...

蛋白質核酸酵素

by user

on
Category: Documents
10

views

Report

Comments

Transcript

蛋白質核酸酵素
分析法による生体高分子の分析梅田芳久
質 量 分 析 計 と液 体 ク ロ マ トグラ フ ィー を連 結 す る イ ン タ ーフ エー ス と して 開 発 され た イ
オ ンス プ レー ・イオ ン化 法 は,
これ まで 質 量 分 析 に お い て 困難 な対 象 と さ れ て き た 極 性 の
高 い, 熱 に不 安 定 な化 合 物 に対 す る画 期 的 な ソ フ トイ オ ン化 法 で あ る 。 さ らに,
プ レー 質 量 分 析 計 に よ り150Kに
も お よぶ 蛋 白 質 の 分 子 量 がpmol
Database Center for Life Science Online Service
試 料 量 で 測定 で き る こと が示 され,
は じめ に
(10^<-12>mol) レベ ル の
質 量 分析 法 が 生 化 学 分 野 で 熱 い 注 目を あ び て い る。
(5)ISま
近 年, イ オ ン ス プ レー (IS) また は エ レ ク
トロス プ レー (ES)
イオ ンス
イ オ ン源 を装 着 した タ ン デ ム 四重 極
型 質量 分 析 装 置 の 出現 に よ り, ペ プ チ ド, 蛋 白質
オリ
ゴ ヌ ク レオ チ ド, 糖 鎖 な どの生 体 関連 高分 子物 質 の分 析
に 飛 躍 的 な 進 歩 が もた らさ れ た^<1∼4)>。ISま
た はESと
た はESイ
オ ン源 で 生 成 す る イ オ ン は, 溶
液 中 の試 料 の イオ ン化 状 態 に 近 似 して お り, これ ま で 質
量 分 析 にか か りに くい とされ て い た極 性化 合 物 ほ ど逆 に
イオ ン化 に有 利 であ る。
(6)正 イオ ン, 負 イオ ン モ ー ドの切 り替 え が容 易 で あ
よ
る。
ば れ る イオ ン化法 の特 徴 は,
(1)多 価 イナ ン (multiply charged
ion)
(7)グ リセ リンな ど の マ トリ ッ クス を用 い な い た め に
を生 成す る
た め に, 質 量 分 析 計 の 質 量 範 囲
(通 常m/z=2,400∼
鮮 明 な ス ペ ク トルが 得 られ る, な どを あ げ る こ とが で き
4,000)
高 分 子 量の 試 料 で も
る。
を は るか に 超 え た 数 十Kの
精 度 よ く測 定 す る こ とが で き る。 た とえ ば60K程
こ の ソフ トイ オ ン源 を タ ンデ ム 四 重 極 型 質 量 分 析 計 に
度の
蛋 白質 の場 合, 多 数 の プ ロ トン の付 加 した 準 分 子 イオ ン
取 り付 け, 衝 突 活 性 化 開 裂 (collision induced
が35∼45価
tion ;CID)
のチ ャ ー ジを もつ 複 数 の多 価 イオ ンス ペ ク
トル と してm/z=1,300∼1,800の
質 量 範 囲 で観 測 され
dissocia
の手 法 を 組 み 合 わ せ る こ とに よ り, 目的 イ
オ ン の構 造 に関 す る 情報 が 得 られ る。 た とえ ば, ペ プ チ
ドの ア ミノ酸 配列 の 確認 (も しくは 決 定) を は じめ, 薬
る。
(2)
イ オ ン化 過 程 にお い て加 熱 を伴 わ な い ため に, 熱
(3)大 気 圧 下 で イ オ ン化 す るた め に イ オ ン化 効 率 が 高
く, pmol
物 代 謝 物 の 同 定 やLCか
らの 選 択 的 高 感 度 モ ニ タ リン グ
が可 能 で あ る^<10)>。
これ ら の特 徴 は, ISやESイ
に不 安 定 な物 質 の分 析 が可 能 で あ る^<5)>。
(10^<-12>mol)∼fmol(10^<-15>mol)レベ ル の試 料 量
オ ン化 法
が, 生 体 高分 子 や極 性 で か つ 熱 に不 安 定 な物 質 の分 析 に
お い て, FAB
(高速 原 子衝 撃)^<11)>,
SIMS
(分子 二 次 イ オ
ンMS),
(プ ラ ズ マ脱 離)^<12)>,
TSP
(サ ー モ ス プ レ
で の分 析 や 高 感 度 検 出 が 可 能 で あ る。
PD
ー)^<13)>
, LDMS
(4)溶 液 状 態 の試 料 を 直 接 イオ ン化す る こ とが で き る
(レ ーザ ー脱 離) な どの ソフ トイ オ ン化 法
の で, 液 体 ク ロマ トグ ラ フ ィー (LC)^<6,7)>や
キ ャ ピラ リー
で は で きな か った 新 しい可 能 性 を開 く もの と して 注 目を
電 気 泳動
あ び て い る理 由 であ る。
(MS)
Yoshihisa
(CZE)^<8,9)>などの 液 相 分 離 手 段 と 質量 分 析 計
現 在, ISやESイ
の イ ン タ ー フ ェー ス と して 利 用 で き る。
Umeda,
Laboratories,
宝 酒 造 (株) バ イ オ 研 究 所
Seta,
Ohtsu,
Shiga
520-21,
(〒520-21
大 津 市 瀬 田3-4-1)
[Takara
オ ン源 を 四重 極 型 質 量分 析 計 に 装
Shuzo
Co.,
Ltd.,
Biotechnology
Research
Japan]Ionspray Mass Spctrometry for Biopolymers
Key【質
word
量 分 析 】 【イ オ ン ス プ レ ー ・イ オ ン化 法 】 【LC/MS/MS】
【多 価 イオ ン】
1655
I
74
蛋 白 質
備 した 装 置 と して, PE-Sciex
700, VG
Bio-Q
核 酸
API-III, Finnigan
酵 素
TSQ-
な どが 開発 され て い る。四 重 極 型 質 量 分
析 計 は10^<-5>Torrレ ベ ル の 真空 度 で作 動 す る こ とか ら,
大 気 圧 下 で イ オ ン化 す るISやESイ
オ ン源 との適 合 性
No.9
(1991)
