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「仏国の研究開発動向」

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「仏国の研究開発動向」
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
仏国の研究開発動向
FRANCE
〈ジェトロ・パリ・センター〉
2004/5, No.458
● 目次
1.フランスの研究開発政策
1.フランスの研究開発政策
1
1.1 基本方針..............................................1
1.2 政策決定・実施フロー ........................2
1.1
2.研究開発活動の現状
(1) 企業の研究開発促進
5
3.研究開発予算
9
3.1 研究開発予算の概要 ............................9
3.2 2004年予算における重点事項.....13
基本方針
2002 年 5 月のバルセロナ欧州委員会で、欧州連
合は 2010 年ごろには国内研究開発費を GDP の 3%
4.産学官の研究開発動向
18
4.1 公的研究機関 ....................................19
4.2 大学等の高等教育機関 ......................25
4.3 産業界 ...............................................28
に増加させるという目標を確立した。この 3%の
5.主要分野の研究開発施策・動向
33
5.1 生命科学 ...........................................35
5.2 環境・エネルギー .............................36
5.3 宇 宙 ...............................................38
5.4 数学・物理学・化学..........................40
5.5 運 輸 ...............................................40
5.6 人文・社会科学.................................41
5.7 情報通信 ...........................................42
公的研究開発費は GDP の 0.8%を占めているが、
うち、企業の研究開発費は3分の 2、公的研究開
発費は 3 分の1を占める。2002 年に、フランスの
企業の研究開発費は GDP の 1.4%しか占めていな
い。2004 年には政府が企業の研究開発支援を充実
させる方針で、次の政策を実施する予定である。
• 企業のイノベーション拡大
2002 年末に発表された「イノベーション計画」
6.研究開発支援施策
44
6.1 イノベーション・研究法 ..................46
6.2 研究開発優遇税制 .............................48
6.3 補助金・融資制度 .............................50
6.4 その他の助成制度及び優遇措置........57
を実施し、研究開発投資に対する減税制度(CIR)
を改正する。
• 公的研究開発及び企業の研究開発間の連帯強
化
7.研究開発成果の普及及び技術移転に関する
施策
61
7.1 研究開発成果の普及..........................61
7.2 公的機関から産業界に対する技術移転
の促進.................................................61
研究省の補助金により、中小企業及び新技術
向けの産業研究を優遇する。この支援は特に、
優先研究領域及び公的研究機関と政府間の契約
において実施される。
8.国際研究協力
64
8.1 基本方針 ...........................................64
8.2 欧州連合(EU)の研究開発とフラン
スの関係 .............................................65
• 個人または私的機関を対象の研究開発への出
資拡大
参考資料
68
新規イノベーション企業の規約を設置し、財
略称リスト
68
団の設立を促進することにより、個人または私
的機関による研究開発への出資を支援する。
(2) 優先研究領域の強化
社会的な期待に対応する優先研究領域に考慮を
払い、2004 年の民生研究開発予算は立案された。
1
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
この優先研究領域は次のとおりである。
(4) 若者の研究分野への就職支援
• 保健に関する研究(癌の治療、老化、新規伝
2004 年は研究手当が前年よりも 4%増額される
染病、環境及び温室効果、クリーン・ビーク
予定で、テクニシャン、エンジニア、博士の就職
ル)
可能性を拡大する。また企業内研究による産業訓
• 代替エネルギー(エネルギーの貯蔵、水素の
練契約(CIFRE)を約 300 件増やすとともに、公的
利用、ITER)
研究の研究者の給与を改善する予定である。
• 資源管理(食料品の資源及び安全、水)
• 航空宇宙における研究開発の継続
1.2
政策決定・実施フロー
〈図 1〉にフランスの研究開発政策の決定及び
(3) 公的研究の強化
実施に係る主要な機関を示す。
長期間の定期契約及びコンクールにより新規雇
用者数を調整し、現在の公的究機関の研究者数を
維持する。また、公的研究機関の予算を維持し、
機関の研究能力を維持する。
〈図 1〉 研究開発政策決定・実施フロー
科学アカデミー
CNS/国家科学委員会
(科学技術現況報告書)
CCDT
技術開発委員会
(技術開発・イノベーショ
ン・企業設立勧告)
(研究開発政策方針勧告)
政府
CSRT/高等科学技術
研究委員会
(研究開発政策方針勧告)
CIRST/科学技術研究省間委員会
(研究開発政策方針決定)
CSESR
高等教育・研究戦略委員会
(決定事項に係る政策手段検討)
優先的テーマ支援
研究機関との契約
各機関の研究調整
研究政策実施
(出所)フランスの研究開発予算
2
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
• 科学技術研究省間委員会(CIRST)には研究に
• その他、個別技術分野については、人文・社
関係する大臣及び閣外大臣が参加する。CIRST
会科学分野では2001年3月に、勧告と研究活動
は国家科学委員会(CNS)及び高等科学技術研
の調整を行う人文・社会科学調整委員会が設
究委員会(CSRT)の学界、産業界のメンバー
立された。1999年7月には、研究省技術局の管
及び公的研究機関や大学の関係者と意見を交
轄に属する情報通信科学技術調整委員会が設
換したうえで、国の科学技術研究開発に係わ
置されている。
る最終的な方針を決定する。この方針は国家
予算の国会審議の際にも活用される。
〈図 2〉に研究省及び文部省における研究開発
• 高等教育・研究戦略委員会(CSESR)は政府の
決定に沿って、政策実現の手段を検討する。
• 国家科学委員会(CNS)は、研究開発政策の方
の管理・運営に関係する組織及びその機能を示す。
研究省の研究局及び技術局並びに文部省高等教育
局が研究開発関連部局である。
針について政府に勧告する。CNSの設立は1998
〈図 3〉に研究省の民生研究開発予算の内訳を
年7月のCIRSTにおいて決定された。
• 科学アカデミーは2年に1回、国内の科学技術
示す。
の状況に関する報告書を作成している。
〈図 2〉
研究省及び文部省の研究開発関連組織
文部省
研究省
技術局
高等教育局
研究局
−イノベーション政策
−産業研究支出、支援
−研究成果実用化
−大学、高等学校管理
−研究政策、実施
−研究による育成
−研究雇用
科学・技術・教育ミッション
−高等教育、研究評価
−研究手当て
FRT
技術研究補助金
FNS
科学補助金
(R2IT 研究・技術イノベ
ーション・ネットワーク
支出)
(ACI 合意促進活動支出)
EPIC
公的商工機関
企業
EPST
公的科学技術
機関
(出所)フランスの研究開発予算
3
大学、高等教育施設
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
研究省は、民生研究開発予算の69.8%(2004年)
• 研究局は、主な公共科学技術機関(EPST)を
と最大の予算を担当するが、その国内研究開発へ
監督し、科学者の雇用、研究を通じた教育、
の支出ルートは大きく分けて2つある。傘下の研
科学研究に関する政策を作成する。この政策
究機関(EPST、EPIC、生命科学研究所)への支出
の実際の実施について、大学研究の評価、政
• 省内の研究開発促進政策ツール(科学補助金
府・高等教育機関の間の取り決めの作成は、
(FNS)、研究技術補助金(FRT)、研究によ
研究局及び文部省高等教育局の双方に属する
る育成等)による支出
大学科学ミッションに委託する。大学科学ミ
• 研究省は、関係省庁と協力しつつ、科学技術
ッションは7つの科学局からなる。研究局は科
政策の企画立案及びその実施を担当する。大
学補助金(FNS)を管理し、FNSの予算支出対
学等の高等教育機関での研究開発に関する政
象である合意促進活動(ACI)と呼ばれる研究
策については、研究省と文部省が協力してこ
促進プログラムを担当する。
れにあたる。研究省は他の省庁の研究開発関
連予算案を調整し、国全体の民生研究開発予
算を取りまとめる。
• 研究省では、技術局及び研究局が研究開発の
管理を担当している。
〈図 3〉
研究省の民生研究開発予算の内訳(2004 年)
62.37 億ユーロ
生命科学研究所
への支出
1.8%
研究省本省の政
策ツール
9.8%
EPICへの支出
32.0%
EPSTへの支出
56.4%
(出所)フランスの研究開発予算
4
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
2.研究開発活動の現状
• 一方、技術局は主な公共商工機関(EPIC)を
監督し、イノベーション及び研究成果の応用
〈図 4〉に 2002 年の国民研究開発支出費と国内
を担当する。イノベーション及び技術開発の
政策作成を担当し、産業界の技術開発への支
研究開発実行費の流れを示す(速報値)。
援方法、イノベーションへの支援、研究成果
なお、ここでいう「研究開発支出」とは研究開
の実用化の方策、公的研究機関と民間の技術
発費の資金負担を、「研究開発実行」とは実際に資
協力についての政策を検討する。技術局は研
金を使用することを意味する。
• 国民研究開発支出費(DNRD)とは、フランス
究技術補助金(FRT)を管理している。
• 文部省は研究省と協力しつつ、政府・高等教
に所在する民間企業と公的機関が資金を負担
育機関の間の4年間の取り決めや、特定の活動
する研究開発費を意味し、研究開発が実行さ
の支援、研究施設の運営費・設備整備費の負
れる場所がフランス国内か国外であるかを問
担等を担当する。このような支出は2004年に
わない。
は5.11億ユーロとなる予定である。また、文
• 国内研究開発実行費(DIRD)とは、フランス
部省は民生研究開発予算以外に文部省に属す
に所在する民間企業や公的機関が実施する研
る教育者兼研究者の人件費を負担する。
究開発に要する費用で、資金負担者が国内か
国外かを問わない。ちなみに国際比較を行う
• 研究省及び文部省以外では、産業省及びその
傘下の国立研究産業利用推進局(ANVAR)が、
場合、経済協力開発機構(OECD)は「国内研
主な研究開発関連組織として挙げられる。
究開発実行費」の数字を利用している。
〈図 4〉
国民研究開発支出費と国内研究開発実行費(2002 年速報値)
国民研究開発支出費:341.9 億ユーロ(GDPの 2.25%)
16.5
外国
行政機関 152.7 億ユーロ
企業 189.2 億ユーロ
(1.00)
(1.24)
113.9
169.4
行政機関 126.1 億ユーロ
5.9
6.3 22.3
国内研究開発実行費:334.0 億ユーロ(GDPの 2.20%)
(
):研究開発費の対 GDP 比率
(出所)フランスの研究開発予算
5
外国
企業 207.8 億ユーロ
(1.37)
(0.83)
13.5
16.1
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
「国民研究開発支出費」と「国内研究開発実行
あり、前年と比較して−0.3%(インフレ率を考慮)
費」との差額は、欧州宇宙機関(ESA)への支出な
減少し、対 GDP 比率は 2.20%であった(2001 年は
ど、フランスと外国の間の資金の収支と一致する。
2.23%)。
2003 年の当初に行なわれた経済状況調査、及び
民間企業は国内研究開発実行費のうち 207.8 億
行政機関と民間企業を対象としたアンケート調査
ユーロ(62.2%)を使用し、行政機関は 126.1 億
の結果によると、2002 年の国民研究開発支出費は
ユーロ(37.7%)を使用した。
341.9 億ユーロで、前年と比較して(インフレ率
2002 年に、国内研究開発実行費のうち 22.0 億
を考慮)同等であり、GDP 増加率よりも低い伸び
ユーロ(6.6%)が外国及び国際機関から支出され
率となった。行政機関の国民研究開発支出費は増
たのに対し、国民研究開発支出費のうちフランス
加(+2.2%)し、民間企業の国民研究開発支出費
の行政機関及び民間企業は外国に対して 30.0 億
は減少(−1.7%)した。
ユーロ(8.8%)の研究開発費を支出した。
1995 年以降、民間企業の研究開発費負担は、行
〈図 5〉に、2001 年の確定値ベースでの、国民
政機関の負担分を上回る。公的出資は 1992 年から
研究開発支出費と国内研究開発実行費の詳細流れ
1998 年の間 1 年当たり 2∼3%程度減少したが、
を示す。以下、本報告書中のフランスの研究開発
1999 年からは安定した傾向にある。
制度については、主にこの 2001 年の数字を参考と
一方、国内研究開発実行費は 334.0 億ユーロで
〈図 5〉
している。
国民研究開発支出費と国内研究開発実行費(2001 年確定値)
国民研究開発支出費:335.7(2.28)
43.7%
企業
188.9(1.28)
行政機関
146.7(1.00)
82.9%
56.3%
6.1
17.1%
13.4
17.1
国防
25.1
民生
121.6
169.5
外国
14.3
5.7
外国
6.0
民生
112.6
18.0
国防
8.5
93.0%
7.0%
企業
207.8 (1.41)
行政機関
121.1(0.82)
36.8%
国内研究開発実行費:328.9(2.23)
−EPST、EPIC、省
−高等教育
−非営利機関
65.9
42.2
4.6
58.5%
37.5%
4.1%
63.2%
(注)単位は億ユーロ。カッコ内
は対 GDP 比率(%)。
(出所)フランスの研究開発予算
6
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 6〉及び〈図 7〉に民間企業及び行政機関別
究開発支出費の対 GDP 比率の推移を示す。
〈図 6〉
国内研究開発実行費対 GDP 比率の推移(1980 年∼2002 年)
1981年
1984年
に、国内研究開発実行費の対 GDP 比率及び国民研
(%)
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
企業
行政
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1990年
1989年
1988年
1987年
1986年
1985年
1983年
1982年
1980年
0.0
全体
(出所)フランスの研究開発予算
〈図 7〉
国民研究開発支出費対 GDP 比率の推移(1980 年∼2002 年)
(%)
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
企業
行政
全体
(出所)フランスの研究開発予算
7
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
1988年
1987年
1986年
1985年
1984年
1983年
1982年
1981年
1980年
0.0
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
長期的に見ると、1980 年から 1993 年にわたり
当時、民生・防衛両分野で大規模プログラムが実
フランスの国内研究開発実行費は GDP の増加率を
施されたこと、産業界が再編成されたことにより、
上回り、国内研究開発実行費対 GDP 比率は 1.90%
行政側及び民間企業側の研究開発がともに拡大し
から 2.45%となった。しかし、1993 年から 1999
たことが挙げられる。しかし、1993 年以降は、経
年までこの比率は減少し、その後は安定的に推移
済状況を反映して他の先進工業国と同様にフラン
している。2002 年には 2.20%となった。
スでも研究開発への取り組みが鈍ったことが減少
1980 年の行政の国内研究開発実行費は GDP の
の原因と考えられる。
0.70%であったがその後増大し、1993 年には
1995 年から国民研究開発支出費のうち、民間企
0.94%となった。また、民間企業の国内研究開発
業の支出分が行政機関の支出分を上回っている。
実行費の GDP 比は 1980 年の 1.05%から、1993
2002 年には国民研究開発支出費のうち民間企業
年には 1.51%となった。1993 年からこの比率は減
の支出分は 55.3%を占める。1982 年にはこの比
少し、2002 年に行政の国内研究開発支出費は
率は 43.2%であった。
GDP の 0.83%(2001 年には 0.82%)を占め、民間
企業は 1.37%(同 1.41%)となった。
このような推移をたどったのは、主として次の
1990 年に行政機関の国民研究開発支出費は GDP
の 1.28%を占めていたが、2001 年には 1.00%に減
少し、2002 年も 1.00%になると見られている。
理由によると考えられる。過去に増加傾向をとっ
2001 年の研究従事者数は、フルタイムに専従換
た理由としては、仏政府が 1979 年及び 1980 年当
算すれば、給与の支払い元の如何を問わず、
初に公的研究開発予算を増加し、研究開発投資に
339,205 人(2000 年には 327,466 人)が研究開発
対する優遇税制措置(CIR)をはじめとする種々
活動に従事した。そのうち 185,468 人は民間企業、
の施策により民間企業の研究開発を促進したこと、
153,737 人は公的研究機関の研究者であった。
8
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
3.研究開発予算
この民生研究開発予算以外の支出増加は次のと
おりである。
3.1
研究開発予算の概要
• 政府のあらゆる歳入から公的研究機関に配分
される8,000万ユーロ
〈表 1〉に研究及び新技術省(以下、研究省と
• CIR等減税制度の改正により、企業が節約でき
略す。)の 2003 年及び 2004 年の民生研究開発予算
る3,000万ユーロ
を、
〈表 2〉に研究省以外の省の民生研究開発予算
• 国営企業の民営化による収入から、研究財団
を示す。また、
〈図 8〉に 1990 年から 2004 年まで
を支援するために確保する1.5億ユーロの補
の民生研究開発予算(経常支出+支払い予算ベー
助金
ス)の推移を示す。
〈図 9〉には省庁別の民生研究
開発予算の比率を示す。
(予算関係用語について)
• 経常支出(DO)
設備費、人件費。
• プログラム認可(AP)
ある計画に対して与えられる最大予定予算。
予算が段階的に執行される場合、当該年の予
算執行額は支払予算(CP)により表される。
公的セクターの研究者は研究所の資源不足を強
調し、2004 年の予算を不満とした。2 年ほど前か
ら研究政策方針に関する政府の発表及び約束と、
実施したことがあまり異なると判断されている。
2003 年に初めて公的研究機関の予算は大幅に減額
され、支払予算は取り消された。退職した 550 人
の公務員研究者の代わりに一時的な契約に基づく
研究者を雇用すること、また優先的な分野だけ研
究を促進することが反対運動の主な理由である。
日本の予算制度における『国庫債務負担行為』
に相当する。
• 支払予算(CP)
予算執行により当該年に実際に支出される
予算。
なお、以下において、民生研究開発予算の数値
に関して特段の注釈を付けない場合は、
「経常支出
+支払い予算」の値である。
2004 年の民生研究開発予算は 89.28 億ユーロで、
2002 年よりも 0.9%の増加となったが、2003 年の
予測インフレ(約 2%)を考慮すると−1.1%の減少
となる。
一方、研究及び新技術担当の大臣エニューレ氏
は、2004 年に、2003 年よりも民生研究開発予算以
