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アジアにおける IT(情報技術)労働市場の展望

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アジアにおける IT(情報技術)労働市場の展望
経済産業省委託調査
アジアにおける
IT(情報技術)労働市場の展望
平成14年3月
(社)アジアフォーラム・ジャパン
「アジアにおける IT 労働市場の展望」
<目次>
はじめに
第 1部
ア ジ ア 一 体 と し て の IT 労 働 市 場 と 我 が 国 の 位 置 づ け
第 1章
IT 産 業 と そ の 労 働 市 場 の 特 徴 、ア ジ ア IT 人 材
…………………………1
― IT 技 術 者 を ア ジ ア 地 域 に 求 め た 際 に 考 え て お く べ き こ と ―
1. は じ め に
2. IT 産 業 の 特 徴
3. IT 産 業 に お け る 労 働 市 場 の 特 徴
4. ジ ョ ブ ・ マ ッ チ ン グ に お け る ミ ス マ ッ チ
5. IT 技 術 者 を ア ジ ア 地 域 に 求 め た 時 の 問 題 点
第2章
ア ジ ア 各 国 に お け る IT 労 働 市 場 と 技 術 者 出 入 国 ― 現 在 お よ び 将 来 ― … 16
1. 全 体
(16)
2. 中 国
(19)
3. 香 港
(23)
4. 韓 国
(26)
5. 台 湾
(30)
6. フ ィ リ ピ ン
7. タ イ
(35)
(39)
8. マ レ ー シ ア
(41)
9. シ ン ガ ポ ー ル
10. イ ン ド
(46)
(52)
iii
第 3章
日 本 の IT 労 働 市 場 と ア ジ ア IT 人 材 の 位 置 づ け
… … … … … … … … … 58
1. 日 本 の IT 労 働 市 場
2. ア ジ ア IT 人 材 の 位 置 づ け
3. ヒ ア リ ン グ か ら 得 ら れ た 重 要 な ポ イ ン ト
4. ヒ ア リ ン グ 結 果
第 4章
ア ジ ア IT 技 術 者 出 入 国 マ ト リ ッ ク ス
第 2部
ア ジ ア IT 労 働 市 場 の 今 後 の 展 望 と 我 が 国 の 課 題
第 5章
ア ジ ア に お け る IT 人 材 の 将 来 需 要 予 測
1. は じ め に
(111)
3. 香 港
(112)
4. 韓 国
(114)
5. 台 湾
(115)
6. フ ィ リ ピ ン
(116)
(118)
8. マ レ ー シ ア
(119)
9. シ ン ガ ポ ー ル
10. イ ン ド
第 6章
… … … … … … … … … … … … 111
(111)
2. 中 国
7. タ イ
… … … … … … … … … … … … … 95
(121)
(122)
我 が 国 の IT 人 材 の 将 来 需 給 予 測 と 今 後 の 課 題
… … … … … … … … … 127
1. 我 が 国 の IT 人 材 の 将 来 需 給 予 測
2. 今 後 の 課 題
お わ り に … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … 152
ヒアリング者リスト
参考文献
… … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … 153
… … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … 160
iv
はじめに
本報告書は、経済産業省から(社)アジアフォーラム・ジャパンへの委託で実
施 し た 調 査 「 ア ジ ア に お け る I T ( 情 報 技 術 ) 労 働 市 場 の 展 望 」 ( 平 成 13 年 度
総合的産業人材供給環境整備調査事業)の結果をとりまとめたものである。
アジア経済危機は、地域経済に多大な影響を与えてきている。さらに、米国を
中 心 に 90 年 代 以 降 は じ ま っ た IT 革 命 も 、IT バ ブ ル の 崩 壊 に よ る 米 国 経 済 の 不 況
の中で、全世界的な経済構造の調整局面に入ってきている。これらの状況におい
て 、米 国 の IT 革 命 に 依 存 す る 形 で 進 展 し て き た ア ジ ア の IT 関 連 市 場 は 、米 国 経
済における景気の変動の影響を受け、急速な景気後退に直面しており、アジア各
国はその対応に迫られている。
我 が 国 IT 関 連 産 業 も 同 様 に こ の 影 響 を 受 け 、 一 部 の 業 種 で は 業 績 は 大 き く 悪
化しており、人員削減等、雇用調整の動きが目立っている。一方、情報サービス
産 業 等 、ソ フ ト 部 門 を 見 る と 状 況 は 異 な る 。そ の 部 門 に お い て は 、IT 産 業 全 体 に
占める割合は年々増加傾向にあり、高度な技術を持った人材が不足しているとの
指摘がある。当該分野では雇用のミスマッチが生じているといえよう。政府の策
定 し た e-Japan 重 点 計 画 で は 、国 内 人 材 の 育 成 の み な ら ず 、国 際 競 争 力 確 保 の 観
点から、外国人人材の受入れを促進するとしている。
他 方 、 ア ジ ア で は 、 近 年 、 次 の よ う な IT 市 場 が す で に 形 成 さ れ つ つ あ る 。 韓
国、中国、フィリピン、インドなどは、欧米社会で活躍するソフトウェア開発の
中 核 を 担 う 高 度 な IT 人 材 を 生 み 出 す 地 域 と な っ て き て い る 。 そ し て 、 こ の よ う
な IT に 関 わ る 短 期 的 な 側 面 ば か り で は な く 、 そ れ が も た ら す 新 た な か つ 多 様 な
生 産 革 命 を は じ め と す る IT の 可 能 性 に 鑑 み る と 、 ア ジ ア 地 域 で は 、 中 長 期 的 に
は さ ら な る IT 市 場 の 形 成 の 進 展 が あ る と 予 想 さ れ る 。ア ジ ア に は 全 て の IT 技 術
者が自国内で雇用されることなく、また自国の人材のみで必要な技術者を充足す
る こ と は で き な い 国 家 が 混 在 し て い る 。 ア ジ ア に は IT 労 働 市 場 が 存 在 す る と 仮
定されよう。
以上のような仮説に基づき、本調査では、雇用のミスマッチが指摘される我が
国 の 労 働 市 場 の 現 状 を 踏 ま え な が ら 、 ア ジ ア 域 内 に お け る IT 技 術 者 の 移 動 の 全
i
体 像 に 着 目 し な が ら 捉 え る こ と と し 、 我 が 国 に お け る ア ジ ア IT 人 材 の 位 置 付 け
を 考 察 し た 。 こ こ で は 雇 用 者 側 か ら の み で な く 、 我 が 国 に 就 労 す る 外 国 人 IT 技
術者からもその位置付けについて意見を集約するように努めた。同時に、アジア
IT 人 材 市 場 の 将 来 像 を 予 測 し 、 同 地 域 に 占 め る 我 が 国 IT 労 働 市 場 の 意 味 に つ い
て 考 察 し 、 将 来 我 が 国 の 雇 用 の ミ ス マ ッ チ に 与 え る ア ジ ア IT 人 材 の 影 響 に つ い
ても調査に努めた。
当フォーラムが、本調査の基礎調査および全体的とりまとめを行ったが、本調
査に対して専門家からの助言と意見等をいただくために、委員会を設置し、委員
会会合を開催した。委員会メンバーは、次のとおりである。
「 ア ジ ア に お け る IT 労 働 市 場 の 展 望 」 委 員 会
1. 高 橋 克 秀
(株)三和総合研究所調査部主任研究員(委員長)
2. 阿 部 正 浩
獨協大学経済学部専任講師
3. 岡 澤
トレンドマイクロ(株)管理本部総務人事部
耕
人事マネージャー
4. 鈴 木 江 理 子
フジタ未来経営研究所研究員
5. 西 村 哲 也
マ イ ク ロ ソ フ ト ( 株 ) IT 推 進 事 業 部 事 業 部 長
(委員長以外五十音順)
な お 、委 員 会 は 、平 成 13 年 12 月 27 日 、平 成 14 年 1 月 18 日 、3 月 4 日 の 3 回
開催した。
本調査では、日本国内外でのヒアリング調査等を実施した(ヒアリング先は、
別紙のヒアリング先リストを参照)。また、調査の一部を外部(中国現代国際関
係研究所)に委託した。
こ れ ら の 調 査 に 基 づ く 本 報 告 書 の 成 果 が 、 ア ジ ア お よ び 我 が 国 に お け る IT
労働市場の今後を考察する上での参考の一助になれば幸いである。
平 成 14 年 3 月
(社)アジアフォーラム・ジャパン
ii
第1部
ア ジ ア 一 体 と し て の IT 労 働 市 場 と 我 が 国 の 位 置 づ け
第 1章
IT 産 業 と そ の 労 働 市 場 の 特 徴 、 ア ジ ア IT 人 材
― IT 技 術 者 を ア ジ ア 地 域 に 求 め た 際 に 考 え て お く べ き こ と ―
1. は じ め に
こ の 報 告 書 に 与 え ら れ た テ ー マ は 、「 ア ジ ア 一 体 と し て の IT 労 働 市 場 と 我 が 国
の 位 置 づ け 、お よ び 日 本 の IT 労 働 市 場 の ミ ス マ ッ チ と ア ジ ア IT 人 材 の 位 置 づ け 」
である。しかし、このような壮大なテーマを限られた本章の紙幅ですべて網羅す
ることはできないので、ここではそのテーマの出発点として、次の2つの点につ
い て 主 に 議 論 し た い 。第 一 に は 、IT 産 業 に お け る 労 働 市 場 で 今 、何 が 起 き て い る
の か と い う こ と で あ る 。 第 二 に は 、 そ の 上 で 、 ア ジ ア の IT 人 材 を 求 め る と き に 、
何を考えなければいけないのかということである。
結 論 を 先 取 り す る と 、IT 人 材 が ど の よ う な 働 き 方 を 企 業 に 求 め ら れ る か が こ の
問題を考える上で重要となる。製品開発において需要側との「擦り合わせ」が重
要となるソリューション・ビジネスでは、知識や能力、チームワーク、熟練とい
った従来から重視されている要素も重要であるが、コミュニケーションが円滑に
進むような言語的要素も重要である。一方、製品開発が「モジュール型」で進ん
でいた場合には、基本的なコミュニケーション能力は必要だが、むしろ業務遂行
のためのスキル・セットが重要となる。しかし、このモジュール型製品開発型の
働き方でも、労働市場の流動化が進むと製品のコアとなる知識が流出することに
な る か ら 、企 業 は 内 部 労 働 市 場 の 充 実 を 図 る イ ン セ ン テ ィ ブ を 持 つ 。し た が っ て 、
流 動 化 し や す い と 考 え ら れ て い る IT 人 材 も 流 動 化 す る の は 難 し く 、む し ろ 内 部 労
働 市 場 化 が 進 む と 考 え ら れ る 。IT 技 術 者 を 東 ア ジ ア 地 域 に 求 め た 際 に は 、こ の 点
を十分に考慮する必要があろう。
2. IT 産 業 の 特 徴
は じ め に 、IT 産 業 の 労 働 市 場 の 特 徴 を 考 え る 際 に は 、IT 産 業 そ の も の の 特 徴 を
把 握 す る 必 要 が あ る 。ニ ュ ー・エ コ ノ ミ ー の 代 名 詞 で あ る IT 産 業 に は 、旧 来 の 産
業と比べて大きく 2 つの相異点がある。第一は、二種類の「規模の経済性」があ
1
るという点。第二の相異点は、ソフトウェアとハードウェアが完全に分離してい
ることである。
( 1) IT 産 業 に お け る 2 つ の 規 模 の 経 済 性
ま ず 、 IT 産 業 に お け る 2 つ の 「 規 模 の 経 済 性 」 を 説 明 し よ う 。
IT 産 業 に は 、供 給 側 と 需 要 側 の そ れ ぞ れ に「 規 模 の 経 済 性 」が 見 ら れ る 。ま ず 、
供給側の規模の経済性は、従来の産業にも見られる性質のものであり、それはデ
ジタル財の製造と供給の特徴と関連している。デジタル材の製造や供給において
は、全体のコストの大部分を占めているのは固定費用である。これに対して、可
変費用の割合はきわめて小さい。これは、プログラムの開発費用が膨大である一
方で、その複製にかかる費用は無視できるほど小さいということによる。したが
って、生産量を拡大することで平均コストは低下するから、企業経営にとっては
生産規模を拡大すればするほど効率が良くなる。これが、旧来の産業についても
論じられてきた供給側の「規模の経済性」である。
ただし、規模の拡大ばかりを追い求めると、場合によってはデジタル材が公共
財的な性格を持つ可能性がある。そのため企業は、自社製品が公共財になるのを
阻止し、利益を守るための様々な策を講じることがある。しかしながら、そうし
た経営政策が問題となるケースもあるのである。
他 方 、IT 産 業 に お い て は 需 要 者 側 に も「 規 模 の 経 済 性 」が 存 在 す る 。こ の 点 は
旧来の産業にはなかった特徴であり、ニュー・エコノミーと呼ばれる所以でもあ
る。需要側における規模の経済性は「ネットワーク外部性」とも呼ばれている。
インターネットの拡大によって、需要者は他の需要者が持っているソフトウェア
を利用する傾向が強まる。というのも、インターネット上でサービスを利用した
りデータ交換したりするには、お互いに互換ソフトウェアが必要となる。このた
め、自分と同じソフトウェアを持っている需要者が多ければ多いほど、利用でき
るサービスやデータが増えて便利になる。逆に、少数派のソフトウェアでは、利
用範囲が大幅に限定されてしまうのである。このほかにも諸々の要因が絡み合っ
て、ネットワーク外部性が発生している。
こ れ ま で の 産 業 に は 見 ら れ な か っ た 供 給 側 /需 要 側 と い う 2 つ の 側 面 に お け る
「規模の経済性」は、この産業の労働市場の特性に大きく影響している。
2
( 2) ソ フ ト ウ ェ ア と ハ ー ド ウ ェ ア の 分 離
IT 産 業 が 旧 来 の 産 業 と 異 な る も う 1 つ の 特 徴 は 、ソ フ ト ウ ェ ア と ハ ー ド ウ ェ ア
の 分 離 で あ る 。 こ の 点 に つ い て は 、 米 IBM の パ ソ コ ン 開 発 が 重 要 な タ ー ニ ン グ ・
ポイントになった。
現 在 の パ ソ コ ン の 製 品 開 発 手 法 は 、 IBM が 従 来 か ら 作 っ て い た 大 型 計 算 機 の そ
れ と は か な り 異 な っ て い た と 言 わ れ て い る 。そ れ を 特 徴 づ け る 2 つ の 言 葉 が 、
「モ
ジュール化」と「オープン・アーキテクチャー」である。
初 期 の IBM パ ソ コ ン は 、MPU( マ イ ク ロ・プ ロ セ ッ サ ー )あ る い は CPU( 中 央 演
算 処 理 装 置 ) を 米 イ ン テ ル が 、 OS( オ ペ レ ー テ ィ ン グ ・ シ ス テ ム ) を 米 マ イ ク ロ
ソ フ ト が 製 造 し 、 そ れ 以 外 の 部 分 を IBM と そ の 関 連 会 社 が 担 当 す る と い う 形 で 作
ら れ て い る 。 製 品 開 発 を モ ジ ュ ー ル 単 位 に 分 割 し た わ け で あ る 。 さ ら に IBM は 、
こうしたモジュール開発を実現するために、各部品を接続するためのインターフ
ェイスを標準化し、公開した。この手法は、各部品の汎用化が進むと同時に、部
品 メ ー カ ー の 競 争 を 激 し く す る こ と で 、部 品 調 達 コ ス ト の 低 下 に 大 き く 寄 与 し た 。
こ う し て モ ジ ュ ー ル 化 や オ ー プ ン ・ ア ー キ テ ク チ ャ ー 化 を 進 め る 一 方 で 、 IBM
は BIOS( 基 本 入 出 力 シ ス テ ム )に 関 し て だ け は 情 報 を 秘 匿 し 、自 社 で 作 っ た 。他
社 が IBM パ ソ コ ン と 互 換 性 を 持 つ 製 品 を 作 る こ と を 阻 止 す る た め で あ る 。
ところが、コンパックをはじめとする企業が、数年後にリバース・エンジニア
リ ン グ に よ っ て こ の BIOS を 解 読 す る こ と に 成 功 し た 。こ れ に よ り 、IBM コ ン パ チ
ブ ル な PC を 他 社 が 製 造 可 能 と な っ た 。そ の 結 果 と し て 、IBM が 独 占 で き た は ず の
市場が、競争的市場へと変わっていった。
CPU に つ い て も 同 様 の こ と が 言 え る 。米 AMD や 米 ト ラ ン ス メ タ と い っ た チ ッ プ・
メ ー カ ー が イ ン テ ル 製 品 と 互 換 性 を 持 つ CPU を 投 入 し た こ と に よ り 、 市 場 は か な
り競争的になった。
( 3) ブ ラ ッ ク ボ ッ ク ス 化 か 汎 用 性 か
このように、製品開発のモジュール化やインターフェイスのオープン・アーキ
テクチャー化、さらにはリバース・エンジニアリングが進んだことで、周辺機器
を 含 め た ハ ー ド ウ ェ ア 市 場 は 極 め て 競 争 的 に な っ た 。同 時 に 、ハ ー ド ウ ェ ア と OS
との分離が進んできたのである。
3
し か し な が ら 、OS に つ い て は マ イ ク ロ ソ フ ト が 相 変 わ ら ず 市 場 を ほ ぼ 独 占 し て
いる。なぜこうしたことが可能かといえば、インターフェイス部分はある程度公
開しても、コアの部分は現在でもブラックボックス化しているからである。この
ため、競合品が出にくくなっているわけである。
先述したように、企業が需要者を囲い込んで市場を独占するためには、製品の
詳細な内部を見えなくしておく必要がある。極端なことをいえば、製品の汎用性
を無視して、すべてをブラックボックス化してしまうのである。これにより、ユ
ーザーが別の製品に乗り換えるスイッチング・コストは高くなり、同一製品を使
い続けたほうがユーザーのベネフィットは高くなるわけである。その結果、一度
つかんだユーザーをそのまま自社製品にロックインしやすくなる。ただし、独自
技術を駆使して一から作り上げる製品には、開発費用が膨大であることや、その
製品が需要者に受け入れられて投資を回収できるかが不確実である、といった危
険も常にはらんでいる。
開発コストや回収リスクを覚悟して市場の独占を目指すか、あるいは汎用性の
ある製品で競争的な市場に参入するかによって、企業の経営戦略は大きく変わっ
てくる。このことは、労働市場にかなりの影響を及ぼす。これが、次の節のポイ
ントに深く関わる問題である。
3. IT 産 業 に お け る 労 働 市 場 の 特 徴
IT 産 業 に お け る 固 定 費 の 大 部 分 を 占 め る の は 、研 究 開 発 に お け る 人 件 費 だ と 言
ってよいだろう。日本では特に、技術者の賃金は非常に高い水準にある。ここで
は、研究開発と人的資本について考えてみたい。
( 1) 研 究 開 発 と 人 的 資 本
研究開発は知的労働であり、その意味で研究開発そのものが人に「一体化」し
ている部分はかなり大きい。したがって、知識を持った人材が移動することは、
知識自体が移動するのに等しくなる。労働者が他社に転職するということは、勤
めていた企業から研究開発の知識が新しく勤める企業へ移っていくということに
他ならない。このため、企業が研究開発の水準を高く保つには、どれだけ人材を
自社から他へ移動させないようにするかということが重要な課題になる。実際、
4
IT 企 業 で は 自 社 内 に 優 秀 な 人 材 を 抱 え る た め に 人 事 部 は 様 々 な 工 夫 を 行 っ て い
ることが多い。
さらに、人材の移動による研究開発知識の流出だけでなく、人材による知識の
公開を防ぐ必要もある。知識は一旦公開されてしまうと公共財になってしまうと
いう性格を持つため、この問題はとりわけ重要である。
例えば、私たち研究者は自分の発見や研究成果を論文などに纏めて雑誌などに
掲載するが、それを読んだ読者全員はその論文に含まれる知識を共有することに
なる。その結果、その知識に関する情報の非対称性はなくなる。仮にその知識に
情報の非対称性がある場合には、そしてその知識に価値があるなら、研究者は知
識を独占することでレントを得ることができる。しかしながら、研究成果は著作
権で保護されるわけであるが、実際には、実質的には広く無料で使われることに
なり、商業的価値を失うことになるわけである。
市場で販売されているソフトウェアについても同様の議論ができる。技術者の
転職とともにソフトウェアの中身である専門知識が移動し、場合によっては公開
されてしまうと、ソフトウェアの市場価値はゼロになる可能性が高い。先に見た
リ バ ー ス・エ ン ジ ニ ア リ ン グ で IBM の BIOS が コ ン パ ッ ク に わ か っ て し ま っ た 結 果 、
PC 市 場 に お い て IBM が 独 占 力 を 失 い 、 PC の 価 格 が 下 落 し た こ と は こ の 例 で あ る 。
違法である無断複製の問題とは別に、知識の公開は経営上大きな問題となる。
こうした問題があるため、マイクロソフト社は研究開発における知識をブラッ
クボックス化すると同時に、その流出・公開を未然に防止することで、自社のシ
ェアや利益を維持していると考えられる。これと対照的なのは、オープン・ソー
ス の OS で あ る Linux で あ る 。Linux は ソ フ ト ウ ェ ア の 中 核 で あ る ソ ー ス・コ ー ド
を全面的に公開しており、急速に普及している。しかし、誰でも再配布や改変が
可能であることから値段をつけて売ることはできず、それ自体を販売するだけで
は利益をあげるのは難しいのである。
こ の よ う に 考 え る と 、 流 動 化 し や す い と 思 わ れ る IT 産 業 の 労 働 市 場 で あ る が 、
む し ろ IT 人 材 の 転 職 に よ っ て 知 識 が 流 出 す る と い う 新 た な 問 題 が 発 生 す る こ と
になる。
5
( 2) 研 究 開 発 の 二 つ の 方 向 性
研 究 開 発 の 特 性 に つ い て 、さ ら に 詳 し く 見 よ う 。IT 産 業 に お け る 研 究 開 発 に は 、
大きく 2 つの方向性がある。1 つは、従来の日本の製造業が得意としてきた「擦
り合わせ」型の研究開発である。これは、製造や研究開発といった複数の部門が
連携・調整しながら、製品開発を進行させていくやり方である。
多くの日本企業では、人事部門の任務は擦り合わせ型の研究開発業務を支える
人材、つまり人的資本を形成することだった。このため、他部門との密接な連携
や人的交流、企業特殊的訓練を実施してきた。加えて、人的資源を社内で交換す
る内部労働市場を形成することも重要だった。日米の賃金カーブを比べると、日
本は右肩上がりの傾向がかなり強いのがわかる。これは、内部労働市場がしっか
りと形成されており、終身雇用や年功序列の仕組みが確立しているということの
現れである。
研 究 開 発 に お け る も う 1 つ の 方 向 性 は 、「 モ ジ ュ ー ル 型 」 開 発 で あ る 。 こ れ は 、
インターフェイス部分だけを標準化しておき、各モジュールを複数の企業や部門
が開発するやり方である。インターフェイスさえ共通であれば、残りの部分はブ
ラックボックスでも構わないという考え方である。この開発方式は、汎用的なモ
ジュール型知識に特化した人的資本の形成だけで済むから、モジュール間の人的
交流は擦り合わせ型よりも少なくて済む。企業特殊的訓練も減少するので、外部
労働市場からの人材調達やアウトソーシングが容易になる。
実際、外資系大手ソフトウェア・ベンダーである A 社の場合、モジュール開発
業務を担当する人材の採用は、企業が望むスキル・セットを持っているかどうか
が採用する際の最大のポイントであるという。開発職の場合、応募者に面接のそ
の場でプログラムを書いてもらうことで、技術的資質や経験を見極められる。そ
の他、基本的なコミュニケーション能力はもちろん必要だが、開発現場が中国で
あれば中国語、アメリカであれば英語を話せるといったことである。スキル・セ
ットとコミュニケーション能力を備えていれば、人種や出身などは一切問われな
い。
ただし、この企業でも、プロジェクト・マネジメントといった擦り合わせ型の
業務経験を持つ人材の場合には、プログラミング能力よりもむしろ、プロジェク
トを統括するスキルや複数の人間をマネジメントできるスキルが求められる。先
6
ほどのモジュール開発業務のようにはっきりしたスキル・セットがあるわけでは
ないが、面接において単に過去の経験をきくだけでなく、問題を提起してその解
決策を尋ねるといった実際的な方法で、その人の経験や問題解決能力を判断する
と い う 。ま た 、こ の う ち 優 秀 な 人 材 は 、外 部 へ の 流 出 を 防 ぐ た め に 、賃 金 ・処 遇 を
十分にするだけでなく、内部公募性などを整備することで、人事担当部門が働く
人々の不満を減らす工夫を行っていた。むしろ、A 社では人事部門の善し悪しが
企業の善し悪しを決めると考えているのである。
( 3) 人 的 資 本 の 形 成 と 長 期 勤 続 の 関 係
研究開発における 2 つの方向性のうち、企業がどちらを採用しているかによっ
て、企業の人材育成法は自ずと変わってくるだろう。
実 は 、人 材 形 成 と 長 期 勤 続 に は 深 い 関 係 が あ る 。擦 り 合 わ せ 型 開 発 の 場 合 に は 、
事前に企業特殊的訓練が不可欠である。企業や部門に固有な業務の進め方や、独
自技術などを学ばなければならない。
しかし、こうした特殊的訓練によって得る知識は企業に特有なものであるだけ
に、外部に転職した際には活かせない。特殊的熟練には、時間や労力といった自
己の資源を投資して身につけても、自分の将来における利益にならない可能性が
ある。したがって、何も条件がない場合には、労働者はこうした特殊的訓練に対
し て「 投 資 し な い で い る の が 一 番 良 い 」と 判 断 す る だ ろ う 。こ れ は 、
「ホールドア
ップ問題」と呼ばれている問題である。
擦り合わせ型の開発形態を採用している企業が、ホールドアップ問題を回避し
て労働者から企業特殊的熟練の最適な投資量を引き出すためには、企業が投資費
用を一部負担するのに加えて、外部機会、つまり転職先が減少する分を補償する
といった取り組みを実施しなければならない。具体的には、終身雇用や年功賃金
制度、早期退職時の退職金優遇制度などである。こうした補償によって、労働者
は安心して企業特殊的訓練に投資できるようになる。
モジュール開発に携わる労働者の場合にも、事前に企業特殊的訓練がある程度
は必要である。しかし、そのウェイトはさほど大きくないだろう。労働者はむし
ろ、より汎用的な個別のモジュール型知識の獲得に投資することになる。この場
合には、同じようなモジュールを作っている他社に移動しても自分の知識を活用
7
できる。労働者にとって、モジュール型知識を習得することは自分自身の利益に
直結しやすいため、より積極的な投資が見込める。
こ う し た こ と か ら 、モ ジ ュ ー ル 型 開 発 を 実 施 し て い る 企 業 に 必 要 な の は む し ろ 、
外部機会が多い労働者を自社に引き止めて、知識の流出を防ぐ方策であろう。
( 4) 海 外 か ら の 人 材 調 達 に 潜 む 問 題 点
日本企業がアジアの人材を活用しようとする際、製品開発の形態による人的資
本のあり方の違いによって解決すべき問題点が異なってくると考えられる。
擦り合わせ型の開発においては、外部の人材を活用できるかどうか、それ自体
が重要な問題である。さらに、文化や言葉の違いは企業特殊的訓練や密接な人的
交流を実施するにあたって大きな障害になる。あるソフトウェア開発企業 B 社は
か つ て 、タ イ の 現 地 法 人 で 働 い て い た 技 術 者 を 日 本 の 拠 点 に 配 置 し た こ と が あ る 。
その配置先は特定企業向けの独自システムを構築する開発部門で、顧客企業や他
部門と連携しながら擦り合わせ型の開発を実施していた。ところが、その技術者
たちは日本語を話せるものの、文化的な違いから組織やプロジェクトの状況をな
かなか理解できず、人的交流もうまく図れなかったことから、この試みは失敗に
終わったというケースがある。もちろん、このケースがすべての企業にあてはま
るとは思わないが、擦り合わせ型開発において海外から人材を調達することの難
しさを表す一例であろう。
擦り合わせ型とは対照的に、モジュール型開発では海外の人材を比較的活用し
やすいだろう。しかし、この場合にも海外から招いた人材を自社に囲い込むとい
う別の問題が発生する。とりわけ、人材の流出が知識の流出につながるのであれ
ば、日本人と同等の処遇をすることで人材の引き留めを図ることが何よりも重要
である。人件費の節減や人手不足の解消といった観点だけからアジアの人材に注
目 す る こ と は 、短 期 的 に は 良 い 結 果 で あ っ て も 1 、長 期 的 に は 知 識 の 流 出 と い う マ
イナスの結果を導く危険があるだろう。
1 後述するように、ヒアリングの結果からすると、人件費もそれほど割安になるわけではない
8
4. ジ ョ ブ ・ マ ッ チ ン グ に お け る ミ ス マ ッ チ
最後に、ジョブ・マッチングの問題について触れたい。
人材の流動性が高まる中で、ジョブ・マッチングにおけるミスマッチが数多く
生じている。その最大の原因は、求職者と求人企業の間に横たわる情報の非対称
性であると考えられる。
あ る オ ン ラ イ ン 求 人 サ イ ト が 、 2001 年 12 月 に 掲 載 し た 複 数 企 業 の 求 人 情 報 を
例にとろう。いずれも、人事部門が募集したものであるが、これらを見ると、企
業にとって欲しい人材を表現することは、非常に難しいのではないかという印象
を強く受ける。特に、擦り合わせ型の業務ではその傾向が強いようである。
具体的には、募集職種は同じ「人事」としていても、仕事内容を見ると求めて
いる人材が全く違うことがわかる。図の A 社は教育研修や人材採用を人事部門の
主なミッションとしている一方で、B 社は給与や保険、福利厚生といった業務を
重視している。募集職種が人事というだけでは、マッチングに至らないというこ
とである。これを補うには、仕事内容や応募資格などを詳細に記述した求人情報
を公開する必要が出てくる。
ところが、仕事内容を詳細に記述したからといって、情報の非対称性がなくな
るわけではない。
図の A 社は、仕事内容として「当社が標榜するトータル・ソリューションを実
現するための人材戦略の立案から、その戦略に基づいた人材採用ならびに教育研
修の実施」と記述している。しかし、これだけでは A 社の「トータル・ソリュー
ション」とは一体何なのかはわからない。一般に、企業内部の問題は外部に漏れ
ることはなく、外部の人間が A 社のトータル・ソリューションを理解することは
まずない。求職者が実際に面接を受けて担当者と話をすれば説明してもらえるで
あろうが、
「 ト ー タ ル・ソ リ ュ ー シ ョ ン 」に つ い て A 社 全 体 で 一 致 し た 見 解 が あ る
かどうかは怪しい。実際、職業紹介業者に聞くと、同じ企業でも社長と人事担当
者との間で人材イメージが全く食い違っている、といったことはよくあることだ
といわれている。
( 1) 企 業 サ イ ド も 情 報 不 足 に 悩 む
こうしたことから、求職者も求人企業も厳密には「企業の内部に入らなければ
9
知り得ない情報」については無視せざるを得ないのが実情である。実際、こうし
た仕事内容と応募者の資質が一致するかどうかとは関係ないところで採用が決ま
るケースは決して少なくない。このことは、必要とする人材を的確に表現する難
しさと、そこから生まれる求職者と求人企業との間の情報の非対称性を表してい
るといえる。
また、情報の非対称性は別の側面でも起きている。求人企業は、求職者の私的
情報を得られないことから、求職者を上手に選別できないでいる。例えば、派遣
社員であれば試用期間というものがあるが、長期契約や正社員の場合には、おい
それと試してみて駄目だったら辞めてもらうというわけにはいかない。そこで、
求職者の私的情報を事前に入手することが非常に重要になるのだが、求職者一人
ひとりに関する詳細な情報を限られた求人期間に収集するのは容易ではない。し
たがって、ミスマッチをなくすためには求人と求職の間にある情報の非対称性を
なくすことが重要となっている。
10
図表3−1
募集職種とその仕事内容、応募資格の例示
会社名
A社
B社
C社
募集
人事
人 事 / 人 材 開 発・人 材 情
人事
職種
報管理
仕事
CTC が 標 榜 す る ト ー タ ク ラ イ ア ン ト 及 び 人 材 人 事 制 度 、報 奨 制 度 等 の
内容
ル・ソ リ ュ ー シ ョ ン を 実 開 発 の 視 点 か ら 、人 材 配 人 事 戦 略 企 画 業 務 全 般 、
現するための人材戦略 置のコーディネーショ 事業本部人事労務マネ
の 立 案 か ら 、そ の 戦 略 に ン と ス タ ッ フ の 職 務 経 ー ジ メ ン ト 、 給 与 ・ 保
基 づ い た 人 材 採 用 な ら 歴・ジ ョ ブ 履 歴・ト レ ー 険・福 利 厚 生 等 の 人 事 業
びに教育研修の実施が ニング履歴などを管理 務
主なミッションになり する情報システムの企
ま す 。急 速 な 変 化 を 遂 げ 画・構 築・運 用 を 通 じ て 、
るフロントエンドのニ コンサルタントのキャ
ーズに的確に対応する リア向上の機会を積極
た め の ス ピ ー ド と 柔 軟 的に支援する
○ ジ ョ ブ・ス タ ッ フ ィ
性 、さ ら に 高 度 な コ ミ ュ
ニ ケ ー シ ョ ン ス キ ル が ン グ・ス タ ッ フ の ス キ ル
要求されます。
情 報 の 収 集・管 理 と コ ー
ディネーション
○人材開発に関連す
る人事情報管理システ
ム に 関 す る 企 画 立 案・実
行
○
社内研修の企画立
案・運営管理
11
応募
専 門・短 大 卒 以 上 26∼ 35 人 事 系 職 種 経 験 2年 以 上 人 事 企 画 部 門 で の 人 事
資格
歳位迄の方
相当の方
戦略に関わる実務経験
○ TOEIC 750 点 以 上 が あ る 3 5 歳 く ら い ま
( Notesメ ー ル に よ る 海 で の 方 、人 事 部 門 で の 実
外との通信が主体とな 務経験がある27歳く
ります)
○
らいまでの方
マイクロソフト社
の PCソ フ ト ウ ェ ア
(エクセル、ワー
ド、パワーポイン
ト)が使用できる
こと
そ の 他 採 用・教 育・人 事 考 課 な
どの人事業務経験者又
は 26 歳 ∼ 28 歳 位 で あ れ
ば 未 経 験 で も IT 業 界 の
人事業務に関心のある
方。
出所:
Yahoo Japan
Careers( 2001 年 12 月 現 在 )
( 2) あ い ま い な 採 用 基 準
阿 部 [2001]で は 、 あ る 民 間 職 業 紹 介 会 社 の 業 務 デ ー タ を 用 い て 、 求 人 企 業 の 求
人 情 報 の 出 し 方 と 求 職 者 と の マ ッ チ ン グ の 結 果 に つ い て 考 察 し て い る 2 。そ の 分 析
の 1 つが、職種や業種、経験、資格、語学レベルといった条件についての求人企
業と求職者の一致度と、採用確率との関係に関するものである。これによると、
書類や面接の各段階で不採用になった求職者と、採用された求職者の間には、条
2 阿 部 正 浩「 企 業 の 求 人 募 集 ― 求 人 情 報 の 出 し 方 と マ ッ チ ン グ の 結 果 」『 日 本 労 働 研 究 雑 誌 』第 495 号 、
2001 年 10 月 、 3-18 頁 。
12
件の一致度にほとんど差が見られない。つまり、企業が提示する条件ではなく、
何か他のランダムな要素が採用を決定付けていることが推測できる。
このデータ分析からはこのほか、次のような事実を観察できる。
①企業は業種に関わりなく人材の調達を試みるが、求職者は過去に経験してきた
職種から応募先を決める
②求人企業が様々な募集条件を提示しながら、それらを重視していない
③公的資格と業種経験を除いて、条件が厳しくなると応募者数が減少する
④資格以外の募集条件は採用確率を高めないし、職種以外の条件一致度も採用確
率を高めない
⑤採用決定者の賃金決定に関して、職種と年齢の条件一致だけが賃金を高める効
果があり、それ以外の要素は賃金に影響を与えない
これらがあいまって、求人企業側と求職者側の双方に情報の非対称性を生み出
している。これが、人材のミスマッチがなかなか埋まらない原因だといえよう。
東アジアの労働者を活用しようという場合、こうした情報の非対称性によるミス
マッチの問題はますます深刻化するのではないだろう。
また、多くの研究者の見解として、情報の非対称性から起きる人材のミスマッ
チを埋めるのは「人脈」であるという議論がある。しかし、東アジアからの人材
調達を考えたとき、人脈頼りのマッチングが果たして機能するかどうかは疑問で
ある。
13
図1 職種別に見たスペックの一致度
0.8
0.6
0.4
0.2
職種一致
0
業種一致
経験一致
-0.2
資格一致
語学レベル
年齢一致
-0.4
面接不採用
技術系(大)
書類不採用
技術系(大)
採用
技術系(大)
面接不採用
IT系(大)
書類不採用
IT系(大)
採用
IT系(大)
面接不採用
営業系
書類不採用
営業系
採用
営業系
面接不採用
事務系
書類不採用
事務系
-0.8
採用
事務系
-0.6
5. IT 技 術 者 を ア ジ ア 地 域 に 求 め た 時 の 問 題 点
以 上 の 議 論 を 踏 ま え て 、企 業 が IT 技 術 者 を 東 ア ジ ア 地 域 に 求 め た 際 に 留 意 す べ
きことを以下に纏めよう。
ま ず 第 一 に 、自 社 製 品 の 特 質 や 経 営 戦 略 に 応 じ て 、ど の よ う な 人 材 を 求 め る か 、
とりわけ企業特殊的な人的資本が必要かどうかを検討しなければならないだろう。
第二に、海外からの人材調達には、短期的な視点と長期的な視点を併せ持つこ
とが必要である。短期的に見れば、海外に人材を求めることにより日本人への投
資を控えることは可能である。しかしその一方で、そうした人材が業務に必要と
する知識の形成や語学教育をどうするのかという問題が生じるだろう。さらに、
人材の移動に伴う知識の流出や公開をいかに防ぐかも課題となる。
第三に、国際労働の拡大に伴う社会的なコストであろう。この点は直接に上で
は議論していないが、ドイツの例でも明らかなように、海外の人材を受け入れて
も、社会の高齢化は免れられない。外国人労働者も高齢化するからである。国際
労働は、高齢化がもたらす人材不足の短期的な解決にはなっても、長期的な解決
策にはならない。
14
以 上 、IT 技 術 者 を 東 ア ジ ア 地 域 に 求 め た 際 に 考 え て お く べ き こ と に つ い て 、実
際のデータやその分析結果を参照しつつ、人材形成やジョブ・マッチングといっ
た観点から考察してきた。なかでも、企業が人的資本を必要としている業務は擦
り合わせ型なのかモジュール型なのかを認識しているか、国際労働に関する長期
的な展望を視野に入れているかどうかは重要なポイントである。
15
第 2章
ア ジ ア 各 国 に お け る IT 労 働 市 場 と 技 術 者 出 入 国
―現在および将来―
1. 全 体
2000 年 に IT バ ブ ル が 崩 壊 し 、 そ の 結 果 ア メ リ カ 経 済 さ ら に 国 際 経 済 に 低 迷 を
もたらしてきているといわれる。しかしながら、その崩壊の原因は、競争激化に
よる通信ビジネスにおける収益の悪化や関連する広告収入モデルの破綻等であっ
た 。逆 に こ の よ う な 中 で 、実 態 の 伴 わ な い バ ブ ル 的 な も の が 消 え 、IT や 関 連 ビ ジ
ネスの本質が明らかになり、その本来の意味での本格化が始まっていくと予想さ
れるところである。
そ の よ う な 中 、今 後 と も IT 人 材 の 需 要 は ま す ま す 増 加 し て い く も の と 考 え ら れ
る。また実際に世界、特にアジアにおける多くの国々や地域は、その増加を予測
し て い る 。そ れ ら の 国 々 や 地 域 は 、そ の 濃 淡 は あ る も の の 、IT や e ビ ジ ネ ス 等 に
今後の大きな可能性を見出し、積極的な政策を打ち出してきている。そして、そ
の 政 策 を 実 現 し て い く た め に も 、IT を 担 う 人 材 の 育 成 と 確 保 が 重 要 な ポ イ ン ト に
なってきているといえる。その育成と確保は、単に自国あるいは自地域内だけで
完結するものではなく、アジア、さらにアメリカを中核として全世界的な広い視
野 か ら 考 え て い か な い こ と に は 、 自 国 あ る い は 自 地 域 の IT 産 業 、 ま た 各 企 業 の
IT 事 業 は 立 ち 行 か な い こ と は 明 確 な こ と で あ る 。ま た そ の よ う な 視 野 か ら 、単 な
る政策だけではなく、それと相まって海外からの注目を集められる「魅力ある」
国 や 地 域 の み が 、IT 人 材 の 育 成 と 確 保 が で き て 、成 功 し 先 行 し て き て い る と い え
よう。
ま た 、IT に お け る 大 き な 成 功 事 例 で あ る ア メ リ カ( 特 に シ リ コ ン バ レ ー )を 見
た時に、そこにおけるインド人や中国人(華人)の活用を考えざるを得ない。そ
し て 、 以 下 で 説 明 す る 各 国 別 の IT 人 材 や IT 労 働 市 場 を み て も わ か る よ う に 、 そ
れらのインド人や中国人が自国(地域)またはアジアの国々(地域)に戻り、そ
こ で 活 躍 し 始 め て い る 状 況 が 生 ま れ て き て い る 。こ の よ う の 観 点 か ら 、IT 人 材 の
今 後 を 考 え て い く 場 合 に 、ア ジ ア と い う も の を 一 つ の IT 労 働 市 場 と 考 え て 、そ の
視 点 か ら IT 人 材 を と ら え 直 し て み る こ と は 意 味 の あ る こ と で あ る 。ま た 、そ の 観
点 か ら 日 本 の IT 労 働 市 場 を 考 え て み る こ と は 重 要 で あ ろ う 。
16
そ の 場 合 、「 ア ジ ア の IT 労 働 市 場 」 に お い て は 、 全 体 と し て い く つ か の 潮 流 と
でもいうべき特徴が存在しているといえる。
ま ず 第 一 に 、 IT 人 材 の 需 要 は 高 ま る と 認 識 さ れ て い る 。 し か も 、 高 水 準 の IT
人材は、どの国・地域も現在も不足がちで、今後ますますその傾向は強まると予
想されるところである。そのため、各国ともその人材の育成・確保の施策をとっ
て い る と こ ろ が 多 い 。日 本 も 外 国 人 IT 人 材 の 確 保 の た め に 、受 け 入 れ 手 続 き の 簡
素 化 や ア ジ ア 各 国 と の IT 技 術 者 試 験 相 互 認 証 制 度 の 提 案 を 行 っ た り し て き て い
る 。IT 人 材 の 育 成・確 保 の 施 策 に お い て 、最 も 先 行 し 成 功 し て い る の は シ ン ガ ポ
ールである。
第 二 に 、「 ア メ リ カ 」の 存 在 で あ る 。こ れ に は 、2 つ の ポ イ ン ト が あ る 。IT バ ブ
ルの崩壊等の様々な理由から、アメリカのシリコンバレーなどから、アジアの人
材 が 還 流 し て い る こ と で あ る 。こ れ ら の 人 材 が 、ア ジ ア の 国・地 域 で の IT 産 業 の
発展に貢献している。その明確な例として、インド、中国、台湾などがあげられ
る 。 他 方 、 ア ジ ア の IT 人 材 の 多 く に と っ て 、 ア メ リ カ は 憧 れ の 雇 用 の 場 で あ り 、
現 在 も 多 く の ア ジ ア の IT 人 材 が 、ア メ リ カ に 流 れ て い る 。そ の よ う な 人 材 流 出 の
多い国は、中国、インド、フィリピンなどである。
第 三 に 、「 中 国 」の 存 在 で あ る 。市 場 経 済 化 の 高 ま り と 経 済 の 拡 大 化 の 中 に お い
て 、 IT だ け に 限 ら ず 、 中 国 が 大 き な 意 味 を 持 ち 始 め て き て い る 。 そ の よ う な 中 、
欧 米 先 進 国 ば か り で は な く 、ア ジ ア の 各 国・地 域 も IT 産 業 や そ れ に 関 わ る 人 材 を
含めて、さまざまな面で「中国」というものを視野に入れて政策を策定、実施し
なければならない状況になっている。また、海外のヒアリングでも、各国、地域
とも「中国」の存在を強烈に意識しているという感触を得ている。
四 番 目 は 、「 人 的 ネ ッ ト ワ ー ク 」の 問 題 で あ る 。こ れ は 先 に 述 べ た こ と と も 連 動
す る こ と で あ る が 、ア ジ ア に お け る IT 産 業 の 隆 盛 は 、後 述 さ れ る 各 国・地 地 域 で
の IT 人 材 に 関 し て 述 べ ら れ る シ リ コ ン バ レ ー や 留 学 等 で 形 成 さ れ た ア ジ ア 人 の
人的ネットワーク、華僑ネットワーク、印僑ネットワークなどが、インターネッ
トという国境を容易に超えられるツールを活用して初めて生まれたものである。
IT は イ ン タ ー ネ ッ ト と い う「 ネ ッ ト 」を 中 核 と し て い る 構 築 さ れ て い る わ け で あ
る が 、人 的 ネ ッ ト ワ ー ク が IT 人 材 に お い て 重 要 な 意 味 を 有 し て い る こ と は 決 し て
偶然ではない。別の言い方をすれば、強力な人間的な結びつき(人的ネットワー
17
ク)の土台があってはじめて、国境や地理的な制約を克服でき、バーチャルなネ
ッ ト( イ ン タ ー ネ ッ ト )を 本 当 の 意 味 で 活 か し て い け る 。後 者 だ け が 存 在 し て も 、
機能しないのである。その 2 つの「ネット」が共に存在し、相互補完されて、は
じ め て「 ア ジ ア の IT 革 命 」と い わ れ る IT 産 業 の 隆 盛 が 起 き て き て い る と い え る 。
ま た 、そ の よ う な ネ ッ ト ワ ー ク を 有 す る 国・地 域 が 、特 に IT に 関 し て 急 速 な 発
展 を 遂 げ て き て い る か 、あ る い は そ の 発 展 の ポ テ ン シ ャ ル を 有 し て い る と い え る 。
五 番 目 は 、 IT の 特 性 の 問 題 で あ る 。 こ の 問 題 は 四 番 目 と も 関 わ る 問 題 で あ り 、
ア ジ ア に だ け 関 わ る こ と で は な い が 、 IT 人 材 や IT 企 業 の 活 動 の 仕 方 が 従 来 の そ
れらとかなり異なることである。その特性は、柔軟性とスピード性である。その
た め 、従 来 の よ う に 個 々 の IT 人 材 が 、従 来 の よ う に 一 箇 所 で 業 務 を 行 う の で は な
く、必要に応じて最大の成果を上げられるように活動拠点を変えていけるような
体制が場合により必要であること。時間、スピードこそがまさに成功の秘訣であ
る。これらのために柔軟にスピーディに動き、決定し、変化していける人材や組
織が必要なのである。そのためには、市場における競争性などの環境がそれらを
育てていくために必要であり、アジアでもそれらの環境が整備されているところ
の 方 が 一 般 的 に IT 産 業 が 成 功 し て き て い る 。
最 後 に 、 日 本 の 問 題 が あ る 。「 ア ジ ア に お け る IT 労 働 市 場 」 と い う 中 で 、 日 本
の IT 労 働 市 場 の 意 味 が 、相 対 的 に 沈 下 し て き て い る と い う こ と が 危 惧 さ れ る と こ
ろである。これには、4 つのポイントが指摘できよう。日本は、アジア経済の隆
盛の牽引車だといわれてきた。しかし、先述したようにアジアにおける中国の意
味の高まりと日本経済の長期化する低迷の中で、日本への期待と関心は低下して
き て い る 。本 来 イ ン ド な ど も 、IT に 関 し て 日 本 と の 協 力 等 に お い て 期 待 が 大 き か
ったが、日本の対応スピードの遅さゆえに、その期待感がにわかに下がってきて
い る 。逆 に 、シ ン ガ ポ ー ル 、イ ン ド 、台 湾 な ど が 、特 に IT に 関 し て 、中 国 と の 関
係 の 深 化 に 向 け て の 動 き が み ら れ る 。ま た 中 国 人 の IT 人 材 に と っ て も 、日 本 で の
雇用機会への意欲が高かったが、様々な理由からその意欲は最近急速に下がって
きている。最後は、先に述べた「人的ネットワーク」の問題である。日本人、日
本 社 会 は 、特 に IT 人 材 の 国 際 的 ネ ッ ト ワ ー ク を 形 成 し て き て い な い 。そ の 意 味 で 、
IT 人 材 の 確 保 や 活 用 に お い て 、 日 本 は 不 利 な 立 場 に あ る と い え る 。
18
2. 中 国
現 在 IT 分 野 の 技 術 者 、特 に Web 系 エ ン ジ ニ ア の 不 足 は 、世 界 的 現 象 で あ る 。欧
米 有 力 企 業 は 既 に 、IT 技 術 者 向 け の 受 け 入 れ 枠 の 大 幅 緩 和 な ど に よ っ て 、優 秀 な
海 外 の 頭 脳 を 獲 得 す べ く 全 力 を 注 い で い る 。必 要 な IT 技 術 者 を 獲 得 で き な け れ ば 、
企業における成長は限界に達してしまうという危機意識が生まれているのである。
そのため、特にインドや中国をはじめとするとする海外の国々の優れた理工系の
人材を獲得しようとして、各企業は積極的に動いている。
( 1) 現 状 と 課 題
IT 人 材 の 世 界 的 な 不 足 状 況 の 結 果 、 中 国 で は 、 国 内 で は IT 人 材 は も と も と 明
らかに不足しているが、それに加えて、人材の流出も深刻化している。国内に残
る IT 人 材 も 外 資 系 企 業 の 高 賃 金 ( 国 内 企 業 の 約 5 倍 ) の 誘 惑 に 直 面 し 、 い か に
IT 人 材 を 確 保 す る か が 急 務 と な っ て い る 。 た だ し 、 人 材 の 流 出 ば か り で は な く 、
日米欧からの「頭脳還流」現象も起きてきている。
中 国 で は 、ア メ リ カ へ の 留 学 希 望 者 が 多 い が 、10 年 前 く ら い に 海 外 に 出 た 海 外
経験をもった人材がここ数年中国に戻ってビジネスをしている。欧米流のビジネ
ス 経 験 を 持 つ 人 材 が 、中 国 経 済 の 活 性 化 に 貢 献 し て い る と い え る 。「 中 関 村 サ イ エ
ンス・パーク」を例にすれば、近年、同パークへの外国留学経験者の回帰が目立
つ 。 2000 年 末 ま で に 、 海 外 か ら 中 関 村 に 戻 っ て き た 留 学 経 験 者 は 2000 人 で 、 そ
の う ち の 50% は 2000 年 一 年 間 に 帰 国 し た も の で あ り 、 60% は Ph. D 取 得 者 で あ
る 」 1。
ま た 、米 欧 日 の 多 国 籍 企 業 は 中 国 に 相 次 い で 研 究 開 発 組 織 を 設 立 し 、IT 人 材 の
獲 得 競 争 を 繰 り 広 げ て い る 。 WTO 加 盟 に よ っ て 、 今 後 い っ そ う 外 資 系 企 業 の 市 場
参入が加速化すると見られている。
た と え ば 、 マ イ ク ロ ソ フ ト は 1998 年 に 8000 万 米 ド ル を 投 資 し 、 イ ギ リ ス の ケ
ンブリッジに次いで 2 番目の海外研究所であるマイクロソフトの中国研究所を北
京 に 設 立 し た 。 さ ら に 2001 年 、 4000 万 ド ル を 追 加 投 資 し 、 上 海 に 設 立 し た マ イ
クロソフトのアジア技術センターの規模を倍以上に拡大した。これまで、マイク
1
寺 島 [2001]や ア ジ ア IT ビ ジ ネ ス 研 究 会 編 [2001 ]な ど を 参 照 。
19
ロソフトは中国で 4 つの現地企業を設立したが、そのうちの 3 つは研究開発型企
業である。
マ イ ク ロ ソ フ ト に 先 立 ち IBM は 、す で に 1995 年 に IBM 中 国 研 究 セ ン タ ー を 発 足
さ せ て お り 、2000 年 末 に は 上 海 の 浦 東 で ソ フ ト 開 発 セ ン タ ー を 設 立 し た 。欧 米 系
の多国籍企業は競い合うように、中国で相次ぎ研究開発組織を設立し、現地の博
士、修士等の高学歴者を研究スタッフとして採用している。
北 京 の 政 府 系 組 織 が 発 表 し た レ ポ ー ト 2 は 、「 多 国 籍 企 業 が 中 国 で R&D( 研 究 開
発 )を 設 立 す る 狙 い は 現 地 に お け る 高 品 質 低 コ ス ト の 研 究 開 発 人 材 の 確 保 に あ る 」
と 分 析 し 、「 多 国 籍 企 業 の R&D 組 織 の 展 開 は 、中 国 の 科 学 研 究 や 教 育 シ ス テ ム に 大
きな衝撃を与え、人材流出にさらに拍車をかける」と憂慮している。中国トップ
レ ベ ル に あ る 清 華 大 学 や 北 京 大 学 で の ハ イ テ ク 専 攻 の 卒 業 生 の う ち 実 に 82% と
76%が 、 ア メ リ カ に 流 出 し た と い う 統 計 が あ る 。 シ リ コ ン バ レ ー に は 、 20 万 人 の
エンジニアがいるが、そのうちの約 3 分の 1 である 6 万人が中国人である。日本
に も 毎 年 8000 人 の 中 国 人 エ ン ジ ニ ア が 流 れ て き て い る 。
こ の よ う な IT 人 材 の 海 外 流 出 が あ り 、そ れ に 加 え て 先 述 し た よ う に 、多 国 籍 企
業 が 中 国 で R&D 組 織 を 設 立 し て お り 、中 国 の IT 人 材 は 、国 内 に い な が ら も 欧 米 系
企業の中で働くようになっている。
また、欧米系企業には遅れたといわれるが、広い意味では、日本企業も中国の
IT 人 材 の 獲 得 に 努 め て き て い る 。 例 え ば 、 富 士 通 や NEC な ど の 大 手 企 業 が 、 90
年 半 ば ぐ ら い か ら 会 社 、研 究 所 、研 究 セ ン タ ー 等 を 設 立 し て き て い る 。最 近 で は 、
例 え ば 2001 年 2 月 、松 下 は 北 京 に 研 究 開 発 セ ン タ ー を 設 立 し 、5 年 以 内 に 現 地 人
研 究 開 発 ス タ ッ フ を 1500 人 ま で に 拡 大 す る 計 画 を 発 表 し た 。さ ら に 、北 京 だ け で
は人材が集まらないということで、日本企業も最近は南京、大連、西安等の地方
都 市 に も 、会 社 や 開 発 セ ン タ ー な ど を 設 立 し 、中 国 人 の IT 人 材 を 活 用 し て い る 3 。
つ ま り 、中 国 に い る か ど う か は 別 と し て も 、か な り の 中 国 IT 人 材 が 海 外 特 に 欧 米
を中心とした企業で働いていることになり、広い意味も含めた人材の「流出」が
起きているといえる。
2
3
海 外 労 働 時 報 [2001 年 9 月 ]を 参 照 。
『 日 経 産 業 新 聞 』 2002 年 2 月 28 日 付 等 を 参 照 。
20
現 地 で の ヒ ア リ ン グ に よ れ ば 、「 NEC 系 の 企 業 で あ る 日 電 系 統 集 成( 中 国 )の 場
合 、大 卒 採 用 は 3,500 元 /月( 56,000 円 )。30 歳 モ デ ル 賃 金 は 8,000 元 /月( 128,000
円 )か ら 10,000 元 /月( 160,000 円 )に 上 昇 し て い る 。中 国 の 平 均 給 与 は 1,000-2,000
元 /月 ( 16,000-32,000 円 )。 IT 関 連 の 職 種 の み が 急 激 に 賃 金 が 上 昇 し て い る 。 労
働コストは日本の技術者の 3 分の 1 である」という。
ま た 、中 国 の 30 数 ヵ 所 の 一 流 大 学 に は 、外 資 系 企 業 が 関 与 し た 奨 学 金 制 度 が 設
けられている。そのうち約半分の大学では、卒業生の進路が奨学金を提供する外
資 系 企 業 の 意 向 に よ っ て 左 右 さ れ て お り 、IT 人 材 の 青 田 刈 り が 行 わ れ て い る と い
える。
中 国 人 の IT 人 材 に と っ て 、こ の よ う な 外 資 系 研 究 開 発 組 織 の 魅 力 は 報 酬 な ど の
処遇面はいうまでもなく、オープンな環境や優秀な研究者や資金も含めてチャレ
ンジングな研究が可能となる人の使い方など経営理念の魅力も大きいといえる。
し か し 、 中 国 社 会 科 学 院 の 専 門 家 は 、 多 国 籍 企 業 に よ る 研 究 開 発 組 織 設 立 が 、 IT
人材により良い仕事のチャンスを与え、彼らの選択の幅を広げていると認めなが
ら も 、中 国 国 内 の IT 産 業 発 展 の た め に は 、国 家 や 国 内 企 業 の 人 材 確 保 の 方 策 を 立
て る 必 要 が あ る と 指 摘 し て い る 4。
そこで、中国国内で行われている人材確保のために実施されている方策につい
て述べておこう。
北 京 市 は 中 国 最 大 の ソ フ ト 産 業 基 地 の 建 設 に 取 り 組 ん で い る 。 そ の た め 、 2001
年 2 月にソフトの人材の導入と育成を含めた一連の優遇政策を発表した。北京市
の目標は、国内におけるソフト産業に立地の優位性を確保し、世界の先端技術に
近づけようというものである。
そ の IT 人 材 の 誘 致 の 主 な 施 策 内 容 と し て は 、次 の よ う な も の が あ げ ら れ て い る 。
―大卒以上の学歴および専門技術資格を有する北京市以外の居住者が北京市内の
ソ フ ト 産 業 基 地 や ソ フ ト ウ ェ ア 企 業 に 就 職 す る 場 合 、戸 籍 上 の 移 動 制 限 は な く 、
北京市への移住許可を本人とその家族に対して与えることとする。
―ハイテクのベンチャー企業の追加投資を実施者、さらに住宅や自家用車の初購
4 海 外 労 働 時 報 [中 国 、 2001 年 9 月 ]。
21
入者となる技術人材に対して、市財政から特別補助を行う。その補助額は受給
額 個 人 前 年 所 得 税 の 80%を 上 限 と す る 。
― 国 有 株 式 会 社 は 、 毎 年 度 の 利 潤 の 中 か ら 総 額 の 35%を 上 限 と す る 金 額 を 引 き 出
し、ストック・オプションの形で経営管理者や技術者に支給できる。
―ソフトウェア企業が海外の留学生や外国人によって開設される場合は、国や北
京市のすべての優遇政策が適用される。
北京大学企業研究センターがソフトウェア・エンジニアを対象に実施したアン
ケ ー ト 調 査 に よ る と 、 約 30%の ソ フ ト ウ ェ ア ・ エ ン ジ ニ ア が ア メ リ カ で 働 く 希 望
をもっている。北京大学や清華大学等トップレベル大学出身のソフトウェア・エ
ン ジ ニ ア の 中 で は 、こ の 割 合 が さ ら に 約 40%に 上 が る 。現 在 、中 国 本 土 で 約 20 万
人 の IT 人 材 が 不 足 し て い る 。そ れ と は 対 照 的 に 、ア メ リ カ で は 、IT 人 材 の 約 50%
は中国とインドなどから来ている。人材流出の問題はしばらく解消できないよう
である。
と こ ろ で 、日 本 政 府 も こ の 問 題 を 重 視 し て お り 、森 前 首 相 が 2000 年 夏 の イ ン ド
訪 問 に あ た り 、同 国 か ら の IT 技 術 者 受 け 入 れ を 促 進 し て い く 旨 を 表 明 し た 。ま た
朱 鎔 基 中 国 首 相 が 同 年 10 月 に 来 日 し た が 、 財 界 か ら の 要 望 に 応 え る 形 で 中 国 人
IT 技 術 者 受 け 入 れ 手 続 き の 簡 素 化 を 同 首 相 に 約 束 し た 。個 別 企 業 、あ る い は 大 手
人 材 派 遣 会 社 5 な ど に お い て 、イ ン ド や 中 国 か ら の IT 技 術 者 受 け 入 れ 促 進 に 向 け 、
積極的な動きを見せ始めている。
日 本 国 内 の「 IT 人 材 難 」は ま す ま す 深 刻 化 し つ つ あ る 。こ う し た 中 で 、中 国 人
技術者の雇用に関して、国内業界の関心は高まってきている。しかし、日本社会
の物価高、先の欧米企業での勤務と比較したときの日本企業および社会での執務
環 境 を は じ め と す る 日 本 国 内 で の デ メ リ ッ ト の た め 中 国 IT 人 材 の 招 聘 は そ れ ほ
ど 容 易 で は な い し 、ま た そ れ ら の 状 況 の 中 で 、中 国 IT 人 材 に 中 に も 、以 前 に 比 べ
ると近年日本に来たいというインセンティブは下がってきているという話もでて
きている。
5
パソナテックやインテリジェンスなど。
22
( 2) そ の 他
中 国 で は 、2002 年 に 、IT 人 材 育 成 の た め の 教 育 機 関 の 設 置 に 関 し て 規 制 を な く
し、民間部門が自由に教育機関を作れるようにした。労働部はマイクロソフトと
提携して教育センターを設置した。日本の機関とも協力して電子教育センターを
設 置 し た 。コ ン ピ ュ ー タ 、ソ フ ト ウ ェ ア の 短 大 、専 門 学 校 も 設 置 す る 予 定 で あ る 。
ただし、マイクロソフトの受講者は、アメリカとの賃金格差から、アメリカに渡
航 し て し ま う ケ ー ス も 多 い と い う 6。
3. 香 港
香 港 は サ ー ビ ス 産 業 に 従 事 す る 労 働 者 が 全 体 の 85%を 占 め て い る が 、 IT 産 業 の
生産部門の人材は少ない。
( 1) 現 状 と 課 題
香 港 特 別 行 政 区 ( The Hong Kong Special Administrative Region、 SAR) 及 び
その政府は、香港における高付加価値経済への進展を持続させるために、情報技
術部門の潜在的な主要な役割を明確に認識している。また、必ずしも大きな成果
を 上 げ て い る と は い え な い が 、政 府 は 2000 年 は じ め か ら 高 水 準 の 人 材 導 入( 特 に
中国から)政策を推進してきている。
ま ず 、IT 人 材 の 現 状 を み る た め に 、香 港 の ソ フ ト ウ ェ ア 企 業 に お け る 従 業 員 に
ついてみてみよう。同企業および従業員は、次のように順調に拡大している。
香港におけるソフトウエア企業の従業員数と企業数の推移
年
1994
1997
1999
従業員数(人)
8500
12000
15000
ソ フ ト ウ ェ ア 企 業 数( 社 )
500
663
725
出 所 : The Software Industry Information Center (SIIC)2000 Manpower Study
in Hong Kong Software Industry, 2000/3.
