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医療のIT化推進と病院情報システム ー電子カルテと地域医療ー
長崎大学医学部、 臨床特論(臨床疫学・医療情報学) 平成20(2008)年4月 対象5年生 医療のIT化推進と病院情報システム ー電子カルテと地域医療ー 長崎大学医歯薬総合研究科 ・医療科学専攻 ・社会医療科学講座・医療情報学分野 (医学部附属病院 医療情報部) 本多正幸 1 目 次 1.遠隔医療 EHR 2.地域医療 3.医療政策とHER 4.電子カルテとデータの標準化 5.診療記録等の電子媒体の保存 について 6.個人情報保護法 7.まとめ 2 遠隔医療システム-1 遠隔医療の種類 • • • • • 施設:病院 診療所 企業 家庭 地域:僻地 離島 海外等 種類:放射線 病理 テレホームケア等 技術:テレビ電話 生体情報監視等 回線:ISDN ADSL 光回線 通信衛星等 3 遠隔医療システム-2 遠隔医療 Before After.....? 対面での情報授受を,ITを活用して遠隔地間で行なう,という考え方 4 遠隔医療システム-3 遠隔医療の実例 • テレラジオロジー(放射線画像診断 診断支援) • テレパソロジー(病理画像診断 術中迅速病理診断) • テレホームケア(在宅医療支援) 依頼側 支援側 5 提供:信州大学 村瀬澄夫教授 遠隔医療システム-4 遠隔医療の用語のまとめと普及への課題 • • • • • • テレコンサルテーション テレパソロジー 普及が遅いのは •医療機関連携強化のための条件整 テレラジオロジー 備の遅れと人間関係構築の問題 •経済的インセンティブの問題(診療 テレホームケア 報酬・保険適用が少ないこと) •コストの問題(ハードウエア、画像端 テレカンファレンス 末、通信) テレダーマトロジー 6 長崎県における離島遠隔医療 支援の紹介 7 離島遠隔診断システム :マルチメディアモデル (総務省「通信・放送機構(TAO)」 • 連携機関 国立長崎医療センター(支援病院) 長崎大学医学部附属病院(支援病院) 離島中核的病院等(依頼病院) • 連携方法 ISDNよるCT画像等の伝送(2003年秋よりADSLへ) • 連携内容 離島中核病院等からの診断支援および救命救急患者 の本土搬送への対応 平成17年(2005年) • 連携期間 以降も継続中 平成12年~平成16年 8 9 10 11 12 マルチメディア・モデル医療システム(長 崎県) 凡例 平成14年度導入場所 大島村診療所 平成12年度導入場所 鷹島町立診療 所 平成13年度導入場所 豊玉直営水崎診療所 インターネット網 遠隔医療情報コンサルティングシステム 離島の診療所と長崎大学医学部附属病院をイン ターネットを介して、医療情報を交換するシステム デジタルカメ ラ ルータ 携帯パソコン 新魚目町国民健康保険診療 所 新魚目国民健康保険榎津診療 所 医療画像診断支援システム 外海町池島診療 所 離島中核病院と本土支援病院をISDN回線及 び本土・離島高速通信網を介して、医療画像を 伝送し、専門医による診断支援を行うシステム ルータ メールによる診断相談 三井楽町国民健康保険診療 所 MPEG4コンテンツ配信 フィルムディジタイザ パソコン デジタルカメ ラ プリン タ TV電話 長崎大学医学部附属病院 玉之浦町国民健康保険診療 所 13 長崎県離島医療情報ネットワーク 12・13年度構築済み 国立病院長崎医療セン ター (県離島医療医師センタ) 12年度導入離島5病院 デジタルカメラ ルータ 放射線科 フィルムディジタイザ ルータ デジタルカメラ プリンタ 救急救命センタ 高速通信網 13年度導入離島7病院診療所 ルータ 長崎大学付属病院 フィルムディジタイザ ルータ デジタルカメラ MPEG4ビデオサーバ デジタルカメラ インターネット網 学内LAN 14年度構築 離島診療所(8診療所) ルータ 外海町池島診療所、大島村診療所、鷹島町立診 療所、玉之浦町国民健康保険診療所、三井楽町 国民健康保険診療所、新魚目町国民健康保険診 療所、新魚目町国民健康保険榎津診療所、豊玉 町直営水崎診療所 デジタルカメラ ①様々な画像の取り込み方法 を サポート(直接受信な ど) ②小規模DICOMファイリン グシ ステムと各種検索 ③画像転送はDICOMプロト コル でファイル転送 ④医療施設間はISDN接続 ⑤端末はパソコンを使用 ⑥様々な画像表示・読影機能 ⑦遠隔診断支援ツール ⑧診断依頼ツール(依頼書 等)⑨テレビ電話 医療情報映像配信システム DSU 14年度導入離島8診療所 資料 2 ①国際標準のMPEG4で蓄 積/ 配信し、WEBブラウ ザで利用 ②特別な講義、講演、MIN CS 放映のカンファレンス、 病理や 放射線等を画像蓄積 し教材とし ても活用 ③マルチメディア情報提供と して の活用 14 1 遠隔医療のまとめ • 病院、診療所の規模、地域性などにより、どの型のシステ ムの色彩が強くなるかであり、システムの特徴をよく理解 し、運用方法を検討することが重要であり、最終的には、 人的連携(病院同士のスタッフの連携)が効率的運用の 最大の鍵になる。 • ブロードバンド時代に入り、画像データの転送時の手間 (時間)の問題も改善の方向に向かいそうであるが、全国 レベルではもう少し時間がかかりそうである。コスト、転送 速度、効率的運用、セキュリティの問題を解決するには、 運用経験を豊富にし、さらにいろいろな方々との経験の 共有が必要である。 15 目 次 1.遠隔医療 2.地域医療 3.医療政策とHER 4.電子カルテとデータの標準化 5.診療記録等の電子媒体の保存 について 6.個人情報保護法 7.まとめ 16 地域医療ネットワークシステム-1 地域における医療連携 日頃の定期的な受診など 診療所等 地域中核病院等 共同診療(情報の共有) 患者情報交換発生 入院による治療が必要な時 特殊な検査が必要な時 . . 