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Ⅱ.工芸産業振興支援施設の先進地調査

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Ⅱ.工芸産業振興支援施設の先進地調査
Ⅱ.工芸産業振興支援施設の先進地調査
振興基盤施設の計画について参考となる先進地の事例を調査した。
1. 卯辰山工芸工房
(1) 施設の概要について
金沢卯辰山工芸工房は平成元年 11 月1日、金沢市制 100 周年記念事業として、金沢の優
れた伝統工芸の継承発展と文化振興を図るための工芸の総合機関として設立された。金沢
は、古くから工芸の盛んな街として知られているが、その発展は加賀藩御細工所の活動に
さかのぼることができる。本施設では、その御細工所の精神を基盤に、
「育てる(研修者の
育成)」
・
「見せる(工芸資料の展示公開)
」
・
「参加する(市民工房の開設)」という3つの基
本テーマに沿った活動を展開させている。この近くに平安時代に荘園だった場所があり、
そこからから卯辰の方向にあるので卯辰山の名がついた。山の麓に陶芸の窯跡が3,4箇所
あること、金箔屋が多いこと、浅野川では友禅の糊落としがおこなわれたこと、金沢市の
公園地だったことにより建設地となった。
(2) 施設の機能や規模
・本館・展示館棟(延床面積 1,356 ㎡)
、工房棟(1,925 ㎡)
、市民工房棟(延床面積 966
㎡)からなる。
・風致地区のため2階建となった。
機能
人材育成
研究開発
貸し工房
交流促進
デザインセンター
販売(企画)
製作体験
宿泊・滞在
諸室
陶芸工房、漆芸工房、染工房、金
工工房、ガラス工房、窯場
陶芸工房、漆芸工房、染工房、金
工工房、ガラス工房、窯場
市民工房
工芸サロン、和室、茶室
デザイン文献資料室
-
市民工房
-
展示・情報発信
1F 展示室、2F 展示室、収蔵庫、
各工房
その他
-
内容
研修生が使用
研修生が使用
市民が利用
各工房では作品を廊下に面するガラス
窓に展示し、研修生のプロフィールを紹
介している
(3) 活用状況
① 研修者育成
・研修方針は、「伝統を踏まえながら現在の工芸家として創造的なものづくりをめざす」
。
・定員 31 名。陶芸8名、漆芸5名、染5名、金工5名、ガラス8名。主な金沢の伝統工芸
は金沢九谷、金沢漆器(加賀蒔絵)
、加賀友禅、加賀象嵌、ガラスは新たな伝統にしてい
く分野という位置づけ。
・研修期間2年もしくは3年。全国公募、専門技術を有する原則 35 歳までの者。平均年齢
は 26 歳ぐらい。倍率は 10~20 倍となっている。
全国の美術系大学卒業生の応募が多く、
33
国外からの応募もある。
・授業カリキュラムはなく、年度初めに各自が計画表を提出。外部講師を招いて特殊技術
を学ぶ講義が年に 10 回程度、各工房や全体である。
・研修時間は 9:00~17:00 で、22:00 まで残ることはできる。開館当初は 24 時間使用可と
していたが、夜型の生活スタイルになりがちであったため改められた。
・月 20 日以上の出席義務があるが、県外での個展なども出席日数として認められる。
・入学金や授業料は無料で材料費は自己負担。金沢技と芸のひとづくり奨励金(金沢市都
市政策局文化政策課)から研修奨励金 10 万円/月支給される。近年基金の原資は目減り
中。
・研修生には市事業の展覧会への協力義務がある。
・平成 24 年度までの修了生 240 名で、うち 108 名が石川県内にとどまっている。外国人は
10 名で韓国人が最も多く、メキシコ人1名は今年度まで専門員として在籍予定。韓国人
のうち1名は創作活動を止め公務員となり、金沢市との架け橋の役割を担っている人も
いる。
・OB 会組織はないが、教師募集やイベントの情報はメールなどで配信している。
・修了生のうち美術系大学の教員として採用された者が、准教授3名、講師3名いる。
・21 世紀美術館での展示会へは現役研修生だけの出展であるが、同じ時期にクラフト広坂
でOBの作品展示販売を行っている。また市内のデパートで年に2回グループ展が開か
れる。
② 工芸作品資料展示
・展示棟1階では伝統的な金沢ゆかりの工芸作品や加賀藩御細工所資料を展示。展示棟2
