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アストゥリアス語 1)の所有表現の一形式 de mio (/ to / so...) をめぐって
111 東京外国語大学論集第 89 号(2014) アストゥリアス語 1)の所有表現の一形式 de mio (/ to / so...) をめぐって ― 周辺言語,特にポルトガル語との関係から ― 黒澤 直俊 1. はじめに 2. アストゥリアス語の所有表現 3. その歴史的起源 4. ガリシア語における同様の所有表現 5. ポルトガル語における同様の所有表現 6. 古いポルトガル語における用例 7. ポルトガル語の形はラテン語の人称代名詞属格形を継承するものなのか 1.はじめに アストゥリアス語は,ガリシア・ポルトガル語とカスティーリャ語の中間的位置を占め,系 統的にはアストゥリアス・レオン諸語のひとつとされる。このグループの言語では他にカス ティーリャ・レオン州のレオン語とポルトガル北東部ブラガンサ県のミランダ・ド・ドーロ郡 のミランダ語が残っている 2)。これらの言語は近代以降,公用語としての地位を持たず規範形 成が行なわれなかったため,方言差が激しく,古い言語特徴が多く残されている。アストゥ リアス語が分布するのは,厳密には,スペイン北部のアストゥリアス自治州 Principado de Asturias(アストゥリアス語 Principáu d'Asturies)内のナヴィア川 Río Navía 以西を除く地域と, 中南西部の山岳地帯に続くカスティーリャ・レオン自治州の一部にかけての地域であり,方言 区分としては,西部方言,中央方言,東部方言の3つに大きく分けるが,さらに西部方言は4 つの下位方言に,中央方言は2つ,東部方言は3つのグループに下位分割される。ただし,こ のような分割の根拠にされている言語特徴は必ずしも収束的な分布を示していないので,分類 そのものの意味は薄く,アストゥリアス語を構成する諸方言は漸進的に特徴を共有する方言連 続体以外のなにものでもないと言える。オヴィエド大学の García Arias によれば,この地域は 半島の国家形成に大きな影響をもたらしたレコンキスタの後背地にあたるため,歴史的に大き な人口の移動が生じなかったことで,ローマ化の頃からの初期の言語分布がそのまま反映され て現在の状況に至っているのだという。なお,アストゥリアス自治州のナヴィア川以東の地域 の伝統的な方言はガリシア語に属するガリシア・アストゥリアス語 gallego-asturiano で,自称 112 アストゥリアス語の所有表現の一形式 de mio (/ to / so...) をめぐって ― 周辺言語,特にポルトガル語との関係から ―:黒澤 直俊 名をファーラ fala とする言語である。 スペインでは 1975 年以降の民主化の過程を経て制定された憲法で地域語の言語権を広く認 めているため,スペイン語すなわちカスティーリャ語以外の言語の一部がそれぞれの自治州 の公用語になっている例が複数ある。アストゥリアスでも同じような動きがあり,アストゥ リアス自治州政府とオヴィエド大学が共同でアストゥリアス言語アカデミー Academia de la Llingua Asturiana を設置し,アストゥリアス語の教育や普及,規範の制定などが行なわれたが, 法的には保護対象言語という位置付けにとどまっているため,州の公用語とすることを要求す る運動が続いている。現在,40 万人近くのアストゥリアス語の話し手がいるとされるが,ほ とんどがカスティーリャ語との二言語使用者であり,ダイグロシア状態における下層言語であ ると言ってよい。従って,アストゥリアス語が用いられる領域は比較的限られていると言える。 反面,初等中等教育から高等教育機関に至るまでアストゥリアス語は選択科目としてその教育 が保障されているし,アストゥリアス語による現代文学も 80 年代以降かなり盛んである。地 元の音楽バンドなどもアストゥリアス語を用いた楽曲の制作や演奏を行なっている。一時はア ストゥリアス語の週刊新聞も存在したが,現在では,ネット媒体のものを除くと,一部の新聞 にアストゥリアス語の記事が存在するといった程度である。テレビやラジオなどのメディアで もアストゥリアス語の番組を複数放送している。これらの書き言葉やテレビ・ラジオなどのマ スコミ,大学,公共機関などでの比較的改まった場で用いられるアストゥリアス語は,90 年 代にかけてアカデミーが確立した規範に基づいている。しかし,社会的には言語規範が確立し ているとは言いがたい状況であり,標準的な規範は場面によっては人工的な印象を与えること もある。アカデミーの規範は,主に州都のオヴィエド Oviedo やシション Xixón3)などの大都 市がある中央沿岸部の方言を基礎に,方言的なバリアントをいくつか認めたものからなってい る。アストゥリアス語内部の方言差には著しい場合があり,相互理解が不可能なこともあるが, 実際の言語運用では,各地の方言色や語彙や表現面でのスペイン語の影響が強い変種が用いら れる。自称名は asturianu または bable である。 2.アストゥリアス語の所有表現 アカデミーが推奨する規範は『アストゥリアス語文法』Gramática de la Llingua Asturiana (Academia de la Llingua Asturiana 20013) や『正字法規範』Normes Ortográfiques (Academia de la Llingua Asturiana 20056) としてまとめられているが,それによれば (Gramática, pp.107-114 ; Normes, pp.74-77),アストゥリアス語の所有表現には,性数変化する所有形容詞を用いるもの や前置詞の de + 3人称の強勢形の人称代名詞を用いた表現の他に 4),以下に挙げる迂言的所 有表現 posesivos perifrásticos と呼ばれるものがある。 東京外国語大学論集第 89 号(2014) 113 de mio 私の de to 君の de so 彼の,彼女の,それの de nueso ~ de nuestro 私たちの de vueso ~ de vuestro 君たちの de so 彼らの,彼女たちの,それらの 迂言的所有表現の特徴は以下であるという。 1) 前置詞 de に先行される。 2) 所有形容詞は性数変化しない(規範では中性形が,形容詞類に中性形が存在しない方言 では男性単数形が用いられる)。 3) 名詞句やその代用表現に後置される。 ① Gustó-yos enforma l'abrigu de mio. 彼らは私の上着をいたく気に入った ② Ésa ye la casa de to. それが君の家です ③ La casa d'Alfredo vila, pero la de to non. アルフレドの家を私は見たが,君のは見てない また,以下の表現は等価となるという。 el mio pueblu = el pueblu mio ~ el pueblu míu = el pueblu de mio 私の村 アカデミアの文法では,同時に,前置詞+人称代名詞の表現と混同すべきではないという注 意が与えられている。 ④ Acordóse de min mesmu.(彼は)私のことを思い出した *Acordóse de mio mesmu. ⑤ Quéxense de ti.(彼らは)を君に不平を言っている *Quéxense de to. このようにアストゥリアス語では de + 所有形容詞の中性形(または男性単数形)の表現が アストゥリアス語特有の言語特徴として見なされているようである。ただし,私見では,この 表現の使用は現代語では比較的限られており,必ずしも,頻度の高い形式ではない。 