17 . 地域医療ネットワークシステム-2 医療機関の役割分担 療養型病院 など 一次医療機関 二次医療機関 診療所 三次医療機関 ネットワーク技術 急性期病院など 医療機関も機能分化の時代へ 1人の患者が複数医療機関で 継続的な治療を受ける可能性 情報の連続性担保 18 地域医療ネットワークシステム-3 電子紹介状の例 診療所 地域医療連携サーバ 紹介状 病院 電子 紹介状 電子署名 逆紹介状 19 地域医療ネットワークシステム-4 時系列も含めた,1人1カルテ化 重複検査の抑止 2007年6月 2006年6月 2004年9月 2005年4月 2004年8月 施設を超えた情報の一元化,時系列化 20 地域医療ネットワークシステム-5 生涯にわたる個人健康情報の管理 • ネットワークで共有する方法 – – – – – いくつかの地域における地域医療連携はこの形式 患者データの外部保存前提 IDC(インターネットデータセンター)方式 ASP方式が普及の可能性あり セキュリティ確保(通信、データセンター)が課題 • 個人で健康カードを管理する方法 – – – PHD(Personal Health Data) これまで→光カード、ICカード(読取装置も含めたコストの問題で普及せず) 最近→メディアに依存しないシステム(SDカード、メモリスティック、等) EHR(電子健康記録):生涯にわたる情報管理 21 地域医療ネットワークシステム-6 かがわ遠隔医療ネットワーク (K-MIX) データセンター 依頼施設 読影依頼 支援施設 読影 レポート 患者紹介 予約依頼 患者紹介 予約受付 CT,MRなどの モダリティ 画像撮影 の依頼 撮影画像 返書 返書 現在,約60医療機関が接続し,相互に医療連携を行なっている. 22 地域医療ネットワークシステム-7 脳血管疾患対応の例(名古屋) 日本脳卒中学会等 地域連携クリティカルパス 救急車ー急性期病院間 情報伝達フォーマット (診療・検査・画像情報) 手術支援 ネットワーク 救急車 ①情報標準化事業(CDA, HL7, DICOM) 急性期病院ーリハ病院間 情報伝達フォーマット 電子化 (診療・検査・画像情報) 急性期病院 救急医療 ネットワーク ②情報共有化事業 HPKI CA局 レジストリーシステム 回復期 リハ病院 患者の レジストリ リポジトリ 地域ID 共有情報 共有情報 管理簿 登録簿 保管庫 リハ病院ー療養型施設・かかりつけ医間 情報伝達フォーマット 電子化 (診療・検査・画像情報) 療養型施設 かかりつけ医 療養型施設・かかりつけ医ー在宅間 情報伝達フォーマット 電子化 (診療・検査情報) かかりつけ医 ネットワーク 基幹病院 ネットワーク (資料提供:名古屋大学脳神経外科 吉田 純 教授) 在宅 医療制度上の目標 発症から社会復帰までをトータルに支える医療の創生 (脳卒中連携医療体制の確立) 23 地域医療ネットワークシステム-8 ネットワークシステム事例(鳥取) (資料提供 鳥取大学医学部 近藤博史教授) 24 地域医療ネットワークシステム-9 災害救急情報ネットワークシステム (http://web.qq.pref.hyogo.jp/qq/qq28gnmenult.aspより引用) http://web.qq.pref.hyogo.jp/qq/qq28gnmenult.aspより引用) 25 目 次 1.遠隔医療 2.地域医療 3.医療政策とHER 4.電子カルテとデータの標準化 5.診療記録等の電子媒体の保存 について 6.個人情報保護法 7.まとめ 26 総合規制改革会議とは • 総合規制改革会議は、平成13年4月1日、 内閣府設置法第37条2項に基づき、内閣 府に政令で設置された組織 • 必要な規制の在り方に関する基本的事項を総 合的に調査審議していく、総合規制改革会議 が内閣府に設置 • http://www8.cao.go.jp/kisei/ →平成16年度で終了 • http://www.kisei-kaikaku.go.jp/←平成17年度から (規制改革・民間開放推進会議) 27 総合規制改革会議 第1次答申:平成13年12月11日 Ⅰ 基本理念 1.「生活者・消費者本位の経済社会システム構築」 と「経済の活性化」を同時に実現 2.「システム全体の変革」への取り組みが効果的 3.「民間にできることはできるだけ民間に委ねる」 II 重点6分野における検討 医療 人材(労働) 環境 福祉・保育等 教育 都市再生 28 重点6分野について 1.医療 〔 問題意識〕 • わが国の医療制度:国民皆保険、医療機関への フリーアクセス • 経済社会環境の変化:近年の少子高齢化、IT化 の進展 • 国民の生活スタイルや価値観、ニーズの多様化 • 患者自身が医療情報を集め、治療方法の選択 希望 • 現在の医療制度は国民意識の変化に対応でき ない 29 重点6分野について 1.医療 〔 改革の方向〕 • 医療改革の目的: 患者本位の医療サービス実現 • そのための必要条件: 医療の質の向上、安全の確保、無駄を排除、効 率的な医療サービスの実現 • 実施項目: 情報開示・公開の促進、IT化の推進、診療報酬 体系の見直し、医療機関相互の競争の促進 30 総合規制改革会議の第2次答申 (平成14年12月12日)の概要の一部 5 医療 (1)医療のIT化の推進による医療事務の効率化 ・電子カルテ等診療情報の医療機関外での保存<15年度以降速やかに措置> (2)患者(被保険者)の主体的な選択の促進 ・公的保険と保険外診療の併用の推進<15年度中に措置(逐次実施)> (3)診療報酬体系の見直し ・診断群別定額報酬支払い方式の導入促進の検討<15年度より計画を明示して 検討> (4)医療提供制度 ・病床規制のあり方を含め地域医療計画について検討し、措置<14年度より検討、 17年度中の早期に措置> (5)医薬品に関する規制緩和 ・一定の医薬品については、一般小売店において販売できるよう、専門家による検 討を開始し、結論<14年度に検討開始、15年度末を目途に結論> 31 e-Japan戦略Ⅱ 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部 1. 