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平成22年度の検討(PDF:1472KB)

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平成22年度の検討(PDF:1472KB)
5章
データの整理分析
5.1 データの整理分析
概要調査結果,各サンプル箇所のデータに基づき,両工法の比較・分析を行い,
「盛土,締固めによ
る工法」と,
「路体全体を一旦掘削してから盛土,締固めにより路体を築造する工法」両工法の仕様書
を作成する。
5.1.1 室内試験結果の比較検討
各室内試験の結果を基に沼田,西都地区の土質について比較,検討する。
表-5.1 室内試験における沼田地区と西都地区の比較
区分
試験名
単位
沼田地区
西都地区
g/cm3
2.503
2.751
自然含水比
%
95.6
11.4
礫分(2~75mm)
%
13.3
65.8
砂分(0.075~2mm)
%
24.1
14.9
シルト分(0.005~0.075mm)
%
31.4
13.6
粘土分(0.005mm未満)
%
31.2
5.7
最大粒径mm
mm
37.5
26.5
50 % 粒径D50
mm
0.0328
4.1175
液性限界 WL
%
135.4
30.1
コンシステンシー 塑性限界 Wp
%
74.4
21.7
61
8.4
一般
粒度
土粒子の密度
塑性指数 Ip
分類
礫まじり砂質
砂まじり
火山灰質粘性土 細粒分質礫
地盤材料の分類名
分類記号
締固め
せん断
VH2S-G
GFS
g/cm3
1.017
1.936
%
54.3
12.4
粘着力 c
kN/m2
63.9
100.9
内部摩擦角 φ
°
29.8
30.2
最大乾燥密度 ρdmax
最適含水比
Wopt
(1)一般
①土粒子の密度
土粒子の密度は土を構成する土粒子の部分の単位体積当たりの平均質量をいい,2.65g/cm3 前後のも
のが多い。土粒子の密度は,粒度試験や締固め試験の整理等にも用いられる。
沼田地区,西都地区ともに 2.65g/cm3 前後となっており,標準的な値である。
74
(参考)
表-5.2 土粒子の密度の測定例
密度(g/cm3)
粘土
2.65
完新世
砂
2.70
粘土
2.67
更新世
砂
2.65
豊浦標準砂
2.64
土質名
土質名
関東ローム
まさ土
しらす
山砂
泥炭
密度(g/cm3)
2.78
2.60
2.38
2.79
1.50
(土木基礎力学 2 P.156:実教出版)
②自然含水比
土の間隙に含まれる水の量を含水量といい,含水比を用いて表す。土の工学的な性質は,含水比に
大きく影響されるので,含水比は土の状態を示す最も基本的な値といえる。自然状態にある土の含水
比を自然含水比といい,土の種類によって異なる(表-5.3)。自然含水比は粗粒分が多いほど小さく,
細粒分が多いほど大きい。
一般に自然含水比が塑性限界:Wp に近いほど土は硬くて圧縮強度も大きく安定な状態を,液性限
界:WL に近いほど液状の軟らかい不安定な状態を示す。(図-5.1)
沼田地区:沼田地区の土は自然含水比(95.6%)で液性限界(WL=135.4%)より小さく,塑性限界(Wp=74.4%)
に近いため,安定な状態にある土といえる。
西都地区:西都地区の土は自然含水比(11.4%)で塑性限界(Wp=21.7%)より小さく,半固体状態にある土
といえる。
(参考)
表-5.3 自然含水比の測定例
土質名
地名
自然含水比(%)
沖積粘土
東京
50~80
洪積粘土
東京
30~60
関東ローム
関東
80~150
黒ぼく
九州
30~270
泥炭
石狩
115~1200
(土木基礎力学 2 P.156:実教出版)
(参考)
土,特に粘土等の細粒土は含水量の多少により固体状,半固体状,塑性状,液状になる(図-5.1)。
このような土の含水量の変化による状態の変化や変形に対する抵抗の大小を総称してコンシステンシ
ーという。またそれぞれの限界を収縮限界,塑性限界,液性限界といい,これらを総称してコンシス
テンシー限界という。
①液性限界 WL(%):土が塑性状から液状に移るときの境界の含水比
②塑性限界 Wp(%):土が塑性状から半固体状に移るときの境界の含水比
③収縮限界 Ws(%):土の含水比をある量以下に減じてもその体積が減少しない状態の含水比
75
沼田
西都
図-5.1 土のコンシステンシー限界及び含水比
と体積変化との関係
(土木基礎力学 2 P.167:実教出版に加筆)
(2)粒度
土を構成する土粒子の粒径の分布状態を粒度といい,土粒子の分布状態を粒径とその粒径より小さ
