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GNLF2014 [ch0]

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GNLF2014 [ch0]
グローバル・ネクストリーダーズフォーラム
2014
本会議ブルガリア大会
国内イベント
報告書
平成 26年10月
グローバル・ネクストリーダーズフォーラム学生本部
1
グローバル・ネクストリーダーズフォーラム 2014
報告書
目次
第1部 GNLF2014組織概要
1. ご挨拶 …………………… p.4
2. 設立趣意 ………………… p.5
3. 運営体制 ………………… p.7
4. 後援体制 ………………… p.8
第2部 本会議ブルガリア大会
1. 開催概要……………………p.9
2. 参加国・大学一覧…………p.10
3. 開催スケジュール ……… p.11
4. セッション要約 ………… p.13
セッション 1 ………………… p.15
セッション2 ………………… p.18
セッション3 ………………… p.21
セッション4 ………………… p.24
セッション5……………………p.27
学生発表…………………………p.30
シンポジウム1 ……………… p.33
シンポジウム2 ……………… p.35
グループワーク ……………… p.38
5. 観光・交流 ………………p.41
6. 参加者感想 ……………… p.44
7. 運営フィードバック …… p.47
第3部 国内イベント 「じーえぬの間」
1. 開催概要 ……………………p.50
2. イベント内容要約 …………p.51
3. 統括 …………………………p.58
2
第4部 国内イベント 「日本は東京だけじゃない 地域ブランド戦略」
1. 開催概要 ……………………p.54
2. イベント内容要約 …………p.55
3. 参加者感想 …………………p.59
4. 統括 …………………………p.60
第5部 総括
1.GNLF2014 総括……………p.61
2.会計報告 ………………………p.62
3.ご連絡先 ………………………p.63
3
第1部 GNLF2014組織概要
1.ご挨拶
平素よりグローバル・ネクストリーダーズフォーラム(以下GNLF)に多大なご支援とご協
力を賜り、誠にありがとうございます。皆様のご支援・ご協力のもと、GNLFは無事2014
年度本会議の全日程を終了することが出来ました。
弊団体は初代会頭森下裕介の声掛けのもと2010年にその産声を上げ、将来リーダーとな
り得る各国の学生たちがリーダーへと成長する場を提供し、将来的に参加者が各国の官
界・政界・財界など様々な分野のリーダーとなった時に彼らが互いに協働・協力しながら、
一方では良好な国家関係を構築し、他方では国際的な課題へ対処していく存在となってい
くことを目指すという理念を掲げて活動して参りました。2011年に第一回の本会議を開催
して以来、日本では二度開催し、今回のブルガリア開催で海外開催は二回目となりました。
2014年度のGNLFの活動を始めるに当たり、私たちは「ネットワークの確立」を年間目
標に掲げました。国内におきましては民間外交推進協会様とのシリーズ企画「日本の位置
を再考する」が早くも折り返し地点を過ぎイベントも二回を残すのみとなりました。より
学生と講師の方が密な議論を出来るように工夫を重ね、会を経るごとに参加者からの満足
度も高くなっており、現在では既に第二部の企画も進めております。また、6月には地方観
光のブランディングをテーマに国内イベントを開催し、様々な学生にGNLFを知ってもらう
ことが出来ました。12月には二回目の国内イベントの開催が予定されておりGNLFの知名
度も高まってきております。海外におけるネットワークにつきましては、ブルガリア委員
会が、次年度以降も地域会議を含めた自由度の高い活動を行っていけるように準備を進め
ております。また、今年から新たに参加したメキシコが早くも再来年の海外開催国として
立候補しており、海外ネットワークの拡大が大きく期待されています。
本会議を含めたGNLFの全ての活動は、協賛者・後援者の皆様、講師の先生方を始め、多
くの方々のご協力の下成立するものでございます。改めて深く感謝申し上げます。
本会議の具体的な内容は報告書の記述に譲りますので、報告書の中で私たちが何を考え、
何を学んできたかを感じ取っていただければ幸いです。
GNLF2014は報告会を以て幕を閉じ、私自身は10月で会頭を退きますが、GNLFは理念
の達成に向け今後ますます進化してゆきます。これからもどうぞ皆様の温かいご指導とご
支援をいただけますよう心よりお願い申し上げます。
平成26年9月
GNLF2014年度会頭
高橋遼平(東京大学法学部3年)
4
2.設立趣意
社会のフラット化が進展するグローバリゼーションにおいて、文化や習慣、宗教などの
「差異」は強みになる一方で、これまでになく人々の間に摩擦を引き起こしています。差
異を前提に、互いを理解し尊重する。それこそグローバル社会において最も重要な原則で
あり、また多様性を増す国内社会においても必要な姿勢ではないでしょうか。また、冷戦
の崩壊とグローバリゼーションの進展で、あらゆる国家が他国との関係を抜きに存在し得
ない時代が到来し、良好な外交関係を可能な限り多くの国との間に築くことの重要性は、
いかなる国にとっても増しています。
私たちは、
「国と国との関係も、人と人との関係から始まる」という信条のもと、多様性
を増す国際社会において互いを理解し尊重する姿勢を持ち、自国を代表して諸外国と良好
な関係を築く役割を果たすことのできる人間こそ、これからの日本に、そして世界各国に
必要なのではないか、そしてそのような人間こそ 21 世紀にふさわしい「グローバル・リー
ダー」なのではないかと考えるに至りました。
グローバル・リーダーは単にスキルを持った人間のことを指すのではありません。差異
を前提に互いを理解し尊重する態度や、急激な環境変化の中で柔軟に問題に対処する姿勢
といった人格を含む、人間性そのものなのです。
ですからグローバル・リーダーを一朝一夕に形成することはできません。それは長期的な
人間関係や人格形成・学習プロセスを通じて形成される人間性だからです。そこで私たち
は、将来の世界を担う可能性と意思を持つ大学生が一堂に会する国際会議を「起点」とし
て、数年~数十年の長きにわたりプログラムへ関与することを通じて一人ひとりがグロー
バル・リーダーへと自律的に成長できるような場を、そして彼らが人間的な絆を深めてゆ
くことのできるような場を創造することを決意しました。
私たちがそのような場の創造に取り組むに際して基軸としたのは、
「一対一ではなく多国
間のプロジェクトであること」
「一会議で終わらない長期的なプロジェクトであること」
「こ
れまでにない国家間関係を積極的に構築するプロジェクトであること」という3つのコン
セプトです。
プロジェクトを多国間で行うことは多様性を体感する上で不可欠であり、前述の通りそ
の長期性も欠かすことができません。加えて、これまでの外交的枠組みが徐々に通用しな
くなる中で、従来は比較的疎遠だった、あるいは一方的であった国家間関係を、相互の理
解と信頼に基づいた対等で双方的な関係に進化させることの必要性から、新たな関係を積
極的に構築する意義は大きいのではないかと考えました。
5
それでは日本人が、そして日本が、この国際的なプラットフォームを主導する意義とは
何でしょうか。
我が国では国際的プレゼンスの低下が問題となり、日本の将来について悲観的な声が蔓
延しています。日本人は「外交下手」とも「内向き」とも評されます。さらに、東日本大
震災で露呈したのは「世界に対して、必要な情報を正確に発信する力」 「世界の言論と行
動をリードし、よりよい国際社会を構築して行くリーダーシップ」の不足でした。各界に
おいて国を背負い国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成が、最も急務になって
いる国こそ日本だと言えるでしょう。そのような意味でこのプロジェクトを日本人自身が
推し進める意義は大きいはずです。
しかしそれだけではありません。日本は世界に先駆けて第二次世界大戦後の高度成長を
成し遂げた国であり、また世界に先駆けて金融危機や超高齢化を経験している「課題先進
国」なのです。日本が直面してきた、そして直面している課題の多くはこれから世界が直
面する課題です。そこで日本の知見や経験を大いに生かすべきではないでしょうか。その
ような意味でこの「日本発のプラットフォーム」は日本にとっても、世界各国にとっても
大きな意義があるものだといえるのです。
私たちはこの長期的な場において、各国を代表して参加する人々に対し「経験」「知見」
「人的ネットワーク」を提供し、一人ひとりが自律的に成長できる環境の整備に尽力しま
す。そして世界各国で求められているグローバル・リーダー育成の一端を担い、将来的に
リーダー達の水平な世界的ネットワークを築き、ひいては多様な国々同士の良好な関係に
結実することを目指します。
2010 年 7 月 1 日
グローバル・ネクストリーダーズフォーラム
ファウンダー 森下 裕介 (東京大学教養学部 2 年(当時))
(2013 年 1 月 1 日 一部改訂)
6
3.運営体制
顧問教授:
遠藤貢(東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻教授)
会頭:
高橋遼平(東京大学法学部 3 年)
事務局長:
渡丸慶(東京大学教養学部3年)
パートナーシップ局:
市原拓也(東京大学工学部3年)*局長
片岸雅啓(東京大学教養学部2年)
上代茉由子(上智大学外国語学部2年)
波多野昂也(東京大学法学部3年)
メンバーシップ局:
吉越文(東京大学経済学部3年)*局長
嶋吉慧(東京大学教養学部2年)
許卉玉(東京大学教養学部2年)
プログラム局:
鵜澤和志(東京大学教養学部2年)*局長
齋藤大斗(東京大学教養学部2年)
森山剛志(東京大学工学部3年)
7
4.後援体制
【協賛】
三菱商事株式会社
豊田通商株式会社
株式会社ビービット
株式会社グロービス
株式会社アゴス・ジャパン
EQ パートナーズ株式会社
【助成】
公益財団法人渋沢栄一記念財団
公益財団法人双日国際交流財団
公益財団法人平和中島財団
【特別後援】
株式会社読売新聞東京本社
一般社団法人日本貿易会
民間外交推進協会
【後援】
外務省
文部科学省
国際協力機構(JICA)
在日キルギス共和国大使館
在日チュニジア共和国大使館
駐日ブルガリア共和国大使館
8
第2部 本会議ブルガリア大会
1.開催概要
会議名: グローバル・ネクストリーダーズフォーラム 2014年本会議ブルガリア大会
主催団体: グローバル・ネクストリーダーズフォーラム学生本部(学生団体)
(東京都文京区本郷 4-1-6 アトラスビル 6 階 IBIC ビジネスプラザ本郷内)
グローバル・ネクストリーダーズフォーラムブルガリア委員会
会期: 2014(平成 26)年8月 17 日~24 日(8日間)
会場及び宿泊地:
ソフィア大学・学生寮
(Sofia 1700. Studentski grad Destrict bl.8)
Tourist center Momina Krepost
(park Ksilifora, Veliko Tarnovo 5000, Bulgaria)
参加国(五十音)
:
エジプト/キルギス/スイス/チュニジア/日本/ブラジル/ブルガリア/南アフリカ/
メキシコ
参加人数:
日本 学生13名(運営委員8名を含む)
ブルガリア 学生9名(運営委員5名を含む)教員 5 名
エジプト/キルギス/チュニジア/ブラジル/メキシコ 学生 2 名 教員 1 名
スイス 学生1名 教員1名
南アフリカ 学生1名
合計45名
議題:
How should we cope with the economic disparities existing around the world?
9
2.参加国・大学一覧
エジプト:カイロ大学(Cairo University)
キルギス:キルギス国立大学(Kyrgyz National University)
スイス:ジュネーヴ大学(University of Geneva)
チュニジア:スース大学(ISSATS)
日本:慶応大学、上智大学、国際基督教大学、東京大学
ブラジル:サンパウロ大学(University of São Paulo)
ブルガリア:ソフィア大学(Sofia University)
南アフリカ:プレトリア大学(University of Pretoria)
メキシコ:メキシコ国立自治大学(National Autonomous University of Mexico)
10
3.開催スケジュール
◆Day1(2013/8/17 Sun.)
各国参加者、順次到着
ソフィア大学学生寮にて事前説明
◆Day2(2013/8/18 Mon.)
・07:30
起床
・08:00-09:00 朝食
・09:30-12:30 オープニングセレモニー
・13:30-18:00 ソフィア観光
・18:00-19:00 夕食
・19:00
Sofia出発
・22:00
Veriko Tarnovo到着
◆Day3(2013/8/19 Tue.)
・07:30
起床
・08:00-09:00 朝食
・09:00-12:00 セッション1
・12:00-13:30 昼食
・13:30-16:00 セッション2
・16:00-19:00 グループワーク
・19:00-20:00 夕食
・20:00-22:00 シンポジウム1
◆Day4(2013/8/20 Wed.)
・07:30
起床
・08:00-09:00 朝食
・09:00-12:30 学生発表
・12:30-13:30 昼食
・13:30-16:30 セッション3
・17:00-18:30 グループワーク
・19:00-20:00 夕食
・20:00-
11
カルチャーパーティー
◆Day5(2013/8/21 Thu.)
・07:00
起床
・07:30-08:30 朝食
・10:00-12:00 Tryavna 観光
・12:00-13:00 昼食
・14:00-15:00 Etar 観光
・17:30-19:00 Veriko Tarnovo 観光
・19:30
ホテルへ出発
・20:00-21:00 夕食
・21:00-
自由時間あ
◆Day6(2013/8/22 Fri.)
・07:30
起床
・08:00-09:00 朝食
・09:00-12:00 セッション4
・12:00-13:30 昼食
・13:30-16:30 シンポジウム2
・16:30-17:00 夕食
・17:00-18:30 グループワーク
・19:00-20:00 夕食
・20:00-
自由時間
◆Day7(2013/8/23 Sat.)
・06:30
起床
・07:00
Sofiaへ出発
・10:00
ソフィア大学学生寮に到着
・11:30-13:30 セッション5
・13:30-14:30 昼食
・14:30-18:00 グループワーク発表
・18:00-19:00 振り返り
・19:00-21:00 夕食・閉会式
・21:00-
自由時間
◆Day8(2013/8/24 Sun.)
各国参加者、順次帰国
12
4.セッション要約
<議題>
How should we cope with the economic disparities existing around the world?