階:現在の工芸、研修修了者の優秀作品、講師の工芸作品を展示。
③ 市民工房開催
・市民利用のための工房棟があり工芸体験教を開催している。1日教室や週1回×2ヶ月
間の教室など様々なものがあり受講料は 2 千円~1 万円程度。毎回定員の約 2~3 倍もの
応募がある。
・高校の学園祭向けにワンコイン程度の受講料で出前教室をする場合もある。夏休みには
子供対象の教室も開催する。観光客団体ツアーとリンクしたメニューを用意することも
ある。
・市民工房の受講料は財団の収入となる。
④ 来館者数
・約 6,000 人。
・山手にあり、バスも4,5本と少なくバス停から徒歩7分かかるため少ない。
(4) 管理・運営
① 運営主体と選定過程
・運営主体は公益社団法人金沢芸術創造財団で、金沢市が設置する 10 箇所の芸術文化施設
の運営を行っている。
・指定管理者として公募により選定されている。
② 管理に要する職員の配置状況
・財団から事務職1名。各工房での指導をする専門員7名(陶芸2名、漆芸1名、染1名、
金工1名、ガラス2名)
。うち6名が工房の修了生。専門員は5年契約制。
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(5) 収支状況
① 支出状況
・主な収入は指定管理委託料。
② 収入状況
・入館料・茶室と和室の使用料・市民工房の体験教室受講料は指定管理者の収入となる。
・入館料は一般は 300 円、高校生以下は無料。和室・茶室の利用料はそれぞれ午前 1,620
円・午後 2,700 円。
・市民工房の収入は 200 万円程度。
(6) 効果や課題、要改善点、アドバイスについて
・工房棟は、中廊下からガラス窓越しに見学できるようになっているが、研修生には気に
ならないような造りになっている。窓際に作品を並べて自己紹介できるようになってい
る。
・市民工房は、陶芸・漆芸・染・金工・ガラスの分野の体験メニューがあるが、多目的に
使用ができる仕様の広い1室で、規模に応じパーティションで区分使用できるようにな
っている。
・卯辰山からの眺めはよいが、工芸サロンでは飲食を提供していないのがもったいない。
・本館のガラス扉、エレベーターの開閉扉やフレームに工芸による加飾が施されている。
・夜間管理は 17 時~翌日9時までは警備員を配置。市民工房棟はシャッターが閉まり機械
警備になる。工房棟は 22 時に閉まる。
・市主催のイベントで作品が売れた場合には価格の 1 割を徴収している。個展の場合はそ
の限りではない。
・修了生の作業場の受け皿として、
廃校になった小学校を転用したおしがはら工房があり、
5,000~10,000 円/月で工房が借りられる。最大 3 年間が限度。
・市が一軒家を借り上げた男子寮がある。
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配置・平面図
36
正面外観
1 階展示室から 2 階展示室を見上げる
箔の技術を用いて装飾されたエレベーター扉
絵付け磁器板のドア扉取手
採光窓
工房の仮眠ベッド
中廊下から工房の様子が見られる
研修生の自己紹介・作品展示
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市民工房
市民工房(左側はパーティションで仕切られている)
各棟は渡り廊下で結ばれる
市民工房棟のエントランスホール
工芸サロン
和室
ミュージアムショップ
エントランス
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2. 石川県立伝統産業工芸館
(1) 施設の概要について
石川県の風土に深く根ざした、信仰や文化にかかわりの深い伝統工芸品が紹介されてい
る。展示室中央には、金沢の町並みにしっくりと合う金沢和傘とともに、県内での浄土真
宗の信仰心の厚さを象徴する金沢仏壇、美川仏壇、七尾仏壇の代表作が並び、堂々たる威
厳を放っている。
祈を彩る美:冠婚葬祭に関する工芸品を展示、遊を彩る美:玩具や釣り道具などの工芸
品を展示、音を彩る美:楽器を中心に音にまつわる工芸品を展示、祭を彩る美:花火に提
灯と、祭にかかわる工芸品を展示。
(2) 施設の機能や規模
・1959(昭和 34)年建設。