い粒子の質量百分率の関係を示した粒径加積曲線で表される。粒度は,土の物理的性質や力学的性質
と密接な関係がある。
沼田地区:沼田地区の粒径加積曲線(図-5.2)は,図-5.4③のように粒径が広い範囲にわたって分布し
ており,締固め特性の良い土に分類できるが,シルト,粘土等の細粒分が 60%を越えるた
め,これら細粒分の性質が支配的となる。
西都地区:西都地区の粒径加積曲線(図-5.3)は,図-5.4③のように粒径が広い範囲にわたって分布し
ており,締固め特性の良い土に分類きるが,粒径 2mm 以上の礫分が 66%となり,粗粒分の
性質が支配的となる。
図-5.2 沼田地区の粒径加積曲線
76
図-5.3 西都地区の粒径加積曲線
図-5.4 粒径加積曲線の例
(土質試験 基本と手引き P.27:地盤工学会)
(3)コンシステンシー
液性限界,塑性指数を用いて細粒土を分類する方法として塑性図が用いられる。塑性図は縦軸に塑
性指数,横軸に液性限界をとり,粘土とシルトを分けるA線と圧縮性の大小を判断するB線(液性限界
50%)の 2 本の線を引くことにより,塑性,圧縮性,透水性などの工学的な性質の概略を知ることがで
きる。
[塑性図の見方]
・A線より上に行くほど塑性が高く①乾燥時に固結する②透水性が低い 等の粘性土としての特徴
に富む
・A線より下に行くほど塑性が低く①乾燥に伴ってボロボロになる②間隙径が大きいので透水性が
高くなる 等の塑性の幅が小さく,粗粒的性質を持つ
・B線より左に行くほど圧縮性が小さく,右に行くほど圧縮性が大きい
沼田地区:圧縮性,体積変化率が大きく,乾燥強さ,強靱性はやや小さめである。盛土の沈下や変形
等に注意を要する土。
西都地区:圧縮性が小さく,その他の性質は中間的である。盛土材に適した土。
77
(参考)塑性:力を加えて変形させたとき,永久変形を生じる物質の性質のこと
タフネス:強靱性,粘り強さの意味で塑性限界における乱した土のせん断強さの度合い
塑性図のA線:過去の実験データに基づいて作られたもので,粘土分が多い土とシルト分が
多い土を分類するために設定された。A線より上が粘土分の多い土で塑性が高
く,下がシルト分の多い土で塑性が低いことを表している。
図-5.5 塑性図
図-5.6 塑性図による粘性土の力学的性質
(土質試験 基本と手引き P.45:地盤工学会)
(4)分類
礫や砂などの粗粒分の多い材料の工学的性質は,粒度組成に強く依存し,シルトや粘土などの細粒
分の多い材料の工学的性質は,コンシステンシーに強く依存する。従って,観察,粒度試験,コンシ
ステンシーの結果を用いて,土の工学的分類を行う。
土の工学的分類を行うことによって,土の工学的な性質の推定や材料土としての良否を判断するの
に役立てることができる。
沼田地区:日本統一土質分類法による土の分類(大分類)の火山灰質粘性土に該当し,詳細な分類
は「礫まじり砂質火山灰質粘性土(VH2S-G)」となる。
西都地区:日本統一土質分類法による土の分類(大分類)の礫質土に該当し,詳細な分類は「砂ま
じり細粒分質礫(GFS)」となる。
78
図-5.7 日本統一土質分類法による土の分類(大分類)
(参考)
表-5.4 土工材料としての問題点と着眼点
分類名
{GF}
細粒分混じり礫
{V}
火山灰質粘性土
主な問題点など
調査・試験,設計・施工における着眼点
・一般にトラフィカビリ
ティは良いが高位段丘
礫層などの<腐り礫>を
含む材料では,粘性土
のような問題を生じ
る。
・
{GF}などの細粒分の多
い材料は,盛土法面の
土羽材に適するものが
多い。
・場内工事用道路としての良質な材料であり,その
活用(土量配分)がコスト低減のポイントになる。
・良質材の分布・量の予測が調査段階の着眼点とな
る。
・地山で固結している材料や地下水位よりも上にあ
る材料は,自然含水比が低く,締固めが支障とな
ることもない。
・路床材や裏込め材に最適な材料がほとんどである。
・地下水位以下にある細粒分混じり礫{GF}は,泥
浄化を生じるものも時にはある。なお,地下水位
は季節変動するので注意のこと。
・自然含水比 Wn・液性限界 WL に注目し,とりわけ
Wn≧WL であれば,締固めた土のコーン指数試験を
行う。
・気象変化(降雨,低温など)に応じた施工機種・施
工方法の選択。施工基面の放置によるトラフィカ
ビリティの改善。良質土の活用がポイント。
・必要に応じて高盛土では,間隙水圧の低下を図り
盛土の崩壊を防ぎ,施工性の確保のために,水平
排水層などを設ける。
・とりわけ Wn≧WL の{V}は,高盛土の安定・沈下,
