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附録:早期(局限性)前立腺癌のリスク分類

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附録:早期(局限性)前立腺癌のリスク分類
附録)
早期(限局性)前立腺癌のリスク分類
腫瘍マーカー(PSA)の値、生検組織の内容(癌の悪性度=グリソンスコア)、直腸診・MRI 等の
画像情報(癌の広がり=病期)により、治療後の再発の危険度(リスク)を3段階に分けます。
低リスク群: PSA≦10 、グリソンスコア≦6、病期 T1a∼T2a
中リスク群: 10<PSA≦20 または グリソンスコア=7 または 病期 T2b
高リスク群: PSA>20 または グリソンスコア≧8 または 病期 T2c∼T3
偶発または触知不能
前立腺手術などで
前立腺に限局
局所浸潤
触診で前立腺に限局
前立腺被膜を越えて進展
偶発的に発見
T1a
T1b
被膜
T2a
T2b
T3a
T3b
PSA上昇のため生検で確認
T1c
精のう
膀胱部
T2c
PSA検診などで増加しています
T4
括約筋,
直腸,
骨盤壁
2002 年 TNM 分類
前立腺癌のリスク分類と治療法
低リスク群の治療法
1. 手術療法(小切開手術、鏡視下手術)
2. 放射線療法
外照射療法(3 次元原体照射、強度変調法:IMRT)、
小線源療法(ブラキセラピー)
3. 非観血的・非放射線療法(高密度焦点式超音波治療 HIFU1))
4. 無治療経過観察(根治療法までの一時的待機を含みます)
低リスク群では、どの治療法でも短期の治療成績はほぼ同等です。
1)HIFU は本院では行っていません。
中リスク群の治療法
1. 手術療法(小切開手術、鏡視下手術)
2. ホルモン療法(約 3-6 ヶ月間) + 外照射療法
3. 小線源治療 + 外照射療法
低リスク群より再発の危険度がやや高くなります。
必要に応じて補助療法を追加します。
高リスク群の治療法
1. ホルモン療法(約2 年間) + 放射線療法
2. 手術療法 + 術後補助療法(手術所見により)
3. ホルモン療法 + 小線源治療 + 外照射療法 (臨床試験)
高リスク群ではレントゲンに写らない微小な転移の可能性も考えられます。
種々の方法を組み合わせることで治療効果を高めます。
各治療法にはそれぞれ特有の治療経過と合併症の可能性があります。
詳しくは治療法別の説明書をご覧いただき、主治医とご相談ください。
※ 上記3つの分類のいずれにかかわらす、ご高齢の方や重篤な合併症のある方には、手術や放射線
療法をお勧めしないこともあります。その場合、必要に応じて無治療経過観察かホルモン療法で
経過をみます。
早期(限局性)前立腺癌の治療の概要
治療法とそれに伴う弊害については患者さんの年齢や癌の進行具合によって異なります。
1)手術療法(前立腺全摘除術)
:文字どおり前立腺を全部摘出する方法です。約 2 週間の入院が必要です。
<良い点>からだから癌細胞を全て取り除ける可能性があることです。癌を取り切れなかった場合には放射線療法
を追加することができます。
<悪い点>癌の大きさによっては、全部取りきれない場合や、全部取りきれたと判断されても体内のどこかに残存
し、再発する可能性があります。また、手術中の合併症以外にも手術後に尿もれ(尿失禁)や勃起機能不全が生ず
る可能性があります。尿もれは通常6ヶ月以内に9割以上の方が日常生活に支障ない状態まで回復します。勃起機
能障害は、手術直後はほぼ全例に生じます。その後は徐々に回復傾向を示しますが、回復状況は勃起神経の温存の
程度、年齢、術前の勃起機能、などによって異なります。
2)放射線療法(外照射)
:放射線を前立腺全体に当てて癌細胞を死滅させる方法です。治療期間は約 2 ヶ月間で
す。通院治療が可能ですが、難しい場合は入院治療を要します。
