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∼ 救急車同乗実習 全症例報告 ∼ 実習期間 :平成 14 年 9 月 1 日(日

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∼ 救急車同乗実習 全症例報告 ∼ 実習期間 :平成 14 年 9 月 1 日(日
∼
救急車同乗実習
全症例報告
∼
実習期間 :平成 14 年 9 月 1 日(日)∼9 月 10 日(火)(10 日間)19:00∼23:00
総出動回数:52 回(学生 1 人当りの平均出動回数:6.5 回)
【9月1日(日)】
症例No.1
【観察】
40 歳代、男性。
【現場状況】
現着時、病院にて頭部 CT、胸部・腰部 X 線撮影及び右手の挫創処置が済んでいた。仰臥位にて待
機している状態。傷病者の首周りにガラスの破片が付着。多くの関係者がいた。
【症状】
意識は正常、顔面は普通、痛みがわかるせいか苦痛によるあえぎ声。右側頭部挫創(ガラスで切っ
た様な傷)、右乳首下から右臍の辺まで軽度の擦過傷。右手背部に挫創があり、包帯がまいてあった。
骨盤骨折が疑われ、陰圧ギブスで固定。右目が少し赤かった。顔面及び頚部挫創、いずれも出血は止
まっていた。
【症状より判断されること】
首の回りにガラス粉があったので交通事故と自分で判断。右側に損傷が集中しているため、右側か
らの衝撃が加わったと考えられる。骨盤骨折に特有な肢位をしていた。車内で頭部 CT を診たが出血
はみられない。
【処置】
骨折に陰圧ギブスで固定。右手手背部の圧迫止血(包帯が巻いてあった)。ショック体位へ体位変換。
【医師の診断】
右骨盤骨折、右鎖骨骨折。病院到着後 Ope 室へ。
【考察】
骨盤骨折で適応されるショックパンツがないので陰圧ギブスで応用したと考えた。鎖骨骨折に対し
ての処置はされてなかったので、三角巾などで固定したほうが良いと思った。右側頭部の傷は、傷の
回りの毛が剃ってあったが、感染予防も含めて包帯をしたほうが良いと思った。
(小野
裕子)
現着時にはストレッチャー上であったため、受傷機転はわからない。頚椎カラーと全脊柱固定の適
応であるが、救急車にそのような装備はなかった。傷病者にショック症状はなかったが予断は禁物で
ある。急変に対応できるよう観察が重要。
(高間
症例No.2
【観察】
女性。呼吸:15 回/min、BP:100/70mmHg、HR:96 回/min、瞳孔反射:あり
【現場状況】
周りに何もない道路上。バイクタクシーの中に傷病者がいた。
【症状】
痙攣、発汗があり、呼吸が速い。搬送中に痙攣が治まったがすぐに痙攣が現れた。
【症状より判断されること】
アトピリンと解磷定の投与。O₂投与。
【医師の診断】
有機リン中毒。
繁貴)
【考察】
アトピリンにより副交感神経刺激症状を抑える。気道痙縮による呼吸困難を防ぐために酸素投与が
されたと考えられる。
(岡部
伸哉)
(上松
裕司)
症例No.3
【観察】
【現場状況】
原因不明。搬送せず帰所。
【症状】
【症状より判断される事】
【処置】
【医師の診断】
【考察】
タクシーまたは誤報と考えられた。
症例No.4
【現場状況】
現場に着いたら、救急車は U ターンして病院に戻った。現場に患者の姿はなかった。
【症状】
【症状より判断されること】(自分で判断したこと)
高所からの転落らしいので、重傷度が高い鈍的外傷と思われる。多発外傷を疑う。
【医師の診断】
医師の後の説明では、患者は高いビルから転落。タクシーで自ら病院へいった(救急車よりタクシ
ーの方が病院に行くのに早いため)
。患者の症状は重症だと医師に言われた。
【考察】
こういう事もあるのだとすごく驚きました。でも合肥市の町中を見ていると、車と人が多く、救急
車が走っていてもよける車と人が少ないので、救急車の到着を待つよりタクシーなどで病院に行った
ほうが早いと思った。
(小野
裕子)
6m 以上の高所落下は緊急度が高く、ロードアンドゴーの適応であるため、救急車を待たずタクシ
ーでの搬送は適切であったと思われる。
(高間
繁貴)
症例No.5
【観察】
60 歳代
女性。呼吸:25/min、BP:140/80mmHg、HR:55 回。
【現場状況】
傷病者宅が不明のため、到着に時間がかかった。アパートの3階。椅子に座っている傷病者がいた。
【症状】
やや早めの呼吸。意識清明。
【症状より判断されること】
脳血管障害は否定的。呼吸器・循環器系の疾患であると判断。
【処置】
硝酸マグネシウムの舌下投与。O₂投与。
【医師の診断】
Spo₂:98%、病院到着後 BP:172/68mmHg。冠状動脈硬化症の既往があるため、狭心症と診断。
【考察】
硝酸マグネシウムの投与により血管を拡張させ、冠動脈への血流を増加させる処置が施された。車
内では O₂の投与のみであった。
(上松
裕司)
症例No.6
【観察】
30 歳
女性。呼吸:15 回/min、BP:100/60mmHg、HR:80 回/min、瞳孔反射:あり(左右差なし)
【現場状況】
患者は道路の端で仰臥位で寝ていた。BS も多い。意識朦朧、嘔吐あり。
【症状】
顔が紅潮しており、のぼせたような感じがあった。意識朦朧、呼びかけ反応はうすい。呼吸回数が
少なく浅い。搬送途中に嘔吐。
【症状より判断されること】
嘔吐があったため薬物・食物中毒と予想。
【処置】
現場では、鼻からO2投与、筋肉注射(呼吸回数が少なく浅いため)
。病院到着後は、O2投与、甘露
醇(中国語名)の注射(浸透圧を上昇させるため)。
【医師の診断】
