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人物描画,肢位模倣からみる幼児の自己身体認識

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人物描画,肢位模倣からみる幼児の自己身体認識
理学療法の臨床と研究第 1
7号
2008年
研究と報告
人物描画,肢位模倣からみる幼児の自己身体認識*
関矢寛史2
)
田 坂 厚 志 4)
大塚
島 谷 康 司 1 ).
2
)
長谷川正哉
3
)
金井秀作1)
彰1)沖
貞明
1
)
要旨
今回,人物描画・肢位模倣の結果から軽度発達障害(注意欠陥多動性障害,高機能自閉症,
アスベルガー症候群,発達性協調運動障害など)の範暗にある児の自己の身体認識について身
体像や身体図式の観点から文献的考察をふまえて報告する。調査対象は各 9名の年長の軽度発
達障害児および健常児である。人物描画法にはグッドイナフ人物画知能検査,その採点基準に
は田中らの身体 1
5部位分類を用いた。肢位模倣には南カリフオノレニア感覚統合検査の方法を
用い採点を行った。結果,軽度発達障害児と健常児の間で人物描画については有意な差はなく,
肢位模倣については軽度発達障害児が有意に低い値を示した。これらのことから,軽度発達障
害児は身体部位の想起については健常児と比較しでも発達の遅れは認められないが,身体図式
にもとづく肢位の整合能については劣る可能性があることが考えられた。
肢位模倣は,被験児が検査者の肢位を自分に写し,同じ肢位をとる必要がある。他者の運動
の観察から得られる視覚情報に,自らの運動プログラムを対応づけるためには,視覚情報と運
動制御(運動企画)から類似性を抽出するプロセスが不可欠である。また,同様の動きを自身
の身体で表現するために運動を正確に実施する運動機能も必要となる。しかし,軽度発達障害
児は知覚・認知処理が困難であるため知覚・運動経験が不足し,空間で身体を操作するための
身体図式が形成されず,身体運動と環境との誤差を生じ,行為の不安や防衛によってさらに経
験不足を招くことで日常生活に支障をきたすとしづ悪循環を形成していることが考えられる。
自己が行う運動と環境との関係を知ることは自己が行う運動の状態を知ることに繋がり,ま
た,さまざまな感覚系を用いて自己の身体情報を正確に知ることによって,外界に関する知識
を得ることができるという相 E関係が成立している。そのため,軽度発達障害児の自己と環境
との関係については,自己の身体認識を動的で幼児の日常生活に直接的に関連のある活動や遊
びを通してこれらを評価していくことがより重要であると考える。
キーワード
幼児,自己身体認識,人物描画,肢位模倣
]
.].ルソーは乳児を愚かな自動機械 1) イギリ
スの経験論者].ロックは新生児をタブラ・ラ
サ(白紙)の状態である 2) と考えていた。しか
し,新生児のルーティング反射を利用した研究
報告1)や乳児に下肢の映像(見慣れた映像)と
動きが異なる下肢の映像(左右反転など)を区
別することができるかどうかを検証した研究報
告 3) によると,新生児や乳児でさえもすでに自
己の身体と環境とを区別していることが示唆さ
れている。また,新生児や生後数か月の乳児を
観察すると,手を顔に触れ,口に入れる,玩具
などに触れるなど,あたかも探索しているかの
ような自発的な行動をしており,この環境に対
する能動的に働きかけが自己の身体認識を発達
させることが報告されている 2). 4)。
新生児や乳児以外にも自己の身体認識に関連
する研究報告はさまざまあるが,各分野で使用
されているその用語の定義は統一されていな
1.緒言
我々は視覚・触圧覚・固有受容感覚などのあ
らゆる身体情報を用いて対象(環境)あるいは
自身の運動実行に対して知覚・認識し複雑な動
作を行うことができる。フランスの啓蒙思想家
本
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県立広島大学保健福祉学部理学療法学科
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広島大学大学院総合科学研究科
Hiroshi Sekiya: Graduated School of Hiroshima
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金城大学健康保健学部理学療法学科
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興生総合病院リハビリテーション科
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: Department of Rehabilitation. Kousei
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(受付日 2