トラフィカビリティ,現場内工事用道路,混合土,
などが課題となる。
・{V}は液性指数 IL<0.5:良質ローム,IL<0.5~0.8:
普通ローム,IL>0.8:軟弱ローム。とりわけ軟弱
ロームに要注意。
・地山で固結・半固結し
ていく材料は,自然含
水比が低く,施工性は
良い。しっかり締め固
めれば,圧縮沈下は少
ない。
・自然含水比が液性限界
に近いか,高い材料は,
施工重機のトラフィカ
ビリティ及び高盛土の
安定が問題となり,現
場内工事用道路の配置
が検討課題となる。
(土質試験 基本と手引き P.55:地盤工学会より一部抜粋加筆)
79
(5)締固め
土の締固め特性は土の種類により大きく異なる。土の粒径加積曲線と締固め曲線との関係を図-5.8
に示す。締固め曲線は一般に次の特性を有する。
a.粒度の良い砂質系の土ほど締固め曲線は鋭く立った形状を示し,左上方に位置する。このため最適
含水比は低く,最大乾燥密度は高い。
b.細粒土分が多い土ほど締固め曲線はなだらかな形状を示し,右下方に位置する。このため最適含水
比は高く,最大乾燥密度は低くなる。
沼田地区:図-4.5 に示すとおり最適含水比が 54%と高く,最大乾燥密度は 1.02g/cm3 と低くなる。図
-5.8 の⑤に近い締固め曲線(上記 b)となる。自然含水比(95%)が最適含水比より高いため,施工時の
水分調整が困難で盛土の適切な締固めが難しい土といえる。
西都地区:図-4.15 に示すとおり最適含水比が 12%と低く,最大乾燥密度は 1.93g/cm3 と高くなる。図
-5.8 の②に近い締固め曲線(上記 a)となる。最適含水比が自然含水比(11%)と近いため,施工時の水
分調整が簡易で適切な締固めが容易な土といえる。
a.各土試料の粒径加積曲線
b.各土試料の締固め曲線
図-5.8 土の種類と締固め曲線
(土質試験 基本と手引き P.76:地盤工学会)
(6)せん断
せん断試験は,一面せん断試験,一軸圧縮試験,三軸圧縮試験があり,本調査では三軸圧縮試験に
より土の強度定数(φ:内部摩擦角,C:粘着力)を求めた。
沼田地区,西都地区ともに粘着力 60kN/m2 以上,内部摩擦角 30°程度を有しており,強度定数とし
ては,比較的大きい値を示している。盛土安定の面では良好な土といえる。
80
(参考)
表-5.5 設計時に用いる土質定数の仮定値
(道路土工-盛土工指針 P.101:日本道路協会)
(参考)
盛土上を車や人が通ると,盛土内の土は外力を受け,土中にせん断応力が発生する。このせん断応
力が土の持っているせん断強さを超えると,盛土は破壊する。
(図-5.9)このせん断強さとせん断応力
との比較から盛土の安定度照査(安全性の検討)が行われる。
このせん断強さは,次式で表現することができる。
s=c+σtanφ
・・・・・
土の強さを表すクーロン式
s:せん断強さ(kN/m2)
c:粘着力(kN/m2)
σ:せん断面に働く垂直応力(kN/m2)
φ:内部摩擦角またはせん断抵抗角(°)
81
C は粘着力といい,垂直応力σに関係なく発揮されるせん断抵抗である。粘着力は土粒子のまわり
の吸着水を通じて発揮される土粒子間の結合力に基づくもので,
微細な土粒子から構成される土ほど,
一般に強く表れる。
σtanφは垂直応力σの増加に比例してかわるせん断抵抗で,この比例関係は摩擦においてみられる
現象と同様であり,せん断抵抗の増加を表す角度φは,すべりに対する摩擦の性質を表していること
から内部摩擦角という。
図-5.9 土のすべり破壊
図-5.10 一般的な土のクーロン式の図示
(土木基礎力学 2 P.228,P.240:実教出版)
5.1.2 両工法の比較検討
(1)盛土締固め状態
締固め度は,盛土施工の品質管理を行う上での指標であり,一般的に広く使用され,80~85%以上で
設定されているものが多い。サンプル箇所における調査結果は両工法とも平均値 80%以上を確保して
いる。
(表-5.6,5.7)盛土の密度は良好な状態であり,転圧は適切に行われている。盛土締固めに関
しては,工法及び土質による差異は,認められない。
表-5.6 現場密度と締固め度:沼田地区(火山灰質粘性土)
試験箇所
③乾燥密度
ρt(g/cm3)
④最大乾燥密度
ρdmax(g/cm3)
締固め度
(③/④)×100
A-1
0.82
81%
A-2
0.85
84%
A-3
0.86
B-1
0.81
80%
B-2
0.85
84%
B-3
0.79
78%
1.017
締固め度
(平均)
83%
85%
80%
*試験箇所:A-1~3「盛土,締固めによる工法」
