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最終報告書 - 産業競争力懇談会(COCN)
【産業競争力懇談会2010年度 研究会 最終報告】 税負担率研究会Ⅱ ~リーマンショック後の世界各国産業税制・ 企業実質税負担率 調査報告書~ 2011年3月4日 【エクゼクティブサマリ】 我が国の産業競争力を高めていくには企業努力に加えて国際的に著しく高い実質税負担* 1) を見直すことが必要といわれています。平成 19 年 11 月COCN税負担率研究会報告「世 界各国における税負担実態調査報告書」 (副題;税負担率に焦点を当ててものづくりの国際競 争力を考える)では税負担に着目した企業競争力調査を行い、海外企業の実質税負担が我が 国企業に比べて著しく低いこと、海外諸国は我が国より充実した産業振興策を採ってきたこ とを明らかにし、国際的に平等な企業税制の必要性を訴えました。 サブプライムローン破綻から始まり、リーマンショック以降各国は大きな打撃を受けてき ましたが、自国産業競争力の回復・強化のためにあらゆる政策を実行してきています。今回の 調査では海外各国が 2007 年金融危機以降経済回復・企業支援のためにどのような産業政策・ 税制をとってきたかを明らかにし、我が国に必要な施策を点検するための基礎データとして 「実効税率*2 に留まらず企業毎に産業税制が反映された実質税負担データ」並びに「各国で 新たに実施された産業政策税制」を調査しました。 我が国の産業競争力を高めていくためには企業努力では対処できない著しく高い税負担を 是正すると共に、研究開発を後押しする政策が必要と考えます。実効税率引き下げのみなら ず産業政策税制を加味した実質税負担においてアジア・欧米諸国に引けをとらない税制が達 成され、我が国産業競争力が強化されることを期待しています。 *1)実質税負担率(Effective income tax rate) =(実効税率+産業税制)による実際の税負担/税引き前利益(連結財務会計データ) 2)実効税率(日本)=((法人税率+法人税率×住民税率)+事業税率)/(1+事業税率) (1) 実質税負担率地域・国別調査結果概要(グラフ①は 2006 年~2009 年平均値) 内外有力 40 社の産業税制が反映された実質税負担率調査(2006~2009 年) 各産業共通した傾向(建設産業以外) 米国企業 14~30%台前半が大半 (Intel,Apple,Dupont,DOW,KLA,Teradyne,AMAT,Novellus,Lam Research) 欧州企業 10%台後半~20%台後半が大半( STM, Philips, BASF, ALSTOM, SIMENS, ASML, ASMI) 韓国企業 一桁~10%台後半( Samsung,LG display) 台湾企業 2~8%(TSMC,ChiMei,AUO) 中国企業 Tax Exempted Company(SMIC) 日本企業 31~65%(三菱電機、日立製作所、シャープ、パナソニック、キヤノン、ニコン、 アドバンテスト、日立ハイテクノロジーズ、東京エレクトロン,東レ) 建設産業 欧米企業 18~32%台前半、アジア企業 20~29%、日本企業 40% (米国 Flour,欧州 Vinci,Skanska,Balfour Beatty,韓国サムスン(建設)、台湾達欣工程 中国中国鉄道建築、鹿島建設) i 調査業種半導体産業 5 社、液晶産業 5 社(内1社半導体産業とダブっている)、電子機器産業 3 社、電機産業 4 社、建設産業 8 社、半導体製造装置産業 12 社、化学産業 4 社 調査方法 調査期間;2006 年~2009 年(決算期1~6 月は前年度、7~12 月は当年度) データ出所;企業アニュアルレポート、SEC(米国証券取引委員会)財務報告、各国政府資 料、JETRO,会計事務所報告書等による。 グラフ①地域・国別企業実質税負担率平均値(今回調査全産業 37 社) 注1;米国では従来から多くの州が州税を優遇(課さない) 注2;税負担率平均値=∑税負担/∑税引き前利益(損失年除く) 注3;税負担率異常値 2 社除く 地域別・国別企業実質税負担率平均値(37社) 2006~2009年平均(実効税率は2010年値) 45 41.4 40.69 40 39.2 40 35 35 税負担率% 30 26 25.2 25 24.2 25 24.1 21.5 20 17 15.5 15 9.5 10 5 0 米国実 米国連 米国10 効税率 邦税率 社 税負担率平均値 40 35 26 欧州実 欧州9 効税率 社(損 平均 失除く) 21.5 25.2 韓国実 効税率 韓国3 社 台湾実 効税率 台湾4 社 24.2 15.5 17 9.5 中国実 中国建 効税率 設1社 25 24.1 日本実 効税率 40.69 日本大 日本10 企業 社 (経済 39.2 41.4 注;日本大企業実質税負担率 39.2%(経済産業省調べ) (2) 2007 年以降(特にリーマンショック以降)新たに設置された産業支援策 金融危機以降の産業振興策は法定税率引き下げ競争に加えて設備投資、研究開発、イノベ ーション、企業誘致に対するインセンティブを充実し、雇用の確保、企業競争力の強化を図 っています。