008年 1月 7日/受理日 2008年 l月 7日)
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い。例えば, I
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(国際生活機能分類)5) では, r
自
なお,本研究は本大学の倫理委員会の承認を得
た後,研究協力施設と被験児の保護者に研究内
己の身体の描写や認識性に関わる個別的精神機
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r6)は r
自身の心
能 J を自己身体像
容を説明し,同意を得たうえで実施した。
2) 軽度発達障害の定義とその臨床像
の中に存在する自身の身体の像 j を自己身体表
軽度発達障害の定義は, 2
0
0
0年に杉山登志
象と定義している。これらが自己の身体認識に
注意欠陥多動性障害 J, r
高
郎が「学習障害 J, r
ついて表していることには違いはないが,研究
機能自閉症・アスペルガー症候群などの広汎性
分野での定義の違いがより複雑なものとしてい
軽度の知的障害 J, r
発達性協調運
発達障害 J, r
ると思われる。この歴史的背景として,原因は
動障害 J の 5つの障害の総称としてとらえたも
その研究分野の多様性にあり,神経医学の分野
のであり 10 知能の遅れはないが発達の偏りや
においては,幻肢を呈した肢切断患者,左右失
歪みを中心とするものである ω。「発達の偏り J
認や身体失認などを呈した脳障害のある患者は
とは,通常の子どもにもみられる行動ではある
歪んだ身体認識を持つことが報告されており,
が,その程度が通常範囲をこえているものであ
精神医学の分野においては,統合失調症患者は
発達の歪み j とは,通常の子どもにはみ
り r
身体の境界の消失感覚があり,身体認識の崩壊
られない行動がみられるというものである。ま
や質の低下によって身体部位もしくは全身の存
た,ここで言う「知能の遅れのない j という状
在でさえも非現実感覚を生じていることが報告
態は,知能指数 7
1'
"
'
"
'84 (境界線知能)が基準
されているヘまた,心理学の分野においては,
部5以上の正常という意味も
とされ,知能指数 8
過体重・少体重者は自己の身体認識が崩壊して
凶
幻
2
)
含まれる 1
いるとの報告 8) など,研究分野は多岐に及んで
軽度発達障害は社会でで、の認知が低くその障害
いる。そこで,本論で扱う自己の身体認識につ
像がわかりにくいのでで、,わがままな子どもであ
いて,まずその定義づけを行う。
る,育て方の問題などとされていることが少な
我々は,自己の身体を意識的あるいは無意識
的 に 認 識 す る こ と が で き る へ こ の 身 体 の 意 識 .くない。文字通り軽度の発達障害と理解される
ことも多いが,生活上の問題はけっして軽度で
的・無意識的認識は,身体像・身体図式などに
はない。一般的に軽度発達障害の診断が可能と
よって構成され,心身の正常な発達のための基
礎となっている 10)。身体像とは,感じられるま
なるのは 5歳頃が多く,不注意や多動性,社会
まの身体であり川,身体図式の存在を前提とし
性(認知・言語)の障害,協調性運動障害,読
ながら,直接体験され,意識される身体の空間
み書きや計算などによって生活や学習に困難を
像 6) である。身体図式とは,各肢節を自動的に
抱えており,また 1人の子どもに複数の症状(障
害)が合併することも多い ω。
運動調節し,自己の身体が空間内にどう位置し,
どんな姿勢をとっているかを意識下あるいは無
軽度発達障害の診断は複数の手法を用いて総
意識下に認識すること 6). めである。さらに言え
9
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0年に世界保健機関
合的に判断されている。 1
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)が
ば,身体像は自己身体が外界とは異なることを
作成した疾病及び関連保健問題の国際統計分類
認識する,いわば 3人称的認識であり,身体図
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式は身体各部の運動・位置を認識する,いわば
1人称的認識である 9)。
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以下, I
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) の「第 V章 (
F
),精神及び行動
以下,上述した身体像および身体図式の定義
を用い,人物描画・肢位模倣の結果から軽度発
の障害 J は
, r
心理的発達の障害」や「小児期
および青年期に通常発症する行動および情緒の
達障害(注意欠陥多動性障害,高機能自閉症,
