(求人を職種別にカウントしたもの)
設 置 者 / 職 種
病
院
看 護 師
市
町
村
養護教諭
その他一般
計
内
48
18
30
96
県
外
403
54
208
665
451
72
238
761
県
内
3
県
外
23
10
県
内
1
4
県
外
10
8
6
37
22
16
小 計
その他企業
等
助 産 師
県
小 計
国・都道府県
保 健 師
県
内
県
外
小 計
3
10
1
2
46
1
6
24
1
3
79
1
1
7
4
5
1
18
35
7
4
5
1
19
36
県
内
計
52
22
30
0
2
106
県
外
計
443
78
229
2
20
770
合 計
495
98
259
2
22
876
2.進路内定状況
学部学生
地 域 / 職 種
進
路
先
看
護
師
保
健
師
助
産
師
進
学
計
県
内
34
6
3
0
43
県
外
28
2
5
1
36
62
8
8
1
79
計
(未定1)
(主な内定先、複数のみ記載)
(県内)4人 伊那中央総合病院 篠ノ井総合病院
3人 信州大学医学部附属病院 諏訪中央病院 長野県立こども病院 長野市民病院
2人 相澤病院 飯田病院 岡谷市役所 佐久総合病院 市立岡谷病院 中信松本病院 松本協立病院
1人 5病院 4自治体
(県外)5人 虎の門病院
2人 慶応義塾大学病院 新潟大学医歯学総合病院 横浜南共済病院
1人 2
3病院
〔20〕
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2005年度 学
2005年度 学 年 暦
年
暦
前 期
後 期
4月6日� 入学式・後援会総会
10月3日� 後期授業開始
4月7日� オリエンテーション合宿(学部新入生・新編入生)
大学院履修登録(後期追加)開始
4月8日� 〃
10月1
1日� 領域別実習
(3年)
4月1
1日� 学内(履修)ガイダンス・定期健康診断
~1
2月9日� 4月1
2日� 〃
10月1
1日� 大学院履修登録(後期追加)終了
4月1
3日� 前期授業開始・履修登録開始
12月1
9日� 冬季休業
4月2
0日� 履修登録終了
~1月6日� 4月2
2日� 修士論文研究テーマ提出期限
(前期課程2年) 1月1
0日� 後期授業再開
4月2
9日� 「みどりの日」
1月1
3日� 博士論文提出期限(後期課程3年)
5月1日� 創立記念日
1月2
0日� 修士論文提出期限(後期課程2年)
5月3日� 「憲法記念日」
1月2
1日� 大学入試センター試験
5月5日� 「こどもの日」
~2
2日� 5月9日� 領域別実習
(4年)
2月1
0日� 後期授業終了
~7月8日� 2月1
3日� 学部・春季休業
5月1
6日� 博士論文研究計画書提出期限(博士課程3年)
~3月31日� 6月1
4日� 博士論文研究計画発表会
(博士課程3年)
2月2
1日� 修士論文発表会(前期課程2年)
7月1
1日� 基礎・生活援助実習
(2年)
2月2
2日� 大学院・春季休業
~9月9日� 7月1
1日� 編入2年次地域看護実習
~7月22日� ~3月31日� 3月7日� 博士論文発表会(後期課程3年)
3月中旬
卒業・修了式
7月1
8日� 「海の日」
7月2
5日� 夏季休業
~8月26日� 8月2
9日� 前期授業再開
(参 考)
2004年度
9月1
2日� 総合実習【基礎・生活以外】
(4年)
3月1
3日� 卒業式
2月2
4日� 保健師国家試験
~9月27日� 2月2
5日� 助産師国家試験
9月1
9日� 「敬老の日」
2月2
7日� 看護師国家試験
9月2
0日� 総合実習【基礎・生活援助】
(4年)
3月2
9日� 合格者発表
~9月30日� 9月2
3日� 「秋分の日」
9月3
0日� 前期授業終了
〔21〕
春の足音が心にときめくこの頃、皆様方におかれましては、それぞれの立場でご活躍のことと思います。鈴風会では今
年度、様々な活動を行ってきました。
2004年10月2日�11時より長野県看護大学大会議室にて「臨時総会」が同窓生16人や教職員の見守る中行われました。
また、委任状は124人から届けられました。議案審議内容は、