次世代情報通信基盤の整備次世代情報通信基盤の整備 ◎いつでもどこでも何でもつながるユビキタスネットワークの形成 医 療 1.患者基点の総合的医療サービス、継続的治療等 ・認証基盤整備、電子カルテのネットワーク転送・外部保存の容認 〔2005年まで〕 2.医療機関の経営効率と医療サービスの向上 ・医療機関情報の国民への開示 (第3者機関による審査) 3.診療報酬請求業務の効率化 ・診療報酬請求業務のオンライン化開始〔2004年度から〕 医療機関100%対応可能〔2010年まで〕 ・電子レセプトを担保にした金融機関からの融資 32 IT政策パッケージ 2005 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部 2.医 療 (1) 診療報酬制度による医療のIT化の一層の促進 (2) 医療機関から審査支払機関に提出されるレセプトの電算化及びオンラ イン化の推進 (3) 審査支払機関から保険者に提出されるレセプトの電算化の実現 (4) レセプトデータ等の有効活用による医療の質の向上 (5) 電子カルテの普及促進 (6) 遠隔医療の推進 (7) ITを利用した医療情報の連携活用の促進 (8) ユビキタス健康医療の実現 (9) 医療機関における管理者層に対するIT教育の促進 33 レセプト完全オンライン化へ 2010年度末めどに 平成17年11月厚生労働省 (1) • 厚生労働省は、病院が医療費などを保険請求する 際の診療報酬明細書(レセプト)を、2010年度末 をめどに完全電子化してオンライン化する方針を 固めた。 • これまで紙のレセプトが主流で、非効率などの批判 があった。 • 06年度にもオンライン請求による医療費の支払 いができるよう省令を改正し、大病院と薬局から 始め、今後5年かけて段階的に診療所まで広げる。 • 整備を経済的に後押しするため、導入した医療機 関は診療報酬で評価することも検討している。 34 レセプト完全オンライン化へ 2010年度末めどに 平成17年11月厚生労働省 (2) • オンライン化で医療費の誤った請求や無駄遣いをチェック しやすくなるほか、病気の傾向を分析して保健指導に役立 てるなどの取り組みも可能になるとされる。 • レセプトは医療機関が作成し、患者の病名や検査、投薬な ど治療内容が記載されている。支払機関に送られてチェッ クを受けた後、国民健康保険や政府管掌健康保険、健康 保険組合などの公的医療保険に送られ、医療費が医療機 関に支払われる仕組みになっている。 • レセプトの審査をしている社会保険診療報酬支払基金は すでに、健保組合などの保険者に対して電子データで提供 できるようにする方針を決めているが、医療機関から支払 機関へのレセプトについては、電子化されているのは病院 で2割程度、医療機関全体では1割程度にとどまっていた。 35 36 IT戦略の推移 平成15年7月2日(政府、IT戦略本部) 37 政府の施策 2001/1 2001/12 2003/7 2005/12 (厚生省) レセプトIT化の推進 (H18開始、H23原則全てオンライン) (内閣・IT戦略本部) 医療が今後のIT政策の重点課題のトップ 2006/6/1 重点計画-2006 e-Japan戦略 (内閣・IT戦略本部) 保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン e-Japan戦略Ⅱ (内閣・IT戦略本部) 医療制度改革大綱 (政府・与党医療改革協議会) 2006/1/19 IT新改革戦略 内閣・IT戦略本部 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/ • 数値目標の非明示化 • 介護福祉分野の統合 原則、「IT新改革 戦略」の踏襲 (内閣・IT戦略本部) ITによる医療の構造改革 (レセプト完全オンライン化、生涯を通じた自らの健康管理 等) 2007/3/27 医療・健康・介護・福祉分野の情報化グランドデザイン(厚労省) 2007/5/29 重点計画-2007 (内閣・IT戦略本部) 200床以上のほとんどの医療機関に対し、統合系医療情報システムの導入 (400 床以上は2008 年度まで、400 床未満は2010 年度まで) 医療情報システムにおけるデータフォーマット及びデータ交換規約に関する標準化。 これら標準の医療情報システムへの標準搭載の拡大 疾病名等に関する標準コードの整備を2007 年度までに整備 地域における医療機関間の情報連携の促進 等 38 IT新改革戦略 ITによる医療の構造改革 -レセプト完全オンライン化、生涯を通じた自らの健康管理- 目標 • 遅くとも2011年度当初までに、レセプトの完全オンライン化により医療保 険事務のコストを大幅に削減するとともに、レセプトのデータベース化とそ の疫学的活用により予防医療等を推進し、国民医療費を適正化する。 • 2010 年度までに個人の健康情報を「生涯を通じて」活用できる基盤を作 り、国民が自らの健康状態を把握し、健康の増進に努めることを支援する。 • 遠隔医療を推進し、高度な医療を含め地域における医療水準の格差を 解消するとともに、地上デジタルテレビ放送等を活用し、救急時の効果的 な患者指導・相談への対応を実現する。 • 導入目的を明確化した上で、電子カルテ等の医療情報システムの普及を 推進し、医療の質の向上、医療安全の確保、医療機関間の連携等を飛 躍的に促進する。 • 医療・健康・介護・福祉分野全般にわたり有機的かつ効果的に情報化を 推進する。 39 40 4.1 広域の保健医療情報システムの概念と方法 グランドデザイン策定 認証局運用 医療機関連携 医療情報の分析 レセプトオンライン 41 厚生労働省グランドデザイン2007 ■IT化による将来の姿 ○医療機関が安全にネットワーク化され、診療画像や検査情報等を安 全・円滑に情報交換可能。専門医への紹介やセカンドオピニオンのス ムーズな受け入れが可能。 ■アクションプラン ○平成18年度末までに、保健医療福祉分野の公開会議基盤(HPKI)を 構築し、平成19年度から運用開始 ○総務省、経済産業省で培われたネットワーク、認証等に関する技術の 医療分野への活用を検討し、平成18年度末までに、医療機関として選 択すべき安全かつ安価なネットワークセキュリティ要件を含めた、安全な 診療情報等の取扱いに関する指針を明確化 42 43 Yongmin Kim, Ph.D. 2006年7月11日(火) CareGroup ISCアジェンダより ホスト: John D. Halamka MD • Care Group Health System CIO <現在歴任する主要役職> • Harvard Medical School CIO • New England Health Electronic Data Interchange Network (NEHEN)会長 • Harvard Clinical Research Institute (HCRI) CIO • Center for Clinical Computing, Harvard Medical School 客員教授 • Beth Israel Deaconess Medical Center 救急担当医師 <略歴> • 米スタンフォード大学でMedical Microbiology(病原微生物学)、Public Policy (公共政策)学位取得。在学中にテクノロジーに関する本を発表、およびいくつ かのスタートアップカンパニーを設立。後、カリフォルニア大学メディカルスクー ルでBioengineering(生物工学)および医療テクノロジーを研究する。90年代後 半よりハーバードメディカルスクールの教員となり医療とテクノロジーの研究、 および教育に従事する。 44 20 CareGroup:会議記録からその1 ○ 全米レベルの話し ●全国民のEHR保有を目指す米国厚生省内の諮問委員会 「AHIC」(American Health Information Community:米国医療情 報コミュニティ)の活動が本格化している。 AHICに含まれる4つのプロジェクト(HITST、NHIN、HISPC、 CCHIT) ・HITSTは4つに分割されて、HICが全体運営(17名のうち、9名 政府関係で8名が業者)を行う ・3つの事例: ①消費者の強化(Clipボードへの入力の回避) ②感染症対策(生物監視、伝染病) ③電子カルテ (EHRの相互運用性-特に検査データ) ・標準→アーキテクチャー→ポリシー→実行方法 規制ではなく 市場原理に基づいて ・CCHIT(www.CCHIT.ORG)では2006にEHR標準アーキテク チャー→2007に(各病院の)HISへの証明書発行→2008にデー タ交換(地域) 45 22 46 国際的動向:韓国の例 http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/pdf/060425_2_1.pdfより引用 47 国際的動向:EHRの推進 米国 国 RHIO NHIN 2014年までに全国民に カナダ Infoway (非営利) 2009年までに国民の50% 2020年までに100%に イギリス NHS CFH Spine 国 2010年までに5200万人に オランダ デンマーク 国 Medcom 2006年に医薬情報とGPサマ リを 2003年にGPのEHR 2006年に病院EHR オーストラリア 国 基盤(Health Connect) 国統一ID検討 CCHIT SNOMED/CT HL7 州毎のID HL7 待ち時間短縮 NHSのID SNOMED/CT HL7 国統一のID HL7 国統一のID SNOMED/CT HL7 HL7 RHIO: Regional Health Information Organizations 48 電子カ ルテが 必須の 分野 2007/03/27 医療・健康・介護・福祉分野の情報化グランドデザイン 49 日本版EHR (生涯電子カルテ) ・自身の生涯にわたる健診情報・診療情報等を電子的に入手・管理 できる仕組みの構築 ・各医療機関内の電子カルテを、まず地域分散型情報センターで集 約し、その後全国版として連結 地域分散型情報センター 地域分散型情報センター 院内の 電子カルテ 院内の 電子カルテ 基幹業務系 基幹業務系 情報系 医療連携 システム 安全かつ安価な ネットワーク 医療連携 システム 情報系 地域医療情報圏 (RHIO) 医療機関A 日本版EHR 医療機関B EHR: Electronic Health Record RHIO: Regional Health Information Organization 50 日本版EHR実現への障壁 立脚法律の整備 患者・受診者の同定 同じ検体のGOT値も分析装置が違えば値が異なる 意味論、オントロジー(概念化の明示的な仕様)によ る意味の構造記述 成り済まし防止策 病名、検査、処置、等の標準コード化 標準検体の整備、使用強制化 医療は医師法・医療法、健診は労働安全衛生法 同じ病名でも医師により概念が異なる 通信プロトコルの合意 51 まとめ:EMRからEHRへ 病院内の電子化システムの構築から、地域での確立へ そのための解決しなければならない問題が山積: 〇 医療と健診との融合(法的整備) 〇 セキュリティ対策(成りすまし防止、認証、H-PKI) 〇 標準化の推進(病名、検査、処置、等) 〇 地域内ユニバーサルIDの確立 〇 意味論、オントロジー(概念化の明示的な仕様) 研究の促進 医療情報研究と実証実験 52 目 次 1.