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県育成酒米品種を用いた福岡オリジナル 清酒の開発

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県育成酒米品種を用いた福岡オリジナル 清酒の開発
財団法人福岡県産業・科学技術振興財団
産 学 官 共 同 研 究 開 発 事 業
研究成果報告書
県育成酒米品種を用いた福岡オリジナル
清酒の開発
(平成 14 年度~平成 16 年度)
目
次
【研究総括】
県育成酒米品種を用いた福岡オリジナル清酒の開発
福岡県農業総合試験場
農産部長
松江勇次
【研究報告】
1.福岡オリジナルソフト清酒用酒造用米の開発
福岡県農業総合試験場
2.胚乳形質の特性評価による育種選抜の効率化
九州大学農学研究院
3.福岡オリジナルソフト清酒用酵母の開発
福岡県工業技術センター生物食品研究所
4.ソフト清酒醸造技術の開発
福岡県酒造組合
5.酒造用米「夢一献」の栽培適地の選定及び現地栽培技術の確立
全国農業協同組合連合会福岡県本部
【成果実績】
研究総括
福岡県農業総合試験場
農産部長
松江勇次
1. 研 究 開 発 の 背 景 ・ 研 究 目 的 お よ び 目 標
福 岡 県 で は 清 酒 製 造 数 量 が 最 も 多 か っ た 昭 和 48 年 頃 に は 約 120 の 蔵 元 が あ り 、酒 ど こ ろ
で有名な兵庫県の灘や京都府の伏見に次ぐ清酒生産量を誇る三大酒どころの一つであっ
た 。現 在 で も 70 の 蔵 元 が あ り 、各 蔵 元 は そ れ ぞ れ 独 自 の 歴 史 と 伝 統 に 裏 打 ち さ れ た 酒 造 技
法で良質な清酒を造り続けている。しかし、 最近、清酒の消費量は、清酒消費者の高齢化
と共に、若者や女性層が清酒に馴染まないこと、さらにはビール、ワイン、焼酎等の消費
量の増加により押されて減尐してきている。このため本県酒造業界では業界の不振を払拭
するために新たな需要の確保が重要課題となっている。さらには、福岡県には独自で開発
した酒造りに欠かせない酒造用米と清酒用酵母が無く、他県で開発されたものを使用して
いたため、独自の清酒販売戦略を構築するに際して大きな支障をきたしていた。一方で、
福岡県は西日本でも有数の水稲作付け面積を有する米どころでもあるが、国民一 人・1 年
当たりの米消費量の減尐や産地間競争の激化により稲作農家は厳しい状況に立たされてい
る。こうした問題に対応するために米の消費拡大のための需要喚起が必須の課題となって
いた。
こうした背景のなかで、福岡県の酒造業界の活性化および稲作農業の振興を図るために
酒造好適米である「山田錦」並みの酒造適性を有し、かつ栽培特性に優れた品種を原料と
して、特長ある風味を生成する酵母を用いて、従来の 清酒に縁の尐なかった女性層や若年
層にも好まれる福岡オリジナルソフト清酒の開発に取り組んだ。
これまでにない特長ある風味を有するソフト清酒を低価格で提供することで、近年ビー
ル、ワイン、焼酎の消費量増加に押されて漸減傾向にあった清酒の消費量が逆に伸びるこ
とが期待でき、さらには県内における酒米の作付面積の増加も期待できる。現在、米の作
付けを制限する生産調整が全国的にかつ数十年の長 期にわたって実施されているなかで、
酒造用米の増産は米生産の振興、米の消費拡大につながり、ひいては福岡県における清酒
業界の発展、水田農業の維持・振興につながるものである。
研究期間が 3 年の短期間で福岡オリジナルソフト清酒の開発という困難な課題に挑むに
当たっては、研究開発課題に対して有効な技術シーズを持っている機関の参画が必須条件
である。福岡県農業総合試験場は、県ブランド米品種「夢つくし」を開発した実績と最先
端技術を活用した育種選抜技術を有している。九州大学大学院農学研究院附属遺伝子資源
開 発 研 究 セ ン タ ー は 、 貯 蔵 タ ン パ ク 質 や 貯 蔵 デ ン プ ン に 関 し て 多 様 な 変 異 を 示 す 4,000 以
上の水稲品種・系統を保有しており、これら品種・系統の胚乳形質に関する特性評価を多
様な電気永動法等の分析手法で行う技術開発に実績を有している。福岡県工業技術センタ
ー生物食品研究所食品課は、清酒用酵母の培養および選抜技術を有し、独自の清酒酵母を
開発している。また、目的とする香気成分・有機酸を生産する酵母を的確にスクリーニン
グする技術を有している。福岡県酒造組合は、酒米の酒造適性について統一的な分析、評
1
価できる技術を有しているとともに、清酒製造プラントの工程設計を行う能力がある。全
国農業協同組合連合会福岡県本部は、開発された清酒の市場評価および嗜好性評価を行う
実績を持っているとともに、県下の農協組織と連携して水稲品種の栽培指導を行う体制を
有している。
本プロジェクトでは、福岡県農業総合試験場農産部水稲育種 チームが酒造用米新品種の
開発を、九州大学大学院農学研究院附属遺伝子資源開発研究センター植物遺伝子開発分野
が米胚乳形質の評価方法の開発を、福岡県工業技術センター生物食品研究所が優良酵母の
開発を、福岡県酒造組合がソフト清酒醸造技術の確立を、全国農業協同組合連合会福岡県
本 部 が 酒 造 用 米 新 品 種 の 適 地 選 定 と 栽 培 技 術 の 確 立 を 担 当 し た 。本 プ ロ ジ ェ ク ト の 目 標 は 、
商 品 化 が 可 能 な ア ル コ ー ル 度 数 が 10% 以 下 で 、従 来 清 酒 の 2 倍 量 の リ ン ゴ 酸 を 含 む フ ル ー
ティーなソフト清酒を開発することにある。
2. ソ フ ト 清 酒 に 適 し た 酒 造 用 米 新 品 種 の 開 発
担当:福岡県農業総合試験場農産部水稲育種チーム
2-1
酒造用米「夢一献」の育成
「夢一献」は平成5年8月、福岡県農業総合試験場において、良食味、いもち耐病性品
種 の 育 成 を 目 標 に 、い も ち 耐 病 性 が“ 中 ”程 度 に 優 れ る「 北 陸 160 号 」を 母 、良 食 味 の「 ち
くし6号、後の夢つくし」を父として人工交配を行った組合せに由来する。以降、集団養
成 及 び 系 統 の 選 抜 と 固 定 を 行 っ た 。 平 成 10 年 (F 7 )は 「 フ 系 1527」 の 系 統 番 号 で 、 平 成
13 年 ( F 1 0 ) 以 降 「 ち く し 58 号 」 の 系 統 名 で 生 産 力 検 定 試 験 、 特 性 検 定 試 験 お よ び 奨 励
品 種 決 定 調 査 に 供 試 し て き た も の で 、 平 成 14 年 度 に 本 共 同 研 究 が 開 始 し た と き は 雑 種 第
11 代 に あ た る 。 平成 14 年以降、「ちくし 58 号」の系統名で収量性、耐病性、醸造適性および地域
適応性を検討した。
2-2
「夢一献」の生育特性
「山田錦」と比較して、成熟期は4日程度早い“中生の早”に属する粳種である。耐倒
伏性は優れ、“強”である。葉いもち圃場抵抗性は同程度の“やや弱”、穂いもち圃場抵
抗性はやや優れ、“中”である。白葉枯病圃場抵抗性は同程度の“やや弱”である。穂発
芽性は“やや易”である。収量性は優れ、酒 造用一般米品種「レイホウ」と比較しても優
れる。「レイホウ」と比較して、玄米千粒重は大きく、心白米の発生がやや多いが、腹白
米の発生は尐なく、玄米の外観品質は同程度である。また、外観上心白の発現が認められ
ない玄米についても、玄米中心部に構造上心白様の部位が存在する。
2-3
「夢一献」の酒造適性
「レイホウ」と比較して、砕米率および粗タンパク質含有率がやや小さく、吸水性およ
び 消 化 性( Brix)が や や 大 き い 。ま た 、仕 込 み 試 験 に お け る 純 ア ル コ ー ル 収 量 も 高 く 、「 レ
イホウ」より酒造適性がやや優れる。
2
2-4
まとめおよび今後の課題
開発した福岡オリジナル酒造用米「夢一献」は、多収で、いもち病に強く、醸造適性が優れることが
明らかとなり、平成 15 年 10 月に種 苗 法 に 基 づ き 品 種 登 録 出 願 を 行 い 、 翌 年 2 月 に 「 夢 一 献 」
という品種名となった。今後は福 岡 オ リ ジ ナ ル 品 種 「 夢 一 献 」 を 使 用 し た 本 格 的 な 新 し い 純 米
酒や本醸造酒を開発し、現在、酒造用一般米の主力品種である「レイホウ」、「ニシホマ
レ 」、「 ツ ク シ ホ マ レ 」等( 作 付 け 面 積 : 1,920ha)を「 夢 一 献 」に 切 り 替 え て 、酒 造 用 原
料米について福岡のオリジナル性を打ち出す。
3. 胚 乳 形 質 の 特 性 評 価 に よ る 効 率 的 育 種 選 抜 技 術 の 開 発
担当:九州大学大学院農学研究院附属遺伝子資源開発研究センター植物遺伝子開発分
野
3-1
「夢一献」の胚乳形質評価
低タンパク質酒米品種「夢一献」のタンパク質組成を、ポリアクリルアミドゲル電気泳
動 法 ( SDS-PAGE) 及 び 等 電 点 電 気 泳 動 法 ( IE 法 ) に よ っ て 分 析 し た 。 高 ・ 低 含 硫 プ ロ ラ ミ
ン比率はほぼ同等で、構成ポリペプチドは一般品種と大きな差異は認められなかった。し
かし、プロラミン相対蓄積量は低い傾向が認められた。このことが、「夢一献」の低タン
パ ク 質 の 要 因 の 1 つ と 考 え ら れ た 。 一 方 、非 脱 脂 澱 粉 の 見 か け の ア ミ ロ ー ス 含 有 率 は「 山
田錦」より低いものの、「金单風」より高く、かつ、脱脂後の澱粉の見かけのアミロース
含有率は3者とも同等であった。このことは、「夢一献」のアミロースは包摂脂質量が尐
ないことを示唆しており、この点が本品種の酒造好適性の一因となったとも考えられる。
3-2
酒造適性と胚乳形質の関係解明
醸造適性に優れている品種のアミロペクチンの鎖長構造は、一般米より短鎖を多く含む
こと、外層部より中心部のアミロペクチンが短鎖を多く含むことが明らかとなった。さ ら
に 、 種 子 貯 蔵 タ ン パ ク 質 の SDS-PAGE 分 析 を 行 っ た と こ ろ 、 Cysteine 含 量 の 高 い 16・ 14・
10k D の 各 プ ロ ラ ミ ン ( 高 含 硫 プ ロ ラ ミ ン ) が 有 意 に 尐 な い こ と が 解 明 さ れ た 。 ま た 、 酒
質に大きく影響を及ぼす粒大、心白性、高アミロース性、高含流プロラミン低蓄積性はい
ずれも1もしくは2遺伝子関与の全て独立の遺伝形質であると考えられた。
3-3
まとめおよび今後の課題
酒造適性が優れている品種はデンプンと貯蔵タンパク質の組成と構造のみならず、包接
脂質量も食用米とは異なっていることが明らかとなった。「山田錦」の酒 造適性に関わる
構成は予想以上に複雑で、酒造適性の遺伝的要因の特定には「山田錦」と一般品種の組換
え自殖系統の解析が重要と考えられる。今後は、作製した組換え自殖系統を用いて酒造適
性に関わる遺伝的要因の解析を進めると共に、酒造好適米育成系統並びに突然変異系統米
の成分特性の評価を行う。
3
4 .フルーティーな香味を醸すリンゴ酸高生産酵母の開発
担当:福岡県工業技術センター生物食品研究所
4-1
リ ン ゴ 酸 高 生 産 酵 母 「 ふ く お か 夢 酵 母 」 ( リ ン ゴ 酸 高 生 産 酵 母 24- 2 株 ) の 取 得
「ふくおか夢酵母」は清酒もろみから分離、選抜された清酒酵母である。「ふくおか夢
酵母」の特性は、親株の「協会9号酵母」に比べてリンゴ酸を2倍多く生産し、酢酸生成
量は半分で、アルコール、香り成分、コハク酸、乳酸などの有機酸の生産量は同程度であ
る。
4-2
自然界からの清酒酵母分離
差別化商品として福岡県の特産農産物(巨峰、あまおう)から清酒酵母を分離した。そ
の結果、あまおうから分離した菌株、「いちご7号」を用いて酒母タイプで製造した清酒
は官能的に好ましい点が発見された。
4-3
まとめおよび今後の課題
ソフト清酒で問題となる味の薄さを、爽やかな酸味であるリンゴ酸でカバーするため、
リ ン ゴ 酸 の 高 生 産 酵 母「 ふ く お か 夢 酵 母 」を 取 得 し 、平 成 15 年 6 月 特 許 出 願 し た 。さ ら に
は、自然界からの清酒酵母分離に取り組み、福岡県特産品の「あまおう」から清酒酵母を
取 得 し た 。 今 後 は 「 ふ く お か 夢 酵 母 」 の 香 気 成 分 改 善 株 、 「 No.1-4」 に つ い て 実 規 模 で の
ソフト清酒製造試験を行い、実用性を証明することを考えている。また、「あまおう」か
ら分離した清酒酵母についてさらに清酒の小仕込試験による馴養を行い、性質の改良を考
えている。
5 .ソフト清酒醸造技術の確立
担当:福岡県酒造組合
5-1
「夢一献」の酒造適性評価
「夢一献」は搗精時の砕米の発生率が低く、吸水性、消化性は優れ、粗タンパク質含有
率 が 低 く 、清 酒 の 着 色 が 良 好 で 务 化 し に く い と い う 酒 造 適 性 を 有 す る 。こ れ ら の こ と か ら 、
「夢一献」は酒造好適米山田錦に近い特性を有し、酒造用米としての評価は高いことが判
明する。
5-2
酒造用米「夢一献」・リンゴ酸高生産酵母「ふくおか夢酵母」を使用したソフ
ト 清 酒 ( ア ル コ ー ル 分 10% 以 下 ) の 酒 造 技 術 の 開 発
一般的には清酒は三段仕込みで行われる。しかしこの方法だとアルコールの生成が多 く
製品として出荷の際和水を行い、アルコール濃度を下げなければならない。また、それに
より香りと味のバランスのくずれがおきる。そこでこれらの問題点を解消する酒造技術と
し て 香 り と 味 の バ ラ ン ス が 良 く 、製 品 そ の も の の ア ル コ ー ル 濃 度 が 10% 以 下 と な る よ う な
二段仕込み醸造技術を開発した。
4
5-3
まとめおよび今後の課題
酒造用米「夢一献」と「ふくおか夢酵母」を使用したソフト清酒を開発し、目標を達成
す る こ と が で き た( 図 1 )。今 後 の 展 開 は PR に よ る と こ ろ が 大 き い と 考 え る 。ま た 、「 福
岡の酒」ブランドづくりのためには、純米酒や本醸造酒などの主要な一般清酒の製造量や
販売量を増やす必要がある。今後は純米酒や本醸造酒に「夢一献」を使用していきたい。
本醸造酒、純米酒の製造試験も同時に行ってきたが、十分期待ができる。
「 夢 一 献 」 の 平 成 17 年 度 収 穫 量 は 3,000 俵 が 予 定 さ れ て い る が 、 酒 造 組 合 員 の 希 望 は
4,000 俵 を 超 え て い る 。 18 年 度 は 9,000 俵 、 19 年 度 は 「 レ イ ホ ウ 」 ・ 「 ツ ク シ ホ マ レ 」 等
と入れ替えが完了する予定である。
6 .酒造用米「夢一献」の栽培適地の選定および現地栽培技術の確立
担当:全国農業協同組合連合会福岡県本部
6-1
土壌の化学性、物理性評価による「夢一献」の栽培適地の選定
「 夢 一 献 」の 栽 培 適 地 を 選 定 す る た め に 、県 内 酒 造 用 米 産 地 16 地 区 よ り 5 地 区 を 選 定 し 、
土壌分析・玄米分析を行った。その中から土壌・玄米の性状が安定し、地区の栽培条件、
品 種 特 性 等 を 検 討 し た 結 果 、2 地 区 を 選 定 し 16 年 産 よ り 栽 培 適 地 と し て 約 2.3ha の 作 付 け
を行った。その際、酒造用米の生育に必要な珪酸が尐ない県北地域においては、珪酸質資
材の有効性を明らかにし、栽培技術の確立に取り入れた。
