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9 シーズ名 学習・記憶を中心としたラットの高次認知機能

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9 シーズ名 学習・記憶を中心としたラットの高次認知機能
データベース
登録
2010.9
シーズ名
学習・記憶を中心としたラットの高次認知機能の脳内機構に関する
生理心理学的研究
氏名・所属 等
川辺
光一、文学研究科、准教授
<概要>
生理心理学的手法を用い、学習・記憶を中心としたラットの高次精神機能の脳内機構を解明すること
を目的とした研究を行っています。また、これらの高次精神機能の異常を伴った精神疾患の動物モデル
の作製にも取り組んでいます。
1)学習・記憶の脳内機構の解明
ラットを用いた脳損傷実験、薬理学的実験によって、学習・記憶、思考に代表される高次認知機能の
脳内機構の解明を目指しています。同時に、上記の目的を達成するために、ラットの高次認知機能を調
べるための行動課題の開発を試みています。
2)精神疾患動物モデルの行動評価
統合失調症などの精神疾患の動物モデルを作製し、その行動異常の性質を調べたり、行動異常に対す
る薬物の効果を調べたりすることにより精神疾患モデルとしての妥当性を評価するとともに、これらの
動物に認められる行動異常の脳内機構の解明を目指しています。
<利用・用途・応用分野>
・抗認知症薬、抗精神病薬などの薬効評価。
ラットを用いた記憶実験。
キーワード
精神疾患モデル動物の作製。
上図のラットは作業記憶の障害、常
同行動、自傷行動に基づくと思われる
頭部の傷が認められ、統合失調症、自
閉症などの精神疾患モデルの候補とし
て期待される。
学習・記憶、脳内機構、精神疾患、薬効評価
データベース
登録
2010.9
シーズ名
分裂酵母を用いた薬剤(生理活性物質)スクリーニング
氏名・所属 等
中村
太郎、理学研究科・生物学、教授
<概要>
生理活性物質のスクリーニングはこれまで培養細胞等を用いておこなわれているが、高コスト、操作
が煩雑などの問題がある。酵母は単細胞の真核生物で基本的な構造は高等生物と同じである。さらに
出芽酵母、分裂酵母はモデル生物として基礎研究も盛んに行われており、ゲノム配列もすべて明らか
にされている。高等生物にも保存されている遺伝子も多く存在することもわかっている。
分裂酵母および出芽酵母の基礎研究によって得られた知見を薬剤のスクリーニング等に応用する。低
コストで簡単な操作で行うことが可能となる。またヒト遺伝子等の発現も可能なので、あるタンパク
質の機能を阻害する物質のスクリーニングも可能である。
右図、分裂酵母(bar 10µm)
<アピールポイント>
低コストでスクリーニングが可能である。
<利用・用途・応用分野>
医学、薬学、工学、生命科学
<関連するURL>
http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/biol/cbiol/pombe/pombe_J.htm
キーワード
分裂酵母、出芽酵母、生理活性物質、薬剤、スクリーニング、遺伝
子、ゲノム
データベース
登録
2010.9
シーズ名
糖修飾N−複素環カルベン金属錯体
氏名・所属 等
西岡 孝訓、理学研究科・物質分子系専攻、准教授
<概要>
糖は疎水性と親水性の両方の性質をあわせもつだけでなく、生体内でも重要な役割を担っている、安
価に手に入る光学活性物質である。これらの性質を金属錯体に組み込むことで、有害な有機溶媒を用い
ない水を溶媒とした有機合成反応のための水溶性触媒や、新たな医薬品の開発を目指し、N−複素環カル
ベンを用いて糖を金属錯体に組み込む新しい方法を開発した。
グルコース誘導体を導入したNHC配位子をもつニッケル錯体(左)とイリジウム錯体(右)
<アピールポイント>
N−複素環カルベン(NHC)配位子は、強いσ−供与性を示し、その錯体は Grubbs 触媒に代表される
ように、有用な触媒となりうる。糖、とくにグルコースは安価で純度の高いキラルソースであるだけで
なく、生体内での細胞あるいは分子認識を担っているため、これをNHC錯体触媒に組み込むことで反
応選択性の向上が見込まれる。また、抗ガン剤シスプラチンに代表される金属錯体医薬品では、糖を導
入することにより、その副作用の緩和が期待されている。一般的にNHC配位子は多くの金属イオンと
強い結合をつくり、安定な錯体を与えるので、糖部位が金属イオンからはずれにくいと考えられる。
<利用・用途・応用分野>
環境親和型触媒・医薬品・抗菌剤
キーワード
環境親和型触媒、医薬、抗菌剤、金属錯体、カルベン
データベース
登録
2010.9
シーズ名
生物活性物質の合成
氏名・所属 等
森本
善樹、理学研究科・物質分子系専攻、教授
<概要>
自然科学の学問分野にあって化学の最も特徴的な側面の一つは、分子のレベルで物質を合成すること
ができるということである。従って、自由自在に物質合成ができるということは化学の究極の目標の
一つであると思われる。我々の研究室では、生命現象の担い手である天然有機化合物(構造学的、生
物学的におもしろい二次代謝産物)を主な対象として、その全合成を研究の中心に据えながら物質合
成のレベル向上に貢献したいと考えている。さらに、全合成研究から派生する様々な科学的側面にも
興味を持ち、分子サイドの視点から生命現象の本質を理解したいと考えている。また、機能分子の創
製も行っている。これまでに化学合成した化合物を以下に示す。
細胞毒性物質
H
O
OH
Br
HOO
O
H
O
H
aurilol
O
H
OH
O
O
O
H
H
H
H
longilene peroxide
HO
OH
OH
OH
14
HO
O
H
O
O
H
H
teurilene
H
HO
OH
O
O AcO OR
H
OH
H
14-deacetyl eurylene (R = H)
eurylene (R = Ac)
N
H
植物根伸長抑制物質
H
N
N
H
14
haliclamine A
haliclamine B:
15
N
N
O
pyrinodemin A
CO2H
NH2
2-amino-3-cyclopropylbutanoic acid
14,15
脂質過酸化抑制物質
抗マラリア原虫活性
13
抗ウイルス及び抗菌活性物質
OH
OR
O
HO
H
H
OH
H
N
O
OH
O
HO2C
O
その他の物質
H
H
O
H
O
HO
H3C
H
OH
epoxy tri-THF diol
H
H
H
N
O
H
O
stenine
Br
Br
CH3
Cl
virantmycin
CH3
H
H
O
H
O
O
CH3
ekeberin D4
OMe
13-hydroxy-14-nordehydrocacalohastine (R = H)
13-acetoxy-14-nordehydrocacalohastine (R = Ac)
HO
OMe CH3
O
O
O
H
H
H
glabrescol
O
O
O
H
H
enshuol
O
OH
H
H
Br
Cl
HO
H
O
HO OH
intricatetraol
O
H
OH
O
Cl
HO
H
O
O
O
H
H
H
omaezakianol
O
H
OH
H
OH
H
<アピールポイント>
生理活性天然有機化合物は医薬品や農薬などのリード化合物として期待されている。そのような研究
分野のシーズが提供できたらと思います。
<利用・用途・応用分野>
医薬品・農薬・ライフサイエンス・プロセスケミストリー
<関連する知的財産権>
特許 名称 過酸化脂質生成抑制剤及びこれを含有する組成物
出願人 三井化学株式会社
出願番号 特願平 10–220451
<関連するURL>
研究室ホームページ http://www.sci.osaka–cu.ac.jp/chem/org2/org2j.html
キーワード
生理活性物質、化学合成、創薬、医薬品、農薬
データベース
登録
2010.9
シーズ名
高効率モノクローナル抗体作製技術
氏名・所属 等
立花
太郎、工学研究科・化学生物系専攻、准教授
<概要>
モノクローナル抗体は、バイオ研究はもとより、環境ホルモンの検出、BSE(狂牛病)抗原の判定や各
種疾患の診断薬としても利用され、環境・食品・医療など様々な分野で私たちの暮らしに欠かすことの
出来ないツールとなっている。近年、蛋白質工学や発生工学の進歩により、異種動物抗体のヒト化や動
物を用いた完全ヒト抗体の産生が可能となった。それらがきっかけとなり、モノクローナル抗体をがん
などの治療薬として用いる抗体医薬の普及が爆発的に進み、以前にも増して優れたモノクローナル抗体
作製法の開発が強く求められている。私達は簡便で効率のよいモノクローナル抗体の作製法に関する研
究を行い、腸骨リンパ節法と新規アジュバンドを組み合わせることで高効率なモノクローナル抗体作製
法を樹立することに成功した。
<アピールポイント>
本法はわずか 1 ヶ月で特異性・機能性の高いモノクローナル抗体を作製することが可能である。また
その成功率も従来法に比べ格段に高い。
<利用・用途・応用分野>
キーワード
抗体、バイオ、医療、環境、健康
データベース
登録
2010.9
シーズ名
ケラチンを基材とする高機能細胞足場
氏名・所属 等
田辺
利住、工学研究科・化学生物系専攻、教授
<概要>
iPS 細胞の登場で再生医療への期待が益々高まっているが、再生医療の実現には細胞に加えて増殖分
化因子、細胞足場が重要な要素となる。細胞足場材料としてはコラーゲンが最もよく研究されている
が、BSE 混入の危険性などが指摘されている。我々は羊毛ケラチンを原料として多孔性細胞足場を作
製してきた。羊毛は非血管組織であるので病原体の混入の可能性が低い。また、システイン残基に富
むケラチンは、自然にジスルフィド架橋が起こり非水溶性成形体ができるという特徴を有する。これ
まで、ケラチンを原料として2種の多孔体を作製した。一つはケラチン粉末を NaCl 粒子と共に圧縮成
形後、水中で NaCl を溶出することで得た圧縮成形ケラチン多孔体である。もう一つは、アルギン酸カ
ルシウムビーズを加えたケラチン水溶液を凍結乾燥後、ビーズを EDTA 水溶液中で溶出した極めて空隙
率の高いソフトスポンジである。
Fig. 1 圧縮ケラチン多孔体の製法
Fig. 2 ソフトケラチンスポンジの製法
これらを臨床使用するため、さらに多孔体を高機能化するため次の二つのテーマに取り組んでいる。
(1)血管増殖因子を配備した多孔体を作製:多孔体を細胞と共に生体内に入れた場合、多孔体内部の
細胞への栄養補給が困難になり内部の細胞が壊死するという問題を解決する。
(2)ケラチン多孔体の分解制御:生体に入れた多孔体は、患者組織の再生と共に分解消失することが
望ましい。用途に応じた分解速度を持つ多孔体の品揃えを目指す。
<アピールポイント>
現在、試みている二つの多孔体への機能付加は、再生医療の実現のため極めて重要であり、これが達
成されれば実用化への道が開ける。
<利用・用途・応用分野>
再生医療分野に加え、物質生産のための高密度細胞培養器材としても使用できる。
<関連する知的財産権>
ケラチン多孔体・田辺利住、山内清・特願 2005-58220
<関連するURL>
http://www.bioa.eng.osaka-cu.ac.jp/bme/index.html
キーワード
ケラチン、多孔体、細胞足場、生分解性、血管新生
データベース
登録
2010.9
シーズ名
全反射蛍光 X 線分析法による微量元素分析
氏名・所属 等
辻
幸一、工学研究科・化学生物系専攻、教授
<概要>
血液にはさまざまな元素が含まれており、
生体内で重要な役割を果たしているが、過剰
に含む場合や不足している場合は疾患を引
き起こす可能性がある。そのため、血液中の
元素を分析することは健康診断や医学研究
で重要である。従来の血液元素分析は原子吸
光法、ICP 発光分光分析などによって行われ
ている。しかし、これらの分析法では、血液
試料が数 mL 必要である、前処理が煩雑であ
る、などの短所がある。このような欠点は全
反射蛍光 X 線分析(TXRF)法により克服する
ことができる可能性がある。特に、複雑な前
処理を行わず TXRF により全血試料を測定す
るための簡便・迅速な前処理方法について検
討している。
血液試料をガラス基板の中央に 10μL 滴
下・乾燥し、これを卓上型全反射蛍光 X 線分
析装置(NANOHUNTER, 理学電機工業)によっ
て測定する。As 化合物を飲料水に含ませて投
与した As 中毒のラットの全血を分析したと
ころ、ラットの全血試料に対するスペクトル
から As のピークを確認することができた。
全反射蛍光 X 線分析装置の構成
尿の分析例
尿の分析例
<アピールポイント>
100 秒程度で ppm から ppb レベルの元素分析が大気中で可能である。しかも、試料の量は 10・L 程度
で良く、測定後に試料を残すことも可能である。
<利用・用途・応用分野>
その他の応用としては、生体組織の分析、環境水や大気中の浮遊粒子状物質の分析が期待される。ま
た、マイクロ化学チップにより処理した試料に対しても、全反射蛍光 X 線分析法は有効である。
<関連する知的財産権>
発明者:辻 幸一、田中 啓太、中野 和彦、北森 武彦、渡慶次 学、出願人:科学技術振興機構「マ
イクロチップ並びにそれを用いた分析方法及び装置」、PCT 出願 PCT/JP2006/317078、提出日:2006
年 8 月 30 日.
<関連するURL>
http://www.a-chem.eng.osaka-cu.ac.jp/tsujilab/
キーワード
微量元素分析、マイクロ化学チップ、X 線分析、微小量分析、
その場分析、バイオ試料、環境分析
データベース
登録
2010.9
シーズ名
高空間分解能 3 次元蛍光X線分析
氏名・所属 等
辻
幸一、工学研究科・化学生物系専攻、教授
<概要>
共焦点型蛍光X線分析法では、一次X線をポリキャピラリーレ
ンズなどでマイクロビームに集光して試料に照射する。このとき
検出側のポリキャピラリーレンズの焦点を、照射したマイクロビ
ームの光路中の一点(照射側レンズの焦点位置)に合わせれば、
特定の空間内でのみ発生する蛍光X線を検出することができる。
この実験配置で試料ステージを x-y-z 軸方向に 3 次元走査すれ
ば、試料を損傷させることなく、非破壊で 3 次元の元素分析を
行うことができる。
自動車塗装片の非破壊的元素分析結果
自動車塗装片(断面図)
例えば、自動車交通事故における鑑識捜査では自動車塗装片の深さ方向の元素分析が必要とされる。
この手法を利用すれば、非破壊的に(鑑識資料を破壊せず)内部の情報を取得できる。
<アピールポイント>
非破壊的に試料内部元素分析が可能である。大気中での測定なので、水分を含む試料にも適用できる。
<利用・用途・応用分野>
植物、生体試料の内部の元素分布解析、半導体材料における異物解析、環境試料や考古物試料の分析
<関連する知的財産権>
[1] 発明者:辻 幸一、出願人:科学技術振興機構、
「擬接触型キャピラリーを用いる微小領域 X 線分析
方法及びその装置」、特許第 3989772 号(登録 2007 年 7 月 27 日)、 出願日:2002 年 5 月 21 日.
[2] 発明者: 辻 幸一、駒谷慎太郎、内原博、坂東篤、出願人:公立大学法人大阪市立大学、 株式会
社堀場製作所、「蛍光 X 線検出装置及び蛍光 X 線検出方法」
、特願 2010-104705, 出願日:2010 年 4
月 30 日.
<関連するURL>
http://www.a-chem.eng.osaka-cu.ac.jp/tsujilab/
キーワード
元素マッピング、3 次元分析、X 線分析、深さ方向分析、
その場分析、バイオ試料、環境分析、異物解析
データベース
登録
2010.9
シーズ名
バイオインターフェースとしての天然由来ポリアミン
氏名・所属 等
長﨑 健、工学研究科・化学生物系専攻、教授
<概要>
再生医療・遺伝子治療・抗癌治療などの先端医療が成功するためは、細胞培養法・遺伝子導入法・薬剤送
達法などの優れた基幹技術が必要である。我々は、天然に存在するポリアミン化合物を基体とし生体適合性
や生分解性に優れ安全で効率の高い薬剤運搬材料や培養基材の開発を目指し研究を行っている。
ガラスやプラスチック基材へ細胞接着性を向上させる上で、微生物が産生する ε-ポリ-L-リジン(ε-PLL)が
有用であり、種々の培養細胞や初代細胞の培養に適用可能で、良好な細胞骨格形成をもたらすことを見出し
た。
また天然物由来アミノ化多糖であるキトサンを原料とし、化学修飾による高機能化を行っている。キトサンの
遺伝子キャリアとしての機能を向上させるために、アミノ基密度を増大させた 6-アミノ-6-デオキシキトサン
(6ACT)は生理条件下においてキトサンよりもはるかに優れた水溶性や遺伝子導入効率を有する。さらに、
6ACT に糖修飾を施すことで、より水溶性や細胞適合性に優れかつ細胞ターゲット能を有する素材となる。
一方、ε-PLL は従来の α-PLL や PEI 等と比較して細胞毒性が低く、種々の方法で高分子量化すると、PEI
や市販のカチオン脂質系遺伝子導入剤と比較しても、それらの活性を上回る優れた遺伝子キャリアとして機能
する。
O
OH
O
O m
O
H2N
PLL
H
N
O
NH2+ClS
NH2
H
OH
N
S
ε-PLL
H2N
PLL
O
NH2
HO
NH2+Cl-
H2N
PLL
30
PLL
NH2
O
NH2
n
HO
HO
S
S
NH2+Cl-
N
H
PLL
NH2
HO OH
OH
O
n
HO
OH
NH2
SS-PLL
Δ
– H2O
PLL
NH2
n
HO
OH NH
O
Dehydrated-PLL
HO
O
NH2
OH
O
HO
O
H2N
n
6ACT
NH2+Cl-
H
N
O
NH2
mEG-PLL
OMe
C
H
N
H
m
m=1, 9, 23
MeO
O
x
O
NH2
y
Lac-6ACT
<アピールポイント>
天然素材を基体とし細胞親和性の高い薬剤運搬材料の骨格となるポリアミンに対して、さらに組み合わせ可
能な細胞内局在の制御技術も保有している。例えば、核内移行因子であるインポーティンβタンパクをポリアミ
ンにコンジュゲートすることにより、標的細胞のさらに核内へ効率的に薬剤を送達するシステムを構築すること
が出来る。
<利用・用途・応用分野>
1. 細胞培養基材用コーティング剤
2. 遺伝子・核酸化合物・抗がん剤など各種薬剤のデリバリーキャリア
3. 薬剤の核内送達システム
<関連する知的財産権>
核内移行性核酸構造体・(独)科学技術振興機構・特許 4034274 号
6-アミノ-6-デオキシキトサン,その製造方法およびそれより成る核酸導入剤・(独)科学技術振興機構・特許 4518804 号
細胞培養器具及びその製造方法・チッソ,長﨑 健・特開2007−20444
核酸複合体及びそれを用いる細胞内への核酸導入方法・チッソ,長﨑 健・特開2006-304644
<関連するURL>
http://www.bioa.eng.osaka-cu.ac.jp/bfc/
キーワード
細胞培養基材、遺伝子導入剤、ドラッグデリバリー
データベース
登録
2010.9
シーズ名
安全性の高い止血剤用ハイドロゲル
氏名・所属 等
長﨑 健、工学研究科・化学生物系専攻、教授
<概要>
現在、手術用止血剤としてフィブリン製剤が大量に使用されている。しかし、一般にヒトもしくは動物由来材料
はウイルスやクロイツフェルトヤコブ病などの感染に対する危惧が払拭できないため、医療現場においては他
の安全性の高い材料への置換えが切望されている。
我々は生分解性や生体適合性に優れる微生物が産生する高
分子を基体とし、生体に優しいポリアミンとポリアルデヒドからな
る組織接着性ハイドロゲルを新規に開発した。ゲルを形成する
高分子の主鎖高次構造(三重螺旋構造)や分子量を制御する
ことにより、ゲル化速度及びゲル強度が止血剤として適したハイ
ドロゲルであり、コラーゲンフィルムなどの接着力も高いことを見
出している。ゲル形成成分であるポリアルデヒドとポリアミンは共
に出発原料が食品などにも利用されており高い安全性が期待
される。培養細胞に対する細胞障害性の低さやマウス体内での
生分解性が明らかにされており、マウス出血モデルにおける止
血効果も現在臨床で使用されているフィブリン製剤と同様の効
果を持つことが確認できている。
図. 脳神経外科手術へのハイドロゲルの利用
CHO
OH
HO
HO
OH
HO HO
O
OH
NaIO4
O
OH O
O
OH
x
O
OH
at 4 °C
O O
HO
HO
H
y
HO
O
HO
pH 13
O
O O
HO
O
OH
CHO
OH
x
H
y
β-1,3-グルカン由来ポリアルデヒド
O
NH2
H
OH
N
C
H
O
H2N
ε-PLL
PLL
O
O
23
30
O
HO
O
H
C
N
OH
O
NH2
NH2
O
23
30
OH
NH
N
C
H
O
OH
30
高分子量化ポリアミン
スキーム. ハイドロゲル形成二成分の合成スキーム
<アピールポイント>
ハイドロゲル形成に用いる二成分はヒトや動物由来の組成物を含まないので、ウイルスやプリオンの感染リス
クが非常に低い。本研究で用いる b-1,3-グルカン(ダイソー社製アクアβ®)は側鎖グルコースの分岐率が非
常に高い(ほぼ 100%の分岐率) b-1,3-グルカンであり、側鎖グルコースのアルデヒド化が進行しても高い水溶
性を維持し、製剤として高濃度水溶液を調製可能である。さらに、b-1,3-グルカンは三重螺旋構造を形成し、
その螺旋内部は疎水的な空孔を有する。疎水空孔には難水溶性薬剤を複合体として取込み水溶化し、徐放
も期待でき、薬剤放出ハイドロゲルとして機能することが期待される。
<利用・用途・応用分野>
1. 組織接着剤、止血剤、再生医療用スキャフォールド
2. 骨充填、美容形成注入材
3. 褥瘡用製剤材料
<関連する知的財産権>
β-1,3-グルカン由来ポリアルデヒド/ポリアミンハイドロゲル・ダイソー,大阪市大・PCT/JP2008/070052
<関連するURL>
http://www.bioa.eng.osaka-cu.ac.jp/bfc/
キーワード
ハイドロゲル、止血剤、組織接着性
データベース
登録
2010.9
シーズ名
新しい分子触媒の創製
氏名・所属 等
南
達哉、工学研究科・化学生物系専攻、准教授
<概要>
ナノサイエンス、IT技術を支える分子をつくる手法は将来に向けて重要である。身の回りの物質は
目には見えない分子の世界であり、分子が様々な働きを担うことで生命から地球環境までを動かして
いる。分子の働きには独特の「形」が不可欠であり、その「形」をつくる技術が有機合成である。
新しい分子は分子と分子との反応によってつくられる。そのとき、エネルギーの節約や廃棄物の減少
のため触媒が用いられる。触媒は分子と分子との反応に介在し、反応を促進する物質である。例えれ
ば、原料を製品に変える「金型」に相当し、繰り返し使用することができる。触媒を用いた化学反応
は,原料から付加価値の高い生成物を低いコストで与える工業的に重要な手法である。従来触媒とし
て,分離の容易な固体型の化合物が用いられてきた。しかし,固体型の触媒では実現できる化学反応
が限られる。また、反応条件に高温・高圧を必要とするなど効率の点での制約が大きい。
より多くの機能を持った分子をつくるには、より精巧な触媒が必要とされる。精巧な「金型」をつく
るには、精密な加工が不可欠である。そこで、精密な加工のできる分子を触媒として利用する分子触
媒の手法が考えだされた。本研究は,このような背景をもとに、これまでにない新しい分子触媒の創
製を目指して行われており,将来の展望が十分に期待できる。
<アピールポイント>
本研究は,次の3点を基盤としており、学術的価値も高い。
1 リン-炭素二重結合を含むπ共役分子の化学
2 リン-炭素二重結合への付加反応
3 パラジウムを含む環状分子の合成
本研究により,様々な環状パラジウム錯体が合成できた。分子触媒の中心となる金属はパラジウムで
ある。パラジウムは、有機合成における触媒反応を引き起こす作用のある金属として最も汎用的であ
る。また,高効率を目指すことで、コストに関してもクリアできるレベルにある。
研究の展望
環境に調和し
たものづくり
キラル
医薬品
機能性
材料
i-Pr
CH3OH2C
H
C
i-Pr
H
CH3OH2C
PR'3
Cl
P
R
COOR
ホスフィン配位型
パラダサイクル触媒
Cl
P
R
i-Pr
N
Pd
Pd
R
N
C
i-Pr
P
COOR
Ar
R
カルベン配位型
パラダサイクル触媒
光学活性
6員環状ホスフィン
分子触媒
パラジウムを含む
環状分子の合成
研究の基盤
リン-炭素二重結
合への付加反応
リン-炭素二重結合
を含むš 共役分子
<利用・用途・応用分野>
合成した環状パラジウム錯体は右手型と左手型を区別してつくられており、不斉合成を行うこともで
きる。本研究の展望として、キラル医薬品や機能性材料などの働きをもつ分子をつくりだせる。
<関連する知的財産権>
該当なし
<関連するURL>
http://www.a-chem.eng.osaka-cu.ac.jp
キーワード
有機合成、不斉合成、触媒反応、分子触媒、有機金属
データベース
登録
2010.9
シーズ名
三次元CT動画像グラフィクスとユーザインターフェース
氏名・所属 等
柳原
圭雄、工学研究科・電子情報系専攻、准教授
<概要>
従来主たる医用放射線画像は2次元画像であり、二次元面で
の解析・計測が行われてきました。近年センサーの発達により
三次元での撮影が容易にできるようになり、さらに時系列での
撮影も可能となりました。結果、時間変化のある3次元画像が
診断の主流になりつつあります。3次元の画像のデータ量は2
次元のものより二桁多く、時間変化を捉えるとさらに2桁多く、
診断を支援するシステムが必要とされてきています。
解決すべき多くの課題があります。
・3次元では個別の臓器や隠れた臓器を人が観察しやすいよう
に表現する必要があります。そのための認識技術が必要であり、
認識結果を適切に表現するCG技術も必要です。
・観察時には、人体の臓器と同じ時間変化で表示でき、また、
観察場所の選択が人間の直感に合わせて自在に変化できること
が必要となります。最近のPCでは高度なCGハードが備わっ
ていることからどのようにソフトで実装をするかが重要です。
・処理の即時性が求められます。動画像を表示しながら認識な
どの処理を追加しても高速に処理できる技術が必要とされま
す。処理時間短縮にはGPUの利用が有望です。
現在、システムを洗練させ、以下の開発を続けています。
・断層像の積み重ね表示からボクセル表示へとシステムを変更
した場合の時間性能を検討しています。通常CGでは外面を中
心にモデルを技術していきますが、医用画像の場合は、通常の
CGのように境界面を用いた表現も有用ですが、境界面だけで
なく内容物も用いた表現も重要です(時間がかかります)
。
・観察方向の直感的な指定に種々のセンサーを利用します。す
でに開発した磁器センサーのインタフェースを汎用化して、ほ
かのセンサーの接続を目指します。
・HMDやPDAを利用して身近に撮影像やほかの情報を表示
し、実外界との親和性の高いサブシステムを開発しています。
・これらを実現するための最新のソフトウェア工学技術による
CG応用
GPGPU
CUDA
OpenCL
観
察
シ
ス
テ
ム
画像処理
CT 処理
動画処理
GUI
ソフトウェア工学
パターン応用
リファクタリング
AR 技術
表示例
システムの開発を行っています
<アピールポイント>
小型で処理が高速な表示システムを目指しています。
<利用・用途・応用分野>
直感的観察装置、高速処理
<関連する知的財産権>
なし
<関連するURL>
なし
キーワード
表示例
時系列表示システム、ユーザインターフェース、GPU
データベース
登録
2010.9
シーズ名
麻酔薬の薬物動態および効果の関係
氏名・所属 等
浅田
章、医学研究科・麻酔科学、教授
<概要>
麻酔学および集中治療医学は、手術の際の麻酔や鎮痛(痛みを和らげること)、あるいは重症患者
の治療をも対象分野とし、現代の医療に無くてはならない分野である。麻酔と神経系、循環の関係
を検討し、安全な麻酔に貢献するとともに、心肺蘇生法の普及にも努めている。
<アピールポイント>
麻酔薬の薬物動態および効果の関係を、各種病態下および併用薬物の存在下で解明する。また、麻
酔薬の作用部位である中枢神経系の濃度と睡眠・鎮痛効果の関係を求める。麻酔と心臓や腎臓の交
感神経との関係を求める。また、麻酔薬の作用機序を電気生理学の面から解明する。さらに、心肺
蘇生法を一般市民に迄広く普及させ、救急患者の致命率、予後の改善を計る。
<利用・用途・応用分野>
新しく開発された麻酔薬の効果判定、薬物動態の解明
肝血流量および冠状動脈血流量の新たな測定法の開発
医師および一般市民を対象とした心肺蘇生法の講習
キーワード
麻酔科学、神経科学、薬物動態、ペインクリニック
データベース
登録
2010.9
シーズ名
2型糖尿病における発がん感受性因子の解明
氏名・所属 等
石井
真美、医学研究科・都市環境病理学、特任助教
<概要>
現在、わが国では死因の第一位ががんである。一方、近年、日本社会の大きな健康問題となってきて
いるメタボリックシンドロームで注目されているように、肥満を背景とした 2 型糖尿病の患者数も
年々増加している。厚生労働省の 2007 年国民健康・栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる人およ
び糖尿病の可能性がある人をあわせると 2,200 万人を超える。近年、がんの背景要因としても肥満や
糖尿病が注目されるようになってきており、これらの関係を検討した疫学研究が散見されるようにな
った。これらの報告より、肥満や糖尿病は悪性腫瘍発生の有意な危険因子であることが示唆されてお
り、特に、膵がん、大腸がんや子宮がんと関連が深いとの報告はある。しかし、がん発生と糖尿病の
関連については、まだまだ不明な点は多い。がんの予防や治療法を考えていく上で、今後は、メカニ
ズムの解明が望まれる。
我々は、糖尿病が発がんを促進するのか、また、促進するならばどの臓器に対して感受性が高いかど
うかを調べるために、肥満を伴う2型糖尿病モデルラットを用いて多臓器発がん実験を行った。膀胱、
大腸、小腸、肝臓において、糖尿病が発がんを促進することが示された。そこで、今後は、これらの
臓器における糖尿病の発がん感受性因子を解明することを目的に、研究を行っている。
糖尿病により発がんが促進するメカニズムの 1 つとして、インスリン抵抗性の介在が指摘されてい
る。インスリンは、ヒト体内で膵臓から分泌される、血糖値を低下させる唯一のホルモンである。こ
のホルモン作用の低下、すなわちインスリン抵抗性は糖尿病における高血糖のみならず、発がんを促
進する重要な原因のうちのひとつであることが、近年明らかになってきている。本研究では、従来の
化学発がん実験に加えて、糖尿病治療薬を用いた実験を行うこととした。一般臨床でも広く用いられ
ているインスリン抵抗性改善薬を用いて、インスリン抵抗性を改善することにより、発がんが抑制さ
れるかを検討している。
<アピールポイント>
本実験で用いた2型糖尿病モデルラットは肥満を呈し、これによりインスリン抵抗性を示し2型糖尿
病を発病する。これはヒトにおいて肥満より糖尿病にいたる2型糖尿病の病態と非常に類似している
ため、糖尿病とがんの関係における病態の検討に有用である。
<利用・用途・応用分野>
糖尿病に関連する薬は多数あるが、それらが発がんを抑制するかどうかは明らかではない。それらの
薬が糖尿病における発がんを抑制するかどうかの検討やそのメカニズム解析、新薬の開発や健康食品
の効果の有無の検討にも応用できると考える。
キーワード
発がん、糖尿病、インスリン抵抗性
データベース
登録
2010.9
シーズ名
内分泌系研究の法医分野への応用
氏名・所属 等
石川
隆紀、医学研究科・法医学、准教授
<研究概要>
法医解剖・鑑定においては, 死因のみならず受傷時の状況等についての医学的判断が求められること
があります. これまで私たちは, 異常環境下, 加齢性変化, アルコール性肝疾患, 低栄養, 薬物乱用
等の観点から, 研究テーマの基盤となるあらゆる慢性的なストレス病態に対する視床下部-下垂体-副
腎系 (HPA-Axis) の形態学的および生化学的変化について検討してきました. 近年では極早期のスト
レス反応として, 細胞の呼吸量を指標として向精神薬の培養細胞への影響について, 溶存酸素測定装
置を用いて検討しています.