遠隔医療 2.地域医療 3.医療政策とEHR 4.電子カルテとデータの標準化 5.診療記録等の電子媒体の保存 について 6.個人情報保護法 7.まとめ 53 電子カルテとは何か ・「電子」+「カルテ」という言葉のイメージ • ボールペンなどで、紙のカルテに記載され ていた内容をワープロやコンピュータに入力 すること • 法律的にも、実際の診療上も役割としては 十分 • 「自由文方式の電子カルテ」 54 電子化の効果 (自由文方式の電子カルテ) • 紙カルテの保管・整理・運搬に関する業務の 軽減(人員削減) • 読みやすいカルテとなり、情報開示への条件が 整う • 情報の複製、編集が容易 • 情報の共有 電子化への期待:カルテに書かれている記録の利用 55 電子化の効果 (テンプレート方式電子カルテ) ・カルテ記載内容の後利用 病院管理資料、経営分析資料として利用 診療報酬請求への利用 疫学・臨床医学への研究貢献(統計解析) ・テンプレート方式とは: 病院が必要とするデータ項目や臨床上必須の情報を決まったフォ ームに整理してコンピュータ画面に表示し、入力を要求する形式 (問題:記入者の自由な発想を妨げる。診療目的に合わせた多種 類のテンプレートを準備するのに、経費と時間を要する。) 56 標準化の必要性 他の医療機関作成された情報との互換性 地域医療連携、遠隔医療連携 • 病名や症状名、所見、強さの程度や性格 の分類基準の標準化(表現方法の統一) • 例:国際分類(ICD-10)に準拠した病名集 の完成(1998):厚生省、MEDIS-DC 57 ISO(国際標準化機構) • ISO: International Organization for Standard • OSI: Open System Interconnect 通信プロトコール(参照モデル) 第7層:アプリケーション層 第6層:プレゼンテーション層 第5層:セッション層 第4層:トランスポート層 ⇔ TCP 第3層:ネットワーク層 ⇔ IP 第2層:データリンク層 第1層:物理層 • 第7層は、応用プログラム、専門領域の標準化が別途必 要であるため、効率的な医療情報の交換のために、医療 データの記述方式、用語、安全基準などの標準化の作 58 業が進められている ISO-TC215 • TC215:医療情報の標準化に関する技術 委員会 • WG1:医療情報の基本モデルと電子カルテ • WG2:メッセージ交換規格 • WG3:概念と用語 • WG4:セキュリティ • WG5:健康カード 59 電子カルテの問題点 • 標準化(データ交換の標準化) • 心電図、超音波の写真、X線フィルム等の 画像情報の統合化 • 簡便で迅速なユーザインターフェース (ペン書きと同等以上の入力方法) • セキュリティ 60 現在の電子カルテの型 (開原先生) • 診療所の電子カルテ(診療所型) • 病院の電子カルテ(病院型) • 医療機関連携のための電子カルテ (診療連携型) 61 診療所の電子カルテ(診療所型) (開原先生) 診療の効率化(医療機関内) ・紙の診療録を電子化するメリット 検索が容易 編集が容易 スペースをとらない カルテの真正性の保証が容易 離れた場所に迅速に送れる ・一人の医師が決心すればできる 62 病院の電子カルテ(病院型) (開原先生) 診療の質的向上(医療機関内) ・オーダリングシステム発展 ・診療所型に加えて 各種職員の診療情報の共有 クリティカルパス 診療支援 診療DBの利用 ・組織としての決定が必要 63 診療連携のための電子カルテ (診療連携型) (開原先生) 地域医療のための病院と診療所の連携 64 電子カルテの画面例 65 電子カルテの画面例:初診時情報 66 目 次 1.遠隔医療 2.地域医療 3.医療政策とEHR 4.電子カルテとデータの標準化 5.診療記録等の電子媒体の保存 について 6.個人情報保護法 7.まとめ 67 診療録等の電子媒体による保存 について(通知) • 厚生省健康政策局長・厚生省医薬安全局長・厚 生省保険局長 名 • 平成11年4月22日、各都道府県知事当ての通知 • これまで、作成した医師等の責任が明白であれ ば、ワードプロセッサー等いわゆるOA機器によ り作成することができるが、診療録等の電子媒 体による保存の可否については、これまで明 らかにされていないところである。 68 • 3基準を満たす場合は、保存を認める 1.電子媒体による保存を認める文書等 (1)医師法(昭和23年法律第201号)第24条に規定されている 診療録 (2)歯科医師法(昭和23年法律第202号)第23条に規定されている診療録 (3)保健婦助産婦看護婦法(昭和23年法律第203号)第42条に規定されている助産禄 (4)医療法(昭和23年法律第205号)第21条、第22条及び第22条の2に規定されている 診療に関する諸記録及び同法第22条及び第22条の2に規定されている病院の管理 及び運営に関する諸記録 (5)歯科技工士法(昭和30年法律第168号)第19条に規定されている指示書 (6)薬剤師法(昭和35年法律第146号)第28条に規定されている調剤録 (7)救急救命士法(平成3年法律第36号)第46条に規定されている救急救命処置録 (8)保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号)第9条に規定 されている診療録等 (9)保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(昭和32年厚生省令第16号)第6条に規定 されている調剤録 (10)歯科衛生士法施行規則(平成元年厚生省令第46号)第18条に規定されている歯科 衛生士の業務記録 69 2.