114 アストゥリアス語の所有表現の一形式 de mio (/ to / so...) をめぐって ― 周辺言語,特にポルトガル語との関係から ―:黒澤 直俊 3.その歴史的起源 アストゥリアス語に関する唯一の歴史文法書である García Arias 2003 は,問題の迂言的所 有表現は中世アストゥリアス語においてすでにあり,このような形式の歴史的起源について 「私の解釈によれば(Gracía Arias 1979-80) ,この所有を表現するための手段で所有詞とおぼし きものは性と数が固定されているが,これはその起源がラテン語の所有詞ではなく,人称代名 詞属格形 TUI(> *toi > tou > to),SUI(> *soi > sou > so)のロマンス語における分析的 適合とそれが後に MEI に起源する形に類推的に拡張されたからである」5)(García Arias 2003, p.279) と述べている。 中世語の文献にあるとされる形は以下である 6)。 omne de so (1274) tierras de vuestro (1303) nin fillos nin nietos de so (1306) grant costa de vostro (1255) bienes desembargados de so (1306) fondos de vostro (1303) con ganado de so (1358) tierras de vostro (1303) alguna cosa si la de so oue (1289) ここから,13 世紀においてすでに,この de + 所有詞の形式が用いられていたことがわかる。 人称代名詞の属格形は,単数形では meī, tuī, suī であり,ラテン語では名詞にそのまま接続 して用いられるところであるが,ロマンス語では格の後退にともない,属格形が de + 対格形 に置き換えられていったことを受けて,このケースでは名詞+ meī ⇒ 名詞+ de + meī ヘの 「ロマンス語における分析的適合」"la adaptación analítica romance" が起こり,最終的に所有形 容詞と語形上の区別がつかなくなったというのが趣旨である。ラテン語からアストゥリアス語 への所有形容詞と人称代名詞の属格形の変化は以下の過程を経たとされている。 所有形容詞 meum > *miau ~ mieu > miou > mio tuum > tou > to suum > sou > so 人称代名詞属格形 meī > *miai ~ *miei → miou ~ mieu > mio tuī > *toi > tou > to suī > *soi > sou > so 東京外国語大学論集第 89 号(2014) 115 García Arias 2003 は,同地域のラテン語文献に illa sorte de mei (1050) という形があり,そ こでは de mei という de + 属格形が現れているだけでなく,冠詞化した指示代名詞 illa の使用 も見られると指摘している(p.279)。この他に,アストゥリアスの中世語文献には casa de mi (1230?), padre de mi (1285), por nonme de mi (1323?), filla de mi (1302), marido de mi (1316) な ど,de + 人称代名詞強勢形による所有表現の存在が指摘されている。また de mio と de mi の 意味的近接性を示す用例として同一文献における次のような例も挙げられている。 ⑥ en dineros que tomo de mio (...) e de pan que ouo de mi (1238) 4.ガリシア語における同様の所有表現 このような「迂言的所有表現」は隣接するガリシア語にもある。ガリシア語の古典的文法書 である Calero (19797) は,「分析的所有詞」として「男性単数の形式で単独の所有者に対し用 いられ, 前置詞 de を介し対象の名詞によって支配される属格構文を取る」 (Calero (19797), p.307) と述べ,次のような例を挙げている 7)。 xugada de seu 彼の二頭だての牛 parentes de meu 私の親戚 こ れ ら の 表 現 は, 基 本 的 に は xugada sua や a sua xugada,parentes meus や os meus parentes などと同じとされる。これについて,現代ガリシア語の文法書である Freixeiro Mato 20062 は,所有詞の特殊な用法と意味として a) 強調的用法,b) 分配的用法,c) 尊敬用法,d) 尊敬または情動的用法を挙げ,a) 強調的用法に de meu, de teu, de seu, de noso, de voso などを 挙げている。ちなみに b) 分配的用法は Cada neno colleu (o) seu caramelo「ひとりひとりの子 が自分の飴を取った 」; Trouxo cada rapaz (a) súa guitarra「各青年が自分のギターを持って来た 」; Regaleilles cadanseu anel de ouro「私は彼らそれぞれに金の指輪を与えた 」,c) 尊敬用法は Si, (私の)旦那様 」; Non, miña señora「いいえ, (私の)奥様 」; Ás súas ordes, meu señor「はい, (我)大尉殿, かしこまりました 」 (我)故郷 」; meu tenente「 ,d) 親しみや情動の用法は A miña terra「 (私の)ペペ 」; Miña xoia!「 (我)愛しい人 」; A miña Helena é moi eficaz no seu O meu Pepe「 (私の)エレナは仕事がよく出来る 」などであるとされる。さらに a) 強調的用法につい traballo「 ては「完全あるいは排他的所有とも呼ばれ,おそらくこれが,男性に固定化された de +所有 詞の構造(de meu, de teu, de seu, de noso, de voso, de seu)の最初の意味で,排他的所有関係 を示し,それを強調するものである(Ten a casa de seu「彼は家持ちだ 」)」8)(p.120) とし,こ の用法が,分離可能な対象から不可能なもの(Veu de América un tío de meu「私の叔父のひと 116 アストゥリアス語の所有表現の一形式 de mio (/ to / so...) をめぐって ― 周辺言語,特にポルトガル語との関係から ―:黒澤 直俊 りがアメリカから来た 」 )や述語的機能の形容詞の修飾語(Este rapaz é listo de seu「この青年は しっかり者だ 」; Eu son optimista de meu「私は楽観的だ 」 ),述語修飾語(O neno caeu de seu「そ の子は自分で転んだ 」 )などに拡張されたのだろう,と述べている (Freixeiro Mato 20062, pp.120- 121)。 このようにガリシア語でも,アストゥリアス語同様,de +所有詞の男性単数形の固定化し た表現が存在することが分かる。 5.ポルトガル語における同様の所有表現 このような迂言的または分析的所有表現と呼ばれる形式はポルトガル語にも存在する可能性 がある。アストゥリアス語やガリシア語と異なり教室で教えられたりすることはないし,現代 語ではあまり聞かれない形であるが,文学作品などを見ると以下のような用例がある。 ⑦ Não tinha uma horinha de seu, a não ser roubada ao sono, ou aqueles dois dias de saída. (Miguéis 1975, p.45) 寝る時間を惜しむとか,外出日のあの2日間を除き(彼女には)自分の時間はなかった ⑧ ... e só pode ser cidadão no sentido moderno do termo o indivíduo ... que tem algo de seu a defender, um património, uma quota-parte do bem comum, ... (Miguéis 1975, p.445) ... 現代的な語の意味において市民と言えるのは,財産とか,公共財の割り前とか ... 擁護 すべきなにかを自分のものとして有する個人だけである ... ⑨ A sua expressão era desconsolada, como se tivesse perdido ou lhe houvessem roubado algo de muito seu. (Miguéis 1975, p.658) ... 彼女の表情は荒涼とし,何か自分そのものを失ったか,奪われたかのようだった ⑩ Já tiveram de seu, agora não têm nada, senão que uma delas tem um «amigo», é um conselheiro de sobrecasaca e cartola, só fuma charuto, vem-na visitar de longe em longe. (Miguéis 1960, p.24) ... 彼女たちはかつては財産もあった,今は何もない。唯一,姉妹のひとりに「お友達」 がいて,フロックコートとシルクハットの葉巻しか吸わない参事官が,時折,彼女をた ずねて来るのだ 東京外国語大学論集第 89 号(2014) 117 José Rodrigues Miguéis は 1930 年代から 80 年代初頭まで活躍したポルトガルの作家で,20 世紀を代表する古典的散文の書き手と見なしてよいと思われるが,該当する所有表現がいくつ か見られる。⑦,⑧、⑨の例文は,O Milagre segundo Salomé『サロメの奇跡』と呼ばれる 685 頁からなる長編小説で,おそらく3回ほど用いられている。それほど頻度の高い形式ではない ことがわかる。ガリシア語に関係して「所有詞の強調的用法」という指摘があったが,ここで の所有の対象は「貴重な時間」(⑦), 「財産などの何かあるもの」(⑧), 「精神的な本質的部分」 (⑨),「財産」(⑩)などで,そのような解釈と矛盾しないように思える。 文法書などがこの形について触れることはきわめて少ない。手元にあるものでは,80 年代 に出版された古典的な規範文法書の Cunha et Cintra 1984 と,初版は 1918 年である歴史統語 論の解説書の Dias 19705 に、「単数形で名詞化された所有詞」として該当する形式についての 言及がある。 Cunha et Cintra 1984, p.327 Os possessivos, quando substantivados, designam:[=所有詞は名詞化されたとき,次の意味を持つ] a) no singular, o que pertence a uma pessoa:[=単数で,ひとりの人に属するもの] — Eu não tenho mais ambições que fazer fanga e ganhar o que puder, até ter um bocado de meu. (Alves Redol, F,281.) 俺は働いてちょっと稼いでなにがしか自分の財産を作る以上の望み はない A rapariga não tinha um minuto de seu. (Alberto Rangel, IV, 61) その娘は自分の時間はなかった Dias 19705, § 81, p.76 Os pronomes possessivos empregam-se substantivamente:[=所有代名詞は名詞的に用いられる] 1) no sing. masc.: dar do seu ; dar o seu a seu dono ; ter de seu [= ter bens proprios] (Prestes, 420); (antiquado) de seu = por si só, por si mesmo: eles [instrumentos] de seu se tangiam (Tundalo, Na Rev.Lus., 11,117). Perdoado he elle de sseu (Fernão Lopes, D. João I, 28) Cunha et Cintra 1984 の用例は,本稿の対象である所有表現と同じものであるが,問題の所 有形容詞が男性単数形のみで現れ,性数変化しないとか,定冠詞がつかないかといったことに ついては,ここでの記述からは明確ではない。ちなみに,ここでは引用していないが,複数 形の例の b) の項目での用例には,定冠詞がついて性数変化する形を挙げている。同じように, 歴史文法書の Dias 19705 では,所有詞に定冠詞がついている形も並んで挙げられていて,こ れだけでは de seu などの形式をどれだけ意識的に引用しているかよくわからない 9)。さらに, 118 アストゥリアス語の所有表現の一形式 de mio (/ to / so...) をめぐって ― 周辺言語,特にポルトガル語との関係から ―:黒澤 直俊 ここで「古語法(= antiquado)」とされている de seu は,所有表現ではなく行為者性を表す ものである。 ⑪ Eles [= instrumentos] de seu se tangiam. (Tundalo, Na Rev.Lus., 11,117) それら(=楽器)はひとりでに鳴るのであった ⑫ Perdoado he elle de sseu. (Fernão Lopes, D. João I, 28) 彼は自ずと(=?自分自身によって)許される ここで de seu は,再帰構文(⑪)や受動態(⑫)での行為者を表す用法に近い。古典的に 前置詞の de や por は受動態や再帰構文で行為者を表すので,その点は特に問題ないとして も,その場合に通常現れる形は si などのような人称代名詞の強調形であるはずである。その 意味で,この形が言及されているのはよくわかる。⑪の例文は『トゥヌクダルスの幻視』Visio Tnugdali(ラテン語原題)/ Visão de Tundalo(中世ポルトガル語訳の書名)と呼ばれる作品か らであるが,中世ポルトガル語の古典的入門書である Huber 1933 も引用している。 Huber 1933, § 344, p.170 de seu = von selbst: Elles (nämlich os instrumentos) de seu se tangiam (Tundalo). Sie (die instrumente) berührten sich (=spielten) von selbst. 辞書や熟語辞典には問題の形式を記載しているものもある。Ramalho 1985 はポルトガルで 出版された熟語辞典であるが,"meu, de", "seu, de", "ter de seu" という3つの見出しがあり, 以下の記述がある。 Ramalho 1985, pp.713-714 meu, de: levava todo o dinheiro que tinha de m.(彼は)私が持っていたすべての金を持っていった (que era meu, que me pertencia 私のもの、私に属していた ). seu, de: ele tem alguma coisa de s. 