た め に 噴霧 の方 法 や 気 化 器 の構 造,
夫 が凝 らされ,
そ れ らの 構 造 に 応 じて イ オ ン ス プ レー
計 (MS/MS)
図2にISイ
さ らに イオ
とよび 分 け られ
て い る。両 者 の最 も大 きな 相 違 点 は, ISで は気 化 ガ ス を
用 い て い るが, ESで
モ ー ドで の操 作 性 がす ぐれ,
電場 の かけ方 に 工
(IS) ま た は エ レ ク トロス プ レー (ES)
が よ く, 装 置 の 小型 化 が 可 能 で あ り, タ ンデ ム質 量分 析
は 気 化 ガス を 用 い な い こ とであ る。
オ ン源 とESイ
オ ン源 の構 造 を示 す 。IS
ン の飛 行 距 離 が短 い た め に 高感 度 で あ るな どの 特 徴 が 多
法^<1,2)>で
は 数mm∼1cmは
い 。 これ らの装 置 は, 生 体 高分 子 を取 り扱 う生 化学, 医
ス ・プ レー ト) に対 して 液 体 噴 霧 ノズ ル に (+/-)3∼6
学, 薬 学, 農 学, 生 命 科 学, 環 境科 学 分 野 の研 究 者 に と
kVの
っ て非 常 に使 いや す い も の とな っ て い る。
を 流 量 約1l/分
筆 者 は, 短 期 間 で は あ るが イ オ ンス プ レー 質量 分 析 計
(ISMS)
Database Center for Life Science Online Service
Vol. 36
を 使 用 して, 蛋 白質, ペ プチ ド, 核 酸, 糖 質 を
なれ た対 極 (イ ンタ ー フ ェ ー
電 圧 をか け, ノ ズ ル外 筒 に気 化 ガス
(圧搾 空 気)
(30∼60psi) 幽で流 す こ とに よ り霧 化 す
る。ISは い わ ゆ る “気 化 ガ ス つ きES” で あ り, これ に よ
り液 体 の 流速 が1∼200μl/分
の範 囲 で イ オ ン化 で き る よ
は じめ さ ま ざ ま な生 体 関連 試 料 を分 析 して き た。 そ の経
うに な っ て い る。 一方, ES^<3,4b)>で
は対 極
験 を 織 り混 ぜ な が ら, イ ナ ンス プ レー質 量会 析 法 を, と
壁 面) に対 して ノ ズ ル に数kVの
くに 蛋 白 質 の分 析 例 を中 心 に して紹 介 した い。 なお, 質
を用 いず に クー ロン力 のみ で液 体 の霧 化 を起 こ させ る。
(チ ャ ンバ ー
電 圧 をか け, 気 化 ガス
量 分 析 に よ る蛋 白質 の一 次 構 造 解 析 につ い て本 誌 にす ぐ
した が っ て, ES法
れ た 総 説^<22)>が
あ るの で あわ せ て参 照 され た い 。
と いわ れ る。 これ ら のほ か に, メ タ ノ ール を 外 筒 に 流 し
の 最適 流速 範 囲 は1∼20μl/分 であ る
て霧 化 す る方 法 もあ る。
.
IS (ES)
イオ ン源 と質 量 分 析 装 置 の概 略
試 料 を含 む 液 体 は, 試 料 注 入 器 (syringe
LCの
ISお
よびESイ
オ ン化 法 の原 理 は,「強 電 場 の も と で
試 料 を含 む溶 液 を 噴 霧す る と帯 電 した 液 滴 が 生 成 し, こ
の液 滴 か ら溶 媒 が 蒸 発す るに した が って 動 力 学 的
(ki
溶 出 液か ら熔融 石英 毛 細 管
100μmな
pump)
(外 径160μm
や
, 内径
ど) な ど に よ り導 入 され る。イ オ ン源 プ ロー ブ
近 辺 に溶 液 を 分 岐 す るス プ リ ッタ ー を 装 備す る とLCの
溶 出 液 (流 速 : 0.5∼1ml/分)
を そ の ま ま質 量 分 析 計 に
netically),エ ネ ル ギ ー的 (energetically) な 臨 界点 に 達
接 続 で き る。 イ オ ン化 を 促進 す る ため に は, 溶 液 に は メ
して イ オ ン が気 相 に放 出 され る」 とい うイ オ ン ・エバ ポ
タ ノー ル や ア セ トニ ト リル を混 合 し, ま た塩 は で き るか
レー シ ョン の現 象^<14)>
(図1)
ぎ り除去 して0.01M以
に 基 づ い て い る。ISやES
を 大 気 圧 下 で行 な うの に は い くつ か 理 由 が あ る が, 1つ
下 にす る の が望 ま しい 。
大 気 圧 下 で生 成 され た試 料 イ オ ン を高 真 空 で作 動 して
に は 減 圧 下 で強 電 場 をか け る と放 電 が起 こ る こ と と, 大
い る 質量 分 析 計 (MS)
気 圧 下 で は熱 伝 導 が よ く液 滴 か らの溶 媒 の気 化 効 率 が 高
ー フ ェー ス が考 案 され て い る。 大 別 して, 大 気 圧 と真 空
い た め であ る。
系 を1枚 の 隔 壁 で 隔離 す る一 段
イオ ン の放 出 を効 率 よ く, また 定 常 的 に起 こ させ るた
め に は, 液 滴 の微 粒 子 化 を図 る こ とが 重 要 であ る。 そ の
図1.
Iribarne-Thomson^<14)>の
(single-stage)
と, 2枚 以上 の 隔壁 か らな り差 動 排 気 す る多 段
ple-stage)
のもの
(multi
の も のが あ る。 イオ ン源 で生 成 した イ オ ンは
液 滴 か ら の イ オ ン放 出 プ 胃セ ス の模 式 図
イ オ ンエ バ ポ レー シ ョ ン作 業 仮 説 に よれ ば, 高 (正) 電 圧 のか か った ノズ ル か ら噴 霧 され た 微 細 水
滴 に は, 正 イ オ ンH^+, MH^+が
過 剰 に 存 在 し,
に イ オ ンが 気 相 に 放 出 され る 。
1656
に 導 入す るた め に, 各 種 イ ン タ
溶 媒 が 蒸 発 す るに つ れ 液 滴 半 径 が 減 少 して 表 面 の 正 電 荷 密 度 が 増 加 し, つ い
Database Center for Life Science Online Service
イオ ンスプ レー質量分析法に よる生体高 分子の分析
図2.
