Comments
Description
Transcript
日本ワイン - 農林水産省
農林水産省関東農政局 写真提供:井筒ワイナリー(長野県塩尻市) 「日本ワイン」とは? =国産ワインのうち、原料として使用した果実の全部が国 産ブドウのみであるワイン (日本ワイナリー協会) ワイン出荷量に占める国産ワインの地位 国産ワインに占める国産原料の割合 国産ワイン 30.1% 輸入ワイン 69.9% 国産原料 24.2% 輸入原料 《濃縮果汁》 75.8% 資料:国税庁「果実酒製造業の概況(平成25年度調査分) 1 「日本ワイン」は、関東甲信地域の地域産業 ○ 全国200超のワイナリーの過半が関東甲信地域に集中している。 ○ 近年、新規ワイナリーの開業件数が増加している。 果実酒製造場の新規免許付与件数(全国) 18 16 14 12 10 8 40(数) 30 20 10 5 6 4 2 0 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 資料:国税庁統計年報書 資料:新潮社『SINRA』2015年3月号 2 「日本ワイン」の消費拡大に向けた取組 ○ 各県では、「日本ワイン」の消費拡大に向けた取組が盛んに行われている。 3 なぜ今、「日本ワイン」か? ~明治維新にさかのぼる「日本ワイン」~ わしが為めには苦労はせぬが 恋し日本に苦労する タッタ一つの糸柱 それに並んで茶の柱 あぶない日本のその家に 四千万のこの民が 住ゐするのを知らないか 前田正名 *前田正名(1850-1921) 薩摩国出身。農商務省の官僚。殖産興業を説いた 『興業意見』を記す。1888年山梨県知事となり、甲州 ぶどうの普及に努める。 4 関東農業第1の波「養蚕業」 ○ 関東甲信地域の生糸は、「シルクロード」を通って、横浜から輸出された。 絹関係遺産 富岡製糸場 絹関係資料館 片倉シルク記念館 シルクロード 5 t 60000 明.22(1889) 明.26(1893) 明.30(1897) 明.34(1901) 明.38(1905) 明.42(1909) 大.2(1913) 大.6(1917) 大.10(1921) 大.14(1925) 昭.4(1929) 昭.8(1933) 昭.12(1937) 昭.16(1941) 昭.20(1945) 昭.24(1949) 昭.28(1953) 昭.32(1957) 昭.36(1961) 昭.40(1965) 昭.44(1969) 昭.48(1973) 昭.52(1977) 昭.56(1981) 昭.60(1985) 平.元(1989) 平.5(1993) 平.9(1997) 平.13(2001) 養蚕から他産業への転換 ○ 世界遺産・富岡製糸場の運営企業であった片倉工業(株)の熊谷工場は、同社最後の製糸工場として平成 6年まで操業。 ○ 高崎線、八高線など「シルクロード」沿いに立地していた製糸工場跡地は、我が国経済のサービス産業化 の中で、ショッピングセンターなどに転用。 収繭量の推移(関東農政局管内) ○ 旧片倉製糸熊谷工場(現イオン) 50000 40000 30000 20000 ○ さいたま新都心駅前ショッピングセンター 10000 0 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 山梨県 長野県 静岡県 資料:「繭生産統計」 資料:片倉工業(株)HPより 6 関東農業第2の波=「高付加価値・都市近郊農業」 ○ 桑園跡地では、果樹や野菜など都市近郊農業が展開。 ブ ル ー ベ リ ー 畑 こ ん に ゃ く 畑 り ん ご 畑 ぶ ど う 畑 7 蚕が育んだ関東農業 ○ 我が国の農地面積は長期的に減少しているが、桑園が卓越していた関東甲信地域では、桑園を除いた畑 地面積は安定的に推移。 ○ これは、都市化により農地の転用が進む一方で、桑園を他作物に転換することで、農地面積が維持されて きたことを意味する。 畑面積の推移(群馬県) ha 90000 80000 70000 60000 50000 40000 30000 20000 10000 0 桑園 資料:耕地及び作付面積統計、繭生産統計 注 : 平成17年から桑園は調査項目から除外された。 平.23(2011) 平.21(2009) 平.19(2007) 平.17(2005) 平.15(2003) 平.13(2001) 平.11(1999) 平.9(1997) 平.7(1995) 平.5(1993) 平.3(1991) 平.