彼は自分のなにがしかの物を持っている ([algumas] posses 何 らかの所有 ); ela!...que não tem nada de s., senão o palmito de cara 彼女は自分のものはな にもなく,あるのは美人顔だけ ([não] tem dinheiro nem bens, é uma pobretana 金も財産も ないあわれな女 ) ter de seu: sabes se o Ricardo tem alguma coisa de seu? リカルドが財産があるかどうか君知ってる 東京外国語大学論集第 89 号(2014) 119 かい (possui bens, meios de subsistência 財産や生活手段を有する ); ele tinha alguma coisa de seu quando casou. 彼は結婚したときそれなりの財産があった Ramalho 1985 の扱いから,ここでの所有形容詞はおそらく男性単数形のみで使われること を想定していると推察される。しかし,上の文法書での例などからわかるように,ポルトガル 語において,このような所有表現の存在についてどこまで意識されているのかには疑問が残る。 6.古いポルトガル語における用例 Dias 19705 などの記述から中世語で問題の形が存在したことはわかるが,実際の用例の数 は必ずしも多くない。例えば,中世の散文として代表的とされる『聖杯の探索』Demanda do Santo Graal や『夫の庭』Horto do Esposo では用例を見いだせなかった。しかし,Brigham Young University の Mark Davies などのコーパスを見ると 13 世紀から 14 世紀の法典や年代記 などにも用例はきわめて少ないがあることはわかる。 Afonso X Primeira Partida(スペインのアルフォンソ十世による第1教会法の中世ポルトガル語訳) Dos clerigos que nõ hay algo de seu quãdo lhys dam as eygreias E depoys conprã herdades cuias deuẽ seer & en cuio nome deuẽ fazer as cartas da conpra Escodrinhar & saber deuẽ os julgadores que tãẽs preitos ouuerẽ de julgar como diz ena ley ante desta se o clerigo ante que lhy derõ a eygreia auia algo de sseu ou nõ E sse achassem que nõ auya algũã cousa & depoys conprou algũãs herdades todas deuẽ seer da eygreia Ca ssospeyta poderia auer con rrazõ que dos bẽẽs forõ della conprados Afonso X Terceyra Partida(スペインのアルフォンソ十世による第3教会法の中世ポルトガル語訳) Outrossi lhi deu poderyo que por tal dereito que ela auya ẽ aquela cousa que sse o conprador deles ajudar ẽ juizo & fora del. assi como de seu. Afonso X Terceyra Partida(スペインのアルフォンソ十世による第3教会法の中世ポルトガル語訳) Mays se achassẽ que algũũ homẽ ajũtasse vaso alhẽõ. ao pee de seu. se ouuesse maa fe. em ajuntãdo o sabendo que o vaso era alhẽõ. Crónica geral de Espanha de 1344(1344 年スペイン (=イベリア半島) 総年代記中世ポルトガル語版) E, quando este reynou, ouveron os d'Alemanha e os da Terra da Promisson e do Egipto guerra 120 アストゥリアス語の所有表現の一形式 de mio (/ to / so...) をめぐって ― 周辺言語,特にポルトガル語との関係から ―:黒澤 直俊 de seu; e quis Deus que venceron os d'Alemanha. General Estoria(総年代記) Despoys de todos estes omẽs de cujas creẽças et cousas avemos falado e dito, chegarõ estonçes, em cabo deles et cõ eles, outros que entẽderõ ja mays que aqueles de que avemos dito; por que o aprenderã de seus anteçessores ouçiáos et quelles leyxarã dello algũas escrituras de algũas cousas, et por la soteleza que tomauã enssy daquelo que deles aprenderã, et buscauã elles sobre ello mays de seu. さらに 16 世紀前半の劇作家 Gil Vicente の全作品中では以下の 16 例が見出される。 1) Inês Pereira (1523), linha 562, fol.217b, 1562 ESCUDEIRO Eu nam tenho mais de meu somente ser comprador do marichal meu senhor e sam escudeiro seu. 1b) Inês Pereira (1523), linha 583, fol.6a, 1523 ESCUDEIRO Eu nam tenho mais de meu somente ser comprador do marichal meu senhor e sam escudeiro seu. 2) Lusitânia (1532), linha 105, fol.239b, 1562 CORTESÃO Senhora sois minha vida fiai no que digo eu. LEDIÇA Nam tenho roca de meu nem despois que sam nacida nunca minha mãe ma deu. 東京外国語大学論集第 89 号(2014) 3) Barca de inferno (1517), linha 379, fol.4c, 1518 DIABO Essa dama é ela vossa? FRADE Por minha la tenho eu e sempre a tive de meu. DIABO Fezestes bem que é fermosa. E nam vos punha lá grosa no vosso convento santo? FRADE E eles fazem outro tanto. 4) Pastoril Português (1523), linha 555, fol.29d, 1562 MADANELA Com Afonso quero eu. AFONSO Inês mana eu contigo que nunca tam grande amigo em tua vida tens de teu. INÊS Por que andas bogiando? 