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1. 現状における情報の扱い

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1. 現状における情報の扱い
1. 現状における情報の扱い
1.1.現状における設計情報
1.1.1.現状の電子化状況
現状の土木業界における電子化の状況を見るとその組織によってその進行の度合いは様々で
ある。業務全体では、未だ紙ベースの 2 次元図面による情報の交換が主流となっているため情報
の再利用は困難な状況となっていることも否定できない。また、CAD利用は進んでいるものの
電子データそのものが目的ではなく、紙図面のドローイング用ツールとしての利用が多くみられ
る。このため、CAD の電子情報として交換が考慮されたデータ構造になっておらず、データの
互換時に大きな障害が生じる場合が多分に見受けられ、交換後のデータ利用については、確認、
修正等に多大な労力を要している。これらを防ぐためには現状では CAD を特定した交換以外は
ない状況である。
しかし、CAD は、単なる図面処理だけでなく、図形に適切な属性を持たせることにより電子
的データ処理を可能にするツールである。このような特性を利用し、近年の CAD は設計からメ
ンテナンスまで幅広い分野をカバーするようになってきている。しかし、積極的に導入を図って
業務の効率化を進めているところもある。
例えば、ある大手鉄道事業者では、CAD で作成された図面は CAD データ、設計計算書・数量
計算書・検索用蓄積データは Word または Excel 等、その他手書き図面や設計プログラムによる
印刷物等はスキャナによるイメージデータで作成し、最終成果物は CD-R に記録しているところ
もある。これにより、最終成果物を使用する発注図面や協議資料等への電子データの活用、設計
計算書・数量計算書の審査、チェック作業や積算業務への転用等が可能となり、業務の効率化が
図られている。また、汎用 CAD をベースに外部データベースとのリンク機能を使って鉄道線形
CAD を開発がなされている。
設計情報の電子化に関する問題を論じるために、まず現状でどのような設計情報が取り扱われ
ているかを整理し、土木プロジェクトにおける設計情報の特性を明らかにしながら、電子化の現
状について以下に整理を行う。
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原石山採取計画、管理
岩盤位置
掘削形状
施工計画・管理
施工段階表示
図 1.1 3次元 CAD の利用例
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1.1.2.土木プロジェクトの流れの中での設計情報
土木プロジェクトの流れに沿って、その段階をおおまかに分けると、計画、施工、管理(メン
テナンス)となる。
計画段階では、現況データを整理して、その情報に基づいて設計が進められる。通常では、事
業者と設計コンサルタントにより作業が行われる。次の施工段階は、設計情報に基づいて実際に
「もの」を造りあげるフェーズであり、建設会社が請負施工する場合が多い。工事が竣工して対
象物が完成すると、事業者に引き渡され、設計情報は管理(メンテナンス)に活用されることに
なる。
このような土木プロジェクトの流れの中では、各段階で必要とされる設計情報の質が異なり、
また、設計情報はプロジェクトを主導する事業者や関与する多くの企業(企業内でも複数の部門
が携わる場合が多いと思われる)によって作り上げられ活用されていく。これは土木プロジェク
トにおける設計情報のひとつの特性であるが、土木分野における設計情報の電子化による業務改
善を考えた場合に大きく影響してくるような特性を整理すると以下のようになる。
(土木プロジェクトの流れに着目した場合の設計情報の特性)
○各段階で必要となるデータの質が異なる。
○設計情報に関与する人間(企業、組織等)が多い。
○設計情報が取り扱われる時間的なスパンが長い。
○設計情報の変更、修正が頻繁に行われる。
1.2.現状における情報の扱い
1.2.1.情報の種別と整理
土木プロジェクトにおける設計情報を列挙してみると以下のようなものがある。
・図面(位置、寸法形状、材料等を表示)
計画図、施工図等
平面図、断面図、構造一般図、配筋図等
・積算書、数量表(工事金額、工事数量等を示す)
・設計計算書(数値解析、構造計算等の技術計算結果)
・座標リスト(用地境界、線形等の測量座標データ等)
・地質図
・施工計画書、検討報告書・・・その他様々な文書情報
・計測管理資料
・パース図(プレゼンテーション、景観検討等に使用する)
・静止画像(工事写真等の画像情報)
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・動画像(ビデオデータ等)
ここに挙げたのはほんの一例であり、土木プロジェクトは実に驚くほど多種多様な設計情報に
より進められていく。土木分野の設計対象は規模が大きく複雑であるため、どうしても設計情報
量が大きくなり、また、多面的な検討が必要となるためデータ種別も多岐に渡ることになる。
設計情報の中心媒体は図面情報である。このためデータの整理の単位も冊子単位となっている
が、電子データ化すれば、設計物あるいは構築物単位(オブジェクト単位)に文書データ等を連
携させ整理することが可能となる。このような視点と現在の情報技術を考慮し、図形データや文
書データ、属性情報を統括的に扱うものとして、ISO の STEP や IAI による IFC が生まれ、現
在も開発が進められている。
近年、CAD による図面データの交換に関する動きは活発化しており、これは CAD による図面
データの活用を図る上で有効だと認知し始められていることを示している。
図面データの交換に限られた範囲ながらも、データを正確にやり取りできる範囲は単純な図形
に限られ、それ以外の情報の再現性は CAD に依存してしまうという問題を抱えている。また、
図面表現上の規格も曖昧であることから、運用上のデータの交換に混乱を招いていることが問題
となっている。
また、図面データだけの交換から、設計情報の交換という段階において現状では、手入力ある
いは設計情報を流用して図面データに落とすいう一方通行であり、図面データを流用して設計情
報にフィードバックすることは困難である。
設計情報は紙に印刷されたものが最終成果物として扱われており、電子データの一部が施工情
報として流用されることはあっても、その後の維持管理にまで流用されるケースは非常に少ない
と言わざるを得ない。
1.2.2.データの種別と現状の整理
現状で電子化されている土木分野の設計情報データの種別を大まかに分類整理してみると、
おおよそ以下のようになる。
・文書データ:主にテキスト、数表等。標準形式として SGML 等がある。
・画像データ:ラスターデータ。(TIFF、JPEG 等)
・図形データ:CAD データや CG データ(2D と 3D がある)
であり、基本的にベクトルデータであるがワイヤーフレーム、サーフェス、ソリッド、パラ
メトリックソリッド等のデータ種別がある。DXF 等がデータ交換に用いられることが多い。
このような種類のデータを取り扱える各種ソフトウェアが土木分野の設計情報処理のため
に用いられているが、それぞれ数多くのデータ形式が存在しているのが実体である。また、近
年ではこれらの文字、数表、画像、図形データを複合化した電子データや、動画像、音声など
も含めたマルチメディアデータも活用されてきている。ネットワーク環境に着目してみると、
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インターネットの WWW において文書、画像等を表示するために HTML、PDF 等のデータ形
式が用いられている。
一方、土木分野の設計作業に特化したコンピュータシステムも数多く実用化されている。こ
れらのシステムはそれぞれ独自のデータ形式を内部的にもっている場合も多く、またアウトプ
ットデータを電子化データとして展開しにくいものも少なくない。例としては、橋梁自動設計
システム、土地造成計画システム(地形形状データ)、数値解析システム(有限要素法メッシ
ュデータ)、様々な技術計算システム等がある。
1.3.電子化における現状の問題点
土木プロジェクトにおける設計情報の電子化に関しては、前述したような特性ゆえに様々な問
題点がある。ここではそれらを簡単に整理してみることにする。以下に土木プロジェクトでの設
計情報の電子化における現状の問題点を以下に整理する。
(1).現況図面の電子化(CAD 化)
電子化したデータの上で設計を進めるためには、現況の平面図、断面図等を電子化(CAD
化)することが必要になるが、それらの作成には非常に時間がかかる。現況平面図などでは
高解像度衛星データの利用による自動作成なども今後期待される。
(2).図面データ(CAD データ)の交換
図面作成には様々な CAD ソフトが利用されているが、そのデータ形式も様々であり、デ
ータ交換の方式が統一されている訳ではない。データ交換用の中間フォーマット、レイヤの
使い方、属性データの付与ルール、3D データの扱い等、解決するべき事項は非常に多い。
(3).データ転送、流通の問題
土木分野の設計情報はボリュームが大きい場合が多いので、ネットワーク活用においては
転送速度が問題になる。また、データ流通デバイス、圧縮手法なども統一されておらず、業
務に支障をきたす場合も少なくない。また、データ形式の基準表現フォーマットの基準(手
書き図面を再現するだけでは電子化のメリットが薄い)属性情報やリンク情報などの付加分
担作業、協調作業のしくみセキュリティーについても今後考慮する必要があろう。さらに、
現状の CAD データは、改ざんや管理、保守の責任問題が曖昧であり、データの有効性が担
保することも必要と考えられる。
○電子化データの処理環境レベルの差が存在する
企業間でソフトウエア、ハードウエア等のコンピュータ利用環境の差異があり、極端な例
では、送付された CAD データのデータボリュームが大きくて開くことすらできない、とい
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うようなこともある。
○設計情報を完全に伝達することが難しい
現状では、必要な設計情報がすべて電子化されている訳ではなく、一元化も図られていな
い。例えば、設計図面+検討報告書+数値解析結果の画像データ等でひとつの設計情報となっ
ている場合、現行の電子化されたデータを基にした設計情報の伝達には限界がある。
○現場施工においては紙図面がどうしても必要
設計情報を効率よく電子化しても、土木分野では施工自体が自動化が進んでおらず、どう
しても紙の図面が必要になる。設計情報の電子化は土木施工自体の生産性向上には直接的に
寄与しにくい。
○電子化データの整理、データ履歴の管理
土木プロジェクトでは計画、施工の時間的スパンが長いだけでなく、造られた施設は長期
間に渡ってメンテナンスし利用し続けられる。設計情報を電子化すれば、データ整理や管理
は効率的に行われるはずであるが、土木プロジェクト全体としては、いまだその最適な方法
は確立されていない。
○著作権の問題
直接 CAD データの受け渡しが行われるようになった場合、著作権や設計責任の所在など
の問題が発生する。設計青果物の著作権に関する基準を明確に定めることが必要である。
○土木のデータの特質
土木分野の設計情報は、橋梁やダムといった比較的形状を把握しやすいものから、水や大
気といった形状の把握が困難な範囲にまで及び、これらを統一的に扱う仕組みを作成すると
すれば、その対象範囲は膨大になる。同時に、土木分野は自然条件の影響が強く、大型で複
雑なものを対象にすることから、データの種類はさまざまで、しかも大量となる。
これをそのまま電子化した場合、データの肥大化を招き、コンピュータやネットワークの
負荷を増大させ、その使用に支障をきたすおそれがある。そのため、これらを単純化し分散
化する仕組み等が必要であろう。
○技術者のリテラシ−
