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SEAケーススタディ2 EUのSEAに関するケーススタディ

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SEAケーススタディ2 EUのSEAに関するケーススタディ
【資料6−1】
○SEAケーススタディ2
EUのSEAに関するケーススタディ(1997年2月)
1.アントワープ−ロッテルダム間の高速鉄道(HSR)に関するアセスメント・・・ 2
(ベルギー、オランダ)
2.農業地域の区画整理計画(ベルギー)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
3.デンマーク国土利用計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
4.ノルディック・トライアングル(ノルディック諸国の首都を結ぶ交通ネット・・12
ワーク)のフィンランド部分(フィンランド)
5. 国家廃棄物管理計画(フィンランド)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
6. Rennes市の土地利用計画と土地占拠プラン”plan d'Occupation des Soles"・ 17
(POS)”(フランス)
7.イブリン(Yvelines)における石切場(quarries)の特別なゾーン(フランス)・・・19
8.アイルランド全国開発計画(1994-1999)・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
9.アリヴィェール(Arvier)地方土地利用管理計画(イタリア)・・・・・・・・25
10.ゲルダーランド(Gelderland)第3次地方廃棄物管理計画(オランダ)・・・・28
11.全国飲料水供給計画(オランダ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
12.ザーンスタッド(Zaanstad)住宅地域計画(オランダ)・・・・・・・・・・・34
13.全国電力供給構造計画(オランダ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
14.ポルトガル全国開発計画(1994-1999)・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38
15.デニス合意(スウェーデン)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
○
16.Alingsas 市エネルギープラン(スウェーデン)・・・・・・・・・・・・・・ 42
17.コルスタ・ペータースビック(Korsta-Petersvik)土地利用計画(スウェーデン)・44
18.スロベニアの交通政策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47
- 1 -
1.アントワープ−ロッテルダム間の高速鉄道(HSR)に関するアセスメント( ベルギー、
オランダ)
(1)対象となる計画の概要(AⅠ)
パリ-ブリュッセル-ケルン-アムステルダム-ロンドンを結ぶヨーロッパの高速鉄道
網 'PBKAL project' の一部で、ベルギーのアントワープとオランダのロッテルダムを
結ぶ区間。
(2)SEAの根拠と実施主体
オランダとベルギーの交通省が主となってSEAを実施した。(実際のSEAを実施し
たのは、オランダとベルギーのコンサルタントチームであり、両国の政府、専門家及
び鉄道会社からなる約40人のワーキングチームが密接に監督した。)
具体的なSEAの手続は、両国それぞれの規定及び両国間の合意に基づき実施された。
(3)環境影響評価の項目(BⅤ)
影響
指標
建設地域
presence and interlink of functions、観測者による評価。
景観
オープンスペース、空間構造、文化的・歴史的遺産、高さ、形
状、土地占有。
動植物
ビオトープの減少、攪乱、細分化。
土壌及び水
土壌の堀削、土壌の圧縮と構造変化、土壌汚染、地下水保護地
域の横断、土壌保護地域の横断。
レクリエーション
利便性、レクリエーション利用の可能性、
代替地の可能性、魅力。
森林・農業
消失面積、細分化、影響を及ぼす人数。
騒音
影響を及ぼす人数、静寂地域の妨害。
※なお、一次エネルギー消費、大気汚染、CO2排出、交通安全については両国合同のSEA手
続に先立って行われたベルギーの手続(Multi-modal SEA)で評価されている。
- 2 -
(4)代替案の概要及び位置づけ(BⅦ)
最初の両国合同WGによる代替案に関する報告書( 'On the right track' )をもとに、
両国合同のSEA手続における代替案を検討した。報告書に示されている14の代替案を若
干修正し、同じ14の代替案を設定した。ただし、詳細な評価は、比較検討により絞り
こまれた以下の2案についてのみ行った。
①
The harbour alternative GH-FH:Zandvliet において国境を越える案。
②
a new HSL line parallel to the E19-F:Hazeldonk において国境を越える案。
なお、HSRを建設するこれらの代替案2案に加え、HSRを建設しない現状維持シナリオ
についても評価を行った。
(5)その他の社会影響評価の項目(DⅡ)
両国合同のSEA手続において、環境影響とその他の影響(空間的影響、交通影響、費
用)を比較検討しようと試みたが、手法が確立されていなかったため、それぞれの側
面のトレードオフを定性的に評価した。
なお、両国合同のSEA手続に先だって行われたオランダの手続では、時間短縮、費用、
経済波及、不動産、商業、旅行、通勤・通学といった社会経済的な影響についても評
価されている。
(6)公衆の参加(C)
フランダース地域では公衆の参加はアントワープ−ターンハウト地域計画の改訂に
併せて行われた。30日間の縦覧、コメントと質問に2ヶ月が用意された。積極的な
周知が図られたため、23000のコメントが寄せられた。オランダでは、公衆の参
加は1994年に第二次HSR報告書の公表に併せて実施された。手法については、フラ
ンダース地域を参考として実施された。
(7)SEAの結果と政策への反映(D)
SEAの結果では、②案が環境への影響が低いとされた。
計画の最終決定は、1996年5月下旬に両国によって行われ、②案が採択された。
SEAの結果は、計画の決定を拘束するものではないため、計画決定にどの程度影響を
与えたのかを評価することは困難である。
今回の場合は、最も費用の少ない案と最も環境への影響の少ない案とが一致したた
め、費用と環境保全の対立の問題は起こらなかった。
(8)全体の評価(E)
この事例では、それぞれの国の手続と両国合同のSEA手続が複雑に繰り返されている
が、国境をまたぐ計画においては効果的であった。このSEAで用いられた手法や両国合
同WGの創設は、同じような事例において効果的であることが示唆されている。
- 3 -
(9)実施されたSEAの手続(25-26page)
ベルギー/フランドル地方
1984
多国間
オランダ
PBKAの可能性検討の
ためのWG設置
PBKAに関する報告書
1988
公表(交通に関する将
来予測を含む)
1989
PLBKA全体に関する
Multi-modal SEA
ベルギー国内のHSR
に関する環境影響評
価(アントワープ以北
は、代替案はLine12
のみ)
1990
ベルギー政府による
ルート選定
1991
地域計画におけるル
第一次のHSLに関する
ートの明確化(アント
報告書公表(ベルギー国
ワープを除く)
境までの代替案につい
評価)
国民との協議
追加調査と交通予測の
施決定(運輸大臣の決定
1993
第一次両国合同WGの
設置
'Track to 2010' の公表
(交通予測と実現可能な
案を含む)
SEA(アントワープ-ロ
ッテルダムの代替案の
- 4 -
検討、'On the right
track'の公表)
1994
両国合同WGの設置
(1994.12. 1)
事業決定手続第3段階
(第二次HSR報告書の公
表、国民との協議)
1995
アントワープ-ロッテル
ダムの代替案の比較検
討結果の公表(1995. 9)
地域計画改訂に関
する住民との協議
地方自治体との協
議、省庁間の協議
(1995.10-12)
1996
最終報告書
'Comparative Study'の公
表(国民との協議の結果
を含む)(1996. 5)
省庁間協議(1996. 4)、
ルート決定(1996. 5)
地域計画策定(1996
閣議決定(1996 春)
春)
1997
事業決定手続第4段階
(報告書公表)(1997 春)
プロジェクトごとの
環境影響評価手続
2003
操業開始
操業開始
/2005
- 5 -
2.農業地域の区画整理計画(ベルギー)
(1)対象となる計画の概要(AⅠ、Ⅱ)
ベルギーにおける農業地域の区画整理計画。ベルギーのフランダース地方では、19
96年までに120の区画整理事業が完了し、16の事業が実施中、18のプロジェクトが調査
段階にある。ここではHammeとRavelsの2事例が取り上げられている。
・Hamme :アントワープ、ブリュッセル、Gentに囲まれた、Hamme、Dendermonde、Zele、
Waasmunsterの4町にまたがる地域における区画整理計画。対象地域全体の
面積は約1,800ha。道路建設事業なども含む。
・Ravels:アントワープのRavelという町の1,381haを対象とする区画整理事業。道路
建設事業なども含む。
(2)SEAの根拠と実施主体
ベルギーのフランダース地域のEIA手続では、いくつかの代替案から一つの案を選定
してから、正式なEIA手続に進むことになっている。正式なEIA手続の前段階において、
以前はだいたい3つの対照的な代替案に対して詳細な検討により案の絞り込みが行われ
ていたが、1996年からは、プロジェクトの一部のみが含まれている途中段階の代替案
について検討を行い案の絞り込みを行ってもよいことになった。
したがって、本事例の場合も、計画に対するアセスメントは2段階に分かれている。
一つは計画レベルでのアセスメントでこれは計画策定と併せて行われている。もう一
つは、環境影響評価令(1989)に基づいた最終案に対するアセスメントであり、
選択された1つの案のもたらす環境影響に限定されている。
正式なアセスメントは区画整理計画の作成担当省庁と省庁外の専門家との共同チー
ムによって行われた。このチームはEIAボードと呼ばれており、EIAボードのメンバー
