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南極東ク ィーンモー ドラン ド前進拠点に

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南極東ク ィーンモー ドラン ド前進拠点に
5011:106(観測技術)
南極東クィーンモードランド前進拠点に
おける無人気象観測*
菊 地 時 夫** 牧 野 章 汎***
要 旨
南極東クィーンモードランドに建設した前進拠点において,約8か月間の無人気象観測を行うため,半導
体メモリー(CMOS RAM)方式による長期気象記録計を製作した.記録計は風向,風速,気温,雪温を
時間毎に測定し,CMOS RAM(16kB)に記録する.電源にはリチウム電池を使用し,保温用に風力発電
機を用いた.約7か月後にデータを回収して調べたところ,全期間にわたって記録が行われていたが,正常
なデータは気温,風向が9割,風速が5割程度であった.CMOS RAMは一60。C以下の極寒の条件でも,
一度書き込まれたデータを保持しており,極地におけるこの方式の記録計の有効性を確認した.
1.はじめに
第26次南極地域観測隊は1985年2月,東クィーンモー
ドランド雪氷観測計画(東,1981)の一環として74。
12,S,34。59/E,海抜3200mの高原上に前進拠点
を建設した (上田,1986;Kikuchi and Ageta,1987).
第1図にその位置を示す.前進拠点は第25次隊によって
その位置を定められたが(F可ii6∫α1.,1986),長期観測
のための居住兼観測棟の建設は第26次隊に委ねられてい
た.拠点建設のための内陸旅行隊は3月1日にみずほ基
30。E
40。E
昭和鋤 』二1・。。一、
窩1 ・,ぎのの1
あすか基地 ’ン:・、. 、、
藤麺,響謄鞍
i畿埋漕砺雌∼、
∫70ケS
三幅’・…・前進拠点 ’\・一・・3goq’1∫
..35◎O’ O
75。S ・
地への帰途につぎ,10月の本旅行まで前進拠点は無人と
。。 ’㌦・㌣..
§
なった.この無人期間の気象データを取るために長期気
ふじド ム
象記録計を製作し,現地に設置した.
20’E
2.長期気象記録計の製作
南極の厳しい条件下で使用できるデータロガーとして
’75’S
ム∫
第1図
30’E
40。E
50轡E
南極,東クィーンモードランドの地図.前
進拠点と日本の観測基地.
は,ディジタルカセットに記録する方式のもの(勝田・
寺井,1986)や,低消費電力の相補型酸化金属半導体
で下がると考えられる内陸高原では保温が不可欠とな
(CMOS)集積回路(IC)メモリーを使うもの(Endo
る.一方,CMOS ICの多くは一55。Cまで動作が保
8」α」.,1987)などが考えられる.前者は一20。C程度ま
証されており,部品を注意深く選ぶことにより,わずか
でしか動作が保証されず,最低気温が一60。C以下にま
*Unmanned weather observat玉ons at the Ad・
の保温で十分使用に耐えるデータ・ガーを構成すること
ができる.この考えに添っていくつかのデータロガー・が
vance Camp in East Qpeen Maud Land,
商品化されているが,特に風速測定の点で気象観測に適
Antarctica.
した形のものは見当たらなかった.
**Tokio Kikuchi,高知大学理学部.
***Akihiro Makino,㈱牧野応用測器研究所.
そこで,新たに低温下で使える長期気象記録計を製作
一1987年7月23日受領一
一1987年9月28日受理一
1988年1月
することにした.記録計の主な仕様と要求される性能を
第1表に示す.特に,風向風速の測定については,一世界
39
南極東クィーソモードラソド前進拠点における無人気観測
40
第1表 長期気象記録計の仕様
データ収録項目およびセソサーの規格
項目
1.
風向
内容
10分間の最頻値
規格
センサー
抵抗式矢羽根風向計
(n/300を2で割る)
16方位(牧野,VR236)
2.
