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表 1: 比コールセンター従業員の給与レベル
JETRO 定期報告フィリピン IT 事情 2009 年度 No. 1 (2009 年 7 月 28 日) JETRO 定期報告: フィリピン IT 事情 FY2009-No.1 フィリピンソフトウェア産業協会(PSIA) SODEC 2009 出展特集 今号の目次 1 はじめに ...........................................................................1 2 2009 年 5 月の PSIA 東京ミッションの概要 ....................1 3 SODEC へのフィリピンパビリオン出展 ..........................1 4 SODEC に出展した各社の概要 ........................................2 5 フィリピン IT セミナーを 2 回開催 ..................................2 6 CICT イブラヒム コミッショナーの講演概要 ...............4 7 PSIA コロネル会長の講演概要 .........................................4 8 JUAS 表敬訪問と意見交換 ...............................................4 9 MIJS 表敬訪問と意見交換 ................................................5 10 PSIA コロネル会長の寄稿文 - 「PSIA:バリューチェーン をグローバルに繋げます」...............................................6 11 まとめ ...............................................................................6 3 SODEC へのフィリピンパビリオン出展 ソフトウェアの開発・保守・運用のための製品・技術が一堂 に集まるソフトウェア開発環境展(SODEC)に、フィリピンは 2003 年から毎年出展してきた。今年は、当初十分な資金確保 の目処が立たず、出展が危ぶまれた。 それでも、出展を強く 希望する各社の費用負担増や、PSIA による民間スポンサー獲 得、フィリピン政府関係者による懸命な予算獲得努力、JETRO を含む日本の支援機関の協力、ブース面積の縮小など様々な対 策の結果、継続出展にこぎつけた。 1 はじめに 2009 年 5 月に東京ビッグサイトで開催された第 18 回ソフト ウェア開発環境展(SODEC)にフィリピンパビリオンを出展し たフィリピンソフトウェア産業協会(PSIA)は、出展時期に合わ せた 5 月 12 日から 15 日にかけて東京で様々なプロモーション 活動を実施した。日比間のソフトウェア貿易拡大を支援する JETRO は、昨年 11 月の PSIA による日本トレードミッション に続き、今回のミッションに関しても業界団体との意見交換や 懇親会、PR セミナー実施その他の支援を行った。今号は、PSIA による東京での活動への同行取材に基づく報告である。 2 2009 年 5 月の PSIA 東京ミッションの概要 PSIA による今回の東京でのプロモーション活動には、フィ リピン政府の大統領府直属機関である情報通信技術委員会 (CICT)のコミッショナー、モンチト・イブラヒム(Monchito Ibrahim)氏や、PSIA からは会長のマリア・クリスティナ・コロ ネル(Ma. Cristina Coronel)氏、事務局長のジョアン・ロケリア ノ(Jo-Anne Loquellano)氏などが、会員企業 7 社の代表を伴っ て参加した。SODEC 出展をはじめとした今回の一連の活動は、 フィリピン貿易産業省(DTI)、フィリピン国際貿易促進センタ ー(CITEM)、投資委員会(BOI)、駐日フィリピン共和国大使館、 日本アセアンセンター、(独)日本貿易振興機構(ジェトロ)、(財) 国際情報化協力センター(CICC)、フィリピン最大手の通信事業 者 PLDT などの各機関・企業の支援・協力のもとに実現した。 