脳水腫?による CO 中毒。
【考察】
(小野
裕子)
(岡部
伸哉)
病院搬入後痙攣がみられた。
症例No.7
【観察】
30∼40 歳、男性。
【現場状況】
工事現場にて大型ダンプカーの下敷きになっていた。車軸と土砂の間に腹臥位、土砂に顔面が埋ま
っている状態であった。警察が先着。工事関係者は興奮状態であった。現場は暗く、救出は困難。
【症状】
意識レベルは JCSⅢ-300。目立った外傷、出血はなし。胸壁運動がないため呼吸なし。出動から現
着までに約 10 分であり、おそらく CPA である。
【症状より判断できること】
土砂であったためダンプカーは低速走行であったと思われる。重量があるため、頭部・胸部に重度
な損傷があり得る。顔が土砂に埋まっているため窒息による CPA が疑われた。
【処置】
救出に時間がかかるため引き上げた。
【医師の診断】
Dr.は要救助者をみて首を振った。
【考察】
手作業による救出以外不可能である。日本であれば高度な資器材により早く救出できるがここには
何もないのが残念である。どのような状況にあってもわずかに希望があれば全力を尽くさなければな
らない。
(高間
繁貴)
【9月2日(月)】
症例No.8
【観察】
50 歳、男性。呼吸:20 回/min、BP:110/70mmHg、瞳孔反射:あり(4mm、左右差なし)。
【現場状況】
区病院・外科から市病院への転院搬送。ベッド上で仰臥位。
【症状】
顔面外傷、右眼窩部から出血、呼びかけ反応がある。鼻腔内に出血した形跡があった。
【症状より判断されること】
転倒、ケンカなどにより出血したのではないかと判断。鼻出血があったため、鼻骨骨折も疑った。
意識清明のため頭部外傷はない。
【処置】
区病院で縫合と消毒。右眼窩部をガーゼによる被覆。
【医師の診断】
顔面損傷(軽症)、頭痛はなし、鼻骨骨折なし、CT を撮るためし病院へ。三輪車で転んで受傷。消
毒および縫合を行う。
【考察】
ストレッチャーは日本ほど機能がなく、ストレッチャーを用いた体位変換は出来ない。現場がわか
らなく時間がかかったが、場合によっては危険である。
(榊原
慎司)
転院搬送であった。三輪車にて転倒し顔面を損傷。CT 検査のため転院。出血があるのにも関わら
ず、医師は手袋をしておらず、感染防止に注意が必要だと思った。
(種村
嘉人)
症例No.9
【観察】
22 歳、男性。呼吸:20 回/min、BP:130/90mmHg、HR:80 回/min、瞳孔反射:あり(3mm、
左右差なし)
。
【現場状況】
草むらの中に傷病者が倒れていた。学校の校庭でスポーツ後胸痛により、倒れた。
【症状】
胸が苦しく頭痛がする。両手に麻痺があり、顔面は高潮、意識あり。
【症状より判断されること】
O₂低下による胸痛、上肢麻痺。心電図上、心電図の幅にばらつきがあり胸痛があるので、心不全と
考えた。
【処置】
O₂投与、ニトログリセリンの経口投与、四肢・胸の誘導心電図、血圧測定。
【医師の診断】
心臓病の既往があり、スポーツによって、O₂不足によって頭痛が生じた。頭痛と両上肢の知覚麻痺
は心不全による。O₂欠乏が脳内と上肢組織内で起きたために頭痛と感覚麻痺があった。
【考察】
中国では薬物投与ができる。
(辻
学)
傷病者は苦悶の表情で仲間に励まされていた。
(内藤
悠道)
症例No.10
【観察】
51 歳、女性。呼吸:20 回/min、BP:153/100、HR:126 回/min、瞳孔反射:あり(2mm 右異常)
【現場の状況】
殴られた後、椅子の上でぐったりしていた。現着時には BS がたくさんいた。
【症状】
殴られたことにより、血圧、心拍、呼吸が上昇。鼻出血、右眼下にあざがあり、腫脹している。意
識は少しあり。
【症状より判断されること】
鼻出血がある事から鼻外傷と高血圧。
【処置】
呼びかけ反応、聴診、血圧測定、酸素投与、嘔吐に備えてビニール袋・清拭準備、同効確認、呼吸
確認。
【医師の診断】
心臓病と O₂低下による呼吸困難。鼻外傷。鼻骨折が疑われるためレントゲン撮影を行う。
【考察】
酸素投与時、酸素ボンベは使わず酸素袋を用いている。
(辻
学)
BS がたくさんいた事で、行動に支障が出そうであった。
(内藤
悠道)
症例No.11
【観察】
70 歳、男性。呼吸:32 回/min、BP:130/70mmHg、HR:152 回/min、瞳孔反射:あり(4mm、
左右差なし)
【現場状況】
電灯がなく真っ暗な狭い路地裏にて家族が傷病者を背負って出てきた。
【症状】
左頸静脈怒張、胸部痛、意識あり、会話可能、呼びかけに対して開眼。
【症状より判断されること】
頚静脈怒張から心疾患、肺塞栓症。
【処置】
現場で酸素投与、搬送途中に聴診と触診後、強心剤の経口投与(この際、仰臥位から起坐位に体位
変換)。聴診と胸部、腹部の触診。病院内では酸素投与、心電図。
【医師の診断】
心房細動を疑い強心剤を投与。肺水腫、高血圧の既往がある。病院において 12 誘導心電図および
四肢誘導心電図から心房細動を診断。
【考察】
医療機関においては救急患者に対しても標準 12 誘導心電図が記録されることが多い。不整脈以外
に、心肺の虚血部位の診断に必要。高血圧の既往があるため、高血圧性心疾患(心房細動)により心
原性肺水腫が考えられる。
(榊原
慎司)
高血圧の既往がある事から、心房細動および心原性肺水腫が発症したと思われる。肺水腫により低
酸素症、MOF となる可能性があるので早期の O₂投与、PEEP(または CPAP)が必要と考えられる。
頚静脈の怒張が現着時から確認されていたので起坐位での搬送でもよかったと考えられる。
(種村
嘉人)