風向頻度
1.の頻度
3.
風速
10分間平均値
4.
最大風速
5.
気温
白金抵抗温度計
6.
雪温
白金抵抗温度計
7.
通し番号
RAMの0番号に記録された番号をデータ取得のたびに
電接式三杯風速計
0∼150
分解能O.1m/s(牧野,AC860)
『10分間の最大値
一60∼40。C,分解能0.1。C
一一60∼40。C,分解能0.1。C
増加する
測定周期
3時間
収録期間
約8か月
動作温度(下限)
約一500C
記録媒体
半導体メモリー(CMOS−RAM)
補助機能
RAMのチェックと初期化
データ転送(RS−232−Cによる)
気象機関(WMO)に定められた10分間平均をとること
によりデータの代表性が確保されるようにした.記録方
0.1m/sで10ビットで表す.風向は16方位で計測す
る.
式については前述のCMOS−RAMを使用するが,紙テ
(3)気温,雪温の測定…白金抵抗温度計(0。Cで100
ープに針でパンチすることによりバックアップすること
Ω)を使っているが,測定時のみ回路に通電するよ
を考えた(実際には電源部の事故によりこの部分は使わ
うにして,電力を節約する.A/Dコンバータには
れず,有効性は確かめられなかった).
10ビットの物を使用しており,分解能は約0.1。Cで
第2図に記録計の構成図を示す.CMOS型の中央処
理装置(CPU)であるIC,80C85は,32.768kHzの
(4)CMOS−RAMへのデータ書込…RAM内に記録
水晶発振器で働くタイマーにより3時間毎に電源が入れ
されている番地情報をもとにデータを記録すべき番
ある.
られる.CPUは読み出し専用メモリー(ROM)に書き
地を計算してその番地のメモリーにデータを書き込
込まれているプログラムに従って計測を行い,必要な演
む.1データは8バイト(1バイトは8ビット)で
算を行い,得られたデータをCMOS−RAMに書き込
構成されるが,計測データは10ビットで表されるた
む.続いてデータをパンチしたあと,電源を切る.タイ
め,1バイトに各データの上位2ビットをまとめて
マーの動作とCMOS−RAMのデー・タ維持に必要な電流
入れるなどの工夫をしてメモリーの節約を図ってい
は非常に少なくて済む.電源には低温での特性の良いリ
る.RAMは16kBが用意されており,ほぼ255
チウム電池(松下電池)を使用した.
日分に相当する.
計測のプ貢グラムは以下のようになっている.
(1)風速風向測定の開始…10分間の計測中も2秒毎の
(5)テープパンチの駆動…CMOS−RAMのバツクア
ップ用として準備した.CMOS−RAMに比べてデ
データ取り込み時以外はCPUの動作を停止して電
ータの保存性に優れているが,読み取りには困難が
力消費を軽減する.
予想される.
(2)平均風速,最多風向の計算…10分間の計測の後
(6)CPUの停止…3時間後にタイマー一によって電源
300個のデータから平均風速,最大風速,最多風
が入れられるまで動作を停止するため,自分自身の
向,同風向の発生頻度を計算する.風速の分解能は
電源を切る.
40
、天気”35.1.
41
南極東クィーンモードランド前進拠点における無人気観測
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RS−232−C 三
ア労クー
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長時間気象記録計
︸コ
)Ω)
気温 (Pt100Ω)
インターフェイス
ン固一ル
CPU
CBOSメモリー
アルス
)Ω)一
雪温
16kB
︶ ︶
6 0
風向
データ
(VR236)
デーウ
コントロール
(AC860)
風速
昧
一
…
i…
+5V(BO)
⋮; 、
紙テづ
⋮⋮三⋮⋮⋮
+5V(B1)
+6V(B2)
一6V(B3)
・ . . 一 ■ ・ 一 “ ■ 一 一 一
き
一………一硬用せず」……一…一…一・一一}
i+12V(B4)
, ρ 一 一 ・ 一 − 一 ・ 一 一 ,
ルチャー
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……”…’…軸一”…’…i
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リチウム電池
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第2図 長期気象記録計の構成.