基準 • 電子媒体に保存する場合は次の3条件を満たさなけ ればならない。 情報の真正性 (1)保存義務のある が確保されていること。 ○故意または過失による虚偽入力、書換え、消去及び混同を防止するこ と。 ○作成の責任の所在を明確にすること。 情報の見読性 (2)保存義務のある が確保されていること。 ○情報の内容を必要に応じて肉眼で見読可能な状態に容易にできること。 ○情報の内容を必要に応じて直ちに書面に表示できること。 情報の保存性 (3)保存義務のある が確保されていること。 ○法令に定める保存期間内、復元可能な状態で保存すること。 70 3.留意事項 (1)施設の管理者は運用管理規程を定め、これに従い実施すること。 (2)運用管理規程には以下の事項を定めること。 1.運用管理を総括する組織・体制・設備に関する事項 2.患者のプライバシー保護に関する事項 3.その他適正な運用管理を行うために必要な事項 (3)保存されている情報の証拠能力・証明力については、平成8年の 高度情報通信社会推進本部制度見直し作業部会報告書において 説明されているので、これを参考とし十分留意すること。 (4)患者のプライバシー保護に十分留意すること。 71 電子媒体による保存に関するガイドライン 1.はじめに 今回の通知は規制緩和の一環であり、電子媒体に保存したい施 設が自己責任において実施することを妨げないことを確認するため のものであり、電子媒体に保存することを強制するものではない。本ガイドラ イン・・・ 2.自己責任について 自己責任とは、当該施設が運用する電子保存システムの 説明責任、管理責任、結果責任を果たすことを意味する。 ・・・ ・ 説明責任とは、当該システムが電子保存の基準を満たしてい ることを第三者に説明する責任ある。 ・ 管理責任とは、当該システムの運用面の管理を施設が行う責 任である。 ・結果責任とは当該システムにより発生した問題点や損失に対 する責任である。 72 背景:電子保存 • 「診療録等に関する電子保存について」 (平成11年4月、厚生省) • 電子保存のための3条件 情報の真正性,情報の見読性,情報の保存性 ○故意または過失による虚偽入力、書換え、 消去及び混同を防止すること。 ○作成の責任の所在を明確にすること。 • データセキュリティ • ユーザ認証 73 セキュリティ全般 • システムの安全性に関する技術的要件 ユーザ認証:Individual authentication of users アクセス制御: Access controls 監査追跡 : Audit Trails 物理的セキュリィティ: Physical Security Communications 接続コントロール : Control of links ソフトウエアの管理 : Software discipline バックアップと災害時復旧 : Backup and disaster recovery システムの自己診断 : System self-assessment 74 ユーザ認証 (Individual Authentication of Users) • コンピュータシステム全般における認証 本人の持ち物:ロックキー,カード 本人の知識 :母親の旧姓,パスワード、PIN 実在関連情報:サイン,指紋,目の虹彩,声紋,顔,DNA 所在情報 :回線上の端末,コールバックシステム, IPアドレス • 4つの判断基準の組み合わせ 複数の組み合わせ 強い 複雑 単一の方法 システムの堅固性 弱い システムの運用 単純 75 目 次 1.遠隔医療 2.地域医療 3.医療政策とEHR 4.電子カルテとデータの標準化 5.診療記録等の電子媒体の保存 について 6.個人情報保護法 7.まとめ 76 個人情報保護法の目的 1.個人情報保護法がなぜできたのか 第一章 総則 (目的) 第一条 この法律は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報 の利用が著しく拡大していることにかんがみ、個人情報の 適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針 の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本とな る事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかに するとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義 務等を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、 個人の権利利益を保護することを目的とする。 77 個人情報保護法の目的 【背景と要点】 ①公的部門、民間部門を含めて個人情報がインターネット で広く流通する社会が到来している。 ②個人情報の不適切な取扱いが増大している。 → 大量漏洩 → 本来の目的からかけ離れた利用 ③個人のプライバシーやその他の個人の権利利益が侵害 される危険が著しく増大している。 ④個人の権利利益が侵害される危険を未然に防止するた めの、個人情報の適切な取扱いに関する一般的なルー ルを法的に確立し、そのルールに即した取扱いを確保す る。 