【9月3日(火)】
症例No.12
【観察】
【現場状況】
出動したがタクシーにて病院へ。
【症状より判断されること】
【処置】
【医師の診断】
【考察】
(細田
紀子)
(平野
歓)
症例No.13
【観察】
【現場状況】
バイク事故で路上にバイクのみ横転。警察が先着。
【症状】
【症状より判断されること】
【処置】
【医師の診断】
タクシーで病院に向かったとの事。
【考察】
隊編成は医師 1 名、隊員2名、ドライバー1名。
(松本
健二)
(宮本
真典)
交通事故であったが救急車が到着する前にタクシーで病院へ向かった。
症例No.14
【観察】
28 歳女性。呼吸 15 回/min(様式:深い)、BP:120/70mmHg、HR:80 回/min、瞳孔反射:あり。
【現場到着】
個人開業医(内科)から合肥第一人民医院への病院間搬送。身内がいたがかなり動揺していた。
【症状】
意識はやや混濁、顔面はやや紅潮、呼吸は深い胸式呼吸、下肢にやや冷感。
【症状より判断されること】
何がおこっているのかほとんど見当がつかなかった。救急 Dr.が「輸液反応」といっていたのでシ
ョック症状だと判断。
【処置】
搬送中、輸液と酸素投与。合肥第一人民医院では血圧測定。血液検査、塩酸エピネフリン投与、免
疫学的検査。
【医師の診断】
内科では、酸素投与と薬物投与(抗菌薬 林可雷素?何かはわからない)を受け、軽度のアナフィラ
キシーを起こし、血液検査(アレルギーテスト)。合肥第一人民医院ではアレルギーテスト後、塩酸エ
ピネフリン(アドレナリン)投与を受けるだろうとの事。
【考察】
ショック症状の見当はついていたが、アナフィラキシーに気づかなかった。
(細田
紀子)
抗生物質によるアナフィラキシーだったらしい。
(平野
歓)
症例No.15
【観察】
83 歳、女性。呼吸:14 回/min、BP:140/70mmHg、HR:85 回/min。
【現場状況】
アパートの3階で老女が仰臥位で寝ていた。隣の部屋に家族がいた。
【症状】
発熱(37.7℃)、嘔吐、呼吸が苦しい。 血糖値 9.1mmol/ℓ。
【症状より判断されること】
風邪でひている感じであった。意識はあり、会話も出来る。家族の行動から、現着前に嘔吐があっ
たのかもしれない。
【処置】
熱を測り鼻腔から酸素投与。血圧、血糖値の測定。聴診。
【医師の診断】
上呼吸道感染、糖尿病(血糖値の正常値:3.6∼6.1mmol/ℓ)。
【考察】
現着時傷病者はとても不安そうな表情だったが、病院に着いたらその表情が和らいだように見えた。
(松本
健二)
(宮本
真典)
手を動かし、会話もしていたので重症ではないと判断。
【9月4日(水)】
症例No.16
【観察】
50 歳代後半、男性。呼吸 18 回/min、BP:200/105mmHg。
【現場状況】
未舗装の道端に男性が倒れていて、周囲には BS が 20 人ほどいた。
【症状】
意識レベル JCSⅢ-100、無表情、嘔吐(少量)
、高血圧、左上肢のみ動かす。
【症状より判断されること】
現着時、意識不清明であったため、アルコール中毒か脳卒中を考えた。
【処置】
酸素投与、20%グルコース液 250ml を手背部から点滴。降圧剤投与。利尿薬の投与。口腔内吸引。
【医師の診断】
左脳出血・脳浮腫。右半身麻痺、頭蓋内圧亢進、開口不能。
【考察】
降圧剤の投与は脳浮腫による脳圧亢進を抑えるためである。
(村田
佑介)
(山本
健司)
医師が到着し、処置が始まると、BS も落ち着きを取り戻す。
症例No.17
【観察】
【現場状況】
現場は合肥市の外れで、肥東県の救急車が先着したため、不搬送。
【症状】
【症状より判断されること】
【処置】
【医師の診断】
【考察】
合肥市には救急救命センターが4箇所しかないため、効率が悪い。
(吉田
有希)
(小穴
裕)
症例No.18
【観察】
中年、男性。呼吸:18 回/min、BP:正常、瞳孔反射:あり(左右差なし)
【現場状況】
建設現場の寮らしき場所に男性が倒れていた。部屋にはアルコールのようなにおいがした。20 人ほ
どの BS が心配そうに見守っていた。
【症状】
意識はないが、呼吸は正常。
【症状より判断できること】
アルコールのにおいと周りの人が興奮状態でなかったため、酩酊状態と判断。
【処置】
車内で酸素投与、病院到着後輸液を開始。
【医師の診断】
急性アルコール中毒であった。
【考察】
急性アルコール中毒には単純酩酊と病的酩酊があるが、この場合は単純酩酊であったと考えられる。
意識がなければ利尿薬の投与で、日本と差はない。
(吉田
有希)
一回の搬送に約 650 元である。
(小穴
裕)
【9月5日(木)】
症例No.19
【観察】
【現場状況】
ホテルの風呂場で昏睡。脳出血の疑いがあるとの事。タクシーで病院へ向かった
【症状】
【症状より判断できること】
【処置】
【医師の診断】
【考察】
(岡部
伸哉)
(上松
裕司)
症例No.20
【観察】
61 歳、男性。呼吸:正常。BP:130/80mmHg、HR:75 回、瞳孔反射:あり(正常)
【現場状況】
郵便学校の運動場薄暗い場所に椅子に座っていた。起坐位で頭部を前屈し、家族は錯乱状態。口か
鼻か分からないが粘液?(嘔吐物?)がたれていた。
【症状】
現場では意識がないように見えたが、車内収容後に呼びかけに対し反応あり(挙手と発声)。
【症状より判断されること】
現着時の傷病者の状態と家族の様子から、心疾患か気道閉塞により意識がないと思った。搬送途中
にニトログリセリンの投与をした事から心筋梗塞などの心疾患と判断。
【処置】