この他,記録計には(a)RAMのチェックと初期
3.現地での設置状況
化,(b)計測データの転送を行う機能が備わっており,
前進拠点建設のための内陸旅行隊(5名,リーダ}:
CPU電源を手動で入れる際スイッチ操作でそれぞれの
上田豊),は1985年1月26日にみずほ基地(70。42’S,
機能プ・グラムを実行する.デー・タの転送にはRS−232・C
44。20’E,高度2230m)を出発して,2月7日に目的
によるシリアル方式を用いてパーソナルコンピュータに
の前進拠点建設地に着いた.翌8日から9日にかけて,
収録できるようにした.但し,記録計からの出力は使
断熱パネルを組み合わせた幅3.6m,奥行き7.2m,高
用する電源の関係で+5VとOVなので,パソコン
さ2.7mの居住兼観測棟を建設した.内装などの作業
(EPSON,HC・40)の規格に合う様に土9Vに変換する
終了後,2月14日より記録計の設置に取り掛かった.前
アダプター・を用意した.
進拠点における気象記録計の設置状況を第2図及び写真
記録計の電源は5組のリチウム電池からなっている.
1,2に示す.風向計と風速計は高さ5mのポールの
ディジタル用2系統(5V/22AH,5V/1.5AH)とア
上部に取り付け,温度計のひとつはステンレスの日除け
ナ・グ用2系統(6V/1.5AH,一6V/1。5AH),及び
の中に入れて高さ1.5mに取り付けた.また,もうひと
パンチ用(12V21AH)の計5系統に分かれているが,
つの温度計は深さ2cmの雪中に埋めた.風力発電機は
低温での電圧降下を予想してほぽ2倍の起電力の電池を
ポールの風下約10mのところに設置した.居住棟内に
用意した.
記録計本体と電池をセットして計測テストを開始したの
記録計と電池は10cm厚さの発泡スチロールで断熱
は2月16日である.
した木製の箱に入れた.また,風力発電機(0−200−TM
テスト中にいくつかの不具合が生じた.
1−24V,大島製作所)を電気ヒー・ターにつなぎ,保温の
(1)風力発電機の故障…(a)回転が遅かった.これ
ための熱源とした.但し,過大電流による温めすぎを防
は発電機内の軸受けのグリースの低温による固化
ぐため,記録計に付けたサーモスタットにより一5。C以
で,軸受けを灯油で洗浄することにより解決した.
上で断熱箱の外側につけたヒーターに切り換えるように
(b)回転部のスリップリングでの断線により電流
した.
1988年1月−
が流れなかったが,発電機より直接配線することに
41
42
南極東クィーソモードランド前進拠点における無人気観測
風向計
風速計
”
風力発電機
居住兼観測棟
保温箱
=。.㌦、.噸∵
−鄭ゐ
気温
電池
合
記録計
..,“:む
雪温
第3図
第3図
写真1
記録計の設置状況の概略図.
風上から見た観測用ポールと風力発電機,前進拠点
建物.後方は幌そりとデポ.
写真2
室内に置かれた記録計.保温箱ははずして横に置い
てある.手前下はハンドヘルド・コンピ三一タ.
写真1
写真2
より解決した.(c)矢羽根が強風で共振すること
(3)データの欠落…パンチ部の動作している間にデー
があった.これは設置時点までの間に事故により矢
タがパンチされているのにメモリーに書き込まれて
羽根が曲がっていたことによるものかも知れない
いないことがあった.プログラムかハードウェアの
が,特に対策はとれなかった.
ミスと思われるが再現性が乏しいため対策できなか
(2)電池のショートとパンチ部の故障…点検のため電
池をはずす際に誤ってショートさせ,その影響でパ
った.