<議題設定理由>
GNLF は「将来リーダーとなりうる学生がグローバル・リーダーへと成長できる場を提
供し、その後彼らが互いの協力のもとで、良好な国家間の関係を構築し国際的な課題へ対
処することを目指す団体」であることを理念としております。
2013 年の本会議においては、“グローバル化が進む中、各国において時代に対応した「独
自の」「正統な」リーダー・エリート層の育成が不可欠であり急務である”との問題意識
から「高等教育」と「エリートの正統性と責任」について議論を行いました。そして本会
議の最後には、「エリートは社会に対して良い影響を与えるような判断をし、行動をとる
存在でなければならない」という認識で、参加者全員が一致しました。
以上の 2013 年度本会議の結論を受け、2014 年度の本会議テーマは「格差」に設定い
たしました。社会に良い影響を与えることの達成のための手法は当然いくつもあります。
しかし、とりわけ格差と言う問題は国家成長という大義名分のもとに抑圧されがちです。
エリートの最終目標が献身的な社会貢献である以上、国家の成長と格差の是正の板挟みに
苦しみながらも双方を達成する努力を怠ってはならないことは言うまでもありません。本
会議では、社会に出る前にこのジレンマについて考え抜き、その意見を様々な国の参加者
とぶつけ合います。将来のエリートを育成する場を提供する GNLF としてはこの上ない機
会を提供できると考え、この「格差」を 2014 年度本会議の議題に据えることにいたしま
した。
また、教育格差や医療格差、情報格差など、さまざまな格差が存在する中、今回はあら
ゆる格差と密接に関わっている「経済格差」に着目します。各国の国内における所得格差
はグローバル化の進行とともに拡大していると言われています。1995-2007 年において
は、OECD 加盟国の 31 カ国中 19 カ国において地域的な格差が拡大しているといわれて
おり、この傾向は 2008-09 年の経済危機以降、より強くなっています。
国内格差に加え、国家間の格差も同様に拡大しています。1800 年時点での国家間格差(最
も裕福な国と最も貧しい国における所得の比率)が 3 対 1 であったのに対し、1992 年時
点では 72 対 1 に拡大しました。1990 年頃からは、新興国・開発途上国の一人当たりの
所得の増加が先進国のペースを大きく上回っていますが、これは多くの場合、上位の所得
層が稼得する所得の劇的な上昇によるものであり、最貧国の中には、何百万人もの所得水
準が1世紀以上ほぼ停滞している国も存在しています。
13
これらの傾向は 2014 年本会議を開催するブルガリアも例外ではありません。1989 年
に社会主義から民主主義、市場主義化を行い、そして 2007 年に EU に加盟することで、
首都ソフィアにはドイツなどからの直接投資が集まるようになりました。農業生産が中心
の北西部などでは、その恩恵を享受することなく所得水準がほぼ変化していない状況にあ
ります。また IMF が発表している各国の経済の実質成長においても、ブルガリアは 187
カ国中 144 位(2012 年現在)と、似たような状況にあるルーマニア(145 位)ととも
に低い経済成長水準にあり、「ヨーロッパ最貧国」という位置を抜け出せずにいます。
以上のような現状を鑑み、2014 年本会議では、参加者が「判断し、行動することのでき
る」リーダー/エリートに近づくために、以下の 2 つのことを達成することを目標としま
す。
1 つ目は現在世界各地に存在する格差がどのようなものであるか、自分とは異なる国々に
おいてどのような格差問題が存在するかについての理解を深めることです。本会議の参加
国には、国連が 2000 年前後に行ったジニー係数による格差ランキングでは上位に位置す
る南アフリカ(4 位)やブラジル(8 位)、また比較的格差が小さいスイス(120 位)、
また 1 人あたりの所得と格差の相関関係を示すグリネッツの逆 U 字曲線上のさまざまな点
に位置する国々が集まります。各参加者の格差や平等に対する考え方や、問題意識が異な
るかもしれません。その中で、「格差とは何なのか」「格差はどこまで容認すべきか」と
いう抽象的な議論や具体的な事例を通して意見を交換することで、各参加者の格差に対す
る考え方が深まることを目標とします。
2 つ目は、1点目にあげた、世界に存在する格差の実体や格差に対するさまざまな考え方
を理解した上で、実際に将来リーダーとなった際にどのように格差に向き合うべきかを考
えることです。具体的には、今後ますます増えると予想される地域統合や地域貿易協定な
どの際に国家間及び国内の格差をどのように考慮すべきか、また国際的な合意や取り決め
を行う際は、しばしば国家間の格差が妨げになりますが(例えば、WTO の Doha Round
や温暖化防止のための CO2 排出量に対する取り決めなどがあげられます)、このような格
差を乗り越えて合意にいたるまでには何が必要か、などといったことを参加者に考え、話
し合ってもらいたいと思います。
2010 年に GNLF が本会議を開催して以来、今まで「資源」「ガバナンス」「教育」とい
う 3 つの分野について取り扱ってきましたが、「格差」というこれまでとは違った切り口
から 2014 年の大テーマを設定しました。しかしこれまで述べてきた通り、
GNLF が 2014
年本会議において「格差」を取り扱うことは、現在の国際社会やブルガリアという開催地、
GNLF の特色を考えても、大いに意義のあることだと考えています。
14
Session1
-In what extend do you call “Disparity”文責:森山剛志
1.
概要
「格差」というのは実は曖昧な言葉である。
どの程度の差までなら許容できて、どこから
抑えるべきか」
(3)
「公平な税金の集め方、使い方はどうあ
るべきか」
が「格差」として問題視されるべきなのかと
なお、お互いがディスカッションする中で
いうのは、同じ国に暮らす人にとってもバラ
差異を見出す事を最大の目的としていたので
バラである。ましてや、他国の人との間では
講師は招聘せずに、本会議のセッションで唯
その認識に大きな差が出ると容易に想像でき
一学生のみで運営されたものとなった
る。だが、実際にどの程度の差があるのかと
いうのは情報化が進んだ今日でも文献や映像
を通して把握するのが難しい。
このセッションでは普段実感する事が難し
い他国参加者の「格差」に対する認識を知り、
自らの「格差」に対するそれを相対的に把握
してもらう事を目標とした。
上記の目標に基づき、本セッションは比較
2.
小テーマ
的自らの意見を述べやすい3つの小テーマを
他のセッションと異なり、一人の講師によ
設定して各テーマで指定されたグループでの
る専門的なレクチャーは実施していないため、
ディスカッション終了後に各班代表に意見を
各小テーマがどのような事を意図していたの
共有してもらうようにした。また、会議全体
かを列挙していく。
を通して最初のセッションということで参加
(1)
「移民が給与などで不遇を被るのは、ど
者同士がお互いの事をより良く知って仲を深
こまで許されるのか」では、各参加者が自ら
める契機となる事を目的とする自己紹介も各
のお気に入りのスポーツを交えて自己紹介を
テーマに沿って用意し、テーマごとに班員構
した後、参加者誰もが知っているスポーツの
成を入れ替えて多くの人と交流できるように
祭典であるワールドカップに話題を転換した。
図った。
2022 年のワールドカップは灼熱のカター
(1)
「移民が給与などで不遇を被るのは、ど
ルで行われるが、
「その会場を誰が建設するの
こまで許されるのか」
か?」という疑問の答えがエジプトやインド
(2)
「世代間を越えた富の再生産をどの程度
など周辺諸国の若者というのに首をかしげる
15
人はいない。
しかし、移民労働者が自国で働くよりも高
るセグリゲーションがアメリカを筆頭に広が
りつつあるのは事実である。
い給与が得られるとはいえ、カタールのよう
そのような中、税金を多く払っている富裕
な産油国で生まれ育った人よりも低賃金で選
層が自分たちの納めた多額な税金の大半が貧
挙権なども与えられない現状に対しては様々
者への社会福祉なでに使われるのはおかしい
な意見が出ると思われたので、移民労働者に
という意見を表明して富裕層のみの独立した
与えられるべき立場という観点から同一国内
自治体を成立させた。
での人種格差を取り上げた。
自分の納める税金を自分のために使ってほ
しい彼らの言い分も分かるが、社会福祉に多
(2)
「世代間を越えた富の再生産をどの程度
額の資本が必要なのも事実であり、どのよう
抑えるべきか」では、各参加者が高校生活で
な公のサービスが最も平等で多くの人が納得
頑張った事を自己紹介した後、グリム童話の
できるのかを話し合ってもらった。
「アリとキリギリス」を取り上げて個人の努
力と結果が一致する状態の道徳的望ましさの
3.
グループディスカッション
妥当性を取り上げた。その上で、人間社会が
グループディスカッションでは、一班あた
道徳的に望ましい状態に必ずしもなっておら
り5,6人に分けた上で6つの班を作り各班
ず親の財力格差が子供のそれにも繋がってい
に教授も1名ずつ入って頂いた。
る現状を否めない事も確認した。また、人が
自己紹介に5分、メインとなるテーマのデ
自分の財産を自由に使うのを制限する権利が
ィスカッションに20分ほどかけてもらい議
他の人が持ち合わせていない事も確かである。
論を深めてもらったのだが、自国の様子を熱
以上を踏まえた上で「それらの問題の妥協
心に語ってくださる教授やまだ会議の序盤と
点はどこか。どこまでなら世代間を越える富
いう事で少し緊張しながら慎重に言葉を選ぶ
の再生産は許されるのか」を各参加者には考
参加者、既に打ち解けた雰囲気でハイペース
えて貰った。
のまま話し続ける参加者などの会議が進むに
つれて見えてきた個性がこのセッションの段
(3)
「公平な税金の集め方、使い方はどう
階から少しずつ発揮されていた。そして、そ
あるべきか」では、各参加者に自国の他の参
れぞれの個性と多様なバックグラウンドがデ
加者に関する他己紹介をしてもらった。その
ィスカッションを盛り上げる大切な種であっ
上で、進行役学生の親しい友人がアメリカ合
た。
衆国で体験した出来事を紹介した。
ディスカッション後の共有も 20 分のディ
その出来事というのは、アメリカ合衆国で
スカッションを分かりやすくまとめてくれた
は実生活で格差を経験する機会が少なくて大
発表が多かった。そのため、一層全体でディ
学に通える比較的裕福な層の貧困問題への認
スカッションする時間がなかった事が悔やま
識が現実と大きなギャップがあるというもの
れる。
である。この出来事に限らず、経済階層によ
16
だが、全体的に見れば非常に盛り上がり会
議の先行きの明るさを暗示する和やかなディ
スカッションになった。
4.
統括
身近で個人的な話しやすいテーマをディス
カッション向けに用意したとはいえ本番では
議論を上手くファシリテートできなかった。
また、各班の意見共有の後に全体で意見を交
日常生活で、自分が何気なく見過ごしてい
える時間があれば更にディスカッションが深
る事柄も他人から見たら「格差」に当てはま
まった。といった改善点も挙げられて運営面
るかもしれないし、自分にとっての「格差」
で大成功だったかと尋ねられたら諸手を挙げ
は他の人にとって全く問題でないかもしれな
て肯定はできない結果だったと思う。
い。
だが、セッション1で意図したのは、この
近い将来、今回のカンファレンスに参加し
セッション単独で「格差」に対する認識を深
たメンバーも国際的な場で、自分とパートナ
める事ではない。1週間にわたる会議全体で
ーの間で問題意識にズレが起きるという場面
「格差」について考えていく事に向かって期
に直面するかもしれない。
待をこめた一歩目を踏み出す事を狙いとして
そのような状況で、今回のセッションで取り
いた。
上げたような身近な事例や自分の体験談など
会議終了後のアンケートではセッション2
から少しずつ問題意識のズレをお互いに認識
に次いで印象的なセッションだったという結
していく、といったプロセスを積み重ねる事
果を頂けた。また。セッションの進め方、
「格
が役に立つのではないか。
差」について考えるブルガリア会議全体にお
「格差」という特定の問題に焦点を当てて
ける導入パートとしてのセッション1という
相互理解を深める事が今回の会議の目的であ
立場が非常に明瞭だったという意見も散見さ
るが、その導入に用いた具体的で個人的な体
れたので当初の意図がある程度実現できたと
験談から誤解の糸を解いていくというプロセ
思われる。
スは普遍的に応用できる気がしてやまない。
また、もしそのような場面で今会議での経験
が役に立てば非常に幸いである。
17
Session2
“Disparities in Crisis” How the Economic Policies at Time of Crisis
Can Reduce or Expand Disparities
文責 上代茉由子
1. 概要
ために起こりえた危機でもあり、銀行や不
セッション2は、アレキサンダー・トモフ
動産のみではなく、世界の経済システム自
教授からのレクチャーと Q&A 形式のグルー
体に亀裂が生じたことを意味した。銀行は
プディスカッションから構成されている。ト
不十分な規制の中、あらゆる手を使い無限
モフ教授はブルガリアの共産主義体制から民
大に利益を得ようとし、様々な危険かつ実
主主義体制への移行にも関係し、現在はソフ
体のない金融派生商品を生み出し続けた。
ィア大学で政治経済学を専門に教鞭を執って
2001 年のアメリカの市場では貨幣の流
いる。
通量が増え、質が下がっていた。アメリカ
2. レクチャー
の家庭は貨幣価値の低下などにより価格が
2 つの経済危機を経験した我々の社会は
新たな段階を迎えている。
高騰し続ける住宅をローンで購入したが、
銀行は返済能力を持たないサブプライム層
経済危機の影響を緩和する策は様々なも
にも融資を続けたが、その後住宅バブルが
のがあるが、既存の経済理論は現実の経済
突如として崩壊したことにより、経済危機
システムについて十分に説明する事はでき
が引き起こされた。
ていない。近年においては、ケインズとフ
銀行が相手をかまわずに融資行い、市場
リードマンの2つの大きな流れがあったが、
の自主規制が行われなかったことには、経
ケインズ経済論は 1960 年代まではジョ
済的インセンティブの他にも、政治的な要
ン・F・ケネディ政権下の最盛期を経て、70
素も深く関わったとはいうものの、フリー
年代末期まで優位を占めていた。しかしそ
ドマンの理論は限界を迎えた。つまり、経
れ以降は英国ではサッチャー、米国ではレ
済が上手く循環する時に国政府の介入の余
ーガンがフリードマンのマネタリズムを導
地はないものの、そうでない場合は、新た
入し、中国など少数の例外を除き、多くの
な規制を設けるなどの市場介入が必要だと
国々がこれに倣った。共産主義の崩壊後ア
いうことだ。
メリカの自由主義こそは絶対的だと信じら
また、格差が存在する社会において、富
れていた中、2007 年の秋、アメリカの大
裕層はより富を得ることができ、貧困層は
手企業が次々と崩れて行き、その経済危機
さらに貧困に苦しむ。なぜならお金を扱う
の波はヨーロッパ、中国、日本、ラテンア
には経験と知識が必要であり、富裕層はそ
メリカ、遂にはロシアと東ヨーロッパにま
のようなスキルを持っているからだ。ブル
で及び、世界の GDP は一気に 11%も急落
ガリアで民主主義国家に移行した際は、国
した。これは我々が対策を構築しなかった
民はその後の経済に希望を抱いていたが、
18
政府による経済推移の保障となる基準もな
るかは個人の立場によるが、いずれにせよ
く、全くの自由だったがために、スキルを
学者として大きな功績を残したという事実
持つ者が有利となり格差が拡大した。この
は変わらない。
ように国内格差を減らすには、自由・権利・