第1号議案:同窓会名簿情報提供に関する規定について
第2号議案:見藤前学長の銅像について
第3号議案:同窓会ホームページの開設について
でした。第1号議案については、第2回同窓会総会で保留議案となっていたものであり、挙手多数にて規定が承認されま
した。第2号議案については、開学10周年を機に、母校設立・運営にご尽力された見藤前学長の銅像を作りたいという声
があがりました。これについて執行部では会員の意見を聞く必要があると考え、臨時総会にて意見を求めました。その結
果、同窓会としては「見藤前学長の記念となるものを作る」が可決されました。執行部では記念となるものとして、歴代
学長の写真を額縁に入れたものを学長室に贈呈することを視野に入れ、来年度の予算を編成しています。第3号議案は今
年度の事業計画でもあります。同窓会ホームページの開設に関しては、アクセス権や管理者について検討が必要との意見
があり、今後も引き続き検討を重ねていくことになりました。
11月20日�には開学10周年記念式典が開催されました。同窓会では、休憩時間に参加者に見ていただく場として「同
窓会コーナー」を設け、写真・アルバム・学報の展示を行いました。当日、会場に駆けつけた卒業生の方もおり、同窓会
コーナーはにぎわっていました。10周年記念事業の責任者であり、同窓会顧問である那須先生より、同窓会宛にこころ温
まるお言葉をいただいたので紹介します。
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� 昨年、長野県看護大学10周年記念事業を実施するに当たり、鈴風会には多大なご支援、ご協力を賜り、お �
� かげをもちまして無事にめでたく記念式典、記念講演会を挙行することが出来ました。同窓会のご支援がな
�
� ければこれほど盛大かつ親身な記念行事は出来なかったでしょう。ありがとうございました。
�
����������������������������� 2005年3月16日�には第3回同窓会総会が開催され、役員改選となります。この日は、長野県看護大学研究集会が開
催される日でもありますので、皆様の総会への多数の出席および委任状の提出のご協力をお願いいたします。今年も卒業
生相互の親睦をはかり、母校の看護学の発展にも寄与していけるよう努力して参りたいと思います。
(10周年記念式典での「同窓会コーナー」の様子)
会費納入のお知らせ
同窓会会費は終身会費で10,000円です。振込み先は以下の通りです。
郵便局普通預金口座 口座番号:0581-1-79696 加入者名:長野県看護大学同窓会鈴風会
会費納入いただいた同窓生の皆様には、同窓会より記念品として「ロゴ入りはさみ」を差し上げます。
〔22〕
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第3回同窓会総会のお知らせ
日 時 平成16年3月16日� 12時10分~(予定)
場 所 長野県看護大学 講堂
内 容 今年度事業報告、来年度事業報告、今年度決算報告および監査報告、来年度予算案、その他 平成17~18年度執
行部役員の選出
お忙しい時期とは思いますが、ご出席をお願いいたします。
同窓会 豆情報 その4
まだまだ寒い日が続きますが、いかがお過ごしですか。今回はちょっと早いのですが、今年度で任期終了となる執行
部役員のつぶやきをご紹介したいと思います。
�発 足…… 2002年
(平成14年)の夏から準備… 2003年
(平成15年)3月14日…助産師(母性)もいたので、無事出
産…
「鈴風会」
と命名。
�きっかけは……母校開学10周年…
「同窓会の立ち上げを考えている」と那須先生から誘われて…あれから2年…野坂
先生よりメッセージ「離ればなれになった卒業生の皆さんがひとつの組織を創りあげるためには大変
なご苦労があったことと拝察します。いつまでも大学を叱り、ご鞭撻くださるような存在であり続け
ていただきたいと願っております。
」…顧問の先生方のご尽力に感謝。
�実 感……何か新しいことを立ち上げるときには、皆様の協力がなくてはできないんだな~と…まだまだよちよ
ち歩きの同窓会…
(小児)
看護ですくすく成長?
