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芝の雑草防除
3 雑草防除 (1) 主要雑草の発生消長 1 2 3 春夏に発生する雑草 【イネ科雑草】 メヒシバ オヒシバ チガヤ 6 7 8 9 10 11 ***** **** ○ ○ ○ ○ 【広葉雑草】 オランダミミナグサ ハコベ ツメクサ オオアレチノギク ヒメムカシヨモギ ヒメジョオン ハルジョオン 通年みられる雑草 【広葉雑草】 オオバコ カタバミ セイヨウタンポポ チドメグサ シロツメクサ ギシギシ 生育期間 1年生 多年生 多年生 ******** ******* 1年生 多年生 *********** 多年生 ○ ****** *************○ ****○ **** ○ **** ○ ****** ○ **** ○ 1年生 ○ ****** ************ ****** **** ******* ***** ****** ○ **開花期 生 活 型 **** ******** ****** ○*** 秋冬に発生する雑草 【イネ科雑草】 スズメノカタビラ 12 1年生 1年生 多年生 *** ○ スギナ ○発芽期 5 ○ ○ ○ 【カヤツリグサ科雑草】 カヤツリグサ ハマスゲ ヒメクグ 【広葉雑草】 コニシキソウ ヨモギ 4 地上部枯死期 1年生 1年生 1年生 1年生 1年生 1年生 多年生 多年生 多年生 多年生 多年生 多年生 多年生 生育停止期 雑草の種類ごとに、発芽期間や生育期間等が異なり防除時期も異なる。また、発芽期間が 長期にわたるものや、気象等環境の変化により生育期間が変わるものがある。 (2) ア 雑草の見分け方 雑草の分類 雑草を防除するにあたっては、雑草の性質をよく知り、これに適した防除を行う必 要がある。 特に、除草剤を使用する場合は、防除する雑草に最も効果の高い除草剤を選択する ことが大切である。 このため、効果的な防除を行う観点から、雑草の分類と見分け方を次に示した (図1・図2・図3)。 イ ネ 科 雑 草 ・一 年 生 イ ネ 科 雑 草 ・多 年 生 イ ネ 科 雑 草 カヤツリグサ科雑草 ・一年生カヤツリグサ科雑草 ・多年生カヤツリグサ科雑草 広 葉 雑 草 ・一 年 生 広 葉 雑 草 ・多 年 生 広 葉 雑 草 図1 除草剤を効果的に使用する観点からみた雑草の分類 幼 植 物 イ ネ 科 雑 草 カヤツリグサ科雑草 広 双葉がでない 葉 雑 草 双葉があるのが特徴 ※ 多年生のものは地下茎から 芽をだすので双葉はでない 成長した植物 イ ネ 科 雑 草 カヤツリグサ科雑草 葉は細長く並行な葉脈をもつ 広 葉 雑 草 葉の形は様々で網状の葉脈をもつ (例外:オオバコの葉脈は並行) キク科 タデ科 イネ科 カヤツリグサ科 マメ科 図2 イネ科雑草、カヤツリグサ科雑草及び広葉雑草の見分け方 イ ネ 科 雑 草 ・茎の切り口は、丸いか、やや平たく、中空である。 ・葉と葉しょう(さや)の境に葉舌がある。 ・葉の下部は、葉しょうとなって茎を包む。 カヤツリグサ科雑草 ・茎の切り口は3角形で中が詰まっている。 ・茎の節は、はっきりしない。 ・葉舌はない。 図3 イネ科雑草とカヤツリグサ科雑草の見分け方 (3)1年生及び多年生雑草の性状と防除法 〔1年生雑草〕 ア 性状 ・ 種子から発芽して、開花・結実の後、地上部、地下部とも完全に枯れるもの (発芽から、枯死するまでの期間は1年以内)。 イ 防除法 ・ 丁寧に刈り込みを行い、結実させないようにする。 ・ 芝地周辺の雑草を除去し、種子の侵入を防ぐ。 ・ 目土からの種子の侵入を防ぐため、くん蒸処理型除草剤を目土に処理する。 ・ 発芽最盛期ごろ土壌処理型除草剤を散布する。 ・ 生育期に茎葉処理型除草剤を散布する。 〔多年生雑草〕 ア 性状 1年以上生育し、冬でも地上部が残るか、地上部が枯れても地下茎などの繁 殖器官が土中に残り、そこから再び芽が出てくるもの。 イ 防除法 地下茎等が残るため、1年生雑草の防除法だけではなかなか防除が困難なの で、次のような除草法も行う。 ・ 地上部だけでなく、地下茎等の雑草の地下部分も抜き取るなどして除去する。 ・ 対象となる雑草に卓効を示す除草剤を散布する。 