現着後、すぐにストレッチャーに仰臥位にし酸素投与。車内収容後に脈拍、血圧の測定をし、搬送
途中にニトログリセリンの舌下投与。
【医師の診断】
冠状動脈(前下行枝)の梗塞。
【考察】
通報では腹痛ということだったが、心尖部の冠状動脈が梗塞したために腹痛を伴ったと思われる。
(種村
嘉人)
(小野
裕子)
自覚症状として胸部の痛みや違和感が多い。薬物はニトログリセリンも投与。
症例No.21
【観察】
74 歳、女性。呼吸:23 回/min、BP:200/100mmHg、HR:92 回/min、瞳孔反射:あり(2mm、
左右差なし)
【現場状況】
アパートの4階で BS は家族が3名。傷病者はベッド上で頭部を押さえている状態。
【症状】
意識はあるが苦しそう(医師の質問に答えられる)。頭部痛を訴えていた。呼吸は少し速い。
【症状より判断されること】
頭痛ということにより、脳血管障害の可能性が高い。
【処置】
降圧剤の舌下投与と利尿薬の臀部注射。
【医師の診断】
高血圧症による頭蓋内圧の亢進。そのために頭痛を訴えていた。
【考察】
舌下投与には即効性がある事もあり、降圧剤の舌下錠が選択されたものと思われる。また、臀部注
射による利尿薬は、排尿により循環血液量の低下を促進させる。
(上松
裕司)
血圧の上がる要因としては、心拍出量の増加、循環血液量の増加、末梢血管の収縮があるが、利尿
薬により循環血液量を減少させる作用がある。その結果、血圧は低下傾向になる。
(小野
裕子)
症例No.22
【観察】
51 歳、男性。呼吸:正常、BP:110/75mmHg、HR:94 回/min、瞳孔反射:あり(2mm、左右
差なし)。
【現場状況】
マンションの3階、傷病者がソファー上で側臥位でいた。現着時嘔吐あり。BS(家族)が5名。
【症状】
めまい、激しい嘔吐(コーヒー色)。意識は清明。
【症状より判断されること】
嘔吐があり、発汗も見られたためアルコール中毒か脳障害を考えた。食中毒。
【処置】
現場では、血圧、脈拍を測定。殿部に吐き気止め(メトクロペラミド注射剤)投与、保温。車内で
は瞳孔反射を2回。病院では H₂ブロッカーを投与。搬送途中に嘔吐のため、仰臥位に体位変換。
【医師の診断】
酒飲みであり、コーヒー残渣様の吐血と嘔吐があったため、急性の胃潰瘍と診断。メトクロプラミ
ド(制吐剤)を注射し、嘔吐とともに出血を抑制。病院では H₂ブロッカーによって、胃酸の分泌を
抑制。
【考察】
(岡部
伸哉)
狭い階段をストレッチャーで降りたが、傷病者を出来るだけ水平に保っており、シュミレーション
で習った事が思い出された。嘔吐が激しかったため、階段を搬送中にも注意が必要である。
(種村
嘉人)
症例No.23
【観察】
32 歳、女性。呼吸:24 回、BP:130/90mmHg、HR:96 回/min、瞳孔反射:あり(3mm)
【現場状況】
アパートの 3 階。現着時、セキュリティードアのため傷病者宅に入るのにがかかった。傷病者自ら
家の扉を開けると同時に床に倒れこんだ。
【症状】
意識は清明、腹痛を主訴としており、右腹部痛に圧痛があった。顔面は蒼白で苦悶状。現着前に嘔
吐があったとの事。
【症状より判断されること】
右下腹部、嘔吐があったため、虫垂炎または腸管の疾患であると思われた。
【処置】
現場では血圧測定、鎮痛薬(654-2)の臀部注射。病院では抗生物質の投与。
【医師の診断】
急性虫垂炎と思われる。
【考察】
病院で抗生物質を投与し、痛みが続くようであれば Ope となる。WBC(白血球数)の増加でも Ope
の適応。発熱にも注意。傷病者が大柄であったため、担架での搬送を手伝った。
(上松
裕司)
(小野
裕子)
WBC(白血球数)が上がったら虫垂炎と断定。
症例No.24
【観察】
29 歳、男性。呼吸:正常、BP:正常、HR:正常、瞳孔反射:正常。
【現場状況】
科学技術大学の寮の3階の一室。ベッドの上に仰臥位。BS はルームメイトと少数の野次馬がいた。
【症状】
現着時、ベッドから自分で降りてきた。下着に血液が付着、肛門付近から出血。出血量は不明。
【症状より判断されること】
下着を下げた状態であり、下着には血液がついていて血痕付着部が肛門の辺りであったため、痔で
はないかと判断。
【処置】
ガーゼにより圧迫止血。輸液と止血薬の投与。
【医師の診断】
痔。病院で輸液と止血剤の投与。
【考察】
辛いものを食べ過ぎているからではないかと思った。
(岡部
伸哉)
手袋をして直接圧迫止血をして短時間で止血できた。傷病者は自ら救急車まで歩き、車内でストレ
ッチャーに腹臥位になった。搬送時はサイレンは鳴らさず低速走行約(20km/h)した。痔症では好発
部位として時計で例えると3時、7時、11 時の位置が多い。
(種村
嘉人)
【9月6日(金)】
症例No.25
【観察】
25 歳、男性。呼吸:15 回/min、BP:120/70mmHg、HR:75 回/min、瞳孔反射:あり(3.5mm)
【現場状況】
商店街の歩道。BS が大勢、5,60 人が見ていた。
【症状】
右側頭部から後頭部にかけての創傷。意識は清明、話はしない。
【症状より判断されること】
交通事故かケンカ。
【処置】
加圧包帯、病院で縫合。
【医師の診断】
脳外傷。頭蓋内出血はない。
【考察】
(辻
学)
(平野
歓)
意識がはっきりしていたので重症ではないと思う。
症例No.26
【観察】
【現場状況】
道路の真ん中でトラックが停まっており、前方には自転車が倒れていた。交通事故だと思う。
【症状】
【症状より判断できること】
【処置】
【医師の診断】
【考察】
患者はタクシーで現場に向かっていた。
症例No.27
【観察】
55 歳、女性。
