...

医用画像の利用技術

by user

on
Category: Documents
18

views

Report

Comments

Transcript

医用画像の利用技術
平成23年度
特許出願技術動向調査報告書(概要)
医用画像の利用技術
平成24年4月
特
許
庁
問い合わせ先
特許庁総務部企画調査課
技術動向班
電話:03-3581-1101(内線2155)
第1章
医用画像の利用技術の技術俯瞰
第1節
医用画像の利用技術の技術俯瞰
医療現場での医用画像 IT 化の状況は、1988 年に診療報酬に導入されたデジタル映像化処
理加算(従来のアナログ診断画像をデジタル化した場合に算定可能)によってデジタル画像
診断の普及率は 7 割を超え、医用画像のデジタル化という目的はほぼ達成された。また、診
断に用いられる医用画像は医療法施行規則によって、2~5 年間の保存が義務付けられている
が、2008 年に新設された電子画像管理加算(フィルムに印刷しない診療を評価する加算)に
よ り フ ィ ル ム レ ス 化 が 推 進 さ れ 、 画 像 デ ー タ を 管 理 す る PACS ( 画 像 保 存 通 信 シ ス テ
ム:Picture Archiving and Communication Systems)の普及が進んでいる。さらに、PACS と
は独立して進化を遂げた CAD(コンピュータ支援診断:Computer Aided Diagnosis)の技術が
PACS の技術と結び付き、容量とネットワーク性能に重点を置く PACS 技術と、画像処理速度
と精度を重視する CAD 技術が一体化の方向に進んでいる。
このようなことを背景に、今回の調査では、医用画像診断装置から生成される画像データ
を、院内外ネットワークを通じて、医療の関わる様々な場面で活用する技術を対象とする。
具体的な場面(用途)としては、遠隔画像診断、治療ナビゲーション、治療シミュレーショ
ン、教育訓練システム等がある。
図 1-1
医用画像の利用技術の技術俯瞰図
- 1 -
医用画像の利用技術の構成要素には、画像データの保管、転送、システム管理をする PACS、
画像診断支援、特定用途(用途技術)がある。このうち、PACS は通常使用されているより広
い意味合いで捉え、画像データを含む電子カルテも含めている。画像診断支援は、基本とな
る画像処理、診断を支援する HMI(Human Machine Interface)、CAD 等からなっている。画像
処理にはエッジ処理、パターン認識、画像融合、3D 表示処理等、CAD には解剖学的部位特定、
病変部位指摘、病状評価等が含まれる。なお、医用画像には通常は内視鏡等の可視光画像も
当然含まれるが、内視鏡等は別途調査されているので、今回の調査対象から除外している。
また、画像診断機器そのものも今回の調査では対象外としている。
第2節
医用画像の利用技術の概要
医用画像の利用技術のうち、ここでは、代表的な製品でもある PACS と、画像診断支援のう
ちの CAD と画像処理について、その概要をまとめる。
1.PACS
X 線、X 線 CT、MRI、超音波、PET、SPECT 等、医療検査技術は急速に多様化している。医療
現場では検査目的に応じて各種のモダリティを使うようになり、モダリティが高解像度にな
るほどデータサイズは増大して、管理しなければならない画像データ量が急増している。こ
のような種々のモダリティで発生する大量の画像データを効率よく保管・管理するシステム
が PACS である。当初はネットワーク通信という概念を持たず、保存だけを目的としたシステ
ムであったが、1995 年に保存・通信規格が米国提案の DICOM 規格に統一されると、LAN, イ
ンターネット技術の進歩と共に、2000 年頃から急速に実用化・普及してきている。
2.CAD・画像処理
CAD とは医用画像に対してコンピュータが定量分析していった解剖学的部位特定・病変部
位指摘・病状評価などを、医師が第二の意見として利用する診断技術である。最初にマンモ
グラフィ CAD システムが検診用として FDA より認可され、その後、胃 X 線画像の CAD システ
ム、頭部領域 MRI の CAD システム、乳腺超音波画像のための CAD システムと適用領域が広が
り、現在では X 線 CT 画像の大量なスキャンデータの読影診断に不可欠なツールとなっている。
CAD には様々な画像処理技術が応用されているが、画像処理の基本的な処理の一つだけで
納得できる CAD の結果が得られることはなく、異なる画像処理技術を組み合わせて使用する
のが一般的である。解析技術にはノイズを低減する画像処理・領域の境界を抽出するエッジ
強調処理・撮影条件の違いによる影響を軽減する画素値の正規化処理などが含まれ、個々の
画像処理技術の精度が CAD の結果に影響を与えることになる。
モダリティごとに進化してきた CAD 技術は、DICOM の登場によって共通のフォーマットで
画像データを取り扱うことが可能になると、MRI や CT などの形態画像と PET や SPECT などの
機能画像を融合するフュージョンイメージング(画像融合)が行われるようになり、さらに
3 次元、4 次元へと発展し、単なる診断支援にとどまらず治療ナビゲーションにまで応用分野
が急速に拡大している。さらに、次世代 CAD として、各種臓器や疾病に適用できる多臓器多
疾病 CAD、手術の進行に合わせて刻々と変化する患部の状況を把握して判断を支援する術中
診断 CAD、画像情報だけでなく、その他の様々な臨床情報も融合した全身の総合理解と、そ
れに基づく診断を支援する全身用 CAD 等が注目されている。
- 2 -
第2章
医用画像の利用技術に関する特許動向調査
第1節
調査方法と対象とした特許
1.調査方法
医用画像の利用技術に関する特許出願動向について、全体動向調査、技術区分別動向調査、
出願人別動向調査、注目研究開発テーマ別動向調査及び重要特許調査を行った。
出願件数及び登録件数は、原則として各国・地域への出願の公報一つ一つを個別にカウン
トする「公報単位」でカウントした。ただし、三極コア出願(日米欧(三極)等の三極のい
ずれにも出願された発明)などで「発明単位」で分析した場合は、その旨を記載している。
(1)調査対象とした出願先国
今回調査した特許の出願先国は、日本、米国、欧州、中国、韓国及びインドである。ただ
し、インドへの出願は一部の解析のみに使用している。欧州への出願については、欧州特許
庁への出願(EPC 出願)だけでなく、EPC 加盟国のうちで、使用したデータベース(後述)に
収録された出願先国 1)への出願も対象とした。
(2)使用したデータベース
日本への出願及び外国への出願ともに Derwent World Patents Index(WPINDEX(STN):ト
ムソン・ロイター社が提供する特許情報データベース、以下 WPI とする)を使用した。使用
した検索式を表 2-1 に示す。
(3)調査対象期間
調査対象とする特許文献は、優先権主張年ベースで 2001 年から 2009 年に出願されたもの
とした(2011 年 7 月 5 日検索実施)。なお、データベース収録までの時間差により全データ
が収録されている年が各国・地域で異なっており、特に 2008 年以降は全データが取得されて
いない場合があり、さらに PCT 出願では国内移行までの時間が長く、公表公報発行時期が国
内出願の公開(1 年 6 か月)より遅くなる事情も注意する必要がある。また、登録件数の推
移については、特許出願から審査請求までの期間と審査にかかる期間が各国・地域で異なる
ことを念頭に置く必要がある。インドへの出願については、データベースへの収録が 2004
年 12 月公開分以降であるため、出願年(優先権主張年)が 2004 年までの公開公報はデータ
ベースに収録されていない部分がある(登録公報については調査期間の全てをカバーしてい
る)。
1)
オーストリア、ベルギー、スイス、チェコ、ドイツ、デンマーク、スペイン、フィンランド、フランス、
イギリス、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、
ルーマニア、スウェーデン、スロバキアの 20 か国。
- 3 -
(4)技術分類及び分類方法
特許検索により得られた公開公報及び登録公報の内容から、撮像対象、撮像方式、PACS、
画像診断支援(画像処理、HMI、CAD)、特定用途、課題という技術区分を設けて分類した。技
術分類に用いた技術区分表を表 2-2~表 2-4 に示す(要約編では中分類以下は省略している)。
技術分類作業において調査対象技術ではないと判断される特許出願は、ノイズとして分析対
象から除外した。なお、本技術区分表では、
「PACS」は通常使われている医用画像の利用技術
の保管、通信システムという意味よりも広く、医用画像を管理するシステム全体に拡げて使
用している。
分類に際しては、各表で該当する分類が複数個ある場合は複数の分類を付与したが、PACS、
画像診断支援(画像処理、HMI、CAD)、特定用途、課題に関してはさらに主な分類項目(主分
類)を一つ選定し、分類結果の分析に際しては、特に報告書に記載した場合を除き主分類に
より分析を行った。
表 2-1 特許の検索式
(データベース:WPINDEX(STN)、検索日:2011 年 7 月 5 日)
件数
No
10,509
L1
7,191
L2
2,201
31,589
629
L3
L4
L5
328,695
L6
236,839
11,621
962
40,276
L7
L8
L9
L10
601
80
727
L11
L12
L13
72,103
1,019
721
L14
L15
L16
10,183
34,790
123,120
10,619
L17
L18
L19
L20
122,558
L21
40,204
L22
検索式
FILE WPINDEX
S (DETECTION?(5A)AID? OR DETECTION?(5A)SUPPORT? OR
DETECTION?(5A)ASSIST?)/BI,BIEX
S (DIAGNOS?(5A)AID? OR DIAGNOS?(5A)SUPPORT? OR
DIAGNOS?(5A)ASSIST?)/BI,BIEX
S (REMOTE?(2A)DIAGNOS?)/BI,BIEX
S (REMOTE?(2A)OPERAT?)/BI,BIEX
S (TELERADIOLOG? OR TELEDIAGNOS? OR TELEMEDICINE? OR
TELEPATHOLOG?)/BI,BIEX
S ((COMMUNICATION? OR NETWORK? OR LAN# OR WAN#) AND
(SERVER? OR WORKSTATION? OR DOWNLOAD? OR MAINTENANCE?
OR UPDATE?))/BI,BIEX
S INTERNET?/BI,BIEX
S INTRANET?/BI,BIEX
S (ELECTRONIC?(3A)HEALTH?)/BI,BIEX
S (ELECTRONIC?(3A)RECORD? OR MEDICAL?(3A)CLAIM? OR
CLINICAL?(W)ACCOUNTING?(W)INFORMATION? OR
ELECTRONIC?(3A)CHART? OR ELECTRONIC?(3A)KARTE?)/BI,BIEX
S EMR/BI,BIEX
S EHR/BI,BIEX
S (PACS OR
PICTURE(W)ARCHIVING(1W)COMMUNICATION(W)SYSTEM?)/BI,BIEX
S (HIS OR HOSPITAL?(3A)INFORMATION?)/BI,BIEX
S (RIS OR RADIATION(W)INFORMATION(W)SYSTEM?)/BI,BIEX
S (DICOM OR
DIGITAL(W)IMAG?(1W)COMMUNICATION?(1W)MEDICINE?)/BI,BIEX
S (IMAG?(3A)MANAGEMENT?)/BI,BIEX
S ((MEDICAL? OR DIAGNOS?)(3A)IMAG?)/BI,BIEX
S (IMAG?(3A)RECORD?)/BI,BIEX
S (IMAG?(3A)(FILING? OR STRAGE? OR ARCHIV? OR
DATABASE?))/BI,BIEX
S (IMAG?(3A)ENHANCEMENT? OR IMAG?(3A)FUSION? OR
PATTERN(W)RECOGNIT? OR IMAG?(3A)NORMALIZAT? OR
IMAG?(3A)VERTUAL? OR IMAG?(3A)IDENTIFICAT? OR
IMAG?(3A)ALIGNMENT? OR IMAG?(W)PROCESSING? OR
IMAG?(3A)DENOISING)/BI,BIEX
S (NOISE(W)REDUCTION?(3A)IMAG? OR EDGE(W)DETECT? OR
EDGE(W)EXTRACT? OR THREE(W)DIMENSION?(3A)IMAG? OR
3(W)D(3A)IMAG? OR 3D(3A)IMAG? OR
FOUR(W)DIMENSION?(3A)IMAG? OR 4(W)D(3A)IMAG? OR
4D(3A)IMAG?)/BI,BIEX
- 4 -
内容
診断支援関連
遠隔診断関連
ネットワーク関連
電子カルテ関連
PACS
HIS
RIS
DICOM
画像管理
医用画像
ファイリング関連
画像処理関連
画像強調、画像融合、パターン
認識、画像正規化、仮想化、画
像識別
位置合わせ、画像処理、画像ノ
イズ除去、エッジ検出、エッジ抽
出、3 次元画像、4 次元画像
件数
2,201
No
L23
11,062
L24
912,605
4,674
L25
L26
検索式
S (IMAG?(3A)CONTRAST(W)ENHANCEMENT? OR
IMAG?(3A)CONTRAST(W)EMPHASIS? OR EDGE(W)ENHANCEMENT?
OR EDGE(W)EMPHASIS? OR IMAG?(3A)OUTLINE(W)EXTRACT? OR
IMAG?(3A)CONTOUR(W)DETECT? OR
IMAG?(3A)GRADATION(W)PROCESSING?)/BI,BIEX
S (IMAG?(A)PIXEL# OR SPATIAL(W)FREQUENCY(W)PROCESSING?
OR IMAG?(3A)SMOOTHING? OR PIXEL#(3A)DEFECT?
(3A)CORRECTION?)/BI,BIEX
S L1-L24
S A61B0005-00/IPC AND L25 AND IMAG?