・第1展示室(延床面積 138.6 ㎡)、第2展示室(120.0 ㎡)、第3展示室(32.6 ㎡)、
第4展示室(55.4 ㎡)、ワークショップ・展示室(21.6 ㎡)
、エントランスホール展
示スペース(47.8 ㎡)からなる。
機能
人材育成
研究開発
貸し工房
交流促進
デザインセンター
販売(企画)
諸室
なし
なし
なし
セルフカフェ
なし
ミュージアムショップ
製作体験
ワークショップ
宿泊・滞在
なし
第1展示室、第2展示室、第 3 展示
室、第4展示室、ライブラリー、出
前プログラム
-
展示・情報発信
その他
内容
全国の工芸品を扱う
伝統工芸士による実演と体験、毎日で
きる体験、ワークショップ
(3) 活用状況
・総入場者数(H25.4~H26.1 までの実績)
:91,054 人(1 日あたり 318.4 人、1 日あたり最
多入場者 1,107 人、1 日あたり最少入場者 73 人)
。平成 26 年度は 10 万人を超える見込
み。
・有料入場者:35,668 人(全額減免入場者含む)
・条例に、施設を貸し出す規定はないため、出展者が施設を借りて展示を行う持ち込みの
企画はない。
・企画展では、展示品の搬出入は出展者自ら行うことや、会期中に入場者が参加できるプ
ログラムを提供することを条件にしている。
・工芸品を所有している方から借りて展示する企画展を年 1 回実施しているが、所有者の
関係者が多く来館してくれるので、入場者の増につながる。また、工芸品を展示するこ
とで、その価値を見直す機会にもなる。
・2013 年度実績で、年間 22 の企画展を開催した。東京での巡回展も実施し、場所代や搬
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出入の経費も先方負担でおこなった。
・コーヒースクールはタリーズコーヒーとのコラボで実施するもので、輪島塗・九谷焼・
珠洲焼の器を使う場を提供するもの。
・クラフトスクールは組子・繭細工・水引のメニューがある。20~30 分でできる簡単なも
のだと工芸品の技の素晴らしさが伝わらないので、比較的難易度の高いメニューを用意
している。
・今年(2013 年度)初めての試みとして、工芸従事者を対象にした英会話を学ぶワークシ
ョップを開催している。英会話が可能な指定管理者の担当者がワークショップの講師を
担っている。
・今後は企業とのコラボをしたいと考えている。企業から素材の無償提供や原価提供を受
け、新商品開発をするもの。企業は流通システムを持っており、開発した新商品が流通
に乗ってはじめて売れるからである。一方、協力の意向を示したということは、売れる
商品だと企業が認めるからである。コラボ対象の企業は東京の展示会等で見つけてすぐ
に交渉する。
・他県の文化施設とのコラボをしていきたいとも考えている。すでに熊本県伝統工芸館と
はじめており、互いに双方の工芸品の展示をおこなった。
(4) 基盤の運営主体、収支状況等
① 管理・運営主体
・2009 年度までは石川県の直営、2010 年から指定管理者制度へ以降。
・指定管理者はナカダ・クラフトプロジェクトで、デザイン企画施工のナカダ株式会社と
設備メンテナンスの株式会社米沢ビルシステムサービスのプロジェクト共同体である。
2010 年から指定管理者を務め、今期で2期目になる。
② 管理に要する職員の配置状況について
・管理運営は計9名(実質8名)。館長1名(肩書だけ、無給)
、運営・企画・広報担当1
名(以上東京在住)
、スタッフ6名(副館長1・チーフ1・スタッフ4)
、アルバイト1
名(4~11 月)
。加えて設備会社から点検時に2名(スタッフ1名、施設1名)
。
・機械警備、昇降機設備保守点検、植栽維持管理、清掃の各業務は専門業者へ再委託をお
こなっている。
(5) 収支状況
① 支出の状況
・収入と支出はほぼ同じ。(指定管理料:年間 3,600 万円)
② 収入の状況
・指定管理料は年間 3,600 万円。
・ミュージアムショップでは他の施設で取扱いのない品揃えを目指している。地元客をメ
インターゲットとしているため石川県のものに限らず全国の商品を扱っている。
売上は、
2009 年までは約 60~80 万円だったが、現在は約 250 万円を達成している。企画展に連