外の支出が増加するために、研究開発に充てられ
る全体の公的支出は実際に 3.9%(インフレを考慮
すると 1.9%)増加することを強調している。
反対運動は研究者組合と独立して、パリの 3 つ
の生物研究所から発起し、多数の科学分野の公的
研究機関及び大学に広まった。2004 年 1 月 7 日に
は、インターネット上に現状を説明する嘆願書を
出し、著名な研究ユニットの担当者数人が、要求
を受けられらなかった場合は、辞職すると述べた。
1 月 29 日現在で 3 万 3,000 人がこの嘆願書に署名
したとされる。嘆願書に呼応して、1 月 29 日には
27 の研究者組合がパリでデモを行い、1 万人(主
催者発表。警察発表では 3,000 人)が参加した。
2004 年には、ほとんどの公的研究機関の予算を担
当する研究省、及び大学等の高等教育機関を所管
する文部省の予算は、合計で 67.48 億ユーロと前
年よりも 1.7%増加し、民生研究開発予算の 75.6%
を占めている。経済・財政・産業省の予算は 10.19
億ユーロで、前年よりも 3.0%減少し、民生研究開
発予算の 11.4%を占める。
9
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈表 1〉
民生研究開発予算(研究省,2003 年及び 2004 年)
経常支出+プログラム認可
2003 年
2004 年
2004 年
/2003 年
増減(%)
(単位:100 万ユーロ)
経常支出+支払い予算
2003 年
2004 年
2004 年
/2003 年
増減(%)
研究機関
EPST(公共科学技術機関)
CNRS
INRA
INSERM
IRD
INRIA
LCPC
CEMAGREF
INRETS
INED
EPST 小計
2,216.68 2,234.06
565.61
570.94
454.38
459.14
168.16
168.02
109.41
111.71
42.89
43.16
42.51
43.37
36.59
36.90
14.49
14.63
3,650.72 3 ,681.93
0.8%
0.9%
1.0%
-0.1%
2.1%
0.6%
2.0%
0.9%
1.0%
0.9%
2,100.08
543.79
437.52
164.87
106.15
42.10
41.80
36.02
14.42
3,486.77
2,118.96
549.12
442.27
163.74
111.94
39.37
42.67
35.33
14.57
3,517.97
0.9%
1.0%
1.1%
-0.7%
5.5%
-6.5%
2.1%
-1.9%
1.0%
0.9%
EPIC (公共商工機関)
CNES
CEA
IFREMER
CIRAD
BRGM
ADEME
IPEV
EPIC 小計
1,116.96
1153.00
501.97
493.86
152.45
152.45
116.97
117.04
53.15
53.15
27.49
27.57
17.75
18.20
1,986.75 2,015 ,26
3.2%
-1.6%
0.0%
0.1%
0.0%
0.3%
2.5%
1.4%
1,116.96
501.97
153.12
116.47
53.15
23.12
17.11
1,981.90
1,153.00
493.86
146.41
115.37
52.12
19.90
17.32
1,997.98
3.2%
-1.6%
-4.4%
-0.9%
-1.9%
-13.9%
1.2%
0.8%
0.0%
52.98
52.98
0.0%
生命科学研究所
パスツール研究所(パリ)
52.98
52.98
国立 AIDS 研究協会
36.74
36.74
0,0%
36.74
36.74
0.0%
パスツール研究所(国際)
7.99
7.99
0.0%
7.99
7.99
0.0%
パスツール研究所(リール)
6.41
6.41
0.0%
6.41
6.41
0.0%
キュリー研究所
5.94
5.94
0.0%
5.94
5.94
0.0%
他のガン関係研究所
0.30
0.30
0.0%
0.30
0.30
0.0%
他の研究所
0.30
0.30
0.0%
0.30
0.30
0.0%
研究所 小計
110.68
110.68
0.0%
110.68
110.68
0.0%
研究機関小計
5,748.15
5,807.88
1.0%
5,579.35
5,626.63
0.8%
研究による人材育成
282.39
304.82
7.9%
282.39
304.82
7.9%
科学補助金 FNS
216.94
151.75
-30.1%
129.50
142.96
10.4%
研究技術補助金 FRT
197.00
196.45
-0.3%
94.82
119.21
25.7%
研究省の施策
支援・情報・通信関係活動
34.19
32.38
-5.3%
34.19
32.38
-5.3%
一般管理費
科学技術情報・知識の予測及
び調査
国立研究評価委員会
8.39
8.68
3.5%
8.39
8.68
3.5%
1.22
1.22
0.0%
1.22
1.22
0.0%
0.69
0.69
0.0%
0.69
0.69
0.0%
研究省の施策小計
740.83
695.99
-6.1%
551.20
609.96
10.7%
研究省 合計
6,488.98
6,503.86
0.2%
6,130.56
6,236.59
1.7%
(出所)フランスの研究開発予算
10
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈表 2〉
民生研究開発予算(研究省以外の省,2003 年及び 2004 年)
(単位:100 万ユーロ)
産業省
- CEA
- 産業研究,ATOUT,その他
−フランス石油研究所
- ANVAR
- 鉱山高等学校
文部省
- 高等教育
- その他の学校
設備・運輸省
- 民間航空プログラム
- フランス気象局
- その他(海洋、都市開発)
エネルギー・永久的開発省(元
環境省)
- IRSN
- IRSN 以外
経常支出+プログラム認可
2004 年
2003 年
2004 年
/2003 年
増減(%)
1,208.00 1,009.89
−16.4%
426.02
419.40
−1.6%
379.74
195.6
−48.5%
200.00
200.00
0.0%
161.76
154.4
−4.5%
40.48
40.49
0.0%
経常支出+支払い予算
2004 年
2003 年
2004 年 /2003 年
増減(%)
1,051.02 1,018.99
−3.0%
426.02
419.34
−1.6%
242.04
204.7
−15.4%
200.00
200.00
0.0%
142.47
154.40
8.4%
40.48
40.49
0.0%
556.74
564.90
1.5%
506.20
511.37
1.0%
544.28
552.26
1.5%
493.73
498.73
1.0%
12.46
12.46
0.7%
12.46
12.64
0.7%
339.92
263.69
54.08
22.15
344.91
269.57
54.15
21.19
1.5%
2.2%
0.1%
−4.3%
374.16
300.68
54.08
19.40
367.59
294.30
54.15
19.14
−1.8%
−2.1%
0.1%
−1.4%
250.91
249.97
−0.4%
249.47
249.66
0.1%
235.73
15.18
235.43
14.54
0.0%
−4.2%
235.73
13.74
235.43
14.23
−0.1%
3.6%
国防省
190.56
200.0
5.0%
190.56
200.0
5.0%
外務省
-国際機構
-文化活動
149.40
144.29
5.11
149.40
144.29
5.11
0.0%
0.0%
0.0%
149.40
144.29
5.11
149.40
144.29
5.11
0.0%
0.0%
0.0%
文化省
- CSI
- CSI 以外
120.18
84.60
35.57
121.49
86.80
34.68
1.1%
2.6%
−2.5%
118.16
83.43
34.73
119.74
85.30
34.43
1.3%
2.2%
−0.8%
住宅省
27.33
27.16
−0.6%
26.53
26.59
0.2%
農水産省
25.50
24.95
−2.2%
24.83
24.67
−0.6%
計画省
9.61
9.26
−3.6%
9.43
9.13
−3.2%
社会問題省(元厚生省)
7.27
7.32
0.7%
6.97
7.04
1.0%
労働省(元雇用省)
6.32
6.35
0.5%
6.32
6.35
0.5%
法務省
1.03
1.03
0.0%
1.03
1.03
0.3%
内務省
0.40
0.40
0.0%
0.30
0.30
0.0%
研究省支出以外の民生 R&D 予算
2,893.19
2,717.05
−6.1%
2,714.39
2,691.48
0.8%
民生研究開発予算合計
9,382.17
9,220.91
−1.7%
8,844.95
8,928.47
0.9%
* 国防省の支出は、CNES の民生及び軍事のデュアル・ユース研究プログラムに相当する。
(出所)フランスの研究開発予算
11
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
民生研究開発予算の推移(1990 年∼2004 年)
9
8 .5
8
7 .5
7
6 .5
(出所)フランスの研究開発予算
省庁別民生研究開発予算比率(2004 年)
〈図 9〉
89.28 億ユーロ
農水産省
0.3%
文化省
1.3%
国防省
2.2%
計画省
0.1%
社会問題省
0.1%
住宅省
0.3%
労働省
0.1%
外務省
1.7%
法務省
エネルギー・永久
的開発省
2.8%
内務省
設備運輸省
4.1%
文部省
5.7%
産業省
11.4%
研究省
69.9%
(出所)フランスの研究開発予算
12
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
6
1990年
民生R&D予算(DO+CP10億ユーロ)
〈図 8〉
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
3.2
日本(2.1%)よりも低く、欧州目標の 2%を下回る。
2004年予算における重点事項
一方、イノベーション企業の設立は 2002 年の上半
企業の研究開発支援は、政府の優先的な研究開
期には前年よりも 20%減少した。この状況に対し、
発政策の重要な柱の一つである。長期で見れば、
政府は数年前に決定された企業の研究開発への支
イノベーションは社会及び経済的な発展に欠かせ
援策の強化を決定した。2004 年の民生研究開発予
ない要素であるが、ドイツ、米国、日本と比較す
算では、イノベーションへの公的支援策の新規方
ると、フランスの企業の研究開発費は下回る。
〈図
針が示された。例としては、政府の介入方法の簡
10〉 に、これらの国の企業及び公的研究開発費対
略化、解明、新規財政的な支援策の設置と研究開
GDP 比率の比較を示す。
発投資に対する優遇税制措置(CIR)の改革が挙げ
フランス企業の平均研究開発費は日本、米国、
られる。
ドイツよりも低い。2000 年のフランス企業の国内
研究開発費対 GDP 比率は 1.4%で、欧州の平均値
(1.2%)よりも高いが、ドイツ(1.7%)、英国(2.0%)
、
〈図 10〉
国別の GDP 対 R&D 費比率(2000 年)
%
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.0
日本
0.6
2.1
2.7
米国
0.8
2.0
2.5
ドイ ツ
0.8
1.7
2.2
0.9
フランス
1.4
1.9
欧州全体
0.7
1.2
3.0
1
欧州目標
2.0
R&D費 / G DP比
公的分*
企 業 分 **
(注)*:政府の研究開発予算対 GDP 比率
**:企業の国内研究開発費対 GDP 比率
(出所)フランスの研究開発予算
13
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
具体的な措置は 2002 年 12 月 11 日の内閣閣僚会
補助に関連するあらゆる情報を企業に知らせる。
議の際、エニューレ研究新技術担当相の協力を得
ANVAR は国全体に 200 か所にあり、企業に近い商
て、フォンテーヌ産業担当相が発表した「イノベ
工会議所に基づく。
ーション支援政策」の実施である。この「イノベ
ーション支援政策」は、国内のイノベーション関
(3) 現在の補助制度の改善、新規補助制度の創設
係者(公的機関及び企業の研究者事業者等)を対
2004 年の民生研究開発予算は、イノベーション
象として行った国内アンケートの結果により強化
への投資を支援する新規の制度2つと、研究開発
された。2004 年に決定する最終的な措置は次のと
に対する優遇税制措置(CIR)の改革を盛り込んで
おりである。
いる。
①
(1) 企業の研究開発における政府の解明
ビジネス・エンジェル
フランスのビジネス・エンジェルの数は 3,000
戦略的な産業指向の技術開発を出資する全ての
社から4,000 社の間で、平均年間投資は 7 万ユ
補助金は「企業の競争力、イノベーション及び産
ーロと見られている。人口 10 万人当たりでは 4
業研究」という民生研究開発予算の新規項目に収
人から 6 人に過ぎず、米国および英国(10 万人
録される。このような公的補助金(研究省及び産
当たり 100 人)の 20 分の 1 である。これらの投
業省の出資、国立研究産業利用推進局(ANVAR)が
資家を拡大するために 1 人(現在は少なくとも
管理するコンクールからの出資等)は 2004 年に 5
3 人)からなるベンチャーキャピタル(英国ま
億ユーロに達すると見られている。支援方法とし
たは米国の limited partnerships)の設立を可
ては、出資される研究プロジェクトの内容により、
能とした。
返還を要しない補助金(基礎研究)と返還を要す
投資期間が 10 年以上になると、法人税及びキ
る補助金(製品に近い研究開発)のいずれかとす
ャピタル・ゲインに対する課税の部分的な免除
る。
を受けることができる。また、10 年までの間、
ビジネス・エンジェルは会社課税の免除を受け
(2) 補助金への企業のアクセスの簡略化
ることができる。そのための要件は、以下のと
現在の補助金は地方機関(地方産業・研究・環境
おりである。
• 投資の時点で、投資対象の企業の設立から5
局(DRIRE)
、地方研究技術官(DRRT)、ANVAR の支
局等)及び省庁の中央局により同時に管理されて
年を経過しないこと
いるために、時間の無駄及び複雑さを生じている。
• 投資対象の企業の活動は商業、産業、財政、
このような状況で、補助金を受けられる企業でも、
職人の分野であり、ホールディング会社は
補助金申請の途中で手続きを諦める企業(特に小
除かれる
• 個人株主による投資対象の会社株式の保有
企業)は多い。企業の補助金申請の行政的な手続
率が50%以上であること
きを簡略化するとともに、企業の権利を明確にす
るために、補助金の決定、管理を担当する機関は
• 企業は欧州連合諸国からの企業であること
ネットワークで繋がれる。商工会議所、地方自治
• 法人税または法人税に相当する課税を支払
う企業であること
体や協会等の協力を得て、ANVAR が中小企業のイ
ノベーション支援ネットワークの中央窓口になり、
14
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
• ビジネス・エンジェルの人間は、投資対象の
• 中小企業であり、従業員数は250人以下、年
企業の経営者になることは不可能
間売り上げは4,000万ユーロ以下。他の企業
• ビジネス・エンジェルの唯一の活動は、一
が当該企業の資本金に参加している場合、
定の企業の資本金への参加、ローンによる
参加率または投票権の所有率は25%以下
投資であること
で、グループの子会社は除かれている
• 投資は投資対象企業の資本金の5%以上かつ
•
• 当該企業は研究開発プロジェクトの指導能
20%以下であること
力を明確にし、毎年研究プロジェクトにつ
投資期間は自由
いて報告書を作成すること
• 当該 企業の研究費対総合負担比率は15%以
これにより生じる課税減少額は、年間 1 億ユ
上であること
ーロと推定されている。
これにより生じる課税減少額は、年間 2,500
②
新規イノベーション企業のプロジェクト支
万ユーロと推定されている。
援
2002 年 12 月に発表された「新規のイノベーシ
③
ョン企業の優遇措置」を受け、欧州連合の研究開
研究開発投資に対する優遇税制措置(CIR)
の改革
発支援ルールも踏まえつつ、以下の支援策が決
CIR は日本における増加試験研究税制に相当
定された。
し、前年よりも研究開発に対する投資を増加す
• イノベーション企業の研究開発に関係する
る企業について、企業の利益に課税される法人
社員に対し8年間の使用者の社会税免除
税額から控除(場合により払い戻し)を受けら
• 企業を設立してから3年間は法人税免除、次
れる制度である(6.2 節参照)。
の2年間は50%の減税
2003 年末まで、控除の対象となるのは、当年
• 地方税(職業税等)の免除
の研究開発費と直前 2 年間の研究開発費の年平
均額との差額(超過分)の 50%であり、連続的
法人税及び地方税に係る優遇措置は、欧州連
に研究費を増加する企業に対する優遇措置であ
合のレベルで自由競争を妨害する「政府補助金」
った。一方、研究費を減少した、または横ばい
として扱われないために、企業 1 社当たり 3 年
とした企業は不利な立場となることから、現在
間の課税節約は 1 億ユーロに限られている。優
の景気低迷の局面においては、不適当な措置で
遇措置を重ねる場合は、企業の研究開発費の 35%
あると判断された。2004 年から、控除の対象と
を超えることはできない。
なるのは、当年の研究開発費の 5%及び当年の研
対象企業は次のとおりである。
究開発費と直前 2 年間の研究開発費の年平均額
• 設立から8年間以下の企業
との差額(超過分)の 45%である。税額控除の
限度額は 1 年間、1 社当たりの現在の 610 万ユ
ーロを 800 万ユーロにする。対象研究費は特許
及び科学技術動向のフォローに関係する費用ま
でに拡張される。また、公的機関との協力で行
15
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
• 研究手当の金額を4%増加する。これにより、
う研究の場合、研究費の 2 倍を控除できる。
新規 CIR からから生じる課税減少は年間 8.5
2002年からの増加率は15%に達する。2003年
億ユーロと推定され、現在の約 5 億ユーロより
に 研究手当に与えられる予算は2.322億ユー
も 70%の増加となる。
ロで前年よりも8.3%増加した。研究手当の金
額 は1か月で1,260ユーロから1,610ユーロ の
〈図 11〉 は、2004 年にイノベーション企業
間となる。
• 2003年にフランスではじめて、公的研究機関
支援措置ごとの税収減少額を示す。
は企業と協力し、フランス人、または外国人
(4) 若者の研究分野への就職支援
の若いドクターを年間400人を簡単に雇用す
若者の科学及び科学勉強に対する興味は年々に
ることが可能となった。契約期間は12か月か
減ってきているが、2010 年までに欧州で高等レベ
ら 18か月で1か月の給料は2,050ユーロであ
ルのエンジニア、テクニシャンの人数を 100 万人
る。2004年に、600人の若いドクターを雇用す
増加しなければならない。国の研究者をフランス
る。
• CIFRE(企業内研究による産業訓練契約)の件
に引き止め、外国から研究者を呼び寄せるために、
2004 年には、2003 年の政策を続行し、フランスで
数は、2003年の860件から2004年は1,160件に
の研究者の処遇を改善するために次の措置がとら
拡充する。
れる。
〈図 11〉 イノベーション企業の支援措置別税収減少額 (2004 年 推定値)
15 億ユーロ
イノベーション企業
のプロジェクト支援
1.7%
ビジネス・エンジェル
6.8%
産業研究の直接な
補助
33.9%
新規CIR
57.6%
(出所)フランスの研究開発予算
16
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
(5) 優先研究領域強化
クノロジー対象の研究・技術イノベーション・ネ
〈図 12〉 及び〈図 13〉 に、プログラム認可ベ
ットワークの活動は促進される。マイクロ・ナノ
ースで、2003 年及び 2004 年の分野別の FNS 予算
テクノロジー・ネットワーク(RMNT)及びマイク
及び FRT 予算の推移を示す。
ロ・ナノテクノロジー・センターネットワークへの
2004 年の FNS 予算は 1.5 億ユーロで、2002 年及
支出はそれぞれ 840 万ユーロ(前年比 42.8%増)、
び 2003 年(補正後)のレベルを保ち、生物学及び