Q:社会的正義の新たな定義とは。
規制が必要であり、それと同時に力を持っ
A:もはや右派、左派といったコンセプト
た中流階級層が重要となる。EU もまた格差
が失われていることは明らかであり、今の
軽減の政策が弱く、改革の必要に迫られて
我々にとっては政治に新しい現象をもたら
いる。また各地域が格差の縮小に最善のア
す、何かしらの両派の混合体のようなもの
プローチを試みなけれればならないと共に、
が必要である。政治家等は改革に迫られて
国際機関もその架け橋となることが期待さ
いて、新たな実用的解決法はあるものの、
れている。
社会のコンセンサスをとるのが困難である。
3. グループワーク
4. 統括
グループワークは Q&A 形式で行われた。
本年度の本会議において、最初に講演者を
Q:広がる格差をコントロールするには国
招いて行ったセッションであり、教授がブ
家はなにをするべきか。
A:企業は被雇用者と経営者の社会的ニー
ルガリアのみならず EU においても活躍す
る政治・経済の専門家であったこともあり、
ズに応えなければならない。例えばデンマ
参加者は興味深く講演を聞いていた。講演
ークはヨーロッパ最大の共産主義国家とも
後はグループワークを予定していたものの、
言われていて、法人税もブルガリアの 10%
直前に講演者の要望によって質疑応答形式
に対し 66%もかかっている。またスウェー
となってしまった。質問者数が多く全員の
デンやフィンランドにおいても富裕層に対
意見を受け付ける事ができなかったため、
してより多くの税金が課されているが、近
時間もう少し長めに確保することができれ
年の調査では、高い税率を払う国民は他と
ば良かったが、その後の自由時間において
比べより幸せに感じている、という結果も
参加学生同士自然と講演についての議論を
でいている。このように格差を誘発する一
するのが見受けられた。その後のディスカ
律課税から累進課税へと移行すべきである。
ッションなどでもヒントとなる情報が盛り
Q:共産主義をどのように理論として解釈
するべきか。
A:政治経済の専門家に求められることは
込まれた非常に有意義なセッションであり、
最後にはトモフ教授から日本人の運営本部
へと教授の著書『THE NEW
スターリンやマルクス主義、その他の論説
DEMOCRATIC STATE』を寄贈して頂い
を現代の政治システムに関係なく学ぶこと
た。
だ。マルクス主義を受け入れるか、批判す
19
Session 3
-Contemporary Risks to Human Security in Light of National
Economic Disparities文責 市原
1. 概要
拓也
Prof.Atanas Gotchev にご講演いただいた。
一般に各国の国内の所得格差はグローバル
2. レクチャー
化の進展とともに拡大しているといわれてい
まず講義の初めに、格差の概念について
る。また、この問題は途上国のみならず先進
の説明がなされた。格差とは様々な種類の
国の中でも少なからず見られる。しかし、経
不均衡を指すもので、国家間のものなのか
済格差そのものは問題の表層に過ぎない。真
国内的なものなのか、また先進国であるの
に問題となっているのは、経済格差が「人間
か後進国であるのかによって、多様な次元
の安全保障」にどのような影響を与えている
で語られるものである。特に国内格差の指
のかということである。そこでこのセッショ
標としては収入格差を表すジニ係数が用い
ンでは、単に経済格差が存在するという表層
られている。1995 年〜2005 年の間に約
的な事実認識にとどまることなく、実際にそ
三分の二の国々でジニ係数に基づいた格差
れが人間としての生活にどのような負の側面
の拡大が見られており、収入額や地域別の
をもたらしているかを学ぶことを目的として
統計によると、この国内経済格差は発展途
いる。
上国において特に大きなものになっている
このセッションは二部構成である。
第1部
第2部
ことがわかる。国内格差によって生じる脅
レクチャー
威としては 1) 社会生活に参加できないよ
「国内経済格差の観点における現在
うな相対的貧困 2)社会的差違による機会
の人間の安全保障に対する脅威」
不平等が起こる社会的除外 3)経済や生活
小グループディスカッション
条件についての相対的不満 4)国内の富の
ディスカッションテーマ
不平等な分配としての垂直格差や国、民族、
1)
人種などの間の富の不平等な分配としての
GDP は発展と人間の安全保障を図るの
に適切な基準であるか。
2)
水平格差があげられた。
グローバル化は人間の安全保障と人間開
続いて、
「人間の安全保障」の概念が説明
発の意味を変化させているか。
された。1960 年代では、人間個性の開発
3)
として、1)雇用 2)富の分配 3)教育 4)政治
人間の安全保障に対する最も大きな三つ
の脅威とは何か。
参加 5)国の機関 が必要とされている。ま
4)
た、1994 年の UNDP による人間開発報告
格差問題に取り組み、人間の安全保障を
持続させるための国際機関の役割とは何か。
書では、個人の安全のためには
な お 、 本 セ ッ シ ョ ン では、 University for
病気、抑圧といった慢性的脅威からの安全
national
2)日常生活での唐突かつ痛ましい崩壊から
20
and
world
Economy
の
1)飢餓、
の保護 が必要要素とされている。他にも人
によって投資や経済活動に悪影響を及
間の安全保障には様々な定義があるが共通
ぼしている。
する主な特徴は、 1)個人が中心 2)経済、
4) 貧困と経済格差は市民戦争の火種とな
食料、健康、個人、団体といった様々なセ
り得、経済成長の水準により民主主義と
クターの包含 3)脅威と結果の相互関係を
専制主義の間で変遷が起きる。
重視する包括性 4)脅威同士の関係 5)回避
など、大局的な観点からの意見が提示され、
中心 といったものである。
講義が終えられた。
以上を踏まえたうえで格差が人間の安全
保障をどのように脅かすかについての講義
がなされた。
3. グループディスカッション
グループディスカッションでは各班 7 人
2011 年の世界経済フォーラムでは経済
程度からなる 4 班が、事前に用意された異
格差とグローバルガバナンスの失敗は強い
なるテーマについて話し合った後、代表者
影響力を持つものであり、お互いに深く関
がそれぞれ全体に発表し、その後発表をも
係していると指摘された。経済格差がグロ
とに自由にディスカッションを行う形をと
ーバルリスクに関係するのは主に二つの理
った。
由による。一つは、格差が他のリスクの可
能性や影響を悪化させるからであり、もう
1) GDP は発展と人間の安全保障を図るの
に適切な基準であるか。
一つは効果的なリスクへの対応を妨げるか
この問題に対しては、ほぼ全員が否定的な見
らである。また、社会分裂と同様にナショ
解を述べた。理由としては、いくつかの国で
ナリズムや人民主義を再発させる兆候があ
は高い GDP を持つ一方で人間の安全保障へ
るという意味でも格差の重要性は増してい
の脅威が存在するからである。特に人口が多
る。講義の中で挙げられた経済格差によっ
い国では GDP が高くなることが考えられる
て引き起こされるリスクは、人口問題、脆
が、一人当たりの GDP はそれほど高くなら
弱な政府、世界的な不均衡、慢性的な病気、
ずその国、その国民が裕福であるとはいえな
移民、食糧安全、テロなど非常に多岐にわ
い。また、GDP は世界各国で共通の指標を考
たっていた。最後に格差が人間の安全保障
慮しているともいえないことも、理由として
に与える影響について
上がった。その点 GNP はより人間指向であ
1) 国の脆弱な政治に対する社会基盤がか
り、発展と人間の安全保障に深く結びついて
けているために悪循環から抜け出せな
いるとの意見もあった。
いことも多い。
2) グローバル化によって国内においても
様々な所得層が生まれ、格差が生じてい
変化させているか。
るので、国を超えた団体の重要性が増し
このグループでは人権を、居住、プライバシ
ている。
ー、健康、脅威、社会保障、経済保障、など
3) 経済格差が生み出す脆弱性や不確実性
21
2) グローバル化は人権と人間開発の意味を
生きるのに必要なものを包括的に考えた。ま
た、グローバリゼーションについては移動の
関である。
自由や、国際市場、関税の撤廃などがあげら
結論としては、それぞれの機関が生活水準、
れた。グローバル化がより進展すると、より
国家間のバランス、貧困に取り組むことによ
多くの人権が社会的水準となるが、それらの
って、格差や人間の安全保障に対して大きな
基準は社会保障に影響を与えるものである。
役割を果たしていく、というものであった。
また、グローバル化は当然良い影響のみでな
く、悪い影響も与えるが、最終的には世界
は”Small Village”に収束するであろうと
結論付けられた。
3) 人間の安全保障に対する最も大きな三つ
の脅威とは何か。
まずグループ内では、三つの脅威として、1)
必需品の欠如(衣食住) 2)人権の侵害
3)法の
欠如、があげられた。 グループからは 3)が
4. 統括
1)2)をカバーする仕組みも説明された。結論
セッションの大テーマの一つである人間
としては、国民は良い法を持ち、公共サービ
の安全保障については様々な観点からよく
スを供給し、人権の侵害を守れるような政府
議論がなされていた。一方で、国内経済格
を持つ必要がある、という意見が述べられた。
差については、先進国・途上国の違いや安
他班からは人権侵害と法の欠如は同じレベル
全保障に関わる問題は学べたが、ディスカ
で語られるべきという指摘もあり、法の有無、
ッション内容としては国内という視点が欠
施行の有無、人権保護の有無といった異なっ
けてしまったことは否めない。しかし、各
たレベルについて活発な議論が行われた。ま
国の人間の安全保障についての考えや、法
た、それとは別に環境問題も人権への脅威と
の支配についての認識などについて議論が
なりうる、という意見も出た。
交わされ、多様な考え方を実感できたとい
4) 格差問題に取り組み、人間の安全保障を
う参加者からの感想も多く頂けた。
持続させるための国際機関の役割とは何
か。
グローバル化が進展する現在では、各国
における貧困・人権問題はもはや他人ごと
まずグループ内では様々な格差として、貧困、
では無くなってきている。また多くの参加
歴史、文化、教育、貿易などの格差があげら
者は途上国・新興国出身であり、このよう
れた。また、国際機関を三つに分類した。1)
な問題に悩みを抱えている国も少なくない
発展途上国のために生活水準の向上に取り組
であろう。このセッションがそういった
む機関 2)先進国・途上国のために様々な方
国々の若者に様々な観点から自国の問題を
法から貿易や取引のバランスを向上に取り組
とらえるきっかけを与え、将来に生かして
む機関 3)途上国のために貧困に取り組む機
頂ければ幸いである。
22
Session 4
-International Organization: What Different Organizations
Can Do to Counter Economic Disparities文責
1. 概要
片岸雅啓
適用する」という点をより確かにするた
現在、経済格差は国内にとどまらず国家間
め”United States of GNLF”という仮想
にまたがって発生しており、その素因も様々
の国を考え、どの政策が効果的かを議論し、
である。これに対して国家が単独で対処しう
最終的に投票で 1 つに絞った。
るとは到底考えられず、複数の国家の協力の
もと国際機関が大きな役割を果たしていくこ
とが今後求められるだろう。
2. レクチャー
このレクチャーは国際機関としては国際通
このセッションは 2 部構成で行われた。前
貨基金(IMF)と世界銀行(WB)に、地域として
半はミンチェバ教授による「国際機関が経済
はヨーロッパ(とヨーロッパ連合)、そしてア
格差に対して何を果たしうるか」というテー
フリカ(とアフリカ連合)に的を絞って行われ
マについての講義。後半はミンチェバ教授の
た。構成としては 2 部構成となっており、第
レクチャーをふまえた 4 つの質問について、
1 部の「Global Outlook」では IMF と WB
4 つのグループがワールドカフェ形式(各テ
それぞれの政策を評価し、批評を加え、最後
ーブルに与えられたテーマについてテーブル
には反グローバルな動きについての説明がな
ホストのもと少人数のグループが議論をし、
された。第 2 部の「Regional Outlook」で
次にホストは残ってグループがまた別のテー
はヨーロッパにおける EU の政策とアフリカ
ブルにうつってまた別のテーマについて話し
における WB の政策についての説明がなされ
合うということを繰り返すディスカッション
た。
の形式の 1 つ)で議論をした。4 つの質問は以
下のとおりである。
Q1. 国内、あるいは国家間の経済格差を測る
際に鍵となる指標は何か。
Q2. 経済学者になったつもりで、経済格差を
軽減する具体的な方策を考えよ。
Q3. 政策立案者になったつもりで、実世界に
適用することを念頭におきながら、経済格差
を軽減する政策を考えよ。
Q4. 民主主義が経済格差に与える良い影響
と悪い影響、そしてそれの解決法を考えよ。
この結果を共有した後、Q3 の「実世界に
23
第1部
IMF については、その緊縮財政志向や市場
経済の導入の推進、あるいは多国間にまたが
る脱税の規制の徹底により国家間格差が助長
その経済状況は危機的だ。特にサブサハラで
されているとした。例えば、IMF が融資のか
は人口 1 人あたりの世界に占める経済活動の
わりに緊縮財政を徹底することで、教育や医
値は年々顕著に減少している。このような状
療、弱者保護がおろそかになり国力が衰退し
態においては紛争と貧困は密接な関係にあり、
てしまう。IMF はむしろ教育や医療などへの
貧困を失くし成長を図るには統治、紛争、発
投資を重視するべきとした。
展といった要素間のバランスをとりながら、
一方貧困の削減を目指している WB につい
てはそれが推し進める自由市場の導入が、弱
く競争力をもたない国々にてとってはその発
政体の安定を重視した助言、助成が必要であ
るとした。
最後にはまとめとして、イタリアのジュリ
展を阻害するものであるという批判を加えた。
オ・トレモンティ氏の考えを例にあげながら、
総じて国際機関の政策はローカルな視点と
市場主義経済によって促されるグローバル化
いうものを見失いがちなようである。それに
は多くの難題を抱えるはずだがもう後戻りす
対して「反グローバル化運動」が世界中に広
ることはできない、これに対処するためには
がり始めている。これは様々な視点からの主
国際機関がネットワーク技術を生かしつつ力
張を持つが、主に国際化や国際的な金融制度
強く協力していくことが欠かせないと述べた。
の導入により少数のエリートが恩恵を受ける
ことに反対するという主張を展開している。
第2部
ヨーロッパに地域についてはバルカン地域
3. グループディスカッション
教授から与えられた 4 つの質問に対する結
果は以下の通りである。
に対する経済的・政治的な計画、そして多国
A1. 経済格差を図る際に 1 つの指標に頼る
間にまたがる犯罪ネットワークに対する安全
のではなく、様々な切り口、指標を総合的に
保障や、ボスニアやコソボなどにおける平和
考えて判断するべきであると結論付けた。そ
活動に焦点があてられた。そのうえでバルカ
の際、国民総幸福が客観的ではないものの重
ン地域における計画については最も重要なパ
要な指標となりうることに多くの参加者が同
ートナーとなるべき国自体を軽視しているこ
意した。
とや、自由市場導入を重視しすぎたことが批
A2. 実質的なものから、現実には難しいとい
判としてなげかけられ、平和活動については
うものまで多様な軽減策が出た。具体的なも
中立性を保つ意識が強すぎるために政治力を