<研究テーマ>
① 心的ストレスの強度の評価, 特にヒト特異的な行動ともいえる自殺の病態解明.
② 向精神薬乱用者の中枢神経系および内分泌系における神経変性物質の発現について.
③ 細胞の呼吸量を指標とした, 未知の化学物質の迅速・正確かつ簡便な定性・定量試験法の開発
35
30
25
20
15
A
B
10
non-abusers
intoxication
others
abuse
薬物未使用者(A)および向精神薬乱用者(B)の下垂体.赤紫色に染まる糖タンパクが増加しているのが分かります.
(nA)
Oxygen consumption after addition of drugs
Electron microscopic observation of mitochondria
5000
4000
3000
2000
1000
0
150
250
350
450
550
Impaired respiration (-)
Impaired respiration (+)
time (min)
medium
Haloperidol
Cisplatin
Diazepam 1
Levomepromazine maleate
Haloperidol
Cisplatin
Doxorubicin
Doxorubicin
Diazepam 2
Levomepromazine maleate
グラフは胃粘膜細胞の各種薬剤における呼吸量の変化を表しています. 胃粘膜細胞ではレボメプロ
マジンのグラフの傾きが小さく感受性が高い. 一方, 傾きが大きいジアゼパムは感受性が低い. 電子
顕微鏡において呼吸量に変化が認められなかったものは, ミトコンドリアのクリスタの形態は維持さ
れています. 薬剤感受性が認められたものはミトコンドリアが萎縮し内部構造は崩壊しています.
キーワード
法医病理学、薬物乱用、内分泌
データベース
登録
2010.9
シーズ名
癌悪液質の病態解明
氏名・所属 等
石河
修、医学研究科・臨床医科学専攻、教授
<概要>
1987 年、当教室では進行癌患者に認められる癌貧血は anemia-inducing-substance(AIS)により生
じることを報告した。さらにその後、癌悪液質の発症と AIS の関係が検討され、AIS は貧血のみなら
ず癌の進行にともなって認められる免疫不全にも関与していることを報告してきた。これまでの研究
により、癌悪液質における担癌固体の体重減少は初期の骨格筋細胞および脂肪細胞の apoptosis と後
期の AIS による担癌固体の代謝異常が原因と考えられた。また、この apoptosis の異常は肝、腎、肺、
脾臓などの臓器でも認められていることが判明し、このことが癌悪液質の多臓器不全の一因になって
いると考えられる。これら癌悪液質の病態を解明していく。
<アピールポイント>
癌悪液質予防および治療には apoptosis の予防および AIS の除去が有用であると考えられ、臨床的応
用することにより癌悪液質を改善し、そのことが患者の QOL 向上につながる。
<利用・用途・応用分野>
癌治療および緩和医療に役立つ。
<関連する知的財産権>
なし
<関連するURL>
なし
キーワード
癌悪液質、AIS、多臓器不全
データベース
登録
2010.9
シーズ名
子宮筋腫の自然史に関する研究
氏名・所属 等
市村
友季、医学研究科・産科婦人科学専攻、講師
<概要>
子宮筋腫に関する自然史の研究
・子宮筋腫はなぜできるのか?
・子宮筋腫のできやすい人、できにくい人の違いは?
・子宮筋腫の大きくなりやすい人、なりにくい人の違いは
・閉経した後、早く小さくなる人、なかなか小さくならない人の違いは?
・子宮筋腫と子宮肉腫の関係は?
これらは以前から疑問に思われてきたことですが、これまではそのような疑問に対する研究は行われ
てきませんでした。それはこれまで、子宮筋腫に対する治療として子宮の摘出が行われ、研究する余
地すらなかったためです。しかし最近では妊娠出産の高齢化や、筋腫があっても子宮は残したいと思
う女性の意識の変化などから、子宮筋腫に対する治療方法は大きく変化し、それに伴い子宮筋腫に関
する研究も行われるようになってきました。われわれの教室で始めた子宮筋腫に対する組織検査の手
技で得られた子宮筋腫での研究結果をもとに、子宮筋腫の増大縮小に関わる因子の解明、さらには『な
ぜ子宮筋腫はできるのか』という子宮筋腫に関する究極の疑問を解明することを目的としています。
<アピールポイント>
子宮筋腫がなぜできるのかという疑問が解明することにより、子宮筋腫の発生をなくすこと、あるい
はその発生頻度を減らすことができる可能性があります。あるいはその解明が困難である場合、子宮
筋腫の大きくなりやすい人となりにくい人との違いが分かれば子宮筋腫を大きくしないようにするこ
とが可能になるかもしれません。現在子宮筋腫の発生率は約 30%と言われており、筋腫で悩んでいる
女性の方は非常に多く、子宮筋腫の発生を抑制するあるいは恒久的に縮小させるような薬剤の登場が
期待されています。
<利用・用途・応用分野>
製薬業界
ペット産業(犬などにも筋腫発生の可能性があることから、ペットに対する筋腫発生の予防など)
<関連する知的財産権>
なし
<関連するURL>
なし
キーワード
子宮筋腫の自然史、切らずに治す子宮筋腫、子宮筋腫の予防
データベース
登録
2010.9
シーズ名
職業性ストレスの測定とメンタルヘルス対策
氏名・所属 等
井上
幸紀、医学研究科・神経精神医学、准教授
<概要>
z
うつ病を含むメンタルヘルス不調は労働生産性、職員の士気、企業価値に影響する
z
職業性ストレスを多面的に評価する(例:ストレス値、労働者の性格など個人要因など)
z
労働者個人への介入として、医師として面接指導を行う事ができる
z
職業性ストレス軽減のための介入として、他の職場データと比較して改善のための提言を行える
z
嘱託精神科産業医を派遣し継続的介入が可能である
z
講演会講師などポイントでの利用も可能である
情報化社会の到来に伴い、職場における健康障害は塵肺や難聴などの身体的なものから、うつ病中心
としたメンタルヘルス不全に移りつつあります。メンタルヘルス不全から自殺などの悲しい事故が生じ
た場合、安全配慮義務の観点から企業側の責任が問われ、多額の賠償金・和解金が必要になったり、そ
れが大きく報道される事による株価の下落や企業価値の低下、従業員の士気の低下、リクルーターの評
価低下など多くの問題を生じます。しかし、メンタルヘルス不全はその発見や対応が難しく習熟を要し
ますが、多くの企業で対策がとられていません。
精神科医師の専門分野は児童精神医学から老年精神医学、物質依存や統合失調症への対応まで多岐に
わたる事から、産業精神医学を専門とする医師は全国的にも少数です。大阪市立大学医学部神経精神科
には日本医師会認定産業医の資格を持ち、産業現場で活躍した経験を持つ医師が複数在籍しています。
我々は要請に応じ、職場における職業性ストレス(役割葛藤、認知的要求、社会的支援、など 20 項
目以上)や個人の精神状態(抑うつ度や疲労度)や性格傾向を測定したり、それらを系統的に解析する
事により必要な対策をアドバイスしています。また、上司研修や新人研修で聴衆に応じたメンタルヘル
ス研修も行っています。要請に応じ企業に精神科産業医を派遣する場合もあります。病院外来では主治
医の立場で診療を行い、検査や入院治療にも対応しています。
これら事項について、企業及び個人の情報は厳格な管理対応を行っています。
<アピールポイント>
z
精神科の専門医で産業医学の特別な研修を受けた医師による対応である
z
医師は産業保健推進センター特別相談員など豊富な公的業務経験を持つ
z
一部上場企業を中心に多くの産業現場への産業医派遣実績を持つ
z
大学組織に属しており、疫学、環境科学など他の分野との連携が可能である
<利用・用途・応用分野>
z
過労自殺の防止など企業のリスク管理
z
健康教育(セルフケアーとしての新人研修、ラインケアーとしての上司研修、特定業務に対する精
神科的対応方法、精神科一般疾病に対する知識の獲得、ほか)
z
職場診断とアドバイス
などにご利用ください
キーワード
メンタルヘルス、職業性ストレス、うつ病、予防や対策、講演会
データベース
登録
2010.9
シーズ名
肝癌治療の創意工夫
氏名・所属 等
岩井
秀司、医学研究科・肝胆膵内科、講師
<概要>
日本肝臓学会によれば本邦での肝癌による死亡者数はおおよそ 35000 人とされている。肝癌に対する
治療法として内科的局所療法は外科的治療と並び、根治的治療法として大きな役割を担っている。し
かしながら、やはり外科的アプローチと比較してその適応には制限がある。
腫瘍の大きさと位置に対する治療の制限拡大のため、腹腔鏡下或いは人工胸腹水下でのラジオ波焼灼
術を積極的に用いている。これらの補助療法を併用する事により肝表面に位置する肝癌をより安全に
治療でき、また一般的な適応基準である 3cm を超えた腫瘍にも治療適応が拡大される。
これら補助療法の技術の習得は困難で、限られた施設でしか施行出来ない。しかしながら、これらの
補助療法を用いた肝癌治療を当施設では年間 30 例ほど施行し、3 年生存率は腹腔鏡下治療で 90%、人
工胸腹水下治療で 72%と良好な結果を得ている。
<アピールポイント>
内科を標榜している施設で経皮的治療に加えて、腹腔鏡下或いは人工胸腹水下までも自科で施行出来
る施設は国内に数施設しかないと思われる。そのため当施設での肝癌治療の選択枝は複数あり、患者
にとってベストな治療が提供出来ると考える。
キーワード
肝癌、ラジオ波焼灼術、腹腔鏡下治療
データベース
登録
2010.9
シーズ名
人工関節、生体材料
氏名・所属 等
岩城
啓好、医学研究科・整形外科学、講師
<概要>
人工関節に関する臨床的研究を行っており、基礎的なものとしては、イメージ画像と、インプラント
CAD データのパターンマッチング法によるインプラント人工関節の運動解析、人工関節周囲組織や関節
液中からのおもにポリエチレン摩耗粉の解析、MRI や 3 次元 CT を使用した膝関節のバイオメカニクスな
どがあり、臨床的なものとしては当科とパナソニック社で共同開発したウェアラブル加速度計を用いて
人工関節後の歩行解析をおこない客観的早期リハビリプログラムの作成、人工関節後の血栓塞栓症の発
生頻度と予防に関する研究、人工股関節の手術進入路に臨床成績の違い、DEXA を使用した人工関節周囲
の骨量測定(薬物効果やインプラントデザイン、素材による相違など)を主に研究している。
<アピールポイント>
これまでも医工連携には力を入れてきており、数々の共同研究を行ってきた。
1,大阪大学工学部、九州大学工学部との共同研究では、16 年度産業技術研究助成事業(NEDO)新エネ
ルギー・産業技術総合開発機構により、アパタイト・ナノ結晶配向を利用した新たな臨床用硬組織
評価・診断法の開発をおこなった。
2,新潟大学工学部とは人工関節の基礎的研究を様々行っている。その内容としては、セメントマント
ルの差によるステム固定性に与える影響や、衝撃試験による各種摺動面の特性差に関する研究、CT
と 2 方向レントゲンを用いた正確なインプラントの経時的移動測定システムの開発、各種抗生剤入
りセメントの力学的特性評価などを行ってきている。
3,大阪市立大学工学部との共同研究としては、ウェアラブル加速度計を用いて人工関節後の歩行解析
の波形解析や、人工関節後の血中イオン濃度測定、人工股関節後の新しい摩耗計測システムの開発、
整形外科分野でのナビゲーションシステム開発などを行っている。
キーワード
人工関節、整形外科、バイオマテリアル
データベース
登録
2010.9
シーズ名
ウイルス性肝炎に対する抗ウイルス療法の効果判定マーカーの開発、ウイルス性肝
炎に対する抗ウイルス療法の治療抵抗性機序の解明
氏名・所属 等
榎本
大、医学研究科・肝胆膵病態内科学、准教授
<概要>
本邦における肝癌による死亡は年間約 35,000 人と推定され、悪性新生物による死亡では肺癌、胃癌、
大腸癌に次いで第 4 位となっている。その約 80~90%は B 型肝炎ウイルス(HBV)または C 型肝炎ウ
イルス(HCV)感染によると考えられ、その対策は急務である。また HBV 約 150 万人、HCV 約 200 万人
と推定される感染者の中には血液製剤による薬害患者も含まれるなど社会問題となり、厚生労働省は
平成 20 年 4 月より治療費の公費負担による患者支援を開始するなど対策を打ち出している。
B 型肝炎に対してはラミブジン、アデフォビル、エンテカビルなどの核酸誘導体が標準治療となって
いるが、ウイルスの薬剤耐性変異による肝炎の再燃が問題となっている。C 型肝炎に対してはペグイ
ンターフェロン(PEG-IFN)とリバビリン併用療法が標準治療となっているが、本邦の患者のおよそ 7
割を占める遺伝子型 1b、高ウイルス量の患者において著効が得られるのは約半数にとどまっており、
治療抵抗性に関わる宿主の免疫的な要因については充分に解明されていない。そこで血液中のウイル
スの定量、ウイルスの遺伝子配列の決定、患者の末梢血単核球や肝組織中の遺伝子発現などを検討す
ることにより、治療効果の予測や治療抵抗性機序の解明が可能となれば、治療成績の向上に繋がるこ
とが期待される。
<アピールポイント>
我々の臨床グループでは B 型肝炎に対して年間約 30 例、C 型肝炎に対して約 100 例の新規症例に抗
ウイルス治療を導入しているが、これまでも 20 年以上にわたり同意を得られた患者より、治療前の肝
組織、治療前ならびに治療中の血清・末梢血単核球を系統的に保存し、関連の研究において成果を上
げてきた。また臨床検査結果などもデータベース化しており、上記研究に即座に利用可能である。
<利用・用途・応用分野>
B 型肝炎に対してはテルビブジン、テノフォビルなど更に新規の核酸誘導体、C 型肝炎に対してはウ
イルスの複製をより特異的に抑えるためプロテアーゼ(図 1)やポリメラーゼ(図 2)に対する阻害剤
をはじめとする Specifically Targeted Antiviral Therapy (STAT-C)の開発が進んでいる。今回の研
究を通じて得られた成果や方法論は、これら次世代の治療薬の評価や耐性機序の解明にも応用可能で
あると考えられる。
図1
NS3 セリンプロテアーゼ
図 2 RNA 依存性 RNA ポリメラーゼ
(Penin F, et al. Hepatology. 2004; 39: 5-19)
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/syoukaki/hepatology/index.html
キーワード
B 型肝炎、C 型肝炎、インターフェロン、リバビリン、核酸誘導体
データベース
登録
2010.9
シーズ名
CT, MRI による心疾患の非侵襲的診断、および予後評価
氏名・所属 等
江原
省一、医学研究科・循環器病態内科学、講師
<概要>
心疾患は主に
① 心臓の筋肉を栄養する冠動脈が動脈硬化により狭窄・閉塞する狭心症や心筋梗塞のような虚血
性心疾患、
② 心臓内の弁の機能が悪くなり狭窄や逆流を生じる弁膜症、
③ 長年高血圧が持続することにより心筋が肥大し、最終的には心筋収縮能が低下する高血圧性心
疾患、
④ 上記疾患は否定されるが何らかの原因(あるいは原因不明)で心機能障害が生じている心筋症、
の 4 つに分類できる。
いずれも重症化すれば心臓のポンプ機能が低下し、心不全や重症の致死性不整脈を起こしうる疾患で
す。特に最近注目を浴びている高血圧・糖尿病・脂質異常・喫煙・肥満などの生活習慣病が密接に関
連する動脈硬化を基盤とする虚血性心疾患の早期診断、あるいは心血管イベントの予知は循環器医の
永遠のテーマでありますが、最近登場したマルチスライス CT を用いると早期診断、さらにはある程度
のイベント予知が可能になってきております。
さらには心臓のポンプ不全である心不全患者の予後は極めて不良であり、手術や内服治療の有効性の
判定や予後評価には MRI の技術が期待されております。
当大学では両装置を用いて心疾患全般の予防・予知医学にも力を入れており、今後ますますニーズが
高まることが予測されます。
<アピールポイント>
近年増加の一途をたどる動脈硬化を基盤とした虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)を CT を中心とした
非侵襲的診断法で診断し、さらには将来の心血管イベントの予知・予防を目指しております。一方 MRI
では主に心筋の障害部位を診断し、心不全患者の治療効果、および予後評価などを行っております。
いずれも今後医学全般の課題である予防医学・疾患予知を、患者に低負担な装置を用いて目指してお
ります。
<利用・用途・応用分野>
CT、MRI ともすでに臨床分野で広く普及している装置であり、国民病である生活習慣病・メタボリッ
ク症候群患者の動脈硬化性疾患の早期診断、またそれにより引き起こされる心筋梗塞後の予後評価な
ど国民健康増進のみならず、医療経済的にも利用すべき方法であると考えられます。
<関連する知的財産権>
なし
キーワード
CT、MRI、生活習慣病、メタボリック症候群、動脈硬化
データベース
登録
2010.9
シーズ名
人工膵臓によるインスリン抵抗性評価システムの臨床応用
氏名・所属 等
絵本
正憲、医学研究科・代謝内分泌病態内科学、講師
<概要>
ヒト体内で膵臓 B 細胞から分泌されるインスリンは、骨格筋、脂肪組織、肝臓に作用して血糖値を低
下させる唯一のホルモンです。このホルモン作用の低下、すなわち『インスリン抵抗性』は、糖尿病
における高血糖のみならず、高血圧、高脂血症、高尿酸血症などの重要な原因であることが近年明ら
かになってきました。2005 年、日本人における診断基準が発表された『メタボリックシンドローム』
では、内臓脂肪蓄積とインスリン抵抗性によるこれらの病態が集積し、動脈硬化をベースにした心血
管疾患の発症にいたる証拠が集積されつつあります。これまでになく、これらの病態解明と動脈硬化
発症予防のための治療介入ターゲットとしての『インスリン抵抗性』の評価システムが求められてい
ます。
人工膵臓(日機装社 STG-22、写真 A)を用いた正常血糖高インスリンクランプ法(グルコースクラン
プ)は、ヒトにおける『インスリン抵抗性』評価法の中でも高精度かつ国際的にも認められたゴール
ドスタンダードであり、わが国では高度の専門知識と技術を有する糖尿病専門医のもとで都道府県認
可を受けた施設においてのみ行われています。私たちは、1995 年以来、約 350 名の糖尿病患者におい
て臨床応用をおこなってきた実績を踏まえて、以下の研究テーマを中心にデータ集積し、現在、日本
人における『グルコースクランプ法によるインスリン抵抗性』に関する屈指のデータベースを構築し
ています。さらに、2009 年度末に医療機器として承認された、最先端の次世代型人工膵臓(日機装社
STG-55、写真 B)のヒトでの臨床応用を 2010 年 8 月より開始する予定である。本次世代型人工膵臓は、
よりコンパクトかつ高精度に血糖制御できるように設計されており、また、血糖測定システムの改良
により利便性の向上が期待されており、臨床応用の適応範囲の拡大が期待されている。
2003 年より呼気ガス分析装置(写真 C)を併用した間接熱量測定を併用することにより、骨格筋での
糖代謝率を酸化的/非酸化的糖代謝率に分別定量し、より詳細に糖代謝状態の定量評価可能となって
います。
<主な研究テーマ>
z 一般臨床に応用可能な簡便なインスリン抵抗性臨床指標の構築
z インスリン抵抗性および動脈硬化症・腎合併症をターゲットにした治療介入に関する研究
¾ 種々の薬物治療を含む
インスリン抵抗性と関連病態改善のエビデンスに基づいた科学的な運動療法の確立
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/interm2/
インスリン抵抗性、人工膵臓、運動療法、メタボリックシンドロー
キーワード
ム、間接熱量測定
データベース
登録
2010.9
シーズ名
非侵襲的動脈硬化早期診断の評価システム開発と臨床応用
氏名・所属 等
絵本
正憲、医学研究科・代謝内分泌病態内科学、講師
<概要>
心筋梗塞、脳梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症などの心血管疾患は、成人の死亡原因として近年ますます
重要視されています。特に、糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病では、より高率に発病し、
また病状も重篤となります。心血管疾患の発病前にその基礎となる動脈硬化症をより早期に非侵襲的
かつ高精度に診断し、抗動脈硬化を期待する種々の治療法の治療効果のモニタリングとして臨床応用
を行っています。私たちのシステムでは、単に動脈硬化をひとつの検査方法で評価するのではなく、
動脈硬化の部位と性状を多面的に定量的に評価し総合判定します。約 800 例の健常者のデータベース
と比較検討し、検査受診者ごとに動脈硬化レポートとして報告しています。
1.