はそれぞれ独自に作業に対して責任を有している。
(3)環境影響評価の項目(BⅣ)
・Hamme:水、土壌、動植物、景観、住民への影響(生活環境及び騒音、レクリエーショ
ン、交通及び交通利便性、農業技術への影響及び農業生活の変化による影響)、
間接的影響(農地開拓の増加に伴う動植物の減少、農業重視に伴う生活、レク
リエーションなどの他の機能の損失、区画整理に伴う森林伐採の増加、道路建
設に伴う野外レクリエーションの増加、地域の交通利便性向上に伴う交通環境
の変化)。
・Ravels:限定された地域への影響(景観、動植物、土壌及び水)、地域全体あるいは
それ以外の地域への影響(大気、水、土壌、動植物、遺跡・景観・material
goods)。
(4)代替案の概要及び位置づけ(BⅠ )
正式なEIA手続では、その前の手続ですでに絞り込まれた一つの案を、現状のままな
にもしない案を比較対象に評価している。
- 6 -
(5)その他の社会影響評価の項目(EⅢ)
前述したとおり、Hammeの事例については住民への影響といった社会影響評価の項目
が対象となっている。また、環境影響評価の項目とは別の章での取り扱いになってい
るが、雇用についての評価が行われている。正式なEIA手続の前の代替案の絞り込みの
段階では、環境影響だけでなく経済的影響や社会的影響も考慮されている。
(6)公衆の参加(c)
正式なEIA手続では、公衆参加の規定はない。このため、計画案のみが公表された。
公衆は計画案に対して反対のみ表明できる仕組みであった。
(7)SEAの結果と政策への反映(B,D)
それぞれのSEA文書には以下のような記述がなされている。
・Hamme:SEA結果文書には、区画整理計画の実施前の状況を参考ケースとして、区画
整理計画が与える影響(土壌、水、植物、動物、景観などが強調された)が記
述された。また、直接影響と間接影響の両方が書かれた。また、計画地域の外
の事業の実施による影響も考慮された。さらに、環境影響を最小化する手法の
概観が書かれている。
・Ravels:Hammeの場合と同様に参考ケースが記述されており、大気、水、土壌、植物及
び動物、遺跡、景観等についての環境影響が書かれている。環境影響について
は、10のサブ・エリアを設定して、サブ・エリアごとに記述され、さらにそ
の結果が全体としてまとめられている。また、悪影響については緩和する方法
又は防止する方法が記述されている。
正式なEIAが厳密な意味で、計画策定レベルにはなかったため、意思決定プロセスへ
のSEA結果の反映は限られている。したがって計画に対する基本的な変更はできな
かった。しかしながら、計画の策定過程には、環境影響評価が盛り込まれており、計
画の策定者とSEAの実施者も同一であるため、環境影響評価の結果は一定程度反映
されたと考えられる。
(8)全体の評価(E)
正式なEIA手続では既に一つの代替案に絞り込まれているという点で、この事例は、
正確にはSEAであるとはいえない。しかし、正式なEIA手続の前の手続で、代替案の絞
り込みまで行うこの手法は、手続の透明性や明確さを欠いてしまうという欠点はある
ものの、手続の自由度が飛躍的に高まることを考えると、同じような事例への適用可
能性は高いと言える。
また、正式なEIA手続の評価方法は定性的で主観的な面も見られるが、異なった環境
項目、あるいは環境以外の項目を評価するという手続の目的には十分である。
- 7 -
(9)実施されたSEAの手続(F)
対象地域の調査
問題点の評価
計画の概念の検討
計画案の検討
・代替案の評価
・大臣による暫定計画案の選定
正式なEIA手続
計画案の有用性に関する国民意見
計画案の有用性に関する大臣の宣言
計画の実施段階:計画に関する委員会設立
plan article 70 の策定
計画案、plan article 70に関する国民意見
計画の実施
- 8 -
3.デンマーク国土利用計画
(1)対象となる計画の概要(AⅠ)
新しい全国土地利用計画であり、この計画は、土地利用計画であるとともに、公共
資本や交通のような他の国家レベルの計画の「傘」となる機能を有している。計画策
定は法に基づいており、国会で採択される。これまでこの計画は公式に採択されたこ
とはないが、国土利用計画を策定する試みは、1992年に'Denmark towards 2018'が策
定されるなど、いくつか行われており、今回の全国土地利用計画もその計画の有効な
ベースとして使うことができる。計画には次の2つの地球規模でも目的がある。
・国土利用に関するヨーロッパの決定に影響を与えること。
・競争的であり、かつ魅力的なデンマークの国土利用を確保すること。
この計画では、デンマークを「ヨーロッパの家の緑の部屋」で在るべきとして、以
下の3つの目標を示している。
・バランスのとれた都市構造
・環境へのアクセス可能性(インフラの整備)
・自然的・文化的遺産
(なお、新しい全国土地利用計画は1996年9月中の策定予定であったが、最初の計画案
が検討の結果採用されなかったために予定が遅れ、9月から10月初旬までに修正版計画
案が再度検討される予定である。このため、1996年1月に提出された当初の計画案とそ
の環境影響評価を入手し、それに基づき事例調査を行った。)
(2)SEAの根拠と実施主体(B)
1995年の首相の指示に基づく。この指示は、計画が環境に重大な影響を与える
ものである場合には、国会に提出される法案と同様にアセスメントを行うべきである
としたものである。
このアセスメントは、デンマークで最も大きなコンサルティング会社2社によって、
環境省と密接な協力を行いつつ実施された。
また、このアセスメント手続は、計画策定者に対し、よりよい環境配慮を行うため
の基礎データを提供するために計画策定手続と平行して行われた。したがって、計画
策定者がアセスメント手続に関与することができた。
SEAの目的は、以下の3つである。
・国家利用計画の環境への影響を評価する方法を開発すること。
・この特定の計画の環境への影響を特定すること。
・計画の策定による負の影響に対して環境保全手法を特定すること。
(3)環境影響評価の項目(BⅣc)
事例調査のもととした資料には、環境影響評価の項目が記されていないが、水、大
気、動植物、人の健康、安全性、文化的遺産、交通利便性、土壌といった見出しが書
かれていることから、環境影響評価の項目についてはおおよそこの程度であろうと推
測できる。
- 9 -
(4)代替案の概要及び位置づけ(BⅣ b)
新しい全国土地利用計画で提案されているプロジェクトを追加して実施する案と参
考のための代替案としての旧全国土地利用計画その他で既に決定しているプロジェク
トのみを実施する”何もしない案”(no action alternative)の2案。ただし、議論
の過程ではその他のシナリオも検討された。
(5)その他の社会影響評価の項目(BⅣc)
社会経済的な影響については、複雑になりすぎるためという理由で評価されていな
い。
(6)公衆の参加
計画とアセスメントの結果は10週間縦覧された。その結果、160の回答が寄せ
られた。
(7)SEAの結果と政策への反映(BⅥⅦ、D)
SEAは、チェックリスト方式で行われた。影響が重要であるようなパラメーター
について記述がされており、またその影響とミティゲーションについては強調されて
いるが、影響が重要だと評価した方法やスコーピングの方法、不確実性、予測方法等
については記述されていない。
SEAと計画の策定者が同一であるため、SEAは計画策定に一定の影響を与えた
と考えられるが、SEA報告書で述べられているように、計画手続に従属的なものと
して実施されており、計画案に対して実質的な質の変更を加えるものではなかった。
(8)全体の評価(BⅩ、D、E)
この事例は、非常に野心的な目標を掲げて行われたが、結果ははかばかしいもので
はなかった。また、パイロット調査として行われた面もあり、全国的な計画に適用す
べきよりよいSEA手法の開発も目的の一つとなっているが、この目的にかなう結果は得
られていない。
この事例においてSEA手続は、計画立案手続と同じ担当者により、同時に手続が進め
られているが、SEAが計画立案に比べ軽んじられている。SEAの報告書にはスコーピン
グの内容やバックグラウンドデータすら記載されておらず、手続の透明性は低い。全
国的な計画のように、包括的な内容の計画に関するSEAでは特に、広く入念なスコーピ
ング手続が重要であり、いくつかの代替案を検討する必要がある。この事例が示すよ
うに、比較対照として現状維持案のみを検討するのは失敗につながる。また、なるべ
く早い段階で、広く入念なスコーピングにより複数の代替案を設定して、有識者等の
意見聴取を行うべきである。
- 10 -
(9)実施されたSEAの手続(BⅨ)
SEA
計画策定
計画策定手続開始
('95 春)
SEA手続開始
('95 夏)
計画案のSEA
計画案策定
('96. 1)
('96. 1)
計画案及びその評価に関する有識者等意見
('96. 1- 3、10週間)
修正版計画案のSEA
('96. 5- 9)
修正版計画案策定
('96. 5- 9)
修正版計画案及びその評価に関する有識者等意見
('96. 9-11、10週間)
計画策定
('97. 1)
- 11 -
4.ノルディック・トライアングル(ノルディック諸国の首都を結ぶ交通ネットワーク)
のフィンランド部分(フィンランド)
(1)対象となる計画の概要(AⅠ)
フィンランド、スウェーデン、デンマークの首都を結ぶ交通網 'Nordic Triangle'
のフィンランド国内部分。個々のプロジェクトとして、トゥルク-ヘルシンキ-Vaini
kkala鉄道、E18高速道路、南岸の港、ヘルシンキ-Vantaa空港が含まれる。
(2)SEAの根拠と実施主体(AⅡ)
この計画に関するSEAは、交通・通信省により実施された。フィンランド初のSEAで
あるため、パイロットスタディ的に実施された。規制的な枠組みはなかったが、ノル
ディック・トライアングルの複雑で分野横断的な性質に応じて始められた。したがっ
て、SEAの結果を意志決定に反映するという「戦略的」な手続はなかったが、1996
年から1999年にかけた個別の事業に関する意志決定を支援することが目的であっ
た。
(3)環境影響評価の項目(BⅢc)
生物多様性、文化的遺産、地下水、居住地域、レクリエーション地域、エネルギー
消費など。
(4)代替案の概要及び位置づけ(BⅢb)
もともと 'Nordic Triangle' に含まれる個々のプロジェクトは別々に計画されたも
のであり、'Nordic Triangle' としての代替案の設定が困難であったため、現実的な
案ではなく、幅広く極端な以下の4つの案を設定した。
・シナリオ1:'Nordic Triangle' に含まれるすべてのプロジェクトを実施。