(a)
イ オン ス プ レ ー (IS, a)^<1)>と
エ レ ク トロス プ レ(ES,
b)^<4b)>のイ オ ン源 とイン タ ー フ ェー ス
1 : 熔 融 石 英 毛 細 管, 2 : ス テン レス 細 管 (内 径0.20mm),
3 : 気 化 ガ ス外 筒 (内 径0.8mm),
イ オ ンス プ レー の 対 極 とな る) の 役 目を もつ イン タ ー フ ェ ー ス ・プ レー ト, 5 : 口径100μmの
4 : イ オ ン収 束 レ ンズ
円錐 状 オ リフ ィ ス支 持
板。
(b)
1 : 液 体 試 料 導 入 口, 2 : 注 射 針 (接 地 電 圧), 3 : 円 筒 電 極 (-3,500V),
け た ガ ラス 毛 細 管 (-4,500V,
10 : 四 重 極 質 量 分 析 計 。
隔 壁 に設 け られ た数 十 ∼100μmの
+40V),
6 : ス キ マ ー (-20V),
ピ ンホ ー ル (オ リフ
ィス, ス キ マ ーな ど と よば れ る) を 通 過 して 真 空 系 に 導
4 : 乾 燥 ガス, 5 : 入 口 と出 口に 金 属 電 極 を つ
7 : 静 電 レ ンズ,
8 : 第1段
排 気,
9 : 第2段
排 気,
ポ ン プ で系 外 に排 気 され る 。
Sciex
のAPI-IIIで
は窒素ガスをイ ンターフェース ・
入 され る。 これ ら の構 造 は 排 気 装 置 の能 力 に関 係 して お
プ レー トとオ リフ ィス (口 径 : 100μm)
り, 排 気 速 度 : 1,000l/秒 の オ イル 拡 散 ポ ン プだ と20∼
過 方 向 と逆 方 向 に 流 して お り. (ガ ス カ ーテ ン とよぶ),
25μmの
これ は溶 媒 分 子 の侵 入 を 防 ぐ と と もに ク ラ ス タ ー イ オ ン
細 口が 限 度 で あ るが, 100,000l/秒 の排 気 速 度
を もつ クラ イ オ ポ ン プ であ る と100μmの
細 口 が可 能 で
あ る。口 径 が大 き いほ ど イ オ ン の通 過 量 が増 加 し感 度 が
向 上す る。 クラ イ オ ポ ン プ シ ス テ ム とは, コン プ レ ッサ
ー で液 化 した ヘ リ ウム を真 空 系 内 に設 置 した 円筒 状 の気
体 トラ ップ 内 を循 環 させ て超 低 温 (<20K)
の表 面 をつ
(HM^+[H_2O]_nの
よ うに 溶 媒 分 子 が 付 加 した イ オ ン で ス
ペ ク トル解 析 を 複 雑 に す る) を 分 解 す る効 果 が あ る。
ノズ ル の 先 端 に 高 電 圧
kV,
(正 イオン の と き は+3∼6
負 イ オ ン の とき は-3∼5kV)
+/-600V,
を か け, 対 極 に は
オ リフ ィスに は+/-30∼150Vを
く り, 系 内 に侵 入 した気 体 をそ の低 温 表 面 で凝 縮 させ て
こ と に よ り電 場 が 形 成 され,
トラ ップす る排 気方 式 であ る。 トラ ップ され た 窒素, 酸
極 に 送 り込 ま れ る。 実 際 の 測 定 で は,
素, 二 酸 化 炭 素 は夜 間 の運 転 停 止時 に気 体 に も どされ,
の 間 に イ オ ン通
(orifice voltage ; OR)
かける
イ オン は 収 束 さ れ て 四 重
オ リ フ ィス電 圧
の 適切 な設 定 が 重 要 で, た とえ
1657
75
76
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 36
No.9
(1991)
図3.
タ ンデ ム四 重 極 型 質 量 分 析 計 の概 略 図 (Sciex API-III)
1 : 大 気 圧 イオ ン化 源, 2 : 衝 突 活 性 化 開 裂 部位, 3 : オ リフ ィス, 4 : 超 低 温 真 空 ポ ン プ 円筒,
5 : 第1四
重 極 分析
管, 6 : 第2四 重 極 分 析 管 (衝 突 室), 7 : 第3四 重 極 分 析 管, 8 : イ オン レン ズ, 9 : チ ャ ンネ ル エ レ ク トロ ン ・マ ル
チ プ ラ イ ヤ ー, 10 : 乾 燥 窒 素導 入 口, 11 : イ オ ン加 連 ロ ッ ド, 12 : 衝 突 ガ ス導 入 口。
Database Center for Life Science Online Service
ば 低 分 子 の1価 イ オ ンで はOR=35V,
OR=40∼80V,
ペ プチ ド で は
高分 子 蛋 白 質 ではOR=80∼150Vと
い
った 具 合 で あ る。
ロ マ トグ ラ フ ィ ー を トー タ ル イ オ ン カ ウ ン トで
モ ニ タ ー す る (total ion
counting
的 イ オ ン (複 数 個 選 択 可 能)
質 量分 析 計 は 直 列3連
成 され て い る (図3)。
の 四重 極 (quadrupole)
か ら構
こ の よ うに質 量 分 析 計 を直 列 に
結 合 した 装 置 を タ ン デ ム質 量 分 析 計 (MS/MS)
四 重 極 は 外 径 約1.5cm,
長 さ約20cmの4本
とい う。
の平 行 ロ
ッ ドか ら構 成 され, ラ ジオ 高 周 波 電 圧 (radio frequency
voltage ; RF-V)
か, (2)ク
と直 流 電 位 (U)
され る。 特 定 のVとU値
; TIC)
モ ー ド, (3)目
のみ を狭 い質 量 範 囲 で測 定
も し く は ク ロ マ ト的 に 検 索 す る 選 択 イ オ ン モ ニ タ リ ン グ
(selected
ion
MS/MS分
monitoring
; SIM)
モ ー ドが あ る。
析 モ ー ドで は, (1)特 定 の 親 イ オ ン を 選 択 し
てそ れ を衝 突 開裂
(CID)
させ 生 成 す る娘 イオ ンを ス キ
ャ ン す る ドー タ ー ス キ ャ ン, (2)特 定 の 娘 イ オ ン を 与 え る
を組み合わせて印加
親 イ オ ン を 検 索 す る ペ ア レン トス キ ャ ン, (3)特 定 の 親 イ
が 与 え られ た と き, 相 当す る特
オ ンか ら特 定 の 娘 イオ ンが 生 成す る こ とが 判 明 して い る
定 の イ オ ンの み が通 過 され, 他 の イオ ンは 免 れ て 通過 で
と きの 多 段 選 択 的 分 析
(マ ル チ プ ル ・ リア ク シ ョ ン ・モ
き な い。 こ の た め 四 重極 は “
マ ス フ ィル タ ー ” と も よぼ
ニ タ リ ン グ,
reaction
れ, 通 常1質 量 単 位 (ユ ニ ッ トマ ス) の分 離 を示 す 分 解
(4) CIDに
multiple
よ り特 定 の 中 性 分 子 が 失 わ れ る
ン酸 エ ス テ ル か ら リ ン酸,
能 を もつ 。
2個 の質 量 分 析 計 を 同 時 に使 用す るMS/MSモ
ー ド
; MRM),
(た と え ば リ
分 子 量^<98)>よ う な 親 イ ナ ン を
モ ニ タ ー す る ニ ュ ー ト ラ ル ・ ロ ス ・ス キ ャ ン
で は, 1番 目 のQポ ー ル で親 イ オ ンの分 離 を行 な い, 3
loss scan)
番 目 のQポ ー ル で娘 イ オ ン の分 析 を行 な う。 中央 の2番
る。
目 のQポ ー ル は衝 突 室 と して用 い られ, 高 周波RFの
monitoring
(neutral
な ど を 分 析 の 目的 に あ わ せ て 適 宜 に 選 択 で き
み
が か け られ て イ オ ン をQポ ー ル の中 心 軸 に収 束 させ る。
II.