動して商品を換えていることも要因である。よく売れる商品は常時扱いとし、売れない
ものは3ヶ月で扱い中止にする。販売手数料は一律 30%で、企画展時の商品は 15%。
・展示品のうち販売可能なものには価格を表示し、参考価格(税抜)と表記している。
40
(6) 効果や課題、要改善点、アドバイスについて
・エントランスホール入口には、県内の国指定・県指定伝統工芸各業種の伝統工芸士の名
札掛けが掲げられている。
・兼六園に隣接し、正面入口と兼六園側にも入口が設けられている。
・工芸品を製作するための材料と道具をつくる職人が減少し危機を迎えている。こうした
職人は県外におり、石川県内の伝統工芸を支援しても石川の伝統工芸を守りきれない状
況にある。
・展示を自由に可変できるよう什器等は造り込まないことがポイント。
・工芸品は日常生活で使うものであり、ガラス越しに鑑賞する美術品のような形はよくな
い。そのため、目線よりも少し低い高さのガラスにするなど、工夫が求められる。
・指定管理者は民間企業であり営利を追求することが基本的スタンスであるので、選定の
際には、地域や伝統工芸産業に対して貢献できるのかを確認する必要がある。
・来館数を増加・維持するために常設展示を大規模にリニューアルをしても1~3年程度
しか効果が続かない。したがって、常設展示に加え、地元客をターゲットとした企画展
を開催しリピーターをつかむのが来館者を増やすことにつながる。
・当館では、展示・ワークグループ・セミナーの搬入出・設置等作業は出展(店)者に実
施してもらうことを基本にしている。
・広告は、1.プレスリリース、2.メーリングリスト、3.ホームページ、4.口コミ、5.県の
広報誌によりおこなっており、これらはほとんど無料で実施できるメリットがある。
・友の会やネット販売は、対応スタッフを配置する必要があるので実施していない。
・工芸全体の振興を図るためには、パイの奪い合いではなく、パイの拡大を目指すべきで
あり、例えば和菓子のたねやが自らの技術を公開したような取り組みが求められる。
・石川県立伝統産業工芸館では、指定管理者が工芸産業の活性化を目指した熱意ある取り
組みや来館者を増やすための創意工夫が行われている。こうしたことが安定した来館者
数の確保につながり施設の魅力を増している。
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平面図
正面外観
兼六園側入口
伝統工芸士の名札掛け(右手)
二階への階段
第2展示室
第3展示室
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3. 九谷焼技術者自立支援工房
(1) 施設の概要
伝統産業技術の継承と新しい九谷焼の創出を図るため、若手技術者の制作活動や起業家
としての自立を支援するための施設として 2001 年に設置された。九谷焼技術研修所(1984
年)に併設。
(2) 施設の機能や規模
・規模:用地 1,973 ㎡、施設延床 977 ㎡
・鉄骨造 1 階建、延床面積 977 ㎡。
・事業費は約3億5千万円。
・個室工房は5室。電気釜、作業台などを備え成形から上絵までの一貫制作できる。
・共同工房は窯場、釉薬室、成形コーナー、絵付けコーナー、石膏室、研磨室等、九谷
焼の制作必要なすべての設備を備える。
機能
人材育成
研究開発
諸室
共同工房、個室工房
なし
貸し工房
共同工房、個室工房
交流促進
デザインセンター
なし
なし
販売(企画)
ギャラリー
製作体験
宿泊・滞在
共同工房
なし
展示・情報発信
ギャラリー
その他
-
内容
隣接する九谷焼技術研修所で実施。
隣接する九谷焼技術研修所で実施。
インキュベート施設として位置づけている。個
室工房は最長 3 年間利用可能。
個室工房入居者・共同工房利用者を中心とし
た、九谷焼の作り手の作品を常設展示・販
売。
個室工房入居者・共同工房利用者を中心とし
た、九谷焼の作り手の作品を常設展示・販
売。
(3) 活用状況
・個室工房の対象者は九谷焼の制作者(原則 5 年以上の経験者)
。年齢制限無し。
・個室工房は使用時間の制限はなく 24 時間使用可。
・個室工房は最長 3 年間利用可能。
・共同工房・ギャラリーは 9:00~17:00 まで。休館日は毎週月曜日(休日の場合は翌日)、