のを挙げればきりがないが、例えば国内産業
持った組織としての政治色が全くないことに
の育成や政治体制の見直しなど、切り口や視
疑問を呈していた。
点も様々であった。
アフリカを考える際には特に問題となって
A3. こちらも A2 と同様多様な政策があげら
いるサブサハラ地域が例として挙げられてい
れたが、大別すると 3 つに分けられた。1 つ
た。アフリカはその多くを外国からの資金援
目は労働法の改正など法律に関するもの、2
助に頼っており、世界に占める貿易額の割合
つ目は弱小産業対策など経済に関するもの、
は約 50 年前と比べても減少しているなど、
3 つめは教育や医療など社会政策に関わるも
24
のとなった。
GNLF を考える」というものは、直前になっ
A4. 良い影響としては公平性、市民の必要に
てブルガリア運営側が追加したもので日本運
応じた政策立案、開かれた政治などが挙げら
営側にはしっかり伝わっておらず、そのため
れたのに対し、悪い影響としては政治的エリ
会場設営などがスムーズに行えなかったこと
ートによる占有や独占、少数派に対する不公
は問題であった。
平などが挙げられていた。対策については政
もう 1 つの問題点としては教授から投げか
治にアクセスするチャネルを増やすことや政
けられた 4 つの質問と教授自身のレクチャー
策立案の際の倫理・価値観重視など多様な意
との関連性があまりなかったことだ。もちろ
見が述べられていた。
ん経済格差を捉える視点としては的確な質問
このセッションで最後となる最良の政策を
であったし、講義の内容と被る部分は少なか
決める投票では
らずあったことも確かではあるが、今回フォ
・労働者とその環境を守る法律の施行
ーカスした「国際機関」というものをあまり
・政府への有識者の登用
深く掘り下げられなかったと感じている。教
・早期教育による市場経済への適合
授の意向を尊重しながらもこちらの目的をよ
・国家予算の透明化による闇市場/汚職対策
りセッションに反映させていく努力が必要で
というような案が出たが、最終的には国家予
あるだろう。
算の透明化が多数を占め、最優先の政策とし
て決定された。
4. 責任者統括
参加者からの評価は分かれていた。
「よく構
成されていた」
「どの政策が最良かを決めると
いうのは素晴らしいアイディアだ。時間がも
っとあれば完璧だった」というような好意的
な意見もあれば、「時間が長すぎる」「レクチ
ャーが一方通行で退屈」
「内容があいまい」と
いった批判もあった。
反省点としてはまずタイムマネジメントが
あげられる。レクチャーは 1 時間を指定して
いたが超過してしまった。レクチャーの指定
時間をより短くすることで講義のポイントが
明確になり、インタラクティブなコンテンツ
により時間をさけたかもしれない。その方が
参加者の満足度が増したのではないだろうか。
また、評価の高かった「United States of
25
個人的な視点からは、ディスカッション中、
特にどの政策が最良かを決めるときには場が
大いに盛り上がり、参加者たちも楽しそうに
議論していたように思う。”United States of
GNLF”という仮想ながらも具体的なものに
落とし込むことで、格差を縮小する政策につ
いてより深く落とし込むことができたように
思う。この点ではこのセッションを評価する
ことができるのではないだろうか。
Session 5
-How Does Globalization Affect Disparities in the World文責 波多野昂也
1. 概要
⑸「不平等あるいは貧困のどちらが国家の経
GNLF の目的は、「未来のグローバルなリ
済政策を導くより重要な指標なのか」
ーダー」に必要な能力を養うための場を提供
⑹「グローバル化の収入や貧困に対するポジ
することである。そして、
「未来のグローバル
ティブな影響は、グローバル化のリスクを上
なリーダー」に求められる要素の 1 つとして、
回るのか」
当たり前ながら「グローバル化」に敏感に対
な お 本 セ ッ シ ョ ン で は 、 Desislava
応する力があるだろう。
「グローバル化」は通
Nikolova 教授(Senior economist at the
常肯定的な文脈で語られる。しかし、グロー
Institute for Market Economics)に講師を
バル化は負に作用する場合もあり、その典型
担当していただいた。
的な例が「格差の拡大」である。今後ますま
すグローバル化が進行すると考えられる中、
2. レクチャー
将来リーダーとなることが期待される参加者
まず、グローバル化の鍵である自由貿易の
には、いかに格差の拡大を最小限に押さえ、
おかげで、グローバル化自体は、経済的な視
さらには格差を縮小していける能力が求めら
点から見ると、良い現象である。なぜなら、
れる。
自由貿易において、
「絶対優位」を持つ国はも
本セッションでは、グローバル化によって
ちろん、
「絶対優位」を持たない国も、他国よ
どのような側面・理由で所得格差が拡大もし
り比較優位に立つ財やサービスの生産に特化
くは縮小しているのか、そしてどのような国
することで「比較優位の原則」によって恩恵
がその恩恵を得て、どのような国が損失を被
に授かることができるからである。
っているのかについて、以下のレクチャーと
一方で、グローバル化によって、国内産業
グループディスカッションを通じて考えてい
の衰退や国内企業の倒産といった「創造的破
く。
壊」
、さらには世界的な金融危機が生じるリス
第1部
レクチャー
「グローバル化の経済格差への影響」
第2部
クも現実に存在する。
次に、
「貧困」を測る指標である貧困率と所
グループディスカッション
得分配の不平等さを測る指標であるジニ係数
⑴「グローバル化は貧困問題の解決につなが
がそれぞれ紹介され、
「貧困」と「不平等」に
るか」
は関連性はあるが、異なる現象であることに
⑵「自由貿易による参加国への影響」
注意するべきとの指摘があった。
⑶「ポジティブな不平等は存在するのか」
そして、不平等にはどうしてもネガティブ
⑷「自由貿易と保護貿易のどちらが国内経済
なイメージがつきものだが、著名な経済学者
に良い影響を及ぼすか」
であるゲーリー・ベッカーの言葉を引用しな
26
がら、不平等のおかげで、人々はより良い教
多少の規制も必要になってくるとの意見もあ
育を、より良い仕事を、そしてよりよい地位
った。
を求めるモチベーションにもなるという不平
・2班「自由貿易による参加国への影響」
等のポジティブな影響にも言及した。
自由貿易によって、効率性は促進され、安
最後に、グローバル化の世界的な影響とし
価な製品の流入などメリットもあるが、一方
て、平均収入の増加、貧困層の減少、不平等
で自由貿易に参加するためには、自国の経済
の縮小を挙げ、グローバル化に乗り遅れる国
制度を国際的な制度に合わせなければいけな
は、結局は自国の所得水準が低い状態に取り
く、また自由貿易の参加国の中でも序列が存
残されるとして講義を終えた。
在し、自由貿易体制内で不公平が生じてしま
うデメリットも存在する。
・3班「ポジティブな不平等は存在するのか」
まず、親の収入などの環境に左右されず、
機会は平等に保障されていなければいけない。
さらには、不平等にもいくつかの段階があり、
10$の収入と 1000$の収入の不平等と、
1000$の収入と 10000$の収入の不平等は、
不平等の意味が異なり、前者の不平等はなく
すべきだが、後者の不平等は許容されるもの
である。
3.グループディスカッション
グループディスカッションは、4、5人か
・4班「自由貿易と保護貿易のどちらが国内
経済に良い影響を及ぼすか」
らなる6つの班に分かれて、それぞれ班ごと
短期的な視点で見れば、保護貿易の方が自
にあらかじめ指定された上記の各トピックに
国の経済に良い影響を及ぼすこともあるが、
ついて話し合ってもらい、各班の代表者が話
長期的な視点で見れば、EU 諸国などを見て
し合いの内容を全員の前で発表するという形
分かる通り、多くの場合、自由貿易の方がメ
をとった。
リットは大きいだろう。ただ、1960 年代に
・1班「グローバル化は貧困問題の解決につ
日本が保護貿易に近い体制で高い経済成長を
ながるか」
遂げたように、自由貿易か保護貿易のどちら
グローバル化によって、ヒトの動きが活発
がよいかは国ごと、また時代ごとで異なって
化し、貧困層が職を見つけやすくなることか
くるものでもある。
ら貧困層の減少につながる。一方で世界的な
・5班「不平等あるいは貧困のどちらが国家
金融危機が起こると、一気に失業者が増え、
の経済政策を導くより重要な尺度なのか」
貧困層の増加という危険性も潜めていること
どちらも解決しなければいけない問題では
は留意するべきである。また、自国の労働者
あるが、たとえ所得に不平等があったとして
の保護のためにも完全な自由貿易ではなく、
も、低所得者層が最低限度の生活をおくるこ
27
とは可能だが、貧困問題では貧困層が生命の
危機に直面するため、貧困の方が不平等より
も重要な問題である。
・6班「グローバル化の収入や貧困に対する
ポジティブな影響は、グローバル化のリスク
を上回るのか」
グローバル化によって、貧困問題の解決に
はつながるだろうが、一方で世界的な金融危
機といったグローバル化のリスクによって貧
困問題がより深刻化する危険もあるので、国
家がそうした負の一面に対する予防策をしっ
かりととりながら、グローバル化を進めてい
くことが重要である。
4.総括
本セッションが目的を十分に果たしたかと
いうと改善の余地が多く残されていたことは
歪めない。問題点として、グループディスカ
ッションの時間の短さ、また、実際に議論が
盛り上がったディスカッションテーマは3つ
ほどであり、ディスカッションテーマを6つ
に分け、各班に事前に割り当てる必要があっ
たかどうか疑問が残る。さらには、講師が熱
心な自由貿易主義者であったため、講義のほ
とんどで一方的に自由貿易のメリットが強調
され、保護貿易についての知見を深めること
ができなかったのも残念である。
一方で、このトピックに興味を持っていた
参加者がいたこともあって、議論が白熱した
場面を目にすることができたのは良かった。
また、講師の意見に対して反論する場面も見
られ、参加者の積極的な姿勢も見ることがで
きた。
28
Student Presentation
文責 渡丸慶 片岸雅啓
1. 概要
このセッションでは、参加学生が自国の経
済格差に関する発表を行った。各国の近年の
た。そして奴隷制が廃止された現在でも、エ
リートとその他大勢の格差が残されているの
である。
経済格差がどのように生じているか、またそ
の原因を把握することを目的とし、参加者は
以下の5点を踏まえて、発表の準備を行った。
1、国内の経済格差の現況と特徴
2、国内の経済格差の近年の推移
3、歴史や文化、経済機構など格差の原因と
なっている理由
4、官民双方によりこれまで行われてきた格
差是正に対する取り組み
5、個人の意見
【ブルガリア】
動画やスライドを用いて各国 10 分の発表
ブルガリアは 1989 年に共産党政権が退
を行い、その後、他国の参加者との質疑応答
いた後、市場型の経済に移行する過程におい
を行った。
て、さらにEUとの関係を築いていくのに伴
い、格差の状況は変化してきた。現在では、
2. 各国参加者による発表
歴史的影響も含め、低い経済成長率や高い失
【ブラジル】
業率が原因となって格差が生じている。この
ブラジルは歴史上、技術の進歩が遅かった
状況を緩和するために、EUやIMFからの
一方で近年は経済発展を遂げている。近年、
援助が成されてきたが効果的であったとは言
格差は減少してきた一方で依然大きなものが
えない。不安定な政治が脆い経済を導きまた
ある。貧困線以下の人口は9%に上り、これ
その逆の影響が生じる悪循環が起こっており、
に対して 2004 年国によって、「ボルサファ
双方向からの立て直しが必要となっている。
ミリア」と呼ばれる政策が始まった。これは
家族の収入を上げることで、彼らの将来を開
【エジプト】
くことを目的としている。ブラジルでは人種
発表はスラムで落ちたパンを食べる男性と、
間の格差も大きく、この政策対象の家族は、
高級ホテルでエステを受ける男性を対比した
黒人で 70%、白人で 30%となっている。格
動画から始まった。都市内部を見ても貧富の
差の主な原因は、歴史にあるという。ブラジ
差がはっきりと表れている。エジプトの経済
ルの経済は歴史上、一部のエリートが、奴隷
史が概観された後、近年の格差改善に向けた
と農業を支配して支えられてきたものであっ
取り組みが紹介された。政府は最貧困の
29
1000 の村の発展の指揮を執り始め、多くの
投資環境の改善、経済成長に対する正確な戦
NGO は格差の是正に向け、慈善活動を行っ
略の創出、そして人的資源の強化が必要であ
ている。これらの努力は効果が薄く、官民双
るとした。
方からの働きを伴う包括的な発展が行われな
い限り、格差は拡大する傾向にあると主張さ
れた。
【メキシコ】
メキシコは 1994 年の通貨危機以降縮小
傾向にあるとはいえ、依然として経済格差の
【日本】
大きな国の 1 つである。その理由として植民
拡大傾向にある日本の格差のうち、労働形
地時代に起因するエリート優遇策、新自由主
態、性別、地方、マイノリティーが取り上げ
義、教育格差、適切な改革の不足があげられ
られた。労働形態として問題の一つとなって
る。対して国家レベルでは”Oportunidades”
いるのが終身雇用制である。経済格差の固定
と呼ばれる政策や構造改革、専門機関の設立
化につながるこの制度は改善の必要がある。
が行われ、民間レベルでは外資による雇用や
男女間格差は、結婚後の女性の求職が一因で
出稼ぎ労働者からの送金によって格差の軽減
ある。ゆえに男女が平等に家庭に対する責任
がなされてきた。そのうえで現状を打開する
を持つこと、企業は子を持つ夫婦が共に働き
ためには国家法の改善に加え、金銭的な範囲
やすい環境を作り出す必要がある。1%のマ
にとどまらない社会政策を、脆弱な産業の生
イノリティーである外国人労働者の多くは、
産性や貧困層の自律の促進のために実施して
低賃金労働をしており、グローバルコンパク
いくべきだとした。
トの実践などにより、職場環境の改善が求め
られている。日本の格差改善のためにはこれ
ら多方面に渡る改善を同時に行っていく必要
があるとした。
【キルギス】
キルギスは 1991 年ソ連からの独立と共
に、共産主義体制から脱し国有財産の民営化
が進められた。その中で問題として発生した
のが、ヤミ経済の存在である。賄賂や汚職が
【南アフリカ】
蔓延しており、この経済はキルギスの GDP
メキシコと同じく南アフリカも大変経済格
の 50〜80%を占めている。また 2013 年に
差の大きい国のひとつである。人口分布にみ
100 万人を超えた、キルギスからロシアやカ
られるように地域間格差が存在し、人口の 8
ザフスタンへ流れる移民労働者も問題である。
割を占める黒人と 1 割を占める白人の総所得
これらを解決して格差の是正につなげていく
がほぼ等しいという点にみられるように所得
ためには、不正に対する国際的な取り組み、
格差も非常に厳しい現状だ。やはり南アフリ
30
カの社会にはアパルトヘイトが暗い影を落と
の不足、法・政治の制限、行政の力の欠如、
しており、その影響が高い失業率や教育格差
欧州市場への過度の依存などがあげられると
に及んでいることがこの現状につながってい
いうことだ。考えうる対策は様々だったが、
るという。これに対し国家レベルでは 2013
過渡期において政府が成長と統治を促進し、
年目標の青写真が掲げられ、民間レベルでは、
地域間格差を減少させる改革を行うべきだと
価値観をもたらすリーダーシップの必要性を
いうこと、そしてその改革は長期的な視点で
訴えるレポートが出されている。プレゼンの
行われるべきであることが述べられた。
最後には経済学者の言葉を引用し、国民の自
覚とリーダーシップの必要性を訴えていた。