頚動脈と大腿動脈などの体表血管:高精度超音波法(エコートラッキングシステム、13MHzプロ
ーベ搭載)(写真 A)
1) 形態診断:血管壁肥厚度(内膜中膜複合体肥厚 Intimal-medial thickness (IMT)
血管壁の厚みを 1/100mm の精度で測定可能、プラーク検出、血管狭窄度、血流速度測定可能
2) 機能診断:血管壁硬化度(stiffness parameter β, elasticity, Ep)
心臓収縮サイクルによる血管径の変化量をリアルタイムに記録しβ指数などを計測
2.
血管内皮機能検査専用の超音波診断装置(ユネクス EF)による上腕動脈駆血解除後の血管内皮依
存性拡張反応(FMD)および内皮依存性血管拡張反応(NMD)(写真 B)
3.
大動脈を中心とした総合的血管壁硬化:頸動脈、大動脈、下肢動脈などの部位別評価による脈波
速度(Pulse wave velocity, PWV)(写真 C)
★★ 現在、臨床使用されている薬物を中心に、この動脈硬化評価システムを用いて、抗動脈硬化作用
の検証が可能となっており、臨床研究に応用可能です。さらに、動脈硬化早期スクリーニングとして疫
学調査、コホート研究などへの応用が期待されます。 ★★
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/interm2/
キーワード
動脈硬化、非侵襲的早期診断法、超音波法、脈波速度
データベース
登録
2010.9
シーズ名
ヒ素の化学形態別摂取による発癌リスク評価
氏名・所属 等
圓藤
吟史、医学研究科・産業医学分野、教授
<概要>
ヒ素はヒトに対する発癌性の証拠が十分あり、それに基づいてリスク評価がなされているが、ヒ素の
化学形態に基づいた評価ではない。近年、ヒ素の化学形態別の毒性研究が進み、究極発癌の化学形態
とその発癌機序が次第に明らかになってきた。
1 . HPLC-ICP-MS分 析 か ら 市 販 ヒジキ製品中の総ヒ素量は37-119 μg As/g dry weight、そのうち無
機ヒ素量は25-60%であることが明らかになり、製品lotによる相違が見られた。6種類のアルセノシ
ュガー(分子量254、328、391、392、408、482)がHPLC-MS/MSにより検出され、特に分子量254は今
まで報告されていない新規アルセノシュガーであり、本形態別分析法であるHPLC-ICP-MSな ら び に
HPLC-MS/MSを組み合わせた方法は高感度ヒ素形態分析として有用であることを提案した。さらに、ヒ
ジキ産地ならびに製品化工程に基づいたヒ素含量の低減化策を見いだし、ヒ素発癌リスクを回避(低
減)する方法も提案した。
2.無機ヒ素から代謝生成するジメチルヒ素のうち、ヒ素原子の酸化状態の相違により毒性発現様式な
らびに血球内動態に著しい相違があることを見いだした。
3.ジメチルアルシン酸の還元体(DMAIII)はV79細胞において4倍体と多核の形成を強く誘導した。ま
た、異常アクチンがDMAIII処理した分裂細胞のローダミン-ファロイジン染色で観察された。これら
のことからDMAIIIは正常の紡錘体形成を阻害するだけでなく、細胞質分裂を阻害し、多核細胞の形成
を誘導することが示唆された。
4.職業性ヒ素曝露のない日本在住の男性172名の尿をHPLC-ICP-MSで測定した。Dionex IonPac AS22の
陰イオンカラムを用いることによりヒ素化合物を精度よく迅速に分析できた。試料のヒ酸と亜ヒ酸、
モノメチルアルソン酸(MMA)の95パーセンタイルはそれぞれ1.7、5.4、6.2μg/lであった。ヒ酸と亜
ヒ酸、MMAの和の95パーセンタイル値である12.6μg/lを職業性曝露指標のバックグランド値に用いる
ことを提案する。
<アピールポイント>
海産物を多食する日本人には、DMA が多く検出されるので、ヒ素およびヒ素化合物取り扱い業務にお
ける特殊健康診断項目として、尿中のヒ酸、亜 ヒ 酸 、モ ノ メ チ ル ア ル シ ン 酸 の 測 定 を 提 案 し 、採
用された。
<利用・用途・応用分野>
環境省の中央環境審議会大気環境部会健康リスク総合専門委員会で大気中のヒ素及びその化合物に
係る健康リスク評価を行っている。
また、内閣府食品安全委員会で食品中のヒ素についてリスク評価を行っている。
<関連する知的財産権>
知的財産権の申請は行っていないが、最近の業績として以下のものがある。
・Shimoda et al. Speciation Analysis of Arsenics in Commercial Hijiki by High Performance Liquid
Chromatography-tandem-mass Spectrometry and High Performance Liquid Chromatography
-inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry。Journal of Health Science 2010; 56:47-56
・Suzuki Y et al. Rapid and effective speciation analysis of arsenic compounds in human urine using
anion-exchange columns in HPLC-ICP-MS. J Occup Health. 2009;51:380-5.
・Kitamura M et al. Dimethylarsinous acid disturbs cytokinesis. Bull Environ Contam Toxicol. 2009;
83: 15-18.
・Habib A et al. Effectiveness of arsenic mitigation program in Bangladesh -relationship between
arsenic concentrations in well water and urine. Osaka City Med J. 2007;53:97-103.
<関連するURL>
科学研究費補助金データベースの下記の URL に研究概要が掲載されている。
http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/20390173, http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/17659178, http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/16209021,
http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/15406029, http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/15590518, http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/11670383
キーワード
ヒ素、環境汚染、食品安全、発がん、リスク
データベース
登録
2010.9
シーズ名
職域を中心とした疫学研究
氏名・所属 等
圓藤
林
佐藤
吟史、医学研究科・都市医学大講座・産業医学分野、教授
朝茂、医学研究科・都市医学大講座・産業医学分野、准教授
恭子、医学研究科・都市医学大講座・産業医学分野、講師
<概要>
生活習慣病対策として、職域を中心とした疫学研究を中心に行っています。世界の疫学
研究から今までに多くのエビデンスが報告され、疾患の発症予防に寄与してきました。
我々の教室では、職域での健診という我が国独自のシステムを利用して、これまで多くの
生活習慣病の予防対策のエビデンスを報告してきています。
この中には、The Kansai Healthcare Study という 2 万人規模のコホートがあり、2 型
糖尿病の新規発症の危険因子についての論文発表を行っており、学術誌はもとより、ロイ
ター通信にて世界に配信されています。このコホート研究から 2010 年 1 月号の米国糖尿
病学会の Clinical Practice recommendations に「Categories of increased risk for
diabetes」として1)空腹時血糖値 100~125 mg/dL、2)75g経口ブドウ糖負荷試験の 2
時間値 140~199 mg/dL、3)HbA1c 値(NGSP 値)5.7~6.4%という 3 つの指標が挙げら
れていますが、この根拠の一つに我々の研究が引用されています。その他の職域のコホー
トとしては、The Osaka Health Survey があり、1万人以上の大規模研究になっておりま
す。ここからも、多くの英文の論文を発表しています。この結果から、健康日本 21 や日
本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドラインの1次予防の分野に、幾つかの論文が採用されて
おります。この他にも、職域を中心に新たな大規模疫学研究の整備を行っています。
(主な研究テーマ)
z
2 型糖尿病の発症の危険因子に関する疫学研究
z
高血圧に関する疫学研究
z
メタボリック症候群に関する疫学研究
z
その他、生活習慣病に関する疫学研究
キーワード
疫学研究、臨床疫学、産業医学、予防医学、生活習慣病
データベース
登録
2010.9
シーズ名
組換え麻疹ウイルス作製技術を用いた麻疹ウイルスの研究とその応用
氏名・所属 等
扇本
綾田
真治、医学研究科・ウイルス学、准教授
稔、医学研究科・ウイルス学、助教
<概要>
麻疹(はしか)は麻疹ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患で、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)
は、麻疹ウイルスが脳内で持続感染した結果生じる予後不良の疾患です。私たちは以下の2つのテーマ
の研究を行っています。
1)麻疹ウイルスワクチンの弱毒化の仕組みを明らかにする。
麻疹の予防には麻疹ウイルス弱毒生ワクチンが非常に有効で、その定期接種により麻疹の罹患は劇的
に減少しています。私たちは麻疹ウイルスワクチン株と野生株の性質の違いを調べて、ワクチン株の
弱毒化の仕組みを明らかにしようとしています。
2)SSPE 患者由来麻疹ウイルスの脳での感染・増殖の仕組みを明らかにする。
私たちはこれまで SSPE 患者の脳より麻疹ウイルスを分離し、通常の麻疹ウイルス(通常の麻疹ウイ
ルスは脳では増殖しにくいと考えられている)との比較研究を行い、SSPE 患者由来の麻疹ウイルスの
変異と神経病原性との関連を明らかにしてきました。さらに、脳での麻疹ウイルスの感染・増殖の仕
組みを分子レベルで明らかにしようとしています。
<アピールポイント>
1)麻疹ウイルスワクチン株は他の疾患の予防・治療(遺伝子治療や各種の感染防御抗原を組み込んだ
ワクチンのベクターとしてや、悪性腫瘍を溶解するウイルスとしての開発が行われている)への利
用に向けた研究が進んでいます。私たちの麻疹ウイルスワクチン株の性質の研究から既存のベクタ
ーよりもそれぞれの用途により適したベクターを開発できないかと考えています。
2)SSPE 患者由来麻疹ウイルスの神経病原性は小動物を用いた感染実験により検定しています。麻疹ウ
イルスの脳での感染・増殖の仕組みの研究から抗ウイルス薬をデザインして、さらに、この動物感
染実験系を用いて SSPE の新たな治療法を開発できないかと考えています。
<利用・用途・応用分野>
1.麻疹ウイルスワクチンを用いた悪性腫瘍の溶解療法
2.麻疹ウイルスワクチンをベクターとし、各種の感染防御抗原を組み込んだ新たなワクチンの開発
3.麻疹ウイルスワクチンの遺伝子治療用ベクターとしての利用
4.SSPE の新たな治療法の開発
5.ヒト免疫不全ウイルスの脳内感染等、他の RNA ウイルスの神経系における感染・増殖メカニズムの
解明
麻疹ウイルスワクチン
の性質を明らかにする研究
1. 悪性腫瘍の溶解療法
2. 新たなワクチンの開発
3. 遺伝子治療用ベクター
キーワード
麻疹ウイルスの脳での増殖
の仕組みの解明
1. SSPEの新たな治療法の開発
2. RNAウイルスの神経系におけ
る増殖メカニズムの解明
亜急性硬化性全脳炎、遺伝子変異、ワクチン、がん、遺伝子治療
データベース
登録
2010.9
シーズ名
脂肪肝の予後に関する疫学研究
氏名・所属 等
大藤
さとこ、医学研究科・公衆衛生学、講師
<概要>
*
*
近年、脂肪肝の患者数が増加傾向
脂肪肝の一部は、肝硬変・肝細胞癌に進展?
私たちのグループでは
分析疫学手法
を用いて
脂肪肝の予後に影響する生活習慣・食習慣を明らかにして、
疾患の進展を予防することを目標としています。
<アピールポイント>
* こ れ ま で に 、医 学 研 究 科 ・ 肝 胆 膵 内 科 と 共 同 で 、C 型 肝 炎 の 方 を 対 象 と し た 疫 学 調
査を実施
⇒ 「コーヒー摂取」や「夜食摂取」により「肝がん」リスクが減少することを
報 告 ( Hepato l Res. 20 06; 36: 2 01-8、 Hep atol Res. 2008; 38 : 860-8)
* 本研究では、脂肪肝の方を対象とした疫学調査により、予後改善に影響する生活
習慣・食習慣などを明らかにする。
<利用・用途・応用分野>
* 本研究結果は、以下の利用、応用が可能です。
¾
医療現場において、
「運動・食習慣などの生活習慣改善を積極的に推奨する根拠」となります。
¾
臨床科学の分野では、
本研究で得られた「予後の改善に有用な栄養因子」を産業開発に応用する
ことも可能です。
キーワード
医学、生活科学、安全、安心
データベース
登録
2010.9
シーズ名
糖尿病に関する臨床的研究
氏名・所属 等
奥野
泰久、医学研究科・老年血管病態学、准教授
<概要>
糖尿病は21世紀の国民病と呼ばれるほど増加の一途を辿っており、厚生労働省の糖尿病実態調査
(2002 年)によると糖尿病患者さんは予備軍まで含めると、実に 1600 万人もいると推定されています。
糖尿病は慢性の高血糖状態を特徴とする疾患であり、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性を来た
す遺伝因子に、過食、運動不足、肥満などの環境因子が加わり発症するとされています。
糖尿病状態を長期間放置しますと、いろいろな合併症が患者さんに認められるようになりますが、
特に患者さんを困らせるのが血管障害です。血管障害のうち細小血管障害では網膜症、腎症、神経障害
が起こり、大血管障害(動脈硬化)では脳梗塞、心筋梗塞、足の壊疽などが生じます。
動脈硬化を増悪させる因子としては糖尿病のほかに、加齢、高血圧、LDL(悪玉)コレステロール、
喫煙などが関係しますが、慢性腎臓病も大いに関係があるとされています。
我々は糖尿病患者において、慢性腎臓病の程度が悪くなるにつれて動脈硬化が進行することを認めて
います。 Kimoto E. at al. J Am Soc Nephrol 17:2245-2252, 2006
血管合併症の予防としては糖尿病の早期発見と高血糖などの危険因子の継続的な管理が重要ですが、
血糖をコントロールするための三つの柱が食事療法と運動療法そして薬物療法(経口糖尿病薬とインス
リン)です。
我々は一日 40 分間の有酸素運動を5日間行うことで、インスリン感受性が有意に改善することを認
めています。 Yokoyama H. at al. Diabetes Care 27(7) 1756-1758, 2004
また経口糖尿病薬のひとつであるピオグリタゾン(商品名アクトス)が糖尿病患者さん、特にインス
リン抵抗性の指標である HOMA-IR が高値の患者さんでは有効であることを報告しています。
Araki T. at al. Osaka City Med. J. 51:19-25, 2005
キーワード
糖尿病、 血管障害、 慢性腎臓病、 運動療法、 経口糖尿病薬
シーズ名
データベース
登録
2010.9
氏名・所属 等
急性期医療における薬物動態及び薬力学の評価-
臨床医と薬剤メーカーの仲立ちとして
小田
裕、医学研究科・麻酔科学、准教授
【活動内容・特徴】
麻酔科医として長年に亘って急性期医療に従事して参りました。主な研究テーマは薬物代謝・動態で、
in vivo、in vitro 両面からの基礎研究、臨床研究を行っています。新薬の臨床試験の経験も豊富です。
特徴
z
z
z
z
z
内科・外科の枠を超えた、急性期医療に対するグローバルな視点
循環動態、呼吸状態の急な変化などに的確に対応できる臨床スキル
学会における幅広い人脈を生かした、極めて迅速な情報収集
質量分析装置(MS)を駆使した薬剤の定量法の開発、定量の実施
大学院生の教育を通じて得た、「論文を確実・迅速に作成する」技術
【技術と構想】
麻酔科を含めた急性期医療の現場で用いられる薬物は、循環血液量の減少、低血圧といった不安定な
状態で投与される場合が多く、薬物の効果に大きな個体差や副作用を生ずる原因になる。これらを予測
し、効果的に薬物を投与することは薬剤の安全使用、医療資源の節約の点から重要である。しかしこれ
にあたっては薬物動態学的知識とその的確な応用が必要で、臨床現場においてこれらは必ずしも十分に
理解されていない。一方、薬剤メーカーは医療現場での薬剤の使用状況について直接的な情報を得るこ
とは困難で、また新たな薬剤の販売開始に際しては「臨床医からの視点」が不可欠である。我々は薬剤
メーカーと臨床医としての仲立ちとして、下記
の役割を果たすことができると考えられる。
「どうすれば他社製品との差別化を
図れるか?」
「どのような売込みが奏
功するか?」などの情報を、臨床医
の立場から薬剤メーカーに提供
薬剤のアピール
販売促進活動
メーカー
臨床医
薬剤の臨床試験
市場調査・販売
薬剤の臨床使用
市販後調査
臨床使用時の薬物の血中濃度、薬
物動態の測定を行い、薬効や副作
用などに関する情報を、臨床医及
び薬剤メーカーにフィードバック
血中濃度測定
副作用報告
【使用可能な機器類】
① 四重極質量分析装置 (LC-MS, 4000 Q TRAP) (右図)
② 高速液体クロマトグラフ(紫外、蛍光、電気化学検出)
③ マイクロダイアライシス装置(HTEC-500, Eicom)
④ 脳波測定および解析装置 (Bispectral Index monitor)
【代表論文】
Kaneshiro Y, Oda Y, et al. Clin Pharmacol Ther 2006;80:396-402
Takahashi R, Oda Y, et al. Anesthesiology 2006;105:984-989
キーワード
麻酔、集中治療、循環、神経、薬物動態、薬力学、併用薬物、テーラーメイド
治療、副作用、臨床試験、販売戦略、血中濃度測定、高速液体クロマトグラフ
-質量分析装置
データベース
登録
2010.9
シーズ名
発がんにおけるプロテオーム及びバイオマーカー解析
氏名・所属 等
梯
アンナ、医学研究科・病理専攻、助教
<概要>
化学物質の発がんリスク評価のための動物実験では、現在長期発がん性試験の代替法が模索されてい
るところである。短期に発がん病変を評価するためには、腫瘍に至る前がん病変を検索するのが最良
である。しかしながら、前がん病変と目される病変は組織学的に評価が困難な場合もあれば、すべて
のこれらの前がん病変と考えられる病変が腫瘍になるとは限らない。そこで、すべてのヒトが容易に
組織学的に腫瘍に至る前がん病変が同定できる新規の前がんマーカーの開発が必要となってきてい
る。現在、ラットの肝発がんにおける発がん性試験では、GST-P 陽性細胞巣が前がん病変マーカーと
して知られている。一方、マウスの肝発がんにおいては、ラットにおける GST-P 陽性細胞巣のように
確立された有用な前がん病変マーカーは報告されていない。我々はマウスの肝腫瘍性病変のプロテオ
ーム解析を行い、新たな肝発がんバイオマーカーを検索していた。さらに、肝細胞癌で発現が有意に
増加していた蛋白が、肝発がんにおける血液中の新たなバイオマーカーとなるかについて検討した。
図 1. B6C3F1 マウスの肝臓における
CK8/18 の免疫組織染色
図 2. マイクロダイセクション法、
QSTAR Elite LC-MS/MS 解析
<アピールポイント>
1.短期発がん性リスク評価システムの確立
2.発がんリスク評価のための新規がんマーカーの開発
3.ヒト新規がんマーカーの発見・がん診断薬開発
新規に開発が進められてきた QSTAR Elite LC-MS/MS (Applied Biosystems)は非常に高感度で高解析
能を有するため、数マイクログラムのサンプルからプロテオーム解析が可能となっている。新開発
Laser™ Detector により分解能、質量精度、ダイナミックレンジが大きく向上し、新開発アルゴリズ
ムを搭載したソフトウェアにより高い信頼性での同定が可能です。このシステムを用いれば、マイク
ロダイセクション法により、前がん病変のみから得られる微量な組織サンプルを用いて、我々が切望
する前がん病変の新規マーカーが開発できると確信する。
<利用・用途・応用分野>
癌の分類、診断
早期癌発見
予後
治療反応性
個別化治療の実現
新規分子医薬品の開発
キーワード
発がん、プロテオーミクス、発がんリスク評価、バイオマーカー
データベース
登録
2010.10
シーズ名
白血球(好中球、単球)機能の制御
氏名・所属 等
加藤
隆幸、医学研究科・細胞情報学、講師
<概要>
好中球は生体防御、とくに自然免疫において中心的役割を担っている。異物の侵入や、感染にすばや
く反応して感染巣へ移動し、貪食、活性酸素、脱顆粒によって侵入してきた細菌を排除する。その一
方で敗血症などに続発する SIRS などにおいては好中球の過剰反応が病態の増悪につながるとされて
おり、その制御システムを解明することは臨床的にも重要である。ヒトの末梢血から好中球・単球を
分離し、種々の試薬および生理活性物質によるタンパク質の修飾を解析している。活性酸素の放出、
サイトカインの産生、アポトーシス、細胞骨格の再編成や細胞運動、細胞接着など解析し、細胞内情
報伝達がどのように関わっているのかを調べている。
<アピールポイント>
ヒトから分離した好中球・単球を用いて研究を行っている。ヒト由来の正常細胞に関する知見が得ら
れるため、意義があると考えられる。
<利用・用途・応用分野>
炎症性疾患の治療法の開発、確立。造血器疾患の治療法の開発、確立。
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/physiology2/
キーワード
造血幹細胞、好中球、単球、アポトーシス、細胞内情報伝達
データベース
登録
2010.9
シーズ名
再燃前立腺癌におけるホルモン抵抗性獲得の分子機構に関する研究
氏名・所属 等
川嶋
秀紀、医学研究科・泌尿器病態学、准教授
<概要>
前立腺癌は米国では男性の癌の中で第一位の羅患率であり、我が国でも急速に患者数が増加していま
す。癌が初期であれば手術、放射線治療(重粒子線、小線源療法も含めて)で治癒可能ですが、進行
例ではホルモン療法が一般的です。しかしホルモン療法では1〜数年後には癌がホルモン抵抗性とな
って再燃し、どんどん進行します。すなわち男性ホルモンを遮断する治療で癌が小さくなり癌の増殖
が押えられていたのが、癌の性質が変わりこの治療が効かなくなります。このメカニズムについて男
性ホルモン受容体を中心に研究をしています。男性ホルモン受容体は男性ホルモンと結合してその転
写活性を上昇させ前立腺癌細胞を増殖させますが、その他にもいろいろなものが男性ホルモン受容体
の活性化に関与している事がわかってきました。私は最近、前立腺癌の細胞の中で男性ホルモン受容
体を活性化する蛋白質のひとつを見いだしその一次構造、活性、性質につき明らかにしました。また
成長因子による受容体活性化機構について研究をしています。さらには前立腺癌におけるエストロゲ
ン受容体が果たす役割についても研究しています。
キーワード
再燃前立腺癌、アンドロゲン受容体、ホルモン抵抗性、共役因子
データベース
登録
2010.9
シーズ名
脂肪性肝炎・肝硬変を生じるウサギモデル
氏名・所属 等
河田
則文、医学研究科・肝胆膵病態内科学、教授
<概要>
メタボリック症候群が注目を集めていますが、糖尿病にしても、高脂質血症にしても、最終的には患者
さんの肝臓が障害を受けて、脂肪肝となり、その後脂肪性肝炎・肝硬変で亡くなることが分ってきまし
た。それにも関わらず、適当な動物モデルが現在ないため、メタボリック症候群による肝臓病を治療し
たり、予防する薬を開発し・スクリーニングすることは現在では不可能です。私達の研究室では、動脈
硬化症モデルとして使われていたウサギモデルを改良して、高コレステロール・高脂肪食を食べさせる
だけでウサギに脂肪肝、脂肪性肝炎、肝硬変をつくることに成功しました。このモデルは、腹部大動脈
には粥状硬化症がみられ、耐糖能異常もあり、まさにヒトの病態と似ています。このモデルを、有望な
薬剤のスクリーニングに利用することを提供します。
下の図は、正常のウサギの肝臓(左)と高脂肪食を食べさせたウサギの肝臓(右)を示しています。
肝臓が白色化していることで、脂肪肝になっていることがわかります。
<アピールポイント>
このモデルは、アミノ酸欠乏食を食べさせたり、遺伝子改変で肝障害を起こすのとは異なり、正常食に
高コレステロール・高脂肪食を混ぜるだけでできます。従って、飽食によるヒトのメタボリック症候群
と似ています。ウサギさえ手に入れば簡単に作成できます。
<利用・用途・応用分野>
メタボリック症候群に関係する糖尿病や高コレステロール血症のお薬は多数ありますが、それらが脂肪
性肝炎にも効果があるかどうかはわかっていません。新しい薬の開発、健康食品の効果のスクリーニン
グに利用できます。
<関連する知的財産権>
動脈硬化症モデルとして使われていたものを改良しただけであり、特にありません。
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/syoukaki/
http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pubmed&pubmedid=17322381
キーワード
メタボリック症候群、脂肪肝、肝硬変、飽食
データベース
登録
2010.9
シーズ名
ヨード制限食の献立作り
氏名・所属 等
河邉
讓治、医学研究科、講師
<概要>
甲状腺はヨードを取り込んでそれを材料にして甲状腺ホルモンを合成している。甲状腺の大半を占め