5,595
L27
S A61B0005-055/IPC AND L25
14,743
L28
S A61B0006/IPC AND L25
8,224
L29
S A61B0008/IPC AND L25
1,407
L30
3,213
L31
556
L32
4,123
L33
5,876
L34
5,791
L35
36,591
23,185
14,316
12,300
8,253
L36
L37
L38
L39
L40
4,775
1,821
6,053
972
22,549
L41
L42
L43
L44
L45
S (G01T0001-161 OR G01T0001-163 OR G01T0001-164 OR
G01T0001-166)/IPC AND L25
S (G06Q0050 OR G06F0017-60)/IPC AND (MEDICAL? AND
IMAG?)/BI,BIEX
S (G06Q0050 OR G06F0017-60)/IPC AND (MEDICAL? AND
SECURIT? )/BI,BIEX
S G06T0001/IPC AND (MEDICAL? OR HEALTH? OR CLINIC? OR
HOSPITAL?)/BI,BIEX
S G06T0001/IPC AND (A61B0005-00 OR A61B0005-055 OR A61B0006
OR A61B0008 OR G01T0001-161 OR G01T0001-163 OR
G01T0001-164 OR G01T0001-166)/IPC
S A61B0019-00/IPC AND (A61B0005-00 OR A61B0005-055 OR
A61B0006 OR A61B0008 OR G01T0001-161 OR G01T0001-163 OR
G01T0001-164 OR G01T0001-166)/IPC
S L26-L35
S L36 AND 2001-2009/PRYF
S L37 AND (JPA? OR JPB? OR JPW? OR JPX?)/PK
S L37 AND US/PC
S L37 AND (EP OR AT OR BE OR CH OR CZ OR DE OR DK OR ES OR
FI OR FR OR GB OR HU OR IE OR IT OR LU OR NL OR NO OR PT OR
RO OR SE OR SK)/PC
S L37 AND (CNA? OR CNB? OR CNC?)/PK
S L37 AND (KRA? OR KRB?)/PK
S L37 AND WO/PC
S L37 AND IN/PC
S L38-L44
- 5 -
内容
コントラスト強調、エッジ強調、輪
郭抽出、輪郭検出、階調処理
画素、空間周波数処理、平滑
化、欠陥画素補
キーワードによる検索の合計
IPC(診断ための検出、測定、記
録)×キーワード
IPC(診断機器 磁気共鳴)×キ
ーワード
IPC(診断機器 放射線)×キーワ
ード
IPC(診断機器 超音波、音波)×
キーワード
IPC(診断機器 核医学)×キーワ
ード
IPC(特定の業種に適合したシス
テム、方法)×医療×画像
IPC(特定の業種に適合したシス
テム、方法)×医療×セキュリティ
IPC(汎用イメージ処理)×医療
IPC(汎用イメージ処理)×IPC(画
像診断装置)
IPC( 手 術 ナビゲ ーショ ン、 シミュ
レーション)×IPC(画像診断装置)
合計
優先権主張年:2001 年~2009 年
出願先国:日本
出願先国:米国
出願先国:欧州
出願先国:中国
出願先国:韓国
出願先国:PCT
出願先国:インド
合計
表 2-2
技術区分表(撮像対象、撮像方式)
撮像対象
大分類
対象部位
対象疾患
表 2-3
中分類
撮像方式
大分類
頭頸部
胸部
乳房
腹部
女性生殖器
男性生殖器
泌尿器系
循環器系
呼吸器系
消化器系
皮膚及び皮下組織
筋骨格系及び結合組織
全身
胎児
その他の臓器・器官
癌・腫瘍
炎症
血管性病変
神経疾患
う蝕(虫歯)
石灰化
骨折
骨粗鬆症
その他
撮像
モダリティ
画像の
特性
中分類
X線
X線CT
超音波
MRI
核医学
その他
動画
3D
4D
その他
技術区分表(要素技術(PACS、画像診断支援、特定用途))
PACS
大分類
保管
システム
管理
表示・入力
ネットワーク
中分類
関連付け・タグ
データ圧縮
場所
その他
セキュリティ対策
故障対策
その他
画像ワークステーション
電子カルテ
画像診断支援との連携
その他
院内
院外
通信方式
その他
画像診断支援
大分類
画像処理
HMI
その他
特定用途
大分類
CAD
中分類
在宅医療
術中診断
遠隔
遠隔読影
画像診断
遠隔診断
その他
教育・訓練システム
治療シミュレーション
治療ナビゲーション
Ai
その他
- 6 -
中分類
量子化
空間周波数処理
濃度処理
大きさ、形状合わせ
エッジ抽出
パターン認識
画像融合
画像以外付加
3D表示処理
類似症例検索
その他
入力・操作方法
表示の仕方
レイアウト
3D画像表示
その他
解剖学的部位特定
病変部位指摘
病状評価
その他
表 2-4
技術区分表(課題)
課題
大分類
中分類
画像診断の精度向上
高画質化
画像の高機能化
画像診断の融合
治療成績向上
その他
業務の効率化
操作性向上
操作時間短縮
ネットワークの高速化
ワークフロー全体の効率化
その他
個人情報保護
事故への堅牢性
システムへの
ネットワークの信頼性向上
信頼性の向上
データの信頼性向上
その他
大分類
中分類
地域連携
院内相互利用性向上
画像の共有化
生涯健康医療電子記録
その他
診断時間、回数短縮
患者サービス
低侵襲化
の向上
その他
コスト削減
スペース削減
医療機関の
経営改善
省力化
その他
新医療技術の開発
法制度、標準化等への対応
その他
2.対象とした特許出願
出願先国別出願件数の内訳を表 2-5 に示す。なお、欧州国籍の出願とは EPC 加盟国である
38 か国 1)の出願人からの出願としている。
表 2-5
対象とした出願先国別特許出願件数
出願先国
ノイズ除去前の件数
日本
米国
欧州
中国
韓国
インド
PCT 出願
日米欧中韓への出願 合計
合計(インド、PCT 出願を含む)
1,4925
13,364
10,962
4,931
1,752
1,082
6,111
45,934
53,127
1)
ノイズ除去後の件数
(分析対象の出願件数)
6,799
5,415
4,069
2,020
516
421
2,470
18,819
21,710
オーストリア、ベルギー、スイス、チェコ、ドイツ、デンマーク、スペイン、フィンランド、フランス、
イギリス、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、
ルーマニア、スウェーデン、スロバキア、アルバニア、ブルガリア、キプロス、エストニア、ギリシア、
クロアチア、アイスランド、リヒテンシュタイン、リトアニア、ラトビア、モナコ、マケドニア旧ユーゴ
スラビア、マルタ、ポーランド、スロベニア、サンマリノ、トルコ、セルビアの 38 か国
- 7 -
第2節
全体動向調査
1.出願先国別出願動向
出願先国別では、日本への出願が最も多く、次いで米国、欧州への出願で、中国への出願
も比較的多い。全体の出願件数は 2005 年をピークに減少しているが、主に欧州への出願が減
少しているためで、日本、米国への出願はほぼ横ばいである。中国への出願は 2004 年まで大
きく増加し、その後横ばいである。なお、2008 年、2009 年はデータベース収録遅れ等のため
実際よりも少ない件数になっている可能性が高いが、今回の調査範囲において公開、データ
ベース収録がほぼ終了している PCT 出願でも減少しているため、減少傾向は変わらないと考
えられる。
図 2-1
出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張
年):2001-2009 年)
3,000
中国
2,020件
10.7%
韓国
516件
2.7%
2,698
優先権主張
2,500
日本
6,799件
36.1%
2001-2009年
2,302
2,211
1,872
1,790
2,000
出
2,600
2,375
1,554
1,417
願
件
欧州
4,069件
21.6%
合計
18,819件
1,500
数
1,000
米国
5,415件
28.8%
500
0
2001
注)2008年以降はデータベース収録の遅
れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全
データを反映していない可能性がある
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
出願年(優先権主張年)
出願先国
日本
- 8 -
米国
欧州
中国
韓国
合計
2.出願人国籍別出願動向
出願人国籍別では、日本国籍が最も多く、次いで欧州国籍、米国籍の順である。全体の出
願件数は 2005 年をピークに減少しているが、欧州国籍、米国籍出願人からの出願が減少して
いるためで、日本国籍出願人の出願は若干増加傾向である。中国籍、韓国籍出願人の出願は
2005 年から大きく増加している。
出願人国籍別出願件数比率の推移を見ると、日本国籍は 2005 年に減少したがその後増加し、
2007 年には約 40%で 1 位である。欧州国籍は 2007 年まで 30%前後で大きな変化はなく、米
国籍は 2002 年からほぼ一貫して減少している。中国籍及び韓国籍は共に 2005 年に約 3%に
増加し、その後 2007 年までほぼ横ばいである。
図 2-2
中国籍
401件
2.1%
出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主
張年):2001-2009 年)
韓国籍
699件
3.7%
3,000
その他
429件
2.3%
2,698
優先権主張
日本国籍
7,071件
37.6%
2001-2009年
2,500
2,600
2,375
2,302
2,211
1,872
1,790
2,000
出
1,554
1,417
願
欧州国籍
5,558件
29.5%
件
1,500
数
1,000
米国籍
4,661件
24.8%
合計
18,819件
500
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
出願年(優先権主張年)
出願人国籍
日本
米国
欧州
中国
韓国
その他
合計
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない
可能性がある
図 2-3
出願人国籍別出願件数比率推移(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2001
-2009 年)
60%
50%
出
願
件
数
比
率
優先権主張
2001-2009年
40%
30%
20%
10%
0%
2001
2002
2003
2005
2006
2007
2008
2009
出願年(優先権主張年)
出願人国籍
日本
2004
米国
欧州
中国
韓国
その他
注)2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない
可能性がある
- 9 -
3.出願先国別出願人国籍別出願件数収支
日本、米国、欧州、中国及び韓国における出願先国別出願人国籍別出願件数収支では、欧
州は韓国以外の国に対して、出願件数が他国からの出願件数を上回っている。韓国は全ての
国、地域への出願件数が、韓国への出願件数を大きく上回っている。自国市場が比較的小さ
いため、海外市場へ積極的に進出しているものと考えられる。日本も米国と中国へは出願件
数が日本への出願件数を上回っている。
この分野では、中国への出願件数が比較的大きく、市場として注目されているものと考え
られる。特に欧州からの中国への出願が多い。日本からの出願も欧州に次いで多い。
図 2-4
出願先国別出願人国籍別出願件数収支(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):
2001-2009 年)
日本への出願
6,799件
中国籍
6件
0.1%
韓国籍
115件
1.7%
その他
54件
0.8%
欧州国籍
881件
13.0%
米国籍
1,054件
15.5%
米国への出願
5,415件
欧州への出願
4,069件
日本国籍
4,689件
69.0%
1,054件
韓国籍
144件
2.7%
中国籍
50件
0.9%
その他
256件
4.7%
日本国籍
1,337件
24.7%
881件
6件
479件
115件
中国籍
11件
0.3%
韓国籍
137件
3.4%
1,337件
その他
95件
2.3%
日本国籍
479件
11.8%
1,147件
欧州国籍
1,693件
31.3%
米国籍
1,935件
35.7%
米国籍
1,147件
28.2%
欧州国籍
2,200件
54.1%
1,693件
11件
144件
137件
50件
418件
47件
519件
中国籍
331件
16.4%
韓国籍
13件
0.6%
60件
107件
その他
15件
0.7%
日本国籍
519件
25.7%
その他
9件
1.7%
724件
日本国籍
47件
9.1%
3件
中国への出願
2,020件
韓国籍
290件
56.2%
13件
欧州国籍
724件
35.8%
米国籍
107件
20.7%
米国籍
418件
20.7%
中国籍
3件
0.6%
- 10 -
欧州国籍
60件
11.6%
韓国への出願
516件
4.出願人国籍別出願件数-出願人人数の推移
日米欧中韓への出願における、出願人国籍別出願件数-出願人人数推移では、2005 年~
2007 年で、日本国籍は出願件数、出願人人数に余り変化が認められない。米国籍出願人は出
願件数、出願人人数ともに減少傾向にある。欧州国籍も出願人人数は増加したものの、出願
件数は減少している。中国籍、韓国籍は出願件数、出願人人数とも増加しており、産業の成
長期にあると考えられる。
図 2-5
出願人国籍別出願件数-出願人人数推移(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年)
:
2001-2009 年)
日本国籍
200
180
160
出 140
願 120
人 100
人 80
数 60
40
20
0
中国籍
80
2008
2009
2008
70
2004
2007
2003
2005
2001
2006
60
出
50
願
人 40
人
30
数
20
2002
10
2009
2007
2006
2005
2004
2002
0
0
200
400
600
出願件数
800
1,000
0
米国籍
300
2008
2004
2002
出 200
願
人 150
人
数 100
2009
2001
0
2009
2007
2001
800
2003
0
1,000
2006
2005
2002
0
400
600
出願件数
100
2008
10
200
80
韓国籍
60
出
50
願
人 40
人
30
数
20
2003
50
0
40
60
出願件数
70
2005
2007
20
80
2006
250
2003
2001
2004
50
100
出願件数
150
200
欧州国籍
300
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出
願の各国移行のずれ等で、全データを反映していな
い可能性がある
2007
250
出 200
願
人 150
人
数 100
2008
2006
2005
2009
2003
2004
2001
50
2002
0
0
200
400
600
出願件数
800
1,000
- 11 -
5.三極コアの出願動向
出願人が重要な技術と判断した発明は、自国だけでなく外国へも出願して権利化を試みる
ことが多い。重要な発明の出願動向の指標として、本報告書においては、日米欧(三極)の
いずれにも出願された発明を「日米欧三極コア出願」と定義し、分析を行った。また、同様
に日米中、米欧中の各三極についても分析を行った。
日米欧、日米中、米欧中の各三極について出願人国籍別に、三極コア出願件数(発明単位)、
全出願件数(発明単位)、全出願件数に対する三極コア出願の比率を表 2-6 に示す。
日米欧三極コア出願件数では、欧州国籍出願人からの出願件数が最も多く、米国籍、日本
国籍、韓国籍と続いている。三極コア出願の比率は、欧州国籍が 40.6%と非常に高く、米国
籍と韓国籍も共に 29.1%と高い。日本国籍は 6.2%とかなり低くなっている。
日米中三極コアの出願人国籍別出願件数では、欧州、日本、米国の順で、日本国籍からの
出願が米国籍からの出願より多く、日本国籍出願人は日米欧三極と比べると、相対的に中国
を重視しているものと思われる。また、韓国籍出願人の出願は少ない。
図 2-6
日米欧三極全てに出願されている発明の出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率
(日米欧への出願:発明単位、出願年(優先権主張年):2001-2009 年)
率
その他
37件
2.0%
韓国籍
93件
5.0%
中国籍
14件
0.8%
350
313
優先権主張
269
300
日本国籍
301件
16.3%
263
2001-2009年
257
222
250
192
189
出
200
願
件
150
数
88
欧州国籍
805件
43.5%
100
米国籍
602件
32.5%
59
50
合計
1,852件
0
2001
2002
2003
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT
出願の各国移行のずれ等で、全データを反映し
ていない可能性がある
図 2-7
2004
2005
2006
2007
2008
2009
出願年(優先権主張年)
出願人国籍
日本
米国
欧州
中国
韓国
その他
合計
日米中三極全てに出願されている発明の出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率