米国投資税額控除直接給付制度、オランダ Innovation box 制度、シンガポール 優遇策等興味深い事例です。 米国 *2009 年 2 月米国景気対策法総額 7870 億$、内 2880 億ドルは個人減税 電気自動車、電池開発助成等グリーン対策(投資税額控除直接給付(30%)制度) *オバマ政権;総額 3.500 億$の追加景気対策発表 2010 年 9 月(今後議会の審議) 設備・工場投資の一括償却、研究開発税制の恒久化他 オランダ * 2007 年 Royalty box 制度(適用企業税率 10%) * 2010 年 Innovation box 制度に拡充(適用企業税率 5%、損失は法定税率 25.5%控 除) ii シンガポ *法人税率引き下げ 2007 年 20% 2008 年 18% 2010 年賦課年度より 17% ール *企業誘致優遇(法人税率 15%)太平洋地域統括拠点 *研究開発 250%損金算入税制 韓国 *法人税率下げ 2008 年 27.5% *臨時投資税額控除制度 2009 年 24.2% 2010 年 22% 1982 年から形を変えて延長 2012 年 20% 投資額の 10~15%税額控除 韓国大手企業 1999 年~2009 年累計税額控除額 10,199 Billion WON(資料集グラフ 参照) 中国 *2008 年 1 月税制改革 外資・内資税率 25%一本化 *高度新技術優遇①法人税率 15%②投資税額控除③加速償却 台湾 日本 *法人税率下げ 2009 年 25% 2009 年 5 月 20% 2010 年 1 月より 17% *産業刷新条例 研究開発費 15%税控除 *試験研究費税額控除制度拡充 *低炭素型雇用創出産業立地推進補助金(税制ではない) (3) 提言 産業競争力を高めていくためには研究開発を活発に行い、先端設備投資を行っていくこと が必要になります。税引き前利益からの税負担が少なければ企業はそこから生じるキャッシ ュをより強力な研究開発、先端設備投資へ振り向け、競争力強化を図ることができるものと 考えられます。 金融危機以降海外各国は「(2)2007 年以降(特にリーマンショック以降)新たに設置さ れた産業支援策」で見てきたように税制を中心に強力な産業支援策を実施しており、今回調 査した競争相手の実質税負担率はアジア諸国では 10%台、欧米諸国でも 20%台後半です。一方 我が国企業の税負担率は 39.2%と高止まっており、平成 19 年調査報告時に比べて彼我の差は 拡大しています。このまま放置すれば企業競争力の低下、海外への更なる移転といった状況 に追い込まれてしまいます。こうした状況を打破するためには 1) 産業政策税制を加味した実質税負担を競争相手国並に低減 2) 研究開発促進税制を拡充・恒久化 3) 国内投資を促進する政策税制 等の施策が実現され、我が国産業競争力が強化されていくことを期待しています。 なお研究会で注目すべきとされた海外での施策例を列記します。 * 米国税額控除直接給付制度(2009 年 2 月米国景気対策法) * オランダ Innovation box 制度(2010 年より) * シンガポール優遇策全般(2010 年、研究開発 250%損金算入税制他) iii 【目 次】 1、 はじめに 1P 2、 実質税負担率の国際比較 2P 半導体、液晶、電子機器、電機、建設、半導体製造装置、化学企業 3、 2007 年以降(特にリーマンショック以降)新たに設置された産業支援策 6P 4、 サブプライムローン破綻・リーマンショック以降における実効税率推移 5、 提言 8P 6、 資料集 9P 1) リーマンショック後の産業政策 2) 各国実効税率推移 3) 韓国大手企業税額控除推移 4) 各国の研究開発税制の比較(経済産業省調べ) 5) 社会保険料負担を含めた企業負担率国際比較(経済産業省調べ) 7P 1、はじめに 我が国の産業競争力を高めていくには企業努力に加えて国際的に著しく高い実質税負担* 1) を見直すことが必要といわれています。平成 19 年 11 月COCN税負担率研究会報告「世 界各国における税負担実態調査報告書」 (副題;税負担率に焦点を当ててものづくりの国際競 争力を考える)では税負担に着目した企業競争力調査を行い、海外企業の実質税負担が我が 国企業に比べて著しく低いこと、海外諸国は我が国より充実した産業振興策を採ってきたこ とを明らかにし、国際的に平等な企業税制の必要性を訴えました。 サブプライムローン破綻から始まり、リーマンショック以降各国は大きな打撃を受けてき ましたが、自国産業競争力の回復・強化のためにあらゆる政策を実行してきています。