る分化型甲状腺癌はその甲状腺の性質を有しておりヨードを取り込む。そこで、甲状腺癌の転移や甲
状腺機能亢進症などの治療において、このヨードを取り込むという性質を利用して I-131 による放射
性ヨード内用治療という治療が行なわれている。すなわち、放射性ヨードを甲状腺癌や甲状腺組織に
取り込ませ、そのβ線という放射線によって病変部を焼いてしまおうという治療である。
この治療のメリットは I-131 のカプセルを服用するだけで外科手術などもなく人に優しい治療であ
るということだが、I-131 を効率良く取り込ませるため、治療の前に患者さんの体内のヨード分を枯渇
させる必要がある。そのために、ヨード制限食を1〜2週間準備し食べていただくのだが、本邦では
ヨード制限食に関しては病院の献立から家庭の献立にいたるまで定まったものがなく、各病院が経験
に基づいて行なっているのが実情である。
今回、ヨードを含む食べてはいけない食材や食品を紹介し、料理の経験の少ない人でも簡単に作るこ
とが出来る献立を紹介するものができないかと提案した。また病院栄養部でも低ヨード食を作成する
参考にならないかと考えている。
<アピールポイント>
デジタル媒体等の頒布により検索機能を持たせることが可能である。
<利用・用途・応用分野>
病院栄養部・家庭におけるヨード制限食の献立作成に役立つことが出来る
<関連する知的財産権>
著作権
キーワード
ヨード制限食、甲状腺癌、家庭、病院栄養部
データベース
登録
2010.9
シーズ名
白血球機能制御を標的とした抗炎症薬の開発
氏名・所属 等
北川
誠一、医学研究科・細胞情報学、教授
<概要>
z さまざまな炎症性疾患(関節リウマチ、間質性肺炎、潰瘍性大腸炎など)における組織傷害には、
炎症性サイトカイン(腫瘍壊死因子・など)と活性化された白血球(好中球、単球・マクロファ
ージ)が関与している。
z 我々は炎症性サイトカインを含むさまざまな生理活性物質によるヒト白血球機能制御の分子基
盤(細胞内シグナル伝達機構)の解明を目指している。
z 白血球機能活性化における特定の細胞内シグナル伝達分子を標的とした治療薬剤(抗炎症薬)の
開発は新たな戦略である。
z 白血球の活性化に関与する特定の細胞内シグナル伝達分子を標的とした抗炎症薬の開発は世界
的にも行われているが、未だ成功していない。
組織に侵入する好中球
壊疽性膿皮症:好中球の活性化によっ
て壊疽を起こした手
壊疽性膿皮症:好中球の強い浸潤と組
織の壊死が認められる
<アピールポイント>
z 好中球、単球・マクロファージ機能制御を標的とした治療薬剤(抗炎症薬)は未だ開発されてい
ない。
<利用・用途・応用分野>
z 白血球(好中球、単球・マクロファージ)機能制御を標的とした新たな治療薬剤(抗炎症薬)の
開発。
キーワード
白血球、好中球、サイトカイン、抗炎症薬、炎症性疾患
データベース
登録
2010.9
シーズ名
新規ヒト過労マーカー
氏名・所属 等
木山
博資、医学研究科・機能細胞形態学、教授
<概要>
ラット疲労モデル動物を用いた研究では、過労が慢性的に継続すると、内分泌系の中枢臓器である下
垂体の一部の細胞が細胞死に至ることが明らかになった(下図)。
この細胞死を起こす細胞は下垂体中間葉に存在する細胞で、αMSH というホルモンを分泌する。過労
状態ではこのαMSH の産生・分泌が活発になり、過労が継続するとαMSH の産生・分泌が止まらなくな
り、結果的にこの細胞は過労死をおこす。細胞死は主に中間葉の小葉中央部に見られるが、過労負荷
をかけるとこの細胞は小葉周辺から新たに分裂し再生する。したがって、過労が継続する間αMSH の
血中の濃度は上昇し続ける。過労負荷を停止すると、αMSH の血中レベルはすみやかにもとに戻る。
この動物実験の結果をもとに、ヒトの慢性疲労症候群(CFS)の患者での血中αMSH を計測すると、罹病
5 年以内では有意なαMSH の上昇が認められた。また、一晩の徹夜のような短期的な過労ではαMSH の
上昇は見られなかった。これらの結果より、αMSH はヒトの慢性疲労のマーカーとして応用できると
考えられる。
参考文献
Ogawa T, et al, J Neurochem (2005) 95: 1156-1166
Ogawa T. et al, J Neurochem (2009) 109:1389–1399
<アピールポイント>
・罹病 5 年以内の慢性疲労症候群の診断に利用できる。
・短期間の疲労やストレスでなく、蓄積した疲労を検出するのに適している。
<利用・用途・応用分野>
・慢性疲労症候群の診断
・検診による慢性化した疲労や長期の過労のスクリーニング
・過労死の予防
・慢性過労に対する医薬品・特保・サプリメントの評価
<関連する知的財産権>
•発明の名称 :疲労度の判定方法および疲労度判定キット
•出願番号
:特願2009−115685
•出願人
:公立大学法人大阪市立大学
•発明者
:木山博資、池島信恵、小川登紀子、渡辺恭良、倉恒弘彦
キーワード
疲労、下垂体、バイオマーカー、αMSH
データベース
登録
2010.9
シーズ名
摂食障害の病態と治療
氏名・所属 等
切池
信夫、医学研究科・神経精神医学、教授
<概要>
児童から職場の女性と広がりをみせて増加している神経性食思不振症や神経性過食症
などの摂食障害の疫学、病態と診断、治療法、転帰と予後に関する研究を行っている。そ
して摂食障害が若い女性だけでなく、働く女性や既婚の女性にも増加していること、摂食
障害とうつ病や強迫性障害、社会不安障害、パニック障害、さらに境界性、回避性、強迫
性などの人格障害との併存が高率であることを報告してきた。さらに摂食障害の有効な治
療法の開発の一環として、神経性過食症に対して心理教育療法が有用であること、神経性
食思不振症や神経性過食症患者の治療後約10年経過した時点での予後調査にて、欧米の
結果とそれほど変わらないことを報告してきた。さらに摂食障害の治療において、摂食障
害の病態に応じて内科、小児科、心療内科、救急科、精神科、産婦人科の医師が治療を行
い、これらの医師間の連携を強めることで摂食障害の統合的治療が可能であることを提唱
し、地域における治療ネットワ-クの構築を推進しようとしている。さらに摂食障害の脳
内機序を解明するために、過食の動物モデルを作成し、過食時前後での脳内各部位の神経
伝達物質の動態と、各種薬物投与時における神経伝達物質の動態の変化と過食に対する効
果について検討している。
その他、共同研究で職場のストレス下で生じる疲労とうつ病の関係、パニック障害、強
迫性障害などの不安障害の病態と治療に関する研究、児童・思春期の広汎性発達障害、注
意・多動性欠陥障害などの臨床、老年痴呆の精神症状や異常行動の病態と脳内機序、治療
に関する研究を行っている。
<アピールポイント>
過食の心理的・生物学的発症機序が明らかになれば、肥満対策やメタボリックシンドロ
-ム防止対策に役立つ。
<利用・用途・応用分野>
職場のメンタルヘルス(精神科産業医)
キーワード
摂食障害、不安障害、うつ病、ストレス、職場のメンタルへルス
データベース
登録
2010.9
シーズ名
バイオセンサーとして働くイオンチャネル
氏名・所属 等
久野
みゆき、医学研究科、准教授
<概要>
各臓器を構成する細胞膜にはイオンを選択的に通す蛋白分子(イオンチャネルやトランスポータ)があ
る。さまざまな化学的・物理的刺激によってチャネル活性が変動し、細胞の電気信号、細胞応答、ホメ
オスターシスが調節される。チャネルは刻々と変化する細胞内外環境の鋭敏なバイオセンサーとして働
いている。
様々な刺激
ホルモン
薬剤
毒物
温度
音
光
酸・アルカリ
張力・重力
電気信号
細胞応答
(分泌・分化・増殖)
チャネル
浸透圧・pH
細胞
物質輸送
イオン
例:プロトンシグナル
pH を決定するプロトンイオン(H+)は、生体膜を介する物質の取り込みや・排出、酸分泌、味覚、骨
吸収、感染初期の自然免疫過程、痛みの発生、組織のアシドーシス・アルカローシスなど、多彩な生理
的・病理的現象と深く関わっている。プロトン濃度が一定の範囲に保たれるように、多くの pH 調節機
構があるが、特に細胞膜にはプロトンを細胞内外に輸送するさまざまな分子が存在する。例えばプロト
ンチャネルは細菌など異物を処理する食作用に不可欠であり、プロトンポンプは骨組織を溶解し骨リモ
デリングを行う。これらの分子の異常は、易感染性や骨粗鬆症などの病態を引き起こすことが知られて
いる。
<アピールポイント>
パッチクランプ法によるチャネル活性のリアルタイム定量測定し、刺激要因を検出することができる。
<利用・用途・応用分野>
創薬・バイオセンサー開発・骨粗鬆症の治療
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/molcelphysiol/
キーワード
イオン、チャネル、プロトン、骨代謝、ホメオスターシス
データベース
登録
2010.9
シーズ名
メタボリック症候群と関節炎
氏名・所属 等
小池
達也、医学研究科・リウマチ外科学、准教授
<概要>
関節リウマチ患者は、炎症により関節に腫脹が生じ、骨軟骨の破壊が進行する。実際の臨床の現場で
は、痩せている人よりも太っている人の方で症状が軽い印象がある。一方、関節リウマチ患者の寿命は
短いとされており、死亡総数が最も多いのは循環器系の疾患によってであることが報告されている。と
ころが、関節リウマチ患者の長期予後を調査した研究では太っている患者の方が寿命が長いことが証明
された。ここには大きな矛盾が存在している。通常、太っている人に循環器系の疾患が多いとされてい
るので、太っている人の方が寿命は短いと予測されるからである。そこで、肥満が関節炎を抑制するよ
うな機構が存在するのはないかと考え、肥満細胞が産生するレプチンを分泌できないマウスを用いて関
節炎を発生させる実験を行った。すると、太っているマウス(レプチンを出せない)においては関節炎
の発症進展が抑制されることが明らかになった。これにより、脂質代謝を調整する物質が、関節炎をも
コントロールできる可能性が示された。
また、関節の炎症を抑制し、次に関節軟骨を再生させることが治療の最終目標となるが、現時点では
有効な薬剤は同定されていない。我々は、副甲状腺ホルモン関連ペプチドが軟骨の増殖と分化を促進す
ることを見いだしており、上記結果と合わせてより、より理想に近い治療法を開発できると考えている。
<アピールポイント>
肥満という生命予後に悪く作用すると考えられている因子が、関節炎に対しては抑制因子として作用
し、生命予後を逆に改善する可能性があることを明らかにした。
<利用・用途・応用分野>
関節炎治療、軟骨再生。
<関連する知的財産権>
副甲状腺ホルモン関連ペプチドの変形性関節症あるいは慢性関節リウマチに対する治療効果を細胞培
養系で証明して、使用特許を申請した。特許出願「変形性関節症および炎症性疾患治療剤」特願平 7-30803
号
キーワード
関節リウマチ、メタボリック症候群、副甲状腺ホルモン関連ペプチ
ド
データベース
登録
2010.9
シーズ名
赤血球分化培養法を応用した薬剤・食品の造血効果判定法
氏名・所属 等
高
日野
起良、医学研究科・血液腫瘍制御学、講師
雅之、医学研究科・血液腫瘍制御学、教授
<概要>
本研究代表者は、ヒト造血幹細胞からの 3 段階赤血球培養
系を確立しました(右図)。
・1st step:初期赤血球造血(造血幹細胞から SI2 細胞の分
化)
・ 2nd step:中期赤血球造血(SI2 細胞から SCF/Epo 細胞の
分化)
・ 3rd step:後期赤血球造血(SCF/Epo 細胞から赤血球の分化)
本法は生体内造血を反映して造血幹細胞から実際に赤血球へと分化するまでの主な過程を検証できる
培養システムです。造血幹細胞には臍帯血(同意の得られた妊婦さんから出産直後に採取します)を利
用します。
<アピールポイント>
この培養技術により特定薬剤の赤血球造血効果を分子生物学的に解析することが可能となりました。
実際に本研究代表者は、ある種の血液癌に対する有効性が明らかになっているサリドマイドがヒトの赤
血球造血にどのような影響を及ぼすかについて詳細に解析致しました(Koh KR, Blood. 2005)。
<利用・用途・応用分野>
分野:製薬関係、食品関係
用途:新薬、漢方薬、健康補助食品などの効能分析
ある特定の薬剤や食品(新薬、漢方薬、健康補助食品等)のヒトへの効能として「造血促進作用」や
逆に、「造血抑制作用」があるか否かを科学的に検証することが可能となります。
<関連する知的財産権>
なし
<関連するURL>
なし
キーワード
造血幹細胞、赤血球造血、造血効果、漢方薬、健康補助食品
データベース
登録
2010.9
シーズ名
超音波を用いた非侵襲的肝発癌予測法の開発
氏名・所属 等 小林 佐和子、医学研究科・肝胆膵病態内科学、講師
<概要>
【背景】肝細胞癌などある種の悪性腫瘍の発生・悪性度・発育には、背景組織の炎症や線維化、
血管新生など血流動態の変化を含む間質構造の変化が関与しています。特に肝細胞癌は、そ
のほとんどが慢性肝疾患を背景として発生することから、背景組織の変化が発癌を引き起こ
す可能性があります。
【目的】超音波を用いて、肝発癌に結びつく背景肝組織の変化を明らかにし、それら変化を非侵
襲的に、定量的かつリアルタイムに診断・測定するツールを開発することを目的としていま
す。さらにそのツールを実用化し、がん診療への新たなアプローチに貢献することを目的と
しています。
<アピールポイント>
患者さんに対して侵襲の少ない超音波を用いて、
発癌の予測や予防に利用できる検査法を開発す
ることを目標としています。
<利用・用途・応用分野>
慢性肝疾患における肝発癌のメカニズムが解明できれば、
今後の肝癌治療および予防法の開発に
繋がることが期待されます。また、超音波の診断能を評価・向上させることができれば、患者さ
んは侵襲の大きい検査を受けなくてもすむようになると期待されます。加えて、他臓器にも応用
できる診断法が確立できれば、将来的には肝癌だけでなく、他臓器の癌治療および予防にも繋が
ることが期待できます。
キーワード
超音波、慢性肝疾患、肝癌
データベース
登録
2010.9
シーズ名
皮膚健康度評価システムの構築と利用
氏名・所属 等
小林
裕美、医学研究科・皮膚病態学、准教授
<概要>
皮膚は全身の健康度を映す鏡にたとえられます。私たちは、アトピー性皮膚炎やニキビなど、
慢性の皮膚病に対して通常の治療に加え食事の見直しや漢方を併用してきた経験をもとに、
皮膚の健康の回復と維持、すなわち全身の健康度を高めるための食や生活環境の検討を行っ
ています。これまで、食品をはじめ、生活習慣や環境が皮膚に及ぼす影響を評価する方法は
必ずしも確立されていませんでしたが、本シーズは、最新の機器を用い、皮膚科学に基づく
適切な皮膚機能の測定と解析を行うことにより、評価システムを構築し、皮膚健康度を高め
る因子を客観的に検討することができるようにするものです。
方法
皮膚科医によるチェック、パッチテスト、皮膚保湿能、水分量、色調
の計測器(写真)による測定などの評価方法を用いた検討、実験動物モデルな
どによる検討などの方法を用いて研究します。
主な研究テーマの一例
食と皮膚
アレルギー性皮膚疾患の治
療と対策
創の保護と治癒促進
難治アトピー性皮膚炎治療における食と漢方の意義
特殊食餌飼育マウス角質機能および形態学的検討
機能性食品による皮膚機能改善効果の評価
低刺激化粧品における皮膚刺激の評価試験
消化管感作実験による検討
創治癒における皮膚保湿性促進の効果と作用の研究
参考文献
自分でできるアンチエイジング、生活人新書、NHK 出版、2006.
An alternative approach to atopic dermatitis: Part I-Case series presentation, Evid-based
Complement Alternat Med 2004; 1(1):49-62.
An alternative approach to atopic dermatitis: Part II-case summary and discussion,
Evid-based Complement Alternat Med 2004; 1(2):145-155.
皮膚科における食事療法の現状。MB Derma 74:56-65, 2003.
食習慣と皮膚―よみがえらせよう美しい肌― 第 31 回市民医学講座抄録 1999
<アピールポイント>
皮膚の保湿能、色素沈着改善能の計測技術を利用し、対象食品や製品の特徴別に評価システムを構築
し、美肌効果をスコア化します。この評価技術の確立により、
「科学的根拠」ある機能性食品や環境関
連製品の開発に繋がる事が期待されます
<利用・用途・応用分野>
食育、機能性食品、サプリメント、機能性化粧品・外用剤、アロマ、衣料品、家電製品
キーワード
美肌、食、保湿、健康増進、アンチエイジング
データベース
登録
2010.9
シーズ名
核医学画像処理ソフトウエアの開発
氏名・所属 等
塩見
進、医学研究科・核医学専攻、教授
<概要>
核医学診断では生体内の生化学的・生理学的情報
をリアルタイムに計測できるが、CT・MRI など他の
診断モダリテイに比べ診断情報の標準化・規格化が
進んでいない。そのため SPECT 撮影装置や専用解析
装置に依存しないパーソナルコンピュータ(PC)
における標準的・汎用的画像処理ソフトウエアを開
発している。
さらに、SPECT・PET など核医学検査は生体内での
生化学・生理学的情報を画像化(機能画像)してい
るが、解剖学的情報に乏しい欠点がある。そのため
CT・MRI などの解剖画像と融合画像を作成すること
は画像読影の上で重要である。我々は PC を用いた
SPECT・PET とこれらの画像との融合画像や 3 次元
融合画像作成ソフトウエアの開発を行っている。ま
た、これら核医学画像データを用いた新しいコンピ
ュータ支援診断システム(CAD)の開発を行い、
その臨床的有用性を検討することも試みている。
<アピールポイント>
・PET、SPECT の機種に依存しない汎用画像処理を行う。
・PET、SPECT と CT、MRI の 3D 融合画像の作成を行う。
<利用・用途・応用分野>
・癌治療薬の効果判定
・外科手術のナビゲーション
・癌の進展の立体的把握
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/nucmed/
キーワード
PET、CT、MRI、融合画像、CAD
データベース
登録
2010.9
シーズ名
Brugada 症候群の心電図学的差異の解明とそれに基づく突然死の risk
の評価法の確立
氏名・所属 等
高木
雅彦、医学研究科・循環器病態内科学、講師
<概要>
◇ 研究目標:最新の長時間記録心電図や高感度心電図を用いた Brugada 症候群の心電図学的差異の
解明とそれに基づく突然死の risk 評価法を確立すること。
◇ 研究概要:有症候性及び無症候性 Brugada 症候群患者の 12 誘導心電図、12 誘導 Holter 心電図、
加算平均心電図、T 波変動解析用 Holter 心電図の検査結果の解析を行ない、脱分極異常
と再分極異常について突然死のリスクの高い症例と低い症例との比較検討を行なう。高
リスク患者の指標を明らかにし、突然死の予防法を確立する。
<アピールポイント>
Brugada 症候群は日本人の壮年期の男性に多く見られる疾患であり、突然死をきたす致死的不整脈を
発症する予後不良の症候群である。Brugada 症候群に対する突然死の risk 評価法は未解決な問題であ
り、この研究結果が明らかになれば、突然死の risk の非侵襲的評価法として、臨床での実用、市場の
拡大が期待できる。
<利用・用途・応用分野>
突然死の risk の非侵襲的評価法(心電図検査法)として、臨床での実用、市場の拡大が期待できる。
<関連する知的財産権>
なし
キーワード
突然死、リスク評価法、ペースメーカ、中隔ペーシング用植込み材
料
データベース
登録
2010.9
シーズ名
心房中隔、心室中隔ペ−シングによる
血行動態改善効果の証明と臨床応用
氏名・所属 等
高木
雅彦、医学研究科・循環器病態内科学、講師
<概要>
◇ 研究目標:心房中隔ペーシング、心室中隔ペーシングによる血行動態改善効果を証明し、至適ペ
ーシング部位の同定と植込み手技の確立を目指す。
◇
研究概要:心房中隔ペーシング、心室中隔ペーシングを施行したペースメーカ植込み患者で血行
動態の変化を心臓超音波検査等を用いて検討し、最も血行動態が改善し、心機能が維持
できるペーシング部位を同定し、その部位への植込み法を開発する。
<アピールポイント>
ペースメーカ植込み、除細動器植込み、両心室ペースメーカ植込みが必要な年間約 5000 例の患者に
対する有用なペーシング療法として、臨床応用、植込み手技に必要な診療材料の市場拡大が期待でき
る。
<利用・用途・応用分野>
ペーシングリードの開発、植込み用のシース、スタイレット、カテーテルが開発されれば、植込み症
例への臨床での実用、市場の拡大が期待できる。
<関連する知的財産権>
なし
キーワード
突然死、リスク評価法、ペースメーカ、中隔ペーシング用植込み材
料
データベース
登録
2010.9
シーズ名
再生医療における iPS 細胞の足場となる scaffold の開発
氏名・所属 等
高松
聖仁、医学研究科・整形外科学、講師
<概要>
当教室の同門である山中伸弥(京都大学・iPS 細胞研究センター長)らが開発報告した iPS 細胞は、
人間やマウスの皮膚から採取した細胞から作成されており、増殖能力が旺盛で大量培養できるため今
後の再生医療の中で大きな期待が寄せられている。ただ、実際にこの細胞を人に応用することを考え
ると細胞のみを注入できる状況は限定されており、細胞増殖の足場となる scaffold と共に生体へ移植
する方法が将来の再生医療の軸の一つとなると考えられる。しかし、iPS 細胞もしくは iPS 細胞から
誘導された細胞が、まず in vitro において scaffold 上で生着できるのか、もし生着できたとしても
その場で腫瘍化することはないのか、scaffold 上で分化は進むのか、それとも多能性が維持されるの
かはいずれもまだ明らかにされていない。
これまで我々は、末梢神経欠損部再建用の生体吸収性材料による人工神経(ポリマーチューブ)を開
発し、それに培養シュワン細胞を組み合わせるハイブリッド型人工神経を作成してきた。そして、そ
れら一連の実験の中でシュワン細胞の生体吸収性材料上での三次元培養に成功している。
その技術を応用し、本研究では iPS 細胞から神経系細胞に誘導された細胞を用いて、生体吸収性人工
神経上でその細胞の接着・生着能力、腫瘍化、分化について研究を行っている。すなわち、iPS 細胞
をどの程度分化させた状態で、どのような生体吸収性材料の上で培養し、どの程度の期間体外で培養
し、最終的に誘導された細胞がどのような能力と性質を持っているのか検討を加えている。
これらを明らかにし、末梢神経の領域のみならず他分野に応用できる iPS 細胞の足場となる scaffold
を開発し今後の iPS 細胞を用いた再生医療の礎のひとつとしたい。
<アピールポイント>
これまで当教室では、末梢神経欠損部再建用の人工神経の開発と研究を 10 年以上行っており、以下
のような研究の蓄積がある。
1.生体内で一定の期間形態と機能を維持した後に吸収される素材の開発
2.生体外で細胞と組み合わせて三次元培養が可能な形態の生体材料の開発
3.生体外で細胞が接着しやすい生体材料の開発
4.生体外で細胞の成長因子を付加できる生体材料の開発
5.生体内で細胞の成長因子を徐放するドラックデリバリーシステムの開発
6.生体外で生体材料と細胞を組み合わせて培養する技術の開発
7.iPS 細胞から神経系細胞へ誘導する技術の確立
8.生体材料上での細胞の性質に関する評価技術の確立
<利用・用途・応用分野>
この技術が確立されれば、iPS 細胞から誘導された細胞を生体内に移植する際に、足場としての
scaffold 上で三次元培養された大量の iPS 誘導細胞を移植することが可能となる。
そのことは、移植した iPS 誘導細胞が拡散することなく標的臓器においてより有効に機能するために
必要な技術と考えられる。
<関連する知的財産権>
主要特許【発明の名称】神経再生チューブ 【発明者】高松聖仁
【課題】切断された神経を再生する。
【解決手段】生体吸収性高分子から構成されるスポンジ、及び、該スポンジより分解吸収
期間の長い生体吸収性高分子から構成される筒状の強化材を含み、少なくとも内面がス
ポンジである神経再生チューブ。
【出願日】平成13年7月9日【公開日】平成15年1月21日
【出願番号】特願2001−208179(P2001−208179)
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/orthoped/group/05handsur.html
キーワード
iPS 細胞、生体材料、神経、scaffold、再生医療
データベース
登録
2010.9
シーズ名
新しい消化器癌治療法の開発
氏名・所属 等
田中
浩明、医学研究科・腫瘍外科学、講師
<概要>
消化器外科の分野において、臨床での外科治療に携わるとともに、消化器癌に対する新しい治療法を
研究している。
<アピールポイント>
新しい消化器癌治療法の開発、特に免疫治療。
<利用・用途・応用分野>
臨床応用に向けての、新しい治療法の開発
<関連する知的財産権>
なし
<関連するURL>
なし
キーワード
臨床医学、外科学、消化器外科学
データベース
登録
2010.9
シーズ名
患者遺伝子多型を利用した治療介入の試み
氏名・所属 等
田守
昭博、医学研究科・内科専攻、准教授
<概要>
我々は、慢性肝疾患患者を対象として疾患の進行速度や薬剤の治療効果と相関する遺伝子多型(SNPs)
解析を進めている。
共同研究施設である名古屋市大からは C 型慢性肝炎の治療効果と関係する遺伝子多型を報告されて
おり、今後も肝疾患に関係する新たな遺伝子多型の特定が期待される。
現在 1500 症例の解析サンプルを保有し、肝疾患の経過や治療効果および薬剤副作用と関係する遺伝
子多型を探索中である。
T
C
C
G
T
A
C
C
C
G
C
T
C
heterozygote
normal
<アピールポイント>
ヒトを対象とした研究であり、実用化に直結するものと考える。
現在、肝炎ウイルスを自然排除する可能性のある遺伝子多型を検索中である。
薬剤の代謝酵素遺伝子多型から副作用を予測できることを報告している。
<利用・用途・応用分野>
臨床的な遺伝子検査法の確立
新たな治療薬の開発
<関連する知的財産権>
なし
<関連するURL>
なし
キーワード