5) Feira (1527), linha 537, fol.34c, 1562 DENIS Tens boa molher de teu nam sei que tu hás amigo. AMÂNCIO S'ela casara contigo renegaras tu com'eu e dixeras o que eu digo. 6) Romagem dos Agravados (1533), linha 287, fol.185b, 1562 COLOPÊNDIO Se amasses onde eu e servisses a quem sirvo pasmarias como vivo e mais terias de teu os desacordos que digo. 7) Mofina endes (1534), linha 3, fol.20c, 1562 Três cousas acho que fazem 121 122 アストゥリアス語の所有表現の一形式 de mio (/ to / so...) をめぐって ― 周辺言語,特にポルトガル語との関係から ―:黒澤 直俊 ao doudo ser sandeu a ũa ter pouco siso de seu a outra que esse que tem nam lhe presta mal nem bem 8) Pastoril Português (1523), linha 24, fol.26a, 1562 perém amor lhe tenho eu e ela samicas a mi que ela o diz soma assi porqu'ela nam tem de seu meu pai deu-me e eu fogi. 9) Pastoril Português (1523), linha 359, fol.28b, 1562 Meu pai er tem bem de seu e nam tem filho negu'eu está atêntega Madanela vem agora a Pascoela casemo-nos tu e eu. 10) Feira (1527), linha 956, fol.37c, 1562 Nem casar nam vejo eu por virtudes a ninguém quem tiver muito de seu e tam bôs olhos com'eu sem isso casará bem. 11) Exortação da guerra (1514), linha 489, fol.159c, 1562 CLÉRIGO E a mi que se me dá? Quem de seu renda nam há as terças pouco lh'empece. 東京外国語大学論集第 89 号(2014) 123 12) Romagem dos Agravados (1533), linha 615, fol.187b, 1562 CERRO VENTOSO Que tendes vós padre meu de renda? FREI NARCISO Tenho lazeiras oitenta mil tenho eu. CERRO VENTOSO Dixe, e quem isso tem de seu nam pedirá polas eiras. 13) Almocreves (1526), prefácio, fol.228, 1562 E vendo-se o seu Capelão esfarrapado e sem nada de seu, entra dizendo: 14) Trovas a João III, linha 8, fol.261d, 1562 A Santarém cheguei eu bem tal como Deos naceu que nam trouxe lá do céu consigo um vintém de seu. 15) Alma (1508), linha 223, fol.39c, 1562 Is mui desautorizada descalça, pobre, perdida de remate nam levais de vosso nada 16) Romagem dos Agravados (1533), linha 659, fol.187c, 1562 FREI PAÇO Tam largamente cortais que entender-vos nam posso sei que tendes bem de vosso e pois vos nam contentais vem-vos de Cerro Ventoso. Gil Vicente の用例の内訳を見ると,de meu (3) / teu (3) / seu (8) / vosso (2) などで,動詞と の組み合わせでは ter (12), haver (1), trazer (1), levar (1), なし (1) であり,所有表現が支配する 124 アストゥリアス語の所有表現の一形式 de mio (/ to / so...) をめぐって ― 周辺言語,特にポルトガル語との関係から ―:黒澤 直俊 語は mais (2), roca, a, amigo, molher, siso, ゼロ , bem (2), muito, renda, isso, nada (2), vintém な どである。不定代名詞またはその相当語(mais (2), bem (2), muito, isso, nada (2))は8例,名 詞(roca 糸巻き棒 , amigo 恋人 , molher 妻 , siso 正気 , renda 収入 , vintém 通貨の単位)は6例, 人称代名詞目的語(a)が1例である。名詞でも siso, renda, vintém などは抽象性が高い語である。 さらに時代を遡るガリシア・ポルトガル語の初期の叙情文学である Cantigas のなかに 13 世 紀中葉の詩人 Roi Queimado のものとして以下がある。 Cantiga de Amor A132, B253 Fiz meu cantar e loei mia senhor mais de quantas outras donas eu vi; e se por est'an que[i]xume de mi as outras donas, ou mi-an desamor, ajan de seu quen d'elas diga ben e a quen façan muito mal por én: ca ben assi faz a min mia senhor,.......... この作品では2連目,3連目も同様の繰り返しがあり hajam de seu が用いられている。 Cantigas については現存する全作品を精査したわけではないので,他にどの程度用例があるか はわからない。しかし,ポルトガル語についてもやはりかなり早い時期から該当する形式があ ることはわかる。 7.ポルトガル語の形はラテン語の人称代名詞属格形を継承するものなのか もしもこのポルトガル語における所有表現の男性単数形とおぼしき所有形容詞がアストゥリ アス語で推定されているようにラテン語の人称代名詞の属格形に遡るとするならば,その変化 の過程はどうなるのだろうか。Williams 1938 などに従うと変化は以下のようになる。 ・ラテン語からポルトガル語への所有形容詞の変化(Williams, 1938, § 144)(括弧内に女性 形を示す) meum > meu ~ mou > meu (meam > mia ~ ma > minha) tuum > tou ~ teu > teu (tuam > tua ~ ta > tua) suum > sou ~ seu > seu (suam > sua ~ sa > sua) 東京外国語大学論集第 89 号(2014) 125 ポルトガル語では,スペイン語やアストゥリアス語と異なり,1人称単数形の形が一般化し, 2人称と3人称単数の形を類推的に牽引することになる。しかし,実際に 13 世紀前後の古文 書文献を見ると tuo, suo という形も多く,sou, tou は意外と少ない。なお,ここでは,複数形 については議論しない。他方,人称代名詞の属格形は以下の過程を経ると考えられる。 meī > ? mei → meu tuī > ? toi → tou → teu suī > ? soi → sou → seu mei → meu の変化には疑問が残るが,toi → tou, soi → sou については,oi と ou は中世語以 降交替するので,この変化は比較的説明しやすいのではないかと思われる。問題は,このよう な可能性を支持出来るような古文書文献における形式の存在であるが,かならずしも関連する すべての可能な文献を網羅したわけではないが,パイロット的な調査からの結論を言うと以下 のような問題がある。 1) アストゥリアス語と異なり de + 所有形容詞の男性単数形の形がない(か,まだ見つけて いない) 2) de + ラテン語の属格という、中世ロマンス語的構成が見いだされない(か,まだ見つけ ていない) しかし,それにもかかわらず de + 人称代名詞の強勢形という形は多いので,所有表現全体 の推移などを考慮しながら考察を続ける価値はあると思われる。以下にいくつか古文書文献か らの例を年代と地域ととも示す。 ((L003)) vniu(er)ssj q(uod) in p(re)sencia mej vince(n)ty ihoanis publicj tabellionis (1277 Minho) 上の例は,ラテン語の属格形 mei を示す例である。以下は de mim 型の例。 e seu termo, em Pee de Mim, termo de Lisboa, e em Gondegana, termo de (1370, Estremadura) huũ oljual q(ue) h(e) ẽ pee de ((L013)) mim t(er)mhõ de lixbõa (1370, Estremadura) 126 アストゥリアス語の所有表現の一形式 de mio (/ to / so...) をめぐって ― 周辺言語,特にポルトガル語との関係から ―:黒澤 直俊 cõ oljual ((L019)) de pee de mim cõ Esta cõdiçõ q(ue) aaq(ue)l A q(uem) (1370, Estremadura) ((L020)) cõ oljual de pee de mim to(r)ne A quẽ Acõteçer Alperiat(e) (1370, Estremadura) q(ue) he ẽ ((L025)) pee de mim E acõteçeo Ao d(i)to Rodrigo (1370, Estremadura) Sabhã todos q(ue) en p(re)sença de mj M(ar)tin m(art)j(n)z (1311-12, Guimarães) presente en nome de mĩ & de mjñas bozes asi rresçibo o dito foro por las (1453, Lugo) Et áá morte do postrem(eyr)o de mĩ & dos d(i)tos meus fillos & fillas & netos & (1367, Coruña) (con)uẽto ((L021)) del sem embargo de mĩ & de toda mĩna uos et q(ue) façad(e)s (1399, Coruña) deant(e) sem meu embargo & em xeg(und)o de mĩ & de toda mĩna uoz (1399, Coruña) elles de seu plazer ((L011)) meterõse ĩ mao de mĩ Fernã Fer(nande)z, coego de Lugo, (1302, Lugo) rogolle q(ue) me dia duas ((L025)) taças q(ue) de mĩ tẽ, p(ar)a fas(er) delas vn (1302, Orense) este stormẽto (e) out(ro) tal nas casas de mĩ d(i)to Tabelljõ no dia. (1345, Estremadura) de lixboa ((L003)) nas Poussadas da morada de mĩ St(evam) ãnes tabeljã (1391, Estremadura) Go(nçalue)s et P(edr)o Afon(so), esc(r)iuães de mĩ, o d(i)to not(ari)o, (1407, Lugo) ポルトガル語の初期文献の中で有名なアフォンソ二世の遺言書にも以下のくだりがある。 E ssi a dia de mia morte meu filio ou mia filia que no meu logar ouuer a reinar nõ ouuer reuora, mãdo aqueles caualeiros que os castelos teen de mi en'as terras que de mi teem os meus riquos 東京外国語大学論集第 89 号(2014) 127 omees que os den a esses meus riquos omees que essas terras teiuere. (Testamento de Afonso II (1214), Ms. de Lisboa, Linha 23-24) 註 1) アストゥリアス自治州政府とオヴィエド大学が共同で運営しているアストゥリアス言語アカデミーが 推進する規範では,この地域を Asturies(スペイン語では Asturias)と言うので,言語原音主義を主 張すれば「アストゥリエス語」とするのが厳密であるが,アストゥリアス語内部の方言によっては語 尾が -as になる地域もあることや,スペイン語を通じて主に知られている言語なので、ここでは便宜 的に「アストゥリアス語」と呼ぶ。アカデミーの規範は,方言的ないくつかの変種の使用を認めている。 ここで問題となり得る,名詞や動詞の語尾 -es ~ -as, -en ~ -an などのバリアントもそのなかに含まれる。 2) ミランダ語については 1998 年にポルトガル国会でミランダ言語法と通称される法律が制定され,現在 はミランダ・ド・ドーロ Miranda do Douro 郡内での言語使用権が認められている。この法律をもって ミランダ語はポルトガル共和国第2の公用語であるという主張がされることがあるが,公用語という 語感と言語使用の実態の間には違和感があると言わざるを得ない。正確な話し手の数は不明であるが, 10000 人から 15000 人程度と主張されることがある。筆者は 2007 年に現地調査を行っているが,その 時点で入手した郡の資料によれば,郡内の人口は 8000 人ほどである。