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要 約
要
0.
約
始めに
本調査ではナイジェリア国の産業やインフラの状況を調査し、天然ガスパイプライ
ンのもつ経済的メリットを算定し、将来性の検証を行った。ガスや電力の将来の将
来需要を予測し、天然ガスパイプラインの拡張及び延長計画を経済的側面から検証
し、実現のための提言を行った。
1
産業とインフラストラクチャー
1.1
既存産業の概要
(1)
現在の主な産業は石油関連産業であり、その豊富な石油資源を背景に、1960∼1970
に急速に発展した。石油産業からの収入は、2000 年時点で、GDP の 34%、輸出収入
の 95%、政府財政収入の 82%を占め、ナイジェリア国の産業基盤となっている。
(2)
天然ガス開発も石油開発と共に行われてきてはいるが、基本的に石油開発に付随し
た開発であり、マーケット未成熟のため国内マーケットに注力した開発はほとんど
行われてこなかった。しかしながら潜在需要は大きく、パイプライン網拡張ととも
に、今後肥料産業、セメント産業および発電事業等のエネルギー多消費型産業が発
達していくものと考えられる。
1.2
既存インフラストラクチャー
(3)
道路、鉄道、港および空港等のナイジェリアの主要インフラは、過去数十年の間に
徐々に整備され、Lagos、Benin、Abuja、Kaduna および Kano 等の主要都市を結ぶ高
速道網は 1,200km に渡っている。しかしながら、それらインフラの容量は未だ不足
しており、更なる投資、整備が必要である。また、既存インフラに対するメインテ
ナンス不良も容量不足の大きな一因となっている。
1.3
ガス関連産業
(4)
ナイジェリアは、石油・天然ガス資源に富んでおり、確認埋蔵量はそれぞれ 270 億
barrel、124 兆 m3 である。また、1971 年以来、石油輸出国機構(OPEC)に加盟して
おり、その為、産出量は日産 2 百万 barrel の上限が課せられている。現在のガス日
産出量は 35 億 m3 であり、その内、33%が商業用として取引され、17%が地中に再注
入、残りの 33%が随伴ガスとして燃焼している。ナイジェリア政府は、2008 年まで
にこの随伴ガスの燃焼をなくすべく、ガス利用関連プロジェクトに対する優遇税制
の法整備等、様々な支援プログラムの策定を行っている。
1
肥料産業
(5)
窒素系肥料(尿素)は、主要な肥料であり炭化水素、リンおよびカリウムから製造
される。ナイジェリアの NPK 肥料(窒素・リン・カリウムの混合肥料)の需要は、
年間 400 万トンであると見積もられている。それでも国際的な需要原単位の年間
400kg/ha と比較して、その 10 分の 1 に過ぎない。農業セクターの改善によりさら
に需要は増加する可能性がある。
現在、ナイジェリアには NAFCON(Onne)
、FSFC(Kaduna)2 個所の肥料工場があるも
のの、NAFCON は 1999 年以降、FSFC も 2001 年以降メインテナンスおよびリハビリテ
ーションのため操業を停止している。
(6)
肥料産業の経済性は、Ammonia/Urea 年産百万トンの場合初期投資額 500 百万ドル、
ガス価格 1.0 ドル/MMBTU、製品(肥料)価格 150 ドル/トンのベースケースで、ROI
が 15.8%、NPV がプラスである。国内マーケットでの肥料の値段は約 300∼400 ドル/
トンであり、これを考えると経済性は充たしていると言える。
セメント産業
(7)
現在、一貫生産のセメント工場が全国に 8 箇所あり、さらに 9 箇所のパッキング工
場が Lagos と Port Harcourt にある。セメント工場はかつて政府保有であったが、
現在は民営化されている。国内生産能力は、年産 540 万トンであるが、実際の国内
生産量は、2000 年で年産 250 万トンとなっている。
セメントの需要は、1970 年の年間 120 万トンから 2001 年には年間 1,200 万トンと
なっており、2005 年には、建設業の発展により年間 1,500 万トンまで増加すると予
測されている。
(8)
セメント工場の経済性は、製造産量百万トン/年、初期投資額 280 百万ドル、ガス価
格 1.0 ドル/MMBTU、製品(セメント)価格 90 ドル/トンのベースケースで、ROI が