6
現地でのヒアリングより。
23
財 政 サ ー ビ ス 事 務 局 ( Financial Services Bureau)、 教 育 労 働 力 局 ( Education
and Manpower Bureau) お よ び 政 府 統 計 局 ( Census and Statistics Department)
が 、合 同 報 告 書 に お い て 、2005 年 の 労 働 力 に 関 す る 見 積 も り を 予 測 し て い る 。そ
れによると、次のような予測が出ている。
情 報 技 術・技 能 の 要 員 は 1999 年 か ら 2005 年 の 間 に 5 万 人 か ら 9 万 8200 人 へ と
ほぼ倍増することが予想される。
主 要 経 済 部 門 の 内 で 、IT 集 約 型 の ニ ュ ー・エ コ ノ ミ ー 産 業 は 、将 来 の 必 要 人 員
の点で高成長する可能性があると思われた。
通信及びインターネット・サービス産業の予測では、この産業に関わる実際の
要 員 数 が 1999 年 で 3 万 1700 人 で あ る も の が 、2005 年 に は 5 万 5400 人 に 増 加 し 、
そ の 間 に 2 万 3700 人 増 加 の 見 込 み で あ る 。
こ の よ う に 、通 信 及 び イ ン タ ー ネ ッ ト・サ ー ビ ス 産 業 は 、IT 集 約 型 の 香 港 経 済
活動の標準化部門として、その 5 年間で、香港で最も雇用を生み出していく可能
性 を 有 す る 10 の 産 業 の 一 つ と 予 測 さ れ る 。
香 港 で は 、こ れ ら の IT の 中 心 産 業 と そ の 労 働 力 及 び 雇 用 の 成 長 と 共 に 、産 業 と
通 商 に お け る 広 い 領 域 で の 職 業 で 、 IT 部 門 に 付 随 す る 成 長 も あ っ た 。 香 港 で も 、
IT 労 働 者 に よ る 新 し い 知 識 的 産 業 は 急 速 に 成 長 し て い る わ け で あ る が 、香 港 職 業
訓 練 局 の 労 働 力 調 査 に お け る そ の 知 識 的 産 業 は 、「 IT 管 理 、 ア プ リ ケ ー シ ョ ン ・
システム開発、インターネット/マルチメディア・コンテンツ開発、通信および
ネットワーキング、データベース、システム・プログラミング、ハードウェア支
援 、シ ス テ ム 運 営 、情 報 技 術 教 育 お よ び 訓 練 、そ し て 情 報 技 術 研 究 及 び 製 品 開 発 」
に関連する仕事と定義されている。
IT 職 業 の 中 で 、イ ン タ ー ネ ッ ト と マ ル チ メ デ ィ ア・コ ン テ ン ツ の 開 発 で の 専 門
的 技 能 に 関 す る 人 材 数 は 、 2000 年 3 月 か ら 2001 年 3 月 の 一 年 間 に 48% と い う 最
も 高 い 増 加 を 記 録 し た と 思 わ れ る 。 IT 教 育 活 動 の 人 材 が 、 そ れ に 次 ぎ 同 期 間 に
18% の 増 加 が 予 測 さ れ た 。 し か し 、 情 報 技 術 管 理 、 シ ス テ ム 分 析 、 プ ロ グ ラ ミ ン
グ、アプリケーション、データベース設定、ハードウェア支援など情報技術関連
の 他 の 職 業 技 能 で の 人 材 数 の 増 加 は そ れ ほ ど 早 く な く 、年 間 約 1∼ 6% の 緩 い ペ ー
ス で 増 加 す る と 思 わ れ る 。 IT 職 の た め の こ れ ら の 新 し い 仕 事 の 産 業 配 分 は 2005
年 の 人 材 報 告 で の 予 測 の よ う に 、よ り 一 層 サ ー ビ ス 産 業 に 集 中 す る と 考 え ら れ る 。
24
な お 、こ こ で い う サ ー ビ ス 産 業 と は 、「 金 融 、保 険 、不 動 産 及 び ビ ジ ネ ス・サ ー ビ
ス 」( 1999-2005 年 の 期 間 で 合 計 1 万 8000 人 の 新 規 雇 用 を 期 待 )、 そ し て 「 卸 売 ・
小 売 お よ び 輸 出 入 業 、 レ ス ト ラ ン お よ び ホ テ ル 」( 同 期 間 に お い て IT 人 材 と し て
約 1 万 6600 人 の 雇 用 が 生 ま れ る と 予 測 ) な ど で あ る 7 。
こ れ ら の IT 人 材 は 、学 歴 や 人 材 の 不 足 等 を 含 め 相 当 な エ リ ー ト 主 義 者 で 、新 し
い「労働貴族」であるといえよう。つまり関連業界の発展と成長につれ、技能者
が相対的に不足し、また通常は(技術的専門的な)職業知識習得のために高等教
育を受けており、彼らは労働市場で高い賃金と魅力的なさまざまなインセンティ
ブの提供という特権的な立場を享受できるのである。
ハ イ テ ク・ネ ッ ト 企 業 は 、金 融 資 本 市 場 ブ ー ム の 絶 頂 の 時 期 に は 、IT 人 材 を 求
めて激烈な競争を繰り返していた。ストック・オプションやボーナス株の形で雇
用 人 材 へ の 手 取 報 酬 パ ッ ケ ー ジ の 一 部 を 形 成 し 、IT 雇 用 人 材 に 従 業 員 持 ち 株 制 度
を提供する戦略で競っていた。しかし、サイバー・ネットおよびウェブ・サイト
取 引 の ビ ジ ネ ス は 、急 成 長 産 業 で は あ る が 、そ れ が 本 来 有 す る 移 り 気 な 側 面 が 多 々
あ り 、 ま た 過 膨 張 の 可 能 性 と い う リ ス ク が あ っ た 。 そ し て 、 2000 年 後 半 か ら IT
業界は、それらの要素のゆえに苦しみ始めた。その結果、多くの電子ベース・ビ
ジネスが閉鎖したり、少なくとも活動および雇用を部分的に削減したりせざるを
得 な く な っ た 。さ ら に 2000 年 末 に は 、多 く の ト ッ プ・ビ ジ ネ ス 企 業 に お け る 大 量
レ イ オ フ お よ び 縮 小 が 起 き た 。こ の た め 、エ リ ー ト で あ る 香 港 の IT 職 の 身 分 を 低
下させたといえる。
ま た シ ン ガ ポ ー ル で は 、外 国 人 IT 人 材 の 獲 得 、導 入 に 成 功 し て い る と い わ れ て
い る が 、そ れ と は 対 照 的 に 、香 港 で は 現 在 の と こ ろ 、中 国 本 土 か ら の IT 人 材 の 導
入にも成功していず、香港の今後の課題の一つであるといえよう。
( 2) そ の 他
以 上 の よ う な 状 況 か ら 、香 港 は 、そ の 地 域 が 狭 い こ と も あ り 、IT 労 働 者 に 限 ら
ず、人材育成に関しては日本以上に危機感を抱いている。技術集約型産業へのシ
フトを図っている。
7 以 上 、 日 本 労 働 研 究 機 構 [2001](『 海 外 労 働 時 報 』)、 18-21 頁 を 参 照
25
政 府 支 援 の ト レ ー ニ ン グ セ ン タ ー は 、 以 下 の 通 り で あ る 8。
・ Electronics Industry Training Center: 実 践 的 な ト レ ー ニ ン グ を 提 供 。
・ Electronic Manufacturing Automation Workshop(EMAW): 電 子 産 業 の ト レ ー ニ
ン グ ・ セ ン タ ー 1991 年 設 立 。
・ Electronic Design Technology Training Center(EDTTC): 1990 年 に 職 業 訓 練
Council が 5 つ の 第 三 機 関 と 産 業 界 と 協 力 し て 設 立 。 こ こ 数 年 は ネ ッ ト ワ ー キ
ン グ 、 IC、 部 品 、 コ ン ピ ュ ー タ の 分 野 に 専 念 。
・ New Technology Training Scheme: 職 業 訓 練 Council が 香 港 に あ る 企 業 の た め
に提供。
・Vocational Institutions:Hong
Kong
Polytechnic
University、香 港 大 学 、
the Vocational Training Council’ s Hong Kong Institute of Vocational
Education が 短 期 、 フ ル タ イ ム 、 パ ー ト タ イ ム の プ ロ グ ラ ム を 提 供 。
4. 韓 国 9
( 1) 現 状 と 課 題
韓国でも、高水準の技能を有する専門職は足りず、そのような人材に対する需
要 が 急 増 し 、特 に IT 関 連 分 野 で の 増 加 が 見 込 ま れ 、そ の 分 野 の 人 材 の 雇 用 は 急 増
する傾向がみられ、さらに加速度的に進行すると予想される。ただし、現地のヒ
ア リ ン グ に よ れ ば 、コ ス ダ ッ ク 市 場 の バ ブ ル で 、高 水 準 で な い IT 人 材 は 余 っ て い
る と い う 10 。
技能レベルに基づいた労働需要予測によると、今後は技能労働者に対する需要
が急増するものと考えられている。つまり専門教育による技能を要する仕事の割
合 は 、現 在 の 18.6% か ら 2001 年 か ら 2005 年 の 今 後 5 年 間 で 19.1% に 増 大 す る と
見 込 ま れ る 。 産 業 別 で は 、 表 1 の よ う に 、 2000 年 か ら 2010 年 の 期 間 で 、 製 造 部
門全体では、絶対数はわずかながら増えているが、雇用増加率は低下している。
同 期 間 に お い て 、 IT お よ び 高 位 技 術 製 造 部 門 は 年 2.15% の 増 大 が 考 え ら れ る が 、
中低位および低位技術(別の言い方をすれば、既存の一般生産技術による)製造
8 職 業 訓 練 局 「 2000 年 度 電 子 業 人 力 調 査 」 を 参 照 。
9
日 本 労 働 研 究 機 構 [2001]、 6 頁 。
10
し か し 2000 年 か ら 2005 年 ま で に 、20 万 人 の IT 人 材 が 不 足 す る と 予 測 さ れ て い る( ヒ ア リ ン グ よ り )。
26
部門の雇用数は、引き続き低下していくものと考えられる。つまり、同期間にお
け る 雇 用 の 増 大 は 、IT お よ び 中 高 位 技 術 製 造 業 に よ っ て も た ら さ れ る と 予 想 さ れ
る。
<表 1> 製 造 業 技 術 水 準 別 の 就 業 者 数 の 見 込 み
IT お よ び 中 高 位 技 術 製 造
業
中低位技術製造業
低位技術製造業
全体
2000
1,516
(36.0)
1,065
(25.3)
1,630
(38.7)
4,213
(100)
2005
1,728
(39.4)
1,079
(24.6)
1,579
(36.0)
4,388
(100)
(単 位 : 千 人 , %)
2010
1,877
(42.6)
1,027
(23.3)
1,502
(34.1)
4,406
(100)
年平均増加率
2.15
-0.37
-0.81
0.45
資料 : カン・スン・ヒ、リ・ビョン・ヒ、チョン・ビョン・ユ、チェ・カン・シ
ク 、 チ ェ ・ キ ョ ン ・ ス 『 知 識 経 済 と 人 力 需 要 の 展 望 』 韓 国 労 働 研 究 院 , 2000
年。
<表 2 > サ ー ビ ス 業 知 識 集 約 別 の 就 業 者 数 の 見 込 み
知識基盤
サービス業
一般サービ
ス業
全体
2000
4,050
(26.4)
11,291
(73.6)
15,341
(100.0)
2005
4,637
(26.8)
12,667
(73.2)
17,304
(100.0)
2010
5,235
(26.9)
14,226
(73.1)
19,461
(100.0)
(単 位 : 千 人 , %)
年平均増加率
2.60
2.34
2.40
資 料 : カ ン・ス ン・ ヒ 、リ・ビ ョ ン・ヒ 、チ ョ ン・ ビ ョ ン・ユ 、チ ェ・カ ン・ シ ク 、
チ ェ ・ キ ョ ン ・ ス 『 知 識 経 済 と 人 力 需 要 の 展 望 』 韓 国 労 働 研 究 院 , 2000 年
<知識基盤産業の就職者推移>
1993
1997
1998
1999
製 造 業 4677
28.5
4481
24.0
3897 22.3
3956
サービス業 11749
71.5
14212
76.0 13594 77.7 13810
知識基盤産業 3643
22.2
4514
24.2
4449 25.4
4493
知識基盤製造業
965
5.9
1061
5.7
957
5.5
968
16.3
3452
18.5
3492 20.0
3524
知識基盤サービス業 2677
資料 : カン・スン・ヒ、リ・ビョン・ヒ、チョン・ビョン・ユ、チェ・カン・シク、チェ・キョン・ス
『知識経済と人力需要の展望』、韓国労働研究院, 2000.
*R&D集約度と知識勤労者の比重を基準にして知識産業を分類。
27
22.3
77.7
25.3
5.5
19.9
表 2 からもわかるように、サービス産業は全体として雇用増加が見込まれる。
そ の う ち 、 知 識 集 約 型 サ ー ビ ス 部 門 で は 、 2000 年 か ら 2010 年 ま で の 期 間 に お い
て 、2.60% の 増 加 率 が 見 込 ま れ る 。そ の 数 字 は 、一 般 サ ー ビ ス 部 門 の 年 率 2.34%
の増加率よりも高いものである。
こ の よ う な 傾 向 に あ る 韓 国 の IT 人 材 な ど の 雇 用 傾 向 に 対 し て 、次 の よ う な 指 摘
が あ る 。在 ソ ウ ル の 日 系 シ ン ク タ ン ク に よ れ ば 、「 電 子 製 品 生 産 拠 点 と し て の 韓 国
の 強 み は 、 技 術 系 人 材 の 育 成 が 進 ん で い る こ と 」 11 で あ る 。 こ れ は 、 韓 国 が 国 内
技術者のレベル向上に長い間の努力を重ねてきており、豊富な若手技術者の供給
ができるようになってきているからである。そして、韓国は他の先進国に比べれ
ば技術系の人件費が安価で済むと共に、自力で開発・設計を行う上で必要な部品
や材料を国内で調達しかつコスト・メリットのある環境を享受できるようになっ
たからである。
他方、韓国政府自体は、将来における高級な人材獲得において危惧を抱いてい
る 12 。 高 度 化 す る 経 済 や 急 進 展 す る IT 技 術 等 の 状 況 、 そ れ に 伴 う IT 等 先 端 分 野
における人材需要の爆発的増加の中で、米国をはじめとする他国は、永住権付与
などで高級人材の獲得に全力を注いできている。また、韓国は従来産業技術分野
に 集 中 的 に 投 資 し て き た が 、そ の よ う な 高 級 人 材 育 成 の 体 制 が 整 備 さ れ て お ら ず 、
量的成長は達成してきたが、それと比較して、国家の競争力を主導する高級な人
材の育成において脆弱であったと考えている。
こ の よ う な 状 況 を 打 破 す る た め に 、 韓 国 政 府 は 、 2005 年 ま で に 2 兆 2400 億 ウ
オ ン を 投 じ て 、IT 等 の 6 つ の 戦 略 分 野 で の 専 門 家 を 40 万 名 あ ま り( う ち 約 27 万
名 が IT 分 野 ) を 育 成 す る 計 画 13 を 、 2001 年 11 月 に 発 表 し た 。 そ の 計 画 で は 、 高
級 な 人 材 を 集 中 的 に 育 成 し 、 科 学 技 術 競 争 力 を 現 在 の 28 位 か ら 10 位 以 内 に す る
計 画 で あ る 。情 報 通 信 部 は 、こ の 計 画 に 一 環 と し て 、IT 専 門 大 学( 院 )を 重 点 支
援することも表明している。
同 部 は こ の 計 画 と 連 動 す る 形 で 、「 知 識 情 報 強 国 e コ リ ア 建 設 の た め の IT 専 門
家 養 成 総 合 計 画 」 を 、 2001 年 11 月 21 日 金 大 中 大 統 領 に 報 告 し た 。 同 計 画 で は 、
11
日 本 労 働 研 究 機 構 [2001]、 6 頁 。
12 韓 国 に お い て も 、 IT ベ ン チ ャ ー 企 業 に 3 年 以 上 就 職 す れ ば 、 兵 役 を 免 除 さ れ る と い う 制 度 が あ る 。
13 「 国 家 戦 略 分 野 人 材 育 成 総 合 計 画 」
28
2000 年 末 時 点 で 4 万 人 の IT 専 門 家 が 不 足 し 、2005 年 に は 14 万 に 不 足 が 予 想 さ れ
る 中 で 、 今 後 5 年 間 に 総 額 1 兆 ウ オ ン 投 資 し 、 20 万 人 超 の IT 専 門 家 を 生 み 出 そ
う と い う も の で あ る 。そ の 計 画 と の 関 係 で 、IT 関 連 の 大 学 学 科 の 増 員 、制 度 整 備 、
教員増員等も考慮されている。
韓 国 は 、こ の よ う に IT を 一 つ の 大 き な 産 業 の 中 心 と し て 、先 述 し た よ う な 従 来
のレベル以上の技術力のある国家となるべく、その人材の育成に向けた方向性を
示したといえる。
( 2) そ の 他
韓 国 政 府 は 、情 報 通 信 学 部 の 設 置 を 奨 励 し て い る 。IT 労 働 者 の 教 育 と い う こ と
ではなく、金大中大統領の人権尊重の考えから、インターネットが普及する前か
らデジタル・デバイド問題への対応をおこなうことを決めており、主婦、シルバ
ー 向 け の IT 教 育 を 推 進 し て い る 。
最 後 に 、 韓 国 に お け る 海 外 IT 人 材 14 に つ い て 記 し て お こ う 。
現 地 ヒ ア リ ン グ に よ れ ば 、「 2000 年 IT ブ ー ム の 時 期 に は 、 イ ン ド IT 人 材 が 多
数 韓 国 に 来 て い た 。し か し 、IT バ ブ ル 崩 壊 と と も に 彼 ら の 契 約 の ほ と ん ど は 延 長
さ れ な か っ た 」「 今 後 は 、 飽 く ま で も プ ロ ジ ェ ク ト 毎 に 、 海 外 か ら の IT 人 材 を 活
用 し て い く こ と が 検 討 さ れ て い る 。 あ る い は 現 地 で IT 人 材 を 雇 用 し 、 IT 時 代 だ
か ら こ そ イ ン タ ー ネ ッ ト で や り と り し て い け ば い い と 認 識 さ れ て い る 」15 と い う 。
ま た 、「 現 状 の 韓 国 で は 、昨 年 か ら の IT 不 況 も あ っ て 、多 く の IT 人 材 が 余 剰 と
な っ て い る と こ ろ が あ る 。今 後 不 足 す る で あ ろ う IT 人 材 の 需 要 も 基 本 的 に な る べ
く 韓 国 国 内 の 人 材 育 成 で 供 給 し て い く 方 針 」 を と る 企 業 が 多 い よ う で あ る 16 。 政
府 関 係 者 へ の ヒ ア リ ン グ で も 、「 ( 外 国 か ら の IT 雇 用 は 緊 急 課 題 で は な く ) ま ず
国内で訓練されることになる」という意見であった。これらのことからすると、
14
外 国 人 IT 人 材 で は 、ク ラ ス タ ー 分 け(「 営 業 系 」「 技 術 系 」「 マ ネ ー ジ メ ン ト 系 」)す る と 、前 2 者 が
多 い 。「 マ ネ ー ジ マ ン ト は 会 社 の 主 体 で 」 韓 国 人 が 担 う べ き で あ る か ら ( ヒ ア リ ン グ に よ る )。
15
海 外 か ら の IT 人 材 と し て は「 ベ ト ナ ム や イ ン ド か ら 」で 、韓 国 人 の 海 外 流 出 と し て は「 ア メ リ カ や
ヨ ー ロ ッ パ 」 で あ る 。「 外 国 人 IT 労 働 者 は 、 IT 産 業 に 限 ら ず 、 主 に 中 国 と イ ン ド か ら 入 っ て い る 」
( ヒ ア リ ン グ に よ る )。
16
ヒ ア リ ン グ し た 方 で 、「 IT 産 業 が 発 展 し て い け ば 、 そ こ に 大 き な 利 益 が 生 ま れ る た め 、 メ リ ッ ト を
感 じ て 、 人 材 は 自 然 と 流 れ て い く 」「 し た が っ て 、 5 年 以 内 に IT 人 材 の 不 足 は な く な る 」 と 主 張 す
る者もいた。
29
韓 国 で は 当 座 海 外 の IT 人 材 の 受 け 入 れ は そ れ ほ ど 考 え ず 、国 内 的 に 育 成 し て い く
方向であると推測できる。
ま た 他 方 で 、余 剰 ぎ み の 中 レ ベ ル 以 下 の IT 人 材 を 日 本 に 移 転 し よ う と い う 計 画
も 指 摘 さ れ た が 、 韓 国 か ら 日 本 へ の IT 人 材 の 流 入 は そ れ ほ ど 多 く な い と い う 17 。
5. 台 湾
( 1) 現 状 と 今 後
台 湾 で の IT 産 業 を 考 え る 場 合 、フ ァ ウ ン ド リ 部 門( 受 託 生 産 )と ア セ ン ブ リ 部
門(製造)に分けて捉える必要がある。コスト・センシティブな製品であるアセ
ンブリは中国本土へ移動しており、大陸の人材を必要としている。これまで台湾
企 業 は 製 造 が 中 心 で あ っ た の で 、 生 産 部 門 の エ ン ジ ニ ア は 過 剰 化 し て い る 18 。 ま
た、中位層の人材は十分であるが、高水準、最上層の人材が少ない。ソフトウェ
ア 開 発 の 人 材 、 R&D 設 計 の 人 材 が 足 り な い 。 ま た 、 ア ー キ テ ク ト 、 プ ロ ダ ク ト ・
マネージャーのような製品企画・開発を上位でつかさどる人材が不足している。
セールスの人材も重要である。今後はセキュリティー、ネットワーキング、通信
関連の人材が不足すると言われている。また最下層の人材も不足しており、その
意味で中国大陸の人材を必要としている。なお、台湾では、現在 1 年間に 4 万人
の IT 人 材 へ の 需 要 が あ り 、 供 給 は 3 万 人 な の で 1 万 人 不 足 し て い る 19 。
労 働 市 場 の 流 動 化 に 関 し て は 、新 竹 科 技 術 特 別 園 區 の IT 企 業 で は ス ト ッ ク・オ
プションを求めて、労働市場が流動化している。ただし、最近の株価低迷でその
動きが低迷している。
( 2) IT 人 材 教 育
台 湾 で は 、 1940、 50 年 代 か ら IT 教 育 に 力 を 入 れ て い た 。 当 時 、 世 界 で 唯 一 で
あ っ た electronic engineering の 学 部 を 1957 年 に 交 通 大 学 に 設 置 し た 。そ の 後 、
17
「 例 え ば 、こ れ ま で も 日 本 リ ク ル ー ト が 、イ ン タ ー ネ ッ ト 上 で 日 本 語 が で き る 韓 国 人 に IT 人 材 を 募
集 し て い た 。 し か し 、 わ ざ わ ざ 日 本 に 行 か な く て も 、 韓 国 内 で ほ ぼ 同 じ 給 与 が も ら え る 」「 優 秀 な 人
材 ほ ど 日 本 に は 行 か な い 」( ヒ ア リ ン グ よ り )。
18
但 し 、「 半 導 体 産 業 で IT 人 材 が 不 足 し て い る 」 と い う 意 見 も あ っ た
19
現 地 ヒ ア リ ン グ で は 、「 将 来 5 年 以 内 に 19 万 人 の IT 雇 用 が 必 要 と な る 見 込 み 、5 万 人 ほ ど 不 足 す る 。
大 学 や 大 学 院 で は 14 万 人 の ニ ー ズ し か 応 え ら れ な い 」 と い う 。
30
telecommunication engineering, electronic physics, computer engineering
と い う 細 分 化 し た 学 科 を 設 置 し た 。 エ イ サ ー の CEO の ス タ イ ン ・ シ ー は 交 通 大 学
の そ の 学 部 1 期 生 で あ る 。こ の よ う な 大 学 、大 学 院 へ の 投 資 は 世 界 に 類 を 見 な い 。
そ の 結 果 、日 本 、ア メ リ カ よ り も 専 門 的 人 材 が 豊 富 と な っ た 。20 年 前 に 各 大 学 で
コ ン ピ ュ ー タ 学 部 が 設 立 さ れ 、1 つ の 大 学 で 、2、3 の 学 科 を 設 置 し た 。多 く の 大
学 は PC の 人 材 育 成 の た め の 関 連 学 科 を 設 置 し た 。こ の よ う に 政 府 は 教 育 に 非 常 に
力 を 入 れ て き た 。 そ の た め 、 IC Design の 能 力 が 強 く な っ た 。 関 連 す る 大 学 院 卒
の 半 数 以 上 は IC 設 計 の 経 験 者 で 、 学 校 で 訓 練 を 受 け て 、 す ぐ に IC を 設 計 で き る
ようになったと評価されている。
( 3) 留 学 生 と ネ ッ ト ワ ー ク の 活 用 等
台 湾 か ら 海 外 へ の 留 学 者 数 は 、 2000 年 に は 3 万 2855 人 に 達 し て い る 。 そ の 内
半 分 近 く の 1 万 5547 人 が ア メ リ カ へ の 留 学 で 、 日 本 へ の 留 学 は 1753 人 と ア メ リ
カ の 9 分 の 1 程 度 に 過 ぎ な い 20 。台 湾 で は 1970 年 代 に 、理 工 系 の 学 生 の 間 に ア メ
リカの大学への留学ブームが起き、一時期台湾は、シリコンバレーへの人材供給
源とも言われた。
しかし政府は、海外のハイテク人材を、工業技術研究員の資格を与えて台湾の
大企業へ呼び戻し、企業内で研究成果が出て、大企業からスピンアウトした場合
にも支援しており、起業家として独立できるような税制優遇措置を与える等の人
材呼び戻し政策を進めた。
さ ら に 1980 年 代 後 半 に 、厳 戒 令 の 解 除 に よ る 政 治 的 民 主 化 の 進 展 、米 国 の 景 気
後退に伴う人材流出、ハイテク産業の成長に伴う台湾企業の積極的な求人などの
要素が重なり、海外からの帰国者が増加した。特に半導体産業の発展がそのよう
な帰国者の受け皿として大きく貢献した。また、帰国者が増えた理由としては、
「アメリカでは経営トップを白人が占めて出世ができない」等という不満(台湾
経済部投資業務処)の存在も背景にある。また近年でもハイテク人材呼び戻しの
た め の イ ン フ ラ と し て 台 湾 ハ イ テ ク・パ ー ク( 例 え ば 、1999 年 に で き た 南 港 ソ フ
トウェア・パーク)なども造られてきている。このようなハイテク・パークは、
20 6 ヶ 月 以 上 留 学 ビ ザ 取 得 者 ( 台 湾 教 育 部 発 表 )。
31
欧米で学んだ高い技術や知識を持つ人材を集め、そこに海外企業を誘致すること
で、海外の技術や情報交換も活発化するという効果も上げている。こうした試み
は、既に国内外から高い評価が寄せられている。
1995 年 7 月 、民 間 企 業 の 海 外 ハ イ テ ク 人 材 招 致 促 進 策 で あ る「 経 済 部 協 助 国 内
民営企業延攬海外産業専家返国服務暫行作業要点」が施行された。同施策では、
博士号取得者の場合は 3 年以上、修士号取得者は 5 年以上、大卒は 7 年以上の実
務 経 験 が あ る 者 を 、 中 堅 ・ 上 級 職 と し て 国 内 企 業 に 紹 介 し て い る 。 2000 年 12 月
時 点 で 、 登 録 者 数 は 3325 人 、 そ の 内 大 手 海 外 メ ー カ ー 勤 務 し た 経 験 の あ る 238
人 が 民 間 企 業 な ど に 雇 用 さ れ て い る 。そ の 雇 用 さ れ た 人 材 の う ち 6∼ 7 割 が 通 信 、
電 子 、情 報 、光 電 産 業 な ど の IT 産 業 に 従 事 し 、8 割 以 上 が 管 理 職 以 上 で 採 用 さ れ
て い る 。ま た そ の う ち 8 名 が 社 長 に な っ て い る が 、ほ と ん ど は 米 国 帰 り で 、日 本 ・
欧州からは各々1 人から 2 人程度に過ぎない。また同施策は、帰国者雇用の民間
企 業 に 対 し て 補 助 金 を 支 払 っ て い る 。例 え ば 、10 年 以 上 の 実 務 経 験 者 の あ る 博 士
号取得者の場合、1 年目の給与の半分(ただし最高でも月 8 万台湾元)が補助さ
れる。
さ ら に 、優 秀 な 人 材 は 、「 専 門 知 識 に よ る 社 会 奉 仕 5 年 」と い う 条 件 を 満 た せ ば 、
2 年間の兵役免除を受けられようになっており、国内での人材の確保に努めてい
た。
また、台湾行政院青年補導委員会では、海外人材のデータベースを作り、修士
号 以 上 の 学 歴 を 持 つ 1 万 4734 人 ( 2001 年 1 月 、 一 部 大 卒 者 を 含 む ) の デ ー タ を
登録し、産業界に人材情報を提供している。
企 業 自 ら が 海 外 に 赴 き 、特 に 生 産 技 術 の 導 入 を 目 的 に IT 人 材 を 探 す こ と も あ り 、
海 外 帰 国 者 の 数 は 、 新 竹 サ イ エ ン ス ・ パ ー ク だ け で も 、 2000 年 12 月 現 在 で 全 従
業 員 8 万 人 強 の う ち 3000 人 以 上 に の ぼ る 。
このような帰国促進策や人的流入がスムーズに行われる背景として忘れてはな
らないものがある。それは、グローバルに張り巡らされた台湾人ネットワークの
存 在 が あ る 。 特 に 玉 山 科 技 協 会 ( Monte Jade Science & Technology Association)
は 、北 米 に 10 支 部 を 持 つ が 、そ の 内 で シ リ コ ン バ レ ー に あ る「 美 西 玉 山 会 」が 中
心的役割を担っている。行政院青年補導委員会と共同で、台湾に戻ってくる人材
の支援活動を行っている。また、玉山会などの海外台湾人組織は、帰国促進策の
32
一環として台湾経済部投資業務処が実施する海外ミッション派遣や現地説明会の
開催に協力している。
玉 山 会 を は じ め と す る 台 湾 ネ ッ ト ワ ー ク は 、人 材 の 獲 得 ば か り か 、台 湾 IT 産 業
の 成 功 の 秘 訣 と い わ れ る 受 注 ビ ジ ネ ス の 隆 盛 に も 貢 献 し て い る 。そ れ は 、例 え ば 、
台 湾 の 半 導 体 や PC の 生 産 の 多 く を 占 め る ア メ リ カ 企 業 か ら の 発 注 の 場 合 、あ る ア
メリカ大手ネットワーク機器メーカーの調達責任者が台湾人であること等である。
このようなことが、まさに台湾ネットワークの強さを象徴しているといえる。
( 4) 失 業 率 の 向 上 他
こ れ ま で 、 台 湾 IT 人 材 や 台 湾 の 産 業 に 関 し て プ ラ ス の 面 を 主 に 述 べ て き た が 、
IT バ ブ ル の 崩 壊 の 結 果 、 2000 年 秋 か ら ア メ リ カ を 中 心 に PC 需 要 が 鈍 化 し て き て
お り 、そ の た め 台 湾 PC メ ー カ ー は 厳 し い 経 営 が 続 い て い る 。そ の た め 、台 湾 の 失
業率は増加してきている。この場合、台湾の失業率上昇の要因は 2 つある。
一 つ は 、世 界 的 な IT 需 要 の 減 退 の 直 撃 に よ っ て 、電 子 関 連 輸 出 が 多 い 台 湾 の 製
造業が大きな影響を受けていることである。
もう一つは、より根本的な要因であるが、台湾で産業空洞化が広がっているこ
とがある。台湾は、従来中小企業が産業の中核を担い、堅実経営を行ってきた。
このため、アジア通貨・金融危機の際に影響が少なかったのもそのためだといわ
れている。しかし、組立メーカーの大陸進出が起き、それが加速さえしてきてい
る 21 。 そ の 結 果 そ れ ら の 組 立 メ ー カ ー を 支 え て い た 金 属 加 工 や 部 品 な ど の 基 盤 技
術産業を担ってきた中小企業も中国に進出しなければ生き残ることができなくな
っ て い る 22 。あ る い は 場 合 に よ っ て は IT 不 況 の 中 で 仕 事 が 減 り 廃 業 に 追 い 込 ま れ
るなどという事態も起きてきており、基盤技術産業にも産業の空洞化が広がって
き て い る 。こ こ に 、IT 不 況 の 影 響 が 重 な り 、失 業 率 が 上 昇 を 始 め て お り 、台 湾 に
進出した日本の中小企業も苦境に追い込まれている。
こ の よ う な 苦 境 に お い て も 他 方 、PC に 代 わ る 商 品 で あ る「 ポ ス ト PC」と し て 期
待 さ れ る IA( デ ジ タ ル 家 電 )で も シ リ コ ン バ レ ー か ら ヒ ト と 技 術 を 導 入 し て い る 。
そ し て 、日 欧 米 の セ ッ ト メ ー カ ー か ら IA 生 産 を 受 注 す べ く 準 備 を 整 備 し つ つ あ り 、
21 パ ソ コ ン メ ー カ ー の エ イ サ ー の よ う に 、組 み 立 て 部 門 を 中 国 に ほ ぼ 移 転 し て し ま っ た と こ ろ も あ る 。
33
「 海 外 人 材 」 を 活 用 し た ダ イ ナ ミ ッ ク な 「 技 術 」 導 入 シ ス テ ム を 行 い 、 台 湾 IT
産業の高度化は現在も進んでいる。
( 5) 外 国 人 IT 人 材 の 活 用
この件に関しては、現地ヒアリングで得た意見をもとに考えてみよう。
「 IT 人 材 の ニ ー ズ は 、基 本 的 に 台 湾 国 内 で ロ ー カ ル に 調 達 さ れ て い る 」が 、「 台
湾 で は IT 人 材 が 今 後 ま す ま す 不 足 し て い く 。台 湾 国 内 で の 人 材 育 成 で は と て も 足
り な い 。し た が っ て 、さ ま ざ ま な 地 域 と リ ン ク し て 、補 完 し て い く 必 要 性 が あ る 。
し か も 台 湾 の 人 口 で は 市 場 規 模 も 限 ら れ て い る 」。
「 外 国 人 IT 労 働 者 を 惹 き つ け る に は 、台 湾 国 内 の 環 境 を よ り 良 く し て い く こ と
が 大 事 で あ る 。 … た と え ば 新 竹 科 技 特 別 園 區 に 外 国 人 の IT 人 材 が 雇 用 さ れ た 場
合、彼らだけでなく、彼らの家族や教育の問題まで含めて考えていかなくてはな
ら な い 。 IT 人 材 不 足 解 消 と 海 外 か ら の IT 人 材 の 供 給 の た め に は 、 生 活 環 境 、 地
域 の 機 能 性 を 高 め る 必 要 が あ る 」。
よ り 具 体 的 な 外 国 人 IT 人 材 に つ い て は 、次 の よ う な 動 き が あ る 。「 台 湾 政 府 は 、
イ ン ド の IT 人 材 受 け 入 れ を 検 討 し は じ め 、イ ン ド に 出 向 き 交 流 を は じ め た と こ ろ
で あ る 。ハ ー ド に 強 い 台 湾 と ソ フ ト に 強 い イ ン ド の 連 携 を 模 索 し よ う と し て い る 。
政府は法整備を整えたが、企業が外国人受け入れを決めることなので、まだ少な
い 」。 ま た 、「 台 湾 政 府 は 、 大 陸 か ら の 人 材 受 け 入 れ を こ れ ま で 認 め て い な か っ た
の で 、大 陸 の 人 材 活 用 は な い 。し か し 2001 年 7 月 に 大 陸 の 人 の 居 住 を 認 め た 。た
だし、今のところは、台湾企業は人材活用のために、大陸に出向くことが主流で
あ る 」と い う 。そ の た め 、「 台 湾 で は す で に 、中 国 大 陸 へ の 優 秀 か つ ハ イ レ ベ ル な
IT 人 材 の 流 出 23 が 深 刻 な 問 題 と 認 識 さ れ て い る 」と い う 。ま た 、「 日 本 と の 間 に は 、
IT 人 材 の 交 流 は あ ま り み ら れ な い 」。
( 6) そ の 他
2002 年 1 月 16 日 に 、「 科 技 人 材 育 成 及 び 運 用 法 案 」が 公 表 さ れ た が 、そ の 内 容
22
台湾のモノ作りのシステムは、日本と同様のところがあるからである。
23 ヒ ア リ ン グ に よ れ ば 、 管 理 職 レ ベ ル 、 ハ イ レ ベ ル の 人 材 が 多 い と い う 。
34
は 次 の 通 り で あ る 24 。
― 大 学 、 大 学 院 に 情 報 系 、 電 子 系 の 学 部 の 増 加 を 進 め て い る 。 大 学 院 678 名 、 大
学 300 名 合 計 989 名 。2002 年 教 員 の 定 員 数 を 増 加 。定 員 数 137 名 、定 員 外 教 員
( 情 報 産 業 、 バ イ オ ) を 85 名 増 加 す る 。
― 第 2 専 門 と な る 転 職 訓 練 と し て 、 500 時 間 以 上 の 訓 練 を し て ソ フ ト ウ ェ ア 人 材
を育成している。政府部門である労働委員会、青年補助会、教育部が、大学や
情 報 関 連 企 業 に 、 教 育 の た め の 資 金 を 提 供 し 支 援 し て い る 。 大 学 で は 、 12-15
単 位 の 情 報 関 連 カ リ キ ュ ラ ム を 受 け る こ と が で き る 。2001 年 訓 練 を 受 け た 人 は
43984 名 で あ る 。
―2 年間の兵役の義務をなくす。その代わり、ハイテク企業、財団法人に 4 年間
に 勤 務 す る と い う も の 。1980 年 代 か ら 認 め ら れ る よ う に な っ た 制 度 で 、ハ イ テ
ク関連の企業や財団法人に勤務することが条件である。最初は、対象機関は財
団 法 人 で あ っ た が 、1999 年 よ り 民 間 企 業 も 認 め ら れ た 。そ の 対 象 者 数 は 、1991
年 1051 名 、 2000 年 1552 名 。 2001 年 2299 名 。 2002 年 3247 名 で あ る 。
―外国籍ハイテク人材の雇用期間を 2 年間延長。法律修正をした。台湾の大学、
大学院を卒業した外国人を雇うことが可能となる。外国にいる華人も雇用可能
と な る 。 そ の た め 、 情 報 サ ー ビ ス セ ン タ ー を 設 置 し た 。 2001 年 1 月 -12 月 。 台
湾 企 業 の 外 国 ハ イ テ ク 人 材 受 け 入 れ 数 は 11971 名 。 新 規 雇 用 は 3967 名 で あ る 。
―大陸のハイテク人材の台湾での雇用に際し、企業に招かれて 1 年以上就労した
場合、健康保険加入を許可した。滞留期間を 2 年から 6 年に延長した。
短 期 滞 在 は 、 政 府 が 許 可 し た の は 205 名 。 9 名 は 条 件 が 不 整 合 で あ っ た 。
長期滞在は、政府が許可したのは 6 名であるが、うち 5 名はまだ来ていない。
6. フ ィ リ ピ ン
IT と フ ィ リ ピ ン の 労 働 者 と の 関 係 は 、世 界 的 お よ び 地 域 的 状 況 の 一 般 的 背 景 を
全体として考慮するとより正確に評価でき、明るい点がはっきりしてくる。例え
ば、地元の雇用状況は必ずしもいいとはいえないが、海外でのフィリピン人雇用
が 順 調 に 伸 び て い る こ と で あ る 。1998 年 現 在 で 、正 規 の 手 続 き に よ り 海 外 で 働 く
24 現 地 で の ヒ ア リ ン グ か ら 。
35
フ ィ リ ピ ン 人 労 働 者 ( 以 下 OFWs) は 290 万 人 で あ っ た 。
このような状況を生む上で果たした重要なファクターは、情報及び通信技術を
利用する産業が次第に増え、寄与したことである。現在、新規コンピューター利
用の需要が急速に拡大しているので、ソフトウェア開発に欠かせない人材が不足
し て い る と い わ れ て い る 。エ レ ク ト ロ ニ ッ ク・デ ー タ・プ ロ セ ッ シ ン グ( EDP)従
事 者 が 、 日 本 だ け で も 30 万 人 必 要 で 、 米 国 で も 年 間 50 万 人 を 必 要 と い わ れ て い
る 。そ の 結 果 と し て 、フ ィ リ ピ ン 人 IT 技 術 者 へ の 需 要 も 急 速 に 高 ま っ て い る 。そ
の 需 要 増 加 率 は 年 26.2% の 増 加 と い わ れ て お り 25 、 ア ジ ア に お け る 経 済 危 機 な ど
のためのフィリピン国内での経済危機やそれに伴う雇用状態の急速な悪化などの
危 機 が フ ィ リ ピ ン 労 働 者 、特 に IT 産 業 の 労 働 者 に 絶 好 の 機 会 を も た ら し た 形 に な
った。他方、フィリピン国内からみれば、このことは、海外の報酬や条件のより
有 利 な 仕 事 の た め に 、 フ ィ リ ピ ン は 年 間 10% か ら 20% の IT 技 術 者 を 海 外 に 対 し
て 失 っ て い る と い う こ と に な る 26 。 し か し な が ら 、 こ の よ う な 状 況 を 見 て 、 フ ィ
リ ピ ン が 、ア ジ ア そ し て 世 界 的 な IT 技 術 者 の 最 大 供 給 国 の 一 つ に な っ た と 主 張 す
る 者 も い る 27 。 ま た フ ィ リ ピ ン は 、 も と も と 海 外 へ の 出 稼 ぎ 労 働 者 の 仕 送 り 収 入
に大きく依存する政策をとってきた側面もある。
フ ィ リ ピ ン で 、IT 産 業 は 重 要 な 雇 用 者 で も あ り 、5 万 9400 人 か ら 1995 年 の 11
万 4100 人 へ , あ る い は 5% か ら 9% へ と 製 造 業 雇 用 を 占 め る 割 合 で も 増 大 し て い
る 28 。 そ の 産 業 に お け る IT 技 術 者 の 給 与 は 新 卒 で 1 万 ペ ソ ( 約 28000 円 ) 程 度 、
3∼ 4 年 経 験 で 2 万 ペ ソ ( 約 56000 円 ) 程 度 で あ る 29 。 同 国 に は 、 約 860 の 大 学 が
存在し、工学部系の卒業生は毎年 4 万人程度おり、また失業率が高い結果、学卒
の採用自体は問題がないといえる。
雇用のニーズは、データ入力、秘書、プログラマー、システム開発、システム
管理者、データベース管理者などで、すべてのレベルで需要がある。
25 日 本 労 働 研 究 機 構 [2001]、 35 頁 。
26 ヒ ア リ ン グ で は 、「 優 秀 な 人 材 に は 国 内 企 業 で も か な り 高 い 報 酬 を 出 し て い る た め 、必 ず し も 優 秀 な
人 材 か ら 順 番 に 海 外 に 流 出 す る わ け で は な い 。む し ろ 流 出 が 激 し い の は 中 間 層 で は な い か と 思 う 。」と
いう意見があった。
27 Andersen Consulting の Jaime del Rosario 所 長 。
28 日 本 労 働 研 究 機 構 [2001]、 36 頁 。
29 小 紫 [2001]、 65 頁 。
36
し か し 問 題 は 離 職 率 で あ る 。 年 間 の 離 職 率 は 15∼ 30% で あ る 30 。 同 国 の 場 合 、
毎年数百人採用しても数百人が退職するのが一般的で、退職者の多くが米国に出
稼 ぎ に 行 く と い う 。国 内 で 活 動 す る ソ フ ト ウ ェ ア 企 業 の 苦 し み は 、IT 技 術 者 に と
っての夢が 3 年実務経験を積み米国に移住することであるために、毎年数百人単
位 で 採 用 し 、6 ヶ 月 程 度 自 社 内 で 研 修 し 育 成 し て も 、3 年 経 つ と 皆 退 職 し て 海 外 へ
い っ て し ま う こ と で あ る 31 。
次 表 の 米 国 に お け る ハ イ テ ク 従 業 員 用 の ビ ザ で あ る H-1B ビ ザ の 取 得 者 の 国 籍
を見れば、多くのフィリピン人技術者が米国に流出しているのがわかる。同表の
他国人口の規模を勘案すれば、フィリピンからの流出の大きさは一段と鮮明にな
ろう。
表
米 国 H-1B ビ ザ 取 得 者 の 主 な 国 籍 ( 1999 年 )
国籍
人数
インド
中国
日本
フィリピン
55,047
6,665
5,779
3,339
人 口 ( 1997)
単 位 :1000 人
955,220
1,243,738
125,638
73,527
現 在 、 フ ィ リ ピ ン 国 内 に は 、 IT 技 術 者 が 約 3 万 1510 人 い る が 、 そ れ へ の 人 材
需 要 も 年 間 15% の 割 合 で 増 加 し て い る 32 。 1960 年 代 か ら 70 年 代 ま で は 、 コ ン ピ
ュ ー タ 販 売 会 社 が IT 人 材 の 育 成 を 行 っ て き た 。 し か し 1970 年 代 の 中 頃 、 EDP 専
門 学 校 が 出 現 し 、1980 年 代 ま で に は 大 学 が 学 位 を こ の 分 野 で 授 与 す る コ ー ス を 始
め た 。 フ ィ リ ピ ン は IT 教 育 に 力 を 注 い で お り 、 IT 教 育 を 受 け た 大 卒 者 数 は 、 ア
ジ ア で は イ ン ド に 次 い で 多 い と い わ れ る 。結 果 と し て 、IT 教 育 を 受 け た 人 材 は 少
し供給過多な状況にあり、雇用機会を求めて学歴に見合わない低レベルの仕事を
し て い る 場 合 も あ る と い う 33 。
30
あ る 会 社 で は 、 採 用 後 6 月 間 は 社 内 で の 教 育 ( C+ + 、 JAVA 等 ) そ の 後 、 優 秀 者 は 更 に 日 本 で 研 修
す る と い う よ う に 研 修 に 力 を 入 れ て い る が 、数 年 で ほ と ん ど が 退 社 す る と い う( 小 紫 [2001]、65 頁 )。
31
流出先は、欧米、台湾、マレーシア、シンガポールなどである。ただし、日本へは少ない。ヒアリ
ン グ で は 、フ ィ リ ピ ン に は「 IT プ ロ フ ェ シ ョ ナ ル の 人 材 が 非 常 に 豊 富 な の で 、日 本 も ジ ャ パ ユ キ さ ん
の よ う な 人 だ け で な く 、 も っ と IT 人 材 に 対 し て 目 を 向 け て ほ し い 」 と い う 意 見 も あ っ た 。
32
日 本 労 働 研 究 機 構 [2001]、 35 頁 。
33
ヒアリングによる。
37
大 手 マ ー ケ ッ ト ・ リ サ ー チ 会 社 の IDC(International Data Corporation)に よ
