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小児保健研修コース (PDF:311KB)
小児保健研修コースレジデント募集 -Disease Oriented Pediatrics と Health Oriented Pediatrics の統合を目指して- 2015 年 8 月更新 はじめに ―なぜ今小児保健なのか? 少子化が加速する現在、その少ない子どもをいかに心身ともに健康に育てる か、という小児保健の視点が今ほど小児科医に求められる時代はありません。 しかしながら、現状では小児科サブスペシャリティー研修の中で特にこの分野 に注目した研修プログラムを提供する施設は今までありませんでした。 その一方では 2012 年、小児科専門医や外科専門医と同様に「総合診療専門医」 という新しい専門医を養成・認定することが正式に決まりました。「総合診療」 医とは、小児も含めて幅広く日常的に遭遇する頻度の高い疾患や傷害に対して 適切に対応し、各科専門医と連携しつつ包括的、継続医療を全人的に提供する 医師とされています。そこでは地域のニーズを基盤として、在宅医療、緩和ケ ア、高齢者ケアなどを柔軟に提供し、地域における予防医療・健康増進活動を 通して地域全体の健康向上に貢献出来ることが求められています。即ち、小児 も含めて地域医療の充実ということが「総合診療」の大きな目的となっていま す。従って今後は、一次救急も含めた common disease や健康児の予防接種、 乳幼児健診などは、小児科医だけではなく「総合診療」医も担う可能性があり ます。そうなると、小児の総合医である小児科医だけにしかできない地域医療 での役割としては一体何があるでしょうか? 我々は、発達障害やこころの問題、虐待、育児支援、障害児在宅医療、ハイリ スク予防接種、慢性疾患(神経、アレルギー、内分泌、腎臓、免疫など)のう ち特に難治例についての管理、コントロール困難な肥満、など、現在当院が既 に積極的に関わっている分野が今後の地域総合小児医療として小児科医が特化 して担うべき分野になっていくのではないかと思います。そこでは地域保健師 や行政機関との連携など、まさに包括的、全人的な小児医療が求められます。 地域の医療レベルアップのために院外での研修活動、支援活動も重要になるで しょう。 ―なぜ当院が取り組むのか? 当院は 1988 年の創立以来診療部に加えて保健指導部を備え、医師、保健師、 看護師、医療ソシャルワーカーなど多職種が協力して県下の小児保健活動に取 1 り組んでいる全国でもユニークな施設です。県予防接種センター事業も担当し、 文字通り県の小児保健分野の中核的存在です。滋賀県は若年人口が流入し、出 生数、子ども人口比率ともに全国第 2 位と子どもの多い地域であり、ますます 小児保健活動が重要になっています。そこで当院小児科としては、小児科総合 医として地域医療を目指す小児科医を募り、小児慢性疾患や小児保健部門を中 心とした人材育成に取り組むことにしました。 ―具体的にどんな研修をするのか? 小児科としての一般業務(総合内科外来、一般的疾患の入院管理、当直業務 など)に加え、子どもの地域医療でニーズが高い発達障害、アレルギー、予防 接種、乳幼児健診、肥満指導、在宅支援、遺伝相談、虐待対応、子育て支援な ど、いずれもそれ自体を専門とするわけではないが総合医としてより広く深く 学習すべき小児慢性疾患・保健分野を重点的に短期間で要領よく研修できるカ リキュラムを提供します。これらの内容は一般的な専門分野による縦割りの小 児科研修ではなかなか本格的に取り組めないまま表面的な研修に終わっていた のではないでしょうか。当院ではこれらの内容一つ一つについて経験豊富な指 導医やコメディカルスタッフとともに専門分野をまたいで横断的に研修します。 また各症例について多職種のスタッフの中心となって診療方針を決定したり、 さらには地域の医療・保健・福祉・行政スタッフと連携・交渉したりする役割 が求められるため、地域医療のまとめ役、リーダー役としてのコミュニケーシ ョン能力を磨くことができます。 ―どんな人に向いているのか? 基本的には小児保健領域に興味のある人すべてが対象です。とりわけ小児科 の後期研修やサブスペシャリティーのトレーニングをある程度終えた卒後 5〜 10 年ぐらいの小児科医で、今後はいわゆる「かかりつけ医」、「家庭医」として 地域での小児総合医療へ向けて専門分野にとらわれない小児慢性疾患・保健分 野のスキルアップを目指す人に最適な研修です。研修期間は 1〜3 年を目安とし ますが希望に応じて柔軟に対応します。本研修内容は、その後例えどのような 分野に進むとしても普遍的に重要な内容が含まれているので必ず将来のキャリ アにとって役立つはずです。 具体的な研修内容について 発達障害 こころの診療科と小児神経科の二つの科で、発達障害及びその随伴・併存症状 2 の診断・薬物療法をおこなっています。また、臨床心理士と協力して、本人へ の心理教育・家族支援もおこなっています。地域の支援機関と協力して家族を 支える必要のあるケースでは、センター内の保健師などと連携しながら、支援 の輪を築く作業をしています。 研修目標:発達障害事例を年間最低 5 例担当する 本研修を通じて:発達障害の診断、本人と家族への支援方法、薬物療法、他機 関との連携方法、などが学習できます。 アレルギー 日本アレルギー学会認定研修指定病院として、幅広い小児アレルギー疾患につ いての高度で専門的医療を提供しています。