19.5%、NPV がプラスである。このことから、原料や製品の輸送インフラが整備され、
周辺に十分な需要があれば、経済的には満足させることが出来ると言える。
鉄鋼産業
(9)
ナイジェリアは、年間 250 万トンの鉄鋼需要を満たすために、800 億ナイラを鋼材
輸入に費やしている。Delta Steel と Ajaokuta Steel の 2 箇所で製鋼、Katsina で
圧延が行われている。
(10)
Delta Steel は年間 100 万トンの製鉄容量を持つものの、1999 年以降、リハビリテ
ーションのため操業を停止している。Ajaokuta Steel は、1983 年に製鋼施設が旧ソ
連の援助の下建設され操業を開始したが、溶鉱炉については未だ建設されていない。
現在、当初計画の溶鉱炉の建設と併せて、現地の鉄鉱石・石炭を利用できる新しい
タイプの溶鉱炉の検討も行われている。
2
発電事業
(11)
2001 年時点で、ナイジェリアの電力は、ナイジェリア電力公社(NEPA)により 99%、
残りの 1%は独立電源業者(IPP)により供給されている。
発電容量は、1999 年の 2,000MW から 2002 年には 4,000MW と 2 倍となっており、NEPA
は、年間 1,000MW の開発により、2006 年までに 11,000MW∼12,000MW を開発する計
画としている。また、2002 年、政府は 3 つのガス焚き火力発電所、総容量約 700MW
の開発を承認している。
(12)
IPP 事業の経済性は、オープンサイクル・ガスタービンでは、発電容量 300MW、発電
効率 35%、初期投資額 650 ドル/kW、ガス価格 0.75 ドル/Mscf、
電力価格 3 セント/kWh、
稼働率 80%および OM 費用が初期投資額の 5%のベースケースに対し、ROI が 15.0%、
NPV がプラスである。一方、コンバインドサイクル・ガスタービンでは、発電容量
450MW、発電効率 55%、初期投資額 800 ドル/kW、ガス価格 0.75 ドル/Mscf、電力価
格 3 セント/kWh、稼働率 80%および OM 費用が初期投資額の 5%のベースケースに対し、
ROI が 12.8%、NPV がマイナスである。
(13)
現状のガス価格(0.75 ドル/Mscf)では、オープンサイクル・ガスタービンの方がコ
ンバインドサイクル・ガスタービンより経済的であるが、ガス価格が国際価格である
2 ドル/Mscf に近づくにつれて、コンバインドサイクル・タービンの方が経済的有利
になる。つまり、最初はオープンサイクル・ガスタービンで発電を行い、その後、コ
ンバインドサイクル・ガスタービンに切替えていく必要がある。
1.4
環境への寄与
(14)
既存の火力発電所は、ボイラータービン発電方式(BTG)あるいはオープンサイクル
タービン発電方式(OCGT)を採用しており、発電効率はそれぞれ 30%、35%である。
コンバインドサイクルタービン方式の発電効率は 55%であり、この方式に変換する
ことにより、枯渇資源である天然ガスの有効利用のみならず、地球温暖化ガスであ
る二酸化炭素の排出量削減にも寄与することが出来る。
ナイジェリア国はまだ京都議定書の署名・締結を行っていないため、クリーン開発
メカニズム(CDM)を利用した二酸化炭素の排出権取引を行うことは出来ないが、上
述の発電方式の変換による排出権取引額は年間 2 億 3,700 万ドルに及ぶと試算され
る。
(15)
送配電網による電力ロスも大きく、1998 年時点で、送電ロス・配電ロスが総発電量
の 10%および 19%となっている。送電ロスは太線化、回線数の増強、中央制御装置に
よる適正運用等により、また配電ロスは配電線の被覆化、メータリング制等により
改善することが出来る。送電ロスは 5%程度まで改善することが可能と考えられ、そ
の場合、2002 年で年間 160∼200 万ドル程度の排出権取引額に相当する。
3
2
パイプラインシステムの検討
2.1
既存パイプラインシステム
(16)
ナイジェリア国の既存パイプラインは、Warri コンビナートから Lagos 等のナイジ
ェリア西部に至る 24/36 インチ径、延長 383km の Escravos-Lagos パイプライン(ELP)
システムと Oben と Ajaokuta 製鋼所を結ぶ 24 インチ径、延長 196km の Oben-Ajaokuta