特に,1970 年代以降,ポルト ガルの農村部では初等中等教育が広く普及したが,それによってこの地域ではミランダ語の伝統的な 言語伝承が失われたため,この時期を境に話し手の激減が進んだと言われている。隣接するヴィミオー ゾ Vimioso 郡内にもミランダ語が話される集落があることや,ミランダ出身者の多くがリスボンをは じめとする地域にも在住することなどを考えても1万人を超える話し手というのは信じがたい。ポル トガルの言語学研究者がカウントした統計で,話し手の数を比較的多くカウントしたもので 7000 人と いう数字がある。おそらく,ミランダ語を伝統的に伝承する話者は現在ではこれよりはるかに少ない のではないかと思われる。ブラガンサ Bragança 県にはミランダ語の他に北端部のスペインとの国境 地帯にまたがる村のリオドノール Rio de Onor のリオドノール語,そしてその隣の集落のグアドラミ ル Guadramil のグアドラミル語がアストゥリアス・レオン系言語として知られるが,現在ではほぼ壊 滅状態に近い。リオドノール語の話し手は 2007 年に十名程度存在したが,お互いにこの言語を話した がらないし,グアドラミルでは 2007 年には 80 代後半の男性 1 名の話し手と,やはり 80 代のグアドラ ミル語を理解すると自称する老女 1 名が生存していた。2009 年に公刊されたアストゥリアス州の週刊 新聞 Les Noticies 紙に掲載されたルポルタージュによれば,グアドラミル語の話し手は老女が 1 名で あると報じている。グアドラミルの人口は当時 24 名ほどで,前述の老人は2日おきに病院へ行き輸血 する必要があると聞いていたので,もうほとんどこの言語は話されていないと考えてよい。 3) 州内の地方公共団体には,言語正常化局 Oficina de Normalización Llingüística が設けられているとこ ろがあり,伝統地名の復活保全や住所表示,公文書などの二言語化,さらに市役所などでのアストゥ リアス語使用の認知促進などに取り組んでいる。北部沿岸都市のヒホン/シション市 Gijón/Xixón は この分野で先行している例であり,中央政府の許可が必要である都市名も,すでにスペイン語とアス トゥリアス語の双方を正式名称としている。本文ではシション市 Xixón とした。一方,州都のオヴィ エド市は,アストゥリアス語の推進には消極的であり,アストゥリアス語名の Uviéu は正式名称では ない。 4) 所有形容詞は性数変化する語で,原則として,修飾する名詞の性数に一致した形が用いられる。アストゥ リアス語では,冠詞や指示詞,形容詞などの性数変化は,男性単数,男性複数,女性単数,女性複数, 中性の5つの変化形を持つ。中性と呼ばれるものは,素材の中性 neutru de materia と伝統的には呼ば れるが,不可算名詞に後置される形容詞などが取る特別の形式である。所有形容詞が名詞に前置され るとき,アストゥリアス語では定冠詞を伴うのが普通で,これはポルトガル語と共通する特徴である。 また,ここでは触れないが,後置された時の形にはアストゥリアス語本来の形式を保ったものと,ス 128 アストゥリアス語の所有表現の一形式 de mio (/ to / so...) をめぐって ― 周辺言語,特にポルトガル語との関係から ―:黒澤 直俊 ペイン語の影響を受けたタイプの2つが規範に採用されている。また,前置詞の de + 3人称の強勢形 の人称代名詞の表現は,所有を表す前置詞 de の用法とすべきであろうが,関連して1人称や2人称 の強勢形の代名詞とではなぜ現代語では所有の表現は形成されないのかという問題も残る。 5) Según nuestra interpretación (Gracía Arias 1979-80), se trataría de un recurso para manifestar la posesión, donde el aparente posesivo está inmovilizado en género y número porque sus orígenes no se encuentran en el posesivo latino sino en la adaptación analítica romance del genitivo del pronombre personal, TUI(> *toi > tou > to),SUI(> *soi > sou > so)y en su posterior generalización analógica a los seguidores de MEI. (García Arias 2003, p.279) 6) 中世アストゥリアス語には文学作品は残っていないので,これらの例は遺言書や財産譲渡などを取り 決めた,いわゆる公証人文書からの例である。ちなみにアストゥリアス語で書かれた最初の文学作品 で現存するのは 1639 年のアントン・デ・マリレゲラ Antón de Marirreguera による Pleitu ente Uviéu y Mérida pola posesión de les cenices de Santa Olaya「聖オライアの遺物の所有をめぐるオビエドとメリ ダの争い」と題された詩である。 7) Además del uso del posesivo como adjetivo concertado con el nombre del objeto poseído, xugada sua ’yunta suya’, a sua xugada ‘su yunta’, parentes meus ’parientes míos’, os meus parentes ’mis parientes’, se emplea un posesivo analítico para un solo poseedor en las formas del masculino singular, bajo la construcción de genitivo regido por el nombre del objeto mediante la preposición de: xugada de seu, parentes de meu. (Calero 19797, p.307) 8) ... tamén é chamado posesivo de propiedade plena ou exclusiva, pois talvez fose este o valor inicial da construción de + posesivo inmobilizado no xénero masculino (de meu, de teu, de seu, de noso, de voso, de seu), que marcaría unha relación de propiedade exclusiva, enfatizándoa (Ten a casa de seu). (Freixeiro Mato 20062, pp.120-121) 9) この Syntaxe Histórica Portuguesa を著した Augusto Epiphanio da Silva Dias は 20 世紀初頭にかけての ポルトガルにおける古典文献学の代表的研究者であった。彼の手になる Os Lusíadas の注釈本は圧巻 の出来と言ってよいが,Syntaxe Histórica Portuguesa は病床で書かれたため引用に誤りが多く記述が 混乱していると言われる。 用例出典 1 4 Miguéis, José Rodrigues (1960 , 1981 ). A Escola do Paraíso, Lisboa:Editorial Estampa. Miguéis, José Rodrigues (1975). O Milagre segundo Salomé, Lisboa: Editorial Estampa. 