C
G
生活習慣、肝疾患、遺伝子多型、発癌予防
データベース
登録
2010.9
シーズ名
低磁場 MRI と脳磁図の同時測定に関する基礎研究(1/2)
氏名・所属 等
露口
尚弘、医学研究科・脳神経外科、講師
<概要>
脳卒中や脳腫瘍などの脳の病気の治療において、CT や MRI などの画像診断法がなくてはならないも
のになっている。これらは、身体に外科的処置を加えることなしに頭蓋内の情報を得ることができる
ために非常に有用な検査法である。しかし、これらの検査では脳の静的な形態的な情報を得ることは
できるが、脳の動的な電機活動をリアルタイムに把握することは難しい。一方、脳波は、神経の電気
活動を直接測定できる一般的に普及している検査であり、さらに脳の磁場変化を測定する脳磁図
(MEG:magnetoencephalography)は脳波より直接的に電気信号をとらえるものとして、病院や多く研
究施設で導入され始めている。この検査は人を対象に開発されてきたため、実験的な研究はされてい
なかった。疾患の治療を考える上では、動物実験を行うことの意味は大きい。我々は、疾患モデルを
対象に神経活動の変化をとらえるのを目的とし動物用の小型脳磁場測定装置を開発した。
MEG の測定ではその信号の解析結果を展開する地図が必要となる。その地図となる MRI は脳磁場と同
時計測はすることはできないので、それぞれ別に測定することになる。小動物の同時計測ができれば
その有用性ははかり知れない。MRI は強い磁場をかけて測定し、脳磁図は磁場を可能な限り遮蔽して
測定する装置で、これを同時に行うことは不可能である。そこで、脳磁場の測定装置内の超電導干渉
装置(SQUID)を MRI の検出コイルとし小さな磁場で撮像することで同時計測を行う方法を研究してい
る。本研究では、従来の受動的な SQUID 磁気センシング(MEG)と測定対象に磁気的な変調(低磁場)
を負荷することで検出できる能動的センシング(MRI)を行なう。そのために小動物脳磁場測定装置に
低磁場 MRI の機能を付加し、誘発脳磁場による brain mapping とてんかんラットでの異常脳磁場の解
剖学的局在同定を行うことで、この実験系の有用性を検証する。
この研究のテーマは、①システム一体型小型 MEG を用いてラットの脳磁場を再現性よく安定に測
定できること,てんかんラットの脳磁場の変化を測定することと、②システム一体型小型 MEG に組
み込んだ低磁場 SQUID-MRI でラット脳を画像化することである。
そのため本研究期間での達成目標は、①てんかん波および誘発磁場の安定した検出を達成すること
と、②低磁場 SQUID-MRI のプロトタイプの改良とファントム実験およびラット脳の画像検出を達成す
ることである。
図2
図1
図3
(次頁に続く)
キーワード
脳磁図、MEG、低磁場 MRI, 小型 SQUID
データベース
登録
2010.9
シーズ名
低磁場 MRI と脳磁図の同時測定に関する基礎研究(2/2)
氏名・所属 等
露口
尚弘、医学研究科・脳神経外科、講師
<概要>(続き)
装置:磁気シールドルーム内に解析用コンピューターと磁気シールドボックスおよび超伝導緩
衝装置(SQUID)センサーの一体型小型 MEG 測定装置(図1)が配置されておりシールドルームと
シールドボックスの2重磁場遮蔽構造を呈している。内部に 1 チャンネルのセンサーコイルの
直径が 2.5mm その中心間隔が 2.75mm の 9 チャンネルマルチセンサーが設置されている(図 2)。
ラット固定用移動ステージ(図 3)は、XYZで 0.5mm の精度で移動させることができる。
刺激装置は日本光電製のものを使用する。
(SQUID)
上図は低磁場 MRI 装置の概念図である。図1の装置に上図のコイルを設置し磁気共鳴の信号の検出器
とする。
<アピールポイント>
神経科学分野における動物実験での非侵襲的測定装置のバリエーションが増える。
頭蓋内疾患ばかりでなくからの微小生体磁場をとらえることより神経活動にもとづく動物の生命ネ
ットワークの探求する分野において究極のツールになる。
強い磁場をかけない次世代 MRI の開発につながる。ポータブル MRI、モバイル MRI への現実化。
<利用・用途・応用分野>
医療現場での検査診断
大学などの研究施設での生命科学研究
企業における非破壊検査
キーワード
脳磁図、MEG、低磁場 MRI, 小型 SQUID
データベース
登録
2010.9
シーズ名
基底膜制御による皮膚、爪、毛髪疾患の制御:マトリックス治療
氏名・所属 等
鶴田
大輔、医学研究科・皮膚病態学、講師
<概要>
皮膚での細胞―細胞外マトリックス相互作用は focal adhesion(接着斑)と hemidesmosome(ヘミデ
スモゾーム)で行われます。皮膚がけがをしたり、毛が抜けたりしても小範囲であれば修復されます。
この修復過程で中心的役割を果たすのがこれらの接着機構です。
また、癌の転移、類天疱瘡という自己免疫疾患
の際に異常をおこすのもこの接着機構です。
われわれの研究はこれらの接着機構の制御、相互
作用の解析および破綻した際の修復です。
上記の研究の応用として、創傷治癒の促進、癌転
移の制御抑制、発毛、育毛、毛の脱落の抑制が考
えられる
<アピールポイント>
生体分子を利用しているので、安全性が高い
<利用・用途・応用分野>
上記の研究の応用として、創傷治癒の促進、癌転移の制御抑制、発毛、育毛、毛の脱落の抑制が考え
られる。
● 皮膚でのヘミデスモゾームの動態の解析。
● 皮膚での接着斑の動態の解析。
● 表皮角化細胞でのヘミデスモゾームー接着斑相互作用の解明。
● 毛の成長期における細胞外マトリックス分子の役割解明。特に遺伝子導入による治療法の開発
● 毛の退縮期における細胞外マトリックス分子の役割解明。抜け毛の抑制について。
● 抗癌剤による脱毛機構の解明。
● マトリックス制御による癌転移の抑制。
<関連する知的財産権>
特記すべきことなし。
<関連するURL>
現在作成中。本学皮膚科学講座ホームページ参照 http://www.med.osaka-cu.ac.jp/Derma/
キーワード
ヘミデスモゾーム、接着斑、マトリックス
データベース
登録
2010.9
シーズ名
腸管寄生原虫クリプトスポリジウム実験系に関する技術
氏名・所属 等
寺本
勲、医学研究科・寄生虫学専攻、助教
<概要>
ヒトの腸管微獣毛の膜に取り囲まれて寄生し、下痢を発症せしめる原虫にクリプトスポリジウムがあ
る。この原虫はヒトだけでなく各種の動物にも寄生がみられ、さらに感染は物質透過性の非常に悪い
膜に包まれたオーシストと呼ばれる形で主に水を介して起こされる。このようにヒトに対して感染が
起こりやすい状況にありながら、その特効的な治療薬は無い。幸い健常な宿主では一時的な下痢を発
症するが自然治癒する。しかし免疫機能に低下のある宿主では持続性の下痢となり、生命の危険にも
さらされる。
このような状況において治療薬の開発が急がれるのが現状であり、そのための実験系、評価系が必要
である。当方では動物感染モデル、およびそこから産出される原虫を用いた試験管内培養宿集細胞へ
の感染モデルを構築している。
<アピールポイント>
クリプトスポリジウムについてはその取り扱いに法的な制限もあるが、基準を満たした施設において
実験している。
下痢症患者より得た原虫株についてマウスを宿主とする系で維持しており、常時実験可能である。同
時に試験管内実験系も同様に可能である。
<利用・用途・応用分野>
治療薬開発
オーシストの不活化法、除去法の開発
キーワード
クリプトスポリジウム、腸管感染症、治療薬開発
データベース
登録
2010.9
シーズ名
慢性移植腎症における腎間質線維化予防に関する研究
氏名・所属 等
仲谷
達也、医学研究科・泌尿器病態学、教授
<概要>
わが国の人口動態調査結果では平成 18 年における死亡原因で腎不全は第 8 位で肝疾患よりも上位
で ある。腎不全の原因として慢性腎臓病は最も多く、慢性腎臓病の基礎的なメカニズムとして腎間質
線維 化が大きなウエイトを占めている。慢性移植腎症は腎移植に起こる慢性腎臓病であり、慢性移植
腎症は 移植腎機能喪失の最も大きな原因疾患として臨床的意義は大きい。慢性移植腎症は幾つかの因
子が関与 しあって発症・進行するが、最終病態に至る経過の中で腎間質の線維化が出現する。以前か
ら知られて いるように腎間質線維化は進行性腎障害の予後規定因子として重要である。また、腎間質
線維化では局 所での単球・マクロファージ浸潤を伴う間質の炎症が先行することから、炎症抑制がそ
の発症進展を防 ぐ意味で重要である。このことを私たちはこれまでカルシニューリン阻害剤による慢
性毒性モデルでの 腎間質線維化がマグネシウム負荷や nuclear factor-・・ (NF-・・)阻害作用を有
する pyrrolidine dithiocarbamate (PDTC) 投与で改善することを明らかし、炎症における重要な転
写因子の一つである NF-・・ がこのモデルでの腎間質線維化に果たす役割が大きいことを示してき
た。
前立腺癌に対する大豆イソフラボンの予防効果が示されているように、各種疾患に対する食事成分の
有効性が近年盛んに研究されている。また最近、香辛料ターメリックの成分であるクルクミンに抗炎
症 作用のあることが明らかとなった。そこでクルクミンによる腎間質予防効果の有無を動物モデルで
検討 し、クルクミンが NF-・・ の不活性化を介して腎間質線維化予防に関与する可能性のあること
を明らか にした。このように幾つかのアプローチから腎間質線維化の病態解明とその予防に関して研
究している。
<アピールポイント>
慢性腎臓病は慢性腎不全の危険因子として社会的に注目を集めており、その機序を解明することは慢
性 腎臓病対策の観点から意義深いと考えられる。
<利用・用途・応用分野>
特定保健用食品などへの応用による腎機能保護食品としての活用
<関連する知的財産権>
なし
<関連するURL>
なし
キーワード
慢性腎不全、腎移植、
慢性移植腎症、腎間質線維化、カルシニューリン阻害剤
データベース
登録
2010.9
シーズ名
泌尿器科疾患における慢性腎臓病(CKD)の臨床的検討 2010
氏名・所属 等
長沼
俊秀、医学研究科・泌尿器病態学専攻、講師
<概要>
2002 年に米国 K/DOQI によって初めて慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease : CKD)の概念が提唱さ
れ、2005 年に KDIGO (Kidney Disease : Improving Global Outcome) によって #1.Stage5 のうち透
析療法を開始した患者を Stage5D とする、#2.腎移植後の患者をその腎機能による分類に加えて T を付
記するの二点が追加され、国際的に CKD の概念が広く認識されるに至った。
わが国においても 2004 年度に日本腎臓学会により CKD 対策委員会が設立され、2009 年度には CKD 診
療ガイドラインが発表された。ところが泌尿器科領域の疾患(尿路結石、前立腺肥大症、尿路変向術
後、片腎症例、ED、その他)において腎機能障害の出現、ESRD への進行に関してよく知られている
ものの、CKD に関する EBM はほとんどない状況である。
我々は泌尿器疾患における CKD の横断研究および前向きコホート研究により腎機能障害の進行の程
度と危険因子の抽出、CVD の発症の程度と危険因子の抽出を検討することを考えている。
<アピールポイント>
現在まで、全く注目されていない分野である、泌尿器科疾患についての CKD の実態を解明、そのリス
クについて検討し、食事療法や生活習慣の改善、薬剤や手術による介入の可能性を検討する。
また、尿路結石症における CKD に関しては、日本尿路結石症学会において多施設協同研究を実施中で
ある。
<利用・用途・応用分野>
腎保護作用のある降圧剤(ARB、ACEI、CCB、利尿剤)の開発や、それらの薬剤を使用した介入研究の
可能性。また、スタチンを使用した介入の可能性がある。
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/urology/
http://jsur.umin.jp/
キーワード
泌尿器科、CKD、RCT、ARB、ACEI
データベース
登録
2010.9
シーズ名
内視鏡を用いた低侵襲脊椎外科手術の開発
氏名・所属 等
中村
博亮、医学研究科・整形外科学、教授
<概要>
近年、手術侵襲の低侵襲化を目的として外科手術への内視鏡の応用が進んでいる。脊椎外科手術
においても例外でなく、同様の手術効果が得られるならば、患者さんはより皮膚切開の小さな内
視鏡手術を選択する傾向にある。われわれは国内の脊椎内視鏡視下手術の草分け的存在であり、
多くの内視鏡視下手術を行い、その発展に貢献してきた。また、内視鏡視下手術をより安全に、
簡便に行う目的で機械の開発などを手がけてきた。
<アピールポイント>
われわれは国内でも早期より脊椎内視鏡手術に取り組んできた教室であり、
今までにも独自の内
視鏡視下手術機械の開発などを手がけてきた実績を有する。
<利用・用途・応用分野>
内視鏡手術、脊椎手術全般
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/orthoped/
内視鏡を併用した椎体形成術(骨粗鬆性椎体骨折後偽関節に対する手術)の
風景
左からシェーマ、実際の手術写真、術中イメージ画像、内視鏡画像
このように内視鏡を通過させるだけの小さな皮切で椎体内部を観察しながら
手術を行うことができるのが利点である。
内視鏡視下椎弓形成術の手術中写真
直径約 20 ミリの皮切で脊柱管の内部を詳細に観察しながら神経除圧術を行うことがで
きる。そのためには高解像度の画像装置と特殊な手術道具の開発が必須となる。
キーワード
脊椎手術、低侵襲、内視鏡手術、骨粗鬆性椎体骨折、椎体形成術
データベース
登録
2010.9
シーズ名
心筋梗塞後心臓リモデリングの抑制効果に対する投薬及び細胞移植療法
の有用性
氏名・所属 等
中村
泰浩、医学研究科・循環器病態内科学、講師
<概要>
これまで、我々はマウスやラットなどの小動物の心筋梗塞モデルを作製し、β遮断薬やアンジオテン
シン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン II 受容体拮抗薬及びそれらの併用療法を行い、心筋梗塞後心
臓リモデリングの抑制効果を心臓超音波及び mRNA 発現を検討することにより確認し報告してきた。ま
た、ラット neonatal myocyte を免疫不全ラット心筋梗塞再灌流モデルに細胞移植を行い、移植後の心
機能改善と心筋内生着を確認した。また、ラット骨髄間葉系細胞を免疫不全ラット心筋梗塞モデルに細
胞移植を行い VEGF との併用療法の有用性を心臓超音波検査及び組織学的検討により検討し報告した。
最近では米国ミネソタ大学との共同研究で、ブタの骨髄間葉系細胞を免疫不全マウスの心筋梗塞モデ
に異種間細胞移植を行い、移植後心機能の改善、細胞生着率及びその形態・分化を検討し報告した。
(Nakamura Y, et al. Stem Cells. 25(3):612-20.2007.) (下図参照)
骨髄間葉系細胞移植後(MSC)の免疫染色による心筋細胞の同定
nLacZ
merge
MEF2. cTnT
心臓超音波検査
C
Control
MI without MSCs
MI with MSCs
骨格筋芽細胞を用いた細胞移植療法が動物実験でその有用性が報告されて以来、代用心筋として期待
されている。実際にヒト陳旧性心筋梗塞症例に自家骨格筋芽細胞移植が行われたとこる、自家骨格筋芽
細胞移植により重篤な心不全症状と心機能改善は認められた。しかしながら剖検例の検討より、移植し
た骨格筋芽細胞は心筋細胞に分化せず、低生着率であった。また、細胞移植後致死的不整脈の発現を認
め追加投薬や植え込み方除細動器が必要であった。しかしながら、骨格筋芽細胞移植の利点は自家移植
であり免疫拒絶反応を認めないこと、生検により比較的容易に獲得可能であること、培養により増殖可
能であることが挙げられる。それゆえに、次世代の骨格筋芽細胞移植療法が必要とされている。このよ
うな中、今回我々は MyoD 遺伝子をノックアウトした骨格筋芽細胞(MyoD -/-)を用いた骨格筋芽細胞移植
療法に注目している。MyoD -/- myoblast は正常 myoblast と比べてより未分化であり、細胞分裂能が亢
進している。MyoD -/- myoblast は骨格筋細胞への最終分化に移行しづらいという特徴も持ち合わせてい
る。したがって、MyoD -/- myoblast を使用することは移植後の生着率の増加と心筋細胞への分化転換が
期待される。MyoD 遺伝子ノックアウト骨格筋芽細胞を用いてマウス心筋梗塞モデルに直接心筋内又は心
筋シートを用いて細胞移植する。移植細胞の生着率を正常骨格筋芽細胞と比較する。移植細胞は心筋細
胞を呈するかどうかを免疫蛍光染色や免疫化学染色を行い検討する。細胞移植により心機能は改善する
かを心臓超音波検査で検討する。また、様々な遺伝子改変を行った骨格筋芽細胞を用いて同様の検討を
行う予定である。
<アピールポイント>
研究には安定したマウスの心筋梗塞モデルを作製することが求められるが、既に当教室では確立してい
る。
キーワード
心臓リモデリング、心不全、細胞移植、再生医療
データベース
登録
2010.9
シーズ名
脳血管内手術
氏名・所属 等
西尾
明正、医学研究科・脳神経外科学、准教授
<概要>
1.非侵襲的な脳血管内治療の脳神経外科領域において果たせる役割を検討している。
2.われわれの脳神経外科の特色として、頭蓋底腫瘍手術があるが、その治療の一連の中で外科的摘出
術前の脳血管内治療による塞栓術を施行している。その有用性は外科手術において証明されている
が、客観的かつ一般的な評価を検討している。
3.血管撮影装置、CT 装置、MRI 装置の 3 次元撮像機能を駆使し、静脈解剖特に後頭蓋窩を中心に検討
している。脳神経外科手術において合併症を軽減するために、静脈構造の掌握は重大な課題となっ
ている。
4.2008 年 4 月から頸動脈狭窄病変に対するステント留置を併用した経皮的血管拡張術が認められた
が、その詳細な有用性が今後検討されていることと思われ、我々も合併症の確率を軽減させる目的
で、CT scan,超音波検査、MRI 等の装置を使用して、術前評価をし、手技の詳細を検討している。
<アピールポイント>
ステント治療、コイル塞栓術など術者依存が大いにある臨床医学業界で医療材料依存の面が多くその
開発臨床応用は重要である。
脳血管内治療の合併症を低減するとともに、脳疾患に対する安全な治療の確立につながる。
キーワード
脳神経外科、血管内治療
データベース
登録
2010.9
シーズ名
神経因性疼痛における脊髄鎮痛の行動学的、電気生理学的検討
氏名・所属 等
西川
精宣、医学研究科・麻酔・集中治療医学、准教授
<概要>
慢性痛の中でも、神経因性疼痛は、本来痛みを感じない筈の刺激でも激しい痛みが誘発され(アロデ
ィニア)、自発痛が遷延するため、このような患者の社会的な生産性を回復するためにも治療は重要で
あるが、難治性であるのが実情である。そこで、有効で安全な薬剤の組み合わせを見出しその鎮痛の作
用機序を明らかにすることが本研究の目標である。
Chung らの方法に準じた SD ラットの脊髄神経結紮モデルを用いた。すなわち一側の L5 脊髄神経を根
部で 5‐0 絹糸を用いて結紮すると、1 週間後からは安定した機械的アロディニア、熱アロディニアが出
現する。同時に腰椎 3/4 より脊髄くも膜下腔に細径のカテーテルを慢性的に植え込んで、薬剤反復投与
ができるようにした。元来、この動物モデルの神経因性疼痛は腰部交感神経遮断が奏効することがわか
っているので、左右の腰部交感神経節、交感神経幹を焼灼切除したラットでも同様の実験を行った。行
動学的評価として、足底をさまざまの圧力のフィランメント(von Frey)で刺激して足を引っ込める閾
値と、80℃の熱源の投射光をあてて足を引っ込めるまでの潜時を測定した。
作用機序の検討を行うため、ラットをウレタン麻酔し、気管挿管・人工呼吸下に腹臥位としてシール
ドされた防震台上の脳脊髄固定装置に固定した。実体顕微鏡下に硬膜を切開、L1 の後根を確認し、軟膜
を裂いていわゆるブラインド in vivo パッチクランプ手法を用いて脊髄膠様質(Rexid 第Ⅱ層)の細胞
にガラスピペット記録電極を刺入した。ホールセルパッチクランプで膜電位を‐70mV に固定して興奮性
シナプス後電流(EPSC)を、膜電位を 0mV に固定して抑制性シナプス後電流(IPSC)を観察した。脊髄
プールに対象薬剤を加えた細胞外液を潅流し検討した。
ガバペンチン、クロニジンの単独投与、および両薬剤の併用投与で検討した行動学的検討では、併用
投与時の ED50 は isobologram の相加作用を示す直線上の理論値よりも下方にあり、2剤は相乗的に作用
するという結果が得られ、眠気や多尿といった副作用も減少した。
抗痙攣薬のガバペンチンは N-type カルシウムチャンネルに作用し、α2受容体アゴニストであるクロ
ニジンは脊髄ニコチン受容体刺激を介して鎮痛作用を表すと考えられている。このように作用機序の異
なる鎮痛薬の脊髄くも膜下併用投与はアロディニアの相乗的抑制効果が期待できるが、クロニジンでは
同時に交感神経遮断作用も示すので、鎮痛効果に間接的に寄与している可能性がある。
<アピールポイント>
ラットの行動学的実験により、薬剤くも膜下投与の相互作用、有効性を検討するとともに安全性につ
いても観察できる。In vivo パッチクランプ法によって生理的な連携を保った生体において分子レベル
での作用機序を検討するとともに、同様の作用機序を呈する薬剤を選択して検討を加えることができ
る。
<利用・用途・応用分野>
臨床ではナトリウムチャンネルブロッカー、NMDA 受容体拮抗薬、バニロイド受容体拮抗薬、α受容体
遮断薬、GABA 作動薬、抗うつ薬、ステロイド等が試みられ、基礎研究で脊髄ミクログリアの P2X4 受容
体の関与がわかっているが、長時間作用性で副作用の少ない薬剤の臨床使用には到達していない。脊髄
薬剤投与はリスクも伴うが、非常に効果の強い薬剤の創薬のアイデアを提供するとともに、安全性につ
いても確認が行える。
キーワード
慢性疼痛、脊髄鎮痛、交感神経、薬剤の安全性、新薬開発
データベース
登録
2010.9
シーズ名
BMP を用いた関節内構成体(靱帯・半月板)損傷に対する組織再生
氏名・所属 等
橋本
祐介、医学研究科・整形外科学、講師
<概要>
変形性膝関節症の要因となる関節内靱帯損傷・半月板損傷に対する現在の治療は、人工材料あるいは
代替物での再建が多いのが現状である。しかし本来は、組織学的再生修復による再建が望ましい。細
胞移植の研究が現在なされているが、臨床応用を行う際、細胞の取り扱いに対して膨大な設備・人件
費が必要になることが予想されるため、細胞移植を用いない新しい修復・再生医学的技術を開発する
ことの意義は大きい。我々はこれまで BMP-2 を用いて軟骨化や骨化を誘導することに成功している。
そこでは、腱に直接骨化させることによって、発生過程と同様の過程を経て、人為的に骨腱移行部の
再生がなされていることがわかった。
本研究の目的は、その技術を用いて臨床で有効な靱帯再建術・半月板再建術に応用できるように手術
手技を確立し、その有効性を調査している。
<アピールポイント>
現在の関節構成支持体の再建方法は骨内に腱を埋入させる方法が一般的であるが、腱は決して骨に
置換されないことが臨床的に証明されている。骨靭帯移行部は直接骨に付着しており、特殊な構造を
呈しているが、再建された骨腱移行部は正常の組織像を呈さない。よって我々は全く新しい方法とし
て発生学的見地から腱を直接骨化させることによって、骨靭帯移行部の再生を試み、本来の骨腱移行
部の発生過程を、BMP によって再現できた。
またこの研究により、腱から骨に置換される過程において、内軟骨性骨化と同様の過程を踏むこと
がわかった。その過程において、腱内に多数の軟骨細胞が出現することがわかり、その組織像は半月
板に非常に類似していた。そこで我々は臨床で一部使用されている腱を用いた半月板再建に BMP を付
加したモデルを作成している。
膝前十字靭帯損傷に対する手術には腱のみで再建する場合と骨―靭帯―骨移植を行う場合がある。よ
り正常に近い骨―靭帯―骨移植を使用することが理想であるが、術後疼痛をきたすことがあるために、
この技術を使用して、より疼痛の少ない腱に BMP を作用させることで再生骨―靭帯―骨構成体の作成
を試み、新生骨―靭帯―骨構成体を用いて前十字靭帯再建を行ったところ、正常に近い組織像を呈し、
力学的にも有利な再建が行われることがわかった。
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/orthoped
キーワード
変形性膝関節症、靭帯再建、半月板再生、BMP
データベース
登録
2010.9
シーズ名
内臓脂肪の疫学研究
氏名・所属 等
林
佐藤
朝茂、医学研究科・都市医学大講座・産業医学分野、准教授
恭子、医学研究科・都市医学大講座・産業医学分野、講師
<概要>
肥満は全世界的に増加傾向にあり、2 型糖尿病・高血圧・脂質異常症・メタボリック症
候群などの生活習慣病の最も重要な危険因子である。これらの生活習慣病はその病因とし
て腹部内臓脂肪とインスリン抵抗性が自明のように扱われてきた。しかし、腹部内臓脂肪
の正確な測定は CT 撮影によらねばならず、CT 撮影による腹部内臓脂肪を用いた大規模疫
学調査は世界でもほとんどないのが現状である。したがって、実際には腹部内臓脂肪がこ
れら生活習慣病の本当の危険因子であるかどうかは、ほとんど明らかになっていない。ま
た、日本人は、欧米人に比べ、脂肪の分布のうえでも、皮下脂肪より内臓脂肪が蓄積しや
すい民族であるとの報告もあり、内臓脂肪の疫学研究は、わが国において重要な問題であ
る。この問題を解決するために、我々は、腹部内臓脂肪と生活習慣病に関する大規模疫学
研究を立ち上げてきた。
また、この分野においては、米国ワシントン州立大学と共同研究を行っている。このコ
ホート研究の特徴は、参加者がすべて日本人であること、CT 撮影により腹部内臓脂肪を
評価してきた世界で唯一の長期前向きコホート研究であることである。この研究からは
CT 撮影による腹部内臓脂肪と 2 型糖尿病との関係(Diabetes Care. 2000 23(4):465-71)、
耐糖能異常との関係(Diabetes Care. 2003;26(3):650-5)、高血圧との関係(Circulation.
