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資料 - 国立情報学研究所
平成 28 年度大学図書館職員短期研修 平成 28 年 10 月 6 日/12 月 1 日 学習/学修支援と大学図書館の役割 呑海沙織 筑波大学図書館情報メディア系・ 知的コミュニティ基盤研究センター [email protected] 1. はじめに 2. 大学における学びとその支援 (1)「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」(2008年3月,中央教育審議会大学分 科会 制度・教育部会) ・「知識基盤社会」における大学教育の量的拡大(ユニバーサル段階)を積極的に受け 止めつつ,社会からの信頼に応え,国際通用性を備えた学士課程教育の構築を目指す。 ⇒ 大学の自主性・自律性を尊重した多角的支援の飛躍的充実が必要 「競争」,「多様性」の追求 + 大学間「協同」,教育の質の「標準性」 ・アドミッション・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,ディプロマ・ポリシー ・用語解説の「アクティブ・ラーニング」:「伝統的な教員による一方向的な講義形式の 教育とは異なり,学習者の能動的な学習への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学 習者が能動的に学ぶことによって,後で学んだ情報を思い出しやすい,あるいは異なる 文脈でもその情報を使いこなしやすいという理由から用いられる教授法。発見学習,問 題解決学習,経験学習,調査学習などが含まれるが,教室内でのグループ・ディスカッ ション,ディベート,グループ・ワークなどを行うことでも取り入れられる。」 (2)「学士課程教育の構築に向けて(答申)」(2008年12月,中央教育審議会) ・「審議のまとめ」に対する大学・高等学校関係者からのヒアリング,広く国民一 般からの意見聴取を行いつつ,慎重に審議を進め,とりまとめられたもの ・各専攻分野を通じて培う学士力(学士課程共通の学習成果に関する参考指針) ・教育課程編成・実施の方針 ・用語解説に「アクティブ・ラーニング」の項目なし 1 / 6 平成28年度大学図書館職員短期研修 (3) 「大学図書館の整備について(審議のまとめ):変革する大学にあって求められる大学図 書館像」(2010年12月,科学技術・学術審議会 学術分科会 研究環境基盤部会 学術情 報基盤作業部会) ・大学図書館に求められる機能・役割 ①学習支援及び教育活動への直接の関与 ア.学習支援 イ. 教育活動への直接の関与 ②研究活動に即した支援と知の生産への貢献 ③コレクション構築と適切なナビゲーション ④機関・地域等との連携及び国際対応 ・用語解説の「ラーニング・コモンズ」:「複数の学生が集まって,電子情報も印刷物も含 めた様々な情報資源から得られる情報を用いて議論を進めていく学習スタイルを可能にす る「場」を提供するもの。その際,コンピュータ設備や印刷物を提供するだけでなく,そ れらを使った学生の自学自習を支援する図書館職員によるサービスも提供する。」 (4)「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け,主体的に考 える力を育成する大学へ~」(2012年8月,中央教育審議会答申) ・「学士課程教育の構築に向けて(答申)」(2008年12月)のフォローアップ ・用語集の「アクティブ・ラーニング」:「教員による一方向的な講義形式の教育とは異な り,学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に 学修することによって,認知的,倫理的,社会的能力, 教養,知識,経験を含めた汎用 的能力の育成を図る。発見学習,問題解決学習,体験学習,調査学習等が含まれるが,教 室内でのグループ・ディスカッション,ディベート,グループ・ワーク等も有効なアクテ ィブ・ラーニングの方法である。」 (5) 第二期教育振興基本計画(2013年6月,対象期間は2013年度から2017年度) ・「自立・協働・創造モデルとしての生涯学習社会の構築」を掲げ,下記4つの教育に関す る基本的方向性 ① 社会を生き抜く力の養成 ② 未来への飛躍を実現する人材の養成 ③ 学びのセーフティネットの構築 ④ 絆(きづな)づくりと活力あるコミュニティの形成 ・学士教育において,アクティブ・ラーニングや双方向型授業を中心とした教育の質的転換 の促進を明示。そのための主な取り組みとして,学生の主体的な学修のベースとなる図書 館の機能強化,情報通信技術を活用した双方向型の授業・自修支援などの学修環境整備, MOOCによる講義の配信など。 