6-2
酒造用米「夢一献」の現地栽培技術の確立
「夢一献」の酒質に関係する玄米中のタンパク質含有率と収量性に大きく影響を及ぼす
穂肥の施肥回数を検討した結果、酒質に影響するタンパク質含有率を低く抑える穂肥の施
肥回数は1回が有効であることを明らかにする。
6-3
まとめおよび今後の課題
福岡県下水田の土壌分析を行い、土壌の化学性、物理性評価による「夢一献」の栽培適
地の選定を行うとともに、選定された適地における最適栽培法を確立した。今後は福岡県
の 酒 造 用 一 般 米 の 主 力 品 種 で あ る「 レ イ ホ ウ 」、「 ニ シ ホ マ レ 」、「 ツ ク シ ホ マ レ 」等( 平
成 16 年 度 作 付 け 面 積 : 1,920ha) を 将 来 的 に は 「 夢 一 献 」 に 切 り 替 え て 、 酒 造 用 原 料 に つ
いて福岡のオリジナル性を打ち出す。
7 .全体総括および今後の課題
平 成 14 年 度 か ら 平 成 16 年 度 に か け て 実 施 さ れ た 産 学 官 共 同 研 究 開 発 事 業 「 福 岡 オ リ ジ
ナ ル ソ フ ト 清 酒 の 開 発 」に よ り 、① 胚 乳 形 質 の 特 性 評 価 に よ っ て 選 抜 さ れ た ソ フ ト 清 酒 に
適した酒造用米新品種「夢一献」が開発され、種苗法に基づき品種登録出願を行うことが
で き た 。さ ら に 、土 壌 診 断 に よ る「 夢 一 献 」の 最 適 栽 培 法 も 確 立 さ れ た 。② ソ フ ト 清 酒 を
開発する際に欠かせないリンゴ酸を2倍多く生産し、フルーティーな香味を醸す「ふくお
か 夢 酵 母 」が 開 発 さ れ 、特 許 出 願 を 行 っ た 。③ 二 段 仕 込 み と い う 酒 造 技 術 を 開 発 し て 、酒
造用米「夢一献」とリンゴ酸高生産酵母「ふくおか夢酵母」を使用して香りと味のバラン
ス が 良 い ソ フ ト 清 酒 の 開 発 に 成 功 し た 。現 在 、県 内 10 の 蔵 元 で 本 事 業 で 開 発 さ れ た 福 岡 オ
5
リジナルソフト清酒酒造技術をベースにして独自のソフト清酒を商品化して販売してい
る。
し た が っ て 、本 産 学 官 共 同 研 究 開 発 事 業 に よ り 、県 独 自 の 酒 米 と 酵 母 を 使 用 し た 清 酒 に 縁
の尐なかった女性層や若年層にも好まれる清酒であるとともに、市販可能な優れた「 福岡
オリジナルソフト清酒」を開発するという当初の目標は達成できたと確信する。
今後は「福岡オリジナルソフト清酒」を一過性の商品に終わらせることなく、ソフト清
酒の確固たる普及と製造促進を図っていくために、県民への広報活動による製品アピール
や各蔵元協力による数種類のセット販売などの新たな販売戦略を構築することが必須条件
であると考える。さらには酒どころ福岡県の復権のために「夢一献」を使用した 純米酒や
本醸造酒を開発して行く方針である。
(図1)
県 内 10 の 蔵 元 で 商 品 化 さ れ た 福 岡 オ リ ジ ナ ル ソ フ ト 清 酒
( 平 成 17 年 2 月 )
6
1.福岡オリジナルソフト清酒用酒造用米の開発
福岡県農業総合試験場
1―1
農産部長
松江
勇次
専門研究員
浜地
勇次
専門研究員
尾形
武文
研究員
和田
卓也
主任技師
坪根
正雄
農産部
ソフト清酒用酒造用米に関する研究開発
福 岡 県 は 昭 和 48 年 頃 の 最 盛 期 に は 約 120 の 蔵 元 が あ り 、兵 庫 、京 都 に 次 ぐ 清 酒 生 産 量 を
誇 り 、 灘 や 伏 見 と 肩 を 並 べ る 三 大 酒 ど こ ろ の 一 つ で あ っ た 1 ) 。 現 在 で も 70 の 蔵 元 が 歴 史
と伝統に裏打ちされた良質な清酒を造り続けている。ところが、福岡には酒造りに欠かせ
ない酒造用米と清酒用酵母に関し、県のオリジナルなものが存在せず、他県で開発された
ものを使用していた。そのため、県内酒造業界と酒造用米生産農家からは、県オリジナル
の 酒 造 用 米 と 清 酒 用 酵 母 の 開 発 が 切 望 さ れ て い た 。特 に 、近 年 は 清 酒 業 界 の 不 振 が 続 く 中 、
今までになかった新しい味と酒質を有する清酒の開発が望まれていた。とりわけ、清酒業
界の不振を払拭するためには需要の確保が重要課題であることから、清酒に縁 の尐なかっ
た 女 性 層 や 若 年 層 に も 好 ま れ る 清 酒 と す る た め 、ア ル コ ー ル 度 数 の 低 い ソ フ ト 清 酒 を 開 発 す
ることとなった。 このような背 景か ら、我 々 はソフト 清酒 用の酒 造用米 を開発 する ことと
した。
1―2
プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ
福岡オリジナルソフト清酒開発に必要な「酒米」と「酵母」のうち、「酒米」について
育成中であった数種類の酒米系統の中から福岡オリジナル清酒用の酒造用米の品種育成を
行った。
1―3
目的と目標
福岡県は江戸・明治期から清酒の生産が盛んな地域であり、清酒生産とともに酒造原料
米 の 生 産 が 多 い 1 ) 。酒 造 好 適 米 と し て 最 も 評 価 の 高 い‘ 山 田 錦 ’の 作 付 面 積 は 、兵 庫 県 に
次 い で 第 2 位 を 占 め 2 ) 、醸 造 用 一 般 米( か け 米 )も 、‘ ニ シ ホ マ レ ’ 4 ) 、‘ レ イ ホ ウ ’ 3 )
を 中 心 に 、全 国 1,2位 を 争 う 有 数 の 生 産 量 を 有 し て い る 1 ) 。し か し 、ビ ー ル お よ び 焼 酎 の
消費が伸びる中で、清酒は、アルコール飲料の中では度数が高く価格がやや割高であるた
め、消費量は漸減傾向にある。清酒生産において、原料米の費用は人件費を除いた清酒生
産 の 純 コ ス ト の 7~ 8 割 を 占 め て お り 、 酒 造 業 界 か ら 、 酒 造 適 性 が 高 く 、 多 収 で あ る 品 種 の
育 成 が 、強 く 望 ま れ て い る 。そ こ で 、開 発 す る 酒 造 用 米 は 、酒 造 適 性 が 高 く 、多 収 で あ る こ
とを第一の目標とした。
7
1―4
実験方法及び実験条件
1-4-1
酒造用米「夢一献」の育成
1)育成経過
「夢一献」は平成5年8月、福岡県農業総合試験場において、良食味、いもち耐病性
品 種 の 育 成 を 目 標 に 、 い も ち 耐 病 性 が “ 中 ” 程 度 に 優 れ る 「 北 陸 160 号 」 を 母 、 良 食 味 の
「ちくし6号、後の夢つくし」を父として人工交配を行った組合せに由来する。以降、集
団養成及び系統の選抜と固定を行った。
平 成 10 年 (F 7 )は「 フ 系 1527」の 系 統 番 号 で 、平 成 13 年( F 1 0 )以 降「 ち く し 58 号 」
の 系 統 名 で 生 産 力 検 定 試 験 、特 性 検 定 試 験 お よ び 奨 励 品 種 決 定 調 査 に 供 試 し て き た も の で 、
平 成 14 年 度 に 本 共 同 研 究 が 開 始 し た と き は 雑 種 第 11 代 に あ た る 。
平 成 14 年 以 降 、「 ち く し 58 号 」の 系 統 名 で 収 量 性 、耐 病 性 、醸 造 適 性 お よ び 地 域 適 応 性 を
検討した。
2)品種特性解明
ち く し 58 号 の 栽 培 特 性 を 解 明 す る た め に 、酒 造 好 適 米「 山 田 錦 」、酒 造 用 一 般 米「 レ
イホウ」等の比較品種と共に比較栽培を行った。試験は福岡県農業総合試験場内圃場にお
いて、移植時期、施肥法は標準栽培とした。
酒造適性は、収穫した玄米を調製後、福岡県酒造組合で、砕粒率、吸水性、消化性、粗
タ ン パ ク 質 含 有 率 、カ リ ウ ム 含 有 率 を 調 査 し た 。さ ら に 、平 成 14 年 に は 小 仕 込 み 試 験 、平
成 15 年 に は 小 仕 込 み 試 験 及 び 中 規 模 醸 造 試 作 を 行 っ た 。
1-4-2
酒米品種の選抜における効率的な酒造適性の評価方法
酒米品種を育成するに当たっての酒造適性の分析には多量の試料、時間、労力を要する
ため、育成の後代系統でこれを評価するのが一般的である。このため、酒米育種を迅速か
つ 効 率 的 に 進 め る 上 で は 、初 期 系 統 段 階 で 酒 造 適 性 を 簡 易 に 評 価 す る こ と が 不 可 欠 で あ る 。
そこで、酒米品種の酒造適性と玄米品質、理化学的特性の関係について検討し、酒米品
種の選抜を行う場合の効率的な酒造適性の評価方法を確立するために、酒造適性の理化学
的特性からみた簡易な指標形質を明らかにする。
1)供試材料
(1)平 成 15 年 産 : 山 田 錦 、 ち く し 酒 62 号 、 つ く し 酒 舞 、 は な か ぐ ら 、 フ 系 2614、 フ 系
2615、 レ イ ホ ウ 、 夢 一 献
(2)平 成 14 年 産 : 山 田 錦 、 ち く し 酒 62 号 、 ち く し 酒 57 号 ( つ く し 酒 舞 ) 、 レ イ ホ ウ 、
ち く し 58 号 ( 夢 一 献 ) 、 单 海 145 号 ( は な か ぐ ら ) 、 单 海 145 号 /ち
く し 36 号 ( F 4 ) 由 来 の 2 系 統 ( フ 系 2614、 フ 系 2615 )
2 )分 析 項 目
全 て の 分 析 に は 、 70% 搗 精 米 を 使 用 し た 。
(1)ア ミ ロ ー ス 含 有 率:精 米 粉 100mg を ヨ ウ 素 呈 色 法 に よ り オ ー ト ア ナ ラ イ ザ ー Ⅱ 型 で
測定した。2反復。
(2)タ ン パ ク 質 含 有 率:精 米 粉 300mg を 硫 酸 分 解 し 、イ ン ド フ ェ ノ ー ル 法 に よ り オ ー ト
アナライザーⅡ型で測定した。2反復。
(3)ア ミ ロ グ ラ ム 特 性 値:精 米 粉 3.5g に 水 25ml を 加 え 、Newport Scientific 社 製 RVA-3M
8
型で測定した。2反復。
(4)酒 造 適 性( 一 次 加 工 適 性 ): 各 項 目 と も 酒 造 用 原 料 米 全 国 統 一 分 析 法 に 準 じ て 測 定
した。2反復。
1―5
実験結果
1―5―1
酒造用米「夢一献」の育成
「 夢 一 献 」は 、平 成 5 年 8 月 、多 収 で い も ち 病 に 強 い「 北 陸 160 号 」を 母 、低 タ ン パ ク の
「 夢 つ く し 」 を 父 と し て 人 工 交 配 を 行 な っ た 組 み 合 わ せ に 由 来 す る ( 図 1 ) 。 平 成 10 年 に
草 型 や 玄 米 品 質 の 優 れ た「 フ 系 1527」を 選 び 、平 成 14 年 以 降 、「 ち く し 58 号 」の 系 統 名 で
収 量 性 、耐 病 性 、醸 造 適 性 お よ び 地 域 適 応 性 を 調 査 し て き た 。そ の 結 果 、こ の 系 統 は 多 収 で 、
い も ち 病 に 強 く 、醸 造 適 性 が 優 れ る こ と が 明 ら か と な り 、平 成 15 年 10 月 に 種 苗 法 に 基 づ き
品 種 登 録 出 願 を 行 い 、 翌 平 成 16 年 2 月 に 「 夢 一 献 」 と い う 品 種 名 に な っ た 。
命名の由来は、品種名の「夢」は将来の夢や希望を表し、「一献」は酒を振る舞うこと
を意味する。この品種からつくられた酒が多くの人々に愛飲されることを希望する意味が
込められている。
北 陸 127 号
北 陸 160 号
(多収、病気に強い、
倒れにくい)
新潟早生
ゆめいっこん
夢一献
(多収、穂いもち中、
キヌヒカリ
倒 れ に く い 、高 醸 造 適 性 )
(倒れにくい)
夢つくし
(県産米、倒れにくい)
コシヒカリ
(良食味)
(図1)
「夢一献」の系譜
9
1)生育特性(表1、2)
「山田錦」と比較して、成熟期は4日程度早い“中生の早”に属する粳種である。稈長
が低く、耐倒伏性は優れ、“強”である。葉いもち圃場抵抗性は同程度の“やや弱”、穂
いもち圃場抵抗性はやや優れ、“中”である。白葉枯病圃場抵抗性は同程度の“やや弱”
である。穂発芽性は“やや易”である)。収量性は優れ、酒造用一般米品種「レイホウ」
と比較しても優れる。
2)収量性および品質(表1、3および図2、3)
収 量 性 は「 ヒ ノ ヒ カ リ 」よ り 優 れ 、試 験 場 、現 地 試 験 と も に 酒
造用一般米品種「レイホウ」と比較しても優れる。玄米は中形、
中 粒 で あ る が 、 粒 厚 2.0mm 以 上 の 玄 米 割 合 が 非 常 に 高 い 。 「 レ
イ ホ ウ 」と 比 較 し て 、玄 米 千 粒 重 は 大 き く 、心 白 米 の 発 生 が や や
多 い が 、腹 白 米 の 発 生 は 尐 な く 、玄 米 の 外 観 品 質 は 同 程 度 で あ る 。
ま た 、外 観 上 心 白 の 発 現 が 認 め ら れ な い 玄 米 に つ い て も 、玄 米 中
心部に構造上心白様の部位が存在する。
3)酒造適性(表1)
「 レ イ ホ ウ 」と 比 較 し て 、砕 米 率 お よ び 粗 タ ン パ ク 質 含 有 率 が
や や 小 さ く 、 吸 水 性 お よ び 消 化 性 ( Brix) が や や 大 き い 。 ま た 、
仕込み試験における純アルコール収量も高く、「レイホウ」
(図2)夢一献のようす
より酒造適性がやや優れる。
4)まとめ
「 夢 一 献 」は 1)熟 期 が「 ヒ ノ ヒ カ リ 」よ り や や 早 く“ 中 生 の 早 ”で あ る 、2 )「 ヒ ノ ヒ
カ リ 」 、 「 レ イ ホ ウ 」 と 比 較 し て 、 多 収 で あ る 、 3)耐 倒 伏 性 が “ 強 ” で あ る 、 4) 酒 造 適
性 は「 レ イ ホ ウ 」よ り も 優 れ る 、な ど の 特 長 が あ る 。「 夢 一 献 」は こ れ ら の 特 徴 か ら 、「 レ
イホウ」はもとより、醸造用一般米品種として県内で最も作付が多い「ニシホマレ」に代
わる品種として、一般平坦地、平坦肥沃地での普及が見込まれる。
10
(表1)
項目
夢一献の品種特性
品種名
夢一献
山田錦
レイホウ
成 熟 期 (月 日 )
10.01
10.05
10.13
千 粒 重 (g)
25.4
27.3
24.1
精 玄 米 重 (kg/a)
66.0
46.1
60.9
砕 米 率 (%)
5.2
9.3
8.7
酒造
吸 水 性 : 20 分 (%)
26.5
28.4
23.1
適性
: 120 分 (%)
31.4
31.3
30.4
4.6
4.7
5.1
栽培
特性
粗 蛋 白 質 (%)
注 ) 千 粒 重 、 精 玄 米 重 : 粒 厚 1.8mm 以 上 、 山 田 錦 の み 2.0mm 以 上 。
(表2)
「夢一献」の特性検定
夢一献
ヒノヒカリ
葉いもち
穂いもち
白葉枯病
穂発芽性
葉いもち
穂いもち
白葉枯病
穂発芽性
やや弱
中
やや弱
やや易
やや弱
やや弱
やや弱
難
注 ) 平 成 11~ 15 年 の と り ま と め 。
(表3)
品種名
粒厚分布
粒厚別の重量歩合(%)
1.8~ 1.9mm
1.9~ 2.0mm
2.0~ 2.1mm
2.1~ 2.2mm
2.2mm 以 上
夢一献
1.2
3.4
6.5
37.8
51.3
レイホウ