現状の CAD は、その操作は主として専門の学習を行ったオペレータがするものとされ、
設計者が触れる機会が少なくなっている。設計情報を取り扱う場合には、設計者が使うこと
を前提する必要があり、CAD 等の電子化に必要なリテラシーを十分取得できる仕組みも必
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要である。
○CAD システムを運用する上での規定
図面をベースとして情報交換を行う場合、線種やレイヤの規定といった統一された規定や、
それに準拠していることを調べる仕組みが必要になっている。同様に属性を付加した設計情
報の交換を行う場合にも、データの取り扱いを厳密に定義付ける必要がある。
このように、設計情報の電子化に関しては、単純な電子化自体のものから、土木プロジェクト
全体の中での設計情報活用に関するものまで、解決されていない問題が多い。現状では、個々の
業務に着目して電子化が進められている傾向があるが、基本的には、土木プロジェクト全体を効
率的に運営する事を目的として、設計情報の電子化を推進するという考え方が重要であろう。将
来において様々な問題点が改善され、コンピュータ利用環境が整ってくれば、電子化データによ
る新しい業務形態が実現されると期待される。
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2. 設計情報の標準化とその動向
2.1.設計情報の標準化の必要性
2.1.1.図面情報交換における標準化の必要性
建設 CALS/EC におけるどのプロセスにおいても同じ CAD データであれば,同じ図面が表
示され,再利用できるといったことであり,CAD 図面データ交換の技術及び統一が求められ
る。CAD 図面データはデータであり図面として扱うためには CAD を使用する等の手順が必要
である。CAD で描かれた図面を再利用するためには,CAD データ自体に関する規定が重要に
なる。一般に CAD 図面データを電子媒体として交換・再利用する方法としては以下の方法が
考えられる。
(1).同じCADソフトを用いる
図面を作成する,あるいは再利用する際に使用する CAD ソフト,バージョン等を統一す
ることにより,図面の再利用を確実にする。一定の期間は最も確実な方法といえるが,技術
的な規定を CAD ソフトに依存しており,土木構造物のようなライフサイクルの非常に長い
分野への適用には問題がある。
(2).CADごとにコンバータを開発する
直接変換といわれ,異なる CAD ソフト間で図面ファイルを1対1で交換するコンバー
タを作成する。直接変換コンバータはある CAD ベンダーが他の特定の CAD システムを自
社 CAD に取り込むため開発することが多く,一般的ではない。
(3).中間データ交換ファイルを用いる
間接変換といわれ,公開された中間ファイルを介してデータを交換する。中間ファイルが
CAD ソフトから独立しているため,直接変換より一般的に用いられる。
建設 CALS で用いる中間データ交換ファイルフォーマットには以下の項目が求められる。
・仕様が公開されていること。
・仕様が ISO 等国際的な機関によって認められていること。
・特定の CAD の機能に依存しないこと。
・土木の図面が表現可能であること。
・多くの CAD ソフトに実装されていること。
土木業界では DXF が中間フォーマットとして用いられることが多いが,異なる CAD 間で
DXF を用いた図面交換では,正確に伝わらない場合があることが知られている。
現在,中間データ交換ファイルは,ほとんどの CAD で DXF を採用している。しかし,DXF
を用い異なる CAD ソフト間でデータ変換を行うと,もとの情報をそのまま取り込めないケー
スが多い。また,以下のような問題もあり,今後,CAD 図面交換法の規格としての利用は困
難である。
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①仕様が非公開である。
②バージョンが定まらない。
③サポートの継続性が不明である。
④国際標準でない。
2.1.2.設計情報交換における標準化の必要性
土木分野において現状で普及している CAD システムの多くは 2 次元 CAD システムである。2
次元 CAD システムは、紙と鉛筆、定規をコンピュータ上でシミュレートすることにより、図面
を作成するツール、すなわち製図システムである(Computer Aided Drafting とも言われる)。2
次元 CAD システムの導入の利点は以下のようにまとめられる。
・既往の設計手法を変えることなく、その導入が可能である。
・図面の修正作業を容易に行うことができる。
・設計情報の電子化により迅速な情報交換が実現できる。
・図面管理の効率化が可能である。
しかし、2 次元 CAD システムは前述したように製図システムであり、その発展性に乏しい。
一方、近年では、機械工学分野を中心としてその 3 次元 CAD システムの導入が進みつつある。3
次元 CAD システムは、コンピュータ上で仮想的に設計物を 3 次元的に構築する技術である。こ
れにより、設計物を図面に依存しない情報として扱うことができる。特に機械設計の場合におい
ては、作成された 3 次元データを CAM(Computer Aided Manufacturing)に適用することができ、
設計から製造までの一貫したシステムを構築することができる利点がある
しかし、土木分野においては、後述する一部の特定分野を除けば 3 次元 CAD システムの導入
は進んでいないのが現状である。その理由として以下のような問題が考えられる。
①土木分野においては、計画から設計、施工、維持管理までのプロセスの中で異なる事業者、
企業が携わる場合が多く、設計から施工までの一貫システム構築の必要性に乏しい。
②設計の対象物が地形という自然物であり、その正確な電子情報化を図ることが難しい。また
その施工規模が大きく、施工の自動化を図ることが難しい。
土木分野において 3 次元 CAD システムの導入が図られている分野としては、ゴルフ場や造成、
ダム等の分野がある。これらの分野での 3 次元 CAD の導入が進んでいるのは、その施工範囲が
限定できること、造成により地形を単純な 3 次元モデルとして扱うことができること、設計から
施工まで特定の企業により行われる場合が多く、一貫したシステムの導入によるメリットが大き
いことがあげられる。
一方、設計段階における解析・評価技術としてのコンピュータ利用も急速に進みつつある。こ
れらの技術の適用において、設計物の 3 次元モデルが必要とされる場合も多い。しかし、2 次元
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CAD で図面として作成されたデータからの 3 次元モデル化は難しく、それぞれのソフトウェア
上で改めて 3 次元モデルを作成しなければならないことも多い。そのため設計の効率化・高品質
化という観点から、設計当初より 3 次元モデルを構築できる CAD システムが求められ、その開
発も急速に進みつつある。
現状の設計プロセスの中で 3 次元 CAD システムを適用する場合、そのデータ交換をいかに実
現するかが大きな課題となる。3 次元 CAD システムの場合、2 次元 CAD システムに比べデータ
構造が極めて複雑であり、その構造は利用するソフトウェアに依存している。設計データの交換
を実現する上では、これらのデータを、その構造を維持した状態で、複数の 3 次元 CAD システ
ム間での情報共有するためのデータ形式を定める必要がある。しかし、現実には複雑化した 3 次
元モデルを複数の異なる CAD システム間で確実に交換することは困難であり、プロダクトモデ
ル等のデータ交換の方法についての検討が最大の課題である。
2.2.設計標準化に関する取り組み
(1).建設省
建設省での図面交換は,将来,STEP(ISO10303)を導入する方向にあるが当面の間「DXF
によるデータ交換」を中心により確実な交換方法を検討している。フィールド実証実験では
図面交換範囲の設定や使用するソフトのバージョンなど,ルールを決めて運用している。
建設省での図面の取り扱いは 2 次元 CAD でのデータ交換を前提とし,図面のファイル
名,図面内の Layer 名,Layer の構成の標準案を提案している。また,図面ファイルの管理
情報の標準化を行っている。
(2).日本道路公団
日本道路公団では試験研究所が「CAD による図面作成要領(暫定案)」(JH-CAD)を作成
し,これを運用している。
JH-CAD は,共通編・道路土工設計編,橋梁工設計編,トンネル工設計編,連絡休憩施設
設計編の 4 編からなる。AutoCAD_R14j での運用を原則としてまとめられて,中間ファイル
フォーマットを使用する場合は「AutoCAD_R13j 以上の DXF と完全互換でなければならな
い。」としている。
共通編では,フォント・文字高さ・線種・線の太さ・色番号・Layer 名などの図面作成に
関する全ての項目で記述方法を指示している。各編では,個々のフェーズでの Layer の構
成・名前の付け方・CAD 図面の描き方など細かく指示している。
(3).(社)日本土木工業協会(土工協)
土工協では AutoCAD LT を協会標準 CAD とし,2 次元での図面交換を対象として検討を
行っている。平成 10 年度は,簡易作図機能の作成ソフトの開発やアドインソフトを作成し
ている。また,ホームページでの運用にも積極的に取り組んでおり,ブルドーザー等 CAD
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部品データをホームページからダウンロードできるようにしてある。
土工協の CAD 製図標準化案として以下の項目を提示している。
イ.印刷時の初期設定
イ.1. 図面の大きさ
イ.2. 印刷出力時の尺度
イ.3. 印刷出力時の線の太さ
イ.4. 印刷出力時の線種と用法
ロ.画面表示色とオブジェクト(図面の構造物)
ハ.保存ファイル形式とディレクトリー
ニ.Layer の標準化
(4).土木学会
土木学会では建設マネジメント技術小委員会で建設 CALS/EC について調査研究が行われ
ている。土木学会という中立の立場で,産・官・学の 3 者からなる本マネージメント技術小
委員会において,建設 CALS/EC の概念や課題を明らかにするため,各研究グループに分か
れて研究を行っている。
以下の委員会でCAD図面交換に関して研究している。
<土木製図基準改訂委員会>
・ISO規格に基づいて改訂
・JIS A0101 [土木製図(通則)]の改訂原案
<土木情報システム委員会 土木CAD小委員会>
・平成7・8・9年度 土木CAD小委員会研究報告書
(5).日本建設情報総合センター(JACIC)
図面交換に関しては,「電子データ交換ガイドブック」を発行し,受発注者間の電子デー
タ交換を行う際の留意点や標準的に守るべき指針を示している。
また,建設分野(土木・建築)を対象とした2次元 CAD データ交換の標準開発を、平成
11 年度末を目途に行うこととしている。取り組む予定の標準化における主な技術的な開発内
容として以下の項目を上げている。
・国際標準を用いたデータモデルの開発
・標準フォーマットによるファイルを表示するためのブラウザソフトの開発
・既存普及フォーマットとのトランスレータの開発
・開発されたトランスレータを検証するための検証用ソフトウェアの開発
(6).建設コンサルタンツ協会(JCCA)
建設コンサルタンツ協会では CALS/EC 委員会(東京)が建設 CALS/EC の調査を行って
いる CAD 図面の交換に関して具体的な提案は行われていない。
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(7).(社)日本橋梁建設協会(橋建協)
橋建協では,契約図書の中で最も情報量の多い図書は図面であるとした上で,図面情報の
扱いに関し着目している。図面情報の交換は,現行の紙の図面をそのまま二次元 CAD にし