3,000 万ユーロ(同 130.8%増)で大幅に増加され
バイオ医学、環境、科学の都市、通信の社会、ナ
る。
ノ科学及びナノテクノロジー等、5 つの優先的な
環境分野においては、2004 年に「クリーン・
領域における研究協力の続行を可能にする。若手
ビークル」の特別なプログラムを設置し、プ
研究者のプロジェクト支援への支出は 2003 年よ
ログラムの 5 つの研究テーマ(エンジン燃料
りも 17.2%増加し、新規の研究促進プログラムと
と汚染除去、電力、消費、ノイズ減少、燃料
して、研究者待遇向上(給料、投資手段等)のプ
電池の使用)に 3,100 万ユーロの予算を充て
ログラムが 500 万ユーロの予算を受ける。2004 年
られる。PREDIT は、燃料電池のイノベーショ
の FNS 支払予算は 1.43 億ユーロで、前年よりも
ンネットワークにより管理され、部分的に出
10.8%の増加となる。
資されている。
プログラム認可ベースで、2004 年の FRT 予算は
1.97 億ユーロで、前年よりも 38.8%の増加となる。
情報通信の分野は第一の分野となり、特にナノテ
〈図 12〉 2003 年及び 2004 年、分野別 FNS 予算(単位:100 万ユーロ)
0
20
政府・地方間の契約
情報通信
80
16.5
16.5
9.2
15
14.7
14
人文・社会科学
9.3
9
物理学/化学
7.7
8
若手研究者の支援
6.4
7.5
研究者状況向上
60
84.2
75
生命科学
地球・環境科学
40
5
2003年
2004年
(出所)フランスの研究開発予算
17
100
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
4.産学官の研究開発動向
これに加えて、各機関は数年前から研究省の補助
金(FRT 及び FNS)も受けている。これら補助金の
フランスの公的研究は、日本の国立研究所に相
大部分は科学技術研究省間委員会(CIRST)が決定
当する公的研究機関と大学等の高等教育機関の2
した優先分野に向けられたものであり、1997 年か
種類の研究機関で実施されている。公的研究機関
ら設置された研究・技術イノベーション・ネット
は、基礎研究と応用・開発研究のどちらに重点を
ワーク(R2IT)と、研究促進プログラム(ACI)に
置いているかによって、前者は公共科学技術機関
充てられる。
(EPST)、後者は公共商工機関(EPIC)に区別され
一方、民間企業の研究開発については、次のよ
ている。公的研究機関は、一般に、各専門技術分
うに概観される。
野に特化しているが(例:衛生医学分野の INSERM)、
2001 年に、民間企業は、フランス全体の研究開
国立科学研究センター(CNRS)は一機関で多くの
発費の 56.3%を負担し、63.2%の研究開発を実施し
技術分野をカバーしている。EPST と EPIC に分か
ている。1970 年から民間企業の研究開発活動は拡
れてはいるものの、実際には CNRS のように基礎研
大し、1993 年以降は停滞している。フランス国内
究だけでなく応用・開発研究にも取り組んでいる
の民生、軍事両面での政府資金や、EUのフレー
機関も多い。大学等の高等教育機関は、基礎研究
ムワーク計画等の欧州レベルでの研究支援スキー
を中心にしている。
ムは、民間企業の研究開発に大きな役割を果たし
公的研究機関及び高等教育機関の研究活動に対
ているものの、民間企業の全研究開発費に占める
しては、国庫から機関毎に予算が与えられるが、
〈図 13〉
自己負担率は大きくなる傾向にある。
2003 年及び 2004 年、分野別 FRT 予算(単位:100 万ユーロ)
0
10
20
21.7
36
19.4
エネルギー・運輸・自然原料・環境
29.5
29.5
イノベーション企業設立支援
27
15
政府・地方間の契約
その他
50
66
生命科学
宇宙・航空
40
45
情報通信
社会・新技術
30
22
1.2
10
4.1
6.5
6
2003年
2004年
(出所)フランスの研究開発予算
18
60
70
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
民間企業での研究開発の大部分は大企業で行
国防分野の研究は国防省の研究所、CEA 及び
なわれているが、中小企業の割合は増加しつつあ
CNES の国防関係部門、仏独共同のサン・ルイ研究
り 、全体に占める中小企業の研究者の割合は、
所等で行なわれている。
1983 年の約 14%から 2001 年には約 35%に達して
いる。
〈図 14〉に、支出元別の民生行政機関への支出
比率を示す。
フランスの民間企業の研究開発活動の 3 分の 2
近くは、いくつかの特定の分野(電子、自動車、
製薬、航空・宇宙、化学)に集中している。
〈図 15〉に公的研究の関係機関及び研究開発費
の流れを示す。
• EPSTの予算は、主として民生研究開発予算
4.1
より支出されている。また、研究費の一部
公的研究機関
は欧州プログラムまたは民間企業が負担し
民生(非国防)分野の公的研究は、以下の3種
て い る 場 合 も あ る 。 EPST に は INRA 、
類の機関で行われ、2001 年にはそれぞれ順に行政
CEMAGREF、INRETS、CNRS、INSERM、
機関の民生国内研究開発実行費の 58.5%、37.5%、
INED、IRD、INRIA、LCPCがある。
• EPIC(公共商工機関)の研究費の一部は民
4.1%を占めている。
①公的機関:19 の公的研究機関(OPR)
、公共行
間企業、国防省等からも支出されている。
政機関(EPA)、省庁
EPIC に は CEA 、 ADEME 、 IFREMER 、
②高等教育機関:165 の大学及び高等学校
IFRTP、CIRAD、CNES、ANVAR、BRGM、
③非営利機関(ISBL)
CSTB、LNEがある。
〈図 14〉 支出元別の民生行政機関への支出比率(2001 年)
100%
80%
60%
40%
20%
0%
公的機関
民生R&D予算
高等教育機関
民生R&D予算以外
企業等との契約
(出所)フランスの研究開発予算
19
非営利機関
自己負担
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
• ISBL(非営利機関)には、研究省その他の省
20 年以上前からフランスの大学と公的研究機
庁から研究費が支出されている。
関の関係は深くなっており、CNRS 傘下のいくつ
• 高等教育機関の研究費の約81%は、政府によ
かの研究所は大学内に設置され、公的機関が博士
り直接支出されている(人件費、施設・設備
課程教育に関与する度合いも高まっている。
費、運営費)。政府の支出分は、民生研究開
発予算(政府・大学の4年間の取り決めに関す
る費用、施設・設備費、研究手当、特定の活
動費、特定の人件費等)と、民生研究開発予
算以外の予算(文部省予算による教授・研究
者の人件費、ドクター補助金、ENS高等学校)
からなる。
〈図 15〉
公的研究の関係機関及び研究開発費の流れ
研究省
FNS
科学補助金
FRT
研究技術補助金
EPST
INRA
INSERM
IRD
INRIA
CEMAGREF
INRETS
LCPC
INED
CNRS
文部省
大学
高等学校
ISBL
PASTEUR 研究所等
研究による育
成、他の支援金
CIR 等
研究投資に
対する
優遇税制措置
企業
産業省
国防省
EPIC
BRGM
ANVAR
ADEME
CNES
IFRTP
CEA
IFREMER
CIRAD
CSTB
LNE
(出所)フランスの研究開発予算
20
:民生研究開発予算
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 16〉に、2001 年における公的セクターの機
国内研究開発実行費全体の 58.5%(国防分をいれ
関別の国内研究開発実行費の比率を示す。また、
ると 54.4%)を占めた。図 19 に EPIC 及び EPST 等
〈図 17〉及び〈図 18〉に、機関別の従業者数及び
の公的機関別の民生研究開発予算からの支出比率
研究者数の比率を示す。公的研究機関、公共行政
を示す。このうち、CNRS が 21.54 億ユーロで、全
機関、高等教育機関及び非営利機関の従業者数は
体の 34.3%を占めている。CNRS、CNES、CEA、INRA
148,050 人であり、うち 88,893 人が研究者である。
及び INSERM の5機関を合わせると、53.94 億ユー
ロ、85.9%と大部分を占める。
(1) 公的機関
〈図 20〉及び〈図 21〉に、公的機関別の研究関
2001 年において公的機関が使用した民生研究開
係従業者数及び研究者数の比率を示す。
発実行費は 65.9 億ユーロであり、公的分野の民生
〈図 16〉
機関別国内研究開発実行費(2001 年)
121.1 億ユーロ
非営利機関/4.6
3.8%
国防関係/8.5
7.0%
公的機関/65.9
54.4%
高等教育機関/42.2
34.8%
(出所)フランスの研究開発予算
21
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 17〉
機関別研究関係従業者数比率(2001 年)
148,050 人
公共行政機関*
6.1%
非営利機関
4.5%
公的研究機関
46.8%
高等教育機関
42.6%
(注)*印は国防関係従業者を含む
(出所)フランスの研究開発予算
〈図 18〉
機関別研究者数比率(2001 年)
88,893 人
公共行政機関*
3.5%
非営利機関
4.0%
公的研究機関
40.6%
高等教育機関
51.9%
(注)*印は国防関係研究者を含む
(出所)フランスの研究開発予算
22
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 19〉
公的機関別研究開発費比率(2001 年)
62.78 億ユーロ
INRIA
1.4%
CIRAD
1.8%
ANVAR
2.3%
IFREMER
2.3%
IRD
2.6%
CEMAGREF
0.7%
INRETS
0.6%
BRGM
LCPC
0.8%
ADEME
0.7%
0.4%
IFRTP
0.3%
INED
0.2%
CNRS
34.3%
INSERM
6.8%
INRA
8.6%
CEA
14.8%
CNES
21.4%
(出所)フランスの研究開発予算
23
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 20〉
公的機関別研究関係従業者数比率(2001 年)
69,276 人
その他
14.8%
CNES
3.7%
CNRS
37.7%
INSERM
7.4%
INRA
12.2%
CEA
24.1%
(出所)フランスの研究開発予算
〈図 21〉
公的機関別研究者数比率(2001 年)
36,100 人
その他
20.1%
CNRS
33.8%
CNES
4.5%
INSERM
6.3%
INRA
15.2%
CEA
20.1%
(出所)フランスの研究開発予算
24
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
(2) 非営利機関の研究開発
は公的機関(国防省の研究所、CEA や CNES の国防
2001 年の非営利機関の研究開発実行費は 4.60
関係部門、仏独共同のサン・ルイ研究所等)に支
億ユーロであり、公的分野の民生国内研究開発実
出され、14.3 億ユーロ(56.9%)は国内の民間企
行費全体の 4.1%(国防分をいれると 3.8%)を占め
業に対して支出された。
た。1998 年から 1999 年の間に非営利機関の研究
民生分野においては、政府の民生研究開発支出
費は 5.7%増加した。増加の要因は、生命科学分野
費の大部分が公的セクターの活動に充てられるの
の強化策の一環として、シーケンス(ゲノム配列
に対して、国防分野の研究開発では、政府の国防
解析)センター(CNS)と国立遺伝子センター(CNG)
研究開発支出費の 3 分の 2 は民間セクターの活動
の 2 つの公益団体(GIP)が設立されたことによる。
に充てられる。
機関内で実施される研究開発及び外部への委託研
究開発の財源は、自己負担(財源全体の約 66%)、
4.2
大学等の高等教育機関
民生研究開発予算及び行政機関との提携による資
金(同 18%)
、国内または外国の企業との提携によ
4.2.1
2002 年から 2003 年に高等教育課程に在籍して
る資金(同 16%)の 3 つの負担元に分類される。
2001 年における非営利機関の研究関係従業者数
はフルタイムに専従換算すれば 6,725 人であり、
いる学生(海外県・領土の学生を含む)は約 215.5
万人である。
〈図 22〉に機関別高等教育学生数の比率を示す。
そのうち研究者及び研究エンジニアは、研究手当
を受ける人を含めて 3,521 人となっている。
高等教育の現状
2002 年∼2003 年に 1,389,000 人であった大学生は
高等教育課程の学生全体の 64.4%を占め、前年よ
りも 15,000 人の減少となった。この大学生のうち、
(3) 国防研究開発
2001 年の国防関係の政府の研究開発支出費は
560,000 人が第 1 期、484,000 人が第 2 期、227,000
25.1 億ユーロで、政府の国民研究開発支出費全体
人が第 3 期、118,000 人が工科大学(IUT)に属し
の 17.1%を占める。このうち、8.5 億ユーロ(33.8%)
ている。
〈図 22〉
機関別高等教育学生数比率(2002∼2003年)
2,155,000 人
(注)
「その他*」は、私立大学、会計・
その他*
18.1%
管理・商業学校、建築関係学校、文化・
芸術
エンジニア学校
2.8%
グランド・ゼコー
ル進学準備
3.3%
高等テクニシャン
学校
11.3%
大学
64.5%
(出所)文部省統計
25
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 23〉に大学生(工学大学を除く)の専門分
野別比率を示す。
年の 9,300 件に増加し、1998 年は 10,500 件で、
2001 年には 11,200 件となった。
人文・社会科学は大学生が一番多い専門分野で
あり、大学生全体数の 18.0%を占めている。第2
4.2.2
高等教育機関における研究開発
の専門分野は法律・政治(13.8%)
、第三分野は医
高等教育機関の数は 165 校であり、そのうち大
学・製薬・歯科学(10.9%)である。一般的な理
学は 90 校、高等学校(日本の「高校」ではなく大
工科系部門である科学技術、物質工学及び自然・
学レベルに相当する上級の学校を意味する)は 75
生命科学分野の大学生は 272,000 人であり、大学
校である。高等教育機関で行なわれる研究開発活
生全体の 21.4%である。
動の約 95%が集中する大学は、予算、学位、人材
供給等の観点から、CNRS をはじめとする公共科学
●研究者の育成方針、人的資源管理
技術機関(EPST)と深い関係を有している。高等
1989 年に博士論文執筆を奨励する「研究による
教育の研究チームは高等教育自体の研究チーム、
育成」政策が開始され、これにより研究手当の支
公的研究機関との協力による共同研究チーム、高
給は 1989 年の 1,900 件から4年間で 3,800 件に増
等教育の施設に置かれている公的研究機関の研究
加し、2002 年と 2003 年には 4,000 件に増加した。
チーム等、3 種類の研究チームがある。
博士論文の発表件数は 1989 年の 5,900 件から 1993
〈図 23〉
大学生の専門分野別比率(2002 年∼2003 年)
1,271,000 人
社会管理 スポーツ科学
3.8%
3.9%
自然・生命科学
6.1%
人文・社会科学
18.0%
科学技術
7.7%
法律・政治
13.8%
物質工学
7.6%
経済・経営
9.0%
文学・言語学・芸
術
9.3%
国語
10.0%
(出所)文部省統計
26
医学・製薬・歯科
学
10.9%
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 24〉に 2003 年の、研究チーム種類別、高
等教育における研究チーム数の割合を示す。
165 の高等教育機関は、フランス国内全体に偏
りなく配置され、基礎研究から産業化研究まで多
2003 年現在で、高等教育機関の 3,450 研究チー
くの科学技術分野をカバーしており、経済・社会
ムのうち、1,900 は高等教育自体の研究チームで
への研究成果の普及が期待されている。政府は、
ある。一方、1,531 の研究チームは公的機関に繋
数年前から高等教育機関と公的研究機関の連携強
がれている。1,100 の研究チームは CNRS との共同
化、産学官連携の推進、高等教育機関の研究能力
研究チーム、80 は CNRS 自体の研究チーム、300 は
の拡大に取り組んでいる。
INSERM との協力による、または INSERM 自体の研
特定のテーマ及びプログラムを対象として、公
究チーム、46 は INRA との共同研究チーム、5 は
益団体(GIP)及び科学関係団体(GIS)により、
CEA との共同研究チームである。
高等教育機関と公的研究機関、場合によっては関
2001 年 に高等 教 育 機関 で実 施 さ れた 研究 に
係省庁、民間企業を結集して研究が推進されてい
42.2 億ユーロが支出されており、公的分野の民生
る。2001 年末現在で、フランス極地研究技術協会
国内研究開発実行費の 37.5%を占めている。フル
(IFRTP)、技術・教育・研究用通信ネットワーク
タイムに専従換算すると 63,076 人が高等教育機
網(RENATER)、国立 AIDS 研究協会(ANRS)等の
関での研究開発活動に従事し、そのうち研究者及
36 の GIP が存在し、そのうち 23 には高等教育機
び研究手当を受けた者は 46,140 人である。
関が参加している。
〈図 24〉
研究チーム種類別高等教育研究チーム数割合(2003 年)
3,450 チーム
INRAとの共同チーム
1.3%
CEAとの共同チーム
0.1%
その他のRDチーム
0.6%
CNRSのRDチーム
2.3%
INSERM関係のRD
チーム
8.7%
CNRSとの共同RD
チーム
31.9%
高等教育自体のRD
チーム
55.1%
(出所)フランスの研究開発予算
27
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 25〉に研究省により助成されている研究チー
加していた。その後の経済状況の変化、特に国防
ムの主要分野別比率を示す(2000 年の数字)。
分野における予算の抑制により、民間企業の研究
開発は新しい局面を迎え、企業によっては研究開
4.3
発費が大幅に削減されることになった。近年、実
産業界
質価値換算ベースでは、民間企業の研究開発実行
4.3.1
産業界の研究開発動向
費は横ばいを続けてきたが、経済回復により 1998
〈図 26〉及び〈図 27〉に、民間企業の 1995 年
年から 1999 年及び 2000 年には大幅な増加に転じ
から 2002 年の研究開発実行費の推移を、それぞれ
た。 2001 年も好景気を反映して増加傾向が継続
名目価値及び実質価値(1995 年のフランの価値で
した。
換算、1 ユーロ=6.55957 フラン)ベースで示す。
1991 年までは民間企業の研究開発費は大きく増
〈図 25〉
研究省に助成されている研究チームの分野別比率(2000 年)
3,324 チーム
数学、情報処理
5.4 %
地球、宇宙科学
3.5%
化学
7.5%
生物学、医学、衛
生
29.9%
物理学、エンジニア
科学
12.8%
社会科学
17.3%
(出所)フランスの研究開発予算
28
人文科学
23.6%
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 26〉
民間企業研究開発実行費(名目価値)の推移(1995 年∼2002 年)
225
200
億ユーロ
175
150
125
100
75
50
25
2002年*
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
0
(注)*は推定値
(出所)フランスの研究開発予算
民間企業研究開発実行費(実質価値)の推移(1995 年∼2002 年)
(注)*は推定値
(出所)フランスの研究開発予算
29
2002年*
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
200
195
190
185
180
175
170
165
160
155
150
1995年
億ユーロ
〈図 27〉
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
2002 年には、民間企業の国内研究開発実行費は
合は年々増加し、全企業に占める中小企業の研究
名目価値ベースで 207.82 億ユーロ(確定値)で国
者の割合は、1983 年の約 14%に対し、1999 年には
全体の国内研究開発実行費の 63.2%を占めた。民
約 30%を占めるに至っている。
間企業の国内研究開発実行費は実質価値ベースで