�課 題……会員数を増やすこと…会の運営に関する情報収集・意思決定…「ならでは」企画…時代の流れと会員
のニーズに敏感になること…いずれは
(成人)
して、社会に出ていって、成熟
(老年)
したいな。
�今後その1……地道な活動が沢山詰まっている初めの一歩(基礎)
を大切に…しっかり力を持った学年幹事と会員のパ
ワーを結集して…皆で集える交流の場に…エンパワーと学び
(管理・教育)
のサポートを。
�今後その2……お世話になった先生方が大学を去られ、寂しさもありますが、少しずつでも大学に恩返しをしたいな
…母校も住民の皆様
(地域)
もいっしょに、こころ
(精神)
安まる会でもありたし。
�お 礼……初代執行部として至らぬ点も多く、迷惑をおかけしましたが、温かく見守っていただきありがとうご
ざいました。
追伸:つぶやきをまとめていたら、母校の講座名とつながってしまいました
(掲載できなかった講座の方々にはごめ
んなさい)
。会の運営と看護は似てるのかしら? やっぱり看護な初代執行部でした。
(副会長 中嶋尚子)
連絡先:同窓会事務局(庶務係)母性看護学講座 丸山洋子 Tel & Fax:0265-81-5183 [email protected]
(19ページより続く)
まず、この物語がどうして受けたのだろうか、それも子どものみならず、大人にも大きな人気を博したのだろうか
という点についてのコメントが結構あった。ご存知のように、Harry Potterシリーズの中には、古典的な西洋の神話
やファンタジー文学のパターンがふんだんに取り入れられていると言われる。そのために、単なる子どもだましでは
なく、大人が十分に楽しむのに耐えうる内容となっているという。しかし、このようなコメントはよほどの古典文学
的、神話的知識がなければできないものであろう。学生たちはもっと素朴な回答をしていた。
Harry Potterが面白いのは、現実と架空の世界が絶妙なバランスを取っていることにあるとの指摘があった。これ
は、絶妙である。確かに、すべて架空の作り事であれば、子どものお伽噺にはなっても、大人にはそれほど受けるこ
とはなかったかもしれない。現実の King’
s Cross Stationに、架空の9�ホームなどという設定がいかにも楽しい。
その意味で、この物語は日本のファンタジーアニメで言えば「ドラえもん」に近いのではないだろうか。基本的な設
定はどこにでもあるような日常の生活で、その中で、さまざまな不思議なことが繰り広げられる。こういった半分は
現実の世界というのがドラマの展開では重要なのかもしれない。
また、ドラえもんとの共通点で言えば、主人公が子どもであるということだ。ドラえもんがどうして人気があるの
かというのは諸説あるだろうが、子どもの目線で世の中を見ているということで新鮮な感動を与え、また、子どもだ
からこそ魔法の世界や超自然現象の世界にも抵抗なく入っていくこともできるのだろう。そして、Harry Potterの登
場人物も、ドラえもんのキャラクターもいろいろな事件や問題を解決しながら、少しずつ大人へとなっていっている
のである。その意味で、
Harry Potterシリーズは、
Harryの魔術師としての成長を一作ずつ描いている一つのBildungsroman
(教養小説)と見ることはできないだろうか。
そのような意味で、Harry Potterは単なる娯楽小説ではなく、大人の知性にも訴える内容と形式を持っているとい
えよう。ドラえもんと異なるところといえば、のびた君や静ちゃんは年を取らないが、Harry Potterの方は第3作目
ともなると子どもというよりはすでに青年の貫禄さえある。やはり、Bildungsromanなのであろう。
(本学教員・外国語講座助教授)
〔23〕
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10周年記念事業を終えて
10周年記念事業を終えて
長野県看護大学10周年記念事業として、記念式典の挙行及び記念講演会の開催、記念誌の発行、記念 DVDの製作を企
画し、皆様のご支援ご協力を持ちましていずれも成功裡に終えることができました。また、事業の一環として3回の公開
講座が催されこちらにも多くのご参加を頂きました。
記念式典、記念講演会は平成16年11月20日�の午後に挙行されました。当日の参加者は、来賓・講演会のお客様が8
3