参考文献 3 Academia de la Llingua Asturiana (2001 ). Gramática de la Llingua Asturiana. 3ed. Uviéu: Academia de la Llingua Asturiana. Academia de la Llingua Asturiana (20056). Normes Ortográfiques. 6ed. (2005). Uviéu: Academia de la Llingua Asturiana. Calero, Ricardo Carballo (1973, 19797). Gramática elemental del gallego común.Vigo:Editorial Galaxia. Camões, José (dir.) (2002). As Obras de Gil Vicente Vol.I ~ Vol.V. Lisboa:Imprensa Nacional-Casa da Moeda. Camões, José (dir.) (2001). CD-ROM Gil Vicente — Todas as Obras. Lisboa:Comissão Nacional para as Comemorações dos Discobrimentos Portugueses. Cunha, Celso et Luís F. Lindley Cintra (1984). Nova gramática do português contemporâneo, Lisboa:Edições João Sá da Costa. Dias, Augusto Epiphanio da Silva (1918, 19705). Syntaxe Histórica Portuguesa. Lisboa: Livraria Clássica Editora. 東京外国語大学論集第 89 号(2014) 129 Freixeiro Mato, Xosé Ramón (20062). Manual de Gramática Galega. Vigo:A Nosa Terra. García Arias, Xosé Lluis (1979-80). Dos notes de sintaxis diacrónica n'asturiano. Archivum XXIX-XXX, pp.543545. Revista de la Faculdad de Filología. Universidad de Uviéu. García Arias, Xosé Lluis (2003). Gramática Histórica de la Lengua Asturiana. Fonética, Fonología e Introducción a la Morfosintaxis Histórica. Uviéu: Academia de la Llingua Asturiana. Huber, Joseph (1933). Altoportugiesisches Elementarbuch. Heidelberg:Carl Winters. (Tradução portuguesa:Gramática do português antigo (1986). Lisboa:Fundação Calouste Gulbenkian.) Ramalho, Énio (1985). Dicionário estrutural, estilístico e sintático da língua portuguesa. Porto:Lello & Irmão Editores. Teyssier, Paul (1982). Gil Vicente — O Autor e a Obra. Biblioteca Breve Vol.67. Lisboa:Instituto de Cultura e Língua Portuguesa. Vázquez Cuesta, Pilar y Maria Albertina Mendes da Luz (19713) Gramática Portuguesa I et II. Madrid: Gredos. Vicente, Gil (2000). La Barque de l'Enfer (Auto da Barca do Inferno), édition critique, introduction, traduction française & note de Paul Teyssier. Paris:Chandeigne. Williams, Edwin B. (1938). From Latin to Portuguese. Historical Phonology and Morphology of the Portuguese Language. 2nd editon (1962). Philadelphia : University of Pennsylvania Press. 130 アストゥリアス語の所有表現の一形式 de mio (/ to / so...) をめぐって ― 周辺言語,特にポルトガル語との関係から ―:黒澤 直俊 Dende los posesivos perifrásticos n'asturianu hasta les formes equivalentes en portugués KUROSAWA Naotoshi Arriendes de les formes normales de los posesivos, l'asturianu tien otru tipu de posesivu, llamáu perifrásticu, lo que presenta les siguientes caraterístiques: 1) úsase siempre precedíu de la preposición "de", 2) ye invariable en xéneru y númberu, siempre en neutru, 3) pal grupu nominal posesu siempre pospuestu. Son, por exemplu, el neñu de mio, la casa de mio, la ropa de to ...etc. Pa desplicar esta forma, García Arias propone l'etimoloxía d'orixe del xenitivu latinu de los pronomes personales y'l posterior entemecimientu con los axetivos posesivos. Tamién asina mos abulten les formes antigues nos documentos notoriales d'asturianu medieval. En gallegu esisten les formes equivalentes, pero pa portugués normalmente les gramátiques nun faen referencia, anque esisten esporádicamente. Con esti trabayu, l'autor el presente artigu intenta identificar esti tipu d'espresión en portugués y desplicar la so etimoloxía o espoxigar la so posibilidá d'estudiu pal futuru.