2009 年 5 月 12 日~15 日の、 活動内容は以下のとおりである。 2009 年 5 月 12 日 (社)日本情報システムユーザー協会(JUAS)表敬訪問と意 見交換 (財) 国際情報化協力センターでのフィリピン IT セミナー 及び懇親会(21 社より 30 名が参加) 2009 年 5 月 13 日 Made In Japan Software コンソーシアム(MIJS)表敬訪問 と意見交換 SODEC 会場におけるフィリピン IT セミナー実施(13 社 より約 20 名が参加) 2009 年 5 月 13 日~15 日 SODEC へのフィリピンパビリオン出展 Copyright © 2009 JETRO Manila Center フィリピンから出展した 7 社は、日本語に堪能なフィリピン 人や日本拠点の日本人などの担当者が常時ブースに詰め、パン フレットの配布、会社説明、商談などが行われていた。ブース への来場者に配られたマンゴーキャンディや、よく冷えたパイ ナップル、カラマンシー、マンゴーなどのトロピカルフルーツ ジュースも好評を博した。 フィリピンパビリオン へは、オフショア開発等の サービス委託先としてフ ィリピンに関心のある企 業だけでなく、フィリピン 企業を日本に誘致しよう とする地方自治体のイン キュベーション施設の売 込みや、報道関係者の取材 などもあり、さまざまな情 報交換、商談、交流の場と なっていた。 フィリピンパビリオン を出展したオフショア開 発ゾーンには、フィリピン をはじめ、インド、中国、 ベトナムなどの常連出展 国からの企業に加え、バン グラデシュ、モンゴルなどの出展もあり、互いのブースをのぞ いてみるなど、競争意識が垣間見られた。たまたまパビリオン の前を通りかかった人にも積極的に声をかけて PSIA や各社の パンフレットの配布が行われたていたが、「フィリピンってオ Page 1/6 JETRO 定期報告フィリピン IT 事情 2009 年度 No. 1 (2009 年 7 月 28 日) フショア開発やってるんですか?知りませんでした。」という 驚きの声も聞かれた。日本向けのオフショアソフトウェア開発 では 20 年の実績があるフィリピンだが、中国、インド、ベト ナムと比較すると、まだ「知る人ぞ知る」状態であることを改 めて認識させられる場面もあった。 SODEC 主催者側の発表によると、今年も 11 万人を越える 来場者があったということだ。フィリピンからの出展各社によ る事後評価では、フィリピンパビリオンへの来場者の数には物 足りなさが残るものの、実際に足を運んでくれた来場者や商談 となった案件の「質」はよかったというものであった。 初めてSODECを視察したCICTのイブラヒム コミッショナ ーは、「SODECは、グローバルなICTイベントというよりも、 日本国内市場ビジネスを想定したドメスティックなイベント であるという認識を強く持った。出展している日本企業も外国 企業も、ブース内の説明や配布資料などは全て日本語である。 かえって、今後一層進むであろう日本企業のグローバル化に向 けて、グローバルビジネスのための日比協業モデルの今後の可 能性を感じる。フィリピンは、日本市場に対して、競合他国よ りもずっと洗練されたサービスプロバイダーであるというこ とをもっと強調すべきだと感じる。 」と感想を述べてくれた。 とした受託開発や自社製品開発など。日本とフィリピンの双 方の開発拠点から、オフショア開発、日本国内での開発チー ム構築、オンサイト対応なども可能。フィリピン進出、ある いは日本国内でのフィリピン人技術者採用・育成等も支援。 Ayala Systems Technology, Inc. (www.asj.ayalasystems.com) フィリピン最大の財閥企業アヤラグループの SI 子会社とし て 1988 年に設立。フィリピン、日本、アメリカ、スウェー デン、ドイツ、シンガポールなどに拠点または提携先があり、 グローバルな事業展開に力を入れている。