(日米欧への出願:発明単位、出願年(優先権主張年):2001-2009 年)
250
中国籍
14件
1.1%
韓国籍
7件
0.6%
その他
8件
0.6%
225
209
2001-2009年
200
日本国籍
397件
31.5%
151
149
出
150
願
106
件
数
欧州国籍
522件
41.4%
223
優先権主張
87
100
63
米国籍
312件
24.8%
47
50
0
合計
1,260件
2001
2002
2003
日本
2004
2005
2006
2007
2008
2009
出願年(優先権主張年)
出願人国籍
米国
欧州
中国
韓国
その他
合計
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のず
れ等で、全データを反映していない可能性がある
- 12 -
表 2-6
三極全てに出願されている発明の出願人国籍別出願件数と全体に対する比率(三極コア
別:発明単位、出願年(優先権主張年):2001-2009 年)
出願人国籍
日本
米国
欧州
中国
韓国
全体の
出願件数
4,894
2,071
1,981
336
320
三極コア出願件数
日米欧
日米中
米欧中
301
397
208
602
312
309
805
522
645
14
14
17
93
7
8
三極コア出願の比率
日米欧
日米中
米欧中
6.2%
8.1%
4.3%
29.1%
15.1%
14.9%
40.6%
26.4%
32.6%
4.2%
4.2%
5.1%
29.1%
2.2%
2.5%
6.インドへの出願における出願動向
今回の調査では日米欧中韓への出願の他に、インドへの出願についても調査を行っている。
出願人国籍別出願件数の割合では、欧州国籍の出願件数が 68.2%と非常に高く、次いで米国
籍が 26.1%で、日本国籍は 1.0%と少ない。インドへの出願全体の年次推移を見ると、2006
年まで急増している。
図 2-8
出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(インドへの出願、出願年(優先権主張年)
:
2001-2009 年)
120
韓国籍
1件
0.2%
中国籍
1件
0.2%
その他
18件
4.3%
96
優先権主張
100
日本国籍
4件
1.0%
米国籍
110件
26.1%
2001-2009年
95
84
80
出
61
願
件
60
数
32
40
23
17
20
欧州国籍
287件
68.2%
合計
421件
7
6
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
出願年(優先権主張年)
出願人国籍
日本
米国
欧州
中国
韓国
その他
合計
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない
可能性がある
第3節
技術区分別動向調査
1.「撮像対象」、「撮像方式」の動向
「撮像対象(対象部位、対象疾患)」、「撮像方式(撮像モダリティ)」では、明細書中に該
当項目が記載されていない場合には分類されないこと及び、1 出願に複数の分類が付与されて
いる場合があるため、各分類の出願カウント数は調査対象全出願数と一致しない。また特に、
「撮像対象(対象部位、対象疾患)」、は分類付与されている割合が小さいので注意する必要
がある。
(1)「撮像対象(対象部位)」の動向
対象部位では「循環器系」が約半数を占め、次いで、「頭頸部」約 11%、「乳房」約 8%と
なっている。内訳は「頭頸部」はほとんど脳、
「循環器系」は心臓と血管が大部分である。出
願件数推移でも「循環器系」と「頭頸部」は 2007 年まで増加傾向を示している。
- 13 -
図 2-9 「撮像対象(対象部位)」での中分類別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への
出願、出願年(優先権主張年):2001-2009 年、1 出願に該当する複数の分類を付与)
撮像対象(対象部位)
頭頸部
その他の臓
胎児
器・器官
153件
140件
1.8%
1.6%
頭頸部
954件
11.1%
全身
30件
筋骨格系及 0.4%
び結合組織
581件
6.8%
皮膚及び皮
下組織
37件
0.4%
消化器系
704件
8.2%
呼吸器系
605件
7.1%
循環器系
4,051件
47.3%
合計
8,569件
胸部
214件
2.5%
乳房
703件
8.2% 腹部
73件
0.9%
109
85
67
67
139
胸部
16
乳房
52
腹部
20
18
25
24
69
111
90
5
女性生殖器
5
男性生殖器
4
115
168
131
73
28
31
32
16
24
89
123
67
54
48
13
1
9
9
2
15
6
5
5
14
4
7
6
12
5
3
4
28
25
15
18
7
泌尿器系
12
10
32
10
29
22
15
12
8
女性生殖器
47件
0.5%
循環器系
280
343
512
440
568
526
623
409
350
呼吸器系
46
53
111
97
82
79
59
50
28
男性生殖器
127件
泌尿器系 1.5%
150件
1.8%
消化器系
38
52
88
71
124
81
113
87
50
皮膚及び皮下組織
筋骨格系及び結合組織
12
64
72
54
全身
3
5
胎児
4
8
その他の臓器・器官
優先権主張年
2
44
18
54
19
9
2002
3
2003
2004
2
93
4
15
2005
50
2
29
17
6
67
5
33
7
4
83
7
13 33
2001
8
2006
8
14 24
21
16
2007
2008
9
2009
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない
可能性がある
(2)「撮像対象(対象疾患)」の動向
対象疾患では「癌・腫瘍」約 45%、
「血管性病変」約 32%と、この 2 分類で全体の約 3/4
を占めている。出願件数推移では「癌・腫瘍」が 2003 年以降ほぼ横ばいなのに対し「血管性
病変」は 2006 年、2007 年に大きく増加している。
図 2-10
「撮像対象(対象疾患)」での中分類別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓へ
の出願、出願年(優先権主張年)
:2001-2009 年、1 出願に該当する複数の分類を付与)
撮像対象(対象疾患)
骨折
30件
1.1%
骨粗鬆症
49件
1.8%
癌・腫瘍
その他
310件
11.2%
炎症
石灰化
78件
2.8%
癌・腫瘍
1,233件
44.5%
う蝕(虫歯)
38件
1.4%
1
血管性病変
38
神経疾患
7
血管性病変
879件
31.7%
炎症
15件
0.5%
187
188
161
1
10
72
1
3
121
87
3
60
30
137
195
154
139
6
7
26
55
25
7
9
1
5
10
5
8
6
11
石灰化
5
10
骨折
4
10
骨粗鬆症
3
8
15
42
42
38
23
21
46
50
23
25
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
その他
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、
PCT出願の各国移行のずれ等で、全データを反
映していない可能性がある
117
177
54
う蝕(虫歯)
神経疾患
137件
4.9%
合計
2,769件
119
76
優先権主張年
- 14 -
10
9
8
14
5
2
4
2
2
3
4
3
2
3
12
2
(3)「撮像方式(撮像モダリティ)」の動向
撮像モダリティは、特定しないように記載しないか、多くのモダリティを列挙する出願が
多く、特徴が見えづらい結果となった。
「X 線」は 2003 年にピークがあり、「X 線 CT」、「超音波」、「MRI」、「核医学」は 2005 年に
ピークがある。古くから発展していた「X 線」から他のモダリティに関心が移ったものと思
われる。
「核医学」は 2001 年からピークの 2005 年までに出願件数が約 5 倍弱まで急激に増加
している。「X 線 CT」、「超音波」、「MRI」は同期間で、2 倍前後の増加である。
図 2-11
「撮像方式(撮像モダリティ)」での中分類別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧
中韓への出願、出願年(優先権主張年):2001-2009 年、1 出願に該当する複数の分類
を付与)
撮像方式
(撮像モダリティ)
核医学
1,854件
8.8%
その他
190件
0.9%
X線
4,571件
21.7%
MRI
4,015件
19.1%
X線CT
5,185件
24.6%
超音波
5,229件
24.8%
合計
21,044件
X線
507
566
693
390
615
608
503
402
287
X線CT
411
433
659
663
827
740
673
469
310
超音波
344
421
713
587
798
743
694
480
449
MRI
357
362
488
378
685
549
548
390
258
核医学
70
140
202
215
336
308
296
170
117
その他
優先権主張年
24
49
19
22
22
11
29
14
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない
可能性がある
2.要素技術(PACS、画像診断支援(画像処理、HMI、CAD)、特定用途)の動向
出願件数は「画像処理」が約 42%で最も多く、次いで「特定用途」、
「CAD」、
「PACS」、
「HMI」
の順で、「CAD」と「特定用途」は増加傾向を示し、「画像処理」、「PACS」、「HMI」はほぼ横ば
いと言える。要素技術「特定用途」は、大部分は「治療ナビゲーション」の出願である。
出願人国籍別では、いずれの国籍でも「画像処理」が最も多いが、日本以外(米欧中韓)
では次いで「特定用途」、
「CAD」の順であるのに対し、日本国籍出願人では「特定用途」、
「CAD」
よりも「PACS」が多く、特徴的である。
- 15 -
図 2-12
「要素技術」別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権
主張年):2001-2009 年、1 出願に該当する複数の要素技術分類を付与)
要素技術
PACS
3,221件
12.3%
特定用途
5,506件
21.1%
CAD
4,303件
16.5%
合計
26,154件
PACS
265
340
423
414
364
452
375
326
262
画像処理
877
996
1,303
1,360
1,554
1,396
1,374
1,103
949
HMI
167
340
262
254
276
381
266
172
94
CAD
223
289
345
415
410
782
834
481
524
特定用途
333
396
502
591
596
920
993
563
612
優先権主張年
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
画像処理
10,912件
41.7%
HMI
2,212件
8.5%
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、
PCT出願の各国移行のずれ等で、全データを
反映していない可能性がある
図 2-13 「要素技術」別出願人国籍別出願件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):
2001-2009 年、1 出願に該当する複数の要素技術分類を付与)
要素技術
PACS
1,738
755
507
80
画像処理
3,868
2,539
3,579
234
HMI
1,019
504
551
34
70
CAD
1,082
1,195
1,563
114
185
164
特定用途
1,246
1,580
2,036
195
218
231
出願人国籍
日本
米国
欧州
中国
97
472
韓国
44
220
34
その他
3.「PACS」の動向
「PACS」への出願では、日本国籍出願人が約 54%と半数以上を占め、次いで米国籍、欧州
国籍の順で、医用画像の利用技術全体での比率と比べて、日本国籍が多く、欧州国籍が少な
い。出願件数推移は 2003 年まで増加し、その後 2007 年までほぼ横ばいと言える。出願人国
籍別では日本は 2003 年以降ほぼ 2007 年まで横ばいであるが、欧州は 2005 年、米国は 2006
年をピークに減少し、特に欧州の減少が大きい。中国、韓国は近年増加している。
- 16 -
図 2-14 「PACS」での出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願
年(優先権主張年):2001-2009 年)
500
韓国籍
97件
3.0%
中国籍
その他
80件
44件
2.5%
1.4%
452
423
450
1,738件
507件
54.0%
15.7%
375
364
400
340
出
願
件
数
2001-2009年
326
350
日本国籍
欧州国籍
優先権主張
414
265
300
262
250
200
150
100
米国籍
755件
50
23.4%
合計
0
3,221件
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
出願年(優先権主張年)
出願人国籍
日本
米国
欧州
中国
韓国
その他
合計
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない
可能性がある
4.「画像処理、HMI」の動向
「画像処理、HMI」への出願は今回の調査対象出願件数の約 70%を占めているため、本章
第2節に示した全体動向と余り変わらない。出願件数は日本国籍出願人、欧州国籍、米国籍
の順で、出願件数推移は 2005 年のピーク以降若干減少傾向である。出願人国籍別では日本と
欧州は 2007 年までほぼ横ばいであるが、米国は 2005 年をピークに減少している。2005 年以
降韓国が増加している。
図 2-15
「画像処理、HMI」での出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への
出願、出願年(優先権主張年):2001-2009 年)
2,000
中国籍
268件
2.0%
韓国籍
542件
4.1%
1,830
1,800
その他
254件
1.9%
1,565
1,777
1,640
1,614
優先権主張
2001-2009年
1,600
1,336
1,275
1,400
日本国籍
4,887件
37.2%
出
願
件
数
欧州国籍
4,130件
31.5%
1,200
1,044
1,043
1,000
800
600
400
200
合計
13,124件
米国籍
3,043件
23.2%
0
2001
2002
2003
日本
2004
2005
2006
2007
2008
2009
出願年(優先権主張年)
出願人国籍
米国
欧州
中国
韓国
その他
合計
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない
可能性がある
5.「CAD」の動向
「CAD」への出願では、出願件数が欧州国籍、米国籍、日本国籍の順で、医用画像の利用技
術全体での比率と比べて、日本国籍が少なく、欧州国籍が多くなっている。出願件数推移は
2006 年、2007 年に欧州国籍出願人の大量出願で突出して多いが、その影響を除いても、2009
- 17 -
年まで増加傾向と言える。欧州国籍以外でも、日本国籍、米国籍の出願も増加し、近年は中
国籍、韓国籍出願人の出願も増加している。各国・地域がこの分野を重要視しているものと
思われる。
図 2-16
「CAD」での出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願
年(優先権主張年):2001-2009 年)
900
834
782
800
韓国籍
185件
4.3%
中国籍
114件
2.6%
優先権主張
2001-2009年
その他
164件
3.8%
700
600
日本国籍
1,082件
25.1%
524
481
出
願
件
数
500
410
415
345
400
289
300
223
200
欧州国籍
1,563件
36.3%
100
米国籍
1,195件
27.8%
合計
4,303件
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
出願年(優先権主張年)
出願人国籍
日本
米国
欧州
中国
韓国
その他
合計
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない可
能性がある
「CAD」の下位分類(中分類)では、
「病変部位指摘」が約 62%と多く、次いで「解剖学的
部位特定」、「病状評価」である。出願件数推移で見ると、「病変部位指摘」が 2007 年まで一
貫して増加傾向である。
「解剖学的部位特定」と「病状評価」は途中増減はあるが、全体とし
ては横ばい又は若干増加と言える。
図 2-17 「CAD」での中分類別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優
先権主張年):2001-2009 年)
その他
104件
2.4%
病状評価
445件
10.3%
画像診断支援
(CAD)中分類
解剖学的部
位特定
1,096件
25.5%
解剖学的部位特定
67
92
124
144
115
141
139
151
123
病変部位指摘
99
114
175
210
230
565
620
285
360
病状評価
47
68
65
44
その他
病変部位指
摘
2,658件
61.8%
10
25
15