〔ゴルフ場雑草の特殊性〕 頻繁な刈り込みが行われるゴルフ場の芝に発生する雑草は、通常のものと比べて、 その性状が著しく異なっている場合があるので、注意を要する。 ・ 形態 草丈がモアの刈り高にかからない程度に低くなる。特に、メヒシバ、ツメクサ、 コニシキソウなど、地面をはうタイプの雑草は、刈り高10 mm 以下でも姿勢を 低くし地面に張りつくようにして生育することができるので、刈り込みだけで防 除することは困難である。 ・ 開花、結実時期 頻繁な刈り込みにより、雑草にとっては通常の開花、結実の時期を失うことに なるため、十分に生育する前に開花、結実することがある。例えば、スズメノカ タビラ、エノコログサなどイネ科1年生雑草は本葉2枚程度で出穂し、結実させ ることができる。 (4)主な雑草の特徴について 主要なイネ科雑草 1 年生雑草 エノコログサ 草丈 20 ~ 70cm メヒシバ 草丈 40 ~ 80cm オヒシバ 草丈 20 ~ 50cm スズメノカタビラ 草丈 5 ~ 30cm 多年生雑草 チガヤ 草丈 30 ~ 80cm 穂の長さ 10 ~ 20cm 穂は、絹のような白色 地下茎で増える 主要なカヤツリグサ科雑草 1年生雑草 カヤツリグサ 草丈 30 ~ 40cm 穂は、黄褐色 株になる 種子で増える 多年生雑草 ハマスゲ 草丈 15 ~ 40cm 穂は、濃褐色 株にならない 地下茎(塊茎)で殖える ヒメクグ 草丈 10 ~ 20cm 穂は、球状で褐色 株にならない 地下茎が横にのび殖える 主 な 広 葉 雑 草 1年生雑草 ア 春になって急に背丈が伸びるもの ・根ぎわからバラ花状に地面に広がった葉(ロゼット)で冬を越す ヒメムカシヨモギ 草丈 1~2m オオアレチノギク つぼみのような白っぽい花 種子で殖える ヒメジオン※ 草丈 0.5 ~ 1.5 m 小さなきくの花 種子で増える ※ ヒメジョオンに似たものにハルジョオンがある。 これは多年草で次のような点でヒメジョオンと区別すればよい。 ハルジョオン(多年草) 茎 花期 つぼみ 地下茎 イ 茎は中空 春(4~5月) 茎とともに全体うなだれる ある ヒメジョオン(越年草) 茎の中は、つまっている 夏~秋(6~9月) うなだれない ない 冬頃からみられ背丈の低いもの オランダミミナグサ 草丈 15 ~ 30cm (ナデシコ科) 白い小さな花 葉には毛があり白っぽく見える。 ハコベ (ナデシコ科) 草丈 10 ~ 30cm 白い小さな花 茎の片側の1列に毛がはえる。 ウ 地面をはうもの ツメクサ (ナデシコ科) 長さ 5 ~ 15cm 白い小さな花 葉は細長く濃緑色 コニシキソウ (トウダイグサ科) 長さ約 20cm 花は、暗紅色でめだたない 葉の中央に、斑点があるのが特徴 エ 茎がまっすぐ立つか地面をはうもの イヌタデ 草丈 30 ~ 70cm (タデ科) 花は、穂状の紅紫色 株を作る 種子で増える 多年生雑草 ア 地面をはい、1年中見られるもの 茎は地面をはい、所々から根をおろす チドメグサ(セリ科) 草丈 1 ~ 1.5cm クローバー(マメ科) 草丈 2 ~ 3cm カタバミ(カタバミ科) 草丈 1cm イ 葉が根ぎわから束のようになってでていて、1年中見られるもの セイヨウタンポポ(キク科) 花茎の長さ 10 ~ 50cm 黄色い花 種子と根で殖える。 オオバコ(オオバコ科) 花茎の長さ 10 ~ 20cm 明瞭な葉脈が並行にはしる 踏み固められたような所によく生える。 種子で殖える。 ウ 地下茎などで越冬し春に芽を出すもの スギナ(トクサ科) 草丈 10 ~ 30cm 春にツクシをだし胞子をとばす 胞子でも増えるが主に地下茎で増える エ 根ぎわからでた葉で越冬し春に茎がまっすぐ伸びるもの ギシギシ(タデ科) 草丈 60 ~ 100cm 秋に、茎は枯れるが、根からでた葉で冬を越す (5)除草剤について 処理方法から分類すると、土壌処理型除草剤、茎葉処理型除草剤、くん蒸処理型除草 剤に大きく分類される。 ア 土壌処理型除草剤 この型の除草剤は、土壌に散布された剤が土壌表面に処理層をつくり、この処理層 にある雑草に作用して枯らす除草剤である。剤は一定期間土壌中に残り、効果を示す。 