オフショア開発、 オフショアテスト・保守、インキュベーションサポートなど を含む「グローバル・ブリッジ」サービスを提供。 Imperium Technology, Inc. (www.imperium.ph) Ruby、Ruby on Rails、PHPなど、主にオープンソース技術 を採用したソリューション、ネットワーキング、セキュリテ ィ分野における受託開発サービス及びサポートプロバイダ ー。また、バーテラ(Virtela)社のマネージドネットワーク サービスのグローバル販売パートナーでもある。フィリピン 資本100%の企業で、日本事務所もある。 N-Pax Cebu Corporation (www.n-pax.net) パッケージソフトウェア企画、開発、販売、ERPシステムコ ンサルティング、業務アプリケーション開発、BPOなどのサ ービスを提供するセブの企業。売上の70%は米国、シンガポ ール、マレーシア、日本など国外へのサービス提供、30%は フィリピン国内の日系企業を中心とした顧客へのITサービ ス提供によるもの。 4 SODEC に出展した各社の概要 Advanced World Systems, Inc. (AWS) (www.aws-i.com) 東京、マニラ、セブを拠点とする 100%日系資本のソフトウ ェア開発サービス企業。ソフトウェアの設計・開発から製品 保証まで、日本語・英語バイリンガル環境でアウトソーシン グサービスを提供。組込み系、アプリケーション系の両方に 対 応 。 日 本 向 け の オ フ シ ョ ア 開 発 実 績 は 16 年 。 ISO9001:2000 と ISO/IEC27001:2005 認証取得済み。 Tsukiden Software Philippines, Inc. (www.tspi.com.ph) 1990年設立の日系企業で、フィリピンにおける日本市場向 けの組込みシステムとASIC開発アウトソーシングのパイオ ニア的存在。一流のIT技術者が集中するマニラの中心地を拠 点とし、品質保証及びテストサービス、通信アプリケーショ ン開発、ビジネスアプリケーション開発、組込みシステム開 発等のサービスを提供する。 5 フィリピン IT セミナーを 2 回開催 Alliance Software, Inc. (www.alliance.com.ph) セブに本拠をおき、アプリケーション開発を中心としたアウ トソーシングサービスを提供するフィリピン資本の企業。 2000 年の設立以来順調に事業を拡大し、2006 年には日本事 務所開設。LAMP などオープンソース系の開発を得意とする。 ISO9001:2000 認証取得済み。CMMI Level 2. 5 月 12 日、 (財)国際情報化協力センター(CICC)を会場に実 施したフィリピン IT セミナーには、日本側から 21 社 30 名の 参加者があった。CICT のイブラヒム コミッショナー、PSIA のコロネル会長の講演に続き、 (株)サンフレックスの宮崎 敦 夫氏より、「フィリピンのソフトウェア産業に期待すること」 と題する講演があった。中国の人材を活用したオフショア開発 事情に詳しく、またフィリピンのソフトウェア産業界関係者と も交流のある宮崎氏は、次のような点でフィリピン側の日本市 場へのアプローチをよりよくしていくべきであると提言した。 より日本側の視点に立った活動が必要 フィリピンの国としての一体となった活動が重要 PSIA の日本に対するメッセージの具体化が必要 Astra Philippines, Inc. (www.astra.ph) アプリケーション開発と、組込み系ソフトウェア開発を主軸 また、PSIA から SODEC に出展した 7 社が自社紹介を行い、 その後セミナー参加者との間で活発な意見交換が行われたほ か、続く JETRO 主催の懇親会も熱気に包まれていた。 Copyright © 2009 JETRO Manila Center Page 2/6 JETRO 定期報告フィリピン IT 事情 2009 年度 No. 1 (2009 年 7 月 28 日) Q(日本企業):フィリピン人の国民性についてあまり知らない が、どんな感じなのか? A(比駐在 3 年の日本人):仕事柄、30 カ国以上に行っているが、 日本人との親和性という意味でフィリピンが最もよいと感じ ている。