*試験箇所:B-1~3「路体全体を一旦掘削してから盛土,締固めにより路体を築造する工法」
82
表-5.7 現場密度と締固め度:西都地区(礫質土)
試験箇所
③乾燥密度
ρt(g/cm3)
④最大乾燥密度
ρdmax(g/cm3)
締固め度
(③/④)×100
A-11
1.770
91%
A-12
1.820
94%
A-13
1.567
締固め度
(平均)
89%
81%
1.936
B-11
1.777
92%
B-12
1.479
76%
B-13
1.584
82%
83%
*試験箇所:A-11~13「盛土,締固めによる工法」
*試験箇所:B-11~13「路体全体を一旦掘削してから盛土,締固めにより路体を築造する工法」
(2)支持力
支持力は地盤に作用する荷重を支持できるかを示すものであり,森林作業道を使用する車両の安全
性を確認する 1 つの指標となる。
表-5.8 極限支持力と許容支持力:沼田地区(火山灰質粘性土)
工法
①(測点A-1~3 )
②(測点B-1~3 )
区分
支持力(kN/m2)
NO.1
NO.2
NO.3
平均
極限
31.0
34.0
28.0
31.0
許容
10.3
11.3
9.3
10.3
極限
28.0
29.0
28.0
28.3
許容
9.3
9.7
9.3
9.4
*試験箇所:A-1~3「盛土,締固めによる工法」
*試験箇所:B-1~3「路体全体を一旦掘削してから盛土,締固めにより路体を築造する工法」
表-5.9 極限支持力と許容支持力:西都地区(礫質土)
工法
①(測点A-11~13 )
②(測点B-11~13 )
区分
支持力(kN/m2)
NO.11
NO.12
NO.13
平均
極限
1196.0
1196.0
478.4
956.8
許容
398.7
398.7
159.5
318.9
極限
1196.0
239.2
956.8
797.3
許容
398.7
79.7
318.9
265.8
*試験箇所:A-11~13「盛土,締固めによる工法」
*試験箇所:B-11~13「路体全体を一旦掘削してから盛土,締固めにより路体を築造する工法」
83
①土質による差異
サンプル箇所における調査結果では土質による差異が明らかとなった。火山灰質粘性土では極限
支持力で約 30kN/m2 と極端に弱く,礫質土では最大 1196kN/m2 となった。
(表-5.8,5.9)
火山灰質粘性土は,降雨,霜降等施工条件の悪さと土質の性状(凍結融解等の影響を受けやすい,
こね返しによる強度低下が著しい等)の影響を大きく受けたものである。
礫質土は,礫の混入割合,粘性土の混入等の条件により支持力差が出たものと考えられる。特に
支持力が小さい A-13 ではレキの混入率がやや低めで,表面がぬかるみ粘性土を多く含んでいたこ
とが,B-12 ではレキの混入率がかなり低く,細粒分は多かったことが影響をしている。
②工法による差異
火山灰質粘性土では,約 30kN/m2,礫質土では最大 1196kN/m2 と土質条件に大きく左右されるが,
工法の違いによる盛土支持力の差異は特に確認できなかった。
③両工法で支持可能な荷重
平板載荷で得られた最大の支持力は,両工法とも試験で載荷した最大荷重 1196kN/m2 の極限支持
力を有することが確認された。この極限支持力 1196kN/m2(120tf/m2)を有する路体は,林道で使用
される高さ 8m の重力式コンクリート擁壁を十分支持することができる地盤であることを意味する。
また,自動車荷重に換算すると 10t積車の後輪より路面に作用する荷重 359kN/m2 を安全に支持す
ることが可能な支持力を有している。
(359kN/m2 ≦
398kN/m2)
(参考)
地盤の極限支持力は地盤が破壊する荷重を,許容支持力は安全率を見込んだ値を意味する。通常,
設計で使用される支持力は許容支持力で,安全率を 3 倍見込んでいる。
(例)極限支持力 1196kN/m2 の地盤の許容支持力=1196÷3=398.7kN/m2 となる。
(参考)
表-5.10 自動車から作業道路面に作用する荷重
総重量
W2:後輪荷重 接地面積
車両の種類
t(kN)
t(kN)
(m2)
① 2t積車
4.96 (48.6)
1.48 (14.5)
0.1
② 4t積車
7.99 (78.4)
2.63 (25.8)
0.1
③10t積車
19.86 (194.8)
3.66 (35.9)
0.1
* 車両の種類①②③の各数値は表-5.11 の値を使用
* 路面に作用する荷重=W2÷接地面積
* 衝撃は含まない値
* 設置面積(後輪接地寸法)=0.2m×0.5m
84
路面に作用する荷重
t/m2(kN/m2)