47
21
38 74
14
27
2
10
37
1
4
合計
4,303件
優先権主張年
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない可
能性がある
出願先国別では、日米欧中の各国・地域への出願ともに 2007 年まで増加している。特に
2006 年と欧州からの出願が各国・地域ともに目立っている。
- 18 -
図 2-18
出願先国別「画像診断支援(CAD)」での出願人国籍別出願件数推移(出願年(優先権主
張年):2001-2009 年)
日本への出願
米国への出願
300
250
216
255
200
250
2001-2009年
187
出
150
154
142
150
件
数
135
85
112
109
103
86
100
50
71
50
0
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2001
2009
出願年(優先権主張年)
出願人国籍
日本
米国
欧州
中国
2002
2003
2004
韓国
その他
日本
合計
2005
2006
2007
2008
2009
出願年(優先権主張年)
出願人国籍
米国
欧州への出願
欧州
中国
韓国
その他
合計
中国への出願
250
140
220
211
200
170
159
出
願
102
100
2001-2009年
200
136
129
願
件
数
247
優先権主張
優先権主張
優先権主張
2001-2009年
129
114
優先権主張
120
2001-2009年
100
出
願
件
数
出
150
103
100
72
願
108
96
件
数
94
78
80
49
60
43
68
55
54
58
40
23
50
10
20
0
0
2001
2002
2003
2004
出願人国籍
日本
2005
2006
2007
2008
2001
2009
出願年(優先権主張年)
米国
欧州
中国
2002
2003
2004
韓国
その他
日本
合計
2005
2006
2007
2008
2009
出願年(優先権主張年)
出願人国籍
米国
欧州
中国
韓国
その他
合計
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない可
能性がある
6.「特定用途」の動向
「特定用途」の動向は、大分類「治療ナビゲーション」が約 83%と大部分を占めるため、
ほとんど「治療ナビゲーション」の動向を表している。
出願件数は欧州国籍、米国籍、日本国籍の順で、医用画像の利用技術全体での比率と比べ
て日本国籍が少なく、欧州国籍が多くなっている。出願件数推移は 2006 年、2007 年に欧州
国籍出願人の大量出願で突出して多いが、その影響を除いても、2007 年まで増加傾向と言え
る。米国籍出願人も 2007 年まで増加している。2009 年には日本国籍、中国籍、韓国籍の出
願も増加している。
図 2-19
「特定用途」での出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、
出願年(優先権主張年):2001-2009 年)
1,200
韓国籍
218件
4.0%
中国籍
195件
3.5%
優先権主張
その他
231件
4.2%
1,000
1,246件
22.6%
800
出
願
件
欧州国籍
2,036件
591
596
2004
2005
563
612
502
600
396
400
333
200
米国籍
1,580件
合計
5,506件
920
日本国籍
数
37.0%
993
2001-2009年
28.7%
0
2001
2002
2003
日本
2006
2007
2008
2009
出願年(優先権主張年)
出願人国籍
米国
欧州
中国
韓国
その他
合計
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない可
能性がある
- 19 -
「特定用途」の下位分類では、
「治療ナビゲーション」が約 83%と大部分を占めている。
「治
療ナビゲーション」は 2007 年まで一貫して増加傾向である。「遠隔画像診断」も全体として
増加傾向で、「遠隔診断」が 2006 年、「術中診断」が 2007 年に多く出願されている。
図 2-20 「特定用途」での下位分類別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、出
願年(優先権主張年):2001-2009 年)
特定用途
術中診断
94件
1.7%
その他
245件
4.4%
在宅医療
16件
0.3%
Ai
2件
0.0%
遠隔診断 遠隔画像診
断
遠隔読影
122件
その他
75件
2.2%
30件
1.4%
0.5%
教育・訓練シ
ステム
102件
1.9%
治療シミュ
レーション
244件
4.4%
在宅医療
1
術中診断
5
5
9
遠隔読影
7
6
7
遠隔診断
17
12
その他
5
教育・訓練システム
6
遠
隔
画
像
診
断
5
1
1
3
10
17
8
2
7
10
10 25
6
10
3
3
8
3
4
43
11
4
6
18
7
17
17
1
13
7
24
34
31
39
18
42
26
治療ナビゲーション
217
318
413
468
474
814
858
469
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT
出願の各国移行のずれ等で、全データを反映し
ていない可能性がある
その他
優先権主張年
1
48
2001
17
2002
14 27
2003
2004
1
4
27
Ai
1
7
1
18
33
3
治療シミュレーション
治療ナビゲー
ション
4,576件
83.1%
第4節
1
10
3
545
1
40
36
28
29
2005
2006
2007
2008
6
2009
注目研究開発テーマの動向調査
医用画像の利用技術における注目研究開発テーマとして、
「治療ナビゲーション、治療シミ
ュレーションにおける医用画像 3D 処理技術」、「CAD における複数アルゴリズム併用技術」、
「CAD における異種画像併用技術」の 3 テーマを選定し出願動向を分析した。治療ナビゲー
ション、治療シミュレーション、CAD は経済産業省の技術戦略マップ 2010・医療機器分野の
技術マップにおいて、取り上げられている技術であり、選定した 3 テーマはそれらを、より
高度化するための技術として注目される。なお、本節においては、1 出願に対して、該当する
複数の分類を付与した集合を使用している。
1.「治療ナビゲーション、治療シミュレーションにおける医用画像 3D 処理技術」の動向
表 2-3 の特定用途に関する技術区分表の大分類「治療ナビゲーション」と「治療シミュレ
ーション」に分類された出願の和集合と、画像診断支援に関する技術区分表の中分類「3D 表
示処理」と「3D 画像表示」の和集合どうしの積集合を分析した。
出願人国籍は欧州が約 43%と多く、次いで米国、日本の順である。出願件数は 2003 年ま
で増加し、2004 年、2005 年は減少していたが、2006 年、2007 年に欧州国籍出願人の大量出
願により急増している。日本国籍出願人は 2009 年に急増している。同様に、韓国籍出願人も
2009 年に急増している。
- 20 -
図 2-21
「治療ナビゲーション、治療シミュレーションにおける医用画像 3D 処理技術」に関す
る出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先
権主張年):2001-2009 年、1 出願に該当する複数の分類を付与)
350
韓国籍
79件
6.3%
その他
55件
4.4%
287
優先権主張
300
2001-2009年
236
日本国籍
221件
17.6%
250
出
200
願
中国籍
44件
3.5%
168
150
数
97
94
米国籍
320件
25.5%
100
63
36
50
欧州国籍
535件
42.7%
136
137
件
合計
1,254件
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
出願年(優先権主張年)
出願人国籍
日本
米国
欧州
中国
韓国
その他
合計
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない
可能性がある
2.「CAD における複数アルゴリズム併用技術」の動向
表 2-3 の画像診断支援に関する技術区分表の中分類「解剖学的部位特定」、「病変部指摘」、
「病状評価」それぞれの小分類「複数アルゴリズム併用」を和集合として分析した。
出願人国籍は欧州が約 41%と多く、次いで米国、日本の順である。出願件数は 2005 年ま
でほぼ横ばいであったが、2006 年から増加に転じている。2007 年の出願件数が欧州国籍出願
人の大量出願により突出しているが、この影響を除いても 2009 年まで増加傾向が続いている。
日本国籍出願人も 2008 年、2009 年と増加している。
「CAD」全体に占める「複数アルゴリズム併用技術」の出願件数比率の推移は、2006 年ま
では日米欧の各国籍出願人とも 5%前後で横ばいであったのが、米国籍、欧州国籍出願人の
出願において、2007 年から 20%~25%と急激に高くなっている。日本国籍出願人の出願も
2008 年から上昇しており、近年注目されていることが窺える。
図 2-22
「CAD における複数アルゴリズム併用技術」に関する出願人国籍別出願件数推移及び出願
件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年)
:2001-2009 年、1 出願に該当
する複数の分類を付与)
180
韓国籍
12件
2.5%
その他
33件
7.0%
160
日本国籍
90件
19.0%
157
優先権主張
2001-2009年
140
120
中国籍
18件
3.8%
出
願
件
数
100
82
74
80
51
60
米国籍
128件
27.1%
欧州国籍
192件
40.6%
40
30
19
18
19
2001
2002
2003
23
20
0
合計
473件
日本
2004
2005
2006
2007
2008
2009
出願年(優先権主張年)
出願人国籍
米国
- 21 -
欧州
中国
韓国
その他
合計
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない
可能性がある
図 2-23
出願人国籍別 CAD 全体に占める複数アルゴリズム併用技術の出願件数比率の推移(日米
欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2001-2009 年、1 出願に該当する複数の分
類を付与)
30%
25%
優先権主張
2001-2009年
出 20%
願
件
数 15%
比
率 10%
5%
0%
2001
2002
2003
2004
2005
2006
出願年(優先権主張年)
2007
2008
2009
出願人国籍
日本
米国
欧州
総計
注)2008年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない
可能性がある
- 22 -
3.「CAD における異種画像併用技術」の動向
表 2-3 の画像診断支援に関する技術区分表の中分類「解剖学的部位特定」、「病変部指摘」、
「病状評価」それぞれの小分類「異種画像併用」を和集合として分析した。
出願人国籍は欧州が約 37%と多く、次いで米国約 29%、日本約 21%の順である。出願件
数は 2007 年まで上昇傾向である。欧州国籍出願人が 2006 年~2008 年に多量に出願しており、
米国籍出願人は 2006 年に多い。日本国籍出願人も 2008 年を除いて増加傾向と言える。
CAD 全体に占める異種画像併用技術の出願件数比率は、全体としては 2001 年の約 6%から
2008 年の約 10%まで上昇しており、近年注目されていることが窺える。特に欧州国籍出願人
は 2008 年に 16%弱まで上昇している。
図 2-24
「CAD における異種画像併用技術」に関する出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率
(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年)
:2001-2009 年、1 出願に該当する複数
の分類を付与)
90
80
その他
24件
7.2%
韓国籍
17件
5.1%
80
日本国籍
68件
20.5%
優先権主張
2001-2009年
64
70
60
出
中国籍
3件
0.9%
願
件
数
34
40
18
20
14
14
10
合計
332件
0
2001
注)2008年以降はデータベース収録の遅
れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全
データを反映していない可能性がある
図 2-25
33
27
30
米国籍
96件
28.9%
欧州国籍
124件
37.3%
48
50
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
出願年(優先権主張年)
出願人国籍
日本
米国
欧州
中国
韓国
その他
合計
出願人国籍別 CAD 全体に占める異種画像併用技術の出願件数比率推移(日米欧中韓への
出願、出願年(優先権主張年):2001-2009 年、1 出願に該当する複数の分類を付与)
18%
16%
優先権主張
2001-2009年
14%
出 12%
願
件 10%
数
8%
比
率 6%
4%
2%
0%
2001
2002
2003
2004
2005
2006
出願年(優先権主張年)
2007
2008
出願人国籍
日本
米国
欧州
- 23 -
総計
2009
注)2008年以降はデータベー
ス収録の遅れ、PCT出願の各国
移行のずれ等で、全データを
反映していない可能性がある
第3章
医用画像の利用技術に関する研究開発動向調査
第1節
調査方法と対象とした論文
医用画像の利用技術に関する論文発表動向から見た研究開発動向について、国際的主要誌
での動向を分析するために、論文データベース(MEDLINE)を用いて調査対象論文を検索、抽
出し、全体動向調査、技術区分別動向調査、注目研究開発テーマの動向調査、研究者所属機
関・研究者別動向調査及び重要論文の変遷に関する調査を行った。今回の調査では検索で抽
出された論文誌の中から、本分野において国際的に重要と認められる論文誌を選定し、その
国際的主要誌に限定している。さらに、検索に使用した MEDLINE には日本の雑誌が少ないた
め、国内の研究開発動向を見るため、国内雑誌を多く収録している論文データベースである
JSTPlus を用いて国内論文を検索、抽出して補完した。国内論文についても重要と認められ
る国内主要誌を選定し限定している。撮像機器が主体となっているもの、光による画像(可
視、赤外、紫外)を対象としたもの、総説は対象外とした。なお、検索ではキーワードを使
用しているため、検索対象の抄録中にキーワードが使用されていない論文は抽出されないこ
とに留意する必要がある。MEDLINE 及び JSTPlus での検索式を表 3-1、表 3-2 に示した。
検索の対象とした論文は、2001 年~2010 年に発表された論文誌に掲載されたものとし、本
調査において分析対象とした論文は、国際的主要誌(MEDLINE)から 2,629 件、国内主要誌
(JSTPlus)から 413 件である。分類付けは抄録を対象に行った。
表 3-1 論文の検索式(国際的主要誌)
(データベース:MEDLINE(DIALOG)、検索日:2011 年 8 月 25 日)
件数
No
検索式
1,048
2,358
7,935
S1
S2
S3
B154
S DC=E1.370.376.149.?(L)IS
S DC=E1.370.350.130.?(L)IS
S DC=E1.370.350.350.?(L)IS
2,229
6,684
84
11,288
2,701
11
S4
S5
S6
S7
S8
S9
S
S
S
S
S
S
425
447
20
514
14,015
101
7,554
10
136
31,773
15,764
4,152
S10
S11
S12
S13
S14
S15
S16
S17
S18
S19
S20
S21
4,761
3,437
924
S22
S23
S24
DC=E1.370.350.400.?(L)IS
DC=E1.370.350.500.?(L)IS
DC=E1.370.350.557.?(L)IS
DC=E1.370.350.700.?(L)IS
DC=E1.370.350.710.?(L)IS
DC=E1.370.350.730.?(L)IS
S DC=E1.370.350.750.?(L)IS
S DC=E1.370.350.760.?(L)IS
S DC=E1.370.350.780.?(L)IS
S DC=E1.370.350.800.?(L)IS
S DC=E1.370.350.825.?(L)IS
S DC=E1.370.350.840.?(L)IS
S DC=E1.370.350.850.?(L)IS
S DC=E1.370.350.887.?(L)IS
S DC=E1.370.350.925.?(L)IS
S S1:S18
S S19/MAJ
S S20 AND (IMAG?(W)ANALYSIS OR IMAG?(W)PROCESSING OR
COMPUTER(W)AIDED(W)(DETECTION OR DIAGNOSIS) OR
SEGMENT? OR REGISTRAT? OR SUBTRACT? OR CLASSIFICAT? OR
DIFFERENTIAL(W)DIAGNOSIS? AND (COMPUTER OR ALGORITHM)
OR DECISION(W)SUPPORT AND (COMPUTER OR ALGORITHM))
S RADIOLOGY INFORMATION SYSTEMS!