る と 、 ソ フ ト ウ ェ ア 及 び IT サ ー ビ ス に お け る 世 界 市 場 は 1270 億 米 ド ル で あ り 、
毎 年 30% ず つ 成 長 し て い る 。こ の よ う な 最 近 の 状 況 の 中 に お い て 、次 の よ う な IT
人 材 や そ の 環 境 な ど の 点 か ら 、ソ フ ト ウ ェ ア 生 産 で 競 争 的 優 位 が あ る と い え る 34 。
a . フ ィ リ ピ ン 人 労 働 者 の 高 い 生 産 性 ・ 創 造 性 と 比 較 的 に 低 い 労 働 賃 金 35
(人材の質)
b . 英 語 が 話 せ る 年 間 約 70 万 人 の 大 学 卒 業 生 の 数 と 高 い 教 育 水 準
(人材の数、量)
c. 素直で使いやすい
d.コンピュータを扱えるフィリピン人技術要員の範囲の広がり
(人材の数、量)
e.欧米的ビジネス文化および組織(風土)
f.企業や家庭におけるコンピュータの利用の向上(環境)
こ の よ う な IT 人 材 か ら も 、 フ ィ リ ピ ン の IT 産 業 の 主 要 な 長 所 は , 十 分 教 育 を
受 け 、価 格 競 争 に 強 く 、英 語 力 の あ る 労 働 力 、そ し て IT 業 務 の 成 功 と 言 う 実 績 で
あるといえよう。これは成長が速いテレコム・インフラ、この産業に対する政府
の熱心な関心、近隣諸国に比較して少ない規制、外資パートナーとの折衝をこな
す 能 力 、 並 び に 強 力 な 起 業 家 精 神 36 に よ っ て 制 度 的 に 支 援 さ れ て 生 ま れ て き た も
のである。またフィリピンは、アニメーション、e コマース、レガシー・システ
ム 、 伝 統 的 な プ ロ グ ラ ミ ン グ ( COBOL 等 ) に お い て は 、 世 界 的 に も 高 い 水 準 に あ
る。
し か し 、そ の 短 所 は IT 労 働 の 人 材 面 か ら 見 る と 、国 際 的 プ ロ ジ ェ ク ト を 遂 行 で
き る ほ ど に 訓 練 さ れ た 、 経 験 の あ る 中 堅 な い し 上 級 の IT 技 術 者 の 不 足 、 ま た IT
教 育 の 不 十 分 さ で あ る 。結 果 、フ ィ リ ピ ン 人 は 、IT に お い て も そ の 産 業 の 核 の と
ころではなく、プログラミングなどの作業を任せられることが多い。インフラお
34 現 地 の ヒ ア リ ン グ で「 フ ィ リ ピ ン の 人 材 は 、シ ン ガ ポ ー ル よ り も 優 れ て い る 」と 主 張 す る 者 も い た 。
35 日 本 で の 給 与 の 5 分 の 1 程 度 と い わ れ る ( ヒ ア リ ン グ よ り )。
36 ヒ ア リ ン グ で は 、 フ ィ リ ピ ン で は 起 業 家 精 神 は 皆 無 、 低 い と い う 評 価 が 強 か っ た 。
38
よび制度上の障害、そして専門的な人材としての必要条件に応えるにはいまだ不
十 分 な 教 育 シ ス テ ム が 、IT 産 業 の 更 な る 成 長 を 妨 げ る 重 大 な 足 か せ に な っ て お り 、
今後のこの分野での改善が望まれるところである。
7. タ イ
タ イ に お い て も 、 同 国 に お け る IT 化 の 成 否 の 鍵 は 、 い か に IT 人 材 37 を 確 保 で
きるかどうかであるといえる。国家情報技術委員会の事務局によると、タイにお
け る 毎 年 の I T 技 術 関 連 の 高 等 教 育 卒 業 者 数 は 約 1 万 人 程 度 ( Engineering:3000
人 、 Science:5000∼ 6000 人 、 Business:1000∼ 2000 人 ) で 、 人 口 比 で み た 場 合 、
マ レ ー シ ア ( 1997 年 約 2170 万 人 ) や シ ン ガ ポ ー ル ( 同 年 約 374 万 人 ) に 比 べ て
極 端 に 少 な く 今 後 の 課 題 と い え る ( タ イ は 同 年 で 6060 万 人 )。
ま た 現 在 24 の 公 立 大 学 と 私 立 大 学 が 存 在 し 活 動 し 、そ の 情 報 技 術 関 連 の 学 部 か
ら 、次 表 の よ う に 毎 年 約 4000 か ら 5000 人 の 卒 業 性 が あ る 。こ の う ち 約 65∼ 70%
が 情 報 技 術 関 連 に 就 職 し 、残 り の 約 30% が 情 報 技 術 と は 無 関 係 な 分 野 で 就 職 し て
い る 。な お 、コ ン ピ ュ ー タ 教 育 が 始 ま っ た の は 、タ イ で は こ こ 20 年 ぐ ら い の 経 験
し か な く 、教 員 の 質 的 レ ベ ル が 低 い 。コ ン ピ ュ ー タ 専 門 は 教 員 の 半 分 以 下 で あ り 、
その他は専門外の教員が教えているという問題も存在している。
タ イ の 公 ・ 私 立 大 学 に お け る 情 報 技 術 関 連 学 科 専 攻 の 卒 業 生 数 ( 1996− 1999)
分野
1996
学部
コンピュータ・エンジニアリング
1997
修士
1998
学部
修士
学部
391
332
1
275
4
コンピュータ・サイエンス
1055
73
988
45
コンピュータ・ビジネス
1355
-
1592
-
238
64
440
2980
138
3295
情 報 技 術 ・ 管 理 ( IT/MIS)
合計
1999
修士
学部
修士
7
388
2
113
1155
124
1757
-
1785
-
124
453
251
619
297
173
3744
371
3917
423
1143
タ イ の IT 技 術 者 は 、 国 内 で の 需 要 に 比 べ る と IT 人 材 が 不 足 し て い る 。 こ の た
37 ヒ ア リ ン グ で は 、 タ イ で は 、 IT 人 材 の 「 ク ラ ス タ ー は 標 準 化 し て い な い 。 専 門 家 に よ っ て 異 な る 」
39
めタイ国内向けコンピュータ・システムの多くが、インドなどの海外で開発され
ている。しかし、政府では、政府向け国内のコンピュータ・システム開発需要を
自 国 の IT 技 術 者 で 十 分 に 行 え る こ と を 目 標 と し て い る 。他 方 、タ イ に お け る 公 的
部 門 の IT シ ス テ ム 数 は 、 次 の よ う に 今 後 数 年 間 で 更 に 増 大 す る 予 定 で あ る 。
公 的 部 門 に お け る IT シ ス テ ム 数 及 び 将 来 の シ ス テ ム 数 予 測
分野
1999年
バック・オフィス
フロント・オフィス
データベース
マルチメディア
89
188
150
25
2000−2003年
追 加 分 (合 計 数 )
30(119)
120(308)
97(247)
35(60)
出 所 : NCSTC( National Computer Software Training Center;
国立コンピュータ・ソフトウエア研修所)
そ の 結 果 、 そ の 増 大 す る シ ス テ ム に 対 処 し て い け る た め に 、 今 後 の 2-3 年 で 約
1000 人 の IT 技 術 者 が さ ら に 必 要 と な る と 考 え ら れ て い る 。
ま た タ イ で は 、 IT 労 働 者 の 海 外 転 出 が 多 く 、 問 題 に な っ て い る 。 優 秀 な IT 人
材が主にアメリカへ転出し、タイへ戻ってくることはない。海外転出は、2 年前
までは人気があった。ほとんどが、ソフトウェア関係の人材である。海外の転出
先 は 、 ア メ リ カ 以 外 に は 、 シ ン ガ ポ ー ル や 香 港 に 行 く ケ ー ス が 多 い 38 と い う 。
し か し 、日 本 へ の 転 出 は 極 め て 少 な く 、行 っ て も 仕 方 が な い と 考 え ら れ て い る 。
その理由としては次の 3 点にあると、現地ヒアリングで指摘を受けた。
① 日 本 の 入 国 管 理 政 策 の 問 題 。様 々 な 規 制 が あ り 、か つ 手 続 き の 煩 雑 さ に よ り 、
日本に転出することが、心理的にも、物理的にも困難であること。
②文化的背景の違い。特に、言語的障害が問題。
大学教育レベルの授業内容が、タイ語ではなく、英語で行われていること。
その理由は、高度に知的な語彙に対応する言葉がタイ語にないため、英語を
そのまま、使用せざるを得ないことである。したがって、英語使用圏の国へ
行く方が転出しやすい。
ということであった。
38 現 地 ヒ ア リ ン グ で の 意 見 よ り 。
40
③アプリケーション・ソフトが大部分英語であること。
小 学 校 か ら 英 語 を 勉 強 し て い る の で 、IT 労 働 者 は 英 語 圏 も し く は ヨ ー ロ ッ パ
に行きたがる。その点でも日本は魅力がない。
他 方 、IT 労 働 者 の 不 足 を 補 う た め に 、外 国 人 労 働 者 の 転 入 を 積 極 的 に 政 府 は 進
め て い る 。そ の た め の 受 け 入 れ 体 制 も あ る 。し か し 、問 題 は 国 内 IT 産 業 の 未 熟 さ
の故に、外国人労働者の転入は極めて少ない。この悪循環を断ち切るために、政
府 は 、イ ン ド の バ ン ガ ロ ー ル を 模 倣 し た「 ソ フ ト ウ ェ ア・パ ー ク 」を 立 ち 上 げ た 。
しかし、問題は更に根深いとの指摘がある。すなわち、ソフトウェアの命とも言
うべき著作権が守られていない現状を改善しない限り、すなわち、違法ソフトの
取り締まりが強化されない限り、ソフトウェア産業は育たない。政府の厳しい違
法ソフトへの対応が必要となっている。
ま た 、 2002 年 度 よ り 、 政 府 認 定 の IT 資 格 試 験 を 導 入 し た 。 日 本 の 資 格 制 度 の
よ う な も の で あ る 。 し か し 、 合 格 率 が 低 か っ た 。 こ の 制 度 に 対 し て は 、 2-3 年 で
消 滅 す る の で は な い か と い う 指 摘 が ヒ ア リ ン グ で な さ れ た 39 。
8. マ レ ー シ ア
プランテーションや輸出志向製造業は引き続き労働力不足に悩まされており、
今も世帯の多くでメイドとして外国人労働者を求めている現状がある。経済成長
が マ イ ナ ス を 記 録 し た 1997 年 の 第 4 四 半 期 で も 労 働 力 不 足 は 続 い て い た 。
また外国人労働者を雇用するには、使用者は予め内務省の承認を得る必要があ
る。外国人労働者はマレーシア人が引き受けない仕事を行っているのである。国
内 に は 、有 効 な 就 労 許 可 証 を 持 つ 外 国 人 労 働 者 が 約 75 万 人 い る 。そ れ 以 外 に 、不
法 労 働 者 が 15 万 人 い る と 言 わ れ て い る 。
こ の よ う な 雇 用 労 働 事 情 に お い て 、政 府 は IT( 情 報 技 術 )に 積 極 的 に 取 り 組 ん
で お り 、 使 用 者 も IT へ の 対 応 を 求 め ら れ て い る 。 ほ と ん ど の 省 庁 で は IT 部 門 が
設置されており、コンピュータに情報を記録する試みに着手してきている。また
39 そ の 理 由 は 、 資 格 試 験 の レ ベ ル が 基 本 的 な も の で あ る こ と 。 そ の た め 企 業 の 信 頼 性 が な い こ と や ベ
ンダーの資格試験の方が人気が高いこと(例えばオラクルなどの企業が実施している研修<資格>プ
ログラムのほうが、人気が高く、転職へのパスポートになるからである)ことなどである。
41
この分野において使用者支援のために、政府は、他の場合と異なり、より高度な
IT 技 能 を 有 す る 人 材 の 入 手 可 能 性 を 高 め る た め に 、 政 府 は 国 内 の IT 関 連 技 能 の
不 足 を 認 め た 上 で 寛 容 な 姿 勢 で 、企 業 が 海 外 か ら IT 要 員 を 招 致 す る こ と を 容 認 す
る方針をとっている。
そ の 結 果 、IT 導 入 に 積 極 的 な 企 業 や 事 業 に は 、ビ ザ が 簡 単 に 発 行 さ れ る よ う に
な っ て い る 。海 外 投 資 家 は IT 専 門 家 を 必 要 な 時 に は 招 致 す る 自 由 が 与 え ら れ て い
る。その狙うところは、マレーシアがこうした専門家のサービスを受けることが
で き る よ う に す る こ と で あ る 。こ の よ う な 施 策 は 確 か に 短 期 的 に は 意 味 が 大 き い 。
他 方 、 長 期 的 観 点 か ら も 、 教 育 ・ 訓 練 に 力 を 入 れ て い る 。 労 働 市 場 に お け る IT
関連人材の層を厚くするため、いくつかのマルチメディア大学(例えば、テレコ
ム 大 学 が 母 体 と な っ て 設 立 さ れ た マ ル チ メ デ ィ ア 大 学 な ど 40 ) や 高 度 学 習 セ ン タ
ー ( High Institute of Learning) が 設 立 さ れ た 。 ま た 、 高 等 教 育 機 関 に は IT
やコンピュータ技術関連の学部が設置されている。民間教育機関においても、国
外著名大学や高等教育機関と提携することで、この目的に向けて努力することが
奨 励 さ れ て い る 。マ レ ー シ ア の こ れ ら の 教 育 機 関 は 、IT 技 能 を 有 す る 人 材 を 毎 年
計 2 万 人 以 上 、労 働 市 場 輩 出 し て い る 。IT 分 野 の 卒 業 生 は 5 年 後 に は 3 万 5 千 人
を超える予定である。
政府は初等・中等教育に対しても積極的な政策をとっている。政府は、全学校
が IT ク ラ ブ や コ ン ピ ュ ー タ・ク ラ ブ を 設 置 す る よ う に 呼 び か け て い る 。成 人 向 け
IT 教 育 や コ ン ピ ュ ー タ 教 育 用 プ ロ グ ラ ム も 提 供 さ れ て い る 。
政府は、全企業に対しても、従業員の継続的な技能向上を図ることを働きかけ
て い る 。 人 的 資 源 省 は 、 企 業 か ら 給 与 総 額 の 1% の 寄 付 金 を 集 め て 基 金 を 作 り 、
寄付した企業は従業員の教育訓練に支出した全費用を請求できるという制度をつ
くっている。この基金は、シンガポール政府が設立した同様の基金をモデルとし
ており、使用者側による人的資源の訓練・開発に対する投資を奨励するために設
立された。基金のおかげで多くの企業が人材レベルのアップに成功している。ま
た、これまで一度も訓練を実施したことがない企業も、訓練を始める例が多くで
40 こ の 大 学 に つ い て 、開 校 式 で マ ハ テ ィ ー ル 首 相 は 、次 の よ う に 演 説 し て い る 。「 こ の 大 学 は 並 み の 大
学 で は な い 。 こ の 大 学 の 開 校 に よ っ て マ ル チ メ デ ィ ア ・ ス ー パ ー ・ コ リ ド ー 計 画 ( マ レ ー シ ア の IT
産業化を図る中心事業、詳しくは後述)の成功にとって絶対必要な条件である大量の高度知識集約型
労 働 者 の 確 保 が 可 能 と な る 」。
42
てきている。それは、一度拠出した寄付金を回収するためには、訓練実施以外に
な い こ と を 理 解 し て い る か ら で あ る 。寄 付 企 業 の 中 に は 、IT 関 連 技 能 の 導 入 に 同
基金を役立てているところもある。
従 業 員 積 立 基 金 ( EPF) と 社 会 保 障 機 構 ( Socso) で も 法 定 掛 金 の 払 込 は 、 デ ィ
スクや e メールでも可能になっている。これまで使用者は毎年外国人労働者の就
労許可証更新のたびに、出入国管理局の事務所に出向き、列に並ばねばならない
という大きな手間がかかったが、外国人労働者の就労許可証更新にもコンピュー
タ 導 入 の 方 向 に あ る 。外 国 人 労 働 者 は 75 万 人 お り 、出 入 国 管 理 局 で は 入 力 作 業 だ
けでも相当の労働時間が費やされてきたわけである。しかし、このように電子的
に処理でき、手続きの簡素化が図られれば、サービスの効率化につながる。この
ように新しい就労許可証更新制度が導入されることとなっている。そのために、
使用者の多くが研修を受けており、新制度への移行は順調に進むと思われる。
マ レ ー シ ア 政 府 の IT 人 材 育 成 に か け る 意 欲 に は 並 々 な る に も の が あ る 。他 方 、政
府の思い通りに進展していない面も、今後の進捗の如何にかかっているといえよ
う。
90 年 代 後 半 の ハ イ テ ク 人 材 育 成 の 効 果 は あ る 程 度 上 が っ て い る 。マ レ ー シ ア の
労 働 力 人 口 は 96 年 に 830 万 人 、 2000 年 に は 920 万 人 に 増 加 し て い る が 、 同 じ 時
期 に 、 知 識 集 約 型 労 働 者 ( Knowledge Workers) の 比 率 は 11.1% か ら 19% に 上 昇
し て い る 。 政 府 計 画 に よ れ ば 、 知 識 集 約 型 労 働 者 の 供 給 は 99 年 の 年 間 2 万 8000
人 か ら 2002 年 に は 10 万 8000 人 ま で 拡 大 す る 見 込 み で あ る 。
1996 年 秋 、テ レ コ ム・マ レ ー シ ア は 政 府 か ら ハ イ テ ク 人 材 供 給 要 請 を 受 け 、同
国初の私立大学テレコム大学の発足を決めた。形態は私立大学ではあるが、マレ
ーシア最大の国営企業の全額出資によって設立の事実上の国策大学であるといえ
る。政府が国立大学という形を避けたのは、国立大学の場合では、ブミプトラ政
策のためにマレー人優先となる民族別入学割当て枠が法定されているので、ハイ
テ ク 人 材 を 短 期 間 で 大 量 育 成 す る に は 不 向 き で あ る と 判 断 し た の で あ る 。し か し ,
マレー人中心国家であるマレーシアでは全国的にブミプトラ政策の看板を下ろす
こ と は で き な い た め 、マ ル チ メ デ ィ ア・ス ー パ ー・コ リ ド ー( MSC)と い う 特 別 区
域内の私立大学という例外措置という形式を必要としたのである。
ブミプトラ政策の結果、教育水準の高い中国系国民の頭脳流出などが、マレー
43
シア発展にとって阻害の一つの大きな要因といわれてきていた。同様のことは、
優秀な人材によるハイテク立国を目指そうとした場合にも当てはまる。その問題
を解決すべく中国系を中心とするハイテク予備軍の海外流出を抑えるために、新
大学には、先のような形式をとることで民族別入学枠は適用されていない。
1997 年 3 月 に は 、政 府 は MSC の 目 玉 を マ ル チ メ デ ィ ア 大 学 設 立 と 決 め 、テ レ コ
ム大学が母体となりマルチメディア大学が設立された。マハティール首相は、そ
の 大 学 の 開 校 式 で 次 の よ う に ス ピ ー チ し た 。「 こ の 大 学 の 開 校 に よ っ て 、MSC 計 画
の成功にとって絶対的な条件である大量の高度知識集約型労働者の確保が可能に
な る 」。同 大 学 の 学 生 数 は 、2000 年 現 在 約 6000 人( サ イ バ ー ジ ァ ヤ キ ャ ン パ ス 3300
名 の 学 生 、 マ ラ ッ カ キ ャ ン パ ス 2500 名 の 学 生 ) で 、 2000 年 に は 初 の 卒 業 生 を 送
り 出 し た 。IT 学 部 の 卒 業 生 は 100% 就 職 が 決 ま り 、就 職 先 の 大 半 は IT 関 連 企 業 で
あ る 。2005 年 に は 学 生 数 が 10000 人 を 超 え る 見 込 み で あ る 。最 近 の 競 争 率 は 約 100
倍 と 高 く 、以 前 な ら 海 外 に 出 て い た 優 秀 な 層 も 含 ま れ て い る と い う 。同 大 学 で は 、
民族別割当てがないので、学生に占める中国人の割合は半分を超える。
ブ ミ プ ト ラ 政 策 は 、30 年 あ ま り 続 い て き て お り 、遅 れ て い た マ レ ー 人 を 社 会 的
に引き上げるという意味ではある程度成果をあげてきたが、制度疲労も出てきて
おり、マレー人優遇策は中国系国民の反発を生み、不満は潜在化して資本逃避や
頭脳流出という消極的抵抗の形で国家にダメージを与えてきており、徐々に問題
や弊害も目立つようになってきた。本来であれば、マレーシアが有するような民
族の多様性は大きなメリットとなりうる。中国人は中国にネットワークを持って
いて、ダブルバイトの世界でも強い。マレー人はインドネシアなど、イスラム圏
の国々で通用する。インド人は、どこへ行っても評価が高い。しかし、ブミプト
ラ政策がこのメリットを喪失させている。人材の教育レベルは国際的にみてもそ
れなりのレベルにはあるが、ここでもやはりブミプトラ政策が大きな弊害をもた
らしている。国民の大半が英語に親しんでいるにもかかわらず、大学の教育がマ
レー語で行われているため、英語が中心のインターネットの世界とはギャップが
ある。マルチメディア大学では英語で教育を行っているが、他の大学は依然とし
てマレー語で行われている。
政府もこのような状況に閉塞感を持ち始めており、現状を打破していくものと
し て の MSC に 期 待 し て い る と こ ろ で あ る 。 政 府 は 、 MSC を 地 域 限 定 の 実 験 場 、 つ
44
まり事実上経済社会特区として扱うことで、国内の産業・社会構造の転換を図ろ
うとしているのである。
まだ大きな枷の部分もあるが、ブミプトラ政策をはじめとする人種政策も変化
してきている。中国人を制約することで、マレー人の地位を相対的に向上させる
という消極的方法ではなく、中国人等をも社会的に取り込み、活躍の場を与え、
国際競争に勝利することで、マレーシア全体の底上げを行うという積極的方法に
変化してきているといえよう。
そのような、国内の産業・社会構造を転換していく積極策として、マレーシア
政府は、海外に流失した優秀な人材に優遇措置を与え彼らを呼び戻す政策を実施
してきている。この背景には、先述したブミプトラ政策などで海外に流失した人
材が還流してくれば、米国を中心として海外に流出した人材の帰国と還流後の活
躍 で 1980 年 代 か ら 90 年 代 に 起 き た 台 湾 の エ レ ク ト ロ ニ ク ス 産 業 の 発 展 や 、 現 在
の 中 国 の 経 済 や IT 産 業 の 発 展 と 同 様 の こ と が 起 き 、マ レ ー シ ア の 経 済 や 技 術 力 の
発 展 に 貢 献 し て く る と い う 期 待 が あ る か ら で あ る 。 こ の 政 策 は 2001 年 12 月 時 点
で す で に 1 年 の 実 績 が あ る が 、目 標 で あ る「 年 間 1000∼ 2000 人 」に は 程 遠 く 、申
請 し た 海 外 在 住 の マ レ ー シ ア 人 は わ ず か 356 名 、 そ の う ち 優 遇 措 置 を 認 め ら れ た
も の は 145 名 に 過 ぎ な い 。そ の 認 め ら れ 者 に は 、IT 専 門 家 や そ の 他 の 専 門 家( 会
計 士 、 医 師 等 等 ) が い る が 、 113 名 は 中 国 人 で 圧 倒 的 に 多 い 。 こ の よ う に 人 材 が
戻らない原因は「帰国後の待遇にある」と考えられているが、この政策は改善し
な が ら 今 後 も 継 続 し て い く と い う 41 。 IT 人 材 の 確 保 も 観 点 か ら も 、 こ の 政 策 の 行
方を見ていく必要があろう。
マレーシアにおける労働市場を考える場合、マレーシアの社会的な風土や流行
といった問題もある。
ま ず 、マ レ ー シ ア で は 、「 マ ル チ メ デ ィ ア 」と い う 実 体 の な い 言 葉 が 先 走 っ て し
ま っ た 。「 MSC (Multimedia Super Corridor) 」 だ け で な く 、 工 科 大 学 、 ○ ○
Technology of University と い っ た と こ ろ で は 、 み ん な マ ル チ メ デ ィ ア と い う 方
向 に 行 っ て し ま っ た 。 ".com"が 行 き 詰 っ て か ら 、 少 し ず つ 変 わ っ て き て い る が 、
ベーシックな技術を身につけた人が圧倒的に不足している。また、インフラは十
41 Yahoo ニ ュ ー ス 、 2001 年 12 月 20 日 。
45
分 で あ る が 、 IT ス キ ル の 高 い 人 材 が あ ま り い な い 。
ま た 、IT 教 育 を 受 け た エ リ ー ト 層 の 人 は 、マ ネ ー ジ メ ン ト な ど 高 い 地 位 を 志 向
するが、その下にいて産業を支える層の人が育成されておらず、産業のピラミッ
ドが構築されにくい状況にある。
さらに、マレー人のエントレプレナーシップは非常に低い。政策により優秀な
中国人やインド人が海外に流出するため、ベンチャー企業が活発に立ち上げられ
る素地は低い。
9. シ ン ガ ポ ー ル
シ ン ガ ポ ー ル は 、1960 年 代 後 半 以 降 工 業 化 に よ り 目 覚 し い 発 展 を 遂 げ て き て お
り 、2% 程 度 の ほ ぼ 完 全 雇 用 と い え る 水 準 の 失 業 率 を 維 持 し て き た 。し か し 、ア ジ
ア 通 貨 危 機 ・ 金 融 危 機 の 発 生 を 機 に 失 業 率 は 4% 以 上 と な り 、 か つ て な い 水 準 に
達した。従来年約 1 万人だった解雇者数は、製造業、建設業、サービス業のすべ
て の 産 業 で 急 増 し た 。1998 年 に は 実 に 3 倍 近 い 2 万 9 千 人 と な っ た 。特 に 、製 造
業が深刻で、その中でもエレクトロニクス産業でのレイオフが著しく増加した。
チップやディスク・ドライブ等の世界的な供給過剰や熾烈な価格競争を背景に、
競争力維持のために厳しい労働コスト削減が実施されたためと考えられる。
その後エレクトロニクス製品の世界的な需要増による輸出増加などで、景気は
比較的早期に回復し、雇用情勢も次第に回復の兆しを見せた。しかし、現在は実
質 GDP が 危 機 前 の 水 準 を 大 き く 超 え た が 、 失 業 率 は 以 前 の 水 準 は 以 前 の よ う に 低
くまで戻ってはおらず、労働需給のミスマッチが起き構造的失業が発生している
ことが考えられる。経済発展につれて賃金コストが高まってくる一方で、労働者
あるいは求職者が、企業のニーズにそくした技能を修得していなければ、たとえ
景気拡大が続いてもいずれは就業の機会を失うあるいは就業できないというリス
クにさらされる。なお、近年の製造業における解雇者の増加は、ディスク・ドラ
イブメーカーによる大規模リストラや合併が続いていることが影響していたを思
われる。
このような状況を踏まえ、シンガポール政府は、国家的人材開発戦略「マンパ
ワ ー 21」 を 打 ち 出 し た 。 同 戦 略 で は 、 個 々 人 の 就 業 能 力 の 向 上 と 人 材 確 保 を 通 じ
た「 知 識 基 盤 経 済 」へ の 移 行 を 図 り 、将 来 の 国 際 競 争 力 を 確 保 し よ う と し て い る 。
46
シ ン ガ ポ ー ル は 、 シ ン ガ ポ ー ル 情 報 通 信 開 発 庁 ( IDA) に よ れ ば 、 2000 年 末 の
シ ン ガ ポ ー ル で は 、 わ ず か 約 200 万 人 の 労 働 者 の 内 10 万 5605 人 ( 表 を 参 照 ) が
IT 関 連 の 職 種 ( 除 IT ハ ー ド 生 産 従 事 者 ) に 従 事 者 で あ る と 推 定 さ れ て い る 。
IT 人 材 の 職 種 別 プ ロ フ ィ ー ル ( 2000 年 )
職
種
構成比(%)
Infocomm( 情 報 通 信 )セ ー ル ス & マ ー ケ
ティング
テ ク ニ カ ル 支 援 /ヘ ル プ デ ス ク
17.5
16.7
アプリケーション開発&インテグレー
ション
Infocomm マ ネ ー ジ メ ン ト
16.6
15.5
システムインフラ
8.0
マルティメデア開発&インテグレーシ
ョン
Infocomm 教 育 & 訓 練
4.3
3.9
ソ フ ト ウ エ ア 開 発・イ ン テ グ レ ー シ ョ ン
3.6
ネットワークインフラ
3.4
その他
3.1
インターネットインフラ
2.5
専門家支援サービス
1.7
ハードウエア開発&インテグレーショ
ン
コミュニケーションインフラ
1.0
0.8
ソフトウエア研究
0.8
ハードウエア研究
0.6
出 所 : Development Authority(IDA), Survey on InfoComm
Manpower
2000, Information, 2001
そ の 絶 対 数 自 体 は 、公 的 資 格 保 有 者 で あ る 情 報 処 理 技 術 者 だ け で 90 万 人 の 人 材
を 持 つ 日 本 や 、 35 万 人 の 大 卒 IT 技 術 者 を 抱 え る イ ン ド な ど に 比 べ れ ば は る か に
47
少 な い も の で あ る 。し か し な が ら 、雇 用 に 占 め る IT 人 材 の 比 率 は 高 く 、労 働 者 全
体 の う ち の 5% が IT 関 連 従 事 者 で あ る 。
また増大する情報通信関連職業の需要に応じるために、情報通信技能労働者が
2010 年 ま で に 約 25 万 人 が 必 要 で あ る と 見 積 も ら れ て い る 。 シ ン ガ ポ ー ル の 情 報
通 信 労 働 者 数 は 、こ こ 2 年 間 に 約 1 万 人( 年 率 10∼ 12% )の 増 加 が 見 込 ま れ て い
る。
その情報通信労働者の内の約半分が大学や科学技術専門学校(ポリテック)や
大 学 な ど 国 内 の 高 等 教 育 機 関 の 出 身 で あ り 、そ れ ら の 機 関 が 情 報 通 信 、IT 技 術 者
教育を引き受けている。また残りの半分は情報通新部門の仕事に従事者として海
外から募集された外国人である。
ま た 、 能 力 開 発 基 金 ( Skills Development Fund) が 労 働 者 の OJT や OFF-JT、
大 学 院 進 学 な ど に 資 金 の 補 助 を し て お り 、民 間 企 業 の 協 力 で 特 定 の IT 技 術 の 教 育
訓練などを推奨している。
現状では増加率が高い e コマース(電子商取引)やインターネット開発の人材
が特に不足しており、既存の労働者の能力再開発が必要とされている。シンガポ
ールでは、政府、学校、民間企業、労働組合が密接に協力している。また、小学
校 か ら IT 教 育 が 導 入 さ れ て お り 、 米 国 シ カ ゴ 大 学 や フ ラ ン ス の INSEND 等 の 優 れ
た 高 等 教 育 機 関 の 誘 致 も 推 進 し て お り 、全 面 的 な IT 教 育 が 展 開 さ れ て い る と い え
よ う 。な お 、e コ マ ー ス 部 門 は 、IT 労 働 の ニ ー ズ に お い て 、年 平 均 47% の 伸 び で
最も高い成長を示すと予測されている。その他の主な発展分野は、インターネッ
ト 開 発( 24% )、専 門 家 支 援 サ ー ビ ス( 15% )、ソ フ ト ウ ェ ア 研 究 開 発( 14% )、コ
ン サ ル タ ン ト 業 /ビ ジ ネ ス 分 析 ( 13% ) で あ る
そ の 具 体 例 と し て シ ン ガ ポ ー ル 情 報 通 信 開 発 局( IDA)は 、「 情 報 通 信 21 の マ ス
タ ー プ ラ ン 」の 一 部 と し て 、IT 産 業 の 労 働 者 指 導 に 対 す る 計 画 を 立 て て お り 、学
校 の カ リ キ ュ ラ ム の 30% を コ ン ピ ュ ー タ・ベ ー ス に す る こ と で あ る 。ま た 同 局 は 、
学生や職場で働く労働者に適切な情報通信訓練を提供する能力向上センターを高
等教育機関設立のために、企業と共同出資する考えである。同局は、諸種の政策
を 通 じ て 、 情 報 通 信 労 働 者 の 約 20% を 毎 年 再 訓 練 さ せ る こ と を 目 標 と し て い る 。
同局は、国家レベルで、訓練の枠組みを作成してさまざま情報通信訓練に関す
る技能とカリキュラムのガイドラインを確立してきている。また生産性基準局
48
( PSB)は 、労 働 者 の 能 力 向 上 に 向 け て 、現 在 、重 要 技 能 訓 練 プ ロ グ ラ ム を 実 行 し
ている。
シンガポールでは、情報通信の知識・技能の資格や認証の新しい枠組みが作成
さ れ よ う と し て い る 。 そ の よ う な IT 労 働 資 格 ( IT Manpower Certification) の
枠組みは、情報通信の役割や仕事、要求される能力決定のための資格・認証のロ
ー ド マ ッ プ と な る 。ま た そ の 枠 組 み は 、専 門 技 術 の レ ベ ル の 定 義 、IT 利 用 者 の 自
己 理 解 レ ベ ル の 測 定 、 さ ら に は IT 専 門 家 に 不 可 欠 な 20 以 上 の 重 要 技 能 の 評 価 に
役 立 つ 。シ ン ガ ポ ー ル・コ ン ピ ュ ー タ 協 会 、シ ン ガ ポ ー ル IT 協 会 、シ ン ガ ポ ー ル
情報技術連盟が、その枠組みを作成する予定である。
労 働 力 省 ( MOM) と 情 報 通 信 開 発 庁 ( IDA) は 、 2000 年 4 月 26 日 に 、 従 業 員 が
必 要 な 訓 練 を 受 け 情 報 通 新 分 野 へ の 転 職 を で き る よ う に し 、IT 専 門 家 の 不 足 に 対
応するための新しい政策を開始した。この政策により、従業員と雇用者は訓練費
用に対して政府から補助金を受けることになった。訓練コース料金の半額あるい
は 4000 ド ル 以 下 の 額 が 、新 し い 政 策 の 一 部 と し て 補 助 さ れ る 。こ の 計 画 に 参 加 可
能 な 者 は 、コ ン ピ ュ ー タ 科 学 や 情 報 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 関 連 の 資 格 を 有 し て い ず 、
情報通信の仕事への転職を考えるシンガポール市民かあるいは永住権保有者に限
定されている。
戦 略 的 人 材 転 換 プ ロ グ ラ ム( SMCP)促 進 ス キ ー ム と い う も う 一 つ の 計 画 が 、2000
年 10 月 14 日 に 開 始 さ れ た 。 先 の プ ロ グ ラ ム を 拡 大 し た も の で 、 対 象 者 は 、 使 用
者ではなく、個人である。このプログラムは、やる気のある個人が自発的に情報
通信産業へ転職していけるように奨励するものである。対象者としての申請資格
者は、情報通信の訓練を受けていない未経験のシンガポール市民か永住権保有者
でなければならない。
49
1999− 2001 年 情 報 通 信 技 術 者 増 加 率 ( 予 測 )
技 術 者 種 別
e コマース開発
インターネット開発
専門家支援サービス
ソフトウェア開発
コンサルタント/ビジネス分析
教育/トレーニング
マルチメディア開発
販売
ハードウェア研究開発
技術サポート/ヘルプデスク
データ通信及びテレコミュニケーション
マネージメント
ネットワーキング
増加率(%)
47
24
15
14
13
13
12
12
10
9
8
8
6
シ ン ガ ポ ー ル で は 、 こ の よ う に 在 シ ン ガ ポ ー ル の 労 働 者 を 教 育 、 訓 練 し て 、 IT
人材の確保に努めている。他方、それだけでは必要な需要を満たせないという考
え か ら 、 外 国 人 の IT 人 材 あ る い は IT 労 働 者 の 確 保 に も 躍 起 に な っ て い る 。 次 に
それをみていこう。
年 間 約 5000 人 の IT 外 国 人 労 働 者 が 、シ ン ガ ポ ー ル の IT 労 働 者 不 足 を 補 う た め
に 募 集 さ れ て い る 42 。「 1999 年 情 報 通 信 労 働 者 ・ 技 能 調 査 」 で は 、 情 報 通 信 ( IT)
技 術 者 の 外 国 人 比 率 は 27% で あ り 、そ の う ち 外 国 人 労 働 者 の 79% が 、マ レ ー シ ア
( 51% )、 イ ン ド ( 16% ) 43 、 中 国 ( 12% ) で 占 め ら れ て い る 。
情報通信開発局は、諸政府機関と協力しながら、自国の政策が世界の情報通信
技術者をひきつけ、確保できるように、次のような外国人技術者対象の政策を実
施している。
―他政府機関との協力のもと、情報通信技術者や卒業予定の外国人学生の募集目
的で、海外で人材募集および大学での募集推進活動の支援
―労働者不足問題緩和のための外国人技術者を募集する企業の支援
42 「 IT 人 材 は 世 界 中 で 不 足 し て い る と 思 わ れ る が 、そ の 中 で も 十 分 な 人 材 が い る と 思 わ れ る の は 中 国
とインドである。現在こうした国々から人材を雇用し、どのようにスキルアップさせていくことが
できるかについて様子をみている。どんな人材を雇用するかは企業次第である。ある程度スキルが
あ れ ば 、 分 野 に 関 係 な く ビ ザ を 発 給 す る 」( 政 府 系 機 関 の ヒ ア リ ン グ )。
43 ヒ ア リ ン グ に よ れ ば 、「 イ ン ド か ら 来 る 人 は 、こ の 国 で 働 く こ と を ア メ リ カ に 行 く た め の ス テ ッ プ と
している人が多い」という。また「プログラマーの下から中ぐらいのレベルまではインドからの人
材で十分である。その上になると、アメリカやヨーロッパから連れてきたりもする」という。
50
―高度な教育機関、コンタクト・シンガポールなどと協力して、新しい情報通信
コースへの高まる需要から不可欠となる情報通信教育スタッフの大幅な不足に
対応するべく優秀な情報通信の指導者や講師をシンガポールに招聘
国 際 経 営 開 発 研 究 所 ( IMD) に よ っ て 毎 年 実 施 さ れ 、『 世 界 競 争 力 年 報 2000 年 』
掲載の調査では、シンガポールは、外国人技術者の入国許可に関する政府の移民
政 策 の 自 由 度 で は 、第 1 位 に 格 付 け さ れ て い る 。2000 年 1 月 に 情 報 通 信 局 と 労 働
力 省 が 申 請 手 続 き を 迅 速 化 す る た め に 設 置 し た「 Inforcomm Queue」に よ っ て 、情
報通信関連の外国人技術者の雇用申請手続きは早く処理されるようになった。
政府はまた、海外からより多くの外国人技術者を獲得するために、民間企業の
NIIT ア ジ ア・パ シ フ ィ ッ ク と 最 初 の 契 約 を 結 び 、当 該 地 か ら 年 間 1000 人 の IT 専
門 家 を 動 員 し て も ら う こ と で 、シ ン ガ ポ ー ル の IT 労 働 者 不 足 を 緩 和 し よ う と し て
いる。
海 外 か ら の 人 材 の 誘 致 に 力 を 入 れ て い る 誘 致 機 関 と し て Contact Singapore を 、
ロンドンなど海外主要 6 都市に設立し、優秀な技術者のスカウトを進めている。
1998 年 の 情 報 通 信 労 働 者 の 離 職 率 は 、18% で あ っ た 。情 報 通 信 の エ ン ド ユ ー ザ ー
組 織 が 11% の 離 職 率 で あ る の に 比 べ て 、情 報 通 信 産 業 は 25% と 高 い 離 職 率 を 経 験
した。より多くの将来有望な若い専門家が、新しい種類の技術者を目指して、大
手 企 業 や 古 い 基 幹 産 業 で の 安 定 し た 仕 事 を 辞 め て い く の で あ る 。彼 ら は 、ド ッ ト・
コ ム 、IT 企 業 に 加 わ り 、自 分 で 情 報 通 信 関 連 の 新 企 業 を 立 ち 上 げ る こ と を 切 望 し
ているのである。
確かに情報通信関連の技術者は多くの仕事が約束されていて、報酬もよい。コ
ン ピ ュ ー タ 関 連 分 野 の 学 位 を 有 す る 新 卒 者 は 、 年 俸 3 万 330 ド ル か ら 3 万 3740
ドルを得ている。東南アジア地域コンピュータ連合による 9 ヶ国を対象にした調
査によると、シンガポールのコンピュータ専門家に支払われる給与は、この地域
で は 日 本 に つ い で 2 番 目 に 高 い 44 。そ れ に 比 べ て 、文 化 分 野 の 学 位 取 得 者 は 年 俸 2
万 3354 ド ル 、社 会 科 学 分 野 の 学 位 取 得 者 は 2 万 4018 ド ル を 得 て い る に 過 ぎ な い 45 。
しかし情報通信関連の技術者は、仕事が難しく、新しい技能が要求される。そ
44 Straits Times、 2000 年 11 月 28 日 。
51
の意味からも、人材需給の不均衡を最小限にするためには、必要な技能を身につ
けた労働者の訓練、教育が急務である。シンガポール国務省は、人材需給不均衡
問題が深刻になれば、経済成長が鈍り、社会的緊張が高まり、地域社会のまとま
りが弱体するだろうと述べている。
現 在 で は 、先 述 し た よ う に 情 報 通 信 職 の 約 50% が 、情 報 通 信 関 連 の 経 験 や 技 能
をもつ外国人技術者によって補われるという構図になっている。シンガポールの
企業からすれば、条件を満たした技術労働者が十分にいないのが現状であるが、
人 件 費 の 安 さ か ら 地 元 の 技 術 者 の 採 用 を 望 ん で い る 。こ の 意 味 か ら も 、IT 労 働 者
のミスマッチが起きてきているといえよう。
失 業 率 は 、 2000 年 の 第 1 四 半 期 に 2.9% か ら 3.4% へ 上 昇 し た 。 こ の 上 昇 は 、
主に就職希望者と雇用条件とのミスマッチによる。政府は、ニュー・エコノミー
に取り残されないためにも、自国労働者が新しい技能を習得し、職場での変化に
対応できるように努めている。政府は、企業に、スタッフの情報通信技能の継続
的 な 再 訓 練 と そ の 向 上 の た め に 資 源・資 産 を あ て る よ う 求 め て い る 。そ の 一 方 で 、
政府の役割は、実行される政策が確実に産業ニーズに合致するように保証してい
くことである。
シ ン ガ ポ ー ル は 2010 年 に IT 技 術 者 を 25 万 人 、 IT が 利 用 で き る 労 働 者 の 割 合
を 現 在 の 25% か ら 75% に 引 き 上 げ る こ と を 目 標 と し て い る 。外 部 か ら の 招 聘 も 進
めばこの目標は十分達成できると考えられる。
情 報 通 信 開 発 庁 (IDA)に よ る 、 1999 年 「 情 報 通 信 技 術 マ ン パ ワ ー 調 査 」 に よ る
と 、 情 報 通 信 技 術 技 術 者 は 、 99 年 末 時 点 で 92,800 人 だ っ た 。 今 後 も 同 技 術 者 の
需 要 は 順 調 に 増 加 し 、今 後 2 年 間 で 年 率 10-12% の 成 長 を 示 す と 予 想 さ れ る 。2001
年 に は 情 報 通 信 技 術 者 は 114000 人 に 拡 大 す る と 見 ら れ る 。ま た 2010 年 に は 約 25
万 人 の ICT 技 術 者 が 必 要 と 予 想 さ れ て い る 。
10. イ ン ド
1999 年 の 全 国 ソ フ ト ウ エ ア ・ サ ー ビ ス 企 業 協 会 ( National Association of
Software and Services Companies、 NASSCOM) と コ ン サ ル テ ィ ン グ 会 社 で あ る マ
45 日 本 労 働 研 究 機 構 [2001]、 31 頁 。
52
ッ キ ン ゼ ー に よ る 調 査 46 で 、米 国 、日 本 、ヨ ー ロ ッ パ を は じ め と す る 工 業 国 で 150
万人の専門家の不足が明らかになった。そのため、インド国内でも専門家は不足
しているが、多数の優秀なインド人人材が海外で就職しているため、インドでは
企業が適切な技能を持つ人材の十分な確保に苦労しており、人的資源が不足し、
技 能 格 差 が 広 が っ て い る 47 。 イ ン ド 政 府 は 、 こ の よ う な 問 題 に 対 処 す る た め に 、
2000 年 8 月 専 門 委 員 会 を 設 置 し 、 今 後 不 足 す る こ と が 予 想 さ れ る 80 万 人 の ソ フ
ト ウ ェ ア 専 門 家 を 2007 年 ま で に 供 給 す る た め に 、 Operation Knowledge プ ロ グ ラ
ムを開始した。
イ ン ド に あ る 工 科 大 学 な ど の 技 術 訓 練 機 関 は 、 現 在 エ ン ジ ニ ア 17 万 8000 人 と
IT 関 連 専 門 家 9 万 2000 人 を 養 成 し て い る 。 こ れ に 対 し て 、 情 報 技 術 大 臣 は 、 議
会 で「 政 府 は IT 関 連 分 野 で の 工 科 大 学 の 入 学 者 数 を 2001 年 か ら 2002 年 に か け て
2 倍 に 、2003 年 か ら 2004 年 に か け て 3 倍 に 増 や す た め に 措 置 を 講 じ る 」と 述 べ た 。
ま た 、イ ン ド 政 府 は 、現 在 お よ び 将 来 に わ た っ て 生 じ る 技 能 格 差 を 埋 め る た め に 、
世 界 銀 行 に 30 億 ル ピ ー の 融 資 を 申 し 入 れ た 。
イ ン ド は 現 在 、 約 28 万 人 の ソ フ ト ウ ェ ア 専 門 家 が お り 、 毎 年 7 万 3000 人 か ら
8 万 5000 人 が IT 関 連 学 校 を 卒 業 し て い る 48 。
先の情報技術大臣による発言のように、政府は工学・技術課程への入学者数を
今 後 2 倍 、 3 倍 に す る こ と を 計 画 し て い る 。 他 方 、 過 去 10 年 間 に 主 要 IT 関 連 学
校がいくつか設立され、フランチャイズ化や(最近では)インターネットを通し
て、狭い領域や狭いニーズにそくした教育を提供している。
しかしながら、その計画を実現していくためには、海外での有利な雇用機会が
あ り 、 教 員 に な り た い IT 専 門 家 は ほ と ん ど い な い た め 、 IT 教 育 の 教 員 数 が 非 常
に不足しているのが現状である。インフラの適切整備供給や意欲ある有能な教員
46 NASSCOM-Mckinsey
Study: Indian IT Strategy Summit, 1999.