2001 年に民間企業で研究開発活動に従事した従
190.45 億ユーロであり、前年よりも 1.8%減少した。
業者数は、フルタイムに専従換算すれば 185,500
2001 年に、企業及び産業技術センターの 5,000
人で、2000 年の 180,986 人より 2.5%増加した。こ
以上が研究開発に従事した。このうち、研究開発
のうち、研究者及びエンジニアの数、2001 年には
負担費でトップの 100 社・センターが全部の研究
88,500 人となり、前年よりも 6.7%増加し、他の
開発費の 66%を負担し、全体の研究者の 56%を使
従業者数の増加率(−1.1%)を上回る。
用する。研究の大部分は大企業で行なわれている
が、中小企業(従業員数 500 人以下)の占める割
〈図 28〉
〈図 28〉に 2001 年の民間企業研究開発費の分
野別比率を示す。
民間企業研究開発費分野別比率(2001 年)
207.8 億ユーロ
他のサービス分野
6.3%
自動車
14.7%
他の産業分野
20.4%
テレビ・ラジオ・通信
機器
12.9%
機械設備
4.6%
製薬
12.1%
通信・運搬システム
6.0%
化学
6.2%
航空・宇宙
10.3%
医療・精密・光学機械
6.4%
(出所)フランスの研究開発予算
30
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
2001 年の民間企業研究開発費のうち、自動車、
あり、そのうち 81.6%(同 79.6%)は民間企業自
テレビ・ラジオ・通信機器、製薬、航空・宇宙、
らが負担している。政府は、研究契約(民生・国
医療・精密光学機械の5業種で全民間企業研究開
防双方での航空・宇宙、原子力、情報通信・エレ
発費の 56.4%、企業従業者数の 51.8%を占めている。
クトロニクス分野等の大規模プログラム)及び補
2001 年には 2000 年と同様に、自動車分野が第 1
助金の形で 9.8%(同 11.4%)の 20.3 億ユーロ(同
位となり、研究開発費は前年よりも 5%増加した。
22.0 億ユーロ)を負担しており、残りの 8.7%(同
増加要因は大手メーカーが研究開発活動を強化し
9.0%)は外国や国際機関から支出されている。
たことにある。第 2 位はテレビ・ラジオ・通信機
公的支出の 20.3 億ユーロのうち、国防関係が
器となった。この分野は電話及び電子部品工業を
14.3 億ユーロ(70.4%)を占めており、民生関係
含み、1998 年及び 1999 年に停滞した後、2000 年
は 6.0 億ユーロ(29.6%)である。
は前年よりも 12.8%増加し、2001 年は 2000 年より
も 3%減少した。なお、第 4 位の航空宇宙分野は前
〈図 30〉に、2001 年の分野別の民間企業の研究
開発費及びこれに占める政府負担分を示す。
年よりも 11%減少した。
4.3.2
産業界の研究支援に対する政府支援
〈図 29〉に民間企業の研究開発費の資金負担元
別の比率を示す。
2001 年に民間企業で実施された研究開発総額は
207.8 億ユーロ(2000 年は
193.5 億ユーロ)で
〈図 29〉
民間企業研究開発費の資金負担元別比率(2001 年)
207.8 億ユーロ
外国機関支出
8.7%
政府国防支出
6.9%
政府民生支出
2.9%
民間企業自己負担
81.6%
(出所)フランスの研究開発予算
31
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 30〉
分野別の民間企業研究開発費及び政府負担分(2001 年)
207.8 億ユーロ
x100万ユーロ
0
自動車産業
テレビ・ラジオ・通信機器製造業
製薬産業
航空・宇宙製造業
医療・精密・光学機械製造業
化学産業
運輸サービス
機械設備製造業
情報処理サービス
エネルギー
電気機械製造業
ゴム・プラスティック
エンジニアリング
食品産業
金属加工業以外の金属産業
農林水産業
OA・情報処理機器製造業
その他の製造業
金属加工業
窯業
繊維・衣類・皮・靴産業
造船・陸上輸送
建設材料
建築・土木業
木材・紙・印刷・出版業
5 00
1000 1500 2000 2500 3000 3500
3066
11
2678
292
2517
16
2149
897
1339
334
1 286
22
1237
8
969
276
702
53
688
21
681
9
665
3
608
82
351
9
293
8
291
32
276
14
220
3
161
4
160
3
116
2
95
4
88
3
84
1
63
企業研究開発費
3
(出所)フランスの研究開発予算
32
政府負担分
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 31〉に、民間企業の研究開発費のうち政府
5.主要分野の研究開発施策・動向
が負担する研究開発費の分野別内訳を示す。 航
〈図 32〉に 2003 年の民生研究開発予算(経常
空・宇宙製造業への政府の研究開発費負担が一番
大きく、政府負担分全体の 42.5%を占めている。
支出+プログラム認可)の分野別割合を示し、
〈図
これに次いで、医療・精密・光学機械製造業が
33〉に分野別の 2001 年、2002 年及び 2003 年の予
15.8%、テレビ・ラジオ・通信機器製造業が 13.8%、
算(経常支出+プログラム認可)を示す。
機械設備製造業が 13.1%で、これらの4つの分野
で政府負担分全体の 85.2%を占めている。
〈図 31〉
民間企業に対する政府研究開発費の分野別内訳(2001 年)
20.3 億ユーロ
製薬産業
0.8%
OA・情報処理機
器製造業
0.7%
自動車産業
0.5%
化学産業 エネルギー
1.0%
1.0%
その他
2.8%
農林水産業
情報処理サービ1.5%
ス
2.5%
エンジニアリング
3.9%
航空・宇宙製造業
42.5%
機械設備製造業
13.1%
テレビ・ラジオ・通
信機器製造業
13.8%
医療・精密・光学
機械製造業
15.8%
(出所)フランスの研究開発予算
33
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 32〉
民生研究開発予算の分野別割合(2003 年)
93.82 億ユーロ
その他
3.2%
発展途上国技術
協力
2.0%
エネルギー
7.2%
生命科学
24.5%
運輸・航空・材料・
プロセス
8.7%
情報通信技術
9.4%
宇宙
14.6%
人文・社会科学
9.4%
数学・物理学・化
学
11.4%
環境
9.8%
(出所)フランスの研究開発予算
〈図 33〉
分野別 の 2001 年、2002 年及び 2003 年の予算推移(単位:100 万ユーロ)
0
500 1000 1500 2000 2500
2176
2325
2297
生命科学
1427
1396
1368
宇宙
1003
1053
1065
数学・物理学・化学
エネルギー
550
577
672
運輸・航空・材料・プロセス
882
929
818
環境
853
855
919
人文・社会科学
838
825
879
情報通信技術
772
795
878
発展途上国技術協力
161
167
184
その他
117
107
302
2001年
2002年
(出所)フランスの研究開発予算
34
2003年
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
5.1
生命科学
る。
• 国立シーケンスセンター(CNS)は、大学研究
2003 年の生命科学に関する研究開発費(経常支
界、民間研究界が要求する大規模な配列解析
出+プログラム認可)は 22.97 億ユーロで、前年
のニーズ(ヒト、コメ、フグのゲノムの国内
よりも 1.2%減少し、民生研究開発予算の 24.5%を
及び国際プログラム、ヒト及びマウスのフ
占める。
ル・レングスcDNA収集作成、テトラオドンゲ
2003 年の研究開発費を研究機関別に見ると、国
ノムの配列解析等)に対応する研究を実施す
立科学研究センター(CNRS)が生命科学に関する
る。
研究費全体の 28.2%を占め、以下、国立農業研究
• 国立遺伝子センター(CNG)のミッションは、
所(INRA)が 19.5%、国立衛生医学研究所(INSERM)
遺伝病の遺伝子確認、公的研究機関の遺伝研
が 18.6%となっている。 原子力庁(CEA)、国立研
究の支援、公的研究機関と民間企業のパート
究産業利用推進局(ANVAR)、原子力安全放射線保
ナーシップの拡大にある。
護 研 究 所 ( IRSN )、 フ ラ ン ス 海 洋 開 発 研 究 所
• 情報資源センター(CRI)の研究は、解析され
(IFREMER)が生命科学に関する研究開発費 の
たゲノム配列に対してアノテーション(注釈)
6.9%を負担する。
をつける業務を中心としている。
この分野に関係する非営利研究所(または財団)
2004 年は、2003 年の政策を継続し、フランスの
が生命科学に関する研究開発費の 1.05 億ユーロ
国際競争力が拡大できる領域を支援する予定で、
を負担しているが、この金額は政府から受けてい
バイオインフォマティックス、ナノバイオテクノ
る予算にほぼ一致する。
ロジー、プロテオミックスあるいは動物のモデル
省分の出資は 4.36 億ユーロ(2002 年は 4.22 億
等ポストゲノム技術、遺伝及び細胞治療が優先的
ユーロ)で、研究省は 3.64 億ユーロを負担した。
分野になる。これらのテーマは 2004 年に、研究省、
産業省、厚生省、農業省、国防省が予定している
(1) ゲノム
研究プロジェクト募集の主なテーマである。欧州
ゲノムに関する研究は、
「ゲノミック」という研
連合が推進する第 6 次フレームワーク計画の範囲
究促進プログラムにより、生命科学分野に充てら
内で、他の欧州研究とのパートナーシップが求め
れる科学補助金(FNS)の大部分を占めている。ま
られている。
た、生命科学分野に充てられる研究技術補助金
(FRT)のうち「植物ゲノム」及び「ヒトゲノム」
(2) クロイツフェルト・ヤコブ病及びプリオン
のネットワークが最も多額の助成を受けている。
クロイツフェルト・ヤコブ病及びプリオンに関
2000 年のゲノム研究には FNS から 0.50 億ユーロ、
する研究プログラムには、FNS から 2000 年及び
2001 年には 0.69 億ユーロが確保され、2002 年に
2001 年に 305 万ユーロ、2002 年に 808 万ユーロが
は 0.76 億ユーロ、2003 年に 0.65 億ユーロが充て
充当された。また 2001 年に動物関係の設備及びイ
られた。このプログラムには、ゲノム配列解析、
ンフラには 2,134 万ユーロの予算が使用された。
ゲノム機能解析、バイオインフォマティックス等
2003 年に FNS からの予算は 60 万ユーロであった。
のテーマがある。
プリオンに関する研究促進プログラムは、伝染エ
ゲノムに関する研究の主な活動は次の通りであ
ージェントの生物学的基礎研究、プリオン伝染病
35
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
の病理生理学及び疫学、狂牛病危機の社会的観点
BRGM 及び INRA を合わせて、予算の約 4 分の 1 を
を中心にしており、新規検出法の開発、治療方法
占めている。
の開発、焼却以外の新たな肉骨粉処分法の開発等
に力点がおかれている。
CNES は、得られた知識を自然資源の理解・保護
の活動に普及するために、年間に 4,700 万ユーロ
を使用する。政府と CEA の間で結ばれた 4 年間の
(3) 医学技術
医学技術プログラムの1つの目的には、在宅看
取り決めにおいては、代替エネルギーに関する研
究開発が優先項目とされた。ADEME 及び INRETS は、
護、遠隔医療等がある。本プログラムでは公的研
公害、温室効果ガスの発生抑制、クリーンな交通
究機関、民間企業、医学界の三者が協力して、新
手段についての研究を実施する。2001 年∼2006 年
技術及び新製品の開発を推進している。遠隔診断
の第3次陸上輸送技術イノベーション研究開発プ
に関する活動には、医療画像に関する技術、診断
ログラム(PREDIT)の中心テーマは、エネルギー・
や治療に利用する情報の伝送技術、画像及び信号
環境に設定された。
多くの研究分野で環境の観点が考慮されている
の処理に関する新技術、生物化学と光学を融合し
たセンサー及びバイオ機能システムの開発がある。
ことから、研究省は大学及び他の関係省庁と協力
2003 年には、このプログラムに対して、保健衛
している。2003 年 12 月現在、直接、また主に環
生技術の研究促進プログラム(ACI)は FNS から
境に関係する FNS から6つの研究促進プログラム、
183 万ユーロ、FRT から 152 万ユーロを支出され、
FRT から3つの研究・技術イノベーション・ネッ
保健衛生技術ネットワークは FRT から 610 万ユー
トワークが出資されている。
環境分野においては、気候変動及び温室効果、
ロを支出された。
水等の自然資源の保全、自然災害の予防、人工衛
5.2
環境・エネルギー
星による地球観測データを利用した地球に関する
研究などが主な研究テーマである。
環境・エネルギーに関する 2003 年の研究開発費
(経常支出+プログラム認可)は、環境が 9.19 億
(1) 環境及び衛生の研究促進プログラム
ユーロ、エネルギーが 6.72 億ユーロ、合わせて
この研究プログラムは国立衛生医学研究所
15.91 億ユーロ(前年比 11.1%増)であり、民生研
(INSERM)に創設され、2003 年には、特に人間に
究開発予算の 17.0%を占める。
よる環境変更、衛生に及ぼす影響というテーマを
環境分野の研究は、以下の方針に基づいて実施
中心とした研究プロジェクト募集を行った。
されている。
• 地球系の保全に係わる技術開発、環境に関す
る科学技術知識の進歩
2003 年の予算は 90 万ユーロで、INSERM が 40 万
ユーロ、研究省が 40 万ユーロ、CNES が 10 万ユー
ロを負担した。
• 人間活動による経済及び社会への影響
• 環境保護に関する規則、法律の制定のために
(2) 大陸の生物生存・プロセス及びモデル化の促
必要な科学データの収集
進プログラム
環境分野においては CNRS が予算の 28.5%、次い
で IRSN が 21.8%を占める。
IFREMER、INSERM、IRD、
2003 年の春に創設され、次の 3 つのテーマに関
係する。
36
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
①汚染物質のエコトキシコロジ及びエコダイナ
②方法及びセンサーの判断、バリデーション
ミック
③安全検出センサー、ソフトウエアーを利用す
②大陸バイオスフェアの働き方及びダイナミッ
るセンサーの信頼性、小型化
ク
③水文学
2003 年の予算は 275 万ユーロであり、そのうち
150 万ユーロは FNS である。
2003 年の予算は 580 万ユーロであり、そのうち
350 万ユーロは研究省負担である。
(6) 自然危険及び気象変更
2000 年に創設されたこの研究プログラムは2つ
(3) 遺伝子組み替えの影響の研究促進プログラム
のテーマを含む。
①地震、火山爆発、崩れ等の現象理解、リスク
このプログラムは 2000 年に創設され、152 万ユ
の管理
ーロの支出を受けたが、2001 年に中止となった。
②人間的な活動による気象システム変動への影
2002 年に再び研究が始まり、2003 年の予算は 115
響
万ユーロであった。プログラムの目標は新時代遺
2003 年、このプログラムは FNS から 210 万ユー
伝子組み替え物質の特性化、食品への影響、仕様
書作成などである。
ロの支援を受けた。
(4) 汚染防止・汚染除去/新規方法及びプロセスの
(7) 「水・環境の技術」の研究・技術イノベーシ
研究促進プログラム
ョン・ネットワーク
この研究プログラムは 2003 年に開始された。研
究のテーマは、次のとおりである。
水と環境に関する分野の研究は、FRT の支援対
象である水・環境技術に関する研究・技術イノベ
①大気の汚染物質を採集し、処理して、再び利
ーション・ネットワークを基盤としている。優先
用するために既に存在する方法の改善あるい
テーマは、水・固相のインターフェース、自然環
は新規方法の開発
境における物質の吸収、地下に関する地理物理学
②汚染源(エンジン、化学プロセス、エネルギー
及び熱発生システム等)の管理
的研究等である。ネットワークの 2003 年の予算は
144 万ユーロであった。
③限られた場所(トンネル、地下鉄、駅等)で、
化学物質、微粒子の移動
(8) 「地球・宇宙」研究・技術
2003 年の予算は 340 万ユーロであり、そのうち
100 万ユーロは FNS である。
研究省は、2000 年 10 月に宇宙からのデータを
利用して洪水の予測及びフォロー(PACTES)、レー
ダー・インターフェロメータによる地殻の沈降観
(5) 新規分析方法及びセンサーの研究促進プログ
ラム
この研究プログラムは 2002 年に開始した。研究
測(RESUM)に関する研究・技術イノベーション・
ネットワークに対し、2000 年には 381 万ユーロ、
2001 年及び 2003 年には 267 万ユーロを支出した。
のテーマは、次のとおりである。
一方、エネルギーに関する研究及び調査は、予
①試料採集方法、分離方法、検出方法を含み、
新規分析方法の開発
算ベースで 94%が CEA、2%が ADEME、1%が ANVAR
37
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
で行なわれている。2003 年の研究開発費が 2002
②エネルギー管理(電気、熱、水素)
年比で 7.5%増加しているが、これは本分野にフラ
③クリーンプロセス(燃焼、産業プロセス、熱
ンス石油研究所(IFP)の活動を関連づけられたこ
交換機、住宅、廃棄物、温室効果ガス)
とによる。
④経済・社会面(規格、法律、産業所有権)
2001 年 11 月に「原子力の将来」について開催
されたシンポジウムにおいて、研究大臣はフラン
2003 年のこのプログラムの予算は 340 万ユーロ
で、そのうち 100 万ユーロは FNS である。
スの現状について述べ、エネルギーにおける政策
方針を説明した。原子力は世界の電力消費量の約
(2) 燃料電池の研究・技術イノベーション・ネッ
17%を占めるが、この割合は欧州では 35%、フラ
トワーク
ンスは 78%である。水力は電力消費量の 12%であり、
このネットワークは自動車推進、エネルギー発
フランスの全電力消費量の 90%が非化石エネルギ
生(電気及び熱)、2 つの分野への燃料電池利用を
ーに由来している。
目指し、1999 年 4 月に創設された。
2001 年 1 月に政府と CEA の間で結ばれた 4 年間
このプログラムのテーマは、上空及び陸上双方
の取り決めの研究テーマは、燃料電池、太陽光発
からの地殻変動の測定、高分解能の地中観測、都
電(セル効率向上、薄膜の利用)、風力発電(既存
市に関する地理物理学、洪水のメカニズム等であ
技術の高度化、オフショア設備)、バイオマス開発
る。
等を対象とする。なお、フランス環境研究所が発
表したレポートによると、2010 年頃の国内電力消
2003 年にはこのプログラムに対し、FRT から 317
万ユーロが支出された。
費量のうち、代替エネルギーの割合は 15.5%にし
かならないと予測されており、原子力はフランス
5.3
宇
宙
のエネルギー政策において重要な役割を果たし続
宇宙分野におけるフランスの取り組みは、ESA
けると見られている。
放射性廃棄物に関する研究テーマは、あらゆる
(欧州宇宙機関)のプログラムへの参加と、CNES
種類の放射性廃棄物の分類及び抽出であり、2001
が担当する国内の宇宙プログラムに大別される。
年にマイナ・アクチノイドの抽出のフィージビリ
2003 年の宇宙を対象とした研究は、民生研究開
テ ィを確認し、次の研究は物質変換によるマイ
発予算(経常支出+プログラム認可)のうち 13.68
ナ・アクチノイドの処理を中心にしている。
億ユーロ(14.6%)が充てられ、2002 年よりも 2.0%
FNS からエネルギー関係の研究促進プログラム
1つ、FRT から研究・技術イノベーション・ネッ
減少した。このうち 6.40 億ユーロが ESA への支出
分である。
トワーク1つが出資されている。
(1) 科学分野
2003 年 6 月 2 日に火星探査の Mars Express が
(1) エネルギー研究促進プログラム
2002 年 4 月に開始したこのプログラムの主要な
研究テーマは次のとおりである。
①新規エネルギー資源(バイオマス、太陽、地
熱、水素、燃料電池)
打ち上げられた。1997 年から土星及び土星の衛星
であるタイタンの観測計画(ESA と NASA が協力す
る Cassini/Huygens 計画)が進行中で、観測開始
は 2004 年に予定されている。Ariane 5 号の開発
38
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