今回の 調査では海外各国が 2007 年金融危機以降経済回復・企業支援のためにどのような産業政策・ 税制をとってきたかを明らかにし、我が国に必要な施策を点検するための基礎データとして 「実効税率*2 に留まらず企業毎に産業税制が反映された実質税負担データ」並びに「各国で 新たに実施された産業政策税制」を調査しました。 我が国の産業競争力を高めていくためには企業努力では対処できない著しく高い税負担を 是正すると共に、研究開発を後押しする政策が必要と考えます。実効税率引き下げのみなら ず産業政策税制を加味した実質税負担においてアジア・欧米諸国に引けをとらない税制が達 成され、我が国産業競争力が強化されることを期待しています。 産業競争力懇談会 会長(代表幹事) 勝 俣 恒 久 *1)実質税負担率(Effective income tax rate) =(実効税率+産業税制)による実際の税負担/税引き前利益(連結財務会計データ) 2)実効税率(日本)=((法人税率+法人税率×住民税率)+事業税率)/(1+事業税率) 1 2、実質税負担率国際比較; 年度データ及び 4 年間平均値データ 平均値;∑実際の税負担/∑(税引き前利益(損失は除く) 単純平均とは異なる 図―1半導体産業 米国 A 社;20%台後半、州税負担実質ゼロ 韓国 B 社;16%、投資税額控除制度活用 台湾 C 社;8%、税額控除活用 オランダ D 社;-23% 中国 E 社;Tax exempted(annual report より) 韓国 B 社税額控除;1999 年~2009 年 累計 10,199 Billion WON(資料集参照) 半導体企業税負担率比較 日本企業平均 税負担率 39.2% 平均税負担率 26. 26 . 8 % 州税負担実態0 州税負担実態 0 製造所得控除 R&D控除 R&D 控除 45 40 35 平均税負担率 16. 16 . 5 % 投資税額控除 効果大 税負担率% 30 平均税負担率 7 .9 % 税額控除効果大 平均税負担率 - 23 .7 % 2007~ 2007 ~ 2009 赤字 25 20 15 10 5 0 黒字決算税還付 赤字決算税還付 -5 米国実効税 率(KPMG) 連邦税率 2007 40 40 2008 40 2009 40 2006 米国A社 韓国実効税 率(KPMG) 35 35 28.6 23.9 35 31.1 35 23.4 オランダ実 効税率 オランダD社 (KPMG) 日本税負担 日本実効税 率実績値(経 率(KPMG) 産省調査) 韓国B社 台湾実効税 率(KPMG) 台湾C社 27.5 27.5 16.6 17.8 25 25 5.8 9.6 29.6 25.5 -2.6 4.7 40.69 40.69 39.2 39.2 27.5 10.6 25 9.8 25.5 5.2 40.69 39.2 24.2 18.5 25 6.3 25.5 6.4 40.69 平均値;∑実際の税負担/∑(税引き前利益(損失は除く) 単純平均とは異なる 図―2 液晶産業 韓国 A,B 社;1.1~16.5% 台湾 C,D 社;1.9~8.2% 日本 E 社;36% 液晶パネル企業税負担率比較 50.0 平均税負担率 35 . 8 % ( 2 0 06 , 2 0 0 7 ) 40.0 平均税負担率 1 6. 6. 5 % 税負担率% 30.0 平均税負 担率 担率 1 . 1 % 平均税負担率 8 .2 % 2006 2007 2008 2009 平均税負担率 1 .9 % 20.0 10.0 0.0 赤字決算 赤字決算 税還付 赤字決算 赤字決算 -10.0 税還付 税還付 -20.0 韓国実 効税率 韓国A社 韓国実 効税率 韓国B社 台湾実 効税率 2006 27.5 16.6 27.5 25.9 25.0 2007 27.5 17.8 27.5 13.4 25.0 2008 27.5 10.5 27.5 15.7 25.0 2009 24.2 18.6 24.2 -9.4 25.0 3.0 台湾実 効税率 台湾D社 0.1 25.0 10.5 40.69 39.2 35.3 4.8 25.0 3.6 40.69 39.2 36.4 -0.1 25.0 17.6 40.69 39.2 38.7 25.0 0.1 40.69 39.2 0.0 2 日本実 効税率 日本大 企業税 負担率 台湾C社 日本E社 図-3 電子機器産業 米国 A 社;31%(但し税の前払い決算あり) オランダ B 社;17% 日本 C 社;35% 電子機器企業税負担率比較 平均税負担率 35. 