が発表される予定である。
ま た 2002 年 4 月 に 、 そ の 改 訂 版
47 現 地 ヒ ア リ ン グ で は 、「 イ ン ド の 人 材 の 豊 富 さ が コ ス ト を 抑 え て お り 、 そ れ が イ ン ド の 強 さ で あ る 。
現 在 先 進 国 と の 賃 金 格 差 は 、 推 定 で ア メ リ カ の 14 分 の 1 で あ る 」「 し か し 、 高 技 術 者 に な る ほ ど こ
の 格 差 は 縮 ま っ て お り 、シ ス テ ム ア ナ リ ス ト で は 5 分 の 1、ネ ッ ト ワ ー ク 管 理 者 で は 3 分 の 1 と 縮 ま
っ て い る と の 指 摘 が あ る 。 将 来 的 に は 、 コ ス ト ア ッ プ の 問 題 が イ ン ド IT 産 業 の 直 面 す る 最 大 の 問 題
に な る 可 能 性 が あ る 。」 と い う 。 た だ 現 在 が こ の よ う な 賃 金 格 差 が あ る の で 、「 海 外 か ら の 転 入 は 困
難 で あ る 」( 現 地 ヒ ア リ ン グ よ り )。
48
こ れ ら の 数 字 も 資 料 に よ り バ ラ ツ キ が あ る が 、現 地 の ヒ ア リ ン グ に よ れ ば 、「 コ ン ピ ュ タ に 関 す る 学
科 を 持 つ 大 学 は 、 イ ン ド 全 国 で 約 300 校 あ る 。 毎 年 約 14000 人 程 度 が 卒 業 し て い る 。 し か し 、 IT 産
業 の 発 展 に 伴 い 、IT 技 術 者 の 需 要 に 追 い つ か ず 、他 学 部 卒 業 生 を 居 良 く し て 、IT 関 係 に 向 け て い る 。」
53
の 配 置 を し て 、IT 課 程 の 学 生 を 増 や す 努 力 を し な け れ ば 、大 量 の 適 格 な 専 門 家 の
育成はできないだろう。
イ ン ド に お け る ソ フ ト ウ ェ ア 会 社 は 、 そ の 事 業 収 入 の 内 12-15% を 従 業 員 教 育
の 訓 練 に 費 や し て い る 49 。 ソ フ ト ウ ェ ア 産 業 は 、 従 業 員 の 再 訓 練 に よ っ て 、 電 子
商 取 引 (EC)、ユ ー ロ・ソ リ ュ ー シ ョ ン 、IT 関 連 サ ー ビ ス な ど の 新 し い 分 野 に 移 行
す る こ と が で き 、イ ン ド の 同 産 業 は 開 花 さ せ て き た の で あ る 。ま た 2008 年 ま で に 、
イ ン ド に お け る IT 関 連 サ ー ビ ス は 、100 万 人 分 の 追 加 的 雇 用 を 生 み 出 し て 行 く こ
とが予想されている。
こ の よ う な IT ブ ー ム の 結 果 、 イ ン ド で は 、 IT 産 業 の ニ ー ズ に マ ッ チ す る 狭 い
分野や社会ニーズにそくした教育を提供する教育・訓練会社が急速に増加してい
る 50 。 し か し 、 こ の よ う な 現 状 に 対 し て 、 適 切 で 十 分 な 質 を 保 証 す る 制 度 が な い
ために、そのような機関で実施される教育・訓練の質の保証が難しいという問題
が生まれてきている。
また、このような現状からも明確なように、多くの実施されている教育・訓練
が 、 高 度 な 高 付 加 価 値 IT 技 能 習 得 の た め の 訓 練 で は な く 、 IT 事 務 員 の 育 成 に 向
けられているという懸念もある。そのため、先の工科大学における学生数の増加
の た め の 措 置 と も 連 動 す る こ と で あ る が 、 中 央 政 府 と 一 部 の 州 政 府 が Indian
Institute
of
Information
Technology(IIIT)International
School
of
Business(ISB)と い う IT に 関 す る 高 等 教 育 機 関 を 支 援 し 、1998 年 に 開 校 し た 。私
立 大 学 で は あ る が 、 外 国 の IT 関 連 企 業 等 と イ ン ド 国 内 の IT 関 連 企 業 が 共 同 し 、
政府が支援する形態である。このように、インドでは、政府、産業、アカデミッ
ク が 三 位 一 体 で 、 IT 産 業 を 育 成 す る 高 等 教 育 機 関 の 育 成 に 力 を 入 れ て い る 。
しかし、インドでの問題は、単に高等教育機関の設立ですべてが解決するとい
う単純なものではない。それは、インドでは本当に限られた少数の人々だけが教
育をはじめとして多額の資金を使いすぎていることである。また、これは先述し
たこととも関わるが、そのような質の高い教育の受益者の多くが、海外に金にな
る 雇 用 を 求 め て 出 て い っ て し ま う こ と で あ る 。さ ら に そ の 背 景 に は 、IT 人 材 の 不
という。
49 1999 年 に 実 施 さ れ た NASSCOM-Mckinsey 調 査 に お け る 推 定 に よ る 。
50 民 間 IT 教 育 研 修 期 間 は NIIT 社 と APTECH 社 が 大 手 企 業 で あ り 、イ ン ド 国 内 の 約 40% の シ ェ ア を
54
足 な ど か ら 、海 外 、特 に 日 本 、ド イ ツ 、米 国 な ど で の 雇 用 機 会 が 急 増 し ,各 国 で そ
のような専門家のビザの取得制限における緩和政策がとられているので、インド
を は じ め と す る 国 や 地 域 か ら 頭 脳 流 出 51 が 加 速 化 し て い る か ら で あ る 。
日 本 も 、イ ン ド の IT 人 材 確 保 の た め に 努 力 し て い る 。2000 年 10 月 、「 ASEAN+
3」 で 、 平 沼 通 産 大 臣 は ア ジ ア 諸 国 と の IT 技 術 者 試 験 相 互 認 証 制 度 を 提 案 し た 。
これについて、法務省も相互認証された試験の合格判定を上陸審査基準加えるこ
と を 前 向 き に 検 討 し て い る 。 そ の 先 陣 と し て 、 2001 年 2 月 、 日 印 間 で IT 技 術 者
試 験 に 関 す る 相 互 認 証 に 合 意 し た 。こ れ に よ っ て イ ン ド の IT 技 術 者 試 験( DOEACC)
「 A」 レ ベ ル 以 上 の 合 格 者 に 対 し て 「 技 術 」 資 格 が 認 め ら れ る よ う に な っ た 。
ア メ リ カ で は 、 熟 練 技 術 者 向 け H-1B ビ ザ の 発 行 が 緩 和 さ れ て き て い る 。 ま た 、
ヨーロッパではドイツ、イギリス、フランス、オーストリア、イタリアで、アジ
アでは日本において、熟練労働者不足があり、インド人にとっての雇用機会を生
み出している。このため優秀な情報技術専門家が有利でよい環境の雇用に就くた
めにインドを離れており、インド企業はこれまで人材不足に陥ってきていた。
ア メ リ カ の H-1B ビ ザ は 、 毎 年 、 総 発 行 の 半 分 が イ ン ド 人 IT エ ン ジ ニ ア に 発 行
されている。またドイツ、イギリス、シンガポールもインド人技術者の採用に熱
心 で あ る 。 こ の よ う な 結 果 、 こ れ ま で 毎 年 イ ン ド の 熟 練 IT 技 術 者 の 15% の う ち
その大半が、アメリカであるが外国へと出て行ってきていた。このような結果、
イ ン ド で 活 動 す る イ ン ド 系・外 資 系 IT 関 連 企 業 の 一 部 が 、他 の ア ジ ア 諸 国 、例 え
ば ベ ト ナ ム や イ ン ド ネ シ ア で IT 専 門 家 を 探 し 始 め て い る 。
このように多くの優秀なインド人の人材が海外に出てきていた。しかし、近年
このような傾向は流出する頭脳にとっては望ましいものということが明確に理解
されてきている。また、非居住インド人(インド国でなく海外で居住就業してい
るインド人)が全体として頭脳流出よりも頭脳流入に直接・間接に貢献している
との認識もある。
実際、今インドに帰国する潮流が起き始めてきている。この潮流は、アメリカ
に お け る IT バ ブ ル の 崩 壊 に よ り 、 IT 企 業 の 倒 産 、 コ ス ト の 削 減 の た め の 人 材 の
占める。
51 「 イ ン ド で は 、 英 語 が 第 二 言 語 と し て 流 通 し て い る た め 、 ま た 高 度 な 専 門 用 語 に 対 応 す る 母 国 語 が
ないため必然的に英語を使用するので、海外転出への抵抗感がない」という(現地ヒアリングによ
る )。
55
活用を従来のオンサイト的やり方からオフショア的なものに変えざるをえなかっ
たようなこととも関連しているので、短絡的に考えるべきではない側面もある。
し か し 、現 在 起 き て き て い る 現 象 は 、頭 脳 流 出( ブ レ イ ン・ド レ イ ン )で は な く 、
頭 脳 還 流 ( ブ レ イ ン ・ サ ー キ ュ レ ー シ ョ ン ) 52 で あ る 。 そ れ は 、 グ ロ ー バ ル 化 す
る経済、社会において、教育の機会に恵まれない国や地域の若者がアメリカをは
じめとする海外に留学し、職を得て人脈を築き、国境を越えたネットワークを形
成し、それを活用して、再び自分の母国との関係を構築することである。特にア
メ リ カ で 学 び 、 一 定 期 間 ア メ リ カ で 働 い た 多 く の ア ジ ア 人 53 が 、 自 分 の 出 身 地 と
シリコンバレーの間を往復し、アメリカで得た経験やノウハウを母国に還流して
いるのである。またこのような海外還流したインド人は、外国企業がインドでビ
ジネスを立ち上げる際にも重要な役割を果たしている。
こ の よ う な 認 識 の 変 化 に お い て 、次 の よ う に 主 張 す る 者 も 出 て き て い る 。「 政 府
は頭脳流出に対する取り組み方を抜本的に変えるべきだ。これまでのように、流
出した頭脳という資源の『回収』に力点をおくのではなく、海外在住者がインド
にもたらす開発の種を有効利用することによって、国内労働力の生産性を引き上
げ る こ と に 力 点 を お く べ き な の で あ る 」 54 。
IT 人 材 に お い て は 、 企 業 自 体 の 人
材 活 用 の 仕 方 、企 業 内 で の 動 き 、企 業 間 に お け る 動 き 、国 際 社 会 に お け る 動 く 等 々
をみていると、従来の人材に対する評価や認識を変えていかねばならないことが
わかる。
イ ン ド に お け る IT 人 材 の 収 入 に つ い て い え ば 、従 来 の 産 業 に 従 事 す る 労 働 者 が
日 給 で 1 米 ド ル に も 満 た な い 場 合 も あ る が 、 IT 産 業 の 知 識 労 働 者 で は 日 給 で 100
米 ド ル を 超 え る こ と も あ る 。 ま た 、 Infosys、 NIIT、 Satyam Computers な ど の 一
部のインド企業では、従業員全員にストック・オプションを付与している。また
多くのソフトウェア会社が、自由時間、スポーツ、レクリエーション、文化活動
を行う機会を提供したり、家族支援の方針をしたりも採用をしている。
ほ と ん ど の IT 企 業 に と っ て は 、従 業 員 が 定 着 す る 度 合 が 大 き な 問 題 で あ る 。そ
52 エ コ ノ ミ ス ト の ア ン ・ リ ー サ ク セ ニ ア ン の 言 葉 (『 フ ォ ー サ イ ト 』 2001 年 5 月 、 83 頁 )。
53 そ の 多 く が 、 イ ン ド 人 や 台 湾 人 な ど も 含 む 中 国 人 で あ る 。
54 ビ ノ ッ ド ・ カ ダ リ ア〔 ジ ャ ワ ハ ル ラ ル ・ ネ ー ル 大 学 経 済 学 助 教 授 〕[2001](「 知 的 労 働 者 の 海 外 流 出
― イ ン ド 頭 脳 流 出 の 第 二 世 代 効 果 ― 」 『 フ ォ ー サ イ ト 』 2001 年 5 月 号 )、 83 頁 。
56
の た め 、 一 部 の IT 企 業 は 人 的 資 源 の 担 当 取 締 役 の 主 要 成 果 と み な さ れ る 項 目 に
「 Infosys( 業 界 最 優 秀 と さ れ る 企 業 )か ら の 採 用 者 数 」の よ う な 事 項 も 含 め て い
る が 、従 業 員 の 引 き 抜 き を 相 互 に 行 わ な い こ と を 取 り 決 め て い る 競 合 他 社 も あ る 。
IT 産 業 は 労 働 法 の 変 更 を 強 く 求 め て き た 。 こ れ は 同 産 業 が 新 し く 産 業 で あ り 、
成長段階にあるため、それにそくした法律が必要と考えられるからである。また
同産業における主要な人的資源活動は、新規採用である。そのため従業員が雇用
保 障 を 気 に せ ず 、労 働 組 合 に 関 心 を 示 さ な い の も 不 思 議 で は な い 。し か し 、IT 従
業員の間には、自分の技能がすぐに必要とされなくなるのではないかという不安
がある。情報技術雇用関係法を制定し、他の法律と適用範囲が重複して混乱が生
じ る こ と の な い よ う に す べ き で あ る と い う 議 論 も 起 き て い る 。IT 産 業 は 保 険 制 度
を 立 案 し 、社 会 保 障 の 側 面 を 考 慮 す る こ と が で き る だ ろ う 。IT 産 業 問 題 を 知 識 労
働者に関する国家的課題とし、統一的な労働管轄機関を設置して、この産業の雇
用 関 係 に 起 因 す る あ ら ゆ る 問 題 を 取 り 扱 う こ と が 望 ま し い 。こ の よ う に 、IT 産 業
お よ び そ こ に お け る 人 材 を め ぐ っ て 様 々 な 議 論 や 動 き が 出 て き て い る と い え る 55 。
55
日 本 労 働 研 究 機 構 [2001]、 49− 51 頁 。
57
第 3章
日 本 の IT 労 働 市 場 と ア ジ ア IT 人 材 の 位 置 づ け
1. 日 本 の IT 労 働 市 場
情 報 技 術( IT)の 重 要 性 は 高 ま り 、日 本 で も 国 家 戦 略 と し て「 e -Japan 重 点 計
画 」が 策 定 さ れ て お り 、数 年 先 に は 日 本 が 世 界 最 先 端 の IT 国 家 と な る こ と を 目 指
し て い る 。こ こ に お い て 、情 報 通 信 産 業 、IT 産 業 の 社 会 的 役 割 は ま す ま す 増 大 し
ている。
日本の情報通信技術産業の従業者数は、アメリカ商務省「デジタル・エコノミ
ー 2000」 の 定 義 で 言 う と 、 1999 年 で 364 万 人 ( 民 間 総 従 業 者 に 占 め る 構 成 比 で
は 6.8% ) と な っ て い る 。 ま た 、 雇 用 者 数 で 見 れ ば 338 万 人 ( 構 成 比 で は 7.4% )
で あ る 1 。こ の デ ー タ を 、1994 年 と 比 較 す る と 、全 産 業 の 従 業 者 数 1.0% 減 に 対 し 、
情 報 通 信 技 術 関 連 産 業 従 業 者 数 は 0.5% 増 、総 従 業 者 数 に 占 め る 割 合 も 0.1% 増 と
高 ま っ た 。一 方 、ア メ リ カ の 情 報 通 信 技 術 関 連 産 業 に お け る 雇 用 者 数 は 、1998 年
で 516 万 人 ( 民 間 雇 用 全 体 に お け る 割 合 は 4.9% ) と な っ て い る 。 つ ま り 雇 用 者
比率を見た限りでは、日本がアメリカに情報化で後れをとっていないことが分か
る。
日 本 の 情 報 通 信 技 術 産 業 従 業 者 の 内 訳 2 を み る と 、4 割 が 製 造 業 で 最 も 多 く の 割
合 を 占 め る 。 サ ー ビ ス 業 ( 3 割 )、 卸 売 ・ 小 売 業 ( 2 割 ) が 次 に 続 き 、 残 り 1 割 が
運輸・通信業と建設業となっている。しかし増加率をみると、製造業では減少し
ているのに対して、サービス業の情報通信技術関連業種が大きく増加している。
特 に ソ フ ト ウ エ ア 業 や 情 報 処 理 ・ 提 供 サ ー ビ ス 業 で は 、 1999 年 と 1994 年 と を 比
べると、2 けたの増加である。また、電気通信・信号装置工事業や電気通信に付
帯するサービス業でも増加が著しい。
情報通信技術関連職業の雇用について、日本における情報通信技術関連職業の
就 業 者 数 は 、1999 年 の 推 計 で 328 万 人 と な り 、1995 年 と 比 べ 0.7% の 増 加 を み た 。
その内訳は、約 6 割が電気器具組立工など情報機器の製造部門の生産工程者や労
務作業者、約 3 割が情報処理技術者等の専門的・技術的職業従事者、約 1 割が事
務や運輸・通信従事者である。また増加率でみてみると、生産工程者や労務作業
1
厚 生 労 働 省 [2001]、 99 頁 。
2
厚 生 労 働 省 [2001]、 99− 105 頁 。
- 58-
者 は 減 少 し て い る が 、 専 門 的 ・ 技 術 的 職 業 従 事 者 が 1995 年 か ら 99 年 の 4 年 間 で
31.6% と い う 大 幅 な 増 加 を 示 し て い る 。 こ れ ら の こ と か ら も 、 情 報 通 信 技 術 関 連
雇用は、現在はまだ製造部門中心であるが、増加率でみてみれば、サービス業、
専門・技術職が増加傾向にあり、ソフト化・高度化が進行しているといえよう。
また、情報サービス業の雇用者数は全体傾向としては増加してきており、その従
業員の職業別構成をみてみると、近年では、キーパンチャーなどの比率が縮小し
ている。他方システム・エンジニアが拡大してきている。そのため、システム・
エ ン ジ ニ ア な ど の 人 材 、労 働 力 の 不 足 を 訴 え る 企 業 は 少 な く な い 3 。シ ス テ ム・エ
ンジニアの中でも特にネットワーク、コンサルティング、ビジネス・アプリケー
ション系の人材の不足が深刻である。
情報通信分野における人材不足度
ネ ッ ト ワ ー ク 系 SE
82%
コ ン サ ル テ ィ ン グ SE
79%
ビ ジ ネ ス ・ ア プ リ ケ ー シ ョ ン 系 SE
74%
デ ー タ ベ ー ス 系 SE
63%
そ の 他 の SE
54%
研究開発技術者
49%
プログラマー
38%
デ ザ イ ナ ー ( 画 像 、 CG、 ゲ ー ム 等 )
20%
回路設計者
7%
出所:財団法人
社会経済試算生産性本部『少子・高齢社会の海外人材
リソース導入に関する調査研究
報 告 書 』 平 静 13 年 4 月 、 16 頁
景 気 の 低 迷 お よ び IT バ ブ ル の 崩 壊 に よ り 、 2000 年 の 情 報 サ ー ビ ス 業 に お け る
雇 用 者 数 は 、全 年 比 1.1% の 減 少 を し て い る が 、52 万 8956 人 で あ る 。そ れ を 職 種
別 に み る と 「 シ ス テ ム ・ エ ン ジ ニ ア ( 22 万 4286 人 、 前 年 比 4.1% 増 )」、「 プ ロ グ
ラ マ ー( 11 万 1584 人 、1.8%増 )」、
「 管 理・営 業 部 門( 9 万 1174 人 、0.9% 増 )」が
増 加 し て お り 、 他 方 「 研 究 員 ( 7765 人 、 15.5% 減 )」、「 そ の 他 ( 含 オ ペ レ ー タ 、
3 社 会 経 済 生 産 性 本 部 [2001]、 15- 17 頁 を 参 照 。
- 59-
キーパンチャー)
( 9 万 3607 人 、14.6% 減 )」が 減 少 し て い る 。情 報 サ ー ビ ス 業 で
働 く 人 材 の 約 8 割 が 情 報 技 術 者 で あ り 、そ の 傾 向 が 強 く な っ て き て い る と い え る 4 。
ま た 、日 本 に お け る IT 人 材 不 足 状 況 に 関 し て 、シ ス テ ム 開 発 メ ー カ ー へ の ヒ ア
リ ン グ 調 査 に よ る と 、 次 の こ と が わ か っ て い る 5。
−特定分野の専門知識を有する人材はいるが、システム開発過程で様々な要素
を統合して製品化する人材が不足6
− UNIX や Java 関 連 の 技 術 者 の 不 足 7
本 調 査 の ヒ ア リ ン グ で も 、同 様 な 意 見 と 共 に 、プ ロ ジ ェ ク ト・マ ネ ー ジ ャ ー 8 の
不足が指摘されている。また、別の大手ベンダーやソフトウェア企業を対象に昨
年 後 半 実 施 し た 調 査 結 果 で は 、IT コ ン サ ル タ ン ト 、プ ロ ジ ェ ク ト・マ ネ ー ジ メ ン
ト 、 高 度 の IT ス ペ シ ャ リ ス ト の 不 足 が 指 摘 さ れ て い る 。
これらの調査等からいえることは、日本では、全体を見通し、統合的業務を進
め ら れ る IT 人 材 が 不 足 し て い る と い え る 9 。
日 本 に お い て も 、IT 人 材 の 不 足 に 対 し て 、い く つ か の 対 応 が と ら れ て き て い る 。
例えば、ネットワーク情報セキュリテイー・マネージャー推進協議会の設立(電
気 通 信 事 業 者 協 会 他 6 団 体 に よ る )、 そ の 不 足 に 対 し て の 優 秀 な 外 国 人 IT 人 材 の
受 け 入 れ へ の 期 待 の 高 ま り に 対 応 す べ く「 e -Japan 重 点 計 画 」に お け る 外 国 人 受
け入れ関連制度の見直しなどが行われてきている。
このような情報通信関連業種の雇用は、長期的にみた場合、今後とも増加傾向
にあると推測できるところである。
し か し 、他 方 、IT バ ブ ル の 崩 壊 、さ ら に は 長 期 的 経 済 不 況 の 中 で 、近 年 は 外 需
の 低 迷 と IT 関 連 需 要 の 落 ち 込 み が 続 い て い る 。 こ の よ う な 中 で 、 IT 部 門 ( 特 に
ハード系部門)を中心とする急激な業績悪化により、人員の余剰が生じ、企業に
よる事業再編へ向けた動きが顕著になっている。ただし、景気低迷等による若干
の落ち込みがあるが、ソフトウエアの開発などでは、これほどの業績悪化が起き
4 『 コ ン ピ ュ ー ト ピ ア 』 2001 年 9 月 号 、 14-16 頁 。
5 総 務 省 『 平 成 13 年 度 情 報 通 信 白 書 』、 127 頁 。
6
本調査で用いたクラスターでのマネジメント系にあたる。
7
本調査で用いたクラスターの技術系にあたる。
8 本調査で用いたクラスターでのマネジメント系にあたる。
9 本調査で用いたクラスターでのマネジメント系にあたる。
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ているわけでなく、先ほども述べたように、業種によっては深刻な人材不足が生
ま れ て い る 。そ の 意 味 で は 、日 本 の IT 労 働 市 場 に お け る ミ ス マ ッ チ が 惹 起 し て き
ているといえる。
東芝は半導体メモリー事業を分離し他社との事業統合を目指す。これには、韓
国や台湾企業などによる追い上げや市況の変動等でリスクの高いメモリー事業を
中長期的に事業の中核に位置づけることはできないとの判断があるといわれる。
NEC も 、ス コ ッ ト ラ ン ド 工 場 で の 生 産 を 2001 年 度 内 に 中 止 し 、日 立 製 作 所 と の 共
同 出 資 会 社 だ け に し 、 DRAM 事 業 を 縮 小 す る と い う 。
ま た AV 機 器 大 手 で あ る パ イ オ ニ ア や 日 本 ビ ク タ ー が 、携 帯 電 話 関 連 の 開 発 費 用
の 負 担 が 経 営 の 重 荷 で あ り 、デ ジ タ ル 家 電 な ど の 分 野 に 資 源 を 集 中 さ せ る た め に 、
携帯電話機事業から相次いで撤退し始めた。
事業合理化がこのように進展する中で、大規模な人員削減計画も進む予定され
て い る 。 そ の た め 、「 IT 不 況 」 が 原 因 で 、 雇 用 状 況 の 一 層 の 悪 化 を 招 く 可 能 性 が
出 て き て い る 。 2001 年 8 月 ま で に 各 企 業 に よ っ て 明 ら か に さ れ た 計 画 に よ る と 、
次の通りである。
富 士 通 は 連 結 ベ ー ス で 1 万 6400 人 の 削 減 、北 米・ア ジ ア 地 域 で の レ イ オ フ を 中
心 に 実 施 し 、国 内 は 早 期 退 職 制 度 や 自 然 減 を 中 心 に 5000 人 の 予 定 だ と い う 。つ ま
り NEC は 、欧 米 の 半 導 体 拠 点 縮 小 や 国 内 半 導 体 組 立 工 場 の 再 編 な ど を 実 施 し 、1999
年 度 か ら 2001 年 度 ま で に 1 万 5000 人 削 減 で 、う ち 2001 年 度 中 に 4000 人 を 削 減
す る 。 東 芝 は 国 内 で 2003 年 度 ま で に 1 万 7000 人 ( う ち 半 導 体 事 業 部 門 は 、 2001
年 度 中 に 前 倒 し で 3000 人 削 減 )を 、日 立 製 作 所 は 、2001 年 度 に 1 万 6350 人 、さ
ら に 海 外 を 中 心 に 2 万 人 前 後 を 削 減 す る 。松 下 電 器 産 業 も 2001 年 9 月 か ら 早 期 退
職 優 遇 制 度 を 導 入 し 、1 万 人 強 が 2001 年 度 中 に 退 職 見 込 み で あ る 。ソ ニ ー は 、2002
年 度 ま で に 1 万 7000 人 の 削 減( う ち 2001 年 度 中 に 4000 人 の 削 減 を 見 込 ん で い る )。
三 菱 電 機 は 、半 導 体 工 場 で の 期 間 中 を 2001 年 度 中 と 2002 年 度 中 に 各 1000 人 の 削
減を計画している。
これらの動きからも、
「 IT 部 門 の 業 況 の 急 激 な 悪 化 」が 、
「人員削減という企業
のスピーディーな対応」を起こし、それが最終的に「雇用情勢における急速な悪
化」を生み出す、という流れが見えてきている。このことからも、現在進行中の
景気における後退局面は、これまでのパターンとは異なった側面がある可能性が
- 61-
示唆されているといえる。
これらのことからもわかるように、必要とされる人材(不足人材)とそうでな
い人々(リストラ等の対象のなる人々)という 2 つの潮流が同時に生まれてきて
い る わ け で あ る 。別 の 言 い 方 を す れ ば 、IT に お け る 雇 用 に お い て ミ ス マ ッ チ が 生
じてきているといえる。
先述したように情報サービス産業は社会的のその重要性を増大させている。そ
の 分 野 に お け る 企 業 は 、急 激 な 技 術 革 新 へ の 対 応 、高 水 準 の IT 人 材 育 成 、情 報 シ
ステムやセキュリティーにおける信頼性の確保と向上等を図り、情報サービス産
業全体としては、組織、事業領域あらゆる面で従来の手法や考え方を変革し、引
い て は 社 会 全 体 に 構 造 や 手 法 、関 係 性 に 変 更 を せ ま る よ う な 状 況 に あ る と い え る 。
最 後 に 、 日 本 に お け る 外 国 人 の IT 人 材 に つ い て 付 言 し て お き た い 。 外 国 人 の
IT 人 材 が 日 本 に 在 留 す る に は 、 よ り 詳 し く は 後 述 す る が 、 IT 特 定 の 資 格 は な く 、
「 技 術 」 と い う 資 格 が 必 要 で あ る 。 そ の 資 格 者 数 は 2000 年 末 で 16531 人 で あ り 、
中 国 人 が 多 い 10 。 ヒ ア リ ン グ 調 査 に お い て も 、 IT 特 に ソ フ ト ウ エ ア 関 連 の 企 業 に
か な り の 数 の 中 国 人 IT 人 材 が 勤 務 し て い た 。 ま た 「 中 国 人 が 日 本 で 作 っ た IT 会
社 は 500 社 以 上 も あ り 、 遥 か に イ ン ド と 韓 国 を 上 回 っ て い る 。 取 り 扱 う 業 務 は 、
ソ フ ト 設 計 、 イ ン タ ー ネ ッ ト 広 告 な ど で あ る 」 11 と い う 。 ま た 、 実 数 は 必 ず し も
把 握 さ れ て い な い が 、イ ン ド 人 や 韓 国 人 な ど も 、日 本 で IT 産 業 の 中 で 活 躍 し て い
る。
2. ア ジ ア IT 人 材 の 位 置 づ け
1. で 述 べ た よ う に 、 日 本 の 労 働 市 場 、 特 に そ の う ち IT 労 働 市 場 に 起 き て い る
様 々 な ミ ス マ ッ チ に つ い て 考 え て み た い 。 そ こ で は 、 全 体 と し て は 、 情 報 化 、 IT
化を推し進め中で、日本社会の経済産業を転換し、それにそくした人材の育成、
転 換 を 図 っ て い く 必 要 が あ る こ と が 明 ら か で あ る 。今 日 起 き て い る IT バ ブ ル 崩 壊
に 基 づ く IT 関 連 製 造 業 に お け る リ ス ト ラ と そ れ に 基 づ く 失 業 者 の 増 大 、 他 方 IT
10
永 住 者 や 企 業 内 転 勤 の 在 留 資 格 者 等 は こ の 数 字 に 含 ま れ な い の で 、 IT を 含 め た 技 術 や 知 識 を 要 す る
業 務 に 従 事 す る も っ と 多 く の 外 国 人 が い る と 考 え ら れ る 。 ヒ ア リ ン グ で は 、「 日 本 に は 40 万 人 の 中
国 人 が お り 、そ の う ち コ ン ピ ュ ー タ や IT 業 界 に 関 わ る 中 国 人 は 数 万 人 い る と 言 わ れ て い る 」と い う
意見もあった。
11
中国現在国際関係研究所
情 報 社 会 研 究 室 [2002b ]、 11 頁 。
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産 業 特 に ソ フ ト ウ エ ア を 中 心 に し た IT 人 材 の 不 足 は 、同 一 線 上 に 並 ぶ 問 題 で は な
い 。前 者 関 連 の 人 々 を 再 教 育 、再 訓 練 し 、後 者 向 け の 人 材 に 転 換 で き れ ば い い が 、
一部の例外を除けば、それは現実的解決策にはなりえない。前者に関しては、繰
り返しになるが、日本の経済産業構造の変換とそれに適した人材の創出・転換と
いうかなり長期的なスパンで考えていかなければならない問題である。その問題
も、後者の問題と無関係ではありえないが、比較的短中期的に解決可能であると
思 わ れ る 。本 節 で は 、後 者 の 問 題 を 解 決 す る た め に 、ア ジ ア の IT 人 材 を 活 か す こ
とによる可能性、位置づけに焦点を当てて考えてみたい。
そ の た め に 、日 本 国 内 に お け る ア ジ ア IT 人 材 の 実 態 に つ い て 、ヒ ア リ ン グ 調 査
を行った。ヒアリングの対象となった件数(ヒアリング先リスト参照)は限定さ
れているが、日本における様々な業態の企業や団体を対象にヒアリングを実施し
たので、その成果は非常に参考になろう。そこで、先にそのヒアリングから得ら
れた重要なポイントを指摘すると共に、主なヒアリングの内容を掲載する。
3. ヒ ア リ ン グ か ら 得 ら れ た 重 要 な ポ イ ン ト
( 1) 外 国 人 の IT( 特 に ア ジ ア ) 人 材
* 日 本 に お い て も IT 人 材 の 不 足 が 叫 ば れ る が 、 外 国 人 ( 特 に ア ジ ア ) の IT
人材活用が進んでいるとはいえない。
* ア ジ ア IT 人 材 の 採 用 は 、人 材 確 保 と い う よ り も 当 該 企 業 の グ ロ ー バ ル 化 の
ためと回答した企業が複数あった。
* 国 内 で 活 躍 し て い る ア ジ ア の IT 人 材 が 、中 国 人 、韓 国 人 、イ ン ド 人 が 主 で
あ り 、中 国 人 が 圧 倒 的 に 多 い 。韓 国 人 の 場 合 は 、JAVA 言 語 に お け る 優 位 性
が あ る か ら で あ り 、中 国 人 や イ ン ド 人 は 人 件 費 が 相 対 的 に 安 い か ら で あ る 。
* 職種も比較的限定されている。ソフトウエア開発、ネットワーク系、エ
ンジニア系等。
* アジア人材のコストは、教育なども含めていくと、割安とはいえない。
* 海外からそれらの人材を連れてくる場合、言語・文化(契約や雇用に関
す る 認 識 の 違 い も 含 め て )・ 慣 習 の 違 い 等 が あ り 、 多 く の 問 題 が あ る 。 た
とえ来日前に、日本語や文化の研修を受けていても、日本社会での適用
に支障をきたすこともある。
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* 留学等で日本にいる人材の方が、言語や文化の違いなどにおける問題が
少ない。またビザがとりやすいので、日本国内での就労がしやすい。
( 2) 中 国 、 中 国 人 IT 人 材
* 在 日 の 中 国 人 IT 人 材 が 、 中 国 の 活 況 や 日 本 で の 生 活 の 難 し さ 等 か ら 、 最
近帰省し、中国で起業したりしてきている。
* 先 の 中 国 人 IT 人 材 の 賃 金 が 必 ず し も 安 価 で な い こ と も 手 伝 い 、中 国 の 企
業 と の 提 携 、中 国 に 子 会 社 等 を つ く る 動 き が 加 速 し て い る よ う に 感 じ る 。
中国人を日本に連れてくるよりも、中国の現地でソフト開発を行い、で
きたものを日本に持ってくる。それの方がコストにおけるメリットを享
受できる。その意味では、オンサイトからオフショアへがトレンドであ
る。ただし、これらの手法が成功するためには、日中の橋渡しになれる
人材、プロジェクト・マネージャーなどが重要かつ必要になる。
* 中 国 人 が 日 本 国 内 で 多 く の IT 企 業 を 立 ち 上 げ て き て い る 。仕 事 の し や す
さの面から、日本人と協力して設立しているのものも多い。
* またそれらの起業家の中国人が横のつながりを形成してきている。
( 3) IT 企 業 の 特 質
* IT、 特 に 製 造 系 で な い ソ フ ト 系 の 企 業 に お け る 業 務 は 、 そ の 特 性 、 イ ン タ
ーネットの発達等から、地理的制約からかなり自由になった。結果、一つ
の場所に定着して業務を遂行するよりも、最大の成果を生み出すために、
必要に応じて拠点を変えたり、様々な場所を転々と動きながら、全体をう
まくコーディネートし、業務を遂行していくことができるようになってき
て い る と 共 に 、む し ろ そ う す る 必 要 が で て き て い る 。そ の 意 味 で 、IT 人 材
がどの国いるか、どこにいるかはあまり重要でなくなってきている。
* 人 材 が こ の よ う な グ ロ − バ ル 動 き を す る の で 、逆 に そ の 能 力 を 平 準 化 し 、
評価する資格などは重要であろう。
( 4) 制 度 的 や 慣 習 的 問 題 点
* 就職先が一流企業であれば比較的問題がないが、ビザの取得が難しい。
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* 外国人が社会的信用をえるのが難しい。
* 子女の教育の問題。
* 日本の企業では昇進が難しい。
( 5) 日 本 、 日 本 企 業 、 日 本 人 の 問 題
* こ の よ う な ア ジ ア IT 人 材 の 受 け 入 れ の 問 題 を 考 え て い く と 、 日 本 社 会 、
日本企業、日本人がそれを受け入れる制度や体制を構築しているとはい
いがたい。
* 日本企業、日本人は、それらの人材を活用できる視野や能力、経験が
まだまだ不足しているのではないか。単に人材が不足しているので、数
の調達のために賃金が安いアジアから人材を連れてくることは安直な考
えではないか。
以 上 の こ と か ら も わ か る よ う に 、 ア ジ ア の IT 人 材 は 日 本 国 内 に お け る IT 人 材
の不足を一部補ってくれるもの、特に即効的、短期的にはそのような意味があろ
う が 、 そ れ を 完 全 に 充 足 で き る と も 思 え な い 12 。 今 日 の よ う に 高 失 業 率 下 で は 、
ドイツでのように、外国人雇用は難しい側面もなしとはしないところである。ま
た 現 状 と し て も 、ま た 今 後 に お い て も 、ア ジ ア の IT 人 材 を 単 に 日 本 国 内 に 連 れ て
くることには大きな疑問がある。そして、ヒアリングをした限りでは、それらの
人材の日本国内での数が今後飛躍的に増大するとも思えない。むしろ減少するこ
ともありえよう。
そ の 可 能 性 も 踏 ま え て 、IT と い う も の の 特 性 を 活 か し て 、留 学 や 仕 事 等 で こ れ
ま で に 日 本 に 関 わ っ て き た 人 材 の 活 用 を 図 り 、そ れ ら の ア ジ ア の IT 人 材 が 日 本 と
彼らの母国との橋渡しとなれるように、彼らを様々にサポートすることが必要な
の で は な い か 。ま た 、ア ジ ア の IT 人 材 と コ ミ ュ ニ ケ ー ト で き 、彼 ら と 共 同 作 業 が
できる日本人人材を育成していくことが必要であると思われる。そのような人材
が 、日 本 国 内 外 に 育 つ こ と が 、日 本 と い う も の を 起 点 に 、IT 産 業 を 育 て 、発 展 さ
せていかるようになると考えられる。
12
日 本 情 報 処 理 開 発 協 会 [2001]、 267 頁 以 降 を 参 照 。
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4. ヒ ア リ ン グ 結 果
ここに述べられているヒアリング結果は実施されたすべてのものではない。一
部は、その要点だけをまとめている。
1.
人材派遣、サービス業
A 企業(派)
(1)種 類 : 外 国 人 IT 人 材 派 遣 、 大 手
(2)IT 技 術 者 全 般 に つ い て
1)
IT 技 術 者 の 分 類 は
• ソフトウエア系とネットワーク系だけに絞って人材派遣をしている。その
各々半々ぐらいの人材を派遣しているが、最近は前者が増えている。
• そ の 2 種 類 の IT 技 術 者 が 日 本 市 場 で の 顧 客 ニ ー ズ が 高 い 。
(3)外 国 人 IT 技 術 者 に つ い て
1)
外 国 人 IT 技 術 者 の 採 用 実 績 は
• 現 在 は 外 国 人 、特 に 中 国 人 、イ ン ド 人 の IT 技 術 者 の み を 採 用 対 象 に し て い る 。
• 中 国 人 で 延 べ 100 名 、 イ ン ド 人 一 桁 程 度 の 採 用 ・ 派 遣 実 績 。
三 年 後 に は 500 名 、 さ ら に 1000 名 を 考 え て い る が 、 現 実 は 厳 し い 。
• 外 国 人 IT 技 術 者 で 日 本 に 来 た い と い う 目 的 ( 働 く ニ ー ズ 。 先 進 国 に 来 て 自 己
の市場価値を高める)と人材がほしいというニーズ(使う方のニーズ。イン
ド人や中国人を安く活用し、企業利益を生む)を合わせようとしているが、
需給関係がまだうまくいっていない。ただし、当社はいい人材といい要望が
集まってくる。
• 需 給 に は ギ ャ ッ プ が あ る が 、そ れ を 埋 め る た め に 付 加 価 値 を つ け る た め に「 育
成型」をとっている。即戦力を考えているが、実際には難しく、教育し、ギ
ャップを埋めて補っている。
2)
外 国 人 IT 技 術 者 の 処 遇 等 は
• 当社の採用としている。本来は 3 年契約ぐらいにしたいが、1 年契約。
働いていない(例えば、日本語等を学んでいる)時も給与保証。
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• 給与は、日本人と同じかそれ以上である。
• 当社が、渡航、日本語教育、日本国内でのサポート等を行っている。
3)
外 国 人 IT 技 術 者 の 募 集 は
• グループ会社やパートナー企業との連携、現地のサポート体制をとりながら
できるだけリスク・ヘッジしながら、募集している。
• 資 格 は 、 工 学 系 大 学 卒 、 専 門 で 10 年 以 上 の 職 務 経 験 ( こ れ は 必 ず し も 問 題 に
な ら こ と も あ る )、 日 本 ( 日 本 語 や 文 化 ) へ の 意 欲 な ど で あ る 。
4)
外 国 人 IT 技 術 者 の メ リ ッ ト 、 デ メ リ ッ ト は
• やはり言葉や文化の違い、企業とのコミュニケーションに問題があり、人材
と企業にミスマッチが生じることもある。日本に来る前に、言葉や文化を教
えているがそれでもうまくいかないこともある。
• 入管の問題もある。一時は緩くなっていたが。また厳しくなってきている。
ただ当社は実績があるので、入管の問題も比較的クリアーしやすい。
• 現在日本に来ている人材は、レベルが高く日本で不足しているあるいはいな
い人材(プロジェクト・マネージャーとか日本人がもっていないビジネスモ
デルを持っている人材)で、日本にとってメリットがある。
7)
外 国 人 IT 技 術 者 の 日 本 語 研 修 は
• 来日前に行っている。
(4)
その他
• 日本国内で、海外の人材を活用することはまだよく理解されていない。しか
し、日本が生き残るためには、海外の人材をもっと活用することが必要。そ
のためにも、その理解の向上のために、政府が補助金をだしたり、企業が外
国人を活用することに補助金をだし、その必要性を理解したり、あるいはそ
の企業自体が外国人人材活用の機会を高めることが必要である。
• IT 技 術 者 で は 、 今 は 中 国 人 で あ る が 、 今 後 は イ ン ド 人 ま た 在 日 の 外 国 人 を 活
かすことを考えるべきであろう。
• 外 国 人 IT 技 術 者 の 雇 用 に お い て 障 害 に な る 日 本 語 や 日 本 の 商 慣 行 を 、 母 国 で
研修することで、その障壁をとり、技術をより有効に活用しようという戦略
である。
• 比較的長期の教育期間があるようだが、それでも語学的に十分でないことも
- 67-
あり、また教育にお金をかけた場合金銭的にペイできるという問題も生まれ
る。
B 企業(派)
(1)種 類 : 企 業 種 類 総 合 人 材 サ ー ビ ス 企 業
(2)IT 技 術 者 全 般 に つ い て
1)
IT 技 術 者 の 分 類 は
• IT 技 術 者 の 分 類 は 、① シ ス テ ム・エ ン ジ ニ ア( オ ー プ ン 系 開 発 / 汎 用 系 開 発 )、
② テ ク ニ カ ル ・ サ ポ ー ト ・ エ ン ジ ニ ア 、 ③ ネ ッ ト ワ ー ク ・ エ ン ジ ニ ア 、 ④ IT
コンサルタントである。
• ②∼④はかなりの日本語能力が必要、特に④は折衝を行う。③と④は各企業
内 で 働 く 。 し た が っ て 、 外 国 人 IT 技 術 者 は 基 本 的 に ① の オ ー プ ン 系 開 発 を 受
け持つ。
• IT 業 務 は 、 下 か ら ① プ ロ グ ラ マ ー 、 ② SE、 ③ コ ン サ ル テ ィ ン グ と な っ て い る
が ( 会 社 の 役 職 で 言 え ば 、 社 員 、 課 長 、 部 長 )、 当 社 が 派 遣 し て い る の は 基 本
的 に SE。 プ ロ グ ラ マ ー は ル ー テ ィ ン 業 務 で あ り 、 ア メ リ カ で は イ ン ド 人 や 中
国人が行っている。
2)
IT 技 術 者 の 採 用 は
• 随時行っている。
3)
IT 技 術 者 の ニ ー ズ は
• 現 在 は JAVA の で き る 技 術 者 に 対 す る ニ ー ズ が 高 い 。 こ の 言 語 が で き る 日 本 人
は少ない。
4)
IT 技 術 者 の 流 動 化 に つ い て は
• 何 年 か 働 く と 正 社 員 に な る 人 が 多 い ( 特 に 外 国 人 IT 技 術 者 の 場 合 )。 当 社 は
紹介業務も行っているので、派遣社員が正社員となることはかまわない。
• 他企業への人材流出に対するケアはしていない。それにコストをかけるより
も、新規採用に力を入れた方が効率的だと思っているから。
5)
IT 技 術 者 の ス キ ル ア ッ プ に つ い て は
• 当社で研修制度をもっている。
- 68-
(3)外 国 人 IT 技 術 者 に つ い て
1)
外 国 人 IT 技 術 者 の 採 用 実 績 は
• 4 年 ぐ ら い 前 か ら 外 国 人 IT 技 術 者 の 派 遣 を 始 め た 。 派 遣 を 始 め た 理 由 は 、 日
本人でいなかったから。最初抵抗を感じる派遣先もいたが、ほとんどの会社
が 一 度 受 け 入 れ る と 外 国 人 OK と な る 。 た だ し 、 外 国 人 で は 困 る と い う 会 社 も
あることも事実で、総じて外資系はよいが、日系企業では抵抗感が強い。
• こ れ ま で 60 人 ほ ど を 派 遣 。 現 在 は 25 名 で 、 こ れ は 当 社 が 派 遣 し て い る IT 技
術 者 の 10% 弱 。 国 籍 は 8 割 が 韓 国 、 残 り が 中 国 、 若 干 イ ン ド 。 現 在 は 韓 国 、
中国。
• 中国、インドについては、国内企業に派遣するというよりも、海外へのアウ
トソーシングという形式で、日本企業と現地企業の仲介者となる人材を紹介
している。形式上は、現地企業に正社員として採用してもらっている。
2)
外 国 人 IT 技 術 者 の 処 遇 等 は
• 面 接 に 合 格 し た 者 に つ い て は 、「 技 術 」 資 格 で 当 社 の 契 約 社 員 ( 契 約 1 年 ) と
し て 採 用 し 、 各 企 業 に 「 出 向 」 す る 。 面 接 か ら 入 国 ま で 2-3 ヶ 月 ( 入 国 手 続
き 等 )。 そ の 間 に 出 向 企 業 を 決 め る 。
• 採用にあたっては、住居は当社で探し、会社名で契約する。ただし家賃補助
なし。
• 年金に関しては、採用時に説明し納得してもらうしかないのが現状である。
3)
外 国 人 IT 技 術 者 の 募 集 は
• 韓国については、現在月に一度韓国に行って採用している。韓国ではヘッド
ハ ン テ ィ ン グ 事 業 が 盛 ん で 、 現 在 10 数 社 と 提 携 し て い る 。 そ の 会 社 が 1 次 面
接 を 行 い 、 能 力 面 の チ ェ ッ ク は し て く れ て い る 。 韓 国 で は 1 回 に 10 人 ほ ど 面
接し、うち 2 人ぐらいを採用。この面接は基本的に日本語能力のチェックで
ある。
• 中国人については、これまで、現地採用し入国手続きを行った後に失踪する
などの事件があったので、現在では新規採用をしていない。
4)
外 国 人 IT 技 術 者 の 説 明 会 ( 2002 年 2 月 14 日 開 催 ) に つ い て
• 今 回 初 め て 外 国 人 IT 技 術 者 に 対 す る 説 明 会 を 開 催 す る の は 、 国 内 採 用 な ら ば
紹 介 手 数 料 を 払 わ な く て よ い と い う こ と か ら ( 前 日 時 点 で の エ ン ト リ ー 者 20
- 69-
名 )。
• また、すでに日本にいる外国人を対象としていることから、ある程度日本の
文化や商慣習に親しんでいるというメリットもある。
• 今 回 の 結 果 を み て 、 今 後 は 国 内 の 外 国 人 IT 技 術 者 採 用 を 拡 大 し て い き た い 。
5)
外 国 人 IT 技 術 者 か ら 何 か 要 望 が あ っ た か
• 外国人側からの要求としては、まとまった休暇(本国への帰省)が欲しいと
いうこと。
• 韓 国 の 場 合 、 20 代 後 半 の 人 で 、 単 身 で 来 日 し 、 そ の 後 家 族 を 呼 び 寄 せ る と い
う 形 。 3 割 ぐ ら い が 家 族 を 同 伴 す る 。 子 ど も が い る 人 も 10 人 弱 い る が 、 学 齢
期の子どもは 1 人ぐらいなので、教育に関する要望は聞いていない。
• 韓国人は日本に来たいという人が多く、その多くがステップアップ、キャリ
アアップとして考えているようだ。
6)
外 国 人 IT 技 術 者 の メ リ ッ ト 、 デ メ リ ッ ト は
• 国籍によって役割は異なっており、韓国人については、コスト面では日本人
とほぼ同等であるが、能力、特にネットワーク系に優れている。勤勉さも評
価できる。中国とインドに関してはコストの優位性からである。
• 韓 国 に は JAVA 言 語 が で き る エ ン ジ ニ ア が 多 い と い う こ と 、 ま た 、 日 本 語 の で
きる人が多いこと、儒教の国ということで気質的にも真面目で国民性が近く、
日本企業になじみやすいということが利点である。
• 中国人は金額面での交渉が実にシビアである。プロジェクトの中心になった
ところで、金額を交渉してくるので、少々困っている。
7)
外 国 人 IT 技 術 者 の 日 本 語 研 修 は
• 特に行っていない。
(4)
その他
• 今後は東アジア、特に台湾、中国、韓国、シンガポール、ベトナムなどでの
人材供給を考えている。将来的には日本人を海外企業に紹介すること視野に
入れている。
• 現在中国にブランチを置くことを検討中である。コスト的には赤字であるが、
当社としてのブランド名を売っていくという将来に向けての投資である。
• 現 在 韓 国 で は 、雇 用 契 約 期 間 が 1 年 に 満 た な い「 非 定 期 職 」が 賃 金 労 働 者 の 5
- 70-
割 を 超 え て い る 13 。そ の よ う な 状 況 か ら 判 断 す る と 、JAVA 言 語 が で き る 技 術 者
が多いということ、日本的商慣行になじみやすく勤勉であるということから、
韓 国 は 今 後 重 要 な IT 労 働 者 の 供 給 源 と な る で あ ろ う 。
• 中 国 へ の 人 材 供 給 に つ い て は 、ヒ ア リ ン グ 後 の 新 聞 で 報 道 さ れ て い た 1 4 。中 国
におけるコスト面の魅力を十分にいかすためには、日本的な商慣行に通じた
人材が必要となってくるだろう。このような人材としては日本人、本国人の
両方が考えられる。
C 企 業 ( 派 ) 15
(1)
種 類 : IT 技 術 者 専 門 ( イ ン ド 人 ) の 人 材 派 遣 業
(2)
イ ン ド 人 IT 技 術 者 紹 介 業 務 に つ い て
1)
IT 技 術 者 の 分 類 は
• 現 在 ニ ー ズ の あ る JAVA、 及 び マ イ ク ロ ソ フ ト の ASP が で き る 技 術 者 の 派 遣 か
ら始めた。
• また、地元のトヨタからのニーズにも対応できるように、トヨタ向けのエン
ジニアも養成していく予定である。
2)
インドとどのような連携システムをとっているか
• イ ン ド の プ ネ 市 の SEED と い う IT 教 育 会 社 と 提 携 し 、 現 地 に て ① 日 本 語 を 用
い た IT 教 育 、 ② 日 本 で の ビ ジ ネ ス マ ナ ー や 日 本 的 生 活 対 応 能 力 と い っ た
Culture Translate を ト レ ー ニ ン グ し 、「 日 本 語 が 使 え る イ ン ド 人 IT 技 術 者 」
を養成する。
• 卒 業 試 験 に よ っ て IT 人 材 と し て の 評 価 を 行 い 、日 本 の ア イ ポ ッ ク で 採 用 す る 。
13
2002 年 2 月 18 日 朝 日 新 聞 朝 刊
< 当 社 、 中 国 へ の 日 本 人 SE 紹 介 >
人 材 サ ー ビ ス の 当 社 は 「 3 月 、 日 本 人 の シ ス テ ム ・ エ ン ジ ニ ア ( SE) を 中 国 企 業 に 紹 介 、 就 職 を あ
っ せ ん す る 事 業 を 始 め る 。中 国 で は 日 本 企 業 向 け の シ ス テ ム 開 発 が 急 成 長 し て い る が 、発 注 元 と 日 本 語
で 打 ち 合 わ せ が で き 、納 期 、報 告 書 の 書 き 方 な ど 日 本 の 商 習 慣 に 詳 し い SE の ニ ー ズ が 現 地 で 高 ま っ て
いるのに対応する。
3 月 中 に ま ず 10 人 を 選 び 、 中 国 企 業 に 就 職 さ せ る 。 現 在 の 年 収 が 600 万 円 程 度 の プ ロ ジ ェ ク ト ・ マ ネ
ジ ャ ー 層 を 中 心 に 集 め た い 考 え で 、 軌 道 に 乗 れ ば 年 間 約 30 人 規 模 で 人 材 を 紹 介 す る 。 実 際 の 採 用 は 、
就 職 先 と な る 中 国 企 業 の 代 表 者 が 来 日 し て 面 接 後 、 決 め る 。 待 遇 は 就 職 先 に よ っ て 異 な る が 、 月 給 20
万 ― 30 万 円 程 度 を 保 証 す る 。
日 本 国 内 で の S E 不 足 を 受 け て 、昨 年 か ら 中 国 人 技 術 者 を 雇 用 す る 動 き は 活 発 だ っ た が 、中 国 企 業 に
日 本 人 S E の 紹 介 を 事 業 化 す る の は 初 め て と い う 。当 社 は 紹 介 手 数 料 と し て 、SE の 年 収 の 20− 25% 程
度 を 受 け 取 る 。」(『 日 本 経 済 新 聞 』 朝 刊 2002 年 2 月 25 日 付 よ り )
15 こ の 企 業 に つ い て は 、 電 話 に て 個 別 に ヒ ア リ ン グ 。
14
- 71-
イ ン ド で の ト レ ー ニ ン グ 期 間 は 2 ヵ 月 を 目 標 と し て い る 。第 1 期 に つ い て は 2
ヵ月半を要した。
3)
採用
• 「技術」の在留資格で、当社に契約社員として採用する。業務請負の形で取
引 先 に 派 遣 す る ( 当 社 自 身 は 一 般 派 遣 業 の 許 可 も 得 て い る )。
• 入国手続き等一切は当社で行う。
• 日本に入国後 1 週間ほど日本での生活についてのオリエンテーションを行う。
4)
IT 技 術 者 の 派 遣 状 況 は
• 3 月 1 日より、3 名の派遣が始まる。3 月中にさらに 6 名の派遣がある。
• 5 月には、東京事務所から関東圏向けの派遣を開始する予定である。
• 全 員 が 20 歳 代 前 半 で 、 単 身 で 来 日 し て い る 。 戦 略 的 に こ の よ う な 年 代 を ね ら
っている。
5)
IT 技 術 者 の 処 遇 は
• 住居から日常生活用品のすべて(ふとん、電化製品、食器など)を当社が用
意する。
• 給与等は、スタート地点では若干日本人技術者よりも低いが、同等とするこ
とを目標としている。
(3)
1)
IT 技 術 者 に つ い て
な ぜ イ ン ド 人 IT 技 術 者 な の か
• IT 人 材 の な か で の 技 術 の ミ ス マ ッ チ が あ る 。 IT 技 術 の 進 歩 は 目 覚 し く 、 道 具
が次々と変わっていっている。日本人は新しい道具に対しての勉強が遅い。
インド人の方が勤勉である。
• ま た 、 IT 技 術 の 基 本 ド キ ュ メ ン ト は 英 語 で 書 か れ て い る 。 日 本 語 に 翻 訳 さ れ
た時点でその技術は既に時代遅れになっている。その意味で、英語で技術を
習得できる人材が必要である。
2)
今 後 の IT 技 術 者 の 動 向 に つ い て
• 時 代 は International Working Share で あ り 、 こ れ か ら 日 本 は 第 二 の 開 国 ( 雇
用面)を迎えるはずである。
• 外 国 人 IT 技 術 者 は 決 し て 安 価 な 労 働 力 で は な く 、 す ぐ れ た 技 術 者 で あ る 。
• IT 技 術 者 の 移 動 は ま す ま す 加 速 化 し 、 つ い に は 日 本 人 技 術 者 が イ ン ド 人 技 術
- 72-
者に雇用されるという時代が来るはずである。
3) そ の 他
• 外 国 人 IT 技 術 者 の 雇 用 に お い て 障 害 に な る 日 本 語 や 日 本 の 商 慣 行 を 、 母 国 で
研修することで、その障壁をとり、技術をより有効に活用しようという戦略
である。
• 事 業 の 成 否 は 、2 ヶ 月 程 度 で 日 本 の 文 化 習 慣 に つ い て ど こ ま で に つ い て 習 得 で
きるかにかかっているだろう。
• ま た 戦 略 的 に 20 代 前 半 の IT 技 術 者 を タ ー ゲ ッ ト と し て い る こ と 、 住 居 を は
じめとする生活一切を会社でサポートすることで、外国人雇用におけるいく
つかの問題をクリアーしている。
2.