78 今回施行される個人情報保護法 ■「個人情報保護関連5法案」 (平成15年5月30日法律第57号) <基本法部分> ・基本理念 ・国・地方の責務 ・基本方針の策定 民間部門(一般民需) 個人情報の保護に関する法律(基本法制);個人情報取扱い事業者の義務等 公的部門( 行政機関・独立法人・特殊法人・認可法人) 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律 情報公開・個人情報保護審査委員会設置法 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関連法律の整備等に 関する法律 地方公共団体(条例) 適用除外; 報道機関、著述業、学術研究機関、宗教団体、政治団体 <基本法部分>→平成15年5月一部施行(第1条ー第14条) <一般法部分> →平成17年4月全面施行(第15条ー第59条) 79 ■平成17年4月に向けて「医療」「金融」「信用」「通 信」「放送」 等は個別法での対応が迫られている。 平成16年4月、内閣閣議 ;3年以内、平成20年頃までに個別法が作られ、施行 80 OECD8原則 勧告付属文書 プライバシー保護と個人データの国際流通に ついてのガイドライン ①収集制限の原則 適法・公正な手段により、必要な場合には情報主体に通知または、同意を得て収集される べき。 ②データ内容の原則 利用目的に沿ったもので、かつ正確、完全、最新であるべき。 ③目的明確化の原則 収集目的を明確にし、データ利用は収集目的に合致すべき。 ④利用制限の原則 情報主体の同意がある場合、または法律の規定による場合以外は、目的以外に利用して はならない。 ⑤安全保護の原則 合理的安全保護の処置により、紛失、破壊、使用、修正、開示等から保護されるべき。 ⑥公開の原則 データ収集の実施方法を公開し、データの存在、利用目的、管理者等を明示すべき。 ⑦個人参加の原則 自己に関するデータの所在および内容を確認させ、または異議申し立てを保証すべき。 ⑧責任の原則 管理者は諸原則実施の責任を有する。 81 リスボン宣言 1995年9月世界医師会第47回総会にて採決 その中の医療情報に関するプライバシー保護宣言 ①患者の健康状態、症状、診断、予後および治療に関する本人を特 定し得るあらゆる情報、ならびにその他すべての個人情報の秘密 は、患者の死後も守られねばならない。ただし、患者の子孫が自ら の健康上の危険に関わる情報を知る権利は、例外的に認められる。 ②秘密情報の開示は患者本人が明確な承諾を与えるか、法律にはっ きり規定されている場合のみ許される。他の医療従事者への情報 開示は、患者が明確な承諾を与えていない限り、業務遂行上知る 必要がある範囲でのみ許される。 ③患者を特定可能なデータは保護されねばならない。データの保護は その保存形態に応じて適切になされねばならない。個人の特定が 可能なデータが導き出されうる生体試料や標本も同時に保護され ねばならない。 医療における個人情報保護法 82 個人情報とはどのような情報なのか 個人情報の保護に関する法律 第2条(定義)1項 • この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情 報であって、当該 情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述 等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易 に照合することができ、それにより特定の個人を識別することがで きることとなるものを含む。)をいう。 • 個人情報保護法では、「特定の個人を識別できるものを個人情 報と定めているのであり、情報が一人の人物に属するものと特定 できるものを個人情報とはしていない」ことに留意する必要がある。 83 個人情報とはどのような情報なのか ■例)個人情報(顧客情報等など外部情報) 氏名と結びつく事で ・住所、電話番号(携帯電話番号を含む)、電子メールアドレス、年齢 ・性別、年収、学歴、出身校、趣味、嗜好、家族構成、血液型、身長、 体重 ・出生地、本籍地、購読雑誌、生年月日、職業、勤務先名称、勤務先 住所 ・既婚/未婚の別、好きな食べ物、嫌いな食べ物、好きなブランド ・パスポート番号、クレジットカード番号、学籍番号、社員番号等々 収集方法:「ポイントカード」「メンバーズカード」「アンケート」 「購入履歴」「会話/ミーティング」「懸賞応募」 など 84 個人情報とプライバシー情報の違い ■プライバシーとは 「一人にしておいてもらう権利」 「個人の私生活に係る事柄、またはそれを他人や社会から知られず干渉 されない権利」 ※日本国憲法第13条 「生命、自由、幸福追求権」ですべての国民は個人として 尊重される。 ■個人情報とは 「個人情報の内容や性質、使われ方などを考慮せず、また、プライシー 侵害の恐れがあるかどうかは問わず、個人を識別可能な個人情報を 保護する考え方に専念したものである。」 85 個人情報は流通するものである ②個人情報の保護に関する法律 第3条(定義) 第三条 個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取 り扱われるべきものであることにかんがみ、 その適正な取 扱いが図られなければならない。 プライバシーに配慮しつつ個人情報を活用で きるような一定のルールをつくり、個人情報を 適切に流通させることを目的としている。 86 情報漏洩事故の事例(病院)-1 1.長野県血液センター H15/7 献血登録者台長から個人情報流出。個人情報保護 マニュアルに不備があった。セキュリティ情報委員 会を設置し、マニュアルの運用をチェックする。 全国50ヶ所の血液センターでも、まったく同様の状況 であった。 2.高知県立安芸病院 H15/8 H13年度眼科入院カルテ100人分が紛失。カルテ 庫にカルテ以外の廃棄個人情報文書を置いてあっ た為に、誤って廃棄したものと思われる。保存の為 の製本作業中に紛失に気付いた。 87 情報漏洩事故の事例(病院)-2 3.金沢医科大学病院 H16/3 医科大の助手、研修医ら8名が同大学病院入院患者の 電子カルテにアクセスするパスワードを指導する学生に 教えていた。