【症状】
(榊原
慎司)
(宮本
真典)
合肥第一人民医院への転院搬送。
【症状】
頭部外傷、右眼下内出血、発汗。
【症状より判断されること】
脳内出血。
【処置】
点滴(脱水薬)、酸素投与。
【医師の診断】
脳水腫から水頭症。
【考察】
終始無言。
(辻
学)
(平野
歓)
一点をずっと見つめていた。
症例No.28
【観察】
【現場状況】
道路で Dr.が話をしていたが、現場がわからなかった。
【症状】
【症状より判断できること】
【処置】
【医師の診断】
【考察】
腹痛の患者であったが、すでにタクシーで病院へ行った。
(榊原
慎司)
(宮本
真典)
無線連絡により帰所。
症例No.29
【観察】
26 歳、女性。
【現場状況】
アパートの 3 階、玄関を入ると嘔吐をする声が聞こえた。ベッド上に腹臥位で寝ていた。
【症状】
嘔吐、失禁、顔面蒼白。
【症状から判断されること】
部屋に入ったとき、アルコールの臭いもしなかったので食中毒かと思った。脳障害。
【処置】
なし。
【医師の診断】
アルコール中毒。
【考察】
救急車に乗ろうとしなかったので不搬送。
(辻
学)
(平野
歓)
傷病者が診断も搬送も拒否。
症例No.30
【観察】
58 歳、男性。呼吸:20 回/min、BP:168/100mmHg、HR:70 回/min、瞳孔反射:正常。
【現場状況】
アパートの 2 階、家族が現場まで案内をしてくれた。台所の椅子に傷病者が血だらけの顔で座って
いた。
【症状】
鼻出血、意識はあり、呼吸が荒い。苦悶状。涙が出ている。
【症状より判断できること】
鼻を打撲したと思った。
【処置】
現場では、額を濡れタオルで冷やす。ガーゼをつめて鼻骨下を圧迫。血圧測定、鎮痛薬を飲ませた。
車内では、頭部が揺れないように薬箱をストレッチャーの頭部においた。病院では、バルーンカテー
テルによる止血が行われた。
【医師の診断】
高血圧で鼻腔の小血管が破れて出血。病院ではバルーンカテーテルによる止血をしたらしい。
【考察】
呼吸は荒かったが回数は正常であった。車内でいびきをかきながら眠ってしまい、痛み刺激にも反
応しない状況だった。医師によると問題はないとの事。
(宮本
真典)
高血圧で鼻の小血管が破れ出血したと考えられる。顔色は少し紅潮している。傷病者は担架上で仰
臥位であったが、血液が体内に流れてしまうので、起坐位のほうがよいと思われる。
(榊原
慎司)
症例No.31
【観察】
54 歳、女性。
【現場状況】
外科の病室。
【症状】
胆嚢の Ope 後で腹腔内出血。右腹部損傷。
【症状より判断されること】
【処置】
止血薬の点滴、酸素投与。
【医師の診断】
腹腔内出血、後で胆嚢の Ope。
【考察】
安徽省立医院へ搬送。
(辻
傷病者は話が出来た。
【9 月 7 日(土)】
症例No.32
【観察】
30 歳、男性。呼吸:20 回/min、BP:100/80mmHg、HR:80/min。
【現場状況】
学)
ホテルの部屋でうつ伏せになってゴミ箱に顔を近づけていた。意識は混濁(最初は応答あり)
、うな
り声。部屋にはアルコール臭。飲酒量は白酒(アルコール 70%)を 250ml。
【症状】
自力歩行は不可能、振戦あり、体温は正常。
【症状より判断できること】
酒の臭いが強かったため、急性アルコール中毒と思った。
【処置】
酸素投与と殿部の筋肉注射(納格銅)、濡れタオルで顔面冷却。仰臥位で搬送。病院到着後、10%
グルコースにビタミン C とカリウムイオンを輸液。
【医師の診断】
急性アルコール中毒。
【考察】
グルコースは肝臓保護と利尿作用、ビタミン C は解毒作用、カリウムイオンは排尿により失ったカ
リウムイオンを補う。酔った傷病者を相手にするのは大変だと思った。
(内藤
悠道)
コップ一杯の酒を飲んだだけであんな症状が出るのは意外であったが、体調や飲み方にも問題があ
ったのだろうと思った。
(細田
紀子)
症例No.33
【観察】
49 歳、男性。呼吸 20 回/min。24 歳、女性。呼吸:110 回/min(浅く早い)。
【現場状況】
ケンカにより男性が右上眼窩より出血。女性は興奮して倒れていた。
【症状】
男性は右上眼窩部より出血、意識は清明。女性は興奮しており、全身に痙攣が認められた。あえぎ
声を発する。
【症状より判断されること】
頭部出血は勢いがあるため、止血が必要。鮮紅色の出血であったため、動脈性の出血であると考え
られる。
【処置】
男性はガーゼで圧迫止血、女性は酸素投与と腰部からの鎮静睡眠薬(バリウム)の注射。
【医師の診断】
男性は病院で縫合、女性は精神的なものであるため心配はいらないとのこと。
【考察】
ケンカであったためBSは興奮していた。また、付き添いも興奮しており、こちらを見る目が冷た
かった。
(内藤
悠道)
最初は交通外傷か何かだと思ったが、ケンカでヒステリー状態になっているとは思わなかった。男
性に外傷があり、女性には負傷したようには見えなかったが、女性が担架で運ばれたため、状況がほ
とんど把握できなかった。
(細田
症例No.34
【観察】
49 歳、女性。瞳孔反射:あり(3mm、左右差なし)。
【現場状況】
紀子)
民家の軒先に傷病者がおり、男性に上半身を抱えられていた。顔面および衣服に血液が付着。BS
が 10 名ほどいた。
【症状】
右眉の上から出血及び口唇からの出血を確認。
【症状より判断できること】
受傷機転がケンカであったため、ケンカによる外傷ではないかと思った。
【処置】
抗生物質(TAT)⇒搬送中に破傷風トキソイドを予防的に投与。酸素投与。
【医師の診断】
ケンカによる外傷で地面に倒れていたので、破傷風予防のため TAT を投与。病院では 4∼5 針縫合