て扱う段階が移行期として存在するとしながらも,二次元図面情報のやり取りをデジタル化
するだけでは,コスト削減効果に限りがあるとし,プロダクトデータをベースとする工事執
行が望ましいとしている。協会としては,設計段階までに決定した情報を現状の図面という
形を経ずに,直接下流工程へ製作情報として伝達する方法を検討し,実現のため詳細設計と
工事施工を同じ契約範囲で実施する詳細設計付き施工という形態の発注が有効であるとし
ている
(8).IAI(International Alliance for Inter-operability)
IAI では IFC という仕様書をまとめている。現在,リリース 1.5 が発表されソフトウェア
開発のプラットホームとして提供できるようになった。
土木の IFC モデルについてはドイツなど欧州が先行していたが,日本支部でも平成 10 年
4 月に土木分科会が発足し土木用 IFC の開発が始まった。
(9).オープン CAD フォーマット評議会
オープン CAD フォーマット評議会では OCF(オープン CAD フォーマット)という仕様
を策定している。CALS/EC 実現に向けてこのフォーマットを各分野の CAD に実装するこ
とをベンダーに提案している。将来的には,STEP の技術を取り入れ 3D オブジェクトのデ
ータ交換を目指している。
OCFの主な活動は以下の通りである。
<仕様の策定>
・仕様完全公開OCFの普及を推進。
・STEP(ISO10303)の基礎技術を利用。
<相互コンバータの開発>
・JW-CAD OCFコンバータ
・DXF OCFコンバータ
<CADへの実装>
・参加CADベンダーのCADにインプリント。
・インターネットOCFビューアを作成。
(10).建設 CAD データ交換コンソーシアム(C-CADEC)
C-CADEC では,以下の項目について Working Group を設置し作業を進めている。
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1).描画データ交換に関する取り組み
2).建築リスト形式データ交換に関する取り組み
3).空調衛生設備 CAD データ交換に関する取り組み
4).設備機器ライブラリデータ交換に関する取り組み
5).電気設備 CAD データに関する取り組み
6).鉄骨データ交換に関する取り組み
7).電設リスト形式データ交換に関する取り組み
8).国際標準化技術に関する取り組み
(11).STEP 推進センター(JSTEP)
JSTEP では,STEP の標準化,調査・普及,実用化推進を目的に次の活動を行っている。
1).STEP に関する標準化の推進
2).STEP に関する調査・普及
3).STEP に関する技術開発と実用化推進
4).アセンブリモデル WG
5).パラメトリックス WG
6).プロダクトモデル記述言語 WG
7).機械部品 WG
8).実証推進 WG
図面データの交換に関しては,「実証推進 WG」が平成 10 年度にプロダクトモデルデー
タ交換実験を行っている。その具体的な実施テーマは,「AP202 図面データ交換と AP203
とのインターオペラビリティ検証」および「AP224 を中心とした設計∼生産準備への情報伝
達モデル実験」である。
2.2.2.団体の動向のまとめ
各団体の活動報告を見ると現状の二次元 CAD 図面を元にしたデータ交換に関する研究(運用
面の規定)と CAD 図面データ交換を包含する STEP 等のプロダクトモデルに関する研究(技術
面の研究)に分けられる。
(1).運用面の規定
運用面の規定,つまり CAD 図面の描き方に関する研究は各団体で活発に行われている。た
だし特定の CAD システムを想定している研究が多い。
1).中間データフォーマット(DXF)を利用してデータ交換を行い,DXF の変換効率を向上
させ利用する。(建設省等)
2).ソフトとバージョンを統一してデータ交換を行う。
AutoCAD R14, AutoCAD LT を採用して運用する。(日本道路公団・土工協等)
データ交換に関する研究は,建設省(総プロ)
・日本道路公団・土工協・土木学会・C-CADEC
で行われているが,いずれも特定の CAD システムを規定している。
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(2).技術面の研究
各団体とも STEP(ISO10303)を導入する方向にあるが,現在,仕様はまとまっていない。
新しい技術面の研究としては,IAI の IFC と OCF 評議会の OCF とがある。IFC では STEP
の AP の仕様をまとめるための提案や独自で製品モデルの開発を行っている。OCF は STEP
に移行するまでの要素技術として期待できる。OCF が多くの CAD に搭載されれば,デファク
トスタンダードとしての利用が可能である。また,JACIC では二次元 CAD データ交換の標準
を検討するコンソーシアムを本年(平成 11 年)から立ち上げる。
2.2.3.図面データ交換について
(1).双方の CAD ソフト,バージョンの通知
図面データを共有する際には、受発注者双方が相手側へ以下の項目を通知することが前提。
(CAD ソフト名,バージョン,追加機能)
特に追加機能について、CAD データを共有する場合、受発注者間で双方がどのような機能
を具備しているかを認識するために、相手側へ追加機能の有無を通知する必要がある。
・緩和曲線(クロソイド曲線、3 次放物線、sin 半端曲線等)作図機能
・受発注者内での付加機能(自動積算機能、プレゼン資料作成機能、特殊計算機能等)
なお、以下に現在普及している主な CAD 製品について仕様一覧を整理する。
表 2.1主な CAD の比較
AutoCad
JW_CAD
(Macintosh 版)
R14J&LT97
使用 OS
MiniCad
MS−DOS
MS−DOS
Windows
DOS/V
Mac OS
WindowsNT
製造元
Auto-desk 社
フリーウェア
エーアンドエー
データ精度
倍精度
単精度
倍精度
作図要素数
無制限
約 10,000 本
無制限
作図領域
ほぼ無制限
25×35Km
無制限
レイヤ数
無制限
256
無制限
色
256 色
6色
256 色
線種
48 種
8種
14 種
入力ファイル
DXF,WMF,DWG
DXF,JWC
DXF 他
DXF,JWC
DXF 他
(オプション)
出力ファイル
DXF,WMF,DWG
(オプション)
注1)ユーザ定義できる数または任意に設定できる数を記載
注2)その他の CAD ソフト例
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・CADAM,DYNA_CAD,GENERIC-CAD,I_CAD,PC-CAD 等
(2).交換フォーマットの取り決め
図面データを交換するにあたっては、交換フォーマットについて、やりとりの用途毎に以下
のいずれかの方法を選択し、受発注者間で徹底を図る。
・CAD ソフト・バージョンの統一
・中間ファイルフォーマット(DXF)の利用
・ラスターデータ(TIFF,BMP,GIF)の利用
(3).中間ファイルフォーマット(DXF)の利用について
異なる CAD ソフト間でデータを交換する方法としては、共通的なファイルを介する方式が
広く普及しており、代表的なファイルフォーマットとして STEP、IGES、DXF が挙げられる。
DXF は Autodesk 社が外部データ形式として作成したフォーマットであり、ほとんどの CAD
でサポートされており現状土木分野でよく利用されている。ただしデータ交換の際の安定性が
低い(交換に関して問題の発生する可能性が高い)。またデータ交換の際に変換作業が必要に
なる。以上のことから中間ファイルフォーマットを用いて、図面のデータ交換を行う際には、
追加・修正したファイルをマスターデータとして利用しない(必ず、マスターデータは受注者
が管理することし、マスターデータの修正は受注者が一括して行う)。
(4).ラスターデータ(TIFF,BMP,GIF)の利用について
データ交換の際の安定性が高い(交換に際して問題が発生する可能性が低い)。ただしイメ
ージデータであるため詳細検討に適さない。設計段階で作成された図面データを事業のライフ
サイクル全体で活用するための方法として、この方法を用いるのは不適当である。しかし、概
略図面等の確認等の簡単なやり取りの際には有効であり、活用場面を見極めながらこの方法を
利用するのが現実的である。
(5).作図上の取り決め
1).各図形要素の取り決め
図面を電子データとして表現する際の最も基本となる以下の要素については、作業効率や
担当間での認識を統一するために、受発注者間で事前に統一を図りデータを作成することが
望ましい。
・レイヤー(画層)&順序
・色、線種、太さ
・用途
・権限
・座標単位の取り決め
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・基準点の取り決め
色について、JW CAD 等の一部では、色によって出力時の線種を区別するものがあるため、
交換フォーマット毎に適した色を設定する必要がある。
基準点について、座標値が必要以上に大きくならない様、図面枠の左下の点を原点とする。
また DXF によるデータ交換を考えた場合、座標精度を落とすことなく交換する為には、あ
る一定の桁数以上を取り除いた数値を用いるなど、受発注者間で明確な基準点を取り決めな
どを行う。
(6).注意事項
中間ファイルフォーマット形式で図面データを交換する場合、以下の図形要素はデータ変
換後に正確に属性を保持できない可能性がある。
・寸法線等の線分
・ポリライン・短形
・円・円弧
・複合図形
・文字
特に文字について、フォントやサイズ等の属性を保持できなかったり、線分の集合として
認識する可能性がある。
ただし、文字化けについて半角カタカナ・外字を使用しない。また漢字について JIS コー
ドの第1,2 水準のみ使用するよう心がけることが望ましい。
2.2.4.CAD データの受け渡しについて
現在 CAD データの受け渡しとしていくつかの方法があります。
オフラインよる CAD データの受け渡しは、FD,MO,CD−R,DVD−R があり、最近は MO
が主流になっています。FD では容量が少なく不向きである。CD−R と DVD−R について、読
み込み速度が早いが、書き込みが非常に遅く再書き込みが出来ない。セキュリティとしては安全
である。つまり改竄が出来ない点はメリットがある。
MO について最近は 1.3GB の容量が出てきている為大量なデータが保管できる。種類として
128/230/540/640/1300MB があり、普通の 2 次元 CAD データを交換するには 230MB が
ベストである。
これらのオフラインによるデータ交換はなるべくアーカイブをかけない方が良い。
オンラインによる CAD データの受け渡しについて、通信に負担をかけないよう出来る限りア
ーカイブ(LZH,ZIP)を行い送信する。但し、インターネットメールによるデータ送信につい
ては、1 回あたり上限を 1MB に押さえるよう注意を払う必要がある。場合によって相手側のシ
ステムにより受信できない場合がある。
16
2.3.STEP
2.3.1.STEP の概要
(1).目的:製品データの組織内及び組織間における交換と共有化
これまで、幾何学的にデータに対するデータのフォーマット化と交換の標準は、IGES や
DXF といったような形状の情報が主体であった。しかし、製品に関する全ての情報を処理又
は管理するための標準フォーマットはない状態にあった。STEP(Standard for the Exchange
of Product model Data)の目的は、コンフィギュレーション、BOM、エンジニアリング交換、
組織や個人情報そして製品データ管理(PDM)に付図する属性等のあらゆるデータを保存し
たり交換したりするための方法を示すことにある。
CAD/CAM/PDM 等の個別のソフトウェア製品の種類に依存せず、部品材質、機能、部品構
成、設計変更管理等の設計・製造・保守に関する等の形状を表現する図面情報のみではなく、