技術等系
D 企業
(1)種 類 : 日 系 、 ソ フ ト 系 中 小 企 業
(2)
1)
IT 技 術 者 全 般 に つ い て
IT 技 術 者 の 分 類 は
• ① ビ ジ ネ ス ・ ア プ リ ケ ー シ ョ ン ・ ソ フ ト 系 、 ② 制 御 系 ( 主 に C 言 語 使 用 )、 ③
ネットワーク系に大別される。③についてはごくわずか。
• 外 国 人 IT 技 術 者 は 、 基 本 的 に ① を 担 当 。
2)
IT 技 術 者 の 現 状 は
• 現 在 IT 技 術 者 は 100 名 ほ ど 。 新 卒 で 採 用 し た 人 の 方 が 多 い 。 毎 年 30 人 ぐ ら
い採用し、最初の 1 年間にだいたい 5 名ほど退社する。
• ま た 、 下 請 け に 90 名 ほ ど の 技 術 者 が い る 。
3)
IT 技 術 者 の 採 用 は
• 新 卒 に つ い て は 、求 人 誌 や 大 学 訪 問 、学 校 に よ る 企 業 説 明 会 1 6 な ど 。最 近 は IT
業界が認知され始め、求人も多くなってきている。
• 新卒採用は理系、文系を問わない。
• 中 途 採 用 に つ い て は 、求 人 誌 や ネ ッ ト 、公 的 機 関( 人 材 銀 行 や 職 安 )を 利 用 。
しかし、これまでの経験では会社に溶け込めないような変な人が多く、だい
16
98 年 か ら 専 門 学 校 、 99 年 か ら 東 京 の 大 学 、 2000 年 か ら 大 阪 の 大 学 で 行 わ れ る よ う に な っ た 。
- 73-
たい 1 年ぐらいで辞めてしまう。
• 中途採用については、縁故(紹介)の方が信頼が置ける。
4)
IT 技 術 者 の ニ ー ズ は
• プログラミングについては、若手の方が生産性が高い。
• 30− 35 歳 ぐ ら い の プ ロ ジ ェ ク ト ・ リ ー ダ ー が で き る 人 材 が 欲 し い 。 IT 関 連 の
知識があって、かつプロジェクトを動かす責任感がある人材。
• 一 部 上 場 企 業 の 第 二 新 卒 に 注 目 し て い る 。 IT 業 界 で な く て も 、 会 社 で 技 術 を
つけることも可能。
• 欲しい人材は、技術も確かに大切であるが、チームで作業を行うということ
から、誠実さなどの人柄やコミュニケーション能力がある人。
• プロジェクトは納期などかなり厳しい条件が要求されることから、転職の多
い人は警戒感をもってしまう。
• 旧情報処理 1 種資格を持っているならば大丈夫。
5)
IT 技 術 者 の 流 動 化 に つ い て は
• 当 社 の IT 技 術 者 が こ れ ま で ヘ ッ ド ハ ン テ ィ ン グ さ れ た と い っ た よ う な こ と は
聞いていない。
• 優秀な技術者は、会社として待遇面等で大切にしている。貴重な人材に対し
ては、それなりの賃金を支払っているので、辞めるようなことはない。
• 流動化しているのは、役に立たない人の方ではないか。確かに総務系の仕事
よりも仕事はたくさんあるので、派遣や個人で独立することも可能であるか
ら。
6)
IT 技 術 者 の ス キ ル ア ッ プ に つ い て は
• 新 卒 の 場 合 、1-2 ヶ 月 集 中 し て 研 修 を 行 い 、そ れ 以 降 は 実 際 の プ ロ ジ ェ ク ト に
入って習得してもらう。
• 社 外 の 研 修 も 積 極 的 に 利 用 し て も ら う 。そ の 際 、研 修 費 、交 通 費 は 会 社 負 担 。
出勤扱い。
• 認 定 資 格 に つ い て は 、 受 講 料 負 担 と 給 与 へ の 反 映 ( 月 5,000 円 )
7)
IT 技 術 者 の 評 価 は
• クライアントが下す評価が一番大切である。したがって、社内では特別なテ
ストなどしていない。
- 74-
8)
ビジネス・アプリケーション・ソフト作成の工程は
① 調査分析:現状システムの調査
② 要件定義:クライアントのニーズと予算の相談
③ 基本設計:日本語による設計図作成
④ 詳細設計:プログラムの設計
⑤ 製造:プログラミング
⑥ テスト:動作テスト(単体テスト→結合テスト→総合テスト)
⑦ 納品
⑧ 保守
* ①∼④の工程ならば、プログラム言語の能力はそれほど必要がない。む
しろそれぞれの分野の業務知識が必要とされる。
* ⑤、⑥、⑧はそれぞれのプログラム言語能力が必要である。
* ⑤ の 製 造 と 、⑥ の 単 体 テ ス ト 、結 合 テ ス ト の 工 程 な ら ば 、外 国 人 IT 技 術
者を活用できる。
9)
IT 技 術 者 の 言 語 ニ ー ズ は
• Visual Basic は 一 般 の 人 で も 使 え る よ う に な っ て い る の で 、 今 後 あ ま り 必 要
ないだろう。オープン系としては C 言語が必要。
• 汎用系ではコボル言語のニーズが高い。これは、生保や銀行の事務処理など
に必要とされる言語である。現在、合併の動きの中で特需が起きている。だ
がこの現象は長期的には衰退を意味する。なぜなら、合併統合によって、今
後の保守にニーズが半減するから。
• ウ ェ ー ブ 系 で は 、 2 年 前 ぐ ら い か ら 実 務 で 使 用 さ れ る よ う に な っ た JAVA 言 語
が今後 5 年ぐらいは主流となるだろう。これは、企業の基幹部で使用され、
24 時 間 対 応 可 能 な も の で あ る 1 7 。
• 基本的には、一人の技術者が複数の言語を扱うことは無理だと思う。
(3)
1)
外 国 人 IT 技 術 者 に つ い て
外 国 人 IT 技 術 者 の 採 用 実 績 は
• 98∼ 99 年 の 間 、10 人 の 中 国 人 IT 技 術 者 を 雇 用( 全 IT 技 術 者 110 人 の う ち )。
• 採用方法は、①大連工科大学の大学院を出て当社で働いていた社員を通して
17
シ ス テ ム の 規 模 と し て は 、 そ の 下 に 、 ASP、 CGI と い っ た も の が あ る 。
- 75-
大連で面接を行って採用、②中国の現地法人で採用され、日本へ来て他社で
働 い て い た 人 を 採 用( 当 人 か ら 雇 っ て ほ し い と 申 し 出 が あ っ た )な ど で あ る 。
• 日本語能力については、できる者もほとんどできない者もいた。
• ほ と ん ど が 25∼ 30 歳 、 既 婚 者 は 単 身 で 来 日 し 、 後 か ら 家 族 を 呼 び 寄 せ る 。
2)
中 国 人 IT 技 術 者 の 処 遇 等 は
• 在 留 資 格 「 技 術 」 と し て 、 10 人 と も 正 社 員 と し て 採 用 し 、 日 本 人 と 同 等 の 待
遇を行っていた。
• 保険や年金については、あえて説明せず、退社時に返金手続き等を教えた。
3)
中 国 人 IT 技 術 者 か ら 何 か 要 望 が あ っ た か
• 日本語を学習する機会が欲しいと言っていた。会社からの特別な支援なし。
4)
中 国 人 IT 技 術 者 の メ リ ッ ト 、 デ メ リ ッ ト は 、
• 中 国 人 IT 技 術 者 に つ い て は 、 中 国 で は 、 基 礎 能 力 、 す な わ ち 学 力 が 優 れ て い
る 人 材 が IT 業 界 に 参 入 し て い る こ と が 、 雇 用 者 に と っ て の メ リ ッ ト で あ る 。
• デメリットとしては、国民性の違いから利害関係に極めてドライであること、
契約等において金銭的に譲歩しないことである。
• また言葉の壁も大きい。設計書を読む場合でも、日本語のニュアンスがわか
ら な い 、行 間 が 読 め な い 。ク ラ イ ア ン ト と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が で き な い 。
5)
現在採用していない理由は、
• 2000 年 問 題 へ の 対 応 か ら 特 需 が あ っ た が 、 そ れ が 終 わ っ て 仕 事 が な く な っ た
とき、クライアント側が日本人を希望してきたこと。その面では大阪は国際
性がないと思う。
• 一人は、日本での永住権を欲しがったが、日本では取得が難しいということ
か ら 18 、 カ ナ ダ へ 移 住 し て し ま っ た 。
6)
今 後 の 外 国 人 IT 技 術 者 の 需 要 は 、
• 中国は日本と作業形態が違う。中国では一人でこじんまりと作業を行うが、
日本ではチームでより大規模な作業を請け負う。
• 日本語が必要とされないベーシックな仕事なら可能だが、大阪ではそのよう
な需要はない。
18
現 時 点 で の 一 般 外 国 人 の 永 住 権 取 得 要 件 は 、最 低 10 年 の 日 本 で の 滞 在 期 間 、収 入 の 安 定 、犯 罪 歴 等
がないことなどであるが、法務大臣の裁量によるため、申請から取得まで半年から 1 年かかる。
- 76-
(4)
1)
その他
雇用の受け皿としての可能性は
• IT 技 術 取 得 に は 頭 の 柔 ら か さ が 必 要 な の で 、 40 歳 か ら の IT 業 界 へ の 転 職 は
無理だと思う。
2)
海外移転への可能性は
• プログラミングならば、コスト面から海外移転は可能である。ただし中国内
でも地域差があり、上海ならば日本でそれほど変わらなくなっている。
3) 他
• IT 技 術 者 の ば あ い 、 社 内 で の み 通 用 す る 特 殊 技 術 で は な い 一 般 技 術 を 習 得 し
ているという特殊性から、また現在の雇用市場における需要から、他の職種
に比べ転職等に有利であることは確かである。
• し か し な が ら 、 IT 技 術 者 と い え ど も 、 求 め る 人 材 と し て 挙 げ ら れ た 要 件 は 人
柄やコミュニケーション能力など他の職種と同じであり、このような雇用者
サイドの姿勢では、流動化が進むようには思われない。
• 外 国 人 IT 技 術 者 に つ い て は 、 や は り 日 本 語 能 力 が 大 き な 壁 と な っ て い る 。
E 企業
(1)種 類 : 日 系 、 ソ フ ト 系 中 小 企 業
(2)
1)
IT 技 術 者 全 般 に つ い て
IT 技 術 者 の 分 類 は
• IT 技 術 者 の 分 類 は あ ま り し て い な い 。 設 計 か ら 開 発 ま で 、 業 務 に 応 じ て 配 置
している。
2)
IT 技 術 者 の 現 状 は
• 現 在 IT 技 術 者 は 80 名 ほ ど 。平 均 年 齢 27.8 歳 。5 年 前 は 30 名 ほ ど だ っ た の で 、
IT 技 術 者 は 年 々 増 加 し て い る 。
• ま た 、 下 請 け に 90 名 ほ ど の 技 術 者 が い る 。
3)
IT 技 術 者 の 採 用 は
• 2002 年 度 に つ い て は 、 15 名 新 卒 採 用 。 う ち 14 名 が 新 卒 。 採 用 方 法 は 「 リ ク
なび」をはじめとする情報誌。
• 将来的にどのような業種を会社が行っているかはわからないので、あえて理
- 77-
系にこだわらず、人脈や人物を評価して採用している。新卒については、技
術 は OJT で 対 応 で き る 。
• 中途は情報誌や人材紹介会社を通じて随時行っているが、ニーズのある東京
ではあまりこない。
• 技 術 の チ ェ ッ ク は 、 SE が 面 接 に 同 席 す る こ と で チ ェ ッ ク し て い る 。
4)
IT 技 術 者 の ニ ー ズ は
• 30 歳 ぐ ら い の プ ロ ジ ェ ク ト ・ マ ネ ー ジ ャ ー が で き る 経 験 の あ る 人 材 が 不 足 し
ている。
• 今後のニーズについては何ともいえない。例えば 2 年前、現在の状況をまっ
たく予想できなかった。
• モバイル系、ワイアレス系が今後より身近になっていくであろう。
5)
IT 技 術 者 の 流 動 化 に つ い て は
• 当 社 の IT 技 術 者 が こ れ ま で ヘ ッ ド ハ ン テ ィ ン グ さ れ た と い っ た よ う な こ と は
聞いていない。
6)
IT 技 術 者 の ス キ ル ア ッ プ に つ い て は
• 基 本 的 に は OJT で あ る 。新 卒 の 場 合 、入 社 後 1 ヶ 月 ぐ ら い 研 修 を 行 っ て い る 。
• 入社後の能力測定は、項目別に仕組みを作っている。
7)
IT 技 術 者 の 言 語 ニ ー ズ は
• Visual Basic が 主 。 制 御 系 は C 言 語 。
• JAVA 言 語 も 必 要 と な っ て い る 。
8)
派 遣 会 社 を 利 用 し た IT 技 術 者 の 調 達 に つ い て は
• 現 時 点 で 5-6 名 ぐ ら い を 派 遣 会 社 を 通 じ て 採 用 し て い る 。
• メリットは量と質にあった対応ができるという柔軟性。
• デメリットは技術レベルの整合性が難しい。残業などの無理が利かないこと。
(3)
1)
外 国 人 IT 技 術 者 に つ い て
外 国 人 IT 技 術 者 の 採 用 実 績 は
• 日 本 語 学 校 を 修 了 し た 中 国 人 を 、「 技 術 」 資 格 で 2 名 採 用 し た 。
• これは、技術に対する評価というより、ワールドワイドの展開を見越したも
の、及び英語能力に対する評価。
- 78-
2)
中 国 人 IT 技 術 者 の 処 遇 等 は
• 正社員として、日本人と同等の待遇を行っていた。
• 保険や年金については、あえて配慮をしていない。
(4)
その他
1)
大 阪 に お け る IT 産 業 に つ い て
• 他業界よりもよいが、やはりつらい。
• 大手とつながっている企業ならばよいが、個々の中小企業から受託している
企 業 は IT 関 連 で も つ ら い の で は な い か 。
2)
雇用の受け皿としての可能性は
• IT 技 術 者 と し て 30-40 歳 ぐ ら い の 人 を 新 規 雇 用 す る こ と は 難 し い 。
• む し ろ IT 以 外 の 分 野 、 シ ル バ ー 産 業 や 途 上 国 産 業 の 指 導 な ど の 方 が 可 能 性 が
あるだろう。
3)
海外移転への可能性は
• 仕様書があってその通り製造するような仕事ならば海外移転も可能。
• 開発型の仕事だと難しい。
4)
他
• IT 業 界 の 今 後 は 、 当 事 者 に と っ て も 不 透 明 で あ り 、 そ れ ゆ え 、 ど の よ う な 人
材が必要であるかということについても、あらゆる変化に対応できる人材を
求めている。
F 企業
(1)種 類 : 日 系 、 ゲ ー ム デ バ グ な ど 、 コ ー ル セ ン タ ー 、 ソ フ ト 開 発 混 合 中 小 企 業
(2)
1)
IT 技 術 者 全 般 に つ い て
IT 技 術 者 の 現 状 は
• 従 業 員 全 体 で 60 名 ( 内 中 国 人 は 4 名 )。
• 中国(上海)にシステム開発会社をつくる予定。
• 社 員 の 形 態 は 、正 社 員 、契 約 社 員 、バ イ ト( 30 名 、コ ー ル セ ン タ ー )、登 録 社
員 ( 1000 名 程 度 。 そ の う ち 定 期 的 に 仕 事 を し て も ら う の は 200 名 程 度 。 請 負
契 約 で 仕 事 を し て も ら う )。 正 社 員 、 契 約 社 員 ( タ イ ト ル ・ リ ー ダ ー ) が 、 そ
の請負契約を如何に使うかが重要。しかし、請負での、セキュリティーの問
- 79-
題があるので、仕事自体は、機材も貸与して、当社の職場でやってもらう。
必要に応じた様々な業務形態。
• システム開発では、大手の企業に出向という形態をとる。
(3)
外 国 人 IT 技 術 者 に つ い て
1)
外 国 人 IT 技 術 者 の 採 用 実 績 は
• 中国人現在4名。日本にいる者を雇った。
2)
外 国 人 IT 技 術 者 の 処 遇 等 は
• IT 技 術 者 の 場 合 、中 国 人 で あ っ て も 安 い 賃 金 で 雇 え な い 。ビ ザ の 問 題 も あ る 。
(4)
その他
1)中 国 人 IT 技 術 者 を 日 本 に 連 れ て く る こ と に つ い て
• 賃金、ビザ、移動の問題、文化の違い、言葉の問題等あり、問題も多い。
• ま た 、 最 近 在 日 中 国 人 IT 技 術 者 の 間 に 、 中 国 の 発 展 の 中 で 、中 国 で の ビ ジ ネ
スの方がいいという状況ができてきており、それに乗り遅れるなということ
で、帰省ラッシュが始まっている。
2)
経営戦略として
• IT 業 界 で 、 海 外 か ら 人 材 を 連 れ て く る に は 限 界 が あ る 。
• 代わりに海外に行くことがうまくいくとは容易にいえることではないが、
当社は海外に会社をつくることを考えている。その会社は、日本にいた経験
のある中国人に任せる。
• 当社としては、日本留学経験のある中国人などに働いてもらっており、品質
の満足を受けている。海外にいる人材や会社などを活用するには、絶えざる
情報交換やチェックが必要。中国の場合、納期や品質などで問題がでること
もあり、そのことが重要である。
G 企業
(1)
種類:日系、コンテンツ系中小企業
(2)
職員、人材
• プロジェクト制をとっていて、人員はそれプロジェクトの数や規模で増えた
り、減ったりする。
- 80-
(3)
外 国 人 IT 技 術 者 に つ い て
• 現在も外国人、特に韓国人が働いている。役員にも韓国人がいる。
• 韓国の方がブロードバンドなどで先行しているので、そのノウハウを韓国か
ら 日 本 に も っ て く る と 、 日 本 で の 需 要 が あ る 。 そ の た め 韓 国 人 IT 技 術 者 や 人
材が日本に来ている。
• 日韓で賃金ギャップがあるので、その意味で日本には魅力がある。別の言い
方をすれば、韓国人の賃金の方が安いため、韓国人の雇用は基本企業にメリ
ットがある。
(4)
その他
• 当社は日韓の間でビジネスをしている。
• 韓 国 で は 経 済 危 機 で 企 業 を 辞 め 、若 手 を 中 心 に 多 く の IT ベ ン チ ャ ー が 作 れ た 。
• 政府への要望では、法人所得の免除がほしい。
H 企業
(1)種 類 : 日 中 系 、 ソ フ ト 開 発 中 小 企 業
(2)
1)
IT 技 術 者 全 般 に つ い て
IT 技 術 者 の 現 状 は
• 従 業 員 全 体 で 15 名 ( 内 中 国 人 は 12 名 、 日 本 人 3 名 )
• 従 業 員 の う ち 6,7 名 は 大 手 の 企 業 に 出 向 ( 人 材 派 遣 )。
• 能力あれば、兼任役員になる。
• 開 発 の 80% は ウ ェ ブ 系 。
• 人の探し方は、知り合いなどの紹介やネットを通じてなど。
(3)
1)
外 国 人 IT 技 術 者 に つ い て
外 国 人 IT 技 術 者 の 採 用 実 績 は
• ある。今のところ中国人中心。
• 大陸の中国人を採用され、日本に来る場合もあれば、日本の企業等に勤めて
いて、当社の勤務になったものも。
(4)
その他
• 昨年設立であるが、今のところ順調で、顧客の評判もいい。
• 当社は、中国と日本との掛け橋になりたい。
- 81-
I 企業
(1)種 類 : 日 中 系 、 ソ フ ト 開 発 お よ び コ ン サ ル 系 中 小 企 業
(2)
1)
IT 技 術 者 全 般 に つ い て
IT 技 術 者 の 現 状 は
• 従 業 員 全 体 で 30 名 ( 内 日 本 人 は 5∼ 6 名 、 そ れ 以 外 は 大 陸 出 身 の 中 国 人 )
中国人は、現地で採用して、連れてくる。
• 中 国 に 100% 出 資 の 子 会 社 が あ る( そ こ の 従 業 員 は 70 名 )。そ こ は シ ス テ ム 開
発部隊である。
(3)
1)
外 国 人 IT 技 術 者 に つ い て
外 国 人 IT 技 術 者 の 採 用 実 績 は
• 大陸の中国人を採用し、連れてきている。当社に来るまでは、日本に来たこ
となかった者ばかり。
• 従業員の多くが中国人なので、社内的には言葉のハンデもない。
• 当社は、将来の人材獲得のために、中国のある大学にシステム開発や日本語
学 習 支 援 の た め の 奨 学 金 制 度 も 設 け て い る 。 毎 年 約 20 名 の 優 秀 な 学 生 。 一 人
当たり年一万円の学費支給。
2)
外 国 人 IT 技 術 者 の 処 遇 等 は
• IT 技 術 者 の 場 合 、 給 与 は 社 会 一 般 に 透 明 性 が あ り 、 そ れ に 基 づ い た 処 遇 を
し て い る 。 Pay for a job で 給 与 が 決 ま る 。
• 当社は、いわゆる日本の企業とは異なっており、自社株ももて、やりがいが
もてるような会社にしている。また、中国人従業員が中国に戻った時、子会
社で働いたり、自分の企業を立ち上げるときに当社が支援することも可能で
ある。日本企業から引き抜きもあるが、当社設立以来4年間で、6名が辞め
た程度。
(4)
その他
• 1)
当社自身について
• 当社は中国人中心の会社であって、当初は社会的信用が低かった。それで、
当社の代表者は日本人にした面もある。また、信頼が低く、従業員のビザを
とるのも大変であった。一流会社の方がビザをとりやすい。しかし、4年や
- 82-
ってきて信用がでてきた。
2)
中国人
• 個人の成功を望む。
• 日本には飽くまで出稼ぎの意識できている。収入、ビザの問題などで転職す
ることもある。それというのも、一流企業に就職していた方がビザがとりや
すいことがあったりするため。
3) 中 国 、 日 本
• 中国人を日本に連れてくるより、中国に会社をつくる方が可能性が高くなっ
てきている。ただ、その場合、その両者の間に立てる人が必要になる。
• 日 本 国 内 で の 仕 事 自 体 が 減 っ て き て い る 。 そ の た め 、 IT ベ ン ダ ー な ど も 中 国
に仕事を求めるようになってきている。
• 日本の中小企業も中国に行き始めているが、その問題に対処できる人材はい
な い 。 当 社 は そ の よ う な 時 に サ ポ ー ト も し て い る ( コ ン サ ル 業 務 )。
• 欧米に留学した人は、彼らがその社会に受け入れられたので欧米が好きにな
る。他方、日本に留学した人はそうならないので日本が嫌いになる。また、
前 者 の 場 合 、 中 国 に 戻 っ て も 優 遇 さ れ て い る 。 中 国 あ る 欧 米 企 業 の 80% は そ
のトップは中国人。他方、日本企業の場合は、せいぜい課長どまりで、トッ
プあるいはそれに近い人はいない。
4)
日本、日本企業
• 当 社 の 日 本 人 従 業 員 は 、以 前 は 野 村 総 合 研 究 所 、富 士 通 、NTT 等 に 勤 め て い た 。
しかし、当社の仕事の方がやりがいがあり、大手企業に勤務するより、やり
たいことができるので、転職してきた。
• 従来日本人は、中国から学ぼうということなかったが、少し変化がでてきて
おり、中国人や中国について、日本人から聞かれるようになってきた。
• 日本は市場がそれなりに大きいので、大きくなる必要がなく、中国進出もま
だまだ消極的である。
• 日 本 の 企 業 は 5∼ 6 年 勤 務 経 験 が あ り 、 日 中 の 両 方 が わ か る IT 人 材 を 探 し て
いる。
5)
出入国、ビザ等
• 出入国、ビザを時代に応じて変化させるべき。実際、日本でのビザの取得が
- 83-
難しかったり、それの取得に関する不安感からビザの取りやすい欧米(特に
カナダ)にいってしまったり、中国に戻ってしまうものも多い。
• ビザの取得期限とプロジェクト期間とに齟齬がでたりして、仕事に専心でき
ないという不安もある。
• 外国人の労働者にとって、子どもの教育は重要。その意味からも、勤務年数
が あ る 程 度 あ り 、収 入 が あ り 納 税 を し て お り 、適 正 で 能 力 が あ る の で あ れ ば 、
もっと早い時期に「永住」資格を与えるようなことも必要である。
J 企業
(1)種 類 : 日 中 系 、 コ ン テ ン ツ お よ び コ ン サ ル 系 中 小 企 業
(2)
1)
IT 技 術 者 全 般 に つ い て
IT 技 術 者 の 現 状 は
• 従 業 員 全 体 で 20 名 ( 日 本 人 と 中 国 人 が 半 々 )
中国人は、現地で採用して、連れてくる。
• 中国に関連会社がある。
(3)
1)
外 国 人 IT 技 術 者 に つ い て
外 国 人 IT 技 術 者 の 採 用 実 績 は
• あ る 。 そ の う ち 8,9 割 は 日 本 に 留 学 し た こ と が あ る 。
• 日本に留学している場合、ビザの取得が容易。
K 企業
(1)種 類 : 日 系 、 大 手 シ ス テ ム ・ エ ン ジ ニ ア 企 業
(2)
1)
IT 技 術 者 全 般 に つ い て
IT 技 術 者 の 分 類 は
• 現 在 新 た な セ グ メ ン ト を 行 っ て い る と こ ろ で あ る ( 資 料 参 照 )。
• ただし分類しても世の中の進展が早く、恐らく数年で現状に適合しなくなる
であろう。
2)
IT 技 術 者 の 現 状 は
• 現 在 社 員 800 名 の う ち 、 IT 技 術 者 は 600 名 ほ ど 。 平 均 年 齢 は 32.1 歳 。
- 84-
3)
IT 技 術 者 の 採 用 は
• 新卒については、求人誌など一般的な方法。
• 新卒採用は理系、文系を問わない。
4)
IT 技 術 者 の ニ ー ズ は
• 技術よりも創造的な人材が欲しい。
5)
IT 技 術 者 の 流 動 化 に つ い て は
• 確かに他の職種に比べて離職率は高い。中途採用している人数ぐらい、毎年
退職している。
• しかし、ステップアップのための転職ではないと思う。当社は賃金等では他
社と比べて高い。
• 入 社 1-3 年 で 退 職 す る 場 合 は ミ ス マ ッ チ の 部 分 も あ る 。 そ れ 以 降 の 退 職 者 の
場合は、その後の目標が会社でのポジションと合わないのではないか。
6)
IT 技 術 者 の ス キ ル ア ッ プ に つ い て は
• IT 技 術 者 の 分 類 と あ わ せ て 、 現 在 、 人 材 育 成 プ ロ グ ラ ム を 作 成 中 で あ る 。
• 現時点では、富士通グループとして独自に資格制度を持っている。
• IT コ ー デ ィ ネ ー タ な ど に つ い て は 、 資 格 取 得 の た め の 受 験 料 を 会 社 が 支 援 し
ている。
• 社外の研修や資格受験については、会社へのリターンをそのつど判断して、
必要に応じて支援している。
(3)
1)
外 国 人 IT 技 術 者 に つ い て
外 国 人 IT 技 術 者 の 採 用 実 績 は
• 4 年 半 前 よ り 、外 国 人 IT 技 術 者 を 雇 用 し 、現 在 10 名 雇 用( 他 に 人 事 や 外 国 語
教 師 な ど と し て 6 名 雇 用 )。
• 国籍はアメリカ、カナダ、フランス、中国、スリランカ、マダガスカル、香
港 、 イ ギ リ ス 。 平 均 年 齢 は 28 歳 。
• 日本語能力については、だいたい日本語検定 2 級以上。
• 最初の 1 年間は契約社員、その後正社員に。
• 在 留 資 格 「 技 術 」。 在 留 資 格 に 伴 う 手 続 き は す べ て 外 国 人 本 人 が 行 う 1 9 。
19
外 国 人 本 人 が 行 え る の は 、お そ ら く 会 社 の ネ ー ム バ リ ュ ー に よ る と こ ろ が 多 い の で は な い
か。中小企業では、やはり日本人サイドが手助けしないと難しい部分がある。
- 85-
2)
外 国 人 IT 技 術 者 の 処 遇 等 は
• 待遇等については、日本人と同等の待遇を行っている。
• 住居については、会社名義で契約。日本人同様家賃補助を行っている。
• 保険や年金については、あえて説明していない。外国人労働者サイドも、日
本で働くための制度と思っている。
3)
外 国 人 IT 技 術 者 の 募 集 は
• 最 初 の こ ろ は Japan Times に 掲 載 し た り 、 カ ナ ダ の 大 学 な ど に 求 人 し た り し
た。現在では、ネットを利用。
• 月 20 名 ぐ ら い の 求 職 者 が あ る 。 ほ と ん ど が す で に 日 本 に い る 外 国 人 か ら 。 た
だし、日本語能力の不足などから、採用にいたるものは少ない。
4)
外 国 人 IT 技 術 者 か ら 何 か 要 望 が あ っ た か
• 別にない。
5)
外 国 人 IT 技 術 者 の メ リ ッ ト 、 デ メ リ ッ ト は
• 当初採用の目的は、①グローバル化への対応、②日本人労働者の英語でのコ
ミュニケーション能力アップ、③優れた欧米系の技術の魅力などからである。
• 今後は、日本と本国との橋渡し的な役割を期待したい。
6)
外 国 人 IT 技 術 者 の 日 本 語 研 修 は
• 会社からの補助による社内での日本語研修あり。ほとんどがこの制度を利用
している。
7)
現 在 の 外 国 人 IT 技 術 者 雇 用 を ど う 考 え て い る か
• 外 国 人 IT 技 術 者 に つ い て は 会 社 と し て 十 分 に 活 用 で き て い な い と 思 う 。
• その原因は、①経営方針主導で担当部門のニーズから雇用したものではない
ということ、②クライアントの依頼に基づいてソフト作りを行うため、プロ
グラム開発だけでなく、プレゼンテーション能力などが要求され、その点で
は言語の問題が大きいということ、③海外人材をどのように活用していくか
の戦略ができていないということ、などが考えられる。
8)
外 国 人 IT 技 術 者 へ の 今 後 の ニ ー ズ は
• 社長の意向としては、よりその比率を高めていきたい(主にグローバル化戦
- 86-
略 の 一 環 と し て )。
(4)
1)
その他
雇用の受け皿としての可能性は
• こ れ ま で 経 験 の な い 40 歳 以 上 の 人 へ の ニ ー ズ は な い 。
2)
アウトソーシングについては
• 海 外 へ の ア ウ ト ソ ー シ ン グ 実 績 は 、 ① フ ィ リ ピ ン の ERP と い う 企 業 に 統 合 パ
ッケージのカスタマイズ、②インドの人材派遣会社へシステム開発、③イン
ドのイキムという会社へのシステム開発がある。
• ②については、意思疎通の問題などからあまりうまくいかなかった。インド
については確かに技術力は高いが、提案力がない。
• 今後のアウトソーシングの可能性は難しい。中国の場合、賃金は確かに安い
かもしれないが、原価以外のコストを勘案するとそれほど魅力的ではない。
3)
市場としての東アジアの魅力は
• 市場としての東アジア、特に中国はきわめて魅力である。
• 現在中国への進出を検討しているが、中国の慣習、コネがものをいう社会と
いったことから、専門のコンサルタントが必要である。また、マーケティン
グ に つ い て は JETRO の 調 査 な ど を 利 用 し て い る 。 富 士 通 の ブ ラ ン チ が 北 京 と
上海にあるのでそこからの情報も参考にしている。
• 政府に要求することは、中国に関する情報を提供している。
4)
他
• こ の 会 社 で の 外 国 人 IT 技 術 者 の 採 用 は 、 あ る 程 度 大 企 業 で あ る た め か 、 コ ス
トや技術ということよりも、グローバル化への対応としての意味合いが強い。
したがって、国籍も多様である。
• グ ロ ー バ ル 化 へ の 対 応 と し て 外 国 人 IT 技 術 者 を 求 め て い る に も か か わ ら ず 、
日本語能力の不足から採用できないというのは、いかにも日本的企業である。
• 東アジア、特に中国などは、労働者の供給源というよりも、巨大な市場への
魅力として考えているようだ。
- 87-
L 企業
(1)種 類 : 日 系 ( 多 国 籍 )、 総 合 系 ( た だ し 、 ヒ ア リ ン グ は ソ フ ト 開 発 を 中 心 に )
(2)
IT 技 術 者 全 般 に つ い て
1)
IT 技 術 者 は
• ソフトサービス要員 6 万人体制へ。
(3)
外 国 人 IT 技 術 者 に つ い て
1)
外 国 人 IT 技 術 者 の 採 用 実 績 は
• 国内では、外国人はゼロではないが殆どいないと考えてよい。
• ただし、海外の関連会社にはいる。
例 え ば 中 国 で は ソ フ ト サ ー ビ ス 要 員 を 現 在 の 1000 名 か ら 、2003 年 に は 2700
名 に す る こ と を 考 え て い る 。 イ ン ド は 同 様 に 現 在 300 名 、 2003 年 に は 400
名にすることを考えている。
2)
外 国 人 IT 技 術 者 の メ リ ッ ト 、 デ メ リ ッ ト は
• 例えば、中国でソフトを作れば、平均すると3分の1程度のコストですむ。
• デメリットは、文化の違い、高転職率、個人主義、製品の品質の問題などで
ある。
(4)
その他
• 製 造 も 入 れ た IT 全 体 で は マ イ ナ ス 成 長 。し か し 、IT 関 連 サ ー ビ ス 、コ ン サ ル 、
ソフトウエア開発などでは、一桁後半の伸びが予想される。結果人材が不足
が予想される。ソフトウエア開発も基本的には労働集約的業務である。
M 企業
(1)
種 類 : 日 系 ( 多 国 籍 )、 総 合 系 ( た だ し 、 ヒ ア リ ン グ は ソ フ ト 開 発 を 中 心 に )
(2)
外国人社員について
• 日本国内で、ニ、三百名の外国人社員。その 3 分の 1 以上は中国人。
• 戦略的にある特定な職種に外国人を採用はしていない。個人として能力に基
づいて採用している。また、ビザの問題があるので、その問題を比較的容易
にクリアーできる日本の大学卒業生を採用している。
• IT 人 材 も 中 国 人 等 、 現 地 か ら 連 れ て き て 、 ソ フ ト ウ エ ア 開 発 を し て も ら っ た
ことはない。現地で人材を活かす方法を取っている。但し、当社のボランテ
- 88-
ィ ア と し て 、 人 材 交 流 と い う 形 に 中 国 人 を 年 間 20 名 程 度 連 れ て き て 、 訓 練 す
る こ と は 、 10 年 ほ ど や っ て い た 。 し か し 、 そ の 人 材 も 中 国 に 戻 る と そ の 経 験
をいかせないということで、北京に会社を設立したりした。
• 現在中国では、北京、南京に拠点をもっており、西京にも拠点を作りつつあ
る。
• 中国の拠点会社での共通言語は、日本語にしている。
(3)
中国、その他
• ソフトには、アプリケーション系、基盤系、装置系の3つがあるが、中国で
は、前の 2 つ系統のものしか開発できない。最後のものは、中国に市場がな
いので開発できない。
• 中国では、中国社会や個々人の性格などさまざまな関係があり、大組織を形
成できない。また、大学との協力関係も大切である。
• 中 国 に は 、 エ リ ー ト の IT 人 材 は い る が 、 そ の 下 を 支 え る 人 材 が い な い の で 、
ソフト開発の分業体制形成しにくい。このため、在中国の海外の企業も、多
く の 中 国 人 IT 人 材 を 採 用 し た が 、 今 後 組 織 運 営 が 難 し く な ろ う 。
• 企業が海外進出して成功するには、各地各々のよさを活かせるようにするこ
とが大切である。ソフト開発でも、中国には中国の、インドにはインドのよ
さ ( 中 国 と 異 な り 、 ソ ス ト 開 発 の 分 業 体 制 が つ く り や す い 社 会 構 造 が あ る 。)
がある。
• 日本ももっと世界の現地から学ぶ、相互に学ぶことが大切である。
• 車などの製品の組み込みソフトを勘案すれば、日本のソフト開発は世界的に
もかなりである。
N 企業
(1)
種 類 : 米 系 ( グ ロ ー バ ル )、 ソ フ ト 、 シ ス テ ム 系 企 業
(2)
会社
• グロ−バル、国際的視点から企業全体最大利益がでるような組織の設立の仕
方をしている。日本にある3つの関連企業も、税法上の問題から、登記を分
けているだけ。登記上に日本ににあっても、海外にあってもよい。
(3)
スタッフ、組織について
- 89-
• 日本にも外国人スタッフがいる。
• しかし、業務によっては、どこの国の関連会社にいるかは重要ではない。担
当業務、プロジェクトが重要である。例えば、あるスタッフは、シンガポー
ル の 関 連 会 社 に 籍 ( 上 司 も そ こ に い る ) が あ る が 、 業 務 量 の 60%は ア メ リ カ 、
30% が シ ン ガ ポ ー ル 、 10% が 日 本 と な っ て い る 。 そ の ス タ ッ フ の ミ ッ シ ョ ン
は 、ア ジ ア と ア メ リ カ の パ イ プ 役 な の で 、こ の よ う な 業 務 分 担 に な っ て い る 。
• 出張も含めて絶えずスタッフが出入りしている。
• 成 果 主 義 。 Pay for a job の 制 度 で あ る 。
• スタッフが別国の関連会社に転籍ことも可能。その本人の意志と転籍先関連
会 社 の 折 り 合 い つ け ば 可 能 。い つ も う ま く う ま く い く わ け で は な い が 、
「人事」
がより広い視点から、当該スタッフと組織全体にとってのメリットを考えら
れている。
• 当社の関連会社の中でも、日本に来たい人は少なく、アメリカに行きたい人
が多い。
• 当社の各国の法人は、基本的にはトップには設立当初アメリカ人が来て、後
に現地人が就任することになる。
(4)
その他
• 日本には人種偏見がある。そこで、日本の資格制度をワールドワイドでやれ
ば、公平に外国人でも雇いやすくなり、高いポジションにつけやすくなる。
ソフト系の企業は、このようなことが可能である。従来の企業の社員とは別
の動きであり、またそのような動きが業務上必要である。従来の人の動くで
は捕らえられない。
O 企業
(1)
種類:日・グローバル、システム・ソフト系企業
(2)
会社
• 本 社 は 日 本 、海 外 に 2 0 弱 の 関 連 会 社・ 販 売 拠 点 等 。全 体 で 1400 名( 日 本 に
は 正 社 員 で 320 名 程 度 )。
• マトリクスマネジマント(縦軸と横軸を組み合わせて、マネジマントしてい
く )。 マ ー ケ テ ィ ン グ と ブ ラ ン デ ィ ン グ で は 、 組 織 全 体 の 統 一 性 を も つ 。 営 業
- 90-
は、現地の慣習が重要なので、統一性はとっていない。人事が各国に取締役
( Director)が お り 、Global
Director も い る 。グ ロ ー バ ル・カ ン パ ニ ー で も
あるが、各国毎の施策をとらねばならないことも。
(3)
スタッフ、組織について
• 日本では言葉の問題があり難しいが、ヨーロッパで新会社・拠点を立ち上げ
る時は、エンジニアが足りず、台湾から一時的に連れてくることもある。
• 日 本 に は あ ま り 外 国 人 ( 4、 5 名 の 中 国 人 、 イ ン ド 人 な で の ア ジ ア 人 ) は い な
い が 、 現 在 CFO に イ ン ド 人 が い る 。 国 籍 関 係 な い が 、 日 本 語 を 話 せ る こ と と
英語が少しできることが大切。ただし、海外からの公募はある。
• 社 員 の 採 用 は 、各 国 で 採 用( 場 合 に よ り 人 事 関 係 の 横 軸 の マ ネ ー ジ メ ン ト( 全
体 の 人 事 を 統 括 調 整 す る シ ス テ ム ) に 報 告 す る こ と も あ る )。
• 人(社員)の交流はあるが、日本採用の社員が海外に行くことはない。プロ
ジェクト単位で、短期間海外に行くことはある。
• 当社にとって、市場規模が今後どうなるか不明。しかし、市場の拡大に応じ
て 人 を 採 用 し て い く 。 2 年 後 に は 、 ワ ー ル ド ワ イ ド に 2000 名 ぐ ら い を 考 え て
い る 。日 本 で は 、数 年 先 に 500 名 と 考 え て い る 。2002 年 春 ま で に 50 名 を 取 る
予定。
• 正職員をとるには時間がかかるので、それまでは、ベンダー利用、派遣や契
約社員などを使って、アウトソーシングをしている。
• 増えている職種は、営業職、テクニカルサポート、開発、その他(マーケッ
テイング、人事)などである。
(4)
その他
• ハード系は難しいが、ソフト計はエンジニアなどの人的リソースの転用が比
較 的 容 易 で あ る 。だ か ら 、現 在 ハ ー ド 系 の 企 業 の リ ス ト ラ が 起 き て き て い る 。
3.その他
P 団体
(1)種 類 : 自 治 体 に よ る 国 際 的 な ソ フ ト ウ ェ ア 研 究 開 発 拠 点
(2)目 的
• 究極目標は地域活性化である。そのために企業を育て、人材を育てている。
- 91-
• グローバルな経済活動に対応できるような企業・人材を育成するために、グ
ローバルなものに接触できる場を提供している。
• 一方で、ここで開発された技術を利用して、障害者など社会的弱者のための
雇 用 も 生 み 出 し て い る 。 例 え ば 岐 阜 市 の HP 作 成 は 、 障 害 者 の 人 た ち に 委 託 し
ている。
(3)
外 国 人 IT 技 術 者 の 採 用 状 況
• 現 在 、財 団 に は 30 名 の 外 国 人 が い る 。国 籍 は 、ア メ リ カ 、イ ギ リ ス 、カ ナ ダ 、
韓国、インド、中国である。
• 労 働 者 と し て で は な く 、「 研 修 生 」 と し て 受 け 入 れ て い る 。 全 員 20 代 、 単 身
で来日している。
• 研修生を受け入れている目的は、グローバル化への対応として。入居企業企
業に対してインターナショナルな雰囲気を提供することも目的としている。
• また、米ユタ州の 8 大学からインターンシップの受け入れも行っている。今
後はインターンシップ、研修生ともより拡大しく予定である。
(4)
入居企業について
1)
入居企業の現状は
• 現 在 123 企 業 が 入 居 し 、 1700 名 以 上 が 働 い て い る 。 6000 人 ぐ ら い の 就 労 者 を
目指している。
• 企 業 の 内 訳 は 、大 企 業 及 び 県 外 企 業 が 31( う ち 外 資 系 4)、県 内 企 業 が 30、ベ
ン チ ャ ー 系 企 業 が 57( う ち 外 資 系 3)、 ベ ン チ ャ ー 支 援 企 業 が 5 で あ る 。
2)
入居企業に対する支援は
• 分譲型については、①初期投資、②融資制度、③税の優遇、④通信促進費、
⑤外国人労働者に対する家賃補助などである。
• 賃貸型については、①ベンチャー・キャピタル、②融資制度、③ベンチャー
支援、④通信促進費、⑤外国人労働者に対する家賃補助などである。
• このほか、それぞれの企業からの要求に応じて、さまざまな支援を用意して
いる。
(5)
1)
IT 企 業 に つ い て
現 在 の 日 本 的 IT 企 業 に つ い て
• 現 在 の ソ フ ト 取 引 に 求 め ら れ る 条 件 は ① 品 質 、② コ ス ト 、③ 納 期 、④ 安 全 性 、
- 92-
⑤メンテナンスである。そして取引決定に際して考慮されるべき条件は①会
社 概 要 、 ② 会 社 規 模 、 ③ 業 務 内 容 、 ④ 人 材 数 、 ⑤ IT 技 術 資 格 取 得 者 の 数 、 ⑥
過去の取引実績である。このような現状において、小さなベンチャー企業の
参入する機会が極めて少ない。
• 現 状 の 硬 直 し た 取 引 き 状 況 を 打 破 す る た め に は 、 日 本 版 CMM(Capability
Maturity Model)の 制 定 が 急 務 で あ り 、 現 在 経 済 産 業 省 の 研 究 会 な ど で も そ の
ような動きがある。
2)
IT 技 術 者 の ニ ー ズ は
• プロフェッショナルな人材、例えば、システムアナリスト、システム監査技
術者、プロダクト・マネージャー、アプリケーション・エンジニア、システ
ム運用管理技術者、プログラム・マネージャーなどに対するニーズは高く、
そのような人材は不足している。
3)
外 国 人 IT 技 術 者 の 現 在 の 採 用 に つ い て は
• 現時点では、日本語や日本の文化習慣を習得した外国人に対するニーズが高
い。
• 本 拠 点 内 に あ る 人 材 派 遣 企 業 は 、 イ ン ド の プ ネ 市 に あ る 「 SEED」 と い う IT 教
育 会 社 と 提 携 し 、IT 技 術 者 の 派 遣 を 開 始 し た 。し く み は SEED で 日 本 語 の 基 礎
研修を行い、その後、アイポックで日本語と商慣行のトレーニングを行うと
いうものである。
4)
外 国 人 IT 技 術 者 の 今 後 の 活 用 に つ い て は
• 現 在 の よ う な 日 本 型 商 慣 行 で は 、 外 国 人 IT 技 術 者 の 活 用 は う ま く い か な い 。
こ れ は 、 英 語 圏 で な い と う 言 語 問 題 と 同 様 に 、 優 秀 な 外 国 人 IT 技 術 者 に と っ
ての壁となっている。
• 日本企業がどこまでグローバルな視点が持てるかが、今後の課題であろう。
5)
他
• 本拠点に関する計画については、景気停滞期のなかでその評価は分かれてい
る 。現 在 の 収 支 状 況 は 不 明 で あ る が 、80 年 代 後 半 に こ の よ う な IT 産 業 集 積 地
を建設しようとした先見性は評価できるであろう。
• これまでヒアリングした限りでは、交通網や情報網が発達しているとはいえ、
やはり東京という土地の優位性を指摘する声が多かった。○○県という地理
- 93-
的な条件をどのように利用していけるかが今後の課題であろう。
4.その他のヒアリングのまとめ
以 上 以 外 に も 、幾 つ か の 組 織 、企 業 、団 体 の ヒ ア リ ン グ を 実 施 し た 。そ れ ら の う ち 、
これまでに出てきた以外で重要と思われるポイントは次のようなものである。
• ソフト開発等には様々なやり方がある。
必要とする場に人材派遣、中国でのソフト開発の利用、中国にサポート
のためチーム編成等等
• 中国人により設立された企業が多くあり、そこのトップの人材が団体等を形
成 し て い る 。 例 え ば 、 企 業 家 聯 誼 会 ( 60 社 、 う ち IT 関 連 45 社 が 関 係 。 そ の
関 連 企 業 の 従 業 員 合 計 は 1000 名 。 内 700 名 が 中 国 人 )
• イ ン ド IT 技 術 の に 日 本 勤 務 の 最 大 の 問 題 は 、文 化 的 な も の( 特 に 食 事 で あ る )
である。
• イ ン ド 人 に と っ て 入 管 政 策 も 問 題 。 就 労 ビ ザ が と り に く い 。 例 え ば NASSCOM
に登録した企業の人材はビザ取得を容易にするとかの対応が必要である。
• インド人にとり言語も問題である。インドには公的日本学習機関がないので、
それを造る必要がある。Cf.ドイツやフランスなではそのような政府機関
あり。また、日本語自体が難しいので、インド技術者に日本語能力を期待し
ないほうがいい。
• 日 本 の ソ フ ト ウ エ ア 業 界 に イ ン ド 人 は 約 1000 人 い る 。 合 弁 も 含 め て 、 イ ン ド
系 の 会 社 は 、日 本 に 約 60 社 あ り 、増 加 し て い る 。こ れ は 、IT 大 国 日 本 に チ ャ
ンスがあることと、リスクヘッジのためである。
• 日 本 は IT 産 業 の 位 置 が 、 産 業 で 低 す ぎ る 。 ま た 、 日 本 は 、 旧 来 の 物 作 り の 発
想をソフトに適用しており、ソフトを使う企業の品質管理が厳しすぎる。
• 日本人は、オンサイト方式を目指すが、それは金がかかるので、オフショア
方式を目指すべきである。
• 中 国 も 、ア メ リ カ な ど が 梃 子 入 れ し て き て い る の で 、ベ ー シ ッ ク ソ フ ト で は 5
年でキャッチアップしてくる。だから、インドも余裕ない。
• 日 本 に は 、 Time to Market の 発 想 が な く 、 遅 れ て い る 。 唯 一 の 成 功 例 は I モ
ード。
- 94-
第 4章
ア ジ ア IT 技 術 者 出 入 国 マ ト リ ッ ク ス
本 調 査 は 、「 ア ジ ア 全 体 と し て の IT 労 働 市 場 」 と い う 仮 説 に 基 づ い て 開 始 さ れ
たものである。そこで、その仮説の成否、あるいはそのような市場が本当に誕生
し つ つ あ る の か を 知 る た め に も 、ア ジ ア に お け る 各 国 相 互 の IT 技 術 者・人 材 の 関
わ り を み て い く 必 要 が あ る 。そ の た め に は 、そ の 地 域 に お け る 各 国 の IT 技 術 者 ・
人 材 の 出 国( 地 域 )元 を 縦 軸 、入 国( 地 域 )先 を 横 軸 と す る「 ア ジ ア IT 技 術 者 出
入国マトリックス」を作成し、各国同士および地域全体を俯瞰することに意義が
あると思われる。
そ の よ う な マ ト リ ッ ク ス 作 成 に は 、当 該 各 国 ご と の IT 技 術 者・人 材 の 統 計 的 デ
ー タ( で き れ ば 職 種 別 、ク ラ ス タ ー 別 )、そ れ ら の 各 国 人 材 の 出 入 国 デ ー タ 等 々 が
必 要 で あ る 。な お 、本 調 査 で の IT 労 働 者 の ク ラ ス タ ー に つ い て は 、次 の よ う な も
の を 考 え た 。 本 ク ラ ス タ ー は 、 IT 専 門 家 お よ び IT 業 界 の 方 々 と 検 討 し て 決 め た
ものである。
①技術系(開発、サポート、ネットワーク構築、システム運営等)
② 営 業 系 ( セ ー ル ス 、 SE、 セ ー ル ス 支 援 マ ー ケ ッ テ ィ ン グ 等 )
③マネージメント系(経営、コンサル、プロジェクト・マネージャー、プロダ
クツ・マネージメント等)
本調査では、それらのデータ収集のために、国内的には、大使館や他組織との
協力も得ながらデータや文献を行い、ヒアリングを実施した。また、海外におい
ても、同様にデータや文献収集を行い、ヒアリング調査を実施した。しかしなが
ら 、一 部 の 国 々 の デ ー タ を 若 干 除 く と 、IT 技 術 者 の 数 字 的 な デ ー タ は 殆 ど 存 在 し
ていないことが判明した。そのため、そのマトリックスを定量的に作成すること
は不可能であると判断した。また多くの専門家や現場の方々の意見を伺い、デー
タ を 調 査 し た と こ ろ 、IT 人 材 の 情 報 や 定 義 、IT 人 材 の 職 種 の ク ラ ス タ ー 分 け 自 身
も標準化しておらず、意見が異なり、正確なデータがないので、クラスターに基
づく人的移動にもできるだけ配慮したが、その成果は全体のマトリックスに活か
すにとどめた。
95
以 上 の こ と か ら 、IT 人 材 の 動 き を み る た め に 、活 用 で き る 数 字 情 報 お よ び ヒ ア
リング、文献等から得られた情報をもとに、主に定性的観点から、そのマトリッ
ク ス を 作 成 す る こ と に し た 。ま た 、IT 人 材 の ク ラ ス タ ー に 関 し て 得 ら れ た 情 報 を
確認できるようにした。定性的なものではあるが、現状と今後のトレンドを知る
上では参考となろう。
まず、先述した各国別の労働市場に関する説明と一部重複するが、マトリック
ス作成に関わる各国ごとのデータや情報を要約して整理することとする。
(1)中 国
*文献調査、データ等
・ IT 技 術 者 の 世 界 的 不 足 傾 向 。 イ ン ド や 中 国 人 を は じ め と す る 海 外 の 国 々 の 優
れた理工系人材の獲得に企業が動いている。
・ 国 内 IT 人 材 の 不 足 。
・ 人 材 の 流 失 ( 海 外 へ 、 国 内 の 外 資 系 企 業 へ 、 特 に ア メ リ カ )。
・ 日 本 に も 毎 年 8000 人 の 中 国 人 エ ン ジ ニ ア が 流 れ て き て い る 。
・ 海外からの人材還流。
・ ア メ リ カ の シ リ コ ン バ レ ー に お け る エ ン ジ ニ ア 20 万 人 の う ち 約 3 分 の 1( 6
万 人 ) が 中 国 人 。 ア メ リ カ で は 、 IT 人 材 の 約 50% は 中 国 と イ ン ド か ら 。
・ 中 国 政 府 自 体 が 人 材 確 保 政 策 ( 北 京 な ど )。
・ 中 国 本 土 で 約 20 万 の IT 人 材 不 足 。