・シナリオ2:鉄道を中心としたシナリオ。'Nordic Triangle' に含まれるすべての鉄道
プロジェクトと1996年以前に着手されている道路プロジェクトを実施。
・シナリオ3:道路を中心としたシナリオ。'Nordic Triangle' に含まれるすべての道路
プロジェクトと1996年以前に着手されている鉄道プロジェクトを実施。
・シナリオ4:1996年以前に着手されているプロジェクトのみを実施。
(5)その他の社会影響評価の項目(BⅢc)
構造的社会的影響が評価されている。具体的な項目は交通基盤、旅客交通、産業の
配置、雇用、土地利用など。
(6)公表(C)
関係団体と専門家に対するインタビューが行われ、また、しばしば新聞によって取
りあげられた。計画策定中のプレスリリースは4回行われた。
- 12 -
(7)SEAの結果と政策への反映(D)
このSEAは、実際の代替案を基礎としたものではなく、基礎となるデータも不足して
いたが、結果は非常に野心的なものとなった。
このアセスメントの目的は個々の事業に関する意思決定の支援であったが、法的な
枠組みや関連がないため、個々の事業毎に考慮されることとなる。
1995年の12月にアセスメントが終了してから1∼2の事業決定が行われてい
るが、ノルデイック・トライアングルに関する将来の決定への影響は今後まだまだ注
視する必要があるだろう。
(8)全体の評価(E)
この事例は法的に義務づけられた手続ではないため、政策決定手続というよりはパ
イロット調査という方が適当であるが、このパイロット調査を通じて、ノルディック
・トライアングルや交通政策・計画一般についての重要な結論が得られた。そして、
すべての交通計画策定にあたって、できるだけ早い段階で、SEAを統合して行うことの
必要性が示唆されている。
(9)実施されたSEAの手続(BⅧ)
環境影響
'Nordic Triangle'
・定義
・定義
・現状
・交通流
・土地利用
専門家ヒアリング
シナリオの明確化
セミナー
・暫定的な代替案についての議論
各シナリオについての検討
結論
報告書の作成と公表
- 13 -
5. 国家廃棄物管理計画(フィンランド)
(1)対象となる計画の概要(AⅠ, BⅢb)
法律で規定されたフィンランドの廃棄物管理計画。対象年次は1996年∼2005年。計
画は、廃棄物管理に関する現状、目標とその達成のための施策を内容とするものであ
る。
時間的制約などの理由により、この廃棄物管理計画の対象とする廃棄物のうち、工
場からの廃棄物、建設廃棄物、農林業からの廃棄物を除く、家庭からの廃棄物及びそ
の他の廃棄物のみがSEAの対象となっている。
(2)SEAの根拠と実施主体(AⅡ)
フィンランド環境庁によるボランタリーベースのSEAであり、パイロットスタディと
して実施された。アセスメントはフィンランド環境庁の職員1人によって、計画策定
グループと協力しつつ実施された。計画策定グループは、環境省、環境庁、地方環境
部局、廃棄物会社等からなる8人のメンバーで構成されていた。
SEAの主な目的は、代替案とその環境影響についての情報を提供することである。
(3)環境影響評価の項目(BⅢc)
具体的な項目については記載なし。
(4)代替案の概要及び位置づけ(BⅢb)
どのような要因が廃棄物の排出に影響するのかを明らかにできるように、以下の3つ
の案を設定した。
・シナリオ1:2005年まで、前年に比べた毎年の廃棄物増加量は、1994年実績と同じとす
る。エネルギー利用を目的とした廃棄物の分別は排出者が行う。経済、そ
の他の要因は廃棄物削減に作用するものとする。この時既に検討が進んで
いた廃棄物策定計画に沿うシナリオである。
・シナリオ2:2005年の廃棄物排出量は1994年実績に比べ25%増加。廃棄物の分別は収集
後に行う。経済、その他の要因はシナリオ1ほど強く作用しない。
・シナリオ3:2005年の廃棄物排出量は1994年実績に比べ約20%減少。家庭からの廃棄物
はエネルギー利用目的には用いない。廃棄物削減はリサイクルによるもの
で、経済、その他の要因が廃棄物削減に強く作用する。
(5)その他の社会影響評価の項目(BⅢc)
社会経済的影響が評価されている(具体的な項目については記載なし)。
(6)公衆の参加(C)
公衆参加は、関係者(省、地域エージェンシー、地方自治体、廃棄物管理連合)間
のみで行われた。手法としてはインタビューと質問票が用いられた。参加は手続の全
ての段階で行われた。
- 14 -
(7)SEA結果の政策への反映(D)
このアセスメント手続の主な特徴は、廃棄物管理市場の主な関係者(省、地域エー
ジェンシー、地方自治体、廃棄物管理連合)等を手続全体を通じて参加させたことに
ある。
SEAの結果は廃棄物管理計画に大きな影響を与えることはできなかった。計画の初
期段階で議論された、予め定められた目標、原則、行動が計画提案の基礎となった。
また、代替案は計画には記述されなかった。
(8)全体の評価(E)
この事例はフィンランドで二番目に行われたSEAであり、法的に義務づけられた手続
ではないため、パイロット調査といえる。SEAの手続が始まる時には既に、廃棄物管理
計画の検討が始められており、SEAを計画策定の手続に統合して行うことはできず、同
時並行的に行われた。この事例では、政策決定において代替案を検討するなどの系統
的な手続が必要であることが示唆されている。
- 15 -
(9)実施されたSEAの手続(BⅦ)
廃棄物管理計画策定手続
SEA手続
廃棄物管理計画策定手続開始
(1994. 8)
概略案作成(1995. 5)
SEA手続開始(1995. 5)
SEA予定公表(1995. 6)
計画案公表(1995.10)
SEA報告書案公表(1995.11)
計画案に関する協議
(1995.11)
第一次案公表(1995.12)
SEA第一次案公表(1995.12)
第一次案に関する協議
(1996. 1- 2)
SEA報告書(1996. 4)
廃棄物管理計画策定
(1996. 5)
- 16 -
6. Rennes市の土地利用計画と土地占拠プラン”plan d'Occupation des Soles"(POS)”
(フランス)
(1)対象となる計画の概要(AⅠ)
レンヌにおける土地利用計画。POSは1976年の第10法により、基本的な方針が定めら
れ、都市化計画は環境問題を尊重しなくてはならないとされた。1977年7月7日の法令
によって、POSは以下の4ドキュメントを含まなくてはならないとされた。
・ 提出報告書の概要:POSの主題について説明したもの。
・ 図式のドキュメント:都市の規制や、保存する土地、保護する森などを地域によって提
示したもの。地域は大きく分けて、都市化ゾーンと、自然ゾーンの2つに分類。
・ 規定:図式版の各ゾーンに関する15の項目を含む規定をもうけること。
・ 付録:環境の分野に関する追加的な情報。
(2)SEAの根拠と実施主体(BⅠ)
4つの法がPOSの環境面での配慮の基礎となっている。
・10法(1976.7):自然保護
・7法(1983.1):地方分権
・12法(1983.7):民主的公開質問と環境保護(the democratisation of public en
quiries and the protection of the environmental)
・18法(?):空間計画の原理の定義及び実行
(3)環境影響評価の項目(BⅣ)
・人口:地域別人口、地域別人口密度、年齢層別人口増加、専門領域あたりの再分配、
地域の民族ごとの再分配、地域ごとの人口流動性、1990年の活動別新規流入人口、移
住の進展、自動車社会化レベルの進展
・土地利用:地域別面積、地域別市街地面積、緑地及び公園面積、水、輸送網の長さ、
廃棄の工業用建築物及び土地面積
・住宅に関する指標:主要住宅種類、部屋数による住居区分、住居の質、住宅の状態、
在庫住宅の再分配、住居の居住率、都市の再建・修復計画、計画中の都市計画
・都市の流動性の指標:下水設備網、下水設備可能住居割合、水処理基礎施設、imperm
eability係数、区域暖房システムを使用可能地域、地域のcontainer parks、公共輸送
設備との接続、地域別交通量
・都市環境質に関する指標:地域別空気質、騒音、ごみの分別回収、洪水に弱い地域の
割合、高い環境基準の区域の存在、生態の生息地の質に関する指標の存在、耕作地の
存在、都市の景色及び公共地域の一般的な質、公共緑地への便、スポーツ施設の存在、
社会施設の存在、文化施設の存在、その土地の商業サービスの数、学校の存在、大学
施設の存在、市民施設の存在、重要文化遺産、地域重要性のある文化遺産、工業の影
響力の重要性と地域でのサービス、危険活動の存在、環状路の存在、長距離観光用歩
道の存在、市民菜園の存在、将来VALが横切る地域
- 17 -
・社会指標:具体的な計画が実行中の地域、社会地域問題、問題に対処している地域人
口、地域の安全性、地域の文化的社会的活動
・発展に関する指標:地域の発展周期性、衰退及び再興地域、地域で計画された大規模
な計画があるか?、地域の潜在能力、優先的環境目的の提案
(4)代替案の概要及び位置づけ(BIV)
レンヌに関するPOSの代替案は今のところほとんどない。
(5)その他の社会影響評価の項目(DⅡ)
(3)の環境影響評価の項目に記載。
レンヌの場合、協調する基礎組織や地域共同体の会議などによって、社会経済的査
定や、財務分析などを行う。
(6)公衆の参加(C)
公衆の参加ではなく、商業の代表者など、一定の関係者に対する協議が行われた。
(7)SEAの結果と政策への反映(DⅠ)
一般的に次の認識がある:交通フローや重要な交通インフラの位置に関する戦略的
な意思決定は、”Schema Directeurs(SD)"の上位のレベルで取り入れられる。POSにお
ける環境面は、ランドスケープや自然に限定され、また非常に短い(数頁)ものであ
る。POSの質的評価は、POSの中の空間的事業の実行に部分的に有利なように行われる
場合がある。
レンヌの事例は、当初よりPOSに環境を取り込むことの重要性を示している。また、
都市レベルで目的を決定することが可能であることを示している。
注:SD:約40の自治体をカバーし、将来20年間の発展のフレームワークを提供し、POSの上位のレベルの計画
(8)全体の評価(EⅠ、Ⅱ)
環境アプローチは、地方自治体が環境問題について広い意味で考察出来るように、
明確で独立した文書によって形成されるべきであるが、その意味ではPOSは模範的と言
える。しかし、横断的であるためには、提出報告書に最も重要な環境に関する問題や、
挑戦を地図にして載せるべきである。また、手順、とりわけ研究の質、地方自治体の
サービスに関する協議、そして公の参加についての規則を定義するべきである。
レンヌのPOSは、短期のビジョンで地域問題のみを取り上げているが、長期的で幅広い