3.2
18.0
24.0
52.1
2.7
注 ) 各 々 200g を 5 分 間 縦 目 篩 に か け て 調 査 し た 。
11
(図3)
「夢一献」の玄米横断面写真
左:玄米(上:心白なし、下:心白あり)、右:玄米横断面(同左)
(図4)
「夢一献」のデンプン構造の比較
左:山田錦
1―5―2
右:夢一献
酒米品種の選抜における効率的な酒造適性の評価方法
1 )従 来 の 主 要 な 選 抜 指 標 形 質 で あ る 心 白 と 酒 造 適 性 と の 関 係 を み る と 、心 白 発 現 率 と 心
白 率 は と も に 浸 漬 20 分 後 の 吸 水 率 お よ び 浸 漬 120 分 後 と 20 分 後 と の 吸 水 率 比 と 高 い 有 意
な正の相関を示した。対照的にアミログラム特性値の最高粘度は、これらと貟の相関関係
にあることが示されたため、デンプン組成に由来する粘弾特性が吸水の早さに影響を及ぼ
すと考えられた(表4)。
2 )消 化 性 に つ い て は 、試 験 を 実 施 し た 2 カ 年 と も に 、Brix と ア ミ ロ ー ス 含 有 率 と の 間 に
貟の相関関係が認められた(表4、図5)。
以上のことから、酒米の選抜において、吸水性には心白発現率を、また消化性にはアミ
ロ ー ス 含 有 率 を 用 い る こ と に よ っ て 、酒 造 適 性 を 簡 易 的 に 評 価 で き る と 考 え ら れ た 。ま た 、
アミログラム特性も吸水性に関与していると考えられるため、さらに指標となる形質を絞
り込んでいく必要がある。
12
(表4)
玄米品質、理化学的特性と酒造適性項目との相関係数
吸水性
蒸
砕米率
消化性
米
20 分
120 分
20/120 分
吸水率
Brix
F-N
玄米千粒重
-0.06
+0.69**
+0.19**
+0.61**
-0.36
+0.25*
+0.05
心白発現率
-0.17
+0.77**
-0.10**
+0.83**
-0.14
+0.30*
+0.21
心白率
-0.17
+0.77**
-0.05**
+0.80**
-0.23
+0.36*
+0.21
アミロース
+0.28
+0.35**
+0.14**
+0.29**
-0.18
-0.53*
+0.19
タンパク質
-0.17
-0.39**
-0.66**
-0.06**
+0.17
最高粘度
-0.16
-0.64**
-0.26**
-0.52**
+0.12
+0.34*
-0.23
最低粘度
+0.18
*0.47**
-0.15**
-0.41**
+0.12
+0.12*
+0.12
ブレークダウン
-0.41
-0.32**
-0.22**
-0.22**
+0.08
+0.35*
-0.41
セットバック
+0.31
+0.23**
+0.28**
+0.09**
-0.05
-0.48*
+0.37
-0.20*
+0.09
注)1.山田錦、はなかぐら、レイホウおよび育成系統(5系統)を2カ年とも供試。
2 . 心 白 発 現 率 : ( 心 白 発 現 粒 数 /全 粒 数 ) ×100。
3 . 心 白 率 : { (5×心 白 大 粒 数 +4×同 中 粒 数 +2×同 小 粒 数 )/(5×全 粒 数 )} ×100。
4 . 蒸 米 吸 水 率 : 39.2% 以 上 で 、 値 は 高 い ほ ど 好 ま し い 。
5 . 消 化 性 : Brix は 直 接 還 元 糖 を 表 し 、 値 は 高 い ほ ど 好 ま し い 。
6 . **、 *は 1 % 、 5 % 水 準 で 有 意 。
12
山田錦
Brix(%)
10
y=-0.4515x+19.238
r=-0.53*
△:平成14年産(r=-0.54ns)
▲:平成15年産(r=-0.67+)
8
6
18
(図5)
20
22
アミロース含有率(%)
24
ア ミ ロ ー ス 含 有 率 と 消 化 性 (Brix)と の 関 係
13
1―6
研究成果
開 発 し た 福 岡 オ リ ジ ナ ル 酒 造 用 米「 夢 一 献 」は 、多 収 で 、穂 い も ち 病 は“ 中 ”程 度 の 強 さ
で 、醸 造 適 性 が 優 れ る こ と が 明 ら か と な り 、平 成 15 年 10 月 に 種 苗 法 に 基 づ き 品 種 登 録 出 願
を行い、翌年 2 月に「夢一献」という品種名となった。
水稲育種現場での酒米品種の選抜において、酒造適性として重要な吸水性は玄米千粒重
や心白発現率を、消化性はアミロース含有率を調査することによって、選抜初期段階で簡
易に評価できる。ただし、生産力検定試験等の最終段階においては、酒造用原料米全 国統
一分析法に準じた吸水性、消化性等の評価が必要である。
1―7
今後の課題と取組
福岡オリジナル品種「夢一献」を使用した本格的な新しい純米酒や本醸造酒を開発し、
現在、酒造用一般米の主力品種である「レイホウ」、「ニシホマレ」、「ツクシホマレ」
等 ( 作 付 け 面 積 : 1,920ha) を 「 夢 一 献 」 に 切 り 替 え て 、 福 岡 の オ リ ジ ナ ル 性 を 打 ち 出 す 。
この際、「夢一献」の作付け拡大にあたっては、酒米生産地域において「夢一献」の計画
的な契約栽培を推進する。
参考文献・引用文献
1 ) 伊 藤 亮 司・呉 映 蘭 (2002)酒 造 業 に お け る 原 料 米 需 要 と 酒 米 産 地 の 販 売 対 応 .新 潟 大 学 農
学 部 研 究 報 告 54(2): 81-95.
2 ) 農 林 水 産 省 生 産 局 編 (2002)水 陸 稲 ・ 麦 類 ・ 大 豆 奨 励 品 種 特 性 表 .
3) 岡田正憲・西山壽・本村弘美・藤井啓史・今井隆典・甲斐俊二郎・和佐野喜久生・志
村 英 二 (1974)水 稲 新 品 種 “ レ イ ホ ウ ” に つ い て . 九 州 農 業 試 験 場 報 告 17(3): 293-313.
4 ) 酒 米 研 究 会 編 (1996)酒 造 用 原 料 米 統 一 分 析 法 .
5) 内山田博士・西山壽・橘高昭雄・轟篤・新村善弘・黒木雄幸・衛藤信男・上野貞一・
向 井 康 ・ 本 部 裕 朗 (1980)水 稲 新 品 種 “ ニ シ ホ マ レ ” に つ い て . 宮 崎 総 農 試 研 報 14: 45-57.
14
2.胚乳形質の特性評価による育種選抜の効率化
九州大学農学研究院
教授
佐藤
光
助教授
熊丸
敏広
2-1
胚乳形質の特性評価による育種選抜の効率化
2-2
プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ
お 米 ( 白 米 ) は 、 100g 中 に 糖 質 86.3g 、 タ ン パ ク 質 6.5g 、 脂 質 1g を 含 ん で お り 、 大
部分は糖質、即ち澱粉で、タンパク質や脂質は極めて尐ない。そのため、澱粉の特性がご
飯の食味や、お酒(日本酒)あるいは澱粉粉など米加工品の質を決める最も大きな因子と
考えられているが、タンパク質や脂質も量は尐ないものの、風味や触感に影響を与えるこ
とが指摘されている。しかし、最近の研究からお米の澱粉やタンパク質は性質の異なる複
数の分子から構成されることが明らかとなり、それぞれの分子の特性や量比、あるいはそ
れらのお米の中の分布がご飯やお酒の味や風味に大きく影響することが次第に明らかにな
ってきた。
日本酒は美味しくて日本料理には良く合い、私達の生活には馴染みの深いものである。
しかし、吟醸酒をはじめ、純米酒、本醸造酒などの高品質のお酒は美味しさは誰もが認め
るところであるが価格が高く、この点の改善が求められている。日本酒はお米を原料とし
て 作 ら れ る が 、 高 品 質 の 日 本 酒 の 製 造 コ ス ト に 占 め る 原 料 米 の 比 率 は 60〜 70% に も な り 、
従って、美味しくてかつ飲みやすい日本酒の供給には、安価でかつ酒造適正の高い原料米
の開発が不可欠と考えられる。
酒造りに適した米は酒造好適米と呼ばれるが、一般米とは異なる特性を有し、
・大粒、軟質である
・吸水性がよい
・蒸米が外硬内軟となり、手触りに弾力がある
・麹菌の破精込みが良い
・溶解性、糖化性が良い
・蛋白質が尐ない
・酒質が良い
等 が 挙 げ ら れ て い る 。 上 述 の よ う に 、 お 米 は 、 澱 粉 ( 80% ) 、 蛋 白 質 ( 8% ) 、 脂 質 ( 3
%)を含み、さらに、これらの成分は複数の分子から構成されている。しかし、酒造好適
米に挙げられた形質がどの様なお米の成分と結びついているのか、関与する遺伝子はどん
なものか等についてはあまりよく判っていないのが実情である。さらに、新しい品種の育
成 ( 育 種 ) に は 、 一 般 に 8〜 10 年 と い っ た 長 年 月 を 要 す る 。 従 っ て 、 高 品 質 で 収 量 性 が 高
い酒造好適米の育成を効率的に行うためには、酒造適性に関係した形質の要因(遺伝子)
を明らかにし、簡便に解析出来る手法の開発が求められている。
15
2-3 目的と目標
研究開発目標
・酒造適性と胚乳形質の関係解明
・優良な酒造、栽培特性を有する系統の品質評価
本研究では酒造好適米の簡易・迅速選抜のための基礎的知見を得ることを目的に、九州
大学が保有する酒造適性に関連があると予測される胚乳形質(澱粉及びタンパク質)が変
異した系統及び福岡県農業総合試験場が育成した有望系統を用いて、酒造適 性測定データ
を基に酒造適性に係わる胚乳形質の特性解析並びに遺伝学的解析を行い、新たな酒造適性
関連形質の探索を行った。
2-4
実験結果
2-4-1
山田錦の心白性の組織学的観察
「山田錦」の白米透明部分の胚乳透明部分の胚乳澱粉粒は角張って密に胚乳細胞内に配列
していたが、心白部の胚乳澱粉粒は丸く、胚乳細胞は壊れて、つまり方は粗であった。さ
ら に 一 部 は ア ミ ラ ー ゼ 分 解 と 思 わ れ る 形 状 も 見 出 さ れ た 。こ れ ら の こ と か ら 、「 山 田 錦 」の
心白性は、澱粉粒の未充実により形成されたとするより、澱粉蓄積後にアミラーゼの影響
で澱粉粒が分解されたことによって形成されたものと推察される。
2-4-2
○
「山田錦」の澱粉特性
アミロース特性
胚乳澱粉中のアミロース含有率は、蒸し米の粘性・保水性と密接に関係する。定法に従
っ て 胚 乳 澱 粉 を 1M 水 酸 化 ナ ト リ ウ ム で 溶 解 、1M 酢 酸 で 中 和 後 、ヨ ウ 素 呈 色 比 色 法 に よ り
ア ミ ロ ー ス 含 有 率 を 推 定 し た 。「 山 田 錦 」と 食 用 米(「 金 单 風 」・「 台 中 65 号 」 )を 比 較
したところ、見かけのアミロース含有率は「山田錦」が有意に高かった(図 1)。このこ
とは、「山田錦」は保水性や粘性が低いことを示唆するものと考えられる。
1
0.9
山田錦
台中65号
金南風
吸光度
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
440
480
520
560
600
640
680
720
波 長
波長
(図1)
胚乳澱粉のヨウ素複合体のスペクトラム
16
一 方 、 ア ミ ロ ー ス は 、 D-グ ル コ ー ス が α -1,4 結 合 で 直 鎖 状 に 結 合 し た 分 子 で 、 通 常 ラ セ
ン構造を有する。アミロースはこのラセン構造のため、その分子内に種々の他の分子を包
接できる包接化合物である(図2)。植物澱粉はリン脂質を含むことが知られているが、
米 澱 粉 中 の ア ミ ロ ー ス の 約 50% は リ ン 脂 質 を 包 接 す る と の 報 告 も あ る ( 竹 田 、 2003) 。 ア
ミロース含量と酒米の吸水率とは貟の相関があり、アミロース含量が高いほど吸水率は低
く な る( 荒 巻 ら 、2000)。一 方 、米 澱 粉 中 の ア ミ ロ ー ス 含 有 率 は 搗 精 歩 合 に よ っ て 異 な り 、
中心部の澱粉はアミロース含量が高いとの報告もある。しかし、搗精にともなう吸水率の
低下は認められず、吸水率の低下はアミロース以外の要因も考えられている。そこで、搗
精に伴うアミロース含有率について検討した。
(図2)
澱 粉 -リ ン 脂 質 包 接 化 合 物 の 模 式 図
ア ミ ロ ー ス の 生 合 成 は 澱 粉 粒 結 合 型 澱 粉 合 成 酵 素( GBSS : Granule Bound Starch Synthase 、
Wx タ ン パ ク 質 と も 呼 ば れ る )酵 素 が 主 要 な 役 割 を 果 た す こ と が 知 ら れ て い る 。登 熟 に 伴 う
GBSS 発 現 量 を ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト 法 に よ り 調 べ た と こ ろ 、 登 熟 に 伴 っ て 次 第 に 増 加 し た
(図3)。このことは、アミロースは登熟後期に活発に合成されることを示しており、白
米の内層部より外層部の澱粉ではアミロースが多くなると考えられる。
(図3)
登熟に伴う種子中のタンパク質の発現
次に、粒内におけるアミロースの分布を明らかにする目的で、搗精に伴うアミロース含
量 の 変 化 を 、 脱 脂 澱 粉 及 び 非 脱 脂 澱 粉 に つ い て 検 討 し た 。 水 稲 品 種 「 金 单 風 」 を 90、 80、
70、 60、 50、 35 に 搗 精 後 粉 砕 し 、 脱 脂 し た も の ( DF: エ タ ノ ー ル /超 音 波 破 砕 /1 時 間 振 盪
で 3 回 洗 浄 ) と 、 全 く 脱 脂 し な か っ た も の ( NDF) に つ い て 、 ア ル カ リ 糊 化 -ヨ ウ 素 呈 色 法
によって、アミロース含量を測定した。非脱脂系統では、搗精歩合が高まるに伴い見かけ
17
のアミロース含量が次第に増加した(表1A )。一方、脱脂系統では、逆に搗精歩合が高
まるに伴いアミロース含有率は次第に低下する傾向が認められた(表1B )。両手法から
推 察 し た 包 接 度 は 最 大 で 90% 搗 精 の 32% で 、搗 精 を 進 め る に 従 っ て 低 下 す る 傾 向 が 認 め ら
た(表1C)。アミロース合成酵素の発現量は登熟後期に活発になることから、アミロー
スは米粒の中心部より外層 部に多くなると思われる。脱脂澱粉のアミロースの分布もむし
ろ、登熟後期にアミロースが活発に合成されていることを示唆している。米澱粉中の脂質
は 、主 に リ ン 脂 質 の 形 で ア ミ ロ ー ス の ラ セ ン 構 造 中 に 包 接 化 合 物 と し て 存 在 す る( 図 2 )。
非脱脂澱粉の見かけのアミロース含量が中心部で高くなったことは、米(胚乳)の外層の
澱粉がより多くのリン脂質を包摂するため、見かけのアミロース含量が低下したと考えら
れる。
脂 質 は 蛋 白 質 と 共 に 、加 工 澱 粉 の 風 味 や 香 り に 大 き な 影 響 を 及 ぼ す こ と が 知 ら れ て い る 。
一方、酒米の酒造適性の指標である吸水率とアミロース含量とは貟の相関があり、アミロ
ー ス 含 量 が 高 い ほ ど 吸 水 率 は 低 く な る( 荒 巻 ら 、2004a)。し か し 、米 澱 粉 中 の ア ミ ロ ー ス
含 有 率 は 搗 精 歩 合 に よ っ て 異 な り 、中 心 部 の 澱 粉 は ア ミ ロ ー ス 含 量 が 高 い と の 報 告 も あ る 。
さらに、搗精にともなう吸水率の低下は認められず、吸水率の低下はアミロース以外の要