以上のように不完全な形ではあるが,滞在期限も迫っ
ンチ部が動かなくなった.復旧を試みたが部品もな
てぎたので2月27日15時(昭和基地標準時間,UT+3h)
く諦めた.
から計測を開始した.前進拠点を出発する3月1日には
42
黙天天”35。1.
南極東クィーンモードラソド前進拠点における無人気観測
43
第2表電池電圧の変化
名称
規格値
B O
5(V)22(AH)
7<V)
B l
5 1.5
10
9
B2
B3
B4
6 1.5
10
9
−6 1.5
−10
−9
電圧(1985年2月)
12 21
εトパ\
ロ
1 \
3(V)
(使用せず)
中\∼\
ム
電圧(10月)
o直irTemp.
▲Sno四Temp.
▲\▲
、▲ ▲一▲
、▲1 \▲
\
ム
0 \▲
8 0
器 \
← 一50 0
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O、0 0 ノ
¥〇一〇
Da ta Number 208
216
224
232
240
T ime 3/25 15L、T
/2615LT
/27(18LT)
/2815LT
!2915LT
第4図 データ欠落前後の気温と雪温の記録.
記録されたデータを読み出してデータ回収の際に比較で
きるようにした.
まで落ちていたため,予備の電源装置で5Vを供給する
ことにより,かろうじて回収することができた.記録の
最初に入っているデータは拠点を離れる前に読み出した
4.データの回収
ものと一致しており,温度低下や電圧降下によっても一
昭和基地とみずほ基地で越冬したのち,内陸旅行隊
度記録されたデータに変化はなかった.一旦コンピュー
(8名,リーダー:上田)は10月14日に前進拠点を再訪
タに入ったデータはディジタルカセット端末(TAFCO,
した.まず,風力発電機が壊れていることを発見した.
TFC−153)を介してカセットテープに移して持ち帰っ
発電機は尾翼の付け根が破断してプロペラが脱落してお
た.
り,設置時にみられた共振現象によるものと推察され
た.壊れた時期は特定できないが,壊れた部品の雪に埋
5.データの検討
まった状況から数か月は経過していると思われ,保温の
データの検討の際にまず注意したのは3節の(3)に
電源を失った記録計は一60QC程度まで温度が下がって
書いたようなデータの欠落がないかという点である.2
いた可能性がある.
月と3月のデータは気温に日周変化が見られるため,こ
次に,居住棟を暖房して記録計を温めたあと,電池の
れを追うことによりある程度欠落をチェックできる.第
電圧を測定した孝ころ第2表に示すように電圧の降下が
4図に3月25日03時(デー一タ番号204)から5日分の気
見られた.続いてコンピュータを接続してデータの回収
温と雪温をプロットした.3月27日までは15時に日最高
を試みたが,CPUとシリアル出力の電源電圧が3Vに
気温が現われているのに対して,28日からは12時に現わ
1988年1月
43
44
南極東クィ1ンモ白ドラシド前進拠点における無人気観測
一30
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第5図
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1
1
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l l γ :㌃ 鴛
0 1 魂 1 書
MAR APR 14ハY JUN
JUL
AUG
SEP
OCT
無人記録計による全期間の気温,風向,風速の記録. データの点を線で結んでいない部分は記
録に間題があったことを示す.
れている.これ以降の日周変化も同様であり,27日から
る.この128個のデータは,ちようど1組のRAM
28日にかけてデータの欠落が生じたことがわかる.これ
以上のことはデータのプロットからはわからないが,2
IC(4bit×1024のIC2個で1kBを構成する)に
相当する.常温ではRAMチェックプログラムに
月のテスト中にはデータ番号が32番,48番などの2進数
よっても異常は発見されなかったが,低温のために
で切れのよい番号のところで欠落が生じていた.そこで
異常が生じたものと思われる.
