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2014/02/23
感染予防対策
埼玉県立小児医療センター 感染免疫・アレルギー科・埼玉県予防接種センター 彩の国予防接種推進協議会 川野 豊
本日の流れ
I.  感染対策の基礎 II.  保育所・幼稚園の感染対策 III.  学校の感染対策 IV.  腸管感染症
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2014/02/23
感染対策の基礎
集団免疫率と基本再生産数
阪大微生物病研究会(http://www.biken.or.jp)
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2014/02/23
代表的な感染症の基本再生産数と集
団免疫率
出典:国立感染症研究所 感染症情報センター 平成20年度 感染症危機管理研修会プログラム4資料
集団免疫閾値
感染症
ジフテリア
麻疹
流行性耳下腺炎
百日咳
ポリオ
風疹
天然痘
集団免疫閾値
85%
83 ~ 94%
75 ~ 86%
92 ~ 94%
80 ~ 86%
80 ~ 85%
83 ~ 85%
ワクチン・ファクトブック 2012年
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2014/02/23
ウイルス感染と抗体測定
堤 裕幸.小児感染免疫22(4):403-­‐7, 2010
感染様式 飛沫感染 感染者の咳やくしゃみの際に、口から飛ぶ病原
体が含まれた小さな水滴(飛沫)を近くにいる
人が吸い込むことで感染。飛沫が飛び散る範
囲は1~2m。(A群溶連菌、百日咳菌、インフ
ルエンザ菌 、インフルエンザウイルス、ア
デノウイルス、風しんウイルス、ムンプス
ウイルス 、 マイコプラズマ ) 空気感染 感染者の咳やくしゃみの際に飛んだ飛沫が乾
燥し、その芯となっている病原体が感染性を
保ったまま空気の流れによって拡散し、近くの
人だけでなく、遠くにいる人もそれを吸い込ん
で感染。(結核菌 、 麻しんウイルス、水痘・帯
状疱疹ウイルス ) 満田年宏.小児科診療
9(11):1355, 2013
接触感染 感染者に触れることで伝播がおこる直接接触感染(握手、だっこ、キス等)と汚染さ
れた物を介して伝播がおこる間接接触感染(ドアノブ、手すり、遊具等)。(黄色ブド
ウ球菌、腸管出血性大腸菌等 、RSウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルス、ロタ
ウイルス、ノロウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス ) 4
2014/02/23
微生物の消毒薬抵抗性の強さ、
および消毒薬の抗菌スペクトル
尾家重治.小児科診療9(73):1417, 2013
手指衛生
u  手袋使用の有無にかかわらず、患者に直接接触する前には手指衛生を行。
u  手が目に見えて汚染しているとき、あるいは血液やその他の体液などで汚染していると
きは、石けんあるいは手指洗浄消毒薬と流水で手洗いを行う。
u  目に見える汚れがない場合は、アルコールを主成分とする擦式手指消毒薬を用いて手
指消毒をする。
u  血液、体液、排泄物あるいは分泌物、粘膜、創傷のある皮膚や創傷被覆材に接触した
後は、たとえ目に見えて汚染がなくとも、流水で手洗いを行う。
u  創傷のない皮膚に触れた後は手指衛生を行う。
u  手袋を外した後は手指消毒を行う。
u  同じ患者であっても異なる業務や処置を続けて行う場合には、異なる局所部位への交差
感染を防ぐために、それぞれの処置や業務後に直ちに手指消毒を行う。
u  アルコールが無効なウイルスや芽胞菌(クロストリディウム・ディフィシルなど)を含む排泄
物に接触した疑いがある場合はアルコールを主成分とする擦式手指消毒製剤ではなく、
石けんと流水による手洗いあるいは手指洗浄消毒製剤と流水で手指を洗浄消毒する。
u  手指衛生の遵守率の向上には恒常的な教育・研修や、様々な介入(手指衛生に関するキ
ャンペーンの実施、手指衛生の状況のモニター)を組み合わせて繰り返し行う。
u  手指衛生による刺激性接触皮膚炎の発症を抑えるためハンドローションやクリームで手
の皮膚をケアする。
医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(案)(070828 ver. 5.0)
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2014/02/23
手洗い(衛生学的手指衛生法)
①速乾性手指消毒薬(擦式アル
コール製剤)の使用 もっともすぐれた効果がある。30-­‐50
回/日の高度の頻回使用は避ける。 ②流水と石鹸による手洗い 一過性菌の大部分を除去できる。 ③流水による手洗い 汚れの付着などがなければ、4L/分
以上などの十分な流速下での手洗
いも有用
尾家重治.小児科診
療9(73):1417, 2013
急性胃腸炎の学校欠席と手洗
いプログラムの有効性
•  2時間の手洗いのワークショップで、感染症の伝播
・防止策と、いつどのように手を洗浄する必要が
あるかの指示、手の消毒剤について教育 •  休憩後、体育の授業後、昼食の前後、教室に入っ
た後や、家に帰ったとき咳、くしゃみの後、手の消
毒剤を正しく使う。 •  手の消毒剤はchlorhexidine digluconate 20%溶液
、phenoxythanol1%、benzalkonium chloride 0.1%、
aloe Barbadensis 5%、Renat ethyl alcohol 70%、
excipients c.s.p.100mL。アルコール65~70%
でpH=7〜7.5。
Azor-­‐MarOnez, E. et al. Ped Inf Dis J 33: e34-­‐39, 2014
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2014/02/23
月別学校欠席の数
手指消毒で胃
腸炎による学
校欠席が有意
に減少した。
Azor-­‐MarOnez, E. et al. Ped Inf Dis J 33: e34-­‐39, 2014
保育所・幼稚園の感染対策
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2014/02/23
隔離と出席停止で相互感染は防げる?