問題のために、2003 年に打ち上げる予定であった
型衛星に搭載する、光学及びレーダー技術を用い
彗星の尾の研究をめぐる Rosetta ミッションは延
た 新 観 測 シ ス テ ム の 開 発 ( PLEIADES −
期された。
COSMO/SKYMED の共同プログラム)を開始した。気
欧州諸国が参加する太陽系以外の星の観測衛星
象分野では、ESA と EUMESTAT の協力により、2002
(COROT)の開発は最終段階に入り、衛星の打ち上
年 8 月 28 日に第 2 世代の静止気象衛星(MSG-1)
げが 2005 年末に予定されている。
を打ち上げた。 また、同じく ESA と EUMETSAT の
CNES は、HUBBLE の後継として 2010 年に打ち上
協力により、EPS・METOP の気象学プログラムの一
げが予定されている宇宙望遠鏡 NGST 計画(NASA)
環で、極軌道に乗せる衛星が 2005 年に打ち上げら
への欧州からの参加を担当している。
れる予定である。
宇宙技術を利用した地球観測及び環境保護の分
2002 年 2 月 28 日に地球環境、気候の解析を目
指している ENVISAT 衛星が打ち上げられた。
野においては、研究省が 2000 年 10 月3日に「地
EOEP では、2000 年から 2006 年の間に、3 つの
球・宇宙」という研究・技術イノベーション・ネ
研究ミッションが実施される。2006 年に安定条件
ットワーク(R2IT)を設置した。公的機関(CNES、
での海流及び重力場の研究を対象とした基本ミッ
IFREMER 、 フ ラ ン ス 気 象 局 等 ) 及 び 民 間 企 業
シ ョ ン ( GOCE )、 2004 年 に 氷 山 に 関 す る 研 究
(Alcatel Space Industries 社、Spot Image 社、
CRYOSAT、2006 年に海洋及び陸上水面の塩分濃度
等)が本ネットワークの評議会のメンバーとなっ
に関する研究 SMOS というミッションが予定され
ている。研究・技術イノベーション・ネットワー
ている。
クの研究目標は、宇宙技術による地球観測データ
米 ・ 仏 の ア ル テ ィ メ ト リ ッ ク 衛 星 Topex
(公害、自然災害等)、鉱物学、岩石学、地形学、
-Poseidon の後継機である Jason I は 2001 年 12
水流学、氷河学等に活用できる地球観測データの
月 7 日に打ち上げられ、はじめてミニ衛星用の新
収集にある。
しいタイプの Proteus プラットフォームを利用し
宇宙通信は宇宙の第一の利用分野で、アリアン
た。Jason I の後継機である Jason II は CNES、
による打ち上げが活動の中心になる。本分野の活
EUMESTAT、NASA 及び NOAA の協力により開発され
動としては、ARTEMIS 衛星が挙げられる。なお、
ている。
情報通信技術の発展に伴うマルチメディア・サー
CNES は 2004 年に打ち上げる予定のマイクロ衛
ビス広帯域通信と世界をカバーする個人移動体通
星 DEMETER(地震によるイノスフェリック摂動の
信システムが 2 大テーマとして期待されてきたが、
研究)及び PARASOL(大気反射のかたより、異方
現時点ではニーズが追いついておらず、この2大
性の研究)を開発している。
テーマの進展には時期尚早の感がある。
位置確認のデータ収集に関する Argos プログラ
(2) 宇宙利用
ムでは、CNES が装置を開発し、NOAA がプラットフ
衛星画像分野においては、観測装置 Végétation
ォーム、組立及び打ち上げを担当する。2005 年か
2 を搭載する観測衛星 SPOT5 号が 2002 年 5 月 4 日
ら NASDA(ADEOS-2)及び EUMETSAT(METOP の 3 つ
に打ち上げられた。 2001 年 6 月に CNES と国防省
の衛星)がこのプログラムに参加する。CNES の子
は、イタリアの宇宙機関(ASI)と契約を結び、 2007
会 社 で あ る CLS 社 が シ ス テ ム を 管 理 す る 。
年末までに打ち上げる PLEIADES という新型の小
INMARSAT が担当する COSPAR-SARSAT のプログラム
39
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
は進行中である。機器を製造する主要 4 か国(米
5.4
数学・物理学・化学
国、カナダ、ロシア、フランス)の他に 22 か国が
参加する。プログラムの目標はすべての車の位置
数学・物理学・化学の分野は、2003 年の民生研
確認、救助にある。位置確認・ナビゲーションシ
究開発予算(経常支出+プログラム認可)の 11.3%
ステムにおいては、GNSS1(Global Navigation
(10.65 億ユーロ)を占め、2002 年よりも 0.2%増
Satellite System)の枠組みで、ESA 及び欧州連
加した。政府は、「学際プログラム」の支援を中心
合が GPS システムを補完する CNES/DGAC(民生航
にし、数学の分野においては 2003 年に新規の「数
空局)のコンセプトを選択した。これは 2004 年に
学の新インターフェース」の研究促進プログラム
稼動する予定である。CNES は ESA の協力を得て
を創設した。プログラムの目標はあらゆる分野(情
2008 年に打ち上げ予定の GALILEO 衛星システムの
報通信、人文・社会、環境、生命科学)で数学の
研究を開始している。
利用を推進することにある。2003 年の予算は 100
万ユーロであった。また、、この傾向を反映して、
(3) 宇宙輸送システム
衛星テレビ、マルチメディア、文字放送の利用
FNS の「物理学・化学・エンジニア科学」分野への
出資(プログラム認可ベース)は 2002 年の 690 万
増加により宇宙通信の応用分野は著しく拡大して
ユーロから 2003 年には 770 万ユーロへ増額された。
おり、競争が激しくなった市場においてのアリア
数学、物理学、化学分野における FNS の主要な学
ン 5 号の競争力を保つため「アリアン 5 号
際研究促進プログラムは「物理学・化学・生物学の
Evolution」の開発が継続されている。2002 年 12
インターフェース」(2003 年の予算は約 270 万ユ
月 11 日のアリアン 5 号の第 8 番飛行の失敗のため、
ーロ)、「新規分析方法及びセンサー」(2003 年の
新クライオ・ステージの ESC-A のバリデーション
予算は 275 万ユーロ)、「分子及び治療方法」(2003
は遅くなるが、研究開発のプログラムは予定どお
年の予算は 550 万ユーロ)等である。
りに続行する予定である。2003 年 5 月 27 日の欧
州宇宙機関委員会の会議の際、再点火可能な第 3
5.5
運
輸
段の開発、推進力の増加、10 トンのコンフィグレ
ーションの保持、ローコストダウンという決定が
2003 年に運輸・航空・材料及びプロセスの分野
なされた。又、ロシアのソユーズ打ち上げ機を利
は、民生研究開発予算(経常支出+プログラム認
用するために、フランスの海外県であるギアナに
可)の 8.7%(8.18 億ユーロ)を占め、2002 年よ
打ち上げ設備が設置された。
りも 11.9%減少した。このような推移をたどった
国際的な宇宙ステーション・プログラムは、1995
のは航空輸送に関する研究開発費の減少、製造企
年の ESA 会議の際、欧州の参加が決定された。こ
業の研究開発への ANVAR の補助金の減少、陸上輸
のプログラムでは、COF の軌道研究所、ロボット
送に関する研究開発予算の増加等と考えられる。
アーム、観測ドーム及び 2005 年 8 月にアリアン 5
号に乗せる予定の自動ロジスティック・トランス
(1) 民生航空
民生航空分野における研究は、民間航空機製造、
ファー・ビークル ATV の開発等が行われている。
空中ナビゲーション、航空機の飛行証明及び安全
性の3分野に分かれている。2003 年の民生研究開
40
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
発予算は、プログラム認可ベースで 2.71 億ユーロ
している。
(前年より−17.6%減少、うち 120 万ユーロは航
空教育・技術管理局(SFACT)に支出)、支払予算
(2) 陸上輸送
ベースで 2.95 億ユーロ(前年比 1.0%増、同 100
陸上輸送分野での研究開発活動は、陸上輸送技
万ユーロ)である。加えて、民生研究開発予算と
術イノベーション研究開発プログラム(PREDIT)
は別に民間航空追加予算(BAAC)から、2003 年に
に集約され、1990 年から実施されている。PREDIT
航空機の飛行証明及び安全性の研究に対して
は5年間の計画であり、PREDIT1(1990∼1994)、
1,500 万ユーロが支出される。
PREDIT2(1996∼2000)を終え、現在は第 3 次計
民間航空機製造分野においては、民生研究開発
予算は、予算の前払い、補助金の支出、テスト手
画である PREDIT3(2001∼2006)が開始されたと
ころである。
段への投資により、開発計画の産業的、商業的な
PREDIT1の予算は 3.66 億ユーロで、新時代の
リ ス クをカバーしている。これまでに、General
TGV(高速列車)、安全性の高い交通手段、クリー
Electric 社と協力した SNECMA 社の大型エンジン
ン・省エネな交通手段、列車管理等の大規模なプ
に関する GE90 プログラム、Eurocopter 社の EC165
ロジェクトを対象としていた。
型ヘリコプター(0.8 トン、乗客 10∼15 人)プロ
PREDIT2の予算は 3.00 億ユーロで、大量輸送シ
グラム、エアバス A330−500/600 プログラムが終
ステムのサービス品質向上、新たな交通手段の開
了した。 また SNECMA 社のエンジンを搭載する
発、安全性と効率性の向上、運輸関連事業者のパ
A380 号エアバスのプロジェクトが活発に支援され
フォーマンスの向上を目的として、4 つの研究開
ている。
発・実験分野に分けて実施された。
2000 年に設置された「超音速旅客機に関する航
PREDIT3は 2001 年に開始され、最初のプロジェ
空研究」の研究・技術イノベーション・ネットワー
クト募集は 2002 年初めに行なわれた。PREDIT3の
クの目標は、将来の超音速航空を開発するため、
目標として、輸送システムの安全性の向上、人及
科学プロジェクトの範囲内で研究者、事業家、公
び物の移動性の向上、環境性の向上という 3 つの
務員等が協力することである。研究テーマは、エ
目標を明らかにした。さらに、この目標を達成す
ンジン、形の最適化、構造コンセプト及び新素材、
るための研究テーマとして、①国土及び移動性、
公害及びノイズ減少で、年間の FRT 出資は約 225
②物の運搬、③環境・エネルギー、④システムの
万ユーロである。
安全性、⑤クリーン・省エネ・安全な交通手段、
CNS ( Communications 、 Navigation 、
⑥インテリジェントな交通手段の 6 つを設定した。
Surveillance)システムにおける衛星の役割は大
PREDIT3は、フランス国内のプログラム及び欧州
きくなり、航空ナビゲーション分野では宇宙シス
のプログラム(第 6 次フレームワーク計画等)に
テムが陸上システムにとって代わる方向にある。
基づいて実施される。
CNES は、衛星による欧州の GALILEO ナビゲーショ
ン・システム及び ATN(Air Telecommunication
5.6
人文・社会科学
Network)の開発に参加し、また、民生航空機構
2003 年の人文・社会科学分野の研究開発費は、
(OACI)が推進する FANS(未来航空ナビゲーショ
ン・システム)に関する衛星通信システムを開発
民生研究開発予算(経常支出+プログラム認可)
41
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
ネットワーク(RIAM)
の 9.4%(8.79 億ユーロ)を占め、2002 年よりも
6.5%増加した。この分野の研究開発の 42%が CNRS
である。2002 年の情報通信分野の R2IT の FRT 予
で行われている。 研究省は FNS の研究促進プログ
算は 2001 年と同様で 3,811 万ユーロで、2000 年
ラム(ACI)による助成(2002 年は 890 万ユーロ、
よりも約 50%も増加した。2003 年の情報通信に関
2003 年は 920 万ユーロ)及び研究手当の支給によ
係する FRT の補助金の主な配分は次の通りである。
り人文・社会科学関係の研究を支援している。
5.7
情報通信
• RNRT:
1,383万ユーロ
• RMNT:
588万ユーロ
• RNTL:
968万ユーロ
• RIAM:
140万ユーロ
2003 年の情報通信分野(エレクトロニクス分野
研究省、CNRS、INRIA、CEA、CNES、フランス電
を含む)の予算(経常支出+プログラム認可)は
力公社(EDF)からなる公益団体(GIP)は、1993
8.78 億ユーロで、2002 年よりも 10.4%増加し、民
年に創設された技術・教育・研究用通信ネットワ
生研究開発予算の 9.4%を占める。本分野の予算は
ーク網(RENATER)を拡大する予定である。
2000 年から 2001 年にかけて 15.7%増加し、2001
なお、FRT を担当する研究省以外では、産業省、
年から 2002 年にかけて 3.0%増加した。主な強化
文化省(RIAM ネットワーク)、ANVAR も、ネットワ
対象としては、国立情報処理・自動化研究所
ークに対して予算を提供している。
(INRIA)の強化・拡大と、FNS の助成対象となる
① 通信研究ネットワーク(RNRT)
研究促進プログラムの予算の増加が挙げられる。
2003 年に通信研究ネットワーク(RNRT)の
本分野の全体の研究予算のうち、22.6%を CNRS、
第7次プロジェクト募集が行われた。対象プ
13.3%を CEA、10.1%を INRIA が占めている。
ロジェクトのテーマ領域は、ネットワークに
2003 年の情報通信関係の研究・技術イノベーシ
関する光学及び周波数技術、信号処理及び関
ョン・ネットワーク(R2IT)の FRT 予算は 4,503
連IC、通信システム及びネットワークのア
万ユーロで、研究促進プログラム(ACI)の FNS 予
ーキテクチャー、通信ソフトウエア、マン・
算は 1,470 万ユーロとなった。
マシン・インタラクションの 5 つであった。
2003 年の優先研究テーマは不均一管理、安全
(1) 研究・技術イノベーション・ネットワーク
確認、
新規サービスの開発の 3 つである。2003
(R2IT)
年に 103 件の研究プロジェクトが提出され、
情報通信関係の R2IT は 4 つ設置されている。
2002 年よりも 25%の増加である。
① 1998 年に設置された通信研究ネットワーク
(RNRT)
②
② 1999 年に設置されたマイクロ・ナノテクノ
マイクロ・ナノテクノロジー・ネットワー
ク(RMNT)
ロジー・ネットワーク(RMNT)
1999 年に RMNT が設置されて以降、39 のプ
③ 2000 年に設置されたソフトウエア技術ネッ
ロジェクトが採択された。そのうち、27%の
トワーク(RNTL)
プロジェクトがマイクロエレクトロニクス、
④ 2001 年に設置されたオーディオビジュア
20%がオプトエレクトロニクス、17%がマイ
ル・マルチメディア研究イノベーション・
クロコンポーネントの分野に属する。
42
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
一方、RMNT はナノテクノロジーの基礎研究
関係の 5 つの主要な研究所(CNRS 4 つ、CEA 1
れた。また、2002 年にはナノサイエンスの研究促
進プログラムも開始した。
①インフォマティック・安全プログラム
つ)を集約し、国内全体のプロジェクトを支
本プログラムの目標は、データ・通信のプ
援するために知識、情報、設備を提供する。
2003 年に、このセンターは FRT から 1,300
ライバシー、安全性、認証を可能にするシス
万ユーロを受け、2004 年に 3,000 万ユーロを
テムの解析及び設計であり、インターネット
受ける予定である。
と電子商取引の発展に大きな役割を果たすこ
とが期待されている。この ACI の 2003 年の予
算は 535 万ユーロであった。
③ ソフトウエア技術ネットワーク(RNTL)
RNTL は 2000 年に設置された。フィンラン
②大量データプログラム
ドと協力した 2002 年のプロジェクト募集の
テーマは、リアルタイム及びクリティックソ
あらゆる分野における情報処理の利用拡大
フトウエア、インターネットの個人・集団的
につれて、データの量が大幅に増加する。プ
な情報システム、個人・システム・環境の新
ログラムの目標はこの大量データの獲得、ス
規なインターフェース、新規なオブジェクト
トレージ、伝送、処理、モデル化等にある。
の新コンセプト等であった。2003 年のプロジ
この ACI の 2003 年の予算は 540 万ユーロであ
ェクト募集対象の中心テーマはプロアクテ
った。
ィブ・インフォマティックスである。
③ナノサイエンスプログラム
④
このプログラムは 2002 年に設置され、2003
オーディオビジュアル・マルチメディア研
年の予算は 1,600 万ユーロである。2003 年に
究イノベーション・ネットワーク(RIAM)
2001 年 2 月に設置された RIAM の優先テー
行った募集プロジェクトの主要な研究テーマ
マ領域は、コンテンツの創造と作成、大規模
はナノメトリック・オブジェクトの製造、特
データベースのサーチ及び ナビゲーション
性化、扱い、エレメンタリ・コンポーネント、
のツール、オーディオビジュアル・マルチメ
量子情報、ナノオブジェクトの組織、組み立
ディア・オブジェクトの保存及び提供の 3 つ
て、回路のアーキテクチャー、ナノ材料、ナ
である。2001 年 2 月から 2003 年 4 月まで、
ノバイオサイエンス等である。
提案された 146 プロジェクトのなかから 59
が選択された。
(2) 研究促進プログラム(ACI)
2000 年の暗号、2001 年の情報資源とデータのグ
ローバリゼーションの後、2003 年にはこの 2 つの
研究促進プログラムのテーマ、研究結果を対象と
した「インフォマティック・安全」、「大量データ」
という新規の研究促進プログラムの2つが創設さ
43
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
6.研究開発支援施策
されている。科学補助金(FNS)は、公的研究機関、
高等教育機関及び非営利機関が直接の助成対象で
〈図 34〉はイノベーション企業の設立、既に存
在しているイノベーション企業の研究プロジェク
あるが、研究技術補助金(FRT)では、民間企業が
主な助成対象となる。
ト、技術向上等を支援する主要な補助及び企業、
経済・財政・産業省は国立研究産業利用推進局
またはイノベーション企業に投資する機関と個人
(ANVAR)の大部分の予算を負担している。国立研
に対する主要な優遇措置を示す。
究産業利用推進局(ANVAR)は、イノベーション、
政府は民間企業における研究開発を支援するた
中小企業への支援等を推進している。
めに、研究省、経済・財政・産業省、国防省等に
税制面では、我が国の増加試験研究税制に相当
おいて予算を確保するとともに、研究開発投資に
する CIR(研究開発投資に対する優遇税制措置)
対する優遇税制措置(CIR)等により民間企業の研
がある。
究開発を促進している。
ベンチャー促進関係では、1999 年 6 月にイノベ
研究省は、科学補助金(FNS)及びその支出対象
ーション・研究法が制定され、公的研究機関、高
である研究促進プログラム(ACI)により、優先技
等教育機関の研究者が一定期間公務員としての身
術領域における基礎研究を促進するとともに、研
分を留保したままベンチャー企業を設立すること
究技 術補助金(FRT)及びその支出対象である研
が可能となった。これは、公的研究成果の民間へ
究・技術イノベーション・ネットワーク(R2IT)
の技術移転や事業化に関する近年の施策の中で特
により、産学官連携を通じて、優先技術領域にお
筆されるべきものである。また、イノベーション
ける産業指向の技術開発を促進している。このネ
企業の設立支援施策として、イノベーション企業
ットワークは研究省の他、経済・財政・産業省傘
設立促進コンクールがあり、1997 年に決定されて
下の国立研究産業利用推進局(ANVAR)により管理
以来、2003 年までに 5 回開催されている。
44
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 34〉 イノベーションに係る優遇措置
税制優遇措置
研究プロジェ
クト補助
技術レベル
向上の補助
イノベーショ
ン企業設立用
補助
イノベーショ
ン企業設立促
進コンクール
イノベーシ
ョン企業設
立
公務員による
イノベーショ
ン企業設立を
可能にするイ
ノベーション