あらゆるデータの円滑なデータ交換を達成することにある。
(2).STEP の特徴
STEP の主な特徴としては、以下があげられる。
・IGES 等が図面の図形データ中心であるのに対して、STEP は製品の規格から製品の破棄ま
でライフサイクルに係わる製品データ全般を対象としている。
・規格の構造化、分冊化、データのグループ化により、規格の部分的な開発、理解、利用が可
能となっている
・STEP では、テストの仕様も明確にし、規格の解釈の違いによる問題を防止する仕組みが取
り入れらている。
・規格を正確に記述するための記述言語 EXPRESS を規格の一部として持っており、AP の開
発手順、IDEF0 などその表記方法についても規定している。
・製品モデルの表現方法とソフトウェアシステムヘの実装方法を分離している。
・単なる製品データ標準形式にととどまらず、その背景となる業務プロセス、必要データの抽
出など規格の開発手順も標準化されている。
・ISO にて標準開発の最中であり、生産システムに関する日本独自の手順、モデルを組み込め
る。
・世界規模での生産システムの情報インフラとなる性格を持っている。
(3).対象範囲
○製品の企画から保守・管理に至るライフサイクル全般わたりサポート
(4).ISO 標準
STEP は 、 ISO10303(Industrial Automation Systems and Integration Product data
representation and exchange)として 1994 年 12 月 15 日に第一版が発行され、TC(技術委員
会)184(産業オートメーションシステム及び統合)/SC(副委員会)4(Industrial Data and
17
Global Manifacturing Programming Languages:製品データの表現及び変換に関するワーキ
ング)において開発・審議が行われている。
2.3.2.STEP の規格
(1).構成
STEP のアーキテクチヤ STEP は、ひとつの規格ではなく、複数の規格がひとつファミリー
を構成したもので、主として2つのグループに分けられる。
Application Protocols
STEP Methodology
Application Interpreted Constructs
Implemention
Methodology
Integrated Resources
Generic Integrated
Resources
Application Integrated
Resources
EXPRESS,Physical
File,SDAI
Tools Used To Create
STEP Data Models
STEP Data Models
図 2.1 STEP の構成
①.STEP ツール
データモデルの生成に利用される STEP ツールは、以下のようなサブグループに分けられる。
1)Description Methods : STEP データモデルの記述に利用される形式言語で、EXPR
ESSとEXPRESS−G。
2)Implementation Methods : STEP Exchange (物理)ファイルフォーマットと SDAI
(STEP 準拠アプリケーション・プログラミング・インタフェース)
3)Conformance Testing Methodology : STEP データモデルの実装製品が仕様に適合して
いることを確認するために使用。
②.データモデル
STEP では、上記以外の2種類のデータモデル、Application Interpreted Constructs
(AICs)と Integrated Resources (IRs)を規定している。
1)Integrated Resources
・Generic Integrated Resources:基本的な部材、釘、ナット、ボルト等
18
・Application Integrated Resources:特定の利用分野に共通である部品、I 桁や車輪等
2)Application Interpreted Constructs:大型の集成部品、ドア、窓、シャーシ等
3)Application Protocols:最終的な製品、家、自動車等
③.Aprecation Protocoles(AP)
AP とは、「特定の応用分野における製品データを表現するための基準メカニズム」とし
て用意された STEP の基本概念であり、規格開発の当初において全産業の製品モデルを一つ
のモデルで表現することは困難であること、また規格利用の観点からは、製品モデルの全て
を同時に利用するケースが稀であることから、AP は産業別、応用分野別に製品モデルを抽
出し標準化されることとなった。AP の適用範囲、製品の型、製品のライフサイクルの支援
段階、製品データの要求型、製品データの利用と原理を明確に規定し開発がなされている。
それぞれ Part と呼ばれ一連の番号付けがなされており、AP では応用分野毎に以下の項目を
備えている。
①応用分野の情報交換に必要な STEP の要素群の取捨選択と再構成
②それらの要素群の実装試験に必要な認証試験法の指定
AP は個々の応用分野におけるデータ交換おける基準を定義するものであり、利用者から見
た場合、STEP を利用するということは AP の利用を意味することになる。利用者は該当する
AP を利用して、必要なデータ交換またはデータベースの利用を行う。
Part1∼Part101 は分野別の AP を構築するための AP となっており STEP の利用者はこれ
を直接利用するものではない。
19
(2).規格の内容
①.構成
STEP 規格は、多くの Part に区分され、各 Part は、複数のグループで構成されている。
ぞれのグループには「10303」の番号とその枝番号が付けられてあり、以下のようなものが
ある。
・Part 10303‐1 概要と基本原則
・Part 10303‐1X(10 シリーズ) Description Methods で、以下を含む:
10303‐11 EXPRESS言語のリファレンスマニュアル
10303‐12 EXPRESS‐12 言語のリファレンスマニュアル
・Part 10303‐2x(20 シリーズ) Implementation Methods で、以下を含む:
10303‐21 交換構造のクリアテキストヘのコード化(Exchange File フォーマット)
10303‐22 Standard Data Access Interface (SDAI)
・Part 10303‐3x(30 シリーズ) Conformance Testing で、以下を含む:
10303‐31 一般概念
10303‐32 試験施設とクライアントに関する要件
・Part 10303‐4x(40 シリーズ) Generic Integrated Resources で、以下を含む:
10303‐41 製品記述とサポートの基本
10303‐42 幾何及びトポロジ表現
・Part 10303‐1xx(100 シリーズ)Application Integrated Resources でヽ以下を含む:
10303‐101 製図
10303‐104 有限要素
10303‐105 運動
・Part 10303‐2xx(200 シリーズ)アプリケーション・プロトコルで、以下を含む:
10303‐203 構成管理設計
10303‐214 自動車関連機械設計のコアデータ
10303‐215 船の配置
・Part 10303‐3xx(300 シリーズ) 200 シリーズに対応する Abstract Test Suites で、以下を
含む。
10303‐303 は、アプリケーション・プロトコル 10303‐203「構成管理設計」用の
Abstract Test Suites である。
・Part 10303‐5xx(500 シリーズ) Application Integrated Resources で、以下を含む:
10303‐501 エッジ・ベースのワイヤフレーム
・Part 10303‐11 Description Methods (記述法):EXPRESS 言語のリファレンスマニュア
ル
AP を記述するEXPRESS言語の定義
・Part 10303‐21 1mplementation Methods(実装法):交換構造のクリアテキストベースの
符号化
20
EXPRESS 言語で表現されるデータを、テキストの符号化を利用した交換構造フォーマ
ットについての規定。STEP 形式のデータは最終的のファイルフォーマットとなる。
・Part 10303‐31 適合性試験の方法論と枠組み:一般概念
実装製品の ISO10303 への適合性を試験するための一般的な方法論と枠組みについての定義。
適合性試験中の実装製品は、IUT(implementation undertest)と呼ばれる。
②.EXPRESS(ISO 10303・11)
IGES 及びその他のデータ交換規格は、幾何要素やCAD図面という特定の情報について
の定義されている点である。その結果、これらの規格は、それが作成された時点で上記のデ
ータタイプの適切な表現と考えられていたものに限定される。一方、STEP は、現在はもち
ろん、将来製品の定義や用途が変化じた場合でも、データモデルの定義に利用できることを
意図している。
この目的を達成するために、STEP では新しいデータ記述言語が必要となり、EXPRESS
が開発されるに至った。EXPRESS は、データモデルを記述するデータ記述言語である。
EXPRESS では、データ要素、制約、関係、ルール、機能から対象の構成体(コンストラ
クト)を定義することができ、対象の分類と構造化も可能である。属性に対する制限の付加、
制約条件の追加、そして、構成体とアプリケーション構成体の関係の追加ができるため、ア
プリケーション・プロトコルの開発が容易に可能となっている。
EXPRESS は、データベースに個別に入力されると冗長となる可能性があるデータ要素や
オブジェクトと関わりのある情報を抽出する機能を備えている。例として、線を2つの終点
の座標で定義したものから、線の長さを導き出す、あるいは円の面積や円周を中心と半径に
より定義すること等が挙げられる。この機能によって、対象物の表現の曖昧さと冗長性が排
除される仕組みとなっている。Express には、以下のような幾つかの種類がある。
・EXPRESS-2:オブジェクト指向のモデル記述言語。EXPRESS の後継バージョンである。
EXPRESS の現在の機能、特にオブジェクト指向構成体のサポート機能を拡張することを
目指している。
・EXPRESS・I(10303‐12):STEP の記述法のひとつ(標準データインスタンス定義言
語)で、特定の EXPRESS スキーマ内の値を定義する。
・EXPRESS―G : EXPRESS スキーマの図形表現機能を提供。 EXPRESS の機能のサブ
セットだけを対象としている。
21
ENTITY person;
first_name:STRING;
END_ENTITY
ENTITY empolee SUBTYPE OF(person);
divition_name:STRING;
END_ENTITY
図 2.2 Express による表現
person
employee
student
図 2.3 Express-G による表現
・EXPRESS・M:ひとつのスキーマから別のスキーマヘのマツピングを可能にする。英国の
CIMIO 社によって開発され、EXPRESS‐V との組み合わせで、STEP 規格の追加版、
EXPRESS‐X として提案されている。
・EXPRESS・V:EXPRESS スキーマについて異なる「ビュー」の生成を可能にする。米国
の STEP Tool8 社によって開発され、最近 EXPRESS・M と組み合わされて、EXPRESS。
X として提案されている。
・EXPRESS‐R 及び EXPRESS‐C : それぞれ要件モデルと概念モデルを定義するため
の EXPRESS の拡張版。 PISA プロジェクトによって提案されている。