ビジョンであることが要求される。
- 18 -
7.イブリン(Yvelines)における石切場(quarries)の特別なゾーン(フランス)
(1)対象となる計画の概要(AⅠ)
フランスのlle-de-France地域のイブリンにおけるセメント超過需要に応えるための
土地開発。そのための石切場(quarries)として選ばれた場所は開発だけを考慮する
のではなく、環境アセスメントを含む査定が必要となる。
(2)SEAの根拠と主体(BⅠ)
law of4(1993.1)では、計画アクティビティーに対する環境影響の評価を含む新し
い手続きが導入された。主な関係主体は工業省、lle-de-France地域の環境保護局、地
方自治体等である。
(3)環境影響評価の項目(BⅠ、Ⅲ)
”Presentaion generale du project de creation・・・”では、計画アクテイビティ
ーにおける経済環境の側面の6つの研究からなる。
① 計画の一般的な状況と提示
②
経済的、技術的要素
③
地質学的資源の研究
④
スペシャルゾーンの選択における活動の環境的影響に関する正当化
・
提案されたゾーンでの開発手順の直接的スキームに関わる制約分析
・
選ばれたゾーンにおける制約の一覧表
可能性のあるゾーンの選定と評価は2つのステージで行われている。最初のステージで6
つのゾーンが選定された。この選定のクライテリアは以下の4つをもとにしている。
①
地理
②
経済
③
④
技術
環境
特別なゾーンのアセスメントの要素は、3つのクライテリアが考慮された。
①
使用可能原料の保存
②
③
最も重要な技術的extraction constraints
環境保護(4つの主要な要素は以下のとおり)
・保護的な距離:開発用地と住居地区の間に、騒音や振動などから保護されるだけの
距離があること
・ 森林地帯:森林地帯は鉱床の20∼30%を覆っており、異なる規制によって保護され
ている
・ランドスケープ:スペシャルゾーンが住居地区や交通路から見える状況では、特別
な”ランドスケープ”という基準が必要となるかもしれない
・エコロジー(植物、動物):野菜や動物は地方の規準によって保護されている
- 19 -
影響及び代替案の範囲は制約目録(inventory of constraints)に基づく
・地質学的資源
・開発におけるプロジェクトの法律上の制約
・環境の経済的
・ランドスケープの価値
・農業資源
・森林利益
・住居地域の騒音の感受性
・輸送のアクセスしやすさの可能性
・この他ランドスケープとエコロジーに関する詳細な調査を実施。地表水は重要とみな
されていない。
(4)代替案の概要及びその位置づけ(F)
新しい石切場の選定は、3つの重要なステージで行われた。最初のステージは、6つの特
別なゾーンが明らかにされた。2番目のステージでは、更に詳細な調査により6つの中か
ら2つの石切場が選定された。3番目のステージでは、2つの選定されたゾーンの一部に
開発許可を与えるものである。これ以上の細かい代替案の概要の記述はない。
(5)その他の社会影響評価項目(DⅡ)
上記環境影響評価の項目に記述。
環境に対する影響のアセスメントは、その計画の経済的な収益と費用の評価ととも
に行われた。輸送に関していえば、その計画は消費者から近い距離にある石切場(qu
arries)は、運送のコストも少なく、大気汚染の被害も少なくてすむように、経済的
利害と環境的利害が一致するようにできている。この”presentation…”では、この
計画の目的は出来る限り経済的、技術的、環境的利害を一致させることにあり、長期
的にも金銭的に利用可能な方法で手に入れやすく、開発可能な原材料を確保する土地
と、環境保護に必要な土地の両方を併せ持つスペシャルゾーンを定義すると述べてい
る。
(6)公衆の参加(C)
フランスでは、公衆の参加が法により規定されており、そこでは手続と期間が明示
されている。期間は2ヶ月である。公衆はこの期間中にアドバイスと質問を提出する
ことができる。それらは集められ、実施委員会に送付される。
(7)SEAの結果と政策への反映(DⅠ)
SEAは将来的な石切場ゾーンの決定に影響を及ぼす。もちろん、意思決定におけるS
EAの影響は社会経済的な側面により制約を受ける。当該領域や代替領域の設定は、既
存の工業や雇用を考慮して選定される。イブリンのケースでは、regional parkの設置
が新たな制約となっている。
- 20 -
(8)全体の評価(E)
石切場の開発に関する手続きの3つの段階において、各段階で公の調査とEIAを
含んでおり、意思決定段階と一致している。
影響査定は、ある程度専門家の判断に基づいているが、ほぼ適切と考えられる。
その査定の方法は、ほとんど既成の方法を適用している。
評価、続いて意思決定において、経済的、社会的、環境的考察の総合的考察が高度
になされている。
(9)実施されたSEAの手続き
1993年初頭 ○地層の地質学的研究
1994年
○6つのゾーンの識別+アセスメント
→地理
→経済
→技術的
→環境(SEA)
○environment,industry,agriculture,equipment,urbanismの各省間での
協議
○理事会と'grands elus'(国家レベル)での協議
1995年
○2つのゾーンの選択とさらに詳細なSEA
○各省間の協議
○地方の協議(進行中、1995年1月より)
'95 5月regional parkの決定
1996年?
○regional parkからの新しい規制を考慮したSEAの修正
○公衆参加(調査の権限を伴う)
○国家議会の助言
○大臣の決定(可能な限りの修正)
○開発認可の手続き+SEA
○POSの修正+SEA
○計画+EIA
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8.アイルランド全国開発計画(1994-1999)
(1)対象となる計画の概要(AⅠ)
アイルランドの全国開発計画。EUの構造基金規則に基づき策定された。対象年次
は1994-1999年。計画は1993年に策定準備が開始され、同年9月に公表された。
(EU委員会に提出された時点)アイルランド全国開発計画のための地域サポートフ
レームワーク(Community Support Framework;CSF)はEC委員会によって1994
年7月に採択された。
(参考)EU構造基金規則によるSEAについて
EC委員会はEU構造基金を通じて地域開発に対し資金面での支援を行う。構造基
金は究極的にはEUの社会的・経済的団結を目指し、メンバー国が経済的な問題を解
決するために、発展のための一定の政策に適用される。基金の適用に当たっては、適
切な政府部局が調整し、産業界、地方自治体、その他関係団体とのパートナーシップ
のもとで地域開発計画を作成することが必要である。それを受けて、EC委員会は実
質的な”Community Support Framework(CSF)”を起草する。ここには、合意され
た開発の優先順位、資金配分、モニタリング、実行組織の配置が書かれることとなる。
新たな規則の下では、EC委員会は、①後発経済開発地域(国内総生産がEU平均の
75%以下)、②工業の後退が問題となっている地域、③地域開発が集中している地
域に関する地域計画には環境への影響についてのアセスメントを盛り込むべきだとい
うことが決定された。
規則では、上記に基づく地域計画に対するSEAは以下の項目を含むべきと規定し
ている。
・関係地域の環境の状況の評価
・地域計画に含まれている戦略に対する影響の評価−持続可能な開発及び地域の法と
適合しているかの観点で−
・計画に位置づけられた施策の準備と実施に当たっては、加盟国により、指定された
環境部局が協力し、地域の環境ルールの遵守を確保するような仕組みとすること。
規則に基づくSEAの手順は以下のとおり。
1.加盟国による地域計画案及び環境の状況書の準備
2.EC委員会による地域計画と環境の状況の評価
3.EU委員会と加盟国(関係地域)との2者協議
4.Community Support FrameworkとSingle Programming Documentの作成
5.調停の形式の明確化
6.モニタリングと評価
2つのSEAレポートがこの過程で作成される。最初は、第一段階の計画に含まれ
る環境の状況であり、2番目は第四段階のCommunity Support Frameworkに含まれる。
- 22 -
(2)SEAの根拠と実施主体
EC構造基金規則にしたがって、環境影響評価が行われた。
この事例は条件(GDPがEC平均の75%以下)に該当するため、決められた手続に従っ
て環境影響評価が行われた。
この計画に関わる主な主体は、大蔵省、環境、EC委員会地域政策局(DGⅩⅥ)、
EC委員会環境・原子力安全・市民保護局(DGⅩⅠ)、その他政府の関係部局、地
方自治体、NGOである。
(3)環境影響評価の項目(BⅣ)
大気、水源、沿岸地域、景観及び住民、廃棄物管理、都市環境。
(4)代替案の概要及び位置づけ
※記載なし。
(5)その他の社会影響評価の項目
※記載なし。
(6)公衆の参加(C)
公衆の参加は構造基金規則で義務づけられておらず、このケースでも正式には実施
されていない。正式な公表はEC委員会に提出されるときである。
しかしながら、このケースでは、計画の公表を補うために、様々な公的及び民間部門
を対象としたWWF主催によるセミナーが4回行われた。
(7)SEAの結果と政策への反映(D)
計画と同時に作成された第一次SEA報告書は様々なラウンドテーブルディスカッ
ションに貢献し、異なった開発セクター間の相互活動にも影響を与えた。第2次SE
A報告書は、全国開発計画の中で環境評価を行っているがアイルランド政府と委員会
との間の交渉に反映された。
(8)全体の評価(F)
・EU構造基金規則のフレームワークにより、政策あるいは計画の早期の段階において、
環境の視点を取り入れて開発案を検討していくことは極めて有効であることが判明し
た。
・SEA手続と計画立案手続の統合は、よりよい結果を得るための重要な手法である。
・モニタリング委員会はフォローアップを確実にするために重要である。
- 23 -
(9)実施されたSEAの手続(BⅨ)
1989
経過
アイルランド全国開発計画(1989-1993)
備考
'Community Support Framework for Ireland 1989-1993'
1990
アイルランドの環境計画 'Environment Action Programme'
1991年報告
1993
'GREEN 2000 Advisory Group Report'
2月公表
1993
アイルランド全国開発計画1994-1999の検討
9月公表
1993/94
An Taisce/WWW のプロジェクト
1993.11