法
企業対象
税制優遇
措置
新規イノベー
ション企業
プロジェクト
支援
投資者対
象
税制優遇
措置
起業資金
インキュ
ベーター
ANVAR による
-収益納付補助
-新株購入権証書システム
-雇用補助
-基金等の管理
研究開発投
資に対する
優遇税制措
置
CIR
民間企業の
新技術導入
支援
ATOUT
イノベーショ
ン企業
イノベー
ション投
資基金
FCPI
研究技術
補助金
創業株式
出資証書
BSPCE
研究による人
材育成
科学研究
補助金
−企業内研究
による産業訓
練契約
CIFRE
ビジネ
ス・
エンジェ
ル
−研究による
高等テクニシ
ャン育成協定
CORTECHS
(出所)フランスの研究開発予算
45
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
6.1
• 当該研究公務員は、企業に対する「出向」ま
イノベーション・研究法
たは「派遣」との扱いになる。この場合、当
イノベーション・研究法の目的は、公務員が設
該研究公務員は、所属する公共部門における
立するイノベーション企業により、公的セクター
資格での活動を全て停止する。しかし、一定
の研究機関と民間企業の間の関係を強化すること
の教育活動の実施は認められる。
にある。
• 許可が期限に達したとき(最長6年)、当該
従来、身分が公務員である公的機関(大学等高
者が企業内での継続的な活動を望む場合は、
等教育機関を含む)の研究者が、自らの研究成果
公務員の資格を失う。ただし、申請によって
に基づいて企業を設立することは不可能であった。
認められた場合は、当該企業に継続的に「派
また、自らの研究成果に基づいて設立された民間
遣」されることは可能。
企業の技術的、商業的な活動に参加することは困
• 元の公共部門の組織に復帰する場合は、当該
難であり、技術的なアドバイス、資本金への拠出、
研究公務員は、当該企業との協力関係を1年
当該企業の経営者になることは違法であった。
以内に集結させ、当該企業との利害関係を保
また、研究者が公務員の立場を離れて企業を設
持することはできない。しかし、下記②及び
立した場合も、当該企業と元の公的機関が何らか
③に従い、当該企業の取締役会または監査役
の関係を構築することは法律的に認められず、場
会のメンバーとなること、15%を上限に当該
合によってはこの公的機関との間で契約を締結す
企業の株式の保有を維持することはできる。
ることは不可能であった。
1999 年 6 月に制定されたイノベーション・研究
②
法では、公的機関の研究者が、公務員としての身
研究公務員の兼業による役員としての企業
への経営参加
分を保持したまま企業の経営者、社員になること
• 研究公務員は、研究成果の普及を促進するた
が可能になり、6年後には再び、公的機関に戻る
め、個人の資格で、企業の取締役会または監
ことも可能としている。研究者が所属していた研
査役会のメンバーになることができる。ただ
究機関と民間企業が関係を持つことが可能となり、
し、この場合は、当該企業の5%を越える株
技術移転が促進され、公的機関の有する研究成果
式を保有することはできない。
が企業化されることが期待される。
以下に、イノベーション・研究法の主な内容を
③ 研究公務員の企業への資本参加
示す。なお、本法の解説については「JETRO 技術
• 研究公務員は、15%を上限に企業の株式を保
情報」00 年 4 月号(No.409)を参照されたい。
有することができる。ただし、この場合は、
① 研究公務員の企業設立(スピンアウト)
当該研究公務員は、当該企業において、経営
• 研究公務員は、個人の資格で、出資者または
上の職務を持つことや、部下を持つ立場に立
経営者として、公務員としての職務遂行を通
つことはできない。
じて得られた研究成果を活用し、企業の「設
立」に参加できる。
④ 簡便なベンチャー企業の設立
• 本許可は、有効期間を2年とし、2回の更新
が認められる。
46
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
• 出資額の範囲で損失を負担する個人または複
• 179人(57.2%)の公務員研究者により、5年間の
数により、「簡略株式会社」を設立すること
企業への科学支援及び15%以下の資本金参加
ができる。
を行なった。このうち12人(4.1%)が、ただの
科学アドバイザーとして企業の活動に参加し
た。
⑤ 創業株式出資証書(BSPCE−ストックオプシ
• 20人(6.8%)の公務員研究者が企業の取締役会
ョンの一種)利用制限の緩和
• BSPCEを利用できる創設企業に関する条件と
及び監査役会のメンバーとなった。
して、個人株主による会社株式の保有率を
一方、イノベーション研究法の一環で、または、
75%から25%に引き下げる。
イノベーション企業設立促進コンクール、インキ
2002 年 12 月現在、イノベーション研究法を制
ュベーター、起業資金等、3つの優遇措置のため
定して 3 年半後、公的セクターの 292 人の研究者
に 760 社以上のイノベーション企業が設立された
がイノベーション企業に参加した。
〈図 35〉 にこ
と見られている。
の参加方法を示す。
• 個人として93人(31.8%)の公務員研究者が自
らの研究結果を利用した新規イノベーション
企業の経営者になった。
〈図 35〉 参加方法別イノベーション企業公務員人数割合
292 人
科学アドバイザー
だけ
4.1%
取締役会・監査役
会のメンバー
6.8%
科学アドバイザー・
資本金参加
57.2%
新企業の経営者
31.8%
(出所)研究省資料
47
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
6.2
• 1回CIRを受けた企業も、再度CIRを受けるこ
研究開発優遇税制
とができる。
研究開発投資に関する優遇税制措置(CIR)は、
• CIR制度の対象企業はCIRの範囲内で赤字を部
研究開発活動を促進するための民間企業への支援
分的に削減できる。
策であり、日本における増加試験研究税制に相当
• 所得税及び企業税を支払う産業的、商業的な
する。CIR 制度の利用全体のうちの 30%は、国内
活動を行う企業、または農業企業(中小企業、
研究開発の 11%しか実行していない売上高 1,524
産業グループ及び産業グループの子会社)も
万ユーロ以下の中小企業であり、中小企業が効果
CIRを受けることができる。
的にこの制度を利用していることが分かる。
• 同じ条件で、外国の子会社及び支店もCIRを受
本制度は、前年よりも研究開発に対する投資を
けることができる。
増加する企業について、企業の利益に課税される
法人税額から控除(場合により払い戻し)を受け
2001 年の CIR に係る申請は 6,253 件(前年比
られる制度である。2004 年から、控除の対象とな
1.4%減)で、2,810 企業が 5.19 億ユーロの税額
るのは、当年の研究開発費の 5%及び当年の研究開
控除を受けた。
発費と直前 2 年間の研究開発費の年平均額との差
額(過去分)の 45%になる。税額控除の限度額は 1
CIR は、半分が電子機器、製薬、自動車製造等
の業種によって利用されている。
年間に、1 社当たり 800 万ユーロ(2003 年までは
610 万ユーロ)である。
〈図 36〉及び〈図 37〉 は CIR 適用企業の売上
高別、研究開発費及び CIR の使用率を示す。
さらに、算定基準日が 1 月 1 日から 12 月 31 日
までの 1 年間であるため、研究実施期間がこの期
国内企業全体の研究開発を売上高の面から分析
間と一致しない場合は、研究活動が終了した年か
すると、売上高 700 万ユーロ以下の企業は研究開
ら 3 年間以内に本制度を適用することができる。
発費の 8%を占めているに過ぎないが、CIR の 30%
1999 年にはイノベーション企業促進の観点から、
次の点について CIR 制度の改善がなされた。
• 新規に創設された企業は短期間でCIRの税額
控除を受けることができる。
• 企業が公的研究所に委託する研究費もCIRの
対象になる。
• CIR対象の研究内容について技術的判断を加
を受けている。売上高 700 万ユーロと 4,000 万ユ
ーロ間の企業は研究開発費の 9%を占め、CIR の
12%を受けている。売上高 4,000 万ユーロ間と 2
億ユーロ間の企業は研究開発費の 27%を占め、CIR
の 24%を受けている。一方、売上高 2 億ユーロ以
上の企業が研究開発費の 56%を占めているものの、
これらの企業は CIR の 34%を受けるに過ぎない。
味するために、文部省及び研究省の意見を求
めることとする。
48
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 36〉 売上高別企業研究開発費割合
700万ユーロ以下
8%
700万ユーロと4,000
万ユーロ間
9%
4,000万ユーロと2億
ユーロ間
27%
2億ユーロ以上
56%
(出所)フランスの研究開発予算
〈図 37〉売上高別企業の CIR 使用率
700万ユーロと4,000
万ユーロ間
12%
2億ユーロ以上
34%
4,000万ユーロと2億
ユーロ間
24%
700万ユーロ以下
30%
(出所)フランスの研究開発予算
49
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
6.3
• 委託研究の助成金は926万ユーロで、助成件数
補助金・融資制度
は42件である。
民間企業への研究開発支援は、主として、前節
• 技術普及ネットワークの助成金は800万ユー
において述べた研究開発投資に対する優遇税制措
ロで、助成件数は31件である。
置と、直接的補助金として国立研究産業利用推進
• 技術移転の助成金は409万ユーロで、助成件数
局(ANVAR)の補助金及び研究技術補助金(FRT)
は49件である。
により行なわれている。なお、科学補助金(FNS)
• 若手研究者のプロジェクトの助成金は170万
は、公的研究機関、高等教育機関及び非営利機関
ユーロで、助成件数は536件である。
に向けられたものであり民間企業に直接に資金供
• 30人の個人発明者が助成され、助成金は29万
与が行なわれるものではないが、産学官連携の促
ユーロである。
進も目的の1つになっており、また研究技術補助
金(FRT)との対比の意味から、これについても本
節で解説する。
中小企業に対する ANVAR の主要な支援手段は
「イノベーション・プロジェクトへの助成」であ
る。この助成により、民間企業の新しい製造プロ
6.3.1
国立研究産業利用推進局(ANVAR)の支援
制度
セスや新製品の開発リスクを、ANVAR が軽減する
ことになる。
国立研究産業利用推進局(ANVAR)は、民間企業
件数面と金額面の双方において、それぞれ 2,317
の技術革新プロジェクトの支援、イノベーション
件(全体の 77.2%)
、2.219 億ユーロ(全体の 90.5%)
企業の設立支援、研究者の雇用による中小企業の
と、イノベーション・プロジェクトの助成とイノ
研究開発能力の向上、若手研究者や学生等個人の
ベーション向け雇用助成が ANVAR による支援のか
イノベーション・プロジェクトの支援、技術移転
なりの割合を占める。
の促進、欧州での研究開発パートナーの調査、地
〈図 40〉
に支援金額ベースでの分野別割合を示す。
方・国土開発機関との協力等を行なっている。
2002 年における ANVAR の助成件数は 3,000 件で
あり、助成金は総額で 2.452 億ユーロであった。
2002 年の情報通信技術に関する助成金額は
7,230 万ユーロで、前年よりも 8.7%減少したが、
引き続き第 1 の助成分野であった。
〈図 38〉及び〈図 39〉に ANVAR の助成件数及び助
成金額の配分先別比率を示す。
第 2 分野である生命科学に関する ANVAR の助成
金額は 5,660 万ユーロで、前年よりも 7.6%減少し
• フランス貿易保険会社(COFACE)/ANVARの輸
た。
出支援を含めて、イノベーション・プロジェ
クトへの助成金は2,023億ユーロであり、支援
件数は1,360件である。
• イノベーション向け雇用助成 金は1,957万ユ
ーロで、助成件数は957件である。
50
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 38〉 ANVAR 助成件数配分先別比率(2002 年)
3,000 件
技術普及ネットワー
ク
1.0%
委託研究
1.4%
個人発明者
1.0%
技術移転
1.5%
若手研究者プロジェ
クト
17.9%
イノベーション・プロ
ジェクト
45.3%
イノベーション向け
雇用
31.9%
(出所)2002 年 ANVAR 年報
〈図 39〉 ANVAR 助成金額配分先別比率(2002 年)
2.452 億ユーロ
若手研究者プロジェ
クト
0.7%
技術移転
1.7%
個人発明者
0.1%
技術普及ネットワー
ク
3.3%
委託研究
3.8%
イノベーション向け
雇用
8.0%
イノベーション・プロ
ジェクト
82.5%
(出所)2002 年 ANVAR 年報
51
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
6.3.2
に配分されている。ACI を通じて FNS が支出され
科学補助金(FNS)
FNS は、ACI(直訳は「合意促進活動」)と呼ば
ることにより、ACI は関係者間の調整の役割を果
れる研究促進プログラムを通じ、複数の研究機関
たす。
ACI は特定の優先テーマを対象としており、
の協力を要する基礎研究、公的セクターと民間企
優先テーマは CIRST により決定され、支援対象プ
業の間の協力、若手の研究者による研究チームの
ロジェクトは一般的に提案公募形式で選択されて
プロジェクト実施を支援することを目的としてお
いる。ACI は、テーマによっては、FRT の支出対象
り、公的研究機関、高等教育機関及び非営利機関
である R2IT と連携して実施されている。
〈図 40〉 ANVAR 助成金額分野別比率(2002 年)
2.452 億ユーロ
その他
8.1%
消費財
8.3%
情報通信技術
29.5%
設備
15.5%
生命科学
23.1%
機械、化学、金属、
建設・土木
15.6%
(出所)2002 年 ANVAR 年報
52
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
FNS 予算は、プログラム認可ベースで、1999 年
の設立・発展を促進することが目的である。この
の 0.849 億ユーロから、2000 年に1.065 億ユーロ、
点で、主として基礎研究を対象としている FNS と
2001 年に 1.339 億ユーロ、2002 年は 1.400 億ユー
は異なる。FNS が公的研究機関、高等教育機関及
ロ、2003 年には 1.480 億ユーロである。
び非営利機関に配分されているのに対して、FRT
〈図 41〉
に 2003 年の FNS の分野別割合を示す。
の半分以上は民間企業に配分されている。上記の
2003 年に、ゲノム及び癌撲滅を中心テーマとし
目的を達成するために、FRT は主に、産学官の研
て、生命科学分野は FNS の 56.9%を占めた。2004
究協力・共同研究を推進する枠組みである R2IT に
年も生命科学分野は引き続き FNS の最大分野であ
予算を提供している。 R2IT は ACI と同様に特定
り、生命科学分野の予算は 7,500 万ユーロ(前年
の優先テーマ領域を対象としている。各 R2IT は、
比 10.9%減)となる。
学界、産業界、行政の代表者からなる評議会の管
理下に置かれ、優先テーマ領域について産学官の
6.3.3
研究機関の能力を結集して研究開発を推進する。
研究技術補助金(FRT)
FRT は、公的研究と産業界の研究のパートナー
R2IT の枠組みのなかで行なわれるプロジェクトの
シップを促進するための補助金である。産学官の
提案公募により、民間企業、公的研究機関等から
研究協力・共同研究を通じて、経済ニーズに対応
研究プロジェクトが提案され、実施プロジェクト
した製品やサービスの開発、イノベーション企業
が選択されている。
〈図 41〉 科学補助金(FNS)の分野別割合(2003 年,プログラム認可ベース)
1.480 億ユーロ
0
20
(単位:100 万ユーロ)
40
60
84.2
生命科学
地球・環境科学
16.5
情報通信
14.7
政府・地方間の契約 9.3
人文・社会科学 9.2
物理学/化学 7.7
若手研究者の支援 6.4
(出所)フランスの研究開発予算
53
80
100
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 42〉
に 2003 年の FRT の分野別割合を示す。
43.2%減少であったが、2004 年には 3,600 万ユー
FRT 予算は、プログラム認可ベースで、2001 年
ロで、前年よりも 66.2%増加する。
及び 2002 年の 1.525 億ユーロであったが、2003
〈図 43〉及び〈図 44〉に、FRT の情報通信分野
年は 1.419 億ユーロで 6.9%減少した。新規企業
及び生命科学分野におけるテーマ別比率(金額ベ
の設立、民間企業の研究開発強化を支援する措置
ース)を示す。
として、欧州の社会補助金から 2000 年から 2006
情報通信分野に充てられる予算のうち、新規の
年までに、年間 915 万ユーロを受け、FRT 予算に
マイクロ・ナノテクノロジーのテーマは 28.9%
追加される。
(1,300 万ユーロ、2004 年は 33.5%の 6,600 万ユ
ーロの予定)を占め、この分野における研究開発
2003 年は、情報通信分野が最優先領域とされ、
の拡大を示す。
FRT 予算の 31.7%(4,503 万ユーロ)を占める。
2004 年にはこの分野に充てられる補助金は 6,600
万ユーロで、FRT 予算の 33.5%を占める。生命科
学の分野は 2002 年は 2,165 万ユーロで前年よりも
〈図 42〉 研究技術補助金(FRT)の分野別割合(2003 年、プログラム認可ベース)
1.419 億ユーロ (単位:100 万ユーロ)
0
10
情報通信
21.65
19.38
イノベーション企業設立コンクー
ル
政府・地方間の契約
宇宙・航空
その他
30
45.03
生命科学
エネルギー・運輸・自然原料
20
18
15
4.07
18.78
(出所)フランスの研究開発予算
54
40
50
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 43〉 FRT の情報通信分野のテーマ別比率(2003 年)
4,503 万ユーロ
ネットワーク間活動
2.8%
RIAMネットワーク
3.1%
RNRTネットワーク
30.7%
RMNTネットワーク
13.1%
RNTLネットワーク
21.5%
マイクロ・ナノテクノロ
ジー中央ネットワー
ク
28.9%
(出所)フランスの研究開発予算
〈図 44〉 FRT の生命科学分野のテーマ別比率(2003 年)
2,165 万ユーロ
動物ゲノムネット
ワーク
4.6%
癌センター
4.6%
生物資源
8.3%
人ゲノム・ネットワー
ク
29.3%
食品ネットワーク
9.4%
植物ゲノム・ネット
ワーク
17.9%
保健衛生技術ネッ
トワーク
25.9%
(出所)フランスの研究開発予算
55
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
2003 年に、FRT の生命科学分野においては、保
経済・財政・産業省の産業技術関係の予算は、
健衛生技術、植物及び人に関する研究を続行し、
産業省傘下の ANVAR を通じた補助金(6.3.1 節参
予算が 100 万ユーロの特定癌撲滅テーマが決定さ
照)
、産業省本省による支援、産業省傘下の機関で
れた。
ある原子力庁(CEA)の研究費の一部、同じく傘下
〈図 45〉に、2001 年から 2004 年の、生命科学
の鉱山高等学校等のエンジニア学校の研究費に充
分野及び情報通信分野に充てられた FRT 及び FNS
てられている。
〈図 46〉に、産業省の 2004 年の産
の予算額の推移を示す。
業技術関係予算の内訳を示す。
FRT では 2001 年及び 2002 年の生命科学分野と
このうち、産業省本省による支援としては、陸
情報通信分野の予算は同レベルで、2003 年に情報
上輸送技術イノベーション研究開発プログラム
通信分野の予算は前年よりも 78.7%増加した。FNS
(PREDIT の予算の約 22%)
、ガス及び石油技術ネッ
では圧倒的に生命科学分野が多く、2003 年には生
トワーク(元石油化学補助金の FHS)、民間企業の
命科学分野の予算は前年よりも 20.4%増加した。
新技術導入支援(ATOUT)等がある。また、産業省
は、傘下の鉱山学校からの中小企業への技術移転
6.3.4
も推進している。
経済・財政・産業省の支援制度
〈図 45〉 生命科学分野及び情報通信分野の FRT・FNS 予算の推移(2000 年∼2004 年)
(単位:100万ユーロ)
0
50
2001年
90.90
2002年
生命科学
2002年 3.50
38.11