35.0%(2006 %(2006, 2006,2007年 2007年) 60% 50% 平均税負担率 16.9% 税負担率% 40% 平均税負担率 31.2% 注: 単純平均でないため 単純平均 でないため2008 でないため 2008年 2008 年 180% 180 %値影響少ない 値影響少ない 2006 2007 2008 2009 30% 20% 10% 0% 赤字決算 税負担 -10% 日本企業平均税 日本実効税率(K 負担率(経済産業 PMG) 省調査) 米国実効税率(K PMG) 米国連邦税率 米国A社 オランダ実効税率 (KPMG) オランダB社 2006 2007 2008 40% 35% 29.0% 29.6% 13.5% 40.7% 39.2% 43.7% 40% 40% 35% 35% 30.0% 32.0% 25.5% 25.5% 12.3% 180.2% 40.7% 40.7% 39.2% 39.2% 26.3% -9.8% 2009 40% 35% 32.0% 25.5% 22.3% 40.7% 39.2% -483.0% 日本C社 平均値;∑実際の税負担/∑(税引き前利益(損失は除く) 単純平均とは異なる 図-4 電機産業 フランス A 社,ドイツ B 社;24.3%~28.9% 日本 C 社;40.8% 電機企業税負担率比較 平均税負担率 40. 40 .8% 70.0% 参考データ 参考データ 平均税負担率 184% 184% 60.0% 税負担率% 50.0% 平均税負担率 28. 28.9% 40.0% 平均税負担率 24. 24.3 % 2006 2007 2008 2009 30.0% 20.0% 10.0% 0.0% -10.0% 2006 2007 2008 2009 フランス実 効税率(KP MG) 仏A社 ドイツ実効 税率(KPM G) 独B社 33.3% 33.3% 33.3% 33.3% 21.2% 25.3% 25.5% 24.3% 38.3% 38.3% 29.5% 29.4% 22.7% 23.4% 35.3% 36.9% 日本実効税 日本企業平 率(KPM 均税負担率 G) (経済産業 40.7% 40.7% 40.7% 40.7% 3 39.2% 39.2% 39.2% 39.2% 日本C社 日本D社 43.4% 32.5% 63.8% 48.8% 80.5% 83.8% -174.0% 233.0% 図―5 建設産業 海外企業税負担率は法定税率より若干低いレベルで、他産業と比べて税優遇が少ないがそれでも彼 我の差大きい;欧州 A~C 社;18~32% 米国 D 社;31% 韓国 F 社;29% 中国 G 社;24% 台湾 E 社;20% 日本 H 社;40% 建設業 税負担率比較 70% 有税引当金の計上による 平均税負担率は 平均税負担率は20062006-2009年 2009年の4年間平均 60% 平均税負担率 40.1% 50% 平均税負担率 29.0% 平均税負担率 31 31. 31.0% 税負担率 40% 平均税負担率 32% 平均税負担率 28% 28% 平均税負担率 24.1% 平均税負担率 18% 2006 平均税負担率 20.1% 30% 2007 2008 20% 2009 10% 0% 過年度外国税額控除の認識による -10% 2006 2007 2008 2009 仏 実効 税率 34.4% 34.4% 34.4% 34.4% 32.9% 32.2% スウェー デン 実効 30.0% 29.0% スエー デンB 社 26.7% 27.3% 英 実効 税率 30.0% 30.0% 31.5% 30.8% 31.0% 30.0% 28.4% 27.7% 28.5% 28.0% 仏A社 評価性引当額、連結子会社 の実効税率の差異減額によ る 英国C 社 米実効 税率 米国D 社 27.2% -7.6% 40.0% 35.0% 31.0% 17.8% 台湾 実効 税率 25.0% 25.0% 27.4% 20.2% 35.0% 35.0% 34.4% 35.5% 25.0% 25.0% 16.6% 23.2% 韓国 実効 税率 27.5% 27.5% 22.9% 17.7% 27.5% 24.2% 台湾E 社 34.1% 27.5% 中国 実効 税率 33.0% 33.0% 24.1% 28.9% 25.0% 25.0% 韓国F 社 赤字決算 税負担 評価性引当金の計上による 28.4% 39.1% 日本 実効 税率 40.5% 40.5% 18.9% 19.0% 40.5% 40.5% 中国G 社 日本 大企業 税負担 39.1% 39.1% 日本H 社 42.6% 17.0% -729.8% 52.0% 平均値;∑実際の税負担/∑(税引き前利益(損失は除く) 単純平均とは異なる 図-6-1) 半導体製造装置産業―1 米国 A~E 社;14~27%(例外1社 42%)、オランダ F,G 社;16~19%、日本 H~L 社;33~66% 半導体製造装置企業税負担率比較(米2社,日本4社) 60% 平均税負 担率 65.98% 20082009 平均税負担率 22.96% 企業買収のれん 企業買収 のれん 損失控除効果大 50% 平均税負 担率 42.4% 平均税負 担率 34.64% 平均税負 担率 32.94% 2006 税負担率% 40% 2007 平均税負担率 13.48% 営業減損控除効果 大 30% 2008 20% 2009 10% 