この剤には、雑草の幼根や幼芽に作用してその伸長を止める接触型のものと、幼根 や幼芽から吸収され細胞分裂を阻害して伸長を止める吸収移行型のものがある。 (注意点) (ア) 土壌処理型除草剤の散布は原則として雑草の発芽前に行う。 (イ) 降雨後や散水後など適度に土が湿っている時に散布する。土壌の水分が適当にあ れば薬剤成分が拡散し処理層ができやすい。 (ウ) 乳剤や水和剤の散布薬量は、面積当たりの薬量で示されており、殺虫剤や殺菌剤 のように倍数ではないので注意する。また、散布液(水)量も指定されているので、 それを守って散布する。 (エ) 散布前にできるだけサッチを除去する。サッチは、土壌処理型除草剤の地面への 落下を阻止し、土壌表面に処理層をつくることを妨げる。 イ 茎葉処理型除草剤 この型の除草剤は、雑草の発芽後に茎葉に散布し、茎葉から吸収させて枯らすもの である。 これには、除草剤が付着した部分のみ枯死させる接触型のものと、茎葉に散布され た除草剤が吸収され、根や生長点へ移行して枯死させる吸収移行型のものがある。 (注意点) (ア) 雑草が小さい時に散布する方が、成長して大きくなった雑草に散布するより効果 が高い。 (イ) 土壌処理型除草剤と同様に散布する薬量は、面積当たりの薬量で示されている。 また、散布液(水)量も指定されているのでそれを守って散布する。 (ウ) 散布後、降雨にあうと効果が低下するので、降雨の恐れがある時に散布しない。 (エ) 全面散布ではなく、防除を要する雑草にのみスポット散布することによって薬量 を低減できる。 # 微生物農薬(商品名:キャンペリコ液剤) スズメノカタビラのみに選択的に作用する茎葉処理型除草剤(吸収移行型) (注意点) (ア)スズメノカタビラの傷口より侵入するので、芝刈りの直後にスズメノカタビラに 傷口があることを確認してから散布する。 (イ)低温条件下では効果が不十分なことがあるので、低温が続くと予想される時は使 用を避ける。 (ウ)有効成分は生菌であるので融解後及び開封後は全て使い切るとともに、散布液調 製後は、できるだけ速やかに使用する。 (エ)融解すると生菌が死滅するので-18℃以下の冷凍庫で保存する。-18℃で、 約1ヶ月間保存可能である。 ウ くん蒸処理型除草剤 この型の除草剤は、目土作成時に用土に混和し、土壌中でガス化した剤の成分が雑 草の種子を死滅させるものである。 (注意点) (ア) 目土に含まれる雑草種子を死滅させるものなので、芝地に直接散布することの ないよう注意する。 (イ) 用土に混和処理後、直ちに全体をビニール等で被覆し、7~ 10 日間おく。その 後被覆をとり、切り返しを行い一定期間ガス抜きをしてから用いる。 (ウ) 水に触れると、有毒ガスを発生するものがあるので、保管取扱いには十分注意 する。 (6)耕種的防除法 ア 刈り込み管理による雑草の抑制 ・ 夏期の芝生育期間中の刈り高が高いほど、夏秋期雑草だけでなく、冬期雑草発生 量も少なくなる。 ・ 一方、刈高が低いほど冬期の雑草発生量が多くなるのは、芝を低く刈ることによ り、芝草の活力が衰え、地際部まで光が到達し、雑草の発芽や生育が促進されるた めと考えられる。 刈高と冬期雑草発生量の関係(松下・1994) 刈り高 雑草個体数(個/㎡) 5mm 10mm 15mm 対照(無処理) 110 72 28 10 ※芝の種類はヒメコウライシバ ・ 適切な刈高については 20 ㎜である(千葉県)。 また、夏は低く刈っても秋以降 20 ㎜にすれば、ある程度雑草を抑えることができる。 (千葉県「ゴルフ場の無農薬管理指針」(平成8年3月)より作成) イ 施肥管理による雑草の抑制 ・ フェアウェイやラフは、8月以降はできるだけ施肥を行わないようにする。この時期 に施肥を行うと、スズメノカタビラやミミナグサなどの冬~春の雑草が多くなる。 (千葉県「ゴルフ場の無農薬管理指針」(平成8年3月)より作成) ・ コウライシバやノシバは8~9月に花芽が分化し、栄養成長が停まるので、秋以降 の施肥は不要である。 ウ 芝の張り替え・手取り除草 ・ シロツメグサ、ヒメクグ、カタバミ等の多年生雑草は、発生初期に芝を張り替えるの が有効である。 ・ メヒシバは6月上旬に手取り除草を行う。スズメノカタビラについては2~3月に 手取り除草を行う。