S HOSPITAL INFORMATION SYSTEMS! AND IMAG?
S MEDICAL RECORDS SYSTEMS, COMPUTERIZED! AND IMAG?
- 24 -
内容
Brain Mapping
Cardiac Imaging Techniques
Image Interpretation,
Computer-Assisted
Imaging, Three-Dimensional
Magnetic Resonance Imaging
Molecular Imaging
Radiography
Radionuclide Imaging
Respiratory-Gated Imaging
Techniques
Spectroscopy, Near-Infrared
Subtraction Technique
Terahertz Imaging
Thermography
Tomography
Transillumination
Ultrasonography
Voltage-Sensitive Dye Imaging
Whole Body Imaging
計
MeSH 主題
Radiology Information Systems
Hospital Information Systems
Medical Records
Systems,Computerized
件数
7
1,070
9
688
No
S25
S26
S27
S28
6,584
5,399
252,707
551,076
76,654
308,785
212,321
1,013,168
20,413
75,470
89,376
1,391
S29
S30
S31
S32
S33
S34
S35
S36
S37
S38
S39
S40
194,691
26,618
27,910
393,858
1,373
4,655
634,602
8,039
2,708
S41
S42
S43
S44
S45
S46
S47
S48
S49
4,401
S50
1,071
17
370
S51
S52
S53
19,818
17,859
10,316
S54
S55
S56
検索式
S DC=E5.318.308.940.968.249.? AND IMAG?
S DC=L1.178.847.652.700.?
S DC=N3.540.630.480.?
S DC=E2.815.? AND (3D(W)NAVIGAT? OR 3D(W)SIMULAT? OR
3D(W)DOSE(W)PLANNING OR THREE(W)DIMENSION?(W)NAVIGAT?
OR THREE(W)DIMENSION?(W)SIMULAT? OR
THREE(W)DIMENSION?(W)DOSE(W)PLANNING OR REGISTRAT?)
S S22:S28
S S29/MAJ
S MAGNETIC(W)RESONANCE(W)IMAGING
S RADIOGRAPHY OR X(W)RAY
S RADIONUCLIDE(W)IMAG?
S TOMOGRAPHY
S ULTRASONOGRAPHY
S S31:S35
S IMAG?(W)ANALYSIS
S IMAG?(W)PROCESSING
S S37:S38
S COMPUTER(W)AIDED(W)(DETECTION OR DIAGNOSIS)
S SEGMENT?
S REGISTRAT?
S SUBTRACT?
S CLASSIFICAT?
S DIFFERENTIAL(W)DIAGNOSIS? AND (COMPUTER OR ALGORITHM)
S DECISION(W)SUPPORT AND (COMPUTER OR ALGORITHM)
S S40:S46
S S36 AND S39 AND S47
S PICTURE(W)ARCHIVING(1W)COMMUNICATION?(W)SYSTEM? OR
PACS
S RADIATION(W)INFORMATION(W)SYSTEM? OR (RIS AND
(RADIATION OR MEDICAL OR HEALTHCARE OR HEALTH OR CLINIC?
OR HOSPITAL?)) OR RADIOLOGY(W)INFORMATION(W)SYSTEM?
S DIGITAL(W)IMAG?(1W)COMMUNICATIONS(1W)MEDICINE OR DICOM
S AUTOPSY(W)IMAG?
S (STEREOSCOP? AND (INTERVENTIONAL(W)THERAP? OR ROBOT?
OR ROBOTICS! OR OPERATION? OR SURGER? OR SURGICAL) OR
MULTIVIEW(W)STEREOSCOP?) NOT (ENDOSCOP? OR FUNDUS OR
FUNDUSCOP?)
S S21 OR S30 OR S48:S53
S S54/ABS
S S55 AND PY=2001:2010 AND DT=(JOURNAL ARTICLE OR LETTER)
NOT (DT=REVIEW OR REVIEW?/TI)
- 25 -
内容
Health Records, Personal
Teleradiology
Health Level Seven
Radiotherapy
計
MeSH 主題
Magnetic Resonance Imaging
Radiography or X(W)RAY
Radionuclide Imaging
Tomography
Ultrasonography
Whole Body Imaging
Image Analysis
image processing
Computer-aided {detection /
diagnosis}
Segmentation
Registration
(Temporal) Subtraction
Classification*
Differential Diagnosis*
Decision Support
PACS
RIS
DICOM
AI
Multiview stereoscopy(MVS)
合計
抄録あり
MeSH 主題
2001-2010 年
ARTICLE+JOURNAL+LETTER
英語
総説を除外
表 3-2 論文の検索式(国内主要誌)
(データベース:JSTPlus(JDreamⅡ)、検索日:2011 年 9 月 13 日)
件数
1,758
3,145
141
374
2,252
96
128
63
537
6
798
593
15,001
18,956
216
29,635
3,152
632
115
66
15
828
74
831
47
878
No
検索式
L1 医用情報処理システム AND 画像診断
L2 (計算機診断+コンピュータ支援診断+コンピュータ補助診断+コンピュータ
診断+計算機支援診断) AND (JE04020T/CC+画像診断+RI 診断)
L3 画像診断支援
L4 電子カルテ AND (医用画像+画像処理+画像診断)
L5 PACS+画像保存通信システム
L6 放射線情報システム
L7 病院情報システム AND 医用画像
L8 医用画像管理システム
L9 医用画像 AND 画像データベース
L10 医用画像ファイリングシステム
L11 DICOM
L12 医用画像処理
L13 医用画像 AND 画像処理
L14 画像診断 AND (医用情報処理+医用画像)
L15 遠隔画像診断+テレラジオロジー
L16 L1+L2+L3+L4+L5+L6+L7+L8+L9+L10+L11+L12+L13+L14+L15
L17 (AB/FA) AND (2001-2010/PY) AND ((a1/DT+a2/DT) AND (JPN/CY)
NOT (C/DT+d2/DT+T/DT+Y/DT) AND (JPN/CY)) AND L16
L18 L17 AND (" 日 本 放 射 線 技 術 学 会 雑 誌 "/JT OR "MED IMAGING
TECHNOL"/JT OR "電子情報通信学会論文誌 D-2"/JT OR "IEICE
TRANS INF SYST (INST ELECTRON INF COMMUN ENG)"/JT OR "医
用画像情報学会雑誌"/JT OR "電気学会論文誌 C"/JT OR "生体医
工学"/JT OR "超音波検査技術"/JT OR "電子情報通信学会論文誌
A"/JT OR "画像電子学会誌"/JT OR "日本バ-チャルリアリティ学会大
会論 文集(CD-ROM)"/JT OR "コンピュ-タ支 援 画像 診断 学会 論文 誌
(WEB)"/JT OR "日本医学放射線学会雑誌"/JT OR "バイオメディカル・
ファジィ・システム学会誌"/JT OR "映像情報メディア学会誌"/JT OR
"ANN NUCL MED"/JT OR "情報処理学会論文誌"/JT OR "医学物理
"/JT OR "核医学技術"/JT)
L19 L17 AND ("日本放射線技師会雑誌"/JT OR "OPT REV"/JT OR "医学
検 査 "/JT OR " 画 像 ラ ボ "/JT OR "3D 映 像 "/JT OR "BRAIN
NERVE"/JT OR "IEICE TRANS FUNDAM ELECTRON COMMUN
COMPUT SCI (INST ELECTRON INF COMMUN ENG)"/JT OR "JPN J
APPL PHYS PART 1"/JT OR "呼吸"/JT OR "日本バ-チャルリアリティ
学会論文誌"/JT OR "日本放射線腫よう学会誌"/JT OR "J VET MED
SCI"/JT OR "MED NOW"/JT OR "シミュレ-ション"/JT OR "計測自動
制御学会論文集"/JT OR "日本機械学会論文集 A"/JT OR "日本超
音波骨軟組織学術研究"/JT OR "J GASTROENTEROL"/JT OR "PET
LINK!"/JT OR "SURGEON"/JT)
L20 L17 AND ("医用電子と生体工学"/JT OR "歯科学報"/JT OR "耳鼻咽
喉科臨床"/JT OR "週刊医学のあゆみ"/JT OR "消化器内視鏡"/JT
OR "日本ロボット学会誌"/JT OR "日本救急医学会雑誌"/JT OR "日
本 消 化 器 集 団 検 診 学 会 雑 誌 "/JT OR " 脳 循 環 代 謝 "/JT OR
"FORMA"/JT OR "INT J BIOMED SOFT COMPUT HUM SCI"/JT OR
"J REPROD DEV"/JT OR "J VIS"/JT OR "JSEPM"/JT OR
"OKAJIMAS FOLIA ANAT JPN"/JT OR "ORTHODONTIC WAVES JPN
ED"/JT OR "あたらしい眼科"/JT OR "知能と情報"/JT OR "日本コン
ピュ-タ外科学会誌"/JT)
L21 L17 AND ("日本医学写真学会雑誌"/JT OR "日本写真学会誌"/JT
OR "日本消化器がん検診学会雑誌"/JT OR "未病と抗老化"/JT OR "
老年精神医学雑誌"/JT)
L22 L18+L19+L20+L21
L23 L17 AND ("電 子 情 報 通 信 学 会 論 文 誌 D-2"/JT OR "DENT PROD
NEWS"/JT)
L24 L22+L23
L25 L17 AND ("電子情報通信学会論文誌 D"/JT)
L26 L24+L25
- 26 -
内容
画像診断支援
JE04020T:医用画像処理
電子カルテ
PACS
RIS
HIS
医用画像管理システム
医用画像処理
遠隔診断
合計
抄録あり
2001-2010 年
原著論文+短報
国内誌
会 議 録 、 会 議 議 事 録 、技 術 報 告 、
年次報告を除外
第2節
全体動向調査
国際的主要誌における研究者所属機関国籍別論文発表件数推移と国籍別件数比率の集計結
果を図 3-1 に示す。2008 年に一時減少後に再び増加傾向にある。国籍別では、欧州が全体の
42.7%で一番多く、発表件数の年次推移は多少の増減はあるが概して増加傾向にある。続い
て米国が 34.6%で二番目に多く、発表件数の年次推移は 2006 年までほぼ欧州に追随してい
たが、ここ数年は横ばいである。日本が 5.1%で、発表件数は毎年 10 数件でほぼ横ばいであ
る。韓国が 2.4%、中国が 2.3%と続く。中国、韓国は件数がまだ少ないが毎年着実に発表件
数を積み上げており、日本との差が狭まってきている。
図 3-1
研究者所属機関国籍別論文発表件数推移及び論文発表件数比率
(国際的主要誌、発表年:2001-2010 年)
率
400
韓国
64件
2.4%
その他
338件
12.9%
350
日本
135件
5.1%
中国
60件
2.3%
341
発表年
2001-2010年
300
米国
910件
34.6%
発
表
件
数
250
320
305
286
263
270
2004
2005
267
218
177
182
2002
2003
200
150
100
欧州
1,122件
42.7%
50
合計
2,629件
0
2001
日本
2006
2007
2008
2009
2010
発表年
研究者所属機関国籍
米国
欧州
中国
韓国
その他
合計
注)その他の国籍(338 件)の内訳で主なものは、カナダ(136 件)、台湾(55 件)、
オーストラリア(30 件)、ブラジル(25 件)、シンガポール(19 件)である。
第3節
技術区分別動向調査
技術区分は、
「PACS」、
「画像処理」、
「HMI」、
「CAD」、
「特定用途」とした。発表件数は特定用
途が 34.0%とトップであり、画像処理が 28.5%で第 2 位、CAD が 27.4%で第 3 位、PACS が
8.4%で第 4 位である。PACS は微減、画像処理と CAD と特定用途は増加傾向にある。
図 3-2
要素技術別論文発表件数比率及び論文発表件数推移(国際的主要誌、発表年:2001-2010
年、1 発表に該当する複数の分類を付与)
要素技術
PACS
343件
8.4%
特定用途
1,393件
34.0%
画像処理
1,168件
28.5%
PACS
45
39
27
33
42
32
36
28
27
34
画像処理
89
72
64
98
131
149
146
129
129
161
HMI
合計
4,097件
CAD
1,121件
27.4%
HMI
72件
1.8%
CAD
特定用途
発表年
- 27 -
8
10
6
10
4
9
4
3
8
10
79
66
74
139
119
107
120
107
130
180
119
83
90
148
159
149
150
158
148
189