年末年始。
・個室工房の使用料は、1年目は 12,500 円/月、2年目は 25,000 円/月、3年目は 37,500
円/月、4年目以上は 50,000 円/月。
・共同工房は 1 人 4 時間につき 400 円。設備を使用する際に使用料が加算される(電動
ろくろ4時間 100 円~ガス窯 18,500 円/m3)
。
・共同工房施設利用者数は、平成 20 年度:612 人、平成 21 年度 765 人、平成 22 年度
573 人。個室工房(全5室)の入居率は毎年 100%。
・個室工房には2人で入居することも可能。
・個室工房はこれまでに約 30 名の入居があった。
43
・一般市民向けの開放講座を毎年 11 月に 1 日開催している。受講料は 2,000 円。全国
から参加がある。
(4) 管理・運営主体
① 運営主体
・石川県の直営。商工労働部経営支援課伝統産業振興室の出先機関。
② 管理に要する職員の配置状況について
・技術研修所と合わせて計 10 名(嘱託含む)
。工房館長は研修所長を兼務。自立支援工
房には2名。
・技術研修所の専門員は5名。講師は外部から招く。
(5) 収支状況
① 支出の状況
・支援工房の運営にかかる経費は、職員費 633 万円、管理運営費 432 万円で計約 1,065
万円(平成 22 年度)
。技術研修所は約1億円。
② 収入の状況
・共同工房施設使用料は 256 万円、個室工房使用料 128 万円、個室工房光熱水費 81 万
円、一般財源 601 万円で計 1,065 万円。
(6) 効果や課題、要改善点、アドバイスについて
・個人工房は 24 時間利用可能。
・買付問屋にとっては、当施設に来れば、数名の若手作家の作品を同時に見ることがで
きるという利点がある。
・個人工房のOBをホームページで紹介している。個展開催情報も掲載。
・共同工房については平成 22 年度には 573 人の利用があるが、一層の利用促進に向け
改善に努める必要がある。
・ホームページでは、ガス窯、上絵窯等設備の予約状況の閲覧・使用申込ができるが、
情報が探しづらいなど使い勝手に課題がある。
・国指定伝統工芸は 10 種、県指定は 6 種、稀少伝統工芸は 20 種。九谷焼の生産額は最
盛期に 150 億円規模だったが、現在では 50 億円程度に減少している。
・九谷焼技術研究所の修了生のうち卯辰山工芸工房に入学する者も多い。
・九谷焼外装のUSBメモリーは人気がある。
・作家が個人で活動を始める場合、窯を用意する必要があるが、当施設の窯を利用する
ことで、窯を導入する資金がなくても工房として独立ができる。
・石川県立工業高等学校に陶芸科があり、技術研究所へ入学する研修生がいる。また石
川県立金沢辰巳丘高等学校には芸術コースがあり、陶芸コースはないがそこを卒業し
て、焼き物を学びたくなり入学する研修生もいる。
44
配置・平面図
広場方向
ギャラリー
ギャラリーから成形コーナーを見る
共同工房の窯
45
釉薬室
成形コーナー
電動ろくろ
個室工房
46
4. 金沢市民芸術村
(1) 施設の概要について
金沢市が設置した市民の芸術活動を支援する目的の総合文化施設で、旧大和紡績紡績工
場の敷地と建物を市が購入してレンガ造工場建築群を再生、1997 年度のグッドデザイン賞
大賞を受賞した。事務所棟は国の登録有形文化財に登録されている。
設置目的は、文化の創造を担う若者たちが集い、新たな市民芸術の創造活動を行い、市
民が気軽に演劇・音楽・舞踊・美術活動などの練習・製作・研修および成果発表をする場
として利用することにより充実向上と豊かな地域文化の醸成を図ること。金沢職人大学校
を併設する。
(2) 施設の機能や規模(職人大学校は除く)
・機能:多目的アートスペース
・規模:7 つの屋内施設(マルチ工房 148.34 ㎡、ドラマ工房 842.27 ㎡、オープンスペー
ス 502.91 ㎡、ミュージック工房 497.68 ㎡、アート工房 495 ㎡、里山の家 301.51 ㎡、パ
フォーマンススクエア 457.0 ㎡)と大広場。約 10 万㎡。400 台分の無料駐車場がある。
・建設費は、用地取得約 50 億円、市民芸術村建設約 17 億円、パフォーマンススクウェア