因 も 考 え ら れ て い る 。玄 米 中 の 無 機 金 属 類 は 、Ca や K は 、精 米 中 に は 殆 ど 認 め ら れ な い が 、
P は 搗 精 度 と 共 に 減 尐 す る 。 上 述 の よ う に 、 ア ミ ロ ー ス 合 成 酵 素 GBSS は 登 熟 後 期 に な る
に従って発現量が増大することから、アミロース含有率も登熟後期 の澱粉で、即ち、外層
部の澱粉で高くなることが考えられる。そこで、「山田錦」の搗精に伴うアミロース含有
率 に つ い て 検 討 し た 。02 年 産 水 稲 品 種「 金 单 風 」を 90、80、70、60、50、35%( 図 4 )に 、
「 山 田 錦 」 ( 岡 山 産 ) を 68、 60、 44、 40、 37% に そ れ ぞ れ 搗 精 後 、 粉 砕 し 、 脱 脂 し た も の
( DF: メ タ ノ ー ル /乳 鉢 ・ 超 音 波 破 砕 /1 時 間 振 盪 で 3 回 洗 浄 ) と 、 全 く 脱 脂 し な か っ た も
の ( NDF) に つ い て 、 ア ル カ リ 糊 化 -ヨ ウ 素 呈 色 法 に よ っ て 、 ア ミ ロ ー ス 含 量 を 測 定 し た 。
「金单風」の非脱脂系統では、前回同様搗精歩合が高まるに伴い 見かけのアミロース含量
が次第に増加した(図5)。一方、脱脂系統では、逆に搗精歩合が高まるに伴いアミロー
ス含有率はやや低下する傾向が認められた(図5)。一方、「山田錦」では「金单風」に
比べ元々アミロース含有率が高く、かつ、搗精に伴う変化も尐なかった(図5)。
18
100%
(玄米)
90%
80%
(図4)
70%
60%
50%
35%
金单風の搗精した米粒
最 大 吸 収 波 長 ( nm)
・ナ・・・z・・・g・キ
nm )
(
600
580
金南風・脱脂
山田錦・脱脂
金南風・非脱脂
山田錦・非脱脂
560
540
100 90
80 70
60 50
35
搗精歩合 (%)
(図5)
金 单 風 及 び 山 田 錦 の 澱 粉 -ヨ ウ 素 複 合 体 の 最 大 吸 収 波 長
「金单風」では、非脱脂澱粉は搗精度が高まるに従い見かけのアミロース含量が高まる
が、脱脂澱粉では逆に内層部の澱粉でアミロースが減尐する傾向が認められ、上 述の結果
を確認した。このことから、アミロース含有率は外層部の澱粉で高くなるが、その多くは
脂質を包接していることが示された。一方、「山田錦」では搗精に伴う変化はあまり認め
られず、かつ、全ての搗精範囲で見かけのアミロース含有率が「金单風」より高いこと、
GBSS 含 量 は 両 品 種 間 で 殆 ど 差 異 が 認 め ら れ な い こ と か ら 、 「 山 田 錦 」 の ア ミ ロ ー ス は 脂
質をあまり包摂していない可能性がある。脂質は、香りや風味に影響が大きいことから、
原料米の調整で搗精歩合を大きくすることにも関与している可能性も考えられる。
な お 、 水 稲 品 種 「 金 单 風 」 、 「 山 田 錦 」 及 び 「 台 中 65号 」 の 白 米 の 脂 質 組 成 に つ い て 、
今泉教授(九州大学農学研究院生物機能学専攻「栄養化学」講座)に分析を依頼し、リン
脂質、トリグリセリド及び植物ステロールについて分子種並びに含有率を測定した。分子
種に関しては品種間で大きな差異は認められなかった。しかし、それぞれの分子種につい
て量的な差異が認められた。今後さらに詳細に検討を進めたい。
○「山田錦」アミロペクチン分子の鎖長構造
ア ミ ロ ペ ク チ ン は 胚 乳 デ ン プ ン の 80%を 占 め 、 D-グ ル コ ー ス が α -1,4 結 合 で 直 鎖 結 合 し
た ア ミ ロ ー ス と は 異 な り 、 D-グ ル コ ー ス の α -1,4 短 鎖 が α -1,6 結 合 に よ り 分 岐 し た 構 造 を
有 し 、 ア ミ ロ ー ス の 10 倍 以 上 大 き い 分 子 量 を 有 す る グ ル コ ー ス ポ リ マ ー で あ る (澱 粉 科 学
の 事 典 、2003)。ア ミ ロ ペ ク チ ン 分 子 の 鎖 長 構 造 や 分 子 量 等 そ の 分 子 構 造 は 、澱 粉 の 粘 弾 性
やアミラーゼの消化性と密接に関係する。胚乳澱粉をイソアミラーゼで処理後、アミロペ
クチンの鎖長構造を分析したところ、「山田錦」のアミロペクチンは「金单風」・「台中
19
65 号 」に 比 べ DP24 以 下 の 短 鎖 が や や 多 く 、長 鎖 が 尐 な か っ た( 図 6 )。こ の 結 果 は 、「 山
田錦」のアミロペクチンは保水性が高く、アミラーゼで消化されやすいことを示唆してい
る 。「 山 田 錦 」澱 粉 の 尿 素 糊 化 特 性 は 対 照 品 種 と 顕 著 な 差 異 は 認 め ら れ な か っ た が 、4M 尿
素 で は 若 干 膨 潤 が 大 き く 、 5M 尿 素 で は 逆 に や や 低 く な る よ う な 傾 向 が 見 ら れ た ( 図 7 ) 。
Δ R e la ti ve P e ak A re a (% )
0.2
山
田
錦
-金
南
風
0.15
0.1
0.05
0
-0.05
-0.17 12 17 22 27 32 37 42 47 52
Δ R e la ti ve P e ak A re a (% )
この結果も、山田錦のアミロペクチンが一般米とは異なることを強く示唆している。
0.3
山
田
錦
-台
中
65号
0.2
0.1
0
-0.1
-0.27 12 17 22 27 32 37 42 47 52
DP
(図6)
DP
山田錦と対照品種のアミロペクチン鎖長分布の差スペクトル
金
南
風
山
田
錦
0
1
2
(図7)
2-4-3
○
3
4
5
尿
素
濃
度
6
7
8
9
山田錦の尿素糊化特性
「山田錦」の貯蔵タンパク質特性
SDS-PAGE 分 析
種 子 貯 蔵 タ ン パ ク 質 の SDS-PAGE 分 析 を 行 っ た と こ ろ 、 「 山 田 錦 」 は Cysteine 含 量 の 高
い 16・ 14・ 10k D の 各 プ ロ ラ ミ ン ( 高 含 硫 プ ロ ラ ミ ン ) が 有 意 に 尐 な か っ た ( 図 8 ) 。 ま
た 、プ ロ ラ ミ ン 分 子 の 組 成 も 異 な っ て い た( 図 9 )。酒 類 総 合 研 究 所 と の 共 同 研 究 の 結 果 、
高含硫プロラミン蓄積量を低下させた突然変異系統を用いて造った日本酒は吟醸香が高く
酒造適性が優れるが、逆に高含硫プロラミン蓄積量を多量に蓄積した突然変異系統を用い
た日本酒は概して評価が低かった。「山田錦」のプロラミン特性も、風味や味、香りに大
きく影響することが考えられる。
20
-
(kD)
Glutelin
precursor
57
Glutelin
 subunit
40
26
20
。
。
16
14
13
Globulin
Glutelin
 subunit
Prolamin
+
( 図 8 ) 山 田 錦 の SDS-PAGE 分 析
○
(図9)山田錦プロラミンの等電点電気泳動分析
醸造中の米のタンパク質組成の変化
醸造日数が進むにつれて、グルテリンは減尐、プロラミンは増加の傾向にあった(図 1
0)。一方、等電点電気泳動によって両蛋白分子の消化特性を調査したが、電気泳動像が
明瞭ではなかったが、質的な変化は認められなかった。
グルテリン
プロラミン
Y
1
11
(図10)
2-4-4
Y 12
21
Y
醸造日数による山田錦の貯蔵タンパク質の変化
酒造適性に係わる胚乳形質の遺伝学的要因解析
酒造好的米「山田錦」は、粒大や心白性などの粒形質のみならず、アミロースやアミロ
ペクチンなどの澱粉特性あるいは貯蔵タンパク質などについて、一般米とは異なる特性を
有することが明らかとなった。しかし、これらの形質がどの様な遺伝子支配されるのか、
また、互いに独立したものであるかあるいは密接に関連するかについては明らかでない。
そこで「山田錦」の有する酒造適性に関わる遺伝要因の解明を目的として、多収・掛け米
品 種 「 ニ シ ホ マ レ 」 と の 交 雑 F2集 団 を 用 い 、 貯 蔵 タ ン パ ク 質 ( 低 含 硫 プ ロ ラ ミ ン ) 、 ア ミ
ロース含有率(包接脂質)、アミロペクチン鎖長構造に及ぼす遺伝的要因について解析を
行った。
○
アミロース含有率
「 山 田 錦 」は 非 脱 脂 澱 粉 の 見 か け の ア ミ ロ ー ス 含 有 率 で 高 ア ミ ロ ー ス 性( λ max:572nm)、
「 ニ シ ホ マ レ 」 は 低 ア ミ ロ ー ス 性 ( λ max: 562nm ) を 示 す 。 両 品 種 の 自 殖 F2集 団 に つ い
て 白 米 1 粒 /F2植 物 、95F2個 体 を 供 試 し 、非 脱 脂 種 子 澱 粉 の ア ミ ロ ー ス 含 有 率 を 調 査 し た と
21
こ ろ 、低 ア ミ ロ ー ス 型( λ max: 562nm±4nm、モ ー ド : 562nm)と 高 ア ミ ロ ー ス 性( λ max
: 571nm±4nm、 モ ー ド : 570nm) が 出 現 し 、 両 者 の 比 は 62低 ア ミ ロ ー ス 型 : 33高 ア ミ ロ ー
ス 性 と ほ ぼ 卖 因 子 分 離 に 適 合 す る 分 離 を 示 し た( 理 論 比:卖 因 子 务 性 ホ モ( 95/4=23.75)+
ヘ テ ロ 個 体 中 ( 95/2) の 卖 因 子 务 性 ホ モ 出 現 率 ( 1/4) ( =95/2*1/4=11.875)
=23.75+11.875=35.625) ( 表 2 ) 。 一 方 、 見 か け の GBSS量 に 分 離 は 認 め ら れ な か っ た 。 さ
らに、脱脂したニシホマレ種子澱粉のアミロース含有率は、「山田錦」のそれとほぼ同等
であった。これらのことは、「山田錦」の非脱脂澱粉の高アミロース性は比較的尐数の遺
伝 子 支 配 で あ る こ と 、 GBSS以 外 の 遺 伝 子 が 関 与 し て い る こ と が 強 く 示 唆 さ れ た 。 し か し 、
アミロース含有率は登熟期の温度条件に大きく左右されることが報告されている。昨年度
は登熟初期高温であったこと、さらに、後期に3度の台風来襲により、高温多湿条件での
登熟となり、種子の充実が著しく务化した。これらのことも上記結果に影響を与えた可能
性が有り、今後、検体数を増すと共に種子の登熟条件を考慮して確認を進めていく必要が
ある。
(表2)
山 田 錦 ×ニ シ ホ マ レ の 自 殖 F 2 植 物 に お け る 非 脱 脂 胚 乳 澱 粉 の
アミロース含有率の分離
F2種 子 に お け る 分 離
交配組み合わせ
山 田 錦 ×ニ シ ホ マ レ
○
λ max(561  4nm)
λ max(570  4nm)
62
33
合計
χ 2 (5:3)
95
0.31
心白性
F2集 団 に お け る 心 白 性 は 、 71(心 白 +心 白 ヘ テ ロ ): 24(正 常 型 )と ほ ぼ 卖 因 子 分 離 に 適 合 す
る分離を示した(表3)。また、同一個体内で明らかに心白と正常型の分離を示すものが
認められた。これらの結果から、「山田錦」の心白性は卖遺伝子支配であること、キセニ
アを示すと考えられたことから胚乳成分の蓄積に関わる遺伝子の関与が示唆された。
(表3)
山 田 錦 ×ニ シ ホ マ レ の 自 殖 F 2 植 物 に お け る 心 白 性 の 分 離
交配組み合わせ
山 田 錦 ×ニ シ ホ マ レ
○
F2植 物 に お け る 分 離
心白ホモ+心白へテロ
正常型
71
24
合計
χ 2 (3:1)
95
0.01
貯蔵タンパク質
「 山 田 錦 」は 、15kD高 含 硫 プ ロ ラ ミ ン (15kD High Sulfur Prolamin :15HSP) の 蓄 積 量 が 尐 な
い( 15HSP-L)。F2集 団 で の 15HSP-Lの 分 離 は 、野 生 型: 15HSP-L=87:8と な っ た( 表 4 )。
こ の こ と は 、 「 山 田 錦 」 の 15HSP-Lは 遺 伝 的 支 配 で あ る こ と 、 2 種 の 遺 伝 子 が 関 与 す る 可
能 性 を 示 し て い る 。 し か し 、 分 離 の ひ ず み を も た ら す 遺 伝 子 の 可 能 性 も あ り 、 今 後 、 F3集
団について検討を進める必要がある。
22
(表4)
山 田 錦 ×ニ シ ホ マ レ の 自 殖 F 2 植 物 に お け る 15kD高 含 硫 プ ロ ラ ミ ン
減 尐 型 (15HSP-L)の 分 離
交配組み合わせ
F2植 物 に お け る 分 離
野生型
15HSP-L
87
7
山 田 錦 ×ニ シ ホ マ レ
○
合計
χ 2 (15:1)
95
0.23
高アミロースと心白
F2に お け る 高 ア ミ ロ ー ス( 心 白 +心 白 へ テ ロ : N):低 ア ミ ロ ー ス( 心 白 +心 白 へ テ ロ : N)
の 分 離 は 、43: 13: 28: 6
で あ っ た 。従 っ て 、両 者 は 独 立 遺 伝 子 で あ り 、か つ 、連 鎖 関 係
も極めて低いと考えられた。
同 様 に 高 ア ミ ロ ー ス と 15HSP-L、心 白 性 と 15HSP-L間 も 分 離 が 認 め ら れ 、こ れ ら は 互 い に
独立の遺伝子支配であることが示された。
2-4-5
酒造適性と胚乳形質の関係解明
○育成品種「夢一献」の品質評価
低 タ ン パ ク 質 酒 米 品 種 「 夢 一 献 」 の タ ン パ ク 質 組 成 を 、 SDS-PAGE 及 び IE 法 に よ っ て 分
析した。高・低含硫プロラミン比率はほぼ同等で、構成ポリペプチドは一 般品種と大きな
差異は認められなかった。しかし、プロラミン相対蓄積量は低い傾向が認められた。この
ことが、「夢一献」の低タンパク質の要因の1つつと考えられた。
一 方 、非 脱 脂 澱 粉 の 見 か け の ア ミ ロ ー ス 含 有 率 は「 山 田 錦 」よ り 低 い も の の 、「 金 单 風 」
より高く、かつ、脱脂後の澱粉の見かけのアミロース含有率は3者とも同等であった。こ
のことは、「夢一献」のアミロースは包摂脂質量が尐ないことを示唆しており、この点が
本品種の酒造好適性の一因となったとも考えられる。
○新奇遺伝子資源の作製
水 稲 品 種 金 单 風 及 び 台 中 65号 の MNU受 精 卵 処 理 後 代 に つ い て 心 白 を 中 心 と し て 大 粒 系 統
な ど に つ い て 選 抜 を 行 い 、幾 つ か の 変 異 を 得 た 。さ ら に 、26kDグ ロ ブ リ ン や 15kD高 含 硫 プ
ロラミン分子の尐ない変異体等を選抜した。これらは、酒米育種の育種素材として活用が
期待されると共に、今後これらの解析を進めることにより、胚乳形質が酒造特性に及ぼす
効果が明らかになると期待される。
2-5
研究成果
・酒造適性と胚乳形質の関係解明
1.真のアミロース含有率の推定法の検討
「 山 田 錦 」 、 対 照 と し て 一 般 品 種 「 金 单 風 」 を 用 い た 。 精 米 を 粉 砕 後 、 米 澱 粉 20mg を
試 料 と し 、 1 ) 無 処 理 、 2 ) 沸 騰 エ タ ノ ー ル 10 分 処 理 、 3 ) 沸 騰 メ タ ノ ー ル 10 分 処 理 を