するだろうとのこと。
【考察】
ケンカということもあり現場はとても混乱していた。搬送を開始しようとしても BS が救急車を叩
くなど活動に支障が出ていたが、医師は処置を行っており、関心した。
(松本
健二)
出動の際、ケンカと聞いたので出血を予想した。出血量は多かったようだが、圧迫止血により容易
に止血できる。家族が傷病者の手を握り(固定も兼ねて)
、傷病者を安心させようとしていた。外傷で
は、創部からの感染防止に努めることも頭に入れなければならない。
(村田
佑介)
【9月8日(月)】
症例No.35
【観察】
30 歳代、男性。呼吸:正常、BP:150/90mmHg、瞳孔反射:あり(2.5mm、左右差なし)
【現場状況】
道路で事故を起こしたスクーターの周りに BS がたくさんいた。男性は頭部から血を流して倒れ、
その近くに肉片らしきものがあった。
【症状】
意識Ⅱ−10、後頭部の割創、手の擦過傷、痙攣。
【症状より判断されること】
スクーターにはねられる交通事故。左後頭部を強打。意識があり、医師の言葉に反応するので脳出
血はないだろう。
【処置】
酸素投与、右側臥位で搬送、頭部を包帯で被覆、病院では TAT(抗破傷風毒素)を 150μ投与。
【医師の診断】
左後頭部割創、脳出血はなし。
【考察】
交通事故で BS がたくさんいたが、観察に支障はなかった。
(山本
健二)
痙攣が起こった理由は脳に傷害が生じたためだと思ったが違った。
(小穴
症例No.36
【観察】
【現場状況】
中央分離帯付近にバイクが転倒していた。タクシーで病院へ向かったとの事。
裕)
【症状】
【症状より判断されること】
【処置】
【医師の診断】
【考察】
現場は片側3車線の街灯がない直線道路、地面の凹凸が多く、これにハンドルを取られて起きる事
故も多いように思われる。交通外傷では表面的な損傷に目を奪われてしまうが、目に見えない損傷を
見逃がさないよう観察を繰り返すことが大切であり、バイタルの変化にいち早く気が付く必要がある。
(高間
繁貴)
バイク事故の場合、障害物への衝突、事故転倒などの受傷機転によるものなどいろいろな損傷形態
をとる。処置としては損傷部位の止血、固定、被覆である。
(吉田
有希)
症例No.37
【観察】
【現場状況】
現着時、肥西県の救急車が搬送するところであった。バイクによる単独事故が予想される。
【症状】
【症状より判断されること】
【処置】
【医師の診断】
【考察】
現場は片側3車線の街灯がない直線道路、地面の凹凸が多く、これにハンドルを取られて起きる
事故も多いように思われる。交通外傷では表面的な損傷に目を奪われてしまうが、目に見えない損傷
を見逃がさないよう観察を繰り返すことが大切であり、バイタルの変化にいち早く気が付く必要があ
る。
(高間
繁貴)
バイク事故の場合、障害物への衝突、事故転倒などの受傷機転によるものなどいろいろな損傷形態
をとる。処置としては損傷部位の止血、固定、被覆である。
(吉田
有希)
症例No.38
【観察】
63 歳、男性。呼吸:36 回/min(起坐呼吸、喘鳴)、BP:150/90mmHg、HR:110/min。
【現場状況】
2 階建ての家。ベッド上で苦しんでいた。
【症状】
起坐呼吸、呼吸数が多かった。
【症状より判断されること】
気管支喘息。
【処置】
酸素投与、グルコース5%を 250ml、アミノフィリン 0.25g(気管支拡張)。
【医師の診断】
気管支喘息。慢性気管支喘息の既往がある。
【考察】
4つの薬剤を投与したが、日本では出来ないので参考にはならなかった。
(山本
健二)
家族は手慣れていた。
(小穴
裕)
症例No.39
【観察】
55 歳、女性。呼吸:24 回/min、BP:120/90mmHg。
【現場状況】
マンションの 6 階の居間で仰臥位で寝ていた。情報では意識喪失と痙攣ということであったが現着
時は治まっていた。
【症状】
意識・バイタルは正常、呼吸はやや速かった。主に右足に痙攣。
【症状より判断されること】
バイタル等も正常であったため、判断出来なかった。Dr.が心音を聴取していたので、心疾患と思っ
た。
【処置】
バイタルの確認、血糖値測定。
【医師の診断】
てんかん発作、低血糖、テタニーから消去法で診断した。血糖も正常、テタニーでは意識喪失はな
いので、てんかん発作と判断。
【考察】
てんかんとは意識喪失、痙攣を主症状とする疾患の総称である。意識喪失にともない、転倒や痙攣
による外傷に注意。精神科のある病院へ運ぶのが望ましい。
(高間
繁貴)
脳腫瘍、外傷、脳血管障害などによる障害に続発して生じる症候性てんかんが多い。長時間の発作
では、アシドーシス、体温上昇、不整脈、気道閉塞などの合併症を引き起こすため、早期の搬送が望
ましい。
(吉田
有希)
症例No.40
【観察】
55 歳、女性。
【現場状況】
アパートの 1 室の 5 階。
【症状】
腹痛。右側腹部。
【症状より判断出来る事】
肝・胆嚢あたりの炎症。
【処置】
バイタル測定。
【医師の診断】
胆石の疑い、痛みの原因不明のため、薬剤投与は行わなかった。
【考察】
腹痛はわかったが具体的な内臓の問題はわからなかった。搬送は5階であるため大変であった。シ
ュミレーションで習った通りである。
(山本
健二)
傷病者をみても症状が判断出来なかった。
(小穴
裕)
【9月9日(月)】
症例No.41
【観察】
34 歳、女性。呼吸:12 回/min、BP:125/70mmHg、HR:80 回/min、瞳孔反射:あり(2.5mm)
【現場状況】