元(1989) 昭.62(1987) 昭.60(1985) 昭.58(1983) 昭.56(1981) 昭.54(1979) 昭.52(1977) 昭.50(1975) 昭.48(1973) 昭.46(1971) 昭.44(1969) 昭.42(1967) 昭.40(1965) 桑園以外 8 未利用の桑園跡地の状況 ○ 養蚕の衰退に伴い作付けされなくなった桑園跡地では、畑作物の作付け等によって引き続き営農を試みる 農家も多かったが、連作障害や農産物価格の低迷によって、遊休荒廃地化してしまった桑園跡地も多数存在 する。 関東農政局管内における荒廃農地の状況 (単位:ha) 80,000 4,237 70,000 60,000 50,000 3,746 59,894 18,942 60,750 19,254 3,729 62,066 3,237 62,368 63,569 18,956 18,563 19,735 4,500 4,000 64,937 3,500 22,435 3,000 2,500 40,000 2,000 1,799 30,000 1,500 20,000 40,952 41,496 43,112 43,805 43,834 42,502 10,000 1,000 500 0 0 H20 H21 再生利用が困難と 見込まれる荒廃農地 資料:耕作放棄地再生・利用事例集(平成24年3月 関東農政局)より H22 H23 再生利用が可能な 荒廃農地 H24 H25 再生利用面積 9 「日本ワイン」=関東農業第3の波 「私は、妻とともに農業をやろうと眺めの 良い土地を探しまわり、約2年をかけての いまの場所にたどり着きました。 そこは、かつて里に住む人たちが、カイ コの食べる桑の葉を採りに来る桑山でし た。 養蚕をやる人がいなくなってからはなか ば放置されたまま荒れていたので、その農 地の一部を譲ってもらい、草を刈り、石を 拾い、粘土を砕き、畑にしました。いまワ イナリーが建っているのはそのとき最初に 開墾した畑です。」 写真:長野県高山村 玉村豊男『里山ビジネス』より 10 日本ワインの出荷量の推移 ○ 国内の酒類の出荷量は平成8年をピークに減少が続いているが、ワインについては輸入、国内製造ともに 増加が続いており、大きな増加が見られた平成10年に匹敵する水準。 ○ 国内製造分のうち、国産ぶどうのみを使用した「日本ワイン」は、4分の1程度の2.6万klと推定されている。 国内のワイン出荷量の推移 千kl 700 10,160 10,071 10,095 千kl 10,500 10,104 10,000 10,166 600 9,672 9,792 10,006 10,016 10,015 9,515 9,567 9,324 500 9,549 9,923 9,362 9,266 9,554 9,500 9,093 9,001 8,963 8,788 369 ワイン輸入 278 268 223 酒類全体 (右目盛り) 67 65 146 158 119 112 116 57 52 8,500 302 269 259 270 248 241 257 246 250 236 238 8,000 274 245 200 100 365 344 ワイン国内製造 138 133 9,000 8,936 8,863 400 300 9,040 58 82 83 158 176 149 165 158 165 186 159 161 158 155 157 163 167 255 7,500 207 7,000 92 71 68 62 60 58 64 75 84 1 2 3 4 5 6 7 8 119 146 6,500 120 103 101 105 89 11 15 80 99 81 81 83 83 88 16 17 18 19 20 21 22 95 99 110 23 24 25 0 6,000 資料:国税庁統計年報書 9 10 12 13 14 11 日本人のワイン消費量の推移 ○ 日本人のワイン消費量は、フランス人の20分の1、アメリカ人の4分の1にとどまり、今後、拡大の余地が ある。 主要国の一人当たりワイン消費量の推移 Lit 70 60 フランス 50 40 30 オーストラリア 20 イギリス 10 アメリカ 日本 0 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 資料:OIV(国際ブドウ・ワイン機構) 注 :1999年までと2000年以降のデータは連続しない。 12 日本ワインの出荷量の将来予測 ○ 過去10年の国内のワイン出荷量の伸びから推計すると、今後10年間で、日本人の一人当たりワイン消費 量は、1.5倍の3.1リットルに増加。「日本ワイン」の出荷量は2.7万klから4.9万klに増加。 