行 い 、処 理 澱 粉 を 1M 水 酸 化 ナ ト リ ウ ム( 24 時 間 、温 度 25℃ 前 後 )で 可 溶 化 し 、ヨ ウ 素 染
色法によってアミロース含有率を測定した。両品種澱粉とも脱脂処理によって青色度が高
まり、アミロースが脂質を包摂すること、また、メタノール処理が最も効率よく脱脂出来
ることが明らかとなった。
23
2.「山田錦」の搗精度とアミロース含有率、並びに脂質包接度の関係
非脱脂澱粉では、両品種とも搗精度が高くなるに伴い見かけのアミロース含有率が増大
した。即ち、粒の外層部より内層部で伴い見かけのアミロース含有率が高くなる傾向が認
められた。非脱脂澱粉では、「山田錦」は「金单風」に比べ全ての搗精歩合で見かけのア
ミロース含有率が高くなった。脱脂澱粉では両品種とも、搗精歩合による見かけのアミロ
ース量に差異は認められなかった。また、両品種間でもアミロース含有率に差異は認めら
れなかった。これらのことから、山田錦の見かけの高アミロース性はアミロースの包摂す
る脂質に依存する可能性が高いこと、脂質は日本酒の風味や圭織に大きく影響する可能性
があることから、今後この点の遺伝的解明が不可欠である。
3.「山田錦」のアミロペクチン鎖長構造およびタンパク質組成の解明
「山田錦」のアミロペクチン構造は、一般米より短鎖を多く含むこと、外層部より中心
部のアミロペクチンが短鎖を多く含むことが明らかとなった。短鎖の量は澱粉の粘弾性や
消化性と密接に関係することが指摘されており、酒造適性とアミロペクチン構造の関係解
明 は 今 後 の 課 題 の 1 つ で あ る 。 ま た 、 SDS-PAGE 及 び IEF 分 析 の 結 果 、 山 田 錦 の グ ル テ リ
ン組成は一般米と同一であった。しかし、プロラミン組成は著しく異なり、高含硫プロラ
ミンの蓄積量が有意に低かった。
4.「山田錦」の酒造適性関連形質の遺伝分析
「山田錦」の有する、粒大、心白性、高アミロース性、高含流プロラミン低蓄積性はい
ずれも1もしくは2遺伝子関与の全て独立の遺伝形質であると考えられた。
・優良な酒造、栽培特性を有する系統の品質評価
1. 育 成 系 統 の 品 質 評 価
低 タ ン パ ク 質 酒 米 品 種「 夢 一 献 」の タ ン パ ク 質 組 成 を 、SDS-PAGE 及 び IE 法 に よ っ て 分
析した。高・低含硫プロラミン比率はほぼ同等で、構成ポリペプチドは一般品種と大きな
差異は認められなかった。
2 . MNU処 理 に よ る 新 た な 育 種 素 材 の 開 発
水 稲 品 種 「 台 中 65号 」 の MNU受 精 卵 処 理 を 行 い 、 粒 大 や 心 白 性 、 高 吸 水 性 、 高 含 流 プ ロ
ラミン低蓄積性などに関する様々な変異を得た。
2-6
今後の対応
「 山 田 錦 」は デ ン プ ン と 貯 蔵 タ ン パ ク 質 の 組 成 と 構 造 の み な ら ず 、包 接 脂 質 量
も食用米とは異なっていることが明らかとなった。「山田錦」の酒造適性に関
わる構成は予想以上に複雑で、酒造適性の遺伝的要因の特定には「山田錦」と
一般品種の組換え自殖系統の解析が重要と考えられる。次年度は、作製した組
換え自殖系統を用いて酒造適性に関わる遺伝的要因の解析を進めると共に、酒
造好的米育成系統並びに突然変異米の成分特性の評価を行う。
参考文献
澱粉科学の事典
(朝倉書店)
不破英次・小巻利章・檜作
進・貝沼圭二編
荒巻功・菊永雪絵・吉井実華・奥田将生・小関卓也・小川雅広・熊丸敏博・佐藤
24
光・橋
爪 克 己 (2004) 心 白 を 持 つ 胚 乳 変 異 体 米 の 構 造 観 察 と 酒 造 適 性 分 析 ( 第 1 報 )
協会誌
日本醸造
99 (2) : 134-144
荒巻功・神田涼子・菊永雪絵・吉井実華・岩田博・奥田将生・小関卓也・小川雅広・熊丸
敏博・佐藤
( 第 2報 )
光 ・ 橋 爪 克 己 (2004)
日本醸造協会誌
心白を持つ胚乳変異体米の構造観察と酒造適性分析
99 (3) : 189-201
25
3.福岡オリジナルソフト清酒用酵母の開発
福岡県工業技術センター生物食品研究所
3―1
研究員
大場
孝宏
主任技師
黒田
理恵子
主任技師
上田
京子
ソフト清酒用酵母に関する研究開発
清酒の消費量は消費者ニーズの多様化や清酒消費者の高齢化等の要因から毎年減尐して
おり
1)
、復権への展望が提案されている
2)
。その提案の中で、既存の清酒と多様化清酒の
棲み分けが必要であり、多様化清酒では今までになかった全く新しい味わいが必要である
とし、それをアルコール度数が低いソフト清酒に求めている。このような背景から、我々
はソフト清酒酵母製造に用いる清酒酵母を開発することとした。
3―2
プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ
福岡オリジナルソフト清酒開発に必要な「酒米」と「酵母」のうち、「酵母」について
福岡オリジナル清酒酵母の開発を行った。すでに取得していたさわやかな酸味を有するリ
ンゴ酸を多く生産するリンゴ酸高生産酵母について、ソフト清酒の製造試験を行うことで
実用性を証明し、そのリンゴ酸高生産酵母の香気成分改良株の取得に取り組んだ。また福
岡のイメージを有する花や果実などからの清酒酵母分離に取り組んだ。
3―3
目的と目標
近年若い年代層や女性への消費量の拡大を図るためアルコール度数が低い“ソフトな”
清酒の開発が注目され、一部は商品化されている。製造法は「低 アルコール清酒醸造型」
か「原酒加水型」に大別される
3)
。「低アルコール清酒醸造型」はもろみでのアルコール
生 成 を 低 く 抑 え 、低 い ア ル コ ー ル 分 の ま ま 製 成 し て 製 品 と す る 方 法 で あ る 。し か し な が ら 、
特殊な製造法によらなければならない場合やオフフレーバーの生成が懸念される場合な
ど、一般的な方法とはいえない。一方、「原酒加水型」では比較的濃醇な清酒を製造し、
それを目的のアルコール度数まで加水する方法である。しかし、水っぽさやもの足りなさ
などの指摘を受ける欠点があり、原酒の成分がもっとも重要なポイントとなる。
そこで、我々はさわやかな酸味を有するリンゴ酸に注目し、リンゴ酸を多く含むソフ
ト清酒製造に適したリンゴ酸高生産性酵母の開発を行うこととした。既に取得していたリ
ン ゴ 酸 高 生 産 酵 母 24-2 株 に つ い て 実 験 室 レ ベ ル で の ソ フ ト 清 酒 醸 造 試 験 や 実 規 模 の ソ フ
ト 清 酒 醸 造 試 験 を 行 う こ と で 実 用 性 を 証 明 す る こ と 、さ ら に リ ン ゴ 酸 高 生 産 酵 母 24-2 株 の
香気成分生産性の改良にも取り組むこととした。
さらに差別化商品として自然界、特に花から分離した清酒酵母で製造した清酒が開発さ
れている。このような背景から、我々はもう一つの目標として自然界から清酒酵母を分 離
することとした。
26
3―4
実験方法及び実験条件
3-4-1
リンゴ酸高生産酵母24-2株の酢酸イソアミル高生産株の取得
4)
24-2株の酢酸イソアミル高生産株の取得は、自然突然変異したトリフルオロロイシ
ン 耐 性 株 を 分 離 す る 方 法 で 行 っ た 。具 体 的 に は 、ト リ フ ル オ ロ ロ イ シ ン を 含 有 す る Yeast
Nitrogen Base 培 地 に 、約 1 0 7 個 の 2 4 - 2 株 一 夜 静 置 培 養 菌 を 塗 沫 し 、3 0 ℃ で 5 日 培
養した。そこで生育してきたコロニーを自然変異トリフルオロロイシン耐性株として卖離
した。卖離した株について、後述の発酵試験や清酒の小仕込試験を行い、24-2株の酢
酸イソアミル高生産株を選抜した。
3-4-2
自然界からの清酒酵母分離
5)
自然界からサンプリングした花や果実、果菜から滅菌水を用いて付着していると考えら
れ る 微 生 物 を 採 取 し た 。 採 取 菌 液 を 使 用 培 地 96 ウ ェ ル プ レ ー ト に 分 注 し た 麹 汁 培 地 ( pH
4 、ボ ー メ 7 )に 接 種 し 、嫌 気 培 養 を 2 5 ℃ で 2 日 間 、好 気 培 養 を 2 5 ℃ で 2 日 間 行 っ た 。
特によく増殖しているウェルを顕微鏡観察し、形態的に出芽酵母であるものを確認した。
このウェルより白金耳で画線し、2日間培養後、酵母様コロニーが出てきたものにつ いて
釣菌した。その後、発酵試験で選抜を行い、 清酒の小仕込試験を繰り返すことで馴養を行
った。
3-4-3
発酵試験
供 試 菌 株 一 白 金 耳 を 麹 汁 培 地 ( 5ml / 試 験 管 、 Be 10) に 植 菌 し 、 20℃ 、 10 日 間 静 置 培
養を行なった。その後遠心により除菌を行ない、上清を香気成分の定量あるいは有機酸分
析に用いた。
3-4-4
香気成分の定量
イ ソ ア ミ ル ア ル コ ー ル 、酢 酸 イ ソ ア ミ ル 、イ ソ ブ タ ノ ー ル な ど の 低 沸 点 成 分 は 、ヘ ッ ド
スペース法により、またβ-フェネチルアルコールは、直接注入法でいずれもガスクロマ
ト グ ラ フ ィ ー で 検 出 を 行 な っ た 。 内 部 標 準 と し て 、 ア ル コ ー ル に は n-ア ミ ル ア ル コ ー ル 、
エステルにはカプロン酸メチルを用いた。
3-4-5 清酒の小仕込試験
6 ) 、 7)
通 常 の 清 酒 小 仕 込 試 験 に つ い て 、 表 1 に 示 す よ う に 仕 込 配 合 は 総 米 300g、 麹 歩 合 20%、
汲 水 歩 合 140%で 行 っ た 。麹 米 に は 乾 燥 麹( 徳 島 精 工( 株 )製 1-60)を 使 用 し 、掛 米 に は α
化 米 ( セ ブ ン ラ イ ス 社 製 ) を 用 い た 。 供 試 酵 母 は 麹 エ キ ス ( ボ ー メ 7) 10ml に 酵 母 を 植 菌
し 、 30℃ 、 2 日 間 培 養 後 、 酒 母 と し て 使 用 し た 。 添 仕 込 、 踊 の 温 度 は 12℃ 、 仲 及 び 留 仕 込
は そ れ ぞ れ 9℃ 、 及 び 7℃ で 行 い 、 1 日 あ た り 1℃ 温 度 を 上 昇 さ せ て 最 高 温 度 を 13℃ と し 、
そ の 後 13℃ 、一 定 で 発 酵 行 っ た 。留 添 後 、炭 酸 ガ ス 減 量 や ピ ル ビ ン 酸 量 を 指 標 に 上 槽 日 を
決 定 し た 。 上 槽 は 5、 000g で 15 分 間 遠 心 分 離 に よ り 行 っ た 。
27
(表1)
通常の清酒小仕込試験の仕込配合
初添
仲添
留添
合計
総 米 (g)
65
75
160
300
掛 米 (g)
30
65
145
240
麹 米 (g)
35
10
15
60
汲 水 (ml)
90
111.5
277.5
488.5
乳 酸 (ml)
0.3
また、酒母タイプの清酒小仕込試験については仕込配合は表2 に示す配合で行った。供
試 酵 母 は 麹 エ キ ス ( ボ ー メ 7) 10ml に 酵 母 を 植 菌 し 、 30℃ 、 2 日 間 培 養 後 、 添 加 し 、 温 度
は 22℃ 一 定 で 発 酵 を 行 っ た 。
(表2)
酒母タイプの清酒小仕込試験の仕込配合
酒母
3-4-6
総米(g)
300
掛米(g)
200
麹米(g)
100
汲水(ml)
600
培養酵母(ml)
4
乳酸(ml)
3
製成酒の一般成分分析
製 成 酒 の 一 般 成 分 分 析 は 、 国 税 庁 所 定 分 析 法 ( 第 四 回 改 正 ) 8)に 従 っ た 。
3-4-7
製成酒の有機酸分析
製成酒の有機酸分析は、高速液体クロマトグラフィー(島津有機酸分析システム、使用
カ ラ ム : Shim-pack SCR-102H) で 行 っ た 。
3―5
実験結果
3―5―1
リ ン ゴ 酸 高 生 産 性 株 24-2 株 の 実 用 性 評 価
リ ン ゴ 酸 高 生 産 酵 母 24-2 の 分 離 経 過 に つ い て 以 下 に 述 べ る 。 平 成 12 酒 造 年 度 に お い て
福 岡 県 内 酒 造 メ ー カ ー の 清 酒 も ろ み か ら 分 離 し た 菌 株 314 株 に つ い て 、 YM-10 培 地 及 び 麹
エ キ ス 培 地 で の 発 酵 試 験 に よ る 選 抜 を 行 っ た 。 そ の 中 で K-9 に 比 べ 約 1.7 倍 の リ ン ゴ 酸 生
産 量 の K-9 由 来 と 思 わ れ る リ ン ゴ 酸 高 生 産 性 株 24-2 株 を 分 離 し た ( 平 成 13 年 7 月 ) 。 さ
ら に 分 離 株 24-2 及 び K-9 を 用 い た 清 酒 小 仕 込 試 験 を 行 っ た 結 果 、24-2 が K-9 に 比 べ て 2.2
倍のリンゴ酸を生産する点以外の差は見られなかった。このように実験室レベルでの清酒
醸 造 試 験 で リ ン ゴ 酸 高 生 産 性 が 確 認 さ れ た こ と で 実 用 化 の 目 処 が 立 っ た( 平 成 14 年 3 月 )。
本 研 究 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト に お い て 、リ ン ゴ 酸 高 生 産 性 株 24-2 株 を 用 い て 木 曽 ら が 提 案 す る
ソフト清酒醸造法
7)
に従い、醸造試験を行った。できた製成酒は両方ともアルコール濃度
約 15.5%で あ り 、木 曽 ら の 提 案 に し た が っ て ア ル コ ー ル 濃 度 12%に な る よ う に 仕 込 水 で 希 釈
28
を行った。成分分析結果を(表3)に示す。
(表3)
ふ く お か 夢 酵 母 で 製 造 し た 清 酒 の 成 分 ( ア ル コ ー ル 濃 度 12%に 希 釈 後 )
酵母名
ふくおか夢酵母
K-9
アルコール(%)
12.0
12.0
日本酒度
-40
-41
酸度
3.6
2.9
アミノ酸 度
2.2
2.2
リンゴ酸 (g/ml)
927
370
コハク酸 (g/ml)
542
542
乳 酸 (g/ml)
771
771
酢 酸 (g/ml)
122
290
専 門 パ ネ ラ ー 8 名 に よ り 官 能 検 査 を 行 っ た 。そ の 結 果 24-2 使 用 の 清 酒 は K-9 の 使 用 清 酒
に 比 べ て 、「 爽 や か さ 」や「 サ ッ パ リ 感 」が あ り 、優 れ て い る と い う 意 見 が 大 半 を 占 め た 。
そ の 他 の コ メ ン ト に は 、 以 下 の よ う な も の が あ っ た 。 「 K-9 の 清 酒 は や や 甘 さ が 感 じ ら れ
る が 、 24-2 の 清 酒 は 甘 さ と 酸 味 の バ ラ ン ス が と れ て い る 」 、 「 K-9 の 清 酒 は 従 来 の 低 ア ル
コ ー ル 清 酒 を 連 想 す る が 、 24-2 の 清 酒 は ジ ュ ー ス 感 覚 で 飲 め る 新 し い タ イ プ の 清 酒 で あ
る 」。24-2 を 用 い た 清 酒 は 、甘 さ と 乳 酸 が 味 の 中 心 で あ る 従 来 の 低 ア ル コ ー ル 清 酒 と は 異
なり、甘さとリンゴ酸に起因する酸味のバランスがとれた ジュース感覚で飲める低アルコ
ー ル 清 酒 と な っ た 。以 上 の 結 果 か ら 、平 成 15 年 6 月 特 許 出 願 を 行 い 、平 成 16 年 9 月 に「 ふ
くおか夢酵母」と命名した。ふくおか夢酵母の特性は(表1)のように、親株の協会9号