<良い点>癌を治す力は手術とほぼ同等です。とくに癌組織が前立腺の外にでている可能性のある方にはより有効
です。手術のような麻酔や出血のリスクがありません。
<悪い点>手術と違い、病巣を取り切るわけではないので腫瘍細胞が残る可能性があります。放射線療法後に手術
療法を選択することはできません。副作用として頻尿や排尿障害、直腸炎、性機能障害を引き起こすことがありま
す。またこれらの副作用が晩期障害として治療後時間が経ってから現れることもあります。
3)放射線療法(小線源療法):放射線を出す粒子を前立腺内に埋め込んで内部から癌に放射線を当てる、新しい
治療法です。約 4 日間の入院が必要です。
<良い点>低リスクの癌については手術とほぼ同等の治療成績と考えられます。中リスク以上の癌については、外
照射やホルモン療法と組み合わせて行います。体への負担が軽く、ある程度高齢の方や合併症をお持ちの方に適し
ています。
<悪い点>前立腺の体積の大きい方や石灰化の強い方対象から外れます。埋め込んだ直後は頻尿、排尿困難、尿意
切迫などの排尿障害が生じますが、これらは数ヶ月後に軽快してきます。
4)内分泌療法:前立腺癌は男性ホルモンにより進行する特徴を持っており、それを低下させることで癌の勢いを
抑える治療法です。定期的な注射や内服薬と睾丸の摘出の方法があります。注射療法や内服治療では通院のみで可
能です。睾丸摘出術では数日間の入院が必要です。
<良い点>すぐに治療が開始できます。身体への侵襲が少ないため、特に高齢の方に適しています。
<悪い点>癌細胞を一定期間おとなしくさせる効果がありますが、根治性はありません。副作用として、高脂血症、
心血管合併症、性機能障害、更年期症状(顔のほてりなど)
、骨粗鬆症(骨が弱くなる)
、などがあります。他の治
療法と組合わせたり、追加治療として使うことが多くなっています。
5)高密度焦点式超音波治療(HIFU)
:肛門から超音波のプローブを挿入し、発生する熱を利用して癌組織を死滅
させます。数日間の入院治療が必要です。
<良い点>安全で入院期間が短く、必要に応じて繰り返し治療できます。
<悪い点>ある程度進行した患者さんは対象になりません。保険適応外で個人負担が 100 万円程度かかります。治
療直後には一過性の排尿障害が生じます。
当院では行っておりませんので希望される患者さんは、他院へご紹介致します。
6)無治療経過観察:治療をせずに、定期的検査のみで経過を観察する方法です。前立腺癌の中には非常に進行が
遅いものがあり、このような癌は最終的に患者さんの寿命に影響しないと言われています。高齢者や重い合併症の
ある方が良い適応となります。また、何らかの理由で根治療法の時期まで待機する場合も含まれます。
<良い点>不必要な治療をしないで済みます。生活の質が保たれます。
<悪い点>定期的な PSA の検査が必要で、場合により、組織検査を繰り返し行う必要があります。PSA が上昇した
り何らかの症状が出現した場合、必要な治療を開始します。精神的に癌との共存を重荷に感じる方もいます。進行
の遅い癌かどうかを確実にあらかじめ知る方法がなく、経過観察中に根治時期を逃してしまうリスクも考えられま
す。
以上の選択肢は、基本的に年齢と病気の進み具合によってある程度適したものが決まっています。しかし、最終
的には患者さん自身に選んで頂くようにしています。
更に詳しい情報をご希望の方は、下記ホームページをご参考にしてください。
http://cancerinfo.tri-kobe.org/
このウェブサイトは、米国国立癌研究所の大規模癌情報ホームページ
Physician Date Query(PDQ)を日本語で配
信するサービスです。
PDQ 上で参考にする、あなたの病期は (I, II, III, IV)に相当します。
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