日本ワインの出荷量の将来予測 千KL 60.0 49.2 10年間で1.8倍 50.0 46.5 43.9 41.4 39.0 40.0 36.7 29.9 30.0 24.2 21.8 20.0 24.8 24.2 25.7 26.1 25.2 26.9 28.5 30.4 32.4 34.5 東京オリンピック 19.8 10.0 0.0 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 資料:国税庁統計年報書を基に、関東農政局推計。 注 :平成16年から25年までの各年の出荷量の平均変化率が今後も継続し、国産ワインに占める日本 ワインのシェア(H25=24.2%)が毎年1%ずつ上昇するものと仮定。 年 13 醸造用ぶどうの栽培面積の将来予測 ○ 日本ワインの出荷量が1.8倍に増加すると、醸造用ぶどうの栽培面積は1,500ha増加するものと予測。 ○ 醸造用ぶどうの生産拡大により、生食用ぶどうの生産減少を補うことが可能となり、耕作放棄地化の抑止 が期待できる。 国内の醸造用ぶどうの生産面積の将来予測 ha 18000 16000 醸造用ぶどう 14000 12000 醸造用ぶどうの生産拡大 により栽培面積が維持 10000 生食用ぶどう 8000 生食用ぶどうの生産 面積は10%減 6000 4000 2000 0 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 年 資料:農林水産省「作況調査」を基に、関東農政局推計。 注 :醸造用ぶどうの生産面積は日本ワインの出荷量の伸びから推計。生食用ぶどうの生産面積は 過去10年の栽培面積の平均減少率から推計。 14 醸造用ぶどう生産の課題と対策 ○ 関東甲信地域では、既存農家やワイナリーによる醸造用ぶどうへの参入の動きが活発化している。 ○ しかしながら、果樹は収穫まで数年を要すること、醸造用ぶどうは生食用ぶどうに比べ収益性が低いこと、 水田に比べ農地の集積が難しいことなど、振興を図っていく上での課題がある。 ○ このため、行政による支援策を上手に活用することが必要。 長所 圃場管理コストがかからない ・ 栽培可能面積2~3倍 ① 規模拡大と農地の集積・集約化を図る ② 他作物との複合経営を図る 短所 単位面積当たり収入が少ない ・ 200~300円/kg ・ 生食用ぶどうの数分の1 ③ ワイン製造までの一貫経営を行う 農地中間管理機構により集積した醸造 用ぶどうの圃場(長野県塩尻市) 《ぶどう園の集積・集約化の事例》 長野県塩尻市では、長野県農業開発公社(農地中間管理機構)を通じ、9人 の農業者がばらばらに所有していた14筆の農地を地域のワイナリーに一括 して賃貸することで、醸造用ぶどうを効率的に栽培(右図)。 《耕作放棄地の再生によるぶどう生産の事例》 大手ワインメーカーでは、長野県上田市で農業生産法人を設立、計20haの 農地を借り受け、農山漁村活性化プロジェクト支援交付金等を活用して、農地 の復旧、垣根の整備、獣害防止柵の設置等を行い、醸造用ぶどうを栽培。 15 国による主な支援策(醸造用ぶどうの生産関係①) 質問 活用可能な補助金等 支援の内容 醸造専用品種に 改植したい 【果樹経営支援対策事業、果樹未収益期間支援 事業】 改植により優良な品目・品種への転換に取り 組む担い手を支援します。 優良品目・品種への改植に取り組む担 い手に対し、改植費用や改植後未収益 期間の果樹育成経費等の支援を行い ます。 生産部園 芸特産課 ばらばらの農地 を集約したい 【機構集積協力金交付事業】 各都県に設置された農地中間管理機構を通じ て、ばらばらに耕作されている農地の担い手へ の集積・集約化を進めます。 機構にまとまった農地を貸し付けた地 域や貸付けに伴い経営転換・リタイアす る農業者等に対して支援を行います。 経営・事業 支援部農 地政策推 進課 営農のための資 金を借りたい 【スーパーL資金等】* 営農に必要な資金の貸付けや利子補給等を行 います。醸造専用品種導入に利用可能な資金も あります。スーパーL資金については、農地購入 にも利用可能です。 日本政策金融公庫や農協等の民間金 融機関が低利子融資を行っています (スーパーL資金の貸付対象者は認定 農業者)。 経営・事業 支援部経 営支援課 先進農家・法人 でぶどう栽培の 研修を受けたい 【青年就農給付金】 青年就農給付金(準備型)が活用できます。 原則として45歳未満で就農する者が、 県農業大学校等の農業経営者育成教 育機関、先進農家・農業法人で研修を 受ける場合、研修期間中について、最 長2年間、年150万円を給付します。 経営・事業 支援部経 営支援課 醸造用ぶどうの 栽培を始めたい 【青年等就農資金】* 機械・施設の導入のための無利子資金を借りら れます。 日本政策金融公庫(農協等の民間金融 機関による転貸可能)が無利子融資を 行っています(貸付対象者は認定新規 就農者)。 経営・事業 支援部経 営支援課 * 各種資金のご利用にあたっては、最寄りの窓口機関(公庫・農協・銀行等)にご相談ください。 (最寄りの窓口機関がご不明な場合は、都道府県の農業制度資金担当課又は普及指導センターに照会してください。) 問合せ先 16 国による主な支援策(醸造用ぶどうの生産関係②) 質問 活用可能な補助金等 支援の内容 問合せ先 耕作放棄地にぶ どうを植えたい 【耕作放棄地再生利用緊急対策交付金】 耕作放棄地を引き受けて作物生産を再開する 農業者等に支援を行います。 障害物除去、深耕、整地、土壌改良な どの再生作業に対し支援します。また、 再生作業に付帯するぶどう棚の整備や 農道、区画整理等を支援します。 整備部農 地整備課 ぶどう園の圃場 整備をしたい 【農業農村整備事業】 農業の競争力の強化のための農地の大区画化 を行います。 国、県又は市町村等が行う土地改良 事業の一環として、ぶどう園の圃場整 備が可能です。 整備部設 計課 鳥獣被害の防除 をしたい 【鳥獣被害防止総合対策交付金】 シカ、イノシシ、サル等の被害防除を行います。 鳥獣の進入防止柵の整備や捕獲のた めの人材の育成等を支援します。 生産部生 産技術環 境課 自然災害が不安 だ 【農業災害補償制度】 保険方式により、台風や冷害によって受けた損 失を補填します。 醸造用ぶどうについては果樹共済への 加入が可能です。農業者の掛金の約2 分の1を国が負担します。 経営局保 険課 * このほか、各都県や市町村が実施している独自の事業がありますので、詳しくは都県果樹振興担当課にお問い合わせください。 17 国による主な支援策(ワイン醸造関係①) 質問 活用可能な補助金等 支援の内容 問合せ先 自社で醸造用ぶ どうの栽培を行い たい 農地を取得するためには、農家であるか、農 業生産法人となることが必要です(貸借であれ ば農業生産法人以外の法人も可)。 農家や農業生産法人となるためには、農 業従事者、従事日数、最低面積等の要件 を満たし、市町村農業委員会の許可を得 ることが必要です(農業生産法人以外の法 人が農地を借りる場合、契約に解除条件 が付されていること等が必要)。 経営・事業 支援部農 地政策推 進課 ワイナリー建設に 向けたアドバイス を受けたい 【6次産業化ネットワーク活動推進交付金】 6次産業化のための計画作成等について、専 門家が支援します。 農林漁業者等からの個別相談などに対 して、6次産業化プランナーが対応します。 経営・事業 支援部事 業戦略課 ワイナリーを建設 したい 【6次産業化ネットワーク活動整備交付金】 六次産業化・地産地消法の認定農業者等が、 多様な事業者とネットワークを構築し、制度資金 等の融資を活用して行う施設等の整備を支援し ます。 6次産業化の取組に必要な加工・販売施 設等の整備に対し助成します。 経営・事業 支援部事 業戦略課 【農林漁業成長産業化ファンド】 農林漁業成長産業化支援機構が資本の提供と 経営支援を一体的に行います。 農林漁業者が主体となって、流通・加工業 者等と連携する取組に対し、機構が出資し ます。 経営・事業 支援部事 業戦略課 【強い農業づくり交付金】 生産から流通までの強い農業づくりに必要な 共同利用施設の整備を支援します。 農業者が共同で利用する農産物処理加工 施設の整備に対し助成します。 生産部園 芸特産課 【農山漁村活性化プロジェクト支援交付金】 地方公共団体が農山漁村の活性化を図る計 画を作成し、その実現に必要な取組を支援しま す。 直売所、農家レストラン、加工施設などの 施設整備に対し助成します。 農村計画 部農村振 興課 18 国による主な支援策(ワイン醸造関係②) 質問 活用可能な補助金等 支援の内容 問合せ先 ぶどう栽培を行う 従業員を雇用し たい 【農の雇用事業】 農業法人への雇用就農を促進するため、法人 が行う実践研修に対し支援します。 法人に就職した40歳以下の者に対する 研修経費として年間最大120万円(最長2 年間)を法人に助成します。 経営・事業 支援部経 営支援課 ワインを輸出した い 【輸出に取り組む事業者向け対策事業のうち地 域活性化モデルの取組】 国別・品目別輸出戦略に掲げる品目のうち地 域の特産品について、民間団体が行う輸出コス トを下げる等の新たな工夫を加えた新興市場向 け海外販売促進活動に対し支援します。 民間団体が行う販売促進活動に係る経 費について、補助(1/2以内)します。 経営・事業 支援部事 業戦略課 【輸出総合サポートプロジェクト】 ジェトロを通じて、輸出に取り組む事業者に対 し、継続的かつ一貫したビジネスサポートを提 供します。 海外見本市への出展、国内及び海外商 談会の開催等による支援、輸出セミナーの 開催、輸出プロモータ-によるアドバイス 等に対し助成します。 * このほか、各都県や市町村が実施している独自の事業がありますので、詳しくは都県果樹振興担当課にお問い合わせください。 19