3. 統括
全体として非常に充実したコンテンツだっ
【スイス】
たように感じられる。参加者の反応も好意的
スイスは格差の小さな国とみなされている
であり、アンケートには「経済格差に対する
がもちろん理想的な状態とは言えない。26
様々な視点を得ることができた」
「国によって
の州それぞれに格差が存在し、その理由も
異なる経済格差の状況について、新たな知識
様々である。例えば彼女の出身地であるイタ
を得ることができた」などと多様性を評価す
リア国境に近い地域ではイタリア人労働者の
る声が多く見受けられ、教授の方からも学生
流入により所得格差が発生していたというこ
のプレゼンテーションのレベルの高さを評価
とだ。スイスの所得水準は世界的に見て高水
する声が聞かれた。
準にあるが、生活に必要な諸費用も相当高く、
このプレゼンテーションは事前課題として
貧困層にとっては厳しい状況だ。スイスは社
与えられたものだが、この事前課題は参加者
会連帯によって弱者保護をしているが、それ
が会議の前に予めテーマについて学ぶことに
でも難民や移民など社会的弱者は多く存在し、
大いに貢献したように思う。その点でも目的
失業率もある程度の水準にある。最後に彼女
を果たせたコンテンツといえよう。
は自身が見てきたことから、スイスにも確か
運営の反省としては、学生に決まった時間
に格差は存在し、それを自分たちが問題とし
を与え、その中でプレゼンと質疑応答の時間
て捉えることが重要だと述べた。
を自由に配分してもらうつもりがうまく伝わ
っていなかったことがあげられる。また、時
【チュニジア】
間の制約によりアウトプットが質疑応答のみ
まずジャスミン革命前後の状況についての
となってしまい、ディスカッションなどでよ
説明があったあと、チュニジアにおける格差
り深くテーマについて掘り下げるということ
とその理由、そして具体的な解決法がのべら
ができなかったことは次回に向けた反省材料
れた。チュニジアでは若年層の高い失業率、
となるだろう。コンテンツの意義は維持した
低賃金労働の多さ、所得格差の拡大、根強い
まま、タイムマネジメントをより改善してい
地域格差が経済格差において大きな問題とな
く必要がある。
っている。これにつながる素因としては財源
31
Symposium 1
-Movie Night文責 波多野昂也
1.概要
考え方に変化が生じてくる。
GNLF 本会議では、
世界の様々な地域から、
様々な人種・民族の学生・教授が参加する。
彼らは、それぞれの文化や習慣、価値観を持
っている。こうした「差異」は本来なら強み
になる一方で、世界を見回すと、これまでに
なく人々の間に摩擦を引き起こしている。し
たがって、今後グローバル・リーダーになっ
ていくべき参加者たちが、そうした「差異」
にどのように向き合っていくかを考える機会
を提供するために、本シンポジウムを設けた。
本シンポジウムでは、人種問題がはびこる
過酷な環境に生きる若者たちと、彼らを思う
3.ディスカッション
ディスカッションの形式として、全体ディ
教師の物語を描いた“Freedom Writers”と
スカッションを行った。
いう映画を鑑賞した後、
「『差異』の是非」、
「『差
⑴「
『差異』の是非」
異』とどう向き合っていくか」という2つの
テーマを全体で議論してもらった。
ブルガリアからの参加者は、自身の大学で
の留学生の多さなどを例に挙げながら、多様
性は必要であり、そうした各々の「差異」を
2.映画
簡単にストーリーを紹介する。
理解することが重要であると述べた。
また、ブラジルからの参加者は、
「差異」と
様々な人種が通う、アメリカのとある高校
いうのは必ずそれぞれに存在し、むしろ同じ
に、新任教師が赴任した。しかし、生徒達は
であることが問題であって、それぞれの「差
人種差別、暴力や麻薬、貧困など大きな重荷
異」自体が良いことであることを強調した。
を担ったものばかりで、全く教師に見向きも
メキシコからの参加者は、
「差異」の問題と
しない。それでも教師は、なんとか生徒に心
して挙げられるのは、他人と違うことに対す
を開けてもらおうとあの手この手をつくす。
る恐怖、そして自分とは異なるものに直面し
そうした中、生徒達に書いてもらった日記を
た時に感じる怒りや失望であると述べた。
通じて、徐々に距離が縮まっていく。また、
人種差別について考えてもらうために、自費
⑵「
『差異』とどう向き合っていくか」
で生徒をホロコースト博物館に連れて行く。
メキシコからの参加者は、自分たちは多様
このような取り組みを経て、次第に生徒達の
な社会の一員であるということを受け入れ、
32
そもそも自分たちは対等な人間なのだという
様々な人種が一堂に会する GNLF 本会議と
認識を持つべきだと主張した。
いう場で、
「差異」というテーマで議論するこ
日本からの参加者は、この映画の当初のシ
ーンのように、異なる人種ごとに隔絶するの
とができたことに対して多くの参加者が満足
していた。
ではなく、異なる価値観、文化を持った人々
一方でディスカッションの時間が 20 分と
が互いに理解し合い、相互依存し合う関係を
かなり短く、いきなり全体で議論をしたため、
築いていくことが重要であると述べた。
発言している人も限られてしまい、活発な議
エジプトからの参加者は、多様な各々の存
論にならなかったのが残念である。全体での
在が社会に必要であって、特にそうしたこと
議論の前に、グループディスカッションを行
を子どもの時から教わり、互いに必要として
うべきであった。さらに、ディスカッション
いるのだと認識する重要性を説いた。また、
テーマを映画鑑賞後に伝えたため、ディスカ
各々全てが異なっているわけではなく、何ら
ッションに入る前にテーマについて考える時
かの共通のバックグラウンドや意見があるは
間を要した。限られた時間を有効に使うため
ずなので、そうしたものを共有することも重
に、映画鑑賞の前に、テーマは伝えておくべ
要であるとした。
きであった。
ブルガリアからの参加者は、人と違うとい
うことを決めるのは人間の認識であるので、
他者を自分の固定観念や偏見で判断せず、他
者を尊敬し、しっかりとコミュニケーション
をとっていけば自然と『差異』を受け入れる
ことができると述べた。
4.統括
映画を見て、その後にディスカッションす
るという形式は初めてだったが、映画鑑賞自
体は、比較的好評を得た。また、映画と同様、
33
Symposium 2
“Professors’ Hour”
文責 市原拓也 上代茉由子
1. 概要
本セッションでは本会議に参加してい
Isabelle Collet 教授・スイス
(Associated
Professor,
Faculty
of
ただいている 6 人の教授方に、それぞれ
Psychology and Science of Education,
の専門分野、人生、国についてなどを 20
University of Geneva)
分程度の時間でプレゼンテーションをし
イザベラ教授からは、専門のジェンダーと
ていただいた。経験豊富な教授陣からの
教育に関してご講演頂いた。教授は当初コン
様々な知見を得ることで、参加学生の視
ピューターサイエンスを専攻されていたが、
野を広げることを目的としている。
社会的に女性が職に就きにくい分野であった
ため、その現状に疑問を感じたイザベラ教授
2. プレゼンテーション
は再びジュネーブ大学で教育とジェンダーを
それぞれの教授のプレゼン内容とともに、
学ぶことを決意した。例えば、現在の青や赤
簡単なプロフィールを掲載しておく。
といった性別の色分けなども 20 世紀半ば程
からマーケティング戦略上、徐々に築かれて
Kirmene Marzouki 助教授・チュニジア
きた概念であるなど、日常に多くのジェンダ
(Assistant Professor, Sousse Institute
ーが潜んでいる。教育は去年の本会議テーマ
of Applied Science and Technology,
でもあるが、人種・性別・階級を越えて自ら
University of Sousse)
の人生を切り開いて行く手段である事はもち
キルメン助教授はチュニジアでサイエン
ス・テクノロジーを教えられている。教授
からは、専門として研究されているデジタ
ルコンテンツと人工知能開発についてご講
演頂いた。具体的な例や情報をコンピュー
ターに与えることでイメージ画像を作り出
す方法や、その技術使用する際の懸念点・
問題点などを紹介頂いた。ニューロンネッ
トワークに関してどの様に意思決定が行わ
れるのか、そして人工知能開発に力を注ぐ
チュニジアの現状と彼の研究チームについ
てご紹介頂いた。
34
ろん、GNLF の理念のひとつでもある。
Alejandro Carlos Uscanga Prieto 教
授・メキシコ
Ahmed Mohamed Abd Rabou 教授・エ
(Professor, Faculty of Social and
ジプト
Political Sciences, National University
( Assistant
of Mexico)
Science, Faculty of Economics and
カルロス教授はメキシコの国立大学で教
鞭を執られている。教授からは A Samurai in
Political
Professor
Science,
of
Political
Political
Science
Department, Cairo University.)
Mexico というお題でご講演を頂いた。日本
モハメド教授からは自身の日本での留学
での指導経験もあるため日本の歴史にも非常
生としての体験を語って頂いた。留学生活
に詳しく、時には日本語も交えて、メキシコ
では、言語、食べ物、文化、生活、教育シ
と日本の交流と歴史をご紹介頂いた。メキシ
ステムなど、すべてにおいてストレスを感
コへ帰国の途で難破し、日本に漂着したド
じることがあり、そのためにホームシック
ン・ロドリゴと徳川家康の交渉の話など、ブ
になることもあると述べたが、一方で人と
ルガリアでこの様なお話が聞けるとは予想し
しての成熟度が増すことも強調された。日
ていなかったため非常に新鮮であった。日本
本での留学生活では特に北陸での雪かきボ
人運営・参加者は特に興味深かったが、他国
ランティア活動が印象的であったと語られ
参加者には少し分かり辛かったことは懸念さ
た。また、留学というのは旅とは異なりそ
れる。メキシコとの交流は 405 年目となる。
の国の生活を知り、知識を広げ、人として
の度量を大きくするものであるから、学生
Jamilya Biialinova 博士・キルギスタン
はぜひ留学するべきだと檄を飛ばしプレゼ
(Kyrgyz National University, School of
ンを締めくくった。
International Relations)
ジャミラ博士からは、National Security
Masato Ninomiya 教授・ブラジル
issues of the Kyrgyz Republic というテ
(Professor Doctor of Department of
ーマでご講演頂いた。まずキルギスの人口
International Law, Faculty of Law,
や年収など一般的な情報を提示したのち、
University of Sao Paulo)
GDP の不安定性や死亡率などの負の側面
ニ ノ ミ ヤ 教 授 か ら は International
を説明頂いた。また、正式な情報の裏に隠
Migration というテーマでご講演頂いた。日
れている、海外からの送金、中国からの密
本からブラジルに人が移っていった経緯や、
輸、麻薬の密売といった、国民が頼ってい
逆にブラジルから日本に人が流れ込んだ経
るが国を腐敗させているものの実情を示さ
緯などを説明された。特に 1982 年のブラ
れた。アメリカ、ロシア、中国、トルコと
ジルでの経済危機をきっかけに、多くのブラ
の今後の関係について言及したのち、国の
ジル人が日本に移住し、日本のバブル経済と
腐敗を止めるのは若い世代であると、期待
相まって移住民との関係を大きく変えたこ
を表した。
とが語られた。特に移住民に関しては、彼ら
35
の仕事がどのようなものであるか、日本の社
まず、プレゼンの内容自体であるが、昨年
会制度はどのように働いているのか、また彼
度同様非常に興味深い話が多く聞けたと思う。
らがもたらす悪影響とはどのようなもので
教授の専門分野、国、人生など様々な観点か
あるのかということが語られた。プレゼンの
ら、教授自身が学生に伝えたいことを話して
最後には、いまだに多くのブラジル人が日本
くださった。特に学生プレゼンと比較すると、
に移住を試みており、よりよい環境を作るに
教授の話し方、プレゼンの仕方、質疑応答へ
は政府同士の協力だけでなく、ブラジル人自
の切り替えしなど、かなりレベルの高いもの
身の努力も必要であると話された。
であったように感じられた。当然学生は内容
以外の部分でも、プレゼンについて彼らから
学ぶことは多かったのではないかと感じた。
一方考えなければならない点もいくつか浮
かび上がった。まず、私たちが教授に話して
もらおうとするテーマに幅がありすぎて教授
達を混乱させてしまったことがあげられる。
来年以降は、ある程度具体例などを提示して
教授に無理のない範囲で余裕を持ってプレゼ
ンを作って頂こうと思う。また、日本につい
て詳しい教授が多かったためか、すこし特定
の分野に偏るようなプレゼン内容となってし
3. 責任者統括
当セッションでは昨年度に引き続き海外教
授によるプレゼンテーションを行った。本会
議において海外教授の役割は近年大きく変わ
ってきている。以前はただの付き添いのよう
な形ととらえられてもおかしくないような状
況であったが、昨年度は教授によるプレゼン
が行われ、今年度は当企画のプレゼンだけで
なく参加者に混ざってディスカッションを行
って頂いている。どちらにせよ私たちが教授
に期待しているのは、学生とは違った「成熟
したものの見方」を学生に吹き込んでくれる
ことである。当企画においても教授達にその
ようなことを求めながらセッションとして設
定させていただいた。
まっていたことも懸念要素としてあげられる。
この点に関しても、来年度は重なりが出ない
ような形で教授達にプレゼンを作って頂ける
ように依頼したいと思う。
本会議のプログラム自体は「格差」である
が、当団体の理念としては「リーダーの育成」
というものは欠かせないものとなっている。
その点から考えて、当企画はそのような将来
のリーダーに新たな視点を与えられたという
点では、成功であったといえるのではないか
と思う。来年度以降もさらなる改善点を加え
ながら、教授から学生に与える刺激というも
のを増やしていきたいと考えている。最後に
なるが、このような素晴らしい知見を与えて
くださった 6 名の教授の方々に心から感謝の
意を表したい。
36
Group Work Presentation
文責:齋藤大斗
1.概要
的に近年の輸出拡大とそれに伴う GDP の増
本会議では「世界の経済格差とどう向き合う
加、未だに高い水準ではあるが若干の減少傾
か」というテーマのもと多様なセッション・
向にあるジニ係数などを共有しているという。
シンポジウムなどが行われた。それらとは別
に、グループワークとして会議全体を通じ獲
アジアでは GDP の高い日本や NIEs(シンガ
得した知識や経験を繋ぎ合わせるための課題
ポールなど新興工業経済地域)と GDP の低い
を課した。
東南アジア諸国などを比較し、その国家間格
今回のグループワークでは参加者を 4 つの班
差は戦後の政府による自由市場化の促進・質
に分け、2 班毎に
の高い教育・安価な労働力という 3 つの要因
A. What are the reasons and measures
で説明されると主張した。そして現在は、ベ
of
トナムやカンボジアなど社会主義や紛争の影
economic
disparities
between
nations?