2003;108(14):1718-23、Ann Intern Med. 2004; 140(12) :992-1000)、虚血性心疾患との
関 係 ( Diabetes Care. 1999;22(11):1808-12 )、 メ タ ボ リ ッ ク 症 候 群 と の 関 係
(Diabetologia. 2007;50(6):1156-60)などその他の多くの生活習慣病と CT 撮影による
腹部内臓脂肪の関係が明らかにされてきた。このコホート研究は日本人の 10 年・20 年先
の将来像とも考えられる。それゆえ、米国日系人糖尿病研究との比較研究は、我が国にお
いても 2 型糖尿病・高血圧・高脂血症といった生活習慣病の対策上極めて有用な研究と考
えられる。
(研究テーマ)
z
内臓脂肪と生活習慣病の関係
キーワード
疫学研究、内臓脂肪、2 型糖尿病、生活習慣病
データベース
登録
2010.9
シーズ名
醜形変形患者に対する社会適応力向上プログラム
氏名・所属 等
原田
輝一、医学研究科・形成外科学、准教授
<概要>
日常生活における対人コミュニケーションでは,対表面からの情報は極めて重要な基礎を作ってい
る。容貌・表情・顔面・話し方・しぐさなどは対表面からの情報として,コミュニケーションのモー
ドを決定し,コミュニケーションの意味自体にも強い影響を与えている。皮膚(体表)に何らかの異
常を抱える患者の場合,上手くモードを調節することができず,慣れない相手とのコミュニケーショ
ンの質は低下しがちである。初対面の人との打ち解けたコミュニケーションは更に困難で,対人関係
意欲は低下し,結果的に QOL(Quality of Life)の低下,社会適応力の低下を招く。対人恐怖症,適
応障害,うつ状態などに陥るケースさえある。
コミュニケーション障害の原因となりうる醜形変形に対処し克服していくことは,患者にとって非常
に重要なことである。こうした社会と個人の相互関係を改善することも重要であり、これまで心理学
者や大手化粧品会社と共同研究を行ってきた。
<アピールポイント>
化粧品メーカーである資生堂(文化事業部)とは、患者が障害に対処し易くなるよう、様々な創意と
工夫を加えた「パーフェクトカバーシリーズ(瘢痕用)®」を共同開発し、2008 年に上市した。
患者向けのソーシャルスキル・トレーニング・マニュアルの原本にあたるイギリス国家慈善団体のマ
ニュアルを翻訳出版した(「チェンジング・フェイス」、集英社、2002 年)。
心理学者等とは、醜形により社会適応力が落ちた患者に対し、ソーシャルスキル・トレーニングを行
い、成果を上げてきた。スキルプログラムを患者と相談しながら個別に作成し、退院後も電子メール
にて結果の評価を行い、定期的診察や面談の際にプログラムの修正を加えていく。こうしたサービス
により、重症熱傷であったにも関わらず PTSD が治癒し、営業職へ復帰できた症例も経験している。
<利用・用途・応用分野>
メイクについてはすでに上市され、広く利用されている。
現在研究中のテーマは、日本文化版の患者向けのソーシャルスキル・トレーニング・マニュアルを作
成することである。2002 年に翻訳出版したものは、欧米文化でのコミュニケーションを基盤にしたも
のであり、本邦にとって参考にはなるものの、日本人である患者にはそのまま適応しづらかった(主
な相違点は、自己主張の方法にあった。欧米では自己主張は良いものとされるが、本邦では効果的で
ない)。
これにより、醜形患者の社会適応力が高められる。さらには、引きこもりなどのケースの更生にも利
用できる(こうしたケースは、安易に適応力のなさを、自分の体表イメージの悪さに転嫁しがちとな
っている)。教育現場にこのマニュアルを導入することで、社会復帰へ向けたトレーニング・ツールを
提供できる。
<関連する知的財産権>
資生堂(株)製品については、特許および登録商標が資生堂にある。
スキル・マニュアルを作成すれば、著作権は著者および支援者に帰する。
<関連するURL>
イギリス国家慈善団体 http://www.changingfaces.org.uk/Home
資生堂パーフェクトカバーシリーズ http://www.shiseido.co.jp/pc/
キーワード
醜形変形患者・社会適応力
データベース
登録
2010.9
シーズ名
アルツハイマー型認知症の統計的画像解析による早期診断
氏名・所属 等
東山
滋明、医学研究科・核医学教室、病院講師
<概要>
アルツハイマー型認知症(DAT)治療の主たる目的は早期の状態からの認知機能低下を遅らせること
であり、DAT の診断治療には早期診断が重要とされている。近年、形態の異なる各個人の脳画像情報
を標準化された脳に合うように変形する処理(解剖学的標準化)が開発され、早期 DAT のわずかな血
流低下や脳萎縮の程度を z 値と呼ばれる定量値として算出可能となった。当院核医学検査室では、脳
血流シンチグラフィー検査と頭部 MRI 画像にこれら統計的画像解析処理を施行し、DAT の早期診断と
早期からの治療開始に寄与している。
アルツハイマー型認知症に対する画像診断
機能画像診断
形態画像診断
脳血流低下(SPECT) →画像診断←
脳萎縮(MRI)
⇩
統計的画像解析処理
⇩
eZIS
→早期画像診断←
VSRAD
定量的診断
<アピールポイント>
当科の FDG-PET による脳糖代謝の検査や脳血流 SPECT 検査の症例は豊富で、画像診断の際には検査依
頼元である精神神経科の臨床医も画像診断に加わり診断の正確性を高めている。
<利用・用途・応用分野>
当院では DAT の治療前後に、検査依頼元の精神神経科医師も加わったカンファレンスで治療効果判定
や認知症状の予後予測についての検討を行っている。早期 DAT と診断や認知症状の進行の予測ができ
ることは、患者のみならず家族の QOL の向上に非常に有用と考えられる。
<関連する知的財産権>
なし
<関連するURL>
なし
キーワード
アルツハイマー型認知症、脳血流 SPECT、統計的画像解析、画像診断
データベース
登録
2010.9
シーズ名
造血幹細胞研究
氏名・所属 等
日野
雅之、医学研究科・血液腫瘍制御学、教授
<概要>
造血幹細胞の純化およびサイトカインを用いた血液細胞(正常機能を有する好中球)の増幅について
の基礎研究。造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植)を用いた造血器悪性腫瘍に
対する治療法と造血幹細胞移植の安全性向上についての臨床研究。ミニ移植の導入により移植治療の
適応拡大(高齢者や固形腫瘍患者)についての臨床研究。移植合併症の克服を目指した臨床研究。末梢
血幹細胞提供ドナーの安全性の研究。無菌環境に関する研究。
<アピールポイント>
多数の臨床例を有しており、データを集積しやすく、また、18 床の無菌室があり、無菌環境を題材
とした資材の開発も評価できる。
<利用・用途・応用分野>
細胞移植、製薬の評価、臨床検査機器開発
<関連する知的財産権>
なし
<関連するURL>
http://medwebsv.med.osaka-cu.ac.jp/labmed/index.html
キーワード
造血幹細胞、移植、再生医療、臨床検査、無菌環境
データベース
登録
2010.9
シーズ名
疫学と EBM ( Evidence Based Medicine )
氏名・所属 等
廣田 良夫
医学研究科 公衆衛生学 教授
<概要>
疫学とは:ヒト集団を対象に、疾病の分布や規定要因を明らかにする学問
その結果を直ちにヒトに応用できる
(例:喫煙者に肺がんが多い→ 喫煙は肺がんのリスクを上げる → 禁煙すると肺がんのリスクが下がる)
しかし、実験のように研究環境を制御できないので、
研究の企画、実施、解析、結果の解釈において、専門的な知識と技術が必要
(例:飲酒は肺がんのリスクを下げる? → 飲酒者には喫煙者が多い
→ 喫煙の影響を除いて飲酒の真の効果を調べることが必要)
私たちのグループで実施中の疫学研究
骨・関節疾患(変形性関節症、骨粗鬆症)
感染症(インフルエンザ、ウイルス肝炎、手足口病)
難病(特発性大腿骨頭壊死症、特発性門脈圧亢進症、炎症性腸疾患、パーキンソン病)
がん・循環器疾患(原発性肝がん、高血圧、高脂血症)
薬剤疫学、薬剤等の有効性と有害事象(インフルエンザワクチン、ステロイド)
アレルギー疾患(気管支喘息,アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎)歯科疾患(骨密度と歯牙喪失、歯周病)
Doses/1000 Population
<アピールポイント>
300
300
280
280
260
260
240
240
220
220
200
200
180
180
160
160
140
140
120
120
100
100
80
80
60
60
40
40
20
ワクチンの有効性
を確認し、日本の
状況を提起した
20
0
0
80 82 84 86 88 90 92 94
Japan
Year
80 82 84 86 88 90 92 94
USA
Year
インフルエンザワクチン配布用量
(Doses/1000 Population)の日米比較
Hirota et al. Nature 1996;380(6569):18
日本のインフルエンザワクチン製造量
( )内は未使用量.厚労省血液対策課調べ
<利用・用途・応用分野>
治療法・薬剤の効果判定、ワクチン類の有効性評価、EBM 基本情報の整備、疾病予防対策の確立
<関連する URL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/kouei/
http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/09/tp0903-1.html
http://www.who.int/immunization/sage/sage_wg_H5N1_oct08/en/index.html
http://www.who.int/immunization/sage/SAGE_H5N1_26Mayb.pdf
厚生労働省、新興・再興感染症研究事業(研究代表者)
・インフルエンザ予防接種の EBM に基づく政策評価に関する研究(2002.4~05.3)
・インフルエンザをはじめとした、各種の予防接種の政策評価に関する分析疫学研究(2005.4~08.3)
・インフルエンザ及び近年流行が問題となっている呼吸器感染症の分析疫学研究(2008.4~11.3)
キーワード
インフルエンザ、ワクチン、難病、アレルギー、EBM
データベース
登録
2010.9
<概要>
✹
✹
シーズ名
肝疾患の予後に関する疫学研究
氏名・所属 等
福島
若葉、医学研究科・公衆衛生学、講師
日本は肝がんの年齢調整罹患率および死亡率が高い
特に大阪府は、C 型肝炎ウイルス抗体陽性率および肝がんの標準化死亡比が高い
私たちのグループは
疫学理論に基づいた研究を実施することにより
各種肝疾患の予後に影響を及ぼす生活習慣を見出し
肝疾患の進展を予防することを目指しています。
™™™ 過去の研究概要とその結果 ™™™
‰ 医学研究科・肝胆膵病態内科学(旧第 3 内科)と共同で、C 型慢性肝疾患の方を対象に
症例・対照研究を実施しました。
コーヒーや夜食の摂取が、肝疾患の進展に予防的である可能性が示唆されました。
™™™ 現在実施中の研究概要 ™™™
‰
医学研究科・肝胆膵病態内科学と共同で、各種肝疾患(C 型肝炎、脂肪肝など)の
予後と生活習慣の関連を調査しています。
今回は、前向きコホート研究という、前回よりも質の高い研究デザインを
採用しているため、より確度の高い結果が得られると期待しています。
<アピールポイント、利用・用途・応用分野>
™™™ 研究結果は、以下のような利用・応用が期待できます ™™™
‰ 臨床現場・健康診査での生活習慣に対するアドバイスや、栄養指導の場に活用する
ことができます。
‰ 肝疾患の進展を予防する可能性のある生活習慣を見出すことにより、より効果的な
予防法の開発に関する基礎的資料を提供するとともに、共同研究の実施も可能です。
キーワード
肝疾患、疫学、予防、生活習慣、栄養指導
データベース
登録
2010.9
シーズ名
癌悪液質(末期がん)における QOL 改善
氏名・所属 等
福田
武史、医学研究科・女性病態医学、講師
<概要>
1987 年、進行癌患者に認められる癌貧血は anemia-inducing substance (AIS)により生じることが報
告された。その後、AIS は貧血のみならず癌の進行にともなって認められる免疫不全にも関与してお
り、癌悪液質における体重減少は、AIS により筋タンパク分解亢進および脂肪分解亢進が惹起され生
じることも判明した。そして、担癌個体血漿中の AIS を除去する目的で、反復血漿浄化療法に関する
研究が進められ、AIS を吸着・除去することで、癌の進行にともなって認められる体重減少・貧血・
免疫不全が改善された。1994 年、担癌個体における体重減少のメカニズムを解明するため、全身電気
伝導度(total body electrical conductivity;TOBEC)を利用した家兎の非観血的体構成成分測定法
(TOBEC 法)が開発された。TOBEC 法を用いて、体構成成分の推移を検討したところ、担癌家兎におい
て担癌初期に反復血漿浄化療法でも改善しない lean body mass および体脂肪の減少が観察された。こ
れを形態学的に観察したところ、担癌初期にのみ骨格筋細胞および脂肪細胞でアポトーシスの発現が
認められた。これらのことから、担癌個体における体重減少は初期の骨格筋細胞および脂肪細胞のア
ポトーシスと、後期の AIS による担癌個体の代謝異常が原因と考えられた。1999 年から、担癌初期に
認められるアポトーシスのメカニズムを解明するために、健常家兎・担癌家兎・食餌制限家兎(体重
減少が担癌家兎と同程度になるように制限)の 3 群に対して、Bax(アポトーシス誘導タンパク)と
Bcl-2(アポトーシス抑制タンパク)の発現を免疫組織化学的に検討したところ、Bcl-2 の発現に差は
認められなかったが、Bax の発現は担癌初期の骨格筋細胞および脂肪細胞で有意に強く認められた。
このことから、担癌初期に認められる骨格筋細胞および脂肪細胞におけるアポトーシスには、Bax が
関与している可能性が示唆された。次にこのアポトーシスの異常は、肝・腎・肺・肝などの臓器でも
検討したところ、それらの臓器においてもアポトーシスが亢進しており、このことが癌悪液質におけ
る多臓器不全の一因となっていることが示唆された。この癌悪液質におけるアポトーシスの異常に着
目し、今回の検討の着想に至った。
癌悪液質状態におけるアポトーシスの異常亢進状態が、化学療法剤、アポトーシス抑制物質を投与す
ることによりどのように変化するかを検討し、化学療法剤の使用法などの工夫により、体重減少の抑
制、多臓器不全の進行抑制など、癌悪液質の予防および治療に寄与できることを明らかにし、その結
果として担癌個体の QOL の改善が期待できる。
Mechanism of Cancer Cachexia
liver
Kidney
Bax
Tumor
↓
AIS
Host
Apoptosis
less osmotic resistance
lipolysis
proteolysis
& deformability
Inhibition of proliferation
spleen
adipocyte
Lung
↓
multiple organ failure
lymphocyte
muscle cell
body weight loss
↓
immunodeficiency
RBC
↓
anemia
<アピールポイント>
癌悪液質の病態は未だ不明瞭である点が多く、またこの分野の研究はあまり行われていない。この病
態を解明することにより、進行癌患者の QOL を向上させることができ、末期がんで治療法が無くなっ
た際の緩和医療に新しい治療法を提示すことが可能となる。
<利用・用途・応用分野>
癌治療、緩和医療に利用できる。
キーワード
癌悪液質、緩和医療、多臓器不全
データベース
登録
2010.9
シーズ名
中・高齢者の運動能力と脳機能の維持・改善をめざした運動介入研究
氏名・所属 等
藤本
繁夫、医学研究科・運動生体医学、教授
<概要>
中・高齢者の体力や生活習慣病患者の運動能力について、体組成と呼吸・循環・筋肉・脳循環の面か
ら運動生理学的解析を行い、運動能力の維持・増進を介して健康寿命の延長を目指した研究を進めて
いる。特に壮~中年期では腹部脂肪の増加に伴ったメタボリック症候群に関わる体力や健康状態への
影響が大きい。また中~高年期では、下肢筋力・歩行能力の低下とバランス機能の低下、脳の注意力
や認知機能の低下による転倒が生じやすい。これらの対象に、新しい運動支援プログラムや食事支援
を行なって生活習慣病のリスク要因の削減を伴って活動能力の維持し、介護予防・脳機能の維持・健
康寿命の延長をめざした新しい運動・食事支援の介入をおこなう。
- 現在までの主な成果 -
⋞ 後期高齢者の転倒予防のためのバランス訓練メニューの開発と評価 (介護施設との共同研究)
⋞ 3 次元加速度センサー付き活動量計の開発とそれによる減量効果 (企業、大阪市との共同研究)
⋞ 生活習慣病の危険因子を減らすための生活支援対策のマニュアル作成( 厚生労働省での研究)
⋞ 黒にんにくは運動時の筋肉疲労の予防に関与する
(食品関連企業との共同研究)
⋞ 中・高齢者を対象にした下肢筋力増強のための水中抵抗用具の開発 (スポーツ企業との共同)
⋞ 要介護者の歩行能力の改善をめざした新しい下肢筋力訓練の開発と評価 (介護施設との共同)
<アピールポイント>
⋞ 対象者の体力・運動能力の評価を総合的(呼吸、循環、筋肉)に行ない、運動処方を作成する。
⋞ 特に運動時の脂質・糖質燃焼を解析することができる。
⋞ 運動時の下肢筋肉と前頭前野の酸素動態を総合的に解析できる。
⋞ 脳機能(注意機能・認知機能)と運動に関する解析を進める
<利用・用途・応用分野>
1. 要介護高齢者の下肢筋力とバランス機能の維持のための運動・生活指導
2. 高齢者の認知機能・注意機能の改善にための運動介入
3. 運動選手の競技能力の改善と脳機能の関係
4. メタボリック症候群の予防対策としての運動・食事体制の支援システムの構築
5. 肥満者の食欲と運動時の脂肪燃焼量測定から検討した運動処方の作成
6. 水中環境などでの器機開発や運動支援プログラム作成とその評価
7. エビデンスのある新しい健康関連機器の開発とその評価
8. 高齢者のバランス機能と下肢筋力の改善を目指した新しい器具とトレーニング方法の開発
9. 運動能力におよぼす薬剤、健康食品などのエビデンス検討と効果評価、
キーワード
高齢者、転倒予防、運動能力、注意機能、認知機能
データベース
登録
2010.9
シーズ名
細菌由来糖脂質分子の免疫惹起能とその応用
氏名・所属 等
藤原
永年、医学研究科・細菌学分野、講師
<概要>
病原微生物を含む細菌はタンパク質を始めとする種々の抗原物質を産生する。細菌感染症における宿
主免疫応答は、タンパク質抗原を中心に解明され多くの知見が集積されている。結核菌を含む抗酸菌
の特徴は天然では希な長鎖脂肪酸であるミコール酸を多量に含むことである。これら脂質分子の宿主
免疫応答については歴史が浅い。1990 年代に初めて
ミコール酸が CD1 分子を介して T 細胞に認識される新
規宿主認識機構が解明された。さらにセラミド含有糖
脂質を認識する NKT 細胞の存在も報告され、自己免疫
疾患との関わりが議論されている。我々は右図に示し
た様に、細菌が産生する特徴的な糖脂質分子であるミ
コール酸含有糖脂質およびセラミド含有糖脂質につ
いて、それら脂質分子の構造解析、生合成や機能解析
に加え、多彩な生理活性について検討している。これ
ら脂質分子を用いた新規の免疫惹起能を応用した健
康増進、感染症制圧パラダイムを提供したいと考えて
いる。
1)ミコール酸含有糖脂質
ミコール酸含有糖脂質は結核菌やらい菌を含む抗酸菌に広く分布する特徴的な糖脂質分子である。
cord factor (terhalose-6,6’-dimycolate) は結核菌の病原因子と考えられ、種々の免疫薬理学的活
性を持ち、多方面への応用が可能と考えられる。実際、これら糖脂質を含む画分は結核の血清学的迅
速診断法の開発や、膀胱ガン、肺ガンへの応用も検討されている。単にアジュバンドや免疫惹起物質
としてのみでなく、保湿効果や細胞の新陳代謝促進など多方面への応用が期待される。
