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災害復旧支援のための長距離マルチホップ無線 LAN による臨時通信

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災害復旧支援のための長距離マルチホップ無線 LAN による臨時通信
電力中央研究所報告
情 報 通 信
災害復旧支援のための長距離マルチホップ無線
LAN による臨時通信回線構築手順の開発
キーワード:大規模災害,無線 LAN,長距離通信,マルチホップ,
臨時通信回線
背
報告書番号:R15009
景
当所では、災害時に事業所間通信回線が被災した際の臨時通信回線構築手段として、
長距離マルチホップ無線 LAN1)の適用が効果的と考え、その基礎的な通信特性や実使用
環境を想定したアンテナ方向、気象、障害物による影響を測定・評価してきた
2)
。その
結果、アンテナ方向調整の許容範囲が広く、リンク確立が比較的容易であることから、
臨時通信回線構築手段として有望であることが確認された。実用のためには、具体的な
臨時通信回線構築手順(以下、構築手順)を確立する必要がある。
目
的
机上検討により構築手順案をまとめ、フィールドでの試験を通じ、その有効性を確認
するとともに課題を抽出する。また得られた課題への対応を含めた構築手順を策定する。
主な成果
1. 構築手順案の作成とフィールド試験での評価
机上検討により作成した構築手順案の有効性を確認するため、最悪な状況として作
業者間の連絡手段がない状況で長距離無線 LAN 回線構築試験(図 1)を行った。その
結果、現地到着後 1 ホップ当り 30 分程度で回線が構築できたが、以下の課題が抽出さ
れた。
・地図ソフトによる机上検討のみで事前に選定した伝搬路の中には、現地では樹木等に
より見通しが確保できないものが存在する場合がある。
・現地では初めに、作業者間の連絡手段を確保するために音声リンクの確立を行うが、
他アプリケーションの影響により音声リンクが確立できない場合がある。
・音声リンク確立後、通信品質向上のためにアンテナ調整や周波数チャネル変更などの
対策を実施する際、過度な変更により音声リンクの途絶が懸念される。
2. 評価結果をふまえた構築手順の開発
上記課題の解決策を考案し(表 1)
、これを反映した構築手順を策定した(図 2)
。本
手順は、災害発生前に機器等の準備を行うステップ、伝搬路を選定するステップと、
災害発生後に現地での対応を行うステップで構成されている。各ステップの特徴は以
下の通りである。
・機器等の準備では、これまでの測定から得た電波伝搬特性把握や音声リンク確立に関
する知見などに基づき、事前準備機器等の選定がなされる。
・伝搬路の選定では、マルチホップによる伝搬路を複数選定し、回線構築不可の場合に
速やかに代替候補となる伝搬路が選定可能である。
・現地での対応では、フィールドでの評価結果をふまえた、音声リンク確立時の留意点
や音声リンク途絶対策などが組み込まれている。
ii
©CRIEPI
注 1)無指向性アンテナを使用した通常の 2.4 GHz 帯無線 LAN では、伝搬距離が数 100 m 程度なのに対し、高利得の指
向性アンテナと中継伝送機能を組み合わせることで、数 km~数 10 km の長距離伝搬を可能とする通信システム。
2)萩生田、宮下「災害復旧時の利用を想定した長距離マルチホップ無線 LAN の基礎特性評価」
、電力中央研究所研
究報告 R13009(2014)
被災地域
中継地点
マルチホップ通信試験
直接通信不可
→中継用装置を設置
制御所
電気所
直接通信試験
:無線LAN装置
: 1ホップを表わす
電気所
図 1 長距離無線 LAN 回線構築試験のイメージ
表 1 抽出された課題への対応
課題
伝搬路の
見通し確保
課題の内容
3D 地図や航空写真を確認可能な地図ソ
フトで事前に建物や樹木の状況を調査し
たが、現地の現在の状況を詳細に把握で
きず、見通しを確保できない場合があ
る。
対応
・現地の環境変化の可能性や地点変更を考慮
したうえで、伝搬路候補を複数選定する。
・必要に応じて電気所など拠点から見通し可
能範囲を確認しておく。
作業者間の
連絡手段の
確保
・音声リンク確立時は、不要なアプリケーシ
音声リンク(長距離無線 LAN による音
ョンの使用を控える。
声回線)確立時に、ネットワーク疎通確
・音声リンクより小さい帯域でのやりとりが
認用の ping を併用しようとすると、音
可能なメッセージ系アプリケーションで連絡
声リンクを確立できない場合がある。
を取り合うことも想定しておく。
通信品質
向上対策時の
リンク途絶
通信品質が不十分な時に、アンテナ方
向の調整を行い、許容範囲から外れてし
まうことや無線 LAN 装置の周波数チャ
ネル検索機能の不用意な使用により、音
声リンクの途絶が懸念される。
・途絶時の行動(5 分後に元の設定に戻すな
ど)を事前に定めておく。
・無線 LAN 装置自体の周波数チャネル検索
機能ではなく、チャネル状況を把握できる別
のツールを準備しておく。
事前の準備
機器等の準備
(機器準備、電源容量設計など)
伝搬路の選定
(机上検討、現地調査)
機器、ソフト、データ等を災害発生
前に準備する。
①無線LAN装置・地図ソフトの調達
②メッセージ系アプリケーション・周
波数チャネル把握ツールの調達
③最大伝搬距離・所要スループット
の把握
④電源容量設計・構築訓練の実施
伝搬路(無線LAN装置設置地
点)を災害発生前に選定する。
①直接通信可能か検討
②直接通信不可の場合、中継
地点を複数検討
③必要に応じて現地調査(拠点
からの見通し可能範囲確認な
ど)
現地での対応
(機器設置・調整など)
災害発生
機材・作業体制・作業手順
を確認し現地へ出動する。
①障害物有無の確認
②音声リンク確立
③アンテナ方向最適調整
④スループット測定
⑤音声リンク途絶対策の確認
⑥通信品質向上対策
⑦通信品質が向上しない場
合の対応を実施
図 2 構築手順の概要
※下線付き部分はフィールド試験での評価結果をふまえた追加項目を示す。
関連研究報告書
「長距離マルチホップ無線 LAN による災害復旧支援通信システムの基礎検討」
iii
©CRIEPI
R13001(2013.8)
「災害復旧時の利用を想定した長距離マルチホップ無線 LAN の基礎特性評価」
R13009(2014.4)
研究担当者
渡邊 貴史(システム技術研究所 通信システム領域)
問い合わせ先
電力中央研究所 システム技術研究所 研究管理担当スタッフ
Tel. 03-3480-2111(代) E-mail:[email protected]
報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。
[非売品・無断転載を禁じる] Ⓒ 2016 CRIEPI 平成28年5月発行
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