・ 中 国 60 万 人 の IT 人 材 必 要 。現 在 18 万 人 供 給 。42 万 人 不 足 。毎 年 の 育 成 人 材
は 5 万 人 ( 中 国 情 報 局 新 聞 2001 年 12 月 4 日 )。
・ 日 本 政 府 も 財 界 か ら の 要 望 に 応 え る 形 で 中 国 人 IT 技 術 者 受 入 手 続 き の 簡 素 化 。
・ 中 国 IT 人 材 の 中 に も 近 年 日 本 に 来 る イ ン セ ン テ ィ ブ 低 下 。
*ヒアリング
・ ソフト開発には、分業体制、ピラピッド構造必要。中国では、その体制をつ
くるための上の層はいるが、それ以外がいない。組織を構築できない。
・ 在日中国人の帰国ラッシュが開始。
・ 中 国 人 の IT 人 材 安 価 で は 雇 え な い 。日 本 で 雇 う と 、日 本 人 と 同 じ か そ れ 以 上 。
96
・ 中国人を日本に呼び寄せるよりも、中国国内でのソフト開発増大の傾向。
・ 日 系 の あ る 会 社 の 経 験 で 、次 の よ う な 意 見 が あ っ た 。「 以 前 は イ ン ド に ソ フ ト
ウェア開発センターを設置したが、日本語から英語に仕様書を翻訳し、イン
ドで開発してまた英語を日本語に翻訳する時間とコストがかかった。ミドル
ウ ェ ア の 開 発 は 1 バ イ ト で は な く 、2 バ イ ト の 開 発 な の で 、日 本 語 の で き る 人
材の方がコスト低下、納期短縮を実現できる。中国人が日本語の読み書きが
で き 、 そ の 翻 訳 の 工 程 が 省 略 で き る の で 、 中 国 拠 点 を 拡 充 し て い る 。」
( 2) 香 港
*文献調査、データ等
・ 香 港 で は 現 在 の と こ ろ 、 中 国 本 土 IT 人 材 の 導 入 に も 不 成 功 。 香 港 の 今 後 の 課
題の一つである。
(3)韓 国
*文献調査、データ等
・ 高 水 準 の 技 能 を 有 す る 専 門 職 は 不 足 。 IT 人 材 需 要 の 急 増 。
・ 韓国政府自体は、将来における高級な人材獲得に危惧。
・ 高 級 人 材 育 成 の 体 制 が 未 整 備 。 2005 年 ま で に 2 兆 2400 億 ウ ォ ン 。 IT 等 の 6
つ の 戦 略 分 野 で の 専 門 家 を 40 万 名 あ ま り ( 内 約 27 万 名 が IT 分 野 ) の 育 成 計
画 を 発 表 ( 2001 年 11 月 )。 同 計 画 で は 、 2000 年 末 時 点 で 4 万 人 の IT 専 門 家
不 足 、 2005 年 に は 14 万 不 足 を 予 想 。 今 後 5 年 間 に 総 額 1 兆 ウ オ ン 投 資 、 20
万 人 超 の IT 専 門 家 を 生 む 予 定 。
*ヒアリング
・ コ ス ダ ッ ク 市 場 の バ ブ ル 崩 壊 で 、 高 水 準 で な い IT 人 材 は 余 剰 。
・ IT 人 材 の 不 足 。
・ 研究開発とソフトウェア人材が不足。
・ ク ラ ス タ ー 的 に 言 う と 「 営 業 系 」「 技 術 系 」 は 、 外 国 人 IT 人 材 に 頼 れ る ( 外
国 人 人 材 が 多 い )。し か し 、「 マ ネ ー ジ メ ン ト 系 」の 人 材 は 、会 社 の 主 体 部 分 。
「プロジェクト・マネージャー」の役割は重要。言葉とコミュニケーション
97
の 能 力 が 重 要 ( つ ま り 韓 国 人 が そ の ポ ジ シ ョ ン を 占 め る べ き )。
・ 2000 年 の IT ブ ー ム 時 期 に は 、イ ン ド の IT 人 材 が 多 数 来 韓 。し か し 、IT バ ブ
ル崩壊と共に契約の更新はされず。
・ 外 国 人 労 働 者 は 、 IT に 限 ら ず 、 主 に 中 国 と イ ン ド か ら 。
・ 不 足 IT 人 材 は 国 内 で 訓 練 、 供 給 。 外 国 人 雇 用 積 極 的 で は な い 。
・ 企 業 は 今 後 不 足 す る IT 人 材 は 、 国 内 の 人 材 育 成 で 供 給 と 考 え て い る 。
・ 海外人材はプロジェクト毎に活用。また、海外人材がオフション活用。
・ IT 人 材 の 流 れ は あ る が 、国 家 が 想 定 す る ほ ど 、低 賃 金 国 か ら 高 い 国 へ と IT 人
材は流動化しないという予想が多かった・
・ IT 人 材 の 流 失 は 、 台 湾 と 同 じ レ ベ ル で 問 題 視 さ れ て い な い 。 む し ろ 、 余 剰 気
味 な 中 間 な い し 下 層 の IT 人 材 を 日 本 に 移 す と い う 動 き あ っ た が 、現 実 に は ま
だほとんど流出していない。
・IT 人 材 が 、ベ ト ナ ム や イ ン ド か ら 来 て い る 。ま た 、海 外 流 出 先 は 、ア メ リ カ お
よびヨーロッパ。
・ 日 本 へ の IT 人 材 の 流 出 は そ れ ほ ど な い 。 給 与 的 に も 日 韓 で 大 差 な い 。
・IT 産 業 が 発 展 し て い け ば 、大 き な 利 益 が 生 ま れ 、人 材 が 自 然 に 流 れ 、5 年 以 内
に IT 人 材 の 不 足 が な く な る の で は と い う 意 見 も あ っ た 。
(4)台 湾
*文献調査、データ等
・ 1970 年 代 に 、 理 工 系 の 学 生 の 間 に ア メ リ カ の 大 学 留 学 ブ ー ム 。 一 時 期 台 湾 は 、
シリコンバレーへの人材供給源。
・ 国 内 人 材 確 保 の た め に 、台 湾 人 の 様 々 な 海 外 ハ イ テ ク 人 材 呼 び 戻 し 策 。 兵 役 免
除。民主化などのその他の要因で、海外からの帰国者が増加した。
・企 業 自 ら が 海 外 に 赴 き 、特 に 生 産 技 術 の 導 入 を 目 的 に IT 人 材 を 探 す 。海 外 帰 国
者 の 数 は 、 新 竹 サ イ エ ン ス ・ パ ー ク だ け で も 、 2000 年 12 月 現 在 で 全 従 業 員 8
万 人 強 の う ち 3000 人 以 上 に 上 る 。
・2002 年 1 月 16 日 に、「科 技 人 材 育 成 及 び運 用 法 案 」公 表 。
・大 陸 のハイテク人 材 の台 湾 での雇 用 に対 し緩 和 政 策 。
98
*ヒアリング
・中 位 層 人 材 は 十 分 。高 水 準 、最 上 層 の 人 材 が 少 な い 。ソ フ ト ウ ェ ア 開 発 の 人 材 、
R&D 設 計 、デ ザ イ ナ ー 、ア ー キ テ ク ト 、プ ロ ダ ク ト・マ ネ ー ジ ャ ー の よ う な 製
品企画・開発を上位でつかさどる人材が不足。セールスの人材も重要。今後は
セキュリティー、ネットワーキング、通信関連の人材が不足。また最下層の人
材 も 不 足( そ の 意 味 で 中 国 大 陸 の 人 材 が 必 要 )。技 術 系 、マ ー ケ テ ィ ン グ も 不 足 。
な お 、台 湾 で は 、現 在 1 年 間 に 4 万 人 の IT 人 材 需 要 が あ り 、供 給 は 3 万 人( 1
万 人 不 足 )。
・台 湾 政 府 は 、イ ン ド の IT 人 材 受 入 を 検 討 開 始 。政 府 は 法 整 備 を 整 え た が 、企 業
が外国人受け入れを決めることなので、まだ少ない。
・ IT 人 材 不 足 。 イ ン ド 、 中 国 、 フ ィ リ ピンから雇 用 。
・ 台湾政府は、大陸人材受け入れをこれまで認めていず、大陸の人材活用はな
い 。 し か し 2001 年 7 月 に 大 陸 の 人 の 居 住 を 認 め た 。 た だ し 、 今 の と こ ろ は 、
台湾企業は人材活用のために、大陸に出向くことが主流。管理職レベルで中
国へ。
・ 中 国 大 陸 へ の 優 秀 か つ ハ イ レ ベ ル の IT 人 材 の 流 出 が 深 刻 化 。
・ クラスターでは、マネージメント系が不足。
・ IT 人 材 を ハ イ 、 ミ ド ル 、 ロ ー の 3 つ の レ ベ ル に 大 き く 分 け て み た 場 合 、 ハ イ
レ ベ ル な IT 人 材 不 足 。 こ こ に 外 国 人 IT 人 材 や ア メ リ カ 留 学 台 湾 人 が 必 要 。
・ 日 本 と の 間 に 、 IT 人 材 の 交 流 は あ ま り み ら れ な い 。
・ 台 湾 で は IT 人 材 が 今 後 ま す ま す 不 足 。 国 内 で の 人 材 育 成 で は 足 り な い 。
・ 他 方 、 IT 人 材 の ニ ー ズ は 、 基 本 的 に 、 台 湾 国 内 で ロ ー カ ル に 調 達 さ れ て い る
という意見もあり。
(5)フ ィ リ ピ ン
*文献調査、データ等
・海 外 で の フ ィ リ ピ ン 人 雇 用 が 順 調 に 伸 び て い る 。地 元 の 雇 用 状 況 は よ く な い が 、
情 報 及 び 通 信 技 術 を 利 用 す る 産 業 が 次 第 に 増 え 、雇 用 に 貢 献 。現 在 、新 規 コ ン
ピ ュ ー タ 利 用 の 需 要 が 急 速 に 拡 大 、ソ フ ト ウ ェ ア 開 発 の 人 材 不 足 。エ レ ク ト ロ
ニ ッ ク・デ ー タ・プ ロ セ ッ シ ン グ( EDP)従 事 者 が 、日 本 だ け で も 30 万 人 必 要
99
で 、米 国 で も 年 間 50 万 人 を 必 要 。結 果 と し て 、フ ィ リ ピ ン 人 IT 技 術 者 へ の 需
要 高 ま る 。 そ の 需 要 増 加 率 は 年 26,2% の 増 加 。
・ 年 間 10% か ら 20% の IT 技 術 者 が 海 外 へ 。
・問 題 は 離 職 率 で あ る 。年 間 の 離 職 率 は 15∼ 30% で あ る 。退 職 者 の 多 く が 米 国 に
出稼ぎに。
・ 多くのフィリピン人技術者が米国に流出。
表
米 国 H-1B ビ ザ 取 得 者 の 主 な 国 籍 ( 1999 年 )
国籍
インド
中国
日本
フィリピン
人数
55,047
6,665
5,779
3,339
・ 現 在 、 フ ィ リ ピ ン 国 内 に は 、 IT 技 術 者 が 約 3 万 1510 人 で 、 そ れ へ の 人 材 需 要
も 年 間 15% の 割 合 で 増 加 し て い る 。
・フ ィ リ ピ ン 人 は 、海 外 の 労 働 市 場 で も IT 産 業 に 適 し た 人 材 。た だ し 、短 所 は 、
国 際 的 プ ロ ジ ェ ク ト を 遂 行 で き る 訓 練 さ れ た 、経 験 の あ る 中 堅 な い し 上 級 の IT
技 術 者 の 不 足 。ま た 、IT 教 育 の 不 十 分 さ 。イ ン フ ラ お よ び 制 度 上 の 障 害 、そ し
て専門的な人材育成には未だ不十分な教育システムである。
*ヒアリング
・フィリピン人は、国際的に見た低賃金、高い教育水準、民族性、英語力、多数
の 優 秀 な 技 術 者 等 の メ リ ッ ト が あ り 、海 外 に 流 出 し や す い 。こ う し た IT 人 材 が 、
シンガポールやマレーシアでも働いている。
・ IT 教 育 を 受 け た 大 卒 者 数 は 、 ア ジ ア で は イ ン ド の 次 に 多 い 。 大 き な 人 材 供 給
源になっている。
・ フィリピン自体、もともと海外への出稼ぎ労働の仕送り収入に大きく依存す
る 政 策 を 取 っ て き た 。 フ ィ リ ピ ン が 世 界 的 な Human Resources Provider と し
て機能していくという道もあるだろう。フィリピン人が海外に出稼ぎに行く
ということは、外貨が入ってくるということになり、計算上は国が豊かにな
100
ることが期待できる。
・フ ィ リ ピ ン で は 、IT 産 業 を 発 展 さ せ る た め に 海 外 流 出 を ど う 防 ぐ か を 議 論 し て
きたが、解決策はでていない。実際、流出を止めるのは無理で、それを認める
ことから始めなければいけない。解決策は、人材の供給を増やすことである。
・フ ィ リ ピ ン 人 は 、IT 産 業 の 核 の と こ ろ で は な く 、プ ロ グ ラ ミ ン グ な ど の 作 業 を
任かされている。
・フ ィ リ ピ ン は 、IT プ ロ フ ェ シ ョ ナ ル な 人 材 が 豊 富 な の で 、日 本 も ジ ャ パ ユ キ さ
ん の よ う な 人 で は な く 、 も っ と IT 人 材 に 目 を 向 け て ほ し い 。
・優秀な人材は国内企業でもかなり高い報酬が出されており、必ずしも優秀な人
材から順番に海外に流出するわけではない。むしろ流出が激しいのは中間層の
人材ではないか。
・人材のスキルレベルは、現在の企業のニーズを十分に満たしている。しかし
国家戦略としては、ソフトウェアの開発センター、またサービス・プロバイ
ダーとなり、これを日本なでの海外に輸出していくことを目指している。現
在フィリピンにある産業とは異質なものを育成していきたい。
・フィリピンの人材は、シンガポールよりも優れている。東アジアでは最も高い
クオリティを誇る。
・クラスターについてあまり考えられていない。
(6)タ イ
*文献調査、データ等
・ タ イ に お け る IT 化 の 成 否 の 鍵 は 、 IT 人 材 の 確 保 。
・ タ イ の IT 技 術 者 は 、 国 内 で の 需 要 に 比 べ る と IT 人 材 が 不 足 。 こ の た め タ イ 国
内 向 け コ ン ピ ュ ー タ・シ ス テ ム の 多 く が 、イ ン ド な ど の 海 外 で 開 発 さ れ て い る 。
増 大 す る 政 府 向 け 国 内 の コ ン ピ ュ ー タ・シ ス テ ム 開 発 需 要 を 自 国 の IT 技 術 者 で
ま か な う こ と を 目 標 。 そ の シ ス テ ム 増 加 の 対 処 の た め に 、 今 後 の 2∼ 3 年 で 約
1000 人 の IT 技 術 者 が さ ら に 必 要 。 プ ロ グ ラ マ ー や シ ス テ ム ・ ア ナ リ ス ト な ど
に加え、今後、データベース管理、ネットワーク管理やコンピュータ監査など
の技術者も不足。
101
*ヒアリング
・クラスターは標準化していず、専門家により異なる。
・ タ イ で は 、 IT 労 働 者 の 海 外 転 出 が 多 く 、 問 題 に な っ て い る 。 優 秀 な IT 人 材 が
主にアメリカへ転出し、タイに戻ることはない。
・海外転出は、2 年前までは人気があった。ほとんどが、ソフトウェア関係の人
材。転出先としては、アメリカ、シンガポール、香港に行くケースが多い。
・日本への転出はめったにない。
(7)マ レ ー シ ア
*文献調査、データ等
・ 政 府 は IT( 情 報 技 術 ) に 積 極 的 に 取 り 組 む 。 例 え ば 、 政 府 は 国 内 の IT 関 連 技
能 の 不 足 を 認 め た 上 で 寛 容 な 姿 勢 で 、企 業 が 海 外 か ら の IT 要 員 招 致 を 容 認 す る
方 針 。結 果 、IT 導 入 に 積 極 的 な 企 業 や 事 業 に は 、ビ ザ が 簡 単 に 発 行 さ れ る 。ま
た 海 外 投 資 家 は IT 専 門 家 を 必 要 な 時 に は 招 致 で き る 。
・IT 関 連 人 材 の 層 を 厚 く す る た め 、い く つ か の マ ル チ メ デ ィ ア 大 学( 例 え ば 、テ
レコム大学が母体となって設立されたマルチメディア大学など)や高度学習セ
ン タ ー ( High Institute of Learning) が 設 立 。 ま た 、 高 等 教 育 機 関 に は IT
やコンピュータ技術関連の学部が設置。民間教育機関でも、国外著名大学や高
等 教 育 機 関 と 提 携 。こ れ ら の 教 育 機 関 は 、IT 技 能 を 有 す る 人 材 を 毎 年 計 2 万 人
以 上 、 労 働 市 場 輩 出 。 IT 分 野 の 卒 業 生 は 5 年 後 に は 3 万 5 千 人 を 超 え る 予 定 。
・90 年 代 後 半 の ハ イ テ ク 人 材 育 成 の 効 果 は 着 実 に 上 が っ て い る 。マ レ ー シ ア の 労
働 力 人 口 は 96 年 に 830 万 人 、 2000 年 に は 920 万 人 に 増 加 し て い る が 、 同 じ 時
期 に 、 知 識 集 約 型 労 働 者 ( Knowledge Workers) の 比 率 は 11.1% か ら 19% に 上
昇 し て い る 。 政 府 計 画 で は 、 知 識 集 約 型 労 働 者 の 供 給 は 99 年 の 年 間 2 万 8000
人 か ら 2002 年 に は 10 万 8000 人 ま で 拡 大 す る 見 込 み 。
・ブミプトラ政策の結果、教育水準の高い中国系国民の頭脳流出。その対策とし
て 、テ レ コ ム 大 学 が 母 体 と な り マ ル チ メ デ ィ ア 大 学 の 設 立 。同 大 学 の 学 生 数 は 、
2000 年 現 在 約 6000 人( サ イ バ ー ジ ャ ヤ・キ ャ ン パ ス 3300 名 の 学 生 、マ ラ ッ カ・
キ ャ ン パ ス 2500 名 の 学 生 ) で 、 2000 年 に は 初 の 卒 業 生 を 送 り 出 し た 。 IT 学 部
の 卒 業 生 は 100% 就 職 が 決 ま り 、就 職 先 の 大 半 は IT 関 連 企 業 で あ る 。2005 年 に
102
は 学 生 数 が 10000 人 を 超 え る 見 込 み で あ る 。 最 近 の 競 争 率 は 約 100 倍 と 高 く 、
以前なら海外に出ていた優秀な層も含まれる。同大学では、民族別割当てがな
いので、学生に占める中国人の割合は半分を超える。
・国内の産業・社会構造を転換していく積極策として、マレーシア政府は、海外
に流失した優秀な人材に優遇措置を与え彼らを呼び戻す政策を実施。しかし、
まだ大きな成果はなし。
*ヒアリング
・IT 教 育 を 受 け た エ リ ー ト 層 の 人 は 、マ ネ ー ジ メ ン ト な ど の 高 い 地 位 を 志 向 す る
が、その下にいえ産業を支える層の人材が育成されておらず、産業のピラミッ
ドが構築しにくい状況がある。
・ ブミプトラ政策の弊害で、優秀な中国人やインド人が海外に流出する(彼ら
は い く ら 優 秀 で も 大 学 に お け る 人 員 数 が 民 族 毎 に 制 限 さ れ て い る )。マ レ ー 人
でも優秀な人材はいるが、彼らは国内にいる方が優遇されているため、海外
に流出することはない。マレー人のエントレプルナーシップは非常に低い。
政策により優秀な中国人やインド人が海外に流出するため、ベンチャー企業
が活発に立ち上がられる素地は低い。
・ マ レ ー シ ア の IT 人 材 の 10% ぐ ら い が 流 出 し て い る の で は な い か 。そ れ も 優 秀
な人材から出て行く。スキルの人材は、給与が 2 倍ぐらい高いのでシンガポ
ールに行く。
・ IT 人 材 を 区 分 す る な ら 、 ① 技 術 者 、 ② シ ス テ ム 管 理 者 、 ③ ネ ッ ト ワ ー ク 管 理
者、④プログラマー・ソフトウエア開発(ただし他国の技術をもってきてそ
れ を 自 国 の も の に 合 わ せ る と い う も の )、 ⑤ コ ン サ ル タ ン ト ・ デ ザ イ ン と い う
分け方ができる。マレーシアが得意なのは、④と⑤である(つまり、本調査
の ク ラ ス タ ー で は 、 技 術 系 と マ ネ ー ジ マ ン ト 系 で あ る )。
・ 海 外 か ら の 人 材 は 、 日 本 で は NEC ぐ ら い で 、 欧 米 か ら 来 て い る 人 が 多 く 、 ほ
とんどの場合は各国の技術をもってきて、コンサルタントになっている。
・ マ レ ー シ ア は 、IT 人 材 で は 、エ ン ジ ニ ア 、プ ロ グ ラ マ ー 、コ ン サ ル テ ィ ン グ 、
ネットワークスペシャリストなどの領域では、他国に比べて競争力をもって
い る 。そ れ は 、IBM や シ ー メ ン ス を は じ め と し た 企 業 に よ る 技 術 移 転 が 進 ん で
103
いるからである。しかし、スキルある労働者が不十分で、インド、インドネ
シ ア 、 フ ィ リ ピ ン な ど か ら IT 人 材 を 受 け 入 れ て い る 。
(8)シ ン ガ ポ ー ル
*文献調査、データ等
・シ ン ガ ポ ー ル 市 民 か あ る い は 永 住 権 保 有 者 向 の さ ま ざ ま な IT 人 材 育 成 、人 材 転
換策。
・外 国 人 の IT 人 材 あ る い は IT 労 働 者 の 確 保 に も 躍 起 。シ ン ガ ポ ー ル の IT 労 働 者
不 足 を 補 う た め に 、 年 間 約 5000 人 の IT 外 国 人 労 働 者 募 集 。
・情 報 通 信( IT)技 術 者 の 外 国 人 比 率 は 27% で あ り 、そ の う ち 外 国 人 労 働 者 の 79%
が 、 マ レ ー シ ア ( 51% )、 イ ン ド ( 16% )、 中 国 ( 12% )( 「 1999 年 情 報 通 信 労
働 者 ・ 技 能 調 査 」)。
・外国人技術者対象の政策などを実施。
・・情報通信技術者や卒業予定の外国人学生の募集目的で、海外で人材募集お
よび大学での募集推進活動の支援。
・・労働者不足問題緩和のための外国人技術者募集企業の支援。
・「 Inforcomm Queue」( 2000 年 1 月 設 置 ) に よ っ て 、 情 報 通 信 関 連 の 外 国 人 技 術
者の雇用申請手続きは早く処理されるようになった。
・政 府 は 、多 く の 外 国 人 技 術 者 獲 得 の た め に 、民 間 企 業 の NIIT ア ジ ア・パ シ フ ィ
ッ ク と 契 約 。 当 該 地 か ら 年 間 1000 人 の IT 専 門 家 を 動 員 し て も ら う こ と で 、 シ
ン ガ ポ ー ル の IT 労 働 者 不 足 緩 和 を 計 画 。
・ 海 外 人 材 誘 致 機 関 Contact Singapore を ロ ン ド ン な ど 海 外 主 要 6 都 市 に 設 立 、
優秀な技術者のスカウトを推進。
・人材需給の不均衡を最小限にするために、必要な技能がある労働者の訓練、教
育が急務。
・現 在 で は 、毎 年 生 ま れ る 情 報 通 信 職 の 約 50% が 、情 報 通 信 関 連 の 経 験 や 技 能 を
もつ外国人技術者によって補われるという構図。シンガポールの企業からすれ
ば、人件費の安さから地元の技術者の採用を望んでいる。
・ シ ン ガ ポ ー ル は 2010 年 に IT 技 術 者 を 25 万 人 、 IT が 利 用 で き る 労 働 者 の 割 合
を 現 在 の 25% か ら 75% に 引 き 上 げ る の を 目 標 。外 部 招 聘 も 進 め ば こ の 目 標 は 十
104
分達成できる。
*ヒアリング
・ マ レ ー シ ア と 比 べ て IT 教 育 は 行 き 届 い て い る 。 た だ し 、 人 材 の 絶 対 数 が 少 な
いので、海外からの人材を受け入れる必要がある。
・ 人材はマレーシアやインドから受け入れることが多い。インドから来る人は、
シンガポールで働くことをアメリカに行くためのステップにしている人が多
い。
・ プログラマーの下から中ぐらいのレベルまではインドからの人材で十分。そ
の上になると、アメリカやヨーロッパからも連れてくる。
・シンガポール政府としても、他国の動向が非常に気になっている。バンガロー
やマレーシアもそうであるが、一番注視しているのは中国である。優秀な人材
も豊富だし、規模も全然違うし、コストも安い。シンガポールの独自の価値が
何 か と い う こ と は ま だ ハ ッ キ リ と 見 え て い な い 。シ ン ガ ポ ー ル は コ ス ト 面 1 で も
高くなってきているので、この国でビジネスを展開する意義が薄れてしまう恐
れがある。治安もいいし、快適ということはいえるので、知的労働者を呼び寄
せるには有利である。やはり、バンガローに行きたいというインド人以外の人
間は少ない。家族と一緒に移り住むということを考えると、シンガポールの利
点は大きい。ただ、今後独自のアドバンテージを高めていく必要があることは
間 違 い な い 。 IT 産 業 に つ い て 言 え ば 、 日 系 企 業 を は じ め 、 シ ン ガ ポ ー ル に
Headquarter を 置 い て い る 企 業 は 非 常 に 多 い の で 、 こ う し た Headquarter に 対
する仕事というのがあって、これがそれなりのマーケットになるという利点が
ある。シンガポールが成功している要因のひとつは、公用語がマレー語である
が、ビジネス言語を英語に定めているということ。日本において一番ボトルネ
ックになるのは英語である。いくら優秀な人間であっても、コミュニケーショ
ン が 取 れ な け れ ば 意 味 が な い 。 ヨ ー ロ ッ パ の 企 業 で 、 日 本 に Headquarter を お
いていた企業がシンガポールに移ってくるというケースもある。コストの面で
の問題もあるが、インフラが整備されていることと、英語でコミュニケートで
1 アジア圏内では日本の次に物価が高い
105
きる人間が多いというのが理由。マレーシアとシンガポールはもともと似たよ
うな国であったが、明暗を分けたのも言語の選択であった。
・シンガポールは、エンジニアは他国以上の水準であるが、マネージメントに
おいては少し物足りない。
(9)イ ン ド
*文献調査、データ等
・米 国 、日 本 、ヨ ー ロ ッ パ を は じ め と す る 工 業 国 で 150 万 人 の 専 門 家 の 不 足( 1999
年 の 全 国 ソ フ ト ウ エ ア ・ サ ー ビ ス 企 業 協 会 ( NASSCOM;
National Association
of Software and Services Companies) と コ ン サ ル テ ィ ン グ 会 社 で あ る マ ッ キ
ン ゼ ー の 調 査 )。
・イ ン ド 国 内 で も 専 門 家 は 不 足 し て い る が 、多 数 の 優 秀 な イ ン ド 人 人 材 が 海 外 で
就職。
・ 政 府 は 、 こ の よ う な 問 題 対 処 の た め 今 後 不 足 が 予 想 さ れ る 80 万 人 の ソ フ ト ウ
ェ ア 専 門 家 を 2007 年 ま で に 供 給 す る た め に プ ロ グ ラ ム を 開 始 。
・ イ ン ド は 現 在 28 万 人 の ソ フ ト ウ ェ ア 専 門 家 が お り 、 毎 年 7 万 3000 人 か ら 8
万 5000 人 が IT 関 連 学 校 を 卒 業 し て い る 。
・2008 年 ま で に 、イ ン ド の IT 関 連 サ ー ビ ス は 、100 万 人 分 の 追 加 的 雇 用 を 生 み 出
すことが予想。
・質 の 高 い 教 育 の 受 益 者 の 多 く が 、海 外 に 金 に な る 雇 用 を 求 め て 出 て い く 。IT 人
材 の 不 足 な ど か ら 、海 外 、特 に 日 本 、ド イ ツ 、米 国 な ど で の 雇 用 機 会 が 急 増 し ,
各国でそのような専門家のビザ取得制限緩和政策のため、インドをはじめとす
る国や地域から頭脳流出が加速化。
・ 日 本 も 、 イ ン ド の IT 人 材 確 保 の た め に 努 力 し て い る 。 幾 つ か の 対 策 。
・ア メ リ カ で は 、熟 練 技 術 者 向 け H-1B ビ ザ の 発 行 緩 和 。ま た 、ヨ ー ロ ッ パ で は ド
イツ、イギリス、フランス、オーストリア、イタリアで、アジアでは日本にお
い て 、 熟 練 労 働 者 不 足 。 イ ン ド 人 の 雇 用 機 会 を 生 ん で い る 。 ア メ リ カ の H-1B
ビ ザ は 、毎 年 、総 発 行 の 半 分 が イ ン ド 人 IT エ ン ジ ニ ア に 発 行 。ま た ド イ ツ 、イ
ギリス、シンガポールもインド人技術者の採用に熱心。結果、これまで毎年イ
ン ド の 熟 練 IT 技 術 者 の 15% が 、 外 国 ( 大 半 が ア メ リ カ ) に 。 結 果 、 イ ン ド で
106
活 動 す る イ ン ド 系・外 資 系 IT 関 連 企 業 の 一 部 が 、他 の ア ジ ア 諸 国 、例 え ば ベ ト
ナ ム や イ ン ド ネ シ ア で IT 専 門 家 を 探 し 始 め て い る 。
・し か し 、近 年 こ の よ う な 傾 向 は 流 出 す る 頭 脳 に と っ て は 望 ま し い も の と い う こ
とが明確に理解されてきている。
・実際、今インドに帰国する潮流が起き始めてきている。
*ヒアリング
・ 海外転出への抵抗感がない。その主たる現金は、英語が第二言語として流通
しているからである。
・ 海 外 か ら の 転 入 は 、 問 題 は な い 。 し か し 、 先 進 国 と の 賃 金 格 差 が 推 定 で 14 対
1 で あ る こ と を 考 慮 す る と 、海 外 か ら の 転 入 は 困 難 で あ る 。そ の 一 方 で 、在 外
IT 労 働 者 が イ ン ド に 戻 っ て く る ケ ー ス が 増 え て い る 。 主 と し て 、 会 社 設 立 や
就業を目的として帰国するケースが増えている。
(10)日 本
*文献調査、データ等
・情報通信技術関連職業の雇用について、日本における情報通信技術関連職業の
就 業 者 数 は 、1999 年 の 推 計 で 328 万 人 。1995 年 と 比 べ 0.7% の 増 加 。情 報 通 信
技術関連雇用は、現在はまだ製造部門中心だが、増加率では、サービス業、専
門・技術職が増加傾向にあり、ソフト化・高度化が進行中。また、情報サービ
ス業の雇用者数は増加。従業員職業別構成は、近年では、キーパンチャーなど
の比率が縮小。他方システム・エンジニアが拡大。システム・エンジニアの中
でも特にネットワーク、コンサルティング、ビジネス・アプリケーション系)
の人材の不足が深刻。
・ IT コ ン サ ル タ ン ト 、 プ ロ ジ ェ ク ト ・ マ ネ ジ メ ン ト 、 高 度 の IT ス ペ シ ャ リ ス ト
の 不 足 。 全 体 を 見 通 し 、 統 合 的 業 務 を 進 め ら れ る IT 人 材 が 不 足 。
・ IT 人 材 の 不 足 に 対 し て 優 秀 な 外 国 人 IT 人 材 の 受 け 入 れ へ の 期 待 の 高 ま り に 対
応 す べ く e -Japan 重 点 計 画 に お け る 外 国 人 受 入 関 連 制 度 の 見 直 し な ど 。
107
・ 日 本 に 来 る 外 国 人 IT 人 材 の 数 に は 限 界 が あ る 2 。
*ヒアリング
・特定分野の専門知識を有する人材はいるが、システム開発過程で様々な要素
を 統 合 し て 製 品 化 す る 人 材 が 不 足 。 UNIX や Java 関 連 の 技 術 者 の 不 足 。 プ ロ ジ
ェクトマネージャーの不足。
・ 外 国 人 ( 特 に ア ジ ア ) の IT 人 材 の 活 用 が 進 ん で い る と は い え な い 。
・ ア ジ ア IT 人 材 の 採 用 は 、 人 材 確 保 と い う よ り も 当 該 企 業 の グ ロ ー バ ル 化 の
ためと回答した企業が複数あり。
・国 内 で 活 躍 し て い る ア ジ ア の IT 人 材 が 、中 国 人 、韓 国 人 、イ ン ド 人 が 主 。中 国
人 が 圧 倒 的 に 多 い 。韓 国 人 の 場 合 は 、JAVA 言 語 に お け る 優 位 性 が あ る か 。中 国
人やインド人は人件費が相対的に安い。
・日 本 で 活 躍 す る 外 国 人 IT 人 材 は 、職 種 も 比 較 的 限 定 さ れ て い る 。ソ フ ト ウ ェ ア
開発、ネットワーク系、エンジニア系等。
・ア ジ ア 人 材 の コ ス ト は 、教 育 な ど も 含 め て い く と 、そ れ ほ ど 割 安 と は い え な い 。
・海外からそれらの人材を連れてくる場合、言語・文化(契約や雇用に関する認
識 の 違 い も 含 め て )・ 慣 習 の 違 い 等 が あ り 、 多 く の 問 題 が あ る 。
・留学等で日本にいる人材の方が、問題が少なく、ビザもとりやすいので、日本
国内での就労がしやすい。
・在 日 の 中 国 人 IT 人 材 が 、中 国 の 活 況 や 日 本 で の 生 活 の 難 し さ 等 か ら 、最 近 帰 国
し、中国で起業してきている。
・先 の 中 国 人 IT 人 材 の 賃 金 が 必 ず し も 安 価 で な い 。そ の た め 、中 国 の 企 業 と 提 携 、
中 国 に 子 会 社 等 設 立 の 動 き が 加 速 ( オ ン サ イ ト か ら オ フ シ ョ ア へ が ト レ ン ド )。
ただし、これらの手法が成功するためには、日中の橋渡しになれる人材、プロ
ジェクトマネージャーとかが重要。
・ 中 国 人 が 日 本 国 内 で 多 く の IT 企 業 を 設 立 。 仕 事 の し や す さ の 面 か ら 、
・またそれらの起業家中国人が横のつながりを形成してきている。
・ 日 本 に も 毎 年 8000 人 の 中 国 か ら 中 国 人 エ ン ジ ニ ア が 流 れ て き て い る 。 ま た 、
2 日 本 情 報 処 理 開 発 協 会 『 情 報 化 白 書 2001』、 268-269 頁 を 参 照 。
108
日 本 の ソ フ ト ウ エ ア 業 界 に イ ン ド 人 は 約 1000 人 い る 。
これらの項目のポイントを、マトリックス的にまとめると別表のようになる。
な お 、先 述 し た の で 繰 り 返 し に な る が 、IT 労 働 者 の ク ラ ス タ ー に つ い て は 、次 の
ものを用いた。
①技術系(開発、サポート、ネットワーク構築、システム運営等)
② 営 業 系 ( セ ー ル ス 、 SE、 セ ー ル ス 支 援 マ ー ケ テ ィ ン グ 等 )
③マネージメント系(経営、コンサル、プロジェクト・マネージャー、プロダ
クツ・マネージメント等)
109
アジアIT技術者・人材出入国マトリックス
入国・地域先
中国
出
国
地
域
元
香港
韓国
台湾
フィリピン
タイ
マレーシア
主にアメリカか 中国からの流入 ら帰国
うまくいっていな
い
注)網掛部分は本調査に関する限り該当項目ナシを意味するものである。
シンガポール
インド
日本 アメリカ
欧州
毎年8千人の中 流出・還流並
国人エンジニア。但 存
し戻り始めてい
る。流出(技マ)・
還流並存
外国人構成比
率12%(99年)
中国
香港
なし
海外人材流入不成功
バブル期外国人材
(営・技)今後は自
前人材、外国人
帰国
韓国
ハイレベルの人材
なし
(技)
(JAVA)
外国人材特に韓
国から誘致(マ)
台湾人材が帰国
台湾
なし
流出・還流並存
フィリピン
(技)
タイ
海外に多くの
人材流出
なし
自前で育成を
目指す
(技)ソフトウェア
・自前で育成
・帰国促進
マレーシア
海外人材の確
保
16%(99年)
アメリカへ行くス
テップ
シンガポール
インド
インドのソフトを中
国のハードと結
びつける動き
ITバブル期に多数 インドIT人材受け
(技)戻り始めてい 入れ検討
る
(技)ソフトウェア
51%(99年)
インドでソフト開発
日本
(技)ソフト開発
(技)
なし
(技)ソフトウェア
なし
(主に中国人 (主に中国人
系)
系)
なし
アメリカから帰国、オフ
ショアへ。越人(少数)
受入
現在約1000名の 流出・還流並 欧州は米のIT
バブル崩壊後、
インド人人材在 存
獲得を目指し
日
ている(技)
なし
中、印、韓等から来日
アメリカ
アメリカに来た
中国人
アメリカに来た台
湾人
アメリカに来たイ
ンド人
(マ)米法人などで
欧州
:出国先からUターン傾向 :出国が多い
(マ)
:出国があるが多くない
多数出入
シンガポールは獲
得を目指してい
る
(技):技術系(開発、サポート、ネットワーク構築、システム運営等)
(マ):マネージメント系(経営、コンサルタント、プロジェクト・マネージャー、プロダクツ・マネージメント等)
第 2部
ア ジ ア IT 労 働 市 場 の 今 後 の 展 望 と 我 が 国 の 課 題
第 5章
ア ジ ア に お け る IT 人 材 の 将 来 需 要 予 測
1.はじめに
今 後 と も IT 人 材 の 需 要 は ま す ま す 増 加 す る と 考 え ら れ る 。世 界 、特 に ア ジ ア に
おける多くの国々や地域は、その増加を予測している。そのことは、本調査にお
け る 文 献 調 査 や 現 地 で の ヒ ア リ ン グ で も 明 ら か で あ っ た 。た だ し 、そ の IT 人 材 の
需要予測についての具体的なデータは、特定の国以外は意外と存在していないと
いうのも、今回の調査を通じて明瞭となった。これは、アジアにある多くの国々
では、社会的なデータが必ずしも整備されていないことによるであろう。しかし
ながら、このデータの不備は今回の調査の対象が単にアジアの国々だったからだ
けではなく、次のような別のいくつかの理由が大きく関係していると思われる。
そ れ は 、 IT 関 連 の 産 業 の 急 激 な 発 展 、 そ の 後 の IT バ ブ ル の 崩 壊 等 が あ ま り に
も短期間に起きてきており、それに関わる人材の把握が難しいからであろう。ま
た 、IT 産 業 自 体 の 社 会 に お け る「 経 歴 」が 今 だ 短 く 、IT 自 体 の 定 義 も 個 人 、国 家
等 に よ っ て も 異 な っ て い る 。結 果 と し て 、IT に 関 わ る 産 業 や 企 業 活 動 な ど の 社 会
的位置づけがやや不鮮明であり、統計的な位置づけが正確になされていないので
あ る 。さ ら に 、IT 自 体 が 、技 術 の 進 歩 と 密 接 に 結 び つ き 、短 期 間 に 急 激 な 変 貌 を
呈 し て き て い る と 共 に 、IT 自 体 が 他 分 野 と 産 業 や 社 会 活 動 と も 相 互 に 連 関 し て お
り、それ自体を把握するのが非常に難しく、それに伴う人材の把握も非常に難し
くなっているからであるといえよう。
そ れ ら の 事 情 か ら 、ア ジ ア に お け る IT 人 材 の 将 来 需 要 予 測 に お い て も 、定 性 的
な予測に留まった部分があることを予め記しておきたい。
そ れ で は 、 ア ジ ア に お け る 各 国 毎 の IT 人 材 の 将 来 需 要 予 測 を み て い こ う 。
2. 中 国
中 国 の IT 人 材 の 需 給 を 語 る 上 で も 、十 分 な デ ー タ が あ る と は い え な い 。し か し 、
次のようなことがいわれている。
111
中 国 国 内 の ソ フ ト ウ ェ ア 産 業 で は 、60 万 人 の 人 材 需 要 が あ る 1 。こ れ に 対 し て 、
現 状 で は 18 万 人 の 供 給 が あ る の み で あ り 、42 万 人 が 不 足 し て い る 2 。大 学 で の 育
成 IT 人 材 は 毎 年 5 万 人 に 過 ぎ な い 3 。 で あ る か ら 、 短 期 的 に は こ の 需 要 を 中 国 国
内だけで満たせる可能性はないと思われる。また、その需要と供給の間にあまり
にギャップがあるため、少なくとも短期的には、需要は、供給に引きずられて、
現 実 に は あ ま り 伸 び な い と 考 え ら れ る 4。
IT 人 材 の 世 界 的 な 不 足 状 況 の 結 果 、 中 国 で は 、 国 内 で は IT 人 材 は も と も と 明
らかに不足である中、人材の流出も多いが、先述したように頭脳還流、帰国ブー
ム も 起 き 始 め て い る 。さ ら に 、台 湾 な ど か ら IT 人 材 が 流 入 し て き て い る と も い わ
れ る 5。
ヒ ア リ ン グ か ら 得 た 感 触 で は 、中 国 に お け る 経 済 の 活 況 と 社 会 的 自 由 化 の 中 で 、
こ こ 当 分 は 、中 国 人 の 帰 国 者 が 増 え 、彼 ら が 中 心 と な り 中 国 の IT 人 材 の 不 足 に 応
えていくのではないだろうか。
ま た 中 国 国 内 で も 、不 足 需 要 を 補 う べ く IT 人 材 の 導 入 と 育 成 の た め に 、さ ま ざ
1 「 中 国 の IT 人 材 の 不 足 状 態 は 大 変 厳 し く 、北 京 、上 海 、広 東 の 人 材 ト ー タ ル ニ ー ズ に 中 に 、IT 人
材 の ニ ー ズ は 55% も 占 め て い る ...広 東 だ け で も 、情 報 産 業 を 盛 り 立 て る に は 少 な く と も 25 万 人 以
上 の IT 人 材 が 必 要 で あ る 。上 海 の IT 人 材 は 少 な く と も 1 万 人 不 足 し 、深 セ ン は 今 後 10 年 の 間 、42
万 人 の IT 高 級 技 術 人 材 が 必 要 ...逝 江 省 ...今 後 5 年 の 間 ...120 万 人 増 や し 、...安 き 省 ...こ れ
か ら 5 年 間 、20 万 人 の IT 人 材 が 差 し 迫 っ て 必 要 ...」中 国 現 代 国 際 関 係 研 究 所 情 報 社 会 研 究 室 [2002b]
p 10
2 「 国 家 経 済 貿 易 委 員 会 が 国 家 重 点 企 業 300 社 に 対 す る 調 査 結 果 に よ る と 、 62% の 企 業 は 情 報 技 術 専
門人材の不足を訴えている。特に高い次元の人材、例えば中国の集積回路産業とソフト業を発展さ
せるのに差し迫って必要となる専門技術人材、新型の通信技術を開発する専門技術人材、現代的な
新しい型の情報企業を経営する専門管理人材などは、中国情報技術人材の供給と養成の重要分野
と な っ て い る 。」 中 国 現 代 国 際 関 係 研 究 所 情 報 社 会 研 究 室 [2002b]p 9
3 『 中 国 情 報 局 新 聞 』 2001 年 12 月 4 日 号 。 ま た 「 今 、 国 内 の 大 学 を 全 部 合 わ せ て 、 コ ン ピ ュ ー タ 専
攻 及 び 電 子 電 信 な ど の 関 連 学 科 専 攻 の 学 生 は 。 5% し か 占 め ず 、 毎 年 送 り 出 す コ ン ピ ュ ー タ と ソ フ ト
ウ エ ア 専 攻 の 技 術 者 は 約 5 万 人 で あ る 。中 に は 、ソ フ ト ウ エ ア 人 材 が 毎 年 1.5 万 人 程 で あ り 、コ ン ピ
ュ ー タ ソ フ ト 専 攻 の 修 士 課 程 卒 業 生 が 約 5000 人 し か い な か っ た ... 去 年 ( 2001 年 ) 中 国 の 398 校 の
大 学 は 、ソ フ ト 関 連 学 科 専 攻 の 人 材 を 4.1 万 養 成 し 、前 年 よ り 少 し 増 え て い た ...中 国 の 各 種 類 の 大
学 は 毎 年 コ ン ピ ュ ー タ と ソ フ ト ウ エ ア 専 攻 の 人 材 を 3.3 万 人 養 成 し て い る が 、ソ フ ト 人 材 は 約 半 分 占
め て い る 。 た だ し 、 修 士 と 博 士 以 上 の 学 位 を 持 つ 高 次 元 の 人 材 は 4.6% し か 占 め て い な か っ た 。 専 門
家 に よ る と 、 中 国 で は 今 後 相 当 長 い 間 、 毎 年 20 万 人 程 の ソ フ ト ウ エ ア 人 材 の 不 足 が 続 く 見 込 み で あ
る 。」 中 国 現 代 国 際 関 係 研 究 所 情 報 社 会 研 究 室 [2002b]p 9
4 「 中 国 の IT 産 業 は 高 速 に 発 展 し 、 し か も 発 展 の 勢 い は 非 常 に 強 い ... 中 国 の IT 産 業 の 発 展 を 制 約
す る 重 要 な 要 素 の 一 つ は 人 材 の 欠 乏 で あ る 。こ こ 10 年 来 、中 国 の 各 種 類 の 大 学 は ト ー タ ル で 、50 万
人 以 上 も の コ ン ピ ュ ー タ 関 係 の 専 門 人 材 を 養 成 し 、し か も 毎 年 の 養 成 人 数 は 幾 何 基 数 の ス ピ ー ド で 倍
増 し て い る が 、ソ フ ト ウ エ ア 業 の 人 材 需 給 の 穴 が ま す ま す 大 き く な る 一 方 で 、未 曾 有 の 人 材 飢 饉 が 現
れ 、 各 地 の ソ フ ト 人 材 に つ い て の 争 奪 戦 も ま す ま す エ ス カ レ ー ト し て い る 。『 ソ フ ト ウ エ ア ブ ル ー カ
ラ ー 』...に つ い て の ニ ー ズ は 20 万 人 以 上 に な る 見 込 み ...養 成 で き る 数 は 8 万 人 程 ...学 校 教 育 に
よ る ソ フ ト 人 材 は わ ず か 2 万 人 程 度 ...し た が っ て 、...10 万 人 以 上 の 不 足 」中 国 現 代 国 際 関 係 研 究
所 情 報 社 会 研 究 室 [2002b]p 13
5 台湾でのヒアリングによる。
112
ま な 政 策 に 取 り 組 み は じ め て い る 。例 え ば 、北 京 市 は 、2001 年 2 月 に ソ フ ト の 人
材の導入と育成を含めた一連の優遇政策を発表し、中国最大のソフト産業基地の
建 設 に 取 り 組 ん で い る 。 ま た 2002 年 に IT 人 材 育 成 の た め の 教 育 機 関 の 設 置 に 関
して規制をなくし、民間部門が自由に教育機関を作れるようにした(マイクロソ
フトと提携して教育センターを設置し、日本の機関とも協力して電子教育センタ
ーを設置した)等々である。
3. 香 港
ま ず 需 要 面 か ら み て み よ う 。こ れ に 関 し て は 、財 政 サ ー ビ ス 事 務 局( Financial
Services Bureau)、 教 育 労 働 力 局 ( Education and Manpower Bureau) お よ び 政 府
統 計 局 ( Census and Statistics Department) の 合 同 報 告 書 ( 2005 年 の 労 働 力 に
関する見積もりを予測)がある。それによれば、次のような需要予測がある。
情 報 技 術・技 能 の 要 員 は 1999 年 か ら 2005 年 の 間 に 5 万 人 か ら 9 万 8200 人 へ と
ほ ぼ 倍 増 す る と 見 込 ま れ て い る 。主 要 経 済 部 門 の 内 で 、IT 集 約 型 の ニ ュ ー・エ コ
ノミー産業は、将来の必要人員の点で高成長する可能性がある。
通信及びインターネット・サービス産業の予測では、この産業に関わる実際の
要 員 数 が 1999 年 で 3 万 1700 人 が 、2005 年 に は 5 万 5400 人 に 増 加 し 、そ の 間 に 2
万 3700 人 増 加 の 見 込 み で あ る 。こ の よ う に 、通 信 及 び イ ン タ ー ネ ッ ト・サ ー ビ ス
産 業 は 、IT 集 約 型 の 香 港 経 済 活 動 の 標 準 化 部 門 と し て 、そ の 5 年 間 で 、香 港 で 最
も 雇 用 を 生 む 可 能 性 を 有 す る 10 の 産 業 の 一 つ と 予 測 さ れ て い る 。
産 業 と 通 商 に お け る 広 い 領 域 で の 職 業 で 、 IT 部 門 に 付 随 す る 成 長 も 見 込 ま れ 、
IT 労 働 者 に よ る 新 し い 知 識 的 産 業 は 急 速 に 成 長 す る と 予 測 さ れ て い る 。
こ こ で い う 知 識 的 産 業 と は 、香 港 職 業 訓 練 局 の 労 働 力 調 査 に よ れ ば 、
「 IT 管 理 、
アプリケーション・システム開発、インターネット/マルチメディア・コンテン
ツ開発、通信およびネットワーキング、データベース、システム・プログラミン
グ、ハードウェア支援、システム運営、情報技術教育および訓練、そして情報技
術研究及び製品開発」に関連する仕事であると定義されている。
IT 職 業 の 中 で 、イ ン タ ー ネ ッ ト と マ ル チ メ デ ィ ア・コ ン テ ン ツ の 開 発 で の 専 門
的 技 能 に 関 す る 人 材 数 は 、 2000 年 3 月 か ら 2001 年 3 月 の 一 年 間 に 48% と い う 最
も 高 い 増 加 が 予 測 さ れ て い た 。 ま た IT 教 育 活 動 の 人 材 が 、 同 期 間 に 18% の 増 加
113
が予測されていた。しかし、情報技術管理、システム分析、プログラミング、ア
プリケーション、データベース設定、ハードウェア支援など情報技術関連の他の
職 業 技 能 で の 人 材 数 の 増 加 は 、年 間 約 1∼ 6% の ゆ っ く り し た ペ ー ス の 増 加 で あ っ
た。
IT 職 の た め の こ れ ら の 新 し い 仕 事 の 産 業 配 分 は 2005 年 人 材 報 告 で の 予 測 の よ
うに、より一層サービス産業に集中することが予測されている。なお、ここでい
う サ ー ビ ス 産 業 と は 、「 金 融 、保 険 、不 動 産 及 び ビ ジ ネ ス・サ ー ビ ス 」( 1999 年 ∼
2005 年 の 期 間 で 合 計 1 万 8000 人 の 新 規 雇 用 が 期 待 さ れ て い る )、 そ し て 「 卸 売 ・
小 売 お よ び 輸 出 入 業 、 レ ス ト ラ ン 及 び ホ テ ル 」( 同 期 間 に お い て IT 人 材 と し て 約
1 万 6600 人 の 雇 用 が 生 ま れ る と 予 測 ) な ど で あ る 。
IT 労 働 者 6 に 限 ら ず 、 人 材 育 成 に 関 し て は 日 本 以 上 に 危 機 感 を も っ て い る 。
4. 韓 国
韓 国 の IT 人 材 の 産 業 全 体 に お け る 割 合 お よ び そ の 人 材 の 需 要 は 、急 速 に 増 加 し
て い く も の と 思 わ れ る 。 表 1 を み て も わ か る よ う に 、 2000 年 ∼ 05 年 に お け る IT
業 種 の 雇 用 者 数 は 、年 平 均 4.8%の 増 加 率 が あ る こ と が 予 想 さ れ る 。ま た 、全 雇 用
者 数 に 占 め る IT 業 種 雇 用 者 数 の 割 合 は 、2000 年 6% か ら 2005 年 6.9%に 増 大 す る
こ と が 予 想 さ れ て い る 。ま た 、IT 業 種 雇 用 者 の 中 で も 、コ ン ピ ュ ー タ 専 門 家 、低
中 位 レ ベ ル の コ ン ピ ュ ー タ 関 連 業 種 の 雇 用 者 、そ の 他 の IT 関 連 お よ び 管 理 職 種 雇
用 者 の 増 加 率 が 高 く 、 IT 業 種 雇 用 者 の 平 均 増 加 率 を 越 え て い る 。
6 香 港 の 大 学 IT 関 連 卒 業 生 は 、 2000 年 現 在 で 年 間 4000 人 ( 国 際 情 報 化 協 力 セ ン タ ー の HP よ り )。
114
<表 1 >
IT 雇 用 就 業 者 数 の 変 遷 と 見 込 み
1995
IT 業 種 雇 用 者
コンピュータ専 門 家
低 中 位 レベルの コンピュータ
関連
エレクトリニクス・テレコミュニケーショ
ン技 術 者
製 造 運 用 メンテナンス
そ の 他 の IT 関 連 お よ
び管理職種
全産業の雇用者数
(単 位 : 人 , %)
2000
2005
1257235
205438
190492
1588057
297513
264936
152207
159740
1.0%
351538
106219
545066
164032
642480
223388
3.3%
6.4%
20434000
20781000
22898000
1.96%
867590
127483
114752
167597
2000− 05 年
年平均増加率
4.8%
7.7%
6.8%
出 典 : Korea Information Society Development Institute, Mid to long-term
Market Outlook for IT Industry(2001∼ 2005), February, 2001.