14.8 (145)
26.3 (258)
36.6 (359)
(参考)
表-5.11 ダンプトラックの規格
①
②
③
(イラストによる建築物の仮設計算[増補改訂版] P269:井上書院)
図-5.11 ダンプトラックの規格
(イラストによる建築物の仮設計算[増補改訂版] P269:井上書院)
85
(3)盛土の安定性
盛土の安定は,森林作業道を使用する車両の安全性を確認する指標の 1 つである。
ここでは沼田地区並びに西都地区で施工された盛土(現場密度と含水比)に近い状態で作成した供試
体を使って三軸圧縮試験を実施し,得られた強度定数を用いて施工状態における盛土の安定度を検討
した。
1)検討条件
すべり面の形状:円弧すべり(盛土内部の土質が均一でかつ斜面形状が比較的単純な場合と仮定)
強度定数:表-5.12~5.13 に示した内部摩擦角:φ,粘着力:c
検討箇所①:斜面の安定として斜面先崩壊(図-5.13a)を想定して検討(図-5.12)
検討箇所②:路肩の安定として斜面内崩壊(図-5.13c)を想定して検討(図-5.12)
(①②が所要の安全率以上を有するものを安定とした)
自動車荷重:表-5.14 の値(載荷値の欄)を図-5.12(1)の1,2の位置に集中荷重として載荷
フォワーダ荷重:表-5.15 の値(接地圧)を図-5.12(2)の1,2の位置に等分布荷重として載荷
安全率:1.2 以上(一般的に盛土の安定度照査で使用されている値)
*斜面の検討では,図-5.12 の1,2の位置に載荷した荷重を対象に,路肩の検討では
図-5.12 の1の位置に載荷した荷重を対象に計算を実施した。
表-5.12 三軸圧縮試験結果:沼田地区(火山灰質粘性土)
試験箇所
湿潤密度
ρt(g/cm3)
A-1
1.420
A-2
1.370
A-3
1.450
B-1
1.430
B-2
1.450
B-3
1.410
平均
内部摩擦角
φ(°)
粘着力
c(kN/m2)
tan φ
1.413
23.7
26.7
0.44
1.430
23.6
17.4
0.437
表-5.13 三軸圧縮試験結果:西都地区(礫質土)
試験箇所
湿潤密度
ρt(g/cm3)
A-11
2.007
A-12
2.063
A-13
1.823
B-11
2.044
B-12
1.757
B-13
1.812
平均
内部摩擦角
φ(°)
粘着力
c(kN/m2)
tan φ
1.964
28.7
17.6
0.548
1.871
27.8
6.9
0.526
86
a. 斜面の安定
b. 路肩の安定
図-5.12(1) 盛土の安定度照査箇所と自動車荷重載荷位置
a. 斜面の安定
b. 路肩の安定
図-5.12(2) 盛土の安定度照査箇所とフォワーダ荷重載荷位置
(参考)
盛土のように土質が均一でかつ斜面形状が比較的単純な場合は,すべり破壊面を円弧と仮定して安定
計算を行う。この場合,斜面の傾斜や地盤の条件によって次のような3つの破壊形状に分類される。
森林作業道は急勾配に盛土する場合が多いため,
「a.斜面先崩壊」を想定して斜面の安定の検討を実施
した(図-5.13a)。また,勾配が急になることで路肩が弱点となりやすいため,「c.斜面内崩壊」を想定
して,路肩の安定の検討もあわせて実施した(図-5.13c)。
a.斜面先崩壊
b.底部崩壊
c.斜面内崩壊
図-5.13 斜面崩壊の種類(絵とき土質力学 P187:オーム社)
a.斜面先崩壊・・・すべり面の下端が斜面先を通る破壊。斜面先は釣合状態でも応力集中が起こりや
すく,またこの部分の土かぶり厚は小さいから摩擦成分によるせん断抵抗が期
待できない。勾配が比較的急な斜面でおこる破壊。
b.底部崩壊・・・・すべり面の先端が斜面先から離れた地表面に現れる破壊。斜面下部にかたい層が
あり,勾配が比較的ゆるやかな斜面におこる破壊。
c.斜面内崩壊・・・すべり面の先端が斜面の途中を切る破壊。かたい層が比較的浅い場合におこりや
すい破壊。
87
(参考)
円弧すべりの安定計算では,円の中心と半径の異なる複数のすべり面を仮定し,各々のすべり面につ
いて安定計算を行い,そのうちで最も危険な円(限界円:安全率が最小のもの)を探し出している。
図-5.14
円弧すべりの安定計算の考え方(斜面先崩壊の場合)
(よくわかる土質力学例題集 P190:工学出版)
a.斜面の安定で検討した円弧(例)
図-5.15
b.路肩の安定で検討した円弧(例)
盛土の安定で検討した円弧
表-5.14 安定度照査に使用した自動車荷重
荷重
10t積
20t自動車
4t積
2t積
最大積載量
総重量
(t)
(t)
1後輪荷重
(t)
(kN)
載荷値
(kN)