・EXPRESS・X : 最近提案されている STEP 規格の追加版であり、EXPRESS‐M と
EXPRESS。V を組み合わせたものである。スキーマのマッピングと複数のビューを実現
する。
22
③.STEP 交換ファイル(ISO 10303‐2I)
STEP がこれまでのデータ交換規格と大きく異なるのは、情報のコンテンツをデータがデー
タベースやファイル等の物理的な格納方法と分離されている点にあり、STEP 交換ファイルに
拡張性を与え、幾何要素にのみではなくあらゆる種類のデータのサポートを可能としている。
データが EXPRESS で定義されたデータモデルに適合する限り、あらゆるデータの交換に利
用できる。唯一要求される条件は、交換ファイルの受信側が、そのファイルの生成に利用され
たのと同じ EXPRESS のスキーマを持っていれば交換が可能となる。
リレーショナル・データベースとの比較で言えば、STEP では、必要なテーブルに対するス
キーマ(データ項目とその構成)が定義され、テーブルにデータが格納される。その後、新し
いフィールドが必要になるか、既存のフィールドが修正された場合、スキーマは修正され、テ
ーブルに新たなデータを保管する。全く異なる利用分野については、異なるスキーマを定義し
て、新しいテーブルを作成する。対象データの送付側と受領側が、同じスキーマを使っている
限りは、情報の交換と共有が可能となる。
IGES やその他の以前のデータ交換規格では1構成であり、新規項目の追加や既存の項目を
修正する場合、規格を変更する必要があった。新しい利用分野を取り入れるためには、新たな
規格を必要としていた。
④.SDAI(ISO 10303―22)
SDAI は、STEP 準拠アプリケーションが利用できる共通のデータトランザクションを定義
し、異なるアプリケーションによって同じデータを共有することを可能にするデータアクセス
方法に関する標準的なインタフェースを提供している。この仕様は、機能レベルであり、使わ
れるコンピュータへの実装製品(ソフトウェア)とサポート対象のアプリケーションのどちら
からも独立している。仕様は、FORTRAN、C/C++言語等の最も一般的なプログラミング言語
への変換が可能である。
⑤.STEP のデータモデル
リレーショナル・データベースのスキーマ等と同様に、STEP のデータモデールは、データ
自体ではなく、データのタイプと構造を記述するものとなっており、工ンティティ、関係、属
性、制約の集合体である。例えば、幾何エンテイティを記述するデータモデルは、1本の線を
その終点2つで、二次元の円を中心と半径で定義することができる。これらの定義が実際のデ
ータを表現する工ンティティのインスタンスに対応したテンプレートとなり、プログラミング
言語ではオブジェクトのクラス定義に該当する。STEP では、データモデルの範囲が拡張可能
であり、異なるデータモデルの間でデータの定義を共有についても定義している。例えば、製
品データには通常、単純な幾何データ以上のものが含まれ、製品データ項目は、自動車、航空
23
宇宙、プロセスといった様々な産業分野に亘る定義が可能である。
エンティテイ/属性の関係に関する記述法を利用して、リレーショナル・データベース向け
にデータモデルを開発することは以前から行われていたが、STEP では、EXPRESS とそのグ
ラフィツクス版である EXPRESS・G を導入して、抽象的な概念データモデルを作成可能であ
る。こうしたデータモデルは、実際の製品 DBMS(DB2、Oracle、ObjectStore 等)、及び、
利用される技術(順次編成ファイル、コアデータ構造、RDBMS、OODBMS等)から独
立してもので、モデル定義としては共通に利用できる。また、最近、UML ようにオブジェク
ト指向の方法論によるモデル記述も出現している。UML は、ISO における GIS 分野のデータ
様式の開発で用いられている。
⑥.アブリケーション・プロトコル (ISO10303-2xx)
EXPRESS は、製品データモデルを定義するための仕組みでデータそのものを表現するもの
ではなく、データの構造や構成等を表現したものである。STEP 交換ファイルと SDAI は、製
品データを送信するための手段であるのに対し、アプリケーション・プロトコル(AP)は、ア
プリケーション・プログラムからアクセス可能な製品データモデル仕様あるいはスキーマ(設
計図のようなもの)ある。アプリケーション・プロトコルは現在、利用分野毎に定義が行われ
ており、国際規格としてリリースまたは ISO 標準化されたものとがある
アプリケーション・プロトコルは、使用されている工ンティテイとひとつのエンティティ内
の属性が他の工ンティティ内の属性とどのように関わっているかを定義しているという点で
は、リレーショナル・データベースにおけるデータディクショナリやスキーマと同様のものと
考えることが可能である。アプリケーション・プロトコルで指定された種類のデータを処理す
るコンピュータ・プログラム内のデータ構造の仕様として利用することもできる。
⑦.統合リソース
統合リソース(Integrated Re8ources : IR)は、複数の利用分野で使える STEP のデータ
モデルを言う。アプリケーション・プロトコルと異なり、統合リソースは、対象分野に依存し
た内容については含んでおらず。アプリケーション・プロトコルや Application Interpreted
Constructs 等のより複雑なデータモデルの一部として組み込みことができる一般的、あるいは、
それに近い基本データモデルを表現した基本的なライブラリと言えるものである。統合リソー
スには、「40 シリーズ」に属する Generic Integrated Resources と、「100 シリーズ」に属
する Application Integrated Resources の2種類がある。
Generic Integrated Resources は、特定の利用分野からは完全に独立し、多くの異なる分野
のサポートに利用できるモデルデータエンティティを表現する。
一方、Application Integrated Resources は、特定の利用分野に共通のデータエンティティ
を定義している
24
⑧.Application Interpreted Constructs (10303-5xx)
Application Interpreted Constructs (AIC)も、STEP データモデルである。アプリケーショ
ン・プロトコルと同じく、AIC も、特定分野のデータについての記述を規定している。しかし、
AIC は、複数のアプリケーション・プロトコルに含められる中核となる仕様であり、統合リソ
ースと合わせて一般及びそれに近いデータモデルの再利用が可能なものとなっている。
⑨.STEP データモデルとその相互関係
STEP のデータモデルはアプリケーション・プロトコル、統合リソース、そして、Application
Interpreted Constructs から構成され、アプリケーション・プロトコルを製品、統合リソース
を部品とすると、Application Interpreted Constructs は、集成部品と考えられる。
(3).STEP の構成のまとめ
STEP の構成は、既存のデータ交換規格に関連した問題の多く(全てとは限らないが)を克
服できる概念をもっており、幾何要素と技術図面に限らず、考えられる全ての分野の製品デー
タに関して、複雑で進化するデータモデルを明確に定義を可能とする手段を提供する。 STEP
の大きな特徴は、データの定義を、物理ファイルまたはデータベース内の表現から分離するこ
とにある。これによって、STEP は、以下を含めた多くの方法で拡張が可能で、STEP ツール
を拡張して、コアとなる STEP ツールセットの機能を向上・強化することができる。
PART1
STEPの概念と基本原理
モデル表現
PART41,42,・・・
統合リソース
PART11,
・・・
記述方式
記述
PART101,・・・
統合応用リソース
PART31,
・・・
PART201,203,・・・
アプリケーションプロトコル
実装方式
実装の単位
図 2.4 STEP の構成
25
適合試験
適用
PART21,・・・
表 2.2 STEP の PartSTEP の Part の内容
PART
1番台
10 番台
11
20 番台
21
30 番台
31
名 称
Overview and fundamental principles
Description methods: The EXPRESS
language reference manua1
Implementation methods: Clear text
encoding of the exchange structure
Conformance testing methodology and
framework: General concepts
40 番台
41
Integrated generic resources:
Fundamental of product description and
support
42
Integrated generic resources: Geometric
and topological representation
Integrated generic resources:
Representation structures
Integrated generic resources: Product
structure configuration
Integrated generic resources: Visual
presentation
43
44
46
100 番台
101
Integrated application resources:
Draughting
200 番台
(AP)
内 容
概要と基本原理
・STEP の概要と基本原理
記述方式
・EXPRESS言語の仕様 (STEP では Part40、100 及び
(EX]PRESS言語参照マニュアル)
A]P200 番台は、製品モデルを表現する規格である。製品モ
デルは EXPRESS 言語で記述することになっている。)
実装方式
・交換ファイルの構造・実装に用いるプログラミング言語の定
(可読テキストコードによる交換構造)
義
適合性試験方法と構成
・アプリケーションプロトコル及び実装方式のテスト方法に関
一般概念
する規定
統合共通リソース
・アプリケーションプロトコルから参照されるリソース(基本
要素)。統合リソースは、汎用の属性を持ち全てのアプリケ
ーションプロトコルで共通である)
製品の記述および支援の基礎
・単位系や年号など共通に用いられるもの(→他の統合共通リソー
(統合共通リソース:製品の記述および
スで用いられる表現要素)
支援の基礎)
幾何および位相表現
・幾何形状・幾何形状要素の接続などを記述する位相・リイヤフレー
統合共通リソース:幾何および位相表現)
ムモデルなどの形状モデル
表現構造
・AP において統合共通リソースが参照するための要素
(統合共通リソース:表現構造)
製品構造の構成
・部品リストなどの製品構造がどのように構成されているかに関
(統合共通リソース:製品構造の構成)
する表現要素
視覚的表示
・製品V一夕を図画的な形態で表示するために必要な要素
(ex、
(統合共通リソース:視覚的表示)
線分の種類や色などの記述要素)
統合応用リソース
・アプリケーションプロトコルから参照されるリソース(基本
要素)
製図
・製図の表現に必要な共通表現要素
アプリケーションプロトコル
201
Application protoco1: Explicit draughting
203
Application protoco1: Configuration
controlled design
明示的製図
2 次元
構成管理設計
3 次元
26
・業種・業務別の製品モデル (統合リソースを参照し、リソー
スの属性を業種・業務固有の要件に応じて制約すること等に
より、製品モデルを定義する)
2.3.3.STEP 開発の流れ
(1).STEP に基づく設計の方法論