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
技術区分の中で最も増加が著しいのが「画像診断支援(CAD)」である。発表件数合計 1,121
件において、国籍別の第 1 位は欧州(45.9%)で約半数弱を占め、多少の増減はあるが概し
て増加傾向にある。第 2 位は米国(33.6%)で、やはり概して増加傾向にある。欧州と米国
だけで約 80%を占める。日本は 5.1%で、件数はほぼ横ばいである。
図 3-3
「画像診断支援(CAD)」での研究者所属機関国籍別論文発表件数推移及び件数比率(国
際的主要誌、発表年:2001-2010 年)
率
200
韓国
29件
2.6%
その他
116件
10.3%
180
発表年
2001-2010年
180
日本
57件
5.1%
中国
28件
2.5%
160
139
130
140
米国
377件
33.6%
発
表
件
数
119
120
107
120
100
79
66
80
107
74
60
40
20
欧州
514件
45.9%
0
合計
1,121件
2001
2002
2003
2004
2005
日本
第4節
2006
2007
2008
2009
2010
発表年
研究者所属機関国籍
米国
欧州
中国
韓国
その他
合計
注目研究開発テーマの動向調査
注目研究開発テーマとして、特許と同様のテーマ、
「治療ナビゲーション、治療シミュレー
ションにおける医用画像 3D 処理技術」、「CAD における複数アルゴリズム併用技術」、「CAD に
おける異種画像併用技術」を選定し、分析した。
「治療ナビゲーション、治療シミュレーションにおける医用画像 3D 処理技術」に関する発
表件数は年々増加傾向にある。発表件数の多い順で第 1 位は米国(42.5%)、第 2 位は欧州
(41.8%)、両者とも年々件数が増加傾向にある。日本は 2.4%である。
他の 2 テーマの発表件数はそれぞれ 60 件と 59 件で、件数が少ないため、特徴的な傾向を
見ることはできなかった。
図 3-4 「治療ナビゲーション、治療シミュレーションにおける医用画像 3D 処理技術」に関する
研究者所属機関国籍別発表件数推移及び発表件数比率(国際的主要誌、発表年:2001
-2010 年、1 発表に該当する複数の分類を付与)
70
率
韓国
7件
2.4%
中国
7件
2.4%
その他
25件
8.5%
60
日本
7件
2.4%
66
発表年
2001-2010年
50
41
発
表
米国
125件
42.5%
件
数
40
30
24
合計
294件
26
22
20
13
6
10
欧州
123件
41.8%
35
33
28
0
2001
2002
2003
2004
日本
- 28 -
2005
2006
2007
2008
2009
2010
発表年
研究者所属機関国籍
米国
欧州
中国
韓国
その他
合計
第4章
政策動向調査
第1節
技術戦略マップとの対応関係
「医用画像の利用技術」は主にバイオテクノロジーの「医療機器分野」において記載され
ている。2030 年のあるべき姿と描かれた未来予想図「2030 年のくらしと医療機器」内での医
用画像の利用技術の位置付けは図 4-1 に示ように、以下の項目が挙げられる。
・医療 IT 化による医療機関間での医用画像の共有化
・医用画像を利用した高度医療技術の開発
・医用画像を利用したコンピュータによる診断支援(CAD)の普及
・医用画像を利用した遠隔診断の普及
図 4-1
2030 年のくらしと医療機器(技術戦略マップ 2010)
出典:技術戦略マップ 2010 平成 22 年 6 月 14 日 経済産業省 830 頁
2030 年のくらしと医療機器 に MCTR が説明を付加した。
http://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/kenkyu_kaihatu/str2010/a4_2.pdf
第2節
医用画像の利用技術に対する科学技術政策・産業政策
医療 IT 化関連の事業として、電子カルテの導入や IT を利用した地域医療連携システムの
導入などが行われている。(表 4-1、図 4-2)。
CAD に関しては、経済産業省が「医療機器開発ガイドライン策定事業」の中で、CAD の開発
ガイドライン策定や、医療機器におけるソフトウェアのあるべき姿の検討を目的に実施され
ている。CAD の要素技術開発は文部科学省により推進されている。主なものは 4 プロジェク
トあり、そのうち 2 プロジェクトは次世代 CAD システム開発を目指した画像診断技術開発で
あり、多臓器・多疾病を対象とした次世代 CAD システム開発に必要な基盤技術開発を目的と
した「多次元医用画像の知的診断支援」、原理的には人体を生きたまま計算機上で解剖する基
礎理論や、多疾病の早期診断支援、診断・治療の融合的支援、死因究明のための死亡時画像
(病理)診断支援のシステムを開発することを目標とする「医用画像に基づく計算解剖学の
- 29 -
創成と診断・治療支援の高度化」である。三つ目は知的クラスター創成事業として行われて
た岐阜・大垣地域「ロボティック先端医療クラスター」であり、四つ目はリーディングプロ
ジェクトの中で実施され世界的に進められている Physiome 研究として行われた「細胞・生体
機能シミュレーションプログラム」である。
CAD の重要技術に関して欧米では、その主なものとして例えば、”Physiome”、”Virtual
Physiological Human”、”Digital Patient”、”Meaningful Use”がある。これらは政府など
公的な経済的支援を受けながら、世界中で競争が行われている。
表 4-1
医用画像の利用技術に関わる事業の例(1/2)
所管省庁
総務省
(内閣官房
厚生労働省
経済産業省)
厚生労働省
総務省
経済産業省
事業
健康情報活用基盤構築事業(日本版
EHR 事業推進委員会)
厚生労働省
電 子 カ ル テ シス テ ム 等 の 導入 に よ
る 医 療 の 安 全性 と 質 の 改 善の 評 価
に関する研究
日本版 EHR の実現に向けた研究
健 康 情 報 活 用基 盤 構 築 の ため の 標
準化及び実証事業
地域医療基盤開発推進研究事業
地域診療情報連携推進事業
経済産業省
地 域 医 療 情 報連 携 シ ス テ ムの 標 準
化及び実証実験
医 療 情 報 シ ステ ム に お け る相 互 運
用性の実証事業
先 進 的 医 療 機器 シ ス テ ム の国 際 研
究開発及び実証(NEDO)
医 療 機 器 開 発ガ イ ド ラ イ ン策 定 事
業
事業の内容及び実施プロジェクトの例
複数の基礎自治体の参画・連携の下、各地域が保有する医療情
報を安全かつ円滑に流通させるための広域共同利用型 EHR シス
テムの確立・普及に向けた実証事業を実施する。(2011 年度予
算 1.9 億円)
国民が、健康情報や診療情報などの自己の健康情報を容易に収
集、生涯を通じて保有し、その上で情報を自己の健康増進に最
大限活用するための情報基盤を構築する。3 省連携で沖縄県浦
添市において実証実験を実施。 4.35 億円(2008~2010 年度
の 3 年間合計)
2005~2007 年度
地域医療連携ネットワークの実証実験、EHR 実現をめぐる課題
や医療経済への効果判定、医療プロセスの透明化による効率化
の評価を行う。2008~2010 年度
効率的な医療提供体制の構築と良質な医療の提供を実現する
ために、新たな医学・医療技術や情報通信技術等を活用し、地
域医療の基盤の確立を目的とする研究である。2005~2011 年度
継続(2011 年度予算 2.5 億円)
医療情報システムの導入に当たっては、①システムの導入・維
持費が高額なこと、②新旧システム間や異なるシステム間の互
換性が確保されていないこと等の課題が挙げられており、地域
における中心的役割を果たしている医療機関と周辺の医療機
関が医療情報ネットワークを構築し、チーム医療・グループ診
療の実践を可能とする地域医療連携体制を構築するために、医
療機関のシステム導入にかかる費用負担軽減や、医療情報シス
テムの相互運用性確保のための対向試験ツール開発を行う。
(2010 年度約 6 億円、2011 年度約 2 億円)
疾患別病期別に機能分化した地域の医療機関が患者の疾患や
病期に応じた治療の計画にしたがって、遠隔診療を含めて切れ
目なく連携するために必要な情報システム(地域医療情報連携
システム)の標準化を行い、実証する。また、成果の普及方策
の検討を行う。(2006~2008 年度の 3 年間合計 6.7 億円)
医療機関内の情報の流通性を担保し、システムの高度化、ネッ
トワーク化を推進する。医療情報システムの相互運用性を確保
し、医療機関が効果的かつ効率的にシステムを構築できる環境
を整備する。2005~2007 年度。
医療分野及びその他の異分野の要素技術を組み合わせた遠隔
診断システム等のシステムを構築し、海外現地国と連携した共
同研究、実証を推進し、最終的なインフラ構築を目指す。2011
~2013 年度。(2011 年度 3.0 億円)
CAD(コンピュータ診断支援装置)の開発ガイドラインの策定
を行っている。ここでは、医療機器におけるソフトウェアのあ
るべき姿を検討することを目的とし、CAD 及びソフトウェアを
主体とする医療機器に対する国内外の技術動向、臨床ニーズ、
薬事審査状況などの現状を分析している。産業技術総合研究所
が実施している(経済産業省委託事業)。2009 年度~現在継続。
(2009 年度 0.5 億円、2010 年度 0.5 億円、2011 年度 0.7 億円、
ただし CAD だけではなく、医療機器開発ガイドライン策定事業
全体の予算)
- 30 -
表 4-1
医用画像の利用技術に関わる事業の例(2/2)
所管省庁
文部科学省
事業
科学研究費補助金
次世代 CAD システム開発を目指した画像診断技術開発として下
記の研究テーマがある
a.多次元医用画像の知的診断支援
多臓器・多疾病を対象とした次世代の CAD システム開発を
目指したものである。「電体新書」と「電脳医学大全」を
基礎にした臓器・疾病横断型 CAD システム開発を目標とし
た。(2003~2006 年度の 4 年間合計 7.2 億円)
b.医用画像に基づく計算解剖学の創成と診断・治療支援の高度
化
胸腹部に主な狙いを定め、医用画像上で人体の解剖を可能にす
る数学的枠組みを含む新しい学術の創成を狙いとしている。
2009~2013 年度。
知的クラスター創成事業
岐阜・大垣地域ロボティック先端医
療クラスター
先端的な医療機器の開発を目的とする。下記の三つの CAD シス
テムを開発した。
・乳腺超音波画像の CAD システム
・脳 MR 画像の CAD システム
・眼底写真の CAD
(2004~2008 年度の 5 年間合計 25.1 億円)
Physiome 研究として行われた。人体を構造理解する点では CAD
と共通しているが、薬剤効果のシミュレーションなどシミュレ
ーションモデルの開発が目標であった。
(2003~2007 年度の 5 年間で 35 億円)
リーディングプロジェクト
細胞・生体機能シミュレーションプ
ログラム
図 4-2
事業の内容及び実施プロジェクトの例
地域医療連携システムの導入事例
出典:医療評価委員会(平成 21 年度第 2 回) 資料 5:地域医療における情報連携のモデル的プランにつ
いて 平成 21 年 12 月 11 日 首相官邸 6 頁
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/iryouhyouka/dai02/gijisidai.html
- 31 -
第3節
医療機器ソフトウェアに関する制度
現在市場で使用されている医療用途のソフトウェアは、以下の 3 種類に分類できる。
(a) 医療機器制御ソフトウェア
(b) 医療機器構成品の医療用アプリケーションソフトウェア
(c) 単独医療用アプリケーションソフトウェア
単独の医療用アプリケーションソフトウェア(上記(c))は、日本では医療機器として認め
られていないが、欧米を始め諸外国では単独医療機器化が実施されている
社団法人日本画像医療情報システム工業会では継続的に、医療用アプリケーションソフト
ウェアの単独医療機器化の推進に取り組んでいる。厚生労働省でも、2011 年 10 月 16 日に開
催された第 8 回厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会の「対応が必要とされる医療機器
等の課題について」において、「IT を用いた遠隔医療や単独で診断支援機能を有するソフト
ウェアなど従来の既成概念で包括できないものについて位置付けの明確化」として取り上げ
ている。当該検討部会資料2-4より「単体ソフトウェア規定整備の範囲及び国際比較につ
いて」を表 4-2 に引用する。
表 4-2
単体ソフトウェア規定整備の範囲及び国際比較について 1)
欧
州
米
国
オー スト
ラリア
カ
ナ
ダ
G
H
T
F
分類
定義
製品例
考え方
日
本
医療機
器の構
成 品 で
あるソフ
トウェア
【医療機器標準搭載ソフトウェア】
医療機器に標準搭載されたソフトウェア。
本体の医療機器と一緒に市場流通する。
【医療機器オプションソフトウェア】
医療機器のオプション製品。本体の医療
機器と別に市場流通するが、本体の構成
品 であるので必 ず本 体 にインストールさ
れる。
【医療用アプリケーションソフトウェア①】
ソフトウェア単独 で医 療 上の有 用 性があ
り、診 療 用 途 を意 図 したソフトウェア。単
独製品として流通し、かつ PC 等の汎用
ハードウェアにインストールすることを意
図したソフトウェア。
【医療用アプリケーションソフトウェア②】
医 療 機 器 で取 得 した患 者 の生 体 情 報 や
画像情報などの臨床データのさらなる処
理 は行 わずに、診 療 のために保 管 、転
送、又は表示等することを意図したソフト
ウェア。拡 大 ・縮 小 ・回 転 などを含 む。単
独製品として流通し、かつ PC 等の汎用
ハードウェアにインストールすることを意
図したソフトウェア。
【医療情報システムソフトウェア①】
医 療 機 器 で取 得 した患 者 の生 体 情 報 や
画 像 情報 などの臨床 データを取 り扱 う
が、診 療 のために提 供 することを意 図 し
ない。
【医療情報システムソフトウェア②】
患者の病 歴や検 査日程など非臨 床デー
タを取 り扱 うことを目 的としたソフトウェ
ア。
CT 等 の組 み込 み
ソフトウェア等
診療目的を
意図したも
の
☆
○
○
○
○
○
☆
○
○
○
○
○
×
○
○
○
○
○
×
○
○
○
○
○
×
×
×
×
?