(地域の持続的発展に向けての新たなパート
∼1994.10
ナーシップの形成プロジェクト:セミナーを
4回開催)
1994
アイルランドのためのCSF(1994-1999)
7月採択
('Community Support Framework for Ireland 1994-1999')
1994
An Taisce/WWW の最終報告
11月公表
※アイルランドの環境計画の中にSEAの最初の報告書である環境の状況という章が含まれて
いる。
※Community Support Framework はECが作成する報告書であり、SEAの第二番目の報告書と
も言うべき内容が含まれている。
※An Taisce はアイルランドの全国的な非政府組織。
- 24 -
9.アリヴィェール(Arvier)地方土地利用管理計画(イタリア)
(1)対象となる計画の概要(AⅠ)
Arvier の土地利用管理計画。Arvier はイタリア北西部Valle d'Aosta 地方にある
74市町村の一つ。この土地管理計画自体はもともと1978年に策定されているが、対象
は、近年行われたこの計画の第8回目の改訂である。
(2)SEAの根拠と実施主体(B)
地方の条例により、全ての土地利用計画策定及び重要な計画改訂にあたってはEIA手
続が義務づけられている。
SEAは計画策定チームと同一のチームによって、計画策定と同時に実施された。
関係する主な主体は、地方自治体の環境部局、環境に関する科学的な委員会、アリヴ
ィェールの地方自治体、地方審議会、計画及び環境影響評価のチーム、土地所有者を
含む公衆である。
(3)環境影響評価の項目(BⅣ)
地質・植生・景観、人口・都市サービス及び都市基盤、交通利便性、経済、法令に
基づく状況及び規制。
(4)代替案の概要及び位置づけ(F)
アセスメントを行う前に、すでに、政治的決断が下されているため、計画改定案以
外の代替案は検討されていない。
(5)その他の社会影響評価の項目
※記載なし。
(6)公衆の参加(C)
計画策定及び環境影響評価の期間中の正式な公衆の参加は定められていなかった。
しかし、2段階にわたって関係者への協議が行われた。
第1段階:担当チームは土地所有者と計画提案について議論を行った。これは、非公
式ベースで実施された。(1990年∼1992年)
第2段階:1994年に60日間にわたって公表が行われ、計画の最終案と環境影響
評価の結果に対して公衆の意見が求められた。
(7)SEAの結果と政策への反映(D)
SEAが計画策定と同時に実施されたため、以下に示すように最終決定に影響を与
えたと考えられる。
① 都市計画規制が家畜舎の建築以外は認めていなかったため、幾つかの農業ゾーン
で普通の農業が集約農業に変更された。
- 25 -
②
幾つかの農業ゾーンで、なだれの危険防止や農業の衰退のために、農業用建物の
建築が禁止されたため、この地域を、観光用(主にクロスカントリー用)のゾーン
とした。
③
いくつかの投資の提案が地域でキャンセルされた。その理由は、地理的、気候的
に適切でないということと近隣地域との競合関係から経済性が問題となったためで
あった。
④
サービスのために予定されていた地域が経済的な理由と考古学的な理由で中止さ
れた。
(8)全体の評価(F)
この事例の特徴は以下の3点である。
・計画立案及びEIAの手続を共通のチームで同時に進めることにより、両者を統合する手
法を採用したこと。
・環境、社会、経済といった独立した項目を含めて評価することができたこと。
・EIAに関するValle d'Aosta 地方の条例が整備されていたため、手続の履行が保証され
ていたこと。また、この条例により、最小限ではあるが基礎的な手続上の指示がすで
に用意されていたこと。
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(9)実施されたSEAの手続(BⅨ)
1978
経過
Arvier における土地利用管理計画策定
備考
1990
市民から寄せられた開発要求に見合う新たな
土地所有者の提案
土地利用管理計画の策定指示
1993
1976年計画の再検討
計画立案及びEIA
EIA実施の決定
1993
チームは有識者と
5回会談
計画立案及びEIAチームによる代替案及び進め方に
関する提案の提出
市議会は提案に沿ってプランを改訂することを決定
計画立案及びEIAの開始
計画立案及びEIA
チームは有識者と
7回会談
1994
計画立案及びEIA終了
市議会は計画案及びEIA報告書案を承認
Valle d'Aosta 地方環境部局の承認を得るため計画
案及びEIA報告書案を提出
市議会は計画案及びEIA報告書案を市民に提示
市民との協議期
間は60日間
1994
Valle d'Aosta 地方議会による計画案及びEIA報告
書案の承認
- 27 -
10.ゲルダーランド(Gelderland)第3次地方廃棄物管理計画(オランダ)
(1)対象となる計画の概要(AⅠ)
オランダゲルダーランド州の第三次廃棄物管理計画。オランダでは、廃棄物管理法で、
各州が廃棄物管理五カ年計画を策定することを規定している。この計画では自治体の廃
棄物、工場からの廃棄物、有害廃棄物、港湾の浚渫汚泥等主な廃棄物を全て対象として
いる。計画の原則は以下のとおり。
・廃棄物の防止とリサイクルに対する更なる努力
・熱の回収が可能で在ればなるべく焼却するという原則に基づく、焼却と埋立に関す
る十分な能力。
(2)SEAの根拠と実施主体(B)
環境管理令に基づいてSEAが行われた。
SEAの実施者は、地域の廃棄物管理部局とコンサルタントであった。
SEAに関わった主体は、ゲルダーランド州(実施者及び所管部局として)、EIA委員
会、法に基づくアドバイザー(環境省と農業省の地域事務所)、公衆
(3)環境影響評価の項目(BⅣ)
・大気、土壌、地下水、表流水、騒音、浮遊粒子状物質、臭気、土地利用、人の健康
及び安全
・自然及び歴史的環境
・景観及び歴史的景観
(4)代替案の概要及び位置づけ(BⅣ )
・現状の政策を変えない案。
・計画に示されている政策を行う案。
・最も環境に優しい政策を行う案。
(5)その他の社会影響評価の項目
※記載なし。
※なお、上記3代替案のそれぞれについて、別途、廃棄物管理に関する費用試算(直接
市民が負担する税金とリンクしている。)が行われている(DⅡ)。
(6)公衆の参加(C)
機関間の協議と公衆参加は以下に限られていた。
・実施通知への書面での意見
・アセスメントへの書面への意見
・公聴会での意見と議論
・ターゲットグループでの会合が設けられた。
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意見とそれに対する対応はEIA委員会による実施計画書への勧告及びレビューレポー
トに記載された。ターゲットグループ(特に自治体と廃棄物を出している会社)との
議論は非常に有益であった。
(7)SEAの結果と政策への反映(D)
提案された政策はその時点では野心的と考えられていた国家目標によって設定され
たものであった。したがって、自治体で利用できる手法で改善できる余地はあまりな
かった。
(8)全体の評価(F)
この事例の特徴は以下の6点である。
・環境指標は地域レベルで選ばれている。これは、環境政策の体系ができあがっていた
からである。
・このSEAは廃棄物監視システムの設置に向けた重要な推進力となった。
・SEAにかかった時間や労力は、計画策定にかかったそれらに比べれば小さかった。将来、
廃棄物監視システムを設置し、バックグラウンドデータが蓄積されれば、SEAにかかる
時間や労力はさらに小さくなるだろう。
・影響の見積もりは専門家達の判断によるものであるが、これは、利害関係を有する様
々なグループとの検討の場において、独立した専門家達により構成される調査団が判
断したものであるため、妥当なものと受け入れられている。
・全国、州などの複数のレベルで廃棄物管理計画を策定するオランダのシステムは、各
レベルでやはりEIAや環境に関する許認可に結びついており、廃棄物による環境影響と
廃棄物管理とを監督する点において、うまく機能している。
・計画策定とSEAを共同のチームで行う方法はよい方法であり、また有益でもある。また、
現実的な政策を検討するために、利害関係を有する様々なグループと検討の場を設け
ることは更に有益である。
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(9)実施されたSEAの手続(BⅨ)
実施通知書 の公表(1991. 1.21、ゲルダーランド州)
(意見聴取期間、1991. 3.10 まで)
実施計画書への勧告 の公表(1991. 4.10、EIA委員会)
実施計画書(決定版) の公表(ゲルダーランド州、ほとんど変更なし)
SEA及び廃棄物管理計画案の検討
・バックグラウンドデータの収集(6か月)
・代替案の検討及び影響評価(3か月)
・報告書の作成(3か月、1992.12 公表)
廃棄物管理計画案及びEIA報告書の閲覧
公聴会
EIA委員会による検討
廃棄物管理計画の作成及び州当局による決定(1993. 6)
※実施通知書、実施計画書への勧告 及び 実施計画書(決定版)については説明がないた
め具体的な内容は不明であるが、実施通知書 は廃棄物管理計画の概略案やEIAの内容な
どについて記載されたもの、実施計画書への勧告及び 実施計画書(決定版)はともに、
実施すべきEIAの内容について記載されているものと推測される。
- 30 -
11.全国飲料水供給計画(オランダ)
(1)対象となる計画の概要(AⅠ)
オランダの第三次全国飲料水供給計画。水供給法に基づく計画である。オランダで
は水供給はオランダ水供給会社協議会により設立された地域水供給会社により行われ
る。環境省の義務は安全で持続可能な水供給を確保することである。1990年に環
境省は第3次水供給政策を開始した。
(2)SEAの根拠及び主体(B)
環境影響評価令に従ってSEAの手続が行われた。環境省の飲料水所管課が8つの
国立研究所とコンサルタントの協力を得てアセスメントを実施した。関係する主な主
体は環境庁(アセスメントの実施者及び責任者)、所管省庁、EIA委員会、法律アドバ
イザー、公衆である。
(3)環境影響評価の項目(BⅣ)
・土壌の乾燥、生物多様性、水源の枯渇、廃棄物管理、エネルギー消費、土地利用、
景観。
・人の健康、技術的熟度、災害や混乱等による影響の受け易さ及び柔軟性、費用、
法律及び機構からみた適用性。
(4)代替案の概要及び位置づけ(BⅣ )
・現状の政策を変えない案。
・計画に示されている政策を行う案。
・最も環境に優しい政策を行う案。
(5)その他の社会影響評価の項目
※記載なし。
(6)公衆の参加(C)
機関間の協議と公衆参加は以下に限られていた。
・実施通知への書面での意見