STEP データモデルの作成に利用される方法論は、データベースやその他のアプリケーショ
ン・ソフトの開発に採用されているものと手順の面で類似している。STEP データモデルの作
成においては、以下のような流れとなる。
手 順
Tools
Specifications
Scope Statement
対象とする製品、製品デー
タの種類、ライフサイクル
におけるフェーズの定義
IDEF0
ユーザー要求
(AAM)
○業務分析
・設計、製造の業務フロー
・必要な製品データが生成
されるプロセスを標準化
EXPRESS-G
IDEF1X
詳細設計
(ARM)
業務フロー、デー
タ構造の標準化
業務情報を表現
○情報要件の抽出
・対象とする製品データモデル
・アプリケーション(対象製品、
業務)の言葉で定義
Data Model
データ交換及び共
有化の実装モデル
実装
(AIM)
EXPRESS
認証・テスト
Conformance
Class
Application
Protocol
(AP)
Application
Interpreted
Construct
(AIC)
Integrated
Resource
(IR)
図 2.5 STEP 開発の流れ
・ Application Activity Mode1 (AAM):ユーザー要件の把握
・ ApplicationRef6rence Mode1(ARM):詳細なデータ仕様を表現し、適用分野の用語 を
使って記述されているデータオブジェクト(エンティティと属性)を含む。
・ Application Interpreted Model (AIM):STEP のデータ定義言語であるEXPRESSで
書かれたデータモデル仕様を定義する。従って、AIMは、データモデルの要件を STEP に
実装したものを表現する。
27
2.3.4.各要素の概要
(1).Application Activity Mode1 (AAM)
Application Activity Mode1 (AAM)はアプリケーションの要件仕様を定義し、IDEF0 のよ
うなアクティピティ・モデリング手法を使って記述され、利用分野の範囲内におけるアクティビ
ティとデータフローの解析を行う。アプリケーション・アクティビティ・モデルの役割は、アク
ティビティ自体、そして、どんなプロセスが必要かを把握することにあり、プロセスがどのよう
に実装されるかについては考えない。
IDEF0 は、最適のツールとして選ばれることが多いが、STEP は、IDEFO を正式な記述方法
といて規定はしていない。
(2).Application Reference Model
Application Reference Mode1(ARM)は、利用分野の範囲内においてアクティビティをサポ
ートするのに必要なデータオブジェクト(工ンテイティと属性)の詳細な設計仕様、及び、それ
ら相互の関係を分析・表現する段階である。ここで定義された要件は、適用分野の用語を使って
記述され、将来の開発だけでなく、審査や確認の基本となる。STEP では、ARM を開発するた
めのツールについては特に規定されていない。
(3).Application Interpreted Model
Application Interpreted Model (AIM)は、標準的なデータ構成体の中から、ARMに規定
されている要件を満足するものを抽出・整理する段階である。AIM は、EXPRESS で定義される
(4).EXPRESS
AP、AIM、IR、AIC はそれぞれ、EXPRESS 言語を使って記述する。それぞれの要素の完全
な仕様は、実際には、データ仕様(EXPRESS で記述)とデータの意味の仕様(英語)という2
つの部分から成る。EXPRESS 言語の構造からは、データの意味の部分的な定義を行うが、完全
で明確なその内容は、EXPRESS と英語の仕様を組み合わせることで表現している。
(5).Abstract Test Suites
STEP の方法論に基づき開発された AP 等が規約準拠しているものかどうかの適合性試験につ
の規定である。この点が、STEP の概念と、IGES を含めた、幾何データの交換に関する規格(正
式の試験手順を規定していない)との大きな差異と言える。試験方法についての標準化がないこ
とにより IGES では、実装者による派生を生み出す結果となっている、混乱をもたらす基本的な
原因となった。このような点の反省に立ち、STEP では、この問題を回避する手法が規定されて
いる。
28
2.4.IFC
2.4.1.IFC の概要
IFC(Industry Foundation Class)は、建設分野(主に建物)におけるライフサイクルを通じて、
ソフトウェア間での有効な相互作用を可能するための標準化非営利団体である
IAI(International Alliance for Interoperability)により開発されているデータ交換フォーマット
である。
IAI は、当初、建設業に携わる北米の12の会社により創設され、1998 年現在で、約600社
が参加しており、その目的は、「プロジェクトのライフサイクルを通じて、各業種とソフトウェ
ア・アプリケーションで使用する共有データの仕様の定義及び、利用の推進、その広報活動をす
ること」となっている。現在のバージョンは、リリース2となっており、前バージョンのリリー
ス 1.5 については、実装された CAD が市販され始めている。
建築
土木
構造
共有プロダ
クトモデル
施主
FM
設備
制御
施工
図 2.6 IFC が唱える相互運用性の概念図
2.4.2.IFC の概念
IFC は、建物を構成する全てのオブジェクト(例えば、ドア、窓、壁など)のシステム的な表
現方法を定義したものであり、プロジェクト・モデルのデータ構造も提供している。
IFC の規定の中で定義された各要素は、「クラス」と呼ばれ、そのクラスが持つ共通の特性が定
義されている。これは、単に、形状の表現にとどまらずクラスの対象物が持つ属性を含むものと
なっている。(例えば、クラス「ドア」は、その構造寸法や材質、壁に設置される等のドアとして
条件や基本的性質を持つ)いわゆる設計図であるクラス定義により作成された実体は、オブジェ
クトと呼ばれ、このオブジェクトの交換により、A 業者が作成したドアは、B 業者に渡ってもド
アとして扱うことが可能となる。
29
DXF
Graphic Entity
line
line
line
ドア
line
line
line
line
柱
line
柱
line
line
壁
line
arc
IFC
Object Model
壁
柱
壁
柱
柱
柱
ドア
ドア
図 2.7 DXF と IFC のデータ交換における差異
拡張データ
(アプリケー
ション依存)
拡張データ
(アプリケー
ション依存)
IFC
CADデータ
CADデータ
従来のモデル
IFCのモデル
図 2.8 従来モデルと IFC の交換モデル
2.4.3.IFC の規格概要
(1).構成
IFC は、図 2.6 のような構成となっており、主要となる部分は、AEC プロセスと IFC プロジ
ェクトモデルである。AEC プロセスでは、プロジェクトモデルがサポートする建設業界の各業
種の作業プロセスの説明が記述されており、IFC プロジェクトモデルには、必要となるオブジェ
クトクラスが規定されている。
30
AEC PROCESSES
IFC PROJECT MODEL
MODEL EXCHANGE
(FLASE=STATC)
IFC
MODEL
EXCHANGE
MODEL INTERFACES
(RUNTIME=DYNAMIC)
図 2.9 IFC の構成
(2).主な仕様の内容
IFC の仕様書において規定している主なものには以下の項目がある。
・使用方法:設計手順等のプロセス間で必要となる情報の記述
・プロセスダイアグラム:プロセス定義を TQM 図式で表現したもの
・クラス:オブジェクト指向定義で使用される構成要素。ドア等の物理的なオブジェクトや
施工プロセスでの作業項目、積算プロセスでのリソース等も含む。
・インターフェース:インターフェースは、ソフトウェア開発者向けの IFC オブジェクトと
のアクセスを規定したもの。
・属性:クラスまたはインターフェースに付随する情報で、オブジェクト定義に付加定義さ
れるもの(例えばドアであれば、高さ、幅、材質等)
・関連:クラス間の関連を定義したもの。
・情報モデル:クラス、インターフェース、属性、関連を表現したもの。IFC のモデル図化
表記法は、EXPRESS-G が用いられる。
・テストケース:ソフトウェア・ベンダーが開発した IFC 準拠のアプリケーションテストに
関する規定。
31
3. 今後の設計情報の在り方
3.1.今後の設計手法とその情報のあり方
3.1.1.設計手法の変革
建設 CALS が推進される今日の状況を考えると、今後の設計手法は情報処理技術の活用なくし
てはありえない。ここで言う情報処理技術は、CAD のみならず、その拡張である CAE(Computer
Aided Engineering)、
CAM(Computer Aided Manufacturing)
、CAT(Computer Aided Testing)
や GIS(Geographic Information System)、CG(Computer Graphics)、ネットワーク通信
技術、人工知能(AI)、オブジェクト指向プログラミングなど広範囲である。現在、情報ネット
ワークが整備され、土木業界においてもインターネットの電子メールによるデータ交換が一般化
しつつある。そして、今後さらにコンピュータによる設計支援が発展するためには、標準に基づ
く情報の電子化が重要であることは前に述べたとおりである。
情報化推進を図る一方で、今後の設計にとって最も重要なことは、「土木プロジェクトにおけ
る1つのプロセスとして設計を認識すること」である。
土木プロジェクトを「目的物のライフサイクルにおける企画、計画から維持管理、廃棄までの
プロセスの集合」と考えると、従来の設計は前後のプロセスである計画・調査や施工との関係が
薄かった。しかし、今後の設計は、土木プロジェクトにおける1つのプロセスとして、他のプロ
セスと連携する必要がある。すなわち、ライフサイクルにわたる設計情報の交換・共有によって、
それぞれのプロセスにおける作業の効率化や高度化を実現することである。そして、このように
設計を位置付けることによって、交換・共有する電子情報の流れに合わせて設計手法も変革して
いくものと考えられる。したがって、CAD そのものも進化しなければならない。
今後も設計作業の中心は CAD と考えられるが、製図道具としての機能だけでは不十分である。
土木プロジェクトの目的物の形状情報だけでなく、材料、コスト、作業工数などライフサイクル
に必要なすべての情報すなわち STEP や IFC のようなプロダクトモデルデータを取り扱うこと
ができなくてはならない。このためには、CAD ソフトウェアもオブジェクト指向によってプロ
グラムされる必要がある。また、標準に基づいて電子化された土質や地形などの情報を直接 CAD
に取り込んで加工することにより設計検討の高度化や製図作業の効率化を実現できるシステム
への変革も進められるものと考えられる。
32
3.1.2.今後の設計手法と設計情報のあり方
前述のように、設計は土木プロジェクトにおけるプロセスの一部として位置付けられる。この
観点から、今後の設計情報はプロジェクト管理の主体的なデータになるものと考えられる。STEP
や IFC のようなプロダクトモデルデータが実用化されれば、目的物のライフサイクルに必要なす
べての情報を CAD データとして、ライフサイクルにわたって交換・共有することができる。そし
て、そのデータをもとに、コスト管理、品質管理、施工シミュレーション、工程管理、補修履歴
管理など、プロジェクトプロセスに必要な作業をコンピュータによって実行できる。したがって、
図に示すように、単に設計情報というだけでなく、プロジェクトにおいて中核をなす情報となる。
プロダクトモデルデータを CAD で取り扱うためには、次の事項が必要である。
土木プロジェクト
企画・計画
調査
土質情報
設計