こ こに アル ゴン, キ セ ノ ンな ど の不 活 性 ガス を導 入 し,
多 価 イ オ ンス ペ ク トル を 用 い た
分子量決定法
局 部 的 に10^<-3>∼10^<-4>Torr
の相 対 的 に “
高圧”な部位を
つ く りイ オ ンを 衝 突 開裂 (CID)
させ る。 衝 突 エ ネ ル ギ
高 分 子 量 物 質 の分 子 量 を 測 定 す る これ まで の 方法 は,
ー は 数十eVか
, い わ ゆ る低 エ ネ ル ギ
質 量 分 析 計 のマ ス レン ジを 高 質 量 域 に 可 能 なか ぎ り拡 大
ら200∼250eVで
ー 衝 突 解離 反 応 を 観 測 す る こ と にな る。 低 エ ネル ギ ー と
し^<15)>分
子 イ オ ン を検 出す る も の であ った 。 も うひ とつ の
高 エ ネ ル ギ ー (1keV以
劇 的 に 有 用 な 方 法 は, 多 価 イオ ンを 生 成す る イオ ン化 法
上) 衝 突 解 離 の是 非 の 論 議 は 別
と して, 得 られ る情報 は 大 き く異 な るの で そ れ ぞ れ の 特
を 用 い る こ とに よ り, 質 量 対 電 荷 比 (m/z)
徴 を理 解 して研 究 目的 に あ っ た 装 置 を 使用 す る こ とが 重
常 の 質 量分 析 計 のマ ス レン ジで 測 定す る こ とで あ り, IS
要 であ る。
やESMSは
四重 極 質 量分 析 計 は操 作 性 にす ぐれ てお り, 種 々 の モ
ー ドで測 定 が で き る。MSモ
1658
ー ドで は(1)通常 の分 析 の ほ
ま さ に こ の方 法 であ る。ISの
を下 げ て 通
正 イオンモ
ー ドで は , 複数 の プ ロ トンが 付 加 した 多 価 の 正 イ オ ン
(M+nH)^<n+>が
お も に 生 成 し, 溶 媒 組 成 に よ っ て は
77
イオ ンス プ レー質量分析法に よる生体高分子 の分析
Na^+, K^+, NH_4^+な ど の小 イオン が 付 加 した クラ ス タ ー
イ オ ンを 生 成す る。 蛋 白質 や ペ プチ ドで は, 酸 性 溶 液
(通常0.1∼5%ギ
酸 を メ タ ノー ル や ア セ トニ ト リル な
どの有 機 溶 媒 と混 合 して用 い る) 中 で, N末 端 ア ミノ基
とLys,
Arg,
Hisな
ど の側 鎖 塩 基 性 官 能 基 が プ ロ トン
受 容 基 とな り, 多 数 の プ ロ トンが 付 加 した 多 価 正 イ オ ン
を生 じ る。 しか し, プ ロ トン の付 加 は塩 基 性 官 能 基 に か
ぎ らず, 中性 糖 や, 塩 基 性 ア ミノ酸 を 含 有 しな い環 状 ペ
プ チ ドな どの 中 性 化 合 物 に お い て も, 極 性 結 合 (polar
bond)
の負 極 に プ ロ トン の付 加 が 起 こ る ら しく, 酸 性 溶
液 か ら で は1価 ∼ 数 価 の正 イオ ン と して 測 定 され る (事
実, 蛋 白質 のす べ て の Lys 残 基 を アセ チ ル 化 して も, 残
りのArg,
His残 基 数 以上 の プ ロ トン が付 加 した 多価 イ
オ ンが 観 測 され る)。 負 イ オ ンモ ー ドで は プ ロ トンが 失
わ れ た 多 価 の負 イ オ ン (M-nH)^<n->が
生 成 す る。酸 性 蛋
Database Center for Life Science Online Service
白 質, オ リゴ ヌ ク レオ チ ド^<16)>,
ガ ン グ リオ シ ド^<17)>,
有機
酸 や 各 種 薬 物 の グル ク ロ ン酸 や 硫酸 抱合 体 な ど負 イオ ン
モ ー ドの 測 定 対
象 試料 は 多 い 。
)これより,n=(m_1-H)/(m_2-m_1)
(3)および,M=n(m_2-H)=(n+1)(m_1-H)
(4)(2)負イオン (プロトン損失)図4.
図4に
ミオ グ ロ ビ ンの正 イ オ ンス ペ ク トル を, 図5に
ミオ グ ロ ビ ンの 多価 イ オ ンマ ス ス ペ ク トル
ミオ グ ロ ビ 著溶 液 (2.1μM)
を4μl/分
の流 速 で7.5秒
間
オ リゴ ヌ ク レオ チ ド (14量 体) の負 イ オ ンス ペ ク トル を
導 入 して得 られ た マ ス ス ペ ク トル 。 試 料 消 費 量 は1pmolに
相 当す る 。 帰 属 した ピ ー クは ミオ グ ロ ビ ン の ペ プ チ ド部 分 に
示 した 。 隣 りあ っ た ピー ク ど う しは1価 ず つ 異 な っ て お
由来 す る。m/z=1,230は
り, 隣 接 した 最 少 限2本 の ピー クの 実 測値m1, m2か
ら
ヘ ムの2量
体 で あ る。
計 算 式 (3) に 従 って 物, m_1, m_2か
ら “raw n_2”が 得 られ る。
こ の 値 は 整 数 値n_2に 近 似 して お り, も し帰 属 を 誤 った ピー
ク な ら容 易 に 見 分 け られ る 。
下 式 に 従 って分 子量 が計 算 で き る。
(1) 正 イオ ン (プ ロ トン付 加)
(M+nH)^<n+>
こ こでM=分
子 量, n=電
(1)
価 数, H=プ
ロ トンの 質 量
数 で あ る。
隣 接 した ピー クは,
図5.