・アセスメントへの書面への意見
・公聴会での意見と議論
・ターゲットグループと関連部局との会合。
回答とそれに対する対応は、計画策定手続報告書、実施計画書への勧告及びEIA委員
会のレビュー報告書において明らかにされた。
(7)SEAの結果と政策への反映(D)
専門家と政策決定者の共同チームが計画策定とアセスメントを行ったため、アセス
メントの準備は計画作成に影響を与えた。しかしながら、どの部分に影響を与えたか
- 31 -
について明確に特定することはできない。
(8)全体の評価(F)
この事例の特徴は以下の4点である。
・この事例のように複雑な内容であっても、選択可能な複数の政策や水消費などに関す
る様々なシナリオについて、影響評価を行うことは有効である。計画策定とアセスメ
ントをうまく統合して行うことが重要であり、これは、両者を共同のチームで行うこ
とにより可能となる。
・この事例のように、全国レベルで、政策が生物多様性に与える影響を積算して見積も
ることは可能である。積算のモデルを研究するのには時間がかかるが、一度モデルが
出来てしまえば、選択可能な複数の政策についてアセスメントを行うことはさほど時
間はかからない。
・何段階にもわたって計画策定及びSEAを行うこのシステムが、たとえ適したものではな
いとしても、特にSEAの障害になることはない。というのも、SEAによってシステムの
改善が必要なことが明らかとなる可能性すらあるし、そうではなくても、SEAの結果は
次の段階のEIAに活用されるからである。
・独立した専門家達による検討が行われているという点で、アセスメントを専門家達の
判断によって行うこの方法は適したものである。
- 32 -
(9)実施されたSEAの手続(BⅨ)
実施通知書 ('Toward a crystal clear future')の公表
(1990. 5、環境大臣)
↓
(意見聴取期間、2か月間)
↓
実施計画書への勧告 の公表(1990. 6.13、EIA委員会)
↓
実施計画書最終版 の公表(環境大臣)
↓
計画決定手続第一巻報告書の公表
全国水供給計画案の公表
EIA報告書案の公表
(閣僚会議、1993. 5)
↓
(意見聴取期間、1か月間:計画決定会議及び環境審議会の意見聴取、
その他政府期間及びオランダ水供給企業連合との協議、国民の意見聴取)
↓
'EIA Review Report' の公表(1993.11.19、EIA委員会)
↓
計画決定手続第二巻報告書の公表(第一巻に対する意見の概要)
EIA報告書の公表
(1995. 5)
↓
(意見聴取及び協議期間)
↓
計画決定手続第三巻報告書の公表、閣議決定
全国水供給計画の決定(1995. 9、内閣)及び議会への提出(1995.11)
↓
議会の採択待ち(1996. 2)
※実施通知書(Notification of Intent)、実施計画書(Recommended Terms of Reference)
への勧告及び 実施計画書最終版 (final Terms of Reference)については説明がない
ため具体的な内容は不明であるが、実施通知書は全国水供給計画の概略案やアセスメン
トの内容などについて記載されたもの、実施計画書への勧告及び実施通知
- 33 -
12.ザーンスタッド(Zaanstad)住宅地域計画(オランダ)
(1)対象となる計画の概要(AⅠ)
対象はNoord-Holland州土地利用計画の改訂。Noord-Holland州のザーンスタッド地
域に1995年から2000年にかけて5,000戸分の住宅地を建設することになったため、Noo
rd-Holland州の土地利用計画を改訂する必要が生じた。
(2)SEAの根拠と実施主体(B)
環境管理令に従ってSEAの手続が行われた。主な関係主体は、北ホランド地域(住宅
計画の実施者とアセスメントの管轄者)、EIA委員会、法律アドバイザー、公衆である。
アセスメントは地方自治体の調査及び情報部局との共同チームにより実施された。
(3)環境影響評価の項目(BⅣ)
景観及び文化的景観、考古学、土壌及び表流水、生物多様性、移動性(交通及び輸
送)、生活の質(大気、騒音、安全性及び人の健康を含む)。
(4)代替案の概要及び位置づけ(BⅣ )
・”何もしない(no action)”案。
・4か所の候補地のうち、いずれか1か所に住宅地を建設する案を4案。
・4か所の候補地のうち、いずれか2か所に分散して住宅地を建設する案を6案。
なお、あまりに多く分散して住宅地を建設すると、全体としての環境影響がより
大きくなると考えられるため、3か所以上に分散して住宅地を建設する案は検討しな
かった。
(5)その他の社会影響評価の項目(DⅡ)
もともとの計画自体が、農業、交通、費用などへの影響評価を含んだものになって
いる。なお、SEA手続以外においても、社会経済的な評価は特に行われていない。
(6)公衆の参加(C)
省庁間の協議と公衆の参加は以下に限られていた。
・実施通知書に対する書面での意見
・アセスメントに対する書面での意見
・公聴会での意見陳述と討論
意見とそれに対する対応は実施計画書への勧告とEIA委員会のレビュー報告書で公
表された。
(7)SEAの結果と政策への反映(D)
最終的に計画で定められた場所は、地方自治体が当初提案した地域であり、この地
域は環境の価値が高くない地域に建設することを予定した唯一の案であった。しかし
- 34 -
ながら、アセスメントはこの選択に一定の確実性を加えたことで有効であった。
(8)全体の評価(F)
この事例の特徴は以下の4点である。
・EIA手続を実施したことで、最終的に選ばれた案に対する住民の支持が特に高まった。
・多くは定性的であったが、幅広い項目について評価を行った。そして、それらの結
果をいくつかのテーマに絞り込んでまとめることができた。
・数値計算モデルは移動性の影響予測にのみ必要であった。
・得られた評価の不確実性は、主に、周辺地域において将来どのような事業が行われ
るかという不確実性に伴うものである。
(9)実施されたSEAの手続(BⅨ)
実施通知書の公表(1991. 3、Noord-Holland州)
↓
(意見聴取期間、1991. 5まで)
↓
実施計画書に対する勧告の公表(1992. 4-5、EIA委員会)
↓
実施計画書最終版 の公表
(1992. 7、Noord-Holland州、ほとんど変更なし)
↓
EIA報告書案、地域土地利用計画改訂案の公表
(1993. 3)
↓
公聴会(1993. 7)
↓
EIA委員会による検討(1993.秋)
↓
地域土地利用計画改訂の決定(1994. 1、州知事)
※実施通知書(notification of intent)、実施計画書への勧告(recommended terms of
reference) 及び 実施計画書最終版(final terms of reference)については説明が
ないため具体的な内容は不明であるが、実施通知書は土地利用計画の改訂概略案やアセ
スメントの内容などについて記載されたもの、実施計画書への勧告及び 実施計画書最終
版はともに、実施すべきアセスメントの内容について記載されているものと推測される。
- 35 -
13. 全国電力供給構造計画(オランダ)
(1)対象となる計画の概要(AⅠ)
オランダの全国電力供給計画。なお、オランダでは電力供給企業連合が2年ごとに電
力供給計画を策定することになっているが、この全国電力供給計画はその上位計画で
ある。
(2)SEAの根拠及び実施主体(BⅠ)
環境影響評価令に基づき、経済省及び環境庁の共同により行われた。
実際のアセスメントは民間研究所が行った。
(3)環境影響評価の項目(BⅣ)
SO2、NOx、CO2の排出などを含む。
(4)代替案の概要及び位置づけ(BⅣ )
発電所の位置が異なる24の案。旧全国電力供給計画に示されていた案のうち9案を削
除し、新たに2案を追加したものである。
なお、将来の電力需要については大小2つのシナリオを設定した。
(5)その他の社会影響評価の項目
※記載なし。
(6)公衆の参加
省庁間の協議と公衆への参加は以下に限られた。
・実施通知書への書面での意見
・アセスメントに対する書面での意見
・公聴会における意見と議論
意見とそれへの対応は実施計画書への勧告及びEIA委員会によるレビュー報告書にお
いて公表された。
(7)SEAの結果と政策への反映(D)
もしアセスメントが行われなかったら、具体的に計画のどの部分が変わっていたか
を示すことはできないが、SEAが計画策定に及ぼした影響は相当程度大きかったと言え
る。
※SEAの結果に関する記載なし。
(8)全体の評価(F)
この事例の特徴は以下の4点である。
・全国電力供給計画の策定だけでなくすべての段階において、政策決定に環境の視点を
- 36 -
統合するという点でEIA手続は有益であったと言える。例えば、エネルギー政策に関し
て、経済省と環境省のコミュニケーションが向上した。
・この事例で大きな関心が寄せられたのは、合理的な費用で環境への影響を減少させる
ことができるかどうかであったが、満足できる回答は得られなかった。持続的発展が
可能な電力供給計画とはどのようなものであろうか。
・モニタリングはreversed tiered systemにおいて計画されている。モニタリング情報
は基礎的なレベルで集められ、報告される。将来、これらのデータが集積されるよう
になって初めて、全国レベルにおける戦略の調整が可能になる。
・非常に新しくまだ試験的な技術による環境影響については、その不確実性をより明確
にしていくことが重要である。モニタリングシステムによってより多くの情報が得ら
れるようになれば、政策はより柔軟で調整可能なものになるはずである。
(9)実施されたSEAの手続(BⅨ)
実施通知書の公表(1991. 5、経済省及び環境省)
↓
(意見聴取期間、2か月間、1991. 5まで
:公聴会、計画決定会議の意見聴取を含む)
↓
実施計画書への勧告の公表(1991. 7、EIA委員会)
↓
実施計画書最終版の公表(1991. 7、経済省及び環境省)
↓
SEA手続、全国電力供給計画案の作成(1992. 5、公表)
↓
全国電力供給計画案及びEIA報告書案の縦覧(1か月間)
↓
公聴会
↓
EIA委員会による検討(1992.10)
↓
全国電力供給計画の作成、閣僚会議による採択及び議会への提出(1993. 4)
↓
議会の採択
※実施通知書(notification of intent)、実施計画書への勧告(recommended terms of
reference) 及び 実施計画書最終版(final terms of reference)については説明が
ないため具体的な内容は不明であるが、実施通知書は土地利用計画の改訂概略案やEIAの
内容などについて記載されたもの、実施計画書への勧告及び 実施計画書最終版はともに、