名、本学卒業・修了生25名、本学学生・大学院生55名、本学教職員 OB14名、本学教職員72名の、総勢249名でした。記
念式典開始前には10周年記念ビデオの上映が行われ、上映後、山田隆次長の司会により式典が開始されました。学長挨拶、
長野県を代表して衛生部長挨拶の後、来賓の皆様からお祝いのお言葉を頂き、祝電披露、感謝状贈呈、学生自治会代表の
誓いの言葉、そして式典締めくくりには教職員学生有志による学歌の合唱が行われ、50分余で終了しました。その後1時
間程の休憩時間には、生協カフェテリアと調理実習室でケーキと飲み物のサービスがあり、また講堂ロビーにおいては、
本学の看護実践国際研究センターの各研究プロジェクトの研究成果のパネル展示が行われました。調理実習室隣のホール
では同窓会による写真等の展示物が披露され、50数名の同窓生や在学生で賑わっており、さながらミニ同窓会の様相を呈
しておりました。記念講演会は午後3時より4時半まで、国際基督教大学大学院教授・村上陽一郎先生をお迎えし、本学
奥野茂代教授の司会により進行しました。ご講演後の質疑応答には本学名誉教授 Anne Davis 先生からのコメントも頂け
て、充実したひと時を持つことが出来ました。
10周年記念事業推進にあたり、実に多くの学内外の皆様から、ご指導、ご協力、ご援助を賜りました。記念式典・講演
会の費用は主として本学後援会の援助を受け、それ以外に来賓の方々からの祝い金、そして多くの大学関係者の皆様から
のご寄付により賄われました。ここに厚く御礼申し上げる次第です。
最後に10周年記念事業に関わった教職員メンバーの氏名を列挙いたします。
記念式典・講演会担当:山田 隆、那須 裕、奥野茂代、中嶋尚子、太田勝正
記念誌編集担当:西垣内磨留美、田村正枝、安田貴恵子、前田樹海、志村ゆず、本田智子
記念 DVD 製作担当:野坂俊弥、竹内幸江、御子柴裕子、小林 浩
学歌合唱指導・指揮:江藤裕之、ピアノ伴奏:御子柴裕子
勿論、大学のすべての教職員と学生の皆様のご協力、ご指導がなければ、事業の成功はありませんでした。有難うござい
長野県看護大学10周年記念事業実行委員会委員長:那須 裕
ました。
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お知らせ:西洋哲学のグレート・ブックスを読む会
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編 集 後 記
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昨年の4月から西洋哲学のグレート・ブックスを読むという勉強会を若手教員・助手・院生の有志が中心となって
行っています。
この会は、哲学の講義を聞くのではなく、古典とよばれる名著を各参加者がじっくりと読んで、その読んだ内容に
関して対話(ダイアローグ)を行い、よいもの・悪いものを選び抜くという意味での「批判的・クリティカル」な読
書を通じて、古典への理解を深め、ひいてはその人文学的教養を各自の研究のヒントにしようとするものです。
毎月1回程度の開催を予定しております。日程、場所などの詳細は、毎回決まり次第、参加を希望された方にメー
ル等で連絡いたします。
参加していただく場合には十分な予習が必要となります(テキストを徹底的に読んでくること。線を引くなどして
読みきってくること 。あらかじめご理解とご了解を頂き、ご参加いただければ幸いに存じます。1~3月はアリスト
テレス(高田三郎訳)
『ニコマコス倫理学』
(岩波文庫)を読みます。
それでは、皆様のお返事をお待ち申し上げております。ご連絡・お問い合わせは松崎(midori @ nagano-nurs.ac.jp)
まで。
学報19号をお届けします。今回は10周年記念特集号ということもあり盛りだくさんな内容となりました。ご執筆、
並びにご投稿いただきました皆様方には心より感謝申し上げます。次号からも、さらに読み応えのある学報をめざし
たいと思いますが、そのためには教員の活動報告をもっと充実させなくてはならないと思っています。大学の地域貢
献、そして国際貢献が叫ばれるなか、本学の教員の活躍をもっと知らしめるべきであろうと考えます。
渉外委員会学報担当:江藤裕之(編集長)
・岩崎朗子・太田則子・堀内美和
〔24〕
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