0% 赤字決算 税還付 赤字決算 税負担 赤字決算 税負担 -10% 米国実効税 率(KPMG) 連邦税率 2006 40% 2007 2008 40% 40% 2009 40% 日本大企業 日本実効税 税負担率実 率 績値(経産 米国A社 米国実効税 率(KPMG) 米国B社 35% 22.2% 40% 12.1% 40.69% 39.2% 41.8% 37.9% 34.5% 37.6% 35% 35% 35.9% 13.1% 40% 40% 9.3% -3.3% 40.69% 40.69% 39.2% 39.2% 29.3% -41.7% 43.3% 48.8% 34.4% 33.4% 35.3% 28.4% 35% 27.1% 40% 6.2% 40.69% 39.2% -14.7% -31.4% 38.3% 28.6% 4 日本H社 日本I社 日本J社 日本K社 赤字決算 税前利益、税 負担共赤字 図―6-2)半導体製造装置産業―2 半導体製造装置企業税負担率比較 50 平均税負担率 27 27. 27.4% 平均税負担率 42 42. 42.1 % R&D 控除 輸出優遇 海外税率差( 海外税率差( 負担増) 負担増 ) 日本企業平 平均税負担率 36. 36.2% 均税負担率 36 益金不算入の 収益 39 39. 39.2 % 益金不算入の 平均税負担率 23 23. 23.8 % 海外税率差( 海外税率差( 負担減) 負担減 ) 税額控除 税負担率 % 40 海外税率差( 海外税率差( 負担減) 負担減) 平均税負担率 19 19. 19.2% 平均税負担率 16 16. 16.5% 海外税率差( 海外税率差( 負担減) 負担減) 益金不算入の 益金不算入 の収益 海外税率差( 海外税率差 ( 負担減) 負担減) 30 20 10 0 赤字 赤字決算税負担 黒字 税額控除 税還付 赤字決算税負担 税還付 赤字税負担(2期) -10 米国実効 税率 連邦税率 米国C社 (KPMG) 米国実効 税率 連邦税率 米国D社 (KPMG) 赤字税負担 米国実効 税率 連邦税率 米国E社 (KPMG) オランダ オランダF 実効税率 社 (KPMG) オランダ オランダ 実効税率 G社 (KPMG) 日本実効 日本税負 税率 担率実績 日本L社 (KPMG) 値(経産 2006 40 35 30.0 40 35 44.2 40 35 23.8 29.6 28.2 29.6 13.8 40.69 39.2 36.42 2007 40 35 29.9 40 35 32.1 40 35 19.1 25.5 20.9 25.5 14.5 40.69 39.2 36.61 2008 40 35 31.8 40 35 -8.0 40 35 23.9 25.5 -4.1 25.5 18.8 40.69 39.2 18.58 2009 40 35 37.2 40 35 -22.9 40 35 -14.8 25.5 12.0 25.5 -5.9 40.69 -9.35 平均値;∑実際の税負担/∑(税引き前利益(損失は除く) 単純平均とは異なる 図―7 化学産業 米国 A、B 社;15~27% ドイツ C 社;43% 日本 D 社;31% 化学企業税負担率比較 60% 平均税負担率 14 . 94% 94 平均税負担率 43 .37% 37 平均税負担率 26 .98% 98 平均税負担率 30 .99% 99 40% 税負担率 2006 2007 2008 2009 20% 0% 赤字決算税還付 黒字決算税還付 -20% 米国実効税 率 米国A 社 米国実効税 率 米国B社 ドイツ実効 税率 独C社 日本実効税 率 日本D社 2006 40.75% 5.9% 40.75% 23.2% 38.34% 46.9% 40.70% 24.1% 2007 40.75% 20.00% 40.75% 29.42% 38.34% 37.64% 40.70% 33.50% 2008 40.75% 15.93% 40.75% 50.98% 38.34% 44.70% 40.70% 27.92% 2009 40.75% 19.00% 40.75% -20.68% 29.44% 46.25% 40.70% -380.08% 5 赤字決算 税負担 3、2007 年以降(特にリーマンショック以降)新たに設置された産業支援策 金融危機以降の産業振興策は法定税率引き下げ競争に加えて設備投資、研究開発、イノベ ーション、企業誘致に対するインセンティブを充実し、雇用の確保、企業競争力の強化を図 っています。米国投資税額控除直接給付制度、オランダ Innovation box 制度、シンガポール 優遇策等興味深い事例です。 