カスタマーサービス志向が高いという点も強く感じる。 A(比在住 11 年の日本人):今回、PSIA が作成したパンフレッ トの中に、「フィリピン人は、その陽気な国民性と多様な文化 を融合したな生活様式で知られています。思考は西洋的、気質 はラテン的、そしてアジア的精神を持ち合わせると言われます。 フィリピン人のこうした豊かな天性は、国際舞台で仕事をする 際にユニークな優位性を発揮します。」という一節があるが、 これはフィリピン人を非常によくあらわしていると思う。 Q(日本企業):日本語人材の今後の見通しは? A(比政府からの出席者):JPEPA(日比経済連携協定)が発効 し、日本とフィリピンの間での人の移動も増えると考えられ、 日本語のできる人材も増えていくことは間違いない。 こうした活発な質疑応答を終え、最後にフィリピン政府貿易産 業省(DTI)の協力によって提供されたボホール州バリカサグ島 のダイビングリゾートのペア宿泊券 3 枚の抽選会が行われ、和 やかな雰囲気の中でセミナーが終了した。 CICC でのセミナーで、質疑応答に熱心に聞き入る参加者 続いて 5 月 13 日には、SODEC 会場内でもフィリピン IT セ ミナーを実施した。会場となったのは巨大な国際展示場東京ビ ッグサイトの片隅にある非常に見つけにくい部屋であり、事前 登録制でもなかったためにどれだけの参加者があるか心配さ れた。複数の業界団体に依頼しての事前告知と SODEC 展示会 場でのビラ配りの効果もあり、13 社から 17 名の参加者があっ た。コロネル会長によるフィリピン IT 産業概要紹介、SODEC 出展企業紹介に続いて行われた質疑応答では、以下のようなや り取りがあった。 Q(日本企業): フィリピンといえば、欧米向けのアウトソーシン グサービスで相当の実績があるという印象だが、欧米顧客向け では、最新技術を採用したプロジェクトにも対応しているのか。 最先端技術を活用する実力という面で、当社の経験では中国や ベトナムはいまひとつという評価をしている。 A(PSIA 会員企業 1):例えばフィリピン資本 100%の当社では、 米国最大手航空会社のオンライン座席予約システムや、空港で 使われているキオスクシステムの開発、保守、サポートを提供 している。この顧客からは、さまざまな最新技術の採用要件が 出されるが、十分に対応している。 A (PSIA 会員企業 2):当社では、日本企業、欧米企業ともにサ ービスを提供している。米国企業は、新しい技術が出たらいち 早くまずプロトタイプやサンプルを作ってみたいという要望 が多い。一方日本の顧客は、最初は様子見で、ある程度技術が 成熟してきてから使うケースが多い。新しい OS やツールなど のベータ版が出た段階で様々な試作をする場合など、フィリピ ンの技術者は英語でストレートに新技術を学び、吸収している。 こうしたシーンでフィリピンの強みが発揮できている。 Copyright © 2009 JETRO Manila Center SODEC 会場でのセミナーの様子 SODEC 会場でのセミナー終了後の抽選会で、 ダイビングリゾート宿泊券に当選し、PSIA の コロネル会長(中央)とロケリアノ事務局長(右) から商品を受け取る当選者 Page 3/6 JETRO 定期報告フィリピン IT 事情 2009 年度 No. 1 (2009 年 7 月 28 日) 6 CICT イブラヒム コミッショナーの講演概要 5 月 12 日、(財)国際情報化協力 センター(CICC)において講演を 行ったフィリピン政府情報通信 技術委員会(CICT)のイブラヒム コミッショナー(写真)は、IT ア ウトソーシング(ITO)ならびにビ ジネスプロセスアウトソーシン グ (BPO)拠点としてのフィリピ ンの優位性を日本企業からの参 加者に訴えた。 2004 年から 2008 年までの年 平均成長率が 42%という高成長を続けてきたフィリピンの BPO/ITO 産業は、2008 年には 37 万人以上を雇用し、売上高 は 61 億ドル規模となっている。