悪路と渋滞で現場まで 15 分、2 階建てのアパートの1階。
【症状】
顔面蒼白、意識は不清明(JCS−2)、脈は弱く手掌、足底は乾燥気味。体温は 37.4℃。
【症状より判断できること】
最初は血糖値を測定していたので糖尿病性昏睡ではないかと思った。
【処置】
自宅で血糖値測定(4.6mmmol/l)で正常、酸素投与。病院ではリバビリン(抗生物質)の投与、点
滴(5%グルコースと Vit.C3.0g)。
【医師の診断】
ウィルスによる上気道感染つまり風邪。
【考察】
搬送中、舗装されていない道路を 15 分走ったため、傷病者がいつ嘔吐してもおかしくない状態で
あった。それに対する準備も大切である。
(高間
繁貴)
(細田
紀子)
振動が常にあるような状態であり、時々苦しそうな表情をするのが気になった。
症例No.42
【観察】
93 歳、男性。呼吸:45 回/min、BP:180/85mmHg、HR:90 回/min、瞳孔反射:あり(3mm)。
【現場状況】
アパートの1階、ベッド上で酸素吸入をしている。
【症状】
衰弱しているようにみえた。腹式呼吸にも見える。
【症状より判断できること】
酸素吸入をしていたので、気管もしくは肺の病気ではないかと判断。
【処置】
現場では酸素投与、BP 測定、気管支拡張剤の噴霧、院内では抗生物質(ペニシリン)、気管支拡張
剤 0.25g、5%グルコース 250ml の投与。
【医師の診断】
慢性気管支炎の急性発作、肺部細菌感染。
【考察】
慢性気管支炎は慢性閉塞性肺疾患(COPD)に含まれる。外的要因として喫煙、大気汚染、感染な
どと内的要因の高齢副鼻腔炎の合併などがある。慢性気管支炎については、肺での炎症が気管支に広
がったものではないかと推測した。これも炎症反応による血管透過性亢進による粘液の分泌過剰、腫
脹による気管狭窄に注意。
(村田
佑介)
隊員なしでの出動であった。ストレッチャーなどを運ぶのを手伝ったが、搬送法の練習不足を感じ
た。呼吸数が 45 回/min であり呼吸不全もしくは心不全の疑いもあり頻呼吸になったと考えられる。
(辻
学)
症例No.43
【観察】
65 歳、女性。呼吸:12∼16 回/min、BP:195/95mmHg、HR:80 回/min、瞳孔反射:あり(2.5mm)
【現場状況】
民家の 1 階、ドクターは家族と話しながら薬剤投与後帰所。
【症状】
顔面やや蒼白、若干苦しそうではあった。
【症状より判断できること】
高血圧または医師が薬剤を経口投与(ニトログリセリン?)したので狭心症を疑った。
【処置】
高血圧による「痛心症」であるため「安定剤」を投与。医師は同じ薬を家族に 2 錠渡し帰所。
【医師の診断】
狭心症、高血圧。ニトログリセリンと安定剤の投与⇒末梢血管拡張により血圧を下げる。
【考察】
狭心症は労作性狭心症、安静時狭心症、不安定性狭心症に分けられる。不安定性狭心症は心筋梗塞
に移行する恐れがある。
(高間
繁貴)
(細田
紀子)
搬送せずに帰所したのは、経済的な問題ではないかと思い、ショックだった。
症例No.44
【観察】
63 歳、女性。呼吸:18 回/min、BP:95/70mmHg、HR:80 回/min、瞳孔反射:あり(2mm、
左右差なし)
【現場状況】
空調屋で胸部を押さえて仰臥位でいた。
【症状】
胸部痛。
【症状より判断できること】
心疾患、一過性のものと判断、狭心症または神経痛。
【処置】
心電計。
【医師の診断】
軽度の狭心症、肋間神経痛。
【考察】
肋間神経痛は持続的に続くとのこと、狭心症では心筋梗塞とは異なり、持続時間が短いのが特徴、
今回は心電図が正常であったため不搬送であったが、循環器専門医への搬送が望まれる。
(村田
佑介)
冠動脈狭窄により労作による心筋の酸素需要増加に対応出来ず心筋虚血などが起こった。
(辻
学)
症例No.45
【観察】
69 歳、男性。呼吸:24 回/min、BP:150/90mmHg、HR:60 回/min、瞳孔反射:あり(右 4.5mm、
左 2.0mm)
【現場状況】
病院から自宅までの搬送。神経内科の重症監視室内に傷病者がいた。点滴2本、導尿、酸素投与が
行われていた。
【症状】
常に半分開眼していた、四肢冷感あり、搬送前に排尿。
【症状より判断できること】
脳出血による昏睡、CT 所見で右基底部の出血である。
【処置】
ラップにて保温、酸素投与。病院からの処置の継続。トラゼパムと 20%グルコース液(利尿)。
【医師の診断】
大脳基底核の出血、出血が多いためヘルニアを起こし脳浮腫による頭蓋内圧亢進。
【考察】
家族の希望により傷病者の最期を迎えるための搬送であった。この出動で終末期医療をかいま見た。
今命が途絶えるかもしれない傷病者と必死になって家族のもとに届ける。日本ではありえない搬送で
あり感動を覚えた。自宅では傷病者を迎える準備が整っていた。
(高間
繁貴)
かなりの出血であり、一目で末期と判断できた。到着すると殺風景な部屋に搬送されていって、と
ても淋しかった。1 日でも長く家族といられるといいなと思った。
(細田
紀子)
【9月 10 日(火)】
症例No.46
【観察】
73 歳、女性。
【現場状況】
アパートの3階でベッドに座っていた。杖を支えにしており、少しの失禁を確認。額にタオルを巻
いていた。
【症状】
両下腿の炎症、失禁、体温は 38.5℃。
【症状より判断できること】
風邪による発熱。
【処置】
車内では酸素投与、病院では下熱薬、抗生物質の投与。
【医師の診断】
糖尿病からくる動脈硬化により、下肢の血流が潰瘍によって遮断されたために壊死が起こりそこか
ら細菌が侵入、下腿に炎症を起こした。
【考察】