2)セラミド含有糖脂質
セラミド含有糖脂質は我々が提唱した Sphingomonas、Sphingobacterum 属を規定する特徴的な糖脂質
である。セラミド含有糖脂質は哺乳動物に広く分布するが、細菌には非常に珍しく、その構成脂肪酸、
長鎖塩基が異なり、糖についても特徴的である。CD1d 分子拘束性 NKT 細胞を強力に活性化する海綿由
来α-ガラクトシルセラミドと構造相関性があり、その生理活性に興味が持たれる。最近セラミド分子
は主に保湿成分として化粧品へ応用されているが、我々は既にアポトーシス誘導等の生理活性に注目
し、細菌に由来する本糖脂質分子の構造解析、宿主認識機構、免疫薬理学的応用について検討を進め
ている。また、本糖脂質を持つ Sphingomonas 属はダイオキシン分解活性があり、環境浄化への応用も
可能と考える。
<アピールポイント>
従来の抗原分子はタンパク質を中心に主要組織適合抗原 (MHC) クラス I, II により宿主免疫応答が
成立しているが、脂質分子は MHC クラス I, II 以外の新たな CD1 分子拘束性 T 細胞により抗原認識さ
れる。我々は細菌由来の特徴的な脂質分子の免疫惹起能を応用した健康増進、感染症制圧に向けたユ
ニークな取り組みを行う。
<利用・用途・応用分野>
感染症関連では、脂質分子を用いた診断、新規治療薬の開発(細菌増殖に必須な脂質生合成の阻害剤
開発)、ワクチン開発に応用可能である。
バイオ製品として保湿効果、免疫惹起による細胞の新陳代謝促進などに応用可能である。
<関連する知的財産権>
特になし
<関連するURL>
特になし
キーワード
感染症迅速診断法、抗化学療法薬、免疫惹起能、細胞活性化
データベース
登録
2010.9
シーズ名
ラジオ波凝固療法の悪性肺腫瘍への応用
氏名・所属 等
松岡
利幸、医学研究科・放射線医学、准教授
<概要>
ラジオ波凝固療法(RFA:radiofrequency ablation)は、CT 画像を見ながら皮膚表面から電極針を肺の
病変に命中させ、ラジオ波を通電して針の周囲に高熱を発生させ、その熱で病変を凝固壊死させる治療
法である。外科的切除術と比較して患者に対する身体や肺機能に及ぼす影響が軽微であり、切除術が困
難な患者にも施行可能である。CT で病変の位置を確認して行うので精確な治療が可能で、大きな合併症
は少ない。今後の発展が期待できる新しい治療法である。
[症例]甲状腺癌術後肺転移
右肺に約 2cm 大の結節を認める。局所麻酔にて、CT で確認しながら約 2 時間のラジオ波治療を行った。
ラジオ波治療では結節を囲むように周囲も焼灼するので、2 ヶ月後の CT ではいったん大きくなったよう
にみえる。焼灼部はその後次第に縮小し、36 ヶ月後にも再発を認めない。
ラジオ波治療用の針(10 本の針が傘状に広がっている。傘の径が 2cm、3cm、3.5cm とあり、病変の大き
さに応じて選択する)。ラジオ波を流すと、針の周りに高熱が発生し、イラストのような範囲が焼灼さ
れると予想される。
<アピールポイント>
2000年6月に、本邦では初めて大阪市立大学放射線科で臨床応用が実施された。基礎と臨床の両方
で、当科は世界のトップレベルにある。
<利用・用途・応用分野>
同じ手技が腎や骨,軟部の腫瘍にも応用可能である。
キーワード
ラジオ波凝固療法、RFA、肺癌、CT ガイド
データベース
登録
2010.9
シーズ名
結核ワクチン BCG の組み換え DNA 技術
氏名・所属 等
松本
壮吉、医学研究科・細菌学分野、准教授
<概要>
結核ワクチン BCG は、これまで最も多くの人に投与されたワクチン(20 億人以上)である。BCG は牛型
結核菌の弱毒株で、生菌として投与するいわゆる生ワクチンである。投与後ヒト体内で生存するため
効果が持続する。また、抗酸菌特有の細胞壁脂質は古くから強い免疫賦活作用を有することが知られ、
癌やアレルギーの治療効果が確認されている。
難治性疾患対策として、アデノウイルスベクター等を用いた遺伝子治療の開発が進行している。BCG
の現在までの実績(安全性が立証済みであり、安価に生産できる)と前述のような強い免疫賦活能や持
続性を有するという特性から、難病の予防や治療応用に期待される。
私は抗酸菌蛋白質の研究途上、分子生物学的手法の確立に迫られ、長期間 BCG 内で保持されるベクタ
ーや外来遺伝子(難病の予防/治療抗原を含む)の BCG での安定な発現系を構築した。BCG の組み換え技
術や資源を利用して BCG を遺伝的に改良し、難病の予防や治療に活用することが可能である。
<アピールポイント>
ヒトの防御免疫を効率的に誘導する効果的—安全—安価な予防/治療ワクチンの開発
<利用・用途・応用分野>
・難治性感染症(結核、AIDS、マラリア、インフルエンザなど)に対するワクチン開発
・癌やアレルギーの予防や治療への応用
<関連する知的財産権>
1. 出願番号:特願 2008-277012、発明者:松本 壮吉、山本 法明、発明の名称:MDP1 を用いた炭
水化物を有する物質の分離方法 出願人:コニカミノルタホ−ルディングス株式会社、出願日:平
成 20 年 10 月 28 日
2. 出願番号:PCT/JP2009/061819、発明者:山本 法明、松本 壮吉、山本 法明、発明の名称:MDP1
による微生物を凝集および/または沈殿させる方法:出願人:コニカミノルタホ−ルディングス株
式会社、出願日:平成 21 年 6 月 29 日
3. 特許第 4415200 号、発名者、山田 毅、松本 壮吉、発明の名称:遅発育性抗酸菌ポリペプチド、
特許権者 大塚製薬株式会社、山田 毅、松本 壮吉、特許取得日;平成 21 年 12 月 4 日
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/bacteriology/indexJap.html
キーワード
結核、感染症、アジュバント、BCG、膀胱癌
データベース
登録
2010.9
シーズ名
卵巣明細胞癌における GSK3βの腫瘍増殖に対する影響
氏名・所属 等
松本
佳也、医学研究科・女性病態医学、講師
<概要>
新たな卵巣癌の治療薬について検討しています。
卵巣明細胞癌は日本人に比較的多い腫瘍です。その特徴として細胞内のグリコゲン貯留があります。
この組織型の患者さんには卵巣癌の治療薬として広く使用されているタキサン製剤や白金製剤によ
る治療効果が低い症例が多く、治療成績を下げる理由のひとつとなっています。
多剤耐性腫瘍に対する治療法としていくつかの抗腫瘍薬による治療が行われてきました。しかしなが
らいまのところ著明な効果が見られたものはありません。
我々はこれまでのいわゆる抗腫瘍薬とは違う新たな治療の選択肢として、GSK3β阻害薬の臨床応用の
可能性について検討しています。
<アピールポイント>
GSK3β阻害薬の臨床応用の可能性について
悪性卵巣腫瘍は初回の化学療法が一時的には奏効することは多いが、耐性となり 2nd line 以後の治
療を必要とします。しかしながら少ない有害事象で有効な治療という薬剤はあまりなく、生存期間の
延長はなかなか望めないのが現状です。卵巣明細胞癌ではほとんどの症例で GSK3βの発現がありそれ
がこれらの腫瘍の特徴でもあります。我々は GSK3β阻害薬の臨床応用の可能性について検討していま
す
<利用・用途・応用分野>
臨床応用することができれば、今までに行われている治療と機序が違うためその他の卵巣癌や、他の
腫瘍に対する応用が考えられます。
<関連する知的財産権>
なし
<関連するURL>
なし
キーワード
GSK3β、卵巣、明細胞癌、癌治療
データベース
登録
2010.9
シーズ名
卵巣奇形腫の悪性化と治療について
氏名・所属 等
松本
佳也、医学研究科・女性病態医学、講師
<概要>
卵巣奇形腫とは卵巣に卵巣以外の組織が増殖する腫瘍で時におもに若年で見られる未熟奇形腫は悪
性ですが、多くは成熟嚢胞性奇形腫という良性腫瘍です。卵巣成熟嚢胞性奇形腫の悪性化は稀ではあ
りますが、放射線治療や抗腫瘍薬による治療に抵抗性です。後方視的に現在研究中でいくつかの症例
をもとに適切な治療について検討しています。
① 十分かつ必要な説明を提供することを可能にするためにも、
手術治療前に良性か悪性かの判断に関する情報について詳細な検討を行う。
② 悪性の場合の治療と治療効果について確認し、効果のある薬剤や治療をリストアップする
③ Pilot Study を開始する。
<アピールポイント>
いままで明確な治療指針のなかった腫瘍について治療の可能性が出てくる可能性があります。
<利用・用途・応用分野>
現在卵巣癌治療に適応のない薬剤について検討が必要です。
希少腫瘍ではありますが、同じ組織型や同じ系統の腫瘍である胚細胞腫瘍について、効果がある可能
性があります。
<関連する知的財産権>
なし
<関連するURL>
なし
キーワード
卵巣奇形腫、癌治療、悪性転化
データベース
登録
2010.9
シーズ名
卵巣悪性腫瘍の妊孕性温存治療について
氏名・所属 等
松本
佳也、医学研究科・女性病態医学、講師
<概要>
卵巣悪性腫瘍の妊孕性温存治療について適応の基準や方法などにつき検討しています。現在のガイド
ラインでは治療効果を中心にすえた適応基準がありますが、医療の根本に立脚した理論を構築し、倫
理的問題を含め根底から検討しなおすべき課題であると考えています。
① 上皮性卵巣癌の進行例もしくは現行のガイドラインの条件における治療成績の検討
② 妊孕性温存の方法 即ち術式と化学療法の種類とコースについて
③ 妊孕性温存治療についての適応基準と倫理的問題について
これらについて検討が必要であると考えています。
<アピールポイント>
正しい医療のあり方を追求します。
<利用・用途・応用分野>
今まで妊娠を医師の決定によりあきらめていた人が妊娠出産することがあります。
少子化の対応策として貢献する可能性があります。
不妊治療の適応患者が増加する可能性があります。
<関連する知的財産権>
なし
<関連するURL>
なし
キーワード
卵巣がん、妊孕性温存治療、生命倫理
データベース
登録
2010.9
シーズ名
児童精神医学
氏名・所属 等
宮脇
大、医学研究科・神経精神医学、講師
<概要>
・大阪市立大学医学部附属病院 神経精神科において、子ども(小学生以降)の精神科診療をしています。
不登校や引きこもり、抜毛、チックや困った癖、分離不安などの不安や恐怖症、拒食などの摂食の問題、
家庭内暴力や反抗、学習の問題、精神発達の偏りや発達障害、自殺念慮、うつ症状や躁症状、幻覚や妄
想など、様々な主訴で多くの患者さんが受診されています。
・子どもの精神障害、特に不安障害と高機能広汎性発達障害に関する臨床研究を行っています。
<アピールポイント>
日本には精神科診療を行っている診療所(クリニック)や病院など医療機関はたくさんありますが、ほ
とんどが成人患者さんを診療対象としており、児童期の精神科診療をしている機関は非常に少ないのが
現状ですが、当科では 6 歳という低年齢からの専門的な精神科診療をしています。
またこのような専門性を有するという特性から、他施設では困難である子どもの精神障害を対象とし
た臨床研究を実施しています。
キーワード
児童精神医学、子ども、精神障害、発達障害
データベース
登録
2010.9
シーズ名
中間毛の組織学的・形態学的解明による最適な眉毛再建法について
氏名・所属 等
元村
尚嗣、医学研究科・形成外科、講師
<概要>
眉 毛 は 顔 の 印 象 を 決 定 す る 存 在 で あ り 、そ の 欠 損 は 外 観 上 奇 異 な 感 じ を 与 え る と と も
に、本人の心理的影響も大きく社会的生活を送るうえで劣等感の原因となる。眉毛欠
損や変形は外傷、熱傷、母斑・血管腫・悪性腫瘍切除後などにより惹き起こされる。
また眉毛部は皮膚悪性腫瘍の好発部位でもあり、術後の欠損は周囲組織を含めた面積
の大きなものとなることがあり、再建に難渋することが多い。これまでに種々の眉毛
再建についての報告があるが、今回申請者は眉毛と中間毛の類似性に着目した再建法
を考案するための研究を行う。
課 題 ① 年 齢 層 別 男 女 の 眉 毛 、 中 間 毛 (前 額 部 生 え 際 )、 頭 毛 の 状 態 を マ イ ク ロ ス コ ー
プ を 用 い て 観 察 検 討 す る 。10 歳 代 男 10 人 女 10 人 、30 歳 代 男 10 人 女 10 人 、60 歳 代
男 10 人 女 10 人 の ボ ラ ン テ ィ ア の 被 検 者 を 対 象 に 、マ イ ク ロ ス コ ー プ を 用 い て (図 1)
眉 毛 中 央 部 、中 間 毛 (前 額 部 生 え 際 )、頭 毛 の 状 態 を 観 察 す る (図 2)。視 野 内 に ゲ ー ジ
を 入 れ た 上 で 、 1 視 野 内 に あ る 硬 毛 と 毳 毛 の 本 数 、 太 さ 、 textu re を 計 測 し 、 各 年 齢
層、性別に統計処理を加える。
図 1
図 2
課題② 解 剖 実 習 用 献 体 10 体 に 対 し て 左 右 の 眉 毛 内 側 ・ 中 央 ・ 側 、 中 間 毛 (前 額 部 生 え
際 )、頭 毛 を 4mm ト レ パ ン に て 生 検 を 行 う (図 4)。左 の 組 織 標 本 を 包 埋 し て 矢 状 断 (毛
の 全 体 像 が は い る よ う に )標 本 を 作 製 し (図 5)、 右 の 組 織 標 本 で は 標 本 を 表 皮 面 に 対
し て 3 分 割 し 冠 状 断 に 標 本 を 作 製 す る (図 6)。矢 状 断 標 本 に 対 応 さ せ て 、冠 状 断 標 本
での組織構造の評価を行う。
課題③ 解 剖 実 習 用 献 体 10 体 に 対 し て 、 前 額 部 お よ び 側 頭 部 の 解 剖 を 行 い 浅 側 頭 動 静
脈 、 滑 車 上 動 静 脈 、 眼 窩 上 動 静 脈 の vasc ular netw ork を 解 析 す る 。 ま た 、 安 全 に 前
額生え際の中間毛皮弁を挙上する際に障害になり得るであろう顔面神経側頭枝につ
い て も 、 そ の variatio n に つ い て 検 索 を 行 い 、 手 技 の 確 立 を 目 指 す 。
<アピールポイント>
中間毛を用いた眉毛再建は経験的事実に基づいたものであるが、眉毛と中間毛の類
似 性 に 関 す る 報 告 は こ れ ま で の 所 な い 。 そ こ で 本 研 究 に お い て 、 上 述 の 3 つ 課 題 a)
中 間 毛 は 眉 毛 に 類 似 し て い る か の 科 学 的 検 証 b)年 齢 に よ る 中 間 毛 の 変 化 に つ い て c)
理想的な眉毛再建という 3 つのパラメーターについて検討を加えることを目的とす
る。本研究により、中間毛についての新しい知見が得られると確信する。
<利用・用途・応用分野>
外胚葉形成不全などの無毛症、外傷などによる眉毛欠損、悪性腫瘍切除後の眉毛欠損に対する再建手
術への応用。
また、アンチエイジングや美容的改善に対する応用。
アデランスやアートネイチャーなどの毛髪産業との協力。など
<関連する知的財産権>
なし
<関連するURL>
なし
キーワード
眉毛、中間毛、眉毛再建
データベース
登録
2010.9
シーズ名
マウス ES 細胞を用いたモデルマウス作成と、DNA 修復遺伝子を用いた
癌治療増感と環境影響の解析
氏名・所属 等
森田
隆、医学研究科・遺伝子制御学、教授
<概要>
哺乳動物の組換え遺伝子は、DNA の損傷を正確に組換えにより修復することができる。癌細胞におい
ては、この機能を抑制することにより、放射線や抗がん剤の感受性を高め、低線量、低用量で同じ治
療効果を期待でき、患者さんの QOL を高めることも可能である。このような薬剤として修復遺伝子の
発現を抑制する siRNA の効果を明らかにし、特許を本年 6 月取得した。
<アピールポイント>
これまで、マウス ES 細胞を遺伝子改変マウスを作成する材料として用いてきたが、これからは、国
際宇宙ステーションに打ち上げて、宇宙放射線の感受性を検出し、宇宙での長期有人宇宙飛行への安
全性の指標の作成を試みている。
<利用・用途・応用分野>
ES 細胞を利用した発生工学分野、
組換え機能による放射線影響の解析、
組換えに関与した生殖機能の解析
<関連する知的財産権>
(1) 相同組換反応に関与するマウス遺伝子
特許第 3509886 号
登録日 2004/1/9
発明者 森田 隆、松代愛三、
出願人 森田 隆
(2) RNAi による新規治療法および治療剤
特許第 4526228 号
登録日 2010/6/11
発明者 森田 隆、吉田佳世、
出願人 森田 隆
(3) 発明の名称:サイトグロビン遺伝子の機能が欠損している非ヒト疾患モデル動物
出願番号:特願2008-221841
出願日:平成20年8月29日
発明者:河田 則文、志賀 亮、森田 隆、吉田 佳世、吉里 勝利
出願人:河田 則文 様、森田 隆
キーワード
胚性幹細胞、宇宙放射線、環境、DNA 切断、DNA 修復
データベース
登録
2010.9
シーズ名
癌悪液質
氏名・所属 等
安井
智代、医学研究科・臨床医科学専攻、講師
<概要>
これまでの研究により、癌悪液質における担癌固体の体重減少は初期の骨格筋細胞および脂肪細胞の
apoptosis と後期の AIS(anemia-inducing-substance)による担癌固体の代謝異常が原因と考えられ
た。
またアジポネクチンの関わりについても解明していく。
<アピールポイント>
癌悪液質の病態解明がその予防や治療につながり、患者の延命および病態改善につながる。
<利用・用途・応用分野>
治療および緩和医療に役立ち、患者の QOL 改善につながる
<関連する知的財産権>
なし
<関連するURL>
なし
キーワード
癌悪液質、AIS、QOL
データベース
登録
2010.9
シーズ名
EGF 受容体をターゲットとした大腸癌の分子標的治療
氏名・所属 等
山田
靖哉、医学研究科・外科系専攻、講師
<概要>
【目的】大腸癌の増殖、進展、転移において血管新生は重要な因子である。VEGF は血管新生因子の中で
も最も強力な因子と考えられており、腫瘍血管新生の中心的役割を担っている。そこで、新しく開発さ
れた VEGFR リン酸化阻害剤 Ki23057 による大腸癌の増殖および肝転移抑制効果を検討した。
【材料と方法】Ki23057 が血管内皮細胞および大腸癌細胞株 LM-H3、LoVo、LS174T の増殖におよぼす影
響を cell count assay で検討した。血管内皮細胞のアポトーシスにおよぼす影響を flowcytometry に
て検討した。Ki23057 が血管新生におよぼす影響を血管内皮細胞の管腔形成能により評価し、血管内皮
細胞に発現している VEGFR2 のリン酸化におよぼす影響を免疫沈降法にて検討した。LM-H3 を用いてヌー
ドマウスの皮下に腫瘍を作成し Ki23057 の腫瘍増殖抑制効果を検討した。また、皮下腫瘍の腫瘍血管数
を測定することにより血管新生阻害効果を検討した。さらに、LM-H3 ヌードマウス肝転移モデルを用い
て Ki23057 の肝転移の抑制効果についても検討した。
【結果】Ki23057 はいずれの大腸癌細胞株にも増殖抑制を示さなかったが、血管内皮細胞の増殖を濃度
依存的に抑制した。Ki23057 は血管内皮細胞のアポトーシスを誘導した。血管内皮細胞の管腔形成は
Ki23057 の添加によって有意に抑制された。血管内皮細胞の VEGFR2 リン酸化は Ki23057 によって濃度依
存的に抑制された。Ki23057 はヌードマウス皮下腫瘍の腫瘍増殖抑制を示し、有意に血管新生の抑制を
認めた。また、ヌードマウス肝転移モデルでは Ki23057 は肝転移を有意に抑制した。
【結論】Ki23057 は大腸癌の増殖及び肝転移に対して有用な血管新生阻害剤である可能性が示唆された。
【関連論文】Sakurai K, Yamada N, Yashiro M et al. A novel angiogenesis inhibitor, Ki23057, is
useful for preventing the progression of colon cancer and the spreading of cancer cells to the
liver. European Journal of Cancer 43: 2612-2620, 2007.
