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Title 幼児期の描画発達と模倣 : 行為模倣が視覚的リアリズム
Title 幼児期の描画発達と模倣 : 行為模倣が視覚的リアリズムへの移行に 与える影響 Author(s) 五十嵐, 綾 Citation 研究紀要 / 金沢大学人間社会学域学校教育学類附属幼稚園, 62: 98-99 Issue Date 2016-06-12 Type Departmental Bulletin Paper Text version publisher URL http://hdl.handle.net/2297/45580 Right *KURAに登録されているコンテンツの著作権は,執筆者,出版社(学協会)などが有します。 *KURAに登録されているコンテンツの利用については,著作権法に規定されている私的使用や引用などの範囲内で行ってください。 *著作権法に規定されている私的使用や引用などの範囲を超える利用を行う場合には,著作権者の許諾を得てください。ただし,著作権者 から著作権等管理事業者(学術著作権協会,日本著作出版権管理システムなど)に権利委託されているコンテンツの利用手続については ,各著作権等管理事業者に確認してください。 http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/ 幼児期の描画発達と模倣 一行為模倣が視覚的リアリズムへの移行に与える影響一 金沢大学人間社会学域学校教育学類教育基礎専修 五十嵐綾 序論 描画時の模倣に対しては,否定的な見方をする人も多い。しかし一方で,模倣を“自分の持た ないデータを使って新しい表現へつなぐ創造的な営み”だと主張する肯定的な見方もある(奥, 2003)。本研究では,本来7,8歳頃に移行すると考えられている見たものを正確に再現する視覚 的リアリズムへの移行が,模倣によってより年少の子どもでも可能であることを明らかにするこ とを目的とした。また先行研究で行われた,他者が描いた絵を提示して模倣させる条件では効果 が見られなかった(山田,2012)ことから,実験者自身が描画したところを模倣させる条件(行 為模写条件)を設定した。 研究方法 金沢大学附属幼稚園の年長児48名(男児28名,女児20名)を対象に,描画1(取っ手が見 えず,花模様が見えるコップを描かせる)と,描画2(取っ手が見え,花模様が見えないコップ を描かせる)の2枚の絵を描いてもらった。手続きとして,まず,参加児にコップを手渡し,「コ ップ」だということを認識させた。次に,描画1の配置でコップを呈示箱に配置し,横からの見 え方を確認させた。そして,参加児を月齢や性別に偏りがないよう3条件に分けた。描画条件で は,「このコップを見えている通りに描いてね。」と教示し,模写可能条件では,「このコップを見 えている通りに描いてね。ちなみに他のお友達はこんな風に描いてくれたよ。」と教示し,行為模 写条件では,「お姉ちやんがまずコップの絵を描いてみるから見ていてね。○○さんもこのコップ を見えている通りに描いてみよう。」と教示した。描画2でも同様の手続きで実験を行う。 結果 知的リアリズムによる描画(知っていることを描くこと)を,描画1では「見えていない取っ 手を描いてしまう」,描画2では「見えていない花模様を描いてしまう」とし,視覚的リアリズム による描画を,描画1では「見えている花模様を描き,見えていない取っ手は描かない」,描画2 では「見えている取っ手を描き,見えていない花模様は描かない」として,参加児の描画を分類 した。その結果をFischerの直接確率検定を用いて分析したところ,描画1では模写可能条件と 行為模写条件において視覚的リアリズム表現が多く見られたが,描画2では明確な差が見られな かった。 さらに,詳細に模倣の効果を検討するため,描画1,描画2を得点化した。得点化は,①取っ 手の有無,②花の有無,③花の色が塗りつぶしてあるか,④奥行の有無,⑤コップの形状の有無 の5項目に基づいて行った。まず,各群と描画1.描画2の得点を合算した描画合計得点におい て一要因分散分析を行った結果,描画条件と行為模写条件の間と,模写可能条件と行為模写条件 の間に有意差が見られた(Figurel)。次に,各群と描画1の得点において一要因分散分析を行つ −98−