米国 *2009 年 2 月米国景気対策法総額 7870 億$、内 2880 億ドルは個人減税 電気自動車、電池開発助成等グリーン対策(投資税額控除直接給付(30%)制度) *オバマ政権;総額 3.500 億$の追加景気対策発表 2010 年 9 月(今後議会の審議) 設備・工場投資の一括償却、研究開発税制の恒久化他 オランダ * 2007 年 Royalty box 制度(適用企業税率 10%) * 2010 年 Innovation box 制度に拡充(適用企業税率 5%、損失は法定税率 25.5%控 除) シンガポ *法人税率引き下げ 2007 年 20% 2008 年 18% 2010 年賦課年度より 17% ール *企業誘致優遇(法人税率 15%)太平洋地域統括拠点 *研究開発 250%損金算入税制 韓国 *法人税率下げ 2008 年 27.5% *臨時投資税額控除制度 2009 年 24.2% 2010 年 22% 1982 年から形を変えて延長 2012 年 20% 投資額の 10~15%税額控除 韓国大手企業 1999 年~2009 年累計税額控除額 10,199 Billion WON(資料集グラフ 参照) 中国 *2008 年 1 月税制改革 外資・内資税率 25%一本化 *高度新技術優遇①法人税率 15%②投資税額控除③加速償却 台湾 日本 *法人税率下げ 2009 年 25% 2009 年 5 月 20% 2010 年 1 月より 17% *産業刷新条例 研究開発費 15%税控除 *試験研究費税額控除制度拡充 *低炭素型雇用創出産業立地推進補助金(税制ではない) 6 4、サブプライムローン破綻・リーマンショック以降における実効税率の推移 図-7から明らかなように欧州ではドイツ、オランダを中心に法定税率を下げてきました。 アジアでも同様で、特に韓国、台湾、シンガポールでは 2010 年以降の税率下げも決定し、産 業優遇、誘致に努めています。米国では従来から多くの州が州税を優遇(課さない)として おり見かけの法定税率での評価では不十分です。また 3 ページグラフ①でみたように実際の 税負担は法定税率に加え産業優遇政策税制により税負担の我が国との差は一層大きい。 図-7 法定税率推移(中国、オランダ以外産業政策税制含まず) 主要国法定税率推移 2010年以降の引き下げ;韓国、台湾、シンガポール決定 45 40.7% 40% 35% 40 20% 29. 29 .4 % 28% 2007 2008 2009 2010 2011 2012 17% 17% 25% 30 25 5% 20 15% 15 10 5 7 リス ツ ギ イ Bo x優 io n ドイ 遇 ダ va t オ ラ ン 中 ダ 国 Ino 新 技 シ 術 ン オ ラ ー ポ ガ 遇 優 連 国 米 ン ル 湾 国 台 企 韓 業 国 中 率 邦 税 米 本 国 0 日 法定税率 % 35 5、提言 産業競争力を高めていくためには研究開発を活発に行い、先端設備投資を行っていくこと が必要になります。税引き前利益からの税負担が少なければ企業はそこから生じるキャッシ ュをより強力な研究開発、先端設備投資へ振り向け、競争力強化を図ることができるものと 考えられます。 金融危機以降海外各国は「4、2007 年以降(特にリーマンショック以降)新たに設置され た産業支援策」で見てきたように税制を中心に強力な産業支援策を実施しており、今回調査 した競争相手の実質税負担率はアジア諸国では 10%台、欧米諸国でも 20%台後半です。一方我 が国企業の税負担率は 39.2%と高止まっており、平成 19 年調査報告時に比べて彼我の差は拡 大しています。このまま放置すれば企業競争力の低下、海外への更なる移転といった状況に 追い込まれてしまいます。こうした状況を打破するためには 1) 産業政策税制を加味した実質税負担を競争相手国並に低減 2) 研究開発促進税制を拡充・恒久化 3) 国内投資を促進する政策税制 等の施策が実現され、我が国産業競争力が強化されていくことを期待しています。 なお研究会で注目すべきとされた海外での施策例を列記します。 * 米国税額控除直接給付制度(2009 年 2 月米国景気対策法) * オランダ Innovation box 制度(2010 年より) * シンガポール優遇策全般(2010 年、研究開発 250%損金算入税制他) 8 6、資料集 1) リーマンショック後の産業政策 リーマンショック後の産業税制政策 2010/9/15 税負担率研究会Ⅱ 米国 リーマンショック(平成20年9月15日)後の動き リーマンショック前 平成19年11月28日税負担率研究会報 告書 1、2008年~2009年;金融、自動車産業支援 2、2009年2月;米国景気対策法総額7870億$ (出所;NTTデータ経営研究所、三菱東京UFJ銀行ワシントン駐在事務所) (内2880億ドルは個人減税400ドル/労働者) 環境エネルギー対策676億$(グリーン政策インフラ整備中心) 電気自動車、電池開発助成も含まれる 注;投資額直接給付(30%) 3、2010年9月オバマ政権3.500億$追加景気対策発表(今後議会審議) (直接財政負担分は1.800億$)(日本経済新聞、朝日新聞) ①設備投資減税;2011年末まで、設備・工場投資一括償却(費用前倒し、 