10.1
19.86
3.66
35.89
71.8
8t自動車
4
7.99
2.63
25.79
25.8
5t自動車
2
4.96
1.48
14.51
14.5
*上表は表-5.11,図-5.11 をまとめたものである。
*10t 積はダブルタイヤのため,載荷値は輪荷重の2倍となる。
88
表-5.15 安定度照査に使用したフォワーダ荷重
荷重
最大積載量
総重量
履帯幅
接地圧
(t)
(t)
(m)
(kN/m2)
U-6BGフォワーダ
5.5
16.35
0.65
27.5
U-4BGフォワーダ
3.5
11.45
0.6
24.5
図-5.16(1) フォワーダ寸法図(メーカーカタログより)
図-5.16(2) フォワーダ寸法図(メーカーカタログより)
89
2)計算結果
図-5.17~5.20 に安定度照査結果を示した。
これはサンプル調査箇所で実施した土質条件,施工条件等の下で作設された盛土と同等の条件で安
定度照査を実施し,安定する法勾配を求めたものである。
2t積車載荷時
4
沼田A 1:0.6
沼田A斜面
沼田B 1:0.7
西都A 1:0.8
西都B 1:0.9
3.5
3
安全率
西都A斜面
沼田A路肩
2.5
沼田B斜面
沼田B路肩
2
西都A路肩
西都B斜面
1.5
西都B 路肩
1.2
1
1
1.5
2
2.5
3
盛土高 (m)
図-5.17 盛土の安定度照査(2t 積車載荷時)
①2t積自動車載荷時
【斜面の安定】
沼田 A,B,西都 A では,安全率 2.0 以上を確保している。
西都 B では,規定の安全率 1.2 以上あるが,各高さにおいて安全率 2.0 を下回っている。
【路肩の安定】
沼田 A,沼田 B,西都 A では安全率 2.0 以上を確保している。
西都 B では,規定の安全率 1.2 以上を確保しているものの,境界線上である。
90
3.5
4t積車載荷時
3.5
盛土法勾配
沼田A 1:0.7
3
沼田A斜面
沼田B 1:0.8
西都A 1:0.9
西都B 1:1.3
2.5
沼田B斜面
安全率
西都A斜面
2
沼田A路肩
西都B斜面
1.5
西都A路肩
沼田B路肩
1.2
1
西都B 路肩
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
盛土高(m)
図-5.18
盛土の安定度照査(4t 積車載荷時)
②4t積自動車載荷時
【斜面の安定】
沼田 A,B,西都 A では,概ね安全率 2.0 以上を確保している。
西都 B では,規定の安全率 1.2 以上あるが,各高さにおいて安全率 2.0 を下回っている。
【路肩の安定】
沼田 A,B,西都 A では,規定の安全率 1.2 以上を確保している。
西都 B では,規定の安全率 1.2 を大きく下回っており,安定しない。
③10t積自動車載荷時
10t積自動車載荷時の安定度照査では,斜面,路肩の安定ともに安全率 1.2 を大きく下回った。
91
U-4BGフォワーダ載荷時
6
盛土法勾配
沼田A 1:0.6
沼田B 1:0.6
西都A 1:0.6
西都B 1:1.1
5
沼田A斜面
安全率
4
沼田A路肩
3
西都A斜面
沼田B斜面
沼田B路肩
2
西都A路肩
西都B斜面
西都B 路肩
1.2
1
1
1.5
2
2.5
3
3.5
盛土高(m)
図-5.19 盛土の安定度照査(U-4BG フォワーダ載荷時)
④U-4BG フォワーダ載荷時
【斜面の安定】
沼田 A,B,西都 A では,概ね安全率 2.0 以上を確保している。
西都 B では,規定の安全率 1.2 以上あるが,高さ 1.5m 以上において安全率 2.0 を下回っている。
【路肩の安定】
沼田 A,沼田 B,西都 A では安全率 2.0 以上を確保しているが,西都 B では安全率 2.0 を下回って
いる。
92
U-6BGフォワーダ載荷時
4.5
沼田A斜面
4
沼田A 1:0.6
沼田B 1:0.6
西都A 1:0.6
西都B 1:1.1
3.5
安全率
3
沼田A路肩
2.5
沼田B斜面
西都A斜面
沼田B路肩
2
西都A路肩
西都B斜面
1.5
西都B 路肩
1.2
1
0.5
0
1
1.5
2
2.5
3
盛土高(m)
図-5.20 盛土の安定度照査(U-6BG フォワーダ載荷時)
⑤U-6BG フォワーダ載荷時
【斜面の安定】
沼田 A,B,西都 A では,概ね安全率 2.0 以上を確保している。
西都 B では,規定の安全率 1.2 以上あるが,各高さにおいて安全率 2.0 を下回っている。
【路肩の安定】
沼田 A,B,西都 A では,安全率 2.0 以上を確保している。
