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感温塗料を用いた形状記憶合金表面の温度分布計測 210
210 . 感温塗料を用いた形状記憶合金表面の温度分布計測 Temperature Measurement on Shape Memory Alloy by Means of Temperature-Sensitive Paint ○学 加藤 優太(愛工大院) 学 吉村 淳(愛工大) 学 小倉 弘也(愛工大) 学 中村 矢島 篤(愛工大) 正 武田 亘平(愛工大)正 江上 泰広(愛工大) 信夫(愛工大) Yuta KATO, Jun YOSHIMURA, Hiroya OGURA, Nobuo NAKAMURA, Atsushi YAJIMA, Kohei TAKEDA, Yasuhiro EGAMI Aichi Institute of Technology, 1247 Yachigusa Yakusa-cho, Toyota, Aichi 470-0392, Japan Key Words: Temperature-Sensitive Paint, Shape memory alloy, Image processing 1.緒言 形状記憶合金は現在機械工学分野から医療分野まで広く 応用されている.形状記憶合金を実用するには,その変態特 性を理解することは重要であり,変態により生じる変態帯の 進展挙動を解明することは必要不可欠となる(1).形状記憶合 金は変形時にマルテンサイト変態(Fig.1(b))を起こし,その変 態境界で温度上昇が発生する(2).これまで形状記憶合金変形 時の表面の温度分布の変化は,赤外線カメラを用いて計測さ れていた.しかし,赤外線カメラは空間分解能が低く,さら に壁面などでの赤外線の反射の影響などがあり温度を精度 良く測定するのは容易ではない.また赤外線カメラで取得し た画像では,温度上昇の境界が Fig.1(c)の様に不鮮明であり, 可視データも別途必要となり,比較も簡単ではない.そこで 今回感温塗料(TSP)を形状記憶合金の温度変化測定に適用し た.TSP は蛍光特性を持つ色素を測定基板表面上に塗布する ことで,温度変化による発光強度の変化を計測できるもので ある.光学的に高精度・高空間分解能な二次元温度分布計測 法が可能で(3),近年多くの研究がなされている.TSP を用い ることで,形状記憶合金上の温度分布をこれまでより高精度 かつ詳細に取得することを目的とした. 800 Stress [MPa] dԑ/dt = 2×10-4s-1 , N=20 600 400 1 200 4 6 7 loading unloading 5 6 2 3 4 7 2 3 5 8 1 0 0 2 4 6 8 Strain ε [%] 10 loading (c) Shape memory alloy taken photo by infrared camera Fig.1 Tensile test of Shape memory alloy 2.実験方法 2.1 TSP を塗布した形状記憶合金サンプルの作製方法 本研究では,形状記憶合金サンプルの変形に伴う励起光の 照度変化や TSP 色素の分布変化に対応するために,TSP 色素 とともに参照色素を混合することにより補正を行った.本実 験では,形状記憶合金サンプルとして常温で超弾性を示す Ti-50.95at%Ni 形状記憶合金を使用した.この TiNi 形状記憶 合金は他の形状記憶合金に比べ,疲労特性,変形特性,耐腐 食性に優れている(2).そのため,航空宇宙,産業,医療分野 で多く使用されている.TSP 色素として EuTTA (Europium(III) thenoyl trifluoroacetonate-trihydrate),参照色素として BAM-G 蛍光体,ポリマに PEMA(Poly(ethyl methacrylate)),溶媒には トルエンを用いた TSP 溶液を作製してスプレーで TiNi 形状 記憶合金サンプルに塗布した.また,使用した TSP 色素と参 照色素の発光スペクトルとカメラ側に使用した光学フィル タの透過波長を Fig.2 に示す. 1.2 500 30nm (a) Stress-strain curve 610 40nm 1 BAM-G 0.8 I/Imax martensite transformation field loading unloading unloading EuTTA 0.6 0.4 0.2 0 450 500 550 600 650 Wavelength[nm] Fig.2 Emission Spectra of EuTTA and BAM-G (b) Shape memory alloy taken photo by microscope 日本機械学会東海支部第 65 期総会・講演会講演論文集(’16. 