フィリピンのアウトソーシン グ 業 界 団 体 Business Processsing Association of the Philippines (BPA/P)が公表している 2009 年と 2010 年の業界売 上高見通しによると、世界同時不況の影響が免れない 2009 年 の売上高見込みは前年比 20%~30%増の 72 億ドル~79 億ドル と伸びがやや鈍化するものの、2010 年には持ち直し、同 45% ~50%増の 114~118 億ドルと見込まれている。 2008 年の全世界 BPO 市場におけるフィリピンのシェアは約 15%で、インド、カナダに次ぐ世界第 3 位につけている。イブ ラヒム コミッショナーは、世界市場での成功を収めているフ ィリピンは、日本企業にとっても Win-Win 関係を構築できる有 望なオフショア・アウトソーシング先となりうるとして、聴講 者にフィリピンへの投資または事業取引を強く推奨した。 7 PSIA コロネル会長の講演概要 CICC の橋爪専務理事(左)にセミナー開催協力への 感謝の意を表し、記念品を贈呈する PSIA の コロネル会長(右) 8 JUAS 表敬訪問と意見交換 JUAS は、日本の大手情報システムユーザー企業を中心に、 約 450 社の会員企業をもつ業界団体である。JUAS では、情報 システムの活用を通じて企業の競争力を高めていくことを目 的としている。 PSIA による JUAS 訪問時は、細川泰秀専務理事と三木徹事 務局長に対応していただき、主にソフトウェア開発品質に関し て、プロジェクト管理や品質管理のための指標や、JUAS の調 査結果についての講演をしていただいた。この講義内容やその 後の質疑応答などを通じて、PSIA から参加した企業は、日本 のユーザーとの取引においては品質要件が非常に厳しいこと についての認識を改めて強く持ったようである。 昨年 11 月の PSIA 日本トレードミッション(JETRO 支援)に 続いて、PSIA 会長として 2 回目の訪日となったコロネル会長 は、訪問先の業界団体 JUAS、MIJS や、CICC 及び SODEC を 会場とした 2 回のセミナーで計 4 回の講演を精力的にこなした。 コロネル会長は講演の中で、IDC ジャパンによる「2009 年 日本 IT 市場 10 大予測」の中で「2009 年、日本の IT ベンダー の海外進出が活発化する」と指摘されていることを紹介した。 IDC が指摘するこうした動きの背景としては、1) 日本国内の IT 市場分野の成長性が低いためにビジネスの拡大を求めて海 外に進出する、2) 国内ベンダーに とってのクライアントであ る日本企業の海外展開も常態化しており、それら企業の海外子 会社に対する IT サービス、IT ソリューションの提供機会が増 加している、3) 国内で実績のある IT 製品の海外市場での販売 も重要な拡大戦略である、などの要素があるという。 JUAS での質疑応答の一部を以下に紹介する。 各所での講演でコロネル会長は、日本企業のグローバル化が 今後一層進展する中で、日本の IT サービス企業がグローバル 市場での製品・サービス提供を展開する場合、フィリピンの企 業とのパートナーシップが有効であるというメッセージに力 をこめた。日本企業のバリューチェーンをグローバルに繋げる 役割を果たすフィリピンの強みとして、人材・スキル、英語力、 グローバルプラクティスの経験が豊富で成熟度も高いこと、日 本人との相性がよいこと、その上でコスト競争力も十分にある ことなどを強調した。 Q(PSIA):日本で主に使われている品質基準には何があるか? A(JUAS):ファンクションポイント、ライン・オブ・コード、 人月あたりの不良数という指標は、それぞれ約 20%、80%、 100%の企業が使っている。その他、投資予算に対する不良数 という JUAS 独自の指標もある。これは、システムの受入れ時 点から安定稼動までの間に、投資金額 500 万円当たり何件の不 良が発生するかを指標とするもので、日本のユーザーが許容で きるレベルは、投資金額 500 万円あたり 1 件である。