響で発展が遅れる地域も見られるものの、前
B. What are the reasons and measures
述の日本や NIEs の経済発展とほぼ同一のモ
of
デルにより東南アジア諸国も急速な経済成長
economic
disparities
within
the
country?
を遂げ地域内での格差は縮小に向かっている
という国内または国家間の経済格差について
と結論付けた。
それぞれ取り組んでもらい、本会議最終日に
各グループが持ち時間 30 分のプレゼンテー
ションを行った。
2.Presentation
【グループ 1 (Theme A)】
まずは世界全体をヨーロッパ・バルカン・ア
ラブ・ラテンアメリカ・アジアという参加者
の出身地域で分け、各地域内における国家間
格差の背景・対策・格差是正の可能性などに
ついて発表を行った。
【グループ 2 (Theme A)】
グループ 2 の発表では、まず国家間格差を発
例えば、ラテンアメリカでは植民地化などの
生させそれを助長する要因を参加者の出身国
歴史的背景が原因で、ほぼ全ての国が極めて
の例から探り、それらに如何に対処するかに
類似した経済構造や格差を有しており、必然
ついて、国・国際機関・グローバル化という
37
3 つの観点から検討した。
国家間格差の発生と拡大要因について、不公
平な貿易ルール・国際機関による一方的な構
造改革の要求・腐敗・課税逃れといったもの
を挙げた。
次に参加者の出身国で実際に行われている格
差への対策について概観しつつ、国家間格差
是正のために行われている国際機関レベルの
試みについて言及した。その中で NGO によ
る取り組みやミレニアム開発目標、南南協定
【グループ 3 (Theme B)】
(South-South Cooperation)を具体例とし
はじめに、主に本会議のセッションで得た知
てあげたが、特に南南協定については上から
識をもとに国内格差を生み出す要因を列挙し、
の押しつけではない、途上国間の公正な技術
それらに対して国内でのトップダウン・ボト
支援や財政援助などを可能にするものとして
ムアップ式政策、また国際機関の働きという
高く評価していた。
3 つの観点から解決策を模索した。
またグローバル化が国家間格差に与える影響
は決して看過できるものではないとした上で、
まず国内格差の要因として国内の地域格差・
モノやサービスの輸出拡大が発展途上国に与
人種による隔離・個人主義による過度な競
える経済成長の機会という正の側面と途上国
争・資源及び技術不足などに言及した。
内の産業が先進国によって代替される可能性
次に、そうした国内格差の原因と格差構造に
があるという負の側面について説明した。
対処する効果的な手段について検討した。国
民が積極的に声を上げるボトムアップ型の政
以上の議論のまとめとして、国家間の格差を
策としては、政府主導での基礎的な社会イン
縮小するには、概念のレベルでは世界中に適
フラへのよりよいアクセス・質の高い教育プ
応できると同時に具体的な政策レベルでは各
ログラムの充実・厳正な労働法の施行とセー
国の歴史・政治・民族などの背景を反映した
フティネットの拡充などが挙げられた。
多様性のあるものであるべきだ、という結論
トップダウン型の政策として政府による公正
を提示した。
な課税やフードスタンプについて触れつつ、
グローバルな観点から国内格差縮小のための
手段についても考察した。具体的には、各国
が国際規約に準拠するための国際機関による
監視・勧告、国連や国際通貨基金との協力、
世界的な格差の縮小に取り組む仲介組織の設
立などが有効であると主張した。
しかしそれ以上に重要だと主張したのが、国
38
以上・国際機関以下というスケールの地域機
ったが、その 5 カ国の多くに・高い失業率・
関の創設であった。つまり、画一的な国際機
政治的腐敗・都市と地方の格差・ジニ係数が
関のアプローチよりも、一国一国の事情に焦
現実の格差を必ずしも反映していない、とい
点を当てることが可能な地域機関がより効果
った状況が共通して見られた。特に都市と地
的な格差の縮小を可能にすると強調した。
方の格差については、全 5 カ国について当て
はまったとされる。
(その他の要因に関しては
国内格差の要因と対応策について多様な例を
主に日本以外の 4 カ国が該当していた。)
用い、その縮小のための最終的な結論として
1.国別の事情を考慮したより個別的なアプロ
興味深い点として、各国の格差の要因を比較
ーチ 2.援助と自治のバランス 3.透明性を確保
した場合、差異よりも共通項の方が多く挙げ
するための説明責任 4.ボトムアップ式の解決
られることに言及し、そのためこれまで列挙
策を可能にする若者の意見表明
した 4 つの要素に対し直接的にアプローチを
という 4 つ
の観点を提示した。
行うことが国内格差縮小には極めて有効であ
ると主張した。
まずジニ係数に関しては、それに代わるものと
【グループ 4 (Theme B)】
して、より国内の格差の実態を反映する信頼度
グループ 4 のプレゼンテーションにおいては、
の高い指標を作り上げることを提言した。また
まず参加者の出身国における格差構造やその
失業率の問題や政治腐敗について、真の機会均
原因を整理し、それらから共通の問題を抽出
等実現のための政府主導の更なる努力や政治
し国内格差を生み出す主要因として位置付け
権力の透明性を実現するための外部からの監
た上で、その主要因を解決するにはどういっ
視などを、それぞれの対応策として挙げた。最
た手段を用いることが可能かについて纏めら
後に、都市と地方の格差解消のため官民が一体
れた。
となった地方開発政策の実現及び実行が求め
られると主張し、全体の結論とした。
グループ 4 の参加者の出身国はエジプト・キ
ルギス・日本・ブルガリア・南アフリカであ
39
5. 観光・交流
-Opening ceremony-
るという持説を展開した後、変化を求める声
文責:齋藤大斗
が世界中から湧き上がることの必要性と、こ
本会議2日目の午前、ソフィア大学の大講堂
の GNLF による国際会議はまさしくその象
において第4回目となる本会議の開会式が行
徴の 1 つであるという言葉とともに、基調講
われた。ソフィア大学教授や文部科学大臣、
演の結論とした。
外務次官、在ブルガリア日本大使館など権威
ある様々な各界要人を招いて挨拶を頂き、ま
開会式にはブルガリアのテレビクルーを始
た日本運営事務局長の渡丸慶、ブルガリア運
めとした取材班も訪れ、ソフィア大学の公式
営代表の Lilly Dragoeva から代表挨拶を行
ウェブサイトにも掲載されるなど、大変な盛
っ た 。 ま た 特 別 基 調 講 演 と し て 、 Prof.
り上がりを見せた。
Krastyo
Petkov
か ら “Economic
Disparities and Global Crisis: The Painful
Decline of the Dominant Paradigm”とい
う経済格差に関する講義が行われた。
講演内容としては、まず市場原理主義を支え
るネオ・リベラリズムについて、それが如何
に現在の資本主義経済を形作る上で支配的で
あったかを概観した。その後、21 世紀にお
いてかつてないほど格差が拡大している現状
や様々な経済格差に関する学説に触れ、「21
世紀の資本論」の著者であるトマ・ピケティ
の議論などを援用しつつ、ネオ・リベラリズ
ムが世界経済を牽引していくモデル・支配的
な価値観としては限界を迎えていることを主
張した。それと同時に、ネオ・リベラリズム
に変わる価値観や学説の台頭の必要性とその
可能性について言及した。
最後に、経済成長、既存の価値体系への抵抗
と大規模な構造改革、社会学・経済学的政治
システムの変化というパラダイムシフトが可
能となるまでの 3 つのステップにおいて、世
界は第一・第二段階の狭間ほどに位置してい
40
-ソフィア観光文責 永松賢三
-ベリコタルノボ周辺観光文責
永松賢三
本年度の観光はブルガリア委員会が全面的
本年度の本会議では初日のソフィア半日観
に担当した。初日の Opening Ceremony 終
光に続き、会議の拠点である旧都、ヴェリコ・
了後には首都ソフィア市内の観光が行われた。
タルノヴォでの終日観光を 4 日目に行った。
終日観光ではブルガリアの食、歴史、伝統文
化を満喫でき、充実したものとなった。まず
19世紀の文化的建築が多く残る町トリャヴ
ナを訪れた。昼食会場までの道を自由に散策
するかたちで観光が行われ、参加者は建築の
見学、立ち並ぶ土産物店での買い物を楽しん
だ。昼食で振る舞われたブルガリアの伝統料
理、ショプスカ・サラダ(キュウリ・トマト・
参加者ソフィア大学を出発し、まずはソフィ
オリーブ・白チーズのサラダ)やヨーグルト
ア市内を散策。参加者は異国の雰囲気を楽し
を堪能した後、レストランに隣接する博物館
みながら、記念撮影を行ったり、土産物購入
を見学した。続いてエタラ建築・民俗誌野外
をして楽しんだ。その後は大統領府、聖ペト
博物館に移動し、忠実に再現された18世紀
カ教会、国立劇場などを訪れた後、アレクサ
の町並みを見学した。館内には伝統工芸品の
ンドル・ネフスキー大聖堂、国立歴史博物館
工房があり、製作の様子を見学した後で製品
へ向かった。アレクサンドル・ネフスキー教
を購入する参加者もいた。最後は中世の街並
会と国立歴史博物館では内部見学を行った。
が残るツァレヴェッツ要塞へ移動して敷地内
参加者同士が交流する最初の機会となった
を散策した。城壁の上から見える絶景には多
このプログラムはアイスブレーキングとして
くの参加者が心を打たれたようで、こぞって
も位置づけられ、参加者はこの先一週間に渡
写真を撮っていた。会議も折り返し地点とな
り寝食を共にし、会議を作り上げていく仲間
った4日目、行くさきざきで仲良さげに記念
たちとの親睦を深めた。
41
撮影を行う参加者の姿が印象的であった。
-Culture Party文責 上代茉由子
た人と人とのつながりがさらに強固なものに
なったのではないだろうか。
カルチャーパーティーは、事後アンケート
の”MOST IMPRESSIVE EVENT”で最多
票を得た。各国の参加者が自国の文化を伝統
-Closing Ceremony文責
上代茉由子
衣装や料理、ダンスによって紹介しあい、お
八日間の本会議プログラムも、遂に最終日
互いの文化を目や舌で実体験した。毎年本会
のクロージングセレモニーのみとなった。本
議中に行われる恒例かつ一際大きな盛り上が
会議中の様子を振り返るムービー上映に始ま
りを見せる一時であり、多国間会議を開催す
り、感動とともにいよいよ終わりを迎える寂
る GNLF 本会議ならではのイベントである。
しさを実感した。修了証書授与式では、各参
日本人にとっても交流に乏しい国々が数多く
加者・教授からスピーチを頂き、皆本会議終
参加していることもあり、非常に記憶に残る
了をなかなか実感できず、その後の写真撮影
一幕となった。
は別れが名残惜しくしばらく続いた。設立当
今回のカルチャーパーティーでは、各国ブ
初からお世話になっている海外の教員などは、
ースを与えられ、一ヶ国15分という時間で
この 4 年間を振り返ってお話してくださり、
各国が順に伝統衣装や踊り、料理の紹介を行
運営も感極まる一時であった。その後は全員
った。日本からはソーラン節を披露したのに
で打ち上げを行い、人生初のアイリッシュコ
始まり、共同開催国のブルガリア、南アフリ
ーヒーに倒れる人や、帰り道でトラブルにあ
カ、チュニジアもダンスを披露してくれた。
い、ブルガリア委員会の用意してくれていた
他にも、寸劇や歌、スライド、映像などを用
ブルガリア語で書かれた緊急連絡カードを使
いた発表もあった。各々自国文化のバックグ
うことになった人もいたが、九か国からの参
ラウンドが色濃く見られ、参加者全員興味
加者皆が大いに楽しんでいた。本会議の成功
津々であった。また、各参加者が持参した伝
と“国家間関係も人と人との繋がりから”と
統料理を嗜みながら歓談を楽しみ、ぐっとお
いう団体理念の第一歩をまた新たにスタート
互いの距離を縮めることができた。
出来たことを感じる一時であった。
学術的な議論を通した交流だけでなく、文
化交流を通して生まれた感動から、国を超え
42
6. 参加者感想
すべての参加者・教授を対象に最終日に以下のアンケート調査を行った。回答数:28
Q1.GNLF2014の総合評価(5段階選択評価)
総合評価
14%
7%
32%
47%
Excellent
Excellent:9
Good
Average
Poor
Very Poor
無回答
Good:13 Average:2 Poor:0 Very Poor:0 無回答:4
全体の79%に当たる22名が「非常によい」または「よい」と評価し、
「悪い」以下の評
価はなかった。
Q2.もっとも良かったセッションは何か。(選択式 複数回答可)
良かったセッション
10
8
6
4
2
0
S1
S2
S3
(セッション1:6 セッション2:9
S4
セッション3:1
S5
Sym1
セッション4:3
Sym2
GW
SP
セッション5:2 シンポジウム1
(ムービーナイト)
:6 シンポジウム2(プロフェッサーズアワーズ)
:7 グループワーク発表(GW)
:4 自国に
ついての生徒発表(SP):7)
43
特定のセッションに評価が集中することなく評価が分散したが、どのセッションについて
も選んだ理由は「トピックが面白かった」、「講師が分かりやすかった」など似たものであ
った。各国の教授が自身の研究や体験について順番にレクチャーする「プロフェッサーズ
アワーズ」は「自分の今まで興味がなかった分野の話が聞けて良かった」
「教授のユニーク
な人生経験が面白かった」など昨年度に引き続き好評であった。一方で今年初めて導入し
た「ムービーナイト」についても「映画も良かったが鑑賞後のディスカッションで他国の
参加者との考え方の共通性を認識できた」などのコメントがあった。
Q3.もっとも良かったセッション以外のプログラムは何か。(選択式 複数回答可)
良かったプログラム
25
20
15
10
5
0
OC
HT
オープニングセレモニー(OC):2
CP
半日観光(HT):0
OT
文化交流(CP):22
CC
一日観光(OT):4 クロージングセ
レモニー(CC):0
この質問については文化交流に評価が集中した。なかには「今までこのような文化交流は
好きではなかったが、文化や考え方、伝統、他の参加者のパーソナリティを知ることが出
来たこのイベントは良かった」というコメントもあった。
Q4.もっとも悪かったプログラムはどれか。(選択式
S1:2
S2:1
S3:11 S4:5
S5:5
複数回答可)
Sym1:1 GW:3 OC:1 HT:1 CC:
2 その他は0
もっとも評価の低かったセッション3については、レクチャーが長引いてディスカッショ
ンの時間が十分に取れなかったことに不満が集中していた。また、
「スケジュールがタイト
44
過ぎる」
「セッションの数が多すぎる」という指摘もあり次年度以降の参考にしたい。
Q5 会議でどのようなことを学んだか。
「遠く離れた世界から来た他の参加者について知るようになり、自分が別人になったかの
ように感じる。もう固定観念に従って他の社会を見ることはないし、異なる考え方を理解
できると心から信じられるようになった。」
「経済格差以外にも他国について学び、周囲の人びとへの目の向け方が変わった。」
「会議を通じて言葉の壁は打ち破れるものだと感じ、積極的に他の人と話ができるように
なり、恥ずかしがり屋な自分を克服できた。
」
「変わりゆく世の中における経済学の重要性を実感した。」
「世界のことについて学べば学ぶほど、もっと多くを学びたいと思うようになった。
」
「レクチャーや議論はとても実り多く、今まで関心のなかったことにも関心を持つように
なった。海外を通じて、誰もがそれぞれのポジションや職業から自国のために貢献できる