•  不顕性感染でも病原体の排泄はある
•  病気による症状が軽快していても病原体の
排泄が続くことはしばしばある
•  活発な子どもたちどうしを完全隔離すること
は不可能
•  病気の種類により、病原体の排泄が完全に
なくなるまで出席を停止することは、保育・養
育・教育などの観点から不可能
集団生活と感染症の流行
・集団生活の中では感染症の流行を完全に予
防することは不可能
・流行規模を可能な限り小さくする工夫が必要
・職員間での感染症の知識の共有と、初発患
者の早期発見への努力が必要
・保護者、職員への感染症の情報と知識の提
供による、重症者発生の予防対策が必要
・VPDは可能な限りワクチンで防ぐ
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2014/02/23
保育施設を休ませる一般的な基準
•  保育活動に参加できないと保育職員が判断する場合 •  病児にかかる介護のために、他の子どもの健康と安全が確保できなくな
るような場合 •  活動性が低下する発熱、倦怠感、不機嫌、持続的な啼泣、呼吸困難、急
激に広がる発疹 •  発熱を伴う発疹や活動性が低下する発疹 •  持続する腹痛(2時間以上)または発熱、脱水やその他の全身症状を
伴った間歇的な腹痛 •  24時間以内の2回以上の嘔吐 •  オムツにおさまらない下痢、排便回数が通常より2回以上多い場合また
は便に血液や粘液が含まれる場合 •  よだれを止めることができない口腔内病変 最新感染症ガイド2012 (Red Book 2012)
児を休ませる必要のない疾患
•  感冒 •  軽度の下痢:乳児ではおむつから便がはみでない程度、幼児ではトイレ
での排便に支障がない程度、排便回数が通常より1回多い程度 •  発熱がなく児の活動性が変わらない発疹症 •  免疫能が正常な児のパルボウイルスB19感染症 •  サイトメガロウイルス感染症 •  慢性B型肝炎ウイルス感染症 •  発熱がなく児の活動性が変わらない結膜炎:集団保育で2名以上の児が
同時期に結膜炎を発症した場合は、保育施設の担当医や保健所に相談
する。 •  HIV感染症 •  MRSAキャリア
最新感染症ガイド2012 (Red Book 2012)
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2014/02/23
学校の感染対策
学校保健安全法施行規則
(昭和33年6月13日文部省令第18号)
最終改正
平成24年4月1日・文部科学省令第11号 10
2014/02/23
学校において予防すべき感染症
第一種 エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘
そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病
、ラッサ熱、急性灰白髄炎、ジフテリア、重
症急性呼吸器症候群(病原体がコロナウイ
ルス属SARSコロナウイルスであるものに
限る。)及び鳥インフルエンザ(病原体がイ
ンフルエンザウイルスA属インフルエンザA
ウイルスであつてその血清亜型がH5N1で
あるものに限る)。 学校において予防すべき感染症
第二種 インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1)
を除く。)、百日咳、麻しん、流行性耳下
腺炎、風しん、水痘、咽頭結膜熱及び結核 第三種 コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感
染症、腸チフス、パラチフス、流行性角結
膜炎、急性出血性結膜炎その他の感染症 11
2014/02/23
出席停止の期間の基準
第一種の感染症 : 治癒するまで
第二種の感染症(結核を除く)
イ インフルエンザ
改正前
インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1)及び新型インフルエンザ等感
染症を除く。)にあっては、解熱した後2日を経過するまで。
改正後
発症した後5日を経過し,かつ,解熱した後2日(幼児にあっては,3日)を
経過するまで ロ 百日咳
改正前
百日咳にあっては、特有の咳が消失するまで。
改正後
特有の咳が消失するまで又は5日間の適正な抗菌性物質製剤による治
療が終了するまで 出席停止の期間の基準
第一種の感染症 : 治癒するまで
第二種の感染症(結核を除く)
ハ 麻しんにあっては、解熱した後3日を経過するまで。
ニ 流行性耳下腺炎
改正前
流行性耳下腺炎にあっては、耳下腺の腫脹が消失するまで。
改正後
耳下腺,顎下腺又は舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し,かつ, 全身状態が良好になるまで
ホ 風しんにあっては、発しんが消失するまで。
ヘ 水痘にあっては、すべての発しんが痂皮化するまで。
ト 咽頭結膜熱にあっては、主要症状が消退した後2日を経過 するまで。
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出席停止と臨時休業
•  出席停止の考え方(
図のとおり) •  臨時休業 潜伏期間の間は学級
閉鎖や学年閉鎖を行い
、潜伏期にある児が全
員発症し終わるまで集
団生活を休止するの
が原則。
中野貴司.小児科診療9(73):1463, 2013
腸管感染症
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腸管ウイルスの便中排泄
•  ロタウイルス 4~57日間排泄される。概ね50%は10日以
内であり、70%は20日以内である。 •  ノロウイルス 7日~2カ月程度
Feigin and Cherry's Textbook of Pediatric InfecGous Diseases. 7th EdiGon
ノロウイルス感染症
•  罹患した保育士、調理員に対しては回復後
24~48時間などを含め欠勤させ、子どもは託
児所を欠席させる。
最新感染症ガイド2012 (Red Book 2012)
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細菌性腸炎
•  志賀毒産生大腸菌と赤痢菌では2回便培養
陰性を確認するまでは保育を休ませる。 •  チフス菌では3回便培養陰性を確認するまで
は保育を休ませる。 •  他の血清型のサルモネラ菌では便培養で陰
性化を確認する必要はない。
最新感染症ガイド2012 (Red Book 2012)
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