?
×
×
×
×
?
?
非医療
機器の
アプリケ
ーション
ソフトウ
ェア
医療情
報 シ ス
テムソフ
トウェア
CT のモダ リティコ
ンソール等
現在非医療機器と
して販売されてい
る医 療 機 能 を 持 っ
た医療用 アプリケ
ーション
現在非医療機器と
して販売されてい
る生 体 検 査 シ ス テ
ムソフトウェア
教育用・学習用電
子 カルテソフトウェ
ア
電 子 情 報 システム
ソフ ト ウェ ア 、電 子
カルテソフトウェア
直接診療目
的を意図し
て い な い
か、又は診
療 に役 に立
つ機能・性
能を備えて
いない
注)☆:ソフトウェアをインストールした医療機器本体として規定されている
1)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001ugr0-att/2r9852000001upj0.pdf
- 32 -
第4節
標準化動向
1.国際標準化動向
国際標準を作成している組織は国際標準化機構(ISO:International Organization for
Standardization)内の ISO/TC215(Healthcare Informatics 委員会)である。ここでの国
際標準化は、先行している欧米の標準化団体での成果を取り込む形で国際標準は ISO 規格に
統一される方向に進んでいる。それら各地域標準化団体は ISO/TC215 と協調して進んでいる。
地域標準化団体の主なものは北米の DICOM 委員会(DICOM Standards Committee)と HL7
(Health Level Seven International)協会及び欧州の CEN/TC251(the European Committee
for Standardization/the Technical Committee for Medical Informatics)である。
上記標準を満足する医用機器間の相互連携を実現する目的で、1999 年に IHE(Integrating
the Healthcare Enterprise)が発足した。IHE は、標準規格の使い方を規定した仕様書(テ
クニカルフレームワーク)を開発し、各ベンダーの医療機器に対してこの仕様書の最低限の
実装がされているかの確認(コネクタソン)を行う。
図 4-3
国際標準化に関連する標準化団体とそのカバー領域の関係
日本
国際標準
地域標準
フォーラム
米国
欧州
ISO
・JIRA
・JAHIS
等
DSC
CEN
HL7協会
IHE
2.日本の標準化動向
2001 年に医療情報標準化推進協議会(HELICS:Health Information and Communication
Standards Board)が設立され、保健医療福祉情報の標準化活動を行う団体間で一貫性のある
活動を実現するために、標準化の内容と方針につき協議を行っている。HELICS 自体は標準化
を行わず、日本の標準化団体の標準規格を審査し、厚生労働省に推薦している。国内の主な
標準化団体間と海外標準化団体との関係を図 4-4 に示す。
- 33 -
図 4-4
国内の主な標準化団体と海外標準化団体との関係
国際標準化組織
米国地域標準化組織
フォーラム
ISO/TC215
DICOM標準化委員会 HL7協会
IHE
海外
参加
国内
参加
国内対策委員会
参加
JPACS
運営支援
参加
参加
参加
日本IHE協会
参加
日本HL7協会
参加
JIRA
JAHIS
運営支援
JAMI MEDIS-DC
MEDIS-DC:医療情報システム開発センター
JIRA:日本画像医療システム工業会
JAHIS:保健医療福祉情報システム工業会
JAMI:日本医療情報学会
JRS:日本医学放射線学会
JSRT:日本放射線技術学会
JPACS:日本PACS研究会 (ePHDS委員会:
enhanced Personal Health Document
Sharing system committee)
参加
JIRA
連携
MEDIS-DC
JAHIS
JRS
JSRT
JAMI
医療情報標準化推進協議会
(HELICS)
JAHIS, JIRA, MEDIS-DC, JAMI,
JRS, JSRT 6理事,10会員
支援
支援
日本循環器
学会
日本臨床医
検査学会
3.日本の国際標準化への取り組状況
ISO/TC215 においては、その 9 つあるワーキンググループの幹事国は、表 4-3 に示すよう
にほとんどが欧米により占められているが、日本は WG2 の Vice Convener になっている。ま
た 2012 年 1 月 10 日までに発行された規格は 93 件あり、そのうち日本から提出したものは 5
件である。以上から、ISO/TC215 での標準化は欧米主導で進められていると言える。
表 4-3
ISO/TC215 における日本の活動状況(2011 年 6 月)
TC
TC215
Title
Health Informatics
WG
Title
Chairperson
Secretariat
アメリカ
Convenor
アメリカ
Vice
Convenor
Secretary
WG 1
Data structure
イギリス
アメリカ
WG 2
Data interchange
アメリカ
日本
WG 3
Semantic content
オーストラリア
カナダ
WG 4
Security
アメリカ
オランダ
WG 6
Pharmacy and medicines
business
イギリス
アメリカ
オランダ
WG 7
Devices
アメリカ
フィンランド
アメリカ
WG 8
Business requirements for
Electronic Health Records
カナダ
ブラジル
オーストラリア
WG 9
SDO Harmonization
アメリカ
出典:TC215 国内審議団体(一般財団法人)医療情報システム開発センター
- 34 -
イギリス
アメリカ
第5章
市場環境調査
第1節
国内市場の動向
社団法人 日本画像医療システム工業会(JIRA)のデータによれば 1)、2010 年の画像医療シ
ステム(診断用装置、治療用装置を合わせて)の国内市場は 3,493 億円である。そのうち、
本調査の対象である、PACS や画像診断ワークステーションなどで主に構成される「その他」
分類は 476 億円である。画像医療システムを構成する装置分類別国内市場推移(図 5-1)は、
本調査の対象である「その他」分類以外が横ばい又は減少傾向なのに対し、
「その他」分類だ
けは 2008 年までは増加傾向で、それ以降が横ばいとなっている。
「その他」分類の国内市場、
生産高、輸出入の推移(図 5-2)では、輸出、輸入ともに減少傾向で(特に輸出)、国内市場
は国内メーカーが抑えているが、海外へは余り進出できていない。
図 5-1
1200
主要装置の国内市場の推移
億円
1000
800
600
400
200
0
その他
X線装置
CT
2005
図 5-2
600
核医学
2006
2007
2008
MRI
2009
超音波
出典:
「画像診断機器関連産業 2011
( 2011 年 社 団 法 人 日 本 画
像医療システム工業会)」、資
料-27 頁~資料-28 頁、図は資
料データを基に三菱化学テク
ノリサーチにて作成
2010
「その他」分類の市場推移
(億円)
500
400
300
200
出典:
「画像診断機器関連産業 2011
( 2011 年 社 団 法 人 日 本 画
像医療システム工業会)」、資
料-27 頁~資料-28 頁、図は資
料データを基に三菱化学テク
ノリサーチにて作成
100
0
-100
2005
2006
2007
生産高
1)
輸出高
「画像診断機器関連産業 2011(2011 年
頁
2008
2009
輸入高
2010
国内市場
社団法人日本画像医療システム工業会)」、資料-27 頁~資料-28
- 35 -
第2節
海外市場の動向
1.PACS
全世界の PACS 市場は年平均成長率 11%で拡大し、2009 年の 26.2 億ドルが 2016 年には 55.4
億ドルになると予測している調査結果がある。国別年次推移では、米国は他国と比べ非常に
大きな市場であり、同期間に、約 13.7 億ドルが約 32.9 億ドルに、日本は米国に次いで市場
が大きく、約 2.2 億ドルが約 4.1 億ドルに拡大すると予測されている。中国の市場の拡大も
目覚ましく、約 1.2 億ドルが約 3.0 億ドルと、2016 年にはドイツ、フランスも抜くと予測さ
れている。
世界市場の主要企業のシェアは、GE、Philips、富士フイルム、Agfa の順で、圧倒的に大
きなシェアの企業はいない。
図 5-3
5,000
PACS の国別市場推移及び企業別世界市場シェア(2009 年)
($M)
■US
4,000
予測
3,000
実績
2,000
GE, 15%
その他, 24%
1,000
Philips, 14%
0
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
500
($M)
UK
Germany
France
Japan
富士通, 4%
Carestream/K
odak, 5%
China
富士フイルム,
12%
予測
400
Siemens, 8%
実績
McKesson, 8%
300
Agfa, 11%
200
100
0
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
出 典 :「 Picture Archiving and Communication System (PACS) – Global Opportunity Assessment,
Competitive Landscape and Market Forecasts to 2016」
(2010 GlobalData)、page 10-12, 21-22, 25-26,
27-28, 29-30, 35-36, 37-38、Table 1,2,3,5,6,9,10,11,12,13,14,19,20,21,22 を基に三菱化学テク
ノリサーチ作成
- 36 -
2.CAD
2010 年の北米の CAD 市場 1)は 1 億 350 万ドルで、今後着実に成長してゆくと予測されてい
る。図 5-4 に北米市場推移及び企業別北米シェアを示す。
主要企業は、Hologic、iCAD、Philips Heaithcare、EDDA Technology、Merge Healthcare、
Siemens Healthcare などであり、Hologic と iCAD で約 60%を占めている。なお、欧州の CAD
市場は、2 億 3,500 万ドル(2010 年) 2)と北米市場の約 2.3 倍である。医療機器の審査制度
により、欧州は米国よりも早い段階で市場投入されやすい環境にあり、CAD も米国よりも早
い段階で上市されている 3) ことも市場の大きさに影響していると思われる。
図 5-4
CAD の北米市場推移及び企業別北米シェア(2010 年)
($M)
250
予測
Riverain Medical,
4.3%
200
181.7
159.2
148.9
150
125.8
128.7
112.7
99.7
100
103.5
Others, 1.2%
GE Healthcare,
4.7%
170.2
実績
Carestream Health,
3.3%
Hologic Inc.(R2,
Sentinelle), 31.9%
Siemens
Healthcare, 5.7%
137.7
111.9
Merge Healthcare
(Confirma), 6.4%
EDDA Technology,
6.6%
50
Philips Healthcare
(InVivo), 6.9%
iCAD Inc., 29.0%
0
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
出典:
「North American Market for Computoer-aided Detection and Diagnosis」
(2011 FROST & SULLIVAN)、
page 19、”CAD Market: Revenue Forecasts (North America), 2007-2017”及び page 37、”CAD Market:
Company Market Share by Revenues (North America), 2010”を基に三菱化学テクノリサーチ作成
第3節
医療ニーズ
市場環境に直接大きな影響を与える医療ニーズの動向として、世界の主要死因別死亡数の
予測を見ると、医用画像の利用技術の大きなターゲットである循環器病、がん、呼吸器疾患
等が大きく増加し、全体としても増加すると予測されていて、市場の潜在的な拡大要因と言
える。
また、地域による医療ニーズの差を、がんの地域別種別罹患率、死亡率を例に比べると、
日中韓において多い胃がん、肝がんが欧米では少なく、欧米で多い前立腺がんが日中韓では
少ない等、地域による差が大きく、地域ごとの市場戦略に影響を与えるものと思われる
1)
「North American Market for Computoer-aided Detection and Diagnosis」(2011
2)
「European Markets for Computer Aided Detection」(2011
3)
平成 21 年度戦略的技術開発委託費 医療機器開発ガイドライン策定事業(医療機器に関する開発ガイド
ライン作成のための支援事業)「医療機器評価指標ガイドライン 画像診断分野(コンピュータ診断支援
装置) 開発 WG 報告書」 2010 年 3 月 独立行政法人産業技術総合研究所
- 37 -
FROST & SULLIVAN)
FROST & SULLIVAN)
図 5-5
世界の主要死因別死亡数の予測(2008 年、2015 年、2030 年:男女計)
0
死亡数(百万)
10
15
5
20
25
2008年
循環器病
2015年(予測)
感染・寄生性疾患
2030年(予測)
がん
呼吸器感染
呼吸器疾患
不慮の事故
周産期の状態
消化器疾患
意図的な傷害行為
精神神経疾患
糖尿病
出典:Projections of mortality and burden of disease, 2004-2030
http://www.who.int/healthinfo/global_burden_disease/projections/en/index.html
MORTALITY - BASELINE SCENARIO
World Bank Income groups(2008,2015,2030) 2010 年 12 月 2 日
アクセス World Health Organization を基に作成
表 5-1
主要ながん罹患率、死亡率の地域比較(人口 10 万対、2008 年、世界人口にて標準化)