また看護師、保健師、栄養士と協 力して定期的にアレルギー教室を開催し、保護者や関係者の理解を深める活動 を行っています。当院には日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会の認定資格 である小児アレルギーエデュケーターの資格を持つ看護師が複数名在籍し、医 師とともに院内外で小児アレルギーケア向上の取り組みを行っています。 研修目標:アレルギー外来を月 1 回担当する。食物負荷試験を最低年間 10 回、 重症アトピー性皮膚炎や重症喘息症例を最低年間各 2~3 例担当する。 本研修を通じて:基本的なアレルギー疾患の標準的な治療管理、食物アレルギ ーの経口免疫療法など先駆的な試み、保護者や関係者への啓発活動の実践、な どが学習できます。また、当院での研修を通じてアレルギー学会専門医受験資 格が得られます。 予防接種 当院は滋賀県予防接種センターを併設し、県下の基礎疾患を有するハイリスク 児の予防接種や、小児の海外渡航に関わる接種や相談に対応しています。地域 関係者の相談にも数多く応じています。研修会の企画・地域での講演など啓発 活動も活発に行っています。 研修目標:予防接種外来を月 1 回担当する。予防接種センターへの問い合わせ 内容を通じた学習を週数例行う。 本研修を通じて:予防接種の標準的接種法、ハイリスク児への対応、個別の予 防接種計画の立案、海外渡航児への対応、などが学習できます。 乳幼児健診 当院から滋賀県下の保健所に月 1 回小児神経科医が出向して各地域の一次健診 で要観察、要精査とされた乳幼児の二次健診を行っています。一次健診から紹 介される主訴は発達の遅れ、低身長、体重増加不良等が主です。原因精査やリ 3 ハビリテーションが必要な場合は当院に紹介し三次健診を行いますが、家族へ の育児指導等による経過観察で改善していくケースが多いです。また、発達障 害のある児に対し地域の療育機関と連携したりします。 研修目標:地域保健所の二次健診を月 1 回担当する。 本研修を通じて:二次健診を小児神経科医と一緒に行うことにより、乳幼児の 発達の診かた、育児指導法が学習できます。 肥満指導 肥満で悩む小児に対して医師、看護師、保健師、管理栄養士、心理判定員がチ ームを組んで食生活、日常生活の見直しを通じた肥満解消への指導に取り組ん でいます。代謝・内分泌外来とも連携しています。最近の傾向として発達障害 や不登校など心の問題を背景に抱えたケースも多く、必要に応じて地域の支援 機関とも連携して包括的に取り組んでいます。 研修目標:肥満教育入院を年間最低 1 例担当する。肥満外来を月 1 回担当する。 本研修を通じて:チーム医療による肥満小児の食事・生活習慣の管理・介入方 法が学習できます。 在宅医療 近年新生児医療の進歩に伴い、NICU で一命を取り留めたが、なかなか NICU から退院できない重度の障害を持った児が全国的に増加しており、滋賀県も例 外ではありません。当院では近隣の NICU からの依頼を受け、 「家族が退院を希 望しているが医療的ケアが重度であるため退院できないでいる」患者を受け入 れ、一定の期間内に退院できるように支援を行っています。具体的には、家族 への医療的ケアの指導、福祉支援制度の紹介、必要用具の手配、訪問看護ステ ーションとの連携、地域保健師との連携、など在宅での育児環境の調整を行い ます。さらに、 「在宅困難で、施設入所が望まれるが、状態が不安定で NICU か ら直接施設へ移すのが困難な事例」も、受け入れて安定させてから施設へ移行 させていきます。医師、看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、など多職 種の連携が求められます。また、退院できた児および家族の在宅支援を引き続 き行っていきます。 研修目標:在宅や施設への移行を目指して NICU から受け入れた症例を年間最低 2~3 例担当する。 本研修を通じて:重度の障害を持つ児の在宅支援のあり方を学習できます。 遺伝相談 4 一般の診療とは別に、保健指導部の事業として、遺伝に対する不安を持つ人に カウンセリングの提供をおこなっています。また、県内の医療保健従事者対象 の遺伝相談の勉強会もおこなっています。 研修目標:遺伝相談事例への立ち会い。遺伝相談勉強会への参加。 本研修を通じて:遺伝カウンセリングの基本的な考え方、遺伝カウンセリング の実施方法、などが学習できます。 虐待対応 小児虐待が増加しており社会問題になっています。当院でも虐待を受けて医療 的ケアが必要になったケースを数多く経験しており、保健指導部を中心に医師、 看護師、保健師、心理判定員などが虐待チームを組んで対応しています。法律 により医師には小児虐待の早期発見の義務とそれに基づく通告の義務が課せら れており、地域の児童相談所と連携して虐待死を防ぎ、また虐待予防を目的と した育児支援などの対応が求められます。 研修目標:虐待による児童相談所からの一時保護例を年間最低 2~3 例は受け持 つ。 本研修を通じて:虐待のパターン、虐待判断に必要な医学的所見の取り方、発 見と初期対応、通告や児童相談所との連携、再発予防のための地域支援の方法、 などが学習できます。 子育て支援 核家族化・少子化が進む中で、子育てに自信が持てず、気軽に相談できる場所 もなく、追い詰められた気持ちの保護者も増えています。当センターでは、小 児科医・看護師・保健師が、広く「子育て支援」の気持ちで保護者と接するよ うにしています。 研修目標:日々の診療で学習 本研修を通じて:保護者の不安の受け止め方、保護者へのエンパワメントの方 法、などが学習できます。 5