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Q-TOF-MS
皮膚表面における脂溶性物質と皮膚疾患との関連 伊藤貴洋 工学部生命工学科 生命情報工学第二分野 吉田研究室 背景 アトピー性皮膚炎(AD)とは,遺伝的・環境的要因などから引き起こされる慢性的な皮膚疾患 ⇒体内でAGEsや糖化脂質が蓄積↑ AGEs: Advanced Glycation End Products 糖化脂質 皮膚表面での局在について明確に示す報告が少ない! pentosidine CML タ ー ン オ ー バ ー 皮脂膜 角質層 顆粒層 アトピー体質 約28日 pyrraline etc… Amadori-PE (Phosphatidyl Ethanolamine:リン脂質) 皮脂や角質成分の分析を行ない、 AGEs及び糖化脂質の皮膚表面への局在を調べた。 有棘層 基底層 表皮の構造 pentosidine(蛍光性) Amadori-PE (Phosphatidyl Ethanolamine) 方法 sample :アトピー性皮膚炎(AD)患者 (T.I/22/M) 健常者(S.H/23/M) サ ン プ ル 調 製 <<< 採取期間中、治療のため 手や指にステロイド剤を使用していた。 dry up 5min 流水で腕腹部を軽くすすぎ、 ガラス棒で皮膚表面の 100%EtOHで抽出 その後、水分を取り除く 皮脂及び角質成分を採取 1 sampleにつき 20 回繰り返す 測 定 ・ 解 析 20μl injection skin sample HPLC 分析(UV、蛍光検出) 80%MeOH 30μlに溶解 (+0.1%HCOOH) 方法 sample :アトピー性皮膚炎(AD)患者 (T.I/22/M) 健常者(S.H/23/M) <<< 採取期間中、治療のため 手や指にステロイド剤を使用していた。 HPLC 設定条件 サ ン プ ODS(逆相)カラム flow 0.4ml /min ル (InertSustain C18 50mm×3.0) 調 製 移動相溶媒 80%MeOH(+0.1%HCOOH) dry up 流水で腕腹部を軽くすすぎ、 ガラス棒で皮膚表面の 100%EtOHで抽出 その後、水分を取り除く。 皮脂及び角質成分を採取 UV 210nm 蛍光 ex/em=335/385nm (Pentosidineの励起、蛍光波長 ) 1 sampleにつき 20 回繰り返す 測 定 ・ 解 析 20μl injection skin sample HPLC 分析(UV、蛍光検出) 80%MeOH 30μlに溶解 (+0.1%HCOOH) 方法 sample :アトピー性皮膚炎(AD)患者 (T.I/22/M) 健常者(S.H/23/M) HPLC 設定条件 採取期間中、治療のため 手や指にステロイド剤を使用していた。 蛍光クロマトグラムの例 サ ン プ ODS(逆相)カラム flow 0.4ml /min ル (InertSustain C18 50mm×3.0) 調 製 移動相溶媒 80%MeOH(+0.1%HCOOH) 流水で腕腹部を軽くすすぎ、 ガラス棒で その後、水分を取り除く。 皮膚表面を採取する dry up 100%EtOHで抽出 UV 210nm 蛍光 ex/em=335/385nm (Pentosidineの励起、蛍光波長 ) 1 sampleにつき 20 回繰り返す 測 定 ・ 解 析 <<< 溶出液を回収 80%MeOH 30μlに溶解 (+0.1%HCOOH) 20μl injection skin sample HPLC 分析(UV、蛍光検出) Q-TOF-MS (ESI) 解析 方法 sample :アトピー性皮膚炎(AD)患者 (T.I/22/M) 健常者(S.H/23/M) <<< 採取期間中、治療のため 手や指にステロイド剤を使用していた。 Q-TOF-MS 設定条件 サ ン プ ル 調 製 ODS(逆相)カラム ACQUITY UPLC BEH C18 (50mm×1.7µm) flow 0.3ml /min グラジエント条件 流水で腕腹部を軽くすすぎ、 ガラス棒で その後、水分を取り除く。 