翌年度以降は納税額増える、総額2000億$内財政負担300億ドル) ②研究開発減税の恒久化(10年間で1000億$) *2004年米国雇用創出法(米国内投 資促進税制、製造所得控除等により雇 用増) *研究開発税制(1981年以降延長繰り 返す) *州政府企業支援 ③公共投資500億$(5年間) シンガ ポール 1、企業税制優遇強化(出所;JETROホームページ、KPMGシンガポール税制 の動向) ①企業誘致 *Regional Headquarters Award適格所得増分所得3年間軽減税率15% アジア太平洋地域の統括拠点 *International Headquarters Award適格所得税率5~10% RHQ要件を大幅に超える国際的な拠点 適格所得;海外マネージメント、サービス、貿易、ロイヤリティ等 リーマンショック(平成20年9月15日)後の動き シンガ ポール続 き 韓国 オランダ *パイオニア事業優遇(非課税) *R&D倍額控除 *Operational Headquarter制度(法人 税率10%) リーマンショック前 平成19年11月28日税負担率研究会報 告書 ②パイオニアインセンティブ;最大15年間所得税免除 ③研究開発費損金算入の拡充 2008年;国内研究開発費150%損金算入、国外研究開発費100%損金 算入 国内研究開発期間への支払い100%損金算入 (予算案2009年~20013年;国内研究開発費250%損金算入は見送り) 2010年;上記250%損金算入決定(上限あり、2010年度時限立法・・・ 日経記事) ④その他;知的財産、R&D推進、海運、ロジスティックス、観光、展示 会、金融 2、法人税率引き下げ 2007年;20% 2008年;18% 2010年賦課年度;17% *Operational Headquarters制度 マネージメント、ロイヤリティ税優遇 *パイオニア事業優遇 *認定サイバートレーディング インターネット取引拠点化 *R&D倍額控除 1、韓国大手企業税額控除実態(各年度annual reportより) 1999年~2009年11年間(詳細グラフ別紙) 税額控除累計10199BW 平均税額控除/税前利益=12.5% 平均税負担/税前利益=16.8% 2、最近の韓国メディア情報では臨時投資税額控除は大企業に偏って いるとして雇用創出投資税額控除制度に衣替えの動きがある 3、法人税率下げ 2008年;27.5% 2009年;24.2% 2010年;22% 2012年;20% *臨時投資税額控除;1982年導入 初めは首都圏過密地域外投資の場合 7%税額控除 1、2007年;Royalty box(Patent box) 適用企業は実質税負担率10%、 3、2010年; Innovation box制度へ拡充(KPMG) 税負担率5%へ Innovation lossは法定税率25.5%で控除 *Tax holiday税制 外国からの新技 術企業投資にたいし税額控除 9 その後適用業種、税率変更 投資額にたいして10~15%税額控除の 記載も(LG display 2005年SEC-20F) *七免三半減(外国人投資促進法FIP A)海外からの投資額按分7年間税免 除、3年間半減 リーマンショック(平成20年9月15日)後の動き リーマンショック前 平成19年11月28日税負担率研究会報 告書 中国 *2008年1月税制改革(出所;東レ経営研究所、経営センサー2007.6月及 びSMIC社SEC20-F) 外資・内資税率一本化25% 国家が重点とする高度新技術企業優遇①法人税率;15%②投資税額控除 ③加速償却④FEITの優遇税制は経過措置として継続適用 (経過措置詳細はPriceWaterHouseCoopers News Flash July 2010) *タックスヘイブン税制の適用(但しSMIC社はtax exempted Company in the Cayman Islandsとされている SMIC annual report) *2008年2月(Circular No1);半導体企業において1,095M$投資または 0.25μ以下の回路製造企業は法人税率15%、課税所得発生後5年間免税 (SMIC社annual report) 台湾 1、法人税率下げ 2009年;25% 2009年5月;20% 2010年1月より17% アジア近隣への企業移転防止 2、産業刷新条例(創新条例、革新条例);研究開発費15%税控除 法人税の引き下げとともに従前の5年免税、設備投資税額控除は廃止 2007年末まで FEIT(外商投資企業及び外国企業所得 税法);二免三半減、低税率優遇 法人税率;外国(投資)企業33%、内資 企業55% 促進産業昇給条例(2009年末失効)) *投資税額控除、設備加速償却 *先端産業奨励、5年間法人税免除 2)各国実効税率推移 世界主要国実効税率(法定税率)推移 出所;KPMG 注;産業税制を考慮した実質税負担率では日本とアジア、欧米諸国の差は更に大きくなる 60 50 % 40 30 20 10 0 日本 OEC アジ 世界 EU D平 ア・ 平均 平均 均 大洋 2000 42 32.36 2003 42 29.53 2006 40.69 27.47 2009 40.69 25.51 33.9 30.9 28.16 26.3 32.83 28.81 25.01 23.22 31.44 30.34 29.09 27.49 インド シン 中国 香港 インド ネシ 韓国 ガ 台湾 ア ポー 33 33 33 25 16 38.5 16 36.75 17.5 33.66 16.5 33.99 30 30 30 28 30.8 29.7 27.5 24.2 26 22 20 18 10 25 25 25 25 ロシ ア ブラ ジル 24 24 20 37 34 34 34 米国 アメリ 連邦 カ 税率 40 40 40 40 35 35 35 35 アイ フラン イタリ オラ イギ ドイツ ルラ ス ア ンダ リス ンド 36.66 34.33 33.33 33.33 51.6 24 41.25 35 39.58 12.5 38.25 34.5 38.34 12.5 37.25 29.6 29.44 12.5 31.4 25.5 30 30 30 28 3)韓国大手企業税額控除推移(1999 年~2009 年累計税額控除額 10,199 Billion WON) 韓国大手企業 税前利益、税負担額、税額控除 データ出所;annual report 14000 12000 Billion WON 10000 税前利益 税負担額 Tax credit 8000 6000 4000 2000 単位; Billion WON 0 税前利益 税負担額 Tax credit 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 4154 8602 3834 9569 6430 12376 8125 9828 8630 5908 10841 968 403 2410 516 464 850 2244 310 1076 1340 2207 1680 1218 1293 1634 1121 1205 847 382 1038 1191 800 累計10,199 Billion WON 4)各国の研究開発税制(経済産業省調べ) (参 考) 各 国の 研究 開発 税制 ○ 近 年 、各 国 は 、 研 究 開 発 税 制 を拡 充 し て いる 。 (未 定 稿 ) 最 近の 動き 0 8年 、 拡 充 日 中 0 9年 、 拡 充 0 8年 、 拡 充 税額控 除率 総 額× 8-10% 【総額 × 12%】 総 額× 12.5% + ( 【】は 【】 は 中小 企業 の 特 例 ) 増 加額 × 5% 又 は 売 上高 の 10%を 超 える 額 × 一定 割 合 相当 繰越 期間 控除 上限 本 体 : 税 額の 3 0% 上 乗 せ : 税 額 の 1 0% 09年 ・ 10 年 に 限 り、1 1 年 ・ 12 年 まで の 繰 越 可 ( 通 常 は 1年 ) (合 計 で 最 大 40% ) なし 5年 なし 5年 3% - 6% 総 額× 3%< 又 は 20% $> 韓 1 0年 、 拡 充 + 又は 【総額 × 25 % < 又 は 30% $> 】 増 加 額 × 40% 【増 加額 × 50%】 $:特定 産 業/ 技術 に係る研究開 発 の場 合 仏 0 8年 、 拡 充 総 額× (30% ・5%) なし 3年 英 0 8年 、 拡 充 総 額× 8.4% 相 当 【総額 × 21% 相 当 】 なし 無期 限 西 0 6年 、 改 正 総 額× 30% 税 額 の 35% 1 5年 米 0 9年 、 拡 充 税 額 -25千 ㌦の 75% 2 0年 + 増 加額 × 50% 基 準超 過 額 × 20% 又 は 直 近 の総 額 の 1/2と の差 × 14% ※ 「総 額 」 や 「増 加 額 」の 定 義 は 、 各 国 毎 に 異 なる。 (出典 )OE C D 「W ork i ng p arty of National E x perts on S c ienc e and T ec hnolog y Indic ators / R &D TA X INC E NT IV E A N D R & D S T AT IS T IC S : W H AT NE X T1」20 07、 各国課税 当局資料等 により、2010 年9 月時 点で 作成 。 11 1 5)社会保険料負担を含めた企業負担率国際比較(出所;経済産業省) 12 産業競争力懇談会(COCN) 東京都千代田区丸の内一丁目 6 番 6 号 〒100-8280 日本生命丸の内ビル(株式会社日立製作所内) Tel:03-4564-2382 Fax:03-4564-2159 E-mail:[email protected] URL:http://www.cocn.jp/ 事務局長 中塚隆雄