試 料 量200pmolを
量=4260.7,
オ リゴ ヌ ク レオ チ ド (14mer)
の 負 イ オ ン マ ス ス ペ ク トル
用 い た 。 計 算 式 (8) に よ り分 子 量 実 測 値4261.1が
得 られ た 。 モ ノ同位 体 分 子
平 均 分 子 量=4262.8。
1659
78
蛋 白 質
核 酸 酵
素
Vol. 36
No.9
上, 分 子量Mの
(1991)
測 定誤 差⊿Mはm/zの
測 定 誤 差⊿(m/
z) とチ ャー ジnの 積 とな る 。た とえ ば⊿(m/z)=0.1の
測 定誤 差 が あ る とす る と, 電 価n=20の
お い て⊿M=2amuの
⊿
とき, 分 子 量 に
誤 差 を生 む 。
M=d(m/z)×n
(9)
した が っ て, 測 定 に際 して正 確 な質 量 校 正 と ピー ク頂 点
の 帰属 が要 求 され る。 質 量 校 正 は, マ ス レ ンジ全 域 に校
正 用 シグ ナ ル を もつ ポ リプ ロ ピ レン グ リ コー ル (PPG,
+H)=(n+1)(m_1+H) (8)通 常,
蛋 白 質 で は10本
程 度 の ピ ー クか ら な る 多 価 イ
オ ン ス ペ ク トル の シ リ ー ズ
称 す る)
と し て 観 測 さ れ,
が用 い られ る。 ピー ク頂 点 の帰 属 に, ガ ウメ 曲線 の回 帰
の ピ ー クか らN-1個
の
式 を使 用 す れ ば, 精 度 は ミオ グ ロ ビ ンで0.0012%
N本
よ り測 定 精 度 が 向 上 す る 。 当 然,
計 算 結 果 は コン ピ ュ ー
タ で 瞬 時 に は じ き 出 さ れ る 。 得 られ た ミ オ グ ロ ビ ン の
Database Center for Life Science Online Service
16939.4amu)
^<14>N=14.0031
質 量]
モ ノ同 位 体 分 子 量
(monoisotopic
と平 均 分 子 量
(average
16950.5amu)
成 元 素 の 平 均 質 量 か ら計 算 した 分 子 量]
位 体 分 布 中 の 最 も 高 い ピー クの 質量
mass)
[構
の 間 に あ り,
(most
も, 通 常, IS法 で は 日常 的 に, ±1amu程
同
abundant
に 相 当 して い る。
に関 して充 分 な情 報 が 得
セ ラ トウル ミン (Cerato-ulmin)
は植 物 トキ シ ンで,
微 細 気 泡 を安 定 化 させ るた め に栄 養 分 の移 行 を ブ ロ ッ ク
し植 物 を枯 死 させ るペ プチ ドであ る。ISMSに
原理
測 定 に よ り, 主 成 分 分 子量M_0=7618.4±0.3,
図6.
正 規 分 布 回 帰 式 か ら ピー ク頂 点 を 求 め る こ とに よ る正 確 な 分 子 量 決 定 法
ピ ー ク頂 点 付 近 の デ ー タ ポ イ ン トを 汎 用 グ ラ フ ィ ッ クプ ロ グ ラ ムで 計 算 させ る と, 容 易 に ガ ウス
分 布 曲線 に フィ ッ トさ せ る こ とが で きる 。
F(x;H,μ,σ^2)=H/(√<2π>σ)e-^((X-μ)^2)/(2σ^2)
こ こ で μは ピー ク位 置, σは 標 準 偏 差, (H÷√<2π>σ) は ピ ー ク高 で あ る 。
Mは 平 均 分 子 量 で, そ の 計 算 値=16,950.5,
実 測 値=16,950.4±0.2。
1660
よ り質 量
分 析 す る と, 主 成 分 の ほか に, わ ずか に 低 分 子量 の2成
分 が存 在 す る こ とが 認 め られ た (図7)。
多 価 イ オ ン ス ペ グ トル を 用 い る 分 子 量 計 算 で は,
度 の正 確 さ と
精 度 が 得 られ る。 分 子 量 測 定 に これ だ け の 精 度 が あ る
られ る。
ら 計 算 した 分 子 イ オ ン の
mass,
(12
ppm), に 向 上 す る (図6)。 こ の よ うな計 算 を用 い な くて
と, 蛋 白 質 の変 種 (variants)
mass,
[^<12>C=12, ^1H=1.0078, ^<16>O=15.9949,
, ^<32>S=31.9721か
や ポ リエ チ レン グ リ コー ル な ど
と
では
分 子 量 計 算 値 が 得 られ る 。 こ れ ら の 平 均 値 を と る こ と に
測 定 値 は,
平 均 分 子量1Kと2K)
HyperMass
(Sciex
精 密 な分 子量
変種分子
イオ ンスプ レー質量分析法に よる生体高分子の分析 79
量M_1=7531.3±0.1,
れ,
とM_2=7,416.2±0.3と
決定さ
±0.2か
ら, マ イ ナ ー 成 分 は そ れ ぞ れSer
とAsp
(分 子 量115.1)
(分 子 量87.1)
還 元 した の ち に, す べ て のSH基
(-CH_2CONH_2,
が 主 成 分 蛋 白質 か ら 順 次欠 落
し た も の で あ る こ と が 判 明 し た 。 こ の 結 果 は エ ドマン 法
に よ るN末
に 示 した とお りであ る。(1)まず, す べ て のS-S結
SHに
分 子 量 差M_0-M_1=87.1±0.2とM_1-M_2=115.1
端 分 析 の結 果 とも一 致 した。
質 量 数58.06)
合を
をI-CH_2CONH_2
で アル キ ル 化 す る。(2)S-S
結 合 の還 元 処 理 を せ ず に, 遊 離 のSH基
のみ を ア ル キ ル
化 す る。(3)も との蛋 白 質 の分 子 量 と, 上 記2と お りの処
理 を した蛋 白 質 の分 子 量 を 測 定 す る。
この方 法 に よ り, β-ラ ク ト グ ロ ブ リ ン (分 子 量
III.