酵母と比べて、リンゴ酸を2倍多く生産し、酢酸を半分しか生産しない。アルコール、香
り成分、コハク酸・乳酸などの有機酸の生産量は同等である。
3―5―2
リンゴ酸高生産酵母24-2株の香気成分生産性の増強
当研究所で卖離されたリンゴ酸高生産酵母24-2株は親 株である9号に比べて香りに
関して官能的にやや务る。この欠点を解消するために香気成分の生産性を増強した株の分
離に取り組んだ。実験方法に述べた方法に従ってトリフルオロロイシン耐性株を100株
取得した。ガスクロマトグラフィーによる香気成分の分析結果から、24-2株よりも酢
酸 イ ソ ア ミ ル を 1.5 倍 以 上 生 産 し て い る 株 を 2 2 株 選 抜 し た 。 再 度 麹 汁 に よ る 発 酵 試 験 と
香気成分の分析を行い、15株に選抜した。
これら15株について総米300gの系で清酒の小仕込試験を行い、酢酸イソアミルの
生 産 性 を 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 No.1-4、 No.1-23、 No.3-7、 No.2-74、 No.2-76 の 5 株 を 酢
酸イソアミル高生産株として選抜した。
選 抜 し た 5 株 に つ い て 、リ ン ゴ 酸 生 産 能 や 酢 酸 イ ソ ア ミ ル 生 産 能 な ど 特 性 の 安 定 性 を 確
認 す る た め に ス ラ ン ト で 継 代 を 4 回 繰 り 返 し 、麹 汁 培 地 を 用 い て 特 性( 香 気 成 分 ・ リ ン ゴ
酸 ・ ア ル コ ー ル 生 産 能 ) を 確 認 し た 。 No.2-76 以 外 は リ ン ゴ 酸 生 産 能 や 酢 酸 イ ソ ア ミ ル 生
産 能 な ど 特 性 を 保 持 し て い た 。4 株 に つ い て 、ス ラ ン ト で の 継 代 を 繰 り 返 し た 後 の 酵 母 を
使 用 し 、 乾 燥 麹 と α 化 米 を 用 い て 再 度 総 米 300g の 系 で 小 仕 込 み 試 験 を 行 っ た 。 4 株 の 発
29
酵 力 、リ ン ゴ 酸 生 産 能 、酢 酸 イ ソ ア ミ ル 生 産 能 及 び 官 能 試 験 の 結 果 も ふ ま え て 、香 気 成 分
か 改 良 さ れ た リ ン ゴ 酸 高 生 産 酵 母 と し て No.1-4 を 選 抜 し た 。
選 抜 し た No.1-4 株 に つ い て 、 福 岡 オ リ ジ ナ ル 酒 米 「 夢 一 献 」 の 麹 米 及 び 蒸 米 を 用 い て
清酒の小仕込試験を行った。対照として24— 2株、協会9号を用いた。(表4)に試験
区分をまとめた。
(表4) 試験区分
番号
酵母
1
No.1-4
2
3
24-2
4
5
K9
6
炭酸ガス減量
14
100
12
80
10
No.1-4
No.1-4
24-2
24-2
K9
K9
温度(℃)
60
40
20
0
8
6
温度(℃)
炭酸ガス減量(g)
120
4
2
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
日数(日)
(図1)
炭酸ガス減量の経日変化
( 図 1 )よ り 、No.1-4 株 の 発 酵 力 は 2 4 — 2 と 同 等 で あ る こ と が わ か っ た 。( 表 5 )に
製 成 酒 の 一 般 成 分 及 び グ ル コ ー ス 濃 度・エ タ ノ ー ル 濃 度 、( 表 6 )に 香 気 成 分 量 、( 表 7 )
に 有 機 酸 量 を 示 す 。 こ れ ら の 結 果 か ら No.1-4 の リ ン ゴ 酸 生 産 量 は 2 4 — 2 株 と 同 等 で 、
酢酸イソアミル生産量が24— 2株と比較して2倍程度多くなった。
(表5)
製成酒の一般成分及びグルコース濃度・エタノール濃度
番 号 サ ン プ ル 名 酸 度 ア ミ ノ 酸 度 日 本 酒 度 グルコース濃 度 (%) エタノール濃 度 (%)
1
No.1-4
2
3
24-2
4
5
6
K9
3.5
1.3
-2
0.85
15.45
3.5
1.4
-3
0.94
15.38
3.7
1.3
-2
0.96
15.45
3.7
1.5
+3
0.96
16.35
3.1
1.7
+6
0.73
16.36
3.2
1.6
+6
0.77
16.25
30
(表6)
製成酒の香気成分量
番 号 サ ン プ ル 名 イソブチルアルコール イソアミルアルコール 酢 酸 イソアミル Ave. 倍 率 * カプロン酸 エチル
1
No.1-4
2
3
24-2
4
5
K9
6
21.3
285.9
15.5
23.5
266.6
16.7
58.6
142.2
6.7
65.8
146.8
7.2
85.2
175.9
8.1
77.6
170.5
8.3
16.1
2.0
( 2.3)
7.0
0.8
1.5
1.6
1.5
1.5
8.2
1.4
1.5
卖 位 : ppm
* K9 に 対 す る 倍 率 ( 括 弧 内 は 2 4 — 2 に 対 す る 倍 率 )
(表7)
番号
1
サンプル名 ピルビン酸
No.1-4
2
3
24-2
4
5
6
K9
製成酒の有機酸量
リンゴ酸
182.8
802.2
211.6
848.1
233.9
671.0
224.2
754.1
196.4
374.9
189.6
373.9
Ave.
倍率*
コハク酸
酢酸
825.2
2.2
(1.2)
508.9
16.5
505.2
6.0
605.6
9.7
642.5
6.2
558.2
128.8
550.1
134.1
712.5
374.4
1.9
* K9 に 対 す る 倍 率 ( 括 弧 内 は 2 4 — 2 に 対 す る 倍 率 )
さ ら に 官 能 試 験 の 結 果 、No.1-4 に 関 し て 明 ら か に 香 り の 改 善 が 確 認 さ れ 、こ の 株 を リ ン
ゴ酸高生産酵母24-2株の香気成分改良株とした。
3―5―3
自然界からの清酒酵母分離
福岡県内の各地から採取したツツジ、コスモス、アジサイ、ミリオンベル、梅、しばざ
くら、レンゲ、チューリップ、あねもね、ノースポール、フリージア、たんぽぽ、ばら、
ひ ま わ り 、デ ン ド ロ ビ ュ ー ム 、花 ザ ク ロ か ら 酵 母 の 分 離 を 試 み た が 、ツ ツ ジ 、し ば ざ く ら 、
ばらのみ形態的に出芽酵母のようなものが分離できた。これらの菌株を用いて通常の清酒
小仕込試験を行ったが、発酵温度が低いためうまく製造できなかった。比較的高い品温経
過をとる酒母タイプの方法で再度、小仕込試験を行ったが、官能的によい清酒は製造でき
なかった。
福岡県特産品の果実・果菜として巨峰やあまおうを分離源として、清酒酵母分離を行っ
た。その結果、あまおうから分離した菌株、いちご7号を用いて酒母タイプで製造した清
酒は官能的に好ましい点が見られた。
小仕込試験を経験させることにより、発酵力の増強が認められることが経験的にわかっ
ているので、再度小仕込試験を行うことにした。小仕込試験を行う前に、現在保有してい
る菌株、いちご7号、いちご7号-1(いちご7号小仕込み由来株)のうち、低温増殖性
に優れている株を分離するため、YM培地に適度に希釈した菌株を播き、12℃で培養し
た。培養後、約4日目に小さいコロニーが観察された。1週間過ぎたのち、接種可能なサ
イズに成長した株をそれぞれ3株ずつ選択した。いちご7号由来の株をいちご7号-1、
31
7号-2、7号-3とし、いちご7号-1由来の株をいちご7号-1-1、いちご7号-
1-2、いちご7号-1-3とし、通常の小仕込試験を行った。
炭酸ガス減量
120.00
炭酸ガス重量(g)
100.00
いちご7-1
いちご7-1
いちご7-2
いちご7-2
いちご7-3
いちご7-3
いちご7-1-1
いちご7-1-1
いちご7-1-2
いちご7-1-2
いちご7-1-3
いちご7-1-3
80.00
60.00
40.00
20.00
0.00
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
留め後日数
(図2)炭酸ガス減量の経日変化
(表8)
製成酒の一般成分
酸度、アミノ酸度、日本酒度
番号
サンプル名
酸度
アミノ酸度
日本酒度
1
い ち ご 7-1
4.5
2.1
-36
2
い ち ご 7-1
4.3
2.0
-34
3
い ち ご 7-2
4.4
2.2
-36
4
い ち ご 7-2
4.3
2.1
-36
5
い ち ご 7-3
4.3
2.0
-38
6
い ち ご 7-3
4.4
2.1
-36
7
い ち ご 7-1-1
4.0
2.1
-28
8
い ち ご 7-1-1
4.0
2.0
-28
9
い ち ご 7-1-2
4.3
2.1
-34
10
い ち ご 7-1-2
4.2
2.1
-36
11
い ち ご 7-1-3
4.4
2.1
-36
12
い ち ご 7-1-3
4.2
2.2
-35
32
(表9)
製成酒の有機酸量
有機酸濃度(μg/ml)
番
サンプル名
リン酸
号
クエン
ピルビン
リンゴ
コハク
酸
酸
酸
酸
乳酸
ピログル
酢酸
総酸
タミン酸
1
い ち ご 7-1
548.54
113.05
320.36
235.80
477.08
643.29
677.72
75.36
3091.20
2
い ち ご 7-1
544.81
109.70
309.72
229.27
477.23
649.24
663.41
91.12
3074.49
3
い ち ご 7-2
559.39
110.45
319.44
212.74
504.52
661.30
692.57
117.63
3178.05
4
い ち ご 7-2
544.41
109.84
338.77
217.44
502.07
649.80
711.52
46.36
3120.20
5
い ち ご 7-3
538.28
109.40
305.84
210.48
508.94
637.85
677.67
87.77
3076.23
6
い ち ご 7-3
539.67
108.37
298.62
203.79
510.35
639.56
666.80
58.32
3025.48
7
い ち ご 7-1-1
553.15
104.30
152.75
224.27
448.48
671.31
498.54
81.07
2733.86
8
い ち ご 7-1-1
557.35
102.59
111.32
238.22
433.21
650.59
494.57
42.72
2630.57
9
い ち ご 7-1-2
564.14
107.83
285.84
231.25
446.63
644.71
582.70
72.46
2411.92
10
い ち ご 7-1-2
551.41
107.88
262.94
215.49
460.46
631.52
577.85
82.86
2890.41
11
い ち ご 7-1-3
549.87
106.50
253.03
207.74
446.16
637.59
584.47
81.49
2866.86
12
い ち ご 7-1-3
563.75
107.08
241.15
209.69
458.79
636.86
655.88
49.03
2922.22
(表10)
製成酒のグルコース濃度・エタノール濃度
番号
菌株名
グルコース濃 度 (%) エタノール濃 度 (%)
1
い ち ご 7-1
4.50
15.52
2
い ち ご 7-1
4.48
15.88
3
い ち ご 7-2
4.64
15.85
4
い ち ご 7-2
4.83
15.24
5
い ち ご 7-3
4.70
14.86
6
い ち ご 7-3
4.70
15.63
7
い ち ご 7-1-1
4.24
17.58
8
い ち ご 7-1-1
4.26
17.60
9
い ち ご 7-1-2
4.61
16.29
10
い ち ご 7-1-2
5.00
16.50
11
い ち ご 7-1-3
5.07
16.41
12
い ち ご 7-1-3
4.86
16.29
(図2)の炭酸ガス減量の経日変化からすべての株の発酵力はほぼ変わらないことがわか
った。また、(表8)より製成酒の一般成分にもほとんど差がないことがわかった。 (表
9)に示す製成酒の有機酸量や(表10)に示す製成酒のグルコース濃度・エタノール濃
度について、やや差はあるものの有意な差とは考えにくいものであった。官能評価を行っ
た と こ ろ 、 サ ン プ ル 番 号 1 ( い ち ご 7-1) 、 3 ( い ち ご 7-2) 、 1 1 ( い ち ご 7-1-3) の 評
価が高かった。したがって、これら3つのもろみから再度分離した菌株をあまおうから分
離 し た 酵 母 と し た 。こ れ ら 3 つ の 菌 株 に つ い て 、ビ オ メ リ ュ ー API
33
C
オ キ サ ノ グ ラ ム( 酵
母用糖資化性を利用した同定キット)を用いた属・種の同定を行ったところ、3つの菌株
と も Saccharomyces cerevisiae で あ っ た 。
3―6
研究成果
リ ン ゴ 酸 高 生 産 酵 母 24-2 株 に つ い て 実 験 室 レ ベ ル で の ソ フ ト 清 酒 醸 造 試 験 や 実 規 模 の
ソ フ ト 清 酒 醸 造 を 行 い 実 用 性 を 明 ら か に し た 。 24-2 株 は 、 親 株 の 協 会 9 号 酵 母 と 比 べ て 、
リンゴ酸を2倍多く生産し、酢酸を半分しか生産しない。アルコール、香り成分、コハク
酸・乳酸などの有機酸の生産量は同等であることから、ソフト清酒醸造用の酵母として優
れることが明らかとなった。このことから、特許出願を行い「ふくおか夢酵母」と命名さ
れた。
さ ら に 、リ ン ゴ 酸 高 生 産 酵 母 24-2 株 の 香 気 成 分 の 生 産 性 を 増 強 し た 株 の 分 離 に 取 り 組 ん
だ 。取 得 し た ト リ フ ル オ ロ ロ イ シ ン 耐 性 株 の 中 か ら 、24-2 株 と 同 等 の 発 酵 力 を 有 し 、リ ン
ゴ 酸 等 の 生 産 量 も 24-2 株 と 同 等 で 、 酢 酸 イ ソ ア ミ ル 生 産 量 が 24-2 株 と 比 較 し て 2 倍 程 度
多 く な っ た 株 、 No.1-4 を 取 得 し た 。
また、自然界からの清酒酵母分離に取り組み、福岡県特産品のあまおうから清酒酵母を
取得した。
3―7
今後の課題と取組
リ ン ゴ 酸 高 生 産 酵 母 24-2 株 の 香 気 成 分 改 善 株 、 No.1-4 に つ い て 実 規 模 で の ソ フ ト 清 酒
製造試験を行い、実用性を証明することを考えている。
またあまおうから分離した清酒酵母についてさらに清酒の小仕込試験による馴養を行
い、性質の改良を考えている。
参考文献・引用文献
1 ) 酒 の し お り :国 税 庁 課 税 部 酒 税 課 (平 成 1 6 年 )
2)
西 谷 尚 道 :醸 協 , 97,240 (2002)
3)
齋 藤 泰 夫 :醸 協 , 90,300 (1995)
4)
Ashida, S., Ichikawa, E., Suginami, K., and Imayasu, S., Isolat ion and
applicat ion of mutants producing sufficient isoamyl acetate, a sake flavor
component., Agric. Biol. Chem., 51, 2061-2065 (1987).