84.20
2004年
21.65
75.00
36.00
38.11
38.11
情報通信
2003年 14.70
45.03
(出所)フランスの研究開発予算
2004年 14.00
66.00
FNS
FRT
(出所)フランスの研究開発予算
56
150
38.11
95.30
2003年
2001年 7.20
100
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
• 陸上輸送技術イノベーション研究開発プ ロ
入れることを 支援する補助金制度である。
グラム(PREDIT)
ATOUT は、地方レベルで、産業省傘下の DRIRE
(5.5(2)参照)
(地方産業・研究・環境局)により管理され
• ガス及び石油技術ネットワーク
ている(5.1 節参照)。2003 年に 813 のプロジ
ェクトが支援され、3,451 万ユーロの予算を受
ガス及び石油技術ネットワークの目標はガ
けた。
ス及び石油分野の技術開発の強化であり、探
鉱活動、石油精製、石油製品生産に関する研
究を行う企業に対し、研究予算の約 50%を補助
6.4
その他の助成制度及び優遇措置
する。この補助金は、研究成果に応じて返済
される。2003 年に提出された 151 のプロジェ
6.4.1 イノベーション企業への支援
クトのうち 46 のプロジェクトが 1,890 万ユー
(1) イノベーション投資基金(FCPI)
ロを受けた。フランス石油研究所はプロジェ
1997 年に、イノベーション企業(研究開発型企業)
クト全体の 25%、Total Fina Elf 社は 5%を管
を支援するため、イノベーション投資基金(FCPI)
理している。
制度が創設された。ベンチャー・キャピタルで、
• 民間企業の新技術導入支援(ATOUT)
FCPI に資金を出資する者は、5 年間資金拠出を維
ATOUT は、民間企業が新技術を外部から取り
持すれば投資額の 25%の税軽減を受けられる。
〈図 46〉 産業省の産業技術関係予算の内訳(2004 年)
10.19 億ユーロ
鉱山学校
4.0%
ANVARによる支援
15.1%
CEA
41.2%
フランス石油研究所
19.6%
産業省本省による支
援
20.1%
(出所)フランスの研究開発予算
57
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
資金の 60%は未上場のイノベーション企業の自
タ関係のプロジェクトは 750 で、予測された数字
己資本強化に投資されている。この支援を受ける
を 10%上回る。プロジェクトのうち、起業は 350
企業は以下の条件を満たさなければならない。
件を占め、新規雇用者は 1,320 人である。
• 従業員数が500人以下である。
• 出資者の大半は法人である。
(3) 創業株式出資証書(BSPCE)
なお、
1997 年から 2003 年 7 月現在までに、ANVAR
1998 年に設置された BSPCE は、設立後 15 年間
により、FCPI の範囲内で 1,047 の企業がイノベー
以内の企業の資本力強化に、当該企業の社員を参
ション企業として認定されている。
加させる制度である。BSPCE を利用できる対象者
は、民間企業の経営者と従業員である。従来のス
(2) イノベーション起業基金及びインキュベータ
への支援
トックオプションとは異なり、BSPCE には売却時
期の制限がない。1999 年のイノベーション・研究
1999 年 3 月に、公的セクターの研究成果の実用
法により、BSPCE を利用できる創設企業に関する
化を行うイノベーション企業の創設を促進するた
条件として、個人株主による会社株式の保有率が
めに、研究担当相及び産業担当相により「技術企
75%から 25%に引き下げられている。
業に関するインキュベータ及び起業基金」につい
ての募集が行なわれた。これは、産学官の協力に
(4) イノベーション企業設立促進コンクール
よる企業創設に投資を行う起業基金に対して助成
イノベーション企業設立促進コンクールは、研
を行なうとともに、イノベーション企業に対して
究省の主催の下、ANVAR が事務局を務めて実施さ
事務所スペースの提供、経営指導、財務管理アド
れている。コンクールの予算は、1999 年は 1,524
バイス等の支援を行うインキュベータを助成する
万ユーロ、2000 年は 3,049 万ユーロ、2001 年、2002
制度である。提案募集対象は、公的研究機関、高
年と 2003 年は、それぞれ 3,000 万ユーロであった。
等教育機関、ベンチャー・キャピタル、起業アド
1999 年から 2003 年の間に5回のコンクールが実
バイザーである。
施された。この 5 年間の合計で 8,103 のプロジェ
1999 年の提案募集の予算は 3,049 万ユーロ(起
クトが提案され、1,422 件の支援が決定された。
業基金 1,524 万ユーロ、インキュベータ 1,524 万
これらプロジェクトから、2002 年末までに 2,800
ユーロ)であったが、プロジェクトの件数が多か
人を使う 466 社が誕生した。2003 年は 1,439 件の
ったために、2000 年の提案募集予算は起業基金
プロジェクト案のうち 322 件が選択された。
2,287 万ユーロ、インキュベータ 2,464 万ユーロ
に、2001 年にはそれぞれ 2,287 万ユーロ、2,464
6.4.2
万ユーロに増額された。2002 年 12 月現在で、テ
民間企業での研究による人材育成(インタ
ーンシップ)
ーマ起業基金は 3 つ(2003 年の初頭に2つ増加)、
民間企業での研究(研修)による人材育成制度
地方起業基金は 7 つ、インキュベータについては
の目的は、若い学生の民間企業への就職、民間企
31 のインキュベータのプロジェクトが採択されて
業のイノベーション能力の向上である。この制度
いる。2002 年 12 月末現在で、基金額は、3 つのテ
は高等テクニシャン・レベルから博士レベルまで、
ーマ起業基金が 1.5 億ユーロ、7 つの地方起業基
各教育段階 で行なわれている。2002 年の予算は
金が 4,500 万ユーロとなっている。インキュベー
3,671 万ユーロであった。民間企業での研究によ
58
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
る人材育成は民生研究開発予算、4 年間の政府・地
• 研究による高等テクニシャン育成協定
方契約、欧州の社会基金、欧州地方発展基金によ
(CORTECHS)の対象研究者は、バカロレ
り出資されている。〈図 47〉に、民間企業での研
ア取得後 2 年∼ 3 年間の研究経験を有する者
究による人材育成に要した助成金の比率を示す。
である。政府は必要人件費の半額を補助す
• 企業内研究による産業訓練契約(CIFRE)の対
る。2002年は400件であった。情報処理サー
象研究者は、バカロレア(大学入学資格)取
ビス業をはじめとして、サービス関係が多
得後5年間研究し博士号取得の準備を行なう
い。
者である。ANVARのイノベーション向け雇用助
• 長期研修は、中小企業で行なわれ、エンジニ
成(ARI)がこの制度に関係している。政府は
ア学校及び商業学校の学生を対象 としてい
必要人件費の半額を補助する。2002年のCIFRE
る。研修期間は4か月から6か月までで、企業
の助成件数は810件で、前年よりも10件増加し
への補助金額は4,573ユーロである。
• 技術研究免許(DRT)の協定は、大学職業学校
た。
• 博士研修の支援は、若手博士に対して中小企
及びエンジニア学校卒業者を対象とし、期間
業及び公共商工機関(EPIC)での研究の機会
は1年間から18か月である。補助金額は年間
を提供するものであり、1年間(場合によって
11,000ユーロである。
18か月間)に対して27,000ユーロが補助され
る。2002年の中小企業での件数は75件、EPIC
は179件であった。
なお、文部省及び研究省は、CORTECHS 及び DRT
の管理を ANVAR 及び地方機関に委託している。
〈図 47〉 インターンシップ助成金比率(2001 年)
3,671 万ユーロ
長期研修
3.3%
DRT
2.2%
博士研修
7.1%
CORTECHS
12.7%
CIFRE
74.7%
(出所)フランスの研究開発予算
59
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
6.4.3
その他の制度
上記に説明した組織・制度の他に、国、地方、
大学等の各レベルで、民間企業の研究開発を支援
等により構成される組織である。フランスの 22 の
全地域(地方圏と呼ばれる行政区画)に RDT が存
在している。
する多くの組織がある。これらは主に、民間企業
の技術ニーズ及び技術レベルを把握するとともに、
(4) 国立技術研究センター(CNRT)
適切な技術パートナーの選択をサポートすること
CNRT の目標は、実用化に近い分野の研究開発を
等により、公的研究成果の民間企業への技術移転
促進することであり、公的研究機関と産業界との
を促進するインターフェース機能を目的としてい
協力を促進している。CNRT は、技術移転に関する
る。
研究省の施策の重要な柱となっている。現在 18 の
なお、これらの組織の役割は、重複しているケ
CNRT が存在している。
ースもあるため、政府は整理・簡素化を目指して、
各組織の活動状況についての詳細な情報を集める
データベースを設置した。
(1) 地 方 イ ノ ベ ー シ ョ ン ・ 技 術 移 転 セ ン タ ー
(CRITT)
CRITT は、1980 年に研究省及び地方自治体のイ
ニシアチブで設立された。公的研究機関及び高等
教育機関の研究能力を活用し、中小企業の技術力
強化を行う。現在約 180 の CRITT がある。
(2) 技術プラットフォーム(PFT)
PFT は、技術移転により中小企業の技術力強化
を行うことを目的としており、工科大学(IUT)、
職業学校等に置かれる。PFT は研究活動を行う組
織ではなく、技術移転、技術評価、各種アドバイ
ス(プロジェクトのフォロー、知的所有権に関す
るアドバイス等)を行なう。中小都市で 100 の PFT
が設置される予定であり、2001 年 5 月現在で約 20
の PFT が稼動している。
(3) 技術普及ネットワーク(RDT)
RDT は 1990 年に設置された。RDT のミッション
は、アドバイスやパートナーシップの構築により、
中小企業の技術発展に寄与することである。各地
方の RDT は、DRRT(地方研究技術官)、DRIRE(地
方産業・研究・環境局)
、ANVAR の各地域機関、CRITT
60
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
7.研究開発成果の普及及び技術移転に関
する施策
の競争力を強化することを目的とした助成制度で
ある。ATOUT は、マイクロ電子部品、情報処理、
先端材料、新生産技術の 4 分野で実施されており、
1982 年 7 月の研究計画法及び 1984 年 1 月の高
等教育に関する法律により、公的研究機関及び高
等教育機関の役割として、産業界への公的研究成
果の技術移転、実用化という義務が規定されてい
る。このため、各機関はそれぞれの特徴に合わせ
た技術移転や実用化促進の取り組みを行なってい
従業員数が 2,000 人以下で財務が健全な企業を対
象としている。ATOUT は、地方レベルで、産業省
傘下の地方産業・研究・環境局(DRIRE)により管
理されている。2002 年の助成件数は 813 件で、
ATOUT に投入された費用は 3,451 万ユーロであっ
た。
る。
(3) 技術移転関連機関
7.1
研究開発成果の普及
(1) 国立研究産業利用推進局(ANVAR)
技術移転に関する ANVAR の取り組みは、①技術
地方レベルを中心に以下の機関が中小企業等へ
の技術移転に取り組んでいる。これらについては
6.4.3 節を参照されたい。
• 地方イノベーション・技術移転センター
を導入する企業、②技術を提供する機関、及び③
(CRITT)
技術を開発する者の3者を支援する。技術を導入
• 技術プラットフォーム(PFT)
する企業は、小規模企業が中心である。技術を提
• 技術普及ネットワーク(RDT)
供する機関とは、当該機関の研究成果を利用でき
• 技術研究センター(CNRT)
る企業を探している公的研究機関、高等教育機関
等の公的な機関である。技術を開発する者とは、
既存の研究成果に追加的な技術開発を行ってこれ
(4) 国際技術情報の普及
産業界に対する国際的な科学技術成果に関する
を改善した上で、この技術開発成果を販売または
提供する、中間的な存在といえる受託研究会社や
技術センター等である。
情報の普及は、科学技術情報普及局(ADIT)が行
なっている。
2001 年の①技術を導入する企業に対する ANVAR
の助成件数は 33 件であり、助成金額は 935 万ユー
7.2
公的機関から産業界に対する技術移転の促
進
ロであった。②技術を提供する機関による技術移
転のためのフィージビリティ・スタディに対する
7.2.1
助成件数は 49 件であり、助成金額は 591 万ユーロ
み
であった。③技術を開発する者に対する助成件数
は 54 件であり、助成金額は 1,417 万ユーロであっ
た。
技術移転における公的研究機関の取り組
技術移転及び研究成果の実用化に関して、公的
研究機関は他の公的研究機関や民間研究機関との
協力関係を拡大している。この協力関係には、委
託研究、研究協力組織(研究グループ、公益団体、
(2) 民間企業の新技術導入支援(ATOUT)
ATOUT は、民間企業が新技術を外部から取り入
共同研究所)の設立、技術指導、人材交流、イノ
ベーション企業の設立、技術資源センターの設置
れ、当該企業の製品・サービス、プロセス、組織
61
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
4.30 億ユーロの収入に相当した。イノベーション
等様々な形がある。
国立科学研究センター(CNRS)は、産業界との
企業の設立に積極的に取り組み、2001 年には CEA
協力を拡大するために企業関係局(DAE)を設置し
の研究者により 80 の企業が設立され、新規雇用者
ている。この部門は次の業務を担当している。
1,500 人を可能とした。一方、CEA の 100%子会社
①
共同研究:
1つまたは複数の公的機関及
び民間企業を結集して共同研究を組織する。
である CEA-Valorisation 社が設立され、2000 年
から新規設立企業のへの出資が行なわれている。
対象となる民間企業の大半は高い研究レベ
国立宇宙研究センター(CNES)は宇宙関係技術
ルを有する大企業である。現在 CNRS は、
の研究成果が実際に応用される場合、会社を設立
4,560 件の契約を締結し、民間企業(全契
することにより実用化に関与している。CNES はこ
約の約 60%)及び他の公的な研究機関(同
れまで 9 社の企業に対して出資しており、そのう
33%)と研究協力を行なっている。
ち 2 社は CNES の完全な子会社である。CNES は 4
つの営利団体(GIE)及び 4 つの公益団体のメンバ
② 研究成果の実用化:
研究成果の特許出願
ーになっている。
及びライセンス販売は、CNRS と ANVAR の子
バイオ医療、バイオテクノロジー、診断支援、
会社である FIST(フランス科学イノベーシ
医薬品等の分野の 300 社が国立衛生医学研究所
ョン及び移転)社に委託されている。FIST
(INSERM)の研究チームと協力している。特許数
社は 1992 年に設立され、CNRS をはじめと
も増加しつつあり、約 59%の特許が産業界とのパ
した公的研究機関の研究成果(特許等)の
ートナーシップに基づいて出願されている。また、
管理、当該技術の販売を担当している。CNRS
INSERM の研究成果に基づいて、12 社以上の企業が
が FIST の資本金の 70%、ANVAR が 30%を
設立された。技術移転の政策を強化するために、
有している。
INSERM は専門機関として INSERM-Transfert 社
(子
会社)を設立している。
③
企業設立:
国立農業研究所(INRA)は Agri-obtention 社及
CNRS は企業設立を支援する
「CNRS-ENTREPRENDRE」という制度を作り、
び Agronomie Transfert Innovation 社を設立し、
インキュベータに関する提案公募活動に参
これら子会社により INRA が開発した植物の産業
加している。1999 年から 2002 年までに、
への応用が実施されている。INRA は研究成果の実
CNRS の研究成果を基に 100 社の企業が設立
用化拡大を目指し、産業界との関係を強化する方
された。このうち医学・製薬・バイオテク
針であるが、民間企業・公的研究機関を結集した
ノロジー分野、及び情報通信分野分野に関
Génoplante プログラムへの参加はこの方針に基づ
係する企業が最も多い。
いたものである。
技術付加価値や技術移転は国立情報処理・自動
マイクロテクノロジー、医学及びバイオ医療技
化研究所(INRIA)の主要な業務である。2001 年
術、材料及び材料プロセス技術等の分野における
に INRIA は 386 の研究契約に従事し、4つの新会
原子力庁(CEA)の研究は、他の公的研究機関及び
社を設立した。
大学との共同研究ユニットで実施されている。ま
た、CEA による産業界への技術移転は 2001 年は
62
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
7.2.2
技術移転における高等教育機関の取り組
られる。
また、産業省傘下の鉱山学校では、研究開発、
み
大半の大学が大学内部に研究成果の技術移転や
エンジニア育成に加えて Armines 社を通じて、民
実用化を推進する組織を有している。また、1999
間企業への技術移転を目標としている。2001 年に
年から 2002 年の 4 年間に係る政府と高等教育機関
は、産業化研究、技術移転のため民間企業と 3,500
における取り決めには、大学での技術研究チーム
万ユーロの契約が結ばれた。このうちの中小企業
(ERT)の設置が盛り込まれている。ERT では、民
を対象としたものは、金額ベースで約 11%を占め
間企業の技術ニーズを検討し、大学と民間企業と
る。
の協力により技術的課題を解決し、技術移転が図
63
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
8.国際研究協力
業のそれぞれについて、フランス国外に支出した
研究開発費とフランス国外から受けた研究開発費
8.1
基本方針
の推移を示す。
〈図 48〉及び〈図 49〉に、行政機関及び民間企
〈図 48〉 行政機関の国外研究開発費の推移(1994 年∼2002 年)(単位:100 万ユーロ)
1000
500
361
345
374
368
445
426
480
570
590
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年*
-1,482
-1,635
-1,626
-1,581
-1,553
-1,504
-1,520
-1,710
-1,650
0
-500
-1000
-1500
-2000
支出
負担
(注) *は推定値
(出所)フランスの研究開発予算
〈図 49〉 民間企業の国外研究開発費の推移(1994 年∼2002 年)(単位:100 万ユーロ)
2,500
2,000
1,500
1,000
1,858
1,850
1,945
1,834
1,651
1,635
1,750
1,800
1,610
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年*
-954
-928
-942
-870
-947
-907
-1,340
-1,350
500
0
-500
-1,180
-1,000
-1,500
-2,000
支出
負担
(注) *は推定値
(出所)フランスの研究開発予算
64
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
やプロジェクトの管理には介入しない。一方、
2001 年に、フランスの国内研究開発実行費
328.9 億ユーロのうち、23.7 億ユーロを国外(外
EU のフレームワーク計画をはじめとして、フ
国及び国際機関)から受けたのに対し、フランス
ランスと相手国が決定した産業技術戦略か
の行政機関及び民間企業は、国民研究開発支出費
ら生じたプログラムの場合は、政府が研究開
335.7 億ユーロのうち、30.5 億ユーロを国外に支
発の方向づけを行い、プロジェクトの調整に
出した。このうち 16.0 億ユーロ以上が欧州フレー
参加する。一般的に、この国際研究協力は関
ムワーク計画と国際機関(欧州宇宙機関(ESA)等)
係国の民間企業、研究機関の間での協力を対
への支出分である。
象としている。
④ 科学技術動向のフォロー
2001 年の海外への支出増加(+12.5%)は、フ
科学技術動向のフォローは、主として外国
ランスの欧州フレームワーク計画への参加分の増