障害J,さらにはアスペルガー症候群,広汎性
アスペルガー症候群,発達性協調運動障害など)
発達障害,発達性協調運動障害や注意欠陥多動
の範鴎にある児(以下,軽度発達障害児)の自
性障害など障害別に細かく分類されている 13)。
己(被験児)の身体認識について身体像や身体
また,アメリカ精神医学会が作成した精神疾
図式の観点から文献的考察をふまえて報告す
患の診断・統計マニュアル (
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2. 対象
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) には,様々な診断が
1)対象
対 象 は 健 常 児 9名 ( 男 児 3名 , 女 児 6名),
および軽度発達障害児 9名(男児 6名,女児 3
名)で、あった。年齢は健常児・軽度発達障害児
, 5歳後半が 7名で、あった。
ともに 6歳前半が 2名
症状で細かく分類されており 13) 患児の症状を
観察しあてはまる症状の組み合わせから診断さ
れる。しかし,診断時には医師の主観による評
価を用いていることも多く,複数の症状が合併
した場合,医師の診断経験などによって診断結
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理学療法の臨床と研究第 1
7号
果が異なる場合がある 。 また , 1CO-10の定義で
は,知能障害を伴う場合は発達性協調運動障害
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Vの定義では,
とは認められていないが, O
知能障害を伴った場合でもその知能から想定し
得る以上の不器用さを持っていれば発達性協調
運動障害と診断できるという問題もある 。 この
ように,定義の暖昧さや診断手法に医師の主観
も用いられていることから, 一貫性のある診断
を下すことができおらず 実際に医師によって
。
診断名が異なることがあるとの報告もあるは)
そのため,本論においては診断名ではなく ,そ
れらを含むより広い定義として用いられる軽度
発達障害 の範曙にある児を対象とした。
3.方法
2008年
ばそれぞれ l点とした。最高点は 1
5点である。
2) 肢位模倣
肢位模倣には南カリフオノレニア感覚統合検査
項目 17) の方法を 用いた。検査者と 被験者は向
かい合い,肘掛のない椅子に座らせた。検査内
容は全 1
2肢位であり, 1肢位につき 1
0秒間も
しくは被験者が正しく肢位がとれれば次の検査
内容に移った。採点の記入はもう l名の検査者
が行い,プロトコ ールシート の絵と正確にあっ
ているかどうかを確認し採点した。採点基準は
検査者が姿勢を示してから 3秒以内に正しい模
倣ができた場合は 2点 4秒から 1
0秒の間であ
れば l点,模倣肢位がわずかに異なっている場
合には採点基準に基づき ,それが 10秒以内で
あれば 1点と した。なお , 10秒後以降の正しい
, 2点の採点基準に合わない模
模倣,また 1点
倣は O点とした。最高点は 24点である。
3)統計方法
人物描画ならびに肢位模倣について ,統計検
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chの方法)を用
定には対応のない T検 定 (
いた。 なお,統計学的有意差は 5%とした。
1)人物描画法(図1)
人物描画法にはグッドイナフ人物画知能検
査 15) の集団検査の施行方法を用いた。被験児
に対してひとり の人 物 を 描 く よ う に 人 を ひ
とり描いてください。頭か ら足の先まで全部で
すよ 。 しっか りやってね。J と教示し, 2つ折に
した専用 の描画用紙を縦に長い方向に置かせて
描出させた。 またこのとき,幼児相互の描画が
4 結果 (
図 2, 3
)
人物描画については軽度発達障害児と健常児
観察し合えないように配慮した。 作業終了後,
の聞に有意差は認められなかった (
p=0.88)。
検査者 が性別を確認し,次にそれとは反対の性
肢位模倣については軽度発達障害児は健常児と
別になるように描出させた。 人物画は男性像の
5
みを採点対象とし,採点基準は田中らの身体 1
部位分類 16) を用い,グ ッ ドイナフ人物画知能 、 点
検査に基づい て,各項 目の達成基準に該 当すれ
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図 2 人物描画得点(最高 1
5点)
*
占
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-軽度発達障害児
*
図 1 人物描画の一例
a,b 健常児
c,d :軽度発達障害児
-3
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ロ健常児
P<O.