5)
柏木
享 :醸 協 , 97,2-6 (2002)
6)
難波
康 之 祐 :醸 協 , 73,789-792 (1978)
7)
木 曽 邦 明 :技 術 セ ミ ナ ー (ア ル コ ー ル 度 数 の 低 い 清 酒 ),日 本 酒 造 組 合 中 央 会 (平 成 1 5
年)
8)
注 解 編 集 委 員 会 編 : 第 四 回 改 正 国 税 庁 所 定 分 析 法 注 解 , 日 本 醸 造 協 会 (1993)
34
4.ソフト清酒醸造技術の開発
福岡県酒造組合
理事
4―1
鈴木正柯
ソフト清酒醸造技術の開発
近年、清酒業界の不振が続く中、今までになかった新しい味と酒質を有する清酒の開発
が望まれていた。とりわけ、清酒業界の不振を払拭するためには需要の確保が重要課題で
あ る こと から 、清 酒に 縁の 尐な かっ た 女性層や若年層にも好まれる 清酒と する ため 、 アル
コ ー ル 度 数 の 低 い ソ フ ト 清 酒 を 開 発 す る こ と と な っ た 。こ の よ う な 背 景 か ら 、酒 造 組 合 は 新
品種「夢一献」とリンゴ酸高生産性酵母「ふくおか夢酵母」を使用したソフト清酒醸造技
術を確立し、実際にソフト清酒を開発することとした。
4―2
プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ
酒造好適米である山田錦並みの酒造適性を有し、かつ栽培特性に優れた品種を原料とし
て、特徴ある風味を生成する酵母により「福岡オリジナル清酒」を開発する。特に、酒造
組合は、福岡県農業総合試験場が開発した新品種「夢一献」と、福岡県工業技術センター
が開発したリンゴ酸高生産性酵母「ふくおか夢酵母」を使用してソフト清酒醸造技術を確
立し、実際の蔵元でソフト清酒の商品開発を行った。
4―3
目的と目標
福 岡 県 は 昭 和 48 年 頃 の 最 盛 期 に は 約 120 の 蔵 元 が あ り 、兵 庫 、京 都 に 次 ぐ 清 酒 生 産 量 を
誇 り 、灘 や 伏 見 と 肩 を 並 べ る 三 大 酒 ど こ ろ の 一 つ で し た 。現 在 で も 70 の 蔵 元 が 歴 史 と 伝 統
に裏打ちされた良質な清酒を造り続けています。ところが、福岡には酒造りに欠かせない
酒造用米と清酒用酵母に関し、県のオリジナルなものが存在せず、他県で開発されたもの
を使用していました。そのため、県内酒造業界と酒造用米生産農家からは、県オリジナル
の酒造用米と清酒用酵母の開発が切望されていました。
と り わけ 、清 酒に 縁 の尐 なか った 女性層や若年層にも好まれる 清酒と す るた め、 アルコー
ル 度 数 の 低 い ソ フ ト 清 酒 を 開 発 す る こ と と な っ た 。こ の よ う な 背 景 か ら 、酒 造 組 合 は 新 品 種
「夢一献」とリンゴ酸高生産性酵母「ふくおか夢酵母」を使用したソフト清酒醸造技術を
確立し、実際の蔵元でソフト清酒の商品開発を行う。
【
研究開発目標
】
1
酒米有望株の酒造適性評価
2
酒造用米「夢一献」・リンゴ酸高生産性酵母「ふくおか夢酵母」を使用したソフト
清 酒 ( ア ル コ ー ル 分 10% 以 下 ) の 製 造
35
4―4
実験方法及び実験条件
4-4-1
1
「夢一献」の酒造適性評価
酒造適性評価(全国酒米統一分析法による)
4-4-2
「夢一献」・「ふくおか夢酵母」を使用したソフト清酒の大量仕込み
(1)
原 料 米:福岡県三潴郡三潴町(2 月 5 日より久留米市)産「夢一献」
(2)
酵
(3)
製造基準:純米清酒・アルコール分10%以下
(4)
一仕込量:60%精米歩合「夢一献」使用。総米300kg。
(5)
製 造 場:10場(蔵元)
母:福岡県工業技術センター生物食品研究所開発の「ふくおか夢酵母」
大賀酒造(株)
: 筑 紫 野 市 二 日 市 中 央 4-9-1
(株)喜多屋
: 八 女 市 大 字 本 町 374
(株)高橋商店
: 八 女 市 大 字 本 町 2-22-1
( 資 ) 後 藤 酒 造 場 : 八 女 郡 黒 木 町 大 字 黒 木 26
(株)篠崎
: 朝 倉 郡 朝 倉 町 大 字 比 良 松 185
千 年 乃 松 酒 造 ( 株 ) : 久 留 米 市 北 野 町 今 山 370-1
( 名 ) 山 口 酒 造 場 : 久 留 米 市 北 野 町 今 山 534-1
比 翼 鶴 酒 造 ( 株 ) : 久 留 米 市 城 島 町 内 野 466-1
4―5
目野酒造(株)
: 柳 川 市 三 橋 町 百 町 766
林酒造場
: 京 都 郡 犀 川 町 崎 山 992-2
実験結果
4-5-1
「夢一献」の酒造適性評価
①統一分析による酒造適性評価結果
酒 造 適 性 評 価 の 結 果 、「 夢 一 献 」は 砕 米 率 が 低 く 、 20 分 後 の 吸 水 率 が 山 田 錦 と 同 程 度
に 高 く 、 120 分 後 の 最 大 吸 水 率 が 高 く 、 優 れ る 。 酒 質 に 影 響 を 及 ぼ す 粗 タ ン パ ク 質 含 有 率
は低く、酒造好適米山田錦に近い特性を有し、酒造用米としての評価は高い(表1)。
(表1)
項
「夢一献」の酒造適性
目
夢一献
山田錦
レイホウ
千 粒 重 (g)
25.0
27.0
22.3
砕 米 率 (%)
9.3
7.3
10.9
吸 水 率 20 分 (%)
27.1
28.0
23.5
吸 水 率 120 分 (%)
30.1
28.5
28.7
6.0
6.1
6.8
粗 タ ン パ ク (%)
注)砕米率は数値が小さいほど精米時の砕けが尐ない。
吸 水 率 は 20 分 と 120 分 の 数 値 の 差 が 小 さ く 、120 分 の 数 値 が 大 き い ほ ど 消 化 性 が
良い。
粗タンパクは尐ないほど消化性が高く、清酒の着色、务化がしにくくなる。
36
②
仕込結果
1
仕込配合
高温糖化型
一次
中温速醸型
二次
計
一次
二次
計
総米(㎏)
210
90
300
総米(㎏)
150
150
300
蒸米(㎏)
140
90
230
蒸米(㎏)
100
100
200
(㎏)
50
50
100
420
汲水(ℓ )
300
270
570
2,100
乳 酸 ( ml)
1,800
麹
(㎏)
70
汲水(ℓ )
360
乳 酸 ( ml)
2,100
70
60
(図1)
麹
利き酒、試飲会のようす
37
1,800
4-5-2
「夢一献」・「ふくおか夢酵母」を使用したソフト清酒の大量仕込み
1)二段仕込みによるソフト清酒の製造
一般的には清酒は三段仕込みで行われる。しかしアルコールの生成が多 く製品とし
て出荷の際和水を行い、アルコール濃度を下げなければならない。それにより香味の
バランスのくずれがおきる。そこでソフト清酒は二段仕込みを行い、製品そのものの
ア ル コ ー ル 濃 度 を 10% 以 下 の も の と し た ( 図 2 ) 。
ふくおか
夢酵母
福岡の
蒸米
米
発酵
搾り
夢一献
精 米 60%
白米
一次仕込
二次仕込
ソ
フ
ト
清
酒
蒸米
麹
ソ
フ
ト
清
酒
水
(図2)ソフト清酒製造工程
2)
(1)
製成事績
検定成績
仕 込 (㎏ )
製 成 数 量 (ℓ )
純 Alc(ℓ )/白 米 t
粕歩合
大賀酒造(ゆめほたる)
300
588
194.0
44.2
喜多屋(あいのひめ)
540
1,869
207.7
1.8
高橋商店(あさきゆめ)
300
1,276
225.8
18.7
後藤酒造場(夢らさき)
300
724
132.7
52.0
篠崎(あめんぼう)
300
707
200.3
27.3
千 年 乃 松 酒 造 ( D-ONE)
120
259
127.3
60.8
山口酒造場(夢ばかり)
300
647
226.4
29.8
比翼鶴酒造(夢ひよく)
240
264
101.2
62.4
目野酒造(わた霞)
200
95.9
65.5
林酒造場(水月)
300
207.4
27.3
272
655
38
白 米 1t 当 た り の 純 ア ル コ ー ル 収 量 に バ ラ ツ キ が 見 ら れ る が 上 槽 ( 搾 り ) の 方 法 に よ
り 差 が 出 た も の と 考 え ら れ る 。粕 歩 合 20% 、純 ア ル コ ー ル 収 量 200ℓ 台 が 標 準 で あ ろ う 。
(2)
検定成分
日本酒度
(3)
アルコール%
酸
度
アミノ酸度
ゆめほたる
- 66.0
9.9
6.0
0.3
あいのひめ
- 49.0
6.0
4.4
2.1
あさきゆめ
- 58.0
9.9
5.2
1.2
夢らさき
- 84.0
5.5
3.6
0.7
あめんぼう
- 71.0
8.5
4.8
0.5
D-ONE
- 92.0
5.9
3.6
1.4
夢ばかり
- 62.0
9.9
5.7
1.1
夢ひよく
- 60.0
9.2
7.4
1.8
わた霞
- 80.0
7.0
5.9
1.8
水月
- 60.0
9.5
5.8
0.3
有 機 酸 組 成 (ppm)
リン酸
(ppm)
クエン酸
(ppm)
ピルビン酸
(ppm)
リンゴ酸
(ppm)
コハク酸
(ppm)
乳酸
(ppm)
酢酸
(ppm)
ゆめほたる
86.1
48.0
195.9
430.0
628.9
3073.2
43.5
あいのひめ
138.3
68.2
21.5
38.6
285.1
3812.8
248.3
あさきゆめ
271.1
68.7
265.8
630.4
744.3
2706.4
18.0
夢らさき
201.4
55.6
238.7
461.6
273.6
2562.3
128.3
82.3
43.3
167.3
629.5
617.6
2226.3
28.5
D-ONE
85.9
62.1
455.4
188.3
371.5
2165.0
101.9
夢ばかり
388.3
74.0
353.4
539.2
647.7
3543.4
12.5
夢ひよく
164.8
74.0
496.9
847.4
548.5
4023.8
44.1
わた霞
102.8
35.4
95.8
151.9
372.4
6122.5
135.6
水月
164.1
85.2
331.1
630.9
685.4
3113.9
54.0
あめんぼう
「ふくおか夢酵母」の特徴はリンゴ酸の生成が多く、酢酸の生成が尐ないことであ
る。今回製造されたソフト清酒もその特徴が良く出ているが、アルコール生成が7%
を越えないとその特徴が出にくいことがわかった。
39
(4)
容量・販売価格・成分
容 量 (ml)
日本酒度
Alc(%)
酸 度
アミノ酸度
ゆめほたる
300
578
- 66.0
9.9
6.0
0.3
あいのひめ
180
378
- 49.0
6.0
4.4
2.1
あさきゆめ
300
525
- 58.0
9.9
5.2
1.2
夢らさき
300
600
- 84.0
5.5
3.6
0.7
あめんぼう
500
840
- 71.0
8.5
4.8
0.5
500
1,365
- 92.0
5.9
3.6
1.4
300
840
夢ばかり
180
350
- 62.0
9.9
5.7
1.1
夢ひよく
300
525
- 60.0
9.2
7.4
1.8
わた霞
300
630
- 80.0
7.0
5.9
1.8
水月
300
550
- 60.0
9.5
5.8
0.3
D-ONE
(5)
価 格 (円 )
販 売 状 況 ( 発 売 開 始 平 成 17 年 2 月 23 日 )
容 量 (ml)
びん詰本数
出 荷 本 数 (4/30)
ゆめほたる
300
1,760
1,103
あいのひめ
180
1,904
1,770
あさきゆめ
300
2,166
2,166
夢らさき
300
2,328
1,600
あめんぼう
500
1,485
1,291
500
434
434
300
140
72
夢ばかり
180
3,813
2,382
夢ひよく
300
880
778
わた霞
300
1,126
712
水月
300
2,181
1,360
D-ONE
40
4―6
研究成果
① 二段仕込み技術開発
アルコール10%以下のソフト清酒が製造できる二段仕込み製造技術を考案し、確立し
ました。
②ソフト清酒の製品化
原料米「夢一献」とリンゴ酸高生産性酵母「ふくおか夢酵母」を使用し、二段仕込み技
術 開 発 に よ る ア ル コ ー ル 1 0 % 以 下 の ソ フ ト 清 酒 を 県 下 10 の 蔵 元 で 製 造 し 、製 品 化 し ま し
た。これらのソフト清酒は、リンゴ酸が多く、爽快で、サッパリした酸味と、甘さをもっ
た純米ソフト清酒になりました。開発したソフト清酒には、購入の際の目印になるように
福岡県工業技術センターインテリア研究所でデザインされた オリジナルタグがついていま
す。
ふ
く
お
か
の
米
ふ
く
お
か
の
米
ふ
く
お
か
夢
夢使 夢 酵
一用 一 母
献 献
(図3)
製品化したソフト清酒
(図4)
オリジナルタグ
( 大 き さ : 縦 横 約 3cm)
4-7
今後の課題と取組
福岡県は全国でもトップクラスの清酒生産量を誇っていた。しかし、これまで県独自
の 酒 造 用 米 と 清 酒 酵 母 が な く 、他 県 及 び 国 の 開 発 に よ る も の を 使 用 し て い が 、こ の た び 、
酒造用米「夢一献」と「ふくおか夢酵母」を使用したソフト清酒を開発しました。
ソフト清酒が市場にどの程度受け入れられるかは別として、目標を達成することはで
き ま し た 。 今 後 の 展 開 は PR に よ る と こ ろ が 大 き い と 考 え て い ま す 。
また、「福岡の酒」ブランドづくりのためには、純米酒や本醸造酒などの主要な一般
清酒の製造量や販売量を増やす必要がある。今後は純米酒や本醸造酒に「夢一献」を使
用していきたい。本醸造酒、純米酒の製造試験も同時に行ってきたが、十分期待ができ
る。
「 夢 一 献 」の 平 成 17 年 度 作 付 け は 3,000 俵 が 予 定 さ れ て い る が 、酒 造 組 合 員 の 希 望 は
4,000 俵 を 超 え て い る 。 18 年 度 は 9,000 俵 、 19 年 度 は 「 レ イ ホ ウ 」 ・ 「 ツ ク シ ホ マ レ 」
等と入れ替えが完了する予定である。
41
5.酒造用米「夢一献」の栽培適地の選定及び現地栽培技術の
確立
全国農業協同組合連合会福岡県本部
5―1
農畜産振興課長
村岡
潤一
農畜産振興課長
吉塚
孝
考査役
藤田
哲三
酒造用米「夢一献」の栽培適地の選定及び現地栽培技術の確立に関する研究開発
「県育 成酒米 品種を 用い た福岡 オリジ ナル 清 酒の開 発」事 業の中 で、 福岡オリジナルソ
フ ト 清 酒 を 開 発 す る こ と と な っ た 。こ の 課 題 の 中 で 、我 々 は 土 壌 の 化 学 性・物 理 性 評 価 に 基
づくソフト清酒用の酒造用米「夢一献」の栽培適地選定と現地栽培技術の確立に取り組む
こととした。
5―2
プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ
福岡オリジナルソフト清酒開発に必要な原料米としての良質な「酒米」を生産するため
に、福岡県内の主要な地域について酒造用米「夢一献」 の栽培適地選定と現地栽培技術の
確立を行った。
5―3
目的と目標
本県の酒造用一般米は、ニシホマレ、ツクシホマレ、レイホウの3品種であったが、清
酒消費量の減尐に伴い酒造用一般米の作付面積も年々減尐を辿ってきていた。これら酒造
用一般米の減尐が一因となり、主食用米「ヒノヒカリ」の作付面積が県内作付面積の約5
割まで増加してきており、産米の正常な集荷・販売が困難な状況となっていた。
このような状況のもと、現在の米の集荷は農業倉庫と共同乾燥調製施設で行なわれてい
る 。そ の 共 同 乾 燥 調 製 施 設 数 は 県 内 に 57 施 設 あ り 、全 国 2 位( 貯 蔵 能 力:全 国 1 位 )の 設
置数となっており、この大規模な施設の効率的運用が大きな課題となっていた。
さ ら に 、酒 造 業 界 の 不 振 が 続 く 中 、新 し い 福 岡 の 酒 米 を 育 て る こ と は 、県 内 農 家 の 意 識 高