にある政府の出先機関により行なわれてお
加による。
り、この機能は強化される方向にある。
近年、国境を越えた企業の合弁、買収等が多く
⑤ 大規模機関の設立、運営への参加
なり、国をまたがった産業グループ間の交流が進
研究省は、欧州原子力研究センター(CERN)
、
展してきたことにより、民間企業の国外研究開発
費の負担や国外からの研究費の支出が増大してい
天 文 学 研 究 機 構 ( ESO )、 欧 州 生 物 学 機 構
る。
(EMBL)、欧州中期天気予報機構(CEPMMT)、
国際癌研究センター(CIRC)の研究方針の決
国際面における研究省の科学技術政策は、優先
定に参加し、資金を拠出している。
協力地域、優先協力テーマについて、EU(特に第 6
⑥ 国際機関の場での貢献
次フレームワーク計画)及び他省庁の活動と調整
研究省は、経済協力開発機構(OECD)の教
して決定されている。
育委員会(CE)、産業委員会(IND)、科学技
① 優先協力地域
優先協力地域は、先進工業国、地中海沿岸
術政策委員会(IND)、科学技術指標の各国エ
国、中東、東南アジアの諸国であり、協力が
キスパート・グループ(GENIST)等の活動に
進めば共同研究所の設立に至ることもある。
参加している。
対象となる先進工業国は、経済協力開発機構
また、研究省及び文部省は、国際連合教育
(OECD)加盟国のほか、中欧諸国及びロシア
科学文化機関(UNESCO)の活動にも参加して
である。
いる。
② 優先協力テーマ
優先協力テーマは、生命科学、情報通信、
8.2
欧州連合(EU)の研究開発とフランスの関
係
環境・エネルギーなどの FNS 及び FRT の支出
対象となっている優先テーマである。
欧州連合(EU)の研究開発における第1の政策
③ 国際研究協力の支援
国際研究協力は 2 種類の枠組みで行なわれ
ている。
ツールは研究開発フレームワーク計画である。こ
れは EU 加盟国が決定した研究開発政策に当たる
まず、民間企業から生じた EUREKA、COST
もので、トップダウン・タイプの研究開発活動で
等のプロジェクトの場合は、政府は研究方針
ある。技術ニーズにより参加者が研究開発テーマ
65
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
を決定するボトムアップ・タイプの主なプログラ
発活動は国内レベルで支出されている。この支出
ムには、科学技術分野における欧州協力(COST)
は年間 15 億ユーロであり、17 の技術領域の 155
及び EUREKA がある。
の研究プロジェクトに対して支出されている
(2001 年 5 月現在)。フランスは 125 プロジェク
(1) フレームワーク計画
トに参加し、スペイン(149)、ドイツ(147)、英
第 5 次フレームワーク計画(1998 年∼2002 年)
国(144)
、ベルギー(131)に次ぎ、第 5 位である。
の予算総額は 149.6 億ユーロであった(図 50)。
フランスは 3,894 のプロジェクトのうち 2,158 の
プロジェクト(55%)に参加し、ドイツ(65%)、英国
(3) EUREKA
(61%)に次いで第3位であり、以下、イタリア
EUREKA のプロジェクトは COST のプロジェクト
(46%)、オランダ(32%)と続いている。
と同様にボトム・アップであり、実際に研究を実
〈図 51〉にフランスの第 5 次フレームワーク計画
施する者がプロジェクトのテーマを決定する。プ
への分野別の参加割合を示す。フランスが参加し
ロジェクトに係る経費は、参加者及び参加者の属
ている分野としては、航空・宇宙、国際協力及び
する国が負担する。
原子力が最も多く、フランスの産業構造を反映し
2003 年 6 月のコペンハーゲンにおける Eureka
た形となっている。
大臣会議の際に、167 件の新規プロジェクトが決
定され、約 4.00 億ユーロの予算が充てられた。
フランスは、予算 5,300 万ユーロの 37 の新規プ
(2) 科学技術分野における欧州協力(COST)
ロジェクトに参加する。
EU が負担する一般管理費以外に、COST の研究開
〈図 50〉 第5次フレームワーク計画への国別参加割合(2002 年 2 月現在)
参加率(%)
0
20
60
ド
イ
ツ
65
61
55
46
34
32
24
22
21
15
15
13
10
8
1
ル
ク
セ
ン
ポ
ス
フ
ウ
ィン
ェ
ル
ス
フ
ギ
ー
ブ
ラ
ペ
トガ
リ
ラ
ン
デ
ル
シ
ン
イ
ス
ル
ン
ャ
ク
ン
ド
40
(出所)フランスの研究開発予算
66
80
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
〈図 51〉 第5次フレームワーク計画へのフランスの分野別参加割合(2001 年 9 月現在)
(単位:%)
0
5
10
22.3
航空・宇宙
18.1
国際協力
16.8
原子力
16.1
環境、都市開発
16
陸上輸送
イノベーション及び技術移転
15
情報通信
14.6
エネルギー
14
バイオ医学、保健衛生バイオテクノロジー
13.9
生産プロセス、材料、ナノテクノロジー、センサー
13.4
農学、農業・食品バイオテクノロジー
13
人文・社会科学
12
(出所)フランスの研究開発予算
67
15
20
25
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
参考資料
•
略称リスト
Projet de loi de finances pour 2004. Etat
de
la
recherche
et
du
ACI:
développement
促進活動/研究促進プログラム)
technologique(フランスの研究開発に関する
ADEME: Agence de l
2004年度の予算案/研究省)
•
/2003年9月
Les
d
Réseaux
Environnement et de la
Maîtrise de l
2004年のR&D予算案/研究大臣の記者会見
•
Actions Concertées Incitatives ( 合 意
Energie(環境・エネル
ギー管理局)
de
recherche
et
ANRS:
innovation technologiques/Bilan au 31
SIDA(国立 AIDS 研究協会)
décembre 2002(技術イノベーション研究ネッ
トワーク/2002年12月31日現在の結果レビュ
Agence Nationale de Recherche sur le
ANVAR:
Agence Nationale pour la VAlorisation
de la Recherche(国立研究産業利用推進
ー/研究省)
•
CNRS年報(2002年)
•
CNES年報(2002年)
•
CEA年報(2002年)
•
ANVAR年報(2002年)
•
INRIA年報(2002年)
•
INSERM年報(2002年)
Scentifique et Technique(地 方科学技
•
INRA年報(2002年)
術情報局)
局)
AP:
Autorisation de Programme(プログラム
認可)
ARIST:
BAAC:
Agence
Régionale
Budget Annexe de l
d
Information
Aviation Civile(民
間航空追加予算)
BRGM:
Bureau
de
Recherche
géologique
et
Minière(鉱山地質学研究所)
BSPCE:
Bons
de
Souscription
Créateurs d
de
Parts
de
Entreprises(創業株式出
資証書)
CEA:
Commissariat à l
Energie Atomique(原
子力庁)
CEMAGREF: Centre National du Machinisme Agricole
du Génie Rural des Eaux et des Forêts
(国立治水保林農学農機研究センター)
CEPMMT:
Centre
Européen
de
Prévision
Météorologique à moyen Terme(欧州中
期天気予報機構)
CERN:
Centre Européen de Recherche Nucléaire
(欧州原子力研究センター)
CIFRE:
Convention Insustrielle de Formation
par la Recherche(企業内研究による産
業訓練契約)
CIR:
68
Crédit d
Impôt-Recherche(研究開発投
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
CRIE:
資に対する優遇税制措置)
CIRAD:
業向け研究・イノベーション・コンソ ー
Agronomique
pour
le
CRITT:
le Cancer(国際癌研究センター)
ーション・技術移転センター)
Conseil
Interministériel
de
Scientifique
CRT:
la
CSESR:
Centre National d
Centre National d
CSI:
Enseignement
pour
Supérieur
et
la
Cité des Sciences et de l'Industrie(科
学産業博物館)
Etudes Vétérinaires
CSTB:
Centre Scientifique et Technique du
Bâtiment(住宅科学技術研究センター)
DAE:
Centre National de Génotypage(国立遺
Centre
Délégation Aux Entreprises(企業関係
局)
National
de
DBRDM: Dépense Budgétaire de Recherche et
Recherche
Scientifique(国立科学研究センター)
Développement Militaire(国防研究開発
Centre
費)
Nationaux
de
Recherche
DGA:
Technologique(国立技術研究センター)
DGAC:
DIRD:
科学委員会)
DIREN:
軌道施設)
Générale
de
l
Aviation
Dépense Intérieure de Recherche et
Direction
l
Assurance pour le
DNRD:
Commerce Extérieur(フランス貿易保険
Régionale
de
Environnement(地方環境局)
Dépense
Nationale
de
Recherche
et
Développement(国民研究開発支出費)
会社)
COnvention
Direction
Développement(国内研究開発実行費)
Columbus Orbital Facility(コロンブス
CORTECHS:
Armement(装
Civile(民間航空局)
Conseil National de la Science(国家
COFACE: Compagnie Française d
Direction Générale de l
備局)
Centre National de Séquençage(国立シ
ーケンスセンター)
COF:
Stratégique
Recherche(高等教育・研究戦略委員会)
Etudes Spatiales(国
伝子センター)
CNS:
Comité
l
ー)
CNS:
Centre de Ressources Technologiques(技
術資源センター)
et
et Animales(国立動物獣医学研究センタ
CNRT:
Innovation et de
Transfert de Technologie(地方イノベ
立宇宙研究センター)
CNRS:
Centres Régionaux d
Centre International de Recherche sur
会)
CNG:
Entreprise ( 企
シアム)
Technologique ( 科 学 技 術 研 究 省 間 委 員
CNEVA:
Innovation pour l
et
Recherche
Recherche
CNES:
Recherche
d
ンター)
CIRST:
de
Centre de coopération International en
Développement(農業研究開発国際協力セ
CIRC:
Consortium
de
formation
par
la
Recherche des TEChniciens Supérieurs
DO:
Dépenses Ordinaires(経常支出)
DRIRE:
Direction Régionale de l
(研究による高等テクニシャン育成協
de la Recherche et de l
定)
(地方産業・研究・環境局)
CP:
Crédits de Paiement(支払予算)
CRI:
Centre de Ressources Informatiques(情
DRRT:
Industrie,
Environnement
Délégué Régional à la Recherche et à la
Technologie(地方研究技術官)
DRT:
報資源センター)
69
Diplôme de Recherche Technologique(技
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
研究技術協会)
術研究免許)
EPA:
Etablissement
Public
à
IGN:
caractère
地理学研究所)
Administratif(公共行政機関)
EPIC:
Etablissement
Public
à
INED:
Caractère
d
Etudes
Environnement
EUMETSAT Polar System(EUMETSAT 極周回
Industriel et des Risques(国立産業環
システム)
境・リスク研究所)
Etablissement
Public
à
INMARSAT:
Caractère
International
Marine
Satellite
Organization(国際海事衛星機構)
Scientifique et Technologique(公共科
INPI:
学技術機関)
ERT:
National
INERIS: Institut National de l
関)
EPST:
Institut
Démographiques(国立人口統計研究所)
Industriel et Commercial (公共商工機
EPS:
Institut Géographique National ( 国 立
Institut
National
de
la
Propriété
Industrielle(国立工業所有権研究所)
Equipe de Recherche Technologique(技
INRA:
術研究チーム)
Institut
National
de
la
Recherche
ESA:
European Space Agency(欧州宇宙機関)
Agronomique(国立農業研究所)
ESO:
European Southern Observatory(欧州天
INRETS: Institut National de Recherche sur les
Transports et leur Sécurité(国立運輸・
文学研究機構)
EUMETSAT:
European
Organization
Exploitation
of
for
運輸安全研究所)
the
INRIA:
Meteorological
Informatique et en Automatisme( 国 立
Satellites(欧州気象衛星機関)
FCPI:
Fonds
Commun
de
Placement
情報処理・自動化研究所)
pour
l'Innovation(イノベーション投資基金)
FIST:
France
Innovation
Scientifique
INSERM: Institut National de la Santé et de la
Recherche Médicale(国立衛生医学研究
et
所)
transfert(フランス科学イノベーション
INSU:
及び移転)
FNS:
Fonds
IPEV:
de
la
Recherche
et
de
Groupement d
Groupement d
IPSN:
intérêt économique ( 営
Groupement d
IRD:
Intérêt Public(公 益 団
de
Univers(国立宇宙科学研究所)
Institut polaire français Paul-Émile
Institut de Protection et de Sécurité
Institut
de
Recherche
pour
le
Développement(開発研究所)
IRSN:
intérêt scientifique(科
IFREMER: Institut FRançais pour l
Institut
de
Radioprotection
et
de
Sûreté Nucléaire(放射能防護・原子 力
学関係団体)
安全研究所)
Exploitation
ISBL:
de la MER(フランス海洋開発研究所)
IFRTP:
Sciences
Nucléaire(原子力安全保護研究所)
体)
GIS:
des
ランス北極研究所)
利団体)
GIP:
National
Victor(ポール・エミル・ビクトールフ
la
Technologie(研究技術補助金)
GIE:
Institut
l
Fonds National de la Science(科学補
助金)
FRT:
Institut National de la Recherche en
Institut Sans But Lucratif(非営利研
究所)
Institut Français pour la Recherche et
IUT:
la Technologie Polaire(フランス極地
70
Institut Universitaire Technologique
Jetro technology bulletin-2004/5 №458
pour la Technologie, l
(工科大学)
LCPC:
Laboratoire
Central
des
Ponts
et la Recherche(技術・教育・研究用通
et
信ネットワーク網)
Chaussées(橋梁土木中央研究所)
LNE:
RIAM:
Laboratoire National d'Essais(国立試
ビジュアル・マルチメディア研究イノベ
METOP: Meteorology Operational Polar Satellite
ーション・ネットワーク)
(極軌道実用気象衛星)
OACI:
National
Oceanic
and
RMNT:
Atomospheric
PFT:
les
Micro
et
Nano
Organisation de l
ジー・ネットワーク)
Aviation Civile(民
RNRT:
Office
National
d
Etudes
et
Réseau
National
de
Recherche
en
Télécommunications(通信研究ネットワ
de
ーク)
RNRT:
査研究局)
OST:
sur
Technologies(マイ クロ・ナノテクノロ
Recherches Aérospatiales(航空宇宙調
OPR:
Réseau
Administration(米国海洋大気庁)
間航空局)
ONERA:
Réseau de recherche et d'Innovation en
Audiovisuel et Multimédia(オーディオ
験所)
NOAA:
Enseignement
Réseau
Nationaux
de
Recherche
Organisme Public de Recherche(公的研
Technologique(国立技術研究ネットワー
究機関)
ク)
Observatoire
des
Sciences
RNTL:
et
Réseau National en Technologies du
Techniques(科学技術監視所)
Logiciel(ソフトウェア技術ネットワー
Plate-Forme Technologiques ( 技 術 プラ
ク)
R2IT:
ットフォーム)
Innovation
Technologiques(研究・技術イノベーシ
PREDIT: Programme de Recherche et Développement
pour l
Réseau de Recherche et d
ョン・ネットワーク)
Innovation Technologique dans
SRC:
les Transports Terrestres(陸上輸送技
Société de Recherche sous Contrat(受
託研究会社)
術イノベーション研究開発プログラム)
RENATER: Réseau NAtional de Télécommunication
【ジェトロ・パリ・センター
71
福田
賢一】
Fly UP