建設約4億 7,000 万円、事務所棟耐震補強工事 5,000 万円。市の自主財源。
機能
人材育成
研究開発
諸室
なし<職人大学校は除く>
なし
貸し工房
市民工房、里山の家
交流促進
里山の家
デザインセンター
販売(企画)
製作体験
宿泊・滞在
展示・情報発信
その他
なし
なし
なし
なし
なし
カフェレストラン、広場
内容
<職人大学校は除く>
アート工房、ミュージック工房、オープンスペー
ス、ドラマ工房、マルチ工房、パフォーミングス
クウェア、里山の家
市郊外の古い農家を移築したもので、展示、
創作、芸術文化に関する研修・会議に利用
旧工場建物の一部を改修
(3) 活用状況
・活用状況:年中無休・24 時間使用可(全国の公立施設で初)
・利活用を促進するために使用料を極めて安く設定。1日を4分割(6時間ずつ)し、1
コマ 1,000 円(税抜)
。各工房には必要となるピアノ、証明、楽器等の設備が備わってお
り、使用料に含まれている。
・事務スタッフは 9:00~18:00 勤務で、夜間は警備員が利用者の対応をする。
・毎年延べ 20 万人の利用者数がある。平成 24 年度の利用者数は過去最高の 199,368 人。
・稼働率は、マルチ工房 72.1%、ドラマ工房 78.3%、アート工房 72.6%、里山の家 60.5%、
事務所棟 38.5%、ミュージック工房:Aスタジオ 57.4%、Bスタジオ 58.7%、Cスタ
ジオ 62.1%、Dスタジオ 71.0%、Eスタジオ 60.7%、Fスタジオ 39.5%、パフォーマ
ンススクウェア:大練習室 49.5%、小練習室Ⅰ60.5%、小練習室Ⅱ55.9%。
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・アクションプラン事業(金沢市民芸術村育成事業)とは、子供から大人までを対象とし
たワークショップ中心の事業を展開し芸術文化に触れる機会を提供するもの。公演や展
覧会やワークショップを開催。
・里山の家は市郊外から移築した豪農の古民家で、琴や茶道の練習等に利用されている。
・利用目的は市民の芸術活動に関するものに限定しているため、企業の会議などでは使用
できない。
・6ヶ月前の月初めに予約が可能。
・夜間も開放しているが、オープン以来大きな事故や故意の破損は発生していない。
・常連利用者が多く、自分のもののように愛着を持って大事に利用されている。
・教室スタイルの借用は不可。教室の発表会で利用することは可。
・発表会をするために音響や照明のプロスタッフを配置するため有料チケットにする、と
いう場合は可能。しかしチケットの上限価格は 5,000 円まで。CD・DVDの販売は可
能だが、Tシャツ等のグッズは販売不可。
(4) 管理・運営主体
① 運営主体、運営主体の選定過程
・設置は金沢市。管理主体は公益社団法人金沢芸術創造財団。
・総合ディレクター1名、村長1名、ディレクター6名(ドラマ工房・ミュージック工房・
アート工房各2名)
② 管理に要する職員の配置状況について
・専任職員:村長1(嘱託)
、村長補佐1(嘱託)
、主査1(プロパー)
、主任主事1(プロ
パー)
、事務5(嘱託)
・委託業務職員:警備業務 24 時間×2名(2交替制)
。中央監視業務:14 時間×1名(二
交替制)、清掃業務:8時間×2名(二交替制)
、広場管理業務:6.5 時間(夏季 7.5 時
間)×2名。
(5) 収支状況、公的支援の状況等
① 支出の状況
・施設管理運営の支出は、施設管理運営費が 1 億 1,301 万円、専任職員人件費が 3,197 万
円。
・アクションプラン事業の支出は 2,424 万円。
② 収入の状況
・施設管理運営の収入は、指定管理料収入が 1 億 3,880 万円、雑収入が 617 万円。
・アクションプラン事業の収入は、指定管理料収入が 1,999 万円、自己収入(入場料・受
講料等)が 425 万円。
・市歳入は、施設使用料 1,720 万円、行政財産目的外使用料(レストラン・無線機・自動
販売機)118 万円。施設使用料は運営費の約 8%程度である。
(6) 効果や課題、要改善点、アドバイスについて
・当芸術村、卯辰山工芸工房、21 世紀美術館の建設を決めた市長は同じ。
・産業振興というよりも文化振興を目的とした施設。
48