18,278.0)
シス テ イ ン残 基 数, ジス ル フ ィ ド結
合 数 お よ び 遊 離SH基
の Cys の架 橋 度 を調 べ た 。還 元 体 (△) と天
然 (★) のISMSス
数の決定
ペ ク トル を 測 定 す る と図9に 示 した
よ うに, 測 定値 は0.01%以
酸 化 型 お よび還 元 型 Cys
残 基 は 蛋 白質 構 成 ア ミノ酸
れ だ け で は Cys の数, S-S結
合 数, お よび 遊 離SH基
の 中 で も特 異 な ア ミノ酸 で あ る。酸 化 型 は ジ ス ル フ ィ ド
の数 を 決 定 す るに は 不 充 分 であ る。図10に
(S-S)
ア ル キ ル 化 体 (○), 還 元+ア ル キ ル 化 体 (□) の マ ス ス
結 合 に よ り2個 の Cys 間 で 架橋 す る こ とに よ り
蛋 白 質 の 安 定 化 に寄 与 す る。還 元 型 は そ の遊 離SH基
Database Center for Life Science Online Service
上 の精 度 を もつ が, まだ こ
が
ペ ク トル を 測 定 す る こ とに よ り,
酵 素 の 触 媒 活 性部 位 と して働 い た り (シ ス テ イン ・プ ロ
在 す る こ と, 遊 離 のSH基
テ ア ー ゼ),
す るこ とが 明 らか とな った 。
金 属 との キ レー ト部 位 とな っ た り, あ るい
が1個,
示 す よ うに,
5個 の Cys
残基 が存
S-S架 橋 が2個 存 在
は ジス ル フ ィ ド転 換 酵 素 の活 性 部 位 とな るな ど蛋 白 質 の
生 化 学 機 能 に か か わ っ て い るが, こ の 遊 離 と 架 橋Cys
を 区 別す るの はか な り困 難 で あ る。
しか し, ISMSに
遊 離SH基
よれ ば 全Cys残
LC/MSお
よびLC/MS/MSを
用 いた
蛋 白 質 の ア ミノ酸 配 列 の 決 定
基 数, S-S結 合 数,
数 を迅 速 で簡 便 に 決 定 で き る。実 験 法 は 図8
図7.
IV.
質量分 析に よ り, 遺伝子組換え蛋 白質 の同定や 品質管
正 確 な 分 子 量 測 定 に よる 植 物 トキ シ ン Cerato-ulmin のN末
端 ア ミノ酸 配 列 の決定
1661
80
Database Center for Life Science Online Service
蛋 白 質
図8.
図9.
核 酸
酵 素
Cys, S-S,
Vol. 36
遊 離SHの
(1991)
数 の 決 定 手 順質量数とCys, S-S, SH基数の関係N_<cys>=(M_<r+a>-M_<nat>)/m M_<n
β-ラ ク トグ ロ ブ リンBの 天 然 型 と還 元 型 の マ ス ス ペ ク トル
β-ラ ク トグ ロ ブ リンBは18Kの
蛋 白 質 で, 162個
値 は, 0.01%以
上 の 精 度 を もつ が, ⊿M=3.8±0.8か
1662
No.9
の ア ミ ノ酸 の うち5個 が シ ス テ イ ンで あ る 。 分 子 量 実 測
ら では プ ロ トン4個 分 (2×S-S)
と確 定 で きな い 。β-ラクトグロブリンB (天然型)M_
1
Database Center for Life Science Online Service
イオ ンス プレー質量分析法に よる生体高分子の分析
図10.
(a)
(b)
還 元 と アル キル 化 を組 み 合 わせ る こ とに よるS-S,
SHお
よ び シ ス テ イ ン残 基 数 の 決 定 法
還 元 後, 水 素 の 質 量 数 に 比 べ て 充 分 に 大 きい 質 量 数 を もつ アル キル 化 剤 (-CH_2CONH_2,
ル 化 す る こ とに よ り, シス テ イン 残 基 数 を 決 定 す る。
質 量 数58.06)
で アル キ
N_<cys>=(M_<r+a>-M_<nat>)/58=5.0
アル キ ル 化 の み に よ り遊 離 のSH基
の数を決定する。
N_<SH>=(M_<alk>-M_<nat>)/(58-1)=1.0
(c)
a)とb)を
N_<S-S>
組 み 合 わ せ, シス テ イン 残 基 数 と遊 離 のSH基
=(N_<cys>-N_<SH>)/2=2
数か らS-S数
を 決 定 す る。
理 の試 み が は じめ られ, 蛋 白 質や ペ プ チ ドの一 次構 造 解
CZE
析 に お け る 質 量分 析 計 の 利 用 は 近 年 急 速 に 増 えつ つ あ
を直 接 に質 量 分 析 計 に導 入 して, そ れ ぞ れ の ペ プチ ド断
(capillary zone electrophoresis) で 分 離 し, 溶 出 液
る^<18,19)>。
と くに, ア ミノ酸 の 置 換 や修 飾 を うけ た蛋 白 質
片 の分 子 量 と 溶 出時 間 を 測 定 す る。 つ ぎ に,
の 構造 解 析 に は 質 量分 析法 が す ぐれ て い る。 質 量 分 析 に
HPLCあ
よ る蛋 白 質 の 一 次 構 造 解 析 の これ まで の有 力 な 方 法 に つ
プチ ドの イオン を親 イ オ ンに選 択 してMS/MSモ
い て は, す ぐれ た 総 説^<20)>が
あ る の で参 照 され た い。 こ こ
に よ り娘 イオ ン を連 続 的 に測 定 す る こ とに よ り, そ れ ぞ
で はISイ
れ の ペ プチ ドの ア ミノ酸 配 列 に関 す る情 報 が 得 られ る。
オ ン源 とMS/MSに
よ る新 しい ア ミ ノ酸 配列
の 解析 法 を 紹 介す る。す で に50K程
て, 試 料 量0.1∼1nmolか
度 の蛋 白質 に お い
ら全 分 子 中 の30∼70%に
当す るア ミノ酸 配列 の 情報 を わず か1週
相
間 以 内 の 実験 で
るい はCZE分
細 か い こ と で はあ るが,
2回 目 の
離 で既 知 の時 間 に溶 出す る各 ペ
1回 目のHPLCで
分 取 した 画 分 を用 い てMS/MS測
ー ド
スプ リット
定 す れ ばHPLC分
離
は1回 で す む 。 ト リプ シ ン以 外 の酵 素 を用 い て 同様 の実
験 を 行 な い, 重 複 す る ア ミノ酸 配 列 を糸 口に して 解 析す
得 られ る とい う^<21)>。
まず, 高分 子蛋 白質 を基 質 特 異 性 の高 い トリプ シ シ な
る こ とに よ り, 蛋 白 質 全 体 の ア ミノ酸 配 列 決 定 が 可 能 で
どの エン ド型 蛋 白質 分 解 酵 素 で消 化 し, 分 析 に 容 易 な ペ
あ る。 以 下 に断 片 的 で は あ るが, ISMSに
プ チ ド断片 を 得 る。 酵 素 消 化 混 合 物 をHPLCあ
ク トル を例 示 して 本 法 の有 効 性 を 示 した い。
るいは
よる マ ス ス ペ
1663
82
蛋 白 質
図11.