現着時から搬送途中まで傷病者の意識は清明ではなく、軽い糖尿病性昏睡と思った。失禁は高血糖
による高浸透圧性利尿によるものではないかと振り返って思った。
(松本
健二)
下肢のむくみより、痴呆のような症状に気をとられていた。今回の救急には無関係であったので、
これらを見分ける力を身に付けたい。
(山本
健司)
症例No.47
【観察】
49 歳、男性。BP:120/70mmHg、HR:80 回/min、瞳孔反射:あり(2.5mm、左右差なし)
【現場状況】
ホテルの 3 階、ベッドに仰臥位で寝ていた。
【症状】
陰嚢部に疼痛があり、陰嚢が肥大している。
【症状より判断されること】
精巣捻転。
【処置】
バイタルを測定後、すぐに搬送。病院では抗生物質、鎮痛薬の投与。
【医師の診断】
急性精巣上体炎とのこと。
【考察】
少しの振動で痛がるため、搬送は慎重に行った。
(内藤
悠道)
(榊原
慎司)
汚れた手で陰嚢を触ったために細菌感染したのだと思った。
症例No.48
【観察】
78 歳、女性。呼吸:24 回/min、BP:110/65mmHg。
【現場状況】
アパートの5階で、ベッド上に仰臥位で寝ていた。ベッドサイドにはブザーと簡易トイレがあった。
【症状】
めまい、心電図は正常。
【症状より判断できること】
心臓疾患、酸素欠乏。
【処置】
酸素投与、BP 測定、聴診、心電図。
【医師の診断】
一過性脳虚血発作。左右総頸動脈の痙縮により脳血流量が一時的に減少したため、めまいが起こっ
た。
【考察】
現着時、呼吸が苦しそうで会話は不可能であった。酸素投与後、会話が出来るようになった。
(松本
健二)
部屋には呼び出しアラームと紙おむつがあったため何かの慢性疾患または寝た切りではないかと判
断。今回は不搬送であったが、医師はエアーバックに酸素を再充填し、家族に渡した。
(山本
健司)
症例No.49
【観察】
75 歳、男性。呼吸:21 回、BP:150/90mmHg、HR:65 回/min、瞳孔反射:あり(2.5mm、左右
差なし)
【現場状況】
病院の内科で傷病者は仰臥位で寝ていた。
【症状】
眼球運動はあるがほかには反応しない状態であった。尿道カテーテルが見えた。
【症状より判断できること】
脳血管障害であり、残りわずかな命のため、自宅へ搬送する。
【処置】
無処置。
【医師の診断】
右脳梗塞の後遺症で左半身が麻痺、言語中枢にも傷害があるため、会話が出来ない。
【考察】
自宅に到着後、アパートの4階まで上げた。この傷病者が今いる部屋で一生を終えると思うと悲し
い気持ちになった。
(内藤
悠道)
(榊原
慎司)
中国の理学療法の技術は高いので、自宅では針灸で治療。
症例No.50
【観察】
35 歳、男性。
【現場状況】
車道上に仰臥位で倒れていた。警察官・BS を確認。
【症状】
左手第三・四指に数 mm の擦過傷あり、バイタルは正常。
【症状より判断できること】
現場状況などから交通事故と判断。
【処置】
酸素投与、病院では BP、HR の測定。
【医師の診断】
ケンカによる負傷。
【考察】
受傷機転が不明であったため、交通事故と判断していた。BS からの聴取により何らかの手がかり
が得られるだろうと判断。
(松本
健二)
(山本
健司)
付き添いの女性は重症ではないかと心配していた。
症例No.51
【観察】
28 歳、男性。呼吸:チェーンストークス呼吸、BP:170/90mmHg、HR:60 回/min、瞳孔反射:
あり(散大)
。
24 歳、男性。BP:120/70mmHg、HR:90 回/min、瞳孔反射:あり。
【現場状況】
車と二人乗りバイクの衝突。二人とも出血していた。
【症状】
28 歳⇒意識不明、左側頭部、左頬、右膝から出血。側頭部と頬部の出血は多い。
24 歳⇒大量出血は見られないが、左手に擦過傷が見られる。
【症状より判断できること】
28 歳⇒BP が高くチェーンストークス呼吸があるため、出血性ショックを疑う。
24 歳⇒目立った外傷は無いが、飛ばされているので頭部外傷が心配である。
【処置】
28 歳⇒酸素投与、負傷部の圧迫止血。
24 歳⇒酸素投与。
【医師の診断】
24 歳の男性には左胸の血胸が疑われる。
【考察】
事故のすさまじさを感じた。一人の男性では現着時すでに死亡しているのではないかと思ったほど
であった。BS は自分たちに声を掛けていたが、今考えると白衣を着ているので助けを求めてきたの
ではないかと思った。病院に着いてから 28 歳の男性が正常呼吸に戻りホッとした。
(内藤
悠道)
初めての交通事故であり、かなりの緊張感があった。BS が何かいっていたが「向こうにもう一人
いるから助けてやってくれ!」と言っていたのではないかと思った。24 歳の男性は、呼吸時に「ゴウ
ゴウ」「コウコウ」といった音がしていたので血胸ではないかと思った。
(榊原
慎司)
症例No.52
【観察】
23 歳、女性。
【現場状況】
現場付近は工事で渋滞しており、傷病者を背負った男性を発見。
【症状】
左手首の切創、出血は少量。呼びかけ反応はなし。
【症状より判断できること】
自殺目的のリストカットおよび服薬。
【処置】
手関節の止血、BP 測定。病院では胃洗浄。
【医師の診断】
自殺目的のリストカットおよび服薬。
【考察】
今回は創が浅かったため動脈損傷はなかったがもし動脈までも切っていたら危なかったかもしれな
い。
(松本
健二)
道路事情の悪さが一段と露呈された。自殺者が切ろうとする橈骨動脈は深くてなかなか切れない。
(榊原
慎司)
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