紙のカルテは当たり前のように学生に見せ ている。電子カルテはそれに比べるとセキュリティレベル は高い。厚生労働省は患者の同意なしでの利用はたとえ 教育的配慮であっても不適切であると指摘した。今後は 紙カルテは全部見られるのだか・・・らは通用しない。 4.奈良県三室病院 H16/3 7500人分の個人情報を記録したノートパソコン5台が盗まれ た。盗まれたPCは机の上に置かれ、パスワードを設定して いなかった。看護採用内定情報,在宅医療機器貸し出し 情報,職員情報,職員人事関係情報,高度医療情報など が入っていた。 88 情報漏洩事故の事例(病院)-3 5.鳥取県立厚生病院 H16/5 個人情報が入ったレントゲンフィルムなどを、産業廃棄物業者が紛失した。同病 院と県立中央病院も個人情報入りの封筒に入れたまま、産廃業者へフィルム を売却していた。業者との契約書に明確な個人情報保護規定は無かった。鳥 取県としては、県立2病院と同様に処分していた県内44の病院に対して、個 人情報保護条例を順守させることを指導した。情報セキュリティ対策基準を作 成することにした。 6.三重県松坂市民病院 H16/5 患者の病名15人分や全職員400名分の給与額などの個人情報が記載された 内部文書30枚が流出した。患者情報は氏名,生年月日,病名,病状などが 書かれた医師用の会合資料20枚。医師,看護師,事務職員など全職員400 人の給与額が記載された予算書作成用の資料10枚。予算資料は誤って院内 地下のごみ置き場に出したとみられている。本来は院外に設置されているシュ レッダーで処分が内規では義務付けられている。会合資料は、流出原因は分 からず。昨年10月に清掃やごみ処理を委託している会社の男性職員(後に退 職)から個人情報が漏れている、私が持っているとの通報で流出が発覚した。 病院と男性が交渉の結果、今年2月返却された。 89 これから長崎大学病院でやるべきこと 個人情報セキュリティ対策委員会を組織する (1)セキュリティインシデントを把握する ①事故を早期発見する仕掛けをシステム化する。 (情報へのアクセスログ分析) ②事故発生のエスカレーションルートを明確にする。 ③事故情報の共有方法を取り決める 個人情報漏洩防止対策を施す (1)セキュリティポリシーを策定 (策定期間5ヶ月~6ヶ月) ①対策基準策定後に、実施手順を作り平成16年度下期から試行する。 ②ゲートウェイエリアの不正侵入検知と、ウイルス対策を打つ。 ③電子メールの保存対策を検討する。 ④個人情報に対して、情報の持ち出し制御対策と暗号化対策を打つ。 ⑤情報へのアクセスログを分析して傾向を把握し、対策の改善を行う。 90 目 次 1.遠隔医療 2.地域医療 3.医療政策とEHR 4.電子カルテとデータの標準化 5.診療記録等の電子媒体の保存 について 6.個人情報保護法 7.まとめ 91 「離島に関する研究」向け拡大データセンターシステム構想(案) 医療機関の業務に 適したDTDの開発 データセンター 研究ニーズ 研究ニーズ 研究ニーズ 患者情報 基本情報 既存システム DTD解析システム 既存DB 患者情報 基本情報 複数医療機関 のXML 検査結果 様々な医療機 関のDTDの構 文解析 キュー 1 ニーズ収集・整理機能 ニーズA ニーズA ニーズA ・研究データの 収集・分析 ・診療情報統合管理 システムとの連携 暗号化 VPN ブロードバンド ネットワーク 医療機関 独自XML 6 ・患者情報の一元 管理 ・機関毎に情報公開 レベルを設定 連携サーバ XML形式 変換処理 3 ・電子メール ・回覧 ・医師専用・匿名掲示板 ・患者紹介・逆紹介 検査結果 キュー 病院間連携DB機能 ・模範手術映像の同時配信 ・放射線画像等を用いた技術討論会 ・医療行為情報のVOD ・eラーニング 4 ・解析データ生成 診療情報統合管理システム ・疾病別、分野別データ整備 ・解析によるデータの図表化 診療情報DB 患者情報 患者・住民データDB解析機能 J-MIX 様々な医療機 関の診療情報 を最適に管理 する階層型DB 基本情報 グループウェア機能 2 解析データDB カンファレンス機能 インターネット医療機能 検査結果 一部を公開用情報としてコンバート ・過去診療情報から自動解析された病状・予防策の参照 ・日ごろの生活習慣に関する予備知識・関連リンク集など 5 地域住民 ・在宅訪問時のIT支援 バイタルサイン 収集機 ノートPC・PDA 訪問 在宅訪問 インターネット医療 DB 診療情報DBの一部と、食 生活や生活習慣をサポート する医療サポート情報を地 域住民向けに管理・展開 医療サポート情報 モバイル情報管理サーバ モバイル連携サーバ 生体情報処理サーバ 92 電子カルテのゆくえ 病院情報システム • オーダエントリ • 各部門のシステム化 • 医事会計システム 医療情報の交換 XML(HL7,MML,Merit9) 診療所システム •ワープロ的入力、診療行為の入力 •レセプト作成 日本医師会ORCA(レセコンの標準 化と電子カルテへの移行) 診療報酬請求と して必要な情報 診療上必要な情報 電子カルテ 電子カルテ 電子カルテ 93 本日のまとめ • 遠隔医療支援の経験、地域医療連携の経験を踏ま えるとともに、技術的研究の成果を融合し、患者サイ ドと医療サイドのニーズを十分に把握しながら全国 各地に、さらなる地域医療連携ネットワークの構築が 進むこと期待したい。 • 今後はきめの細かいセキュリティ技術を研究し、その 成果を適用することで国民が安心して利用できるシ ステムとネットワーク実現を目指すべきである。認証 基盤の確立もグローバルな観点からは重要なポイン トとなる。 • EMRからEHRへのスムーズな展開のために、多くの 問題解決が望まれる。その点で医療情報関係者の 責任は大きい。 94