パイプラインである。この他に、現在、西アフリカパイプライン計画とアフリカ縦
断パイプライン計画がある。
(17)
西アフリカパイプラインは、ナイジェリアから西へベニン、トーゴそしてガーナに
至る 20 インチ径、総延長 617km のパイプラインをオフショア(オフショア部は
560km)に敷設する計画であり、設備容量は日量 500 百万 scf(初期予測需要は日量
210 百万 scf)で 2005 年に運用開始の予定である。
(18)
アフリカ縦断パイプラインは、ナイジェリアの豊富なガスをアルジェリアを通って
ヨーロッパマーケットに供給する計画であり、現在、ナイジェリア政府とアルジェ
リア政府間での交渉が行われている。現段階では、56 インチ径、延長 4,000km のパ
イプラインを敷設する計画である。
2.2
パイプラインガスの需要
(19)
パイプラインガスの需要の大方は電力公社(NEPA)や IPP の発電用需要である。従
って電力供給計画の調査を行うと共に、ガス公社(NGC)側と協力し、データの精査
を行い、基本的なガス需要を想定した。基幹となるパイプラインは既設の
Escravos-Lagos パイプライン(ELP)の増強あるいは新設の Oben-Kaduna パイプラ
インの 2 系統であり、これらのパイプラインから需要者へのガス供給を行うモデル
を基本とした。
2.3
パイプラインシステムの改良および拡張計画
(20)
既存ガス消費者の需要増加および新規ガス需要家へ供給するため、主に以下のパイ
プラインシステムの改良および拡張が必要となる。
•
本管の延長および新設
•
枝管の追加建設
•
コンプレッサーステーションの追加建設
•
ガスパイプライン・ターミナル(ノード)間のパイプラインシステムの補強およ
びループ化
2.4
コストおよび経済性
(21)
パイプラインシステムの改良および拡張に対する初期投資コストは、ELP システム
4
に対し約 340 百万ドル、Oben-Kaduna パイプラインシステムに対し約 570 万ドルで
ある。また、ELP システム、Oben-Kaduna パイプラインシステムに係る運転コストは、
併せて年間約 35 百万ドルである。
(22)
現在ガスの 9 割は電力公社に買い取られているが、ガス購入価格は低く、大幅なコ
スト割れの状態である。一般的にパイプラインの運営には、通ガス料金(タリフ)
を徴収し、パイプライン拡張のための投資と運転、メインテナンスを支える収入源
としているが、そういった通ガス料金の概念が今日まで導入されずに来た。今後の
電力公社を含む国営企業の民営化に伴い、市場経済に従った値段が導入されていく
ものと考えられる。このスタディでは現実的な通ガス料金の算定を行い、現実の値
段体系の中での整合性を検討した。結果は、IPP や一般事業者向けの値段体系では
十分適応可能であるが、需要の大半を握っている電力公社に対しては現状では当て
はまり難い。しかし、民営化の流れの中で電気料金の値上げが可能となれば、適応
可能であると思われる。電気料金の値上げが十分できない場合は、ある程度国家資
金を投入し、建設を進めることも視野に置くべきであると思われる。このスタディ
ではそれらシナリオの整理を行った。
2.5
プロジェクト実施スケジュール
(23)
パイプラインの建設施工費算定には、地形の形状・土質などを考慮した数値を用い
て見積もり精度を上げると共に、材料費算定では、関連する機器夫々の値段を算定
し合算した。また、建設スケジュールと投資スケジュールを作成し、現実性の検証
を行った。
3
結論
(24)
ナイジェリア天然ガスパイプラインはナイジェリア国内のエネルギーインフラとし
て利用されるのみではなく、西アフリカ諸国へのガス輸出のためのインフラとして
も利用される。
(25)
ナイジェリア国内の発電施設への燃料供給インフラとしての大きな役割があり、電
源開発と密接に関わっている。また肥料やセメントなど基幹産業を支えるための重
要なインフラとなる。
(26)
パイプラインは将来的には十分な経済性を有しているが、需要の 9 割を占める電力
公社との値段の折り合いが問題となり、場合によってはある程度の税金投入をして
建設するのが現実的である。
5
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