のだという自信がついた。
」
「貧しい国も裕福な国もそれぞれに問題を抱えており、その解決方法はその国ごとにある
のだとわかった。
」
「異なる地域からくる言語も、考え方も違う参加者にも、共通する部分は多いのだと実感
した。
45
7. 運営フィードバック
本会議を開催するにあたって生じた、具体的な課題とその改善策を組織面・運営面・内
容面の3点に分けて考察する。
【組織面】
・今年度の取り組み
昨年度までの組織体制を引き継いで今年度も、本会議のコンテンツを準備するプログラ
ム局、渉外活動を行うパートナーシップ局、海外参加者との窓口となるメンバーシップ局
を三つの柱とし、メンバーはいずれかの部局に所属して準備を進めてきた。一方で、形骸
化していた財務課や広報課は解消し、各メンバーに財務担当や広報担当のようにサブポジ
ションとして割り与えることで責任の所在を明確化し、タスクに漏れが出ず確実に行われ
ることを図った。また週一回行われる全体ミーティングに関しては、その活性化と効率化
を意図して、事前準備から議事録そのまとめをメンバーの持ち回りで行う、ミーティング
担当者制度を導入した。
・課題と解決策
まず部局制であるが、全体としては順調に準備を進めることができたが、縦割りの弊害
が生じてしまった。過去も問題視されてきたが、これは各部局で時期によって仕事の偏り
にばらつきが出ることから生じるものである。自分以外の部局の仕事をよく理解していな
いために、ある部局に仕事が偏った時にそれを他の部局の者に振ることができず、タスク
を早く処理することが難しくなっていた。部局制自体を廃止することは危険であるが、縦
割りの緩和として体制発足時から他の部局のタスクを一部請け合って内情を把握したり、
部局を越えた情報共有の仕組み作りが必要である。サブポジションに関しては、財務や広
報どの役割もうまく機能したと思われる。ただ、その負担が大きく、部局の仕事に支障が
出るケースが見られたので、負担のバランスは上手く計っていきたい。ミーティング担当
者制度についても成功であった。これまで問題視されてきた、答えが出ずに議論ばかりが
長引くことや、一部のメンバー間の議論になってしまうことは大きく緩和された。前庭や
論点を含んだ議題の事前共有が議論の理解を促し、ミーティングでの当事者意識が高まっ
た結果であると思われる。ただ細かい点ではあるが、担当者によって議題の準備の仕方や
議事録の取り方に差が出てしまっている点は、今後改善していく必要がある。
46
【運営面】
・今年度の取り組み
今年度の本会議は2回目の海外開催にあたるブルガリア大会であり、本部とブルガリア
委員会との共同開催となった。現地委員会にも本部と同様に部局を形成してもらい、各部
局長同士がメールや SNS を用いて、仕事の分担や進捗の報告を行い準備を進めてきた。会
期直前には2日間前乗りを行い、直接対面して会期中のロジスティックなどの最終調整を
行った。会期中も夜に両運営合同でミーティングを行い、翌日の動きの確認を行って運営
の仕事を進めていった。また、運営陣と参加者に距離が生まれてしまったという去年の反
省を踏まえ、今年度は運営陣もグループディスカッションなどに参加して、参加者とのコ
ミュニケーションを図っていった。
・課題と解決策
目立った課題は日本とブルガリア運営での仕事分担の曖昧さであった。体制発足時には、
仕事の分担やスケジュールを定めたものの、それがないがしろにされ会議の直前までセッ
ションの内容が決まらないという事態が生じた。それ故に、事前に仕事の分担ができなか
ったため、会期中に翌日の分担を決定するなどして一部混乱が生じてしまった。またブル
ガリア委員会の大学内での立ち位置やメンバーの入れ替わりを十分に把握していなかった
ために生じた不都合もあった。これらの解決策としては、体制発足時にスケジュールを同
意書の形で発行し常にその確認の下に動いていくこと、また事前に体制をしっかりと確認
し変更の際はその都度連絡するように取り決めることがあげられる。また連絡手段として
も、文面ではやり取りに時間がかかり齟齬が生じた部分もあったため、月に2回など定め
て直接会話をすることも必要であると感じた。今後は、体制発足時に取り決めを入念に行
い、それを守っていくためにも密な連絡を取っていけば、より確実に準備を進められ、当
日の仕事のやりやすさにもつながるだろう。運営陣が参加者の一人となりセッションなど
に加わることに関しては大方成功であった。去年と比較すると格段に運営陣と参加者の距
離は縮まったように感じた。しかし、参加者の枠に加わることで運営としての意識が低下
し仕事のフォローに入れない部分も見受けられたため、運営としてもしくは参加者として
各セッションに参加しているのか意識をはっきりさせる必要がある。
【内容面】
・ 今年度の取り組み
本会議全体を通したテーマを経済格差と定め、そのテーマの下五つのセッションと、事
前課題とした各国の学生によるプレゼンテーション、そして会期全体を通して取り組むグ
47
ループワークを行った。昨年度に引き続き、セッションでは講師からの講演を受け、それ
を踏まえて学生間でワールドカフェなど多様な形式で議論を行った。新しい試みとしては、
議論のグループにアシスタントとして各国から参加している教授が、ファシリテーターと
して運営メンバーが入った点である。議論におけるアシスタントとは、学生より高度な知
識、考えを持っている教授の方から、講演内容とは別の視点を提示することや議論の軌道
修正を計ってもらう役割を想定した。また今年度のテーマとは独立して、参加教授による
各自の専門に関するショートレクチャーや人種の違いをテーマとした映画鑑賞会を行った。
文化交流の側面としては、例年に引き続き、観光やカルチャーパーティーを行った。
・ 課題と解決策
セッション、特にディスカッションに関しては、幾分準備の不十分さが見える結果と
なってしまった。この原因を考えてみればそれは、本部と現地委員会が協同で準備を進め
ていったことにある。セッション毎で分担を決め、内容に対する意見を摺り合わせていっ
たものの、互いの認識に齟齬が生じてしまい、またレクチャー担当の講師の決定の遅れな
どが重なり、現地に到着してからセッションの内容を変更する状況が生まれてしまった。
それにより、ディスカッションの目的や運びに改善点ができてしまったのは反省である。
共催で本会議を開催する上では会議準備の分担、擦り合わせは避けられないものであり、
これらもまた運営面であげた、事前に緻密な計画を立てその徹底、密な連絡のやり取りで
大きく改善される点であると思われる。各国教授によるアシスタント制度は、議論の質が
上がり、参加学生・教授の双方から好評価であったため、次年度以降も続けていきたい。
会期全体を通してのグループワークは、今回の問題設定から、調査に頼る部分が多くなり、
参加者同士の議論が減ってしまったように思われる。グループワークは、参加者同士が価
値観を交流することによって互いを理解していくことも目的の一つであるため、より抽象
的な問いにするなどして改善を計っていきたい。
48
第3部 国内イベント 「じーえぬの間」
1. 開催概要
イベント名: じーえぬの間
主催団体: グローバル・ネクストリーダーズフォーラム学生本部
(本部 東京都文京区本郷 4-1-6 アトラスビル 6 階 IBIC 本郷内)
開催日時:平成 25 年 11 月 23 日
会場:東京大学駒場キャンパス 602 教室
参加人数:運営 6 名
留学生 30 名
一般参加 100 名弱
計 約 130 名
49
2. イベント内容要約
参加型の留学生とのトーキングセッション。使用言語は、基本的に日本語であり、希望す
るテーブルは英語で行った。2〜3 人の留学生、3〜4人の参加者、1 人のファシリテータ
ー(主催者)の各テーブルを 5 つほど準備し、30 分を目安に参加者の入れ替えを行った。
あらかじめ主催者側でシチュエーションやケースを準備し、
「〜のときあなたはどう行動す
るか?」
「〜な考え方にはあなたどのように思うか?」「〜な状況の人に対してあなたはど
うアドバイスするか?」といった質問に参加者・留学生がそれぞれの考えを述べ、その後
「なぜそのように考えるのか」ということを話合ってもらった。自分のものの考え方・性
格などを語り、また他者の考えを聞くことで、参加者が日本人として、そして一個人とし
ての「アイデンティティ」が何なのかを考えてもらった。
a. シチュエーション・ケース集
じーえぬの間では、事前に分けたシチュエーションを 5 つのグループ、愛の哲学
(Philosophy of Love)
・大学生活(Campus Life)・ソーシャルネットワーク(SNS)
・
孤独について(Loneliness)
・その他(Others)に分類し、テーブルごとにくじをひいて
そのテーマに関する質問について話し合った。
以下はそれぞれのテーマについて準備したシチュエーションの例である。
○ Philosophy of Love
・ 男女間の友情は成立する?友情と恋の境界線とは?
・ 彼氏、彼女に求めるものと結婚相手に求めるものは同じ?違う?
・ 告白するのは男性から?女性から?
・ 「魅力」はどうすれば身につけられる?
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○ Campus Life
・ あなたの国では自由な時間に何をする?
・ 大学で一番重視する人間関係は?
・ 勉強と自分の時間ではどっちが大事?
○ SNS
・ 「いいね!」を思わず押しちゃう Facebook 投稿とは?
・ 少し不快に思ってしまう SNS への投稿とは?
・ 既読無視についてあなたはどう思う?
・ SNS は友人とのコミュニケーションを豊かにしたか?
○ Loneliness
・ あなたは 1 人で学食で食事をできる?
・ 旅行するとすれば 1 人?それとも同伴者と一緒?
・ 受けたい授業があれば 1 人でも受ける?それとも友達と合わせる?
・ 1 人で居づらさを感じるときは他人の目を感じて?それとも内面的な孤独?
○ Others
・ あなたの国特有の占いはある?それをどこまで信じる?
・ 初対面の人とはどのような会話をする?
・ 遅刻の許容範囲は何分くらい?
・ (留学生が)日本で一番気になったこととは?
b. イベントの様子
イベントが駒場祭委員会の都合上、立地・環境的には恵まれない会場であったにも関わら
ず、予想を超える来場者でにぎわいを見せた。約 3 時間のイベント期間中に 100 名弱の来
場者が参加し、中学生から保護者まで、年齢層も幅広かった。各テーブルでそれぞれのテ
ーマについて活発な意見交換が行われ、あらかじめ容易していた設問を超えた価値の共有
が行われた。
51
3. 統括
このイベントは発案、企画から当日運営まで、すべて 1 年生のメンバー(イベント実施
時点、現 2 年生)によって実施されたものである。6 人という少ない人数で留学生集めや
広報、コンテンツ作りから当日の受付け・ファシリテーションまでを行い、忙しかったも
のの、質の高いイベントを無事に成功することができて良かった。反省点として、タスク
の管理、ロジの不十分さなどがあったものの、当日に大きな問題がなく終わり、その後の
GNLF 本会議の運営や国内イベントの実施に大いに役に立つ経験となった。
またイベントの目的の 1 つとして、日本語でのディスカッションやカジュアルなテーマ
を設定することで、今まで「国際交流」というものに敷居の高さを感じていた人にも気軽
に「国際交流」の良さを感じてもらうことがあり、GNLF という団体についてもより多く
の人々について知ってもらうことができた。
最後に、運営として約 30 名の多様な国・大学からの留学生と知り合いになれたことは、
とても良い経験となった。事前のテーマについての打ち合わせから共に行い、イベント当
日はもちろんのこと、その後も連絡を取り合っている留学生も多く、このイベントによっ
て運営自身が「国際交流」について多くを学ぶことができた。
52
第4部 国内イベント 「日本は東京だけじゃない
地域ブランド戦略」
1. 開催概要
イベント名: 日本は東京だけじゃない 地域ブランド戦略
主催団体: グローバル・ネクストリーダーズフォーラム学生本部
(本部 東京都文京区本郷 4-1-6 アトラスビル 6 階 IBIC 本郷内)
開催日時:平成 26 年 6 月 28 日
会場:学生ラウンジ Campus Plus (東京都 渋谷区道玄坂 2-10-7)
講演者:株式会社 三菱総合研究所 社会公共マネジメント研究本部主席研究員
参加人数:運営 14 名
一般参加 47 名
計 61 名
53
宮崎俊哉
2. イベント内容要約
本イベントは前半と後半の二部で構成され、前半ではインバウンド振興に関する講演、後
半は参加者主体のワークショップを行った。以下は講演およびワークショップ内容の要約
である。
講演
三菱総合研究所
社会公共マネジメント研究本部主席研究員
宮崎 俊哉 氏
a. 講演内容
講演の最初では、まず小泉政権時代に観光立国推進基本法が制定され、日本の観光立国と
しての歩みが始まったことや、現在の目標として東京オリンピックの開催される 2020 年
までに訪日外国人観光客 2000 万人を達成するという日本政府の方針について触れられた。
次に、その数値目標達成のため日本のブランド形成を目的とするアクションプログラムが
2014 年 6 月 17 日に改定されたことや、それに対する講演者自身の所感が述べられた。
具体的には、
・ブランドという概念の特性やアクションプログラムが日本全体に関することであるため、
その内容が極めて抽象的なものにとどまっている
・2013 年にようやく訪日外国人数が 1000 万人に達したが、空路しかなくまた観光への
産業としての認識も甘い日本があと 7 年で更に 1000 万人伸ばすのは難しいのでは
・2020 年までに 2000 万人という目標を達成するには、観光を国の柱となる産業と捉え、
今までとは全く違う切り口でのアプローチが必要である
・例えば、近年は IR(Integrated Resort)=カジノを合法化しインバウンドの活性化を
図る動きなどが見られる。しかしカジノ自体は韓国や香港などにもあり、
「そこにしかない」
という観点では世界一になりえないのでは
といったものである。
また、巧みなブランド戦略を展開し外国人訪問数を増やすことに成功した日本の自治体の
例についても触れた。その中では、まず地域のブランドには集中と選択が必要であると述
べた上で、シンガポールなどを主なターゲットとした岐阜、タイなどに集中的な広報戦略
を展開した仙台の例が挙げられた。
岐阜県の例において、自治体と民間が一体となり数億をもプロモーションとコンテンツの
磨き上げに費やし、観光・もの・食を一体に諸外国にアピールを重ねた結果、岐阜県の飛
騨高山が Lonely Planet にも掲載されたこと、仙台の例では親日であるタイに早期から着
目し、4年半でタイの人口の 88%が仙台を認知する状態になったことなどが取り上げられ
54
た。
またこれらの具体例を踏まえた上で、地域ブランドは「こうありたい」を原点とし、プロ
モーションの段階で海外目線にすべきという分別の重要性について触れられた。
最後に、これまでの具体的な動きや自治体の例を踏まえ、日本のブランドと観光立国とし
ての可能性に関して言及がなされた。
まず日本は「エニグマ」であることがブランドであるとされ、各自治体の明確なブランド
がなければそれらの違いは(海外からは)わからないということが示され、その上で差別
化・認知を可能にする明確な戦略の必要性が述べられた。また市場については、訪日満足
度やリピート率の高さについて触れつつ、近年の東南アジア国民のビザ緩和や消費額の大
きい中国などに多くの可能性が潜むという結論とともに、講演は終了した。
b.質疑応答
以下では、参加者からの質問とそれに対する回答をいくつか紹介する。
Q.ブランドとはどういうものか?地域ブランドをどう定義するか?