こ こ で IT 産 業 を 、 技 能 レ ベ ル に 基 づ い た 労 働 需 要 予 測 か ら み て み よ う 。 表 2
を み て も わ か る よ う に 、今 後 は IT や よ り 高 度 な 技 能 労 働 者 に 対 す る 需 要 が 急 増 す
る 。産 業 別 で は 、2000 年 ∼ 2010 年 の 期 間 で 、製 造 部 門 全 体 で は 、絶 対 数 は わ ず か
な が ら 増 え て い る が 、雇 用 増 加 率 は 低 下 し て い く 。同 期 間 に お い て 、IT お よ び 高
位 技 術 製 造 部 門 は 年 2.15% の 増 大 。中 低 位 お よ び 低 位 技 術( 別 の 言 い 方 を す れ ば
既存の一般生産技術による)製造部門の雇用数は、引き続き低下していく。つま
り 、同 期 間 の 雇 用 増 大 は 、IT お よ び 中 高 位 技 術 製 造 業 に よ っ て も た ら さ れ る と 予
想される。
<表 2 >
製造業技術水準別の就業者数の見込み
IT お よ び 中 高 位 技 術 製 造
業
中低位技術製造業
低位技術製造業
全体
(単 位 : 千 人 , %)
2000
1,516
(36.0)
1,065
(25.3)
1,630
(38.7)
2005
1,728
(39.4)
1,079
(24.6)
1,579
(36.0)
2010
1,877
(42.6)
1,027
(23.3)
1,502
(34.1)
年平均増加率
2.15
4,213
(100)
4,388
(100)
4,406
(100)
0.45
-0.37
-0.81
資料 : カン・スン・ヒ、リ・ビョン・ヒ、チョン・ビョン・ユ、チェ・カン・シ
ク チ ェ ・ キ ョ ン ・ ス 『 知 識 経 済 と 人 力 需 要 の 展 望 』 韓 国 労 働 研 究 院 , 2000 年
115
こ の よ う に 韓 国 は 、今 後 ま す ま す IT や よ り 高 度 な 技 術 者 を は じ め と す る 高 級 な
人材を必要としているが、韓国政府自体は、将来における高級な人材獲得への危
惧感がある。アメリカなど人材流出への危機感もある一方で、韓国は高級人材育
成の体制の未整備で、国家の競争力を主導する高級な人材の育成において脆弱で
あ っ た と 考 え て い る 。状 況 を 打 破 す る た め に 、韓 国 政 府 は 、2005 年 ま で に 2 兆 2400
億 ウ オ ン を 投 じ て 、 IT 等 の 6 つ の 戦 略 分 野 で の 専 門 家 40 万 名 あ ま り ( う ち 約 27
万 名 が IT 分 野 )の 育 成 計 画 、2001 年 11 月 に 発 表 し た 。情 報 通 信 部 は 、こ の 計 画
と 連 動 す る 形 で 、「 知 識 情 報 強 国 e コ レ ア 建 設 の た め の IT 専 門 家 養 成 総 合 計 画 」
を 、2001 年 11 月 21 日 金 大 中 大 統 領 に 報 告 し た 。同 計 画 で は 、2000 年 末 時 点 で 4
万 人 の IT 専 門 家 が 不 足 し 、2005 年 に は 14 万 に 不 足 が 予 想 さ れ る 中 で 、今 後 5 年
間 に 総 額 1 兆 ウ オ ン 投 資 し 、 20 万 人 超 の IT 専 門 家 を 生 む 計 画 で あ る 。
5. 台 湾
台 湾 に お け る IT 人 材 の 需 要 に 関 し て は 、現 地 の ヒ ア リ ン グ に よ り 、次 の よ う な
情 報 を 得 た 。「 台 湾 で は 、 現 在 1 年 間 に 4 万 人 の IT 人 材 へ の 需 要 が あ り 、 供 給 は
3 万 人 な の で 1 万 人 不 足 し て い る 」。 ま た 、「( 2001 年 か ら ) 今 後 の 5 年 以 内 に 19
万 人 の IT 雇 用 が 必 要 と な る 見 込 み で あ る 」。 し か し 、 大 学 や 大 学 院 で は 供 給 で き
る 数 に は 限 度 が あ り 、「 ニ ー ズ に 応 え ら れ ず 、5 万 人 の IT 人 材 が 不 足 す る 」 7 と い
う。
同様に現地でのヒアリングによれば、現在の不足しているが、今後も不足気味
の 人 材 は 、「 特 に ソ フ ト ウ ェ ア 開 発 の 人 材 、R&D 設 計 の 人 材 。マ ル テ チ ィ デ ア な ど
の 人 材 で あ る 。さ ら に ハ ー ド ウ ェ ア の 面 で も 、テ レ コ ム な ど の IT 産 業 で 全 体 に 不
足しうる」ということであった。
台 湾 で は IT 人 材 の 供 給 の た め に 、 い く つ か の 方 策 を 実 施 し て き て い る 。 ま ず 、
税制優遇措置付与、ハイテク人材呼び戻しのためのインフラとしてハイテクパー
ク 設 立 、「 経 済 部 協 助 国 内 民 営 企 業 延 攬 海 外 産 業 専 家 返 国 服 務 暫 行 作 業 要 点 」の 施
行、兵役免除政策等により、海外にいる台湾人人材呼び戻し政策を進めた。
7 2001 年 に 発 表 さ れ た 台 湾 区 電 気 電 子 工 業 同 業 公 会 の デ ー タ に よ る 。
116
こうした試みは、既に国内外から高い評価が寄せられている。
ま た 、 2002 年 1 月 16 日 に 、「 科 技 人 材 育 成 及 び 運 用 法 案 」 公 表 し 、
* 大 学 、 大 学 院 に 情 報 系 、 電 子 系 の 学 部 の 増 加 を 推 進 ( 大 学 院 678 名 、 大 学 300
名 合 計 989 名 。 2002 年 教 員 の 定 員 数 を 増 加 。 定 員 数 137 名 、 定 員 外 教 員 [情 報
産 業 、 バ イ オ ]を 85 名 増 加 す る )。
* 第 2 専 門 と な る 転 職 訓 練 と し て 、 500 時 間 以 上 の 訓 練 を し て ソ フ ト ウ ェ ア 人 材
を 育 成 ( 2001 年 訓 練 受 講 者 は 43984 名 )。
* 2 年 間 の 兵 役 の 義 務 を 免 除( ハ イ テ ク 企 業 、財 団 法 人 勤 務 に よ り )。1980 年 代 か
ら 認 め ら れ る よ う に な っ た 制 度 ( 対 象 者 数 は 、 1991 年 1051 名 、 2000 年 1552
名 、 2001 年 2299 名 、 2002 年 3247 名 )。
*外国籍ハイテク人材の雇用期間を 2 年間延長。法律修正。台湾の大学、大学院
を卒業した外国人を雇うことが可能。外国にいる華人も雇用可能。そのため、
情報サービスセンターを設置。
さらに、インド人や中国大陸人材を受け入れるべく施策を実施するなど、新た
な る 可 能 性 を 模 索 し て い る 。こ の よ う に し て 、台 湾 は IT 人 材 の 確 保 、供 給 に 努 め
ている。
6. フ ィ リ ピ ン
フ ィ リ ピ ン に は 、 国 内 に 約 31510 人 の IT 技 術 者 ( 2001 年 ) が い る 。 国 内 で の
IT 人 材 へ の 需 要 は 、 年 間 15% の 割 合 で 増 え て い る 8 。
ま た 、 国 際 的 な IT 人 材 の 不 足 の 中 で 、 国 際 的 に フ ィ リ ピ ン 人 IT 技 術 者 へ の 需
要 は 年 間 26.2% の 率 で 増 加 し て い る 9 。 こ れ に よ り 、 フ ィ リ ピ ン は 年 間 10% か ら
20% の IT 技 術 者 を 海 外 に 対 し て 喪 失 し て い る 。 こ れ に 関 し て 、 ヒ ア リ ン グ で は 、
「 ア ジ ア 各 国 で IT 産 業 に 携 わ る 人 材 が 不 足 し て い る の に 対 し て 、 フ ィ リ ピ ン は
IT 人 材 の 需 要 が 満 た さ れ て い る 珍 し い 国 で あ る 。む し ろ 供 給 過 多 な 状 況 で 、国 内
で満足できる職に就けない人が外国に行くくらいである」という意見があった。
8
日 本 労 働 研 究 機 構 [2001]、 35 頁 。
9
日 本 労 働 研 究 機 構 [2001]、 35 頁 。
117
フ ィ リ ピ ン で 、IT 産 業 は 重 要 な 雇 用 者 で も あ り 、1990 年 の 5 万 9400 人 か ら 1995
年 の 11 万 4100 人 へ ,あ る い は 5% か ら 9% へ と 製 造 業 雇 用 を 占 め る 割 合 で も 増 大
し て き て い る 。 ま た 、 産 業 に お け る シ ェ ア で は 、「 フ ィ リ ピ ン は IT 産 業 に か な り
の 力 を 入 れ て い る の で 、製 造 業( 電 子 部 門 )を 含 ま な か っ た と し て も 、10 年 後 に
は 全 体 の 20-30%の 割 合 を 占 め る の で は な い か 」 と い う 意 見 も あ っ た 。
IT 人 材 の ニ ー ズ で は 、現 地 ヒ ア リ ン グ に よ れ ば 、「 デ ー タ 入 力 、プ ロ グ ラ マ ー 、
システム開発、システム管理者、データベース管理者など、全てのレベルでの需
要 が あ る 」と い う 。ま た 、「 レ ガ シ ー・シ ス テ ム や デ ー タ ベ ー ス に つ い て 熟 知 し た
人材が必要とされている。今需要が高まっているのは、インターネットに関する
知 識 ( 例 え ば 、 JAVA、 HTML な ど )、 ネ ッ ト ワ ー ク ・ ス ペ シ ャ リ ス ト な ど の 施 設 を
整 え て い く 技 術 者 、ア ニ メ 、CG、プ ロ グ ラ ミ ン グ な ど の 需 要 も 増 え て い る 」。た だ 、
「 ソ フ ト ウ ェ ア 開 発 や IT サ ー ビ ス( コ ー ル セ ン タ ー な ど )が 中 心 で あ り 、現 段 階
で は そ れ ほ ど 高 度 な IT 産 業 が 発 達 し て い る わ け で は な い 」 と い う 。
フ ィ リ ピ ン に お け る IT 人 材 の 供 給 面 で み て い く と 、 次 の 通 り で あ る 。
同 国 に は 、 約 860 の 大 学 が 存 在 し 工 学 部 系 の 卒 業 生 は 毎 年 4 万 人 程 度 、 ま た 失
業率が高い結果、学卒の採用自体においては問題ないといえる。またヒアリング
に よ れ ば 、「 IT が も て は や さ れ る よ う に な っ て か ら 、 IT 関 係 の 学 校 が 乱 立 す る よ
う に な っ た 。そ う い う 学 校 か ら 年 間 10 万 人 が 卒 業 し て い く 」。ま た「 IT 教 育 を 受
けた人事は、少し供給過多な状況にあり、ある程度知識のある人でも、雇用機会
を 求 め て デ ー タ 入 力 の 仕 事 を し て い る 場 合 も あ る 。IT 教 育 を 受 け た 人 材 は 次 か ら
次 へ 輩 出 さ れ る 。能 力 の 高 い 人 は IT 産 業 に 就 業 す る が 、そ う で な い 場 合 は お 手 伝
いさんになってしまうこともあるのが現状である」という。
以上のことを勘案すると、フィリピンでは、高度なレベルの人材は別として、
少 な く と も 今 の レ ベ ル の 多 く の IT 人 材 は 需 要 も 供 給 も 増 え る と い う こ と は な い
と推測できる。
7. タ イ
タ イ に お け る IT 人 材 の 正 確 な デ ー タ は な い が 、 タ イ の IT 技 術 者 は 、 国 内 需 要
に 比 べ る と IT 人 材 不 足 気 味 で あ る 。こ の た め タ イ 国 内 向 け コ ン ピ ュ ー タ・シ ス テ
ムの多くが、インドなどの海外で開発している。
118
IT 人 材 の 今 後 の 需 要 の 全 体 に 関 す る 正 確 な デ ー タ は な い が 、次 の 2 つ の こ と が
参考になる。
タ イ 政 府 で は 、 政 府 向 け 国 内 の コ ン ピ ュ ー タ ・ シ ス テ ム 開 発 需 要 を 自 国 の IT
技 術 者 で 十 分 に 行 え る こ と を 目 標 と し て い る 。そ し て 公 的 部 門 の IT シ ス テ ム 数 は 、
次表のように今後数年間で更に増大する予定である。その結果、このシステム増
大 に 対 処 す る た め だ け に で も 、 今 後 の 2∼ 3 年 で 約 1000 人 の 追 加 需 要 が 必 要 と な
り 、現 在 の 必 要 数 480 人 に 対 し て 今 後 2∼ 3 年 で 1550 人 の IT 技 術 者 が 必 要 と な る
こ と が 予 想 さ れ て い る 。民 間 部 門 等 も 含 め た 必 要 と さ れ る IT 人 材 の 需 要 は そ れ 以
上であることが予想されるところである。
公 的 部 門 に お け る IT シ ス テ ム 数 及 び 将 来 の シ ス テ ム 数 予 測
分野
1999年
バック・オフィス
フロント・オフィス
データベース
マルチメディア
89
188
150
25
2000−2003年
追 加 分 (合 計 数 )
30(119)
120(308)
97(247)
35(60)
出 所 : NCSTC( National Computer Software Training Center; 国 立 コ ン ピ ュ ー タ ・
ソフトウエア研修所)
119
公 的 機 関 に お け る 今 後 2∼ 3 年 で の IT 人 材 需 要
項目
IT 人 材 職 種
プログラマー
システム・アナリスト
小計
データベース管理
ネットワーク・マネージャー
コンピュータ管理者
小計
総合計
45 の 公 的 機 関 に お け る
現 在 の IT 人 材 の 数
148
120
268
76
83
53
212
480
今 後 2∼ 3 年 の IT 人 材
追加需要(合計数)
315(463)
275(395)
590(858)
166(242)
174(257)
140(193)
480(692)
1070(1550)
出 所 : NCSTC「 公 的 機 関 に お け る IT 人 材 の 状 況 調 査 」 1999 年
な お 、 タ イ に お け る 産 業 別 の IT 市 場 ( 2001 年 ) の シ ェ ア は 、 政 府 ・ 国 営 企 業
( 18%)、金 融( 7%)、製 造( 15%)、テ レ コ ム( 17%)、教 育( 16%)、家 庭 ユ ー ス( 17% )、
そ の 他( 10%) 10 で あ る 。こ れ か ら も わ か る よ う に 、公 的 機 関 の 役 割 が 多 く 、そ こ
に お け る IT 人 材 の 需 要 は 、 タ イ の IT 人 材 の 需 要 を 知 る 指 標 に な る 。
別の資料では、タイにおけるソフトウェア産業で必要とされる専門家(プログ
ラ マ ー ) 数 は 、 2000 年 2 万 人 で 、 2001 年 に は 23000 人 、 2004 年 29000 人 、 2006
年 50000 人 と 予 想 さ れ て い る 11 。
上 の 表 か ら も わ か る よ う に 、不 足 す る と 予 想 さ れ る IT 人 材 は 、プ ロ グ ラ マ ー や
システム・アナリスト、データベース管理、ネットワーク管理やコンピュータ監
査などの技術者であることがわかる。それらの人材の必要増加数は、現在人材が
不足していることもあり、どの職種とも 2 倍以上であり、急速な需要が見込まれ
る。
8. マ レ ー シ ア
マ レ ー シ ア に は 、シ ン ガ ポ ー ル の よ う に IT 人 材 に 関 す る 正 確 な デ ー タ が な い が 、
次 の い く つ か の 数 字 情 報 が 、マ レ ー シ ア に お け る IT 人 材 需 要 を 知 る 上 で の 指 標 と
な ろ う 。ま た マ レ ー シ ア の IT 計 画 は 、そ の ビ ジ ュ ン に お い て 政 府 先 行 型 の 色 彩 が
強 い た め 、政 府 計 画 は IT 人 材 の 需 要 と 供 給 に お い て も 一 体 の も の と し て 考 え る べ
10
The Association of Thai Computer Industry(ATCI)の HP よ り 。
11
ATSI[2001] (Electronics and Computer Software Export Promotion Council [ESC], INDIA SOFT 2002
120
きである。
マ レ ー シ ア の 労 働 力 人 口 は 96 年 に 830 万 人 、 2000 年 に は 920 万 人 に 増 加 し て
い る が 、 同 じ 時 期 に 、 知 識 集 約 型 労 働 者 ( Knowledge Workers) の 比 率 は 11.1%
か ら 19% に 上 昇 し て い る 。 政 府 計 画 に よ れ ば 、 知 識 集 約 型 労 働 者 の 供 給 は 1999
年 の 年 間 2 万 8000 人 か ら 2002 年 に は 10 万 8633 人 ま で 拡 大 の 見 込 ん で い る 12 。
ま た 政 府 は 、「 2004 年 ま で に 34000 人 の 知 的 労 働 者 が 必 要 」 と も 主 張 し て い る 13 。
次 に 、 IT 人 材 の 供 給 面 を み て い こ う 。
マ レ ー シ ア の こ れ ら の 教 育 機 関 は 、 IT 技 能 を 有 す る 人 材 を 毎 年 計 2 万 人 以 上 、
労 働 市 場 に 輩 出 し て い る 。 IT 分 野 の 卒 業 生 は 、 5 年 後 に は 3 万 5 千 人 を 超 え る 予
定である。
1997 年 3 月 に は 、政 府 は MSC の 目 玉 と し て マ ル チ メ デ ィ ア 大 学 設 立 を 決 め 、テ
レ コ ム 大 学 が 母 体 と な り マ ル チ メ デ ィ ア 大 学 設 立 し た 。 同 大 学 の 学 生 数 は 、 2000
年 現 在 約 6000 人 ( サ イ バ ー ジ ァ ヤ ・ キ ャ ン パ ス 3300 名 の 学 生 、 マ ラ ッ カ ・ キ ャ
ン パ ス 2500 名 の 学 生 ) で 、 2000 年 に は 初 の 卒 業 生 を 送 り 出 し た 。 IT 学 部 の 卒 業
生 は 100% 就 職 が 決 ま り 、就 職 先 の 大 半 は IT 関 連 企 業 で あ る 。2005 年 に は 学 生 数
が 10000 人 を 超 え る 見 込 み で あ る 。同 大 学 は 、マ レ ー シ ア に お け る IT 立 国 を 支 え
る IT 人 材 育 成 の た め に 、マ レ ー シ ア の 国 策 で あ る マ レ ー 人 優 遇 政 策 ブ ミ プ ト ラ 政
策を適用していない。このため、中国人を中心とする非マレー系人種からの出願
も 多 く 、 最 近 の 競 争 率 は 約 100 倍 と 高 く 、 以 前 な ら 海 外 に 出 て い た 優 秀 な 層 も 含
まれているという。また中国人の学生の割合は半分を超える。
マ レ ー シ ア で は 、IT 人 材 供 給 の た め に 、次 の よ う な 政 策 も 実 施 し て い る 。政 府
は 、他 の 場 合 と 異 な り 、よ り 高 度 な IT 技 能 を 有 す る 人 材 の 入 手 可 能 性 を 高 め る た
め に 、政 府 は 国 内 の IT 関 連 技 能 の 不 足 を 認 め た 上 で 寛 容 な 姿 勢 で 、企 業 が 海 外 か
ら IT 要 員 を 招 致 す る こ と を 容 認 が 奨 励 さ れ て い る 。
マ レ ー シ ア の こ れ ら の 教 育 機 関 は 、 IT 技 能 を 有 す る 人 材 を 毎 年 計 2 万 人 以 上 、
労 働 市 場 輩 出 し て い る 。IT 分 野 の 卒 業 生 は 5 年 後 に は 3 万 5 千 人 を 超 え る 予 定 で
ある。政府は、海外に流失した優秀な人材に優遇措置を与え彼らを呼び戻す政策
Conference Papers, February, 20 ‐ 22, 2002 か ら 引 用 ).
12 三 和 総 合 研 究 所 [2001]、 158-159 頁 。
13 「 知 的 産 業 へ 転 換 急 ぐ 」『 日 刊 工 業 新 聞 』 2001 年 5 月 3 日 付 。
121
を 実 施 し た ( 今 の と こ ろ 不 成 功 )。
マ レ ー シ ア の IT 人 材 育 成・獲 得 の 熱 意 は 強 い し 、そ の 可 能 性 に は ま だ ま だ 未 知
数 も 多 い が 、 MSC 計 画 も 、 本 調 査 の 現 地 調 査 で は 、 人 材 育 成 も 含 め て そ の 熱 意 ほ
ど進展してない側面があると思える。
9. シ ン ガ ポ ー ル
シンガポールでは、増大する情報通信関連職業の需要に応じるために、情報通
信 技 能 労 働 者 が 2010 年 ま で に 約 25 万 人 が 必 要 で あ る と 見 積 も ら れ て い る 。 こ の
数 字 は 、 約 200 万 人 の 労 働 者 の 内 10 万 5600 人 ( 2000 年 現 在 ) で あ る IT 関 連 の
職 種 ( 除 IT ハ ー ド 生 産 従 事 者 ) の 従 事 者 の 数 の 実 に 2 倍 半 以 上 で あ る 。
シ ン ガ ポ ー ル の 情 報 通 信 労 働 者 数 は 、1999∼ 2001 年 の 2 年 間 で 約 1 万 人( 年 率
10∼ 12% ) の 増 加 が 見 込 ま れ た 。
現 状 に お い て IT 人 材 の 需 要 が 多 い の は e コ マ ー ス( 電 子 商 取 引 )や イ ン タ ー ネ
ッ ト 開 発 の 人 材 で あ り 、 不 足 し て い る 。 e コ マ ー ス 部 門 は 、 IT 労 働 の ニ ー ズ に お
い て 、年 平 均 47% の 伸 び で 最 も 高 い 成 長 を 示 す と 予 測 さ れ て い る 。そ の 他 の 主 な
発 展 分 野 は 、 イ ン タ ー ネ ッ ト 開 発 ( 24% )、 専 門 家 支 援 サ ー ビ ス ( 15% )、 ソ フ ト
ウ ェ ア 研 究 開 発 ( 14% )、 コ ン サ ル タ ン ト 業 /ビ ジ ネ ス 分 析 ( 13% ) で あ る
1999− 2001 年 情 報 通 信 技 術 者 増 加 率 ( 予 測 )
技 術 者 種 別
e コマース開発
インターネット開発
専門家支援サービス
ソフトウェア開発
コンサルタント/ビジネス分析
教育/トレーニング
マルチメディア開発
販売
ハードウェア研究開発
技術サポート/ヘルプデスク
データ通信及びテレコミュニケーション
マネジメント
ネットワーキング
増加率(%)
47
24
15
14
13
13
12
12
10
9
8
8
6
シ ン ガ ポ ー ル で は 、こ の よ う な IT 人 材 の 需 要 に 応 じ る べ く 、人 材 供 給 の た め に 、
122
大きく分けて、教育機関による人材供給、再教育再訓練による国内人材の職種転
換、そして最後が海外人材募集の 3 つの方策をとっている。
まず、シンガポールにある教育機関による人材供給である。情報通信労働者の
内の約半分が大学や科学技術専門学校(ポリテック)や大学などの国内高等教育
機 関 の 出 身 14 で あ り 、そ れ ら の 機 関 が 情 報 通 信 、IT 技 術 者 教 育 を 引 き 受 け て い る 。
次が再教育再訓練による職種転換である。対象者は、基本的に情報通信の訓練
を受けていない未経験のシンガポール市民か永住権保有者である。例えば、能力
開 発 基 金 ( Skills Development Fund) が 労 働 者 の OJT や OFF-JT、 大 学 院 進 学 な
ど に 資 金 の 補 助 、民 間 企 業 の 協 力 で 特 定 の IT 技 術 の 教 育 訓 練 な ど を 推 奨 し て い る 。
ま た シ ン ガ ポ ー ル 情 報 通 信 開 発 庁( IDA)は 、諸 種 の 政 策 を 通 じ て 、情 報 通 信 労 働
者 の 約 20% を 毎 年 再 訓 練 さ せ る こ と を 目 標 と し て い る 。戦 略 的 人 材 転 換 プ ロ グ ラ
ム ( SMCP) 促 進 ス キ ー ム と い う 計 画 も 、 2000 年 10 月 14 日 に 開 始 し て い る 。
1998 年 11 月 か ら は 、IT 技 術 認 定 プ ロ グ ラ ム と い う IT ス キ ル の 技 能 基 準 の 設 定 、
そ れ に 基 づ く シ ン ガ ポ ー ル IT 専 門 家 や ユ ー ザ の 認 定 を す る プ ロ グ ラ ム も 始 ま っ
ている。
最 後 が 、 外 国 人 の IT 人 材 あ る い は IT 労 働 者 の 確 保 に も 躍 起 に な っ て い る 。
年 間 約 5000 人 の IT 外 国 人 労 働 者 が 、シ ン ガ ポ ー ル の IT 労 働 者 不 足 を 補 う た め に
募 集 さ れ て い る 。情 報 通 信 開 発 庁( IDA)は 、外 国 人 技 術 者 対 象 の さ ま ざ ま な 政 策
を実施している。これらの詳細に関しては、先述したので省略する。
シ ン ガ ポ ー ル は 2010 年 に IT 技 術 者 を 25 万 人 、 IT が 利 用 で き る 労 働 者 の 割 合
を 現 在 の 25% か ら 75% に 引 き 上 げ る こ と を 目 標 と し て い る 。外 部 か ら の 招 聘 も 進
め ば こ の 目 標 、別 の 言 い 方 を す れ ば 、必 要 と さ れ る IT 人 材 の 供 給 は 実 現 で き る と
考えられている。
10. イ ン ド
ま ず イ ン ド に お け る IT 人 材 に お け る 需 要 サ イ ド の 面 か ら み て み よ う 。
以 下 の 表 「 イ ン ド の ソ フ ト ウ ェ ア 技 術 者 数 の 推 移 」 を み て も わ か る よ う に 、 2000
14 シ ン ガ ポ ー ル の ポ リ テ ク の IT 学 部 の 卒 業 生 は 、2000 年 ご ろ で 2250 名 程 度 で あ る 。( 財 )国 際 情 報
化 協 力 セ ン タ ー( CICC) 「 ア ジ ア の 情 報 技 術( IT)人 材 活 用 の 戦 略 性 」CICC ホ ー ム ペ ー ジ 2000.9.27
参照。
123
年 で は 20 万 人 で あ る も の が 、 2008 年 に は 220 万 人 と 、 か な り 多 く の ソ フ ト ウ ェ
ア 技 術 者 数 の 需 要 が 見 込 ま れ て い る 。そ の 人 材 を 学 歴 的 に み た 場 合 、そ の 多 く は 、
デイプロマ等の取得によって充足されることが予想されている。
ま た 、2008 年 ま で に 、イ ン ド に お け る IT 関 連 サ ー ビ ス は 、100 万 人 分 の 追 加 的
雇 用 を 生 み 出 し て 行 く こ と が 予 想 さ れ て い る 15 。
インドのソフトウェア技術者数の推移
年
1985 年
1990 年
1996 年
2000 年
数
6,800 人
5 万 6000 人
16 万 人
20 万 人
2008 年
(予測)*
220 万 人
出 所 : NASSCOM 他
*マッキンゼー社による予測
2008 年 ま で に 必 要 と さ れ る 学 歴 別 人 材 の 推 定 ( 概 数 )
(単位:人)
博 士 号 ( Ph.D’ s)
1000
技 術 修 士 ( M.Tech)
9000
技 術 学 士 ( B.Tech)
140000
科 学 修 士 ( M.SC’ s)
250000
科 学 学 士 ( B.SC’ s)
300000
MCA
500000
P.G.デ イ プ ロ マ ( P.G.DIPLPMA)
100000
DI0 デ イ プ ロ マ ( DI0PLOMA)
620000
ITI サ テ ィ ケ ー ト ( ITICERTIFICATE)
280000
―――――――――――――――――――――――――――――
合計
2200000
出 所 : Electronics and Computer Software Export Promotion Council(ESC)
提供資料による
そ れ で は 、 次 に イ ン ド に お け る IT 人 材 を 供 給 面 か ら み て い こ う 。
15 日 本 労 働 研 究 機 構 [2001]、 47 頁 。
124
イ ン ド で は 、 国 際 的 な IT 人 材 の 不 足 の 中 で 、 IT 人 材 の 海 外 流 出 も 多 く 、 国 内
では適切な技能を持つ人材の十分な確保に苦労しており、人的資源が不足し、技
能 格 差 が 広 が っ て い る 。さ ら に 先 述 し た よ う に 、か な り の IT 人 材 の 重 要 が 見 込 ま
れ る た め に 、政 府 、教 育 機 関 、企 業 等 が IT 人 材 供 給 の た め の さ ま ざ ま な 試 み を し
て い る 。そ こ で 、現 在 お よ び 今 後 の IT 人 材 供 給 に 関 連 す る 情 報 を 以 下 に 述 べ て お
こう。
( 1) 供 給
・ 政 府 は 、 今 後 不 足 す る こ と が 予 想 さ れ る 80 万 人 の ソ フ ト ウ ェ ア 専 門 家 を 2007
年 ま で に 供 給 す る た め に 、 Operation Knowledge プ ロ グ ラ ム を 開 始 し た 。 政 府
は IT 関 連 分 野 で の 工 科 大 学 の 入 学 者 数 を 2001 年 か ら 2002 年 に か け て 2 倍 に 、
2003 年 か ら 2004 年 に か け て 3 倍 に 増 や す た め に 措 置 を 講 じ る 予 定 で あ る 。 し
かし、その計画実現のための教員不足である。
・中 央 政 府 と 一 部 の 州 政 府 が Indian Institute Information Technology と い う
IT に 関 す る 高 等 教 育 機 関 の 設 立 に 向 け て イ ニ シ ア テ ィ ブ を 取 り 始 め て い る 。
( 2) 現 状
・ イ ン ド に あ る 工 科 大 学 な ど の 技 術 訓 練 機 関 は 、 現 在 エ ン ジ ニ ア 17 万 8000 人 と
IT 関 連 専 門 家 9 万 2000 人 を 養 成 し て い る 。ま た イ ン ド は 現 在 毎 年 7 万 3000 人
か ら 8 万 5000 人 が IT 関 連 学 校 を 卒 業 し て い る 。
・ コ ン ピ ュ ー タ に 関 す る 学 科 を も つ 大 学 は 、 全 国 で 約 300 校 。 毎 年 、 約 14000 人
程 度 が 卒 業 。 し か し 、 そ の 供 給 で は 、 IT 産 業 の 発 展 に 伴 う IT 技 術 者 の 需 要 に
追 い つ か ず 、 他 学 部 卒 業 生 を 教 育 し て 、 IT 関 係 に 向 け て い る 。
・ 過 去 10 年 間 に 主 要 IT 関 連 学 校 が い く つ か 設 立 さ れ 、 フ ラ ン チ ャ イ ズ 化 や ( 最
近では)インターネットを通して、狭い領域や狭いニーズにそくした教育を提
供 し て い る 。民 間 の IT 教 育 研 修 期 間 は NIIT 社 と APRECH 社 が 大 手 で 、イ ン ド 国
内 の 約 40% の シ ェ ア を 占 め る 。
・イ ン ド に お け る ソ フ ト ウ ェ ア 会 社 は 、そ の 事 業 収 入 の 内 12∼ 15% を 従 業 員 教 育
の訓練に費やしている。ソフトウェア産業は、従業員の再訓練によって、同産
業を開花させてきたのである。多くの実施されている教育・訓練が、高度な高
125
付 加 価 値 IT 技 能 習 得 の た め の 訓 練 で は な く 、 IT 事 務 員 の 育 成 に 向 け ら れ て い
る。
以上のアジアにおける将来需要の予測等をまとまると別表のようになる。表に
記 載 さ れ て い る IT 関 連 人 材 の 定 義 や 需 要 予 測 年 に バ ラ ツ キ が あ る た め 、各 国 の 情
報を単純に比較できないが、その表からも、その人材に対する需要は今後も当分
はかなりの程度高いことが推測できる。
126
アジアのIT関連人材の需要 (単位:人)
国名
(当該IT関連人材種別)
中国
(ソフトウェア産業のみ)
香港
(IT関連人材)
韓国
(IT業種雇用者)
台湾
(IT人材)
フィリピン
(IT人材)
タイ
(公的機関のIT人材)
(プログラマー)
マレーシア
(知識集約型労働者)
人口 (1997) (年) 現在数(a) (年) 需要(b)
倍率(b)/(a)
単位:1000人
1,243,738 (2000年)
(1999年)
6,900 (情報技術技能者)
(2001) (通信・インターネットサービス産業)
45,991 (2000年)
22,100
(2001年)
(1999)
180,000
80,000 (2005年)
50,000
31,700
600,000
3.3
153,600
1.9
98,000
55,400
1,257,235 (2005年) 1,588,057
140,000 (2005年)
1.3
190,000
1.4
−
−
1,550
3.2
50,000
2.5
73,527 (2001年)
31,510
60,602 (1999年)
(2000年)
480 (2002年)
20,000 (2006年)
21,667 (1999年)
28000 (2002年)
108,633
3.9
3,737 (2000年)
105,600 (2010年)
250,000
2.4
200,000 (2010年) 2,200,000
11
267,901 (1998年)
2,179,000 (2008年) 3,891,000
1.8
125,638 (2000年)
801,000 (2010年) 1,278,000
1.6
シンガポール
情報通信技能
(ICT)労働者
インド
(ソフトウェア技術者)
参考
アメリカ
(コアIT労働者)
日本
(情報処理技術者)
955,220 (2000年)
第 6章
我 が 国 の IT 人 材 の 将 来 需 給 予 測 と 今 後 の 課 題
1. 我 が 国 の IT 人 材 の 将 来 需 給 予 測
(1)需要予測
先 に ア ジ ア 各 国 に お け る IT 人 材 お よ び そ の 需 給 予 測 等 に 関 す る 統 計 的 デ ー タ
や数値的な情報がある国を除いて非常に少ないと述べた。実はこのことは我が国
に も あ て は ま る 。多 く の 資 料 が 、我 が 国 に お け る IT 人 材 の 不 足 に つ い て 言 及 し て
いるが、いかなる根拠で具体的にどのぐらいに数の人材(職種別のも含めて)が
不足し、今後どのようになっていくのかという点を明確にしている総合的な資料
は 皆 無 に 近 い の が 現 状 で あ る 。こ の こ と も 先 に 述 べ た こ と と 同 じ く 、IT 産 業 や そ
れ に 関 わ る 人 材 自 体 の 性 格 や 変 化 速 度 の 速 さ ゆ え に 、把 握 し に く い か ら で あ ろ う 。
したがって、ここでは、できうる限りのデータと情報を基に、定性的な説明も
含 め て 、 我 が 国 の IT 人 材 需 給 予 測 を す る こ と に す る 。
IT 人 材 す べ て を 網 羅 で き る よ う な デ ー タ は な い が 、日 本 労 働 研 究 機 構 が 、産 業
別・職業別就業者数の将来予測、職業小分類別就業数の推移予測を行っている。
ま ず 次 の 表 と グ ラ フ を み て い た だ き た い 1 。「 2000 年 か ら 2010 年 ( 推 計 ) に 就
業 者 数 が 増 加 す る 上 位 15 職 業 」か ら も わ か る よ う に 、今 後 の 増 加 が 見 込 ま れ る 職
業は、トップが「一般事務」ではあるが、その増加数は従来と比して小さなもの
になってきている。他方、他の職業と比べても、増加の比率がはるかに多く、増
加 数 で も 、 2 番 目 に き て い る の が 、「 情 報 処 理 技 術 者 」 で あ る 。 こ の こ と か ら も 、
IT 人 材 の 需 要 は 今 後 増 大 す る で あ ろ う こ と が 推 測 さ れ る 。
1 日 本 労 働 研 究 機 構 の HP よ り 、「 産 業 別 ・ 職 業 別 就 業 者 数 の 将 来 予 測 」「 職 業 小 分 類 別 就 業 数 の 推 移 」
127
ま た 、 そ れ 以 外 に も 、 283 の 職 業 小 分 類 別 に 、 同 様 の 予 測 を 行 っ て い る 。 そ の
小 分 類 の う ち 、IT 人 材 に か か わ り そ う な も の は 、「( 6)電 気・電 子 技 術 者 」「( 10)
情 報 処 理 技 術 者 」「( 66)電 子 計 算 機 等 操 作 員 」「( 175)半 導 体 製 品 製 造 工 」で あ
ろう。それらの分類だけで作成したのが、次の表である。
職業小分類別就業者の推移(一部)
実
(6)
電気・電
子技術者
(10)
情報処理
技術者
(66)
電子計算
機等操作
員
(175)
半導体製
品製造業
積
(単位:千人)
推
計
1985
1990
1995
2000
2005
2010
312
318
345
404
459
492
321
558
604
801
1034
1278
123
238
206
272
328
378
82
99
130
154
167
115
この表からすれば、例えば、情報処理技術者だけでも、同職種をやめる者が全
く い な い と し て も 、 単 純 計 算 で 2000 年 か ら 2010 年 の 間 に 毎 年 約 47700 名 の 人 材
が育成されなけれならないことになる。
な ど を 参 照 。 [http://www.jil.go.jp/]
128
こ れ ら の 表 や グ ラ フ は 、先 に「 日 本 の IT 労 働 市 場 と ア ジ ア IT 人 材 の 位 置 づ け 」
の う ち「 日 本 の IT 労 働 市 場 」で 論 じ ら れ た よ う に 、す べ て の 職 業 小 分 類 別 の 就 業
者 数 は 今 後 増 加 す る が 、他 の 3 職 業 小 分 類 に 比 し て 、そ の「( 10)情 報 処 理 技 術 者 」
129
が 急 速 に 増 加 し 、そ の 増 加 率 で 圧 倒 す る こ と が 予 想 さ れ る 。ま た 日 本 の IT 人 材 で
も、サービス業、専門・技術職が増加し、ソフト化・高度化がますます進行して
いくことを明瞭に示しているといえる。
また、情報通信技術産業における従業者数の全産業の従業員あるいは雇用者数
全 体 に 占 め る 割 合 を 、日 米 で 比 較 す る と 、1999 年 で 日 本 338 万 人( 7.4% )、1998
年 で ア メ リ カ 516 万 人( 民 間 雇 用 全 体 に お け る 割 合 で 4.9%)で あ り 、雇 用 者 比 率
を見る限りでは、日本も情報化でアメリカに遅れをとっていないと述べた。今後
も 、日 米 に お け る IT 人 材 の 全 産 業 に お け る 割 合 は 、あ る 程 度 近 い 割 合 で 推 移 す る
ことも予想されるところである。
であるならば、次のように考えることは可能である。アメリカ商務省の資料に
よ れ ば 2 、 ア メ リ カ の IT で の 中 心 と な る 労 働 者 ( Core Information Technology
Workers)数 の 予 測 で は 、1998 年 で 217.9 万 人 で あ っ た も の が 、2008 年 に は 389.1
万 人 に な る と 予 測 さ れ て い る 。実 に 1.79 倍 で あ る 。産 業 構 造 が 異 な る の で 一 概 に
比 べ る こ と は で き な い が 、日 本 も そ れ と 同 程 度 の 倍 率 で 、IT 人 材 が 増 加 す る こ と
が考えられる。因みに、このアメリカの増加倍率を単純に日本の場合に当てはめ
る と 、2009 年 に お け る 日 本 の 情 報 通 信 技 術 産 業 者 の 数 は 、約 605 万 人 に な る 。す
る と 、 日 本 に お い て は 、 1999 年 か ら 2009 年 の 間 に 、 267 万 人 の 人 材 ( 毎 年 26.7
万人)の人材が増加していかねばならないことになる。
若 干 古 い が 、 ア ン ダ ー セ ン ・ コ ン サ ル テ ィ ン グ の 試 算 3 に よ る と 、 1999 年 か ら
の 今 後 5 年 間 で の 雇 用 削 減 は 、354 万 人( MT= Ma+Mb+Mc+Md+Me+Mf)で あ る 。そ の
内訳は次の通りである。
2 ア メ リ カ 商 務 省 技 術 政 策 室 の UPDATE The Digital Workforce, August 2000 を 参 照 。
130
1999 年 か ら の 今 後 5 年 間 で の 雇 用 削 減
項
目
( Ma)
今 後 の
生 産 額
減 少 に
よ る 過
剰 雇 用
削減
人 数 (単
位 : 万
人)
72
( Mb)
抱込み
過 剰 雇
用 に よ
る削減
119
( Mc)
今 後 の
企 業 内
情 報 化
に よ る
過 剰 雇
用削減
53
( Md)
電 子 商
取 引 の
社 内 効
率 化 に
よ る 過
剰 雇 用
削減
( Me)
電 子 商
取 引 の
中 抜 に
よ る 過
剰 雇 用
削減
10
( Mf)
電 子 商
取 引 に
よ る 職
務 内 容
に 影 響
を 受 け
る雇用
17
( MT)
計
83
354
こ れ か ら も わ か る よ う に 、今 後 の 国 内 生 産 額 減 少 に よ っ て 、72 万 人( Ma)の 雇
用 が 削 減 さ れ る 。ま た 、日 本 企 業 は 現 在 本 来 な ら 削 減 さ れ る べ き( さ れ る は ず の )
余 剰 雇 用 人 員 も 抱 え て お り 、 そ の 過 剰 雇 用 が 119 万 人 ( Mb) で 、 そ れ も 今 後 削 減
されると考えられる。つまり、現状の産業構造で推移しても、この試算によると
5 年 後 に は 、191 万 人 分( MNI= Ma+Mb)の 職 が な く な る こ と を 意 味 す る わ け で あ る 。
さ ら に 情 報 化 に よ っ て 新 し い 事 業 や サ ー ビ ス が 創 業 さ れ れ ば 、 そ れ に よ り 163 万
人 分 ( MI= Mc+Md+Me+Mf) の 雇 用 の 削 減 が 起 き る と 予 想 さ れ る 。
こ れ に 対 し て 、 同 期 間 に お い て 新 た に 生 ま れ る と 予 想 さ れ る 雇 用 の 数 は 、 367
万 人 ( PT=Pa+Pb+Pc+Pd
全 労 働 人 口 の 5.8% に 相 当 ) で あ る 。 そ の 内 訳 は 次 の 通
りである。
1999 年 か ら の 今 後 5 年 間 で の 雇 用 創 出
項
目
人数(単
位:万 人 )
( Pa)
電子商取
引による
創出
105
( Pb)
IT 活 用 型
新製品・
サービス事
業による
創出
68
( Pc)
情報通信
産業によ
る創出
( Pd)
情報化以
外による
雇用創出
( PT)
76
118
367
計
こ の う ち 、 情 報 化 に 伴 っ て 創 出 さ れ る 雇 用 数 は 、 249 万 人 ( PI= Pa+Pb+Pc) で
あ る 。 つ ま り 、 情 報 化 に よ っ て 生 ま れ て く る 雇 用 の 数 は 、 差 し 引 き 86 万 人 ( PI
3 『 週 刊 ダ イ ア モ ン ド 』 1999 年 9 月 25 日 号 、 104-108 頁 。
131
‐ MI) で あ る 。 ま た 、 情 報 化 以 外 に よ っ て 創 出 さ れ る 雇 用 数 は 、 118 万 人 ( Pd)
である。
以 上 の こ と か ら す る と 、同 期 間 に お け る 雇 用 全 体 で の 増 加 数 は 、13 万 人( PT−
MT) で あ る 。 し か し 、 こ の こ と に は 、 大 き く 言 っ て 2 つ の 大 き な 意 味 が あ る 。 ま
ず一つ目が、情報化によって新たな雇用創出(あるいは短期的には難しいが、新
たなる産業の創出による雇用創造)ができなければ、全体としての雇用数は減る
可能性もあり、引いては失業率の増大、悪化になるということである。
またもう一つは、雇用の転換の問題である。削減される人が新しく生まれてく
る企業や産業で雇用を見つけられるように、雇用の転換がうまくできるかという
ことも重要なポイントである。ベンチャーなどでも必要な人材とその不在という
ミ ス マ ッ チ が 起 き て お り 、そ の 解 消 の た め の 政 策 が 求 ま ら れ て い る と こ ろ で あ る 。
( 2) 供 給 予 測
日 本 に お け る IT 人 材 の 供 給 に 関 す る 正 確 な 統 計 デ ー タ は 存 在 し て い な い が 、
次の 2 つの情報が参考になろう。
まず、情報専門学科を有する学校数等の推移をみてみよう。
以 下 の 表 か ら で は 、実 際 に 輩 出 さ れ る 卒 業 生 の 数 が 明 確 で は な い が 、2008 年 で
約 185000 名 程 度 の 人 材 が 情 報 専 門 の 教 育 を 受 け て 、輩 出 さ れ る こ と が 推 定 で き る 。
つ ま り 、非 常 に ラ フ に い え ば 、同 数 字 の IT 人 材 と な る 可 能 性 の あ る 人 材 供 給 の
可能性があるということである。企業等による人材育成やこれから述べるような
情報処理技術者試験による人材の育成等もあるので、一概にはいえないが、先の
人 材 需 要 の と こ ろ で も み た よ う に 、 ア メ リ カ の 基 準 に 考 え た 時 の 日 本 の IT 人 材 、
情 報 通 信 技 術 産 業 者 の 数 は 、今 後 毎 年 26.7 万 人 の 人 材 が 必 要 で あ る が 、こ の 表 を
見た限りでは、人材供給は需要を満たせないことになる。
132
情報専門学科を有する学校数等の推移
大
区
分
学
学校数
学科数
入学定員
学校数
学科数
入学定員
学校数
学科数
入学定員
学校数
学科数
入学定員
学校数
学科数
入学定員
短期大学
高等専門学
校
計
専修学校
(a)
1991
168
212
20527
50
53
7095
36
39
1565
254
304
29187
329
739
57133
(b)
1994
-263
27597
-65
9655
-43
1725
-371
38977
-860
55091
(c)
2001
275
716
61090
78
90
10685
61
132
3544
414
938
75319
329
840
41178
(d)推 計
2008
-1949
135231
-125
11825
-405
7281
-2479
154337
-820
30779
出所:文部省調べ
(d)は 、 本 調 査 で 推 計 。 推 計 の 仕 方 は 、 (d)=(c)X(c)/(b)で あ る 。
次 に 、 情 報 処 理 技 術 者 試 験 の 応 募 者 数 ・ 合 格 者 数 の 推 移 を み る こ と に よ り 、 IT
人材供給の可能性を、別の観点からみてみよう。
情報処理技術者試験における試験区分は、アナリスト、システム監査、プロジ
ェ ク ト・マ ネ ー ジ ャ ー 、シ ス テ ム 運 用 管 理 、ア プ リ ケ ー シ ョ ン 、プ ロ ダ ク シ ョ ン 、
ネットワーク、データベース、マイコン応用、第一種、第二種、上級シスアド、
初 級 シ ス ア ド で あ る 。 そ の う ち 、 合 格 率 の 高 い も の は 、 マ イ コ ン 応 用 ( 13%)、 第
一 種 ( ソ フ ト ウ エ ア 開 発 技 術 )( 13%)、 第 二 種 ( 基 本 情 報 技 術 )( 16.2%)、 初 級 シ
ス ア ド( 33.6%)で あ る 。そ れ 以 外 の 試 験 区 分 の 合 格 率 は 、一 桁 代 で あ る 。つ ま り 、
比 較 的 容 易 な 試 験 区 分 が 多 く の 合 格 者 を 出 し て い る と い う こ と で あ る 。ち な み に 、
2000 年 に お い て 、そ れ ら の 合 格 率 の 高 い 試 験 区 分 合 格 者 を 除 い た 情 報 処 理 技 術 者
試 験 合 格 者 数 は 、6585 名 に 過 ぎ な い( 難 易 度 か ら み た 場 合 第 一 種 を 加 え た と し て
も 、 16306 名 に 過 ぎ な い )。
先 に IT 人 材 に 需 要 の と こ ろ で 述 べ た よ う に 、情 報 処 理 技 術 者 だ け で も 、同 職 種
を や め る 者 が 全 く い な い と し て も 、 2000 年 か ら 2010 年 の 間 に 毎 年 約 47700 名 の
人材が育成されなけれならない。情報処理技術者数と情報処理技術者試験合格者
133
数とを単純に比べられないわけではあるが、ヒアリングなどでも明確なように今
後 ま す ま す 質 の 高 い IT 人 材 が 求 め ら れ て い く で あ ろ う こ と を 勘 案 す る と 、こ の 統
計 デ ー タ を み る 限 り 、IT 人 材 の 供 給 は 需 要 を 満 た せ な い 可 能 性 が あ る と 思 わ れ る 。
情 報 処 理 技 術 者 試 験 の 応 募 者 数・合 格 者 数 の 推 移
年度
項目
応募者
合格者
低合格率
合格者数
第一種合
格者
合格率
( 単 位:人 )
(a)
1997 年
505114
58052
4395
(b)
1998 年
570904
71688
5142
(c)
1999 年
704969
92781
6016
(d)
2000 年
784912
93492
6585
合計
3814740
452377
22138
5309
7129
5638
9721
27797
17.5%
19.3%
19.8%
18.1%
18.0%
(e)推 計
2003 年
1235451
150522
-------
出 典 :『 情 報 化 白 書 2001』 285 頁 か ら 作 成
(e)は 、 本 調 査 で 推 計 。 推 計 の 仕 方 は 、 (e)=(d)X(d)/(a)
以 上 の 統 計 デ ー タ を み る 限 り で は 、日 本 に お け る IT 人 材 の 供 給 は 需 要 を 満 た せ
ないことが予想される。
134
2.今後の課題
第 1 部 で は 、「 ア ジ ア 一 体 と し て の IT 労 働 市 場 と 我 が 国 の 位 置 づ け 」 に つ い て
検 討 し た 。 ま た 第 2 部 で は 、 第 2 章 の 「 1. 需 給 予 測 」 で 、 日 本 に お け る IT 人 材
の 将 来 需 給 の 予 測 を 展 望 し た 。こ れ ら の こ と か ら 判 明 す る こ と は 、日 本 の IT 人 材 、
IT 技 術 者 は 今 後 不 足 が 予 測 さ れ る こ と で あ り 、そ れ に 対 す る 対 応 が 必 ず し も と ら
れていないのではないかということである。
しかし、そこにおけるすべての課題を提起し、それに対する対応策を提示する
ことは、本調査の対象範囲を超えている。そこでここでは、本調査で明らかにな
った課題やそれらを考えていく上でのいくつかのポイントを指摘し、今後の課題
としてそれらに対するいくつかの対応策を示唆したい。
( 1) IT そ の も の の 特 性 と 問 題 ― ― 中 長 期 的 課 題
本 調 査 の 対 象 は 、ア ジ ア に お け る IT 人 材・技 術 者 で あ っ た 。そ し て 、そ の 調 査
を 通 じ て わ か っ た の は 、IT 自 体 の 特 性 が そ の 人 材 と 大 き く 関 連 し て い る こ と で あ
る 。 つ ま り 、 IT は 、 本 来 的 に ネ ッ ト ワ ー ク 的 な も の で あ る 。 ま た IT 産 業 は 変 化
と進展が早い。これらのために、国内外にネットワークを有し、柔軟で素早い決
定 と 対 応 が で き な い 人 材 や 社 会 は 、IT と い う 視 点 で 見 た と き に は 劣 勢 に あ る 。し
かも、そのネットワークの広さと密度、決断や対応における柔軟性や速度は、他
の 人 材 や 社 会 と の 比 較 の 中 で 決 ま る の で あ る 。こ れ ら の 観 点 か ら す る と 、日 本 は 、
ア ジ ア に お い て さ え 、か な り 後 方 に 位 置 し て い る 。ま た IT の 観 点 か ら み る と 、日
本は、アジアの中で第 2 グループに位置しているという意見もある。
こ の よ う な 状 況 の 中 に あ っ て 、 日 本 が IT 産 業 や IT 化 に お い て 他 国 に 遅 れ な い
ように、さらには追い越していかねばならないという議論もでてきている。
し か し 、IT の 特 性 を も う 一 度 冷 静 に 見 つ め 直 し た 場 合 、日 本 の 現 状 の 社 会 体 質
や 組 織 構 造 ・ 風 土 の ま ま で は 、 い く ら IT 化 し 、 IT 産 業 に 資 源 を つ ぎ 込 ん で も 、
ア ジ ア の 国 々 に 比 較 優 位 に な れ な い と 思 わ れ る 。IT 人 材 だ け に 焦 点 を 絞 れ ば 、現
状 に お い て 、日 本 の IT 産 業 や IT 化 を 底 上 げ す る た め に IT 人 材 を 育 て た り 、海 外
から連れてきたりしても、資源を浪費することになることになろう。
だ か ら こ そ 、社 会 全 体 の 規 制 緩 和 、競 争 化 等 を 促 進 し 、ま た ベ ン チ ャ ー の 育 成 、
– –
135
組織のフラット化を促進し、より機動的に活動できる企業などの組織を、日本社
会の中に生み出していかねばならない。そのような環境が造醸されていかない限
り 、い か な る 優 れ た IT 人 材 が 育 成 さ れ て も 、社 会 的 に 生 か さ れ る こ と は な い で あ
ろう。
し た が っ て 、今 後 の IT 人 材 を 育 成 し て い く 上 で も 、そ の よ う な 環 境 の 造 醸 が 同
時 並 行 さ れ べ き で あ ろ う 。 こ れ こ そ が 、 今 後 の 日 本 が IT や IT 人 材 を 考 え て い く
上での最大の課題であり、最大の難問であろう。別の言い方をすれば、現状のよ
う な 日 本 に お い て の IT の ポ ジ シ ョ ニ ン グ を ど う す る か を 再 考 す べ き で あ ろ う と
いうことである。
( 2) IT 人 材 に お け る 課 題
次 に 、 IT 人 材 に だ け 焦 点 を 絞 っ て 、 課 題 の 摘 出 を し て み た い 。
先 述 し た よ う に 、IT バ ブ ル の 崩 壊 や 経 済 状 況 の 悪 化 に よ っ て 、ハ ー ド 系 の 人 材
のリストラが大規模に起きている一方で、ソフト系人材の不足があり、雇用にお
けるミスマッチが起きている。前者の人材を再教育や研修によって後者の人材に
転用できればいいが、それは容易なことではない。短期的に見た場合、特に中高
年の人材の転用が難しい。この場合、別のセクターでの雇用で吸収していくこと
になろうが、今回に調査の域を超えるので、ここでは扱わないことにする。
大 き く 分 け る と 、「 IT 人 材 の デ ー タ 」「 若 年 層 の IT 人 材 へ の 転 用 」「 IT 人 材 の 育
成 」「 外 国 人 IT 人 材 の 活 用 」 の 4 つ 課 題 が あ げ ら れ る で あ ろ う 。