コンピュータ
グラフィック
施工
コスト管理
工程管理
管理
改良
設計情報
地形情報
追加・修正
品質管理
高度な
検討
補修
施工シュミレーション
図 3.1 土木プロジェクトにおける設計情報の利用イメージ
1).目的物の形状情報を2次元から3次元へ拡張すること
2).目的物を部品に分解(オブジェクト化)して、それぞれを定義すること
3).オブジェクト指向により CAD ソフトウェアをプログラムすること
建築分野では、既に3次元設計が一般化しており、オブジェクト指向の CAD が市販されたこ
とにより IFC に基づいたデータ交換・共有が実現されつつある1)。
しかし、土木分野では設計の主流はいまだ2次元である。これは、土木が「土」と密接に関係
しているため、目的物が極めて複雑な形状をしていることが理由の1つとして考えられる。切土
のり面を例に考えると、地山との境界を表わす曲線を3次元で作図したり、のり肩のラウンディ
ングを含めた曲面を3次元空間に面として表現したりすることが困難であることは簡単に理解
できる。また、地表面の形状を造り変えることを主体とする土木では、その目的物を部品に分解
することも困難である。
本来、2次元の形状情報は人間が目で見て扱うためのものである。すなわち、一般に「平面図」、
33
「側面図」、「断面図」の3方向の2次元図面を、目を通して頭の中にインプットし、人間が思
考によって3次元物体に再構成する。しかし、土木構造物に対してこれをコンピュータで実現す
ることは困難なので(機械系の CAD では3方向の2次元図面から3次元形状を再構成する機能
を持っているものもあるが…)、コンピュータを利用する場合には、3次元物体を「3次元」で
取り扱うことが前提となる。いわゆる、「ドラフティング」から「モデリング」への拡張である。
形状情報の3次元化は、設計段階での業務量の増加を意味する。しかし、3次元の設計情報を、
施工シミュレーションや自動施工(ロボット施工)など工事管理の基本データとして利用するこ
とができれば、土木プロジェクト全体では大きな効果を得ることが期待できる。言い換えれば、
設計段階で一時的に生産性が低下しても、全体としては効率化が実現される。したがって、設計
情報を3次元化するためにはプロジェクト(ライフサイクル)に一貫した設計データの交換・共
有が不可欠であり、効果を上げるためには各プロセス(企画・調査・設計・施工・維持)を統合的に
取り扱うシステムが必要となる。また、STEP や IFC のうようなオブジェクト指向プログラミン
グのためのクラスを定義するためにも、形状情報の3次元化は不可欠である。
これらのことから、土木分野において、プロダクトモデルデータが実用化されるまでには時間
を要するものと推測される。そこで、当面は設計も2次元での CAD による製図が主体となり、
必要に応じて CAD データの属性として設計情報が交換・共有されるものと考えられる。例えば道
路設計では、平面設計図に旗上げされる用排水こうやガードレールなどの施設に関して、種別、
形状(大きさ)、強度、数量などの情報を CAD データの属性として後プロセスに引き渡すこと
である。これであれば、具体的な手法はまだ確立されていないものの、現在市販されている CAD
によって実現可能である。
3.1.3.高度な設計情報交換に関するいくつかの取り組み
ここでは、今後の土木プロジェクトにおいて、設計情報がどのように使われるか、また電子的
に引き継がれた地形・地質情報を CAD で如何に利用するかといった、観点からいくつか事例を紹
介する。
(1).設計における地形データの利用
土木設計で利用する地形データは、主に測量作業によって作成された地形図や縦横断図であ
る。現在、それらのデータは紙の状態で設計に引継がれるのが一般的である。仮に電子データ
として引継がれる場合でも、公共測量作業規程に規定されるデジタルマッピングデータ仕様に
基づく電子ファイルであり、そのままでは設計 CAD で利用できないと言われている。そこで、
CAD で利用できる形の電子データとして測量成果を設計に引継ぐ必要が生じる。
道路分野に関しては、プロジェクトの初期段階のため最も効果が期待できる航空写真測量
(デジタルマッピング)を対象として、建設省土木研究所や日本道路公団試験研究所において
ライフサイクルで利用するための地形データの電子化に関して研究が行われている。また、全
国測量設計業協会連合会では数値地形データの交換を目的とした「JSP・SIMA-DM フォーマッ
34
ト」を策定している2)。今後 CAD や GIS での利用が期待される。
(2).地質データの3次元 CAD での利用
全国地質調査業協会連合会では、「建設 CALS/EC に対応する業界標準システム構築事業」
において、地質調査における業務処理の電子化などについて検討している3)。その中で、土質
データの電子データ交換に関して、ボーリング柱状図や土質断面図などのファイル交換システ
ムの業界標準を検討するとともに、そのプロトタイプの開発も行っている。このような研究が
発展すれば、土質調査の情報を電子データとして引継ぎ、これを設計における CAD に直接取
り込んで利用することが期待できる。
土木設計では、現在主に地質調査によって作成された報告書として土質情報を得る。その中
で土質柱状図に関する情報の利用頻度が極めて高い。さらに、設計における利便性を向上させ
るためには、ピンポイントで取得されるボーリングデータの間の地質を推定し、3次元情報と
して CAD で活用することが求められている。
例えば、ダムサイトの地質調査における調査データの収録、保存、検索の実現や地質解析、
地質図作成、岩盤掘削面調査などにおける地質情報の体系的処理に関する研究も実施されてい
る4)。この研究における地質境界線は地質技術者の判断によって推定するとしており、実用性
を重視した地質図作成作業の効率化を実現している。一方、有限個のボーリングデータから3
次元の不均質な地質構造を推定する手法として地盤統計手法に関する研究も行われている5)。
さらに、この研究に基づいて開発された地盤構造解析システムも市販されている。
(3).空間・時間・コストを総合的に検討した設計手法
土木プロジェクトにおいては、寸法形状、品質、時間(作業工数)、コストなど各要素の関
係を、企画、設計など比較的初期の段階から最適化することが求められている。これは、土木
プロジェクトが大規模かつ長期にわたるため、社会的・経済的変化ならびに設計条件の変更な
どに柔軟に対応する必要があることが理由となっている。今後の設計支援システムには、設計
条件だけでなく、施工期間やコストなどを統合的に検討し可視化できる機能が必要となる。
なお、このような観点から、鋼構造物を対象とした、空間と時間の4次元にコストを組み合
わせた設計システムに関する研究も行われている6)。
(4).設計情報の工事管理システムへの適用
施工段階において、設計情報を施工シミュレーション、工程管理、自動施工などの技術に活
用することが考えられる。すなわち、コンピュータの内部に施工前の状態を再現し、それに対
して設計情報(目的物が完成したときの状態)を入力することにより、工事途中の状態をシミ
ュレーションすることが可能となる。また、施工シミュレーションの結果に標準作業工数を組
み合わせることにより、工程やコストの管理に利用することも可能となる。
土木と比較して部品化が簡単な建築分野では、工場製作された部材を現場で組み立てるよう
な工事を対象として、部材搬入から建方までを統合的に計画・管理するコンピュータシステム
35
が開発されている7)。将来的には、同様な工事管理システムを土木分野へ適用することも十分
考えられる。
4. 土木分野への適用とその課題
コンピュータのハード及びソフトウェア技術の進展に伴い土木分野においても、これまで述べた3
次元設計の一般化や対象物の性質や属性を含めたデータ交換の実現化が近づきつつあると考えられ
る。しかし、これを行って行くためには標準化や利用環境の整備、技術の普及等の課題も依然として
少なからず存在する。土木分野においてこれらを今後進展させるための主な課題としては以下が考え
られる。
(1).基礎データの標準化と利用環境の整備
土木分野での 3 次元設計を考えた場合、そのベースとなる地形等の情報が 3 次元で必要とな
る。現在、これを行うためには多大な労力を要しており、測量において取得された情報から 3
次元の地形モデル等のデータが提供されれば 3 次元設計の導入もし易くなるものと考えられる。
その際のデータについては、3 次元設計を前提としたデータ作成が必要であり、これに関する
標準化が必要と考えられる。
(2).共通モデル開発のための仕様等の標準化
土木の図面や設計仕様、積算に関する仕様は発注者ごとにことなる場合が多い。このため現
状でオブジェクトモデル等の開発を行う場合、仕様の違いにより同様の本質的に同様のもので
も異なるオブジェクトにしなければならい可能性も否定できない。よって、共通モデルを開発
する場合にはその前提として、基本的なプロセスや各仕様の標準化を行う必要があろう。
(3).データモデルの開発
土木分野において電子化は、近年の建設 CALS 等の動きを期に進みつつあるが、業界全体と
してみればまだ紙ベースでの情報交換が主流を占めている。また、その情報化のレベルも組織
間や組織内においても格差がある。しかし、この流れは着実に進展していくものと考えられ、
将来の設計方法や情報交換手法の必要性が今後、さらに高まるものと推察される。特にデータ
交換や表現法に用いるオブジェクトモデルの開発には、土木分野特性を踏まえると相当の期間
と労力を費やす必要があると考えられる。したがって、土木業界における将来的なビジネスモ
デルと併せ、それを支える環境の一つとして認識し、その実現に向けたアクションが必要であ
る。
36
【 参考文献 】
1) 建築業界を大きく変えるオブジェクト指向の CAD、日経 BP 社、日経 CG、pp。122-139、1998
年 10 月。
2) JSP・SIMA-DM フォーマット技術解説書、全国測量設計業協会連合会、1998 年 11 月。
3) 「建設 CALS/EC に対応する業界標準システム構築事業」の概要、全国地質調査業協会連合会、
地質と調査、第4号、pp。77-81、1998 年。
4) 平野勇、双木英人、阪元恵一郎、小池淳子:ダムサイト地質調査業務における電算処理化の試み、
情報地質、第 8 巻第 1 号、pp。3-13、日本情報地質学会、1997 年。
5) 大西有三、田中誠、大澤英昭:不均質地盤内の地盤定数の推定に関する基礎的研究、土木学会論文
集、No。457/Ⅲ-21、pp。51-58、土木学会、1992 年。
6) M。 Salonen、 J。 Rautakorpi、 M。 Heinisuo : Proposal for 4。5 Dimensional Design via
Product Models and Expert System、 Lecture Notes in Computer Science、 Vol。1454、 pp。
464-468、 1998。
7) 汐川孝、福田一成、金子智弥、他3名:三次元 CAD 動画を活用した工事管理システムの開発、建
築学会、第 10 回建築生産パネルディスカッション報文集、pp。1-8、1999 年 3 月。
8) IFC エンドユーザーガイド、IAI プレゼンテーション資料
9)(社)建設コンサルタンツ協会 近畿支部:
建設 CALS/EC の導入と CALS 要素技術に関する研究 平成 11 年 3 月
10)(財)日本建設総合情報総合センター:
電子データ交換ガイドブック 第 1 版 平成 10 年 1
37
用語集
AAM 【
A pplication A ctivity M odel
】
STEP では応用分野ごとにアプリケーションプロトコルとして,製品モデルを活動モデル(AAM),
参照モデル(ARM),翻訳モデル(AIM)の3つのモデルで段階的に定義している。
AAM では,適用範囲や必要機能を明確にするため,製品データの生成,利用を行う過程を図式的に記
述する。図式表現は IDEF0 図式表記法を使い,業務プロセスを基本的な活動単位に分解し,その活動