2 / 6 平成28年度大学図書館職員短期研修 (6)「学修環境充実のための学術情報基盤の整備について(審議まとめ)」(2013年8月,科 学技術・学術審議会学術分科会学術情報委員会) ・学修環境充実のためには,コンテンツ,学習空間,人的支援の有機的な連携が重要 ・ラーニング・コモンズの設置場所については,「必要に応じてコンテンツや人的支援を提 供できる環境を有している図書館を中心に設けるのが適切であるが,より多くの空間を確 保し,学生の利便性を高める観点から,支援体制等を図書館と連携させつつ,部局等にお いて展開することも想定される。」 ・学修環境充実のために推進すべき取組として,大学図書館の効果的活用と機能強化。図書 館に教育面での積極的関与,たとえば教材等の資料作成を支援する体制の構築,教員に授 業に対する新しいアイデアの構築を促すことが期待 ・「学修」に関して,「大学設置基準上,大学での学びは『学修』としている。これは,大 学での学びの本質は,講義,演習,実験,実習,実技等の授業時間とともに,授業のため の事前の準備,事後の展開などの主体的な学びに要する時間を内在した『単位制』により 形成されていることによる。」 3. 大学教育の新しいかたち ・教育学習支援システム 資料の事前配布,出席確認,課題提出,クリッカー機能,ポートフォリオ,フィード バックなど ・ポートフォリオ ・反転授業 ・シラバスの整備 ・授業評価 3 / 6 平成28年度大学図書館職員短期研修 4. 学習支援と大学図書館とラーニング・コモンズ ・大学教育を理解 → 学習支援をデザイン ・ 「大学図書館」における学習支援 < 「大学」における学習支援 ・ 利用者志向(user-oriented, student-oriented) ・ 非図書館中心(non library centered, not library-centric) ・ 伝統的図書館とラーニング・コモンズの対比 伝統的図書館 ラーニング・コモンズ 学習モデル 伝統的学習モデル アクティブ・ラーニング 学習スタイル 個別学習 +グループ学習 雰囲気 静かな +騒がしい,活気がある 支援スタッフ 図書館員などの図書館スタッフ 飲食 不可 +学生アシスタント,他部署との 連携に基づいた他部署のスタッフ カフェの設置,閲覧室への飲物の 制限的持込可 ・学習支援に関わる人的リソース ・筑波大学の KLC(春日ラーニング・コモンズ)を事例として 5. ラーニング・コモンズにおける学生アシスタント 5.1 学生アシスタントとは ・自発的・自立的な関与する ⇔ 単純作業を機械的にこなす ・図書館スタッフの一員としての働き ・米国では学生スタッフを 1910 年代から導入しており,時代によってその役割は変化 北米の大学図書館における学生スタッフの捉え方累計 種別 A 業務補助者 観点 図書館業務を効率よく処理するために定型的作 業を担当する。図書の装備,配架作業など。 専門的能力 低 図書館スタッフの一員として,専門的な図書館 B 非公式の同僚 業務も担当する。レファレンス・サービスな 中 ど。 専門的トレーニングを行い,将来的な図書館員 C 潜在的な図書館員 という視野も含める。専門的な図書館業務も担 当する。 4 / 6 高 平成28年度大学図書館職員短期研修 5.2 学生アシスタント活用の意義 ・人的資源の量的・質的補完 ・サービス再考・創出の機会 ・学生のニーズの把握 ・質問しやすい環境の実現 ・学習の機会・実践の場の提供 6. コミュニティ主導型をめざして 6.1 ・ ・ ・ コミュニティ主導型図書館サービス (Community-led library service) コミュニティのニーズを重視 サービス・プランニングは,図書館が行うのではなく,コミュニティとともに行う サービスは,図書館スタッフのみが提供するものではなく,コミュニティのメンバーと ともに提供 ・ User-based とも 6.2 コミュニティ・デベロップメント・ライブラリアン(Community Development Librarians: CDL) コミュニティ・デベロップメント ・コミュニティによる民による自主的連帯性に基づいた環境改善 ・コミュニティの努力と政府当局の努力を結合 5 / 6 平成28年度大学図書館職員短期研修 6.3 利用者と図書館の関係性の変化 図書館 ニーズ 第 4 段階 創出化 利用者と図書館の関係 図書館 利用者 利用者と図書館の相互作用 利用者 第 3 段階 曖昧化 図書館 (エージェン ト) 利用者のエージェントとして利用を促進 第 2 段階 図書館 提供元 多様化 利用者 (分衆) ニーズに合わせて提供する 第 1 段階 供給元 図書館 未分化 利用者 (大衆) 良い「資料」を与える 7. さいごに ・利用者と図書館サービスを考え,創り,提供する ・大学のミッションや特質に応じた大学図書館づくり ・データに基づいた大学図書館運営 ・図書館内外の人的リソースの連携 ・大学図書館のコアコンピタンス ・手元の仕事の意味を考える 6 / 6