1)「 IT 人 材 の デ ー タ 」 の 問 題
本 調 査 で も わ か っ た よ う に 、IT 人 材 に 関 す る デ ー タ は 、IT 自 体 の 性 格 な ど さ ま
ざ ま な 要 因 か ら 、IT 人 材 に 関 す る デ ー タ は 非 常 に 限 ら れ て い る 。そ れ で は 、い か
なる人材を育成していくべきかの方向性も見定めにくい。また、今回の調査でも
わ か っ た よ う に 、( 特 に 長 期 期 間 の ) IT 人 材 の ア ジ ア 地 域 に お け る 流 動 性 は 一 部
地域や国々以外はあまり高いとはいえないが、業務におけるオンサイトからオフ
シ ョ ア へ の ト レ ン ド と も あ い ま っ て 、 プ ロ ジ ェ ク ト ・ ベ ー ス や 出 張 ベ ー ス の IT
– –
136
人 材 1 の 移 動 は 今 後 ま す ま す 活 発 化 す る で あ る と 予 想 さ れ る 。そ れ ら に 関 す る す べ
て の デ ー タ の 把 握 は 非 常 に 難 し い が 、IT 人 材 に 関 す る 定 義 や そ れ に 基 づ く 人 材 の
需要供給等についてアジアの主要国間の比較検討を行い、現状と展望の把握に努
め る べ き 段 階 に き て い る よ う に 思 う 。そ れ が な い こ と に は 、IT 人 材 の 今 後 が 把 握
できず、日本ばかりではなくアジアの各国も膨大な資源と人材の無駄、浪費をす
る こ と に な ろ う 。13 ケ 国 が 加 盟 し て い る 東 南 ア ジ ア・コ ン ピ ュ ー タ 連 盟( SEARCC;
South East Asia Regional Computer Confederation) が 、 ア ジ ア IT 技 術 者 の 状
況 、必 要 と さ れ て い る IT 技 術 分 野 、I 情 報 技 術 標 準 に つ い て の 調 査 研 究 事 業 を 行
っ て い る と い わ れ る が 、 い ま だ IT の 国 際 的 定 義 や IT 人 材 の 職 種 別 の 需 要 供 給 に
関 す る 特 に 数 量 的 な 国 際 比 較 デ ー タ な ど は な い よ う で あ る 。IT に 関 し て は 遅 れ を
と っ て い る 日 本 に と っ て 、そ の よ う な 情 報 は IT の 今 後 考 え る 上 で 重 要 と な る の で 、
他国と協力して、データや情報に努めるべきであると思われる。特にこのような
情報ではシンガポールが一歩先んじているので、手始めに同国と協力することも
一案であろう。
2)「 若 年 層 の IT 人 材 へ の 転 用 」 の 問 題
日 本 で は 、IT 問 題 で は 、IT リ タ ラ シ ー 的 な 部 分 に 目 が 行 っ て い る よ う で あ る が 、
若 年 層 の IT 人 材 へ の 転 用 を も う 少 し 積 極 的 に 考 え て み る 必 要 が あ る よ う に 思 わ
れる。その際は、シンガポールが実施しているかなり戦略的な人材転換プログラ
ムが参考になる。これらの人材転用こそは、年齢的にも新たなるものに挑戦し職
を 変 え て い く こ と が 可 能 で あ り 、そ の 転 用 が で き れ ば 、日 本 国 内 の 人 材 を 活 か せ 、
IT 人 材 の 需 要 も 満 た せ る こ と に な る 。 必 要 と さ れ る IT 人 材 の 供 給 を 生 み 出 す 上
での重要なポイントになる。
3)「 IT 人 材 の 育 成 」 の 問 題
先 の 日 本 に お け る IT 人 材 の 供 給 を 見 て も わ か る よ う に 、今 後 必 ず し も 需 要 を 満
た せ な い 可 能 性 が あ る 。 ま だ 今 日 活 発 化 し て き て い る 大 学 改 革 等 と も 絡 ん で 、 IT
1 IT に お け る 活 動 の 推 進 で は 、 こ れ ら の 活 動 で 十 分 な 場 合 も 多 い 。 ま た 、 IT 人 材 が 、 特 に ハ イ レ ベ ル
であればあるほど、一ケ所に長期間いるということは在り得ないし、生産性が高いとはいえない。
こ の こ と は 、 若 干 矛 盾 に 聞 こ え な く は な い が 、 イ ン タ ー ネ ッ ト な ど の IT 技 術 が 進 め ば 進 む ほ ど 、 イ
ンターフェイス的な部分とバーチャルな部分とのベストミックスが重要になるのである。
– –
137
に 関 す る 高 等 教 育 の あ り 方 を 再 考 す る 必 要 が あ る 。IT の 場 合 、そ の 特 性 か ら し て
も 単 な る 研 究 室 の 研 究 だ け で は 、人 材 育 成 は 不 可 能 で あ る 。別 の 言 い 方 を す れ ば 、
既 存 の 枠 組 み で は 、質 的 に も 量 的 に も 、こ れ か ら の IT 人 材 を 育 て ら れ な い の で は
ないかと思われるのである。同様に、産学協同についても今一度考えてみる必要
があるように思われる。アメリカにおけるシリコンバレーはもちろん、インド、
中 国 、シ ン ガ ポ ー ル 、マ レ ー シ ア 、台 湾 等 々 で 実 際 に 行 わ れ て い る IT 人 材 教 育 か
ら 、 真 摯 に 学 び 、 日 本 独 自 の IT 人 材 教 育 を 打 ち 出 す べ き で あ る と 思 わ れ る 。
また、それらの人材育成においては、日本の人材がアジア各国に出向いて(日
本 企 業 か ら の 単 な る 出 向 で あ る と い う 形 態 で な く )、そ こ で 学 び 、勤 務 し 、ネ ッ ト
ワークを構築していくことが必要なのではないだろうか。日本には、プロジェク
ト・マネージャー的人材が少ないと言われるが、正にそのような経験を実際に積
ん だ 人 材 が 多 数 出 て こ な い こ と に は 、 海 外 の IT 人 材 や IT 能 力 を 活 用 し 、 日 本 が
IT に お い て も 何 ら か の 役 割 を 果 た し て い け な い の で は な い だ ろ う か 。そ の よ う な
人 材 を 輩 出 し て い く た め に も 、日 本 政 府 が 何 ら か の 支 援 を す る こ と も 考 え ら れ る 。
4)「 外 国 人 IT 人 材 の 活 用 」 の 問 題
日 本 の 労 働 市 場 に お け る ア ジ ア の IT 人 材 の 活 用 に 関 し て は 、先 に 消 極 的 な 議 論
を し た 。ま た 日 本 の 労 働 市 場 で 活 躍 で き る ア ジ ア の IT 人 材 数 に つ い て は か な り 肯
定的な意見もあるが、本調査のヒアリング結果でもわかるように、現実的には限
定的なものであると思われる。しかしながら、アジアの在日留学生やすでに来て
いる(あるいは来た経験がある)人材のより積極的な活用も含めれば、ある程度
の ア ジ ア の IT 人 材 で 日 本 に お け る IT 人 材 の 需 要 を 満 た す こ と は 可 能 で あ ろ う 。
ま た 、本 調 査 に お い て 、日 本 の 雇 用 市 場 に お け る 外 国 人( 特 に ア ジ ア )の IT 人 材
は 大 き な テ ー マ な の で 、同 市 場 で 外 国 人 IT 人 材 を 増 加 す る た め に は い か に す べ き
かということを中心に、本課題に関しては、別立てにして深く論じておきたい。
– –
138
( 3) 日 本 と 外 国 人 IT 人 材
1) 出 入 国 管 理 政 策
― 外 国 人 IT 技 術 者 受 入 れ の 現 状 ―
日本において、特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、
定 住 者 と い っ た 身 分 ま た は 地 位 に 基 づ く 在 留 資 格 を 持 っ て い な い 外 国 人 が 、IT 技
術 者 と し て 働 く 場 合 に は 一 般 的 に 「 技 術 」 2と い う 在 留 資 格 が 必 要 で あ る 3。
「 技 術 」資 格 者 の 現 状 を み る と 、入 国 者 数 で は 2000 年 問 題 な ど の 対 応 を 受 け て
1998 年 に は 5699 人 の 新 規 入 国 者 が あ っ た が 、2000 年 は 3396 人 に な っ て い る 。外
国 人 登 録 者 数 を み る と 、在 留 資 格 が 整 理 さ れ た 1990 年 以 降 基 本 的 に 増 加 基 調 に あ
り 、 2000 年 末 現 在 、 16531 人 に な っ て い る 。 国 籍 別 の 内 訳 を み る と 、 中 国 が 最 も
多く 6 割以上を占め、次いで韓国・朝鮮、インドとなっている。
技術資格で入国する際の上陸審査基準は、①当該技術または知識に係る専門科
目 を 専 攻 し た 大 学 卒 業 レ ベ ル の 教 育 を 受 け て い る こ と 、 ② 10 年 以 上 の 実 務 経 験
(高等学校以上の教育課程において当該技術または知識に係る科目を専攻した期
間を含む)があることである。このような基準は諸外国に比べかなり厳しいもの
であることが指摘されている。
2 技 術 と は 、本 邦 の 講 師 の 機 関 と の 契 約 に 基 づ い て 行 う 理 学 、工 学 そ の 他 の 自 然 科 学 の 分 野 に 属 す る 技
術 ま た は 知 識 を 要 す る 業 務 に 従 事 す る 活 動 で あ る 。 し た が っ て 、「 技 術 」 資 格 の 就 労 者 の 中 に は IT
技術者のみでなく、航空機の整備などの専門職や機械工学等の技術や知識を要する業務従事者等も
含まれている。
3 日本に本店等の事業所がある企業の現地事業所で雇用された外国人労働者が日本国内の事業所で働
く 場 合 に は 「 企 業 内 転 勤 」 と い う 在 留 資 格 に な る た め 、「 企 業 内 転 勤 」 の 在 留 資 格 で 働 い て い る 外 国
人 IT 技 術 者 も い る 。
– –
139
「技術」資格での新規入国者数の推移
(人)
6,000
5,699
5,128
5,000
4,426
4,000
3,717
3,166
3,000
3,670
3,194
2,979
3,396
1,758
2,000
1,338
1,000
0
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000 (年)
出所:(財)入管協会「出入国管理関係統計概要」1990年∼2000年より作成
「技術」資格の外国人登録者数の推移
(人)
18,000
16,531
16,000
14,000
15,242
15,668
1998
1999
12,874
12,000
11,052
9,195
10,000
10,119
9,882
8,000
6,000
4,000
3,398
2,000
0
1990
1992
1994
1995
1996
1997
注)各年12月末現在の数値である。
出所:(財)入管協会「在留外国人統計」平成3年∼平成13年より作成
– –
140
2000
(年)
「技術」資格の外国人登録者の国籍別内訳
フィリピン
603(3.6%)
インド
841(5.1%)
その他
3,216(19.5%)
総 数
(16,531人)
中 国
10,334
(62.5%)
韓国・朝鮮
1,537(9.3%)
出所:(財)入管協会「在留外国人統計」(2001)
2)「 技 術 」 資 格 の 上 陸 審 査 基 準 の 緩 和
政 府 が 2000 年 11 月 27 日 に 発 表 し た IT 基 本 戦 略 で は 、2005 年 ま で に 3 万 人 程
度 の 優 秀 な 外 国 人 人 材 を 受 け 入 れ る こ と を 目 標 に 掲 げ 、そ の た め に IT 技 術 者 の 上
陸審査基準(在留資格要件)等外国人受入れ関連制度を早急に見直すことを表明
している。
上 陸 審 査 基 準 緩 和 の 一 つ と し て 、現 在 10 年 以 上 と さ れ て い る 実 務 経 験 を 緩 和 す
る と い う 方 法 が あ る 。 去 年 、 政 府 自 民 党 は 「 10 年 以 上 の 実 務 経 験 」 を 2002 年 度
ま で に 2-3 年 程 度 の 実 務 経 験 に 緩 和 す る 方 針 で あ る と 発 表 し た が 4 、そ の 後 、上 陸
審査に関する基準省令の改正は行われていない。
あ る い は 、現 行 の よ う な 学 歴 や 実 務 経 験 年 数 で は な く 、IT 能 力 を 測 る 客 観 的 基
準 に よ っ て 在 留 資 格 を 与 え る と い う 方 法 が あ る 。 こ れ に つ い て は 、 2000 年 10 月
「 ASEAN+ 3」で 、平 沼 通 商 産 業 大 臣 は ア ジ ア 諸 国 と の IT 技 術 者 試 験 相 互 認 証 制 度
を提案し、法務省も相互認証された試験の合格判定を上陸審査基準に加えること
に 前 向 き な 姿 勢 を 示 し て い る 。 現 時 点 で 、 イ ン ド ( 2001 年 2 月 )、 韓 国 ( 2001 年
4 『 日 本 経 済 新 聞 』 夕 刊 、 2001 年 1 月 11 日 付 。
– –
141
12 月 ) と の 間 で IT 技 術 者 の 相 互 認 証 に 合 意 し て い る 。
IT 技 術 者 試 験 の 相 互 認 証
相手国
インド
調印日
2001.2.9
韓国
2001.12.21
内 容
○ イ ン ド IT 省 が 実 施 す る DOEACC と 経 済 産 業 省 が 実 施
する情報処理技術者試験の相互認証。
○ DOEACC 合 格 者 ( A レ ベ ル 以 上 ) に 対 し て 、「 技 術 」
資格での上陸許可を与える。
○韓国労働部管轄の国家技術視覚情報処理分野と経
済産業省が実施する情報処理技術者試験の相互認証。
○韓国の「情報処理技師」及び「情報処理産業技師」
試 験 合 格 者 に 対 し て 、「 技 術 」 資 格 で の 上 陸 許 可 を 与
える。
外 国 人 労 働 者 の 就 労 査 証 に お け る IT 特 例 の 国 際 比 較
日
本
なし
アメリカ
H1-B ビ ザ 対
象者に対し
て は 、「 21 世
紀のアメリ
カ競争力強
化 法 」に 基 づ
き 、受 入 れ 限
度枠の引き
上げと滞在
期間の延長
イギリス
外国人労働
者雇用に際
しての全国
紙への募集
広告の掲載
義 務 免 除 、資
格証明証の
コピー提出
義務の免除
ドイツ
大 卒 以 上 、10
万マルク以
上の年収保
証 の み で 、最
長 5 年間の特
別査証発給
フランス
なし
出 所 : JETRO「 対 日 ア ク セ ス 実 態 調 査 報 告 書 」 2001 年
3) 留 学 生 の 活 用
優 秀 な 外 国 人 IT 技 術 者 の 獲 得 と い う 観 点 か ら す れ ば 、「 技 術 者 」 と し て 海 外 か
ら受け入れるだけでなく、既に日本に滞在している「留学生」もその供給源とし
て注目されるであろう。
2000 年 5 月 1 日 現 在 、我 が 国 の 留 学 生 数 は 64011 人 で あ り 、う ち 15.4% に あ た
る 9878 人 が 工 学 部 に 在 籍 し て い る 。留 学 生 受 入 れ 拡 大 を 目 指 す 文 部 科 学 省 や 各 大
学 の 意 向 、近 年 の IT 関 連 産 業 の 人 気 な ど を 考 慮 す れ ば 、工 学 部 に 在 籍 す る 留 学 生
は今後一層増加することが予測される。
– –
142
留学生数の推移
(人)
70,000
64,011
留
学
生
受
入
れ
1
0
万
人
計
画
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
10,428
0
1978
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出所:文部科学省高等教育局留学生課「平成13年度 我が国の留学生制度の概要」
専門分野別留学生の内訳
その他
16,818(26.3%)
社会科学
19,001(29.7%)
総 数
(64,011人)
医師薬等
2,731(4.3%)
工 学
9,878(15.4%)
人文科学
15,583(24.3%)
出所:文部科学省高等教育局留学生課「平成13年度 我が国の留学生制度の概要」
– –
143
(年度)
2000
ところで、日本企業における外国人技術者活用においてしばしば指摘されるこ
とは、日本語及び日本の商慣行の障壁から、受け入れた企業が彼らの技術を十分
に活用できないということである。その意味では、既に数年日本に滞在し、一定
レベルの日本語を習得し、日本の生活文化に慣れている留学生は魅力ある存在と
なるだろう。
1999 年 1 年 間 で 留 学 生 か ら 就 労 可 能 な 在 留 資 格 に 変 更 し た 者 は 2989 人 で 、 変
更 後 の 在 留 資 格 別 に み る と「 人 文 知 識・国 際 業 務 」が 1743 人 で 最 も 多 く 、次 い で
「技 術 」の 838 人 と な っ て い る 5 。こ れ ま で 留 学 生 の 日 本 で の 就 職 は 、法 的 に も 受 入
れ 企 業 側 に も 障 壁 が 多 い と 指 摘 さ れ て い た が 、2000 年 3 月 に 策 定 さ れ た「 第 二 次
出入国管理基本計画」では、就職のための留学生からの在留資格変更を積極的に
認めていくと述べられており、今後の拡大が期待される。
留学生等から就労目的の在留資格への変更許可数の推移
(件)
3,500
2,927
(93.4%)
3,000
2,181
(88.1%)
2,500
2,395
2,390
(93.7%) (94.6%)
2,989
(97.3%)
2,624
(94.6%)
2,391
(89.8%)
2,026
(93.7%)
2,000
1,500
1,000
707
(74.5%)
1,117
1,004 (81.6%)
(83.7%)
500
0
1989
1990
1991
1992
1993
1994
注1)留学生等とは、留学生と就学生を指す。
注2)( )内は、許可率を示す。
出所:法務省入国管理局資料
5 法務省入国管理局資料。
– –
144
1995
1996
1997
1998
1999
(年)
では実際、どのようなやり方で留学生からの在留資格変更が拡大されていくの
であろうか。現在の制度は、留学生は卒業するまでに(留学生としての在留期間
が 終 了 す る ま で に )就 職 内 定 を 受 け 、「 社 員 」と し て の 雇 用 契 約 書 あ る い は 採 用 通
知書を得なければ就労可能の在留資格への変更を申請することができない。現在
の雇用状況のなかで留学生が「社員」としての処遇を得ることはかなりむずかし
いだろう。そこで、より積極的な留学生の活用を望むならば、留学生に対する何
らかの評価基準を設けた上で、一定レベル以上の留学生に対しては卒業後半年、
あるいは 1 年間の日本滞在を認めるといった制度の導入も検討すべきである。
参 考 ま で に 、IT 先 進 国 で あ る ア メ リ カ で は 、H-IB ビ ザ 取 得 者 の 2 割 は 留 学 生 か ら
の 資 格 変 更 者 で あ り 6 、 優 秀 な IT 技 術 者 の 獲 得 競 争 は 、 優 秀 な 留 学 生 の 受 け 入 れ
から始まっているとも指摘できよう。
留学生の査証発行特例の国際比較
日
留学生特
例の有無
留学生に
お け る IT
特例の有
無
本
なし
(新 規 に 就
労 査 証 を
得 な け れ
ば い け な
い)
なし
アメリカ
卒業後、1
年 間 の 選
択 制 実 務
研 修 プ ロ
グ ラ ム
(OPT) に よ
っ て 米 国
内 で 働 く
こ と が 可
能
( OPT 終 了
後 60 日 間
の 滞 在 猶
予 が 与 え
られる)
同上
イギリス
ドイツ
フランス
なし
(新 規 に 就
労 査 証 を
得 な け れ
ば い け な
い)
なし
(新 規 に 就
労 査 証 を
得 な け れ
ば い け な
い)
なし
(新 規 に 就
労 査 証 を
得 な け れ
ば い け な
い)
IT や 医 療
関 係 な ど
の 優 秀 な
留学生は、
英 国 で 就
労可能
IT 関 連 産
業 に 優 秀
な 留 学 生
が 就 職 す
る場合は、
5 年間の滞
在可能
出 所 : JETRO「 対 日 ア ク セ ス 実 態 調 査 報 告 書 」 2001 年
6 米国移民省資料。
– –
145
なし
4) 在 留 資 格 取 得 手 続 き の 簡 素 化
図 表 10 は 、「 技 術 」 の 在 留 資 格 を 取 得 す る た め に 必 要 な 提 出 書 類 で あ る 。 こ の
よ う な 書 類 の 提 出 は 、受 け 入 れ 企 業 に と っ て か な り の 負 担 と な っ て い る 。加 え て 、
受け入れ企業の規模が小さかったり、新興の企業である場合などはより詳細な資
料等の提出を求められたりする。受入れ企業の規模や申請者の国籍等によって差
が あ る が 、 通 常 、 申 請 か ら 査 証 発 給 ま で 2-3 ヶ 月 程 度 か か る と い わ れ て い る が 、
これでは事業における緊急なニーズに十分に対応することができないであろう。
国 と し て 戦 略 的 に 外 国 人 IT 技 術 者 を 活 用 し て い く と い う の で あ る な ら ば 、現 在 の
ような資格取得手続きを簡素化することも必要である。
「技術」在留資格認定証明書交付のための必要書類
提出書類
○ 在留資格認定証明書交付申請書
○ 申請者の写真
○ 代理人の要件適合者であることの証明書類
・身分証明書
・健康保険証等の写し
○ 招聘機関の概要を明らかにする資料
・商業・法人登記簿謄本
・直近の損益計算書の写し
・新 規 事 業 の 場 合 に は 、今 後 1 年 間 の 事 業 計 画 書
・案内書
○ 申請者の資格等を明らかにする資料
・卒業証明書または在職証明書等
・申請者の履歴書
○ 職務内容、期間、地位及び報酬を証する文章
○ 返信用封筒
○ その他必要に応じて当局が提出を求める書類
– –
146
備
考
*申請者が本国にいる場
合 に 、代 理 人 を 通 じ て 日 本
で申請する場合に必要
*発行後 3 ヶ月以内のも
の
*原本提示
( 4) 統 合 政 策
1)
年金制度
国 籍 に か か わ ら ず に 日 本 に 1 年 以 上 在 住 す る 20 歳 以 上 60 歳 未 満 の 者 は 、 す べ
て国民年金に加入することが義務づけられている。したがって、日本で働く外国
人労働者も例外なく年金に加入しなければならない。しかしながら、彼らのなか
には、何年かの後、母国あるいはその他の国に移動する者も少なくない。日本国
内の外国人労働者は年々増加しており、今後もこの傾向は続くと予測されるなか
で 、 外 国 人 に 対 す る 年 金 加 入 に つ い て 再 考 す べ き 必 要 が あ る だ ろ う 7。
外国人労働者数の推移
(人)
800,000
1.5%
1.3%
700,000
709,174
600,000
外
国
人
労
働
者
数
1.0%
500,000
400,000
300,000
0.5%
外
国
人
労
働
者
比
率
200,000
100,000
0
1990
1992
1993
1994
1995
1996
専門的・技術的労働者
アルバイト(資格外活動)
不法就労
1997
1998
1999
0.0%
2000 (年)
特定活動
日系人等
外国人労働者比率
注1)法務省入国管理局資料に基づき労働省が推計
注2)1991年については、法務省入国管理局発表の統計が存在しない。
出所:労働省資料より作成
欧米諸国ではこのような問題を回避するために、二国間社会保障協定を結んで
いる。現在日本は、イギリスとドイツとのみ二国間協定を結んでおり、今後は年
金 通 算 協 定 の 締 結 を 広 く 欧 米 諸 国 に 求 め て い く 必 要 が あ る 。ま た 、1995 年 の 年 金
7 数 年 で 移 動 す る 外 国 人 労 働 者 が い る 一 方 で 、日 系 人 を は じ め と す る 外 国 人 の 滞 在 長 期 化 、定 住 化 も 指
摘されている。したがって、日本国民のみを年金制度の対象とするといった安易な方法では、年金
制度の問題は解決できないことも事実である。
– –
147
法改正によって、国民年金、厚生年金の脱退一時金が制度化された。日本におけ
る外国人労働者の多数を占めるアジアや南米などでは公的年金制度が発達してい
ない国が多いということから判断すれば、脱退一時金制度は、二国間協定締結よ
り も 効 果 的 な 改 革 で あ る と い え る 。し か し な が ら 、保 険 料 に 対 し て 還 付 額 が 低 く 、
還付の保証は最長 3 年までという問題が以前残っており、外国人労働者にとって
は「払い損」という意識もある。
年金通算制度の国際比較
日 本
イギリスとド
イツとのみ締
結
アメリカ
17 カ 国 と 締
結
イギリス
37 カ 国・地 域
と締結
ドイツ
35 カ 国・地 域
と締結
フランス
EU 域 内 と の
互換性あり
出 所 : JETRO「 対 日 ア ク セ ス 実 態 調 査 報 告 書 」 2001 年
2) 医 療 制 度
保 険 と と も に 外 国 人 が 日 本 で 暮 ら す 際 に 問 題 に な る の が 医 療 で あ る 。日 本 で は 、
日本の国家資格である医療免許を取得した者でなければ医療行為を行うことがで
き な い 。し た が っ て 、2000 年 末 現 在「 医 療 」の 在 留 資 格 を も っ て い る 者 は た っ た
95 人 で あ る 。
命にかかわる行為において、言語の壁は日常生活以上に強く、母語のわかる医
者 に 対 す る 需 要 は き わ め て 高 い 。 そ の よ う な 状 況 の な か で 、 自 治 体 や NPO な ど は
医療通訳の派遣によって対応しているが、公的な制度として認められておらず、
資格等の整備もされていない。
グローバルな経済活動がますます加速するなかでは、日本で働くさまざまな外
国人労働者の心身をケアする医師についても、他国との相互認証制度によって上
陸審査基準がより緩和されることが求められる。加えて、日本人医師をサポート
するための医療通訳制度の整備も喫緊な課題である。
– –
148
医師免許の相互認証等に関する国際比較
日
自国外の
医師の資
格認定
なし
医療通訳
なし
本
アメリカ
移 民 局 が
規 定 す る
一 定 要 件
を 満 た す
者 に 対 し
て 、医 師 の
過 疎 地 帯
な ど に お
け る 医 療
行 為 の 許
可
公 的 な 医
療 通 訳 サ
ー ビ ス あ
り 、 た だ
し 、体 系 的
な 制 度 と
は な っ て
いない
イギリス
EEA 国 籍 者
が 自 国 で
取 得 し た
医 師 免 許
の認定
24 時 間 医
療・健 康 相
談 「 NHS ダ
イレクト」
と い う 通
訳 つ き の
看 護 婦 に
よ る 電 話
サ ー ビ ス
あり
ドイツ
EU ま た は
EEA 加 盟 国
の 医 師 免
許認定
そ の 他 の
国 の 医 師
免 許 に つ
い て も 期
限 つ き で
認定
フランス
EU ま た は
EEA 加 盟 国
の 医 師 免
許認定
そ の 他 の
国 の 医 師
免 許 も 、フ
ラ ン ス 教
育 相 の 認
定 を 受 け
れば許可
なし
なし
出 所 : JETRO「 対 日 ア ク セ ス 実 態 調 査 報 告 書 」 2001 年
3) 教 育
現 在 、 日 本 の 外 国 人 IT 技 術 者 の ほ と ん ど は 20 代 の 単 身 者 で あ り 、 既 婚 者 で あ
っ て も 子 ど も が い な い 場 合 が 多 い 。し か し な が ら 、今 後 よ り 多 く の 外 国 人 IT 技 術
者を受け入れた場合、あるいは現在日本にいる外国人技術者の滞在が長期化した
場 合 、 当 然 子 ど も の 教 育 の 問 題 が 生 じ る で あ ろ う 8。
日本における外国籍の子どもたちの教育については、①1 条校に通う外国人児
童生徒については、日本語能力の不足から学習と進路の保障が十分でない、②外
国人学校に通う子どもたちについては、外国人学校に対する公的支援が少ないた
め、授業料が総じて高額である、日本の上級学校へ進学する際に不利な取扱いを
受ける、③学齢期でありながら 1 条校にも外国人学校にも通っていない不就学の
子どもたちがいる、といった問題点が指摘されている。
8
国内ヒアリングでも、日本での就業において、子弟の教育の問題を指摘するものが複数あった
– –
149
よ り 円 滑 な 外 国 人 IT 技 術 者 の 受 入 れ 拡 大 を 求 め る な ら ば 、教 育 問 題 に も 対 応 し
なければならないだろう。求められる施策は、①1 条校における日本語指導の拡
充 、② 外 国 人 学 校 に 対 す る 公 的 支 援 等 の 拡 大 な ど で あ る 。 ま た 、長 期 的 に 母 語 保
障についても何らかの対応をしなければならないだろう。
日本語指導が必要な外国人児童生徒数の推移
(人)
20,000
日
本
語
指 15,000
導
が
必
要
な 10,000
外
国
人
児 5,000
童
生
徒
数
0
18,162
16,835
17,633
30%
17,443
27.7%
24.9%
26.0%
22.9%
20%
11,542
10,450
16.0%
14.2%
5,463
10%
7.8%
1991
1993
公立小学校
1995
1997
公立中学校
1999
2000
0%
2001 (年)
日本語指導が必要な児童生徒の割合
注1)日本語指導が必要な児童生徒数は各年9月1日現在の数値である。
注2)日本語指導が必要な児童生徒の割合を算出する際の母数は『学校基本調査報告』にもと
づく、各年5月1日現在の公立小中学校に在籍する外国人児童生徒数を用いた。
出所:文部省「平成13年度 学校基本調査報告書」(2001)、文部科学省HPhttp://www.mext.go.jp/
外国人学校に対する現行法における問題点
○ 国からの経常費助成等の私学助成の非適用
○ 日本私立学校振興・共済事業団の低利融資制度の非適用
○ 寄付行為に対する優遇措置の不足
*特定公益増進法人認可の非適用のため
○ 大学進学にあたっての資格制限
*日本の大学を受験するためには、大学入学資格検定、あるいは国
際バカロレア、フランスバカロレア、アビトゥアが必要
○ 公立廃校施設の転用規制
○ 工 業 (場 )等 制 限 法 に よ る 特 定 地 域 へ の 学 校 増 設 ・ 新 設 の 制 限
出 所 : JETRO「 対 日 投 資 促 進 基 盤 整 備 調 査 」 1999 年
– –
150
日
本
語
指
導
が
必
要
な
児
童
生
徒
の
割
合
4) 日 本 語 教 育 等
外 国 人 IT 技 術 者 活 用 の 壁 と し て 、 日 本 語 や 日 本 の 商 慣 行 を 指 摘 す る 声 は 多 い 。
今 後 の 国 境 を 越 え た IT 人 材 の 移 動 を 視 野 に 置 い た 場 合 、 ① 外 国 人 IT 技 術 者 に 対
し て 日 本 語 や 日 本 の 商 慣 行 を 教 育 す る と い う 方 向 と 、② 日 本 人 の 英 語 能 力 を 高 め 、
日本企業のビジネス・スタイルをグローバル化する方向の二つが考えられる。ど
ちらの方向を選択するかは、それぞれの企業戦略によって決定されることになる
が、短期的には①が求められることが多いだろう。
これに対して国家として可能な施策は、まず、現在各企業において行われてい
る 、外 国 人 IT 技 術 者 の 日 本 語 等 の 研 修 を 支 援 す る こ と で あ る 。今 後 の 変 化 の な か
で、上述②の方向をとる企業が増加し、ビジネス上はすべて英語で行われること
になったとしても、日本において生活していくうえで「社会生活言語としての日
本 語 」は 必 要 で あ る 9 。さ ら に は 、家 族 滞 在 の 増 加 に 対 応 す る た め に 、外 国 人 技 術
者の家族、特に配偶者に対する日本語教育支援を整備していく必要がある。
9 こ の 場 合 、ビ ジ ネ ス 上 日 本 語 を 必 要 と し な い こ と か ら 、日 本 語 習 得 に 対 す る 受 入 れ 企 業 の 支 援 が 見 込
– –
151
おわりに
以 上 い く つ か の 点 か ら 、 我 が 国 の IT 人 材 や IT 労 働 市 場 、 ま た そ れ ら と ア ジ ア
の IT 人 材 に つ い て 論 じ て き た が 、こ れ ら の こ と か ら い え る こ と は 、我 が 国 は よ り
謙 虚 に な り 、ア ジ ア の 他 の 国 々 や 政 策 、そ こ に お け る 人 材 等 か ら「 学 び 」、そ れ ら
の国々や人々と協力し合あっていくべきではないかということである。
先 に も 述 べ た よ う に 、IT に 関 し て は 、多 く の 面 で 他 の ア ジ ア 各 国 の 方 が 先 進 的
な面があり、日本が学ぶべき点は多い。
そ の 学 習 を 行 い な が ら 、日 本 と IT と い う も の を 客 観 的 に 比 較 評 価 し て 、日 本 に
お け る IT、IT 産 業 を い か な る 方 向 に も っ て い く か 、ま た そ の 方 向 に し て い く た め
に IT 人 材 を い か に 育 成 、 転 換 、 招 聘 し て い く か を 考 え て い か ね ば な ら な い 。
世 界 の IT の 流 れ は 急 激 で あ っ た た め に 、そ の 方 向 性 や 立 場 を 失 い が ち で あ っ た
が 、正 に 世 界 そ し て ア ジ ア に お け る IT の 第 二 幕 の 中 で 、我 が 国 は 冷 静 な 判 断 が 必
要とされているといえよう。
めなくなるため、日本語学習はよりニーズの高いものとなるのではないか。
– –
152
ヒアリング者リスト
A..国内
(1) 横江公美
VOTE.ジャパン社長
桑畑健也
VOTE.ジャパン・プロジェクト・ディレクター
(2) 西山征夫
ジェネシス(株)代表取締役
(3) 吉永隆一
(株)パソナテック取締役営業本部長
戸所奈央
(株)パソナテック広報担当
(4) 増田行治
UKE club クラブ代表
(5) 平田隆太郎
伊達物産アジア研究所所長
(6) チェカンテ
(株)ザッパラス取締役GBDプロジェクト
伊勢崎真一
GBDプロジェクト
コンテンツサービスプロデューサー
中谷 晃
GBDプロジェクト研究員
(7) 西村哲也
マイクロソフト株式会社 IT 推進事業部事業部長
(8) 橘
民義
ポールトウウイン(株)代表取締役会長
(9) 高
永東
(株)ビー・エヌ・アイ・システムズ取締役副社長
(10) 高 学明
日本エスユーシー株式会社代表取締役社長、
在日中国科学者連盟起業家聯誼会会長
(11) 北澤 進
日本電気株式会社政策調査部長
渡辺喜一郎
(12) 楊 克倹
主査
在日中国科学者連盟起業家聯誼会事務局長
(13) ウコウアン(有)ソフトロード取締役
リュウチン
取締役
その他数名
(14) 岡澤 耕
トレンドマイクロ(株)管理本部総務人事部人事マネージャー
星野 勉
総務人事課課長
(15) 岡田恭彦 富士通(株)取締役 IT 戦略室長、総務部人事勤労部担当
糸永正明
上田隆司
人事勤労部グローバル人事部長
アジア・パシフィック営業本部
中国ビジネス推進部長
武田春仁 富士通(中国)有限公司副総経理
藤田喜三 (株)富士通経営研修所シニアコンサルタント
おおたけ
(16) 大竹
わたる
航
㈱インテリジェンス
エンジニア派遣事業部
153
採用企画グループ
若山 幸司
首都圏統括責任者
(17) 彦坂
昌樹
㈱イーウェーブビジネスシステム第 1 事業部・担当部長
(18) 岡崎
誠
㈱ビービーシステム
(19) 久保井
司
管理本部・取締役本部長
㈱富士通中部システムズ
ビジネスソリューション事業部
インダストリーソリューション部
有本
昇喜
経営推進統括部・経営企画室・担当課長
中濱
京
経営推進統括部・経営企画室
Nancy Strzelecki
人事部採用担当
(20) 安藤 隆年 ソフトピアジャパン副理事長
(21) 大橋
憲司
㈱アイポック代表取締役社長
(22) デヴァダス・パラカル
マスコット・システムズ・リミテッド
ジャパン・リージョナル代表
B.海外
1.中国
(1)Professor Wang Xiangdong
中国社会科学院(CASS)の Institute of Quantitative & Technological Economics
(2)須藤 健・文江 SEIRYU 北京星流諮詢服務有限公司(http://www.seiryu.com.cn)
(3) Luo Junzhang(外交)Deputy Director
Wei Jun(情報通信政策企画担当)Deputy Director
中華人民共和国信息(情報)産業部外事司(Department of Foreign Affairs)
(4) 落合博見 日電系統集成(中国)有限公司(NEC SISTEMS INTEGRATION(CHINA)CO.,
LTD)副総経理
(5)孫 謙 中国聯合通信公司(聯通)国際部長
(6) Liu Dong(劉東)President & CEO, Beijing Internet Networking Institute,
Han Bing(韓氷)International Department, Japanese Chargement
(7) 方宇 北京亜細亜国際中小企業研究所所長
2.香港
(1)Jiro Ishii, Managing Director, HONG KONG MIYAKAWA CO., LTD.
(2)斎藤博史, JETRO HONG KONG 経済研究部主任
154
3.韓国
(1) Lee Jin Won, Secretary ‐ General,
Technology &
Lee
Peninsula on the Information,
Network,
Science
Jin-Won(Philip), Secretary-General, Korea Electronic Payment Forum
Sung Jun Yoon,
Chairman of Committee on International Relationship, The Youth
Network for the Future
Nakafuji Hirohiko, 慶煕大学校付設 光明社会研究所(GCS)所長補佐
(2) Yong-Jin Park(朴容震)漢陽大学教授
(3) Jae H. Lee, Director, Information Network Division, Informatization Planning
Office,
Ministry
of
Information
and
Communication ( 情 報 通 信 部 )
(http://www.mic.go.kr/ jhlee/)
(4) Soon Hoon BAE, Ph.D. Professor, Graduate School of Management
Korea Advanced Institute of Science and Technology (KAIST)
初代情報通信部長官、元大宇電子会長
(5) Tae Hou Yoo, Ph. D.
Dime Investments(株)代表理事(元ニューヨーク州立大学の
経済学部教授)
Yong Chang
Dime Investments(株)リサーチセンター本部長兼取締役
(6) Chul-Jeung Hwang(黄、ファン)
国務総理調整室 (Office of the Prime Minister Republic of Korea)産業審議管
室 (Office of Government Policy Coordination)情報通信政策課長 (Director for
Information & Communication Policy)
(7) Hyung-Shik Kim(金) Newsroom for Global Finance/Staff Reporter
(8) 趙 章恩 (Cho, Chang Eun) J&J NETWORK JIBC(Japan Internet Business Community)
Consulting Team Leader, Web Producer, JIBC 會長
(9)
J. J. Shin(申
載靜), K internet(社団法人
韓国インターネット企業協会)
General Director(事務局長)
Jin-Sun Cha, Planning Team/Manager
Sung-Ho Kim, Planning & Communications Dept./Director
(10) Justine Lee, Head of Global Business Div., Global Division, e net corporation
(URL: http://www.e-net.co.kr; http://www.commerce21.com)
Jay Park, Marketing Center Director
(11) Greg Moon(文),SOFTBANK Ventures Korea, Managing Partner(副社長),
SOFTBANK Ventures Korea
Stevie Lee(李),Partner(常務理事)
(12) Lee, Jong-il, President, CEO, INFOHUB Corp., Network for your convenience
(URL: http://www.infohub.co.kr)
155
(13) Sang-Wook Ahn, PIB Korea Inc., Executives
(URL: www.pibkorea.co.kr)
(14) 金 昌培 (Kin, Chang Bae), Wiz 情報技術株式會社 System
事業本部部長(General Manager, System Business Dept.)
(URL: http://www.wizit.com)
Kim, Albert Heekwan, Internet R&D Lab Senior Technology Officer
(15) 柳 晳基 (Ryu, Seol-ki), Money Today 経営企業室長
(16) 趙 亨來 (Hyung-Rae Cho), 朝鮮日報社經濟科學部/
IT チーム (IT Chosun.com)記者
安 勇炫 (Ahn, Yong-Hyun)
經濟科學部
4.台湾
(1) Ching-Yen
David
Tsay, Ph.D. 行政院科学技術顧問組政務委員
Kun-Fung Lin Ph.D.
(2) Chung H.Lu Ph.D. Deputy
Associate
General
Researcher 行政院科学技術顧問組
Director
Yau Wu, Planning Affairs Dept.
Industrial Technology
Research Institute,
Computer & Communications Research Laboratories(www.cci.itri.org.tw)
(3) Eric Chou(周冠中)Senior manager(経理) 財團法人資訊工業策進會(Institute
for Information Industry)(www.iii.org.tw)
(4) Cynthia Chyn, Business Director
Daniel Sun
Institute for Information Industry
Market Intelligence Center, International Business
(5) Eric Chang, President
Vic Chou,
Director, Global Industry Research Center
Topology Research, Inc.(www.toplology.com.tw)
(6) Robert (Senior Engineer), Henry (Section Chief) Yun-Ti
Yeh (Tony)
Value-Added Network Section, Public Telecom Department, Directorate General of
Telecommunication, Ministry of Transportation and Communications
(7) Isabel Chiang, Vice President, Global Human Resource
Julia Hsiao, Manager, Human Resources Dept.,
Jill Wu, Project Manager, Human Resources Dept
Jeremy Liang, Executive Vice President of Engineering, Engineering
Charie Lee, Architect/Senior Manager,
R&D Dept.他3名
Trend Micro Incorporated (URL http://www.trend.com.tw/)
156
(8) 草間俊介
東京新聞記者
朱 伊君 (I-Chun Chu)
助理
(9) Vic Chen, District Manager, Services & Customer Business & Services
Team, Greater China Region, Agilent Technologies(www.agilent.com)
(10) Stan Lin, 普生股份有限公司 (General Biologicals Corp.)總經理 (President)
(11) 王孝慈 1111 人力銀行總經理
夏 瑋
公關主任
(12) 陳蓉芬 全球華人新聞網 (@1111 人力銀行)
(13) 黄 鎭台 (Jenn-Tai Hwang)
財團法人 國家政策研究基金會 (National Policy Foundation)董事
兼 科 技 経 済 組 召 集 人 (Board Director & Head of Technology &
Economy Department)
(14) 施
國琛 (Timothy K. Shih)
淡江大學 (Tamkang University) 資訊工程學系所教授兼系主任
(15) 鍾聖智 聯成電脳有限公司、聯成電脳教育学園、LC Computer 總經理
(16) 林 玲妃 (Sally Lin) 経済部無線通訊産業発展推動小組副理
5.フィリピン
(1) Tomoyoshi Nishikawa, Executive Vice-President & General Manager,
Telecommunications Group, FUJITSU PHILIPPINES
(URL http://www.fujitsu.com.ph)
(2) Gus Lugman, CCP (Chairman. & CEO), Philippines Computer Society Systems
Standard Incorporated (IBM Business Partner)
(3) Maricor M. Akol, President, ITFP (Information Technology Foundation of the
Philippines)
(4) Vergilio L. Pena, Presidential Assistant for Information & Communication
Technology and Executive Director, ITECC (Information Technology Electronic
Commerce Council),Office of the President of the Philippines
(5) Ieta Chi, General Manager, Trend Micro Incorporated & Atty. Ma.
Theresa G. Consunji, Department Manager, Human Resources Department ,Trend
Development and Support Center Trend Micro Incorporated
(URL http://www.antivirus.com)
(6) Lito Tayag, SVI Senior Vice President, SVI (Software Venture International)
Arcy Canumay , Chair, Idea Farmer Strategic Consulting & Mackey Cruz,
Ideafarm (i-AYALA)
(URL http://www.ideafarm.ph)
157
(8) Dr. Fred F. Yoshino, Professor, De La Salle University
(9) Dr.Emmanuel C. Lallana, Executive Director, DPF, Executive Director, e-ASEAN
Task Fource, Digital Philippines Foundation
(URL http://www.e-aseantf.org)
(10) Nonato P. Arboleda, Associate Partner, Accenture (Andersen Consulting)
6.タイ
(1) Dr. Somkiat Tangkitvanich, Research Director,
Thailand Development Research Institute Foundation
(2) Dr. Watit Benjapolakul, Assoc.Prof,
Department of Electrical Engineering, Chulalongkorn University
(3) Pairot Sompopouti, Deputy Secretary General, Office of the Board of Investment
(4) Magdi M. Amin, Private Sector Development Specialist, The World Bank
Asda Chintakananda, Private Sector Development Specialist
(5) Dr. Damrong Pradubsripetch, Engineer,
National Petrochemical Public Company Limited
7.マレーシア
(1) Johan Ariffen, Project Leader, iPerintis (URL http://www.iperintis.com)
(2) Takumi Kurita,Managing Director, Data Collection System (M) SDN BHD
(3) Roger Deslorieux, Managing Director, Magnus Management Consultants Sdn Bhd
(URL http://www.magnus.com)
(4)
Shah Sidek, CEO, VtoV. Asia Sdn, Bhd
(URL http://www.vtov.com)
(5)
Faisal ABD. Rahman, MTDC (Malaysian Technology Development Corporation)
(6)
David Gibson, Managing Director, PPM (Technology Communications)
Mohd Zaini Noordin, Marketing Director, MOL AccessPortal Sdn. Bhd.
(URL http://www.MOL.com)
8.シンガポール
(1) Yuka Tomimoto, Senior Manager, Product Information & Release Services
Asia Pacific, Microsoft Operations Pte Ltd
(URL http://www.microsoft.com/singapore)
(2) Tan Choon Hiong, Senior Officer, InfoComms & Media, Services Development Division,
EDB (Economic Development Board)
Tan Choon Hiong, Senior Officer, InfoComms & Media, Services Development Division
158
(URL http://www.sedb.com)
(3) Anthony Wong Yum Pun, Managing Director, Berlitz Global Services (S) Pre Ltd.
(URL http://www.berlitzglobalnet.com)
9.インド
(1) Ananth Lazarus, Group Manager-Small & Medium Business(Small & Medium Business),
Microsoft Corporation(India)Pvt. Ltd. The Great Eastern Center
Soumyo Ghosh, Business Analyst(Business Analysis),
(2) R.Raghavan, Chairman, Acme Technologies Pvt. Ltd.
その他
1名
(3) D K Sareen, Executive Director,
Electronics and Computer Software Export Promotion Council (ESC)
Dr. R.K.Singh, Consultant,
159
[参 考 文 献 ]
書籍雑誌等
ア ジ ア I T ビ ジ ネ ス 研 究 会( 編 )、台 北 市 コ ン ピ ュ ー タ 同 業 協 会( 協 力 )[ 2 0 0 2 ] 、
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Electronics
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Computer
Software
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イ ン タ ー ネ ッ ト 協 会 [2001]、
『 イ ン タ ー ネ ッ ト 白 書 2 0 0 1 』イ ン プ レ ス( 2 0 0 1
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イ ン タ ー ネ ッ ト・ビ ジ ネ ス 研 究 会 [2001]、
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160
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Requirements for Electronics Hardware and Software, Electoronic
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― マ レ ー シ ア 通 信 業 界 の 最 近 の 動 き ― 」 『 KDD
R e s e a r c h 』( 2 0 0 1 年 8 月 号 )
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161
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― ア ジ ア 各 国 の I T 事 情 シ リ ー ズ( 第 四 回 )― 」
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Japan
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ミ ネ ル ヴ ァ 書 房 ( 1997 年 12 月 )
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