ヘ モ グ ロ ビン は 分 子量 約64,500で,
Database Center for Life Science Online Service
ル ー プ を もつ 。IS法
核 酸
酵 素
Vol. 36
No.9
ヒ ト ・ヘ モ グ ロ ビ ンの イオ ンス プ レ ー ・マ ス ス ペ ク トル
各2本 ず つ の α鎖 と β鎖 の4個 の サ ブユ ニ ッ トか らな る 。 各 サ ブユ ニ ッ トは1個
のヘ ムグ
で は, 非 共 有 結 合 で 集 合 して い る サ ブ ユ ニ ッ トとヘ ムは 解 離 して, そ れ ぞ れ の マ ス ス ペ ク トル を 与 え る。
図12.
ヒ ト ・ヘ モ グ ロ ビ ンの ト リプ シ ン消 化 物 のLCIMSト
分 離 条 件 : 1mm×10cm
C_8カ ラ ム, 5%ア セ トニ ト リル (0.1%TFA)
の グ ラ ジ エ ン ト溶 出 (流 速50μl/分)。
ヒ トヘ モ グ ロ ビ ンは 分 子 量61,983め
ヘ ム蛋 白 質 で2
ー タ ル イ オ ン ク ロマ トグ ラ ム (TIC)
か ら70%ア
セ トニ ト リル. (0.1%TFA)
る。
2価 イ オ ンを 親 イ オ ン と した 低 エ ネ ル ギ ー
個 の α鎖 と2個 の β鎖 の サ ブユ ニ ッ トか ち な る。ISMS
に よ り, そ れ ぞ れ の分 子 量 が15,126.6と15,865.2で
eV
あ る こ とが わか る (図11)。
この ト リプ シ ン消 化 物 を
ル は, B, Y系
C_8の 逆 相 カ ラム (1mm×10cm)
で 分離 し, LCMSを
測 定 す る と, 図12に
(TIC)
(1991)
Ar),
衝 突 活 性 化 開裂 (CID)
のMS/MSス
(20∼30
ペ クト
列 の フ ラ グ メ ン トイ オ ン (B_<1-n>
: N末 端
側 か ら の ア ミ ド結 合 とY_<1-n>: C末 端 側 か ら の ア ミ ド結
示 され る全 イオ ン クロ マ トグ ラ ム
が 得 られ る。全 域 にお いて 質 量 分 析 され てお り,
合 が 切 断 され た フ ラ グ メ ン ト) が 優 先 的 に 生 じ, 解 析 が
非 常 に容 易 であ る (図15)。
また 荷 電 部 位 が 両 端 にあ る
マ ス スペ ク トル か ら各 ピー ク (ペプ チ ド断 片) の分 子 量
た め に双 方 の フ ラ グ メ ン トが 娘 イ オ ン と して検 出 され,
が も とめ られ る (図13)。
また そ れ らが1価 であ る こ とも解 析 を容 易 にす る6さ
こ こ で トリプ シ ン は Arg
と
LysめC末
端 側 ア ミ ド結 合 を開 裂 す る の で, 各 ペ プチ ド
断 片 は2通
りの例 外 を除 い て両 端 に塩 基 性 官 能 基 を有 し
た2価
の イ オ ン どな る (図14)。
チ ド (1価)
9664
とHis残
例 外 とは, C末 端 ペ プ
基 を 含 む ペ プ チ ド (3価)
であ
に親 イ オ ンが2価 イ オ ンで あ る こ とがCID過
て有 利 で あ る点 は, イ オ ンの運 動 エ ネ ル ギー が1価
べ て2倍 で あ るた め 衝 突 エ ネ ル ギー が2倍
ら
程 にお い
に比
に なる こ と
と, 2個 の プ ロ トン化 部 位 の 電 気 的反 発 で 内部 で 歪 が生
83
Database Center for Life Science Online Service
イオンスプ レー質量 分析法に よる生体高 分子の分析
図13.
ヒ ト ・ヘ モ グ ロ ビン の ト リプ シン 消 化 物 のISMSス
ペ ク トル
図12 の ピ ー クNo.111,
158, 178の マ ス ス ペ ク トル よ り各 ペ プチ ド断 片 の分 子量 が それ ぞれ
1314, 1070, 2058で あ る と決 定 され る。
じた不 安 定 イ オ ン であ る ため 断 片 化 を起 こ しや す い こ と
で あ ろ う。 本 稿 で は 誌 面 の都 合 で割 愛 した が, ISMSは
で あ る。 この事 実 の発 見 は比 較 的 最 近 の こ とであ り, こ
熱 不 安 定 物 質 や 極 性 化 合 物 の分 析 に お い て, HPLCと
の 手法 を用 い て 蛋 白 質 の 修飾 箇所 や 組 換 え蛋 白 質 の構 造
結す る と と くに 威 力 を 発 揮 す る。 医 薬 品分 野 に お い て は,
解 析 な ど, ま さに ピン ポ イン トの詳 細 な研 究 が 可 能 とな
薬物 とそ の 代 謝 物 質, 抱 合 物 質 の研 究 や 品質 管 理 に ル ー
連
チン に 使 わ れ は じめ た 。 臨 床 診 断 に お い て も, GCMS
った 。
で分 析 で き な か っ た 項 目 に 対 して, LCMSに
期 待 がか
か っ て い る。 化 学 工 業 分 野 で は有 機 金 属化 合 物, 表 面 活
お わ りに
ISやESの
イオ ン源 を 装 着 したMS/MS
性 剤, 高 分 子 化 合 物 な ど広 い応 用 が期 待 され る。 環 境 問
を用 い た生 体 高分 子 の分 析 は, す で に欧 米 で は驚 異 的 な
題 で は, 発 癌 性 ジ ア ゾ系 色 素, 農 薬, 有 機 金 属 化 合 物 の
速 度 で普 及 して い る。 装 置 的 に は, 質 量 範 囲 に上 限 の な
分 析 な ど適 用 性 が 広 く, イオ ンス プ レー質 量 分 析 法 の今
い飛 行 時 間 型 (time of flight; TOF)
後 の 広 い応 用 を期 待 した い 。
分 析計 (LDMS)
レーザ ー脱 離 質 量
が 一 方 では 発 展 して きた が, これ らは
競 合す る もの で は な く, 相 補 的 に用 い られ る よ うに な る
本稿 に掲載 したマススペ ク トルは Sciex 社 のデマタ ・フ ァイ
ルか ら引用 した。
1665
84
蛋 白 質
図14.