3. 17-18) No.163-1 700 3.実験結果及び考察 実験時の応力ひずみ曲線を Fig.3 に TSP のみの画像を解析 した結果を Fig.4 に示す.Fig.1(c)と Fig.4 の赤外線カメラと TSP での温度計測結果を比較すると,Fig.4 の方が変態境界 で温度変化が鮮明なのがわかる.しかし,TSP のみの解析で は緒論で述べたように形状記憶合金サンプルの変形に伴う 励起光の照度変化や TSP 色素の分布変化に対応できていな く,正確な温度計測が出来ていないと考えられる. そこで,今回実験方法で述べたように,TSP 溶液に参照色 素として BAM-G を混合することにより,前項で述べた励起 光の照度変化や TSP 色素の分布変化を補正した.補正した解 析結果を Fig.5 に示す.Fig.4 と Fig.5 を比較すると Fig.5 の方 の温度分布を詳細に見ることができた.特に loading 時の ε=4%,ε=5%を見ると形状記憶合金サンプル上部の温度分布 が Fig.5 の方がより詳細に見ることができている.これは, 参照色素を混合したことにより励起光の照度変化や材料の 変形による TSP 色素の分布変化を補正できたことによって, より詳細に温度分布を見ることができたと考えられる.しか し,TSP のみの画像処理結果に比べ参照色素を混合した画像 処理結果の方の画像が粗くなっている.これは,参照色素の 画像が Fig.6 に示すように一様に発光していないため処理後 のデータのノイズ成分が大きくなってしまったためだと考 えられる. 4.結言 今回,形状記憶合金の温度分布計測として従来の赤外線カ メラを使用した方法ではなく,TSP を使用した方法での温度 分布計測を行なった. 赤外線カメラの計測結果と比べて TSP を用いた計測画像 の方が温度分布を鮮明に見ることができた.また,TSP 溶液 に参照色素を混合することによって,励起光の照度変化や TSP 色素の分布変化を補正することができた.それにより, 温度境界のはっきりした画像が取得できた.しかし,参照色 素の発光が一様でなく処理後のデータにノイズ成分の影響 が出てしまうという問題点がでてきた.今後はさらに精度の 良いデータを取得するために,混合する参照色素の量の調整, 画像処理方法,塗布方法などを変更してより精度を上げてい く. 800 dԑ/dt = 2×10-4s-1 , N=21 600 Stress[MPa] 2.2 実験機材及び実験条件 本実験には引張試験機,励起光源に UV-LED(365 nm)を使 用し,撮影は TSP 色素と参照色素をそれぞれ 500±30 nm と 610±40 nm の光学フィルタを取り付けた 2 台の CMOS カメ ラを用いて撮影した.また,引張試験は,ひずみ速度 2×10-4s-1, 最大ひずみ 8%で行い,画像は 5 秒毎で取得した. 4 3 2 1 7 6 5 loading unloading 400 200 3 2 7 6 5 4 8 1 0 0 2 4 6 Strain ε[%] 8 10 Fig.3 Stress-strain curve loading unloading 45 40 35 30 25 20 ε[%]= 0 1 2 3 4 5 6 7 8 7 6 5 4 3 2 1 15 Fig.4 Temperature distribution on Shape memory alloy by means of TSP loading unloading 45 40 35 30 25 20 ε[%]= 0 1 2 3 4 5 6 7 8 7 6 5 4 3 2 1 15 Fig.5 Corrected temperature distribution on Shape memory alloy Fig.6 Row image of reference dye of BAM-G 参考文献 (1) 武田 亘平, 松井 良介, 戸伏 壽昭, ’’応力制御サブル ープ負荷における TiNi 形状記憶合金の応力緩和および 応力回復’’, (2014), 日本機械学会論文集 (2) 武田 亘平, ’’TiNi 形状記憶合金のサブループ負荷にお ける変形特性および窒素イオン注入による疲労特性の 向上’’, (2014), 愛知工業大学博士論文 (3) Liu, T. et al., “Pressure and temperature sensitive paints”, (2005), Springer.