日本
順位
米国
欧州
中国
韓国
罹患率
死亡率
罹患率
死亡率
罹患率
死亡率
罹患率
死亡率
罹患率
死亡率
1位
乳
42.7
肺
17.4
前立腺
83.8
肺
30.4
乳
62.7
肺
24.2
肺
45.9
肺
39.6
乳
30.5
肺
26.1
2位
大腸
31.5
胃
13.5
乳
76.0
乳
14.7
前立腺
55.7
乳
16.7
胃
41.3
肝
34.1
肺
29.1
乳
10.6
3位
胃
31.1
大腸
11.8
肺
42.1
前立腺
9.7
肺
28.3
大腸
12.8
肝
37.4
胃
30.1
大腸
15.4
肝
10.4
4位
肺
24.6
肝
9.2
大腸
29.2
大腸
8.8
大腸
28.0
前立腺
11.7
食道
22.9
食道
18.7
胃
12.1
胃
9.8
出 典 : GLOBOCAN2008
http://globocan.iarc.fr/
TABLE BY CANCERS 2010 年 11 月 24 日アクセ ス
International Agency for Research on Cancer のデータを基に作成
- 38 -
第6章
総合分析
第1節
技術開発動向調査結果の総括
1.特許出願動向調査結果の総括
日米欧中韓への出願では、出願件数は 2001 年から 2005 年までほぼ連続的に増加し約 1.7
倍となり、その後減少傾向である。出願人国籍別出願件数は日本、欧州、米国の順で、欧州
国籍、米国籍は 2005 年をピークに減少しているが、日本国籍の出願は若干増加傾向である。
中国籍、韓国籍出願人の出願も増加している。出願先国別では、欧州国籍出願人が、インド
への出願で約 68%を占め、市場として重要視しているものと思われる。
「要素技術」別では、「CAD」と「特定用途」(大部分は「治療ナビゲーション」)は増加傾
向を示し、「画像処理」、「PACS」、「HMI」はほぼ横ばいである。いずれの出願人国籍でも「画
像処理」が最も多いが、日本国籍以外(米欧中韓)では次いで「特定用途」、
「CAD」の順であ
るのに対し、日本国籍では「PACS」が多く、特徴的である。
「PACS」では日本国籍出願人が約
54%と半数以上を占め、全体動向と比べて日本国籍が多く、欧州国籍が少ない。出願件数は
2003 年まで増加し、その後 2007 年までほぼ横ばいと言える。
「画像診断支援(CAD)」と「特
定用途」では全体動向と比べて日本国籍が少なく、欧州国籍が多くなっている。共に増加傾
向で、特に 2006 年、2007 年が欧州国籍出願人の大量出願で突出して多い。日本国籍、米国
籍の出願も増加し、近年は中国籍、韓国籍の出願も増加している。
注目研究開発テーマとして選定した、
「治療ナビゲーション、治療シミュレーションにおけ
る医用画像 3D 処理技術」、「CAD における複数アルゴリズム併用技術」、「CAD における異種画
像併用技術」はいずれも欧州国籍出願人の出願が多い。全体動向と比べて日本国籍出願人の
出願は少ないが、増加傾向である。
2.研究開発動向調査結果の総括
医用画像の利用技術に関する国際的主要誌の研究者所属機関国籍別論文発表件数では、第
1 位が欧州(42.7%)、第 2 位が米国(34.6%)、以降日本(5.1%)、韓国(2.4%)、中国(2.3%)
である。全体の発表件数推移は 2008 年に減少しているが、それ以外は増加傾向にある。その
中で、日本は毎年 10 件程度でほぼ横ばいである。
技術区分別動向では、第 1 位が特定用途(34.0%)、第 2 位が画像処理(28.5%)、第 3 位
が CAD(27.4%)、第 4 位が PACS(8.4%)である。画像処理と CAD と特定用途は増加傾向に
ある。最も増加が著しいのが「CAD」である。国籍別の第 1 位は欧州(45.9%)、第 2 位は米
国(33.6%)で、欧州と米国だけで約 80%を占め、欧州、米国ともおよそ増加傾向にある。
日本は 5.1%で、件数はほぼ横ばいである。
注目研究開発テーマである「治療ナビゲーション、治療シミュレーションにおける医用画
像 3D 処理技術」に関する発表件数は年々増加傾向にあり、第 1 位は米国(42.5%)、第 2 位
は欧州(41.8%)、両者とも年々件数が増加傾向にある。日本は 2.4%である。
3.政策動向調査結果の総括
「CAD」(コンピュータ診断支援装置)に関しては、経済産業省が「医療機器開発ガイドラ
イン策定事業」の中で、「CAD」の開発ガイドライン策定や、医療機器におけるソフトウェア
- 39 -
のあるべき姿の検討を目的に実施されている。「CAD」の要素技術開発は文部科学省により推
進されている。主なものは 4 プロジェクトあり、そのうち 2 プロジェクトは次世代 CAD シス
テム開発を目指した画像診断技術開発であり、多臓器・多疾病を対象とした次世代 CAD シス
テム開発に必要な基盤技術開発を目的とした「多次元医用画像の知的診断支援」、多疾病の早
期診断支援、診断・治療の融合的支援などのシステム開発を目標とする「医用画像に基づく
計算解剖学の創成と診断・治療支援の高度化」である。三つ目は岐阜・大垣地域「ロボティ
ック先端医療クラスター」であり、四つ目は世界的に進められている Physiome 研究として行
われた「細胞・生体機能シミュレーションプログラム」である。Physiome は、その固体の生
理的状態と機能的振る舞いを記述するものであり、それはゲノムから、たんぱく質、細胞、
組織、臓器、固体と複数階層によって表現される。すなわち、コンピュータ支援による解剖
学的構造理解として医用画像の利用技術と関わっている。
欧米では、CAD の重要技術開発に関する主なものとして、例えば、”Physiome”、”Virtual
Physiological Human”、”Digital Patient”、”Meaningful Use”がある。これらは政府など
による経済的支援を受けて進められている。「CAD」に関わる技術の研究開発は、こうして公
的支援を受けながら世界中で競争が行われている。
医療機器ソフトウェアに関する制度に関しては、単独の医療用アプリケーションソフトウ
ェアは日本では医療機器として認められていないが、欧米を始め諸外国では単独医療機器化
が実施されている。
国際標準化は国際標準化機構 ISO で行われており、北米の DICOM 委員会や HL7 協会及び欧
州の CEN/TC251 の成果を取り込んで進められている(図 4-3)。日本はこれらの標準化団体
に対応して国内標準化体制が取られている(図 4-4)。日本の取組は、ISO/TC215 で WG2 の
Vice Convener になっているが、全体的に標準化への提案件数は少なく、欧米主導で進めら
れていると言える。
4.市場環境調査結果の総括
画像医療システム全体(診断用装置、治療用装置を合わせて)の国内市場は 2010 年には
3,493 億円で、その中で本調査の対象である「診断用画像処理システム」が大部分を占める
「その他」分類(JIRA)は 476 億円である。
「その他」分類の国内市場は、画像医療システム
の中の他の分類が減少又は横ばいであるのに対し、拡大している。
世界市場を見ると、
「PACS」に関しては、世界市場が 2009 年から 2016 年まで年平均成長率
11%で拡大すると予測している調査結果がある。市場シェア上位は、GE、フィリップス、富
士フイルムと続き、現状では圧倒的に大きなシェアを有する企業はない。
「CAD」に関しては、2010 年の北米の CAD 市場は約 1.0 億ドルで、2017 年には約 1.8 億ド
ルまで成長するという調査結果がある。北米市場でのシェア上位企業は、Hologic, Inc、iCAD
の 2 社で約 60%を占め、以下フィリップス、EDDA Technology と続いている。欧州では 2010
年の市場が北米市場の約 2 倍と言われている。
市場環境に直接大きな影響を与える医療ニーズの動向は、WHO の主要死因別死亡数の予測
を見ると、医用画像の利用技術の大きなターゲットである循環器病、がん、呼吸器疾患等が
大きく増加すると予測されており、市場の潜在的な拡大要因と言える。また、がんの地域別
種別罹患率、死亡率データを例に、地域による差を比べると、地域による差が大きく、地域
ごとの市場戦略に影響を与えるものと思われる
- 40 -
第2節
医用画像の利用技術に関する提言
これまでの特許動向分析、研究開発動向分析、政策動向分析、市場環境動向分析等の調査
結果に基づき、日本が目指すべき研究開発、技術開発の方向性について、次の提言をする。
【提言1】
海外(特に市場拡大が著しいアジア地域)に向けて、地域ごとの実情に合わせて、技術的
な優位性を活かした戦略的で積極的な特許出願と権利行使
医用画像の利用技術は、医療の ICT 化が進む中で、疾病の予防、検査・診断、治療、緩和
ケア、リハビリといった様々な場面において、患者の負担や利便性などの QOL(生活の質)
の向上、医師の負担軽減などを図ることができる技術である。そして、世界の人口の増加、
急速な高齢化に伴い、対象となる患者数が増加し(図 5-5)、今後ますます、医用画像の利用
技術及びそれに関わる製品の需要が増えてくる。したがって、医用画像の利用技術に関わる
代表的な製品である PACS の世界市場(約 20 億ドルの規模)も今後成長していくことが予想
される。
医用画像の利用技術に関する特許出願では、全体として出願件数が減少傾向にある中、同
様の傾向を示す欧米企業とは異なり、日本企業は出願を維持し、相対的に存在感を増してい
る(図 2-2、図 2-3、図 2-6)。さらに、日本は、市場の大きな米国、今後市場拡大が予想さ
れる中国に比較的重点を置いて特許出願しており(図 2-7、表 2-6)、欧米に匹敵する優位性
を有している(図 2-4)。そして、近年、韓国や中国などのアジア地域からの出願も着実に増
加しており、アジア地域での技術開発も始まっている(図 2-3、図 2-5)。
一方、医用画像の利用技術において、今後市場拡大が予想されるアジア地域に対して、例
えば日本人とがんの発生部位に類似性があり(表 5-1)、日本は診断技術における技術の蓄積
を活かせるメリットがある。その上、地理的に近いというメリットもある。
このような技術的な優位性を活かして、現在の世界人口 66 億人の約 60%と人口が多く、
経済成長の大きな伸びや急速な高齢化が予想されている、中国、インドを含むアジア地域に
向けた海外展開が期待される。このうち、インドは、現在欧州メーカーによる出願が圧倒的
に多いが、まだ総件数が少なく(図 2-8)、今後伸びる市場として注目していく必要がある。
これらの状況を踏まえて、我が国は、海外、特にアジア諸国に向け、地域ごとの実情(気
候風土、文化、国内での経済格差)に合わせて、我が国の優位性を活かした製品(代表的な
製品である PACS や今後の大きな展開が期待される CAD など)を開発していくことが望まれる。
そのためには、何を特許出願し、何をノウハウとして蓄積するかを峻別しつつ、戦略的、積
極的に特許出願や権利行使をしていく必要がある。
- 41 -
【提言2】
中長期的な視野で今後成長する市場を牽引していくことのできる技術(次世代 CAD など)
に対して、産・学が共に革新的な製品を目指した技術開発、研究開発を重点的、持続的に推
進
医用画像の利用技術において、CAD に関する特許出願や国際的主要誌の発表件数が近年増
加しており(図 2-12、図 3-2)、活発な技術開発、研究開発が行われている。CAD とは、コン
ピュータを利用して医用画像を定量化し、解剖学的部位特定、病変部位指摘、病状評価など
を行う診断支援技術である。CAD には様々な画像処理技術が応用されており、形態画像と機
能画像を融合するフュージョンイメージング(画像融合)、さらに 3 次元、4 次元へと発展し、
単なる診断支援にとどまらず治療ナビゲーションにまで応用する場面が急速に拡大している。
そして、医用画像の利用技術においては、高い付加価値のある製品を開発する上で、これら
の CAD 技術における技術開発、研究開発が重要である。
CAD に関する特許出願は、世界全体で増加しており、CAD が適用される治療ナビゲーション
に関する特許出願も確実に増加している(図2-12)。その中でも、欧州からの出願の割合が多
く(図2-16)、近年、日米欧中でも多くの出願を行っており、欧州企業の出願が目立っている
(図2-18)。一方、米国、日本からの出願も増加傾向にある(図 2-16)。また、CAD の要素技
術(解剖学的部位、病変部位、病状評価)に関しては、病変部位指摘に関する出願、次いで
解剖学的部位特定に関する出願が多く、これらの次のステージとなる病状評価に関する出願
はまだ少ない(図 2-17)。
CAD に関わる複合的な技術として、医用画像 3D 処理技術、複数アルゴリズム併用技術、異
種画像併用技術が注目されている。このような CAD に関わる複合的技術である「治療ナビゲ
ーション、治療シミュレーションにおける医用画像 3D 処理技術」については、欧州からの出
願が多く、最近では突出して多い(図 2-21)。また、CAD における「複数アルゴリズム併用技
術」や「異種画像併用技術」でも、欧州や米国が先行している(図 2-22、図 2-24)。今後注
目される次世代 CAD として、各種臓器や疾病に適用できる CAD(多臓器多疾病 CAD)、手術の
進行に合わせて刻々と変化する患部の状況を把握して判断を支援するための CAD(術中診断
CAD)、さらには、体全体の様々な状況を把握して総合的な判断を支援する CAD(全身用 CAD;
画像情報だけでなく、その他の様々な臨床情報も融合した全身の総合理解と、それに基づく
診断支援)がある。
一方、研究開発動向を見ると、CAD に関する国際的主要誌の発表件数が増加する中、そこ
でも、欧米、特に米国の大学の存在感が大きく、日本の発表件数は少ない(図 3-1、表 3-3、
表 3-4)。これは、個々の研究者のアクティビティの問題ではなく、研究者の数が少ないこと
による問題と考えられる。そして、今後の CAD の基礎となる、コンピュータ支援による人体
の解剖・疾病構造の解析・理解の研究は、例えば、Physiome や計算解剖学という学術的な分
野として、公的な支援を得て、精力的に進められている。(第4章
政策動向調査参照)
このように、将来の市場の拡大、基礎から応用までの幅広い波及効果が期待される CAD に
おいて、日米欧を含めて世界全体で特許出願が増加している。一方、日本は欧米に比べ特許
- 42 -
出願件数、国際的主要誌への論文発表が少ない状況にあるが、人体の解剖・疾病構造の解析・
理解という基礎的な面での研究が精力的に進められている。このような状況において、産・
学が共に中長期的な視野で先進的な基礎研究の成果を次世代 CAD の開発に結び付けていくこ
とが望まれている。それによって、医工連携も進み、革新的な製品を目指した技術開発、研
究開発を推進していくことが期待される。
- 43 -
Fly UP