西都 B では,規定の安全率 1.2 以上を確保している。
93
3.5
3)検討結果
①2t積自動車載荷時
斜面の安定については,土質により安全率の大きさに違いがあるが,H=2.0m~2.5m 程度までは安
全率 1.5 以上を確保している。サンプル調査箇所では,適切な盛土の締固め(締固め度 80%以上)が行
われており,1:0.6~0.8 程度の法勾配で 2t 積自動車の通行が可能な範囲にある。ただし,西都 B で
は,路肩の安全率が低いため,路肩の補強又は,1:0.9 より法勾配を緩くする等の検討を要する。
なお,沼田 A,B は地盤支持力が弱いため,2t 自動車の通行に耐えられるような補強が必要である。
②4t積自動車載荷時
斜面の安定については,土質により安全率の大きさに違いがあるが,H=2.0m~2.5m 程度までは安
全率 1.5 以上を確保している。サンプル調査箇所では,適切な盛土の締固め(締固め度 80%以上)が行
われており,1:0.7~0.9 程度の法勾配で 4t 自動車の通行が可能な範囲にある。ただし,西都 A,沼田
B では路肩の安全率が 1.5 以下と低めにあるため,路肩の状態に留意する必要がある。また,西都 B
では,路肩の安定度が低く,安定しない。
なお,沼田 A,B は地盤支持力が弱いため,4t 積自動車の通行に耐えられるような補強が必要であ
る。
③U-4BG フォワーダ載荷時
斜面の安定については,土質により安全率の大きさに違いがあるが,H=2.0m~2.5m 程度までは安
全率 1.5 以上を確保している。サンプル調査箇所では,適切な盛土の締固め(締固め度 80%以上)が行
われており,1:0.6~1.1 程度の法勾配で U-4BG フォワーダの通行が可能な範囲にある。ただし,西
都 B では,路肩の安全率が 1.5 程度と低めにあるため,路肩の状態に留意する必要がある。
なお,沼田 A,B は地盤支持力が弱いため,U-4BG フォワーダの通行に耐えられるような補強が必
要である。
④U-6BG フォワーダ載荷時
斜面の安定については,土質により安全率の大きさに違いがあるが,H=2.0m~2.5m 程度までは安
全率 1.5 以上を確保している。サンプル調査箇所では,適切な盛土の締固め(締固め度 80%以上)が行
われており,1:0.6~1.1 程度の法勾配で U-6BG フォワーダの通行が可能な範囲にある。ただし,西
都 B では路肩の安全率が 1.5 程度と低めにあるため,路肩の状態に留意する必要がある。
なお,沼田 A,B は地盤支持力が弱いため,U-6BG フォワーダの通行に耐えられるような補強が必
要である。
(参考)安定度照査で西都地区の法勾配が沼田 AB に比べて緩い理由
表-5.17 に示したとおり,盛土斜面の安定(特に急勾配)は粘着力に依存するところが大きい。西都
と沼田の粒度を比較すると,粘土分は西都 5.7%,沼田 31.2%,シルト分を含めても西都は,19.3%と
沼田の 62.6%の僅か 1/3 である(表-5.16)。西都地区の法勾配が沼田 AB に比べて緩い理由は,土質特
に粘着力を発揮することができる粘性土等の細粒分の少ないためである。
表-5.16
粘土分,シルト分の全体に占める割合
区 分
沼田地区
31.2%
粘土分(0.005mm 未満)
31.4%
シルト分(0.005~0.075mm)
62.6%
計(粘土+シルト)
*表-5.1 より抜粋
94
西都地区
5.7%
13.6%
19.3%
(参考)
表-5.17 は内部摩擦角φ=30°,粘着力 c=0 の条件で盛土斜面の法勾配(1:0.6~1:1.8)における安定度
を検討した結果である。
法勾配 1 割(1:1.0)の安定度は,F=0.577(③)で安全率 1.2 に対して 0.623 不足である。法勾配 1 割の
盛土が安定するためには,この不足分を粘着力で補う必要があり,その負担割合は 52%となる。
同様に法勾配 6 分(1:0.6)の安定度は,粘着力の負担分が 71%となる。
このように,盛土斜面の安定度を考えた場合,法勾配が急になればなるほど,粘着力の果たす役割
が大きくなる。
盛土の施工では現地の土質,含水比に応じた適切な締固めを行うことにより,安定した路体を構築
することができる。森林作業道では,比較的急勾配で盛土するケースが多く,こうした場合の盛土の
安定は粘着力の寄与するところが大きい。粘着力は土粒子のまわりの吸着水を通じて発揮される土粒
子間の結合力に基づくものであるため,土中の含水比の増加や間隙水圧上昇の影響を受け易い。
森林作業道において,耐久性のある安定した盛土を維持するためには,盛土内の含水量を増大させ