A.各自治体によって当然異なるが、
「こうありたい」という目標でもあり、ある意味では
プライドと誇りでもある
Q.ハードでは交通網など、ソフトでは英語など、インフラの整備がインバウンドにどのよ
うな影響を与えるのか
A.ハード面に関して、掲げる目標にもよるが、訪日外国人客数が 500 万人から 1000
万人(2013 年に達成)の時は特段不要であった。しかし 2000 万人を目指す場合、東京
のホテルなどは既に飽和しており、地方にも外国人を分散することが必ず必要。ソフト
面は、特に言語に関しては、写真やその他工夫、わかろうとする姿勢などで乗り越えら
れるため特に問題ではないのではないか。
55
ワークショップ
後半では、参加者を 9 班に分けた上で、インバウンド振興のための地域ブランドをデザイ
ンするワークショップを行った。各グループは割り振られた 1 都道府県(青森・広島・熊
本のいずれか)に対し、ある特定の国からの観光客増加を目的としたブランドデザインを
行った。具体的には、各班で自らが海外旅行で印象に残った経験や重要であると考える旅
行のキーワードなどを出し合い、その中から複数を選びブランド戦略のテーマとした。最
終的には対象・ブランドを表すキャッチフレーズなどを盛り込んだ上で、全体の前でプレ
ゼンテーションや寸劇などでそのブランドについて表現した。
以下は各班の発表の纏めである。
・グループ 1(都道府県:青森 対象国:中国)
キャッチフレーズ:AOMORI IN ONSEN
青森は豊かな温泉資源を持つため、日本を訪れる外国人の目的の第二位が温泉であるこ
と、また中国人の市場の潜在性の高さや団体客の多さに着目し、特産品であるりんごと
大間のまぐろを温泉につかりながら楽しむプランを考案した。
・グループ 2(都道府県:青森 対象国:オーストラリアの若年層)
キャッチフレーズ:明後日には君も漁師
青森という海外の人間にとっては決してメジャーではない地域をどう知ってもらうかを
原点に、漁師(=地元の人・文化)体験ツアーなどを考案した。また青森が北海道へ船
で向かう途中の中継地として使われることに着目し、トランジットで特産品のまぐろや
リンゴなどを食してもらうことも提案した。
・グループ 3(都道府県:青森 対象国:アメリカ人)
キャッチフレーズ:ツナフェス@恐山
「非日常」
「ミーハー」といったキーワードを、それぞれ恐山のイタコと大間のマグロを
結びつけ、日本の伝統文化と食に高い関心を示すアメリカ人に売り出す戦略について考
えた。
・グループ 4(都道府県:広島 対象国:シンガポール)
キャッチフレーズ:2D から 3D
広島は原爆の投下地であり、その歴史的な背景から海外で一定の知名度を誇るため、そ
の強みを生かし、原爆に関するアニメを作り日本のサブカルチャーに関心のあるシンガ
ポール人に売り出すことで様々なものを実際に見て持ち帰ってもらうことのできるアイ
デアを作った。
・グループ 5(都道府県:広島 対象国:台湾)
キャッチフレーズ:水中で花火
56
花火で有名な広島にダイナミズムというキーワードを組み合わせ、花火を落とす船に乗
ってもらうという大胆かつ新鮮なプランを提案した。また台湾人の多くが夏に日本を訪
れること、台湾でも花火の人気が高いが一年に一度しかやらないことなどを考慮し台湾
人をターゲットとして選んだ。
・グループ 6(都道府県:広島 対象国:タイ)
キャッチフレーズ:感じる広島 ~神社×お好み焼き~
仏教国であり、寺院などに比較的興味関心の高いタイ人を対象に、世界遺産でもある厳
島神社を船から望むツアーを提案。またその船では東南アジアの人の口に合うお好みソ
ースのお好み焼きが食べられ、好きな具材を使う・ラテアートのようにソースでイラス
トが描けるなど外国人にとっては驚きと新鮮さで溢れるようなアイデアも出した。
・グループ 7(都道府県:熊本 対象国:中国)
キャッチフレーズ:ひとつながりの秘宝
ワンピースの作者、尾田栄一郎の出身地であることに着目し、ワンピースをコンセプト
に据えた戦略を考えた。その中で、観光客はバスなどをワンピースの船に見立てた上で、
特産品などを見つけながら目的地を目指す。北海道にも負けないと言われるほどの自然
を持つ熊本を体感してもらうための工夫としてワンピースを取り込んで中国人を対象に
展開していくことを提示した。
・グループ 8(都道府県:熊本 対象国:中国人)
キャッチフレーズ:開拓使
熊本が今持っている優れた資源を集めることをコンセプトに、世界最大級ではあるが認
知度は低い阿蘇山のカルデラ、名産の馬刺しを使った世界最大の馬刺しバーガーなどで
イギリス人にアプローチすることを提案。イギリスをターゲットとして選んだ理由とし
ては、訪日の目的のほとんどが食事であること、一度の訪問あたりの消費額が 35 万と比
較的余裕であるにも関わらず、9 割以上が東京に向かうことから市場がまだ開拓されてい
ないことなどが挙げられた。
・グループ 9(都道府県:熊本 対象国:イギリス人)
キャッチフレーズ:遊びと心と学び
美容と健康をコンセプトに、中国人の若年層をターゲットとした。熊本の黒川温泉は美
容効果が極めて高いとされ、また天草の海で海産物を実際にとって食せることなどを売
りにすると同時に、熊本城などで歴史を学ぶこともできるツアーを考案した。
57
3. 参加者感想
以下では、参加者から回収したアンケートの感想から代表的なものを取り上げる。
・
「非常に良く練られたコンテンツだった分、時間が少なかったが、内容は面白かった」
(東
京大学教養学部 2 年 男)
・
「グループワーク終了後に、実際に行われているブランド戦略をもう少し紹介して下さる
と勉強になると思います」
(早稲田大学法学部 1 年 女)
・
「各国のイメージについて折角留学生をよんだならその人の生の声を参考にするのもアリ
だと思った」
(慶應義塾大学医学部1年 男)
全体として、ワークショップの時間が不十分で満足できる議論がしきれなかった、議論や
アイデア出しの方法にもう少し工夫を加えられるとよかった、などの感想が多く見られた。
またテーマ自体は面白いが運営のスキルが追いついていない部分がある、といった指摘も
あった。
58
4. 統括
GNLF にとって初となる国内での中規模イベントの意義は、親しみやすいテーマ設定と
様々な媒体を活用した広報による GNLF の知名度及びプレゼンスの向上であった。その意
味で、過去に使用したことのないメディア媒体を活用し多様な都内の大学生にリーチでき
たことは非常に有益なことであったと思う。実際に、参加した約 70 名の内半数以上が東大
生以外であり、GNLF の現メンバーの 8~9 割が東大生であることを考慮すると、本来の
意義に十分叶うイベントであったと感じられる。
しかし、イベントの内容とそれに伴う参加者の満足度という点では、運営の立場から様々
な反省点や改善すべき箇所が多く見受けられた。
まず第一にイベント後半のワークショップであるが、運営及び講演者の立場からは、地域
ブランドを策定する際はテーマを定めた上で、選択と集中により 1 つ(最大でも 2,3 つ)
の要素を前面に押し出した戦略を考えるべきだという考えがあった。しかし運営側の準備
不足もあり十分にその内容が伝わらず、結果としてワークショップで出たアイデアの多く
がその地域の観光資源を雑多に詰め込んだもので終わってしまっているものが多かったよ
うに見受けられた。
また当日は各班に運営メンバーがファシリテーターとして入り議論を主導したが、事前の
打ち合わせや本番を想定した模擬セッションによる練習不足などもあり、思うように議論
が盛り上がらず、苦戦している部分も多かったように感じられる。
今後、GNLF は国内イベントとして年に 2 回ほど国内での中規模以上のイベントを開催し
ていくことを決定した。今回は第一回ということで広報と知名度拡大に重点が置かれたが、
将来的に継続的にイベントを開催していくに当たり、浮かび上がった様々な問題点とそれ
に対する解決策を内部で吟味することで、より参加者にとっても満足度の高いイベントを
提供していかなければならないと強く実感した。
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第5部 総括
1. GNLF2014 総括
GNLF2014 の中心にあった活動理念は、
「ネットワークの拡大」であった。過去三年間
の活動では不十分であった、国内・海外におけるネットワークの拡大を実現する土台作り
を目指して活動を行った。この目標を達成するために行った具体的な活動とその評価を、
国内と海外に分けて行っていく。
過去の活動では本会議への参加国数の拡大など海外への拡大には取り組んできたが、国
内のネットワークの拡大に向けた直接的な取り組みは行われていなかった。これまで一年
間に GNLF の活動に直接関われる日本人は、運営メンバーと本会議参加者の 20 名程度に
限られており、当団体の理念、発展性からして、より多くの学生に当団体の活動へ関わる
機会を生み出す必要があった。そこで今年度、年一度の本会議とは別に国内イベントの開
催に踏み切った。詳しくは本報告書の国内イベントの項に記されているが、これらのイベ
ントを通して 100 名を超える国内の学生に GNLF の活動に関わってもらうことに成功し
た。また並行して新歓活動や各イベントの広報活動を強化することで、運営メンバーや本
会議参加者を募集した際には、昨年度の三倍を超える学生から応募を頂いた。このように
国内学生における知名度の拡大が目に見える形として表れたのは今年度の大きな成果であ
る。
さて、海外のリーチ拡大に話を移せば、こちらには課題が残された。今年度は、昨年度
の9か国から2か国増やした11か国で本会議の開催を目指していたが、内2ヶ国の招待
を実現できず、昨年度と同じ9か国での開催となった。その2か国は参加費の支払いやビ
ザの取得が原因となって参加が実現しなかったが、この招待のプロセスに関わる問題は次
年度に再度見直さなければならない。一方で今回の本会議では、大きく海外のネットワー
クを拡大させる二つの布石を打つことができた。一つ目は今回の本会議を共催したブルガ
リア委員会についてである。次年度以降、ブルガリア周辺の国々を参加国とする地域会議
の実現に向けて、この委員会と本部が共同していくことが決定した。もう一つは、メキシ
コから参加した教授と学生により、メキシコ委員会が立ち上げられたことである。こちら
も来年の地域会議の開催、再来年の本会議の開催を目指して、本部と協同でのプロジェク
トを行っていく予定である。活動の海外展開が進んでいく中、本部と各国委員会の組織間
の強いネットワークを構築することもまた次年度以降の目標となる。
「ネットワークの拡大」を掲げて行ってきた今年度の活動において経験した、上記の成
功点や新たに見えてきた課題を引き継ぎ、次年度以降も更なる団体の発展を目指して活動
していきたい。
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2.会計報告
グローバル・ネクストリーダーズフォーラム 学生本部
2014年度会計報告
(2013 年 10 月 6 日から 2014 年 10 月 1 日まで)
科目
Ⅰ収入の部
1 助成金収入
2 企業協賛収入
3 参加費
4 個人協賛
5 その他
当期収入合計(A)
前期繰越収支差額
収入合計(B)
Ⅱ支出の部
①本会議関連費
1 各国渡航費
2 雑費
②国内イベント関連費
③団体運営費
④報告会関連費
当期支出合計(C)
当期支出差額(A)-(C)
次期繰越収支差額(B)-(C)
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金額(円)
備考
¥1,250,000
財団等の詳細は報告書に記載
¥1,104,000
企業等の詳細は報告書に記載
¥1,909,360 海外参加者500米ドル、日本人参加者50000円
¥195,000
¥20,579
国内イベント参加費、駒場祭補助、利息
¥4,478,939
¥5,066
¥4,484,005
¥4,231,343
¥57,594
¥108,732
¥72,659
¥2,000
¥4,472,328
¥6,611
¥11,677
参加者の航空費・航空費関連手数料
参加者・教授贈答品、交通費
新歓費、駒場祭費、印刷費・ドメイン代・雑費
軽食代
3.ご連絡先
組織体制は 2014 年10月5日をもちまして、役員の改選等を経て 2015 年度
の組織体制に移行致します。
グローバル・ネクストリーダーズフォーラム 学生本部
〒113-0033 東京都文京区本郷 4-1-6 アトラスビル 6 階 IBIC 本郷内
公式ホームページ http://gnlf-web.p2.bindsite.jp/
メールアドレス [email protected]
[報告書、GNLF2014 に関するお問い合わせ]
GNLF2014 事務局長 渡丸慶 [email protected]
[新体制、GNLF2015 に関するお問い合わせ]
GNLF2015 事務局長 上代茉由子 [email protected]
以上
2014年10月1日
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