この付近で一番切れのよい224番(16進数でEO)のと
(2)6月の後半より後の風速データでは,平均風速が
ころで欠落が生じたものと推定した.その後の部分では
最大風速に比べて極端に小さくなっている場合が多
日周変化がなくなるため,この方法でのチェックはでき
い.みずほ基地のデータ(Kikuchi8♂α」.,1986)と
ないが,最後の部分のデータを再訪時の手動気象観測と
比べても平均風速は小さくなっており,風速測定に
比較することによリデータの欠落は前にあげた1箇所だ
間題が生じたことがわかる.風速計が電気接点方式
けであることが確認された.
をとっていることから,間欠的な接触の検知ミスが
以上の他に,低温と電圧低下が原因と見られるデータ
あったものと思われる.10月15目に居住棟を暖房し
の明らかな誤りが見つかった(データの詳細については
てからは正常な値に戻っていたことから考えると,
Kikuchi and Ageta,1987を参照).
風速計の発信部に原因があるのではなく,低温によ
(1)データ番号1278から1405の範囲では番号が250,
る入力部トランジスタの作動不良など,電子回路に
250,0,0,…のように誤って記録されていた.この
期間(8月6日∼22日)の風速や気温もランダムに
変化しており,記録に異常があったことを示してい
44
原因があったのであろう.
(3)温度の最低値を一一60。C (実際には現地較正の外
挿によると一62.6。C)に設定していたため,それ
、天気”35.1.
南極東クィーンモードランド前進拠点における無人気観測
45
0
15
じ し ロ ヨ ロ じ ロ し じ
3≧10
ほ じ じ こ ロ ロ じ ヨ l l l I ’ 1 ’ l l l
コ コ ほ ヨ ロ じ じ じ
l l l l l l l l 一 , } 1
ぜ ロ ロ ロ ほ ロ ロ じ じ ”{一皿…・・1一・一一・・{・一一一’一一 ・…卜一・一一一イー一一…・卜一・・一…{一。・一一・十一・・一一・,一一一一イー一 ・・一
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1 1 0 専 1 , , ・ 曹 1 ,
, ■ 書 0 1 ,
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”『・・”・・..・・P・.。.■一”r●.””・b・r一..・一.・。・.r・・.・.傳・.●r●.・.”.・・.r・師 一り,●,●一・.。.q●r。●,●.,●。.?●”一一“●r.・.・.・・輔・
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, l l . 1 , , ・ , . 1
JRNFEBmRRPRmYJUNJULRUGSEPOCTNOVDEC
第6図
有人期間の観測をあわせた月平均の気温,
△…昭和基地,いずれも1985年)
風速の記録,(○…前進拠点,X…みずほ基地,
以下に下がったときの気温,雪温の測定はできなか
24。08’E,海抜930m)に設置した同様の方式による
った.
記録計のデータとの比較より,低気圧性擾乱の進入につ
いて明らかにした.東クィーンモードランド高原域にお
6.結 語
ける気象,気候区分の間題については別に論ずる予定で
第5図に長期気象記録計のとった気温,風速の全デー
ある.
タを示す.但し,データにミスのある部分は線でつなが
世界気候研究計画(WCRP)の副計画である南極気候
ずに点のままにしてある.以上のように一部にデータの
研究(ACR)に関連して各国で無人気象観測の計画が実
ミスがあったものの,全体としては気温と風向で9割,
行されている.その主流は衛星によるデータ収集である
風速で5割程度の正常な記録を取得することに成功し
が(例:Steams and Weidner,1986)経常経費がかな
た.
りかかることが欠点である.1年に一度程度訪れること
第6図に有人観測期間を含めた気温と風速の月平均値
ができて行動計画上は余り重要性がないようなところ
をみずほ基地,昭和基地での値と比較して示した.図か
(従って実時間でのデータを必要としないところ)では,
らわかるように,みずほ基地と前進拠点の相関はかなり
ここで扱っているような記録方式にも利用価値がある.