実施すべきアセスメントの内容について記載されているものと推測される。
- 37 -
14.ポルトガル全国開発計画(1994-1999)
(1)対象となる計画の概要(AⅠ)
ポルトガルの全国開発計画。対象年次は1994-1999年。
(2)SEAの根拠及び実施主体(AⅠ、BⅦ)
ECの構造基金規則に従い実施された。(事例8参照)
この計画に関わる主な主体は、EU委員会地域政策局(DGⅩⅥ)、EC委員会環
境・原子力安全・市民保護局(DGⅩⅠ)、計画・土地利用省地域開発局、環境・自
然資源省に加え、環境の影響の特定について3つの大学の助力があった。
(3)環境影響評価の項目(BⅣ)
大気質、騒音、水質、土壌、土地、地質、動物、植物、景観、大気、土地利用、自
然資源、文化的遺産、水源管理、生産性、都市環境、環境面における活性、環境面に
おける工場、企業の立地、人口の増加、水産資源管理、河口、沿岸地域、湿地、専門
資格及び環境教育。
(4)代替案の概要及び位置づけ
※記載なし。
(5)その他の社会影響評価の項目(DⅡ)
財政的な面での計画の実現可能性を確認するため、このSEAにおいて財政面に関する
評価が行われた。
(6)公衆の参加(C)
構造基金規則では、公衆の参加は求められていないため、公式にも、非公式にも行
われなかった。
(7)SEAの結果と政策への反映(DⅠ)
SEAの結果によると、計画に示されている多くの事業が、環境にマイナスの影響を及
ぼすだろうと分析されているが、この事例の場合、計画策定の後にSEAが行われている
ため、SEAの結果は計画に反映されていない。
SEAの報告書では、環境にマイナスの影響を及ぼすとされた事業については、実施段
階におけるEIAを行い、影響を最小限に抑えるために対策すべきであるとされている。
(8)全体の評価(F)
この事例の特徴は以下の4点である。
・政策あるいは企画の段階における開発事業の検討に、環境の視点を取り入れること
を求めているという点で、この基金に関するEUの法体系は潜在的には非常に有効で
あるといえる。
- 38 -
・しかしながら、この事例においては、SEAと計画立案とを統合することはできなかっ
た。
・この事例がSEAの事例として適切かどうかは疑わしいところである。というのも、計
画が立案されている時に同時並行的に影響評価を行ったのではなく、また、環境影
響はプラスかマイナスかということが示され、マイナスの影響が生じる事業につい
ては、個々にEIAを実施することが推奨されている。このような状況であるから、こ
の事例は、SEAというよりもむしろ、環境に影響を及ぼす可能性に関する一つの研究
といった方がよいだろう。また、特記すべきこととして、代替案は考慮されていな
いようである。
・モニタリング委員会はフォローアップを確実にするために重要である。
(9)実施されたSEAの手続(BⅨ)
経過
備考
1987
ポルトガル環境政策大綱
1991
ポルトガル環境白書
1993
ポルトガル全国開発計画1994-1999の検討
1993
SEA報告書の作成
1994
'Community Support Framework for Portugal 1994-1999'
7月公表
11月ECに提出
- 39 -
2月採択
15. デニス合意(スウェーデン)
(1)対象となる計画の概要(AⅠ)
ストックホルムの交通に関する計画。この計画については、政党、NGO、国民と
の間で、環境問題及び国民の健康問題を巡って様々な議論が巻き起こったが、スウェ
ーデン銀行の頭取Bengt Dennisが、スウェーデン政府からの指名を受け交渉人となっ
て郡及びストックホルム市の6つの政党の合意を取り付けたため、その名をとってデ
ニス合意(Dennis Agreement)と呼ばれている。この合意の目的は、①環境保護、②
アクセス可能性の増加、③社会・経済開発の3点を目的としている。
(2)SEAの実施主体及び根拠(BⅡ、Ⅰ)
法的根拠に基づくものではない。
第一回目のアセスメントは、政府の交渉人であるBengt Dennisの指揮下で、州政府、
州企画庁、ストックホルム市によって行われた。第二回目以降のアセスメントでは、
更に道路及び鉄道に係る行政部などが加わった。
(3)環境影響評価の項目(BⅢ)
・第一回目:主に騒音や大気汚染など交通に関連する項目。なお、第二回目で重要視
されることになる道路建設に伴う緑の減少に関する記載は、36ページ中1ページのみ。
・第二回目:第一回目であまり考慮しなかった緑の減少及び都市地域の減少の重要性
を認識。
・第三回目:更に範囲が広がった。自然資源管理、持続性、都市地域の開発、緑地構
造の細分化など。
(4)代替案の概要及び位置づけ(BⅢ )
現状のまま何も行わない案を参照用の代替案としたが、データ不足のため結局検討
は行われていない。
(5)その他の社会影響評価の項目(EⅢ)
第三回目のアセスメントでは地域の社会経済的発展に与える影響なども評価された。
(6)公衆の参加(C)
関係市町村に対する会合を除き、公衆の参加等は行われなかった。なお、アセスメ
ントの報告書はすべて公表された。
(7)SEAの結果と政策への反映(D)
この事例では、SEAの結果は意思決定に反映されなかった。交渉の場においては、S
EAによって得られる系統的な調査や評価はあまり用いられなかった。政党が、それぞ
れの主張の助けとならない情報に無関心であったことによると考えられるる。
※結果に関する記載なし
- 40 -
(8)全体の評価(F)
デニス合意は交渉のプロセスである。SEAによって得られた系統的な評価や公開性は、
この事例のような政党間の交渉による政策決定においては必要とされなかった。
SEAについてもEIAと同様に手続が確立されていれば、SEAは実施プロセスにおける政
策決定の基礎として用いられたはずである。
結局、この事例においてSEAは、デニス合意の信頼性を高めるために用いられたよう
であるが、合意の関係者は、信頼性と合法性とを取り違えている。SEAを実施したから
合法だということはない。政党等合意の関係者も、国民も、NGOも、誰もがこのSEA手
続及びその結果に満足していない。
(9)実施されたSEAの手続(BⅠ)
合意手続
環境影響評価
'Environmental assessment of
the Dennis Agerrment'
Ⅰ
(1990秋)
Dennis 1 初めての合意(1991. 1)
Dennis 2 最終合意(1992. 9)
'Dennis and the environment'
関係者による合意の確認(1992-1993)
Ⅱ
(1993. 5)
'The Impact of the Dennis
議会による財源保証(1994. 6)
Agerrment-environment'
(1994. 5)
追加合意(1995.11)
実施に当たってのチェックポイント
(1996)
実施に当たってのチェックポイント
?
(1998)
?
- 41 -
Ⅲ
○
16.Alingsas 市エネルギープラン(スウェーデン)
(1)対象となる計画の概要(AⅠ)
1977年以来、スウェーデンでは、地方自治体がエネルギーの供給・配分・消費計画
の最新版の作成が義務づけられた。これらの計画は、効率向上、信頼性、環境保護を
進めるものである。
○
Alingsas市では、1992年に新しいエネルギー計画を採用した。旧エネルギー計画は
1979年、1986年に採用されたものがある。計画の目的は以下のとおり。
・特定のエネルギー消費を減らすこと
・効率的でフレキシブルで環境に優しいエネルギー使用を構築すること
・地域エネルギー及び再生可能エネルギーの使用を促進すること
・コストを減らし消費者のための適正価格を適用すること
この計画は主として暖房を内容としている。
(2)SEAの根拠と実施主体(AⅠb)
1991年以来、これらの計画はSEA手続を含むことが必要となった。計画によると、
SEAは環境を考慮に入れるために用いられた。
主な主体は経済省と環境省(両者が計画の作成者と環境アセスメントの所管者で
ある)、省間審議会(所管者)、EIA委員会、法律アドバイザー、公衆である。アセ
スメントはエネルギー部門を扱う国立研究所により実施された。
(3)環境影響評価の項目(BⅣb)
・工業と技術発展の国家委員会では、MILEN(Environment-geared local energy plann
ing)というインフォーメーションドキュメントを作成し、地域の計画に関連するSEAに
係わるガイドラインを提供している。この中で、エネルギー計画の中で評価されるべ
き影響の範囲を決める基準となる質問票が示されているが、本計画の場合は質問票は
使用されていない。
・基礎データとして使用されたものは以下のデータ:
・エネルギー供給・配分・生産に関する技術的データ、消費に関するデータ等(電
力会社からの計画策定プログラムから入手)
・硫黄、酸性降下物といったエネルギー使用に係わる環境側面(簡潔、一般的に記
載し、予測は行わず)
・当該自治体全体からの輸送と熱生成に係わる硫黄、窒素、CO2、重金属、ダストの
排出に関する定量データ(1992年現状値、予測値なし)
・窒素、硫黄レベル関連の大気汚染データ(1989∼1992年値)
(4)代替案の概要及び位置づけ(BⅢa、Ⅳa)
本計画には、エネルギーの地域供給及び配分に関する代替案やシナリオの記述はな
い。地区熱供給に関する2つの代替案、燃料ミックスとマルチミックス代替案が簡潔
に記述されている。
”何もしない(no action)”案は検討されていない。
- 42 -
(5)その他の社会影響評価の項目
記述なし
(6)公衆の参加(C)
計画は、地域産業の協議会など関係者や関係の公的機関及び関係NGOには示され
たが、広く公表はされていない。
(7)SEAの結果と政策への反映(D)
アセスメントは計画策定グループによって行われた。提案された計画案と採択され
た案により、SEAが統合された部分が示されているが、これからみると模範的なケ
ースといえる。ただし、アセスメントによる情報は計画の目的と明確に関連していた
わけでないため、意思決定の部分に使われたのはわずかであった。
(8)全体の評価(F)
・アセスメントは、ある意味で計画策定プロセスによく組み入れられているといえるが、
厳密にはいくらか期待はずれである。
・シナリオや代替案を取り扱わないこと、明確なベースラインが存在しないこと、環境
影響は予測も評価も行われていないことなどから、本アセスメントは通常のSEA手法が
ほとんど活用されていない。
・SEAによって提供された情報は、当該計画の目的・大意との関連性よりは、環境問題の
一般的意見を反映している。
○
・Alingsasエネルギー計画は、この意味で典型的な例といえる。
(9)実施されたSEAの手続き(290p)
エネルギー計画策定開始(1991年秋)