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図 3 肢位模倣得点(最高 24点)
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比較して有意に低い値を示した (
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)。
ことが示唆された。
本研究で用いた南カリフォルニア感覚統合検
査項目である肢位模倣は,被験児が検査者の肢
位を自分に写し,同じ肢位をとる必要がある。
他者の運動の観察から得られる視覚情報に,自
らの運動プログラムを対応づけるためには,視
覚情報と運動制御(運動企画)という異質のも
のから類似性を抽出するプロセスが不可欠であ
り 31)また同様の動きを自己の身体で正確に実
行する運動能力も必要となる。被験者が模倣を
意図して観察しているときには,模倣を実行す
るときと同様に運動企画に関する前頭葉領域が
活性化することが報告されている 30)。しかし,
軽度発達障害児は前頭葉領域の障害が認めら
れ 32) 知覚・認知処理が困難であるために知覚・
運動経験が不足し,空間で身体を上手に操作す
るための身体図式が形成されない 33)。この身体
図式の形成不全が身体運動と環境との誤差を生
じ,行為の不安や防衛によってさらに経験不足
を招くことで日常生活に支障をきたす,という
)。
悪循環を形成していることが考えられる(図 4
自己が行う運動と環境との関係を知ることは
自己が行う運動の状態を知ることに繋がり,ま
た,さまざまな感覚系を用いて自己の身体情報
を正確に知ることによって,外界に関する知識
5. 考察
まず,人物描画法に関する先行研究について
概説する。人物を描画する手の機能の熟達の問
題肌同,意識水準や注意機能の問題 2ペ 幼 児
は特定の身体部位への興味を示すこと 21)幼児
は自己以外の誰か(親・兄弟など)を描画モデ
ルとして想定していること 22) さらには脳性麻
庫児を対象とした結果においても身体と自画像
に相関はなかったとの報告 23) など,人物描画
法では自己の身体認識が十分に評価できない可
能性を示唆する報告が多数みられる。しかし,
一方では,人物描画法によって幼児の身体認識
の発生とその発達過程について明らかにするこ
とができるとの報告刊 .25) も多数存在し,人物
描画法は身体像(感じられるままの身体)の発
達過程を評価するものであり,どのようになっ
ているという認知ではなく,そこにあることが
わかった程度の認識である 26).27) と考えられて
いる。これらのことから,人物描画法は身体部
位の想起の発達過程を知る評価手法として有用
であると考えられる。
次に肢位模倣に関する先行研究について概説
する。模倣とは目で見て,耳で聞いた他者の動
きやしぐさなどを自分の身体に写し取って再現
することであるお o Melzoff29) は新生児が舌の
突き出し,口の開閉,唇の突き出しについて他
者の顔の表情を模倣することができることや手
指を開閉させる行為も模倣(共鳴動作)できる
ことを実証している。本実験で行った肢位模倣
は目の前で検査者の動きを模倣する直接模倣で
あり,肢位を模倣することによって運動観察と
運動実行の共通性を評価することができる 30)。
これらのことから,肢位模倣は他者の動きを視
覚的に知覚・認知し,身体図式にもとづく肢位
の整合能(他者に対して自身の身体を照合する
能力)を知る評価手法として有用であると考え
られる。
今回我々が行った調査では,軽度発達障害児
と健常児の間で人物描画については有意な差が
なく,肢位模倣については軽度発達障害児が健
常児と比較して有意に低い値を示したことか
ら,軽度発達障害児は身体部位の想起について
は健常児と比較しでも発達の遅れは認められな
いが,身体図式にもとづく肢位の整合能につい
ては劣ることが示唆された。つまり,軽度発達
障害児は身体部位が“そこにあることが分かる
程度の意識的想起"は可能であるが,身体図式
にもとづく他者と自身の身体照合(身体がどの
ようになっているかという認識)は困難である
を得ることができる 3~) という相互関係が成立
している(図 5
)。そのため,軽度発達障害児の
自己と環境との関係については,人物描画法に
よる身体部位の発達過程,あるいは肢位模倣に
よる身体図式にもとづく整合能を評価するとと
もに,自己の身体認識を動的で幼児の日常生活
図 4 身体図式形成の悪循環
能動的
運動と行為
4・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
砂
環境
(対象)
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│自己の身体認識│
図 5 能動的運動・行為,自己の身体認識,
環境との相互関係
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理学療法の臨床と研究第 17号 2008年
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に直接的に関連のある活動や遊びを通してこれ
らを評価していくことがより重要であると考え
る
。
6
. 結びに変えて
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) 森岡周:リハビリテーションのための脳・神経科学入門.