この指標 でみると、日本のシステムの品質はアメリカの 40 倍、インド Copyright © 2009 JETRO Manila Center Page 4/6 JETRO 定期報告フィリピン IT 事情 2009 年度 No. 1 (2009 年 7 月 28 日) の 20 倍高いという調査結果もある。 Q(PSIA): ソフトウェア品質基準は、日本ではベンダーとの契 約において受入れ条件として契約書に明記されるのか? A(JUAS): 契約条件にとはしないほうがよいとアドバイスを している。それは、ユーザー側のスペックも粗っぽい場合が尐 なくないからである。但し、品質の目標値を設定することは重 要だと説いている。明確な品質目標ユーザーとベンダーが共有 すると、たとえ契約書上に明記されていなくても、品質は飛躍 的に改善する。 フト提供企業の利益率は 20%を超えているところが大半 で、パッケージソフト提供企業の収益性の高さが際立つ。 年商 1,000 億円を超える大手企業ユーザー向けの業務アプ リケーションパッケージ市場は、日本国内でも海外の大手 ソフトウェアベンダー製品に圧倒されているが、中堅企業 向けの業務アプリケーションパッケージ市場には、日本製 の優秀なソフトウェアが数多く存在する。こうした日本製 の優秀なソフトウェアを世界市場に展開していこうとい う理念の下で活動しているのが MIJS である。 Q(PSIA): 日本のユーザー企業と取引ができるために、フィリ ピンのソフトウェア企業が取り組むべきことは何か? A(JUAS): ユーザーが納得できる品質を、数値で示した上で保 証できることが重要だ。そのためには、工数と品質と欠陥の関 係をしっかり把握できなくてはならない。但し、データ集めを するだけでなく、開発プロセスの改善に努める必要がある。 JUAS が発行しているシステムリファレンスマニュアルなども 参考にしてほしい。 JUAS での意見交換参加メンバー 「バリューチェーンをグローバルに繋げる」ことを掲げる PSIA は、日本のソフトウェアの海外展開を目指す MIJS との今 後の協業の可能性に期待が持てると感じたようだ。一方、MIJS 副理事長でもある内野氏によると、MIJS 会員企業が自社製品 の英語圏展開を視野に入れた英語化や、品質検証、コールセン ター対応などのニーズが発生することが予想されるというこ とだ。PSIA としても、今後も継続的に MIJS 事務局との連携に 努め、協力スキームの具体化を進めたいと希望している。 9 MIJS 表敬訪問と意見交換 Made in Japan Software コンソーシアム(MIJS)は、 「日本の 有力ソフトウェアベンダーが結集し、製品の相互連携を行って 海外展開および国内ビジネス基盤の強化を図る」ことを目的と する団体である。自社ブランドのパッケージソフトウェア製品 の開発・販売を行っている会員企業 26 社、賛助会員企業 23 社、アーリーステージ会員企業 12 社から成る。 MIJS 事務局長の根岸 敦之氏、ウイングアークテクノロジー ズより代表取締役社長の内野弘幸氏と事業統括本部の松原 大 助氏、Quality Corporation より代表取締役の浦 聖治氏が PSIA 一行を歓迎してくれた。 MIJS での意見交換参加メンバー 内野氏から、日本のパッケージソフトウェア業界事情と MIJS について以下のような説明があった。 日本の IT 産業の特徴として、企業の情報システムは受託 開発ソフトが 8 割以上、パッケージソフト利用は 2 割未満 にとどまっており、パッケージソフト利用が 6 割以上を占 める米国市場とは大きく異なっている。 一方、ソフトウェア産業全体の売上高経常利益率の分布を 見ると、受託ソフト開発を手がける SI 企業の利益率がほ とんど 10%未満にとどまっているのに対し、パッケージソ Copyright © 2009 JETRO Manila Center Page 5/6 JETRO 定期報告フィリピン IT 事情 2009 年度 No. 1 (2009 年 7 月 28 日) 10 PSIA コロネル会長の寄稿文 - 「PSIA:バリューチェーン をグローバルに繋げます」 東京ミッションを終えて帰国後、PSIA のコロネル会長より、 今回の活動を振り返って寄稿を頂いたので以下に紹介したい。 