揚と酒造業界の活気を盛り上げるには、非常に重要であることと思われた。
そこで、「夢一献」の生産が共同乾燥調製施設の荷受けの効率化と主食用米の需給調整
ができる こと、さ らには 県内農 家の意識 高揚 と酒造業 界の盛り 上がり を期待 し 、倒伏性・
収量性の優れた新品種「夢一献」の栽培適地探索と現地栽培技術の確立に取り組んだ。
5―4
実験方法及び実験条件
5-4-1
土壌の化学性,物理性評価による酒米適地の選定と現地栽培技術の確立
1)土壌分析
・ 平 成 14 年 度 の 土 壌 分 析 は 、4 J A 管 内 の 主 要 な 酒 米 生 産 地 に お い て 、水 稲 収 穫 後 に 20
点分析を行った。
42
・ 平 成 15 年 度 は 、 5 J A 管 内 に お い て 田 植 え 前 に 13 点 分 析 を 行 っ た 。
さ ら に 、 5 J A 管 内 に お い て 収 穫 後 に 22 点 分 析 を 行 っ た 。
5-4-2
酒造用米「夢一献」の現地栽培技術の確立
有望であった酒造用「夢一献」について、導入意欲の高い農業者の事前評価を受けると
ともに現地での栽培技術の確立を行う。明らかにする栽培技術は、酒質に関係する玄米中
のタンパク質含有率と収量性に影響する適切な穂肥の回数を明らかにすることである。
1)設置場所
三潴郡三潴町(担当指導機関名
单筑後地域農業改良普及センター)
2)供用品種及び設置面積
夢一献、穂肥1回区
3,600 ㎡
穂肥2回区
1,900 ㎡
3)栽培圃場の概要
ほ場の土性は、「細粒灰色低地土・佐賀統」であり、前作物は小麦、排水の良否は中
庸である。
4)栽培法
播 種 は 5 月 26 日 に 行 い 、 播 種 量 は 3 kg/10a、 移 植 は 6 月 17 日 に 行 っ た 。
(表1)
試験区の構成
基肥
穂肥 1 回
穂肥 2 回
合計窒素量
(Nkg/10a)
(Nkg/10a)
(Nkg/10a)
(Nkg/10a)
穂肥1回区
4.2
2.1
-
6.3
穂肥2回区
4.2
2.1
1.4
7.7
試験区
注 ) 施 肥 日 は 、 基 肥 は 6 月 15 日 、 穂 肥 1 回 目 は 8 月 7~ 9 日 、 穂 肥 2 回 目 は 8 月 19 日 。
5)防除関係
慣行栽培に従った。
除草剤散布
6月26日
ラクダーL フロアブル
防除剤散布
デラウスプリンスリンバー箱粒剤
ブ ラ シ ン バ リ ダ ジ ョ ー カ ー 粉 剤 DL
5―5
調査結果
5―5―1
土壌の化学性、物理性評価による酒米適地の選定と現地栽培技術の確立
栽 培 適 地 を 選 定 す る た め に 、県 内 酒 造 用 米 産 地 16 地 区 よ り 5 地 区 を 選 定 し 、土 壌 分 析 ・
玄米分析を行った。その中から土壌・玄米の性状が安定し、地区の栽培条件、品種特性等
を 検 討 し た 結 果 、 2 地 区 を 選 定 し 16 年 産 よ り 栽 培 適 地 と し て 約 2.3ha の 作 付 け を 行 っ た 。
その際、酒造用米の生育に必要な珪酸が尐ない県北地域においては、珪酸質資材の有効性
を明らかにし、栽培技術の確立に取り入れた。
醸造用米として重要なタンパク質含有量の低減と玄米充実を目的とした栽培技術を 確立
し 、平 成 16 年 度 は 3 個 の 大 型 台 風 が 襲 来 し た が 、夢 一 献 だ け は 倒 れ る こ と な く 良 好 な 玄 米
を生産することができた。
43
(表2)
栽培適地の作付け前土壌成分
有機態珪酸
有効態燐酸
(mg/100g)
(mg/100g)
5.9
21.3
22.7
2.5
県 单 地 域 (平 均 )
6.1
36.8
66.7
3.0
福岡県改善目標値
5.5~ 6.5
15~ 30
10~ 50
2~ 6
調査地域
pH
県 北 地 域 (平 均 )
Mg/K 比
注)県北地域では、倒伏に関係する有機態珪酸が尐なかった。
現 地 に お け る 土 壌 改 良 材 の 処 理 効 果 ( 県 北 地 域 、 JA ふ く お か K 管 内 )
(表3)
有効態珪酸
遊離酸化鉄
有効態燐酸
(mg/100g)
(% )
(mg/100g)
5.91
14.5
0.6
16.0
1.5
2.9
散布後
6.28
19.0
0.6
27.0
2.3
2.6
目標値
5.5~ 6.5
15~ 30
1.5>
10~ 30
2~ 6
3~ 5
調査時期
pH
散布前
Mg/k 比
腐植含量
(% )
注 ) 土 壌 改 良 材 名 : ミ ネ ラ ル G 、 施 用 量 : 160kg/10a を 投 入 。
5-5-2
酒造用米「夢一献」の現地栽培技術の確立
初期生育において、穂肥1回区と2回区で大きな生育差はなかったが、後半の生育は穂
肥1回区の方が穂肥2回区に比べて、葉色が薄く、生育量もやや尐なかった。
成熟期は穂肥1回区が1日程度早かった。精玄米重は穂肥1回区の方が、2回区よりや
や多く、タンパク質含有率も2回区よりもやや低く、良質であった。
以上のことから、酒質に影響するタンパク質含有率を低く抑える穂肥は1回が有効であ
る。ただし、穂肥1回のみでは地域によっては低収となる場合があるので、地域にみあっ
た穂肥量の策定が必要である。
( 表 4 )現 地 に お け る「 夢 一 献 」の 生 育・収 量( 单 筑 後 地 域 農 業 改 良 普 及 セ ン タ ー 調 べ )
試験区
穂肥 1
回区
穂肥 2
回区
タンパク
成熟期
稈長
穂数
倒伏
精玄米重
屑重歩合
千粒重
(月 日 )
(cm)
(本 /㎡ )
程度
(kg/a)
(% )
(g )
10/4
61
363
0
55.9
3.9
24.0
5.8
10/5
65
365
0
53.2
3.8
23.6
6.0
質含有率
(%)
注)精玄米重は、県单地域の2カ所の平均とした。
5―6
今後の課題と取組
福岡県の酒造用一般米の主力品種である「レイホウ」、「ニシホマレ」、「ツクシホマ
レ 」 等 ( 平 成 16 年 度 作 付 け 面 積 : 1,920ha) を 将 来 的 に は 「 夢 一 献 」 に 切 り 替 え て 、 福 岡
44
のオリジナル性を打ち出す。その際、一挙に 切り替えると酒造現場で技術的な混乱を引き
起こす恐れがあることから、需要に応じて計画的に切り替えを行う。今回明らかにした栽
培技術を基礎的技術として位置づける。特に、心がけるべき課題は新品種「夢一献」の良
好な酒造適性の均一性である。低タンパク化と多収性を両立させた栽培法を良質米生産指
導を徹底する必要がある。
45
成果実績
(1)口頭発表
① 「 酒 造 用 米 の 育 成 に つ い て 」 、 九 州 酒 造 研 究 会 講 演 会 、 H15.5.2
② 「 酒 造 用 一 般 米 品 種 ‘ 夢 一 献 ’ の 特 性 」 、 九 州 農 業 研 究 発 表 会 、 H15.9.18
③ Hikaru SATOH, Ken-ich OTUBO and Yasunori NAKAMURA
Mutation in endosperm
reserves and its utilization for improving the grain quality in rice.
World Rice Research Confere nce 2004, Tukuba Japan, Nov. 5 -7, 2004
④佐藤
光・波 多 江 裕 子・西 愛 子・竹 本 陽 子・上 村 裕 二・中 村 保 典・久 保 亜 也 子・桜 井 彩
・大 坪 研 一 、イ ネ 胚 乳 中 の 澱 粉 枝 作 り 酵 素 IIa に 関 す る 変 異 体 の 作 出 、育 種 学 研 究・別 冊 6
( 2) : 190
日 本 育 種 学 会 第 106 回 講 演 会
平 成 16 年 9 月 21・ 22 日
⑤波多江裕子・佐藤光・西愛子・大坪研一・中村保典・久保亜希子・藤田直子・桜井彩・
イ ネ の 澱 粉 枝 作 り 酵 素 IIa に 関 す る 変 異 体 の 胚 乳 澱 粉 特 性
保坂優子
学会
第 53 回 講 演 会
日本応用糖質科
平 成 16 年 9 月 21・ 22 日
⑥奥田将生・小関卓也・佐藤光・荒巻功
日 本 応 用 糖 質 科 学 会 第 52 回 大 会
米の澱粉分子構造と醸造適性
J. Appl. Glico Sci., Vol.50, pp.20 平 成 15 年 9 月 24-26 日 ,
⑦ Satoh, H., T. Kuma maru, Y. Takemoto, M. Ogawa, I. Hara -Nishimura and T. W. Okita
Mutants involving in the intracellular process for accumulatio n of rice glutelin in protein body.
NIAS-COE Internatl. Symp. Tsukuba, JAPAN, 11 -12/Nov./2003
⑧佐藤光
イネの品種改良
第 43 回
澱粉研究懇談会
⑨熊丸敏博
–ア ミ ロ ペ ク チ ン 遺 伝 子 資 源 の 開 発 平 成 15 年 5 月 29-31 日
「イネ種子貯蔵タンパク質の遺伝変異」
酒米懇談会講演会
平 成 15 年
10 月 7 日
⑩熊丸敏博
「コメ貯蔵タンパク質の突然変異」
福岡県酒造組合セミナー
平 成 15 年 5
月 8日
⑪佐藤
光・荒巻
セミナー
功 、 「 What is “ Sakamai”?
–山 田 錦 は 何 故 酒 米 か -」 、 福 岡 県 酒 造 組 合
平 成 14 年 12 月 5 日
⑫ 「 リ ン ゴ 酸 高 生 産 性 清 酒 酵 母 の 開 発 」 、 福 岡 県 酒 造 杜 氏 組 合 講 演 会 、 H14.10.4
⑬「リンゴ酸高生産性清酒酵母の選抜」、九州・沖縄地域食品関係試験研究場所長会、
H14.10.24
⑭「DNAマイクロアレイを用いたリンゴ酸高生産清酒酵母の遺伝子発現解析」、産業技
術 連 携 推 進 会 議 生 命 工 学 部 会 九 州 地 域 部 会 、 H16.2.23
⑮「DNAマイクロアレイを用いたリンゴ酸高生産清酒酵母の遺伝子発現解析」、食品 関
係 技 術 研 究 会 、 H16.9.8
(2)論文発表
①濱地勇次、大里久美、川村富輝、和田卓也、坪根正雄、今林惣一郎、安長知子、西山寿
:酒造用一般米新品種‘夢一献’の育成、福岡農総試研究報告
第 23 号 、 26-31(2004)
②浜地勇次、大里久美、川村富輝、和田卓也、今林惣一郎、安長知子、坪根正雄:酒造用
46
第 66 号 、 1(2004)
一般米品種「夢一献」の特性、九州農業研究
③荒 巻 功 ・神 田 涼 子 ・菊 永 雪 絵 ・吉 井 実 華 ・岩 田 博 ・奥 田 将 生 ・小 関 卓 也 ・小 川 雅 広 ・熊 丸 敏 博 ・
佐 藤 光 ・橋 爪 克 己 (2004)
心 白 を持 つ胚 乳 変 異 体 米 の構 造 観 察 と酒 造 適 性 分 析 (第 2 報 ) 日
本 醸 造 協 会 誌 99 (3) :189-201
④荒 巻 功 ・菊 永 雪 絵 ・吉 井 実 華 ・奥 田 将 生 ・小 関 卓 也 ・小 川 雅 広 ・熊 丸 敏 博 ・佐 藤 光 ・橋 爪 克 己
(2004) 心 白 を持 つ胚 乳 変 異 体 米 の構 造 観 察 と酒 造 適 性 分 析 (第 1報 ) 日 本 醸 造 協 会 誌 99 (2)
:134-144
⑤ M. S. Jahan, Y.Uemura, T. Kumamaru, A.l Hamid and H. Satoh (2004) Genetic variation
of glutelin acidic subunit polypeptides in Bangladesh rice genetic resources
Genetic Resources and Crop Evolution (in press)
⑥ Y. Ueda, H. Satoh, M. Satoh, Y. Ta kemoto , T. Kumamaru and M. Ogawa (2004) Inherita nce
mode of Glup5 gene and the genetic relationships with other 57 mu tant genes.
Rice Genet.
Newsl., 21(in press)
⑦ Y. Ueda, Y. Takemoto , A. Sugino, M. Satoh, T. Kumamaru, M. Ogawa and H. Satoh (2004)
A novel 57H mutant gene, glup7, located on chromosome 4.
Rice Genet. Newsl., 21(in press)
⑧大場孝宏、野見山修治、上田京子、黒田理恵子、鈴木正柯:清酒もろみからのリンゴ酸
高 生 産 清 酒 酵 母 の 分 離 と こ れ を 用 い た 低 ア ル コ ー ル 清 酒 の 試 験 醸 造 、 Journal of The
Brewing
Society of Japa n、 Vol.99, No.12, 878-881(2004)
(3)雑誌掲載
① 2002 年 に 登 録 ( 申 請 ) さ れ た 注 目 品 種 「 ち く し 43 号 」 ・ 「 ち く し 酒 57 号 」 ・ 「 ち く し
58 号 」 、 現 代 農 業 2 号 、 283(2004)
② 「 夢 一 献 」 原 料 に 福 岡 オ リ ジ ナ ル ソ フ ト 清 酒 開 発 、 全 国 農 業 新 聞 朝 刊 、 平 成 17 年 4 月
22 日 研 究 最 前 線
③ 酒 米 「 夢 一 献 」 を 本 格 栽 培 、 全 国 農 業 新 聞 朝 刊 、 平 成 17 年 4 月 10 日
④県産米で低アルコール酒-産学官で開発
若者・女性に照準-、西日本新聞朝刊、平成
17 年 2 月 24 日
⑤ ソ フ ト 清 酒 発 売 へ - 10 蔵 元 独 自 銘 柄 で 、 産 学 官 開 発 11 年 で 誕 生 - 、 朝 日 新 聞 朝 刊 、 平
成 17 年 2 月 23 日
⑥ 山 田 錦 に 並 ぶ 酒 米 - 福 岡 県 が 開 発 「 夢 一 献 」 - 、 読 売 新 聞 朝 刊 、 平 成 17 年 2 月 23 日
⑦ 大 場 孝 宏 、野 見 山 修 治 、リ ン ゴ 酸 高 生 産 性 酵 母 の 開 発 、食 品 の 試 験 と 研 究 、Vol.37、(2003)
⑧月間はかた
5 月号
⑨福岡県生産流通課
九州の酒
其の参拾五
メールマガジン
⑩福岡農林統計協会の発行誌
福岡発まるふく 5 月号
6 月号(予定)
(4)品種登録出願
登 録 を 出 願 す る 品 種 「 夢 一 献 」 、 15 農 政 研 第 33 号 の 3、 出 願 人 : 福 岡 県 、 出 願 日 : 平 成
15 年 10 月 22 日
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(5)特許出願
「 リ ン ゴ 酸 高 生 産 性 新 規 清 酒 酵 母 及 び こ れ を 用 い る 清 酒 の 製 造 方 法 」特 願 2003-161771、出
願 人 : 福 岡 県 、 出 願 日 : 平 成 15 年 6 月 6 日
(6)商品化
県 内 10の蔵 元 によ るソフト清 酒 の商 品 化 (商 品 名 : ゆ め ほ た る 、 あ い の ひ め 、 あ さ き ゆ め 、
夢 ら さ き 、 あ め ん ぼ う 、 D-ONE、 夢 ば か り 、 夢 ひ よ く 、 わ た 霞 、 水 月 ) 、 平 成 17 年 2 月
(7)受賞
佐 藤 光 、イネ発 育 過 程 の遺 伝 的 解 剖 学 的 研 究 、平 成 15 年 度 日 本 育 種 学 会 賞 、平 成 15年 4月 2日
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