・国外から視察も多く、韓国からは先日で 32 回目となった。
・2階建ての倉庫をドラマ工房に改修しており、2階から照明をあてる等、上手く活用し
ている。練習・リハーサル・本番・撤収の関係上、ドラマ工房は最長2週間まで連続使
用ができる。一般向けに機材操作の講習会を年 2 回実施している。
配置・平面図(パンフレットより)
49
全体外観(旧紡績工場建物部分)
レストラン
マルチ工房(PIT1)
ドラマ工房(PIT2)
オープンスペース(PIT3)
ミュージック工房(PIT4)
アート工房(PIT5)
外観
50
オ-プンスペースの屋外デッキ、ステージとして利用可能
里山の家
パフォーミングスクエア
事務所棟
51
5. 金沢職人大学校
(1) 施設の概要について
金沢には、藩政期以来、人の手から手に伝えられた職人の技が今日まで受け継がれ、職
人の技が独自の文化を形づくる街として、日本の数ある都市の中でも、独自の輝きを放っ
ている。しかしながら、こうした金沢の個性そのものと言える伝統的な職人文化について
も、近年の生活様式の近代化、機械化の中で技法の衰退、後継者の不足等厳しい状況にあ
る。
こうした意味で、金沢に残る伝統的で高度な職人の技の伝承と人材の育成を行うととも
に、資料の収集、調査及び公開を図ることにより、文化財の修復等を通じ、匠の技への高
い社会的評価と一般の理解と関心を深めることを目的として設置された。1996 年設立。
(2) 施設の機能や規模
・機能:技術研修(座学・実習スペース)
・規模:実習棟 1,458 ㎡、第二実習棟 754 ㎡、教材倉庫 60 ㎡
・開講時間は夜間(中堅技術者に対しより高度な技術研修をおこなうため、日常の就業が
終了した後に講義を受講するため)
・専門的な技術研修を目的とした施設であるため、一般の人が利用可能な機能はないが、
職人の文化や技術に対する一般の理解と関心を深めるための情報発信を目的として、市
民公開講座、子どもマイスタースクールをおこなっている。
機能
人材育成
研究開発
諸室
石工科・瓦科・左官科・造園科・大
工科・畳科・建具科・板金科・表具
科の各工房
なし
貸し工房
貸し目的の工房はなし
交流促進
デザインセンター
販売(企画)
なし
なし
なし
石工科・瓦科・左官科・造園科・大
工科・畳科・建具科・板金科・表具
科の各工房
なし
各工房にて市民公開講座、子ども
マイスタースクール
-
製作体験
宿泊・滞在
展示・情報発信
その他
内容
中堅技術者に対しより高度な技術研修
をおこなう。
金沢箔技術研究所に第2実習棟の金
箔スペース、実習棟二階の新研修室を
貸与。市のクラフト政策推進課がおこな
っている木工・竹工芸作家による作品
制作に対し希少伝統産業室を貸与。民
間の和傘研究会に対し表具科の工房
を貸与。
市民公開講座、子どもマイスタースクー
ルを実施。
両講座により施設の活動内容を発信し
ている。
(3) 活用状況
・本科と修復専攻科がある。学費は無料。
・本科は、定員 50 名。石工科5名・瓦科5名・左官科5名・造園科5名・大工科 10 名・
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畳科5名・建具科5名・板金科5名・表具科5名。就学期間3年間。入学資格は、基本
的技能を習得している者で満 30 歳~50 歳ぐらいの者のうち、継続して自主的に研修す
る意欲のある者。または各業種組合の推薦を受けた者。
・修復専攻科は定員 40 名程度。就学期間 3 年間。就学時間は週1回(原則として金曜日)
。
入学資格は、本科修了生及び本科講師で継続して自主的に研修する意欲のある者。また
は設計士・金沢市職員・教員で継続的に研修を希望する者。または各業種団体の推薦を
受けた者。
・研修室を研修生や組合関係者に対して無料で貸し出している。
・本科・修復専攻科修了生の中には、市発注の歴史的建造物修復事業、金沢城河北門復元
工事に携わっている職人などがおり多方面で活躍している。
・後継者不足で募集定員を割る科も出始めているのが課題。
・夜間に開講されることともあり、その時間に通学するのは難しいが、県内では能登や加
賀、県外では富山県在住の研修生がいる。
・歴史的建造物等受託事業は、金沢市から受託した事業で、歴史的建造物の調査・修復等