キーワード
大腸癌、肝転移、血管新生、増殖因子
データベース
登録
2010.9
シーズ名
身体活動に伴う食欲制御の研究-肥満者やアスリートに対するより効
果的な栄養・運動指導を目指して
氏名・所属 等
吉川
貴仁、医学研究科・運動生体医学、准教授
<概要>
現在、腹部肥満を中心にしたメタボリック症候
群に関心が集まっており、肥満解消のための種々
の栄養・運動指導が行われています。
また、アスリートにとって競技能力を高めるた
めに種々の栄養食品・サプリメントが開発されて
います。
こういった“食”と“運動”をめぐる話題の中
で“食欲”が現在注目されようとしています。
そこで、我々は、運動により食欲制御の効果が期待できるかを検討しています。
<これまでの成果および展開>
① 空腹・満腹感やエネルギーバランスを制御する消化管ホルモンが有酸素運動を初めとした種々の
運動中に血液中に分泌され、その分泌量が運動後の食欲抑制やエネルギー消費の増加、脂肪燃焼量
と関連することを海外の専門誌に多数報告しています。
② さらに、末梢血中の消化管ホルモン動態にとどまらず、より高次の脳中枢機能に支配された食行
動全体に視野を広げ、これらが運動により受ける影響を脳イメージング手法により検討していま
す。
③ 今後、このような基礎的なエビデンスの集積とともに、肥満者に限らず種々のフィールドにおい
て、運動による食欲制御の効果を取り入れた運動プログラムや種々の食品開発へ発展させる予定で
す。
<アピールポイント>
① 従来の肥満者への栄養・運動指導に<食欲>を通しての新たな観点を与える点
② 運動時の消化管ホルモンや高次の脳機能の変化を伴う空腹・満腹感やエネルギー消費の変化を、
肥満者の栄養・運動指導やアスリートの競技能力向上のためのスポーツ栄養食品の開発に活用する
という点
<利用・用途・応用分野>
① メタボリック症候群を対象とした特定健診における生活指導のさいの食欲を考慮した栄養・運動
処方の立案
② 運動に伴う食欲・食感の変化を考慮した食品開発(摂取しやすく、かつメリットのあるもの)
a) 肥満解消のための栄養・運動:運動時の脂肪燃焼を促し、かつ摂取しやすい食品の開発やその減
量効果の判定
b) アスリートのための栄養:アスリートに摂取しやすいスポーツドリンクやサプリメントの開発や、
これらの食品がアスリートの運動能力に及ぼす効果の判定
<関連するURL>
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/sportsmed/
キーワード
食欲、運動、肥満、アスリート、脳イメージング
データベース
登録
2010.9
シーズ名
婦人科悪性腫瘍
氏名・所属 等
吉田
裕之、医学研究科・女性病態医学、講師
<概要>
卵巣癌は早期において特徴的な症状に乏しく、また効果的なスクリーニング法も確立していない。そ
れゆえに早期発見が困難な疾患であり、半数以上の症例で病変がすでに骨盤腔外に進展した進行癌と
して発見される。卵巣癌の転移形式で最も頻度が高いのは、血行性やリンパ行性転移ではなく、腹膜
播種転移である。それゆえに、卵巣癌の予後改善には腹膜播種の制御が重要である。
我々は細胞間接着装置の中でも、近年その機能の多様性、重要性が注目されている Tight junction
に着目し、その関連蛋白と卵巣癌腹膜播種の関連について検討している。Tight junction は細胞の接
着や遊離の制御に大きく関わっており、腹膜播種においても重要な役割を担っている可能性は高いと
思われる。
<利用・用途・応用分野>
卵巣癌の診断・治療
キーワード
卵巣癌、転移、腹膜播種
データベース
登録
2010.9
シーズ名
心筋梗塞・脳梗塞に対する予防戦略
氏名・所属 等
葭山
稔、医学研究科・循環器病態内科学専攻、教授
<概要>
高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満そして高齢化により循環器疾患は確実に増加していく。このよう
な状況をふまえて、心筋梗塞、脳梗塞の原因となる血管病変、そして心不全を的確に評価し、早期治
療はきわめて重要である。そのためには、我々は、左心の画像診断技術を駆使し、また病態を的確に
把握するバイオマーカーを見つけることが重要である。画像診断としては、心エコー、血管エコー、
血管内エコー、CT,MRI、核医学を用いて画像診断する。また、その病態患者より血液をサンプ
リングしてプロテオミックスを行い、病態のキーとなるバイオマーカーを質量分析そして、クラマト
グラフィーで同定する。
<アピールポイント>
新たなバイオマーカーが同定できれば、医療に応用することができる。また、画像診断装置も新たな
医学的応用が見つかる可能性がある。
<利用・用途・応用分野>
電子・電気メーカーにて医療装置の開発。製薬メーカーにおいては、新たな創薬の可能性。血液検査
会社においては、新たな診断方法の確立。
<関連する知的財産権>
特になし
<関連するURL>
大阪市立大学大学院医学研究科 循環器病態内科学
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/heart/index2.html
キーワード
画像診断装置、プロテオミックス、バイオマーカー
データベース
登録
2010.9
シーズ名
口唇顎口蓋裂治療における外鼻矯正具の新規開発
氏名・所属 等
若見
暁樹、医学研究科・皮膚病態学形成外科学、講師
<概要>
1.口唇顎口蓋裂は 500 出生に 1 人の割合で発生する決して稀ではない先天異常である。縫合技術や
縫合材料の発達により唇の創痕治癒に関してはかなり満足の結果が得られるようにはなってきて
いる。しかしながら、現在もなお残る問題点の一つに外鼻の変形が挙げられる。
2.新生児期における軟部組織には可塑性が維持されており、この特長を生かした治療方針を当科で
は行っている。外鼻変形に関しても、当科独自の外鼻矯正具を使用した新生児期からの治療により
良好な結果が得られている。
3.現在使用している外鼻矯正具は症例毎の個別作成であり、汎用性に欠けるものである。医療材料
を使用した既製の矯正具を作成することにより口唇顎口蓋裂治療における世界展開が期待できる。
現在使用している外鼻矯正具
<アピールポイント>
1.外鼻矯正具が規格化されることにより、汎用性、安全性の確立が期待される。
2.世界展開のマーケットが期待できる。
3.我々は術前の外鼻矯正が口唇顎口蓋裂の外鼻形態に好影響を与えることが認めています。
Wakami, S et al. Nostril Suspension And Lip Adhesion Improve Nasal Symmetry In Patients
With Complete Unilateral Cleft Lip And Palate. Journal of Plastic, Reconstructive &
Aesthetic Surgery. Online publication complete: 31-MAY-2010
<関連する知的財産権>
なし
キーワード
口唇顎口蓋裂、外鼻矯正具、新規開発
データベース
登録
2010.9
シーズ名
炎症性腸疾患、小腸内視鏡、大腸腫瘍
氏名・所属 等
渡辺
憲治、医学研究科・消化器内科学、講師
<概要>
1)炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、べーチェット病など)の病態解明、診断、新しい治療
法
2)小腸疾患に対する小腸内視鏡(カプセル内視鏡、ダブルバルーン内視鏡、シングルバルーン内視鏡)
による診断と治療
3)大腸腫瘍の最新内視鏡機器による診断と治療
<アピールポイント>
1)炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、べーチェット病など)の病態解明、診断、新しい治療
法:本邦で増加し続けている炎症性腸疾患の、
(a) 特に診断困難例の診断
(b) 免疫調節剤、生物学的製剤等の新しい治療法の検討
(c) 難治例の治療
(d) 炎症性腸疾患関連癌(colitic cancer)の早期診断
などを積極的に行っています。
2)小腸疾患に対する小腸内視鏡(カプセル内視鏡、ダブルバルーン内視鏡、シングルバルーン内視鏡)
による診断と治療:
近年、進歩の著しい小腸内視鏡の分野で、全国に先駆けた先進的な医療を行っています。特に、
炎症性腸疾患における小腸内視鏡の有用性や新しい小腸内視鏡機器の検討を積極的に行っていま
す。
3)大腸腫瘍の最新内視鏡機器による診断と治療:
厚生労働省班会議(工藤班、井上班)の研究協力者として、拡大内視鏡、特殊光観察を用いた
内視鏡診断や治療を行っています。
キーワード
クローン病、潰瘍性大腸炎、カプセル内視鏡、特殊光内視鏡、大腸
腫瘍
データベース
登録
2010.9
シーズ名
SHP2 基質分子を標的とした阻害剤の開発
氏名・所属 等
渡邉
哲史、医学研究科・生理学第2、特任助教
<概要>
酵素の一種であるチロシンフォスファターゼ SHP2 は、低身長、先天性心疾患、発達遅滞を特徴とす
る Noonan 症候群の原因遺伝子の一つであり、また種々の骨髄性白血病において変異が認められる。こ
れらの疾患では SHP2 の活性が上昇しており、これによる細胞増殖を引き起こすシグナル伝達経路の活
性化が発症の一因と考えられている。したがって、このシグナル伝達経路中で SHP2 が基質としている
分子の特異的な阻害剤の開発は、上記の疾患の治療薬となる。
<アピールポイント>
これまで、明らかになっていなかった疾患発症に関わる SHP2 の基質分子を同定する。
<利用・用途・応用分野>
同定した基質分子をターゲットとした阻害剤を開発し、Noonan 症候群や骨髄性白血病に対する治療
薬の創出へと発展させる。
<関連する知的財産権>
なし
<関連するURL>
なし
キーワード
SHP2、基質阻害剤、Noonan 症候群治療薬、骨髄性白血病治療薬
データベース
登録
2010.9
シーズ名
糖尿病、透析患者の下肢壊疽予防ケアの開発
氏名・所属 等
川端
京子、看護学研究科、准教授
<概要>
糖尿病や糖尿病性腎症の透析患者は、下腿動脈以下にびまん性多発閉塞を認める例が多いこと、皮膚微小
循環障害により皮膚に虚血を生じやすく、下腿潰瘍や壊疽をもたらしやすいと言われている。
このような下腿潰瘍や壊疽に対する非侵襲的な治療の一つとして、湯内に人工的に炭酸ガス 1000ppm 以上を
含有させることを可能とする「高濃度人工炭酸泉装置(以下、人工炭酸泉装置と略す)」を用いた炭酸泉足浴が
行われ、有効性が報告されている。つまり、湯に溶解した高濃度の炭酸ガスは足浴を通して経皮的に吸収され
ると、末梢血管拡張、皮膚血流量増加をもたらし、皮膚微小循環改善効果があると考えられている。しかし、「人
工炭酸泉装置」を使用する場合、医療施設に通院するか、または高価なこの装置を購入する必要がある。もし、
炭酸足浴剤を用いて人工的に高濃度遊離炭酸を湯内に生じることが可能ならば、人工炭酸泉装置と同等に下
肢皮膚微小循環改善効果をもたらし、簡便にセルフケアできる下腿潰瘍の予防ケアにつながると考え、研究に
取り組んでいる。
1.研究目的
糖尿病や糖尿病性腎症透析患者の下肢壊疽予防ケアの開発に関する臨床研究として、無色、無香料の炭
酸足浴剤を用いて考案した足浴(以下、炭酸泉浴剤足浴と略す)が、下肢皮膚血流量を増加させる効果があ
るかどうかを 2 次元レーザー血流計測定し、検証した。
2.研究方法
・対象者:透析施設に通院している糖尿病性腎症や閉塞性動脈硬化症を有する透析患者 10 名に研究目
的、方法および実験途中で研究辞退することも可能であることを書面で説明し、同意書を得られた者。
・実施方法:透析患者にK社に依頼して製造した炭酸足浴剤を用いた炭酸泉浴剤足浴、人工炭酸泉装置
足浴、湯足浴の3種類足浴実施し、足浴前後の足部皮膚血流量変化を2次元レーザー血流計で比較し
た。
3.結果・考察
Friedman 検定の結果、両足部の皮膚血流量変化率に有意差が見られた(p<0.001)。そして、多重比較
(Wilcoxon の符号付順位)の結果、炭酸泉浴剤足浴と人工炭酸泉装置足浴は湯足浴に比べて皮膚血流
量が増加することに有意差が見られた(p<0.01)。しかし、炭酸泉浴剤足浴は人工炭酸泉装置足浴と比べ
て有意差なかったことから、炭酸泉浴剤足浴は人工炭酸泉装置足浴と同等な血流促進効果があると考え
られる。
図1 3種類足浴前後の2次元レーザー血流計の両足皮膚血流量
炭酸浴剤足浴
人工炭酸泉装置足浴
湯足浴
足浴前
足浴後
<アピールポイント>
高齢化や糖尿病等の疾患に伴う合併症による足の皮膚トラブルは多くなる可能性がある。セルフケアや自宅
でできるこの方法は、簡易で安価で、歩行への影響を回避し、QOLの低下や医療費増大を抑制する。
<利用・用途・応用分野>
医療、在宅
キーワード
糖尿病、透析、炭酸足浴剤、セルフケア、皮膚血流
データベース
登録
2010.9
シーズ名
日本文化を背景とした看護ケア理論の開発
氏名・所属 等
城ケ端
初子、看護学研究科、特任教授
<概要>
看護は看護理論を基盤に展開される実践活動である。
このことは、理論の基盤いかんによっては看護実践そのものが看護とはいえないこともありうることを
意味している。このように理論と実践は表裏の関係にあり密接不可分なのである。
近年になって看護理論の開発が進み、様々な視点から多くの看護理論が発表され、看護実践の場で活
用されてきている。看護理論の中にはケアに関するものも多いが、まだ「ケア」や「ケアリング」に関
する実践や意味づけがあいまいなままに行われていることが多い。両者の定義は Leininger による「ケ
アは現象であり、ケアリングは行為である」としている他は明確なものは少ない。
また、ケアやケアリングは人間が生存し、成長・発達・成熟する上で必要不可欠なものである。しか
も人間が生まれ育つ文化的背景によって生涯の生活体験全体が異なるものであり、考え方や行動も違っ
てくる。ケアやケアリングは普遍的なものではあるものの、異なる文化的背景で育った人々の特性を生
かしたケア・ケアリングが必要であるものと考えている。
このような文化的背景を重要視した看護理論は Leininger のものをあげることができるものの、日本
文化に根ざしたケア理論の開発は少ない。
本研究では、日本文化に根ざしたケア理論の開発を目的とするものである。
一般的に理論開発は次の段階を踏む。
1)理論の概念の見出しと確認
2)理論の構成と系統的な関連づけ
3)理論の中の事象の関連付けと検証
4)理論の適用
上記のうち今回は、上記1)を中心にすすめたい。
そのために臨床現場の実態を把握することも含めて進めていく
概念(意味)
言葉など表現さ
れるもの
ものごとそのもの
対象や事象など
言葉や知覚と関連した
感情や価値観など
図1.概念の形成
キーワード
看護、理論、ケアリング、文化、開発
体
験
内
容
データベース
登録
2010.9
シーズ名
看護における困難と転機
(ケアの質的変化に向けての追究と看護師支援)
氏名・所属 等
寳田
穂、看護学研究科・精神看護学、教授
<概要>
英国の看護学者 Smith(1992)は、社会学者 Hochschild による客室乗務員の仕事に着眼した感情
労働の理論が、看護という文脈においても通用することを明らかにしています。日本では、武井(2001)
が感情と看護について紹介して以来、さまざまな看護の現場で生じている困難な状況と看護師の感情
との関係が明らかになってきています。
寳田は、これまでに精神科看護領域において、看護師が困難感や苦手意識を抱きやすい薬物依存症
者への看護に焦点をあてた研究を行ってきました。米国やブラジルでの薬物依存症者への看護の現状
調査や文献検討から、日本だけでなく諸外国においても、薬物依存症者への対応に援助職者は困難を
抱きやすいことが分かってきました。そこで、薬物依存症者へのケアにかかわる看護職者とケアの利
用者である薬物依存症者の双方のへのインタビュー調査を行いました。その結果、薬物依存症者の回
復を支える過程において、看護師は、怒りや恐怖、無力感、不信感、寂しさ、諦め、罪悪感、絶望感
などのネガティヴな感情を体験していることが明らかとなりました。そのような感情は、薬物依存症
者も体験している感情であり、ケアの利用者と提供者の互いの感情には無意識の対称性が生じていた
のです。また、ネガティヴな感情から、薬物依存症者へのケアに意味を見いだすには、自分ではどう
にもできないといった「無力」や「限界」と向き合っていく期間が転機となっていました。そして、
薬物依存症者への看護において、ネガティヴな感情を避けるのではなく、その感情といかに向き合っ
ていくか、その過程をいかに支えるかが、ケアの質的変化につながると考えられました。
さまざまな看護の現場で生じている困難な状況には、こういった看護師の感情の側面が大きく影響
していると考えられます。困難を抱いていたケアに何らかの意味を見いだし、ケアの質的変化につな
がっていく転機の期間には、どのような変化が生じているのでしょうか。現在、その転機の期間につ
いて調査し、さらに深く検討していっています。そのためには、現場で生じている困難な事例の質的
分析/解釈を重ねていく必要があると考えています。
また、看護職者が自身の感情と向き合うのには、感情の読み書き能力ともいえるエモーショナル・
リテラシー emotional literacy を高める必要があるといえます。感情労働に携わる職種には、感
情労働で自分を滅ぼさないように、自分を大事にする教育が必要であり、そのために重要なのがエモ
ーショナル・リテラシーです(武井、2008)。そこで現在、看護職者が困難な状況で疲弊に陥ってし
まわないような支援のあり方について、看護師のためのサポート・グループを立ち上げ、実践的な研
究を通して検討しています。
<アピールポイント>
実践と研究とのコラボレイティヴ(協力的)な関係による、看護(あるいはケア)の実践に根ざし
た研究をめざしています。現場で何が生じているか、感情や対人的な相互作用といった目には見えな
い部分も含めた、現状分析/解釈を行っています。
<利用・用途・応用分野>
・薬物依存症の回復や予防に関する支援
・看護職者のためのサポート・グループの実践
・看護における困難な事例の検討
文献:Smith, P(1992)/武井・前田監訳(2000).感情労働としての看護.ゆみる出版
武井麻子(2001).感情と看護.医学書院.
武井麻子(2008).グループとエモーショナル・リテラシー.集団精神療法、24(2)、105-111.
キーワード
薬物依存症、精神障がい、看護、感情労働、サポート・グループ
データベース
登録
2010.9
シーズ名
不妊治療後に流産を経験した女性の支援に関する研究
育児不安に関する研究
氏名・所属 等
玉上
麻美、看護学研究科・医学部看護学科、講師
<概要>
1. 不妊治療後に流産を経験した女性の支援に関する研究
不妊治療を受けるカップルは、10 組に 1 組と言われ、不妊治療を受ける女性は、
「女性の基本的な信
念を損なう」といった喪失体験をしている。さらに、生殖補助医療を受け、妊娠が成立しても流産に
至る女性は 10%前後であり、不妊治療後に流産することは、児をなくすという喪失体験も経験する。
さらに、
「単なる子どもの喪失のみならず、未来の希望、今後の出産の可能性、正常に出産できる女性
のイメージ、自尊心などの喪失を同時に体験する多重的な喪失である」とも言われており、大きな喪
失を経験している。しかし、不妊治療後に流産を経験した女性は、医療者の支援がない状態で、自ら
の多重の喪失体験に向き合い、自身で適応し、回復していかなければならない現状である。ここに困
難な状況から立ち直る力、すなわちレジリエンスが存在すると考えた。そして、困難な状況からの立
ち直りのプロセスにおける看護の役割への示唆を得ることにより、レジリエンスを促進させる看護支
援システムを構築することは重要であると考える、研究している。
2.育児不安に関する研究
今日のような少子社会では子どもとの接触経験が少ない人が多く、自身が子どもを産んで初めて赤ち
ゃんを抱いたという母親も少なくない。そして、子育てに対して実体験に基づく具体的イメージが欠
如していることなどから、自らの育児が上手くいくかなどの不安を抱いていることを臨床の場面で聞
くことが多くなった。核家族化が進む中、夫の育児への協力のなさや、母親のネットワーク減少によ
る育児不安も多いといわれ、子どもの特徴や育児が実感できず、親役割を獲得するのが困難な状況と
なり、これらがストレスの高い育児、孤独な育児、育児不安や虐待などの要因となっている。
子育ての基本は、産後からだけでなく、妊娠期から関わることが有効であり、早急に母親への援助が
実施されることが急務である。そのため、現在行われている妊娠中の援助を評価し、妊娠中に開催す
る母親教室や保健指導のプログラムを構築、実践していくことで、育児不安を解消できると考え、研
究を続けている。
<アピールポイント>
1.不妊治療後に流産を経験した女性の支援に関する研究
不妊治療を受け、流産を経験した女性の立ち直る力に着目した研究はなく、女性の立ち直る力、レジ
リエンスを明らかにすることで、流産を経験した女性への看護支援、特にレジリエンスを促進させる
支援につながると考える。
2.育児不安に関する研究
数多くの子どもの虐待が報じられている現在、様々な方法で子どもへの虐待を防ぐために、産後の育
児がスタートしてからでは遅く、妊娠中から関わり援助することで、虐待の要因を探り、予防できる
と考える。
<利用・用途・応用分野>
x 不妊治療後に流産を経験する女性への研究は、全妊娠の 15%とも言われている流産を経験した女性
や家族に対する支援にもつながると考える。
x 育児不安に関しては、看護分野だけでなく、子育てに関わる保健医療や子どもを育てる母親、父親、
家族のも貢献できると考える。
<関連するURL>
http://www.nurs.osaka-cu.ac.jp/nurs/index.shtml
キーワード
育児不安、母親教室、NICU 看護、キャリアアップ、評価
データベース
登録
2010.9
シーズ名
生活習慣の改善を目的とする健康教育に関する研究
氏名・所属 等
藤田
倶子、看護学研究科・地域看護学・在宅看護学専攻、特任講師
<概要>
近年わが国では生活習慣病の問題がクローズアップされ、平成 20 年度には医療費制度改革により特
定健診・保健指導が実施されることとなった。特定健診・保健指導は、生活習慣病をターゲットに国民
の生活習慣を自ら見直し生活習慣の改善を図ることにより、メタボリックシンドローム及びその予備群
の減少を図ることを目的としている。ここでは、特定健診の後に必ず保健指導を行うことを医療保険者
が義務付けられており、医療保険者のみならず現在国民の 70%以上が「メタボリックシンドローム」と
いう言葉の意味を知っているほど、メタボリックシンドロームについての関心が高まってきている。
メタボリックシンドロームは運動不足と過食という生活習慣に起因することが多く、保健指導では対
象者一人一人が今までの生活習慣を振り返り自ら生活習慣を改善するよう行動変容を促す支援を行わ
なければならない。そのための支援として保健指導は重要な意味を持っており、今後この保健指導を効
果的に行うことが期待されている。
そのため、生活習慣の改善を促す支援としての健康教育の効果的な手法や、行動変容を促す支援の技
術について検討している。
<アピールポイント>
特定保健指導として取り組める支援を検討しています。
<利用・用途・応用分野>
特定保健指導実施事業所への研修等
キーワード
メタボリックシンドローム、行動変容、保健指導
データベース
登録
2010.9
シーズ名
コラーゲン産生能向上剤のアンチエイジングへの応用
氏名・所属 等
小島 明子、生活科学研究科・生活科学専攻、准教授
湯浅
勲、生活科学研究科・生活科学専攻、名誉教授
東
秀紀、工学研究科・化学生物系専攻、講師
<概要>
老化によって生じる肌の皺やたるみは、男女を問わず永遠の問題です。これらは、皮膚の線維芽細
胞のコラーゲン産生能の低下に起因するものです。このような現象を解消することは、人々が健康長
寿でなおかつ若さを保ち、活き活きとした生活を送るために非常に重要であり、QOL 改善・向上にも
つながることが示唆されます。内面的な若さはもちろん、外面的な若さは人々を快活にかつ活動的に
します。そのため、皮膚の線維芽細胞自身のコラ−ゲン産生能を亢進させることができれば、老化防止
の一端を担うことが可能となります。
そこで我々は、皮膚の老化防止または改善等に有用なコラーゲン産生能向上剤を提供すること、な
らびに該コラーゲン産生能向上剤を含有し、皮膚の老化防止または改善用として好適な化粧用組成物
を提供することを目的として、化粧品への応用および開発につながる基礎的研究をおこなっています。
コントロール
ACA (0.1 μM)
ヒト皮膚由来線維芽細胞のI型コラーゲン染色像
<アピールポイント>
人々の健康や若さの維持に有効な部位や器官においては、そこに存在するコラーゲン産生細胞のコ
ラ−ゲン合成能を亢進させれば、若さと健康の維持、老化防止や疾病予防の一端を担うことが可能とな
り、人々の QOL 改善・向上にもつながることが期待されます。
<利用・用途・応用分野>
肌の老化を防ぐ化粧品やサプリメントの構成成分、老化防止や疾病予防のための製品など。
<関連する知的財産権>
「コラーゲン産生向上剤及び皮膚用化粧料」:湯浅 勲・小島明子、加藤宏幸、 特開 2010-1208
「コラーゲン産生促進剤」:湯浅 勲・小島明子・東 秀紀、 特開 2009-79004
「コラーゲン産生向上剤」:湯浅 勲・小島明子、 特開 2006-151860
キーワード
コラーゲン、化粧品、サプリメント、創傷治癒
データベース
登録
2010.9
シーズ名
生活習慣病を予防する食品成分の検索モデル
氏名・所属 等
小島
湯浅
明子、生活科学研究科・生活科学専攻、准教授
勲、生活科学研究科・生活科学専攻、名誉教授
<概要>
生活習慣病の罹患率が急増している現在、生活習慣病の予防効果を有する食品成分を探索すること
は、栄養学のみならず予防医学の面からも非常に重要なことです。我々は、生活習慣病を予防する食
品成分の検索モデルとして、培養細胞を用いた in vitro 実験系モデルを作製し、効果を有する食品成
分を見出し,そのメカニズムを解明しています。
『現在行っている in vitro 実験系モデル』
1)分離肝細胞および分離肝星細胞を用いたアルコール性肝疾患(肝炎、肝線維化)モデル
2)分離肝細胞および分離肝星細胞を用いた非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) モデル
3)3T3-L1 前駆脂肪細胞を用いた肥満モデル
コントロール
エタノール添加群
+食品成分添加群
アルコール性肝線維化を予防する食品成分(肝星細胞の I 型コラーゲン染色像)
コントロール
+食品成分添加群
抗肥満効果を有する食品成分(脂肪滴の Oil red 染色像)
<アピールポイント>
培養細胞を用いた in vitro 実験系モデルは、数多くの食品成分をスクリーニングするために非常に
有効な手法です。
<利用・用途・応用分野>
健康補助食品やサプリメント、病態改善と疾病予防効果を効能とした治療食としての応用など。
<関連する知的財産権>
「肝繊維化防止組成物」
:湯浅 勲・小島明子、 特開 2010-6755
「マンゴー抽出物」:小泉聖子、湯浅 勲・小島明子、 特開 2009-215235
キーワード
健康補助食品、サプリメント、治療食
データベース
登録
2010.9
シーズ名
抗加齢(アンチエイジング)効果を持つ栄養成分の探索
氏名・所属 等
西川
禎一、生活科学研究科・長寿社会総合科学講座、教授
<概要>
◆ 研究の背景:悪性腫瘍や肺炎は加齢と共に増加します(図1)。しかし、高齢社会のわが国では、
高齢者も現役であることが求められており、健康寿命の延長こそが重要です。
◆ 研究目標と内容:実験動物を用いてアンチエイジング・免疫賦活など健康寿命の延長に有用な食品
成分を探索し、「滋養強壮」と言う漠然とした概念に科学のメスを入れる(図2、3)
図1. 男女共に 30 代から悪
性新生物(癌)による死亡が
増え、70 代以降は肺炎による
死者が急増します。加齢によ
る生体防御機能の低下も一つ
の要因と考えられています
OP50
(n=141)
対照(n=141)
LP (n=89)
LR (n=144)
LH (n=131)
W o r m S u r v iv a l ( % )
100%
生 80%
存
率 60%
図2. 当研究室では上図のような線虫を
用いて栄養などが寿命や免疫力に与える
影響を調べています。
40%
20%
0%
0
5
観 察 期 間
10
15
Time (day)
20
25
図3. 線虫にある種の被験物を食べ
させたところ、普通の餌を食べている
対照群に比べ有意に寿命が延びまし
た。私達の食生活も健康と寿命に大き
な影響を与えると考えられます。
<アピールポイント>
私達が開発した図2のような実験系を用いて、有用な機能成分の発見を目指します。
<利用・用途・応用分野>
食品・栄養・医療・医薬・漢方・健康食品・サプリメント・滋養強壮
<関連する知的財産権>
1. 「被検物質評価方法」 出願人・発明者:西川禎一、特願 2006-332851
2. 「被検物質評価方法」 出願人・発明者:西川禎一、特願 2007-320214
<関連するURL>
http://www.life.osaka-cu.ac.jp/cgi/pro.cgi?4102
http://www.occn.zaq.ne.jp/cuiyx806/home.html
キーワード
老化・免疫賦活・生体防御・栄養・機能性食品
データベース
登録
2010.9
シーズ名
創造都市実現のための政策研究
氏名・所属 等
佐々木
雅幸、創造都市研究科・都市政策専攻、教授
<概要>
「創造都市」とはイタリアのボローニャやスペインのバルセロナなどに代表される 21 世紀型の都市
モデルの1つです。それは「市民の活発な創造活動によって、先端的な芸術や豊かな生活文化を育み、
革新的な産業を振興する『創造の場』に富んだ都市であり、温暖化などグローバルな環境問題を地域
の草の根から持続的に解決する力に満ちた都市」のことです。
バブル経済崩壊後の長期不況からようやく抜け出して本格的回復軌道に乗ろうとしている日本にお
いても、
「創造都市」や「文化による都市再生」への関心が高まり、金沢、横浜では創造都市への取り
組みが本格化されることになりました。また、衰退著しい大阪でも、大阪市立大学に世界最初の創造
都市研究の拠点として、大学院創造都市研究科が設立されるなど、都市再生に向けた政策立案と人材
養成をめざして新たな動きが始まっています。こうした創造都市への胎動の中で、内閣府も「日本 21
世紀ビジョン」の最終案において、2030 年までに目指す日本社会の姿として掲げた三本柱「文化創造
国家、時間にゆとり、小さな官」において、そのトップに位置づけようとしています。
今、なぜ、「創造都市」や「文化による都市再生」に大きな関心がもたれているかといえば、製造業
を中心とした 20 世紀型経済から、知識情報経済という 21 世紀型の経済社会への移行が明瞭になり、
都市や地域の経済エンジンが大企業や大規模工場から、創造性あふれる企業や個人にシフトしてきた
からです。日本より一足早く製造業の衰退と空洞化に苦しんだ欧州において創造都市への取り組みが
先行しているのはこのような背景によるものです。
日本では筆者が『創造都市の経済学』(1997 年)と『創造都市への挑戦』(2001 年)の二つの著作を
上梓し、金沢や横浜など具体的な都市政策の策定に対して助言を行ってきました。
最後に、都市自治体として大阪を創造都市に転換するための取り組みを前進させるための課題につい
て、ここでまとめておきましょう。
第1に、直面する都市危機を深く分析して、市民の共通認識を広げ、「創造都市」への転換の必要性
を明らかにし、将来に向けた大胆な創造都市構想を示すことです。そのためには、市長をトップにし
た総合的な創造都市事業推進本部の設置が緊要であると思われます。
第2に、その構想においては「芸術文化の創造性」を産業、雇用、社会制度、教育、医療、環境など
多面的な制作分野にインパクトを与えるように位置づけ、文化政策を産業政策、都市計画、環境政策
などと融合させて推進するために、従来の縦割りの行政機構を水平的水平的に転換し、官僚的思考を
やめ、組織の文化を創造的に転換することです。
第3に、芸術文化を知識情報社会の中心的な社会インフラととらえて、市民の創造性を引き出すよう
な制度設計に関心を集中することであり、具体的には都市の中に「産業と文化の創造の場」を多様に
作り出すこと、そしてその中心を担う創造的プロデューサーの育成に取り組むことです。
第4に、創造都市政策を持続的に進めるためには、行政内部の取り組みのみでは不可能であるので、
経済界・NPO 団体など広範な市民が参加する「創造都市推進市民会議」などの設立とその協力が不可
欠であり、何よりも、創造都市を推進する人材を養成する研究教育機関の整備が重要となっています。
このような点で、注目されるのが 2003 年 4 月に開設された大阪市立大学大学院創造都市研究科です。
大阪市が設立したこの大学院は一般的な学問分野のセンター・オブ・エクセレンス(COE)を目指すの
ではなく、「関西大都市圏を創造都市にする」ための指導的人材と政策立案のできる専門家を養成しよ
うという基本理念をもち、創造都市実現のための「知の拠点」となることをめざしているのです。
<参考文献>
佐々木雅幸、
『創造都市への挑戦』岩波書店、2001 年
佐々木雅幸、
『創造都市の経済学』勁草書房、1997 年
キーワード
創造の場、創造産業、創造インフラ、プロデューサー、都市文化、
都市政策、産業政策、都市計画、文化政策、内発的発展
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