よい.みずほ基地は昭和基地から約250km,みずほと前
第28次隊ではこの長期気象記録計を改良して無人とな
進拠点の間は約500kmで後者のほうが遠いのに相関が
ったみずほ基地に持ち込み,他の方式の記録計(勝田・
よい.これは南極の気候区分が主に海抜高度で決まって
寺井,1986他)と共に1年間のデータ収集試験を行って
いる(Dalrymple,1967)ことに関連している.また,
いる.主な改良点は次の通りである.
Endoh8」α」.,(1987)はあすか観測拠点(71。32,S,
(1)風速計を発電方式のものに代えて電接方式にみら
1988年1月
45
46 南極東クィーソモードラソド前進拠点における無人気観測
れた低温での障害を避ける.
M.J.,Am.Geophys.un五〇n,195−231.
(2)データの圧縮性を高め16kBのままで1年分のデ
Endoh,T.,G.Wakahama,S.Kawaguchi,M.
ータが取れるようにする.
(3)電池の接続にコネクターを使用して,短絡などの
Sano and T.Kikuchi,1987:Tdal operation
of a simple automatic weather station at
Asuka Camp.,Antarctica.Proc.NIPR Symp.
事故を防ぐ. ,
. Polar Meteorol.Glaciol.,1.103−112.
また,みずほ基地は前進拠点よりも10。Cほど気
F雨ii,Y.,K.Kawada,M.Yoshida and S.
温が高いので,風力発電機での保温をやめて,雪中
に埋まった基地建物の保温性にまかせている.第29
l Matsu憩oto・1986:Glaci・1・gica1「esearchpr・・
gram m East Qμeen Maud Land,East
l Antarctica,Part4, 1984.JARE Data Rep.,
次隊との交代のとぎ(1988年1月)にデータは向収一 一』・ 116,(Glaciol.13),71P.
される予定である. ’ ,
東 晃1981:南極東クィーンモードランド雪氷研
究計画について.雪氷,43,129−130.
勝田豊・寺井啓1986:南極用低消費電力デー
謝 辞
タ収録器の開発.南極資料,.30,175−188・
風力発電機に関しては,湯浅電池(株)の松本完氏に
Kikuchi,T・and Y.Ageta1987:Glaciological
御世話になった.現地での設置にあたっては国立極地研
research program in East Qμeen Maud Land,
の吉田治郎隊員を始め,内陸旅行隊全員の協力を得た.
East Antarctica,Part6,Advance Camp,1985.
JARE Data Rep.,129,(Glacio1.15),104P.
ここに記して,謝意を表します.
Kikuchi,T.,T.Shimamoto,F.Okuhira and
文.献
上田 豊1986:内陸ドームから,あすか拠点へ.
極地,43,28−33.
Dalrymple,P。C.1966:A physical climatology of
the Antarctic Plateau.StudiesinAntarctic Me−
Y.Ageta1986:Meteorological Data at Mizuho
station,Antarctic4in1985.JARE Data Rep.,
120,(Meteoro1.19)78P.
Steams,C.R.and G.A.Weidner1985:Antarctic
auto血atic weather stations,austral summer
1984−1985.Antarc。J.u.s.,20,189−191.
teorology,Antarct・ Res. Ser。,9,ed by Rubin,
Polar Ozone Workshopのお知らせ
極域オゾンの変動に対する観測及び理論の最近の知見
記
をまとめるため,右記によって国際研究集会が計画され
日時:1988年5月9∼13目
ております.興味のある方は連絡次第英文案内書をお送
場所:米国コロラド州アスペン
りします。
アブストラクト〆切:1988年2月28日
照介先:気象研究所 忠鉢 繁 0298−51−7111
(内線348)
科学技術総合シンポジウム開催のお知らせ
日時:昭和63年3月16日(水)∼18日(金)
(千代田区大手町1−9−5,TEL O3−270−0251)
ところ:日経ホール
主催:科学技術庁
46
、天気”35.1.
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