を実施している。事業の実施にあたっては、技術を持った本科・修復専攻科の修了生を
活用している。
・金沢に残る伝統的で高度な職人の技術と文化に対する一般の理解と関心を深めてもらう
目的で、市民参加型の事業を展開しているほか、本科・修復専攻科の研修生が職人文化
を学ぶ目的で、金沢の職人の間でたしなまれてきた謡曲(2000 年から)やお茶(2006
年から)の教室を開講している。
・市民参加型の事業としては、市民公開講座(1997 年から)というイベントを年1回(10
月)、各科の講師や研修生の指導のもと作品づくりを体験してもらっている。例えば左官
科では土壁塗り、畳科ではミニ上敷き、石工科は手水鉢を製作する。本校の内容を知っ
てもらうためのイベントである。
・子どもマイスタースクール(2002 年から)は、小学校4年生~中学校1年生を対象とし、
本科9科の内容に因む作品づくりをするもの。第2・4土曜日、2ヶ年(全 48 回)
。例
えば左官科は泥団子、建具科はミニ障子衝立などを製作する。
・町家庭園探訪は、造園家講師が管理をしている市内の庭園を市民とともに見学し、解説
するもの。
・事業参観日及び作品展示バザーは、各科の研修風景を見てもらうと同時に作品の展示販
売をするもの。
・長町研修塾は、本科の第1期修了生により修復・作庭された武家屋敷の建物と庭、新築
した茶室(匠心庵)で、講義の場、観光客が立ち寄る場、市民の謡曲、囃子、茶会等広
く市民に利用されている。使用料は午前・午後ともに和室は 1,050 円、匠心庵は 2,100
円。
(4) 管理・運営主体
① 運営主体
・施設の設置、土地建物の所有地金沢市。運営主体は指定管理者である公益社団法人金沢
職人大学校。
・基本スタッフは4名。事務長は事務の総括、定款の改廃、理事会総会及び運営委員会の
事務を担当。事務次長(1名:元市臨時職員)は事務長の補佐や代理、本科の運営、講
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師代表者会議、特別事業、市民公開講座、子どもマイスタースクール、授業参観日及び
作品展示会を担当。主査(1名)は建築担当の専門員で修復専攻科の授業運営、歴史的
建造物の調査研究を担当。主事(1名)は経理・庶務・職員の給与・福利厚生を担当。
② 管理に要する職員の配置状況について
・昼間は、職員が管理しているが、講義が行われる夜間は、講師が施設の管理も行ってい
る。
(5) 収支状況
① 支出の状況
・施設の維持管理経費として、清掃管理業務を外部委託し年間約 230 万円、光熱水費や施
設修繕料で約 740 万円、事業部門に従事する職員 3 名及び学校長の人件費は、1,716 万
円、本科・修復専攻科の研修にかかる経費は講師 47 名への謝礼 1,260 万円、研修で使用
する材料費が 170 万円、修復専攻科講師招請旅費が 104 万円、法人管理に要する管理費
(理事報酬・公認会計士による会計監査業務委託料・支払い消費税・事務長の人件費等)
580 万円。
② 収入の状況
・金沢市が出資した1千万円を定期預金に預け入れした運用益、会員年会費、指定管理料、
金沢市から受託した歴史的建造物の修復事業、長町研修塾の使用料、自動販売機の販売
手数料、市民公開講座参加料。
・事業運営にかかる経費は指定管理料と修復事業の合計 6,600 万円でほぼまかなっている。
・職業訓練校のように国からの補助などは受けていない。
(6) 効果や課題、要改善点、アドバイスについて
・他施設との連携については、金沢市の東山にある金沢箔技術研究所に当校の施設(第2
実習棟の金箔スペース、実習棟二階の新研修室)を貸与している。市のクラフト政策推
進課がおこなっている木工・竹工芸作家による作品制作に対し希少伝統産業室を貸与し
ている。また民間の和傘研究会に対し表具科の工房を貸与している。いずれも無償貸与
である。
配置・平面図
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正面外観
金沢職人大学校と市民芸術村
第2共同実習室
修理中の屋敷門
大工科工房
造園科工房
希少伝統産業室
左官工房
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