reference groupとの協議(1992年4月)
SEAを含むエネルギー計画の提案(1992年5月)
当局者及びreference groupとの協議(1992年6∼8月)
エネルギー計画案の修正(1992年秋)
エネルギー計画の採用(1992年12月)
- 43 -
17.コルスタ・ペータースビック(Korsta-Petersvik)土地利用計画(スウェーデン)
(1)対象となる計画の概要(AⅠ)
・スウェーデン北部、Sundsvall郊外のコルスタ・ペータースビック地域における、製紙
工場、港、発電所、LPG貯蓄、流通道路の開発といった産業発展の枠組みを作成し、産
業活動の拡張可能性を確保することを目的とする、包括的な土地利用計画である。策
定主体は地方自治体である。
(2)SEAの根拠及び実施主体(BⅠ)
計画の策定は1988年に始まった。この時点では、スウェーデンにはSEAに関
する規定がなかった。計画案が公表され、公開協議が開始された後、市当局は環境ア
セスメントを実施することを決定した。
アセスメントは以下のメンバーにより実施された。大部分はコンサルタントのジョ
イントチームによって実施された。
・市の計画委員会(アセスメントの発注者及び作業計画の責任者)
・計画事務局(市の計画部局とコンサルタントの代表)
・コンサルタントチーム(コンサルタント4社)
・関係団体(計画委員会、計画部局、市と郡の環境保全部局、製紙会社、港湾会
社、電力会社、住民と地域環境保護団体)
このアセスメントは市と港湾及び発電会社と製紙会社の3団体が等しく資金を負担し
た。関係グループはアセスメントの影響を密接に追跡するとともに、コンサルタントに
対しベースラインデータとアドバイスを提供した。
(3)環境影響評価の項目(BⅢb)
以下の9つが”テーマ”として評価・報告された。
・ 騒音(工業から)
・ 大気汚染(工業から)
・ 水質汚染(工業から)
・ 土壌の汚染/酸化
・ 固形廃棄物、ヘドロ
・ 交通(traffic)、輸送(transportation)による環境負荷
・ 地域の天候への影響
・ 土地、景観の特徴
・ 環境へのリスクと安全性
(4)代替案の概要及び位置づけ(BⅢa、BⅣa)
・計画策定段階で本当の意味での代替案の検討は行われていない。これは代替案を評価
する過程で、今まで考えられていなかった開発行為が進む可能性があるためである。
・1989年の計画ドラフトで取り上げられている代替案は、むしろ将来の開発における3段
階を代表する意味合いを持つ。
- 44 -
1. ”何もしない(no action)”代替案
・ベースライン。
2.既存製紙工場の立地に関する代替案
・簡単な記述があるが、投資コストの関連で却下。
3.環境にやさしい代替案
・「環境にやさしい」代替案が後の採用された土地利用プランの基礎になる。
(5)その他の社会影響評価の項目(EⅢ)
・このケースでは、アセスメントは環境及び公衆衛生の側面に関連する影響のみを取り
扱っている。
・その他の社会影響評価の記述なし。
(6)公衆の参加
アセスメントの実施中は関係団体以外への協議は行われなかった。公開協議は19
91年の春にSEA報告書に対して行われた。この目的は、アセスメントの結果を議
論することではなく、新しい計画のガイドラインの基礎を得ることであった。
(7)SEAの結果と政策への反映
SEAは計画策定の3段階のうち1つの段階で実施された。計画策定の最初の段階
では、計画案が公開協議された。提案は住民と公衆の反対を受けた。第2段階では、
計画策定が休止している間にSEAが実施された。第3段階では、アセスメント報告
書の環境にやさしい代替案に提示された原則によって原案が修正された。修正案は1
994年に採択され、詳細な計画策定の手続が始まった。
(8)全体の評価(F)
・本SEAは伝統的なEIA手法が用いられた。本アセスメントに関する主な不完全な点は以
下の4点である。
①SEAは計画策定過程に組み入れられていない
②一般市民の意見が反映されていない
③計画立案及びプロジェクトレベルの階層構造が存在しない
④アセスメントの手法がフィージビルでない-代替案立案、ベースライン、影響予測に
関して不 完全である。
・本SEAは上記のような不完全な点を持ちながら、十分成功し、いくつかの重要な問題を
解決している。
①キーとなる競合する問題を指摘-産業発展と緑地保護のトレードオフ
②計画目的の相反性の明確化
③重要/非重要な影響の結果に関する信頼性の確保
④市、紙工場、その他など関係者の取り込み
- 45 -
(9)実施されたSEAの手続き(307page)
計画策定手続
ガイドライン
(1989.11)
Stage1
SEA手続
計画提案(Plan proposal)
(1989.4)
公開協議(Public consultaion)
(1989.5-8)
協議報告書
(Consultation report)
(1989.10)
作業計画(Working program)
(1989.9-10)
関係団体の組織化 (1989.10)
(Forming of reference group)
計画策定委員会のSEA実施の決定
(Planning board decides on
preparing an SEA)(1989.11)
(計画策定活動なし )
Stage2
予備アセスメントレポート
(1990.4)
サブレポート
(1990.6-11)
最終アセスメントレポート
(1990.12)
公開協議(Public consultation)
(1991.春 )
計画のためのガイドライン
(1992.4)
Stage3
計画提案
(1993.6)
公開協議(Public consultation)
(1993.6-8)
改訂、計画の採用
(1994)
- 46 -
SEA評価報告書
(1991.10)
18. スロベニアの交通政策
(1)対象となる計画の概要(AⅠ、BⅢ)
・スロベニア政府はNMCP (National Motorway Construction Program) 、NRP ( Nati
onal Railway Program ) アップグレード版の実施を決定した。これらの計画は、ス
ロベニアとEUの間の条約で確認されたTrans-European 交通ネットワークのフレーム
ワークに適合する。
・NMCPでは2004年までに新しい自動車道路390kmの建設を定めている。また、NRPでは
High Speed Rail Lineの建設や200kmの鉄道の建設を含むもので、現在議会で議論中
である。
(2)SEAの根拠と実施主体(B)
スロベニア又はヨーロッパの規制では、交通政策の策定(交通マスタープランの策
定)については、SEAは必要ない。SEAを実施した契機の一つは、道路の建設に
対する環境影響評価の実施中の環境省による反対であった。
このプロジェクトは、主にLjublina交通技術研究所により準備された。提案された
高速交通鉄道に対する分析は、RaZvojmiセンター研究所により実施された。
(3)環境影響評価の項目(BⅣ)
・以下の環境負荷[environmental impact]を、現在と2012年の双方で評価、予測す
る。
・ 騒音負荷(交通騒音を受ける人の数等)
・ 大気
・ 温室ガス効果
・ 光化学スモッグ、酸性降下物
・ エネルギー消費
・ 交通政策案(traffic policy assumptions)
・ 交通需要予測 [traffic forecasts]
・ 交通安全[traffic safety]
・新規の高速鉄道線のアセスメントでは、追加的に以下のインディケーターが使用さ
れる。
・一般論(Genric description):他国研究事例やスロベニアへの適用性のような
高速鉄道プロジェクトの環境問題についての記述。
・特別なインパクトアセスメントが行われた2事例(ケーススタディーとして民主
化以前に計画された新規ルート2例)では以下のインディケーターが使用された。
・脆弱な地域への影響の定性的な評価(特に農業、林業、観光、住宅、ランドスケ
ープなどの土地利用)
・ 自然遺産 、文化遺産、生息地分断(habitat fragmentation)に対する同様
な社会インパクトが評価された
- 47 -
(4)代替案の概要及び位置づけ(BⅥ)
・対象とする交通政策には以下の2つの シナリオがある。
1.変化しない交通シナリオ
・ 現在の輸送・環境の政策を適用 = 現状維持案
2.交換シナリオ
・最も現実的なシナリオ:強力な政策により交通需要を削減、公共機関へのモーダルシ
フトを達成する。
(5)その他の社会環境評価の項目(DⅡ)
・マクロ経済、社会経済、ミクロ経済な影響の詳細な評価は行われていないない。
(6)公衆の参加(C)
プロジェクトの最初にスコーピング会合が開催された。関連する研究機関や政府の
専門家と併せてNGOが招待された(45人がその会合に出席した。)。その他の公
衆の参加は行われていない。
(7)SEAの結果と政策への反映(B)
主な結果は道路交通からその他の交通機関へのシフトを奨励する強力な政策は、変
化しない交通シナリオに比べて以下の変化をもたらすということであった。
・2012年時点での交通量の10%削減
・交通騒音を受ける人の2%の削減。(ただし、遮音壁は現在の危機的状況をかなり
改善するとみられる。)
・その他の環境影響については、規模の面で10%以上の改善がみられる。
交通マスタープランにSEAの結果を反映させることは、当初、予定されていたが、
実際には、それぞれの策定者/実施者が異なることから、困難であることが明らかと
なった。しかし、SEAの研究は交通マスター計画に先立って行われ、計画の問題点
や環境への良い影響の可能性等について分析を行った。この経験は、今後、交通省が
交通マスタープランの改訂とSEAを実施する際に役立つと考えられる。
(8)全体の評価(F)
・注目すべき点は、以下の5点である。
1. インパクト予測手法は適切であり、問題点はない
2. 詳細な環境情報は、政策 の意思決定には必要ない
3. SEA は交通政策における トレード・オフの優先順位、規則の形成に有用
4. GIS 及び 基礎データ の活用でプロジェクトの効率が向上した
5. 戦略的レベルでは公衆参加を達成するのは困難
- 48 -
(9)実施されたSEAの手続き(324p)
SEA プロジェクト 開始(1995.4)
↓
スコーピング会合案内送付(1995.6.1)
↓
スコーピング会合(1995.6.14)
↓
SEA研究草案の準備(1995.10)
↓
SEA 研究の終了(TMP未終了でも大きな遅れはない)(1996.4)
↓
SEAによる 交通政策 の更なる発展
- 49 -
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