ないよう,雨水や地山からの浸透水等の流入を極力防ぎ,すみやかに排水することが重要なポイント
となる。
表-5.17
盛土斜面の安定度における内部摩擦角と粘着力の負担割合
内部摩擦角
φ(°)
30
①
tan φ
0.577
法勾配
角度
1:N
(°)
②
tan θ
③
安全率
①/②
不足分
粘着力
負担分
安全率:F
1.2-③
(%)
0.6
59.0
1.667
0.346
0.854
71
0.7
55.0
1.429
0.404
0.796
66
0.8
51.3
1.250
0.462
0.738
62
0.9
48.0
1.111
0.520
0.680
57
1.0
45.0
1.000
0.577
0.623
52
1.1
42.3
0.909
0.635
0.565
47
1.2
39.8
0.833
0.693
0.507
42
1.3
37.6
0.769
0.751
0.449
37
1.4
35.5
0.714
0.808
0.392
33
1.5
33.7
0.667
0.866
0.334
28
1.6
32.0
0.625
0.924
0.276
23
1.7
30.5
0.588
0.981
0.219
18
1.8
29.1
0.556
1.039
0.161
13
*粘着力 c=0 の安定計算の式は以下による
過剰な間隙水圧のない盛土の安定計算は,次式で計算することができる。
95
Fs =
å (C × L + W × cosq × tan f )
åW × sin q
上式で粘着力 c=0 の場合,以下のようになる。
=
åW × cosq × tan f
åW × sin q
=
tan f
tan q
図-5.21 盛土の安定計算
(林道必携 技術編 P81:日本林道協会)
Fs:安全率
ここに,
c:粘着力(kN/m2)
L:各分割片がすべり面を切る孤長(m)
W:分割片の重量(kN/m)
θ:分割片とすべり面の傾斜角(°)
φ:内部摩擦角またはせん断抵抗角(°)
5.1.3 調査方法の比較検討
(1)平板載荷と衝撃加速度試験結果の関係
平板載荷試験結果は,盛土の支持力を確認する上で有力な試験方法であるが,試験費用が高価であ
り,実用的とは言い難い。本調査では,測点数は 12 点とわずかではあるが平板載荷試験を実施し,併
せて衝撃加速度試験を実施したので,これらのデータを使い単回帰分析を試みた。
①使用データ
表-5.18
平板載荷と衝撃加速度試験の測点ごとのデータ
沼田地区
西都地区
区 分
A-1
A-2
A-3
B-1
B-2
B-3
A-11
12.3
A-12
X:インパクト値
4.0
4.5
4.3
4.0
4.1
4.5
13.2
Y:極限支持力
(kN/m2)
31
34
28
28
29
28 1,196 1,196
A-13
10.4
B-11 B-12 B-13
12.6
7.8
14.0
478 1,196
239
957
②結果
Y=119.51X-499.73
R2=0.9134
③課題
・測点数は 12 点とわずであるため,今後,データを増やす必要がある。
・特に極限支持力は沼田地区と西都地区が極端に違うため,中間的なデータを補完する必要がある。
96
(2)平板載荷と簡易貫入試験結果の関係
平板載荷試験結果は,盛土の支持力を確認する上で有力な試験方法であるが,試験費用が高価であ
り,実用的とは言い難い。本調査では,測点数は 12 点とわずかではあるが平板載荷試験を実施し,併
せて簡易貫入試験を実施したので,これらのデータを使い単回帰分析を試みた。
①使用データ
表-5.19
平板載荷と簡易貫入試験の測点ごとのデータ
沼田地区
西都地区
区 分
A-1
A-2
A-3
B-1
B-2
B-3
A-11
20.2
A-12
X:Nd値
1.3
1
0.8
1.5
1.2
1.5
11.8
Y:極限支持力
(kN/m2)
31
34
28
28
29
28 1,196 1,196
A-13
6.8
B-11 B-12 B-13
14.8
8.6
6.6
478 1,196
239
957
②結果
Y=72.93X-9.15
R2=0.8014
③課題
・測点数は 12 点とわずであるため,今後,データを増やす必要がある。
・特に極限支持力は沼田地区と西都地区が極端に違うため,中間的なデータを補完する必要がある。
5.2 仕様書検討資料
概要調査結果,各サンプル箇所のデータに基づき,両工法の仕様書検討資料を作成した。
97
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