核 酸
酵 素
Vol. 36
トリプ シン 消 化 物 のペ プチ ド断 片 は Arg
含 有 す る の で常 に2価 イ オ ンを 生 成 す る 。
イ オ ン, (2) His
(1991)
また は Lys
残 基 と ア ミノ末 端 を
残 基 を含 む フ ラ グ メ ン ト=3価
お よ
Database Center for Life Science Online Service
例 外 : (1)C末 端 フラ グ メ ン ト=1価
び2価 イ オ ン。
No.9
図15.
トリプ ジン 消 化 物 (T-14
: 図12の
ピー クNo.100)
のMS/MSス
ペ ク トル
2価 イ オン (m/z=575)
を 親 イ オ ン と して 選 択 し, 衝 突 ガ ス : ア ル ゴ ン, 衝 突 エ ネ ル ギ ー : 30eVで 測 定 。YとB系
の 断 片 化 が 優 先 して お り, 各 フ ヲ グ メ ン トピ ー ク の質 量 差 を 読 タ 取 る こ とに よ り, ア ミノ酸 配 列 を 決 定 で き る。
4b)
文
1)
2)
3)
4)
1666
献
Bruins, A. P., Covey, T. R., Henion, J. D.:
Anal. Chem., 59, 2642-2646 (1987)
Covey, T. R., Bonner,, R. F., Shusan, B. I., He
nion,J. D.: Rapid Commun. Mass Spectrum,
2, 249-256 (1988)
Whitehouse, C. M., Dreyer, R. N., Yamashita,
M., Fenn, J. D.: Anal.
Chem., 57, 675-679
(1985)
Whitehouse, C. M., Levin, F., Meng, C. K.,
Fenn, J. D.: Proc. 34th ASMS, 507, Cincin
nati,Ohio
(1986)
Fenn,
S.
F.,
J. B.,
Mann,
Whitehouse,
(1989) •uAnal.
5)
Thomson,
6)
Covey,
8)
9)
10)
B.
A.,
R.,
58,
Detector
for
E.
J.
D.,
R.
Anal.
Chem.,
Henion,
tryin
D.,
J. D.,
John
64-71
(1982)
Dziedzic,
Henion,
P. J.:
J. D.:
Anal.
T.
R.,
R.,
and
Muck,
458,
Covey,
J. D.:
C.
1948-1952
T.
(ed.
Sons
W.,
R.:
Research
J.,
(1986)
Henion,
313-321
Barinaga,
60,
Henion,
Chromatography
Wiley
T.
Biomedical
Wong,
246,
2219-2224
J. V.,
D.,
Liquid
Covey,
C. K.,
(1986)
Chromatogr.,
Smith,
54,
Covey,
E. S.),
D.:
E.
2453-2460
J. B.,
Lee,
Science,
Iribarne,
Lee,
Crowther,
Young,
Meng,
M.:
Chem.,
T.
Chem.,
7)
M.,
C.
列
J.
(1988)
Udseth,
H.
(1988)
Mass
Spectrome
(ed.
Gaskell,
R.:
85
イオンス プレー質量分析法に よる生体高分子 の分析
s (1986)
11) Barber, M., Borodoli, R. S., Sedgwick, R. D,Tyler, A. N.: J. Chem. Soc. Chem. Commun.,325 (1981)
ence(eds. Burlingame, A. L., Castagnoli, N.Jr.), p.379, Elsevier Sci. Pub. (1985)
18)Fukuhara, K., Tsuji, T., Toi, K., Takao, T.,Shimonishi, Y.: J. Biol. Chem
12) Torgerson, D. F., Skowroski, R. P., Macfarlane,R. D.: Biochem. Biophys. Res. Commun.,60, 616-621 (1974)
19)
Takao, T., Kobayashi, M., Nishimura, O., Shi
monishi,Y.:
J. Biol. Chem., 262, 3541-3547
13) Blakley, C. R., Carmody, J. J., Vestal, M. I.: J.Am. Chem. Soc., 102, 5931-5933
(1987) (1980)
20)
14) Iribarne, J. V., Thomson, B. A.: J. Chem.Phys., 64, 2287 (1976)
15)
松田
久 : 現 代 化 学 増 刊15
“
質量分析法 の 新展
開 ” (土 屋 正 彦 ・大 橋 守 ・上 野 民 夫 編) ,pp. 5268, 東 京 化 学 同 人 (1988)
16)
“
質量分析法 の 新展
開 ”(土 屋 正 彦 ・大 橋 守 ・上 野 民 夫 編), pp. 137151, 東 京 化 学 同人 (1988)
21)
Hunt,
D.
Yates,
J. R.
A.
L.:
in
F.,
Shabanowitz,
III,
Health
22) ‰º•¼•NŽk : –{Ž•,
P.
Proceedings
of
tionalSymposium
the
on
and
J.,
Martino,
Life
36,
the
Mass
Griffin,
A.,
R.,
Second
Interna
Spectrometry
Sciences, ˆó•ü’†
1509-1520
P.
McCormack,
in
(1991)
(1991)
Database Center for Life Science Online Service
17)
Grofjahn, L., Frank, R., Blocker, H.: Nucleic
Acids Res., 10, 4671-4678 (1982)
Iwamori, M., Ohashi, Y., Nagai, Y.: Mass
Spectrometry
in the Health and Life Sci
下 西康 嗣 : 現 代 化 学 増 刊15
1667
Fly UP