皮膚表面を採取する dry up 時間 /min A液 /% 0-2 100 2-8 100-0 100%EtOHで抽出 8-9 0 9-10 0-100 10-11 100 B液 /% 0 0-100 80%MeOH 30μlに溶解 100 (+0.1%HCOOH) 100-0 0 1 sampleにつき 20 回繰り返す A液:50%MeOH(+0.1%HCOOH) B液:100%MeOH(+0.1%HCOOH) 測 定 ・ 解 析 20μl injection skin sample HPLC 分析(UV、蛍光検出) Q-TOF-MS (ESI) 解析 HPLCによる蛍光クロマトグラム skin sample (AD) mV 計9サンプル Q-Tof-MS 測定 mV RT3.5-4.5min Void Volume(Vo) Pentosidine standard 0.5 μg/ml RT (保持時間) /min Mass spectrum (Void Volume) skin sample (AD) m/z + Pentosidine standard 0.1 mg/ml pentosidine 379.2m/z m/z Q-TOF TIC (RT=3.5-4.5min) skin sample (AD) MS 解析 Skin sample (control) RT (保持時間) /min 4.3min 6.5min Mass spectrum (RT=4.3min) Skin sample (AD) Skin sample (control) (a)387.1531 (b)409.1436 (c)425.1074 m/z (a)387.1531m/z=[cholesterol]+[H+] (b)409.1436m/z=[cholesterol]+[Na+] (c)425.1074m/z=[cholesterol]+[K+] cholesterol 386.65 g/mol AD患者が使用しているステロイド剤により 角質層の保湿機能を持つコレステロール硫酸の前駆体である コレステロールの代謝促進が要因として考えられる。 Mass spectrum (RT=6.5min) 303.2036 331.2567 611.7022 Skin sample (AD) Skin sample (control) m/z R1 Amadori-PE(18:1-X) *Kiyotaka Nakagawa et al., Journal of Lipid Res.,vol 46,2005 R3 R2 303.2036m/z =[611.7022]-[R2]+[H+] 611.7022m/z =[Amadori-PE]-[R1]+[H]+ 331.2567m/z =[611.7022]-[R3]+[H+] HPLC (RT=3.5-4.5min) 蛍光 Amadori-PE(18:1-X) *Kiyotaka Nakagawa et al., Journal of Lipid Res.,vol 46,2005 UV (蛍光性なし) /min 結論 Pentosidine(AGEs)について Pentosidine標準品においてもマスのピークの検出が弱いため、 skin sampleでは検出できなかった可能性があった。 そのため、今後Q-TOF-MSの分析設定の見直しが必要である。 コレステロールの存在について ステロイド剤の使用により角質層の保湿機能を持つ コレステロール硫酸の前駆体であるコレステロールの代謝が高まっている 可能性が示唆された。 Amadori-PEの存在について 皮膚疾患による酸化ストレスがリン脂質の糖化を促進させたと考えられる。 また、皮膚疾患患者の皮膚表面に局在している可能性が示唆された。 ただし、今後MS/MS解析による物質同定が必要である。 補助資料 HPLCによる蛍光クロマトグラム skin sample (AD) ×1 ↑ ガラス棒による採取法 skin sample (AD) tape only ×1 ↑ テープストリッピング法による採取法 蛍光性AGEs 非蛍光性AGEs AGEsの生体内での合成経路 グルコースなど還元糖のカルボニル基がタンパク質やアミノ酸のアミノ基と反応すると、シッフ塩基を形成 する。本段階は不可逆的な反応であるが、引き続きエナミノールを経て、アマドリ転位によって安定なアマ ドリ化合物になる。 アマドリ化合物は、脱水、加水分解、炭素間の開裂により、グリオキサール、メチルグリオキサール、3-デ オキシグルコソンなど、分子内に二つのカルボニル基を有するα-ジカルボニル化合物を生成する。 その後、生体内ではα-ジカルボニル化合物、シッフ塩基やアマドリ化合物の分解、脂質過酸化反応由来 のアルデヒド、糖の自動酸化や分解などによりAGEsが生成する。 PEの糖化反応 水分 ラ メ ラ 構 造 水 油 細胞間脂質 皮脂膜 角質層 顆粒層 有棘層 基底層 表皮の構造