今回の訪日では、SODEC 出展によって日本市場をターゲッ トとする PSIA 会員企業 7 社を日本の皆様にアピールしただけ でなく、今後 PSIA の会員企業とのパートナーシップ構築の可 能性のある団体・機関との接点を持つことができました。 これは、 MJIS (Made in Japan Software Consortium) や JUAS (日本情報システムユーザー協会)との面談・意見交換の 場のアレンジや、セミナー開催にご尽力をいただいた JETRO、 CICC、在日フィリピン大使館商務部、など皆様のご協力によ るものと感謝いたしております。 今回日本の皆様との議論を通じて、日本の情報システム市場 は、パッケージシステムの導入が大半を占める米国と大きく異 なり、各ユーザー企業向けのカスタムソフトウェアの受託開発 市場が大半であることを改めて認識しました。そんな中、日本 のソフトウェアベンダー企業が、日本の国内市場を飛び出し、 海外市場への展開を望んでいることも知りました。これは、フ ィリピンのソフトウェア業界にとって、グローバル市場を目指 す日本企業との協業のチャンスが大いにあることを感じさせ ます。フィリピンの企業は、日本国内市場向けのアプリケーシ ョンソフトウェアの開発段階やインストール段階での支援が 可能ですし、日本製のアプリケーションをグローバル市場に展 開する際にはインプリメンテーションや運用段階での支援も 可能です。 11 まとめ PSIA 会長率いる 7 社による今回の訪日では、日本最大のソ フトウェア産業の展示会である SODEC へのフィリピンパビリ オン出展と、それにあわせた 2 回のセミナー開催、2 つの業界 団体訪問による意見交換など精力的な活動が行われた。 SODEC を終えてフィリピンに戻ってから行われた反省会では、 「対日ソフトウェアサービス輸出拡大に向けて、PSIA が今後 取組むべき施策への示唆に富む訪日であった」という報告がな された。 今後取組むべき施策としては、昨年 11 月、今年 5 月の日本 訪問で意見交換を行った複数の日本の業界団体との連携強化 による現地プレゼンスの向上と市場ニーズの理解、日本市場戦 略のロードマップ作成、日本語人材育成、日本市場グループ会 員数の拡大、日本企業にとって馴染みのあるソフトウェア品質 指標でフィリピンの品質レベルを示す、などの案が議論された。 今回の東京での活動全般に同行した CICT コミッショナーの イブラヒム氏も IT 分野のアウトソーシング取引拡大のための 政策推進に強い意欲を示している。PSIA では、こうした政府 機関との繋がりも最大限に活かしながら日本市場向けの取組 み・活動を支える資金確保に動き出している。 JETRO 定期報告フィリピン IT 事情 2009 年度 No. 1 終り 今回お会いした方々は、こうした考えにご賛同いただけたよ うですし、今後真剣に検討していただけるものと思います。 日比の協業が今後発展するためには、2 つの大きな課題があ るとも認識しました。 1 つ目は、日本語と英語でのコミュニ ケーションができるブリッジエンジニアが必要であることで す。フィリピン人のソフトウェア開発者への日本語教育も必要 ですし、一方では、日本人のシニアな方々で、英語ができ、日 本では退職したがフィリピンでもうすこし現役として頑張っ てもいい・・・と思っていらっしゃる方にご活躍いただくこと も考えるべきでしょう。 2 つ目は、日比の企業が、共通の品質基準、品質方針、品質 目標を持つべきだということです。フィリピンのソフトウェア 企業の多くは、実際に成熟したプロセスと品質への高い意識が ありますが、日本の企業との協業をスムーズに行うには、品質 に関してどのような指標を使い、どのレベルを目標にするのか、 両国の企業が共通の認識の下で進めることが必要です。 プロジェクトのチャンスをいただけば、そのプロジェクトの 実践(デリバリー)には自信があります。今、フィリピンにと ってのチャレンジは、日本のお客様との接点をもち、フィリピ ンには実力があること、フィリピンはバリューチェーンをグロ ーバルに繋げるためのパートナーとなりうることを納得して いただくことです。 Copyright © 2009 JETRO Manila Center Page 6/6