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共同医書出版社, 2
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)マリアンヌ・フロスティッグ著,小林芳文訳:フロス
ティッグのムーブメント教育・療法理論と実際.壮
光舎印刷, 2
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7
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1
)田村立,杉山登志郎:診断はどうするか.小児内科
我々が行った今回の調査では,軽度発達障害
児は身体部位の想起は可能であるが,身体図式
にもとづく他者と自身の身体照合は困難である
ことが示唆された。
人物描画法は幼児が認識している身体部位を
把握でき,また各身体部位の発達過程を明らか
にすることができることは先に述べた。しかし,
幼児にとって四肢先端部など細部にわたって描
くことは困難であり,人物画を描く手の運動機
能が低い場合にも自己の身体認識の形成率が低
いと判定される問題も残されている目。また,
肢位模倣についても自己の身体認識を評価する
ためには運動能力に問題がないことを証明する
必要があり,人物描画や肢位模倣と基本的運動
能力との関係について検証する必要がある。さ
らに,注意機能(意識的・無意識的)の影響に
ついても考えなければならない。
今後,人物描画法,肢位模倣と運動機能,注
意機能の評価を併せて行い,これらの詳細な評
価をふまえたうえで,さらに,動的で日常生活
に直接的な活動や遊びを通して幼児の身体認識
を検証していく予定である。
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)宮本信也:軽度発達障害とは何か.小児内科 39
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n著,高橋三郎ら訳:
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R精神疾患の分類と診断の手引き.医学書院,
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)橋本俊顕:診断はどうするか.小児内科 3
9:2
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)小林重雄:グッドイナフ人物画知能検査ハンドブック.
三京房,京都, 1
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)田中千恵:B
て一人物描画法との関連から一.奈良女子大紀要:
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) 日本感覚統合障害研究会:日本感覚統合障害研究会認
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) コース,日本感覚統合学会,
定講習会基礎・検査法 (
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)森岡周:リハビリテーションのための認知神経科学入
門.共同医書出版社, 2
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N,Moore MK: Imitation of facial
29H!eltzoff A
本論を終えるにあたり 本研究にご協力して
いただきました対象児の皆様ならびに保護者の
皆様に深謝いたします。また,本研究に快諾し
ていただきました国教諭,施設職員の皆様に深
謝し、たします。
9年度県立広島大学重
なお,本研究は平成 1
点研究事業の助成の一部を受けた。
文献
1)ロシャ・ P著,板倉昭二ら監訳:乳児の世界.ミネルヴァ
書房,京都, 2
0
0
4
2
) 多賀厳太郎:脳と身体の動的デザインー運動・知
覚の非線形力学と発達一.金子書房,東京, 2
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kら著,田中繁ら監訳:モーターコントロー
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ル原著第 2版.医歯薬出版,東京, 2
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F 国際生活機能分類一
5
) 障害者福祉研究会(編集
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国際障害分類改定版.中央法規出版, 2
6
) P・シルダー若,北条敬訳:身体図式一自己身体意識の
I出版,東京, 1
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学説への寄与 .金日J
7
) P・シルダー著,稲永和豊監修:身体の心理学一身体の
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)森岡周:リハビリテーションのための認知神経科学入
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31)乾敏郎,安西祐一郎 編:イメージと認知.岩波書庖,
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yら編著,土田令子ら翻訳:感覚統合と
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その実践第 2巻,協同医書出版,東京, 2
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)乾敏郎,安西祐一郎 編:イメージと認知.岩波書庖,
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eの構造に関す
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)田中千恵:幼児期における B
る研究一人物描画法と基本的な運動技能との関連から
一.発育発達研究 3
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