単位に対する入力,出力,制御,およびメカニズムを明らかにする。
A IM 【
A pplication Interpreted M odel】
ARM は応用分野の用語で表現されているため,STEP 処理系では扱うことができない。AIM では
アプリケーションプロトコルの詳細を計算機処理可能な形式言語である EXPRESS で厳密に定義す
る。
ARM 【
A pplication R eference M odel】
ARM は応用分野の内容をマクロ的に理解することを目的として,情報の関連性を応用分野の技術
用語で表現したものである。図式表現は IDEF1 または EXPRESS-G を利用する。
CAD 【
C om puter A ided D esign】
コンピュータを用いて設計を行う方法で,設計者がコンピュータと対話方式で図面情報などの入力,
計算,出力を行い,設計仕様に基づいた設計を行うこと。
CAM 【
C om puter A ided M anufacturing】
製品の製造工程にコンピュータを導入し,合理化・省力化を行うこと。
コンピュータで工作機械の選択,加工手順の決定などを行うこと。
計算機支援による製造のこと。
CAE 【
C om puter A ided Engineering】
コンピュータを用いて高度な数値解析シミュレーションにより,実験・計測・設計・製造等に活用
する技術のこと。例えば,FEM(有限要素法)により,element と呼ばれる力学的特性を持った単純形
状の要素で連続体を分割し,その接点まわりの力学的釣り合い方程式(超多元連立方程式)を解き,
変位,ひずみ,応力,加速度等を求める手法等がある。
C D -R 【C om pact D isk R ecordable】
ユーザが任意のデータを一度だけ書き込める C D 。いったん書き込んだデータは消去できない。バ
ックアップなどの用途に利用される。
C G 【C om puter G raphics】
「コンピュータグラフィック」の略。コンピュータを使って作成された画像のこと。
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CGM 【
C om puter G raphics M etafile】
図・表・イラストなどの線画グラフィックデータを交換するためのCALS標準規格である。
CGMで記述された図形をSGMLで作成した文章の中に入れて処理することも可能で,CGMを利用
することによってSGMLで作成する文章の表現力がアップする。
DXF 【
D ocum ent Interchange Form at】
2次元CAD図面のデータ交換用フォーマット。AutoCADの外部データ形式として作られたASCII
形式のフォーマットであり,各種CADメーカーがAutoCADの図面データを取り込むために装備した
ため,パソコンCADのデファクトスタンダードとして定着した。現在,中間データ交換フォーマット
として幅広く利用されているが,情報を正確に伝達できないケースが多い。
D V D -R 【D igitalV ersatile D isk R ecordable】
1 度だけ書きこみが行える追記型 D V D 。D V D -R O M や D V D -R A M など他の D V D 規格とも互換性があ
る。1997 年 4 月に策定されたバージョン 1.0 規格では、記憶容量は片面 3.95G B 、両面で 7.9G B となっ
ており、D V D -R O M よりも少ない。バージョン 2.0 規格では D V D -R O M 並みの容量が実現される予定
である。
DWG
AutoCADの標準フォーマット。AutoCAD間でデータを交換する場合は,DWGを使用する。DWG
を利用することによって,他のフェーズ(他社)との完全なデータ交換が可能である。しかし,DWG
の仕様が非公開なので,異なるCADとのデータ交換は行えない。
日本道路公団では,DWGを用いて実証実験を行っている。
EXPRESS
STEP が対象とする製造業における製品モデルは,極めて複雑かつ広範囲であり,対象の抽象的で
大掴みな表現から詳細で厳密な表現までが求められる。そこで,STEP では必要とされる表現の抽象
度に応じて,IDEF1X,EXPRESS-G,EXPRESS の3種類の表現ツールを使い分けている。
EXPRESS は曖昧さを極力排除して厳密な製品モデルを定義するために開発された言語であり,
EXPRESS-G により表現された製品モデルを過不足なく表現できる。EXPRESS-G で表現された製品
モデルを EXPRESS で詳細化することにより,製品モデルとその具体的なデータに関する計算機によ
る処理が可能となる。
FD 【Floppy D isk】
「フロッピーディスク」のこと。磁気記憶媒体の一つで、磁性体を塗布した一枚の円盤とそれを防
護するジャケットで構成される。容量が小さく、データの読み書きの速度も速くないが、安価なため
広く普及している。
G IF【G raphics Interchange Form at】
アメリカの大手 B B C である C om puServe によって開発された画像交換フォーマットであり、様々な
機種で表示できるような解像度や色数(256)などのデータをもっていることから、パソコン通信やイン
39
ターネット利用者の画像交換の標準形式の 1 つとなっている。
G IS【G eographic Inform ation Sy stem】地理情報システム
地理情報システムとは、地理情報をハンドリングする情報システムの総称である。地理情報の入力、
地理データベース(地理情報からなるデータベース。場所を検索のキーとして検索できる)の構築、
管理、検索から地理情報の表示、分析、利用までが対象となる。
HTM L 【
H y per Text M arkup Language】
Web ページを記述するための言語。Web ページはこれに従ったタグ付文書として記述される。
SGML と異なり,規格の中にリンク指定機能およびスタイル指定機能を含む。
IA I 【
InternationalA lliance for Interoperability】
IAI は,建設産業における情報の共有化・相互運用の実現化を目指す非営利の業界連合として,建
設産業の建物ライフサイクルを通して利用する異なるソフトウェア間で扱うデータの標準を作成す
る国際組織である。1994 年 10 月に発足し,設計業,製造業,施工業,設備業等の建設分野の各企業
で構成されている。
IFC 【
Industry Foundation C lasses】
IFC は IAI が定義する仕様で,建物を構成するオブジェクトオブジェクトを異なるシステム間で取
り扱うためのシステム的な表現方法の仕様定義や,プロジェクトモデルのデータ構造を提示したもの
である。
図面上に描かれる「ドア」「窓」「浴槽」「シンク」等のオブジェクトは,それらの形状を表現す
る線分の集合体ではなく,ドアなら「ドア」と認識できる幾何学的な要素を意味する。ドアを構成す
る要素は,その幾何形状,材質,仕上がり,操作方法,寸法等の要素により構成されている「ドア」
オブジェクトとなる。
IFC に準拠したある1つのソフトウェアで作成される「ドア」オブジェクトは,他の IFC に準拠し
たソフトウェアと情報交換することができる。
IG ES 【
InitialG raphics Exchange Specification】
CADシステムにおける2次元,3次元データの交換を中心にコンピュータ図形を扱う場合に広く使
われてきた標準規格である。元々は米国のANSI規格で,CAD/CAMのコンピュータ図形のデータ交
換に使われている規格でもある。
ISO 【
InternationalO rganiz ation for S tandardiz ation】
物・サービスの流通を促進するための国際的標準規格である。現在,118 の国・地域が加盟してい
る。1987 年に ISO9000 シリーズ(品質保証規格)が制定され,企業の品質管理システムを一定の審
査登録機関が検査した上で認証している。ISO の規格に法的強制力はないが,最近では事実上の統一
規格となってきており,特に欧州諸国では輸入品に対して ISO 規格を求められることが多い。
IT 【
Inform ation Technology】
40
電子情報技術(IT)は,デジタル化,ネットワーク化の進展とともに,従来の情報処理形態に対し,
情報の高付加価値化・効率化を目指した電子情報活用技術のことである。
JPEG 【Joint P hotographic Experts G roup】
静止画像データの圧縮方式の一つ。ISO により設置された専門家組織の名称がそのまま使われてい
る。圧縮の際に、若干の画質劣化を許容する(一部のデータを切り捨てる)方式と、まったく劣化のな
い方式を選ぶことができ、許容する場合はどの程度劣化させるかを指定することができる。方式によ
りばらつきはあるが、圧縮率はおおむね 1/10∼1/100 程度。写真などの自然画の圧縮には効果的だが、
コンピュータグラフィックスには向かない。
LHA
複数のファイルをまとめて圧縮し、1 つのファイル(アーカイブファイル)にするソフトウェア
LZH
L H A と Lharc によって作成されたアーカイブファイル。
M O 【M agneto O pticaldisk】
光磁気ディスク。磁気記憶方式に光学技術を併用した書き換え可能な記憶装置。書き込み時はあら
かじめレーザー光を照射してからデータを磁気的に書き込むので、記憶の高密度化が可能。また、読
み出し時はレーザー光のみを用いるため、高速にデータを読み出すことができる。
P D F【P ortable D ocum ent Form at】
A dobe Sy stem s社によって開発された、電子文書のためのフォーマット。D T P 用のレイアウトソフ
トで作成した文書を電子的に配布することができ、相手のフォント環境によらずイメージを正確に再
生することができる。内容として文字,画像,レイアウト情報などを含むことができる。
SGM L 【
Standard G eneraliz ed M arkup Language】
1986 年に世界標準化機構(ISO)の規約(ISO 8879)となった電子的な文書を扱うための計算機用言語
であり,文書データの多角的利用と異なる機種相互の文書交換を目的とした文書の表現形式(タグ付
文書)である。
日本では,1993 年に JIS4151 として制定された。
STEP 【
STandard for the Exchange of P roduct m odeldata】
STEP は製品データの「表現」と「交換」に関する国際標準規格のニックネームである。単に図面
のような形状データに限らず,構成管理や運用管理までも含んだデータ・手順を交換するための標準
規定である。その表現方法は ISO10303 で規定されている。
TIFF【Tagged Im age File Form at】
A ldus 社と M icrosoft 社によって開発された画像データのフォーマット。1 枚の画像データを、解像
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度や色数、符号化方式の異なるいろいろな形式で一つのファイルにまとめて格納できるため、比較的
アプリケーションに依存しない画像フォーマットである。
ZIP
米国などで広く使われているアーカイブファイル。
アーカイブ
複数のファイルを一つにまとめたり、逆に元に戻したりする操作のこと。ファイルサイズも小さい
ため、転送の際に用いることが多い。一般的に用いられる形式として LZH、ZIP 等。
ラスターデータ
図形や画像のデータ形式のひとつ。画像を点(ドット)の集合とみて、各点の色や輝度の情報の集
まりによって図形や画像を表現する形式。
ベクターデータ
文字や図形などを、点の集合ではなく、いくつかの基準点とそれらを結ぶ線で記録・表現する形式。
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